説明

C型肝炎ウイルスの大環状阻害剤

【化1】


各破線(-----により示される)が場合による二重結合を示し;XがN、CHであり、そしてXが二重結合を有する時それはCであり;Rが−OR、−NH−SOであり;Rが水素であり、そしてXがC又はCHである場合、RはC1−6アルキルであることもでき;Rが水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C3−7シクロアルキルであり;nが3、4、5又は6であり;RがC1−6アルキル又はC3−7シクロアルキルであり;Rが水素、ハロ、C1−6アルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ポリハロC1−6アルキルであり;Rが水素、C1−6アルコキシ、モノ−もしくはジC1−6アルキルアミノであるか;あるいはR及びRが、場合によりO、N及びSから選ばれる1もしくは2個を含むことができる5−もしくは6−員不飽和もしくは部分的不飽和環を形成することができ;Rが水素;場合によりC1−6アルキルで置換されていることができるC3−7シクロアルキル;又は場合によりC3−7シクロアルキルで置換されていることができるC1−6アルキルであり;Rが場合によりC1−6アルキルで置換されていることができるC3−7シクロアルキル;場合によりC3−7シクロアルキルで置換されていることができるC1−6アルキル;あるいは−NR8a8bであり;R8a及びR8bはC1−6アルキルであるか、又は両者は5−もしくは6−員飽和複素環式環を形成することができる式(I)のHCV複製の阻害剤ならびにその塩及び立体異性体;化合物(I)を含有する製薬学的組成物ならびに化合物(I)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の複製への阻害活性を有する大環状化合物に関する。本発明はさらに、活性成分としてこれらの化合物を含んでなる組成物ならびにこれらの化合物及び組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、世界中で慢性肝臓病の第1の原因であり、有意な医学的研究の焦点となってきた。HCVは、ヘパシウイルス(hepacivirus)属のウイルスのフラビウイルス(flaviviridae)科のメンバーであり、人間の疾患に含まれる複数のウイルス、例えばデング熱ウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス(flavivirus)属ならびにウシウイルス性下痢性ウイルス(BVDV)を含む動物ペスティウイルス(pestivirus)科に密接に関連する。HCVはポジティブ−センス(positive−sense)1本鎖RNAウイルスであり、約9,600塩基のゲノムを有する。ゲノムは、RNA二次構造を採る(adopt)5’及び3’の両方の非翻訳領域及び1個のポリタンパク質をコードする中心読取り枠を含んでなる。ポリタンパク質は10個の遺伝子産物をコードし、それらは宿主及びウイルスの両方のプロテアーゼにより媒介される共−翻訳及び翻訳後エンドタンパク質分解性(endoproteolytic)切断の協奏的シリーズ(orchestrated series)により、前駆体ポリタンパク質から生成する。ウイルス構造タンパク質はコアヌクレオキャプシドタンパク質ならびに2個の包膜糖タンパク質E1及びE2を含む。非−構造(NS)タンパク質はいくつかの必須のウイルス酵素機能(ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、プロテアーゼ)ならびに未知の機能のタンパク質をコードする。ウイルスゲノムの複製は、非−構造タンパク質5b(NS5B)によりコードされるRNA−依存性RNAポリメラーゼにより媒介される。ポリメラーゼの他に、両方とも二機能性NS3タンパク質においてコードされるウイルスヘリカーゼ及びプロテアーゼ機能がHCV RNAの複製に必須であることが示された。NS3セリンプロテアーゼの次に、HCVはNS2領域中のメタロプロテイナーゼもコードする。
【0003】
初期の急性の感染に続き、感染した患者の大部分は慢性肝炎を発症し、それはHCVが肝細胞中で優先的に複製するが、直接細胞障害性ではないからである。特に、激しいT−リンパ球反応の欠如及びウイルスが突然変異する高い傾向は、慢性感染の高率を助長すると思われる。慢性肝炎は肝線維症に進行し、肝硬変、末期肝臓病及びHCC(肝細胞ガン)に導き得、それを肝臓移植の第1の原因としている。
【0004】
6個の主要なHCV遺伝子型及び50個より多いサブタイプがあり、それらは地理的に種々に分布する。1型HCVはヨーロッパ及び米国で優勢な遺伝子型である。HCVの広範囲の遺伝子的異質性は、重要な診断的及び臨床的意味を有し、おそらくワクチン開発における困難性及び治療への反応の欠如を説明する。
【0005】
HCVの伝染は、例えば輸血又は静脈内薬物使用に続く汚染された血液又は血液製剤との接触を介して起こり得る。血液のスクリーニングにおいて用いられる診断的試験の導入は、輸血−後HCV出現率を下げる傾向に導いた。しかしながら、末期肝臓病への遅い進行を考えると、現存する感染は重大な医学的及び経済的重荷を何十年も与え続けるであろう。
【0006】
現在のHCV治療は、リバビリンと組み合わされた(ポリエチレングリコール化(pegylated))インターフェロン−アルファ(IFN−α)に基づく。この組み合わ
せ治療は、遺伝子型1ウイルスに感染した患者の40%より多くにおいて、ならびに遺伝子型2及び3に感染した患者の約80%において持続性のウイルス学的反応を生ずる。1型HCVへの限られた有効性の他に、この組み合わせ治療は有意な副作用を有し、多くの患者においてあまり耐えられない。主な副作用にはインフルエンザ−様症状、血液学的異常及び神経精神医学的症状が含まれる。従って、より有効、簡便且つより耐えられる処置が必要である。
【0007】
最近、2つのペプチドミメティックHCVプロテアーゼ阻害剤、すなわち特許文献1において開示されたBILN−2061及び特許文献2において開示されたVX−950が臨床的候補薬剤として注目を得た。複数の類似のHCVプロテアーゼ阻害剤も学術的文献及び特許文献において開示された。BILN−2061又はVX−950の持続的投与がそれぞれの薬剤に耐性であるHCV突然変異体、いわゆる薬剤逸脱突然変異体(drug
escape mutants)を選ぶことは、すでに明らかになった。これらの薬剤逸脱突然変異体は、HCVプロテアーゼゲノム、顕著にはD168V、D168A及び/又はA156Sにおける特徴的な突然変異を有する。従って、失敗の患者に処置の選択肢を与えるために異なる耐性パターンを有する追加の薬剤が必要であり、多数の薬剤との組み合わせ治療は、第一線の処置(first line treatment)のためでさえ、将来は普通になりそうである。
【0008】
HIV薬及び特にHIVプロテアーゼ阻害剤を用いる経験は、最適以下の薬物動態学及び複雑な投薬管理が、不注意のコンプライアンスの失敗を迅速に生ずることをさらに強調した。これは今度は、HIV管理におけるそれぞれの薬剤に関する24時間トラフ濃度(trough concentration)(最小血漿濃度)が、頻繁にその日の大きな部分に及んでIC90又はED90閾値より低く下がることを意味する。少なくともIC50そしてより現実的にはIC90又はED90の24時間トラフレベル(trough level)は、薬剤逸脱突然変異体の出現を遅らせるのに必須であると思われる。
【0009】
そのようなトラフレベルを可能にするのに必要な薬物動態学及び薬剤代謝を達成することは、薬剤設計に厳しい挑戦を与える。多数のペプチド結合を有する先行技術のHCVプロテアーゼ阻害剤の強いペプチドミメティック性は、有効な投薬量管理への薬物動態学的ハードルとなる。
【0010】
現在のHCV治療の欠点、例えば副作用、限られた有効性、耐性の出現及びコンプライアンスの失敗を克服することができるHCV阻害剤が必要である。
【0011】
本発明は、以下の関連する薬理学的性質、すなわち力価、細胞毒性の低下、薬物動態学における向上、耐性プロファイル(resistance profile)における向上、許容され得る投薬量及び薬剤負荷量(pill burden)の1つもしくはそれより多くにおいて優れているHCV阻害剤に関する。さらに、本発明の化合物は比較的低い分子量を有し、商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の合成法を介して容易に得られ得る出発材料から出発して、合成が容易である。
【0012】
特許文献3は、アザ−ペプチド大環状C型肝炎セリンプロテアーゼ阻害剤を開示している。特許文献4及び特許文献5は、それぞれプロリン及びシクロアルキル部分を有する線状及び大環状HCVプロテアーゼ阻害剤のシリーズを記載している。本発明の化合物は、プロリン又はシクロアルキル部分に連結する特別に置換されたキノリニルオキシ断片を有し、その断片は引用した参照文献に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第00/59929号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/87092号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/010029号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/073216号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/073195号パンフレット
【発明の概要】
【0014】
本発明はHCV複製の阻害剤に関し、それは式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
各破線(-----により示される)は独立して、場合による二重結合を示し;
XはN、CHであり、そしてXが二重結合を有する時それはCであり;
は−OR、−NH−SOであり;
は水素であり、そしてXがC又はCHである場合、RはC1−6アルキルであることもでき;
は水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C3−7シクロアルキルであり;
nは3、4、5又は6であり;
はC1−6アルキル又はC3−7シクロアルキルであり;
は水素、ハロ、C1−6アルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ポリハロC1−6アルキルを示し;
は水素、C1−6アルコキシ、モノ−もしくはジC1−6アルキルアミノを示すか;あるいは
及びRは場合によりそれらが結合する炭素原子と一緒になって、5−もしくは6−員不飽和もしくは部分的不飽和環を形成することができ、ここで該環は場合によりO、N及びSから選ばれる1もしくは2個のヘテロ原子を含むことができ;
は水素;場合によりC1−6アルキルで置換されていることができるC3−7シクロアルキル;又は場合によりC3−7シクロアルキルで置換されていることができるC1−
アルキルであり;
は場合によりC1−6アルキルで置換されていることができるC3−7シクロアルキル;場合によりC3−7シクロアルキルで置換されていることができるC1−6アルキル;あるいは−NR8a8bであり、ここでR8a及びR8bはそれぞれ独立してC1−6アルキルであるか、又はR8a及びR8bはそれらが結合する窒素と一緒になって、5−もしくは6−員飽和複素環式環を形成する]
ならびにその塩及び立体異性体により示され得る。
【0017】
本発明はさらに、式(I)の化合物、その付加塩及び立体化学的異性体の製造方法ならびにこれらの製造方法において用いられる中間体に関する。
【0018】
本発明は、薬剤として用いるための式(I)の化合物自体、その付加塩及び立体化学的異性体にも関する。本発明はさらに、担体及び本明細書で規定される式(I)の化合物の抗−ウイルス的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物に関する。製薬学的組成物は、前記の化合物と他の抗−HCV薬の組み合わせを含んでなることができる。本発明はさらに、HCV感染に苦しむ患者に投与するための前記の製薬学的組成物に関する。
【0019】
本発明は、HCV複製の阻害用の薬剤の製造のための式(I)の化合物又はその付加塩もしくは立体化学的異性体の使用にも関する。あるいは、本発明は温血動物におけるHCV複製の阻害方法に関し、該方法は、式(I)の化合物又はその付加塩もしくは立体化学的異性体の有効量を投与することを含んでなる。
【0020】
前記及び後記で用いられる場合、他にことわれなければ以下の定義が適用される。
【0021】
ハロという用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの総称である。
【0022】
「ポリハロC1−6アルキル」という用語は、モノ−もしくはポリハロ置換されたC1−6アルキル、特に最高で1、2、3、4、5、6個もしくはそれより多くのハロ原子で置換されたC1−6アルキル、例えば1個もしくはそれより多いフルオロ原子を有するメチル又はエチル、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチルとして定義される。好ましいのはトリフルオロメチルである。すべての水素原子がフルオロ原子により置き換えられているC1−6アルキル基であるペルフルオロC1−6アルキル基、例えばペンタフルオロエチルも含まれる。ポリハロC1−6アルキルの定義内で、1個より多いハロゲン原子がアルキル基に結合している場合、ハロゲン原子は同じかもしくは異なることができる。
【0023】
本明細書で用いられる場合、基として又は基の一部としての「C1−4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピルを定義し;「C1−6アルキル」は、C1−4アルキル基及び5もしくは6個の炭素原子を有するその高級同族体、例えば1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ペンチル、2−エチル−1−ブチル、3−メチル−2−ペンチルなどを包含する。C1−6アルキルの中で興味深いのはC1−4アルキルである。
【0024】
基として又は基の一部としての「アルケニル」という用語は、飽和炭素−炭素結合及び少なくとも1個(又は、好ましくは1個)の二重結合を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基を定義する。「アルケニル」という用語は、種々の数、例えば2〜6個、3〜6個、2〜4個、3〜4個などの炭素原子を有する上記で規定した炭化水素基を指すことができる。本明細書で基として又は基の一部として用いられる「C5−8アルケニル」という用
語は、飽和炭素−炭素結合及び少なくとも1個(又は、好ましくは1個)の二重結合を有し、且つ5〜8個の炭素原子を有する直鎖状及び分枝鎖状炭化水素基、例えば2−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ペンテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、4−オクテニルなどを定義する。
【0025】
3−7シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルの総称である。
【0026】
1−6アルコキシは、C1−6アルキルが上記で定義された通りであるC1−6アルキルオキシを意味する。
【0027】
本明細書前記で用いられた(=O)又はオキソという用語は、炭素原子に結合する場合にはカルボニル部分、硫黄原子に結合する場合にはスルホキシド部分及び2個の該用語が硫黄原子に結合する場合にはスルホニル部分を形成する。環又は環系が1個のオキソ基で置換される場合は常に、オキソが結合する炭素原子は飽和炭素である。
【0028】
定義において用いられるいずれの分子部分の上の基の位置も、そのような部分が化学的に安定である限り、そのような部分の上のどこであることもできることに注目しなければならない。いずれかの可変項(variables)がいずれかの部分中に1回より多く存在する場合、各定義は独立している。可変項の定義において用いられる基は、他にことわらなければすべての可能な異性体を含む。例えばピリジルは2−ピリジル、3−ピリジル及び4−ピリジルを含み;ペンチルは1−ペンチル、2−ペンチル及び3−ペンチルを含む。
【0029】
下記で「式(I)の化合物」又は「本化合物」という用語又は類似の用語が用いられる場合は常に、式(I)の化合物、その付加塩;及びその立体化学的異性体を含むものとする。
【0030】
式(I)の化合物はいくつかのキラリティーの中心を有し、立体化学的異性体として存在する。本明細書で用いられる「立体化学的異性体」という用語は、同じ結合の順列により結合する同じ原子で構成されているが、式(I)の化合物が有することができる互換不可能な異なる三−次元構造を有するすべての可能な化合物を定義する。置換基内のキラル原子の絶対立体配置を指定するために(R)又は(S)が用いられる場合に関し、指定は分離された置換基ではなくて化合物全体を考慮して成される。
【0031】
他にことわるか又は指示しなければ、化合物の化学的名称は、該化合物が有することができるすべての可能な立体化学的異性体の混合物を包含する。該混合物は該化合物の基本的分子構造のすべてのジアステレオマー及び/又はエナンチオマーを含有することができる。純粋な形態又は互いとの混合物の両方における本発明の化合物のすべての立体化学的異性体が本発明の範囲内に包含されることが意図されている。本明細書で言及する化合物及び中間体の純粋な立体異性体は、該化合物又は中間体の同じ基本的分子構造の他のエナンチオマーもしくはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に「立体異性体的に純粋な」という用語は、少なくとも80%の立体異性体過剰率(すなわち最小で80%の一方の異性体及び最大で20%の他方の可能な異性体)から最高で100%の立体異性体過剰率(すなわち100%の一方の異性体及び他方の異性体なし)を有する化合物又は中間体、さらに特定的には90%から100%までの立体異性体過剰率を有する、さらにもっと特定的には94%から100%までの立体異性体過剰率を有する、そして最も特定的には97%から100%までの立体異性体過剰率を有する化合物又は中間体に関する。「エナンチオマー的に純粋な」及び「ジアステレオマー的に純粋な」
という用語は、類似して理解されるべきであるが、その場合には問題の混合物のそれぞれエナンチオマー過剰率及びジアステレオマー過剰率に関する。
【0032】
本発明の化合物及び中間体の純粋な立体異性体は、当該技術分野において既知の方法の適用により得ることができる。例えばエナンチオマーを、光学的に活性な酸もしくは塩基とのそれらのジアステレオマー塩の選択的結晶化により互いから分離することができる。その例は酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸及びカンファースルホン酸である。あるいはまた、キラル固定相を用いるクロマトグラフィー法によりエナンチオマーを分離することができる。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体特異的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は、有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いるであろう。
【0033】
式(I)の化合物のジアステレオマー的ラセミ体を、通常の方法により別々に得ることができる。有利に用いることができる適した物理的分離法は、例えば選択的結晶化及びクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィーである。
【0034】
式(I)の化合物又はそれらの塩ならびにそれらの製造において用いられる中間体のいくつかに関し、絶対立体化学的配置は実験的に決定されなかった。当該技術分野における熟練者は、例えばX−線回折のような当該技術分野において既知の方法を用い、そのような化合物の絶対立体配置を決定することができる。
【0035】
本発明は、本化合物上に存在する原子のすべての同位体を含むことも意図されている。同位体は、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。一般的な例として且つ制限ではなく、水素の同位体はトリチウム及びジューテリウムを含む。炭素の同位体はC−13及びC−14を含む。
【0036】
治療的使用のために、式(I)の化合物の塩は、対イオンが製薬学的に許容され得る塩であり、その塩は製薬学的に許容され得る酸及び塩基付加塩と言及され得る。しかしながら、製薬学的に許容され得ない酸及び塩基の塩も、例えば製薬学的に許容され得る化合物の製造又は精製において用途を見出すことができる。製薬学的に許容され得ても又は許容され得なくても、すべての塩が本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
上記で言及した製薬学的に許容され得る酸及び塩基付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療的に活性な無毒性の酸及び塩基付加塩の形態を含むものとする。製薬学的に許容され得る酸付加塩は、そのような適した酸を用いる塩基の形態の処理により簡単に得ることができる。適した酸は例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸もしくは臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの酸;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわちエタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(すなわちヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸などの酸を含む。逆に、適した塩基を用いる処理により該塩の形態を遊離の塩基の形態に転換することができる。
【0038】
酸性プロトンを含有する式(I)の化合物を、適した有機及び無機塩基を用いる処理により、それらの無毒性金属もしくはアミン付加塩の形態に転換することもできる。適した塩基塩の形態は例えばアンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など;有機塩基との塩、例えば
ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩、ならびに例えばアルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩を含む。
【0039】
本明細書で用いられる「付加塩」又は「塩」という用語は、式(I)の化合物ならびにその(非−溶媒和物)塩が形成することができる溶媒和物も含むものとする。そのような溶媒和物は、例えば水和物、アルコラート、例えばメタノラート、エタノラート、プロパノラートなどである。好ましいのは、製薬学的に許容され得る溶媒和物である。従って本発明は、本明細書に規定される式(I)の化合物の製薬学的に許容され得る溶媒和物も包含する。
【0040】
式(I)の化合物のいくつかは、それらの互変異性体においても存在し得る。そのような形態は、上記の式中に明白に示されてはいないが、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0041】
上記の通り、式(I)の化合物はいくつかの不斉中心を有する。これらの不斉中心のそれぞれをもっと有効に指すために、以下の構造式中に示されるナンバリングシステム(numbering system)を用いる。
【0042】
【化2】

【0043】
不斉中心は大員環の1、4及び6位ならびに5−員環中の炭素原子3’、R置換基がC1−6アルキルである場合には炭素原子2’及びXがCHである場合には炭素原子1’に存在する。これらの不斉中心のそれぞれは、それらのR又はS立体配置で存在することができる。
【0044】
1位における立体化学は、好ましくはL−アミノ酸立体配置のそれ、すなわちL−プロリンのそれに対応する。
【0045】
XがCHである場合、シクロペンタン環の1’及び5’位で置換している(substituted)2個のカルボニル基は、好ましくはトランス立体配置にある。5’位におけるカルボニル置換基は、好ましくはL−プロリン立体配置に対応する立体配置にある。1’及び5’位で置換しているカルボニル基は、好ましくは次式の構造において下記に描く通りである。
【0046】
【化3】

【0047】
式(I)の化合物は、下記の構造断片中に示される通り、シクロプロピル基を含み:
【0048】
【化4】

【0049】
式中、Cは7位における炭素を示し、4及び6位における炭素はシクロプロパン環の不斉炭素原子である。
【0050】
式(I)の化合物の他の部分における他の可能な不斉中心にかかわらず、これらの2個の不斉中心の存在は、化合物がジアステレオマーの混合物、例えば下記に示す通りに7位における炭素がカルボニルに対してsyn又はアミドに対してsynに配置される式(I)の化合物のジアステレオマーの混合物として存在し得ることを意味する。
【0051】
【化5】

【0052】
1つの態様は、7位の炭素がカルボニルに対してsynに配置される式(I)の化合物に関する。別の態様は、4位の炭素における立体配置がRである式(I)の化合物に関する。式(I)の化合物の特別なサブグループは、7位における炭素がカルボニルに対してsynに配置され、且つ4位の炭素における立体配置がRであるものである。
【0053】
式(I)の化合物はプロリン残基(XがNである場合)又はシクロペンチルもしくはシクロペンテニル残基(XがCH又はCである場合)を同様に含むことができる。好ましいのは、1(又は5’)位における置換基及び3’位における置換基がトランス立体配置にある式(I)の化合物である。特に興味深いのは、1位がL−プロリンに対応する立体配置を有し、3’位における置換基が1位に関してトランス立体配置にある式(I)の化合物である。好ましくは、式(I)の化合物は下記の式(I−a)及び(I−b)の構造中に示される通りの立体化学を有する:
【0054】
【化6】

【0055】
本発明の1つの態様は、以下の条件の1つもしくはそれより多くが適用される式(I)又は式(I−a)の化合物あるいは式(I)の化合物のいずれかのサブグループの化合物に関する:
(a)Rは水素である;
(b)Xは窒素である;
(c)炭素原子7と8の間に二重結合が存在する。
【0056】
本発明の1つの態様は、適宜、以下の条件の1つもしくはそれより多くが適用される式(I)又は式(I−a)、(I−b)の化合物あるいは式(I)の化合物のいずれかのサブグループの化合物に関する:
(a)Rは水素である;
(b)XはCHである;
(c)炭素原子7と8の間に二重結合が存在する。
【0057】
式(I)の化合物の特別なサブグループは、以下の構造式により示されるものである:
【0058】
【化7】

【0059】
式(I−c)及び(I−d)の化合物の中で、それぞれ式(I−a)及び(I−b)の化合物の立体化学的配置を有するものが特に興味深い。
【0060】
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループ中の炭素原子7と8の間の二重結合は、シス又はトランス立体配置にあることができる。好ましくは、炭素原子7と8の間の二重結合は、式(I−c)及び(I−d)に描かれる通り、シス立体配置にある。
【0061】
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループにおいて、下記の式(I−e)に描かれる通り、炭素原子1’と2’の間に二重結合が存在し得る。
【0062】
【化8】

【0063】
式(I)の化合物の他の特別なサブグループは、以下の構造式により示されるものであ
る:
【0064】
【化9】

【0065】
式(I−f)、(I−g)又は(I−h)の化合物の中で、式(I−a)及び(I−b)の化合物の立体化学的配置を有するものが特に興味深い。
【0066】
式(I−a)、(I−b)、(I−c)、(I−d)、(I−e)、(I−f)、(I−g)及び(I−h)の化合物において、適宜X、n、R、R、R、R、R及びRは、本明細書で規定される式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかの定義において規定される通りである。
【0067】
上記で定義した式(I−a)、(I−b)、(I−c)、(I−d)、(I−e)、(I−f)、(I−g)又は(I−h)の化合物のサブグループならびに本明細書で定義される他のいずれかのサブグループは、そのような化合物の立体化学的異性体も含むものと
し、且ついずれの付加塩をも含むものとすることは、理解されるべきである。
【0068】
nが3である場合、「n」により括弧に入れられた部分−CH−は、式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループにおいてプロパンジイルに相当する。nが4である場合、「n」により括弧に入れられた部分−CH−は、式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループにおいてブタンジイルに相当する。nが5である場合、「n」により括弧に入れられた部分−CH−は、式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループにおいてペンタンジイルに相当する。nが6である場合、「n」により括弧に入れられた部分−CH−は、式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループにおいてヘキサンジイルに相当する。式(I)の化合物の特別なサブグループは、nが4又は5である化合物である。
【0069】
本発明の態様は、
(a)Rが−ORであり、特にここでRはC1−6アルキル、例えばメチル、エチル又はtert−ブチル(又はt.ブチル)であるか、又は好ましくは、ここでRは水素であるか;あるいは
(b)Rが−NHS(=O)であり、特にここでRはC1−6アルキル又はC−Cシクロアルキルであり、例えばここでRはメチル又はシクロプロピルであるか;あるいはRが−NHS(=O)であり、ここでRはシクロプロピルであるか;
(c)Rが−NHS(=O)であり、特にここでRはC1−6アルキルで置換されたC3−7シクロアルキルであり、好ましくは、Rはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり、それらのそれぞれはC1−4アルキルで、すなわちメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル又はイソブチルで置換されているか;あるいは
(d)Rが−NHS(=O)であり、ここで特にRは−NR8a8bであり、ここでR8a及びR8bは、それぞれ独立してC1−6アルキルであるか;あるいはRが−NHS(=O)であり、ここでR8a及びR8bは、それらが結合する窒素と一緒になって、5−もしくは6−員窒素−含有飽和複素環式環を形成せしめ、その環はさらに1個のO、S又はN原子を含有することができ、N−原子は水素原子を有していることができるか、又はC1−6アルキルもしくはC1−6アルキルカルボニル基を有していることができ;例えばピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジンニル、4−C1−6アルキルピペラジニル又は4−C1−6アルキルカルボニルピペラジニルを形成するか;
(e)Rが−NHS(=O)であり、ここで特にRはC1−4アルキルで置換されたシクロアルキル、すなわちメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルで置換されたシクロプロピルであるか;
(f)Rが−NHS(=O)であり、ここで特にRは1−メチルシクロプロピル(又は1−メチル−1−シクロプロピル)である
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のいずれかのサブグループである。
【0070】
本発明のさらに別の態様は、
(a)Rが水素である;
(b)RがC1−6アルキル、特にメチルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0071】
本発明の態様は、
(a)XがN、C(Xは二重結合を介して結合する)又はCH(Xは単結合を介して結合する)であり、Rが水素である;
(b)XがC(Xは二重結合を介して結合する)であり、RがC1−6アルキル、好ま
しくはメチルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0072】
本発明のさらに別の態様は、
(a)Rが水素である;
(b)RがC1−6アルキルである;
(c)RがC1−6アルコキシC1−6アルキル又はC3−7シクロアルキルである
式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0073】
本発明の好ましい態様は、Rが水素又はC1−6アルキルであるか;あるいはRが水素又はメチルであるか;あるいはRがC1−4アルキルであるか;あるいはRがメチルである式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0074】
本発明の態様は、RがC1−4アルキルであるか;あるいはRがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−メチル−ブチル、2−メチル−ブチル、3−メチル−ブチル、1,2−ジメチル−プロピル、ペンチル、1−メチル−ペンチル、2−メチル−ペンチル、3−メチル−ペンチル、4−メチル−ペンチル、1,1−ジメチル−ブチル、1,2−ジメチル−ブチル、1,3−ジメチル−ブチル、2,2−ジメチル−ブチル、3,3−ジメチル−ブチル、1,1,2−トリメチル−プロピル、1,2,2−トリメチル−プロピル又はヘキシルである式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。1つの態様において、Rはメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。他の態様において、Rはエチルである。
【0075】
本発明の態様は、Rが水素、ハロ、C1−6アルキル又はポリハロ−C1−6アルキルであるか;あるいはRが水素、C1−4アルキル又はハロであるか;あるいはRが水素、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、フルオロ、クロロ、ブロモ又はトリフルオロメチルである式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0076】
本発明の態様は、Rが水素、C1−6アルコキシ又はジC1−6アルキルアミノであるか;あるいはRが水素、メトキシ又はジメチルアミノであるか;あるいはRが水素又はメトキシである式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。
【0077】
本発明の態様は、R及びRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって5−もしくは6−員不飽和もしくは部分的不飽和環を形成せしめ、且つここで該環は場合によりO及びNから選ばれる1もしくは2個のヘテロ原子を含むことができる式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかである。1つの態様は、R及びRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって5−員部分的不飽和環を形成せしめ、ここで不飽和はRを有する炭素原子とRを有する炭素原子の間にあり、環の残りの部分は飽和し、且つ該環は1もしくは2個の酸素環原子を含む式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかに関する。1つの特別な態様は、R及びRが、それらが結合するキノリン部分と一緒になって:
【0078】
【化10】

【0079】
から選ばれる環系を形成する式(I)の化合物又は式(I)の化合物のサブグループのいずれかに関する。
【0080】
式(I)の化合物は、3つの構成単位P1、P2、P3から成る。構成単位P1はさらにP1’尾部を含有する。下記の化合物(I−i)及び(I−j)において星印で記すカルボニル基は、構成単位P2又は構成単位P3のいずれかの部分であることができる。化学の理由のために、XがCである式(I)の化合物の構成単位P2には、1’位に結合するカルボニル基が導入される。
【0081】
構成単位P1とP2、P2とP3及びP1とP1’(Rが−NH−SOである場合)の連結は、アミド結合の形成を含む。単位P1とP3の連結は二重結合形成を含む。化合物(I−i)又は(I−j)の製造のための構成単位P1、P2及びP3の連結は、いずれの与えられる順序で行なうこともできる。段階の1つは環化を含み、それにより大員環が形成される。
【0082】
下記に示すのは、炭素原子C7とC8が二重結合により連結している式(I)の化合物である化合物(I−i)及び炭素原子C7とC8が単結合により連結している式(I)の化合物である化合物(I−j)である。式(I−j)の化合物は対応する式(I−i)の化合物から、大員環中の二重結合の還元により製造することができる。
【0083】
【化11】

【0084】
式(I−c)の化合物において、単位P2とP3の間のアミド結合形成は、ウレア断片
の2つの異なる位置において行なわれなければならないことに注意するべきである。第1のアミド結合はピロリジン環の窒素及び隣接カルボニル(星印で記されている)を包含する。別の第2のアミド結合形成は、星印が付けられたカルボニルと−NHR基の反応を含む。構成単位P2及びP3の間の両方のアミド結合形成が実施可能である。
【0085】
下記に記載する合成法は、ラセミ体、立体化学的に純粋な中間体又は最終的生成物あるいはいずれかの立体異性体混合物に同様に適用可能であるものとする。ラセミ体又は立体化学的混合物を、合成法のいずれかの段階に立体異性体に分離することができる。1つの態様において、中間体及び最終的生成物は上記で式(I−a)及び(I−b)の化合物において規定された立体化学を有する。
【0086】
式(I)の化合物又は中間体の構造表示を簡単にするために、基
【0087】
【化12】

【0088】
をRにより示し、点線は該基Rを分子の残りの部分に連結する結合を示す。
【0089】
1つの態様において、化合物(I−i)は、最初にアミド結合を形成せしめ、続いてP3とP1の間の二重結合連結を形成せしめ、同時に大員環に環化することにより製造される。
【0090】
1つの好ましい態様において、C及びCの間の結合が二重結合である化合物(I)は、上記で定義された式(I−i)の化合物であり、以下の反応スキームに概述される通りに製造され得る:
【0091】
【化13】

【0092】
適した金属触媒、例えばMiller,S.J.,Blackwell,H.E.,Grubbs,R.H.著,J.Am.Chem.Soc.118,1996年,9606−9614;Kingsbury,J.S.,Harrity,J.P.A.,Bonitatebus,P.J.,Hoveyda,A.H.著,J.Am.Chem.Soc
.121,1999年,791−799;及びHuang et al.著,J.Am.Chem.Soc.121,1999年,2674−2678により報告されているRuに基づく触媒、例えばHoveyda−Grubbs触媒の存在下におけるオレフィンメタセシス反応を介し、大員環の形成を行なうことができる。
【0093】
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−3−フェニル−1H−インデン−1−イリデンルテニウムクロリド(Neolyst M1(R))又はビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−[(フェニルチオ)メチレン]ルテニウム(IV)ジクロリドのような空気に安定なルテニウム触媒を用いることができる。用いることができる他の触媒は、Grubbs第1及び第2世代触媒、すなわちそれぞれベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム及び(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)−(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムである。特に興味深いのはHoveyda−Grubbs第1及び第2世代触媒であり、それらはそれぞれジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)−ルテニウム(II)及び1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ−(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムである。Moのような他の遷移金属を含有する他の触媒も、この反応のために用いることができる。
【0094】
例えばエーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン;ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、CHCl、1,2−ジクロロエタンなど、炭化水素、例えばトルエンのような適した溶媒中でメタセシス反応を行なうことができる。好ましい態様において、メタセシス反応はトルエン中で行なわれる。これらの反応は、高められた温度において窒素雰囲気下で行なわれる。
【0095】
大員環中のC7とC8の間の連結が単結合である式(I)の化合物、すなわち式(I−j)の化合物は式(I−i)の化合物から、式(I−i)の化合物中のC7−C8二重結合の還元により製造することができる。この還元は、貴金属触媒、例えばPt、Pd、Rh、Ru又はラネイニッケルの存在下で水素を用いる接触水素化により行なうことができる。興味深いのは、アルミナ上のRhである。水素化反応は、好ましくは例えばメタノール、エタノールのようなアルコール又はTHFのようなエーテルあるいはそれらの混合物のような溶媒中で行なわれる。これらの溶媒又は溶媒混合物に水を加えることもできる。
【0096】
合成のいずれの段階にも、すなわち上記に記載した環化の前又は後、あるいは環化及び還元の前又は後に、R基をP1構成単位に連結することができる。Rが−NHSOを示す式(I)の化合物は式(I−k−1)により示され、R基をP1に、両方の部分の間にアミド結合を形成することによって連結させることによりそれを製造することができる。類似して、Rが−ORを示す式(I)の化合物、すなわち化合物(I−k−2)は、エステル結合の形成によりR基をP1に連結させることによって製造することができる。1つの態様において、Gが基:
【0097】
【化14】

【0098】
[式中、点線は基Gを分子の残りの部分に連結する結合を示す]
を示す以下の反応スキームに概述される通り、−OR基は化合物(I)の合成の最後の段階に導入される。
【0099】
【化15】

【0100】
中間体(2a)を、アミド形成反応、例えば下記に記載するアミド結合の形成のための方法のいずれかにより、アミン(2b)とカップリングさせることができる。特に、(2a)をエーテル、例えばTHF又はハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンのような溶媒中でカップリング剤、例えばN,N’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N−エチルオキシカルボニル−2−エチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、N−イソブチルオキシ−カルボニル−2−イソブチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン(IIDQ)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)又はベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(R)として商業的に入手可能)を用いて処理し、好ましくは(2a)をカップリング剤と反応させた後に所望のスルホンアミド(2b)と反応させることができる。(2a)と(2b)の反応は、好ましくは塩基、例えばトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンのようなトリアルキルアミンあるいは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)の存在下で行なわれる。中間体(2a)を活性化形態、例えば一般式G−CO−Zの活性化形態に転換することもでき、ここでZはハロ又は活性エステルの残りの部分を示し、例えばZはアリールオキシ基、例えばフェノキシ、p.ニトロフェノキシ、ペンタフルオロフェノキシ、トリクロロ−フェノキシ、ペンタクロロフェノキシなどであるか;あるいはZは混合無水物の残りの部分であることができる。1つの態様において、G−CO−Zは酸クロリド(G−CO−Cl)又は混合酸無水物(G−CO−O−CO−R又はG−CO−O−CO−OR、後者中のRは例えばC1−4アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、i.プロピル、ブチル、t.ブチル、i.ブチル又はベンジルで
ある)である。活性化形態G−CO−Zをスルホンアミド(2b)と反応させる。
【0101】
上記の反応において記載した(2a)中のカルボン酸の活性化は、式
【0102】
【化16】

【0103】
のアザラクトン中間体への内部環化反応に導き得、ここでX、R、R、R、nは上記で規定した通りであり、且つここでステレオジェン中心は上記で規定した通りの、例えば(I−a)又は(I−b)における通りの立体化学的配置を有することができる。通常の方法を用いて中間体(2a−1)を反応混合物から単離することができ、そして単離された中間体(2a−1)を次いで(2b)と反応させるか、あるいは(2a−1)を単離せずに、(2a−1)を含有する反応混合物をさらに(2b)と反応させることができる。1つの態様において、カップリング剤との反応が水−非混和性溶媒中で行なわれる場合、すべての水溶性副生成物を除去するために、(2a−1)を含有する反応混合物を水又はわずかに塩基性の水で洗浄することができる。かくして得られる洗浄された溶液を、次いでさらなる精製段階なしで(2b)と反応させることができる。他方、中間体(2a−1)の単離は、単離された生成物を、場合よりさらなる精製の後に(2b)と反応させ、より少ない副生成物及びより容易な反応の仕上げを生ずることができる点で、ある利点を与えることができる。
【0104】
中間体(2a)を、エステル形成反応によりアルコール(2c)とカップリングさせることができる。例えば(2a)及び(2c)を、物理的に、例えば共沸的水の除去により、あるいは脱水剤の使用により化学的に水を除去しながら反応させることができる。中間体(2a)を活性化形態G−CO−Z、例えば上記の活性化形態に転換し、続いてアルコール(2c)と反応させることもできる。エステル形成反応は、好ましくはアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウムもしくはカリウムあるいは第3級アミン、例えばアミド形成反応に関連して本明細書で挙げたアミン、特にトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミンのような塩基の存在下で行なわれる。エステル形成反応において用いることができる溶媒は、THFのようなエーテル;ジクロロメタン、CHClのようなハロゲン化炭化水素;トルエンのような炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)のような極性非プロトン性溶媒などの溶媒を含む。
【0105】
が水素である式(I)の化合物は(I−l)により示され、以下の反応スキームにおける通り、対応する窒素−保護中間体(3a)からの保護基PGの除去によってもそれを製造することができる。保護基PGは特に下記に挙げる窒素保護基のいずれかであり、そしてやはり下記に挙げる方法を用いて除去され得る:
【0106】
【化17】

【0107】
上記の反応における出発材料(3a)は、式(I)の化合物の製造のための方法に従って、しかし基RがPGである中間体を用いて製造することができる。
【0108】
種々の基が上記で規定した意味を有する以下の反応スキームに概述する通り、中間体(4a)を中間体(4b)と反応させることによっても式(I)の化合物を製造することができる:
【0109】
【化18】

【0110】
(4b)中のYは、ヒドロキシ又は離脱基LG、例えばハライド、例えばブロミドもしくはクロリド又はアリールスルホニル基、例えばメシレート、トリフレートもしくはトシレートなどを示す。
【0111】
1つの態様において、(4a)と(4b)の反応はO−アリール化反応であり、Yは離脱基を示す。E.M.Smith et al.(J.Med.Chem.31,1988年,875−885)により記載された方法に従って、この反応を行なうことができる。特に、この反応は塩基、好ましくは強塩基の存在下に、反応に不活性な溶媒、例えばアミド結合の形成に関して挙げた溶媒の1つの中で行なわれる。
【0112】
特定の態様において、ヒドロキシ基から水素を引き抜くのに十分に強い塩基、例えばアルカリ金属水素化物、例えばLiH又は水素化ナトリウムあるいはアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムもしくはカリウムメトキシドもしくはエトキシド、カリウムtert−ブトキシドのアルカリの存在下に、双極性非プロトン性溶媒、例えばDMA、DMFなどのような反応に不活性な溶媒中で出発材料(4a)を(4b)と反応させる。得ら
れるアルコラートをアリール化剤(4b)と反応させ、ここでYは上記で挙げたような適した離脱基である。この型のO−アリール化反応を用いる(4a)の(I)への転換は、ヒドロキシ基を有する炭素における立体化学的配置を変えない。
【0113】
あるいはまた、Mitsunobu反応(Mitsunobu,1981,Synthesis,January,1−28;Rano et al.,Tdrahedron
Lett.,1995,36,22,3779−3729;Krchnak et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,5,6193−6196;Richter et al.,Tetrahedron Lett.,1994,35,27,4705−4706)を介して(4a)と(4b)の反応を行なうこともできる。この反応は、トリフェニルホスフィン及び活性化剤、例えばジアルキルアゾカルボキシレート、例えばアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)などの存在下に、Yがヒドロキシルである(4b)を用いて中間体(4a)を処理することを含む。Mitsunobu反応は、ヒドロキシ基を有する炭素における立体化学的配置を変える。
【0114】
(4a)上に(4b)基を導入するのに有用な他の型の反応はBrosylate反応であり、それにより(4a)をトリエチルアミン又はジイソプロピルトリエチルアミン及びTHFの存在下でp−ブロモベンゼンスルホニルと反応させ、続いてYがヒドロキシルである(4b)を加えて化合物(I)を与える。Mitsunobu反応を用いる場合と同様に、ヒドロキシ基を有する炭素における立体化学的配置はやはり変わる。
【0115】
あるいはまた、式(I)の化合物の製造のために、最初に構成単位P2とP1の間のアミド結合を形成せしめ、続いてP3構成単位をP1−P2中のP1部分にカップリングさせ、そして続いてP3とP2−P1−P3中のP2部分の間のカルバメート又はエステル結合形成を行なって、同時に閉環させる。
【0116】
さらに別の代わりの合成法は、構成単位P2とP3の間のアミド結合の形成、続く構成単位P1のP3−P2中のP3部分へのカップリング及び同時に閉環する最後のP1とP1−P3−P2中のP2の間のアミド結合形成である。
【0117】
構成単位P1及びP3を連結してP1−P3配列とすることができる。必要なら、P1とP3を連結する二重結合を還元することができる。かくして生成する還元されたかもしくはされないP1−P3配列を構成単位P2にカップリングさせ、かくして生成する配列P1−P3−P2を続いてアミド結合の形成により環化させることができる。
【0118】
前記の方法のいずれかにおける構成単位P1及びP3を、例えば下記に記載するオレフィンメタセシス反応又はWittig型反応による二重結合形成を介して連結することができる。必要なら、かくして形成される二重結合を、(I−i)の(I−j)への転換に関する上記と類似して、還元することができる。後の段階に、すなわち第3の構成単位の付加の後又は大員環の形成の後に二重結合を還元することもできる。構成単位P2とP1はアミド結合形成により連結され、P3とP2はカルバメート又はエステル形成により連結される。
【0119】
式(I)の化合物の合成のいずれかの段階に、例えば構成単位P2とP1のカップリングの前もしくは後;P3構成単位のP1へのカップリングの前もしくは後;あるいは閉環の前もしくは後に、尾部P1’をP1構成単位に結合させることができる。
【0120】
個々の構成単位を最初に製造し、続いて一緒にカップリングさせることができるか、あるいはまた構成単位の前駆体を一緒にカップリングさせ、後の段階に所望の分子組成に改
変することができる。構成単位のそれぞれにおける官能基を保護して、副反応を避けることができる。
【0121】
ペプチド合成においてアミノ酸をカップリングさせるために用いられるもののような標準的な方法を用い、アミド結合の形成を行なうことができる。ペプチド合成においてアミノ酸をカップリングさせるために用いられる方法は、一方の反応物のカルボキシル基を他方の反応物のアミノ基と脱水的にカップリングさせて連結アミド結合を形成することを含む。カップリング剤の存在下で出発材料を反応させることにより、又はカルボキシル官能基を活性エステル、混合無水物又はカルボン酸クロリド(carboxyl acid chloride)もしくはブロミドのような活性形態に転換することにより、アミド結合形成を行なうことができる。そのようなカップリング反応及びそこで用いられる試薬の一般的な記述を、ペプチド化学についての一般的な教本、例えばM.Bodanszky著,“Peptide Chemistry”,2nd rev.ed.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,1993年において見出すことができる。
【0122】
アミド結合形成を用いるカップリング反応の例には、アジド法、混合炭酸−カルボン酸無水物(イソブチルクロロホルメート)法、カルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又は水溶性カルボジイミド、例えばN−エチル−N’−[(3−ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド)法、活性エステル法(例えばp−ニトロフェニル、p−クロロフェニル、トリクロロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、N−ヒドロキシコハク酸イミドなどのエステル)、Woodward試薬K−法、1,1−カルボニルジイミダゾール(CDI又はN,N’−カルボニル−ジイミダゾール)法、リン試薬又は酸化−還元法が含まれる。これらの方法のいくつかを適した触媒の添加により、例えばカルボジイミド法において1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、DBU又は4−DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の添加により強化することができる。さらに別のカップリング剤は、それのみか又は1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールもしくは4−DMAPの存在下における(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;あるいは2−(1H−ベンゾトアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラ−メチルウロニウムテトラフルオロボレート又はO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートである。これらのカップリング反応を溶液中(液相)又は固相において行なうことができる。
【0123】
好ましいアミド結合形成は、N−エチルオキシカルボニル−2−エチル−オキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)又はN−イソブチルオキシ−カルボニル−2−イソブチルオキシ−1,2−ジヒドロキノリン(IIDQ)を用いて行われる。古典的な無水物法と異なり、EEDQ及びIIDQは塩基も低い反応温度も必要としない。典型的には、方法は等モル量のカルボキシル及びアミン成分を有機溶媒(多様な溶媒を用いることができる)中で反応させることを含む。次いでEEDQ及びIIDQを過剰に加え、混合物を室温で攪拌する。
【0124】
カップリング反応は、好ましくは不活性溶媒、例えばハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、双極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、DMSO、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、エーテル、例えばTHF中で行なわれる。
【0125】
多くの場合にカップリング反応は、適した塩基、例えば第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N−メチル−モルホリン、N−メチルピロリジン、4−DMAP又はDBUの存在下で行なわれる。反応温度は0℃〜5
0℃の範囲であることができ、反応時間は15分〜24時間の範囲であることができる。
【0126】
一緒に連結される構成単位中の官能基を、望ましくない結合の形成を避けるために保護することができる。用いることができる適した保護基は、例えばGreene著,“Protective Groups in Organic Chemistry”,John Wiley & Sons,New York,1999年及び“The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology”,Vol.3,Academic Press,New York,1987年に挙げられている。
【0127】
カルボキシル基をエステルとして保護することができ、それを切断してカルボン酸を与えることができる。用いることができる保護基には1)メチル、トリメチルシリル及びtert−ブチルのようなアルキルエステル;2)ベンジル及び置換ベンジルのようなアリールアルキルエステル;あるいは3)トリクロロエチル及びフェナシルエステルのような穏やかな塩基又は穏やかな還元的手段により切断することができるエステルが含まれる。
【0128】
アミノ基を多様なN−保護基、例えば:
1)ホルミル、トリフルオロアセチル、フタリル及びp−トルエンスルホニルのようなアシル基;
2)ベンジルオキシカルボニル(Cbz又はZ)及び置換ベンジルオキシカルボニルならびに9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)のような芳香族カルバメート基;
3)tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、エトキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシ−カルボニル及びアリルオキシカルボニルのような脂肪族カルバメート基;
4)シクロペンチルオキシカルボニル及びアダマンチルオキシカルボニルのような環状アルキルカルバメート基;
5)トリフェニルメチル、ベンジル又は置換ベンジル、例えば4−メトキシベンジルのようなアルキル基;
6)トリメチルシリル又はt.Buジメチルシリルのようなトリアルキルシリル;ならびに
7)フェニルチオカルボニル及びジチアスクシノイルのようなチオール含有基
により保護することができる。興味深いアミノ保護基はBoc及びFmocである。
【0129】
好ましくは、次のカップリング段階の前にアミノ保護基を切断する。当該技術分野において既知の方法に従ってN−保護基の除去を行なうことができる。Boc基が用いられる場合、選ばれる方法は正味の又はジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸あるいはジオキサン又は酢酸エチル中のHClである。得られるアンモニウム塩を次いで、カップリングの前かもしくはその場で、塩基性溶液、例えば緩衝剤水溶液又はジクロロメタンもしくはアセトニトリルもしくはジメチルホルムアミド中の第3級アミンを用いて中和する。Fmoc基が用いられる場合、選ばれる試薬はジメチルホルムアミド中のピペリジン又は置換ピペリジンであるが、いずれの第2級アミンを用いることもできる。脱保護は0℃と室温の間の温度において、通常約15〜25℃又は20〜22℃において行なわれる。
【0130】
構成単位のカップリング反応において邪魔をし得る他の官能基も保護することができる。例えばヒドロキシル基をベンジル又は置換ベンジルエーテル、例えば4−メトキシベンジルエーテル、ベンゾイル又は置換ベンゾイルエステル、例えば4−ニトロベンゾイルエステルとして、あるいはトリアルキルシリル基(例えばトリメチルシリル又はtert−ブチルジメチルシリル)を用いて保護することができる。
【0131】
選択的に切断され得る保護基により、さらに別のアミノ基を保護することができる。例えばα−アミノ保護基としてBocが用いられる場合、以下の側鎖保護基が適している:
p−トルエンスルホニル(トシル)部分をさらに別のアミノ基の保護のために用いることができ;ベンジル(Bn)エーテルをヒドロキシ基の保護のために用いることができ;そしてベンジルエステルをさらに別のカルボキシル基の保護のために用いることができる。あるいはα−アミノ保護のためにFmocが選ばれる場合、通常tert−ブチルに基づく保護基が許容され得る。例えばさらに別のアミノ基のためにBocを用いることができ;tert−ブチルエーテルをヒドロキシル基のために;そしてtert−ブチルエステルをさらに別のカルボキシル基のために用いることができる。
【0132】
いずれの保護基も、合成法のいずれの段階においても除去することができるが、好ましくは反応段階に含まれない官能基のいずれかの保護基は、大員環の構成の完了後に除去される。保護基の選択により指令されるどんな方法において保護基の除去を行なうこともでき、その方法は当該技術分野における熟練者に周知である。
【0133】
XがNである式(1a)の中間体は式(1a−1)により示され、以下の反応スキームにおいて概述される通りウレア形成反応を用い、中間体(5a)から出発してそれをカルボニル導入剤の存在下でアルケンアミン(5b)と反応させてそれを製造することができる。
【0134】
【化19】

【0135】
カルボニル(CO)導入剤にはホスゲン又はホスゲン誘導体、例えばCDIなどが含まれる。1つの態様において、(5a)を適した塩基及び溶媒の存在下でCO導入剤と反応させ、それらは上記のアミド形成反応において用いられる塩基及び溶媒であることができる。特定の態様において、塩基は炭酸水素塩、例えばNaHCO又は第3級アミン、例えばトリエチルアミンなどであり、溶媒はエーテル又はハロゲン化炭化水素、例えばTHF、CHCl、CHClなどである。その後アミン(5b)を加え、それにより上記のスキームにおける通りに中間体(1a−1)を得る。類似の反応条件を用いる代わりの経路は、最初にCO導入剤をアルケンアミン(5b)と反応させ、次いでかくして生成する中間体を(5a)と反応させることを含む。
【0136】
あるいはまた、中間体(1a−1)を以下の通りに製造することができる:
【0137】
【化20】

【0138】
PGはO−保護基であり、それは本明細書に挙げられる基のいずれであることもでき、そして特にベンゾイル又は置換ベンゾイル基、例えば4−ニトロベンゾイルである。後者の場合、水及び水溶性有機溶媒、例えば脂肪族アルコール(メタノール、エタノール)及びTHFを含んでなる水性媒体中におけるアルカリ金属水酸化物(LiOH、NaOH、KOH)との、特にPGが4−ニトロベンゾイルの場合、LiOHとの反応によりこの基を除去することができる。
【0139】
中間体(6a)を上記と類似のカルボニル導入剤の存在下で(5b)と反応させ、この反応は中間体(6c)を与える。これらを、特に上記で挙げた反応条件を用いて脱保護する。得られるアルコール(6d)を、(4a)と(4b)の反応に関して上記に記載した通りに中間体(4b)と反応させ、この反応は中間体(1a−1)を生ずる。
【0140】
XがCである式(1a)の中間体は式(1a−2)により示され、以下の反応スキームに示す通り、中間体(7a)から出発し、それを上記のもののようなアミドの製造のための反応条件を用いてアミン(5b)と反応させるアミド形成反応によりそれを製造することができる。
【0141】
【化21】

【0142】
あるいはまた、中間体(1a−1)を以下の通りに製造することができる:
【0143】
【化22】

【0144】
PGは上記のようなO−保護基である。上記と同じ反応条件を用いることができる:上記の通りのアミド形成、保護基の記述における通りのPGの除去及び(4a)と試薬(4b)の反応における通りのRの導入。
【0145】
以下の通り、最初に開鎖アミド(9a)を大環状エステル(9b)に環化し、それを今度は中間体(2a)に転換することにより、式(2a)の中間体を製造することができる:
【0146】
【化23】

【0147】
PGはカルボキシル保護基、例えば上記で挙げたカルボキシル保護基の1つ、特にC1−4アルキルもしくはベンジル、例えばメチル、エチルもしくはt.ブチルである。(9a)の(9b)への反応はメタセシス反応であり、上記の通りに行なわれる。やはり上記に記載された方法に従って、基PGを除去する。PGがC1−4アルキルである場合、それは水性溶媒、例えば脂肪族アルコール/水混合物中で例えばNaOH又は好ましくはLiOHを用いるアルカリ加水分解により除去される。ベンジル基はトリメチルシリルブロミド(TMSBr)により除去され得る。
【0148】
代わりの合成において、以下の通りに中間体(2a)を製造することができる:
【0149】
【化24】

【0150】
PG基は、それがPGに対して(towards)選択的に切断可能であるように選ばれる。PGは例えばメチル又はエチルエステルであることができ、それは水性媒体
中におけるアルカリ金属水酸化物を用いる処理により除去され得、その場合、PGは例えばベンジルである。PGは酸性条件下で除去可能なt.ブチルであることができるか、あるいはPGは水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムを用いる処理により除去可能なベンゾイルであることができるか、あるいはPGはジクロロジシアノキノン(DDQ)又はTMSBrにより除去可能な場合により置換されていることができるベンジル基(例えばp−メトキシベンジル)であることができる。PGはエトキシメチルであることもでき、それはDIPEA及びジクロロメタン(DCM)の存在下でクロロメチルエチルエーテルを用いて導入され得、且つTHF/メタノール/水の存在下で塩酸を用いて切断され得る。
【0151】
最初に中間体(10a)を環化して大環状エステル(10b)とし、後者をPG基の除去により脱保護して(10c)とし、それを中間体(4b)と反応させ、続いてカルボキシル保護基PGを除去する。環化、PG及びPGの脱保護及び(4b)とのカップリングは上記の通りである。
【0152】
基を合成のいずれの段階においても、上記の通り最後の段階として、又はもっと早く、大員環形成の前に導入することができる。以下のスキームにおいて、−NH−SO又は−OR(それらは上記で規定した通りである)である基Rが導入される:
【0153】
【化25】

【0154】
上記のスキームにおいて、PGは上記で定義した通りであり、LはP3基
【0155】
【化26】

【0156】
であり、ここでn及びRは上記で定義した通りであり、そしてXがNである場合、Lは窒素−保護基(上記で定義された通りのPG)であることもでき、且つここでXがCである場合、Lは基−COOPG2aであることもでき、ここで基PG2aはPGと類似のカルボキシル保護基であるが、PG2aはPGに対して選択的に切断可能である。
1つの態様において、PG2aはt.ブチルであり、PGはメチル又はエチルである。
【0157】
が基(b)を示す中間体(11c)及び(11d)は中間体(1a)に相当し、上記で規定した通りにさらに処理され得る。
【0158】
P1及びP2構成単位のカップリング
P1及びP2構成単位を、上記の方法に従うアミド形成反応を用いて連結する。P1構成単位はカルボキシル保護基PGを有する((12b)におけるように)ことができるか、又はすでにP1’基に連結している((12c)におけるように)ことができる。Lは、N−保護基(PG)又は上記で規定した基(b)である。Lはヒドロキシ、−OPG又は上記で規定した基−O−Rである。以下の反応スキームのいずれかにおいて、各反応段階の前にLがヒドロキシである場合、それを基−OPGとして保護し、そして必要なら続いて遊離のヒドロキシ官能基に脱保護して戻すことができる。上記と類似して、ヒドロキシ官能基を基−O−Rに転換することができる。
【0159】
【化27】

【0160】
上記のスキームの方法において、シクロプロピルアミノ酸(12b)又は(12c)を、上記の方法に従い、アミド結合を形成せしめてP2構成単位(12a)の酸官能基にカップリングさせる。中間体(12d)又は(12e)が得られる。後者においてLが基(b)である場合、得られる生成物は、前の反応スキームにおける中間体(11c)又は(11d)のいくつかを包含するP3−P2−P1配列である。用いられる保護基のために適した条件を用いる(12d)中の酸保護基の除去、続く上記のアミンHN−SO(2b)又はHOR(2c)とのカップリングも中間体(12e)を与え、ここで−CORはアミド又はエステル基である。LがN−保護基である場合、それを除去して中間体(5a)又は(6a)を与えることができる。1つの態様において、この反応におけるPGはBOC基であり、PGはメチル又はエチルである。さらにLがヒドロキシである場合、出発材料(12a)はBoc−L−ヒドロキシプロリンである。特定の態様において、PGはBOCであり、PGはメチル又はエチルであり、そしてLは−O−Rである。
【0161】
1つの態様において、Lは基(b)であり、これらの反応はP1のP2−P3へのカップリングを含み、それは上記で挙げた中間体(1a−1)又は(1a)を生ずる。別の態様において、LはN−保護基PGであり、それは上記で規定した通りであり、カップリング反応は中間体(12d−1)又は(12e−1)を生じ、それらから上記の反応条件を用いて基PGを除去し、それぞれ中間体(12f)又は(12g)を得ることができ、それらは上記で規定した中間体(5a)及び(6a)を包含する:
【0162】
【化28】

【0163】
1つの態様において、上記のスキーム中の基Lは基−O−PGを示し、それはLがヒドロキシである出発材料(12a)上に導入され得る。この場合PGは、PGである基Lに対してそれが選択的に切断可能であるように選ばれる。
【0164】
XがCであるP2構成単位はシクロペンタン又はシクロペンテン誘導体であり、それを類似の方法で、以下のスキームにおいて概述する通りにP1構成単位に連結することができ、ここでR、R及びLは上記で規定された通りであり、PG及びPG2aはカルボキシル保護基である。PG2aは、典型的には基PGに対してそれが選択的に切断可能であるように選ばれる。(13c)中のPG2a基の除去は中間体(7a)又は(8a)を与え、それを上記の(5b)と反応させることができる。
【0165】
【化29】

【0166】
XがCHであり、RがHであり、且つX及びRを有する炭素が単結合により連結する(P2はシクロペンタン部分である)特定の態様において、PG2a及びLは一緒になって結合を形成せしめ、そしてP2構成単位は式:
【0167】
【化30】

【0168】
により示される。
【0169】
二環式酸(14a)を上記と類似して(12b)又は(12c)と反応させ、それぞれ(14b)及び(14c)とし、ここでラクトンを開環させて中間体(14c)及び(14e)を与える。例えば(9b)中のPG基のアルカリ性除去に関して上記に記載した反応条件を用いる、特にアルカリ金属水酸化物、例えばNaOH、KOH、特にLiOHのような塩基性条件を用いるエステル加水分解法を用いて、ラクトンを開環させることができる。
【0170】
【化31】

【0171】
中間体(14c)及び(14e)を下記に記載する通りにさらに処理することができる。
【0172】
P3及びP2構成単位のカップリング
ピロリジン部分を有するP2構成単位の場合、(5a)と(5b)のカップリングに関して上記に記載した方法に従い、カルバメート形成反応を用いてP3とP2又はP3とP2−P1構成単位を連結する。ピロリジン部分を有するP2単位のカップリングのための一般的な方法を以下の反応スキームに示し、そこでLは上記で規定された通りであり、Lは基−O−PG、基
【0173】
【化32】

【0174】
である。
【0175】
【化33】

【0176】
1つの態様において、(15a)中のLは基−OPGであり、PG基を除去し、得られる酸をシクロプロピルアミノ酸(12b)又は(12c)とカップリングさせて中間体(12d)又は(12e)を与えることができ、ここでLは基(d)又は(e)である。
【0177】
P2がシクロペンタン又はシクロペンテンである場合のP3単位とP2単位又はP2−P1単位のカップリングのための一般的な方法を以下のスキームに示す。L及びLは上記で規定された通りである。
【0178】
【化34】

【0179】
特定の態様において、L及びLは一緒になって、(14a)におけるようにラクトン架橋を形成することができ、P3単位とP2単位のカップリングは以下の通りである:
【0180】
【化35】

【0181】
二環式ラクトン(14a)をアミド形成反応において(5b)と反応させてアミド(16c)とし、そこでラクトン架橋を開環して(16d)とする。アミド形成及びラクトン開環反応のための反応条件は、上記又は下記に記載される通りである。中間体(16d)を今度は、上記の通りにP1基にカップリングさせることができる。
【0182】
上記のスキームにおける反応は、(5a)、(6a)、(7a)又は(8a)と(5b)の反応に関して上記に記載したと同じ方法を用いて行なわれ、そして特にLが基(d)又は(e)である上記の反応は、上記の(5a)、(6a)、(7a)又は(8a)と(5b)の反応に相当する。
【0183】
式(I)の化合物の製造において用いられる構成単位P1、P1’、P2及びP3は、当該技術分野において既知の中間体から出発して製造することができる。複数のそのような合成を下記にさらに詳細に記載する。
【0184】
個々の構成単位を最初に製造し、続いて一緒にカップリングさせることができるか、あ
るいはまた構成単位の前駆体を一緒にカップリングさせ、後の段階に所望の分子組成に改変することができる。
【0185】
構成単位のそれぞれにおける官能基を保護し、副反応を避けることができる。
【0186】
P2構成単位の合成
P2構成単位は、基−O−Rで置換されたピロリジン、シクロペンタン又はシクロペンテン部分を含有する。
【0187】
ピロリジン部分を含有するP2構成単位を商業的に入手可能なヒドロキシプロリンから誘導することができる。
【0188】
シクロペンタン環を含有するP2構成単位の製造を、下記のスキーム中に示す通りに行なうことができる。
【0189】
【化36】

【0190】
二環式酸(17b)を、例えば3,4−ビス(メトキシカルボニル)−シクロペンタノン(17a)から、Acta Chem.Scand.46,1992年,1127−1129においてRosenquist et al.により記載されている通りに製造することができる。この方法における第1段階は、メタノールのような溶媒中において水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を用いるケト基の還元、続くエステルの加水分解及び最後にラクトン形成法を用いる、特にピリジンのような弱塩基の存在下で無水酢酸を用いることによる二環式ラクトン(17b)への閉環を含む。次いで(17b)中のカルボン酸官能基を、上記で規定された通りである基PGのような適したカルボキシル保護基の導入により保護し、かくして二環式エステル(17c)を与えることができる。特に基PGはt.ブチル基のように酸に不安定であり、例えば酸又はルイス酸の存在下においてイソブテンを用いる処理により導入される。上記の反応条件を用いる、特に水酸化リチウムを用いる(17c)のラクトン開環は酸(17d)を与え、それをP1構成単位とのカップリング反応においてさらに用いることができる。(17d)中の遊離の酸を、好ましくはPGに対して選択的に切断可能である酸保護基PG2aを用いて保護することもでき、ヒドロキシ官能基を基−OPG又は基−O−Rに転換することができる。基PGを除去すると得られる生成物は中間体(17g)及び(17i)であり、それは上記で
規定した中間体(13a)又は(16a)に相当する。
【0191】
上記の反応順において、中間体を分割することにより特定の立体化学を有する中間体を製造することができる。例えば(17b)を当該技術分野において既知の方法に従って、例えば光学的に活性な塩基との塩形成作用により、又はキラルクロマトグラフィーにより分割することができ、得られる立体異性体を上記の通りにさらに処理することができる。(17d)中のOH及びCOOH基はシス位にある。OPG又はO−Rを導入する反応において立体化学を反転させる特殊な試薬を用いることにより、例えばMitsunobu反応の適用により、OH官能基を有する炭素における立体化学を反転させることによって、トランス類似体を製造することができる。
【0192】
1つの態様において、中間体(17d)をP1単位(12b)又は(12c)にカップリングさせ、そのカップリング反応は同じ条件を用いる(13a)又は(16a)と同じP1単位のカップリングに相当する。その後の上記の通りの−O−R置換基の導入及び続く酸保護基PGの除去は中間体(8a−1)を与え、それは中間体(7a)のサブクラス又は中間体(16a)の一部である。PG除去の反応生成物をさらにP3構成単位にカップリングさせることができる。1つの態様において、(17d)中のPGはt.ブチルであり、それは酸性条件下で、例えばトリフルオロ酢酸を用いて除去され得る。
【0193】
【化37】

【0194】
不飽和P2構成単位、すなわちシクロペンテン環を下記のスキームに示す通りに製造することができる。
【0195】
【化38】

【0196】
J.Org.Chem.36,1971年,1277−1285においてDolby et al.により記載された3,4−ビス(メトキシカルボニル)シクロペンタノン(17a)の臭素化−脱離反応及び続く水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を用いるケト官能基の還元は、シクロペンテノール(19a)を与える。例えばジオキサンと水の混合物のような溶媒中で水酸化リチウムを用いる選択的エステル加水分解は、ヒドロキシ置換モノエステルシクロペンテノール(19b)を与える。
【0197】
が水素以外であることもできる不飽和P2構成単位を、下記のスキームに示す通り
に製造することができる。
【0198】
【化39】

【0199】
特にピリジニウムクロロクロメートのような酸化剤による商業的に入手可能な3−メチル−3−ブテン−1−オール(20a)の酸化は(20b)を与え、それを例えばメタノール中で塩化アセチルを用いる処理により、対応するメチルエステルに転換し、続いて臭素を用いて臭素化反応を行なってα−ブロモエステル(20c)を与える。次いで後者を、エステル形成反応により(20d)から得られるアルケニルエステル(20e)と縮合させることができる。(20e)中のエステルは、好ましくはt.ブチルエステルであり、それは対応する商業的に入手可能な酸(20d)から、例えばジメチルアミノピリジンのような塩基の存在下でジ−tert−ブチルジカーボネートを用いる処理により製造され得る。中間体(20e)をTHFのような溶媒中でリチウムジイソプロピルアミドのような塩基を用いて処理し、そして(20c)と反応させ、アルケニルジエステル(20f)を与える。上記の通りに行なわれるオレフィンメタセシス反応による(20f)の環化は、シクロペンテン誘導体(20g)を与える。Jacobsen不斉エポキシ化法を用いて(20g)の立体選択的エポキシ化を行い、エポキシド(20h)を得ることができる。最後に、塩基性条件下における、例えば塩基、特にDBN(1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]ノネ−5−エン)の添加によるエポキシド開環反応は、アルコール(20i)を与える。場合により中間体(20i)中の二重結合を、例えば炭素上のパラジウムのような触媒を用いる接触水素化により還元し、対応するシクロペンタン化合物を与えることができる。t.ブチルエステルを除去して対応する酸を生ずることができ、それを続いてP1構成単位にカップリングさせる。
【0200】
本発明に従う化合物の合成のいずれの簡便な段階においても、ピロリジン、シクロペンタン又はシクロペンテン環上に−R基を導入することができる。1つの方法は、最初に該環に−R基を導入し、その後に他の所望の構成単位、すなわちP1(場合によりP1’尾部を有することができる)及びP3を付加し、続いて大員環形成を行なうことである。他の方法は、−O−R置換基を有していない構成単位P2をそれぞれP1及びP3とカップリングさせ、大員環形成の前又は後に−O−R基を付加することである。後者の方法において、P2部分はヒドロキシ基を有し、それをヒドロキシ保護基PGにより保護することができる。
【0201】
(4a)から出発する(I)の合成に関して上記に記載したと類似して、ヒドロキシ置換中間体(21a)を中間体(4b)と反応させることにより、構成単位P2上にR基を導入することができる。これらの反応は下記のスキームに示され、ここでLは上記で規定した通りであり、L及びL5aは互いに独立してヒドロキシ、カルボキシル保護基−OPG又は−OPG2aを示すか、あるいはLは上記で規定した基(d)又は(e)のようなP1基を示すこともできるか、あるいはL5aは上記で規定した基(b)のようなP3基を示すこともできる。基PG及びPG2aは上記で規定した通りである。基L及びL5aがPG又はPG2aである場合、それらは各基が他方に対して選択的に切断可能であるように選ばれる。例えばL及びL5aの一方がメチル又はエチル基であり、他方がベンジル又はt.ブチル基であることができる。
【0202】
1つの態様において、(21a)中でLはPGであり、Lは−OPGであるか、あるいは(21d)中でL5aは−OPGであり、Lは−OPGであり、PG基は上記の通りに除去される。
【0203】
【化40】

【0204】
あるいはまた、ヒドロキシ置換されたシクロペンタン類似体を扱う場合、類似のMitsunobu反応を介して、トリフェニルホスフィン及びDEAD、DIADなどのような活性化剤の存在下で化合物(2a’)のヒドロキシ基を所望のアルコール(3b)と反応させることにより、キノリン置換基を導入することができる。
【0205】
他の態様において、基LはBOCであり、Lはヒドロキシであり、出発材料(21a)は商業的に入手可能なBOC−ヒドロキシプロリン又はそのいずれかの他の立体異性体、例えばBOC−L−ヒドロキシプロリン、特に後者のトランス異性体である。(21b)中のLがカルボキシル−保護基である場合、それを上記の方法に従って除去し、(21c)とすることができる。さらに別の態様において、(21b−1)中のPGはBocであり、PGは低級アルキルエステル、特にメチル又はエチルエステルである。後者のエステルの酸への加水分解は標準的な方法により、例えばメタノール中で塩酸を用いる酸加水分解により、あるいはNaOHのようなアルキル金属水酸化物を用いて、特にLiOHを用いて行なわれ得る。別の態様において、ヒドロキシ置換されたシクロペンタン又はシクロペンテン類似体(21d)を(21e)に転換し、それを、L及びL5aが−OPG又は−OPG2aである場合、基PGの除去により対応する酸(21f)に転換することができる。(21e−1)中のPG2aの除去は、類似の中間体に導く。
【0206】
中間体Y−R(4b)は、既知の出発材料を用いて当該技術分野で既知の方法に従って製造することができる。そのような中間体に関する複数の合成経路を下記において、いくらかもっと詳細に記載する。例えば上記の中間キノリンの製造を以下のスキームにおいて下記に示す。
【0207】
【化41】

【0208】
アニリン(22a)とイミノエーテル(22b)の縮合は化合物(22c)を生ずる。そのような縮合は、好ましくはイミノエーテルを可溶化する溶媒、例えばエタノール又はメタノール中で行なわれる。キノリン(22d)の形成は、化合物(22c)の求電子的芳香族環化により達成される。この求電子的芳香族環化は、典型的には高められた温度において、特に約200℃かもしくはそれより高い温度において、200℃又はそれより高い温度で沸騰することができる溶媒中で、例えばジフェニルエーテル中で行なわれる。
【0209】
P1構成単位の合成
P1断片の製造において用いられるシクロプロパンアミノ酸は商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の方法を用いて製造され得る。
【0210】
特に、国際公開第00/09543号パンフレットに記載されているか、あるいは以下のスキーム中に示される方法に従って、アミノビニル−シクロプロピルエチルエステル(
12b)を得ることができ、ここでPGは上記で規定したカルボキシル保護基である:
【0211】
【化42】

【0212】
商業的に入手可能であるか又は容易に得ることができるイミン(23a)を塩基の存在下で1,4−ジハロ−ブテンを用いて処理すると(23b)を与え、それは加水分解の後に、カルボキシル基に対してsynであるアリル置換基を有するシクロプロピルアミノ酸(12b)を与える。エナンチオマー混合物(12b)の分割は(12b−1)を生ずる。分割は、酵素的分離;キラル酸を用いる結晶化;又は化学的誘導体化;あるいはキラルカラムクロマトグラフィーによるような当該技術分野において既知の方法を用いて行なわれる。中間体(12b)又は(12b−1)を上記の通りに適したP2誘導体にカップリングさせることができる。
【0213】
が−OR又は−NH−SOである一般式(I)に従う化合物の製造のためのP1構成単位を、エステル又はアミド形成のための標準的な条件下でアミノ酸(24a)をそれぞれ適したアルコール又はアミンと反応させることにより製造することができる。N−保護基PGの導入及びPGの除去によりN−保護シクロプロピルアミノ酸(26a)を製造し、以下の反応スキームに概述される通り、アミノ酸(24a)を中間体(12c)のサブグループであるアミド(12c−1)又はエステル(12c−2)に転換し、ここでPGは上記で規定された通りである。
【0214】
【化43】

【0215】
(24a)とスルホンアミド(2b)の反応はアミド形成法である。(2c)との類似
の反応はエステル形成反応である。両者は上記の方法に従って行なわれ得る。この反応は中間体(24b)又は(24c)を与え、それらから上記の方法のような標準的な方法によりアミノ保護基を除去する。これは、今度は所望の中間体、それぞれ(12c−1)及び(12c−2)を生ずる。出発材料(26a)は上記で挙げた中間体(12b)から、最初にN−保護基PGを導入し、続いて基PGを除去することにより製造することができる。
【0216】
1つの態様において、(24a)と(2b)の反応は、THFのような溶媒中でカップリング剤、例えばCDIなどを用いて出発アミノ酸を処理し、続いてDBUのような塩基の存在下で(2b)と反応させることにより行なわれる。
【0217】
中間体(12c−1)又は(12c−2)を今度は、上記の通り適したプロリン、シクロペンタン又はシクロペンテン誘導体にカップリングさせることができる。
【0218】
P3構成単位の合成
P3構成単位は商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野における熟練者に既知の方法に従って製造することができる。これらの方法の1つを下記のスキームに示し、それはモノアシル化アミン、例えばトリフルオロアセトアミド又はBoc−保護アミンを用いる。
【0219】
【化44】

【0220】
上記のスキームにおいて、RはCO基と一緒になってN−保護基を形成せしめ、特にRはt−ブトキシ、トリフルオロメチルであり;R及びnは上記で定義された通りであり、LGは離脱基、特にハロゲン、例えばクロロ又はブロモである。
【0221】
モノアシル化アミン(25a)を水素化ナトリウムのような強塩基で処理し、続いてそれを試薬LG−C5−8アルケニル(25b)、特にハロC5−8アルケニルと反応させて対応する保護アミン(25c)を生成させる。(25c)の脱保護は(5b)を与え、それらは構成単位P3である。脱保護は官能基Rに依存し、かくしてRがt−ブトキシである場合、酸性処理、例えばトリフルオロ酢酸を用いて対応するBoc−保護アミンの脱保護を行なうことができる。あるいはまた、Rが例えばトリフルオロメチルである場合、R−CO基の除去は塩基、例えば水酸化ナトリウムを用いて行なわれる。
【0222】
以下のスキームは、P3構成単位の製造のためのさらに別の方法、すなわち第1級C5−8アルケニルアミンのGabriel合成を示し、フタルイミド(26a)をNaOH又はKOHのような塩基及び上記で規定された通りである(25b)で処理し、続いて中間N−アルケニルイミドを加水分解して第1級C5−8アルケニルアミン(5b−1)を生成させることにより、それを行なうことができる。
【0223】
【化45】

【0224】
上記のスキームにおいて、nは上記で定義された通りである。
【0225】
当該技術分野において既知の官能基変換反応に従って、式(I)の化合物を互いに転換することができる。例えばアミノ基をN−アルキル化することができ、ニトロ基をアミノ基に還元することができ、ハロ原子を別のハロに交換することができる。
【0226】
当該技術分野において既知の方法の適用により、式(I)の化合物の純粋な立体化学的異性体を得ることができる。ジアステレオマーを物理的方法、例えば選択的結晶化及びクロマトグラフィー法、例えば向流分配、液体クロマトグラフィーなどにより分離することができる。
【0227】
式(I)の化合物は、エナンチオマーのラセミ混合物として得られ得、それを当該技術分野において既知の分割法に従って互いから分離することができる。十分に塩基性又は酸性である式(I)のラセミ化合物を、それぞれ適したキラル酸又はキラル塩基との反応により対応するジアステレオマー塩の形態に転換することができる。該ジアステレオマー塩の形態を、続いて例えば選択的又は分別結晶化により分離し、アルカリ又は酸によりそこからエナンチオマーを遊離させる。式(I)の化合物のエナンチオマーの形態を分離する別の方法は液体クロマトグラフィー、特にキラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し、反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体特異的製造方法により合成され得る。これらの方法は、有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いることができる。
【0228】
さらに別の側面において、本発明は、本明細書で規定される式(I)の化合物又は本明細書で規定される式(I)の化合物のサブグループのいずれかの化合物の治療的に有効な量及び製薬学的に許容され得る担体を含んでなる製薬学的組成物に関する。これに関し、治療的に有効な量は、感染した患者又は感染する危険にある患者において、ウイルス感染、そして特にHCVウイルス感染に対して予防的に作用するか、それを安定化するか、又は減少させるのに十分な量である。さらにもっと別の側面において、本発明は本明細書で規定される製薬学的組成物の調製方法に関し、それは製薬学的に許容され得る担体を本明細書で規定される式(I)の化合物又は本明細書で規定される式(I)の化合物のサブグループのいずれかの化合物の治療的に有効な量と緊密に混合することを含んでなる。
【0229】
従って本発明の化合物又はそのいずれかのサブグループを、投与目的のための種々の製薬学的形態に調製することができる。適した組成物として、薬剤を全身的に投与するために通常用いられるすべての組成物を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物の調製のために、場合により付加塩の形態又は金属錯体にあることができる特定の化合物の活性成分として有効な量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、特に経口的、直腸的、経皮的又は非経口的注入による投与に適した単位投薬形態にある。例えば経口的投薬形態における組成物の調製に
おいて、通常の製薬学的媒体のいずれか、例えば懸濁剤、シロップ、エリキシル剤、乳剤及び溶液のような経口用液体調製物の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体担体を用いることができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口用組成物の場合、担体は通常少なくとも大部分において無菌水を含んでなるが、例えば溶解性を助けるための他の成分が含まれることができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる注入可能な溶液を調製することができる。注入可能な懸濁剤も調製することができ、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。使用の直前に液体形態の調製物に転換されることが意図されている固体形態の調製物も含まれる。経皮的投与に適した組成物において、担体は場合により浸透促進剤及び/又は適した湿潤剤を含んでなることができ、それらは場合により小さい割合におけるいずれかの性質の適した添加剤と組み合わされていることができ、その添加剤は皮膚に有意な悪影響を導入しない。
【0230】
本発明の化合物を経口的吸入又は吹入を介して、この方法を介する投与のために当該技術分野で用いられる方法及び調製物により投与することもできる。かくして一般に本発明の化合物を、溶液、懸濁剤又は乾燥粉剤の形態で肺に投与することができ、溶液が好ましい。経口的吸入又は吹入を介する溶液、懸濁剤又は乾燥粉剤の送達のために開発されたいずれの系も、本化合物の投与に適している。かくして本発明は、式(I)の化合物及び製薬学的に許容され得る担体を含んでなる、口を介する吸入又は吹入による投与に適応させられた製薬学的組成物も提供する。好ましくは、本発明の化合物は、霧状化された(nebulized)かもしくはエアゾール化された(aerosolized)投薬量における溶液の吸入を介して投与される。
【0231】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を単位投薬形態物において調製するのが特に有利である。本明細書で用いられる単位投薬形態物は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決められた量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような単位投薬形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、座薬、粉剤小包、ウェハース、注入可能な溶液又は懸濁剤など、ならびに分離されたそれらの複数である。
【0232】
単位投薬形態物を含む本発明に従う組成物は、約0.1%〜70%又は約0.5%〜50%又は約1%〜25%又は約5%〜20%の範囲内である量で活性成分を含有し、残りは担体を含んでなることができ、ここで前記のパーセンテージは、組成物又は投薬形態物の合計重量に対するw/wである。
【0233】
式(I)の化合物は抗ウイルス性を示す。本発明の化合物及び方法を用いて処置され得るウイルス感染及びそれらに関連する疾患には、HCV及び他の病原性フラビウイルス、例えば黄熱病、デング熱(1〜4型)、セントルイス脳炎、日本脳炎、マリーバレー脳炎、西ナイルウイルス及びクンジンウイルス(Kunjin virus)によりもたらされる感染が含まれる。HCVと関連する疾患には進行性肝線維症、炎症及び肝硬変に導く壊死、末期肝臓病ならびにHCCが含まれ;他の病原性フラビウイルスに関し、疾患には黄熱病、デング熱、出血性熱及び脳炎が含まれる。さらに、複数の本発明の化合物がHCVの突然変異株に対して活性である。さらに、多くの本発明の化合物が好ましい薬物動態学的側面を示し、且つ許容され得る半減期、AUC(曲線下の面積)及びピーク値を含むバイオアベイラビリティーの点で魅力的な性質を有し、そして不十分な迅速開始及び組織保持(tissue retention)のような好ましくない現象がない。
【0234】
式(I)の化合物のHCVに対する試験管内抗ウイルス活性を、Krieger et
al.著,Journal of Virology 75:2001年,4614−4624により記載されたさらなる修正を有し、実施例の節でさらに例示されるLohmann et al.著,Science 285:1999年,110−113に基づく細胞HCVレプリコン系において調べた。このモデルは、HCVに関する完全な感染モデルではないが、現在、自律HCV RNA複製の有効なモデルとして広く受け入れられている。この細胞モデルにおいて抗−HCV活性を示す化合物は、哺乳類でのHCV感染の処置におけるさらなる開発のための候補と考えられる。HCV機能を特異的に妨げる化合物を、HCVレプリコンモデルにおいて細胞毒性もしくは静細胞効果を発揮し、結局HCV RNA又は連鎖リポーター酵素濃度を低下させる化合物から区別することが重要であることは、認識されるであろう。例えばレサズリン(resazurin)のような蛍光発光性(fluorogenic)レドックス色素を用いるミトコンドリア酵素の活性に基づく、細胞毒性(cellular cytotoxicity)の評価のためのアッセイが、技術分野で既知である。さらに、ホタルルシフェラーゼのような、連鎖リポーター遺伝子活性の非−選択的阻害の評価のための細胞逆選択物質(celluar counter screens)が存在する。発現が構成的に活性な遺伝子プロモーターに依存するルシフェラーゼリポーター遺伝子を、安定なトランスフェクションにより適した細胞型に備えることができ、そのような細胞を非−選択的阻害剤の除去のための逆選択物質として用いることができる。
【0235】
式(I)の化合物又はそのいずれかのサブグループ、それらの付加塩及び立体化学的異性体は、それらの抗ウイルス性のために、特にそれらの抗−HCV性のために、ウイルス感染、特にHCV感染を経験している患者の処置において、ならびにこれらの感染の予防のために有用である。一般に本発明の化合物は、ウイルス、特にHCVのようなフラビウイルスに感染した温血動物の処置において有用であり得る。
【0236】
従って本発明の化合物又はそのいずれかのサブグループを薬剤として用いることができる。該薬剤としての使用又は処置方法は、ウイルス感染した患者又はウイルス感染を受け易い患者に、ウイルス感染、特にHCV感染と関連する状態を防除するのに有効な量を全身的に投与することを含んでなる。
【0237】
本発明は、ウイルス感染、特にHCV感染の処置又は予防のための薬剤の製造における本化合物又はそのいずれかのサブグループの使用にも関する。
【0238】
本発明はさらにウイルス、特にHCVに感染したかもしくはウイルス、特にHCVに感染する危険にある温血動物の処置方法に関し、該方法は、本明細書に規定される式(I)の化合物又は本明細書に規定される式(I)の化合物のサブグループのいずれかの化合物の抗−ウイルス的に有効な量を投与することを含んでなる。
【0239】
下記に示される試験データに基づき、1日の有効な投薬量は、70kgの平均的な人の場合、約10mg〜約2g又は約20mg〜約1000mg又は約50mg〜約750mg又は約100mg〜約500mgの範囲内であると思われる。投薬量を体重の関数として及び小児科への適用のために適応させることができる。1日の投薬量を1日量として(q.d.)あるいは1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)又は1日4回(q.i.d.)のような複数回の量において投与することができる。
【0240】
以前から既知の抗−HCV化合物、例えばインターフェロン−α(IFN−α)、ポリエチレングリコール化(pegylated)インターフェロン−α及び/又はリバビリンと式(I)の化合物の組み合わせを、組み合わせ治療における薬剤として用いることもできる。「組み合わせ治療」という用語は、HCV感染の処置、特にHCVによる感染の
処置における同時、個別又は逐次的使用のための組み合わせ調製物として、必須の(mandatory)(a)式(I)の化合物及び(b)場合により他の抗−HCV化合物を含有する製品に関する。
【0241】
抗−HCV化合物は、HCVポリメラーゼ阻害剤、NM283、R803、JTK−109及びJTK−003;HCVプロテアーゼ(NS2−NS3及びNS3−NS4A)阻害剤、国際公開第02/18369号パンフレットの化合物(例えば273頁、9〜22行及び274頁4行から276頁11行を参照されたい)、BILN−2061、VX−950、SCH−503034;ヘリカーゼ及びメタロプロテアーゼ阻害剤、ISIS−14803を含むHCV生活環中の他の標的の阻害剤;免疫調節剤、例えばα−、β−及びγ−インターフェロン、ポリエチレングリコール誘導体化(pegylated derivatized)インターフェロン−α化合物、細胞におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物、インターロイキン類、1型ヘルパーT細胞反応の発現を強化する化合物ならびにチモシン(thymosin);他の抗ウイルス剤、例えばリバビリン、アマンタジン(amantadine)及びテルビブジン(telbivudine)、内部リボソーム侵入の阻害剤、広範囲ウイルス阻害剤、例えばIMPDH阻害剤(例えば米国特許第5,807,876号明細書、米国特許第6,498,178号明細書、米国特許第6,344,465号明細書、米国特許第6,054,472号明細書、国際公開第97/40028号パンフレット、国際公開第98/40381号パンフレット、国際公開第00/56331号パンフレットの化合物、ならびにミコフェノール酸(mycophenolic acid)及びその誘導体ならびにVX−950、VX−497、VX−148及び/又はVX−944を含むがこれらに限られない);あるいは上記のいずれかの組み合わせから選ばれる薬剤を包含する。
【0242】
かくしてHCV感染の防除又は処置のために、式(I)の化合物を例えばインターフェロン−α(IFN−α)、ポリエチレングリコール化インターフェロン−α及び/又はリバビリンならびにHCVエピトープを標的とする抗体に基づく治療薬、小分子干渉性RNA(siRNA)、リボザイム、DNAザイム、アンチセンスRNA、例えばNS3プロテアーゼ、NS3ヘリカーゼ及びNS5Bポリメラーゼの小分子アンタゴニストと組み合わせて共−投与することができる。
【0243】
従って本発明は、HCVウイルスに感染した哺乳類におけるHCV活性の阻害に有用な薬剤の製造のための上記で定義された式(I)の化合物又はそのいずれかのサブグループの使用に関し、ここで該薬剤は組み合わせ治療において用いられ、該組み合わせ治療は、好ましくは式(I)の化合物及び他のHCV阻害化合物、例えば(ポリエチレングリコール化)IFN−α及び/又はリバビリンを含んでなる。
【0244】
さらに別の側面において、本明細書で規定される式(I)の化合物及び抗−HIV化合物の組み合わせを提供する。後者は、好ましくは薬剤代謝及び/又は薬物動態学にバイオアベイラビリティーを向上させる正の効果を有するHIV阻害剤である。そのようなHIV阻害剤の例はリトナビルである。従って本発明は、(a)式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤又はその製薬学的に許容され得る塩;及び(b)リトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩を含んでなる組み合わせをさらに提供する。
【0245】
化合物リトナビル及びその製薬学的に許容され得る塩ならびにその製造方法は、国際公開第94/14436号パンフレットに記載されている。リトナビルの好ましい投薬形態物に関し、米国特許第6,037,157号明細書及びそこで引用されている文書;米国特許第5,484,801号明細書、米国特許第08/402,690号明細書ならびに国際公開第95/07696号パンフレット及び国際公開第95/09614号パンフレットを参照されたい。リトナビルは次式:
【0246】
【化46】

【0247】
を有する。
【0248】
さらに別の態様において、(a)式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤又はその製薬学的に許容され得る塩;及び(b)リトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩を含んでなる組み合わせは、本明細書に記載される化合物から選ばれる追加の抗−HCV化合物をさらに含んでなる。
【0249】
本発明の1つの態様において、式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤又はその製薬学的に許容され得る塩及びリトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩を合わせる段階を含んでなる、本明細書に記載される組み合わせの調製方法を提供する。本発明の別の態様は、組み合わせが本明細書に記載される1種もしくはそれより多い追加の薬剤を含んでなる方法を提供する。
【0250】
本発明の組み合わせを薬剤として用いることができる。該薬剤としての使用又は処置方法は、HCVならびに他の病原性フラビ−及びペスティウイルスと関連する状態の防除に有効な量を、HCV−感染患者に全身的に投与することを含んでなる。結局、本発明の組み合わせを、哺乳類における感染又はHCV感染と関連する疾患の処置、予防もしくは防除のために、特にHCV及び他の病原性フラビ−及びペスティウイルスと関連する状態の処置のために有用な薬剤の製造において用いることができる。
【0251】
本発明の1つの態様において、本明細書に記載される態様のいずれか1つに従う組み合わせ及び製薬学的に許容され得る賦形剤を含んでなる製薬学的組成物を提供する。特に本発明は、(a)式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤又は製薬学的に許容され得るその塩の治療的に有効な量、(b)リトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩の治療的に有効な量及び(c)製薬学的に許容され得る賦形剤を含んでなる製薬学的組成物を提供する。場合により、製薬学的組成物はさらに、HCVポリメラーゼ阻害剤、HCVプロテアーゼ阻害剤、HCV生活環中の他の標的の阻害剤及び免疫調節剤、抗ウイルス剤ならびにそれらに組み合わせから選ばれる追加の薬剤を含むことができる。
【0252】
組成物を適した製薬学的投薬形態物、例えば上記の投薬形態物に調製することができる。活性成分のそれぞれを別に調製し、調剤を共−投与することができるか、あるいは両方及び必要ならさらに別の活性成分を含有する1つの調剤を与えることができる。
【0253】
本明細書で用いられる場合、「組成物」という用語は、規定される成分ならびに規定される成分の組み合わせから直接又は間接に生ずる生成物を含んでなる製品(product)を包含することが意図されている。
【0254】
1つの態様において、本明細書で与えられる組み合わせを、HIV治療における同時、
個別もしくは逐次的使用のための組み合わせ調製物として調製することもできる。そのような場合、一般式(I)の化合物又はそのいずれかのサブグループを、他の製薬学的に許容され得る賦形剤を含有する製薬学的組成物において調製し、リトナビルを他の製薬学的に許容され得る賦形剤を含有する製薬学的組成物において別に調製する。簡便には、これらの2つの別の製薬学的組成物は、同時、個別もしくは逐次的使用のためのキットの一部であることができる。
【0255】
かくして本発明の組み合わせの個々の成分を治療の経過の間の異なる時点に個別に、あるいは分割されたかもしくは1つの組み合わせ形態で同時に投与することができる。従って本発明は、すべてのそのような同時もしくは交互処置の管理を包含すると理解されるべきであり、そして「投与する」という用語はそれに従って解釈されるべきである。好ましい態様において、個別の投薬形態物が大体同時に投与される。
【0256】
1つの態様において、本発明の組み合わせは、式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤のバイオアベイラビリティーを、単独で該式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤が投与される時のバイオアベイラビリティーに対して臨床的に向上させるのに十分である量のリトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩を含有する。
【0257】
他の態様において、本発明の組み合わせは、t1/2、Cmin、Cmax、Css、12時間におけるAUC又は24時間におけるAUCから選ばれる式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤の薬物動態学的変数の少なくとも1つを、単独で式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤が投与される時の該少なくとも1つの薬物動態学的変数に対して向上させるのに十分である量のリトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩を含有する。
【0258】
さらに別の態様は、バイオアベイラビリティーを向上させることが必要な患者に、該組み合わせの各成分の治療的に有効な量を含んでなる本明細書で定義される組み合わせを投与することによる、HCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤のバイオアベイラビリティーを向上させるための方法に関する。
【0259】
さらに別の態様において、本発明は、t1/2、Cmin、Cmax、Css、12時間におけるAUC又は24時間におけるAUCから選ばれる式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤の薬物動態学的変数の少なくとも1つの向上物質としてのリトナビル又はその製薬学的に許容され得る塩の使用に関し;但し該使用は人間又は動物の体内で実施されない。
【0260】
本明細書で用いられる「患者」という用語は、処置、観察又は実験の対象であった動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくは人間を指す。
【0261】
バイオアベイラビリティーは、投与される投薬量中の全身循環に到達する割合として定義される。t1/2は半減期又は血漿濃度がその最初の値の半分に低下するのに要する時間を示す。Cssは定常状態濃度、すなわち薬剤の吸収の速度が除去の速度と等しい時の濃度である。Cminは、投薬間隔の間に測定される最低(最小)濃度として定義される。Cmaxは、投薬間隔の間に測定される最高(最大)濃度を示す。AUCは、規定される時間に関する血漿濃度−時間曲線の下の面積として定義される。
【0262】
本発明の組み合わせを、該組み合わせ中に含まれる各成分に関して特異的な投薬量範囲内で人間に投与することができる。該組み合わせ中に含まれる成分を、一緒に又は個別に投与することができる。式(I)のNS3/4aプロテアーゼ阻害剤又はそのいずれかのサブグループ及びリトナビル又は製薬学的に許容され得るその塩もしくはエステルは、1
日当たり約0.02〜約3.0グラムの範囲内又は1日当たり約0.03〜約2.0グラムの範囲内又は1日当たり約50mg〜約1000mgの範囲内又は1日当たり約100mg〜約500mgの範囲内の投薬量レベルを有することができる。
【0263】
式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤及びリトナビルを組み合わせて投与する場合、式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤対リトナビルの重量比は、適切には約40:1〜約1:15又は約30:1〜約1:15又は約15:1〜約1:15、典型的には約10:1〜約1:10、そしてより典型的には約8:1〜約1:8の範囲内である。約6:1〜約1:6又は約4:1〜約1:4又は約3:1〜約1:3又は約2:1〜約1:2又は約1.5:1〜約1:1.5の範囲の式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤対リトナビルの重量比も有用である。1つの側面において、式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤の重量による量は、リトナビルのそれに等しいかもしくはそれより多く、ここで式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤対リトナビルの重量比は、適切には約1:1〜約15:1、典型的には約1:1〜約10:1、そしてより典型的には約1:1〜約8:1の範囲内である。約1:1〜約6:1又は約1:1〜約5:1又は約1:1〜約4:1又は約3:2〜約3:1又は約1:1〜約2:1又は約1:1〜約1.5:1の範囲の式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤対リトナビルの重量比も有用である。
【0264】
本明細書で用いられる「治療的に有効な量」という用語は、組織、系、動物又は人間において、本発明の観点から、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医が求めている生物学的もしくは医学的反応を引き出す活性化合物又は成分又は製薬学的薬剤の量を意味し、反応には処置されている疾患の症状の軽減が含まれる。本発明は2種もしくはそれより多い薬剤を含んでなる組み合わせに関するので、「治療的に有効な量」は、組み合わされた効果が所望の生物学的もしくは医学的反応を引き出すように一緒に摂取される薬剤の量である。例えば(a)式(I)の化合物及び(b)リトナビルを含んでなる組成物の治療的に有効な量は、一緒に摂取すると治療的に有効である組み合わされた効果を有するような式(I)の化合物の量及びリトナビルの量である。
【0265】
一般に、1日の抗ウイルス的有効量は、体重のkg当たり0.01mg〜500mg、より好ましくは体重のkg当たり0.1mg〜50mgであると思われる。必要な投薬量を、1日を通じて適した間隔における2、3、4回又はそれより多い(細分−)投薬量として投与するのが適しているかも知れない。該(細分−)投薬量を、例えば単位投薬形態物当たり1〜1000mg、そして特に5〜200mgの活性成分を含有する単位投薬形態物として調製することができる。
【0266】
正確な投薬量及び投与の頻度は、当該技術分野における熟練者に周知である通り、用いられる特定の式(I)の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重度、特定の患者の年令、体重、性別、障害の程度及び一般的な身体条件ならびに患者が摂取してい得る他の投薬に依存する。さらに、処置される患者の反応に依存して、及び/又は本発明の化合物を処方する医師の評価に依存して、該1日の有効量を減少させるかもしくは増加させることができることは、明らかである。従って上記で言及した1日の有効量範囲は、単に指針である。
【0267】
1つの態様に従うと、式(I)のHCV NS3/4aプロテアーゼ阻害剤及びリトナビルを1日に1もしくは2回、好ましくは経口的に共−投与することができ、ここで投薬当たりの式(I)の化合物の量は約1〜約2500mgであり、投薬当たりのリトナビルの量は1〜約2500mgである。別の態様において、1日に1もしくは2回の共−投与のための投薬当たりの量は、約50〜約1500mgの式(I)の化合物及び約50〜約1500mgのリトナビルである。さらに別の態様において、1日に1もしくは2回の共
−投与のための投薬当たりの量は、約100〜約1000mgの式(I)の化合物及び約100〜約800mgのリトナビルである。さらにもっと別の態様において、1日に1もしくは2回の共−投与のための投薬当たりの量は、約150〜約800mgの式(I)の化合物及び約100〜約600mgのリトナビルである。さらにもっと別の態様において、1日に1もしくは2回の共−投与のための投薬当たりの量は、約200〜約600mgの式(I)の化合物及び約100〜約400mgのリトナビルである。さらにもっと別の態様において、1日に1もしくは2回の共−投与のための投薬当たりの量は、約200〜約600mgの式(I)の化合物及び約20〜約300mgのリトナビルである。さらにもっと別の態様において、1日に1もしくは2回の共−投与のための投薬当たりの量は、約100〜約400mgの式(I)の化合物及び約40〜約100mgのリトナビルである。
【0268】
1日に1もしくは2回の投薬のための式(I)の化合物(mg)/リトナビル(mg)の代表的な組み合わせには50/100、100/100、150/100、200/100、250/100、300/100、350/100、400/100、450/100、50/133、100/133、150/133、200/133、250/133、300/133、50/150、100/150、150/150、200/150、250/150、50/200、100/200、150/200、200/200、250/200、300/200、50/300、80/300、150/300、200/300、250/300、300/300、200/600、400/600、600/600、800/600、1000/600、200/666、400/666、600/666、800/666、1000/666、1200/666、200/800、400/800、600/800、800/800、1000/800、1200/800、200/1200、400/1200、600/1200、800/1200、1000/1200及び1200/1200が含まれる。1日に1もしくは2回の投薬のための式(I)の化合物(mg)/リトナビル(mg)の他の代表的な組み合わせには1200/400、800/400、600/400、400/200、600/200、600/100、500/100、400/50、300/50及び200/50が含まれる。上記の比率はすべてmg/mgである。
【0269】
本発明の1つの態様において、HCV感染を処置するか、又はHCVのNS3プロテアーゼを阻害するのに有効な組成物;ならびに組成物をC型肝炎ウイルスによる感染の処置のために用いることができることを示すラベルを含んでなる包装材料を含んでなる製品を提供し;ここで組成物は式(I)の化合物もしくはそのいずれかのサブグループ又は本明細書に記載される組み合わせを含んでなる。
【0270】
本発明の化合物及び組み合わせを、HCV処置における該組み合わせの有効性を測定するためのアッセイのような、高−処理量標的−被検体アッセイにおいて用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0271】
実施例
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明を実施例に制限することを意図していない。
【実施例1】
【0272】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の製造
段階A
【0273】
【化47】

【0274】
エタノール(15mL)中の3−メトキシ−2−メチルアニリン(1.09g,7.95ミリモル)及び3−エトキシ−3−イミノプロピオン酸エチル塩酸塩(1.44g,7.36ミリモル)の溶液を、窒素下に室温で48時間攪拌した。次いで減圧下で溶媒を蒸発させた。残留物をエーテル中で磨砕し、濾過した。濾液を蒸発させ、次いで残留物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン,10:90)により精製し、1.97g(89%)の目的生成物(1−3)を与えた:m/z=280(M+H)
段階B:4−ヒドロキシ−2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン(1−4)の合成
【0275】
【化48】

【0276】
ジフェニルエーテル(20mL)中の(1−3)(5.54g,19.8ミリモル)の混合物を250℃で30分間加熱した。次いで反応混合物を室温に冷ました。カラムクロマトグラフィー(ヘプタンから酢酸エチル/ヘプタン,70:30への勾配)による精製及び続く酢酸エチルからの再結晶は、2.46g(53%)の表題生成物(1−4)を黄色の針状結晶として与えた:m/z=234(M+H)
段階C:中間体(1−5)の合成
【0277】
【化49】

【0278】
DMF(140mL)中のN−メチルトリフルオロアセトアミド(25g)の溶液に、0℃において水素化ナトリウム(1.05当量)をゆっくり加えた。混合物を、窒素下に室温において1時間攪拌した。次いでDMF(25mL)中のブロモヘキセン(32.1g)の溶液を滴下し、混合物を70℃に12時間加熱した。反応混合物を水(200mL)上に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出し(4x50mL)、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発させて、35gの目的生成物(1−5)を黄色がかった油として与え、それをさらなる精製なしで次の段階において用いた。
段階D:(ヘキセ−5−エニル)(メチル)アミン(1−6)の合成
【0279】
【化50】

【0280】
水(130mL)中の水酸化カリウム(187.7g)の溶液を、メタノール(200mL)中の(1−5)(35g)の溶液に滴下した。混合物を室温で12時間攪拌した。次いで反応混合物を水(100mL)上に注ぎ、エーテルで抽出し(4x50mL)、乾燥し(MgSO)、濾過し、エーテルを大気圧下で蒸留した。得られる油を真空下における蒸留(13mmHgの圧力,50℃)により精製し、7.4g(34%)の表題生成物(1−6)を無色の油として与えた:H−NMR(CDCl):δ 5.8(m,1H),5(ddd,J=17.2Hz,3.5Hz,1.8Hz,1H),4.95(m,1H),2.5(t,J=7.0Hz,2H),2.43(s,3H),2.08(q,J=7.0Hz,2H),1.4(m,4H),1.3(br s,1H)。
段階E:中間体(1−8)の合成
【0281】
【化51】

【0282】
4mLのDMF中の3−オキソ−2−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5−カルボン酸(1−7)(500mg,3.2ミリモル)を、DMF(3mL)中のHATU(2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートメタンアミニウム;1.34g,3.52ミリモル)及びN−メチルヘキセ−5−エニルアミン((1−6),435mg,3.84ミリモル)に0℃で加え、続いてDIPEAを加えた。0℃で40分間攪拌した後、混合物を室温で5時間攪拌した。次いで溶媒を蒸発させ、残留物を酢酸エチル(70mL)中に溶解し、飽和NaHCO(10mL)で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出した(2x25mL)。有機層を合わせ、飽和NaCl(20mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル,2:1)による精製は、550mg(68%)の目的生成物(1−8)を無色の油として与えた:m/z=252(M+H)
段階F:中間体(1−9)の合成
【0283】
【化52】

【0284】
LiOHの溶液(4mLの水中の105mg)を、ラクトンアミド(1−8)に0℃で加えた。1時間後、転換が完了した(HPLC)。1N HClを用いて混合物をpH2
−3に酸性化し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ、数回トルエンと共−蒸発させ、高真空下で終夜乾燥し、520mg(88%)の目的生成物(1−9)を与えた:m/z=270(M+H)
段階G:中間体(1−11)の合成
【0285】
【化53】

【0286】
1−(アミノ)−2−(ビニル)シクロプロパンカルボン酸 エチルエステル 塩酸塩(1−10)(4.92g,31.7ミリモル)及びHATU(12.6g,33.2ミリモル)を(1−9)(8.14g,30.2ミリモル)に加えた。混合物をアルゴン下に氷浴中で冷却し、次いでDMF(100mL)及びDIPEA(12.5mL,11.5ミリモル)を連続して加えた。0℃で30分の後、溶液を室温でさらに3時間攪拌した。次いで反応混合物を酢酸エチルと水に分配し、0.5N HCl(20mL)及び飽和NaCl(2x20mL)で連続して洗浄し、乾燥した(NaSO)。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/CHCl/石油エーテル,1:1:1)による精製は、7.41g(60%)の目的生成物(1−11)を無色の油として与えた:m/z=407(M+H)
段階H:中間体(1−12)の合成
【0287】
【化54】

【0288】
乾燥THF(15mL)中の(1−11)(351mg,0.86ミリモル)、キノリン(1−4)(207mg,0.89ミリモル)及びトリフェニルホスフィン(387mg,1.5ミリモル)の溶液に、DIAD(271mg,1.30ミリモル)を窒素雰囲気下で−20℃において加えた。次に、反応物を室温に温めた。24時間後、氷−冷水を用いて反応混合物をクエンチングし、次いでエーテルで抽出した。有機層を連続的に乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/CHCl,1:9)により精製し、520mg(92%)の目的生成物(1−12)を与えた:m/z=622(M+H)
段階I:(1)の合成
【0289】
【化55】

【0290】
乾燥され且つ脱ガスされた1,2−ジクロロエタン(400mL)中の(1−12)(520mg,0.753ミリモル)及びHoveyda−Grubbs第1世代触媒(48mg,0.080ミリモル)の溶液を、窒素下に80℃において36時間加熱した。次いで溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(エーテル)により精製し、279mg(62%)の目的生成物(1)を与えた:m/z=594(M+H)
段階J:17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成
【0291】
【化56】

【0292】
水(6mL)中のLiOH.HO(803mg)の溶液を、THF(10mL)及びメタノール(10mL)中の(1)(279mg,0.470ミリモル)の攪拌溶液に加えた。72時間後、溶媒を蒸発させ、残留物を酸性化された水(pH=5)と酢酸エチルに分配した。有機層を乾燥し(NaSO)、蒸発させた。次いで残留物をカラムクロマトグラフィー(メタノール/CHCl,2.5:97.5)により精製し、表題生成物(2)を白色の粉末として与えた:m/z=566(M+H)H NMR(CDCl):1.10−1.14(m,3H),1.10−1.21(m,1H),1.31−1.42(m,1H),1.40−1.50(m,4H),1.50−1.65(m,1H),1.68−1.83(m,2H),1.83−1.95(m,2H),2.10−2.20(m,1H),2.21−2.34(m,2H),2.35−2.49(m,1H),2.50−2.65(m,5H),2.97(s,3H),3.18−3.30(m,1H),3.92(s,3H),4.48−4.62(m,3H),4.80−4.88(m,1H),5.13−5.23(m,1H),5.60−5.70(m,1H),7.00(d,1H),7.41(s,1H),7.81(d,1H)。
【実施例2】
【0293】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−
13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロ−プロピル)スルホンアミド(3)の製造
【0294】
【化57】

【0295】
乾燥THF(10mL)中の(2)(182mg,0.32ミリモル)及びCDI(139mg,0.29ミリモル)の混合物を、窒素下で1.5時間加熱還流した。LCMS分析は、中間体(2−1)(シリカゲル上の精製により単離され得る安定な中間体)の1つのピークを示した。反応混合物を室温に冷まし、シクロプロピル−スルホンアミド(93mg,0.76ミリモル)を加えた。次いでDBU(138mg,0.91ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次いで55℃で12時間加熱した。次に、溶媒を蒸発させ、残留物を酢酸エチルと酸性の水(pH=3)に分配した。有機層を乾燥し(NaSO)、蒸発させた。粗材料をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/CHCl,1:9)により精製した。残留物を水中で1時間音波処理し、濾過し、イソプロピルエーテルで洗浄して、表題生成物(3)を白色の粉末として与えた:m/z=669(M+H)H NMR(CDCl):0.90−1.30(m,5H),1.31−1.52(m,6H),1.61−1.72(m,1H),1.73−1.99(m,3H),2.09−2.20(m,1H),2.30−2.42(m,2H),2.48−2.62(m,5H),2.70−2.83(m,1H),3.01(s,3H),3.30−3.41(m,2H),3.94(s,3H),4.50−4.73(m,3H),5.05(t,J=10.0Hz,2H),5.62−5.69(m,1H),5.95(s,1H),6.35(br s,1H),7.01(d,J=9.1Hz,1H),7.85(d,J=9.1Hz,1H),10.8(br s,1H)。
【実施例3】
【0296】
17−[2−エトキシ−7−メトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(4)の製造
【0297】
【化58】

【0298】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成に関して報告した方法(段階A−J)に従い、3−メトキシアニリンから表題化合物(4)を製造した:m/z=552(M+H)
H NMR(CDCl):1.10−1.21(m,1H),1.31−1.42(m,1H),1.45(t,J=7.1Hz,3H),1.50−1.65(m,1H),1.71−1.85(m,2H),1.85−2.00(m,3H),2.15−2.51(m,7H),3.00(s,3H),3.21−3.32(m,1H),3.51−3.62(m,1H),3.91(s,3H),4.51−4.62(m,3H),4.91−4.96(m,1H),5.15(dd,J=10.0及びJ=8.0Hz,1H),5.65(ddd,J=10.0,J=6.6Hz,J=6.7Hz,1H),6.00(s,1H),6.95(dd,J=8.9Hz,J=2.3Hz,1H),7.22(s,1H),7.26(d,J=2.3Hz,1H),7.88(d,J=8.9Hz,1H)。
【実施例4】
【0299】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(5)の製造
【0300】
【化59】

【0301】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(3)の合成に関して報告した方法に従い、17−[2−エトキシ−7−メトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ
[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(4)から表題化合物(5)を製造した:m/z=555(M+H)H NMR(CDCl):0.80−0.90(m,1H),0.92−1.0(m,4H),1.00−1.3(m,3H),1.41(t,J=7.1Hz,3H),1.45−1.71(m,2H),1.8−1.95(m,4H),2.21−2.62(m,4H),2.73−2.81(m,1H),2.9−2.94(m,1H),3.0(s,3H),3.31−3.41(m,1H),3.90(s,3H),4.44(q,J=7.1Hz,2H),5.0−5.08(m,2H),5.6−5.65(m,1H),5.98(s,1H),6.8(br s,1H),7.10(dd,J=9.1Hz及びJ=2.5Hz,1H),7.12(d,J=2.5Hz,1H),7.28(s,1H),7.9(d,J=9.1Hz,1H),11.02(br s,1H)。
【実施例5】
【0302】
17−[8−ブロモ−2−エトキシ−7−メトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(6)の製造
【0303】
【化60】

【0304】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成に関して報告した方法(段階A−J)に従い、2−ブロモ−3−メトキシアニリンから表題化合物(6)を製造した:m/z=631(M+H)
【実施例6】
【0305】
N−[17−[8−ブロモ−2−エトキシ−7−メトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(7)の製造
【0306】
【化61】

【0307】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(3)の合成に関して報告した方法に従い、17−[8−ブロモ−2−エトキシ−7−メトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(6)から表題化合物(7)を製造した:m/z=734(M+H)
【実施例7】
【0308】
17−[2−エトキシ−8,9−ジヒドロフロ[2,3−h]キノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(8)の製造
【0309】
【化62】

【0310】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成に関して報告した方法(段階A−J)に従い、4−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾフランから表題化合物(8)を製造した:m/z=564(M+H)
【実施例8】
【0311】
N−[17−[2−エトキシ−8,9−ジヒドロフロ[2,3−h]キノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(9)の製造
【0312】
【化63】

【0313】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(3)の合成に関して報告した方法に従い、17−[2−エトキシ−8,9−ジヒドロフロ[2,3−h]キノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(8)から表題化合物(9)を製造した:m/z=667(M+H)
【実施例9】
【0314】
17−[8−クロロ−2−エトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(10)の製造
【0315】
【化64】

【0316】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成に関して報告した方法(段階A−J)に従い、2−クロロアニリンから表題化合物(10)を製造した:m/z=556(M+H)
【実施例10】
【0317】
N−[17−[8−クロロ−2−エトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)−スルホンアミド(11)の製造
【0318】
【化65】

【0319】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(3)の合成に関して報告した方法に従い、17−[8−クロロ−2−エトキシキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(10)から表題化合物(11)を製造した:m/z=659(M+H)
【実施例11】
【0320】
17−[2−エトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(12)の製造
【0321】
【化66】

【0322】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成に関して報告した方法(段階A−J)に従い、2−メチルアニリンから表題化合物(12)を製造した:m/z=536(M+H)
【実施例12】
【0323】
N−[17−[2−エトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(13)の製造
【0324】
【化67】

【0325】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(3)の合成に関して報告した方法に従い、17−[2−エトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(12)から表題化合物(13)を製造した:m/z=639(M+H)
【実施例13】
【0326】
17−[8−エトキシ[1,3]ジオキソロ[4,5−h]キノリン−6−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(14)の製造
【0327】
【化68】

【0328】
17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(2)の合成に関して報告した方法(段階A−J)に従い、ベンゾ[1,3]ジオキソール−4−イルアミンから表題化合物(14)を製造した:m/z=566(M+H)
【実施例14】
【0329】
N−[17−[8−エトキシ[1,3]ジオキソロ[4,5−h]キノリン−6−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル]−(シクロプロピル)スルホンアミド(15)の製造
【0330】
【化69】

【0331】
N−[17−[2−エトキシ−7−メトキシ−8−メチルキノリン−4−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボニル](シクロプロピル)スルホンアミド(3)の合成に関して報告した方法に従い、17−[8−エトキシ[1,3]ジオキソロ[4,5−h]キノリン−6−イルオキシ]−13−メチル−2,14−ジオキソ−3,13−ジアザトリシクロ[13.3.0.04,6]オクタデセ−7−エン−4−カルボン酸(14)から表題化合物(15)を製造した:m/z=669(M+H)
【実施例15】
【0332】
式(I)の化合物の活性
レプリコンアッセイ
HCV RNA複製の阻害における活性に関し、細胞アッセイにおいて式(I)の化合物を調べた。アッセイは、式(I)の化合物が細胞培養において機能性のHCVレプリコンに対抗する活性を示すことを示した。細胞アッセイは、多重−標的スクリーニング(multi−target screening)戦略で、Krieger et al.著,Journal of Virology 75:2001年,4614−4624により記載された修正を有するLohmann et al.著,Science vol.285:1999年,110−113により記載されたビシストロン性発現構築物(bicistronic expression construct)に基づいた。本質的に、方法は以下の通りであった。
【0333】
アッセイは安定にトランスフェクションされた細胞系Huh−7 luc/neo(下記でHuh−Lucと呼ぶ)を使用した。この細胞系は、脳心筋炎ウイルス(EMCV)からの内部リボソーム侵入部位(Internal Ribosome Entry Site)(IRES)から翻訳された1b型HCVの野生型NS3−NS5B領域を含んでなり、それにリポーター部分(FfL−ルシフェラーゼ)及び選択可能マーカー部分(neo,ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)が先行しているビシストロン性発現構築物をコードするRNAを宿している。構築物は1b型HCVからの5’及び3’NTRs(非−翻訳領域)により境界付けられている。G418(neo)の存在下におけるレプリコン細胞の培養の継続は、HCV RNAの複製に依存する。自律的に且つ高いレベルまで複製され、中でもルシフェラーゼをコードするHCV RNAを発現する安定にトランスフェクションされたレプリコン細胞を、抗ウイルス性化合物のスクリーニングに用いた。
【0334】
レプリコン細胞を、種々の濃度で加えられる試験化合物及び標準化合物の存在下で384ウェルプレートにおいて平板培養した。3日間のインキュベーションの後、ルシフェラ
ーゼ活性のアッセイ(標準的なルシフェラーゼアッセイ基質及び試薬ならびにPerkin Elmer ViewLuxTm ultraHTS ミクロプレートイメージャーを用いて)によりHCV複製を測定した。標準培養中のレプリコン細胞は、阻害剤の不在下で高いルシフェラーゼ発現を有した。ルシフェラーゼ活性への化合物の阻害活性をHuh−Luc細胞上で監視し、各試験化合物に関する用量−反応曲線を可能にした。次いでEC50値を計算し、その値は、検出されるルシフェラーゼ活性、あるいはもっと特定的に、遺伝子的に連鎖したHCVレプリコンRNAが複製する能力のレベルを50%低下させるのに必要な化合物の量を示す。
【0335】
阻害アッセイ
この試験管内アッセイの目的は、本発明の化合物によるHCV NS3/4Aプロテアーゼ複合体の阻害を測定することであった。このアッセイは、本発明の化合物がHCV NS3/4Aタンパク質分解活性の阻害においていかに有効であるかの指標を与える。
【0336】
全長C型肝炎NS3プロテアーゼ酵素の阻害を、本質的にPoliakov,2002
Prot Expression & Purification 25 363 371に記載されている通りに測定した。要するに、デプシペプチド基質、Ac−DED(Edans)EEAbuψ[COO]ASK(Dabcyl)−NH(AnaSpec,San Jose,USA)の加水分解を、ペプチド補因子、KKGSVVIVGRIVLSGK(Åke Engstroem,Department of Medicinal Biochemistry and Microbiology,Uppsala University,Sweeden)の存在下で分光蛍光測定により測定した(Landro,1997 Biochem 36 9340−9348)。酵素(1nM)を、25μMのNS4A補因子及び阻害剤と一緒に50mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.5,10mM ジチオトレイトール,40% グリセロール,0.1% n−オクチル−D−グルコシド中で、30℃において10分間インキュベーションし、それから0.5μMの基質の添加により反応を開始させた。阻害剤はDMSO中に溶解され、30秒間音波処理され、渦動された。測定と測定の間(between measurements)、溶液は−20℃で保存された。
【0337】
アッセイ試料におけるDMSOの最終的な濃度は3.3%に調節された。加水分解の速度を、公開された方法に従って内部フィルター効果に関して修正した。(Liu,1999 Analytical Biochemstry 267 331−335)。競合的阻害に関するモデル及びKmに関する固定された値(0.15μM)を用い、非−線形回帰分析(GraFit,Erithacus Software,Staines,MX,UK)によりK値を見積もった。すべての測定に関し、最低で2回の繰り返しを行なった。
【0338】
以下の表1は、上記の実施例のいずれか1つに従って製造された化合物を挙げている。R欄における構造中の点線は、基が分子の残りの部分に連結する結合を示す。調べられた化合物の活性も表1に記載する。
【0339】
【表1】

【0340】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
各破線(-----により示される)は独立して、場合による二重結合を示し;
XはN、CHであり、そしてXが二重結合を有する時それはCであり;
は−OR、−NH−SOであり;
は水素であり、そしてXがC又はCHである場合、RはC1−6アルキルであることもでき;
は水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシC1−6アルキル、C3−7シクロアルキルであり;
nは3、4、5又は6であり;
はC1−6アルキル又はC3−7シクロアルキルであり;
は水素、ハロ、C1−6アルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ポリハロC1−6アルキルを示し;
は水素、C1−6アルコキシ、モノ−もしくはジC1−6アルキルアミノを示すか;あるいは
及びRは場合によりそれらが結合する炭素原子と一緒になって、5−もしくは6−員不飽和もしくは部分的不飽和環を形成することができ、ここで該環は場合によりO、N及びSから選ばれる1もしくは2個のヘテロ原子を含むことができ;
は水素;場合によりC1−6アルキルで置換されていることができるC3−7シクロアルキル;又は場合によりC3−7シクロアルキルで置換されていることができるC1−6アルキルであり;
は場合によりC1−6アルキルで置換されていることができるC3−7シクロアルキル;場合によりC3−7シクロアルキルで置換されていることができるC1−6アルキル;あるいは−NR8a8bであり、ここでR8a及びR8bはそれぞれ独立してC1−6アルキルであるか、又はR8a及びR8bはそれらが結合する窒素と一緒になって、5−もしくは6−員飽和複素環式環を形成する]
を有する化合物ならびにその塩及び立体異性体。
【請求項2】
化合物が式(I−c)又は(I−d):
【化2】

を有する請求項1に従う化合物。
【請求項3】
(a)Rが−ORであり、ここでRはC1−6アルキル又は水素であるか;
(b)Rが−NHS(=O)であり、ここでRはメチル、シクロプロピルであるか;あるいはRが−NHS(=O)であり、ここでRはメチルで置換されたシクロプロピルである
請求項1〜2のいずれか1つに従う化合物。
【請求項4】
nが4又は5である請求項1〜3のいずれか1つに従う化合物。
【請求項5】
が水素又はC1−6アルキルである、特にRが水素又はメチルである請求項1〜4のいずれか1つに従う化合物。
【請求項6】
が水素、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、フルオロ、クロロ、ブロモ又はトリフルオロメチルである請求項1〜5のいずれか1つに従う化合物。
【請求項7】
が水素又はメトキシである請求項1〜6のいずれか1つに従う化合物。
【請求項8】
及びRが、それらが結合するキノリン部分と一緒になって:
【化3】

から選ばれる環を形成する請求項1〜5のいずれか1つに従う化合物。
【請求項9】
(a)請求項1〜8のいずれか1つで定義される化合物又はその製薬学的に許容され得る塩;及び
(b)リトナビル(ritonavir)又はその製薬学的に許容され得る塩
を含んでなる組み合わせ。
【請求項10】
担体及び活性成分として請求項1〜8のいずれか1つに記載の化合物又は請求項9に従う組み合わせの抗−ウイルス的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項11】
薬剤としての使用のための請求項1〜8のいずれかに従う化合物又は請求項9に従う組み合わせ。
【請求項12】
HCV複製の阻害用の薬剤の製造のための請求項1〜8のいずれかに従う化合物又は請求項9に従う組み合わせの使用。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに従う化合物の有効量又は請求項9に従う組み合わせの各成分の有効量を投与することを含んでなる、温血動物におけるHCV複製の阻害方法。
【請求項14】
(a)以下の反応スキーム:
【化4】

に概述される通り、特にオレフィンメタセシス反応を介してCとCの間に二重結合を形成せしめ、同時に大員環に環化することによって、式(I−i)の化合物であるC
の間の結合が二重結合である式(I)の化合物を製造し、
ここで上記及び下記の反応スキーム中、Rは基
【化5】

を示すか;
(b)式(I−i)の化合物を、式(I−j)の化合物中のC7−C8二重結合の還元により、大員環中のC7とC8の間の結合が単結合である式(I)の化合物、すなわち式(I−j):
【化6】

の化合物に転換するか;
(c)Gが基:
【化7】

を示す以下のスキームに概述される通り、中間体(2a)とスルホニルアミン(2b)の間でアミド結合を形成せしめることにより、式(I−k−1)により示されるRが−NHSOを示す式(I)の化合物を製造するか、あるいは中間体(2a)とアルコール(2c)の間でエステル結合を形成せしめることにより、Rが−ORを示す式(I)の化合物、すなわち化合物(I−k−2)を製造するか;
【化8】

(d)対応する窒素−保護された中間体(3a)から(I−1)により示されるRが水素である式(I)の化合物を製造し:
【化9】

ここでPGは窒素保護基を示すか、
(e)下記の反応スキーム:
【化10】

に概述される通り、中間体(4a)を中間体(4b)と反応させ、
ここで(4b)中のYはヒドロキシ又は離脱基を示し;そしてYがヒドロキシを示す場合、(4a)と(4b)の反応はMitsunobu反応であり;そしてYが離脱基を示す場合、(4a)と(4b)の反応は置換反応であるか;
(f)官能基変換反応により、式(I)の化合物を互いに転換するか;あるいは
(g)式(I)の化合物の遊離の形態を酸又は塩基と反応させることにより塩の形態を製造する
ことを含んでなる請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2010−510192(P2010−510192A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536740(P2009−536740)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062436
【国際公開番号】WO2008/059046
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】