説明

EUVマスク検査装置

【課題】検査中のパターン面へのパーティクルの落下を抑制すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るEUVマスク検査装置100は、EUVマスク20のパターン面21を上側にした状態で、当該EUVマスク20を載置するステージ7と、EUVマスク20の検査中に、パターン面21を覆うように、当該パターン面21に平行に配置される平板状のツバ5とを備える。ツバ5は、EUVマスク20のパターン面21に検査光を集光する対物レンズ4の周囲に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で利用されるフォトマスク(あるいはレチクルとも呼ばれるが、ここでは単にマスクと呼ぶ。)の欠陥を検出する際に利用されるマスク検査装置(パターン検査装置とも呼ばれる。)に関し、特にEUVリソグラフィで用いられるEUVマスクのパターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化を担うリソグラフィ技術において、現在、波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源としたArFリソグラフィが量産の主流である。また、露光装置の対物レンズとウエハとの間を水で満たして、解像度を高める液浸技術も併用されており、ArF液浸リソグラフィなどと呼ばれている。
【0003】
一層の微細化に対応させるために、ArF液浸リソグラフィの次世代のリソグラフィとして、EUVリソグラフィ(Extremely Ultraviolet Lithography:EUVL)の実用化が期待されている。
【0004】
一方、マスクの欠陥検査には、マスクパターンと設計データとの比較検査法(一般にDie-to-Database比較法と呼ばれる。)と、2つのチップにおけるパターン比較検査法(一般にDie-to-Die比較法と呼ばれる。)の2通りの方法が広く知られている。これらの検査方法では、いずれもマスクのパターン像を顕微鏡で検出している。
【0005】
その際、光学的顕微鏡を用いる場合は、マスクパターンを光で照明する必要がある。その光源(すなわちマスク検査光源)としては、波長257nmの連続レーザ光(これはアルゴンレーザにおける最大出力ラインである波長514nmの第2高調波である)を用いたマスク検査装置が市販されている。これに関しては、例えば、下記非特許文献1あるいは2に示されている。
【0006】
マスク検査装置では、検査対象となるマスクのパターン面を上向きにして、マスクの直上に対物レンズを配置した構造と、その反対にマスクのパターン面を下向きにして、対物レンズをマスクの下側に配置する構造のものとがある。前者に関して、マスク周辺の構造を図9に示した。
【0007】
ただし、図9に示されたマスク90は、ArFリソグラフィなどの光リソグラフィの場合に用いられるものであり、パターン面91をカバーするようにペリクル92が備えられている。ペリクル膜93は、マスク90に対して、ペリクルフレーム94を介して固定されている。すなわち、ペリクルフレーム94はマスク90及びペリクル膜93と接着されており、パターン面91上には密閉空間95が形成されている。
【0008】
したがって、この密閉空間95内には、外部からパーティクル等が混入する恐れが無い。このように光リソグラフィ用のマスクにはペリクル92が備えられていることから、パターン面にパーティクルが付着するのが防止される特徴がある。
【0009】
ところが、EUVLで用いられるEUVマスクにはペリクルが設けられていない。EUVLの光源である波長13.5nmのX線を透過する薄膜が存在しないからである。その結果、パターン面を上向きに配置してEUVマスクを検査する場合、検査中にパターン面にパーティクルが落下してくる恐れがあった。
【0010】
ただし、特許文献1に示されているように、一般的にはマスク検査装置では、上面にフィルタが配置されており、清浄化された空気が装置内部を流れ落ちる構造になっている。しかしながら、マスク検査装置内部の全体で常にパーティクルが十分抑制されている保障はなく、突発的な巨大なパーティクルがマスク上に落下することもある。その場合、ペリクルが無いEUVマスクでは、パターン面にパーティクルが落下することになり、露光工程で欠陥を発生させる要因になる。
【0011】
特許文献2、3には、従来のペリクルを取り付けて運用できないEUVマスクのために、EUVマスクを保管するケースに取り付けるリムーバブルペリクル(Removable pellicle)が記載されている。リムーバブルペリクルが設けられたケースにEUVマスクを入れたままで、マスク検査ができるとされている。
【0012】
ところがリムーバルペリクルは、ケースの形状等の規格によってその形状が左右されるため、現時点で普遍的な標準品にはなっていない。また、もしリムーバブルペリクルの形状が標準化されたとしても、リムーバルペリクルが装備されたケースのまま、マスク検査が行えるマスク検査装置を実現するには、検査装置内でケースごと移動できるような大幅な構造的改造が必要になるという問題があった。
【0013】
なお、特許文献4には、対物レンズの周囲にリング盤を備えた検査装置が示されている。しかしながら、特許文献4のリング盤は、パターン面に照明光を照射するためのものであり、検査対象物のパターン面と略等しい大きさとなっている。このため、検査対象物をスキャンして検査を行うと、検査対象物がリング盤からはみ出してしまう。このため、パーティクルの落下を防止することができない。
【0014】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE Vol. 5446, pp.265-278, 2004
【非特許文献2】東芝レビュー、第58巻、第7号、第58〜61頁、2003年
【特許文献1】特開2006−352099号公報
【特許文献2】米国特許6492067号明細書
【特許文献3】米国特許6646720号明細書
【特許文献4】特開2008−153321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、検査中のパターン面へのパーティクルの落下を抑制することができるEUVマスク検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様に係るEUVマスク検査装置は、EUVマスクのパターン面を上側にした状態で、当該EUVマスクを載置するステージと、前記EUVマスクの検査中に、前記パターン面を覆うように、当該パターン面に平行に配置される平板状の保護部材とを備えるものである。これにより、EUVマスクにパーティクルが落下することを防止することができる。
【0017】
本発明の第2の態様に係るEUVマスク検査装置は、上記の検査装置であって、前記EUVマスクのパターン面に検査光を集光する対物レンズをさらに備え、前記保護部材は、前記対物レンズの周囲に取り付けられたツバであることを特徴とするものである。これにより、EUVマスクにパーティクルが落下することを防止することができる。
【0018】
本発明の第3の態様に係るEUVマスク検査装置は、上記の検査装置であって、前記ツバの大きさは、前記EUVマスクをスキャンして検査しても、常に当該EUVマスクの全面が前記ツバに覆われる大きさであることを特徴とするものである。これにより、対物レンズがEUVマスクの最も端に位置する場合でも、EUVマスクの上から見たときに、EUVマスクがツバに隠れるため、EUVマスクにパーティクルが落下することをより確実に防止できる。
【0019】
本発明の第4の態様に係るEUVマスク検査装置は、上記の検査装置であって、前記ツバに設けられたフィルタをさらに備えるものである。これにより、フィルタを介してEUVマスク上に気体を流すことができ、EUVマスクのパターン面上に、横方向からパーティクル等が流れ込むのを抑制することができる。
【0020】
本発明の第5の態様に係るEUVマスク検査装置は、上記の検査装置であって、前記保護部材は、前記EUVマスクを取り囲むように設けられ、前記ステージに固定されるペリクルであることを特徴とするものである。これにより、EUVマスクにパーティクルが落下することを防止することができる。
【0021】
本発明の第6の態様に係るEUVマスク検査装置は、上記の検査装置であって、前記EUVマスクのパターン面上に気体を流す気体供給機構をさらに備えるものである。これにより、EUVマスクの横側からのパーティクルの侵入を防ぐことができる。
【0022】
本発明の第7の態様に係るEUVマスク検査装置は、上記の検査装置であって、前記EUVマスクのパターン面に紫外光を照射する光源をさらに備えるものである。これにより、EUVマスクのパターン面に付着した有機異物を分解することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、検査中のパターン面へのパーティクルの落下を抑制することができるEUVマスク検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0025】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係るEUVマスク検査装置の構成について、図1〜2を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置100の構成を示す図である。図2は、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置200におけるEUVマスク20周辺を横からみた図である。
【0026】
図1に示すように、EUVマスク検査装置100は、検査光源1、偏光ビームスプリッタ2、λ/4波長板3、対物レンズ4、ツバ5、チューブ6a、6b、ステージ7、移動テーブル8、投影レンズ9、二次元光センサ10を備えている。
【0027】
EUVマスク検査装置100では、検査光源1からの波長193nmの紫外光L1を照明光として用いている。紫外光L1は、偏光ビームスプリッタ2に入射する。紫外光L1はS波となっており、偏光ビームスプリッタ2で反射して、紫外光L2のように下方に進む。
【0028】
紫外光L2は、λ/4波長板3を通過することで円偏光の紫外光L3になる。紫外光L3は、対物レンズ4を通過し、EUVマスク20のパターン面21を照明する。すなわち、λ/4波長板3は、EUVマスク20のパターン面21に検査光である紫外光L3を集光する。
【0029】
照明されたパターン面21から発生する光学像の紫外光、すなわち、光学情報を空間的強度分布内に含んだ紫外光は、対物レンズ4を再び通る。この紫外光は紫外光L3とは反対方向の円偏光になっているため、再びλ/4波長板3を通過することにより今度はP波となる。このため、P波となった紫外光は、偏光ビームスプリッタ2を通過する。
【0030】
その結果、この紫外光は投影レンズ9を通り、二次元光センサ10に当たる。すなわち、対物レンズ4で観察している領域は二次元光センサ10上に拡大投影される。なお、二次元光センサ10としては、CCDやTDIなどが適する。
【0031】
ステージ7には、移動テーブル8が設けられている。EUVマスク20は、移動テーブル8上にパターン面21が上側になるように載置されている。移動テーブル8は、図1の左右方向及び紙面に対して垂直な方向に移動可能に設けられている。移動テーブル8がEUVマスク20を載置した状態で移動することにより、EUVマスク20のパターン面21の全面を対物レンズ4の直下に移動させることができ、パターン面21の全面が検査されるようになっている。
【0032】
対物レンズ4の先端部の周囲には、ツバ5が取り付けられている。ツバ5は、EUVマスク20の検査中に、パターン面21を覆うように、当該パターン面21に平行に配置される平板状の保護部である。ツバ5は、EUVマスク20のパターン面21の直上に、水平の向きで配置される。このツバ5によって、検査中に上から落下してくるパーティクルが、パターン面21上に載ることを防ぐことができる。
【0033】
また、ツバ5には、EUVマスク20のパターン面21上に気体を流す気体供給機構が設けられている。本実施の形態においては、ツバ5には、チューブ6a、6bが設けられている。チューブ6a、6bは、対物レンズ4の近傍に、対物レンズ4を挟んで対向する位置に設けられている。チューブ6a、6bには、CDA(Clean Dry Air)が供給されるようになっている。チューブ6a、6bからCDAを供給することにより、ツバ5とEUVマスク20のパターン面21との間にCDAが流れ出すことになる。これにより、パターン面21の横側からのパーティクルの侵入を防ぐことができる。
【0034】
ここで、図2を参照して、ツバ5の大きさについて説明する。図2(a)にEUVマスク20のパターン面21をスキャンして検査して、最も右端を検査する場合を示す。図2(a)に示すようにパターン面21の右端を検査する場合、EUVマスク20は、対物レンズ4の左側に取り付けられているツバ5により覆われる。なお、この時には、チューブ6bからのみCDAを流しており、チューブ6aではCDAは流していない。
【0035】
図2(b)にEUVマスク20のパターン面21をスキャンして検査して、の最も左端を検査する場合を示す。図2(b)に示すようにパターン面21の左端を検査する場合、EUVマスク20は、対物レンズ4の右側に取り付けられているツバ5により覆われる。なお、この時には、チューブ6aからのみCDAを流しており、チューブ6bではCDAは流していない。
【0036】
このように、ツバ5の大きさは、EUVマスク20をスキャンして検査しても、常に当該EUVマスクの全面がツバ5に覆われ、EUVマスク20がツバ5に隠れる大きさである。すなわち、装置を上から見ると、ツバ5はEUVマスク20の縦の長さ及び横の長さのそれぞれ2倍以上の長さの矩形状であり、ツバ5の略中央に対物レンズ4が設けられる。
【0037】
このように、EUVマスク20のパターン面21のいずれの箇所を検査している場合であっても、EUVマスク20全体がツバ5により覆われるため、EUVマスク20にパーティクルが付着するのを防止することができる。
【0038】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係るEUVマスク検査装置の構成について、図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置200におけるEUVマスク20の周辺を横からみた図である。図3において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0039】
図3に示すように、EUVマスク検査装置200では、前述した実施の形態1と同様、対物レンズ4の先端部の周囲にツバ5が設けられている。ツバ5は、前述したように装置を上から見ると正方形であり、スキャンした際に常にEUVマスク20を覆う大きさとなっている。
【0040】
EUVマスク検査装置200では、実施の形態1と異なり、ツバ5にはCDAを強制的に流すようなチューブ6a、6bは取り付けられていない。その代わりに、ツバ5には、フィルタ11a、11bが装着されている。
【0041】
なお、ここでは図示していないがEUVマスク検査装置200は、検査光源1や二次元光センサ10等を囲む筐体が設けられている。また、筐体の上部には、ファンフィルタユニット(FFU)が設けられている。従って、EUVマスク検査装置200の筐体中では、清浄化された空気が上方から下方に向けて落ちてくるようになっている。
【0042】
このため、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置200では、内部で上から下に流れ落ちてくる清浄化された空気を利用して、これをツバ5とEUVマスク20のパターン面21との間に導くようにしている。具体的には、上から落ちてくる清浄化された空気は、ツバ5に設けられたフィルタ11a、11bを介して、ツバ5とパターン面21との間に流れる。これにより、EUVマスクのパターン面上に、横方向からパーティクル等が流れ込むのを抑制することができる。
【0043】
なお、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置200のツバ5以外の他の構成については、図1と同様な構成とすることができる。
【0044】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係るEUVマスク検査装置の構成について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置300におけるEUVマスク20の周辺を横からみた図である。図4において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0045】
図4に示すように、EUVマスク検査装置300においても、前述した実施の形態1と同様、対物レンズ4の先端部の周囲にツバ5が設けられている。ツバ5は、前述したように装置を上から見ると正方形であり、スキャンした際に常にEUVマスク20を覆う大きさとなっている。
【0046】
EUVマスク検査装置300では、前述した実施の形態1、2と異なり、ツバ5の対物レンズ4の近傍に紫外ランプが取り付けられている。図4に示すように、本実施の形態においては、2本の紫外ランプ12a、12bが取り付けられている。また、図4されたように、EUVマスク20が載置された下方のみに紫外光が進むように、上側にはリフレクター13を備えている。
【0047】
これにより、EUVマスク20の検査中に、パターン面21に紫外光を照射することができる。このため、EUVマスク20のパターン面21に付着した、特に有機物からなる異物を分解、除去することができる。
【0048】
なお、紫外ランプ12a、12bとしては、細長い円柱状の水銀ランプが適している。紫外ランプ12a、12bは、それぞれ、EUVマスク20のパターン面21の幅よりも長いことが好ましい。これにより、EUVマスク20を移動テーブル8により移動させてスキャンすると、パターン面21の全面に紫外光を照射することができる。
【0049】
一般に、紫外光によって有機異物が除去されることは広く知られており、EUVマスクに対して、エキシマレーザ等の紫外レーザのレーザ光を照射する場合もある。このように紫外のレーザ光を用いる場合に対して、本発明のように紫外ランプを用いると、光強度が低くなるので不適切だと一見して考えられる。
【0050】
しかし、本実施の形態では、対物レンズ4にツバ5を取り付ける構造を利用して、紫外ランプ12a、12bをツバ5に取り付けることにより、紫外ランプ12a、12bEUVマスク20に近接させることが容易になる。このように、紫外ランプ12a、12bがEUVマスク20に極めて近接しているため十分に高い光強度が得られ、紫外ランプであっても十分に、有機異物を除去することが可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置200のツバ5以外の他の構成については、図1と同様な構成とすることができる。
【0052】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係るEUVマスク検査装置について、図5を参照して説明する。図5は、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置400におけるEUVマスク20の周辺を横からみた図である。図5において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0053】
図5に示すように、本実施の形態では、前述してきた実施の形態とはパーティクル対策手法が異なる。EUVマスク検査装置400では、検査中にEUVマスク20全体が隠れるような大型のペリクル14を移動テーブル8上に載せるようになっている。
【0054】
ペリクル14は、ペリクルフレーム15、ペリクル膜16を備えている。ペリクル14は矩形状であり、周囲の4辺の下にペリクルフレーム15が設けられている。このペリクルフレーム15の下面が移動テーブル8の上面に接し、ペリクルフレーム15の上面にペリクル膜16が貼り付けられる。
【0055】
EUVマスク20は、ペリクル14と移動テーブル8により形成される空間内に配置される。すなわち、ペリクル膜16が、パターン面21の全面を覆うように、当該パターン面21に平行に配置される平板状の保護部材である。これにより、パターン面21へのパーティクルの落下が阻止される。
【0056】
前述した実施の形態では、対物レンズ4に取り付けられるツバ5が設けられる。パターン面21へのパーティクルの付着を防止するためには、ツバ5の面積をEUVマスク20より大きくする必要が生じる。このため、ステージ7周辺にツバ5が引き込めるスペースを設ける必要がある。しかしながら、本実施の形態では、前述してきた実施の形態のように、対物レンズ4に取り付けられるツバを必要としない。このため、ステージ7周辺のスペースを小さくすることができる。
【0057】
このようなEUVマスク20全体を覆うペリクル14を用いる本実施の携帯の手法は、前述した特許文献2、3で開示されているリムーバルペリクル(Removable pellicle)のアイデアとは以下に説明する点で大きく異なっている。
【0058】
なお、リムーバルペリクルとは、従来のペリクルを取り付けて運用できないEUVマスクのために、EUVマスクを保管するケースに取り付けたペリクルのことである。このケースにEUVマスクを入れたままで、マスク検査ができるとされている。
【0059】
ところがリムーバルペリクルは、ケースの形状等の規格によってその形状が左右されるため、現時点で普遍的な標準品にはなっていない。また、もしリムーバブルペリクルの形状が標準化されたとしても、リムーバルペリクルが装備されたケースのまま、マスク検査が行えるマスク検査装置を実現するには、検査装置内でケースごと移動できるような大幅な構造的改造が必要になるという問題があった。
【0060】
これに対して、本発明では、EUVマスクのサイズは従来のマスクと同じ(例えば一辺6インチの正方形)であり、裸のEUVマスクのみを移動させることで検査できる。また、検査中に、ペリクル14でEUVマスク20を覆うことにより、パーティクルの付着を防止することができる。
【0061】
ところで、EUVマスクに対して、対物レンズが下側に配置されているようなマスク検査装置の場合、本発明のようなペリクルをEUVマスクのパターン面の近傍に配置しようとするならば、ペリクルが落下しないように全体を保持する必要が生じ、ペリクルの保持機構が複雑になる問題が生じる。
【0062】
しかしながら、本発明のEUVマスク検査装置400では、EUVマスク20に対して対物レンズ4が上側に配置されている。このため、ペリクル14を、単に移動テーブル8上に載せることで、容易にEUVマスク20のパターン面21を保護できる。
【0063】
本実施の形態では、ペリクル膜16は、EUVマスク20のパターン面21と対物レンズ4との間に配置される。また、パターン面21の検査は、ペリクル膜16を介して行われる。従って、パターン面21と対物レンズ4との間にペリクル膜16を配置するための隙間が必要であり、実質的には少なくとも2〜3mm必要になる。従って、上述の実施の形態よりも対物レンズ4のほうが、開口数(NA)が小さくなる。
【0064】
しかし、光リソグラフィ用マスクの場合、取り付けられるペリクルの高さは約6mmであり、ワークディスタンス(マスクのパターン面と対物レンズとの間隔)は7〜8mm必要である。この光リソグラフィ用マスクの場合と比較すると、本実施の形態のほうがワークディスタンスを小さくでき、NAを高くできる。
【0065】
また、本実施の形態に係るEUVマスク検査装置400において、パーティクル防止用としてペリクル14を被せるタイミングは、EUVマスク20がEUVマスク検査装置400内に入れられた直後が好ましい。
【0066】
一般にEUVマスクは、気密性を有する専用のマスクカセット内に入れられて運搬されるが、EUVマスク検査装置400内にマスクカセットが設置され、マスクカセットが開いて、中に保管されていたEUVマスク20が取り出された直後に、本発明のペリクル41が被せられる。以上により、EUVマスク20パターン面21がパーティクルの多い空気中に配置されることはほとんど無い。
【0067】
ここで、ペリクル14をEUVマスク20に被せる例について、図6〜8を参照して、詳細に説明する。図6は、EUVマスク20が移動テーブル8上に載置される状態を示す図である。図6(a)は移動テーブル8の上面から見た状態を示しており、図6(b)は側面から見た状態を示している。図7は、本実施の形態に係るペリクル14の構成を示す図である。図8は、EUVマスク20にペリクル14を被せた状態を示す図である。ここでは、移動テーブル8上に、EUVマスク20を乗せるための載置台17が設けられている。
【0068】
図6に示すように、マスクカセットから取り出されたEUVマスク20は、移動テーブル8上の載置台17に載置され、固定用アーム18により固定される。固定用アーム18は、EUVマスク20の側面に設けられている。図6に示す例では、矩形状のEUVマスク20の1辺当たりに2つの固定用アーム18が設けられている。固定用アーム18をEUVマスク20の側面に押し付けることによって、EUVマスク20が固定される。
【0069】
図7に示すように、ペリクル14のペリクルフレーム15には、固定用アーム18に対応する位置に、切り欠き部19が設けられている。EUVマスク20がマスクカセットから取り出され載置台17上に載置された直後に、図8に示すように、ペリクル14が被せられる。
【0070】
なお、本実施の形態において、実施の形態1のように、EUVマスクのパターン面上に気体を流す気体供給機構を備えてもよい。例えば、ペリクル14のペリクルフレーム15に気体供給用の孔を設け、当該孔からCDAを供給することができる。また、ペリクル膜16上からEUVマスク20のパターン面21に対して、紫外光を照射してもよい。これにより、有機異物を除去することができる。
【0071】
以上に説明したように、本発明に係るマスク検査装置400は、ペリクル14が付いていないEUVマスク20を検査する間に、パターン面21にパーティクル等が付着することを防止することができる。特に、検査時間が長くなるような高感度なモード(具体的にはピクセルサイズの小さな異物を検出する検査モード)で検査する場合に、安心して検査することができる。
【0072】
本発明は、特にEUVマスクのようなペリクルレスマスクを対象とした検査装置に適したものである。しかし、EUVマスクに限定されるものではなく、同様にペリクルが無いインプリントマスクの検査や、あるいはパターン付きウエハの検査装置にも適用することができる。なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態1に係るEUVマスク検査装置の構成を示す図である。
【図2】図1のEUVマスク検査装置におけるEUVマスク周辺を横からみた図である。
【図3】実施の形態2に係るEUVマスク検査装置におけるEUVマスク周辺を横からみた図である。
【図4】実施の形態3に係るEUVマスク検査装置におけるEUVマスク周辺を横からみた図である。
【図5】実施の形態4に係るEUVマスク検査装置におけるEUVマスク周辺を横からみた図である。
【図6】本実施の形態4に係るペリクルの構成を示す図である。
【図7】実施の形態4に係るEUVマスク検査装置において、EUVマスクが移動テーブル上に載置される状態を示す図である。
【図8】実施の形態4に係るEUVマスク検査装置において、EUVマスクにペリクルを被せた状態を示す図である。
【図9】従来のマスク検査装置におけるマスク周辺を横からみた図である。
【符号の説明】
【0074】
1 検査光源
2 偏光ビームスプリッタ
3 λ/4波長板
4 対物レンズ
5 ツバ
6a、6b チューブ
7 ステージ
8 移動テーブル
9 投影レンズ
10 二次元光センサ
11a、11b フィルタ
12a、12b 紫外ランプ
13 リフレクター
14 ペリクル
15 ペリクルフレーム
16 ペリクル膜
17 載置台
18 固定用アーム
19 切り欠き部
20 EUVマスク
21 パターン面
100 EUVマスク検査装置
L1〜L3 紫外光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVマスクのパターン面を上側にした状態で、当該EUVマスクを載置するステージと、
前記EUVマスクのスキャン検査中に、前記パターン面の全面を覆うように、当該パターン面に平行に配置される平板状の保護部材と、
を備えるEUVマスク検査装置。
【請求項2】
前記EUVマスクのパターン面に検査光を集光する対物レンズをさらに備え、
前記保護部材は、前記対物レンズの周囲に取り付けられたツバであることを特徴とする請求項1に記載のEUVマスク検査装置。
【請求項3】
前記ツバの大きさは、前記EUVマスクをスキャンして検査しても、常に当該EUVマスクの全体が前記ツバに覆われる大きさであることを特徴とする請求項2に記載のEUVマスク検査装置。
【請求項4】
前記ツバに設けられたフィルタをさらに備える請求項2又は3に記載のEUVマスク検査装置。
【請求項5】
前記保護部材は、前記EUVマスクを取り囲むように設けられ、前記ステージに固定されるペリクルであることを特徴とする請求項1に記載のEUVマスク検査装置。
【請求項6】
前記EUVマスクのパターン面上に気体を流す気体供給機構をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のEUVマスク検査装置。
【請求項7】
前記EUVマスクのパターン面に紫外光を照射する光源をさらに備える請求項1〜6のいずれか1項に記載のEUVマスク検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−139593(P2010−139593A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314018(P2008−314018)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】