2次元光走査装置
【課題】主走査方向と副走査方向との2方向の振幅をそれぞれ目標範囲に速やかに制御できる2次元光走査装置を得る。
【解決手段】第1可動部4を共振させる主走査駆動信号と、第2可動部6を共振させる副走査駆動信号とに応じた駆動信号Vを駆動部に出力して第3可動部12を振動させて第1可動部4と第2可動部6とを共振させる信号生成部50を備える。また、主走査駆動信号と副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとにより、駆動信号Vを調整し、振幅を制御する制御部66を備える。制御部66は検出される第1可動部4と第2可動部6との振幅に基づいて両制御パラメータを調整する。
【解決手段】第1可動部4を共振させる主走査駆動信号と、第2可動部6を共振させる副走査駆動信号とに応じた駆動信号Vを駆動部に出力して第3可動部12を振動させて第1可動部4と第2可動部6とを共振させる信号生成部50を備える。また、主走査駆動信号と副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとにより、駆動信号Vを調整し、振幅を制御する制御部66を備える。制御部66は検出される第1可動部4と第2可動部6との振幅に基づいて両制御パラメータを調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振揺動する可動部に設けた反射面により光源からの光ビームを主走査方向と副走査方向との2方向に偏向する2次元光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、共振揺動する可動部に設けた反射面により光源からの光ビームを偏向する2次元光走査装置として、例えば、特許文献1にあるように、反射面を設けた第1可動部の外側に第2可動部を設け、第1可動部と第2可動部とを第1梁により捩り振動可能に連結し、また、第2可動部の外側に第3可動部を設け、第2可動部と第3可動部とを第2梁により捩り振動可能に連結し、更に、第3可動部の外側に固定部を設け、第3可動部と固定部とを第3梁により捩り振動可能に連結した装置が知られている。この装置では、固定部に圧電素子を設け、圧電素子により第3可動部を第3梁の廻りに振動させて、第1可動部を第1梁及び第2可動部を第2梁の廻りに共振させて、光ビームを主走査方向と副走査方向とに偏向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−199099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来のものでは、加振軸が第3梁の1軸であるのに対し、異なる周波数で第1梁と第2梁との2軸を揺動させるため、各々の軸を振動させる駆動力を独立に制御するのが難しく、主走査方向と副走査方向との2方向のそれぞれの振幅をそれぞれ目標範囲に制御するのが難しいという問題があった。
【0005】
例えば、主走査方向の振幅を増やそうと印加電圧を増加させると、振幅を変化させたくない副走査方向の振幅も増加してしまうという問題があった。
本発明の課題は、主走査方向と副走査方向との2方向の振幅をそれぞれ目標範囲に速やかに制御できる2次元光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
光源からの光ビームを反射させる反射面を有する第1可動部の外側に第2可動部を設け、前記第1可動部と前記第2可動部とを弾性を有する第1梁により連結して前記第1可動部を前記第1梁の廻りに捩り振動可能に支持し、また、前記第2可動部の外側に第3可動部を設け、前記第2可動部と前記第3可動部とを弾性を有すると共に前記第1梁の長手方向に交差する第2梁により連結して前記第2可動部を前記第2梁の廻りに捩り振動可能に支持し、更に、前記第3可動部の外側に固定部を設け、前記第3可動部と前記固定部とを弾性を有すると共に前記第1梁及び前記第2梁の長手方向にそれぞれ交差する第3梁により連結して前記第3可動部を捩り振動可能に支持し、前記第3可動部を振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させ前記光ビームを偏向する2次元光走査装置において、
前記第3可動部を駆動信号に基づいて振動させる駆動部を備え、
また、前記第1可動部を前記第1梁の廻りに共振させる主走査駆動信号と、前記第2可動部を前記第2梁の廻りに共振させる副走査駆動信号とに応じた駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記駆動部に出力して前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させる信号生成部を備え、
更に、前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせにより、前記両制御パラメータを変化させて前記駆動信号を調整し、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を制御する制御部を備え、
かつ、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出する振幅検出部を設け、前記制御部は前記振幅検出部により検出される前記第1可動部と前記第2可動部との振幅に基づいて、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整することを特徴とする2次元光走査装置がそれである。
【0007】
前記制御部は前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整して、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよい。その際、前記制御部は前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよいし、前記制御部は前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよい。更に、前記制御部は前記第1制御パラメータ及び前記第2制御パラメータの調整を交互に繰り返し、前記第1可動部の振幅及び前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよい。
【0008】
また、前記駆動部は、前記第3可動部の可動電極と前記固定部の固定電極とを対向して配置し、前記可動電極と前記固定電極との間に電圧を印加して前記可動電極と前記固定電極との間の静電気力により前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させるようにしてもよい。更に、前記振幅検出部は、前記第3可動部に設けた可動電極と前記固定部に設けた薄膜電極との間の静電容量の変化に基づいて前記第3可動部の振幅を検出し、前記第3可動部の振幅に基づいて前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出するようにしてもよい。
【0009】
前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、複数の組み合わせから、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第1可動部の振幅への影響及び前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第2可動部の振幅への影響に基づいて、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第2制御パラメータとの組み合わせとするとよい。その際、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記副走査駆動信号の電圧であってもよい。あるいは、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記主走査駆動信号及び前記副走査駆動信号のデューティー比であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の2次元光走査装置は、第1可動部の振幅変化への寄与が大きく第2可動部の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、第2可動部の振幅変化への寄与が大きく第1可動部の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせにより、両制御パラメータを変化させて駆動信号を調整し、第1可動部と第2可動部との振幅を制御するので、主走査方向と副走査方向との2方向の振幅が目標範囲内に速やかに収束するという効果を奏する。
【0011】
また、第1制御パラメータと第2制御パラメータとを調整して、第1可動部と第2可動部との振幅を予め設定された目標範囲内に制御することにより、適切に振幅を制御できる。その際、第1制御パラメータを調整して第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、第2制御パラメータを調整して第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを繰り返したり、第2制御パラメータを調整して第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、第1制御パラメータを調整して第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを繰り返したりすることにより速やかに収束を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態としての2次元光走査装置の概略構成図である。
【図2】本第1実施形態のスキャナの概略拡大構成図である。
【図3】図2のaa拡大断面図である。
【図4】図2のbb拡大断面図である。
【図5】図2のcc拡大断面図である。
【図6】本第1実施形態の駆動信号、主走査駆動信号、副走査駆動信号、主走査シフト駆動信号、副走査シフト駆動信号を示す説明図である。
【図7】本第1実施形態の第3可動部の振幅信号と駆動信号とを示す説明図である。
【図8】本第1実施形態の制御パラメータを決定する手順を示すフローチャートである。
【図9】本第1実施形態の光走査制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】本第1実施形態の第1可動部と第2可動部との振幅を目標範囲に制御する説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態としての2次元光走査装置の概略構成図である。
【図12】第1実施形態の図3に相当する第2実施形態のスキャナの拡大断面図である。
【図13】第1実施形態の図4に相当する第2実施形態のスキャナの拡大断面図である。
【図14】第1実施形態の図5に相当する第2実施形態のスキャナの拡大断面図である。
【図15】本第2実施形態の駆動信号、主走査駆動信号、副走査駆動信号を示す説明図である。
【図16】本第2実施形態の第3可動部の振幅信号と駆動信号とを示す説明図である。
【図17】本第2実施形態の光走査制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1はスキャナで、スキャナ1は半導体レーザ等の図示しない光源からの光ビームをスクリーンや検出するバーコード等に向けて反射する。スキャナ1は、本実施形態では、図2に示すように、光ビームを反射する反射面2が設けられた第1可動部4を備え、第1可動部4の外側には四角枠状の第2可動部6が設けられている。第1可動部4と第2可動部6とは一対の第1梁8,10により連結されている。
【0014】
一対の第1梁8,10は弾性を有すると共に、一対の第1梁8,10は同一直線上に配置されており、第1梁8,10の長手方向の中心線上に第1可動部4の重心が配置されて、図2に矢印Aで示すように、第1可動部4を第1梁8,10の廻りに捩り振動可能に支持している。図2に矢印Aで示すように、第1可動部4を一対の第1梁8,10の廻りに捩り振動させて、反射面2により光ビームを反射して主走査方向(X方向)に偏向することができるように構成されている。
【0015】
また、第2可動部6の外側には四角枠状の第3可動部12が設けられている。第2可動部6と第3可動部12とは一対の第2梁14,16により連結されている。一対の第2梁14,16は弾性を有すると共に、一対の第2梁14,16は同一直線上に配置されている。
【0016】
第2梁14,16の長手方向と第1梁8,10の長手方向とは交差して、本実施形態では直交して形成されており、第1梁8,10の長手方向の中心線と第2梁14,16の長手方向の中心線との交点上に、第1可動部4の重心と第2可動部6の重心とが配置されて、図2に矢印Bで示すように、第2可動部6を第2梁14,16の廻りに捩り振動可能に支持している。
【0017】
図2に矢印Bで示すように、第2可動部6を一対の第2梁14,16の廻りに捩り振動させて、反射面2により光ビームを反射して副走査方向(Y方向)に偏向することができるように構成されている。
【0018】
更に、第3可動部12の外側には四角枠状の固定部18が設けられている。第3可動部12と固定部18とは一対の第3梁20,22により連結されている。一対の第3梁20,22は弾性を有すると共に、一対の第3梁20,22は同一直線上に配置されている。第3梁20,22の長手方向と第1梁8,10及び第2梁14,16の長手方向とはそれぞれ交差して、本実施形態ではそれぞれ45度をなすように交差して形成されている。
【0019】
また、第3梁20,22の長手方向の中心線は第1梁8,10の長手方向の中心線と第2梁14,16の長手方向の中心線との交点を通るように配置されて、図2に矢印Cで示すように、第3可動部12を第3梁20,22の廻りに捩り振動可能に支持している。尚、第1可動部4、第2可動部6、第3可動部12、固定部18は、同一平面上に設けられている。
【0020】
第3可動部12と固定部18との間には、一対の櫛歯24,26が対向して設けられている。一対の櫛歯24,26は第3可動部12から固定部18に向かって、一対の第3梁20,22の長手方向と直交方向に突出された多数の矩形状の櫛歯部28,30を備えると共に、固定部18から第3可動部12に向かって、一対の第3梁20,22の長手方向と直交方向に突出された多数の矩形状の櫛歯部32,34を備えている。
【0021】
第3可動部12側の各櫛歯部28,30と固定部18側の各櫛歯部32,34とは、隙間を空けて互い違いに、第3可動部12側の各櫛歯部28,30と固定部18側の各櫛歯部32,34とが互いに間に入り込むように配置されている。尚、各櫛歯部28,30,32,34は、第3可動部12と固定部18との同一平面上に対向して設けられている。
【0022】
図3に示すように、第3可動部12側の櫛歯部28は一体の可動電極28aとして形成され、固定部18側の櫛歯部32は固定電極36と絶縁膜38と薄膜電極40とが順に積層されて形成されている。
【0023】
また、図4に示すように、第3可動部12側の櫛歯部30は一体の可動電極30aとして形成され、固定部18側の櫛歯部34は固定電極42と絶縁膜44と薄膜電極46とが順に積層されて形成されている。
【0024】
第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと、固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42との間に電圧を印加すると、静電気力により第3可動部12側の櫛歯部28,30が固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42に引き寄せられて、第3可動部12が一対の第3梁20,22の廻りに図5の矢印(図2の矢印C)のように捩られる。尚、本実施形態では、一対の櫛歯24,26が駆動部を構成している。駆動部は一対の櫛歯24,26に限らず、圧電素子等を用いたものでもよい。
【0025】
また、その際、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46との間の静電容量が変化し、静電容量の変化を検出することにより、第3可動部12の第3梁20,22廻りの振幅の時間変化を検出することができる。
【0026】
図1、図3、図4に示すように、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと、固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42とは、信号生成部50の増幅器52に接続されている。また、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46とは、振幅検出部54に接続されている。
【0027】
信号生成部50は、主走査駆動信号生成部56と副走査駆動信号生成部58とを備え、主走査駆動信号生成部56は主走査周波数の主走査駆動信号Vaを第1乗算器60に出力し、この主走査駆動信号Vaに対して位相を180度ずらした主走査シフト駆動信号Vcを第2乗算器62に出力する。
【0028】
主走査駆動信号Vaは、第1可動部4を一対の第1梁8,10の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた主走査周波数fx(周期Tx)の信号であり、第1可動部4や第1梁8,10の慣性モーメントやバネ定数により定まる。また、この主走査駆動信号Vaはデューティー比が0%を超え50%を超えない信号として生成されている。デューティー比は、図6に示すように、ハイレベルの期間ONとローレベルの期間OFFとの比(=ON/(ON+OFF))である。主走査駆動信号Vaのデューティー比は、0%を超え50%を超えない範囲で実験等により決定すればよい。尚、本実施形態では、デューティー比は25%をデフォルト値としている。
【0029】
図5に示すように、第3可動部12が一対の第3梁20,22の廻りに捩り振動した際、1周期(1往復の捩り振動)で、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aは、固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42を2回横切る。
【0030】
静電気力により第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aを固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42に引き寄せるように、電圧を印加する。よって、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、2回電圧を印加して、第3可動部12を捩り振動させることができる。
【0031】
デューティー比が50%を超えない主走査駆動信号Vaと、この主走査駆動信号Vaの位相を180度ずらした主走査シフト駆動信号Vcとを生成して、主走査駆動信号Vaと主走査シフト駆動信号Vcとを後述するように加算して、共振周波数の2倍の周波数を有する信号を生成する。これにより、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、2回電圧を印加できる。
【0032】
一方、図6に示すように、副走査駆動信号生成部58は副走査周波数の副走査駆動信号Vbを第1乗算器60に出力し、この副走査駆動信号Vbに対して位相を180度ずらした副走査シフト駆動信号Vdを第2乗算器62に出力する。
【0033】
副走査駆動信号Vbは、第2可動部6を一対の第2梁14,16の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた副走査周波数fy(周期Ty)の信号であり、第1可動部4と第2可動部6や第2梁14,16の慣性モーメントやバネ定数により定まる。また、本実施形態では、この副走査駆動信号Vbはデューティー比を50%(デフォルト値)の信号として生成されるが、これに限らず、実験等により決定すればよい。
【0034】
前述した主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcと同様、固有振動数に応じた副走査周波数fyで第3可動部12を振動させる際、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、2回電圧を印加して、第3可動部12を揺動させることができる。
【0035】
第1乗算器60は、主走査駆動信号生成部56からの主走査駆動信号Vaと、副走査駆動信号生成部58からの副走査駆動信号Vbとを乗算して、第1乗算駆動信号V1を生成する。副走査駆動信号Vbには予めバイアス電圧が付加されており、ハイレベルのH電圧とローレベルのL電圧とが副走査周波数fyで繰り返される。主走査駆動信号Vaと副走査駆動信号Vbを乗算することにより、主走査駆動信号Vaは副走査駆動信号Vbの周期に応じてハイレベルとローレベルとの電圧になる。
【0036】
第2乗算器62は、主走査駆動信号生成部56からの主走査シフト駆動信号Vcと、副走査駆動信号生成部58の副走査シフト駆動信号Vdとを乗算して、第2乗算駆動信号V2を生成する。副走査シフト駆動信号Vdには予めバイアス電圧が付加されており、ハイレベルのH電圧とローレベルのL電圧とが副走査周波数fyで繰り返される。主走査シフト駆動信号Vcと副走査シフト駆動信号Vdとを乗算することにより、主走査シフト駆動信号Vcは副走査シフト駆動信号Vdの周期に応じてハイレベルとローレベルとの電圧になる。
【0037】
第1乗算器60からの第1乗算駆動信号V1と、第2乗算器62からの第2乗算駆動信号V2とは加算器64に入力され、両信号が加算されて、増幅器52に出力され、増幅器52で増幅されて、スキャナ1に出力される。第1乗算器60からの第1乗算駆動信号V1と、第2乗算器62からの第2乗算駆動信号V2とが加算されることにより、図6に示す駆動信号Vが生成されて、増幅器52に出力される。
【0038】
振幅検出部54は、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46との静電容量の変化に基づいて、第3可動部12の振幅の時間変化を検出する。
【0039】
図7に実線で示すように、第3可動部12の振動には、第1可動部4の振動に破線で示す第2可動部6の振動が重畳している。第1可動部4の振動周期は短く、第2可動部6の振動周期は長い。この第3可動部12の振幅の時間変化から、周期の短い第1可動部4の振幅と周期の長い第2可動部6の振幅とを検出できる。
【0040】
振幅検出部54により検出される振幅信号は、制御部66に入力され、制御部66はこの振幅信号に基づいて、主走査駆動信号生成部56からの主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vc、及び副走査駆動信号生成部58からの副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdを調整する。
【0041】
次に、前述した本実施形態の2次元光走査装置の作動について説明する。
まず、図8に示すように、2次元光走査装置の駆動に先立って、制御パラメータと振幅の目標範囲とを予め決定する。主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcの電圧やデューティー比を変えれば第1可動部4の振幅が変化し、また、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdの電圧やデューティー比を変えれば第2可動部6の振幅が変化する。各信号の電圧やデューティー比を制御すれば振幅を制御でき、この振幅を制御するために設定できる値を制御パラメータとしている。
【0042】
本実施形態では、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧と主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧とデューティー比とを第1制御パラメータの候補とし、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とL電圧とデューティー比とを第2制御パラメータの候補としている。
【0043】
第1制御パラメータの値を変えると、第1可動部4の振幅が変化するが、第2可動部6の振幅も変化する。同様に、第2制御パラメータの値を変えると、第2可動部6の振幅が変化するが、第1可動部4の振幅も変化してしまう。しかし、第1制御パラメータの候補のうちには、第2可動部6の振幅の変化への影響が小さいものがあり、第2制御パラメータの候補のうちには、第1可動部4の振幅の変化への影響が小さいものがある。
【0044】
そこで、これらの第1制御パラメータと第2制御パラメータとの各候補の複数の組み合わせから、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせを選択する。
【0045】
選択に際しては、第1制御パラメータと第2制御パラメータとの各候補の複数の組み合わせによる振幅変化への寄与の影響を実験して決定すればよい。本実施形態では、実験として、第1制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧、及び第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした1つの組み合わせ、また、第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比、及び第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比とした1つの組み合わせ、更に、第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧、及び第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした1つの組み合わせ、の3組の組み合わせについてそれぞれ振幅への寄与について実験した。
【0046】
その結果を下記表1〜3に示す。実験の分析は、重回帰分布に基づいて行い、主副走査振幅を下記の回帰式により近似した。ここで、A1,A2,B1,B2は係数、C1,C2は定数項である。
【0047】
主走査振幅≒A1×第1制御パラメータの候補+B1×第2制御パラメータの候補+C1
副走査振幅≒A2×第1制御パラメータの候補+B2×第2制御パラメータの候補+C2
各係数が、A1/B1>A2/B2であれば、第1制御パラメータの候補の方が、第2制御パラメータの候補よりも、第1可動部4の振幅変化に影響が大きいと判断し、第1可動部4の振幅を制御する第1制御パラメータとして使用できる。また、第2制御パラメータの候補の方が、第1制御パラメータの候補よりも、第2可動部6の振幅変化に影響が大きいと判断し、第2可動部6の振幅を制御する第2制御パラメータとして使用できる。
【0048】
各係数が、A1/B1<A2/B2であれば、第2制御パラメータの候補の方が、第1制御パラメータの候補よりも、第1可動部4の振幅変化に影響が大きいと判断し、第1可動部4の振幅を制御する第1制御パラメータとして使用できる。また、第1制御パラメータの候補の方が、第2制御パラメータの候補よりも、第2可動部6の振幅変化に影響が大きいと判断し、第2可動部6の振幅を制御する第2制御パラメータとして使用できる。
【0049】
表1に第1制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧とし、第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした組み合わせの実験結果を示す。尚、他の制御パラメータはデフォルト値に固定した。
【0050】
【表1】
表1から重回帰分布により下記の近似式を作成した。その結果、下記のようになった。
【0051】
主走査振幅≒1.00×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧+0.20×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧+8.0
副走査振幅≒0.37×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧+1.02×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧−6.9
A1/B1=1.00/0.20=5>A2/B2=0.37/1.02=0.36
よって、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を第1制御パラメータとして使用でき、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を第2制御パラメータとして使用できる。
【0052】
表2に第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比とし、第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比とした組み合わせの実験結果を示す。尚、他の制御パラメータはデフォルト値に固定した。
【0053】
【表2】
表2から重回帰分布により下記の近似式を作成した。その結果、下記のようになった。
【0054】
主走査振幅≒0.50×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比+0.05×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比−0.17
副走査振幅≒0.90×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比+0.1×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比−22.5
A1/B1=0.5/0.05=10>A2/B2=0.9/0.1=9
よって、主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比を第1制御パラメータとして使用でき、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比を第2制御パラメータとして使用できる。
【0055】
表3に第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧とし、第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした組み合わせの実験結果を示す。尚、他の制御パラメータはデフォルト値に固定した。
【0056】
【表3】
表3から重回帰分布により下記の近似式を作成した。その結果、下記のようになった。
【0057】
主走査振幅≒0.32×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧+0.22×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧+8.09
副走査振幅≒1.18×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧+0.90×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧−21.73
A1/B1=0.32/0.22=1.45>A2/B2=1.18/0.9=1.31
よって、主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧を第1制御パラメータとして使用でき、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を第2制御パラメータとして使用できる。
【0058】
本実施形態では、3つの組み合わせのうち、A1/B1とA2/B2の差が最も大きい第1制御パラメータが副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧、第2制御パラメータが副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧の組み合わせを選択した(S100)。A1/B1とA2/B2の差が大きい程、各制御パラメータの値が該当の第1、第2可動部4,6の振幅に対しより影響が大きいことを意味する。そのため、この差が大きい組み合わせを選択することにより、より早く目標振幅に収束させることができる。
【0059】
続いて、第1可動部4の振幅の目標範囲と、第2可動部6の振幅の目標範囲とをそれぞれ決定する(S110)。これは第3可動部12の振動を制御して、第1可動部4の振幅及び第2可動部6の振幅を収めようとする範囲である。図7に実線で示す振幅が第1可動部4の振幅に対応し、破線で示す振幅が第2可動部6の振幅に対応する。
【0060】
次に、本実施形態の制御部66において実行される光走査制御処理について、図9に示すフローチャートによって説明する。
まず、図9に示すように、主走査駆動信号生成部56は主走査周波数fx(周期Tx)の主走査駆動信号Vaを第1乗算器60に出力し、主走査駆動信号Vaに対して位相が180度ずれた主走査シフト駆動信号Vcを第2乗算器62に出力する。副走査駆動信号生成部58は副走査周波数fy(周期Tx)の副走査駆動信号Vbを第1乗算器60に出力し、副走査駆動信号Vbに対して位相が180度ずれた副走査シフト駆動信号Vdを第2乗算器62に出力する。その際、各制御パラメータは予め設定されたデフォルト値とする。
【0061】
第1乗算器60は、主走査駆動信号生成部56からの主走査駆動信号Vaと、副走査駆動信号生成部58からの副走査駆動信号Vbとを乗算して生成した第1乗算駆動信号V1を加算器64に出力する。第2乗算器62は、主走査駆動信号生成部56からの主走査シフト駆動信号Vcと、副走査駆動信号生成部58からの副走査シフト駆動信号Vdとを乗算して生成した第2乗算駆動信号V2を加算器64に出力する。
【0062】
加算器64は第1乗算駆動信号V1と第2乗算駆動信号V2とを加算して生成した駆動信号Vを増幅器52に出力し、増幅器52はこの駆動信号Vを増幅して、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42との間に印加する(S200)。
【0063】
これにより、図7に示すように、第1乗算駆動信号V1と第2乗算駆動信号V2とが加算された駆動信号Vが第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42との間に印加され、第3可動部12が第3梁20,22の廻りに捩り振動する。
【0064】
第3可動部12の捩り振動の成分には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれているので、主走査周波数fxの振動成分により、第1可動部4が共振して、第1可動部4が一対の第1梁8,10の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは主走査方向に偏向される。
【0065】
また、副走査周波数fyの振動成分により、第2可動部6が共振して、第2可動部6が一対の第2梁14,16の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは副走査方向に偏向される。
【0066】
一方、振幅検出部54が、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46との静電容量の変化に基づいて、第3可動部12の振幅を検出する。第3可動部12の捩り振動には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれており、図7に実線で示すように、第3可動部12は主走査周波数fxで振動すると共に、副走査周波数fyでうねるような振動(図7に破線で示す振動成分)をする。
【0067】
振幅検出部54は、検出した静電容量の変化に基づいて検出した信号から、フィルタリング処理により主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分に分離する。主走査周波数fxの成分は第1可動部4の振幅に対応しており、副走査周波数fyの成分は第2可動部6の振幅に対応している。
【0068】
振幅検出部54が検出した主走査周波数fxの成分から、第1可動部4の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S210)。検出した第1可動部4の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S210:NO)、第1制御パラメータとしての副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、振幅を制御する(S220)。
【0069】
第1可動部4の振幅が目標範囲内になったときには(S210:YES)、振幅検出部54が検出した副走査周波数fyの成分から、第2可動部6の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S230)。検出した第2可動部6の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S230:NO)、第2制御パラメータとしての副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整して、振幅を制御する(S240)。第2可動部6の振幅が目標範囲内になったときには(S230:YES)、S210以下の処理を繰り返す。
【0070】
例えば、図10に示すように、時刻t0で、S210の処理により、第1可動部4の振幅が目標範囲より大きいと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。
【0071】
そして、時刻t1では、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整したことにより、第1可動部4の振幅は目標範囲内となったものの、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧調整の影響を受けて、S230の処理により、第2可動部6の振幅が目標範囲より小さくなったと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内とする。
【0072】
続いて、時刻t2では、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整したことにより、第2可動部6の振幅が目標範囲内となったものの、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧調整の影響を受けて、第1可動部4の振幅が大きくなると、S210の処理により、目標範囲内にないと判断する。
【0073】
しかし、時刻t0のときより、目標範囲からの第1可動部4の振幅のずれが低減している。第1可動部4の振幅が目標範囲内にないので、再び、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。
【0074】
そして、時刻t3で、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧調整の影響を受けて、S230の処理により、第2可動部6の振幅が目標範囲内より小さくなったと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内とする。その際、時刻t1のときより、目標範囲からの第2可動部6の振幅のずれが低減している。
【0075】
次に、時刻t4で、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧調整の影響を受けて、S210の処理により、第1可動部4の振幅が目標範囲より大きいと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。第1制御パラメータの副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧の調整と、第2制御パラメータの副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧の調整とを繰り返すことにより、時刻t5のように、第1可動部4の振幅と第2可動部6の振幅とがそれぞれの目標範囲内となるように収束する。
【0076】
このように、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータ(副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧)と、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータ(副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧)との組み合わせにより、両制御パラメータを変化させて駆動信号Vを調整し、第1可動部4の振幅と第2可動部6の振幅とを制御するので、それぞれの振幅が目標範囲内に速やかに収束する。
【0077】
尚、前述した第1実施形態では、最初に第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内としてから、次に、第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内となるように制御しているが、これに限らず、最初に第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内としてから、次に、第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内となるように制御してもよい。そして、更に、第2制御パラメータと第1制御パラメータの調整を繰り返してもよい。
【0078】
次に、前述した第1実施形態と異なる第2実施形態について、図11〜図17によって説明する。第1実施形態と同じ部材については同一番号を付して詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、図11に示すように、主走査駆動信号生成部76が主走査駆動信号Vaを加算器64に出力し、副走査駆動信号生成部78が副走査駆動信号Vbを加算器64に出力する。第2実施形態では、第1実施形態と異なり、主走査シフト駆動信号Vcと副走査シフト駆動信号Vdとを生成せず、第1乗算器60と第2乗算器62を備えていない点で異なる。
【0079】
また、スキャナ1は、図2、図12、図13に示すように、第3可動部12側の一方の櫛歯部30の可動電極30aと、固定部18側の一方の櫛歯部34の薄膜電極46とが、信号生成部70の増幅器52に接続されている。また、第3可動部12側の他方の櫛歯部28の可動電極28aと固定部18側の他方の櫛歯部32の薄膜電極40とが、振幅検出部54に接続されている。
【0080】
本第2実施形態では、図14に示すように、可動電極30aと薄膜電極46との間に電圧が印加されると、互いに引き合い、+方向に静電気力が働く。尚、本第2実施形態では、櫛歯26が駆動部を構成している。
【0081】
図14に示すように、第3可動部12が一対の第3梁20,22の廻りに捩り振動した際、1周期(1往復の捩り振動)で、第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aは、固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46に1回接近する。
【0082】
静電気力により第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aを固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46に引き寄せるように、電圧を印加する。よって、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、1回電圧を印加して、第3可動部12を捩り振動させることができる。
【0083】
信号生成部70は、主走査駆動信号生成部76と副走査駆動信号生成部78とを備え、主走査駆動信号生成部76は主走査周波数の主走査駆動信号Vaを加算器64に出力する。主走査駆動信号Vaは、図15に示すように、第1可動部4を一対の第1梁8,10の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた主走査周波数fx(周期Tx)の信号であり、第1可動部4や第1梁8,10の慣性モーメントやバネ定数により定まる。
【0084】
一方、副走査駆動信号生成部78は副走査周波数の副走査駆動信号Vbを加算器64に出力する。副走査駆動信号Vbは、図15に示すように、第2可動部6を一対の第2梁14,16の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた副走査周波数fy(周期Ty)の信号であり、第1可動部4と第2可動部6や第2梁14,16の慣性モーメントやバネ定数により定まる。
【0085】
本第2実施形態では、主走査駆動信号Vaのデューティー比を第1制御パラメータとし、副走査駆動信号Vbのデューティー比を第2制御パラメータとしている。各制御パラメータを決定する際、前述した第1実施形態と同様に、主走査駆動信号VaのH電圧と主走査駆動信号Vaのデューティー比との2つを第1制御パラメータの候補とし、副走査駆動信号VbのH電圧と副走査駆動信号Vbのデューティー比との2つを第2制御パラメータの候補として、各制御パラメータの振幅への影響を実験した。
【0086】
そして、第1制御パラメータと第2制御パラメータとの複数の組み合わせから、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータ(主走査駆動信号Vaのデューティー比)と、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータ(副走査駆動信号Vbのデューティー比)との組み合わせを選択した。続いて、第1可動部4と第2可動部6とのそれぞれの振幅の目標範囲を決定する。
【0087】
次に、本第2実施形態の制御部80において実行される光走査制御処理について、図17に示すフローチャートによって説明する。
まず、図17に示すように、主走査駆動信号生成部76は主走査周波数fx(周期Tx)の主走査駆動信号Vaを加算器64に出力する。副走査駆動信号生成部78は副走査周波数fy(周期Tx)の副走査駆動信号Vbを加算器64に出力する。その際、各制御パラメータは予め設定されたデフォルト値とする。
【0088】
加算器64は主走査駆動信号Vaと副走査駆動信号Vbとを加算して生成した駆動信号Vを増幅器52に出力し、増幅器52はこの駆動信号Vを増幅して、第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aと固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46との間に印加する(S300)。
【0089】
これにより、図16に示すように、主走査駆動信号Vaと副走査駆動信号Vbとが加算された駆動信号Vが第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aと固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46との間に印加され、第3可動部12が第3梁20,22の廻りに捩り振動する。
【0090】
第3可動部12の捩り振動の成分には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれているので、主走査周波数fxの振動成分により、第1可動部4が共振して、第1可動部4が一対の第1梁8,10の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは主走査方向に偏向される。
【0091】
また、副走査周波数fyの振動成分により、第2可動部6が共振して、第2可動部6が一対の第2梁14,16の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは副走査方向に偏向される。
【0092】
一方、振幅検出部54が、第3可動部12側の櫛歯部28の可動電極28aと固定部18側の櫛歯部32の薄膜電極40との静電容量の変化に基づいて、第3可動部12の振幅を検出する。第3可動部12の捩り振動には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれており、図16に実線で示すように、第3可動部12は主走査周波数fxで振動すると共に、副走査周波数fyでうねるような振動(図16に破線で示す振動成分)をする。
【0093】
振幅検出部54は、検出した静電容量の変化に基づいて検出した信号から、フィルタリング処理により主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分に分離する。主走査周波数fxの成分は第1可動部4の振幅に対応しており、副走査周波数fyの成分は第2可動部6の振幅に対応している。
【0094】
まず、振幅検出部54が検出した主走査周波数fxの成分から、第1可動部4の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S310)。検出した第1可動部4の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S310:NO)、第1制御パラメータとしての主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整して、振幅を制御する(S320)。
【0095】
第1可動部4の振幅が目標範囲内になったときには(S310:YES)、振幅検出部54が検出した副走査周波数fyの成分から、第2可動部6の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S330)。検出した第2可動部6の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S330:NO)、第2制御パラメータとしての副走査駆動信号Vbのデューティー比を調整して、振幅を制御する(S340)。第2可動部6の振幅が目標範囲内になったときには(S330:YES)、S310以下の処理を繰り返す。
【0096】
第1可動部4の振幅が目標範囲より大きいと、主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。そして、主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整したことにより、第1可動部4の振幅は目標範囲内となったものの、主走査駆動信号Vaのデューティー比調整の影響を受けて、第2可動部6の振幅が目標範囲からずれると、副走査駆動信号Vbのデューティー比を調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内とする。
【0097】
続いて、副走査駆動信号Vbのデューティー比を調整したことにより、第2可動部6の振幅が目標範囲内となったものの、副走査駆動信号Vbのデューティー比調整の影響を受けて、第1可動部4の振幅が目標範囲内からずれると、再び、主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。
【0098】
そして、第1実施形態と同様に、第1制御パラメータの主走査駆動信号Vaのデューティー比の調整と、第2制御パラメータの副走査駆動信号Vbのデューティー比の調整とを繰り返すことにより、第1可動部4の振幅と第2可動部6の振幅とがそれぞれの目標範囲内となるように収束する。
【0099】
このように、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータ(主走査駆動信号Vaのデューティー比)と、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータ(副走査駆動信号Vbのデューティー比)との組み合わせにより、両制御パラメータを変化させて駆動信号Vを調整し、第1可動部4と第2可動部6とのそれぞれの振幅を制御するので、それぞれの振幅が目標範囲内に速やかに収束する。
【0100】
尚、前述した第2実施形態でも、最初に第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内としてから、次に、第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内となるように制御しているが、これに限らず、最初に第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内としてから、次に、第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内となるように制御してもよい。そして、更に、第2制御パラメータと第1制御パラメータの調整を繰り返してもよい。
【0101】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0102】
1…スキャナ 2…反射面
4…第1可動部 6…第2可動部
8,10…第1梁 12…第3可動部
14,16…第2梁 18…固定部
20,22…第3梁 24,26…櫛歯
28,30,32,34…櫛歯部 28a,30a…可動電極
36,42…固定電極 38,44…絶縁膜
40,46…薄膜電極 50,70…信号生成部
52…増幅器 54…振幅検出部
56,76…主走査駆動信号生成部 58,78…副走査駆動信号生成部
60…第1乗算器 62…第2乗算器
64…加算器 66,80…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振揺動する可動部に設けた反射面により光源からの光ビームを主走査方向と副走査方向との2方向に偏向する2次元光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、共振揺動する可動部に設けた反射面により光源からの光ビームを偏向する2次元光走査装置として、例えば、特許文献1にあるように、反射面を設けた第1可動部の外側に第2可動部を設け、第1可動部と第2可動部とを第1梁により捩り振動可能に連結し、また、第2可動部の外側に第3可動部を設け、第2可動部と第3可動部とを第2梁により捩り振動可能に連結し、更に、第3可動部の外側に固定部を設け、第3可動部と固定部とを第3梁により捩り振動可能に連結した装置が知られている。この装置では、固定部に圧電素子を設け、圧電素子により第3可動部を第3梁の廻りに振動させて、第1可動部を第1梁及び第2可動部を第2梁の廻りに共振させて、光ビームを主走査方向と副走査方向とに偏向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−199099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来のものでは、加振軸が第3梁の1軸であるのに対し、異なる周波数で第1梁と第2梁との2軸を揺動させるため、各々の軸を振動させる駆動力を独立に制御するのが難しく、主走査方向と副走査方向との2方向のそれぞれの振幅をそれぞれ目標範囲に制御するのが難しいという問題があった。
【0005】
例えば、主走査方向の振幅を増やそうと印加電圧を増加させると、振幅を変化させたくない副走査方向の振幅も増加してしまうという問題があった。
本発明の課題は、主走査方向と副走査方向との2方向の振幅をそれぞれ目標範囲に速やかに制御できる2次元光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
光源からの光ビームを反射させる反射面を有する第1可動部の外側に第2可動部を設け、前記第1可動部と前記第2可動部とを弾性を有する第1梁により連結して前記第1可動部を前記第1梁の廻りに捩り振動可能に支持し、また、前記第2可動部の外側に第3可動部を設け、前記第2可動部と前記第3可動部とを弾性を有すると共に前記第1梁の長手方向に交差する第2梁により連結して前記第2可動部を前記第2梁の廻りに捩り振動可能に支持し、更に、前記第3可動部の外側に固定部を設け、前記第3可動部と前記固定部とを弾性を有すると共に前記第1梁及び前記第2梁の長手方向にそれぞれ交差する第3梁により連結して前記第3可動部を捩り振動可能に支持し、前記第3可動部を振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させ前記光ビームを偏向する2次元光走査装置において、
前記第3可動部を駆動信号に基づいて振動させる駆動部を備え、
また、前記第1可動部を前記第1梁の廻りに共振させる主走査駆動信号と、前記第2可動部を前記第2梁の廻りに共振させる副走査駆動信号とに応じた駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記駆動部に出力して前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させる信号生成部を備え、
更に、前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせにより、前記両制御パラメータを変化させて前記駆動信号を調整し、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を制御する制御部を備え、
かつ、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出する振幅検出部を設け、前記制御部は前記振幅検出部により検出される前記第1可動部と前記第2可動部との振幅に基づいて、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整することを特徴とする2次元光走査装置がそれである。
【0007】
前記制御部は前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整して、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよい。その際、前記制御部は前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよいし、前記制御部は前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよい。更に、前記制御部は前記第1制御パラメータ及び前記第2制御パラメータの調整を交互に繰り返し、前記第1可動部の振幅及び前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御するようにしてもよい。
【0008】
また、前記駆動部は、前記第3可動部の可動電極と前記固定部の固定電極とを対向して配置し、前記可動電極と前記固定電極との間に電圧を印加して前記可動電極と前記固定電極との間の静電気力により前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させるようにしてもよい。更に、前記振幅検出部は、前記第3可動部に設けた可動電極と前記固定部に設けた薄膜電極との間の静電容量の変化に基づいて前記第3可動部の振幅を検出し、前記第3可動部の振幅に基づいて前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出するようにしてもよい。
【0009】
前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、複数の組み合わせから、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第1可動部の振幅への影響及び前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第2可動部の振幅への影響に基づいて、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第2制御パラメータとの組み合わせとするとよい。その際、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記副走査駆動信号の電圧であってもよい。あるいは、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記主走査駆動信号及び前記副走査駆動信号のデューティー比であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の2次元光走査装置は、第1可動部の振幅変化への寄与が大きく第2可動部の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、第2可動部の振幅変化への寄与が大きく第1可動部の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせにより、両制御パラメータを変化させて駆動信号を調整し、第1可動部と第2可動部との振幅を制御するので、主走査方向と副走査方向との2方向の振幅が目標範囲内に速やかに収束するという効果を奏する。
【0011】
また、第1制御パラメータと第2制御パラメータとを調整して、第1可動部と第2可動部との振幅を予め設定された目標範囲内に制御することにより、適切に振幅を制御できる。その際、第1制御パラメータを調整して第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、第2制御パラメータを調整して第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを繰り返したり、第2制御パラメータを調整して第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、第1制御パラメータを調整して第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを繰り返したりすることにより速やかに収束を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態としての2次元光走査装置の概略構成図である。
【図2】本第1実施形態のスキャナの概略拡大構成図である。
【図3】図2のaa拡大断面図である。
【図4】図2のbb拡大断面図である。
【図5】図2のcc拡大断面図である。
【図6】本第1実施形態の駆動信号、主走査駆動信号、副走査駆動信号、主走査シフト駆動信号、副走査シフト駆動信号を示す説明図である。
【図7】本第1実施形態の第3可動部の振幅信号と駆動信号とを示す説明図である。
【図8】本第1実施形態の制御パラメータを決定する手順を示すフローチャートである。
【図9】本第1実施形態の光走査制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】本第1実施形態の第1可動部と第2可動部との振幅を目標範囲に制御する説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態としての2次元光走査装置の概略構成図である。
【図12】第1実施形態の図3に相当する第2実施形態のスキャナの拡大断面図である。
【図13】第1実施形態の図4に相当する第2実施形態のスキャナの拡大断面図である。
【図14】第1実施形態の図5に相当する第2実施形態のスキャナの拡大断面図である。
【図15】本第2実施形態の駆動信号、主走査駆動信号、副走査駆動信号を示す説明図である。
【図16】本第2実施形態の第3可動部の振幅信号と駆動信号とを示す説明図である。
【図17】本第2実施形態の光走査制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1はスキャナで、スキャナ1は半導体レーザ等の図示しない光源からの光ビームをスクリーンや検出するバーコード等に向けて反射する。スキャナ1は、本実施形態では、図2に示すように、光ビームを反射する反射面2が設けられた第1可動部4を備え、第1可動部4の外側には四角枠状の第2可動部6が設けられている。第1可動部4と第2可動部6とは一対の第1梁8,10により連結されている。
【0014】
一対の第1梁8,10は弾性を有すると共に、一対の第1梁8,10は同一直線上に配置されており、第1梁8,10の長手方向の中心線上に第1可動部4の重心が配置されて、図2に矢印Aで示すように、第1可動部4を第1梁8,10の廻りに捩り振動可能に支持している。図2に矢印Aで示すように、第1可動部4を一対の第1梁8,10の廻りに捩り振動させて、反射面2により光ビームを反射して主走査方向(X方向)に偏向することができるように構成されている。
【0015】
また、第2可動部6の外側には四角枠状の第3可動部12が設けられている。第2可動部6と第3可動部12とは一対の第2梁14,16により連結されている。一対の第2梁14,16は弾性を有すると共に、一対の第2梁14,16は同一直線上に配置されている。
【0016】
第2梁14,16の長手方向と第1梁8,10の長手方向とは交差して、本実施形態では直交して形成されており、第1梁8,10の長手方向の中心線と第2梁14,16の長手方向の中心線との交点上に、第1可動部4の重心と第2可動部6の重心とが配置されて、図2に矢印Bで示すように、第2可動部6を第2梁14,16の廻りに捩り振動可能に支持している。
【0017】
図2に矢印Bで示すように、第2可動部6を一対の第2梁14,16の廻りに捩り振動させて、反射面2により光ビームを反射して副走査方向(Y方向)に偏向することができるように構成されている。
【0018】
更に、第3可動部12の外側には四角枠状の固定部18が設けられている。第3可動部12と固定部18とは一対の第3梁20,22により連結されている。一対の第3梁20,22は弾性を有すると共に、一対の第3梁20,22は同一直線上に配置されている。第3梁20,22の長手方向と第1梁8,10及び第2梁14,16の長手方向とはそれぞれ交差して、本実施形態ではそれぞれ45度をなすように交差して形成されている。
【0019】
また、第3梁20,22の長手方向の中心線は第1梁8,10の長手方向の中心線と第2梁14,16の長手方向の中心線との交点を通るように配置されて、図2に矢印Cで示すように、第3可動部12を第3梁20,22の廻りに捩り振動可能に支持している。尚、第1可動部4、第2可動部6、第3可動部12、固定部18は、同一平面上に設けられている。
【0020】
第3可動部12と固定部18との間には、一対の櫛歯24,26が対向して設けられている。一対の櫛歯24,26は第3可動部12から固定部18に向かって、一対の第3梁20,22の長手方向と直交方向に突出された多数の矩形状の櫛歯部28,30を備えると共に、固定部18から第3可動部12に向かって、一対の第3梁20,22の長手方向と直交方向に突出された多数の矩形状の櫛歯部32,34を備えている。
【0021】
第3可動部12側の各櫛歯部28,30と固定部18側の各櫛歯部32,34とは、隙間を空けて互い違いに、第3可動部12側の各櫛歯部28,30と固定部18側の各櫛歯部32,34とが互いに間に入り込むように配置されている。尚、各櫛歯部28,30,32,34は、第3可動部12と固定部18との同一平面上に対向して設けられている。
【0022】
図3に示すように、第3可動部12側の櫛歯部28は一体の可動電極28aとして形成され、固定部18側の櫛歯部32は固定電極36と絶縁膜38と薄膜電極40とが順に積層されて形成されている。
【0023】
また、図4に示すように、第3可動部12側の櫛歯部30は一体の可動電極30aとして形成され、固定部18側の櫛歯部34は固定電極42と絶縁膜44と薄膜電極46とが順に積層されて形成されている。
【0024】
第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと、固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42との間に電圧を印加すると、静電気力により第3可動部12側の櫛歯部28,30が固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42に引き寄せられて、第3可動部12が一対の第3梁20,22の廻りに図5の矢印(図2の矢印C)のように捩られる。尚、本実施形態では、一対の櫛歯24,26が駆動部を構成している。駆動部は一対の櫛歯24,26に限らず、圧電素子等を用いたものでもよい。
【0025】
また、その際、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46との間の静電容量が変化し、静電容量の変化を検出することにより、第3可動部12の第3梁20,22廻りの振幅の時間変化を検出することができる。
【0026】
図1、図3、図4に示すように、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと、固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42とは、信号生成部50の増幅器52に接続されている。また、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46とは、振幅検出部54に接続されている。
【0027】
信号生成部50は、主走査駆動信号生成部56と副走査駆動信号生成部58とを備え、主走査駆動信号生成部56は主走査周波数の主走査駆動信号Vaを第1乗算器60に出力し、この主走査駆動信号Vaに対して位相を180度ずらした主走査シフト駆動信号Vcを第2乗算器62に出力する。
【0028】
主走査駆動信号Vaは、第1可動部4を一対の第1梁8,10の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた主走査周波数fx(周期Tx)の信号であり、第1可動部4や第1梁8,10の慣性モーメントやバネ定数により定まる。また、この主走査駆動信号Vaはデューティー比が0%を超え50%を超えない信号として生成されている。デューティー比は、図6に示すように、ハイレベルの期間ONとローレベルの期間OFFとの比(=ON/(ON+OFF))である。主走査駆動信号Vaのデューティー比は、0%を超え50%を超えない範囲で実験等により決定すればよい。尚、本実施形態では、デューティー比は25%をデフォルト値としている。
【0029】
図5に示すように、第3可動部12が一対の第3梁20,22の廻りに捩り振動した際、1周期(1往復の捩り振動)で、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aは、固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42を2回横切る。
【0030】
静電気力により第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aを固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42に引き寄せるように、電圧を印加する。よって、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、2回電圧を印加して、第3可動部12を捩り振動させることができる。
【0031】
デューティー比が50%を超えない主走査駆動信号Vaと、この主走査駆動信号Vaの位相を180度ずらした主走査シフト駆動信号Vcとを生成して、主走査駆動信号Vaと主走査シフト駆動信号Vcとを後述するように加算して、共振周波数の2倍の周波数を有する信号を生成する。これにより、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、2回電圧を印加できる。
【0032】
一方、図6に示すように、副走査駆動信号生成部58は副走査周波数の副走査駆動信号Vbを第1乗算器60に出力し、この副走査駆動信号Vbに対して位相を180度ずらした副走査シフト駆動信号Vdを第2乗算器62に出力する。
【0033】
副走査駆動信号Vbは、第2可動部6を一対の第2梁14,16の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた副走査周波数fy(周期Ty)の信号であり、第1可動部4と第2可動部6や第2梁14,16の慣性モーメントやバネ定数により定まる。また、本実施形態では、この副走査駆動信号Vbはデューティー比を50%(デフォルト値)の信号として生成されるが、これに限らず、実験等により決定すればよい。
【0034】
前述した主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcと同様、固有振動数に応じた副走査周波数fyで第3可動部12を振動させる際、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、2回電圧を印加して、第3可動部12を揺動させることができる。
【0035】
第1乗算器60は、主走査駆動信号生成部56からの主走査駆動信号Vaと、副走査駆動信号生成部58からの副走査駆動信号Vbとを乗算して、第1乗算駆動信号V1を生成する。副走査駆動信号Vbには予めバイアス電圧が付加されており、ハイレベルのH電圧とローレベルのL電圧とが副走査周波数fyで繰り返される。主走査駆動信号Vaと副走査駆動信号Vbを乗算することにより、主走査駆動信号Vaは副走査駆動信号Vbの周期に応じてハイレベルとローレベルとの電圧になる。
【0036】
第2乗算器62は、主走査駆動信号生成部56からの主走査シフト駆動信号Vcと、副走査駆動信号生成部58の副走査シフト駆動信号Vdとを乗算して、第2乗算駆動信号V2を生成する。副走査シフト駆動信号Vdには予めバイアス電圧が付加されており、ハイレベルのH電圧とローレベルのL電圧とが副走査周波数fyで繰り返される。主走査シフト駆動信号Vcと副走査シフト駆動信号Vdとを乗算することにより、主走査シフト駆動信号Vcは副走査シフト駆動信号Vdの周期に応じてハイレベルとローレベルとの電圧になる。
【0037】
第1乗算器60からの第1乗算駆動信号V1と、第2乗算器62からの第2乗算駆動信号V2とは加算器64に入力され、両信号が加算されて、増幅器52に出力され、増幅器52で増幅されて、スキャナ1に出力される。第1乗算器60からの第1乗算駆動信号V1と、第2乗算器62からの第2乗算駆動信号V2とが加算されることにより、図6に示す駆動信号Vが生成されて、増幅器52に出力される。
【0038】
振幅検出部54は、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46との静電容量の変化に基づいて、第3可動部12の振幅の時間変化を検出する。
【0039】
図7に実線で示すように、第3可動部12の振動には、第1可動部4の振動に破線で示す第2可動部6の振動が重畳している。第1可動部4の振動周期は短く、第2可動部6の振動周期は長い。この第3可動部12の振幅の時間変化から、周期の短い第1可動部4の振幅と周期の長い第2可動部6の振幅とを検出できる。
【0040】
振幅検出部54により検出される振幅信号は、制御部66に入力され、制御部66はこの振幅信号に基づいて、主走査駆動信号生成部56からの主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vc、及び副走査駆動信号生成部58からの副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdを調整する。
【0041】
次に、前述した本実施形態の2次元光走査装置の作動について説明する。
まず、図8に示すように、2次元光走査装置の駆動に先立って、制御パラメータと振幅の目標範囲とを予め決定する。主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcの電圧やデューティー比を変えれば第1可動部4の振幅が変化し、また、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdの電圧やデューティー比を変えれば第2可動部6の振幅が変化する。各信号の電圧やデューティー比を制御すれば振幅を制御でき、この振幅を制御するために設定できる値を制御パラメータとしている。
【0042】
本実施形態では、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧と主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧とデューティー比とを第1制御パラメータの候補とし、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とL電圧とデューティー比とを第2制御パラメータの候補としている。
【0043】
第1制御パラメータの値を変えると、第1可動部4の振幅が変化するが、第2可動部6の振幅も変化する。同様に、第2制御パラメータの値を変えると、第2可動部6の振幅が変化するが、第1可動部4の振幅も変化してしまう。しかし、第1制御パラメータの候補のうちには、第2可動部6の振幅の変化への影響が小さいものがあり、第2制御パラメータの候補のうちには、第1可動部4の振幅の変化への影響が小さいものがある。
【0044】
そこで、これらの第1制御パラメータと第2制御パラメータとの各候補の複数の組み合わせから、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせを選択する。
【0045】
選択に際しては、第1制御パラメータと第2制御パラメータとの各候補の複数の組み合わせによる振幅変化への寄与の影響を実験して決定すればよい。本実施形態では、実験として、第1制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧、及び第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした1つの組み合わせ、また、第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比、及び第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比とした1つの組み合わせ、更に、第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧、及び第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした1つの組み合わせ、の3組の組み合わせについてそれぞれ振幅への寄与について実験した。
【0046】
その結果を下記表1〜3に示す。実験の分析は、重回帰分布に基づいて行い、主副走査振幅を下記の回帰式により近似した。ここで、A1,A2,B1,B2は係数、C1,C2は定数項である。
【0047】
主走査振幅≒A1×第1制御パラメータの候補+B1×第2制御パラメータの候補+C1
副走査振幅≒A2×第1制御パラメータの候補+B2×第2制御パラメータの候補+C2
各係数が、A1/B1>A2/B2であれば、第1制御パラメータの候補の方が、第2制御パラメータの候補よりも、第1可動部4の振幅変化に影響が大きいと判断し、第1可動部4の振幅を制御する第1制御パラメータとして使用できる。また、第2制御パラメータの候補の方が、第1制御パラメータの候補よりも、第2可動部6の振幅変化に影響が大きいと判断し、第2可動部6の振幅を制御する第2制御パラメータとして使用できる。
【0048】
各係数が、A1/B1<A2/B2であれば、第2制御パラメータの候補の方が、第1制御パラメータの候補よりも、第1可動部4の振幅変化に影響が大きいと判断し、第1可動部4の振幅を制御する第1制御パラメータとして使用できる。また、第1制御パラメータの候補の方が、第2制御パラメータの候補よりも、第2可動部6の振幅変化に影響が大きいと判断し、第2可動部6の振幅を制御する第2制御パラメータとして使用できる。
【0049】
表1に第1制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧とし、第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした組み合わせの実験結果を示す。尚、他の制御パラメータはデフォルト値に固定した。
【0050】
【表1】
表1から重回帰分布により下記の近似式を作成した。その結果、下記のようになった。
【0051】
主走査振幅≒1.00×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧+0.20×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧+8.0
副走査振幅≒0.37×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧+1.02×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧−6.9
A1/B1=1.00/0.20=5>A2/B2=0.37/1.02=0.36
よって、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を第1制御パラメータとして使用でき、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を第2制御パラメータとして使用できる。
【0052】
表2に第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比とし、第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比とした組み合わせの実験結果を示す。尚、他の制御パラメータはデフォルト値に固定した。
【0053】
【表2】
表2から重回帰分布により下記の近似式を作成した。その結果、下記のようになった。
【0054】
主走査振幅≒0.50×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比+0.05×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比−0.17
副走査振幅≒0.90×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比+0.1×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比−22.5
A1/B1=0.5/0.05=10>A2/B2=0.9/0.1=9
よって、主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号Vcのデューティー比を第1制御パラメータとして使用でき、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号Vdのデューティー比を第2制御パラメータとして使用できる。
【0055】
表3に第1制御パラメータの候補を主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧とし、第2制御パラメータの候補を副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧とした組み合わせの実験結果を示す。尚、他の制御パラメータはデフォルト値に固定した。
【0056】
【表3】
表3から重回帰分布により下記の近似式を作成した。その結果、下記のようになった。
【0057】
主走査振幅≒0.32×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧+0.22×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧+8.09
副走査振幅≒1.18×主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧+0.90×副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧−21.73
A1/B1=0.32/0.22=1.45>A2/B2=1.18/0.9=1.31
よって、主走査駆動信号Va及び主走査シフト駆動信号VcのH電圧を第1制御パラメータとして使用でき、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を第2制御パラメータとして使用できる。
【0058】
本実施形態では、3つの組み合わせのうち、A1/B1とA2/B2の差が最も大きい第1制御パラメータが副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧、第2制御パラメータが副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧の組み合わせを選択した(S100)。A1/B1とA2/B2の差が大きい程、各制御パラメータの値が該当の第1、第2可動部4,6の振幅に対しより影響が大きいことを意味する。そのため、この差が大きい組み合わせを選択することにより、より早く目標振幅に収束させることができる。
【0059】
続いて、第1可動部4の振幅の目標範囲と、第2可動部6の振幅の目標範囲とをそれぞれ決定する(S110)。これは第3可動部12の振動を制御して、第1可動部4の振幅及び第2可動部6の振幅を収めようとする範囲である。図7に実線で示す振幅が第1可動部4の振幅に対応し、破線で示す振幅が第2可動部6の振幅に対応する。
【0060】
次に、本実施形態の制御部66において実行される光走査制御処理について、図9に示すフローチャートによって説明する。
まず、図9に示すように、主走査駆動信号生成部56は主走査周波数fx(周期Tx)の主走査駆動信号Vaを第1乗算器60に出力し、主走査駆動信号Vaに対して位相が180度ずれた主走査シフト駆動信号Vcを第2乗算器62に出力する。副走査駆動信号生成部58は副走査周波数fy(周期Tx)の副走査駆動信号Vbを第1乗算器60に出力し、副走査駆動信号Vbに対して位相が180度ずれた副走査シフト駆動信号Vdを第2乗算器62に出力する。その際、各制御パラメータは予め設定されたデフォルト値とする。
【0061】
第1乗算器60は、主走査駆動信号生成部56からの主走査駆動信号Vaと、副走査駆動信号生成部58からの副走査駆動信号Vbとを乗算して生成した第1乗算駆動信号V1を加算器64に出力する。第2乗算器62は、主走査駆動信号生成部56からの主走査シフト駆動信号Vcと、副走査駆動信号生成部58からの副走査シフト駆動信号Vdとを乗算して生成した第2乗算駆動信号V2を加算器64に出力する。
【0062】
加算器64は第1乗算駆動信号V1と第2乗算駆動信号V2とを加算して生成した駆動信号Vを増幅器52に出力し、増幅器52はこの駆動信号Vを増幅して、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42との間に印加する(S200)。
【0063】
これにより、図7に示すように、第1乗算駆動信号V1と第2乗算駆動信号V2とが加算された駆動信号Vが第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の固定電極36,42との間に印加され、第3可動部12が第3梁20,22の廻りに捩り振動する。
【0064】
第3可動部12の捩り振動の成分には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれているので、主走査周波数fxの振動成分により、第1可動部4が共振して、第1可動部4が一対の第1梁8,10の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは主走査方向に偏向される。
【0065】
また、副走査周波数fyの振動成分により、第2可動部6が共振して、第2可動部6が一対の第2梁14,16の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは副走査方向に偏向される。
【0066】
一方、振幅検出部54が、第3可動部12側の櫛歯部28,30の可動電極28a,30aと固定部18側の櫛歯部32,34の薄膜電極40,46との静電容量の変化に基づいて、第3可動部12の振幅を検出する。第3可動部12の捩り振動には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれており、図7に実線で示すように、第3可動部12は主走査周波数fxで振動すると共に、副走査周波数fyでうねるような振動(図7に破線で示す振動成分)をする。
【0067】
振幅検出部54は、検出した静電容量の変化に基づいて検出した信号から、フィルタリング処理により主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分に分離する。主走査周波数fxの成分は第1可動部4の振幅に対応しており、副走査周波数fyの成分は第2可動部6の振幅に対応している。
【0068】
振幅検出部54が検出した主走査周波数fxの成分から、第1可動部4の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S210)。検出した第1可動部4の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S210:NO)、第1制御パラメータとしての副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、振幅を制御する(S220)。
【0069】
第1可動部4の振幅が目標範囲内になったときには(S210:YES)、振幅検出部54が検出した副走査周波数fyの成分から、第2可動部6の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S230)。検出した第2可動部6の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S230:NO)、第2制御パラメータとしての副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整して、振幅を制御する(S240)。第2可動部6の振幅が目標範囲内になったときには(S230:YES)、S210以下の処理を繰り返す。
【0070】
例えば、図10に示すように、時刻t0で、S210の処理により、第1可動部4の振幅が目標範囲より大きいと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。
【0071】
そして、時刻t1では、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整したことにより、第1可動部4の振幅は目標範囲内となったものの、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧調整の影響を受けて、S230の処理により、第2可動部6の振幅が目標範囲より小さくなったと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内とする。
【0072】
続いて、時刻t2では、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整したことにより、第2可動部6の振幅が目標範囲内となったものの、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧調整の影響を受けて、第1可動部4の振幅が大きくなると、S210の処理により、目標範囲内にないと判断する。
【0073】
しかし、時刻t0のときより、目標範囲からの第1可動部4の振幅のずれが低減している。第1可動部4の振幅が目標範囲内にないので、再び、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。
【0074】
そして、時刻t3で、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧調整の影響を受けて、S230の処理により、第2可動部6の振幅が目標範囲内より小さくなったと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧を調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内とする。その際、時刻t1のときより、目標範囲からの第2可動部6の振幅のずれが低減している。
【0075】
次に、時刻t4で、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧調整の影響を受けて、S210の処理により、第1可動部4の振幅が目標範囲より大きいと判断すると、副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。第1制御パラメータの副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧の調整と、第2制御パラメータの副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧の調整とを繰り返すことにより、時刻t5のように、第1可動部4の振幅と第2可動部6の振幅とがそれぞれの目標範囲内となるように収束する。
【0076】
このように、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータ(副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのL電圧)と、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータ(副走査駆動信号Vb及び副走査シフト駆動信号VdのH電圧)との組み合わせにより、両制御パラメータを変化させて駆動信号Vを調整し、第1可動部4の振幅と第2可動部6の振幅とを制御するので、それぞれの振幅が目標範囲内に速やかに収束する。
【0077】
尚、前述した第1実施形態では、最初に第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内としてから、次に、第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内となるように制御しているが、これに限らず、最初に第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内としてから、次に、第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内となるように制御してもよい。そして、更に、第2制御パラメータと第1制御パラメータの調整を繰り返してもよい。
【0078】
次に、前述した第1実施形態と異なる第2実施形態について、図11〜図17によって説明する。第1実施形態と同じ部材については同一番号を付して詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、図11に示すように、主走査駆動信号生成部76が主走査駆動信号Vaを加算器64に出力し、副走査駆動信号生成部78が副走査駆動信号Vbを加算器64に出力する。第2実施形態では、第1実施形態と異なり、主走査シフト駆動信号Vcと副走査シフト駆動信号Vdとを生成せず、第1乗算器60と第2乗算器62を備えていない点で異なる。
【0079】
また、スキャナ1は、図2、図12、図13に示すように、第3可動部12側の一方の櫛歯部30の可動電極30aと、固定部18側の一方の櫛歯部34の薄膜電極46とが、信号生成部70の増幅器52に接続されている。また、第3可動部12側の他方の櫛歯部28の可動電極28aと固定部18側の他方の櫛歯部32の薄膜電極40とが、振幅検出部54に接続されている。
【0080】
本第2実施形態では、図14に示すように、可動電極30aと薄膜電極46との間に電圧が印加されると、互いに引き合い、+方向に静電気力が働く。尚、本第2実施形態では、櫛歯26が駆動部を構成している。
【0081】
図14に示すように、第3可動部12が一対の第3梁20,22の廻りに捩り振動した際、1周期(1往復の捩り振動)で、第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aは、固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46に1回接近する。
【0082】
静電気力により第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aを固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46に引き寄せるように、電圧を印加する。よって、第3可動部12の1周期(1往復の捩り振動)で、1回電圧を印加して、第3可動部12を捩り振動させることができる。
【0083】
信号生成部70は、主走査駆動信号生成部76と副走査駆動信号生成部78とを備え、主走査駆動信号生成部76は主走査周波数の主走査駆動信号Vaを加算器64に出力する。主走査駆動信号Vaは、図15に示すように、第1可動部4を一対の第1梁8,10の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた主走査周波数fx(周期Tx)の信号であり、第1可動部4や第1梁8,10の慣性モーメントやバネ定数により定まる。
【0084】
一方、副走査駆動信号生成部78は副走査周波数の副走査駆動信号Vbを加算器64に出力する。副走査駆動信号Vbは、図15に示すように、第2可動部6を一対の第2梁14,16の廻りに捩り振動させる際に、共振を生じさせる固有振動数に応じた副走査周波数fy(周期Ty)の信号であり、第1可動部4と第2可動部6や第2梁14,16の慣性モーメントやバネ定数により定まる。
【0085】
本第2実施形態では、主走査駆動信号Vaのデューティー比を第1制御パラメータとし、副走査駆動信号Vbのデューティー比を第2制御パラメータとしている。各制御パラメータを決定する際、前述した第1実施形態と同様に、主走査駆動信号VaのH電圧と主走査駆動信号Vaのデューティー比との2つを第1制御パラメータの候補とし、副走査駆動信号VbのH電圧と副走査駆動信号Vbのデューティー比との2つを第2制御パラメータの候補として、各制御パラメータの振幅への影響を実験した。
【0086】
そして、第1制御パラメータと第2制御パラメータとの複数の組み合わせから、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータ(主走査駆動信号Vaのデューティー比)と、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータ(副走査駆動信号Vbのデューティー比)との組み合わせを選択した。続いて、第1可動部4と第2可動部6とのそれぞれの振幅の目標範囲を決定する。
【0087】
次に、本第2実施形態の制御部80において実行される光走査制御処理について、図17に示すフローチャートによって説明する。
まず、図17に示すように、主走査駆動信号生成部76は主走査周波数fx(周期Tx)の主走査駆動信号Vaを加算器64に出力する。副走査駆動信号生成部78は副走査周波数fy(周期Tx)の副走査駆動信号Vbを加算器64に出力する。その際、各制御パラメータは予め設定されたデフォルト値とする。
【0088】
加算器64は主走査駆動信号Vaと副走査駆動信号Vbとを加算して生成した駆動信号Vを増幅器52に出力し、増幅器52はこの駆動信号Vを増幅して、第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aと固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46との間に印加する(S300)。
【0089】
これにより、図16に示すように、主走査駆動信号Vaと副走査駆動信号Vbとが加算された駆動信号Vが第3可動部12側の櫛歯部30の可動電極30aと固定部18側の櫛歯部34の薄膜電極46との間に印加され、第3可動部12が第3梁20,22の廻りに捩り振動する。
【0090】
第3可動部12の捩り振動の成分には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれているので、主走査周波数fxの振動成分により、第1可動部4が共振して、第1可動部4が一対の第1梁8,10の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは主走査方向に偏向される。
【0091】
また、副走査周波数fyの振動成分により、第2可動部6が共振して、第2可動部6が一対の第2梁14,16の廻りに大きな振幅で捩り振動する。これにより、反射面2に照射された光ビームは副走査方向に偏向される。
【0092】
一方、振幅検出部54が、第3可動部12側の櫛歯部28の可動電極28aと固定部18側の櫛歯部32の薄膜電極40との静電容量の変化に基づいて、第3可動部12の振幅を検出する。第3可動部12の捩り振動には、主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分が含まれており、図16に実線で示すように、第3可動部12は主走査周波数fxで振動すると共に、副走査周波数fyでうねるような振動(図16に破線で示す振動成分)をする。
【0093】
振幅検出部54は、検出した静電容量の変化に基づいて検出した信号から、フィルタリング処理により主走査周波数fxと副走査周波数fyとの成分に分離する。主走査周波数fxの成分は第1可動部4の振幅に対応しており、副走査周波数fyの成分は第2可動部6の振幅に対応している。
【0094】
まず、振幅検出部54が検出した主走査周波数fxの成分から、第1可動部4の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S310)。検出した第1可動部4の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S310:NO)、第1制御パラメータとしての主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整して、振幅を制御する(S320)。
【0095】
第1可動部4の振幅が目標範囲内になったときには(S310:YES)、振幅検出部54が検出した副走査周波数fyの成分から、第2可動部6の振幅を検出し、この振幅が予め設定された目標範囲内か否かを判断する(S330)。検出した第2可動部6の振幅が予め設定された目標範囲内にないときには(S330:NO)、第2制御パラメータとしての副走査駆動信号Vbのデューティー比を調整して、振幅を制御する(S340)。第2可動部6の振幅が目標範囲内になったときには(S330:YES)、S310以下の処理を繰り返す。
【0096】
第1可動部4の振幅が目標範囲より大きいと、主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。そして、主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整したことにより、第1可動部4の振幅は目標範囲内となったものの、主走査駆動信号Vaのデューティー比調整の影響を受けて、第2可動部6の振幅が目標範囲からずれると、副走査駆動信号Vbのデューティー比を調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内とする。
【0097】
続いて、副走査駆動信号Vbのデューティー比を調整したことにより、第2可動部6の振幅が目標範囲内となったものの、副走査駆動信号Vbのデューティー比調整の影響を受けて、第1可動部4の振幅が目標範囲内からずれると、再び、主走査駆動信号Vaのデューティー比を調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内とする。
【0098】
そして、第1実施形態と同様に、第1制御パラメータの主走査駆動信号Vaのデューティー比の調整と、第2制御パラメータの副走査駆動信号Vbのデューティー比の調整とを繰り返すことにより、第1可動部4の振幅と第2可動部6の振幅とがそれぞれの目標範囲内となるように収束する。
【0099】
このように、第1可動部4の振幅変化への寄与が大きく第2可動部6の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータ(主走査駆動信号Vaのデューティー比)と、第2可動部6の振幅変化への寄与が大きく第1可動部4の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータ(副走査駆動信号Vbのデューティー比)との組み合わせにより、両制御パラメータを変化させて駆動信号Vを調整し、第1可動部4と第2可動部6とのそれぞれの振幅を制御するので、それぞれの振幅が目標範囲内に速やかに収束する。
【0100】
尚、前述した第2実施形態でも、最初に第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内としてから、次に、第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内となるように制御しているが、これに限らず、最初に第2制御パラメータを調整して、第2可動部6の振幅を目標範囲内としてから、次に、第1制御パラメータを調整して、第1可動部4の振幅を目標範囲内となるように制御してもよい。そして、更に、第2制御パラメータと第1制御パラメータの調整を繰り返してもよい。
【0101】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0102】
1…スキャナ 2…反射面
4…第1可動部 6…第2可動部
8,10…第1梁 12…第3可動部
14,16…第2梁 18…固定部
20,22…第3梁 24,26…櫛歯
28,30,32,34…櫛歯部 28a,30a…可動電極
36,42…固定電極 38,44…絶縁膜
40,46…薄膜電極 50,70…信号生成部
52…増幅器 54…振幅検出部
56,76…主走査駆動信号生成部 58,78…副走査駆動信号生成部
60…第1乗算器 62…第2乗算器
64…加算器 66,80…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光ビームを反射させる反射面を有する第1可動部の外側に第2可動部を設け、前記第1可動部と前記第2可動部とを弾性を有する第1梁により連結して前記第1可動部を前記第1梁の廻りに捩り振動可能に支持し、また、前記第2可動部の外側に第3可動部を設け、前記第2可動部と前記第3可動部とを弾性を有すると共に前記第1梁の長手方向に交差する第2梁により連結して前記第2可動部を前記第2梁の廻りに捩り振動可能に支持し、更に、前記第3可動部の外側に固定部を設け、前記第3可動部と前記固定部とを弾性を有すると共に前記第1梁及び前記第2梁の長手方向にそれぞれ交差する第3梁により連結して前記第3可動部を捩り振動可能に支持し、前記第3可動部を振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させ前記光ビームを偏向する2次元光走査装置において、
前記第3可動部を駆動信号に基づいて振動させる駆動部を備え、
また、前記第1可動部を前記第1梁の廻りに共振させる主走査駆動信号と、前記第2可動部を前記第2梁の廻りに共振させる副走査駆動信号とに応じた駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記駆動部に出力して前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させる信号生成部を備え、
更に、前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせにより、前記両制御パラメータを変化させて前記駆動信号を調整し、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を制御する制御部を備え、
かつ、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出する振幅検出部を設け、前記制御部は前記振幅検出部により検出される前記第1可動部と前記第2可動部との振幅に基づいて、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整することを特徴とする2次元光走査装置。
【請求項2】
前記制御部は前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整して、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項1に記載の2次元光走査装置。
【請求項3】
前記制御部は前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項2に記載の2次元光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項2に記載の2次元光走査装置。
【請求項5】
前記制御部は前記第1制御パラメータ及び前記第2制御パラメータの調整を交互に繰り返し、前記第1可動部の振幅及び前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記第3可動部の可動電極と前記固定部の固定電極とを対向して配置し、前記可動電極と前記固定電極との間に電圧を印加して前記可動電極と前記固定電極との間の静電気力により前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項7】
前記振幅検出部は、前記第3可動部に設けた可動電極と前記固定部に設けた薄膜電極との間の静電容量の変化に基づいて前記第3可動部の振幅を検出し、前記第3可動部の振幅に基づいて前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項8】
前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、複数の組み合わせから、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第1可動部の振幅への影響及び前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第2可動部の振幅への影響に基づいて、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第2制御パラメータとの組み合わせとしたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項9】
前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記副走査駆動信号の電圧であることを特徴とする請求項8に記載の2次元光走査装置。
【請求項10】
前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記主走査駆動信号及び前記副走査駆動信号のデューティー比であることを特徴とする請求項8に記載の2次元光走査装置。
【請求項1】
光源からの光ビームを反射させる反射面を有する第1可動部の外側に第2可動部を設け、前記第1可動部と前記第2可動部とを弾性を有する第1梁により連結して前記第1可動部を前記第1梁の廻りに捩り振動可能に支持し、また、前記第2可動部の外側に第3可動部を設け、前記第2可動部と前記第3可動部とを弾性を有すると共に前記第1梁の長手方向に交差する第2梁により連結して前記第2可動部を前記第2梁の廻りに捩り振動可能に支持し、更に、前記第3可動部の外側に固定部を設け、前記第3可動部と前記固定部とを弾性を有すると共に前記第1梁及び前記第2梁の長手方向にそれぞれ交差する第3梁により連結して前記第3可動部を捩り振動可能に支持し、前記第3可動部を振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させ前記光ビームを偏向する2次元光走査装置において、
前記第3可動部を駆動信号に基づいて振動させる駆動部を備え、
また、前記第1可動部を前記第1梁の廻りに共振させる主走査駆動信号と、前記第2可動部を前記第2梁の廻りに共振させる副走査駆動信号とに応じた駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記駆動部に出力して前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させて前記第1可動部と前記第2可動部とを共振させる信号生成部を備え、
更に、前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい第2制御パラメータとの組み合わせにより、前記両制御パラメータを変化させて前記駆動信号を調整し、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を制御する制御部を備え、
かつ、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出する振幅検出部を設け、前記制御部は前記振幅検出部により検出される前記第1可動部と前記第2可動部との振幅に基づいて、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整することを特徴とする2次元光走査装置。
【請求項2】
前記制御部は前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとを調整して、前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項1に記載の2次元光走査装置。
【請求項3】
前記制御部は前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項2に記載の2次元光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は前記第2制御パラメータを調整して前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御してから、次に、前記第1制御パラメータを調整して前記第1可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項2に記載の2次元光走査装置。
【請求項5】
前記制御部は前記第1制御パラメータ及び前記第2制御パラメータの調整を交互に繰り返し、前記第1可動部の振幅及び前記第2可動部の振幅を予め設定された目標範囲内に制御することを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記第3可動部の可動電極と前記固定部の固定電極とを対向して配置し、前記可動電極と前記固定電極との間に電圧を印加して前記可動電極と前記固定電極との間の静電気力により前記第3可動部を前記第3梁の廻りに振動させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項7】
前記振幅検出部は、前記第3可動部に設けた可動電極と前記固定部に設けた薄膜電極との間の静電容量の変化に基づいて前記第3可動部の振幅を検出し、前記第3可動部の振幅に基づいて前記第1可動部と前記第2可動部との振幅を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項8】
前記主走査駆動信号と前記副走査駆動信号との各制御パラメータのうち、複数の組み合わせから、前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第1可動部の振幅への影響及び前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとによる前記第2可動部の振幅への影響に基づいて、前記第1可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第2可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第1制御パラメータと、前記第2可動部の振幅変化への寄与が大きく前記第1可動部の振幅変化への寄与が小さい前記第2制御パラメータとの組み合わせとしたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の2次元光走査装置。
【請求項9】
前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記副走査駆動信号の電圧であることを特徴とする請求項8に記載の2次元光走査装置。
【請求項10】
前記第1制御パラメータと前記第2制御パラメータとは前記主走査駆動信号及び前記副走査駆動信号のデューティー比であることを特徴とする請求項8に記載の2次元光走査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−53269(P2012−53269A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195719(P2010−195719)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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