説明

2光子吸収光記録材料、2光子吸収光記録方法、2光子吸収光記録再生方法、2光子吸収光記録媒体及び2光子吸収光記録方法

【課題】2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して屈折率変調、吸収率変調または発光強度変調による記録を高感度にて行った後、光を記録材料に照射してその反射率、透過率または発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子吸収光記録再生方法及びそのような記録再生が可能な2光子吸収光記録材料を提供するものである。特に、記録の暗保存性を向上させた2光子吸収光記録材料を提供することである。
【解決手段】少なくとも、2光子吸収により励起状態を生成する2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物励起状態から電子移動もしくはエネルギー移動することにより発色反応もしくは消色反応を起こし、その結果屈折率変調または吸収率変調による記録を行うことができる記録成分と、塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーとを含む2光子吸収光記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元光記録材料などの高密度光記録媒体、3次元ボリュームディスプレイ等への応用可能な2光子吸収光記録材料及び2光子吸収光記録方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことである。近年、3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収とは非共鳴2光子吸収を指す。
【0003】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在 する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しないレーザーを用いることが多い。透明領域のレーザーを用いるため、レーザー光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。その点が通常の1光子(線形)吸収に対する大きな利点となる。
【0004】
一方、従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)が知られており、追記型CD(いわゆるCD−R)、追記型DVD(いわゆるDVD−R)などが実用化されている。
例えば、DVD−Rの代表的な構造は、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プレグルーブ)がCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そして更に必要により保護層からなる。
DVD−Rへの情報の記録は、可視レーザー光(通常は630nm〜680n mの範囲)を照射し、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより行われる。一方、情報の読み取り(再生)もまた記録用のレーザー光と同じ波長のレーザー光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。この反射率の違いはいわゆる「屈折率の変調」に基づくものである。
【0005】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。
さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
そのような中、DVD−Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、た とえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい片面25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
【0006】
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、3次元光記録媒体が俄然注目されてきている。3次元光記録媒体は、3次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の2次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。3次元光記録媒体を提供するためには、3次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。
2光子吸収材料を用いる3次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基 づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
2光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レウ”ィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号[特許文献3]、アルセノフ、ウ”ラディミール他、特表2001−508221号[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な2光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている2光子吸収化合物の例も2光子吸収効率の極めて小さい2光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許にて用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率 または透過率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特開平6−28672号[特許文献5]、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号[特許文献6]には、屈折率変調により3次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、2光子吸収3次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
そこで、発明者らは、上記課題を抜本的に解決しうる、色素の不可逆的な発色による屈折率変調を用い、高感度かつ不可逆的に記録できる2光子吸収光記録材料及び2光子吸収光記録方式を鋭意考案し、特開2005−71570号[特許文献7]にて開示した。ただし記録の暗保存性等の点にて未だ不十分な点がありさらなる改良が必要であった。
【特許文献1】特表2001−524245号公報
【特許文献2】特表2000−512061号公報
【特許文献3】特表2001−522119号公報
【特許文献4】特表2001−508221号公報
【特許文献5】特開平6−28672号公報
【特許文献6】特開平6−118306号公報
【特許文献7】特開2005−71570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上に述べたように、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で屈折率、吸収率または発光強度を変調することができれば、3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で記録することができ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体への応用が可能となる。
しかし、現時点で利用可能な2光子吸収化合物では、2光子吸収能が低いため、光源としては非常に高出力のレーザーが必要で、かつ記録時間も長くかかる。
特に3次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、記録を高感度にて2光子吸収により行うことができる2光子吸収3次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて2光子吸収光記録材料の屈折率、吸収率または発光強度の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今まで開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、2光子吸収断面積が大きい2光子吸収化合物を少なくとも有し、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して屈折率変調、吸収率変調または発光強度変調による記録を高感度にて行った後、光を記録材料に照射してその反射率、透過率または発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子吸収光記録再生方法及びそのような記録再生が可能な2光子吸収光記録材料を提供するものである。特に、記録の暗保存性を向上させた2光子吸収光記録材料を提供することである。
さらに、それらを用いた2光子吸収3次元光記録材料及び2光子吸収3次元光記録方法及び再生方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らの鋭意検討の結果、本発明の上記目的は、下記の手段により達成された。
【0010】
(1) 少なくとも、2光子吸収により励起状態を生成する2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物励起状態から電子移動もしくはエネルギー移動することにより発色反応もしくは消色反応を起こし、その結果屈折率変調または吸収率変調による記録を行うことができる記録成分と、塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーとを含むことを特徴とする2光子吸収光記録材料。
(2) 前記記録成分のうちいずれかをカチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーとイオン対を形成することによって固定し2光子吸収による記録を保持することを特徴とする(1)記載の2光子記録方法。
(3) 前記記録成分のうちいずれかを塩基性部位を側鎖に有するポリマーと対塩を形成することによって固定し2光子吸収による記録を保持することを特徴とする(1)記載の2光子記録方法。
(4) 前記記録成分が酸発生剤及び、酸発色型色素前駆体を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(5) 前記酸発生剤がジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、金属アレーン錯体、トリハロメチル置換トリアジンまたはスルホン酸エステルであることを特徴とする(4)記載の2光子吸収光記録材料。
(6) 前記酸発生剤がジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、またはスルホン酸エステルであることを特徴とする(4)または(5)記載の2光子吸収光記録材料。
(7) 前記記録が発色反応による屈折率変調によるものであり、酸発色型色素前駆体から生成する色素がキサンテン(フルオラン)色素またはトリフェニルメタン色素、シアニンベースへのプロトン付加から成るシアニン色素のいずれかであることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(8) 前記酸発色型色素前駆体が前記発色反応を起こし色素となった後に前記ポリマーとイオン対を形成することによって固定されることを特徴とする(4)〜(7)記載の2光子吸収光記録材料。
(9) 前記記録成分が少なくとも酸発生剤と、酸消色性色素を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
【0011】
(10) (9)にて、酸発生剤がジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、金属アレーン錯体、トリハロメチル置換トリアジンまたはスルホン酸エステルであることを特徴とする(9)記載の2光子吸収光記録材料。
(11) (10)にて、酸発生剤がジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、またはスルホン酸エステルであることを特徴とする(10)記載の2光子吸収光記録材料。
(12) (9)にて、前記記録が消色反応による屈折率変調によるものであり、酸消色性色素が解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン色素、解離型アゾ色素の解離体であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(13) 前記酸消色色素またはその消色体が前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(14) 前記記録成分が少なくとも塩基発生剤と、塩基発色型色素前駆体を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(15) (14)にて、干渉縞記録が発色反応による屈折率変調によるものであり、塩基発色型色素前駆体が解離型アゾ色素、解離型アゾメチン色素、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン(フルオラン)色素、解離型トリフェニルメタン色素の非解離体であることを特徴とする(14)記載の2光子吸収光記録材料。
(16) 前記塩基発色型色素前駆体が前記発色反応を起こした後に前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする(14)または(15)記載の2光子吸収光記録材料。
(17) 前記記録成分が少なくとも下記一般式(6)にて表される発色型色素前駆体を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
一般式(6)
A1−PD
【0012】
一般式(6)中、A1とPDは共有結合しており、A1は2光子吸収化合物励起状態との電子移動またはエネルギー移動によりPDとの共有結合を切断する機能を有する部位であり、PDはA1との共有結合が切断されて放出された際に発色反応を起こすことができる部位を表す。
(18) 前記PDがA1との共有結合が切断されて放出された際に前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする(17)記載の2光子吸収光記録材料。
(19) (1)〜(18)記載の発色型色素前駆体から発色した色素または消色性色素の2光子記録波長におけるモル吸光係数が100以下であることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(20) (19)にて、発色型色素前駆体から発色した色素または消色性色素が2光子記録波長に吸収を有さないことを特徴とする(19)記載の2光子吸収光記録材料。
(21) さらに、記録成分への電子移動後の2光子吸収化合物ラジカルカチオンに電子を供与することができる電子供与性化合物を含むことを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
【0013】
(22) (21)にて、電子供与性化合物がアルキルアミン類、アニリン類、フェニレンジアミン類、トリフェニルアミン類、カルバゾール類、フェノチアジン類、フェノキサジン類、フェナジン類、ハイドロキノン類、カテコール類、アルコキシベンゼン類、アミノフェノール類、イミダゾール類、ピリジン類、メタロセン類、金属錯体類、半導体微粒子のいずれかであることを特徴とする(21)記載の2光子吸収光記録材料。
(23) 前記電子供与性化合物がトリフェニルアミン類、フェノチアジン類、フェノキサジン類、フェナジン類のいずれかであることを特徴とする(21)または(22)記載の2光子吸収光記録材料。
(24) (23)にて、電子供与性化合物がフェノチアジン類であることを特徴とする(23)記載の2光子吸収光記録材料。
(25) (1)記載の2光子吸収光記録材料がさらに、記録成分からの電子移動後の2光子吸収化合物ラジカルアニオンから電子を受容することができる電子受容性化合物を含むことを特徴とする(1)〜(24)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
(26) (1)〜(25)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して屈折率変調または吸収率変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率または透過率の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子吸収光記録再生方法。
(27) (1)〜(25)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して発光能変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子吸収光記録再生方法。
(28) (1)〜(25)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料を用いて、1)発色反応、2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応、3)潜像発色−発色体増感重合反応、4)消色反応、5)残存消色色素潜像−潜像増感重合反応のいずれかの方法により、A)屈折率変調、B)吸収率変調、C)発光能変調のいずれかを起こして2光子記録を行うことを特徴とする(1)〜(25)記載の2光子吸収光記録方法。
(29) 2光子吸収化合物の2光子吸収を利用した記録が書き換えできない方式であることを特徴とする(1)〜(25)記載の2光子吸収光記録材料、(26)もしくは(27)記載の2光子吸収光記録再生方法、または(28)記載の2光子吸収光記録方法。
(30) (28)記載の、2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応により2光子記録する方法において、少なくとも、2光子吸収化合物とは吸収形の異なる発色体を2光子吸収露光により潜像として生成する第1の工程と、その発色体潜像に2光子吸収化合物線形(1光子)吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域の光を照射して発色体の線形吸収を起こすことにより発色体を自己増感増幅生成して、屈折率差、吸収率差または発光強度差として形成して記録する第2の工程を有し、それらを乾式処理にて行うことを特徴とする(28)記載の2光子記録方法。
(31) (28)記載の1)発色反応または2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応により2光子記録が可能である化合物群として、少なくとも、
1)2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、
2)2光子吸収化合物励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより発色反応し、屈折率差、吸収率差または発光強度差を記録することができる記録成分、及び
3)塩基性部位またはカチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマー、
を含むことを特徴とする2光子吸収光記録材料。
(32) (28)記載の、3)潜像発色−発色体増感重合反応による2光子吸収光記録方法において、少なくとも、2光子吸収化合物とは吸収形の異なる発色体を2光子吸収露光により潜像として生成する第1の工程と、その発色体潜像に2光子吸収化合物線形(1光子)吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域の光を照射して発色体の線形吸収を起こすことにより発色体を自己増感増幅生成して、屈折率差、吸収率差または発光強度差として形成して記録する第2の工程を有し、それらを乾式処理にて行うことを特徴とする(28)記載の2光子吸収光記録方法。
(33) (32)記載の2光子記録方法が可能な化合物群として、少なくとも、
1)第1の工程にて2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、
2)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、または第2の工程にて発色体励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体群、
3)第2の工程にて発色体励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、重合性化合物の重合を開始することができる重合開始剤、
4)重合性化合物、及び
5)塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマー、
を有することを特徴とする2光子吸収光記録材料。
【0014】
(34) (28)記載の、4)色素消色反応により2光子記録が可能な化合物群にて、少なくとも、
1)2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、
2)記録成分として消色性色素、または消色剤前駆体及び消色性色素、及び
3)塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマー
を有し、2光子吸収化合物が2光子吸収により励起状態を生成した後、消色性色素へ直接エネルギー移動または電子移動して消色性色素を消色することにより、または消色剤前駆体へエネルギー移動または電子移動することにより消色剤前駆体から消色剤を発生させ、その消色剤が消色性色素を消色することにより、屈折率変調により干渉縞を形成することを特徴とする2光子吸収光記録材料。ここで、消色剤前駆体はラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤、求核剤発生剤、求電子剤発生剤、三重項酸素のいずれかである。
(35) (28)記載の、5)残存消色色素潜像−潜像増感重合反応による2光子記録方法にて、2光子吸収化合物が2光子吸収により励起状態を生成した後、(34)記載の消色性色素へ直接エネルギー移動または電子移動して消色性色素を消色することにより、または消色剤前駆体とエネルギー移動または電子移動することにより消色剤前駆体から消色剤を発生させ、その消色剤が消色性色素を消色することにより、消色されなかった残存消色性色素を潜像とする第1の工程と、その残存消色性色素潜像に2光子記録波長とは異なる波長の光を照射することにより、エネルギー移動または電子移動により重合開始剤を活性化させて重合を起こし、屈折率変調として記録する第2の工程を有することを特徴とする(28)記載の2光子吸収光記録方法。
(36) (34)または(35)記載の2光子記録方法が可能な化合物群として、少なくとも、
1)第1の工程にて2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、
2)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、直接エネルギー移動または電子移動する結果、または消色剤前駆体へエネルギー移動または電子移動することにより消色剤を発生させる結果、消色することができる2光子記録波長のモル吸光係数が1000以下の消色性色素、
3)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、第2の工程にて残存消色性色素励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、重合性化合物の重合を開始することができる重合開始剤(場合により6)の消色剤前駆体を兼ねる)、
4)重合性化合物、及び
5)塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマー、を含むことを特徴とする2光子吸収光記録材料。
なお、2)にて消色剤前駆体にエネルギー移動または電子移動する場合は、
6)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、電子移動またはエネルギー移動することにより消色剤を発生することができる消色剤前駆体を含むことを特徴とする2光子吸収光記録材料。
(37) 2光子吸収光記録材料に含まれる2光子吸収化合物が、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素、アゾ色素または下記一般式(1)にて表されることを特徴とする、(1)〜(25)、(29)、(31)、(33)、(34)、(36)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
一般式(1)
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R101、R102、R103及びR104のうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。n101およびm101はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、n101およびm101が2以上の場合、複数個のR101、R102、R103及びR104は同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n101、m101同時に0となることはない。X101およびX102は独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)
【0017】
【化2】

【0018】
式中、R105は水素原子または置換基を表し、R106は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Z101は5または6員環を形成する原子群を表す。
(38) (37)にて、シアニン色素が下記一般式(3)にて、メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、(37)記載の2光子吸収光記録材料。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり、ka、及びkaはそれぞれ0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは0〜8の整数を表わし、kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
(39) (26)または(27)記載の2光子吸収光記録再生方法から成る2光子吸収3次元光記録再生方法。
(40) (1)〜(25)、(29)、(31)、(33)、(34)、(36)〜(38)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料から成る2光子吸収3次元光記録媒体。
(41) (1)〜(25)、(29)、(31)、(33)、(34)、(36)〜(38)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料が保存時に遮光カートリッジ内に保存されていることを特徴とする2光子吸収光記録媒体。
(42) (1)〜(25)、(29)、(31)、(33)、(34)、(36)〜(38)のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことを特徴とする2光子吸収光記録方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の2光子吸収光記録材料を用いることで、レーザー焦点部(記録部)と非焦点部(非記録部)にて屈折率または吸収率を3次元的に変調でき、その結果光の反射率または透過率を変えることができて3次元光記録媒体及びその記録再生方法に応用が可能である。特に本発明の2光子吸収光記録材料は公知の材料に比べて高感度かつ記録の暗保存性に優れた3次元光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の2光子吸収光記録再生方法及び2光子吸収光記録材料について詳しく説明する。
【0023】
本発明の2光子吸収光記録材料は、少なくとも、2光子吸収により励起状態を生成する2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物励起状態から電子移動もしくはエネルギー移動することにより発色反応もしくは消色反応を起こし、その結果屈折率変調または吸収率変調による記録を行うことができる記録成分と、塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーとを含む2光子吸収光記録材料である。
まず、本発明の塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーについて詳しく説明する。
【0024】
前記ポリマーは好ましくは主鎖と側鎖からなり、側鎖に塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを有することが好ましく、アニオンの場合は下記一般式(7)、カチオンの場合は下記一般式(8)、塩基性部位を含むアミンの場合は下記一般式(9)にて表されることが好ましい。
【0025】
【化4】

【0026】
一般式(7)、(8)、(9)中、A、Bは各々独立にポリマーの主鎖を表す。Rは置換基を表し、Rは連結基を表す。Pはアニオン性置換基を表し、Qはカチオン性置換基を表す。Tは塩基性部位を含む基を表す。ZはPの対塩となるカチオン性イオンを、WはQの対塩となるアニオン性イオンをそれぞれ表す。それぞれについて以下に詳しく説明する。
【0027】
一般式(8)にてカチオン性置換基Qは好ましくは、1級・2級・3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩、またはヘテロ環を含む塩などを含む基である。ここで、1級・2級・3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩の場合窒素原子と結合する置換基はどのような置換基であっても良いが、好ましくは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数(C数)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルコキシアルキル基(好ましくはC数2〜20、例えばメトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシプロピル、エトキシヘキシル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル、2−ニトロフェニル)、または複素環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基が挙げられる。カチオン性置換基Qは4級アンモニウム塩を含む基であることがより好ましい。
【0028】
一方、カチオン性置換基Qがヘテロ環を含む塩を含む基である時は、以下に挙げたような基であることが好ましい。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
カチオン性置換基Qがヘテロ環を含む塩を含む基である時は、さらに好ましくは、C−1、C−4、C−6、C−8、C−16、C−17、C−18、C−21、C−30、C−36、またはC−39である。
【0032】
一般式(8)にて、WはQの対塩となるアニオン性イオンを表し、好ましくはクロリド、ブロミド、ヨージド、アニオン性置換基をもつ芳香族分子(好ましくは例えばトルエンスルホネート、トルエンカルボキシレート、フェニルカルボキシレート)、メチルスルホネート、トリフルオロカルボキシレート基等である。
【0033】
一般式(7)にて、Pはアニオン性置換基をあらわし、好ましくはカルボキシル基、スルホ基、−OSO−基、−OP(O)(OR)O−基、−P(O)(OR)O−基、フェノキシ基などを表し、より好ましくはカルボキシル基またはスルホ基を表す。ここで、R、Rは好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、非共有電子対のいずれかを表し、水素原子または非共有電子対のいずれかであることが好ましい。
【0034】
一般式(7)にて、ZはPの対塩となるカチオン性イオンを表し、好ましくは金属イオン(好ましくは例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなど)、アンモニウムイオンなどが挙げられる。さらにアンモニウムイオンの場合、4級アンモニウムイオン(好ましくは例えば、テトラブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム)、3級アンモニウムイオン(好ましくは例えば、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリベンジルアンモニウム)、2級アンモニウムイオン(ジエチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジベンジルアンモニウム)、アンモニウムイオンなどが好ましく挙げられる。
【0035】
一般式(9)にてTは塩基性部位を含む基を表し、好ましくは1級・2級・3級アミン、もしくはヘテロ環を含む基を表す。
Tは好ましくは、−NR1112で表される。R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルコキシアルキル基(好ましくはC数2〜20、例えばメトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシプロピル、エトキシヘキシル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル、2−ニトロフェニル)、または複素環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)を表し、より好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基である。R11とR12は連結してヘテロ環を形成してもよい。形成するヘテロ環として好ましくは、以下の基が挙げられる。
【0036】
【化7】

【0037】
上記のうちより好ましくはB−1、B−4、B−10、B−11、B−13、B−14、B−16、B−17、B−18、B−19であり、さらに好ましくはB−1、B−10、B−11、B−13、B−16、B−19である。
【0038】
一般式(7)、(8)、(9)にて、Rは置換基を表し、置換基として好ましい例は例えば、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル、2−ニトロフェニル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含む、好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル、3,5−ジメトキシベンゾイル、4−メトキシベンゾイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、またはカルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、であり、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基を表し、さらに好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、またはアシルオキシ基である。
【0039】
一般式(7)、(8)、(9)にて、Rは連結基を表し、連結基として好ましい例は例えば、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル、2−ニトロフェニル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含む、好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル、3,5−ジメトキシベンゾイル、4−メトキシベンゾイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、またはカルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)それぞれから水素原子を単結合に変更した基であり、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基それぞれから水素原子を単結合に変更した基を表し、さらに好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、またはアシルオキシ基それぞれから水素原子を単結合に変更した基である。
【0040】
一般式(7)、(8)、(9)のA、Bはそれぞれポリマーの主鎖を表しており、側鎖R、Rも含めた形でのこれらの好ましい例としては、アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル及び共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸及びテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸、(3)テレフタル酸及びセバシン酸、(4)テレフタル酸及びイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコール及び(i)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸及び(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、炭酸エステルとビスフェノールから成るポリカーボネートなどが挙げられる。
【0041】
前記ポリマーの重量平均分子量は、1000以上1000万以下が好ましく、5000以上100万以下がより好ましい。
前記ポリマーの特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
本発明の塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマーは、バインダーポリマーを兼ねてもよく、あるいは別途バインダーポリマー(好ましい例は後述)を兼ねてもよい。
【0053】
本発明の2光子吸収光記録再生方法としては、2光子吸収化合物を有する2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して屈折率変調または吸収率変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率の違いを検出することにより再生する方法が好ましい。
その場合は、2光子吸収光記録材料は2光子を高効率で吸収する2光子吸収光記録層と2光子をほとんど吸収しない中間層とが多層構造となっていることが好ましい。
また一方で、2光子吸収化合物を有する2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して発光能変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生する方法が好ましい。
その際発光は蛍光でもりん光でも良いが、蛍光であることが発光効率の点で好ましい。
【0054】
なお、本発明の2光子吸収光記録材料は、湿式処理を行わないことが好ましい。
本発明の2光子吸収光記録材料は、書き換えできない方式であることが好ましい。なおここで、書き換えできない方式とは、不可逆反応により記録される方式であり、一度記録されたデータは、さらに上書き記録して書き換えしようとしても書き換えされることなく保存できる方式を示す。したがって重要でかつ長期保存が必要なデータの保存に適する。ただし無論、まだ記録されていない領域に新たに追記して記録していくことは可能である。そのような意味で、一般には「追記型」または「ライトワンス型」と呼ばれる。
【0055】
本発明の2光子吸収光記録材料としては、2光子吸収化合物を有し、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して、1)発色反応、2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応、3)潜像発色−発色体増感重合反応、4)消色反応、5)残存消色色素潜像−潜像増感重合反応、のいずれかの方法により、A)屈折率変調、B)吸収率変調、C)発光能変調のいずれかを起こすことにより記録を行うことを特徴とする2光子吸収光記録材料が好ましい。
【0056】
本発明の2光子吸収光記録材料の記録にはレーザーを用いることが好ましい。本発明に用いる光は好ましくは波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかであり、より好ましくは波長300〜1000nmの紫外光、可視光または赤外光であり、さらに好ましくは400〜800nmの可視光または赤外光である。
用いることができるレーザーは特に限定されないが、具体的には、中心波長1000nm付近に発振波長を有するTi−サファイア等の固体レーザーやファイバーレーザー、780nm付近の発振波長を有するCD−Rなどでも用いられている半導体レーザーや固体レーザー、ファイバーレーザー、620〜680nmの範囲の発振波長を有するDVD−Rなどでも用いられているAlGaInP等の半導体レーザーや固体レーザー、400〜415nm付近の発振波長を有するGaNやInGaN等の半導体レーザーなどを好ましく用いることができる。
また他にも、可視光域に発振波長を有するYAG・SHGレーザーなどの固体SHGレーザー、半導体SHGレーザーなども好ましく用いることができる。
本発明に用いるレーザーはパルス発振レーザーであってもCWレーザーであっても良い。
【0057】
なお、本発明の2光子吸収光記録材料に記録を行う際は、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形(1光子)吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、線形吸収がないことが最も好ましい。
【0058】
再生の際使用する光は、例えば上記レーザー光であることが好ましい。また、パワーまたはパルス形状は同じか異なるものの、記録時と同じ波長のレーザーを用いて再生することがより好ましい。
また、再生の際使用する光として、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなども挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
【0059】
本発明の2光子吸収光記録材料にて、記録により生成する反応部または発色部の大きさは10nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜5μmの範囲であることがより好ましく、50nm〜2μmの範囲であることがさらに好ましい。
また、記録材料の再生を可能にするためには、反応部または発色部の大きさは照射光波長の1/20〜20倍の大きさであることが好ましく、1/10〜10倍の大きさであることがより好ましく、1/5〜5倍の大きさであることが最も好ましい。
【0060】
本発明の2光子吸収光記録材料においては、2光子記録の後に、光(通常の1光子)または熱、あるいはその両方により定着工程を行っても良い。
特に本発明の2光子吸収光記録材料に酸増殖剤または塩基増殖剤を用いる場合、酸増殖剤または塩基増殖剤を有効に機能させる点においても定着に加熱を用いることが好ましい。
光定着の場合は、2光子吸収光記録材料全域に紫外光または可視光を全面照射する。用いる光源として好ましくは、可視光レーザー、紫外光レーザー、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどが挙げられる。
なお、光定着の光源に記録に用いるレーザーをそのまま、あるいはパワー、パルス、集光度、波長などを変えて用いることも好ましい。
熱定着の場合は、好ましくは40℃〜160℃、より好ましくは60℃〜130℃にて定着工程を行うことが好ましい。
光定着と熱定着を両方行う際は、光と熱を同時に加えても、光と熱を別々に加えてもよい。
【0061】
なお、本発明の2光子吸収光記録材料において、2光子吸収を行うことにより起こる化学反応、発色反応等は熱分解によらない反応、すなわちフォトンモードにて起こることが特に高感度化の点で好ましい。
すなわち、既存のCD−RやDVD−Rにて実用されている方法とは異なる機構で記録することが、特に記録材料における書き込み転送速度を考える際に好ましい。
【0062】
本発明の2光子吸収光記録再生方法は、DVD−R、DVD−BL(BD)のような光記録再生方法、近接場光記録再生方法、3次元光記録再生方法、3次元ボリュームディスプレイ記録再生方法等に用いることが好ましいが、より好ましくは3次元光記録再生方法に用いることが好ましい。すなわち、本発明の2光子吸収光記録再生方法は、2光子吸収3次元光記録再生方法または2光子吸収3次元ボリュームディスプレイ記録再生方法に用いることが好ましい。
同様に、本発明の2光子吸収光記録材料は、DVD−R、DVD−BL(BD)のような光記録媒体、近接場光記録媒体、3次元光記録媒体、3次元ボリュームディスプレイ記録材料等に用いることが好ましいが、より好ましくは3次元光記録材料、媒体に用いることが好ましい。すなわち、本発明の2光子吸収光記録材料は、2光子吸収3次元光記録媒体または2光子吸収3次元ボリュームディスプレイ記録材料に用いることが好ましい。
【0063】
なお、本発明の2光子吸収光記録材料を光記録媒体に用いる際は、保存時2光子吸収光記録材料は遮光カートリッジ内に保存されていることが好ましい。また、記録光及び再生光波長以外の紫外光、可視光、赤外光の波長域の一部をカットすることができる遮光フィルターを2光子吸収光記録材料の表面、裏面またはその両面に備え付けていることも好ましい。
【0064】
本発明の2光子吸収光記録材料を光記録媒体に用いる際は、光記録媒体はディスク状でもカード状でもテープ状であっても良く、その他いかなる形状であっても良い。
【0065】
また、本発明の2光子吸収化合物及び2光子吸収光記録材料は3光子以上の多光子吸収を行っても構わない。
【0066】
本発明の2光子吸収光記録材料は2光子吸収化合物を含む。まず、本発明の2光子吸収光記録材料に用いる2光子吸収化合物について詳しく説明する。
【0067】
本発明の2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。
2光子吸収光記録材料、特に2光子吸収3次元光記録材料に応用する際は、速い転送(記録)速度達成のために、高感度にて2光子吸収を行って励起状態を効率良く生成することができる2光子吸収化合物が必要である。
2光子吸収化合物が2光子吸収を行う効率は2光子吸収断面積δで表され、1GM=1×10-50cms/photonで定義される。本発明の2光子吸収光記録材料における2光子吸収化合物の2光子吸収断面積δは100GM以上であることが、書き込み速度向上、レーザー小型化・安価化等の点で好ましく、1000GM以上であることがより好ましく、5000GM以上であることがより好ましく、10000GM以上であることが最も好ましい。
【0068】
本発明の2光子吸収化合物は好ましくは有機化合物である。
2光子吸収化合物として好ましくは、波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを2光子吸収して励起状態を生成するものであり、より好ましくは波長400〜1100nmの可視光または赤外光を吸収して励起状態を生成するものであり、さらに好ましくは400〜800nmの可視光または赤外光を吸収して励起状態を生成するものである。
【0069】
本発明の2光子吸収化合物は、波長200〜1000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかに線形吸収を有すること、つまり色素であることが好ましく、波長200〜700nmの紫外光、可視光のいずれかに線形吸収を有することがより好ましい。
【0070】
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
【0071】
本発明における2光子吸収化合物としてはいかなるものでも良いが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、アントラキノン色素、キノン色素、トリフェニルメタン色素、ジフェニルメタン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、フルオレノン色素、ジアリールエテン色素、スピロピラン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、ポルフィリン色素、アザポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、縮環芳香族系色素、スチレン系色素、メタロセン色素、金属錯体色素、フェニレンビニレン色素、またはスチルバゾリウム色素であり、より好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、アゾ色素、ポリエン色素、アザポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、または金属錯体色素であり、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素、またはフタロシアニン色素であり、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、またはオキソノール色素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
【0072】
本発明の2光子吸収化合物がシアニン色素の時、好ましくは一般式(3)にて表わされる。
【0073】
一般式(3)中、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わす。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下C数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−エチルオキサゾリル、2−3−スルホプロピルオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトオキサゾリル、2−3−エチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−5−クロロ−3−エチル−α−ナフトオキサゾリル、2−5−クロロ−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−5−クロロ−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5、6−ジクロロ−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−フェニルベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−5−(1−ピロリル)−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5,6−ジメチル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−スルホベンゾオキサゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−5−クロロ−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−クロロ−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−ヨードベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−5、6−ジクロロ−3−エチル−1−スルホプロピルベンゾイミダゾリル、2−5−クロロ−6−シアノ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−5−クロロ−1,3−ジエチル−6−トリフルオロメチルベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、C数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチル−1−ペンチルインドレニン、3,3、−ジメチル−1−スルホプロピルインドレニン、5−カルボキシ−1、3,3−トリメチルインドレニン、5−カルバモイル−1、3,3−トリメチルインドレニン、1,3,3,−トリメチル−4,5−ベンゾインドレニンなどが挙げられる)、C数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−エチルキノリル、2−1−スルホブチルキノリル、4−1−ペンチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、などが挙げられる)、C数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、C数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、及びピリミジン核を挙げることができる。
【0074】
これらは置換されても良く、置換基として好ましくは例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキニル基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、イミノ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイルアミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0075】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0076】
Za及びZaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、またはインドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、イミダゾール核、またはインドレニン環であり、最も好ましくはオキサゾール核であり、特にベンゾオキサゾール環が好ましい。
【0077】
Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、またはヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0078】
Ma〜Maはそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Maは無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Maは互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0079】
na及びnaは0または1であり、好ましくは共に0である。
kaは0〜3の整数を表わし、より好ましくはkaは0〜2を表し、さらに好ましくはkaは1または2を表す。
kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよい。
【0080】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0081】
本発明の2光子吸収化合物がメロシアニン色素の時、好ましくは一般式(4)で表わされる。
【0082】
一般式(4)中、Zaは5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa、Zaと同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ))、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
【0083】
Zaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、またはインドレニン環であり、さらに好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール環、またはインドレニン環である。
【0084】
Zaは5員または6員環を形成する原子群を表わす。Zaから形成される環は一般に酸性核と呼ばれる部分であり、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。Zaとして好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a 〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられる。
Zaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピ ラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、またはクマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくは、ピラゾリジン−3,5−ジオン、インダン−1,3−ジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、または2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはピラゾリジン−3,5−ジオン、バルビツール酸、または2−チオバルビツール酸である。
【0085】
Zaから形成される環は置換されても良く、(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0086】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0087】
Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基であり(以上好ましい例はRa、Raと同じ)、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0088】
Ma〜Ma11はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Ma11は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、またはメチル基置換のメチン基である。
Ma〜Ma11は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0089】
naは0または1であり、好ましくは0である。
kaは0〜8の整数を表わし、好ましくは0〜4の整数を表し、より好ましくは1〜3の整数を表す。
kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
【0090】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0091】
本発明の2光子吸収化合物がオキソノール色素の時、好ましくは一般式(5)で表わされる。
【0092】
一般式(5)中、Za及びZaは各々5員または6員環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZaと同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za及びZaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、またはクマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくはバルビツール酸、または2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはバルビツール酸である。
【0093】
Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わし、置換基を有していても良く、(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、カルボキシ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
Ma12〜Ma14は無置換メチン基であることが好ましい。
Ma12〜Ma14は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0094】
kaは0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2までの整数を表し、より好ましくは1または2を表す。
kaが2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
【0095】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0096】
また、本発明の化合物は一般式(1)にて表されることも好ましい。
【0097】
一般式(1)において、R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。R101、R102、R103及びR104として好ましくは水素原子またはアルキル基であり、R101、R102、R103及びR104のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、R101とR103が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0098】
一般式(1)において、n101およびm101はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n101、m101同時に0となることはない。n101およびm101が2以上の場合、複数個のR101、R102、R103およびR104は同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0099】
101およびX102は独立に、アリール基[好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa〜Maの置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(2)で表される基を表す。
【0100】
一般式(2)中、R105は水素原子または置換基(好ましい例はR101〜R104と同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
106は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR101〜R104と同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
【0101】
101は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、またはピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、またはキノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、またはベンゾイミダゾール環である。
101により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ)、置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0102】
101およびX102として好ましくはアリール基または一般式(2)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(2)で表される基で表される。
【0103】
本発明の2光子吸収化合物は水素結合性基を分子内に有することも好ましい。ここで水素結合性基とは、水素結合における水素を供与する基または水素を受容する基を表し、そのどちらの性質も有している基がより好ましい。本発明の水素結合性基としては、−COOH、−CONHのいずれかが好ましい。
【0104】
本発明の2光子吸収化合物はモノマー状態で用いても良いが、会合状態で用いても良い。ここで、色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J会合体を形成することがより好ましい。
【0105】
会合状態を取っているかどうかは、前記の通りモノマー状態からの吸収(吸収λmax、ε、吸収形)の変化により確認することができる。
本発明の2光子吸収化合物は、分子間会合状態で用いても、2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて2光子吸収を行う状態で用いても良い。
【0106】
化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。
例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10-4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10-3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合、または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
分子間会合に関与する化合物数は2個であっても、非常に多くの化合物数であっても良い。
【0107】
以下に、本発明で用いられる2光子吸収化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
【化18】

【0109】
【化19】

【0110】
【化20】

【0111】
【化21】

【0112】
【化22】

【0113】
【化23】

【0114】
【化24】

【0115】
【化25】

【0116】
【化26】

【0117】
【化27】

【0118】
【化28】

【0119】
【化29】

【0120】
他の2光子吸収化合物の好ましい例、2光子吸収化合物の合成例としては、特開2004−123668号、特開2004−224864号、特開2003−183213号、特開2005−25152号、特開2004−279795号、特開2004−279794号、特開2004−250545号、特開2004−279646号、特開2004−339435号、特開2004−341425号、特開2004−126440号、特開2004−149517号、特開2005−71570号等に記載されている。
【0121】
先述したように、本発明の2光子吸収光記録材料としては、2光子吸収化合物を有し、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して、1)発色反応、2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応、3)潜像発色−発色体増感重合反応、4)消色反応、5)残存消色色素潜像−潜像増感重合反応、のいずれかの方法により、A)屈折率変調、B)吸収率変調、C)発光強度変調のいずれかを起こすことにより記録を行うことが好ましい。
そこで次に、A)屈折率変調、B)吸収率変調、C)発光強度変調のいずれかを起こすための1)〜5)の好ましい記録方法について説明していく。
ここで、A)屈折率変調による記録は、上記1)〜5)のどの方法によっても記録することができる。B)吸収率変調及びC)発光強度による記録は、1)2)4)の方法により記録することができる。
なおA)屈折率変調による2光子吸収光記録材料及び2光子吸収光記録方法に関しては、特開2004−346238号、特開2005−71570号、特開2005−100599号、特開2005−97538号、特開2005−92074号、特開2005−55875号、特願2004−264202号、特開2005−37658号、特開2005−85350号に記載されている例が好ましく用いられ、B)吸収率変調による2光子吸収光記録材料及び2光子吸収光記録方法に関しては、特開2005−71570号、特開2005−100599号、特開2005−55875号、特願2004−264202号、に記載されている例が好ましく用いられ、C)発光強度変調による2光子吸収光記録材料及び2光子吸収光記録方法に関しては、特開2005−100606号に記載されている例が好ましく用いられる。
【0122】
以下に上記の各記録方法について説明する。
【0123】
1)発色反応による記録
【0124】
本発明にて発色反応とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域にて
、吸収スペクトル形が変化するような反応を示し、より好ましくは吸収スペクトルにおいてλmaxが長波長化、εが増大のいずれかが起こるような反応を示し、さらに好ましくはその両方が起こるような反応を示す。また、発色反応は200〜1000nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜900nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
【0125】
記録が発色反応による場合は、好ましくは、
少なくとも、
1)2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、
2)2光子吸収化合物励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより発色反応し、屈折率差、吸収率差または発光強度差を記録することができる記録成分、
3)さらにバインダーを含むのが好ましく、バインダーは本発明の塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーを兼ねてもよく、それとは別にバインダーポリマーを併用(好ましい例は後述)してもよい。
なお、バインダーポリマーの好ましい例としては特開2005−71570号、特開2005−99751号に記載されている例が挙げられる。
さらに、その記録成分は、2光子吸収化合物励起状態からの電子移動またはエネルギー移動により、元の状態から吸収が長波長化した発色体となることができる色素前駆体を含むことがより好ましい。
【0126】
ここで、色素の屈折率は一般に、線形吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては1.8を超え、場合によっては2を超えるような高い値をとる。その一方で、バインダーポリマー等の色素ではない有機化合物は通常1.4〜1.6程度の屈折率である。
よって、2光子吸収化合物の2光子吸収により色素前駆体を発色させることは、吸収率差だけでなく、大きな屈折率差も好ましく形成できることがわかる。
本発明の2光子吸収光記録材料において屈折率差を用いて記録する場合は、記録成分から形成される色素の屈折率は再生に用いるレーザー波長付近で最大となることが好ましい。
また、発光強度差を用いて記録する場合は、発色体と色素前駆体にて、再生時にある波長の光を照射した際の発光強度の差があることが好ましい。
【0127】
記録成分として好ましくは、以下の組み合わせが挙げられる。これらについては、具体例として好ましくは、特開2005−71570号に記載されている例が挙げられる。
【0128】
i)少なくとも色素前駆体としての酸発色型色素前駆体と、さらに酸発生剤を含む組み合わせ。必要によりさらに酸増殖剤を含む組み合わせ。
酸発生剤としてはジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、金属アレーン錯体、トリハロメチル置換トリアジン、スルホン酸エステルが好ましく、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、スルホン酸エステルがより好ましい。
酸発色型色素前駆体から生成する発色体はキサンテン色素、フルオラン色素またはトリフェニルメタン色素が好ましい。
酸発色型色素前駆体の特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0129】
【化30】

【0130】
また、本発明の酸発色型色素前駆体としては、酸(プロトン)付加により発色するシアニンベース(ロイコシアニン色素)も好ましく用いられる。シアニンベースの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0131】
【化31】

【0132】
なお本発明の2光子吸収光記録材料においては前記酸発色型色素前駆体が前記発色反応を起こし色素となった後に前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする。
ii)少なくとも色素前駆体としての塩基発色型色素前駆体と、さらに塩基発生剤含む組み合わせ、必要によりさらに塩基増殖剤を含む組み合わせ。
塩基発生剤としては、後述の塩基発生剤(アニオン重合開始剤)が好ましく挙げられ、塩基発色型色素前駆体としては、解離型アゾ色素、解離型アゾメチン色素、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン色素、解離型フルオラン色素、解離型トリフェニルメタン型色素の非解離体が挙げられる。
塩基発色型色素前駆体の特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれ に限定されるわけではない。
【0133】
【化32】

【0134】
【化33】

【0135】
【化34】

【0136】
なお本発明の2光子吸収光記録材料においては前記塩基発色型色素前駆体が前記発色反応を起こし色素となった後に前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする。
iii)2光子吸収化合物励起状態との電子移動またはエネルギー移動により共有結合を切断する機能を有する有機化合物部位と、共有結合している際と放出された際に発色体となる特徴を有する有機化合物部位が共有結合している化合物を含む場合。必要によりさらに塩基を含む組み合わせ。
さらに上記化合物は、下記一般式(6)にて表される発色色素前駆体であることが好ましい。
一般式(6)
A1−PD
一般式(6)中、A1とPDは共有結合しており、A1は2光子吸収化合物励起状態との電子移動またはエネルギー移動によりPDとの共有結合を切断する機能を有する部位であり、PDはA1との共有結合が切断されて放出された際に発色反応を起こすことができる部位を表す。
以下に特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0137】
【化35】

【0138】
【化36】

【0139】
【化37】

【0140】
なお、本発明の2光子吸収光記録材料においては前記PDがA1との共有結合が切断されて放出された際に前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする。
また、塩基として好ましくは、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、トリベンジルアミン、テトラベンジルエチレンジアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。
【0141】
iV) 2光子吸収化合物励起状態との電子移動により反応し、吸収形を変化させることができる化合物を含む場合。いわゆるエレクトロクロミック化合物を好ましく用いることができる。
【0142】
2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応による記録
【0143】
好ましくは、少なくとも、2光子吸収化合物とは吸収形の異なる発色体を2光子吸収露光により潜像として生成する第1の工程と、その発色体潜像に2光子吸収化合物線形(1光子)吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域の光を照射して発色体の線形吸収を起こすことにより発色体を自己増感増幅生成して、屈折率差、吸収率差または発光強度差として形成して記録する第2の工程、を有する2光子吸収光記録方法であり、高速書き込み、高S/N比再生等の点で好ましい。
【0144】
なお、ここで「潜像」とは、「第2の工程後形成される屈折率差、吸収率差または発光強度差の好ましくは2分の1以下の屈折率差、吸収率差または発光強度差」のこと(つまり好ましくは第2の工程にて2倍以上の増幅工程が行われること)を示し、より好ましくは5分の1以下、さらに好ましくは10分の1以下、最も好ましくは30分の1以下の屈折率、吸収率または発光強度差画像であること(つまり第2の工程にてより好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上、最も好ましくは30倍以上の増幅工程が行われること)を示す。
【0145】
ここで、第2の工程は光照射、熱印加のいずれかまたはその両方であることが好ましく、光照射であることがより好ましく、照射する光は全面露光(いわゆるベタ露光、ブランケット露光、ノンイメージワイズ露光)であることが好ましい。
用いる光源として好ましくは、可視光レーザー、紫外光レーザー、赤外光レーザー、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどが挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
【0146】
さらに、そのような2光子記録方法が可能である2光子吸収光記録材料として、
少なくとも、
1)第1の工程にて2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、
2)元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物線形吸収と異なる波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体を含み、かつ2光子吸収化合物または発色体励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより屈折率差、吸収率差または発光強度差として記録することができる記録成分、
3)さらにバインダーを含むのが好ましく、バインダーは本発明の塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーを兼ねてもよく、それとは別にバインダーポリマーを併用(好ましい例は後述)してもよい。
なお、バインダーポリマーの好ましい例としては特開2005−71570号、特開2005−99751号に記載されている例が挙げられる。
記録成分として好ましい例は、1)発色反応の所で述べた例と同じである。
なお、第2の工程にて照射する光の波長域では、2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。
また、第2の工程にて照射する光の波長域では、発色体のモル吸光係数が1000以上であることがより好ましい。
【0147】
以下に「潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応方式」の概念を説明する。
例えば、780nmのレーザーを2光子吸収光記録材料に照射し、2光子吸収化合物に2光子吸収させ励起状態を生成させる。その2光子吸収化合物励起状態から記録成分にエネルギー移動または電子移動させることにより、記録成分に含まれる色素前駆体を発色体に変化させて発色による潜像を形成する(以上第1の工程)。次に680〜740nmの波長域の光を照射して、発色体の線形吸収を起こし、発色体の自己増感により発色体を増幅生成させる(以上第2の工程)。第1の工程にてレーザー焦点部でない未記録部では潜像が生成しないため第2の工程においても自己増感発色反応はほとんど起きず、その結果記録部と非記録部にて大きな屈折率変調、吸収率変調または発光強度変調を形成することができる。例えば780nmのレーザーを再び用い、記録を行った2光子吸収光記録材料に照射すると、記録部と非記録部との大きな屈折率の違いに基く光の反射率または透過率差による再生が可能となり、780nm光記録再生による2光子吸収(3次元)光記録媒体を与えることができる。
【0148】
潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応の具体例として好ましくは、特開2005−100599号に記載されている例が挙げられる。
【0149】
3)潜像発色−発色体増感重合反応による記録
【0150】
好ましくは、少なくとも、潜像としての発色体を2光子吸収により生成する第1の工程と、その発色体潜像に光を照射して発色体の線形吸収に基づく重合を起こすことにより、屈折率差を形成して記録する第2の工程を有することを特徴とする2光子吸収光記録方法であり、高速書きこみ、保存性等に優れる。
なお、第2の工程にて、発色体を自己増感増幅生成しつつかつ重合を起こす方法も好ましい。
【0151】
さらに、そのような2光子吸収記録方法が可能である化合物群として、
少なくとも、
1)第1の工程にて2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、と、2)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、または第2の工程にて発色体励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体群、
3)第2の工程にて発色体励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、重合性化合物の重合を開始することができる重合開始剤、
4)重合性化合物、
5)塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマー
を含むことが好ましい。
また、さらに後述するようなバインダーポリマーを含むことも好ましい。
記録成分として好ましい例は、1)発色反応の所で述べた例と同じである。
以下に、重合開始剤、重合性化合物、バインダーとして好ましい例を述べる。
【0152】
本記録方式では、重合性化合物とバインダーの屈折率が異なり、非共鳴2光子 吸収により起こる光重合によって、レーザー焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こることにより、屈折率変調を行う方式であることが好ましい。なおここでいうバインダーとは、塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマーであっても、後述する一般のバインダーポリマーであっても、その併用であっても良い。
【0153】
バインダーは重合性化合物と屈折率が違うことが好ましい。屈折率変調を大きくするためには重合性化合物とバインダーのバルクでの屈折率差は大きいことが好ましく、屈折率差は0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
そのためには、重合性化合物またはバインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことが好ましい。なお、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくても、どちらでも構わない。
【0154】
本発明の重合性化合物とは、2光子吸収化合物(または発色体)と重合開始剤に光を照射することにより発生したラジカル、酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)または塩基(ブレンステッド塩基またはルイス塩基)により、付加重合を起こしてオリゴマーまたはポリマー化が可能な化合物のことである。
本発明の重合性化合物としては、単官能性でも多官能性でも良く、一成分でも多成分でも良く、モノマー、プレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー)でもこれらの混合物でもいずれでも良いが、モノマーであることが好ましい。
また、その形態は、室温において液状であっても固体状であっても良い。
【0155】
本発明の重合性化合物は、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオンまたはアニオン重合可能な重合性化合物に大別される。
以下に、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオンまたはアニオン重合可能な重合性化合物ごとに、A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合と、B)屈折率:バインダー>重合性化合物、の場合にわけて好ましい重合性化合物の例を説明する。
【0156】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合のラジカル重合性化合物の好ましい例
【0157】
この場合、ラジカル重合性化合物は屈折率が高いことが好ましく、本発明の高屈折率ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有し、さらに少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含む化合物が好ましく、また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
【0158】
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0159】
高屈折率ラジカル重合性モノマーとして好ましくは、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート又はジメタクリレート、ビスフェノール−Aのジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−Aのジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−Aのジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、などが挙げられ、より好ましくはアクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチルなどが挙げられる。
【0160】
好ましい重合性化合物は液体であるが、それらはN−ビニルカルバゾール、アクリル酸2−ナフチル、アクリル酸ペンタクロロフェニル、アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、ビスフェノール−Aジアクリレート、アクリル酸2−(2−ナフチロキシ)エチル、並びにN−フェニルマレイミドのような第2の固体重合性化合物と混合して使用してよい。
【0161】
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の場合のラジカル重合性化合物の好ましい例
【0162】
この場合、ラジカル重合性化合物は屈折率が低いことが好ましく、本発明の低屈折率ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有し、さらにアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を一切含まないことが好ましい。
また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0163】
低屈折率ラジカル重合性モノマーとして好ましくは、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソ−ボルニル、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸1H,1H−パーフロロオクチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフロロオクチル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフロロオクチル、1−ビニル−2−ピロリジノンなどが挙げられ、より好ましくは、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロパンのトリアクリレートエステル、並びに1−ビニル−2−ピロリジンなどが挙げられ、より好ましくは、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸1H,1H−パーフロロオクチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフロロオクチル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフロロオクチル、1−ビニル−2−ピロリジンなどが挙げられる。
【0164】
好ましい重合性化合物は液体であるが、それらは、第2の固体重合性化合物モノマー、例えばN−ビニルカプロラクタム等と混合して使用してよい。
【0165】
本発明のカチオン重合性化合物は、2光子吸収化合物とカチオン重合開始剤に光照射し2光子吸収を起こすことにより発生した酸により重合が開始される化合物で、本発明のアニオン重合性化合物は、2光子吸収化合物とアニオン重合開始剤に光照射し2光子吸収を起こすことにより発生した塩基により重合が開始される化合物である。
【0166】
本発明のカチオン重合性化合物として好ましくは、オキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、スチリル基、N−ビニルカルバゾール部位を分子中に少なくとも1個、より好ましくは2個有する化合物である。より好ましくはオキシラン環部位を有する化合物である。
本発明のアニオン重合性化合物として好ましいくは、オキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、スチリル基、N−ビニルカルバゾール部位、電子吸引性置換基を備えるエチレン性二重結合部位、ラクトン部位、ラクタム部位、環状ウレタン部位、環状尿素部位、または、環状シロキサン部位を分子中に少なくとも1個有する化合物であり、より好ましくはオキシラン環部位を有する化合物である。
【0167】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合のカチオンまたはアニオン重合性化合物の好ましい例
【0168】
この場合、カチオンまたはアニオン重合性化合物は屈折率が高いことが好ましく、本発明の高屈折率カチオンまたはアニオン重合性化合物としては、少なくとも1個、好ましくは2個のオキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、スチリル基、N−ビニルカルバゾール部位を分子中に有し、さらに少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含む化合物が好ましく、少なくとも1個のアリール基を含むことが好ましい。
【0169】
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0170】
オキシラン環を有する高屈折率カチオンまたはアニオン重合性モノマーとして好ましくは、フェニルグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリメリト酸トリグリシジルエステル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、p−ブロモスチレンオキサイド、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテル、1,3−ビス(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)エチル)−1,3,−ジフェニル−1,3,−ジメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0171】
オキセタン環を有する高屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては、オキシラン環としてグリシジル基1を有する前記の高屈折率カチオン重合性モノマーの具体例のグリシジル基1を、オキセタン環を含む基2に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0172】
【化38】

【0173】
さらに、高屈折率カチオン重合性モノマーとしては以下の化合物も好ましく挙げられる。
【0174】
【化39】

【0175】
なお、オキシラン環を有するモノマーとオキセタン環を有するモノマーを併用して用いることも好ましく、その際はオキシラン環を有するモノマーに対し、5〜95質量%のオキセタン環を有するモノマーを加えることが好ましい。
【0176】
ビニルエーテル基部位を有する高屈折率カチオンまたはアニオン重合性モノマーの具体例としては例えば、ビニル−2−クロロエチルエーテル、4−ビニルエーテルスチレン、ハイドロキノンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、フェノキシエチレンビニルエーテル、p−ブロモフェノキシエチレンビニルエーテルなどが挙げられる。
【0177】
他に、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系モノマーやN−ビニルカルバゾールも高屈折率カチオン重合性モノマーとして好ましい。
【0178】
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の場合のカチオンまたはアニオン重合性化合物の好ましい例
【0179】
この場合、カチオンまたはアニオン重合性化合物は屈折率が低いことが好ましく、本発明の低屈折率カチオンまたはアニオン重合性化合物としては、少なくとも1個、好ましくは2個のオキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基を分子中に有し、さらにアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を一切含まない化合物が好ましい。また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
【0180】
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0181】
オキシラン環を有する低屈折率カチオンまたはアニオン重合性モノマーの具体例としては、グリセロールジグリシジルエーテル、グルセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,3−ビス(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)エチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0182】
オキセタン環を有する低屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては、オキシラン環としてグリシジル基1を有する前記の低屈折率カチオン重合性モノマーの具体例のグリシジル基1を、オキセタン環を含む基2に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0183】
【化40】

【0184】
さらに、低屈折率カチオン重合性モノマーとしては以下の化合物も好ましく挙げられる。
【0185】
【化41】

【0186】
なお、オキシラン環を有するモノマーとオキセタン環を有するモノマーを併用して用いることも好ましく、その際はオキシラン環を有するモノマーに対し、5〜95質量%のオキセタン環を有するモノマーを加えることが好ましい。
【0187】
ビニルエーテル基部位を有する低屈折率カチオンまたはアニオン重合性モノマーの具体例としては例えば、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、エチレングリゴールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルグリコール、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、アリルビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)プロパンジビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)トリフルオロプロパンジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0188】
次に、重合反応による干渉縞記録の際の、本発明における好ましいバインダーについて、A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合と、B)屈折率:バインダー>重合性化合物、の場合にわけて例を説明する。
【0189】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合のバインダーの好ましい例。
【0190】
この場合、バインダーは低屈折率であることが好ましく、塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有する低屈折率のポリマーが兼ねてもよく、もしくは塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有する低屈折率のポリマーと、低屈折率のバインダーの組み合わせでもよい。
ここで、アニオンを側鎖に有する低屈折率モノマーの好ましい具体例としては先に挙げた本発明のポリマー例のAL−1〜AL−5が挙げられ、カチオンを側鎖に有する低屈折率モノマーの好ましい具体例としては先に挙げた本発明のポリマー例のCL−1〜CL−7が挙げられ、塩基性部位を側鎖に有する低屈折率のポリマーの好ましい具体例としては先に挙げたBL−1〜BL−7が挙げられる。
低屈折率のバインダーは、アリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を一切含まないバインダーであることが好ましい。
好ましい低屈折率バインダーの具体例としては、アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。
【0191】
また、フッ素原子含有高分子も低屈折率バインダーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
【0192】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0193】
またポリ(ジメチルシロキサン)などのケイ素化合物や芳香族を含まないシリコンオイル等も好ましい例として挙げられる。
また他に、芳香族を含まないエポキシオリゴマー化合物も低屈折率反応性バインダーとして使用することができる。
【0194】
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の場合のバインダーの好ましい例。
【0195】
この場合、バインダーは高屈折率であることが好ましく、塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有する高屈折率のポリマーが兼ねてもよく、または塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有する高屈折率のポリマーと、高屈折率のバインダーの組み合わせでもよい。ここで、アニオンを 側鎖に有する高屈折率モノマーの好ましい具体例としては先に挙げた本発明のポリマー例のAH−1〜AH−7が挙げられ、カチオンを側鎖に有する低屈折率モノマーの好ましい具体例としては先に挙げた本発明のポリマー例のCH−1〜CH−5が挙げられ、塩基性部位を側鎖に有する低屈折率のポリマーの好ましい具体例としては先に挙げたBH−1〜BH−7が挙げられる。
高屈折率のバインダーは、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含むバインダーであることが好ましく、アリール基を含むバインダーであることがより好ましい。
好ましい高屈折率バインダーの具体例としては、ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル及び共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸及びテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸、(3)テレフタル酸及びセバシン酸、(4)テレフタル酸及びイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコール及び(i)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸及び(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、炭酸エステルとビスフェノールから成るポリカーボネートなどが挙げられる。
【0196】
またポリ(メチルフェニルシロキサン)や、1,3,5−トリメチル−1,1,3,5,5−ペンタフェニルトリシロキサンなどのケイ素化合物、芳香族を多く含むシリコンオイル等も好ましい例として挙げられる。
また他に、芳香族を多く含むエポキシオリゴマー化合物も高屈折率反応性バインダーとして使用することができる。
【0197】
本発明の重合反応による干渉縞記録に用いる重合開始剤として好ましくは、ケトン系、有機過酸化物系、トリハロメチル置換トリアジン系、ジアゾニウム塩系、ジアリールヨードニウム塩系、スルホニウム塩系、ホウ酸塩系、ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系、スルホニウム有機ホウ素錯体系、カチオン性2光子吸収色素有機ホウ素錯体系、アニオン性2光子吸収色素オニウム塩錯体系、金属アレーン錯体系、スルホン酸エステル系のいずれかのラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)またはカチオン重合開始剤(酸発生剤)、あるいはその両方の機能を有するものが挙げられる。
【0198】
その際、酸増殖剤を用いることも高感度化の点で好ましい。酸増殖剤の好ましい例として具体的に例えば、特開2005−17730号に記載されている例が挙げられる。
【0199】
また、アニオン重合及びアニオン重合開始剤(塩基発生剤)を用いる場合も好ましい。さらにその場合塩基増殖剤を用いることも高感度化の点で好ましい。それらの場合、アニオン重合開始剤及び塩基増殖剤の好ましい例として具体的には例えば、特開2005−17354号に記載されている例が挙げられる。
【0200】
本発明の重合開始剤、重合性化合物、バインダーの好ましい例として具体的には例えば、特開2005−99753号、特開2004−346238号に記載されている例が挙げられる。
【0201】
本発明における重合開始剤として好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0202】
【化42】

【0203】
【化43】

【0204】
なお、第2の工程にて照射する光の波長域では、2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。
また、第2の工程にて照射する光の波長域では、発色体のモル吸光係数が1000以上であることがより好ましい。
【0205】
本発明の2光子吸収光記録方法及びそのような記録が可能である2光子吸収光記録材料においては、第1の工程、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより2光子吸収化合物を分解して定着することが保存性及び非破壊再生の点で好ましく、さらには、第1の工程、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより2光子吸収化合物を、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより発色体を分解して定着することがより好ましい。
【0206】
以下に「潜像発色−発色体増感重合反応方式」の概念を説明する。
例えば、780nmのレーザーを2光子吸収光記録材料に照射し、2光子吸収化合物に吸収させ励起状態を生成させる。その2光子吸収化合物励起状態から色素前駆体群にエネルギー移動または電子移動させることにより、色素前駆体群に含まれる色素前駆体を発色体に変化させて発色による潜像を形成する(以上第1の工程)。次に680−740nmの波長域の光を照射して、発色体の線形吸収を起こし、重合開始剤に電子移動またはエネルギー移動させることにより活性化して重合を開始させる。例えば、重合性化合物がバインダーよりも屈折率が大きい場合、重合が起こる部分に重合性化合物が集まるため屈折率が高くなる(以上第2の工程)。第1の工程にてレーザー焦点部となっていない未記録部では潜像が生成しないため第2の工程においても重合はあまり起きずバインダーの存在比が高くなり、その結果記録部と非記録部にて屈折率変調を形成することができる。第1及び第2の工程、あるいはさらにその後の定着工程により2光子吸収化合物及び発色体を分解して消色できれば、非破壊再生及び保存性に優れかつ無色透明な2光子吸収光記録材料を提供することができる。
例えば780nmのレーザーを再び用い、記録を行った2光子吸収光記録材料に照射すると、記録部と非記録部との屈折率の違いに基く光の反射率または透過率差による再生が可能となり、2光子吸収(3次元)光記録媒体を与えることができる。
【0207】
潜像発色−発色体増感重合反応の具体例として好ましくは、特開2005−97538号に記載されている例が挙げられる。
【0208】
4)消色反応による記録
【0209】
好ましくは、少なくとも1種以上の消色性色素を有し、該消色性色素が2光子吸収により消色することを用い屈折率または吸収率変調、あるいは発光強度差により記録する方法である。なお、屈折率差を用いて記録する場合は、消色性色素の屈折率は再生に用いるレーザー波長付近で最大となることが好ましい。
また、発光強度差を用いて記録する場合は、消色性色素とその消色体にて、再 生時にある波長の光を照射した際の発光強度の差があることが好ましい。
【0210】
本発明にて消色性色素とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域に吸収を有し、光照射により直接または間接的にλmaxが短波長化、吸収のモル吸光係数の減少のいずれかが起こすような色素の総称を示し、さらに好ましくはその両方を起こすような色素である。また、消色反応は200〜1000nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜900nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
【0211】
なお、好ましい記録方法として、
(A)該消色性色素自身が2光子吸収化合物であり、2光子吸収により自身を消色することを用いた記録方法。
(B)少なくとも2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物とは別の、2光子記録波長のモル吸光係数が1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは0の消色性色素を有し、2光子吸収の際生じる2光子吸収化合物励起状態からの電子移動またはエネルギー移動により消色性色素を消色することを用いた記録方法。
が挙げられる。
【0212】
さらに、消色性色素、2光子吸収化合物とは別の消色剤前駆体を有し、2光子吸収化合物または消色性色素が2光子吸収により励起状態を生成した後、消色剤前駆体とエネルギー移動または電子移動することにより消色剤前駆体から消色剤を発生させ、その消色剤が消色性色素を消色することを用いた記録方法も好ましい。その際、消色剤はラジカル、酸、塩基、求核剤、求電子剤、一重項酸素のいずれかであることが好ましく、したがって、消色剤前駆体はラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤、求核剤発生剤、求電子剤発生剤、三重項酸素のいずれかであることが好ましい。消色前駆体としては、ラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤のいずれかであることがより好ましい。
【0213】
また、いずれの場合も、さらにバインダーポリマーを含むことがより好ましく、バインダーは本発明の塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーを兼ねてもよく、それとは別にバインダーポリマーを併用(好ましい例は後述)してもよい。
なお、バインダーポリマーとしては、1)重合反応の所で先述した例や、特開2005−71570号や特開2005−99751号に記載されている例が好ましく挙げられる。
【0214】
次に「色素消色反応方式」において、レーザー焦点部と非焦点部にて屈折率差、吸収率差、または発光強度差を形成するための消色性色素について詳しく述べる。
【0215】
先述した(A)の方式では、2光子吸収化合物と消色性色素を兼ねるため、消色性色素の好ましい例としては先述した2光子吸収化合物の例が挙げられる。
消色性色素のλmaxは2光子記録光波長と2光子記録波長から300nm短い波長域の間にあることが好ましい。
【0216】
一方、先述した(B)の方式では、2光子吸収化合物とは別に消色性色素を用いる。
その際、消色性色素としては2光子記録光波長のモル吸光係数が1000以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、0であることが最も好ましい。
消色性色素のλmaxは2光子記録光波長と2光子記録波長から300nm短い波長域の間にあることが好ましい。
【0217】
(B)の方式では、消色性色素としては、好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、ベンジリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、金属錯体色素のいずれかであり、さらに好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、ベンジリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、アゾメチン色素、アゾ色素、金属錯体色素のいずれかである。
【0218】
特に、消色剤が酸の時、消色性色素としては、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン色素、解離型アゾ色素の解離体であることが好ましく、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型アゾ色素の解離体であることがより好ましい。ここで解離型色素とは−OH基、−SH基、−COOH基、−NHSOR基や−CONHSOR基等、pKaが2〜14程度の範囲内にある活性水素を有し、プロトンが解離することによって、吸収が長波長化または高ε化する色素の総称である。したがって、解離型色素をあらかじめ塩基で処理して解離型としておけば、あらかじめ長波長化または高ε化した色素を調製することができ、光酸発生により非解離型に変化させ消色(短波長化または低ε化)することが可能となる。
【0219】
また特に、消色剤が塩基の時は、あらかじめ酸で処理して発色体としたトリフェニルメタン色素、キサンテン色素、フルオラン色素等の酸発色性色素発色体を消色性色素として用いれば、光塩基発生により非プロトン付加体に変化させ消色(短波長化または低ε化)することが可能となる。
【0220】
以下に本発明の消色性色素の具体的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0221】
【化44】

【0222】
【化45】

【0223】
【化46】

【0224】
【化47】

【0225】
本発明の2光子吸収光記録材料は、前記酸消色色素または前記消色反応を起こしたあとの消色体あるいは前記塩基消色色素もしくは前記消色反応を起こしたあとの消色体が前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする。
【0226】
消色剤前駆体が酸発生剤の場合、好ましい例としては前述のカチオン重合開始剤の例が挙げられる。ラジカル発生剤の場合、好ましい例としては前述のラジカル重合開始剤の例が挙げられる。塩基発生剤の場合、好ましい例としては前述のアニオン重合開始剤の例が挙げられる。
【0227】
本発明の消色性色素としては、2光子吸収により生成する2光子吸収化合物励起状態からの電子移動により結合が切断し、その結果消色することができる以下の消色性色素の例も好ましく挙げることができる。
さらに上記化合物は、下記一般式(10)にて表される消色型色素前駆体であることが好ましい。
一般式(10)
A2−DD
一般式(10)中、A2とDDは共有結合しており、A2は2光子吸収化合物励起状態との電子移動またはエネルギー移動によりDDとの共有結合を切断する機能を有する部位であり、DDはA2と共有結合している時は色素であるものの、共有結合が切断されて放出された際に消色反応を起こすことができる部位を表す。
なお、一般式(10)にて、DDがシアニンベースから成る基であり、クロモフォア上でA2と共有結合で連結していることが好ましい。
これらの消色性色素は元々はシアニン色素であるが、電子移動による結合の切断によりシアニンベース(ロイコシアニン色素)に変化し、吸収の消色または短波長化が起こるものである。
【0228】
【化48】

【0229】
本発明の2光子吸収光記録材料は前記DDがA2との共有結合が切断されて放出された際に前記ポリマーによって固定されることを特徴とする。
【0230】
色素消色方法、消色性色素、消色剤等の具体例としては、(A)のタイプとしては特開2005−55875号に記載されている例が好ましく挙げられ、(B)のタイプとしては特開2005−309359号に記載されている例が好ましく挙げられる。
【0231】
5)残存消色色素潜像−潜像増感重合反応
【0232】
好ましくは、2光子吸収化合物が2光子吸収により励起状態を生成した後、その励起エネルギーを用いて2光子記録波長のモル吸光係数が1000以下、好ましくは100以下、最も好ましくは0の消色性色素を消色し、消色されなかった残存消色性色素を潜像とする第1の工程と、その残存消色性色素潜像に2光子記録波長とは異なる波長の光を照射することにより重合を起こし、屈折率変調として記録する第2の工程を有することを特徴とする記録方法であり、高速記録、多重記録適性、記録後の保存性等に優れる。
さらに、2光子吸収化合物が2光子吸収により励起状態を生成した後、6)で述べた消色剤前駆体とエネルギー移動または電子移動することにより消色剤前駆体から消色剤を発生させ、その消色剤が消色性色素を消色することにより、消色されなかった残存消色性色素を潜像とする第1の工程と、その残存消色性色素潜像に2光子吸収化合物線形吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域の光を照射して発色体の線形吸収を起こすことにより光を照射することにより、エネルギー移動または電子移動により重合開始剤を活性化させて重合を起こし、屈折率変調として記録する第2の工程を有することを特徴とする記録方法、も好ましい。
【0233】
さらに、そのような2光子記録方法が可能な化合物群として、
少なくとも、
1)第1の工程にて2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、と、2)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、直接エネルギー移動または電子移動する結果、または消色剤前駆体へエネルギー移動または電子移動することにより消色剤を発生させる結果、消色することができる2光子記録波長のモル吸光係数が1000以下の消色性色素、3)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、第2の工程にて残存消色性色素励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、重合性化合物の重合を開始することができる重合開始剤(場合により6)の消色剤前駆体を兼ねる)、
4)重合性化合物、及び
5)塩基性部位もしくはカチオンもしくはアニオンを側鎖に有するポリマー
を含むことが好ましい。
また、さら前述のようなバインダーポリマーを含むことも好ましい。なお、バインダーポリマーの好ましい例としては特開2005−71570号、特開2005−99751号に記載されている例が挙げられる。
なお、2)にて消色剤前駆体にエネルギー移動または電子移動する場合は、
6)第1の工程にて2光子吸収化合物励起状態から、電子移動またはエネルギー移動することにより消色剤を発生することができる消色剤前駆体、
も含むことが好ましい。
【0234】
なお、2光子吸収化合物として好ましい例は、1)発色反応の所で述べた例と同じである。重合開始剤、重合性化合物、バインダーとして好ましい例は、3)潜像発色−発色体増感重合反応による記録、の所で述べた例と同じである。
消色性色素、消色剤前駆体の好ましい例は、4)消色反応の所で述べた例と同じである。
なお、第2の工程にて照射する光の波長域では、2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。
また、第2の工程にて照射する光の波長域では、消色性色素のモル吸光係数が1000以上であることが好ましい。
【0235】
ここで、本発明の「残存消色色素潜像−潜像増感重合方式」において、消色剤前駆体と重合開始剤が一部または全部同じで両方の機能を兼ねることも好ましい。
2光子吸収化合物とは別に消色性色素を添加する場合にて、消色剤前駆体と重合開始剤が異なる場合(例えば消色剤前駆体が酸発生剤または塩基発生剤、重合開始剤はラジカル重合開始剤、あるいは、消色剤前駆体がラジカル発生剤または求核剤発生剤、重合開始剤が酸発生剤または塩基発生剤)は、2光子吸収化合物は消色剤前駆体に対してのみ電子移動増感可能で、重合開始剤は消色性色素によってのみ電子移動増感可能であることが好ましい。
【0236】
本発明の2光子吸収光記録方法及びそのような記録が可能である2光子吸収光記録材料においては、第1の工程、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより2光子吸収化合物を分解して定着することが保存性及び非破壊再生の点で好ましく、さらには、第1の工程、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより2光子吸収化合物を、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより残存している消色性色素を分解して定着することがより好ましい。
【0237】
以下に「残存消色色素潜像−潜像増感重合反応方式」の概念を説明する。
例えば、780nmのレーザーを2光子吸収光記録材料に照射し、2光子吸収化合物に吸収させ励起状態を生成させる。
その2光子吸収化合物励起状態から消色剤前駆体にエネルギー移動または電子移動させることにより消色剤を発生させて、消色性色素を消色させる。その結果、残存した消色性色素による潜像を形成することができる(以上第1の工程)。次に680〜740nmの波長域の光を照射して、残存消色色素潜像の吸収を起こし、重合開始剤に電子移動またはエネルギー移動させることにより活性化して重合を開始させる。例えば、重合性化合物がバインダーよりも屈折率が小さい場合、重合が起こる部分に重合性化合物が集まるため屈折率が低くなる(以上第2の工程)。第1の工程にてレーザー焦点部となった記録部では潜像となる残存消色性色素が少ないため第2の工程においても重合はあまり起きずバインダーの存在比が高くなり、その結果、記録部と未記録部にて大きな屈折率変調を形成することができ、屈折率変調を形成することができる。第1及び第2の工程、あるいはさらにその後の定着工程により2光子吸収化合物及び残存消色性色素を分解して消色できれば、非破壊再生及び保存性に優れかつ無色透明な2光子吸収光記録材料を提供することができる。
例えば780nmのレーザーを再び用い、記録を行った2光子吸収光記録材料に照射すると、記録部と非記録部との屈折率の違いに基く光の反射率または透過率差による再生が可能となり、2光子吸収(3次元)光記録媒体を与えることができる。
【0238】
残存消色色素潜像−潜像増感重合反応の具体例として好ましくは、特開2005−309359号に記載されている例が挙げられる。
【0239】
本発明の2光子吸収光記録材料は、前記のような2光子吸収化合物、記録成分、重合開始剤、重合性化合物、バインダー、消色性色素、消色剤前駆体等に加えて、さらに必要に応じて電子供与性化合物、電子受容性化合物、連鎖移動剤、架橋剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を用いることができる。
【0240】
電子供与性化合物は2光子吸収化合物、発色体または消色性色素のラジカルカチオンを還元する能力を有し、電子受容性化合物は2光子吸収化合物、発色体または消色性色素のラジカルアニオンを酸化する能力を有し、共に2光子吸収化合物、発色体または消色性色素を再生する機能を有する。具体的には例えば、特開2005−71570号に記載されている例が好ましい例として挙げられる。
特に電子供与性化合物は、色素前駆体群への電子移動後の2光子吸収化合物、発色体または消色性色素ラジカルカチオンを素早く再生できるため高感度のために有用である。電子供与性化合物としては、酸化電位が2光子吸収化合物、発色体または消色性色素の酸化電位よりも卑なものが好ましく、アルキルアミン類、アニリン類、フェニレンジアミン類、トリフェニルアミン類、カルバゾール類、フェノチアジン類、フェノキサジン類、フェナジン類、ハイドロキノン類、カテコール類、アルコキシベンゼン類、アミノフェノール類、イミダゾール類、ピリジン類、メタロセン類、金属錯体類、半導体微粒子であることが好ましい。
電子供与性化合物の好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0241】
【化49】

【0242】
電子供与性化合物としては特に、フェノチアジン系化合物(例えば10−メチルフェノチアジン、10−(4’−メトキシフェニル)フェノチアジン)、トリフェニルアミン系化合物(例えばトリフェニルアミン、トリ(4’−メトキシフェニル)アミン、TPD系化合物(例えばTPD)等が好ましく、フェノチアジン系化合物がさらに好ましい。
【0243】
なお、前述してきた本発明の2光子吸収化合物、酸発生剤、塩基発生剤、色素前駆体、消色性色素、消色剤前駆体、電子供与性化合物等はオリゴマーまたはポリマーでも良く、その際は主鎖に含まれても側鎖に含まれても良く、共重合体であっても良い。
ポリマー主鎖としてはどのような構造でも良いが、ポリアクリレートやポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、アシルセルロース等が好ましく挙げられる。
その際、本発明のポリマーまたはオリゴマーとしては繰り返し単位が2以上100万以下であり、好ましくは3以上100万以下であり、より好ましくは5以上50万以下であり、もっとも好ましくは10以上10万以下である。
またポリマーまたはオリゴマーの分子量としては好ましくは500以上1000万以下であり、より好ましくは1000以上500万以下であり、さらに好ましくは2000以上100万以下であり、最も好ましくは3000以上100万以下である。
【0244】
連鎖移動剤、架橋剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の具体例として好ましい例は、特開2004−346238号に記載されている例が挙げられる。
【0245】
連鎖移動剤として好ましくは、チオール類であり、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、p−ブロモベンゼンチオール、チオシアヌル酸、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、p−トルエンチオールなどが挙げられる。
特に重合開始剤が2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーの場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。
【0246】
本発明の2光子吸収光記録材料には、保存時の保存性を向上させるために熱安定剤を添加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。
【0247】
可塑剤は2光子吸収光記録材料の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために用いられる。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート、アルコール類、フェノール類等が挙げられる。
【0248】
本発明の2光子吸収光記録材料は通常の方法で調製されてよい。
例えば、本発明の2光子吸収光記録材料の製膜方法としては、前記のバインダーや各成分を溶媒等に溶かしてスピンコーターまたはバーコーター等を用いて塗布しても良い。
その際、溶媒として好ましくは例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
【0249】
本発明の2光子吸収光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより2光子吸収光記録材料とすることができる。
ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。
使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。
【0250】
また本発明の2光子吸収光記録材料は、各成分を含むバインダーをバインダーのガラス転移温度または融点以上の温度にしてメルトさせ溶融押し出しまたは射出成型して製膜しても良い。その際、バインダーとして反応性架橋バインダーを使用し、押し出しまたは成型後に架橋させて膜を硬化させ、膜強度を増しても良い。その場合、架橋反応にはラジカル重合反応、カチオン重合反応、縮合重合反応、付加重合反応等が使用できる。また、特開2000−250382号、特開2000−172154号等記載の方法も好ましく使用することができる。
また、バインダーを形成するモノマー溶液に各成分を溶解させておいた上でモノマーを熱重合または光重合させてポリマーとし、バインダーとして使用する方法も好ましく使用できる。その際の重合法としても、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、縮合重合反応、付加重合反応等が使用できる。
【0251】
さらに、2光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断のための保護層を形成してもよい。保護層は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。
【0252】
本発明の2光子吸収光記録材料を2光子吸収3次元光メモリ用途に用いる場合、2光子吸収光記録材料は2光子記録前後で収縮等が起こらない方が信号再生時のS/N比向上の点でより好ましい。
そのため、例えば本発明の2光子吸収光記録材料に特開2000−86914号記載の膨張剤を用いたり、特開2000−250382号、2000−172154、特開平11−344917号記載の耐収縮性のあるバインダーを用いることも好ましい。
【0253】
以上のように、本発明の2光子吸収光記録材料は、前述の課題を抜本的に解決した、とりわけ高感度と良保存性、乾式処理、高記録密度を両立できる全く新しい記録方式を与えるものであり、特に、光記録媒体に用いることが好ましい。
【0254】
さらに、本発明の2光子吸収光記録材料は、光記録媒体の他にも、3次元ボリュームディスプレイ、光学材料、レンズ、セキュリティ用途等にも好ましく用いることができる。
【0255】
[実施例]
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0256】
[2光子吸収発色方式による3次元的屈折率、吸収率及び発光強度変調方法]
【0257】
まず、本発明の2光子吸収光記録材料が2光子吸収により色素前駆体から発色体を生成する方法により、屈折率、吸収率または発光強度を変調して再生する方法について述べる。
以下の組成にて、本発明の2光子吸収3次元光記録材料の試料101〜103 及び比較試料1〜3を作成した。
【0258】
<試料101:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:酸発生剤I−5 24質量部
酸発色型色素前駆体L−5 7質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:本発明のポリマーAL−2(m:n=1:3) 47質量部
溶媒:塩化メチレン−アセトニトリル 上記成分の4倍質量
<比較試料1>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:酸発生剤I−5 24質量部
酸発色型色素前駆体L−5 7質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート(平均分子量120000) 47質量部
溶媒:塩化メチレン−アセトニトリル 上記成分の4倍質量
【0259】
<試料102:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:酸発生剤I−5 24質量部
酸発色型色素前駆体LC−11 7質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:本発明のポリマーAH−5(m:n=3:1、l=3)
47質量部
溶媒:塩化メチレン−アセトニトリル 上記成分の4倍質量
<比較試料2>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:酸発生剤I−5 24質量部
酸発色型色素前駆体LC−11 7質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート(平均分子量120000) 47質量部
溶媒:塩化メチレン−アセトニトリル 上記成分の4倍質量
【0260】
<試料103:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:色素前駆体E−6 18質量部
塩基:トリベンジルアミン 16質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:本発明のポリマーCL−4(m:n=3:1、l=1)
44質量部
溶媒:塩化メチレン 上記成分の4倍質量
<比較試料3>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:色素前駆体E−6 18質量部
塩基:トリベンジルアミン 16質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
溶媒:塩化メチレン 上記成分の4倍質量
バインダー:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート(平均分子量120000) 44質量部
溶媒:塩化メチレン−アセトニトリル 上記成分の3倍質量
【0261】
<試料104:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:色素前駆体E−5 18質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:本発明のポリマーBL−4(m:n=3:1) 60質量部
溶媒:塩化メチレン 上記成分の3倍質量
<比較試料4>
2光子吸収化合物:D−7 2質量部
記録成分:色素前駆体E−5 18質量部
電子供与性化合物:A−1 20質量部
バインダー:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート(平均分子量120000) 60質量部
溶媒:塩化メチレン−アセトニトリル 上記成分の4倍質量
【0262】
試料101〜104、比較試料1〜4はプレパラートガラス板上にバーコート 塗布し、溶媒乾燥後、プレパラートガラスを載せて評価試料とした。膜厚は約10μmとなった。
【0263】
本発明の2光子吸収記録材料及び比較材料の性能評価には、700nmから1000nmの波長範囲で測定可能なTi:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、本発明の2光子吸収記録材料に該レーザー光をNA0.6のレンズで集光して照射した。
試料101〜104、比較試料1〜4に対しては740nmのレーザー光を照射して2光子吸収を起こした。その結果、試料101〜104及び比較試料1〜4において、光照射部のレーザー焦点部(記録部)にて発色を確認できた。記録部と非記録部の吸収率の変化は光学顕微鏡等を用い目視にて確認できた。発色部(記録部)の屈折率を測定した所、レーザー非焦点部(非記録部)に比較して増加した。
試料101〜104及び比較試料1〜4に反射型共焦点顕微鏡を用い740nmのレーザー光を照射した所、記録部と非記録部にて屈折率の違いによる反射率の違いを確認できた。
試料101〜104のレーザー光の反射率は対応する比較試料1〜4のそれぞれ2.2倍、2.8倍、2.7倍、2.1倍であった。よって本発明の試料101〜104の方が高感度にて記録できることがわかる。
また、室温暗所で2ヶ月保存後における試料101〜104のレーザー光反射率の残存率はそれぞれ99、98、97、96%と高かった。それに比べ、対応する比較試料1〜4は95、94、92、91%と本発明の試料101〜104に比べやや低い値を示した。
よって本発明の試料101〜104の方が暗保存性に優れることがわかる。
また、記録した試料101〜104及び比較試料1〜4に透過型共焦点顕微鏡を用い660nmのレーザーを照射した所、記録部と非記録部にて、吸収率の違いによる透過率の違いを確認できた。試料101〜104の記録感度は対応する比較試料1〜4のそれぞれ2、3、3、2倍であった。なおここでいう記録感度は吸収率の違いを確認できるのに必要なレーザー露光時間の逆数比を表す。
また、試料102、103、104においては発光強度の違いも確認できた。
【0264】
また、レーザー焦点位置を水平及び深さ方向に走査することにより、3次元方向の任意の場所に発色させることができた。740nmのレーザー照射により屈折率変調による3次元的な反射率変調が、660nmのレーザー照射により吸収率変調による3次元的な反射率変調または3次元的な発光強度変調が可能であることが確認できた。
【実施例2】
【0265】
[2光子吸収潜像発色−発色体自己増感増幅発色方式による3次元的屈折率、吸収率及び発光強度変調方法]
【0266】
次に、実施例1の試料101〜104に対して740nmのレーザー光を実施例1の30分の1光量照射して2光子吸収を起こした所(第1の工程、以下試料201〜204と呼ぶ。)、試料201〜204において、光照射部のレーザー焦点部(記録部)にて発色(潜像)がわずかに確認できた。
さらに、キセノンランプとバンドパスフィルターを用いて、680〜720nmの波長範囲の光を全面露光した結果(第2の工程)、第1の工程の記録部にて発色がはっきりと確認できるが、非記録部では発色は起こらず、記録部と非記録部の吸収率の変化は光学顕微鏡等を用いて目視にて確認することができた。発色部(記録部)の屈折率を測定した所、レーザー非焦点部(非記録部)に比較して増加した。反射型共焦点顕微鏡を用い740nmのレーザーを照射した所、発色した記録部と非記録部にて屈折率の違いによる反射率の違いを確認できた。
また、記録した試料201〜204に透過型共焦点顕微鏡を用い660nmのレーザーを照射した所、記録部と非記録部にて、吸収率の違いによる透過率の違いを確認できた。また、試料202、203、204においては発光強度の違いも確認できた。
【0267】
また、レーザー焦点位置を水平及び深さ方向に走査することにより、3次元方向の任意の場所に発色させることができた。740nmのレーザー照射により屈折率変調による3次元的な反射率変調が、660nmのレーザー照射により吸収率変調による3次元的な透過率変調または3次元的な発光強度変調が可能であることが確認できた。
以上のように、本発明の2光子吸収潜像発色−発色体自己増感増幅発色方式は、第2の工程にて約30倍程度の増幅が可能であることを示す。第2の工程の照射時間をさらに長くするなどにより、さらなる増幅も可能であることも確認できる。
【0268】
なお、実施例1及び2にて、2光子吸収化合物をD−2、D−5、D−8、D−10、D−12、D−13、D−14、D−15、D−20、D−22、D−24、D−25、D−28、D−32、D−35、D−36、D−47、D−50、D−52、D−64、D−65、D−66、D−73、D−76、D−78、D−80、D−81、D−86、D−88、D−89、D−90、D−119に変更しても、同様な効果が得られた。
また、試料101、102、201、202にてアニオンを側鎖に有するポリマーをAH−1、AH−3、AH−7、AL−3に変更しても、試料103、203にてカチオンを側鎖に有するポリマーをCL−1、CL−2、CL−5、CL−6、CL−7、CH−1、CH−2、CH−4に変更しても、試料104、204にて塩基性部位を側鎖に有するポリマーをBL−2、BL−3、BL−5、BH−1〜BH−5に変更しても同様な効果が得られた。
さらに、試料101、102、201、202にて記録成分の酸発生剤をI−3、I−4、I−6〜I−10、I−21〜I−24、I−26、I−27に変更しても、試料101、102、201、202にて記録成分の酸発色型色素前駆体をL−4、L−9、L−11、L−12、LC−2、LC−3、LC−5、LC−6、LC−9、LC−12〜LC−15に変更しても、同様な効果が得られた。
また、試料103、104、203、204にて記録成分をE−7、E−8、E−12〜E−15、E−20〜E−23、E−26〜E−29に変更しても同様な効果が得られた。
また、試料101〜104、201〜204にて電子供与性化合物をA−2〜A−9、A−12〜A−14に変更しても同様な効果が得られた。
【0269】
なお、上記の際、試料を作成する際の溶媒、2光子吸収を起こす際のレーザー波長及び光量、第2の工程のために照射する光の波長及び光量、反射率及び発光強度の変化を見るために照射する光の波長はそれぞれの系にて最適な条件を用いている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、2光子吸収により励起状態を生成する2光子吸収化合物と、2光子吸収化合物励起状態から電子移動もしくはエネルギー移動することにより発色反応もしくは消色反応を起こし、その結果屈折率変調または吸収率変調による記録を行うことができる記録成分と、塩基性部位、カチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーとを含むことを特徴とする2光子吸収光記録材料。
【請求項2】
前記記録成分のうちいずれかをカチオンまたはアニオンを側鎖に有するポリマーとイオン対を形成することによって固定し2光子吸収による記録を保持することを特徴とする請求項1記載の2光子記録方法。
【請求項3】
前記記録成分のうちいずれかを塩基性部位を側鎖に有するポリマーと対塩を形成することによって固定し2光子吸収による記録を保持することを特徴とする請求項1記載の2光子記録方法。
【請求項4】
前記記録成分が酸発生剤及び、酸発色型色素前駆体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項5】
前記酸発色型色素前駆体が前記発色反応を起こし色素となった後に前記ポリマーとイオン対を形成することによって固定されることを特徴とする請求項4記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項6】
前記記録成分が少なくとも酸発生剤及び、酸消色性色素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項7】
前記酸消色色素またはその消色体が前記ポリマーとイオン対を形成することによって固定されることを特徴とする請求項6記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項8】
前記記録成分が少なくとも塩基発生剤及び、塩基発色型色素前駆体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項9】
前記塩基発色型色素前駆体が前記発色反応を起こした後に前記ポリマーとイオン対を形成することによって固定されることを特徴とする請求項8記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項10】
前記記録成分が少なくとも下記一般式(6)にて表される発色型色素前駆体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
一般式(6)
A1−PD
一般式(6)中、A1とPDは共有結合しており、A1は2光子吸収化合物励起状態との電子移動またはエネルギー移動によりPDとの共有結合を切断する機能を有する部位であり、PDはA1との共有結合が切断されて放出された際に発色反応を起こすことができる部位を表す。
【請求項11】
前記PDがA1との共有結合が切断されて放出された際に前記ポリマーとイオン対もしくは対塩を形成することによって固定されることを特徴とする請求項10記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項12】
さらに、記録成分への電子移動後の2光子吸収化合物ラジカルカチオンに電子を供与することができる電子供与性化合物を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して屈折率変調または吸収率変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその反射率または透過率の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子吸収光記録再生方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して発光能変調による記録を行った後、光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする2光子吸収光記録再生方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料を用いて、1)発色反応、2)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応、3)潜像発色−発色体増感重合反応、4)消色反応、5)残存消色色素潜像−潜像増感重合反応のいずれかの方法により、A)屈折率変調、B)吸収率変調、C)発光能変調のいずれかを起こして記録を行うことを特徴とする請求項1〜14記載の2光子吸収光記録方法。
【請求項16】
2光子吸収化合物の2光子吸収を利用した記録が書き換えできない方式であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料、請求項13または14記載の2光子吸収光記録再生方法、または請求項15記載の2光子吸収光記録方法。
【請求項17】
2光子吸収光記録材料に含まれる2光子吸収化合物が、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素、アゾ色素または下記一般式(1)にて表されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料。
一般式(1)
【化1】

式中、R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R101、R102、R103及びR104のうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。n101およびm101はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、n101およびm101が2以上の場合、複数個のR101、R102、R103 及びR104は同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n101、m101同時に0となることはない。X101およびX102は独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)
【化2】

式中、R105は水素原子または置換基を表し、R106は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Z101は5または6員環を形成する原子群を表す。
【請求項18】
前記シアニン色素が下記一般式(3)にて、前記メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、前記オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、請求項17記載の2光子吸収光記録材料。
【化3】

一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり、ka、及びkaはそれぞれ0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは0〜8の整数を表わし、kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【請求項19】
請求項13または14記載の2光子吸収光記録再生方法から成る2光子吸収3次元光記録再生方法。
【請求項20】
請求項1〜12、16〜18のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料から成る2光子吸収3次元光記録媒体。
【請求項21】
請求項1〜12、16〜18のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料が保存時に遮光カートリッジ内に保存されていることを特徴とする2光子吸収光記録媒体。
【請求項22】
請求項1〜12、16〜18のいずれかに記載の2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことを特徴とする2光子吸収光記録方法。

【公開番号】特開2007−262155(P2007−262155A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86361(P2006−86361)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】