説明

CD23に結合するペプチドおよびペプチド模倣体

本発明は、CD23に結合可能な新規のそして有用なペプチドおよびペプチド模倣体を含む化合物を記載する。これらは、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、アレルギー、および哺乳動物免疫系に仲介されるものなどの他の炎症状態に関連する炎症反応を減少させることが可能である。本発明の化合物は、CD23結合性ペプチドであって、前記ペプチドが、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8のアミノ酸配列(式中、X1は、Pheであるか、または存在せず;X2は、HisまたはAlaであり;X3は、Glu、Ser、Ala、Asn、Lys、またはCysであり;X4は、Asn、Phe、Gln、Pro、Ser、またはAlaであり;X5は、Trpであり;X6は、Pro、Arg、Glu、Gly、Cys、またはLysであり;X7は、Ser、Pro、Leu、Thr、Ala、Gly、Asnであるか、または存在せず;そしてX8は、Phe、Glyであるか、または存在しない)を含む、前記ペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、CD23(FCεRII)分子に結合する新規ペプチドおよびペプチド模倣体、こうしたペプチドおよびペプチド模倣体を含有する薬剤組成物、並びに療法におけるその使用に関する。
報告されている成果
CD23は、最初は、IgEに対する、Bリンパ球上の低親和性受容体(FCεRII)と記載され、続いて、in vitroまたはin vivo活性化に際して、単球/マクロファージ、好酸球、血小板、T細胞、並びに上皮細胞のサブセット上で見出された。CD23は、C型レクチンファミリーのII型分子である。可溶性CD23(sCD23)分子は、膜貫通受容体のタンパク質分解的切断によって形成される。CD23は、細胞接着の仲介、IgEおよびヒスタミン放出の制御、アポトーシスからのB細胞の救出、並びに骨髄細胞およびリンパ球増殖の制御を含む、多面的活性を有する。これらの機能的活性は、細胞に会合したCD23またはsCD23が特異的リガンドに結合することを通じて仲介され、後者はサイトカイン様の方式で作用する。IgEに加えて、CD23は、CD21、CD11b/c、インテグリン、CD47/ビトロネクチン、およびそのレクチンドメインを誘発する糖タンパク質などの多様な生物学的リガンドに結合する能力を有する。CD23は、ヒト染色体19上に位置する単一の遺伝子にコードされる。この遺伝子は、約13kbを有し、そして11のエクソンからなる。6アミノ酸異なる2つの異性体、CD23aおよびCD23bがヒトCD23遺伝子にコードされる。CD23aは、B細胞系譜から発現され、一方、CD23bは、B細胞および他のヒト細胞上に見られる。
【0002】
大部分のヒト炎症性疾患は、直接または間接的に、多様な仲介因子を産生する能力を通じて、マクロファージ活性化を伴う。大部分の抗炎症療法は、これらの細胞の機能を阻害するか、またはその産物の1つを阻害するように確立された。感染性病原体、腫瘍細胞、サイトカイン、細胞溶解物を含む、いくつかの因子が、マクロファージを活性化する。マクロファージはまた、他の細胞または細胞外分子によって、CD23などの表面受容体が連結された後に活性化されることも可能である。CD23は、多様な臓器特異的マクロファージ性細胞(例えばクッパー細胞、ミクログリア、ランゲルハンス細胞)を含む、ほぼすべてのマクロファージによって発現される。活性化マクロファージ、好酸球およびヒト上皮細胞表面上のCD23が高密度であることによって、多様な生理学的リガンドがこれらの分子を架橋し、そしてターゲット細胞の炎症機能を活性化することが可能になる。この現象は、ヒト・マクロファージによる細胞内および細胞外の寄生虫の除去を仲介することが示されてきている。CD23刺激はまた、ヒト・マクロファージ、好酸球、上皮細胞およびラット・マクロファージによる、TNF−α、IL−1、IL−6、ロイコトリエン、酸素由来種および一酸化窒素(NO)の生成も促進する。タンパク質分解後、in vivoで可溶性CD23が放出され、そして正常ヒト血清中で検出される。CD23のこの型もまた、マクロファージおよびB細胞上の対構造に連結した後、これらの細胞の活性化を含む、多様な免疫応答を誘導することも示されている。表面CD23および可溶性CD23はどちらも、炎症中に非常に重大な役割を有する。CD23またはその可溶性型の高発現は、多様なアレルギー、自己免疫、感染性疾患および他の炎症性疾患の共通のマーカーである(Aubry J.−P.ら, Nature, 358, 505−507(1992);Bonnefoy J.−Y.ら, Int. Rev. Immunol. 16, 113−128(1997);Hermann P.ら J. Cell. Biol. 144, 767−775(1999);Mossalayiら, Int. Rev. Immunol. 16, 129−146(1997))。
【0003】
CD23は、関節リウマチ(Plater−ZyberkおよびBonnefoy, Nature Medicine, vol.1, 8, 781−785(1995))、アレルギー反応(Kleinau S.ら, Journal of Immunology, 162, 4266−4270(1999))、およびIgE合成の制御(L. Flores−Romoら, Science, 261, 1038−1041(1993);Aubry J.−P.ら, Nature, 358, 505−507(1992))に非常に重大な役割を果たす。サイトカイン/CD23依存性活性化経路は、グリア細胞において、一酸化窒素シンターゼの誘導および炎症促進性仲介因子の発現に影響を及ぼす。CD23発現はまた、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)細胞生存にも必要であり(MavromatisおよびCheson, Journal of Clinical Oncology. 21:1874−1881,(2003))、そしてパーキンソン病において役割を果たす(Hunot S.ら, The Journal of Neuroscience, 19(9), 3440−3447(1999))。
発明の概要
本発明は、CD23結合性ペプチドを含む化合物であって、前記ペプチドが、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8のアミノ酸配列:
式中、
1は、Pheであるか、または存在せず;
2は、HisまたはAlaであり;
3は、Glu、Ser、Ala、Asn、Lys、またはCysであり;
4は、Asn、Phe、Gln、Pro、Ser、またはAlaであり;
5は、Trpであり;
6は、Pro、Arg、Glu、Gly、Cys、またはLysであり;
7は、Ser、Pro、Leu、Thr、Ala、Gly、Asnであるか、または存在せず;そして
8は、Phe、Glyであるか、または存在しない
を含む、前記化合物に関する。
【0004】
本発明はまた、上述のCD23結合性ペプチドの化学的に修飾されたペプチドおよびペプチド模倣体にも関する。
発明の詳細な説明
本発明は、自己免疫疾患、急性および慢性炎症性疾患、アレルギー、並びにB−CLLの予防および治療に選択的に向けられる化合物を提供する。本発明は、部分的に、CD23に結合し、そしてCD23がその天然リガンドに結合するのを阻害する、化合物の発見に基づく。CD23は、活性化マクロファージまたは上皮細胞上で発現され、そして可溶性CD23は、自己免疫疾患、炎症性慢性疾患およびアレルギーに関与するため、これらの疾患の治療および予防に、こうした化合物を使用することも可能であると考えられる。しかし、CD23の遮断は、他の受容体を通じたマクロファージの活性化を妨げない。したがって、この戦略は、現在の商業的な抗炎症性治療とは対照的に、免疫応答の全般的な阻害を生じない。本発明の主題である化合物はまた、可溶性CD23に結合するようにも設計されており、したがって、sCD23によるマクロファージの活性化もまた阻害される。
【0005】
CD23に対する抗体、その断片および誘導体、並びに炎症性疾患、自己免疫疾患またはアレルギー性疾患の治療における、その使用は、PCT出願WO96/12741およびWO99/58679に記載されてきている。しかし、調製が容易で、そして化学的経路を使用することによって産生可能であり、したがって生体混入物質の存在を回避する化合物に対する必要性が依然としてある。抗体は、免疫系を遮断し、そしてそのほとんどが免疫原性であり、こうした機構に関連する副作用を有する。したがって、免疫応答を調節可能な化合物に対する必要性が依然としてある。
【0006】
多くても2つのアミノ酸を含む、アミノ酸誘導体およびペプチド誘導体を含む化合物、並びにヒト可溶性CD23放出の阻害剤としての使用が、PCT出願WO96/02240に記載される。こうした化合物は、過剰なCD23が関連する、アレルギーおよび自己免疫疾患などの状態の治療および予防に有用である。PCT出願WO97/43249、WO01/49657、WO01/62715、WO01/85721、WO01/90100もまた、可溶性CD23形成の阻害剤、並びに自己免疫疾患、炎症およびアレルギーなどの、可溶性CD23産生と関連する状態の治療におけるその使用も開示する。しかし、これらの分子のターゲットは、本発明記載の化合物のターゲットとは異なり、そしてこれらの分子は、本発明記載の化合物とは構造が異なる。
【0007】
抗炎症性ペプチドが過去に記載されてきている。免疫グロブリン断片を模倣し、そしてFc受容体への関連免疫グロブリンの結合を遮断可能なペプチドが記載されてきている:RatcliffeおよびStanworth, (Immunol. Lett., 4, 215(1982))は、IgG aa 215−301と同一であるペプチド(Gln−Tyr−Asp−Ser−Thr−Tyr−Arg)が、ヒト単球IgG Fc受容体へのIgG結合をわずかに遮断しうることを立証している。Hamburger(Science, 189, 389(1975);US 4,171,299;US 4,161,522)は、ヒトIgE Cε3 aa 320−324由来の配列を持つペンタペプチド(Asp−Ser−Asp−Pro−Arg)が、局所皮膚アレルギー反応をおよそ90%阻害しうることを報告している。このペプチドは、続いて、ヒトにおいて、全身性アレルギー疾患を阻害することが示されている。このペプチドが、IgE Fc受容体に有意な親和性を有することもまた、立証されている(Plummerら, Fed. Proc., 42, 713(1983);Hamburger, Adv. Allergology Immunol., Pergamon Press, New York, 591−593(1980))。IgE Cε4 aa 476−481由来のヘキサペプチドが、IgE Fc受容体へのIgE結合を遮断することが報告されてきている(Hamburger, Immunology, 38, 781(1979);US 4,161,522)。IgE FcおよびIgE Fc受容体へのIgGおよびIgE免疫複合体の結合を遮断しうるペプチドが、US 4,579,840に記載されている。ヒトIgEのCε3 aa 320−324部分に構造的類似性を持つペプチドが、アラキドン酸が仲介する炎症経路に直接相互作用し、そしてこうした炎症を減少させることが立証されている(US 4,816,449)。
【0008】
しかし、これらのペプチドは、本発明記載のものとは構造が異なり、そしてこれらのペプチドはいずれも、CD23に親和性を有するとは記載されていない。
本発明は、CD23に結合可能な新規のそして有用なペプチドの配列を記載する。これらは、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、アレルギー、および哺乳動物免疫系に仲介されるものなどの他の炎症状態に関連する炎症反応を減少させることが可能である。本発明記載のペプチドは、細胞の免疫応答を調節することが可能である。これらは、抗体より免疫原性でなく、合成産物として入手可能であり、したがって、生体混入物質を含まない。
【0009】
ペプチドに取り込み可能なアミノ酸には、一般的に存在するアミノ酸すべてが含まれる。当該技術分野で一般的な慣例と同様、本出願全体で、アミノ酸の2つの名称が交換可能に用いられる:アラニン=Ala(A);アルギニン=Arg(R);アスパラギン酸=Asp(D);アスパラギン=Asn(N);システイン=Cys(C);グルタミン酸=Glu(E);グルタミン=Gln(Q);グリシン=Gly(G);ヒスチジン=His(H);イソロイシン=Ile(I);ロイシン=Leu(L);リジン=Lys(K);メチオニン=Met(M);フェニルアラニン=Phe(F);プロリン=Pro(P);セリン=Ser(S);トレオニン=Thr(T);トリプトファン=Trp(W);チロシン=Tyr(Y);バリン=Val(V)。
【0010】
いわゆる稀なまたは修飾されたアミノ酸のいずれもまた、本発明に取り込むことも可能であり、これらには、限定されるわけではないが、以下が含まれる:2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、ベータ−アラニン(ベータ−アミノプロピオン酸)、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸(ピペリジン酸)、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2'−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン(ザルコシン)、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、2−ナフチルアラニン、トレオニノール、テトラヒドロイソキノリン3−カルボン酸、4−インドイルアラニン、ベータ−トリプトファン、シクロ−ロイシン。
【0011】
本発明の組成物は、生物学的に保護されるように修飾されたペプチドを含むことも可能である。生物学的に保護されたペプチドは、ヒト被験者に投与された際、保護されていないペプチドに勝る、特定の利点を有し、そしてUS 5,028,592(本明細書に援用される)に開示されるように、保護されたペプチドはしばしば、薬理活性の増加を示し、本発明の場合もこれが当てはまることが見出された。
【0012】
したがって、本発明はまた、単数または複数のアシル化ペプチド、および好ましくはN末端でアシル化されたペプチドを含む組成物も含む。これに関連して、実質的に、いかなるアシル基も使用可能であるが、所定のペプチドのN末端にアセチル基(Ac)を付加することが好ましい。阻害性ペプチド組成物はまた、C末端でアミド化された、すなわちNH2基が付加されたペプチド(単数または複数)を含むことも可能である。特に好ましい態様において、アシル化N末端およびアミド化C末端残基両方を有するペプチドが好ましい。本発明記載のペプチドの適切な化学的誘導体には、RCO−型のN−アルファアシル置換基である、デス−アルファ・アミノペプチド(式中、Rは、1〜50、優先的には1〜8の炭素原子を含む、直鎖、分枝または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル基である)が含まれる。Rはまた、ポリオースまたはタンパク質の残基であることも可能である。好ましいN−アルファ・アシル置換基はアセチル基である。こうしたアミノ末端置換基は、in vivo環境において、ペプチドの酵素分解経過を防止するかまたは遅延させることによって、ペプチド活性を増加させうる。
【0013】
本発明のペプチドの他の化学的誘導体には、C末端アルキルオキシ、アルキルチオ、またはアルキルアミノ置換基が含まれ、ここでカルボキシル基は、−COOR、−COSR、−CONH2、−CONHR(式中、Rはペプチドのin vivo浸透を促進し、そしてターゲットへの到達を促進するように選択される基である)に置き換えられる。例えば、Rは、1〜50、好ましくは8〜50の炭素原子を含む、直鎖、分枝または環状の長鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル基であることも可能であり、Rはまた、ポリオースまたはタンパク質の残基であることも可能である。
【0014】
本発明のペプチドのさらなる化学的誘導体には、ペプチドの検出を可能にする置換基、特に緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光基を所持するものが含まれる(DalyおよびMcGrath, Pharmacology and therapeutics, 100:101−118, (2003))。
【0015】
優先的には、本発明にしたがって、ペプチドが作成されているアミノ酸は、L−鏡像異性体である。しかし、配列の1以上のアミノ酸が、活性調節を伴わずにそのD−鏡像異性体で置き換えられることも可能である。これもまた、酵素分解を防止するかまたは減少させるであろう。
【0016】
本発明は、CD23結合性ペプチドを含む化合物であって、前記ペプチドが、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8のアミノ酸配列:
式中、
1は、Pheであるか、または存在せず;
2は、HisまたはAlaであり;
3は、Glu、Ser、Ala、Asn、Lys、またはCysであり;
4は、Asn、Phe、Gln、Pro、Ser、またはAlaであり;
5は、Trpであり;
6は、Pro、Arg、Glu、Gly、Cys、またはLysであり;
7は、Ser、Pro、Leu、Thr、Ala、Gly、Asnであるか、または存在せず;そして
8は、Phe、Glyであるか、または存在しない
を含む、前記化合物に関する。
【0017】
好ましい態様において、CD23結合性ペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択される。
本明細書において、用語、アミノ酸は、天然存在アミノ酸、並びに非天然存在アミノ酸を意味する、最も広い意味で用いられ、アミノ酸類似体を含む。したがって、アミノ酸に対する言及には、(L)−アミノ酸、並びに(D)−アミノ酸、化学的修飾アミノ酸、天然に存在する非タンパク新生アミノ酸、例えばノルロイシン、ホモアルギニン、オルニチン、2’ナフチルアラニン、テトラヒドロイソキノリン(tetrahydrolsoquinoline)−3−カルボン酸、4’インドリルアラニン、トレオニノール、(S)3−アミノ4−(3−インドイル)酪酸、1−アミノシクロペンタン−1−カルボン酸、ベータアラニン、ホモプロリン、テトラヒドロノルハルマン(tetrahydronorharman)−3−カルボン酸、シトルリン、2,3−ジアミノプロピオン酸、4’チアゾイルアラニン、3−(イマダゾール−4−イル)プロピオン酸、1−N−メチルヒスチジン、N−メチルグリシン、1−(アミノメチル)シクロペンタン−1−カルボン酸、およびアミノ酸に特徴的であることが当該技術分野に知られる特性を有する化学的合成化合物が含まれる。本明細書において、用語、タンパク新生は、細胞において、代謝経路を通じて、アミノ酸がタンパク質に取り込まれうることを示す。本発明にしたがって使用可能な化学的修飾アミノ酸の中には、例えば、ペプチドまたはアミノ酸の検出を可能にするであろう蛍光基を所持するアミノ酸(例えばGFP)、および中央のCがSi原子またはSn原子に置き換えられているアミノ酸が含まれる。
【0018】
本発明はまた、1以上の保存的アミノ酸置換を含有することを除いて、上記アミノ酸配列(単数または複数)を含むペプチドにも関する。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸ファミリーが当該技術分野に定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖を持つアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、配列番号1〜10のアミノ酸配列に少なくとも約83%同一(すなわち6アミノ酸のうち5が同一)であるアミノ酸配列を含むポリペプチドは、本発明の範囲内である。
【0019】
本発明はまた、上記ペプチドのペプチド模倣体にも関する。「ペプチド模倣体」は、ペプチドの生物学的活性を模倣するが、化学的性質がもはやペプチド性ではない化合物である。ペプチド模倣体はもはやいかなるペプチド結合(すなわちアミノ酸間のアミド結合)も含有しなくてもよい化合物である。用語、ペプチド模倣体は、本明細書において、性質がもはや完全にはペプチド性でない化合物をその意味に含み、例えばシュードペプチド、セミペプチド、およびペプトイドを含む。完全にまたは部分的に非ペプチドであっても、本発明記載のペプチド模倣体は、ペプチド模倣体の基となったペプチド中の活性基の三次元配置を緊密に近似する反応性化学部分の空間配置を提供する。この類似の活性部位配置(geometry)の結果、ペプチド模倣体は、生物学的系に対して、ペプチドの生物学的活性に類似の影響を有する。
【0020】
本発明は、本発明記載の生物学的活性ペプチドの活性を模倣する類似体であるペプチド模倣体組成物を含み、すなわち該ペプチド模倣体はCD23に結合可能である。本発明のペプチド模倣体は、好ましくは、三次元形状および生物学的活性の両方が、上記ペプチドに実質的に類似である。実質的類似性は、CD23と相互作用するペプチド中の基の配置関係が保存され、そして同時に、該ペプチド模倣体が、CD23分子への他の分子の結合に干渉するであろうことを意味する。
【0021】
ペプチド自体よりもペプチド模倣体を用いる利点があり、これはいくつかのペプチドが2つの望ましくない特性:(1)劣った生物学的利用能;および(2)短い作用期間を示すためである。関与する化合物が経口活性であり、そしてかつ長い作用期間を有するのに十分に小さいため、ペプチド模倣体は、これらの2つの大きな障害を克服する手段を提供する。ペプチドを非経口投与するのに比較して、ペプチド模倣体は経口投与可能であるため、かなりのコスト節約および患者コンプライアンスの改善もまた伴う。さらに、ペプチド模倣体は、ペプチドよりも産生するのにはるかに安価である。最後に、ペプチドには、ペプチド模倣体では経験することのない、安定性、保存および免疫反応性に関連する問題がある。
【0022】
したがって、上記ペプチドは、類似の生物学的活性を持ち、そしてしたがって類似の療法的有用性を持つこうした小さい化学的化合物の開発に有用性を有する。ペプチド模倣体を開発する技術は、慣用的である。したがって、ペプチド模倣体が元来のペプチドに類似の構造、そしてしたがって類似の生物学的活性を採用するのを可能にする、非ペプチド結合で、ペプチド結合を置き換えることも可能である。アミノ酸の化学基を、類似の構造の他の化学基で置き換えることによって、さらなる修飾を行うこともまた可能である。未結合であるかまたはCD23に結合したかいずれかの、元来のペプチドの三次構造を、NMR分光分析、結晶学、および/またはコンピュータ補助分子モデリングにより、決定することによって、ペプチド模倣体の開発を補助することも可能である。これらの技術は、元来のペプチドより高い効能および/または優れた生物学的利用能および/または優れた安定性を持つ新規組成物の開発を補助する(すべて本明細書に援用される、Dean, BioEssays, 16:683−687(1994);CohenおよびShatzmiller, J. Mol. Graph., 11:166−173(1993);WileyおよびRich, Med. Res. Rev., 13:327−384(1993);Moore, Trends Pharmacol. Sci., 15:124−129(1994);Hruby, Biopolymers, 33:1073−1082(1993);Buggら, Sci. Am., 269:92−98(1993))。潜在的なペプチド模倣体化合物が同定されたならば、該化合物を合成し、そして本明細書記載の方法、またはCD23活性を評価するのに適した別のCD23結合アッセイを用いて、アッセイすることも可能である。
【0023】
本発明記載のペプチド模倣体において、1以上のアミド連結(−CO−NH−)を:−CH2NH−、CH2S−、−CH2CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−および−CH2SO−などの、アイソスター(isostere)である別の連結で置き換えることも可能である。当該技術分野に知られる方法によって、この置換を行うことも可能である(例えば、Spatola, Vega Data, Vol.1, 第3刷(1983);Spatola, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids Peptides and Proteins, Weinstein監修, Marcel Dekker, New York, p.267(1983);Morley. J.−S., Trends Pharm. Sci., 463−468(1980);Hudsonら, Int. J. Pept. Prot. Res. 14, 177−185 (1979);Spatolaら, Life Sci., 38, 1243−1249(1986);Hann, J. Chem. Soc. Perkin Trans. I 307−314(1982);Almquistら, J. Med. Chem., 23, 1392−1398(1980);Holladayら, Tetrahedron Lett. 24, 4401−4404(1983);およびHrubyら, Life Sci. 31, 189−199(1982)を参照されたい)。
【0024】
したがって、上記方法の使用を通じて、本発明は、これらのペプチド模倣体化合物の基となったペプチドに比較して、療法活性増進を示すペプチド模倣体化合物を提供する。ペプチドの生物学的活性および類似の三次元構造を有するペプチド模倣体化合物が、本発明に含まれる。当業者には、修飾ペプチドいずれかから、または先のセクションに記載する修飾を1より多く持つペプチドから、ペプチド模倣体を生成可能であることが容易に明らかであろう。さらに、療法化合物としての有用性に加えて、本発明のペプチド模倣体を、さらにより強力な非ペプチド性化合物の開発にさらに使用してもよいことが明らかであろう。好ましい態様において、本発明は、表1または表2に列挙するペプチドまたはペプチド模倣体からなる群より選択されるペプチドまたはペプチド模倣体を提供する。特に好ましい態様において、本発明は、構造Ac−w−n−CO2Hを含むペプチド模倣体を提供する。
【0025】
先のセクションに記載するペプチド由来のペプチド模倣体の特定の例を、以下の表1および表2に提示する。これらの例は例示であり、そして他の修飾またはさらなる修飾に関して限定しない。
還元アイソスター・シュードペプチド結合を持つペプチド
プロテアーゼは、ペプチド結合に作用する。したがって、シュードペプチド結合によってペプチド結合を置換すると、タンパク質分解に対する抵抗性が与えられることになる。一般的にペプチド構造および生物学的活性に影響を与えない、いくつかのシュードペプチド結合が記載されてきている。還元アイソスター・シュードペプチド結合は、酵素切断に対する安定性を増進させ、生物学的活性の損失がまったくまたはほとんどないことが知られる、適切なシュードペプチド結合である(本明細書に援用される、Couderら, Int. J. Peptide Protein Res., 41:181−184(1993))。したがって、これらのペプチドのアミノ酸配列は、1以上のペプチド結合が、アイソスター・シュードペプチド結合に置換されていることを除いて、上述のL−アミノ酸ペプチドの配列と同一であることも可能である。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されるが、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する抵抗性を与えるためである。1以上の還元アイソスター・シュードペプチド結合を含むペプチドの合成が当該技術分野に知られる(本明細書に援用される、Couderら, Int. J. Peptide Protein Res., 41:181−184(1993))。
逆反転(retro−inverso)シュードペプチド結合を持つペプチド
ポリペプチドの立体化学を、ポリペプチド主鎖に関するアミノ酸残基の側鎖のトポケミカル配置に関して記載することも可能であり、これは、アミノ酸残基および結合する残基のa−炭素原子の間のペプチド結合によって定義される。さらに、ポリペプチド主鎖は、異なる末端およびしたがって方向を有する。
【0026】
大部分の天然存在アミノ酸は、L−アミノ酸である。天然存在ポリペプチドは、大部分、L−アミノ酸で構成される。
D−アミノ酸は、L−アミノ酸の鏡像異性体であり、そして本明細書において、反転ペプチド(inverso peptides)と称されるペプチド、すなわち天然ペプチドのN末端からC末端の配列に対応するが、L−アミノ酸でなく、D−アミノ酸で構成されているペプチドである。部分的反転ペプチドは、L−アミノ酸およびD−アミノ酸の両方で構成されているものである。
【0027】
逆ペプチド(retro peptides)はL−アミノ酸で構成され、アミノ酸残基は天然ペプチド配列と正反対(opposite)の方向で集合している。
天然存在ポリペプチドの逆反転修飾は、対応するL−アミノ酸のものと正反対のa−炭素立体化学を持つアミノ酸、すなわち天然ペプチド配列に対して逆転した(reverse)順序のD−またはD−アロ−アミノ酸の合成集合を伴う。したがって、逆反転類似体は、逆転した末端および逆転した方向のペプチド結合を有し、一方、天然ペプチド配列におけるような側鎖のトポロジーをほぼ維持する。
【0028】
部分的逆反転ペプチド類似体は、配列の一部のみが逆転し、そして鏡像異性アミノ酸残基で置換されている、ポリペプチドである。こうした類似体の逆反転部分は、逆転したアミノ末端およびカルボキシル末端を有し、逆反転部分に隣接するアミノ酸残基は、それぞれ、側鎖類似置換ジェミナル・ジアミノメタンおよびマロネートで置換されている。
【0029】
逆反転ペプチド類似体の合成法が記載されてきている(Bonelli, F., Pessi, A. & Verdini, A. S. Int. J. Peptide Protein Res., 24, 553−556(1984);Verdini, A. S. & Viscomi, G. C. J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 697−701(1985))。部分的逆反転ペプチド類似体の固相合成法もまた、知られる(Pessi, A., Pinori, M., Verdini, A. S. & Viscomi, G. C. 欧州特許97994−B, 1987年9月30日(8739))。
【0030】
したがって、本発明で使用する組成物は、すべてがL−アミノ酸であるか、すべてがD−アミノ酸であるか、またはその混合物を含むペプチドを含むことも可能である。完全にD−アミノ酸で構成されるペプチドが、強力な阻害活性を有するという知見は、こうしたペプチドが、ヒト体内で天然に見られるプロテアーゼに対して抵抗性であることが知られ、そしてより免疫原性でなく、そしてしたがってより長い生物学的半減期を有すると期待されうることから、特に重要である。この修飾にしたがって、1以上のアミノ酸残基がD−鏡像異性体アミノ酸で置換されていることを除いて、ペプチドのアミノ酸配列は、上述のL−アミノ酸ペプチドの配列(例えば配列番号1〜10)に同一であることも可能である。例えば、最もN末端のペプチド結合が、反転または逆反転していることも可能であり、これはこの結合の反転または逆反転が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する抵抗性を増加させるであろうためである。さらに、すべてがL−鏡像異性体(enantiomer)である、開示するペプチドいずれかの逆反転型(すべてがD−鏡像異性体であるもの)は、逆転したN末端およびC末端を有するであろう。例えば、すべてがL−鏡像異性体であるペプチド、NH2−HENWPS−COOHの逆反転型は、NH2−spwneh−COOH(当該技術分野で一般的な慣例と同様、アミノ酸のD−鏡像異性体を小文字で示す)であろう。1以上の還元逆反転シュードペプチド結合を持つペプチドの合成が当該技術分野に知られる(Dalpozzoら Int J Pept Protein Res. 41(6):561−6(1993))。
ペプトイド誘導体
ペプチドのペプトイド誘導体は、生物学的活性にとって重要な構造決定基を保持しつつ、なおペプチド結合を除去し、それによってタンパク質分解に対する抵抗性を与える、修飾ペプチドの別の型に相当する(本明細書に援用される、Simonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:9367−9371(1992))。ペプトイドは、N置換グリシンのオリゴマーである。各々、天然アミノ酸の側鎖に対応する、いくつかのN−アルキル基が記載されてきている(Simonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:9367−9371(1992))。さらに、すべてのアミノ酸を置換しなければならないのではない。例えば、N末端残基が置換される唯一のものであることも可能であるし、またいくつかのアミノ酸を、対応するN置換グリシンで置換することも可能である。
【0031】
本発明の配列を含み、そしてCD23分子に結合可能な、より長いペプチドもまた、本発明の範囲内に含まれる。より長いペプチドは、配列番号1〜10を含む、本発明のペプチドのN末端またはC末端のいずれか、あるいは両方に結合する、いかなるアミノ酸配列を含むことも可能である。優先的には、これらは、全部で、約100以下のアミノ酸、より適切には約70以下のアミノ酸、好ましくは約50以下のアミノ酸、より好ましくは約30以下のアミノ酸、そしてさらにより好ましくは約15以下のアミノ酸を有する。上述のように、最低の長さは約6である。
【0032】
本発明記載のペプチドまたはペプチド模倣体化合物が、CD23に結合する能力を、実施例4〜7に詳細に記載する試験によって、評価することも可能である。しかし、ペプチドまたはペプチド模倣体化合物は、ほぼ10-6M未満、好ましくは10-6〜10-11Mの間のKdの特異的結合活性を有するならば、本発明にしたがって、CD23に結合すると見なされる。
【0033】
本発明記載の好ましいペプチド化合物は、配列番号1〜10:
Phe−His−Glu−Asn−Trp−Pro−Ser(配列番号1);
Phe−His−Glu−Phe−Trp−Pro−Thr(配列番号2);
Phe−His−Ser−Gln−Trp−Pro−Asn(配列番号3);
Phe−His−Glu−Asn−Trp−Pro(配列番号4);
Phe−His−Glu−Asn−Trp−Pro−Thr(配列番号5);
Phe−His−Glu−Gln−Trp−Pro−Ser(配列番号6);
His−Glu−Asn−Trp−Pro−Ser(配列番号7);
His−Lys−Asn−Trp−Pro−Ser(配列番号8);
His−Glu−Asn−Trp−Pro−Ser−Phe(配列番号9);および
Phe−His−Lys−Pro−Trp−Arg−Ala(配列番号10)
に対応するものである。
【0034】
やはり本発明の範囲内に含まれるのは、CD23分子に結合可能であるという条件で、その薬学的に許容しうる塩、これらのペプチドの機能する断片、配列番号1〜10のペプチドとの化学的相同性を持つペプチド、およびこれらのペプチドの他の化学的誘導体である。
【0035】
別の態様において、本発明のペプチドおよびペプチド模倣体は、環状である。環状ペプチドまたはペプチド模倣体は、本明細書において、1つのアミノ酸残基上の置換基が、ペプチド断片の別のアミノ酸残基上の置換基に連結されている、ペプチドまたはペプチド模倣体と定義される。連結は、ペプチド/ペプチド模倣体中の2つのアミノ酸残基の側鎖間、ペプチド/ペプチド模倣体の側鎖およびN末端間、ペプチド/ペプチド模倣体の側鎖およびC末端間、またはペプチド/ペプチド模倣体のN末端およびC末端間のいずれかである。したがって、アミド結合は、残基のカルボキシル基および別の残基のアミノ基間で形成され;エステル結合は、残基のカルボキシル基およびヒドロキシル含有残基のヒドロキシル基間で形成され;ジスルフィドは、スルフィドリル基含有アミノ酸残基から形成され;そしてランチオニン架橋は、対応するジスルフィドの脱硫によって形成される。
【0036】
上述のように形成されるアミド、エステル、ジスルフィドまたはランチオニン結合から生じる架橋中の原子の数は、側鎖の長さおよび結合の種類(すなわちアミド、エステル、ジスルフィドまたはランチオニン)に応じて多様であろう。架橋は、好ましくは、2〜9原子、より好ましくは2〜4原子を含む。架橋中に含有される原子の最も好ましい数は4であり、この架橋は、好ましくはグルタミン酸の側鎖カルボン酸およびN末端残基間のアミド結合を含む。
【0037】
本発明の範囲内にやはり含まれるのは、配列番号1〜10記載のペプチドの薬学的に許容しうる塩、これらのペプチドの機能する(すなわちCD23結合性)断片、配列番号1〜10記載のペプチドと化学的相同性を持つペプチド、およびこれらのペプチドの機能する化学的誘導体であり、特にその類似体は、C末端アミノ酸がアミド化されて、−COOHの代わりにCONH2基を提供するものである。
【0038】
本明細書において、用語、塩は、ペプチド鎖のカルボキシル基の塩、並びにポリペプチド鎖のアミノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、無機塩基または有機塩基いずれを用いて形成されることも可能である。無機塩には、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウム塩などのアルカリ金属塩;例えばカルシウム、バリウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類塩;並びにアンモニウム、第一鉄、第二鉄、亜鉛、亜マンガン、アルミニウム、マンガン塩などが含まれる。有機アミンを用いた塩には、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ(n−プロピル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、カフェイン、プロカイン等で形成されるものが含まれる。
【0039】
酸付加塩には、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸を用いた塩;および例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸等の有機酸を用いた塩が含まれる。
【0040】
本発明記載のペプチドの機能する断片は、配列番号1〜10のアミノ酸の1以上が欠失され、なおCD23分子に結合する能力を保持している、配列番号1〜10に対応するペプチドである。本発明記載のペプチドの好ましい機能する断片は、最大2アミノ酸が欠失されているものである。さらにより好ましいのは、1つのアミノ酸のみが欠失している、そして特にX1が欠失しているものである。本発明の範囲にやはり含まれるのは、配列番号1〜10記載のペプチドの相同体であるペプチドである。用語、相同体は、本明細書において、CD23に結合するという条件で、配列番号1〜10記載の配列と共通のアミノ酸を有するペプチドを指す。
【0041】
本発明の範囲にやはり含まれるのは、
a)配列番号1〜10のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
b)配列番号1〜10のアミノ酸配列に、少なくとも約83%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
c)配列番号1〜10のアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および
d)配列番号1〜10のアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドである。
【0042】
本発明記載のペプチドは、例えば固相ペプチド合成を含む、当該技術分野に周知の方法によって、化学的に合成可能である。これらはまた、ペプチドをコードする組換え核酸分子から発現されることも可能である。したがって、本発明はまた、上述のような配列番号1〜10に対応するペプチド、これらのペプチドの機能する断片、配列番号1〜10記載のペプチドと化学的相同性を持つペプチド、並びに配列番号1〜10記載のペプチド配列を含むペプチドおよびタンパク質をコードする、単離核酸分子も提供する。
【0043】
本発明記載の、CD23に結合するであろうペプチドは、CD23に仲介される障害の治療または予防のための薬剤製造に使用可能である。こうした障害には、限定されるわけではないが、関節炎、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、糖尿病、ブドウ膜炎、皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病、シェーグレン症候群、アレルギー、アレルギー性喘息、内因性喘息、急性喘息再燃、鼻炎、湿疹、子宮内膜症、移植片対宿主病(GVH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、膵島炎、気管支炎(特に慢性気管支炎)、糖尿病(特に1型糖尿病)、B−CLLおよび他のB細胞悪性腫瘍、B細胞機能不全に関連する疾患、並びにパーキンソン病が含まれる。
【0044】
本発明記載の、CD23に結合する、1つまたはいくつかのペプチドを含有する薬剤組成物もまた、本発明の範囲内に含まれる。こうした薬剤組成物はまた、他の抗炎症性分子を含む、他の療法活性剤も含むことも可能である。CD23結合性ペプチドは、通常、無菌の薬学的に許容しうる組成物の一部として供給されるであろう。この薬剤組成物は、患者に投与する所望の方法に応じて、適切な型いずれであることも可能である。本発明記載の組成物は、非経口的に、例えば静脈内、筋内、直腸内、膣内、または皮下投与することも可能であるし、スプレーによって、液滴または座薬として、経口投与または鼻投与することも可能である。これらを水または油中の溶液として、あるいはエマルジョン中に配合することも可能である。迅速なペプチド分解を防止する配合が好ましい。こうした配合には、すべての型の被包が含まれ、そして:微小球体およびリポソームに限定されない。投与様式およびペプチド安定性と適合するという条件で、適切なキャリアーまたは希釈剤いずれを使用することも可能である。賦形剤には:水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、保存剤、安定化剤、可溶化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、着臭剤、塩、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤が含まれる。
【0045】
本発明記載のCD23結合性ペプチドの適切な投薬量は、治療しようとする疾患または障害、投与経路、並びに治療しようとする個体の年齢および体重などの要因に応じて、多様であろう。
【0046】
本発明の組成物に用いる化合物の実際の投薬量は、用いる特定の複合体、配合する特定の組成物、投与様式、並びに治療しようとする特定の部位、宿主および疾患に応じて多様であろう。剤の実験データを考慮し、慣用法を用いて、当業者が、所定の条件セットに対する最適な投薬量を決定することも可能である。経口投与には、一般的に使用される典型的な1日用量は、約0.001〜約1000mg/kg体重、より好ましくは約0.01〜約100mg/kg体重であり、適切な間隔で治療単位を反復する。プロドラッグの投与は、典型的には、完全に活性な型の重量レベルと化学的に同等な重量レベルで投薬する。
【0047】
薬剤組成物を調製するために一般的に知られる方法を用いて、例えば、混合、溶解、整粒、ドラジェー作成、粉末化(levigating)、乳化、被包化、捕捉または凍結乾燥などの慣用的技術を用いて、本発明の組成物を製造することも可能である。1以上の生理学的に許容しうるキャリアーを用いて、慣用的な方式で薬剤組成物を配合することも可能である。用語、キャリアーは、媒体、原体(bulk)および/または薬剤組成物に使用可能な型を提供する、薬剤組成物配合中に用いる非毒性物質を意味する。キャリアーは、賦形剤、安定化剤、または水性pH緩衝溶液などの物質を1以上含むことも可能である。生理学的に許容しうるキャリアーの例には、リン酸、クエン酸、および他の有機酸を含む水性または固体緩衝成分;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICSTMなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0048】
本発明は、その範囲内に、生物学的試料中のCD23を検出するためのアッセイおよびアッセイキットを含み、該アッセイは以下の:
a)本発明のポリペプチドで試料を処理し;そして
b)試料に結合したポリペプチドの量を検出する
工程を含む。
【0049】
結合したポリペプチドを検出する前に、未結合ポリペプチドをまず除去することによって、上記工程(b)を促進することも可能であるが、未結合ポリペプチドの除去は、結合したポリペプチドの量を決定するのに必要な必須条件ではない。
【0050】
生物学的試料には、限定されるわけではないが、生物学的液体、組織抽出物、Bリンパ球、単球/マクロファージ、好酸球、血小板、T細胞、上皮細胞などの新鮮に採取した細胞が含まれる。ペプチドおよびペプチド模倣体のCD23に対する親和性が高いため、ペプチドおよびペプチド模倣体を、ELISAによるCD23検出、または例えば吸収カラム上での透析による血清sCD23クリアランスに用いることも可能である。
【0051】
ニトロセルロースなどの固相支持体、あるいは細胞、細胞粒子または可溶性タンパク質を固定可能な他の固体支持体で、生物学的試料を処理することも可能である。周知の支持体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンアミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、ガブロ(gabbros)および磁鉄鉱が含まれる。支持体材料は、カップリングした分子が、ポリペプチドに結合可能である限り、実質的にいかなる可能な構造立体配置を有することも可能である。したがって、支持体またはキャリアー立体配置は、ビーズにおけるように球状であるか、試験管内部表面または棒の外表面におけるように筒状であることも可能である。あるいは、表面は、シート、試験片等のように平面であることも可能である。当業者は、抗体または抗原結合に適した多くの他のキャリアーを知っているであろうし、また日常的な実験を用いることによって、これらを確かめることも可能であろう。
【0052】
1つの態様において、試料は細胞または細胞溶解物を含む。
結合を検出する方法は、例えば、標識CD23結合性ペプチドまたはリガンドの使用および固相プレートアッセイなどの検出技術;免疫沈降;ウェスタンブロッティング、および蛍光アッセイの使用を含むことも可能である。こうした技術はよく確立されており、そして一般の当業者の技術的専門知識の範囲内である。検出可能なマーカーをポリペプチドに共有結合させることによって、ポリペプチドを標識する。こうしたマーカーには、限定されるわけではないが、蛍光部分、ビオチン部分、放射性部分、および発光部分が含まれる。これに関連して、本発明は、ポリペプチドが検出可能マーカーで標識されている、本発明のポリペプチドを含む。
【0053】
本発明はまた、その範囲内に、生物学的試料における、CD23に関連する状態または疾患に関する診断試験であって:
a)本発明のポリペプチドと生物学的試料を、該ポリペプチドがCD23に結合し、そして複合体を形成するのに適した条件下で合わせ;そして
b)複合体を検出する、ここで複合体の存在は、生物学的試料におけるCD23の存在と相関する
工程を含む、前記方法も含む。
【0054】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドも含む。好ましい態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号11〜20の配列:
配列番号11 5’−TTT CAT GAG AAT TGG CCT TCG−3’
配列番号12 5’−TTT CAT GAG TTT TGG CCT ACC−3’
配列番号13 5’−TTT CAT TCG CAG TGG CCT AAC−3’
配列番号14 5’−TTT CAT GAG AAT TGG CCT−3’
配列番号15 5’−TTT CAT GAG AAT TGG CCT ACC−3’
配列番号16 5’−TTT CAT GAG CAG TGG CCT TCG−3’
配列番号17 5’−CAT GAG AAT TGG CCT TCG−3’
配列番号18 5’−CAT AAG AAT TGG CCT TCG−3’
配列番号19 5’−CAT GAG AAT TGG CCT TCG TTT−3’
配列番号20 5’−TTT CAT AAG CCT TGG AGG GCC−3’
を有する。
【0055】
本発明の範囲内にやはり含まれるのは、配列番号11〜20のポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列である。
配列番号11〜20は、配列番号1〜10のアミノ酸配列をコードする核酸配列の代表である。こうした核酸配列がRNA、DNAまたはどちらかのハイブリッドであることも可能であることが本発明の範囲内である。さらに、遺伝暗号が縮重している、すなわちアミノ酸が1より多いコドンによってコードされることも可能であることがよく認識される。縮重コドンは、同じアミノ酸残基をコードするが、異なるヌクレオチド・トリプレットを含有する。したがって、本発明のアミノ酸配列をコードする所定のポリヌクレオチド配列に関して、調節剤をコードする多くの縮重ポリヌクレオチド配列があるであろう。これらの縮重ポリヌクレオチド配列は、本発明の範囲内と見なされる。
【0056】
さらに、当業者は、異なる生物、細胞、および細胞区画が、異なる遺伝暗号を利用可能であることも認識するであろう。したがって、単一のポリヌクレオチド配列は、細胞背景に応じて、異なるポリペプチドをコードすることも可能である。したがって、標準的遺伝暗号に加えて、非標準遺伝暗号にコードされるポリペプチドもまた、本発明の範囲内と見なされる。これらの非標準遺伝暗号には、限定されるわけではないが、脊椎動物ミトコンドリア暗号、酵母ミトコンドリア暗号、カビ、原生動物、および腔腸動物のミトコンドリア暗号、マイコプラズマ/スピロプラズマ暗号、無脊椎動物ミトコンドリア暗号、繊毛虫、ダシクラダシアン(dasycladacean)およびヘキサミタ(hexamita)核暗号、棘皮動物ミトコンドリア暗号、ユープロチド(euplotid)核暗号、細菌および植物のプラスチド暗号、代替酵母核暗号、ホヤ類ミトコンドリア暗号、扁形動物ミトコンドリア暗号、ブレファリスマ(blepharisma)核暗号、クロロフィセアン(chlorophycean)ミトコンドリア暗号、吸虫ミトコンドリア暗号、セネデスムス・オブリクス(scenedesmus obliquus)ミトコンドリア暗号、およびトラウストキトリウム(thraustochytrium)ミトコンドリア暗号が含まれる。
【0057】
本発明の範囲内にやはり含まれるのは、本発明のポリヌクレオチドに機能可能であるように連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドである。機能可能であるように連結された、は、機能的関連を有するように配置されることを意味する。
【0058】
発現ベクターに関しては、用語、機能的に連結された、は、単数または複数の所望の遺伝子が、該遺伝子(単数または複数)の十分な発現を提供するように、転写および翻訳を調節するシグナルに関して適切に配置されるように、こうした遺伝子が挿入されることを意味する。発現ベクターは、この中に所望の遺伝子を挿入可能であり、そして宿主細胞において、挿入された遺伝子の発現を指示する転写および翻訳シグナルを含有する、人工的DNA配列、または人工的に修飾されている天然存在DNA配列である。
【0059】
本発明の範囲内にやはり含まれるのは、本発明の組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞である。
本発明の範囲内にやはり含まれるのは、本発明の組換えポリヌクレオチドを含むトランスジェニック生物である。トランスジェニック動物は、ヒトの操作によって、動物に対して天然ではない1以上の遺伝子が導入されている動物である。
【0060】
本発明の範囲内にやはり含まれるのは、本発明のポリペプチドを産生するための方法であって:
a)組換えポリヌクレオチドで細胞を形質転換し、そして該組換えポリヌクレオチドは本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能可能であるように連結されたプロモーター配列を含み、そして
b)ポリペプチドの発現に適した条件下で、該細胞を培養し、そして
c)こうして発現されたポリペプチドを回収する
ことを含む、前記方法である。
【0061】
1つの態様において、ポリペプチドは、配列番号1〜10の配列を含む。
本発明のポリペプチドは、組換え技術法によって調製されるか、天然供給源から単離されるか、または合成的に調製されることも可能であり、そして原核または真核起源であることも可能である。本発明のポリペプチドは、非グリコシル化型であることも、また翻訳に続いて修飾されることも可能である。こうした修飾には、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、メチル化、イソプレニル化、およびパルミトイル化が含まれる。グリコシル化ポリペプチドは、哺乳動物細胞において産生される。組換えDNA技術を用いて、ポリペプチドをコードする核酸を適切なベクターに挿入し、これを適切な宿主細胞に挿入する。生じた宿主細胞から産生されるポリペプチドを回収し、そして精製する。ポリペプチドは、アミノ酸組成および配列、並びに生物学的活性によって特徴付けられる。
【0062】
上に引用する特許および刊行物はすべて、本明細書に援用される。
(実施例1)
ファージディスプレイ
ファージディスプレイは、ペプチドまたはタンパク質が、バクテリオファージのコートタンパク質との融合体として発現され、ファージビリオンの外表面上に、融合されたタンパク質のディスプレイを生じ、一方、融合体をコードするDNAはビリオン内に宿する、選択技術を記載する。ファージディスプレイは、ランダムペプチド配列の膨大なライブラリーと、各配列をコードするDNAの間に物理的連結を生成し、パニングと呼ばれるin vitro選択法によって、多様なターゲット分子(抗体、酵素、細胞表面受容体など)に対するペプチドリガンドの迅速な同定を可能にするため、用いられてきた。最も単純な型では、ターゲットでコーティングされたプレート(またはビーズ)と、ファージディスプレイされたペプチドのライブラリーをインキュベーションし、未結合ファージを洗い流し、そして特異的に結合したファージを溶出することによって、パニングを行う。(あるいは、ファージを溶液中でターゲットと反応させ、その後、ターゲットに特異的に結合するプレートまたはビーズ上で、ファージ−ターゲット複合体を親和性捕捉することも可能である。)次いで、溶出されたファージを増幅し、そしてパニングおよび増幅のさらなる周期を通じて、最も堅固に結合する配列を支持するファージプールを続いて濃縮する。3〜4周期後、DNA配列決定およびELISAによって、個々のクローンを性質決定する。
【0063】
この実験では、野生型M13ファージの誘導体(Ph.D.−7TMファージディスプレイペプチドライブラリーキット、New England Biolabs、#E8100S)を用いる。これは、2.0x109の独立クローンを含有する、直鎖7量体ライブラリーである。
【0064】
供給されたファージ10μl中で各配列約100コピーを用いて、各パニング実験を行うように、ライブラリーを1回増幅する。プラスミドではなくファージとしてのライブラリーは増殖が単純であるため、抗生物質選択および別個のヘルパーファージの必要性が排除される。ファージ増幅のため、細菌株XL1Blue(Stratagene、遺伝子型recA1 endA1 gyrA96 thi−1 hsdR17 supE44 relA1 lac [F’proAB lacμZ ΔM15 Tn10(Tetr)])を用いる。
【0065】
(実施例2)
CD23タンパク質および定量化
CD23コードcDNAをヒトBリンパ芽球細胞株RPMI8866から得る。このcDNAのヌクレオチド配列は、321アミノ酸および分子量36kDのポリペプチドを予測する。IgEに結合可能な機能するCD23が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現された(Ludin Cら, EMBO J., 6:109−114(1987))。
【0066】
CHOトランスフェクション細胞(Novartis、スイス・バーゼルから寛大な寄贈)からCD23(2g)を均質に精製する。CD23の存在を、マウス・モノクローナル抗ヒトCD23抗体(クローン135、IgG1κアイソタイプ)を用いて開発された特異的ELISAによって管理する。CD23−MoAb(135)をプラスチック表面に適用し、CD23と反応させた後、CD23定量化に、別の抗CD23−MoAb(クローン25)−FITCを用いる。
【0067】
(実施例3)
「バイオパニング」によるファージ選択およびCD23相互作用
精製CD23タンパク質を、無菌ポリスチレン・ペトリ皿上に適用し、一方、炭酸緩衝液を陰性対照としていくつかのペトリ皿に適用する。洗浄し、そして表面を満たした後、2.0x1011の組換えファージを各ペトリ皿に添加し、そして穏やかに攪拌しながら室温で1時間インキュベーションする。これによって、ファージ由来ペプチドが、ペトリ皿にコーティングされた分子に接触し、そして固定されることが可能になる。続く洗浄によって、非結合性ファージまたは低親和性ファージの除去を可能にする。「バイオパニング」後、前記緩衝液を用いてファージを溶出し、計数し、そして細菌培養物上で増幅する。
【0068】
CD23でコーティングしたペトリ皿を用いて、溶出ファージに対して、さらに2回のバイオパニング法を適用する。これらの方法は、CD23特異的ファージの濃縮を可能にする。
【0069】
増幅後、各ファージクローンからDNAを抽出し、そして配列を決定する。自動化配列決定装置Li−cor 4000を用いて、配列決定を行う。ファージのヌクレオチド配列の分析によって、対応するペプチドの同定および化学的合成が可能になる。バイオパニング後、ファージの配列決定によって、CD23に結合するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列が明らかになり、例えば1つのバイオパニング法は、以下の配列:
5’−TTT CAT GAG AAT TGG CCT TCG−3’(配列番号11)
を同定した。
【0070】
この配列は、以下のアミノ酸配列:
Phe His Glu Asn Trp Pro Ser(配列番号1;p30A)
をコードする。
【0071】
配列FHENWPS(配列番号1;p30A)が、最も頻繁に選択されるペプチドである。以下の配列はより頻繁でなく選択された:
FHESWPP(配列番号21;p30B)
FHEFWPL(配列番号22;p30C)
FHEFWPT(配列番号2;p30D)
FHSQWPN(配列番号3;p30E)
FHSQWPG(配列番号23;p30F)
リードCD23結合性化合物として、FHENWPS(配列番号1;p30A)を選択した。環状化、および逆反転などのペプチドに対する修飾を含めて、この配列に基づいて、ペプチドおよびペプチド模倣体を合成した。表1は、これらの配列のいくつかを示す。「活性」は、特定のペプチドまたはペプチド模倣体が、抗CD23−FITCモノクローナル抗体がCD23+細胞に結合するのを阻害する能力を指す。標準的一文字アミノ酸指定に加えて、以下の略語を用いる:
2Nal=2’ナフチルアラニン
Tic=テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸
4インドイルA=4’インドイルアラニン
ベータW=(S)3−アミノ4−(3−インドイル)酪酸
シクロL=1−アミノシクロペンタン−1−カルボン酸
ベータA=ベータアラニン
ho Pro=ホモプロリン
tpi=テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸
cit=シトルリン
Dap=2,3−ジアミノプロピオン酸
チアゾイル=4’チアゾイルアラニン
デスアミノH=3−(イマダゾール−4−イル)プロピオン酸
1 Me His=1−N−メチルヒスチジン
Sar=N−メチルグリシン
CCpma=1−(アミノメチル)シクロペンタン−1−カルボン酸
Orn=オルニチン
CGG=蛍光標識の基質
GGC=蛍光標識の基質
環状H2T=C末端カルボキシル基へのN末端アミノ基の連結
環状H2E=6位Gluガンマ(側鎖)カルボキシル基へのN末端アミノ基の連結
環状Orn2T=C末端カルボキシル基へのオルニチンのデルタ(側鎖)アミノ基の連結
環状E2K=Lysイプシロン(側鎖)アミノ基へのGluアルファカルボキシル基の連結
Ac=アセチル
*=Gluおよび次のアミノ酸間のペプチド連結が、アルファカルボキシル基でなく、Gluのガンマ(側鎖)カルボキシル基を通じて起こる
アリル−= −CH2−CH=CH2
アリル側鎖メタセシス= −CH2−CH=CH−CH2−連結を形成する、2つのアリル基の反応
小文字はアミノ酸のD−鏡像異性体を示す。例えば、以下の化合物250の配列は、spwnehであり、これは、化合物244(HENWPS;配列番号7)の逆反転ペプチドである。
【0072】
表1
【0073】
【表1a】

【0074】
【表1b】

【0075】
(実施例4)
細胞培養
正常ヒト末梢血から単球を単離する。血液バンクによって、正常ボランティア(20〜50歳)から試料を収集する。これらはすべて、使用前に、HIVまたはHBV混入がないことに関して試験される。末梢血白血球のFicoll(Histopaque、Sigma)勾配分離によって、ヒト正常単核細胞を得る。記載するように、ウシ胎児血清(FCS)でコーティングしたプラスチックプレートへの接着によって、リンパ球から単球を分離する(Vouldoukis I.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 92:7804−7808 1995)。この方法の後で、>90%の細胞がCD14抗原を発現し、そして単球の細胞化学特性を示す。次いで、L−非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%FCSを補ったDMEM(すべてGibco Laboratories、ニューヨーク州グランドアイランド)中で、細胞をインキュベーションする。上記培地、化学薬品、およびFCSは、ヒト単球に対する直接活性化効果を持たないことが試験されている(活性化マーカーとして、CD23発現およびTNF−α産生)。24〜48時間、培養フラスコに接着させた後、これらの細胞は、マクロファージ様細胞に分化し、フッ化ナトリウムに阻害される、非特異的エステラーゼ活性を示す。
【0076】
正常ヒトドナー由来接着細胞は、あるとしても低い表面CD23発現しか持たず、そして本研究ではマクロファージと称される。組換えヒト・インターロイキン4(10ng/ml)で細胞をインキュベーションした後、CD23発現を得る。しかし、炎症性疾患(例えば関節炎)の患者では、末梢血由来単球は、CD23を発現することも可能であり、そしてIL−4を必要としない。組織由来マクロファージは、大部分、CD23+である。
【0077】
いくつかの実験では、EBV形質転換CD23+ヒトB細胞株をCD23結合アッセイに用いる。これらの細胞は、Bリンパ球が、マクロファージの炎症性仲介因子を欠くため、機能アッセイには適切でない。
【0078】
(実施例5)
ヒト・マクロファージにおける炎症反応の活性化
適切なMoAb(20μg/ml、クローン135、IgG1κアイソタイプ)によって、またはヒトIgE/抗IgE複合体(IgE、Stallergene、フランス・パリ;ヤギ抗ヒトIgE、Nordic Immunology、オランダ・ティルブルフ)によって、CD23表面分子の架橋を通じて、単球由来マクロファージ(CD23+)を活性化する。この活性化経路は、iNOS mRNA転写の活性化、並びに一酸化窒素(NO)、TNF−α、反応性酸素ラジカル、IL−1、およびIL−6などの多様な炎症性仲介因子の、マクロファージによる生成を促進する(概説には:Dugas Bら, Immunol Today, 16:574−580(1995)を参照されたい)。
【0079】
(実施例6)
炎症反応の定量化
加湿大気中、37℃、5%CO2で1〜3日インキュベーションした後、以下のように、炎症反応に関して、マクロファージを分析する:
24時間インキュベーション:RT−PCRによるiNOS−mRNAの検出;
36〜48時間インキュベーション:二酢酸ジアミノフルオレセイン(DAF)蛍光検出装置による、細胞内NOの検出;
48〜96時間インキュベーション:サイトカインおよび亜硝酸塩検出のための上清収集。亜硝酸塩を、Greiss法(Daviesら, Methods in Molecular Biology, 225:305−320, 2003)によって定量化し、一方、IL−1、IL−6およびTNF−αを、商業的ELISAキットを用いて定量化した。以下の抗体および試薬を利用した:
組換えヒトIL−4(Schering Plough、フランス・ダーディリーより寄贈);
ヒトIgE(Stallergene、フランス・パリ);
ヤギ抗ヒトIgE(Nordic Immunology、オランダ・ティルブルフ);
L−NIL(SNAP、Alexis Corporation、スイス・ロイフェルフィンゲン)、
ウシ胎児血清(FCS)(すべて、Gibco Laboratories、ニューヨーク州グランドアイランド)
CD23−MoAb(クローン25)(Immunotech、フランス・マルセイユ・ルミニー)。
【0080】
亜硝酸塩の定量化後、対照に比較した阻害パーセントを計算する。iNOS産生の阻害を立証する、以下の結果を得た:
表2
【0081】
【表2】

【0082】
(実施例7)
CD23特異的結合の分析
3つの方法を用いて、多様な化合物が、特異的MoAbまたはIgE/抗IgE免疫複合体によるCD23認識を遮断する能力をアッセイする:
a)CD23でコーティングした表面への結合の阻害:ELISA法により検出;
b)CD23+細胞(マクロファージまたはB細胞株)への抗CD23−FITC結合の阻害;
c)CD23+細胞へのIgE/抗IgE−FITC結合の阻害。
【0083】
FITCコンジュゲート化リガンドを添加する前に、コーティング表面または細胞を、CD23対構造と1〜4時間インキュベーションする。
炎症機能に関しては、CD23−MoAbまたはIgE/抗IgE複合体とインキュベーションする前に、CD23対構造と細胞を4時間プレインキュベーションする。2〜4日後、細胞上清を収集し、そして多様な仲介因子における、その含量を試験する。
【0084】
(以下は、多様なペプチド試験の分析によって追跡した生物学的活性の結果である)
1.特異的ペプチドによるCD23結合の遮断
CD23+細胞を、阻害性ペプチド(p30A)または非関連対照ペプチド(pNu)の存在下でインキュベーションする。細胞蛍光測定装置によって、蛍光強度を定量化した。以下は、培地のみでインキュベーションした細胞に比較した、CD23ペプチドまたは対照ペプチドと細胞をプレインキュベーションした後に回収された蛍光強度の割合である。
【0085】
【表3】

【0086】
CD23リガンドとして、IgE/抗IgE−FITCを用いて、類似のデータを得た。
【0087】
【表4】

【0088】
2.特異的ペプチドによる、活性化マクロファージからのNO生成の阻害
ヒト・マクロファージの炎症反応は、これらの細胞による一酸化窒素のin vivo生成とほぼ相関した。我々はこの炎症性仲介因子を、細胞活性化のマーカーとして用いる。
【0089】
CD23+細胞を、阻害性ペプチド(p30A)の存在下または非存在下で、4時間インキュベーションする。CD23−MoAbまたはIgE/抗IgE免疫複合体を添加する。3〜5日間インキュベーションした後、細胞上清を採取し、そしてGreiss反応によって、亜硝酸塩レベルを定量化する(Daviesら, Methods in Molecular Biology, 225:305−320, 2003)。
【0090】
【表5】

【0091】
*[NO2−]のμM
関節リウマチ患者の滑液由来のマクロファージの炎症機能に対する、CD23−ペプチドまたは陰性対照の影響もまた、調べる。
【0092】
【表6】

【0093】
*[NO2−]のμM
ラット腹腔マクロファージおよびラット末梢マクロファージからのNO産生もまた測定する。腹腔マクロファージは非常にCD23+であり、そして末梢血由来細胞に比較して、はるかに多量の炎症促進性仲介因子を産生する。CD23+細胞を、阻害性ペプチド(p30A)の存在下または非存在下で4時間インキュベーションする。IgE/DNP−BSAを添加して、CD23架橋を誘導する。L−NILは、NOS−IIの特異的阻害剤である。Pep−は陰性対照ペプチドである。3〜5日間インキュベーションした後、細胞上清を採取し、そしてGreiss反応によって、亜硝酸塩レベルを定量化する(Daviesら, Methods in Molecular Biology, 225:305−320, 2003)。図2は、p30Aを添加すると、マクロファージによるIgE/DNP−BSA誘導性NO産生が阻害されることを示す。
【0094】
3.特異的ペプチドによる、活性化マクロファージからのTNF−α生成の阻害
NOに加えて、炎症性疾患中のよく立証されたエフェクター因子である、TNF−αの産生に対するペプチドの影響もまた試験する。
【0095】
CD23+細胞を、阻害性ペプチド(p30A)の存在下または非存在下で4時間インキュベーションする。CD23−MoAbまたはIgE/抗IgE免疫複合体を添加する。3〜5日間インキュベーションした後、細胞上清を採取し、そしてTNF−αのレベルを、特異的ELISAによって定量化する。
【0096】
【表7】

【0097】
*pg TNF−α/ml
関節リウマチ患者の末梢血または滑液由来のマクロファージの炎症機能に対するCD23−ペプチドまたは陰性対照の影響もまた調べる。
【0098】
【表8】

【0099】
*pg TNF−α/ml
4.関節炎ラットの治療
第0日、体重145〜155gの6週齢雌ルイス・ラットに、関節炎誘導エマルジョンを皮下注射する。ラットに:
2mg/ラットの熱不活化ミコバクテリウム・ブチリクム(Mycobacterium butyricum)、以下で希釈;
240μlのワセリン;
30μlのTween−20;および
30μlのPBS
を含有するエマルジョン300μlを注射する。
【0100】
免疫工程を第7日に繰り返す。ラットは第15日〜第21日までに、関節炎の徴候を示す。関節炎の徴候に、臨床スコア(1〜4)を割り当てる。第40日までに、臨床スコアは、1から、3または4に上昇する。免疫ラットでは、より遅い体重増加もまた、観察される(図1a)。
【0101】
第0日の阻害性ペプチドp30Aのユニークな注射(腹腔内または皮下)は、関節炎外見にまったく影響を持たない。しかし、臨床的徴候の出現後、5mgのp30Aを皮下注射すると、ラットの50%で関節炎症状の完全寛解(図1b)が生じるとともに、残りの25%のラットで臨床スコアの減少が生じた。
【0102】
p30Aの皮下注射を用いた結果は、腹腔内注射または静脈内治療を用いて得た、関節炎状態の寛解を誘導しない結果と対照的である。
(実施例8)
p30Aを用いた、ラットのin vivo予防および治療
予防的効能を立証するため、ラットを免疫と同時に治療する。さらに、療法効能を立証するため、別の群のラットを、免疫後、臨床症状の出現の第1日に同時に治療する。各動物群は、8匹のラットを含む。雌ルイス・ラット(Janvier、フランス・ルジェネサンイスル)を標準的実験室条件下で飼育し、そして動物を食物および水に自由にアクセスさせる。温度は、22±2℃に維持し、そして12時間明暗スケジュールを維持する。欧州経済共同体「86/609」に公表されたガイドラインに厳密にしたがって、すべての動物処置を行う。8mlワセリン、1mlポリソルベート80、および1ml PBS(リン酸緩衝生理食塩水、BioWhittaker、メリーランド州ウォーカーズビル)のエマルジョンに希釈した不活化ミコバクテリウム・ブチリクム(Difco Laboratories、ミシガン州デトロイト)300μl(1.8mg)を尾の付け根に皮下注射することによって、6週齢の動物において、アジュバント関節炎(AA)を誘導する。1週間後、同じ用量の抗原でラットに追加免疫し、そして関節炎の臨床症状に関して、最長で免疫50日後まで観察する。治療プロトコルをまったく知らない2人の独立の観察者によって、AA重症度の評価を行う。以下のような0〜2の臨床スコア測定によって、各足のAAの重症度を毎日定量化する:炎症の徴候なし(0);1つの足の腫脹のみ(足直径が>2倍)(0.5)または腫脹/不動(1.0);2つの足の腫脹(1.5)または腫脹/不動(2.0)。動物の体重評価を毎日測定する。炎症開始中(予防的)、または炎症徴候の出現後、2日ごとに(第0日、第2日、第4日、第6日、および第8日)、ペプチドまたはペプチド模倣体(0.1%DMSOに溶解)をラットにI.C.注射する。陰性対照として、ラットに生理食塩水を注射する。
【0103】
臨床スコアを、上述のように決定し、そして累積臨床スコアを、免疫後の日数に対してプロットする(図2、3、および4)。
図2、3、および4の各々において、x軸の下の矢印は、IC注射を投与した日を示す。図2に示すように、2つの異なる投薬措置のp30Aで治療したラットは、対照ラットに比較して、明らかに優れた臨床スコアを示し、p30Aの予防的効果と一致する。図3に示すように、症状が最初に現れた日に、p30Aで治療したラットは、3つの異なる投薬措置で、p30A治療を受けなかった対照ラットに対して、明らかに臨床的効果を示す。図4に示すように、関節炎症状を持つラットにp30Aを投与すると、こうした治療を受けなかったラットを超える体重増加が生じ、そしてこうした体重増加は、関節炎症状を持たない対照ラットのものに近づいた。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】(a)熱不活化ミコバクテリウム・ブチリクムでの免疫後、ラットは、第15〜21日までに、関節炎を示す。(b)5mgのFHENWPSペプチド(配列番号1;p30A)の皮下注射によって、寛解が生じる。
【図2】p30Aでのラットの治療の予防的効果。
【図3】p30Aでのラットの治療の療法的効果。
【図4】対照ラット、p30Aで治療した関節リウマチ(RA)ラット、および未治療で放置したRAラットの体重増加。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD23結合性ペプチドを含む化合物であって、前記ペプチドが、X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8のアミノ酸配列:
式中、
1は、Pheであるか、または存在せず;
2は、HisまたはAlaであり;
3は、Glu、Ser、Ala、Asn、Lys、またはCysであり;
4は、Asn、Phe、Gln、Pro、Ser、またはAlaであり;
5は、Trpであり;
6は、Pro、Arg、Glu、Gly、Cys、またはLysであり;
7は、Ser、Pro、Leu、Thr、Ala、Gly、Asnであるか、または存在せず;そして
8は、Phe、Glyであるか、または存在しない
を含む、前記化合物。
【請求項2】
1がPheであり、X2がHisであり、X6がProであり、そしてX8が存在しない、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
1−X2−X3−X4−X5−X6−X7
Phe−His−Glu−Asn−Trp−Pro−Ser(配列番号1);
Phe−His−Glu−Phe−Trp−Pro−Thr(配列番号2);
Phe−His−Ser−Gln−Trp−Pro−Asn(配列番号3);
Phe−His−Glu−Asn−Trp−Pro(配列番号4);
Phe−His−Glu−Asn−Trp−Pro−Thr(配列番号5);および
Phe−His−Glu−Gln−Trp−Pro−Ser(配列番号6)
からなる群より選択される、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
1が存在せず、X2がHisであり、X4がAsnであり、X6がProであり、そしてX7がSerである、請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8
His−Glu−Asn−Trp−Pro−Ser(配列番号7);
His−Lys−Asn−Trp−Pro−Ser(配列番号8);および
His−Glu−Asn−Trp−Pro−Ser−Phe(配列番号9)
からなる群より選択される、請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
Phe−His−Lys−Pro−Trp−Arg−Ala(配列番号10)
である、請求項1記載のペプチド。
【請求項7】
N末端を含み、そして前記N末端がアシル化されている、請求項1〜6記載のペプチド。
【請求項8】
前記N末端がアセチル化されている、請求項7記載のペプチド。
【請求項9】
C末端を含み、そして前記C末端がアミド化されている、請求項1〜6記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1〜6記載のペプチドを含むポリペプチドであって、約6〜約100アミノ酸を含む、前記ポリペプチド。
【請求項11】
約6〜約70アミノ酸を含む、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項12】
約6〜約15アミノ酸を含む、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項13】
少なくとも約10-6Mの、CD23に対する特異的結合を有する、請求項1〜6および10記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項記載の少なくとも1つの化合物、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項15】
CD23の生物学的活性に関連する疾患または障害の治療または予防のための薬剤製造法であって、前記薬剤の製造に、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物を取り込むことを含む、前記方法。
【請求項16】
疾患または障害が、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患およびアレルギーからなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記疾患または障害が、関節炎、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、糖尿病、ブドウ膜炎、皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病、シェーグレン症候群、アレルギー、アレルギー性喘息、内因性喘息、急性喘息再燃、鼻炎、湿疹、子宮内膜症、移植片対宿主病(GVH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、膵島炎、気管支炎(特に慢性気管支炎)、糖尿病(特に1型糖尿病)、B−CLLおよび他のB細胞悪性腫瘍、B細胞機能不全に関連する疾患、並びにパーキンソン病からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
CD23の生物学的活性に関連する疾患または障害の治療法または予防法であって、前記疾患または障害を有する被験者を提供し、そして請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物で前記被験者を治療する、前記方法。
【請求項19】
疾患または障害が、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患およびアレルギーからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記疾患または障害が、関節炎、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、糖尿病、ブドウ膜炎、皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病、シェーグレン症候群、アレルギー、アレルギー性喘息、内因性喘息、急性喘息再燃、鼻炎、湿疹、子宮内膜症、移植片対宿主病(GVH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、膵島炎、気管支炎(特に慢性気管支炎)、糖尿病(特に1型糖尿病)、B−CLLおよび他のB細胞悪性腫瘍、B細胞機能不全に関連する疾患、並びにパーキンソン病からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
a)配列番号1〜10のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1〜10のアミノ酸配列に、少なくとも約83%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号1〜10のアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片;および
d)配列番号1〜10のアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項22】
請求項21のポリペプチドをコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項23】
配列番号11〜20の配列を有する、請求項22の単離ポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項23のポリヌクレオチドに機能可能であるように連結されたプロモーター配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項24の組換えポリヌクレオチドで形質転換された、細胞。
【請求項26】
請求項24の組換えポリヌクレオチドを含む、トランスジェニック生物。
【請求項27】
請求項21のポリペプチドを産生する方法であって:
a)組換えポリヌクレオチドで細胞を形質転換し、ここで前記組換えポリヌクレオチドは請求項21のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能可能であるように連結されたプロモーター配列を含む;
b)ポリペプチドの発現に適した条件下で、前記細胞を培養し;そして
c)こうして発現されたポリペプチドを回収する
ことを含む、前記方法。
【請求項28】
a)配列番号11〜20のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
b)a)のポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチド;および
c)a)またはb)のRNA同等物
からなる群より選択される配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項29】
CD23の生物学的活性に関連する状態または疾患に関する、生物学的試料における診断試験であって:
a)請求項21のポリペプチドと生物学的試料を、該ポリペプチドがCD23に結合し、そして複合体を形成するのに適した条件下で合わせ;そして
b)複合体を検出する、ここで複合体の存在は、生物学的試料におけるCD23の存在と相関する
工程を含む、前記方法。
【請求項30】
請求項22記載の配列を含む発現ベクターであって、前記ポリヌクレオチドを発現可能である、前記ベクター。
【請求項31】
請求項22記載の発現ベクターおよび薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項32】
検出可能マーカーで標識されている、請求項21のポリペプチド。
【請求項33】
CD23の検出法であって:
b)請求項32のポリペプチドで前記試料を処理し;そして
d)前記試料に結合した前記ポリペプチドの量を検出する
ことを含む、前記方法。
【請求項34】
前記試料が細胞を含む、請求項33の方法。
【請求項35】
請求項1〜6記載のペプチドのペプチド模倣体(peptidomimetic)。
【請求項36】
D−異性体である少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項35記載のペプチド模倣体。
【請求項37】
逆反転(retroinverted)ペプチドである、請求項35記載のペプチド模倣体。
【請求項38】
D−アミノ酸配列:spwnehを含む、請求項37記載のペプチド模倣体。
【請求項39】
環状である、請求項35のペプチド模倣体。
【請求項40】
少なくとも約10-6Mの、CD23に対する特異的結合を有する、請求項35記載の化合物。
【請求項41】
請求項35記載の少なくとも1つの化合物、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項42】
CD23の生物学的活性に関連する疾患または障害の治療または予防のための薬剤製造法であって、前記薬剤の製造に、請求項35記載の化合物を取り込むことを含む、前記方法。
【請求項43】
疾患または障害が、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患およびアレルギーからなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記疾患または障害が、関節炎、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、糖尿病、ブドウ膜炎、皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病、シェーグレン症候群、アレルギー、アレルギー性喘息、内因性喘息、急性喘息再燃、鼻炎、湿疹、子宮内膜症、移植片対宿主病(GVH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、膵島炎、気管支炎(特に慢性気管支炎)、糖尿病(特に1型糖尿病)、B−CLLおよび他のB細胞悪性腫瘍、B細胞機能不全に関連する疾患、並びにパーキンソン病からなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項45】
CD23の生物学的活性に関連する疾患または障害の治療法または予防法であって、前記疾患または障害を有する被験者を提供し、そして請求項35記載の化合物で前記被験者を治療する、前記方法。
【請求項46】
疾患または障害が、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患およびアレルギーからなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または障害が、関節炎、紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、糖尿病、ブドウ膜炎、皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病、シェーグレン症候群、アレルギー、アレルギー性喘息、内因性喘息、急性喘息再燃、鼻炎、湿疹、子宮内膜症、移植片対宿主病(GVH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、膵島炎、気管支炎(特に慢性気管支炎)、糖尿病(特に1型糖尿病)、B−CLLおよび他のB細胞悪性腫瘍、B細胞機能不全に関連する疾患、並びにパーキンソン病からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
CD23の生物学的活性に関連する状態または疾患に関する、生物学的試料における診断試験であって:
a)請求項34のペプチド模倣体と生物学的試料を、該ペプチド模倣体がCD23に結合し、そして複合体を形成するのに適した条件下で合わせ;そして
b)複合体を検出する、ここで複合体の存在は、生物学的試料におけるCD23の存在と相関する
工程を含む、前記方法。
【請求項49】
検出可能マーカーで標識されている、請求項35のペプチド模倣体。
【請求項50】
CD23の検出法であって:
a)試料を提供し;
b)請求項49のペプチド模倣体で前記試料を処理し;
c)前記試料に結合していない前記ペプチド模倣体を除去し;そして
d)前記試料に結合した前記ペプチド模倣体の量を検出する
ことを含む、前記方法。
【請求項51】
表1および表2に列挙されるペプチドおよびペプチド模倣体からなる群より選択される、単離ポリペプチドまたはペプチド模倣体。
【請求項52】
構造
Ac−w−n−CO2
を含む、請求項51記載のペプチド模倣体。
【請求項53】
請求項51のポリペプチドをコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項54】
請求項53のポリヌクレオチドに機能可能であるように連結されたプロモーター配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
【請求項55】
請求項54の組換えポリヌクレオチドで形質転換された、細胞。
【請求項56】
請求項51記載の少なくとも1つのポリペプチドまたはペプチド模倣体、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項57】
CD23の生物学的活性に関連する疾患または障害の治療または予防のための薬剤製造法であって、前記薬剤の製造に、請求項51記載のポリペプチドまたはペプチド模倣体を取り込むことを含む、前記方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−531536(P2007−531536A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506867(P2007−506867)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001133
【国際公開番号】WO2005/098435
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506336762)ユニヴェルシテ ボルドー 2 (1)
【Fターム(参考)】