説明

3軸検出角速度センサ

【課題】本発明は、X軸周り、Y軸周りおよびZ軸周りの3軸方向の角速度を検出することが出来る3軸検出角速度センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明の3軸検出角速度センサは、Y軸およびZ軸検出用角速度センサ素子20と別体に設けられるとともにX軸方向に延出された音叉型のX軸検出用角速度センサ素子70とを設けたため、X軸周り、Y軸周りおよびZ軸周りの3軸方向の角速度を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられる角速度センサに使用される3軸検出角速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の角速度センサ素子は図8に示すような構成となっていた。
【0003】
図8において、1は水晶からなる正方形状の固定部で、この固定部1はX軸方向に向かって延出される第1の延出腕2と第2の延出腕3を設けている。4は水晶製の第1の検出振動体で、この第1の検出振動体4は一端が前記固定部1に接続されるとともに、他端がY軸方向に向かって延出され、さらにこの第1の検出振動体4の4つの外側面にはそれぞれ検出電極5を設けているものである。そして、これと同様に、前記固定部1からは前記第1の検出振動体4を延出した方向と反対側のY軸方向に第2の検出振動体6を設けており、かつこの第2の検出振動体6の4つの外側面にもそれぞれ検出電極5を設けているものである。
【0004】
7は水晶製の第1の駆動振動体で、この第1の駆動振動体7は一端が前記第1の延出腕2に接続され、かつ他端がY軸方向に向かって延出され、さらにこの第1の駆動振動体7の4つの外側面にはそれぞれ駆動電極8を設けているものである。9は水晶製の第2の駆動振動体で、この第2の駆動振動体9は一端が前記第1の延出腕2に接続されるとともに、他端が前記第1の駆動振動体7を延出した方向と反対側のY軸方向に向かって延出され、さらにこの第2の駆動振動体9の4つの外側面にはそれぞれ検出電極8を設けているものである。10は水晶製の第3の駆動振動体で、この第3の駆動振動体10は一端が第2の延出腕3に接続されるとともに、他端がY軸方向に向かって延出され、さらにこの第3の駆動振動体10の4つの外側面にはそれぞれ検出電極8を設けているものである。11は水晶製の第4の駆動振動体で、この第4の駆動振動体11は一端が第2の延出腕3に接続されるとともに、他端が前記第3の駆動振動体10を延出した方向と反対側のY軸方向に向かって延出され、さらにこの第4の駆動振動体11の4つの外側面にはそれぞれ検出電極8を設けているものである。
【0005】
以上のように構成された従来の角速度センサ素子について、次にその動作を説明する。
【0006】
第1の駆動振動体7、第2の駆動振動体9、第3の駆動振動体10および第4の駆動振動体11のそれぞれの駆動電極8に交流電圧を印加することにより、駆動方向に速度Vで駆動振動する。そして、この第1の駆動振動体7、第2の駆動振動体9、第3の駆動振動体10および第4の駆動振動体11が駆動振動している状態において、角速度センサ素子を設けた平面と垂直な方向であるZ軸を中心軸として角速度ωで回転すると、第1の駆動振動体7、第2の駆動振動体9、第3の駆動振動体10および第4の駆動振動体11にF=2mv×ωのコリオリ力が発生する。そして、このコリオリ力を第1の延出腕2および第2の延出腕3および固定部1を介して第1の検出振動体4および第2の検出振動体6に伝えることにより、それぞれの検出電極5から角速度に応じた出力信号を出力するものであった。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−264067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成においては、第1の延出腕2および第2の延出腕3および固定部1を介して第1の検出振動体4および第2の検出振動体6に伝えることにより、それぞれの検出電極5から角速度に応じた出力信号を出力しているため、Z軸周りの1軸方向の角速度のみしか検出できないという課題を有していた。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、X軸周り、Y軸周りおよびZ軸周りの3軸方向の角速度を検出することが出来る3軸検出角速度センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、上面に少なくとも1つのY軸検出圧電電極を設けたY軸検出振動体と、このY軸検出振動体の他端と一端を接続された捩れ延出部と、一端を前記捩れ延出部の他端と接続されるとともに、捩れ延出部から垂直な方向に延出されかつ上面に少なくとも1つの駆動圧電電極を設けた駆動振動体と、一端を駆動振動体の他端に接続させるとともに駆動振動体の延出方向と垂直な方向に延出され、さらに上面に少なくとも1つのZ軸検出圧電電極を設けたZ軸検出振動体と、このZ軸検出振動体の他端と接続された重り部とにより構成されたY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と、このY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と別体に設けられるとともにX軸方向に延出された音叉型のX軸検出用角速度センサ素子とからなるもので、この構成によれば、Y軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と別体に設けられるとともにX軸方向に延出された音叉型のX軸検出用角速度センサ素子とを設けたため、X軸周り、Y軸周りおよびZ軸周りの3軸方向の角速度を検出することが出来るという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の3軸検出角速度センサは、上面に少なくとも1つのY軸検出圧電電極を設けたY軸検出振動体と、このY軸検出振動体の他端と一端を接続された捩れ延出部と、一端を前記捩れ延出部の他端と接続されるとともに、捩れ延出部から垂直な方向に延出されかつ上面に少なくとも1つの駆動圧電電極を設けた駆動振動体と、一端を駆動振動体の他端に接続させるとともに駆動振動体の延出方向と垂直な方向に延出され、さらに上面に少なくとも1つのZ軸検出圧電電極を設けたZ軸検出振動体と、このZ軸検出振動体の他端と接続された重り部とにより構成されたY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と、このY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と別体に設けられるとともにX軸方向に延出された音叉型のX軸検出用角速度センサ素子とからなるもので、この構成によれば、Y軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と別体に設けられるとともにX軸方向に延出された音叉型のX軸検出用角速度センサ素子とを設けたため、X軸周り、Y軸周りおよびZ軸周りの3軸方向の角速度を検出する3軸検出角速度センサを提供することができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサの上面図
【図2】同3軸検出角速度センサにおけるY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子の上面図
【図3】同3軸検出角速度センサにおける音叉型のX軸検出用角速度センサ素子の模式図
【図4】同3軸検出角速度センサにおける音叉型のX軸検出用角速度センサ素子における第1のアームの側断面図
【図5】本発明の一実施の形態の3軸検出角速度センサにおけるY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子の組立工程図
【図6】本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサの音叉型のX軸検出用角速度センサ素子の分極状態を示す模式図
【図7】本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサの音叉型のX軸検出用角速度センサ素子の分極状態を示す模式図
【図8】従来の角速度センサ素子の上面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサの上面図、図2は同3軸検出角速度センサにおけるY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子の上面図、図3は同3軸検出角速度センサにおける音叉型のX軸検出用角速度センサ素子の模式図、図4は同3軸検出角速度センサの音叉型のX軸検出用角速度センサ素子における第1のアームの側断面図である。
【0017】
図1〜図3において、20はY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子である。21はSiからなる第1の固定部で、この第1の固定部21の上面には一対の駆動電極ランド22、1つのY方向検出電極ランド23、4つのZ方向検出電極ランド24、GND電極ランド25およびモニター電極ランド26を設けている。27はSiからなる第1のY軸検出振動体で、この第1のY軸検出振動体27は一端を第1の固定部21の一端と接続されるとともに、上面にY軸検出圧電電極28を設けており、このY軸検出圧電電極28はPtとTiの合金薄膜からなる共通GND電極29と、この共通GND電極29の上面に設けられたPZT薄膜からなる圧電層30とにより構成されている。31はSiからなる第2のY軸検出振動体で、この第2のY軸検出振動体31は一端を第1の固定部21の他端と接続されるとともに、上面にY軸検出圧電電極28を設けている。32は捩れ延出部で、この捩れ延出部32は前記第1のY軸検出振動体27の他端と、第2のY軸検出振動体31の他端とを連接している。33は第1の駆動振動体で、この第1の駆動振動体33は前記捩れ延出部32から垂直な方向に延出されるとともに、上面に一対の駆動圧電電極33aを設けており、この駆動圧電電極33aはPtとTiの合金薄膜からなる共通GND電極29と、この共通GND電極29の上面に設けられたPZT薄膜からなる圧電層30とにより構成されている。34は第1のZ軸検出振動体で、この第1のZ軸検出振動体34は前記第1の駆動振動体33の他端に、第1の駆動振動体33の延出方向と垂直な方向に延出されるとともに、L字形状に略中央を折り曲げられている。また、前記第1のZ軸検出振動体34の上面には、Z軸検出圧電電極35を設けており、このZ軸検出圧電電極35はPtとTiの合金薄膜からなる共通GND電極29と、この共通GND電極29の上面に設けられたPZT薄膜からなる圧電層30とにより構成されている。36は重り部で、この重り部36は、前記第1のZ軸検出振動体34の他端に接続されるとともに、一対の又部37を設けており、この又部37の各々を前記第1のZ軸検出振動体34の他端の両側に配設するように設けている。38は第2の駆動振動体で、この第2の駆動振動体38は捩れ延出部32から垂直な方向に前記第1の駆動振動体33と平行に延出されるとともに、上面に一対の駆動圧電電極33aを設けている。39は第2のZ軸検出振動体で、この第2のZ軸検出振動体39は前記第2の駆動振動体38の他端に、第2の駆動振動体38の延出方向と垂直な方向でかつ、前記第1のZ軸検出振動体34と反対の方向に延出されるとともに、L字形状に略中央を折り曲げられている。40は重り部で、この重り部40は前記第2のZ軸検出振動体39の他端に接続されている。41はSiからなる第2の固定部で、この第2の固定部41の上面には一対の駆動電極ランド42、1つのY方向検出電極ランド43、4つのZ方向検出電極ランド44、GND電極ランド45およびモニター電極ランド46を設けている。47はSiからなる第3のY軸検出振動体で、この第3のY軸検出振動体47は一端を第2の固定部41の一端と接続されるとともに、上面にY軸検出圧電電極28を設けている。51はSiからなる第4のY軸検出振動体で、この第4のY軸検出振動体51は一端を第2の固定部41の他端と接続されるとともに、上面にY軸検出圧電電極28を設けている。そして、第3のY軸検出振動体47の他端と、第4のY軸検出振動体51の他端とは前記捩れ延出部32に接続されている。52は第3の駆動振動体で、この第3の駆動振動体52は前記捩れ延出部32から前記第2の駆動振動体38と反対方向でかつ捩れ延出部32と垂直な方向に延出されるとともに、上面に一対の駆動圧電電極33aを設けている。この駆動圧電電極33aはPtとTiの合金薄膜からなる共通GND電極29と、この共通GND電極29の上面に設けられたPZT薄膜からなる圧電層30とにより構成されている。54は第3のZ軸検出振動体で、この第3のZ軸検出振動体54は前記第3の駆動振動体52の他端に、第3の駆動振動体52の延出方向と垂直な方向に延出されるとともに、L字形状に略中央を折り曲げられている。また、前記第3のZ軸検出振動体54の上面には、Z軸検出圧電電極35を設けている。56は重り部で、この重り部56は、前記第3のZ軸検出振動体54の他端に接続されている。58は第4の駆動振動体で、この第4の駆動振動体58は捩れ延出部32から垂直な方向に前記第3の駆動振動体52と平行に延出されるとともに、上面に一対の駆動圧電電極33aを設けている。59は第4のZ軸検出振動体で、この第4のZ軸検出振動体59は前記第4の駆動振動体58の他端に、第4の駆動振動体58の延出方向と垂直な方向でかつ、前記第3のZ軸検出振動体54と反対の方向に延出されるとともに、L字形状に略中央を折り曲げられている。60は重り部で、この重り部60は前記第4のZ軸検出振動体59の他端に接続されている。そして、前記第1の駆動振動体33、第2の駆動振動体38、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58と捩れ延出部32との接続箇所の近傍の上面には、各々、モニター圧電電極61を設けている。そしてまた、前記第1の固定部21における駆動電極ランド22は、第1の駆動振動体33および第2の駆動振動体38における駆動圧電電極33aと配線パターン62により電気的に接続されるとともに、Y方向検出電極ランド23は配線パターン62により、第1のY軸検出振動体27および第2のY軸検出振動体31におけるY軸検出圧電電極28と電気的に接続されている。さらに、第1の固定部21におけるZ方向検出電極ランド24は、第1のZ軸検出振動体34および第2のZ軸検出振動体39におけるZ軸検出圧電電極35と配線パターン62により電気的に接続されるとともに、モニター電極ランド26は、第1の駆動振動体33および第2の駆動振動体38におけるモニター圧電電極61と配線パターン62により電気的に接続されている。さらに、前記第2の固定部41における駆動電極ランド42は、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58における駆動圧電電極33aと配線パターン62により電気的に接続されるとともに、Y方向検出電極ランド43は配線パターン62により、第3のY軸検出振動体47および第4のY軸検出振動体51におけるY軸検出圧電電極28と電気的に接続されている。さらに、第2の固定部41におけるZ方向検出電極ランド44は、第3のZ軸検出振動体54および第4のZ軸検出振動体59におけるZ軸検出圧電電極35と配線パターン62により電気的に接続されるとともに、モニター電極ランド46は、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58におけるモニター圧電電極61と配線パターン62により電気的に接続されている。
【0018】
70は音叉型のX軸検出用角速度センサ素子である。71は例えばSi等の非圧電材料からなる振動体で、この振動体71は、第1のアーム72および第2のアーム73と、前記第1のアーム72の一端と第2のアーム73の一端を接続する接続部74とで構成されている。75は前記振動体71における第1のアーム72および第2のアーム73の主面の内側に設けられた一対の内側駆動部で、この内側駆動部75は、図4に示すように、前記振動体71の主面に設けられた一対のPtからなる内側下部電極76と、この内側下部電極76の上面に設けられた内側圧電薄膜77と、この内側圧電薄膜77の上面に設けられ、かつTiまたはWとAuを層状に設けた内側上部電極78とで構成されている。そして、前記内側圧電薄膜77はチタン酸鉛膜79と、このチタン酸鉛膜79の上面に設けられたPZT圧電薄膜80とで構成されている。81は前記振動体71における第1のアーム72および第2のアーム73における主面の外側に前記内側駆動部75と距離をおいて並設された一対の外側駆動部で、この外側駆動部81は、前記内側駆動部75と同様に、前記振動体71の主面に設けられた一対のPtからなる外側下部電極82と、この外側下部電極82の上面に設けられた外側圧電薄膜83と、この外側圧電薄膜83の上面に設けられ、かつTiまたはWとAuを層状に設けた外側上部電極84とで構成されている。そして、前記外側圧電薄膜83はチタン酸鉛膜85と、このチタン酸鉛膜85の上面に設けられたPZT圧電薄膜86とで構成されている。
【0019】
87は前記振動体71における第1のアーム72および第2のアーム73の主面に前記内側駆動部75と外側駆動部81との間に位置して設けられた検知部で、この検知部87は前記振動体71の主面に設けられた一対のPtからなる検知下部電極88と、この検知下部電極88の上面に設けられた検知圧電薄膜89と、この検知圧電薄膜89の上面に設けられ、かつTiまたはWとAuを層状に設けた検知上部電極90とで構成されている。そして、前記検知圧電薄膜89はチタン酸鉛膜91と、このチタン酸鉛膜91の上面に設けられたPZT圧電薄膜92とで構成されている。93はケースで、このケース93は、前記Y軸およびZ軸検出用角速度センサ素子20およびX軸検出角速度センサ素子70を収納するとともに、上面にケース電極94を設けており、このケース電極94をY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子20における一対の駆動電極ランド22、1つのY方向検出電極ランド23、4つのZ方向検出電極ランド24、GND電極ランド25、モニター電極ランド26、一対の駆動電極ランド42、1つのY方向検出電極ランド43、4つのZ方向検出電極ランド44、GND電極ランド45およびモニター電極ランド46とワイヤー線95を介して電気的に接続している。
【0020】
また、同様に、前記X軸検出用角速度センサ素子70における接続部74は、ケース93におけるケース電極94とワイヤー線95を介して電気的に接続されている。
【0021】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサにおけるY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子について、次にその製造方法を説明する。
【0022】
まず、図5(a)に示すように、予め上面に駆動電極ランド22、42、Y方向検出電極ランド23、43、Z方向検出電極ランド24、44、モニター電極ランド26、46、GND電極ランド25、45、Y軸検出圧電電極28、駆動圧電電極33a、Z軸検出圧電電極35、モニター圧電電極61および配線パターン62を形成したウェハ63を準備する。
【0023】
次に、スピンコートによりウェハ63の上面に、例えば、アルミ、チタン、酸化シリコン、窒化シリコン等のレジスト膜64を塗布した後、図5(b)に示すように、フォトリソグラフィーにより、レジスト膜64を所定形状にパターンニングする。
【0024】
次に、前記ウェハ63をドライエッチング装置(図示せず)にセットした後、SF6あるいはCF6等のフッ素系ガスを導入することにより、図5(c)に示すように、Siからなるウェハ63のレジスト膜64を設けた部分以外をエッチングして溝65を形成する。
【0025】
次に、図5(d)に示すように、前記レジスト膜64の上面に、50〜200ミクロンのバックグラインド時にウェハ63の上面を保護する機能を有する粘着剤層(図示せず)を設けたフィルム66を貼り、その後、ウェハ63の上下を逆さまにして、ウェハ63の上面側に設けたフィルム66をチャックテーブル(図示せず)に固定する。
【0026】
次に、図5(e)に示すように、バックグラインドホイール67を回転させることにより、ウェハ63の裏面を研削する。
【0027】
最後に、UVを照射することにより、フィルム66の粘着力を低減させてレジスト膜64の上面から前記フィルム66を剥離した後、前記レジスト膜64を除去するとともに、前記ウェハ63から個片の角速度センサ素子を取り出す。
【0028】
同様に、本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサにおける音叉型のX軸検出用角速度センサ素子について、次にその製造方法を説明する。
【0029】
まず、略厚さ0.2mmの(110)面のシリコン(Si)ウェハ(図示せず)を準備し、このシリコン(Si)ウェハ(図示せず)の上面にPtをスパッタリングすることによって略100Åの厚さとなるように成膜することにより、振動体71における第1のアーム72および第2のアーム73の上面の内側下部電極76、外側下部電極82および検知下部電極88が設けられる位置に下部電極(図示せず)を形成する。
【0030】
次に、PZT等の圧電薄膜の良好な配向を得るための製造条件の許容範囲を広くすることができるランタンとマグネシウムが添加されたチタン酸鉛膜(図示せず)をスパッタリングすることによって略200Åの厚さとなるように成膜した後、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)をスパッタリングすることによって略2〜3μmの厚さとなるように成膜することにより、内側圧電薄膜77、外側圧電薄膜83および検知圧電薄膜89が設けられる位置に圧電薄膜(図示せず)を形成する。
【0031】
次に、TiまたはWをスパッタリングすることによって略15Åの厚さとなるように成膜した後、その上面にAuの材料をスパッタリングすることによって略2000Åの厚さとなるように成膜することにより、内側上部電極78、外側上部電極84および検知上部電極90が設けられる位置に上部電極(図示せず)を形成する。
【0032】
次に、フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いて、図3および図4に示すような形状の内側下部電極76、外側下部電極82、検知下部電極88、内側圧電薄膜77、外側圧電薄膜83、検知圧電薄膜89、内側上部電極78、外側上部電極84および検知上部電極90を形成する。
【0033】
最後に、ダイシング加工することにより、個片のX軸検出用角速度センサ素子に分離する。
【0034】
以上のように組み立てられた本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサにおけるY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子について、次に、その動作を説明する。
【0035】
第1の固定部21における駆動電極ランド22および第2の固定部41における駆動電極ランド42に交流電圧を印加することにより、配線パターン62を介して、第1の駆動振動体33、第2の駆動振動体38、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58における駆動圧電電極33aの分極の方向と同じ方向の場合には引張応力が発生し、一方、反対の方向の場合には、圧縮応力が発生する。そうすると、交流電圧の位相に応じて、第1の駆動振動体33、第2の駆動振動体38、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58がX軸方向に速度Vで駆動振動する。この駆動振動は第1のZ軸検出振動体34、第2のZ軸検出振動体39、第3のZ軸検出振動体54および第4のZ軸検出振動体59を介して重り部36、40、56、60に伝わり、重り部36、40、56、60がX軸方向に速度Vで駆動振動する。
【0036】
ここで、まず、角速度センサ素子にZ軸方向回りの角速度が発生する場合を考える。
【0037】
重り部36、40、56、60がコリオリ力により、Y軸方向に振動駆動する。
【0038】
そうすると、第1のZ軸検出振動体34、第2のZ軸検出振動体39、第3のZ軸検出振動体54および第4のZ軸検出振動体59における第1の駆動振動体33、第2の駆動振動体38、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58から垂直な方向に延出された箇所がY軸方向に振動駆動する。そして、角速度に応じた電荷がZ軸検出圧電電極35に発生する。さらに、第1のZ軸検出振動体34、第2のZ軸検出振動体39、第3のZ軸検出振動体54および第4のZ軸検出振動体59のL字形状に折り曲げられた先端側は、前述のY軸方向振動駆動に伴い、X軸方向に撓み振動する。したがって、この撓み振動により発生する電荷が、Z軸検出圧電電極35に加算して発生し、Z軸周りの角速度を検出することができるものである。
【0039】
次に、角速度センサ素子にY軸方向回りの角速度が発生する場合を考える。
【0040】
その場合には、重り部36、40、56、60がコリオリ力により、Z軸方向に振動駆動する。そうすると、第1のZ軸検出振動体34、第2のZ軸検出振動体39、第3のZ軸検出振動体54および第4のZ軸検出振動体59と、第1の駆動振動体33、第2の駆動振動体38、第3の駆動振動体52および第4の駆動振動体58を介して、捩れ延出部32に捩り力が加わり、第1のY軸検出振動体27、第2のY軸検出振動体31、第3のY軸検出振動体47および第4のY軸検出振動体51がZ方向に振動駆動する。そして、Y軸検出圧電電極28に電荷が発生し、Y軸周りの角速度を検出することができるものである。
【0041】
同様に、本発明の一実施の形態における3軸検出用角速度センサにおけるX軸検出用角速度センサ素子について、その動作を図面を参照しながら説明する。
【0042】
図6、図7において、96は分極方向を示す矢印、97は内側圧電薄膜77および外側圧電薄膜83の伸縮方向を示す矢印である。この図6、図7において、内側下部電極76と内側上部電極78との間、および外側下部電極82と外側上部電極84との間にDC約20Vを印加すると、内側圧電薄膜77、外側圧電薄膜83および検知圧電薄膜89の分極ベクトルの方向は一方向に揃う。例えば、内側下部電極76および外側下部電極82がプラス側に、内側上部電極78および外側上部電極84がマイナス側になるようにDC電圧を印加すると、矢印96に示すような方向に分極ベクトルが向く。このような内側圧電薄膜77および外側圧電薄膜83に対して図6に示すように、内側上部電極78および外側上部電極84が内側下部電極76および外側下部電極82よりも高電位になるように電圧を印加すると内側圧電薄膜77および外側圧電薄膜83は矢印に示す方向の分極ベクトルと垂直な矢印97の方向に伸びる。逆に、図7に示すように、内側上部電極78および外側上部電極84が内側下部電極76および外側下部電極82よりも低電位になるように電圧を印加すると、内側圧電薄膜77および外側圧電薄膜83は矢印96に示す方向の分極ベクトルと垂直な矢印98の方向に縮む。
【0043】
したがって、内側下部電極76および外側下部電極82をGND電極または仮想GND電極とし、そして内側上部電極78および外側上部電極84に交流電圧を印加すると、内側圧電薄膜77および外側圧電薄膜83は、矢印97、98に示すように伸び縮みする。
【0044】
また、図4に示す内側上部電極78および外側上部電極84に互いに位相が180°異なる交流電圧を印加することにより、内側圧電薄膜77が伸びる場合は、外側圧電薄膜83は縮む。逆に、内側圧電薄膜77が縮む場合は、外側圧電薄膜83は伸びる。
【0045】
以上の原理に基づき、振動体71における第1のアーム72および第2のアーム73は互いに逆方向(X方向)に振動体共振する。
【0046】
そして、この状態において、X軸検出用角速度センサ素子における振動体71の長手方向のX軸方向回りに角速度が付加されると、振動体71の第1のアーム72および第2のアーム73の主面に直角な方向(Z方向)に発生するコリオリ力に起因した振動によって、第1のアーム72と第2のアーム73とが互いに逆方向に撓む。そしてこの逆方向への撓みにより、第1のアーム72における検知圧電薄膜89と第2のアーム73における検知圧電薄膜89とに発生する電荷が互いに逆となる。そこで、その電荷を検知上部電極90により検出し、そして、差動アンプ(図示せず)により差動をとることにより、出力信号を出力し、X軸周りの角速度を検出するものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る3軸検出角速度センサは、Y軸周りおよびZ軸周りの2軸方向の角速度を検出することが出来るという効果を有するものであり、特に各種電子機器に用いられる角速度センサに使用される角速度センサ素子として有用なものである。
【符号の説明】
【0048】
27、31、47、51 Y軸検出振動体
28 Y軸検出圧電電極
32 捩れ延出部
33、38、52、58 駆動振動体
33a 駆動圧電電極
34、39、54、59 Z軸検出振動体
36、40、56、60 重り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に少なくとも1つのY軸検出圧電電極を設けたY軸検出振動体と、このY軸検出振動体の他端と一端を接続された捩れ延出部と、一端を前記捩れ延出部の他端と接続されるとともに、捩れ延出部から垂直な方向に延出されかつ上面に少なくとも1つの駆動圧電電極を設けた駆動振動体と、一端を駆動振動体の他端に接続させるとともに駆動振動体の延出方向と垂直な方向に延出され、さらに上面に少なくとも1つのZ軸検出圧電電極を設けたZ軸検出振動体と、このZ軸検出振動体の他端と接続された重り部とにより構成されたY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と、このY軸およびZ軸検出用角速度センサ素子と別体に設けられるとともにX軸方向に延出された音叉型のX軸検出用角速度センサ素子とからなる3軸検出角速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−93154(P2012−93154A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239252(P2010−239252)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】