説明

2次実装アンダーフィル用封止材及び半導体装置

【課題】
本発明は2次実装アンダーフィル用封止材に関し、リペア及びリワーク性に優れ、かつ熱衝撃信頼性に優れた半導体装置を与える2次実装アンダーフィル用封止材を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)液状エポキシ樹脂
(B)アミン系硬化剤
(C)無機充填剤 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し30〜500質量部
を含有し、無機充填剤成分中25質量%〜100質量%がクリストバライトである事を特徴とする2次実装アンダーフィル用封止材、及び該封止材の硬化物を備える半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次実装アンダーフィル用封止材に関する。詳細には、主に、半導体素子を基板に実装し封止樹脂で封止した半導体パッケージと、該半導体パッケージを搭載した配線基板との間をアンダーフィルする2次実装アンダーフィル用封止材に関し、更に詳細には、リペア・リワーク性に優れ、かつ熱衝撃信頼性に優れた半導体装置を与える封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の小型化、軽量化、高性能化等にともない、近年では半導体の実装方式として、旧来リード線タイプではなく、表面実装、即ちベアチップ実装が採用されるようになっている。ベアチップ実装には各種の方法が提案されており、主たる例としてフリップチップ実装がある。一般に、BGA,CSP等の半田バンプ接合型の半導体装置は、衝撃がダイレクトに半田に伝わるため、リードによる応力緩和機能を持つリード接続型半導体装置と比較し、信頼性に劣る。そのため、信頼性を向上させるために、様々な補強が行われている(特許文献1、2)。フリップチップ実装型半導体装置においては、信頼性を向上させるために、アンダーフィル材を使用して半導体素子と配線基板との間、又は半導体素子を保持するキャリア基板と配線基板との間を封止して補強する方法と、サイドフィル材を使用して半導体素子またはキャリア基板の周辺部を封止して補強する方法がある(特許文献3)。更には最近の実装方法として、半導体パッケージの小型化、薄型化、ファインピッチ化等に伴って、1個又は2個以上の半導体素子を積層して多段化し封止樹脂で封止した半導体パッケージ(1次実装)を、ハンダバンプ等で配線基板上に接合して高次に実装する2次実装方法が採られている。該方法において、信頼性を更に高めるために、該半導体パッケージと配線基板との間をアンダーフィル材で封止する、2次実装アンダーフィルと呼ばれる封止方法がある。
【0003】
半導体装置は使用されている配線基板が高価なことから、搭載する半導体素子や半導体素子を積層して多段化し封止樹脂で封止した半導体パッケージが動作不良を起こした場合、その半導体素子や半導体パッケージをリペア及びリワークする工程が必要になる。しかし、半導体素子や半導体パッケージの封止材として使用されているエポキシ樹脂組成物は熱的、化学的に安定であり、その硬化物は機械的強度が強い。その為、補強材料としては理想的であるが、一度硬化させると除去が困難であり、リペア及びリワークに支障をきたす。その結果として、配線基板を廃棄せざるを得なくなり、経済的損失を被るという問題がある。
【0004】
また近年、半導体装置の機械的信頼性を向上するために、熱衝撃特性等に対する要求が高まっている。その為、リペア及びリワーク性に優れ、かつ熱衝撃特性等の信頼性に優れた半導体装置を与える実装用封止材が要求されている。本発明者らは、先に、液状エポキシ樹脂、フェノール系硬化剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び無機充填剤を含有する、リペア及びリワーク性が良好な実装用封止材を提案した(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−260534号公報
【特許文献2】特開平10−321666号公報
【特許文献3】特開2001−77246号公報
【特許文献4】特開2008−177521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の2次実装アンダーフィル用封止材は室温における機械的強度は優れているが、熱衝撃特性等の信頼性が十分ではなく、熱衝撃信頼性とリペア及びリワーク性の双方に優れた2次実装アンダーフィル用封止材を開発することは困難であった。本発明は、リペア及びリワーク性に優れ、かつ熱衝撃信頼性に優れた半導体装置を与える2次実装アンダーフィル用封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、液状エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、及び無機充填剤を含有する封止材であって、無機充填剤としてクリストバライトを含有する封止材を、半導体パッケージと配線基板との間をアンダーフィルするための封止材として使用した場合に、リペア及びリワーク性に優れ、かつ熱衝撃信頼性に優れる半導体装置を提供できる事を見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(A)液状エポキシ樹脂
(B)アミン系硬化剤
(C)無機充填剤 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し30〜500質量部
を含有し、無機充填剤成分中25質量%〜100質量%がクリストバライトである事を特徴とする2次実装アンダーフィル用封止材、及び該封止材の硬化物を備える半導体装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の封止材はクリストバライトを含有することにより、該封止材を硬化して得られる硬化物の熱膨張率が200℃から260℃の温度範囲内において著しく変化し、硬化物と基材との界面が剥離しやすくなる。その為、半導体パッケージを配線基板から良好に除去することができ、リペア及びリワーク性に優れた半導体装置を提供することができる。また、本発明の封止材は熱衝撃信頼性に優れた半導体装置を提供する事ができる。
【0010】
(A)液状エポキシ樹脂
(A)液状エポキシ樹脂は封止材に硬化性を付与する。本発明の液状エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、それ自体が室温(25℃)で液状のものであれば、分子構造、分子量等は特に限定されず、公知の液状エポキシ樹脂を全て用いることができる。中でも、(A)成分の25℃における粘度が0.1〜100Pa・s、特には1〜50Pa・sであることが好ましい。なお、上記粘度はブルックフィールド社製、E型粘度計による測定値である。粘度が上記下限値未満の場合、低分子材料が主であるため、真空下において揮発し、発泡しやすくなる。一方、粘度が上記上限値を超えると、組成物の粘度が高くなり、作業性が著しく悪くなる。
【0011】
(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの液状エポキシ樹脂は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
これらの中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。更に、下記構造で示されるエポキシ化合物を使用することもできる。
【0013】
【化1】

【0014】
上記式においてRは水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜3の一価炭化水素基であり、該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。また、nは1〜4の整数であり、好ましくは1又は2である。
【0015】
このようなエポキシ化合物としては下記式で示されるものが挙げられる。
【化2】

【0016】
(A)成分の液状エポキシ樹脂中に含まれる全塩素含有量は、1500ppm以下、特に1000ppm以下であることが望ましい。また、液状エポキシ樹脂を50質量%含む水中における100℃×20時間の条件で抽出された塩素イオンの量が、10ppm以下であることが望ましい。前記全塩素含有量及び前記抽出塩素イオンの量が、前記上限値以下であれば、耐湿性が良好であり、半導体装置の信頼性を損なうことがない。
【0017】
(B)アミン系硬化剤
本発明の(B)成分は(A)液状エポキシ樹脂を硬化させる成分である。エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤等がある。しかし、フェノール系硬化剤を含有する組成物はガラス転移温度が低くなり、熱衝撃信頼性に劣る。本発明は、硬化剤としてアミン系硬化剤を使用することにより、熱衝撃信頼性に優れた硬化物を与える2次実装アンダーフィル用封止材を提供する。アミン系硬化剤は、少なくとも2つ以上の活性水素を有するアミノ基を有すればよく、分子構造、分子量等は特に限定されず、公知のアミン系硬化剤を使用することができる。
【0018】
このアミン系硬化剤としては、芳香族アミン、脂肪族アミン、ポリアミドアミン、イミダゾールアミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤が挙げられ、これらの混合物であってよい。中でも、芳香族アミン系硬化剤が好ましい。
【0019】
芳香族アミン系硬化剤としては、例えば、下記一般式(1)〜(4)で表されるアミン化合物が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【化3】

(式中、R1〜R4は、互いに独立に、水素原子、置換又は非置換の、炭素数1〜6の一価炭化水素基、CH3S−及びC25S−から選ばれる基である。)
【0020】
上記一価炭化水素基としては、炭素数1〜6、特に1〜3のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基などや、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したフロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基を挙げることができる。
【0021】
室温で液体であるアミン系硬化剤はそのまま配合しても問題ないが、室温で固体状であるアミン系硬化剤を含む場合には、そのまま配合すると樹脂粘度が上昇し、作業性が著しく悪くなるおそれがある。従って、このようなアミン系硬化剤を使用する場合には、予めアミン系硬化剤とエポキシ樹脂とを、反応しない温度で溶融混合することが好ましい。即ち、後述する指定の配合割合で、70〜150℃の温度範囲で1〜2時間溶融混合するのがよい。混合温度が70℃未満であるとアミン系硬化剤が十分に相溶しないおそれがあり、150℃を超えるとエポキシ樹脂と反応して粘度上昇するおそれがある。また、混合時間が1時間未満であるとアミン系硬化剤が十分に相溶せず、粘度上昇を招くおそれがあり、2時間を超えるとエポキシ樹脂と反応し、粘度上昇するおそれがある。尚、室温で液状の硬化剤を使用する場合においても、アミン系硬化剤とエポキシ樹脂とを予め70℃〜150℃の温度範囲で1時間〜2時間混合することが望ましい。
【0022】
アミン系硬化剤は(A)液状エポキシ樹脂と(B)アミン系硬化剤の当量比[(A)液状エポキシ樹脂のエポキシ当量/(B)アミン系硬化剤のアミン当量]が0.7以上1.2以下、好ましくは0.7以上1.1以下、更に好ましくは0.8以上1.05以下となる量で含まれる。配合当量比が前記下限値未満では、硬化物中に未反応のアミノ基が残存するため、ガラス転移温度が低下、あるいは硬化物の基材に対する密着性が低下するおそれがある。一方、アミン系硬化剤の配合量が前記上限値を超えると、硬化物が硬く脆くなり、リフロー時又は温度サイクル時にクラックが発生するおそれがある。尚、封止材が後述する(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を含む場合には、[(A)液状エポキシ樹脂のエポキシ当量]に代えて、[(A)液状エポキシ樹脂のエポキシ基当量+(D)シリコーン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量]が上記範囲となる量にする。また、(D)成分がシリコーン変性フェノール樹脂である場合には、[(B)アミン系硬化剤のアミン当量]に代えて、[(B)アミン系硬化剤のアミン当量+(D)シリコーン変性フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量]が、上記範囲となる量にする。
【0023】
本発明の硬化剤として、アミン系硬化剤以外に、酸無水物系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等を使用することもできる。これらの硬化剤の配合量は、配合する硬化剤の種類を考慮して適宜設定すればよい。硬化剤は2種類以上を混合して使用してもよい。
【0024】
(C)無機充填剤
本発明は、無機充填剤としてクリストバライトを配合することを特徴とし、無機充填剤成分の総量に対して25質量%〜100質量%、好ましくは40質量%〜100質量%、より好ましくは50質量%〜100質量%がクリストバライトである。クリストバライトは200℃から260℃の温度範囲においてα−クリストバライトからβ−クリストバライトへ相転移し熱膨張率を著しく変化させる。これにより、200℃から260℃の温度範囲において硬化物の熱膨張率が著しく変化し、硬化物と基材との界面が剥離しやすくなる。その為、半田の融点付近(およそ200℃から260℃)において、半導体パッケージを良好にリペア及びリワークすることが可能になる。尚、無機充填剤成分の総量に対してクリストバライトの量が上記下限値未満では、硬化物の熱膨張変化率が小さく、十分なリペア性を得ることができない。
【0025】
クリストバライトは従来公知の方法で製造されたものを使用することができるが、中でも断面が楕円状であるものも含めて球状であるものが好ましい。球状クリストバライトは、球状溶融シリカのクリストバライト化によって製造することができる。例えば、球状溶融シリカを1200〜1600℃、特に1300〜1500℃の高温で5〜24時間加熱し、結晶を確実に成長させた後、20〜50時間かけてゆっくりと室温まで冷却することでクリストバライト化することができる。なおこの場合、昇温速度は室温から所定の温度まで10〜100℃/分が好適である。加熱温度が1200℃未満では完全にクリストバライト化するのに長時間要する場合があり、1600℃を超えると球状溶融シリカ粒子同士が融着し、元の粒度分布を維持しなくなる場合がある。また、加熱時間が5時間未満では結晶化が不十分となる場合があり、24時間を超えると結晶化には十分な時間であるが、高温で長時間維持しなければならないことからコストアップを招いてしまう場合がある。
【0026】
球状クリストバライトを使用することによって封止材の粘度が低減し流動性が良好になるため、半導体パッケージと配線基板の間隙への封止材の浸入性が向上する。また、上記の製造方法で得られる球状クリストバライトは、原料の溶融シリカの形状、粒度分布をそのまま維持し得ることから、充填量を高くすることができ、かつ熱伝導率を向上させることができる。更に、金型摩耗が非常に少ない封止材を提供することができる。また、クリストバライトは、予めシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などのカップリング剤で表面を処理して使用してもよい。
【0027】
クリストバライトは平均粒径0.5〜30μmを有するもの、特には平均粒径1〜20μmを有するものが好ましい。該平均粒径は、レーザー回折・散乱法で累積重量平均径D50又はメジアン径等として測定することができる。平均粒径が前記下限値未満では封止材の粘度が高くなり流動性が低下するおそれがあり、前記上限値超では、封止材を充填する時にシリンジ先端のノズルを詰まらせる原因となるおそれがあるため好ましくない。
【0028】
本発明の封止材は、クリストバライト以外の無機充填剤を更に含有することができる。他の無機充填剤は、公知である各種の無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化珪素、マグネシア、マグネシウムシリケート、アルミニウムなどが挙げられる。尚、無機充填剤を高充填する場合には、使用する無機充填剤の全てが球状であることが望ましい。特には、封止材を低粘度化するために、球状の溶融シリカが好ましい。
【0029】
他の無機充填剤は平均粒径0.5〜30μmを有するもの、特には平均粒径1〜20μmを有するものが好ましい。該平均粒径は、レーザー回折・散乱法で累積重量平均径D50又はメジアン径等として測定することができる。平均粒径が前記下限値未満では封止材の粘度が高くなり流動性が低下するおそれがあり、前記上限値超では、封止材を充填する時にシリンジ先端のノズルを詰まらせる原因となるおそれがあるため好ましくない。
【0030】
無機充填剤の総配合量は、(A)液状エポキシ樹脂及び(B)アミン系硬化剤の合計100質量部に対して30〜500質量部、より好ましくは50〜300質量部である。尚、本発明の封止材が後述する(D)シリコーン変性樹脂を含有する場合には、無機充填剤の総配合量は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の合計100質量部に対し、30〜500質量部、より好ましくは50〜300質量部である。配合量が前記上限値を超えると、組成物の粘度が高くなりギャップへの浸入性が悪くなる恐れがある。また、前記下限値未満ではTg以下での膨張係数が大きくなり熱衝撃特性等の信頼性が低下する恐れがある。
【0031】
(D)シリコーン変性樹脂
本発明の封止材は、硬化物の応力を低下させる低応力剤としてシリコーン変性樹脂を含有することができる。シリコーン変性樹脂を含有することによって、封止材を硬化して得られる硬化物の応力を緩和し、熱衝撃信頼性を向上し、クラックの発生を抑制する。
【0032】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、アルケニル基含有エポキシ樹脂またはアルケニル基含有フェノール樹脂と、下記平均組成式(5)
[化4]

SiO(4−a−b)/2 (5)

で表され、かつ1分子中のケイ素原子の数が20〜400、好ましくは40〜200であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を好ましくは1〜5個、より好ましくは2〜4個、特に好ましくは2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により製造することができる。該ヒドロシリル化反応は公知の反応条件で行えばよく、例えば白金系触媒を用いて行うのがよい。
【0033】
上記式(5)中、aは0.005〜0.1、好ましくは0.01〜0.05の数であり、bは1.8〜2.2、好ましくは1.9〜2.0の数であり、かつ、a+bの和は1.81〜2.3、好ましくは1.91〜2.05の数である。
【0034】
上記式(5)中、Rは、非置換又は置換の、脂肪族不飽和基を有さない一価炭化水素基であり、炭素原子数1〜10、特に1〜8のものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等を挙げることができる。
【0035】
アルケニル基含有エポキシ樹脂またはアルケニル基含有フェノール樹脂としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

上記式中、Rは水素原子またはグリシジル基であり、Xは、互いに独立に、水素原子、非置換もしくは置換の、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基であり、Rは、互いに独立に、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、nは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜50の整数、より好ましくは0又は1〜10の整数である。mは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、より好ましくは0又は1である。
【0036】
上記式中のXとしては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシエチル基等のアルコキシ基及びアルコキシアルキル基が挙げられる。中でも水素原子及びメチル基が好ましい。上記Xはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
特に、下記式で表されるシリコーン変性樹脂が好適である。
【化9】

【0038】
上記各式中、X、R、R、及びRは上述の通り。Rは末端に式中のSi原子に結合する酸素原子を有していてもよい、非置換又は置換の二価炭化水素基を表し、kは0以上、好ましくは18〜398、更に好ましくは38〜198の整数であり、pは0以上、好ましくは1〜50、更に好ましくは1〜10の整数である。
【0039】
は、酸素原子あるいは水酸基を有してもよいアルキレン基等であることが好ましく、例えば、−CHCHCH−、−O−CH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−、−O−CHCHCH−(なお、前記構造の端部の炭素原子が、Si原子に結合する)が挙げられる。シリコーン変性樹脂は、1種単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
シリコーン変性樹脂の配合量は、硬化物の応力緩和に有効な量であればよく、例えば、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計質量中に、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%で含有するのがよい。シリコーン変性樹脂成分の配合量が少なすぎると耐熱衝撃性が劣化する場合があり、多すぎると高粘度化し、作業性が悪くなる場合がある。
【0041】
その他の成分
本発明の2次実装アンダーフィル用封止材は、上記各成分に加えて、必要に応じて他の成分を配合することができる。但し、得られる封止材は液状である必要があり、かつ本発明の効果を損なうものであってはならない。例えば、硬化物の応力を緩和させるために、シリコーンゴム、シリコーンオイル、液状のポリブタジエンゴム等を配合してもよい。また、表面処理剤、接着性向上用のシランカップリング剤、カーボンブラック等の顔料、低粘度化用の反応性希釈剤或いは溶剤、染料、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、その他の添加剤等を配合することができる。前記表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、テトラエトキシシラン等が挙げられ、これは無機充填剤成分の表面を疎水化処理し、樹脂成分との濡れ性向上に効果を発揮する。また、前記シランカップリング剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、KBM403(商品名、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0042】
本発明の2次実装アンダーフィル用封止材は、必要に応じて、公知の硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤としては、上記(B)アミン系硬化剤以外のアミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。配合量は、(A)液状エポキシ樹脂100質量部(シリコーン変性エポキシ樹脂を含む場合には(A)成分+(D)成分100質量部)に対して、0.2〜10質量部の範囲である。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0043】
2次実装アンダーフィル用封止材の調製
本発明の封止材は、上記各成分を同時に、又は逐次的に、装置内へ投入し、必要により15〜25℃の範囲の冷却処理を行いながら、撹拌、溶解、混合、分散等の操作を行うことによって調製することができる。これらの撹拌、溶解、混合、分散等の操作に用いられる装置は特に限定されない。例えば、撹拌及び加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、前記装置の複数を適宜組み合わせてもよい。
【0044】
本発明の封止材は半導体パッケージと配線基板との間隙をアンダーフィルするための封止材として適用される。特には、基板上に実装された半導体素子を封止樹脂で封止した半導体パッケージ(1次実装)、中でも、1個又は2個以上の半導体素子を積層して多段化し封止樹脂で封止した半導体パッケージ(1次実装)と、該半導体パッケージを搭載した配線基板との間隙を、半導体パッケージの下全面において封止する(2次実装)ためのアンダーフィル材として適用される。本発明の封止材の適用方法、封止方法、硬化条件等については、公知の方法、条件等を採用することができる。例えば、封止方法としては、事前に乾燥させたデバイスを100〜120℃に加熱させたホットプレート上に置き、ディスペンサー等の塗布機器を用いて、パッケージ4辺の1辺より、30〜50mg/回を2〜4回の頻度で滴下し、塗布する。封止材の硬化条件は、通常、120〜170℃、特に150〜165℃で、2〜4時間である。本発明の2次実装アンダーフィル用封止材は隙間浸入性が良好であるため、半導体パッケージと配線基板との間隙をボイドなく封止することができる。
【0045】
本発明の封止材は、良好な隙間浸入性の観点から、25℃における粘度が10Pa・s以上200Pa・s未満、特には30〜120Pa・sであることが好ましい。粘度はブルックフィールド社製E型粘度計により測定できる。
【0046】
本発明の2次実装アンダーフィル用封止材の硬化物を備えた半導体装置は優れたリペア及びリワーク性を有する。その為、信頼性不良の半導体パッケージを除去するに際し、スポットヒーターでデバイスを半田融点である200〜260℃まで加熱して半導体パッケージを除去した後、半田吸収線にて半田残渣及び封止材残渣を除去し、イソプロピルアルコール等の溶剤で洗浄する工程により、簡単に半導体装置のリペア及びリワークを行うことができる。また、本発明の封止材を硬化して得られる硬化物は熱衝撃信頼性に優れ、例えば、−50℃〜120℃、特には−40℃〜85℃の温度サイクル試験においてクラックを発生することがなく、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に
制限されるものではない。
【0048】
[実施例1〜3、比較例1〜4]
2次実装アンダーフィル用封止材の調製
以下に示す各成分を表1に記載する量で配合し、3本ロールで均一に混練りすることにより2次実装アンダーフィル用封止材を調製した。
【0049】
(A)液状エポキシ樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:YDF8170(商品名、東都化成社製)
(エポキシ当量:160g/eq、粘度(25℃):1.2Pa・s)
(B)硬化剤
・アミン系硬化剤:カヤハードA−A(商品名、日本化薬社製)
(アミン当量:63.5g/eq)
・フェノール系硬化剤:MEH8000H(商品名、明和化成製)
(フェノール性水酸基当量:141g/eq)
(C)無機充填剤
・球状クリストバライト(平均粒径:18μm、最大粒径:53μm、龍森社製)
・球状溶融シリカ(平均粒径:10μm、最大粒径:53μm、龍森社製)
(D)シリコーン変性樹脂
・下記に示されるシリコーン変性エポキシ樹脂(エポキシ当量:220g/eq、Si含有量:14重量%)
【化10】

(E)その他の添加材
・シランカップリング剤:KBM403(商品名、信越化学工業社製)
・カーボンブラック:(東海カーボン社製)
・硬化促進剤:2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成製)
【0050】
各封止材について、下記に示す各評価試験を行った。
【0051】
リペア及びリワーク性の評価
30mm×30mm角のレジスト基板上に各封止材を塗布した。各封止材上に10mm×10mm角のシリコン製チップを搭載し、模擬半導体装置を作製した。作製した半導体装置を200℃で保持しながら、スパチュラでシリコン製チップを除去した。判定は以下の指標で行った。結果を表1に示す。
○:シリコン製チップが完全に除去された
△:シリコン製チップが除去されたが、シリコン製チップが割れた
×:シリコン製チップを全く除去できなかった
【0052】
熱衝撃試験
42.5mm×42.5mm×厚さ1.0mmのBT樹脂基板上に、64個の半田バンプ電極を有する大きさ8mm×8mmのCSP20個を、ギャップが約200μmになるように実装して模擬半導体装置を作成した。該模擬半導体装置を60℃の熱板の上に置き、ディスペンサーを用いて封止材をギャップに浸入させたあと、120℃/0.5時間+165℃/3時間の条件で封止材を硬化させた。各半導体装置を−40℃で10分、及び85℃で10分を1サイクルとして、500サイクル及び1000サイクル繰り返した後、封止体にクラックが生じているか否かを目視で観察し、不良率、すなわち、試験体総数20個に対する、封止体にクラックが観察された試験体の割合(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
クリストバライトを含有しない比較例1の封止材、およびクリストバライトの含有量が少なすぎる比較例3の封止材の硬化物はリペア及びリワーク性に劣る。比較例2の封止材はクリストバライトを含有しないが、フェノール系硬化剤が封止材の熱膨張率を変化させるため、該封止材の硬化物はリペア及びリワーク性がやや良好になる。しかし本発明の封止材の硬化物が有するリペア及びリワーク性には及ばない。また、フェノール系硬化剤を使用した比較例2及び比較例4の封止材はガラス転移温度が低く、該封止材の硬化物は熱衝撃信頼性が著しく劣るため信頼性の高い半導体装置を与えることができない。これに対し、実施例1〜3の封止材は、リペア及びリワーク性に優れ、かつ熱衝撃信頼性に優れた半導体装置を与える。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の封止材は、熱衝撃信頼性に優れ、かつリペア及びリワーク性に優れた半導体装置を提供する。従って、本発明の封止材は半導体パッケージと配線基板との間をアンダーフィルするための封止材として好適に使用することができ、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂
(B)アミン系硬化剤
(C)無機充填剤 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し30〜500質量部
を含有し、無機充填剤成分中25質量%〜100質量%がクリストバライトである事を特徴とする2次実装アンダーフィル用封止材。
【請求項2】
(A)液状エポキシ樹脂と(B)アミン系硬化剤の当量比[(A)液状エポキシ樹脂のエポキシ当量/(B)アミン系硬化剤のアミン当量]が0.7以上1.2以下である、請求項1に記載の2次実装アンダーフィル用封止材。
【請求項3】
クリストバライトが球状である、請求項1または2に記載の2次実装アンダーフィル用封止材。
【請求項4】
(D)シリコーン変性樹脂を更に含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の2次実装アンダーフィル用封止材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の2次実装アンダーフィル用封止材の硬化物を備える半導体装置。

【公開番号】特開2012−224679(P2012−224679A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91417(P2011−91417)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】