説明

1V〜10Vインタフェース用の温度補償電流発生器

本発明は、ベース‐エミッタ接合領域を備えた少なくとも1つのトランジスタおよび当該のトランジスタに結合された抵抗回路網が設けられており、温度ドリフトに曝される前記ベース‐エミッタ接合領域での電圧降下と前記抵抗回路網の抵抗値とに基づいて出力電流の電流強度が定められる、入力電圧から出力電流を形成する装置に関する。本発明によれば、前記抵抗回路網はその抵抗値が温度にともなって変化する少なくとも1つの抵抗素子を含んでおり、前記出力電流の前記電流強度は前記ベース‐エミッタ接合領域での前記電圧降下の温度ドリフトから独立に一定に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通常1V〜10Vインタフェースと称されるインタフェースでの温度補償技術に関する。
【0002】
関連技術の説明
こんにち1V〜10Vインタフェースは種々の産業分野において電子デバイスを制御するデファクトスタンダードとなっている。光デバイスの分野では、1V〜10Vインタフェースは例えば単純なポテンショメータまたは外部の電子制御回路を介した光源強度の調光に用いられる。一般に、光デバイスはインタフェースの電圧によって制御される。
【0003】
外部の抵抗、例えばポテンショメータの抵抗の値に比例する電圧を得る最良の手段は、インタフェース内に電流発生器を設けることである。このようにすれば、インタフェースでの電圧がオームの法則によって抵抗値に応じて定められる。単純で安価な電流発生器はトランジスタから成り、電流値は基準となるトランジスタの接合領域電圧によって定められる。ただし当該の基準電圧は温度によって大きく変動する。たいていの場合、負の影響を有する当該の温度依存性を補償しなければならない。
【0004】
本発明の概要
本発明の課題は、前述した問題を解決する効果的な手段を提供することである。
【0005】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する装置により解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。また本発明の特徴は明細書、特許請求の範囲および図面の全てから得られ、単独でも任意に組み合わせても本発明の対象となりうる。
【0006】
図面の簡単な説明
以下に本発明を実施例に則して詳細に説明する。図1には本発明の装置の第1の実施例のブロック図が示されている。図2には本発明の装置の第2の実施例のブロック図が示されている。
【0007】
本発明の実施例の詳細な説明
図1,図2には本発明の電流発生器の第1の実施例および第2の実施例が示されている。
【0008】
本発明の装置では、入力電圧としての第1の実施例のDC電圧V1またはDC電圧V2から温度に対して安定な出力電流を形成し、出力端子10で利用できるようにすることを重要な目的としている。ここで、本発明の装置は外部の可変抵抗に接続されて用いられる温度安定型の電流発生器であり、ここで設定された可変の抵抗値に比例する電圧が得られる。外部の可変抵抗は例えば図示されていないポテンショメータである。当該の電圧の調整により、1V〜10Vインタフェースにおいても1V〜10Vの範囲を超える電圧を形成することができる。
【0009】
2つの実施例の双方において、本発明の装置はバイポーラpnpの第1のトランジスタQ1;Q2を有しており、これらのトランジスタのコレクタを介して接続された出力端子10の一方の端子へ出力電流が送出される。出力端子10の他方の端子はグラウンドGへ接続されている。
【0010】
図1では、トランジスタQ1のベースが抵抗回路網を介して入力電圧V1へ接続されており、当該の抵抗回路網の全抵抗は単一の抵抗値Req1として示されている。
【0011】
当該の抵抗回路網は、実際には、第1の抵抗R1、第1のNTC抵抗(負の温度係数を有する抵抗)NTC1、ならびに、第2の抵抗R2および第2のNTC抵抗NTC2の並列部を直列に接続した回路から成る。
【0012】
また、第1のトランジスタQ1のベースは抵抗R4を介してグラウンドGへ接続されている。
【0013】
図2の装置はバイポーラpnpの第2のトランジスタQ3を有しており、第1のトランジスタQ2のエミッタおよび第2のトランジスタQ3のベースは抵抗回路網を介して入力電圧V2へ接続されており、当該の抵抗回路網の全抵抗は単一の抵抗値Req2として示されている。
【0014】
当該の抵抗回路網は、実際には、第1の抵抗R5、第1のNTC抵抗NTC3、ならびに、第2の抵抗R6および第2のNTC抵抗NTC4の並列部を直列に接続した回路から成る。
【0015】
図示されているように、第1のトランジスタQ2のエミッタは第2のトランジスタQ3のベースに接続されており、第2のトランジスタQ3のコレクタは第1のトランジスタQ2のベースに接続されている。第2のトランジスタQ3のエミッタは入力電圧V2に接続されており、第1のトランジスタQ2のベースおよびこれに接続された第2のトランジスタQ3のコレクタは抵抗R7を介してグラウンドGに接続されている。
【0016】
わかりやすくするために、2つの実施例では第1のトランジスタQ1;Q2のベース電流および第2のトランジスタQ3のベース電流を無視できるものとしている。
【0017】
図1の装置に戻って、第1のトランジスタQ1のベース電流を無視できるとすると、抵抗R4を介した電圧は、抵抗R4,Req1の接続部の電流に抵抗R4の抵抗値を乗算した値と等しくなる。この電流は、給電電圧V1を抵抗R4,Req1の和で除算した値に等しい。言い換えると、第1のトランジスタQ1のベース電圧は入力電圧V1を分圧器R4,Req1によって分圧した値によって表すことができる。
【0018】
抵抗R3を介した電圧は、給電電圧V1から第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ接合領域の電圧および抵抗R4を介した電圧を差し引いたものに等しい。第1のトランジスタQ1のコレクタからの出力電流は抵抗R3を介した電圧を抵抗R3の抵抗値で除算した値に等しく、つまり、第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ接合領域の電圧降下および抵抗Req1の抵抗値の関数によって表される。
【0019】
温度が上昇すると、第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ接合領域での電圧は低下し、インタフェース電流は増大する。同時に、温度上昇により2つのNTC抵抗(NTC1,NTC2)の抵抗値が低下し、その結果、抵抗回路網Req1の抵抗が低下して、抵抗R4を介した電圧、すなわち第1のトランジスタQ1のベース電圧が増大する。これにより第1のトランジスタQ1のエミッタ電圧は一定に保持される。よって抵抗R3を介した電圧、ひいては、第1のトランジスタQ1のコレクタからの出力電流が一定に保持される。
【0020】
この効果は唯一のNTC、特にNTC1を用いるのみで達成可能である。ただし、2つの固定値抵抗R1,R2と対応する2つのNTC抵抗NTC1,NTC2とを用いて、抵抗回路網Req1を形成する全ての素子の抵抗値およびNTC温度係数を適切に選択することにより、温度ドリフトの補償効果をいっそう向上させることができる。なお固定値抵抗R2はNTC抵抗NTC2に接続されている。
【0021】
図2の実施例では、第1のトランジスタQ2および第2のトランジスタQ3のベース電流を無視できるものとして、第1のトランジスタQ2のコレクタからの出力電流は同じ第1のトランジスタQ2がエミッタを介して抵抗回路網Req2から受け取る電流に等しい。当該の電流は第2のトランジスタQ3のベース‐エミッタ接合領域の電圧を抵抗回路網Req2の抵抗値で除算した値にほぼ等しい。つまり、第1のトランジスタQ2のコレクタからの出力電流は、第2のトランジスタQ3のベース‐エミッタ接合領域での電圧降下と抵抗回路網Req2の抵抗値との関数である。抵抗R7を介した電流はバイポーラの第1のトランジスタQ2および第2のトランジスタQ3を分極化するのに必要な電流である。
【0022】
温度が上昇すると、第2のトランジスタQ3のベース‐エミッタ接合領域での電圧降下、ひいては、抵抗回路網Req2の抵抗値が低下し、これにより出力電流は一定に保持される。
【0023】
この効果は唯一のNTC、例えばNTC3を用いるのみで達成可能である。ただし、2つの固定値抵抗R5,R6と対応する2つのNTC抵抗NTC3,NTC4とを用いて、抵抗回路網Req1を形成する全ての素子の抵抗値およびNTC温度係数を適切に選択することにより、温度ドリフトの補償効果をいっそう向上させることができる。なお固定値抵抗R6はNTC抵抗NTC4に接続されている。
【0024】
図1の実施例に対する図2の実施例の主な利点は、出力電流が供給電圧V2によって変化しないということである。
【0025】
本発明を幾つかの実施例に則して説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。したがって、本発明の範囲から離れることなく、明細書、特許請求の範囲および図面に規定された本発明の種々の特徴を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の装置の第1の実施例のブロック図である。
【図2】本発明の装置の第2の実施例のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース‐エミッタ接合領域を備えた少なくとも1つのトランジスタおよび該トランジスタに結合された抵抗回路網が設けられており、温度ドリフトに曝される前記ベース‐エミッタ接合領域での電圧降下と前記抵抗回路網の抵抗値とに基づいて出力電流の電流強度が定められる、
入力電圧から出力電流を形成する装置において、
前記抵抗回路網はその抵抗値が温度にともなって変化する少なくとも1つの抵抗素子を含んでおり、前記出力電流の前記電流強度は前記ベース‐エミッタ接合領域での前記電圧降下の温度ドリフトから独立に一定に保持される
ことを特徴とする入力電圧から出力電流を形成する装置。
【請求項2】
前記抵抗回路網はその抵抗値が温度にともなって変化する少なくとも1つの第1の抵抗素子および少なくとも1つの第2の抵抗素子を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の抵抗素子および前記少なくとも1つの第2の抵抗素子はそれぞれ固定値抵抗に対応する、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の抵抗素子は直列に接続された固定値抵抗に対応する、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の抵抗素子は並列に接続された固定値抵抗に対応する、請求項3または4記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の抵抗素子および前記少なくとも1つの第2の抵抗素子はそれぞれ負の温度係数を有する抵抗素子である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記抵抗回路網は前記少なくとも1つのトランジスタのベース電圧を設定する分圧器を含み、前記少なくとも1つの抵抗素子の抵抗変化により前記少なくとも1つのトランジスタのベース電圧が変更されて前記ベース‐エミッタ接合領域での前記電圧降下の温度ドリフトが補償される、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのトランジスタのエミッタは固定値抵抗を介して入力電圧へ接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記抵抗回路網は前記少なくとも1つのトランジスタの前記ベース‐エミッタ接合領域のあいだに接続されており、前記抵抗回路網は前記ベース‐エミッタ接合領域での前記電圧降下と前記抵抗回路網の抵抗値との比によって定められる電流により調整され、前記少なくとも1つの抵抗素子の抵抗の変化により前記比が保持され、前記ベース‐エミッタ接合領域での前記電圧降下の温度ドリフトが補償される、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
さらに第2のトランジスタが設けられており、該第2のトランジスタに前記抵抗回路網を調整する電流が供給される、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記第2のトランジスタは、そのエミッタおよびコレクタを介して、前記抵抗回路網を調整する電流を受け取り、出力電流を出力する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の入力電圧から出力電流を形成する装置を1V〜10Vインタフェース用の温度補償電流発生器として用いることを特徴とする入力電圧から出力電流を形成する装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540409(P2009−540409A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513661(P2009−513661)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055454
【国際公開番号】WO2007/141231
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】