説明

FRP成形品の製造方法及びこの製造方法を用いて作製したFRP成形品

【課題】本発明は、液状樹脂を使用してモデル型、FRP型、及び成形品を作製する場合に、織物の織り目模様が精密に転写され自然な風合が再現でき、装飾性に優れる成形品の製造方法及びこの製造方法により作製した成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、モデル型の織り目模様を施す表面の上にモデルとなる織物を載せ、この織物に硬化剤を配合した液状樹脂を含浸させた後、前記織物の織り目模様が浮き出るように、織り目に残る前記液状樹脂の量を調整し、この織物を硬化させてモデル型を作製する工程と、このモデル型から反転してFRP型を作製する工程と、このFRP型から反転してFRP成形品を作製する工程とを有するFRP成形品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック(以下、「繊維強化プラスチック」を「FRP」と言う)成形品の製造方法及びこの製造方法を用いて作製したFRP成形品に関するものであり、より詳細には、表面に織物の外観を有するFRP成形品の製造方法及びこの製造方法を用いて作製したFRP成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のFRP成形品の製造方法において使用するモデル型は、成形するモデルを木型か石膏型あるいは、ウレタン発泡体などを用い、要求される形状に加工する等の手法で作製していた。また、モデル型表面の装飾加工については、金属に機械加工するか金属表面を部分的に腐食させ要求される模様を形成させる等の手法がとられていた。これらの方法で作製されるモデル型表面の装飾加工は機械加工になるため、幾何学模様や表面の艶消し模様、梨地模様など比較的単純な模様に限定される。したがって、このモデル型の表面形状を反転して作製されるFRP型、さらにこのFRP型の表面形状を反転して作製される成形品は、モデル型と同様に、幾何学模様や表面の艶消し模様、梨地模様など比較的単純な模様に限定される。
【0003】
自動車内装熱可塑性プラスチック製品に見られる、より高度な装飾性の高い模様を施した成形品において使用するモデル型は、エッチングや電鋳法により、要求される図柄を金型に掘って作製される方法が採られている。より安価に、皮シボ、織物、木目模様等の下地模様を付す方法としては、シリコンゴムにこれらの模様を現物から転写し、更に金属性粉末とセラミック粉末などを、溶剤を含んだ液状樹脂で、模様を転写したシリコンゴム型から反転して成形し、通気性を有するモデル型を作製する方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、熱可塑性の複合材料に、木目等の装飾模様を転写する為の方法としては、(a)加熱によってエポキシ樹脂を予備ゲル化しながらプレースを低い圧力下で作動し、次いで圧力を高めることによってモデル型を作製し、(b)同様にしてFRP型を作製する押型の製造方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
また、布表面の形状及び/又は模様と該布に施された印刷とがともに転写された外観を有する加飾射出成形品の製造方法として、印刷を施された布が金型内に張設された射出成形用金型を用いて合成樹脂を射出成形した後、その成形品表面に付着した上記布を剥離する成形用型の作製方法が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特公平1−57970号公報
【特許文献2】特開平5−261814号公報
【特許文献3】特許第2657662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらのモデル型をもとにしたFRP型によって制作する成形品の製造方法においては、モデル型、FRP型、及び成形品の作製は、いずれも熱可塑性樹脂の真空成形やブロー成形を使用するものであり、液状樹脂を使用する場合には適用できなかった。しかも、モデル型やFRP型の作製に高度な技術と時間がかかり、これらの型の作製費用も高価なものとなるため、比較的少量生産となる車両用内装FRP製品、住宅用内装製品等には不向きであった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、液状樹脂を使用してモデル型、FRP型、及びFRP成形品を作製する場合に、織物の織り目模様が精密に転写され自然な風合が再現でき、装飾性に優れるFRP成形品の製造方法及びこの製造方法により作製したFRP成形品を提供することを目的とする。また、モデル型やFRP型の作製期間も従来より短縮することができ、これらの型の作製費用も低減できるため、FRP成形品の製品単価に占める型費用が少なく、比較的少量生産となる車両用内装FRP製品、住宅用内装製品等に好適に適用可能なFRP成形品の製造方法及びこの製造方法により作製したFRP成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に関するものである。
(1) モデル型の織り目模様を施す表面の上にモデルとなる織物を載せ、この織物に硬化剤を配合した液状樹脂を含浸させた後、前記織物の織り目模様が浮き出るように、織り目に残る前記液状樹脂の量を調整し、この織物を硬化させてモデル型を作製する工程と、このモデル型から反転してFRP型を作製する工程と、このFRP型から反転してFRP成形品を作製する工程とを有するFRP成形品の製造方法。
(2) (1)において、モデルとなる織物が、レース織物、又は刺繍織物であるFRP成形品の製造方法。
(3) (1)又は(2)の製造方法により作製したFRP成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液状樹脂を使用してモデル型、FRP型、及びFRP成形品を作製する場合に、織物の織り目模様が精密に転写され自然な風合が再現でき、装飾性に優れるFRP成形品の製造方法及びこの製造方法により作製したFRP成形品を提供することができる。また、モデル型やFRP型の作製期間も従来より短縮することができ、これらの型の作製費用も低減できるため、FRP成形品の製品単価に占める型費用が少なく、比較的少量生産となる車両用内装FRP製品、住宅用内装製品等に好適に適用可能なFRP成形品の製造方法及びこの製造方法により作製したFRP成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる液状樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フエノ−ル樹脂が挙げられ、その中でも、エポキシ樹脂は樹脂粘度が800〜24,000mPa・sと範囲が広く、モデル型に使用する織物の繊維に含む樹脂量が粘度により異なるため、織り目模様が大きく変化するので、要求される織り目模様を変えることが出来る観点から望ましい。例えば、低粘度エポキシ樹脂(800〜1,200mPa・s、一例として東都化成株式会社製YD−118)の場合は、より織り目模様を鮮明に浮き立させる場合に好ましく、また、ある程度織り目を太く模様を大きく見せたい場合は、12,000〜15,000mPa・sの樹脂粘度(一例として東都化成株式会社製YD−128)が好ましい。
【0011】
本発明に用いるそれぞれの液状樹脂の硬化剤としては、一般的なものが使用できる。例えば、エポキシ樹脂に対しては種々のポリアミンや酸無水物等、不飽和ポリエステル樹脂に対してはメチルエチルケトンパーオキサイド等、フェノール樹脂に対してはヘキサメチレンテトラミン等である。例示すれば、エポキシ樹脂硬化剤は、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピキュアU、速硬化剤としては、富士化成工業株式会社製フジキュアーFXJ−8073−Bが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂硬化剤としては、日本油脂株式会社製パーメックN、フェノール樹脂硬化剤としては、昭和高分子株式会社製FRH−30、が好ましい。
【0012】
モデル型に使用する織物としては、平織り、目抜き平織り、綾織り、繻子織り等が使用できる。装飾性の高い織物として、レース織物(機械織り、手織り)、刺繍織物等が使用できる。室内を装飾する観点から、これらの装飾性の高い織物が好ましい。
【0013】
織物の繊維としては、化学繊維であるポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリイミド繊維等があり、無機繊維としては炭素繊維、ガラス繊維等がある。また、植物性の繊維としては綿、麻、シュロ、コウゾ、等がある。その他、動物繊維、絹等もある。なかでも、化学繊維および無機繊維は長繊維からなる織物となっているため、織り目模様を鮮明に浮き出させる観点からより好ましい。また、植物繊維および動物性繊維は、繊維が細いこともあり、液状樹脂を含浸させた場合、樹脂を多く含み、織り目模様を強調して浮き出させる事ができる。
【0014】
織物の厚さとしては、0.2mm〜5mm程度が好ましく、織り目を鮮明に出す観点から、0.5〜3mmがより好ましい。この厚さが、0.2mm未満では、織り目が見えにくい傾向にあり、厚さが5mmを超えると、織物に含浸させた液状樹脂が織物の低い場所に溜まり、織り目模様が鮮明に出にくい傾向がある。
【0015】
以下に、モデル型の作製方法について説明する。
【0016】
織物をモデル型にする方法は、例えば以下のように行うことができる。まず、図1に示すように、モデル型1の織り目模様3を施す表面を♯150程度のサンドペーパーで粗面化し、その上にモデルとなる織物2を載せ、この上から織物2を固める硬化剤を配合した液状樹脂4を、ハケまたは綿ローラ、脱泡ローラ等で織物2全体に含浸させる。その後、図2に示すように、必要とする織り目模様3が鮮明に出るよう、含浸させた液状樹脂4が硬化する前に、繊維9の織り目8に残る余分な液状樹脂4を除去するため、液状樹脂4を含まないハケか綿ローラで織物の上を何度か移動させ、余分な液状樹脂4をハケ又は綿ローラに吸着させ除去する。更に、織り目模様3がより鮮明に出るよう2〜5回程度アセトンを含ませたハケで、織り目8に残る樹脂を除去するため、ハケに含んだアセトンで丹念に織物2の表面の液状樹脂4を洗浄し除去する。このとき、繊維9には、液状樹脂4が含浸したまま残っている。このように、液状樹脂4を含ませ織り目模様3を浮き出させた織物2を、常温で硬化させた後に、60〜80℃の硬化炉に60〜120分入れアフターキュアーし、モデル型1を作製する。
【0017】
織り目模様3の鮮明度を変える手段としては、織物2を硬化させる液状樹脂4の粘度を変化させる方法が使用できる。例えば、織り目模様3を鮮明に浮き出させる場合は、液状樹脂4がエポキシ樹脂の場合、800〜1,200mPa・s程度の粘度が良く、織り目模様3を比較的大きく出すためには、12,000〜15,000mPa・sの粘度が好ましい。液状樹脂4の粘度が600mPa・s以下では、粘度が低く、織物2に含んだ液状樹脂4が、織物2の下側に流れる場合があり、織り目模様3が不鮮明になる傾向にある。また、液状樹脂4の粘度が15,000mPa・s以上になると、織物2の繊維9に液状樹脂4が多量に含まれ、織り目模様3が不鮮明になる傾向にある。
【0018】
また、液状樹脂4を硬化させる場合は、硬化温度により液状樹脂4の粘度が大きく変わるため、常温硬化が好ましい。これにより、FRP型をモデル型1から脱型する際、織り目模様3を破損させるのを抑制できる。硬化温度が50℃以上の高温硬化の場合は、温度が上がることにより液状樹脂4の粘度が急激に下がり、織物2に含ませた液状樹脂4が、織物2から流れ出て、織物2の繊維9内に空隙を生じる傾向にある。このため、FRP型に反転する段階でFRP型の作製に使用するゲルコート樹脂10が、液状樹脂4が流れ出た織物2の繊維9内に入り込んで硬化するため、FRP型5をモデル型1から脱型する際、織り目模様3を破損させる傾向にある。
【0019】
以下に、モデル型1からFRP型5を作製する方法について説明する。
【0020】
本発明のモデル型1からFRP型5を成形する際の離形処理方法は、以下のように行うことができる。まず、図3のモデル型1の織り目模様3を施した部分については、この部分に液状のシリコン系離形剤をハケ塗りし、乾燥機で乾燥させる。この後に、同様に液状離形剤をハケ塗りし、自然乾燥後タオル等で離形剤塗布面を丹念に拭き取る。本発明のモデル型1からFRP型5を成形する際は、モデル型1の織り目模様3も含め微細に転写されるため、モデル型1からFRP型5が離形しにくい傾向にある。しかしながら、この離形処理方法により織り目模様3を施した型面は充分離形することができる。なお、織り目模様3を施した部分の離形処理として、固形ワックスを使用すると、織り目模様3部分に固形ワックスが入り、模様が不鮮明になり好ましく無い。
【0021】
図3のモデル型1のその他の型面14は、液状離形剤を含ませたタオルで全面塗布し自然乾燥後、乾いたタオルで型面を磨き、乾燥機に入れ乾燥する。最後に固形ワックスを全面に塗りタオルで拭き取り、離形処理は終了する。
【0022】
本発明のモデル型1(図2)からFRP型5(図3)を成形する方法は、図5にその構成を例示するが、前記離形処理したモデル型1に施された織り目模様3の部分は微細な凹凸模様となるため、FRP型5用のゲルコート樹脂10を塗布する場合、微細な織り目模様3の部分に気泡が残らない様にするため、ハケにより手塗りするのが好ましい。通常のスプレーガンで塗布すると、微細な織り目模様3の織り目8(凹み)部分に充分ゲルコート樹脂10が入らず、気泡が残り好ましくない。
【0023】
織り目模様3の部分のゲルコート樹脂層10の厚みとしては、0.3〜1.0mm程度が好ましく、その他の型面14は、0.3〜0.5mmが好ましい。この厚さが、0.2mm未満では、部分的な型の補修などでゲルコート樹脂層10の表面を研削した際、補強層6のガラス繊維部分が露出する傾向があり、1.0mmを超えるとゲルコート層10に脱型の際、亀裂が出る傾向がある。
【0024】
本発明のFRP補強層6の構成方法としては、例えば、図5に示すように、前記モデル型1表面にFRP型用のゲルコート層10を施した後に、ガラス繊維からなるサーフィスマット11及びチョップドストランドマット12、ロービングクロス13に、液状樹脂4を塗布含浸させながら交互に積層し、肉厚を5〜8mmにする。積層の際は、ガラス繊維層間に気泡が残留しないよう、脱泡ローラで丹念に除去する等の方法がある。
【0025】
液状樹脂4の塗布量は、1mのチョップドストランドマット12に対し、1層当たり700〜900gが好ましい。この塗布量が、1層当たり450g/m未満では、樹脂不足となりガラス繊維が白化する傾向があり、1層当たり900g/mを超えると、樹脂過多となり積層作業がしずらくなる傾向がある。
【0026】
構成方法としては、例えば、図5に示すように、モデル型1にゲルコート樹脂層10を施し、硬化した後に硬化剤を配合した液状樹脂4を綿ローラで塗布し、その上にサーフィスマット11を載せ、更に液状樹脂4をサーフィスマット層11に含浸させる。この際、サーフィスマット層11に気泡が残らないよう綿ローラで樹脂を含ませる。次に、チョップドストランドマット12を載せ、綿ローラで樹脂を塗布後、脱泡ローラで気泡を除去する。その上にロービングクロス13を載せ、同様に液状樹脂4を含浸させる。この方法で、全体としては、サーフィスマット11+チョップドストランドマット12+ロービングクロス13+チョップドストランドマット12+ロービングクロス13+チョップドストランドマット12の順で積層する。サーフィスマット11、チョップドストランドマット12、ロービングクロス13を積層する層数は適宜調整する。
【0027】
積層後の硬化方法は、常温で12時間以上自然硬化させ、作製型に応じて木材や金属で変形防止の補強後、好ましくは60〜80℃の温度で、好ましくは120〜360分間維持して樹脂を硬化させる。この温度が、40℃未満では、樹脂の硬化が充分でなくゲルコート層10の表面高度が得られず、FRP型5の表面に傷が付きやすい傾向があり、硬化温度が100℃を超えると、モデル型1と積層したFRP型5が熱変形し、型形状が変化する傾向がある。硬化したFRP型5は、型温度が常温に戻ってからモデル型1から脱型し、所定の寸法に切断して量産型とする。
【0028】
以下に、FRP型1から本発明のFRP成形品7を作製する方法について説明する。
【0029】
本発明のFRP型5からFRP成形品7を成形する際の離形処理方法は、FRP型5の織り目模様3を施した部分については、液状のシリコン系離形剤をハケ塗りし、乾燥機で乾燥させる。この後に、同様に液状離形剤をハケ塗りし、自然乾燥後タオル等で離形剤塗布面を丹念に拭き取る。FRP成形品7にはFRP型5の織り目模様3も含め微細に転写されるため、FRP成形品7がFRP型5から離形しにくい傾向にある。しかしながら、この離形処理方法により織り目模様3を施した型面は充分離形することが可能になる。なお、織り目模様3を施した部分の離形処理として、固形ワックスを使用すると、織り目模様3部分に固形ワックスが入り、模様が不鮮明になり好ましく無い。
【0030】
FRP型5の織り目模様3を施した部分の他の型面14は、液状離形剤を含ませたタオルで全面塗布し自然乾燥後、乾いたタオルで型面を磨き、乾燥機に入れて乾燥する。最後に固形ワックスを全面に塗りタオルで拭き取り、離形処理は終了する。
【0031】
FRP型5を成形する方法は、前記離形処理したFRP型5に施された織り目模様3の部分は微細な型模様となるため、ゲルコート樹脂10を塗布する場合、微細な織り目模様3の部分に気泡が残らない様にするため、ハケにより手塗りするのが好ましい。通常のスプレ−ガンで塗布すると、微細な織り目模様3(凹み)の部分に充分ゲルコート樹脂10が入らず、気泡が残り好ましくない。
【0032】
織り目模様3の部分のゲルコート層10の厚みとしては、0.3〜1.0mm程度が好ましく、その他の型面14は、0.3〜0.5mmが好ましい。この厚さが、0.2mm未満では、部分的な型の補修などでゲルコート層10の表面を研削した際、補強層6のガラス繊維部分が露出する傾向があり、1.0mmを超えるとゲルコート層10に脱型の際、亀裂が出る傾向がある。
【0033】
ゲルコート10終了後の補強層6のガラス繊維の構成方法は、例えば、前記FRP型5の表面にゲルコート層10を施した後に、ガラス繊維からなるサーフィスマット11及びチョップドストランドマット12に、液状樹脂4を塗布含浸させながら積層し、肉厚を3〜5mmにする。積層の際は、ガラス繊維層間に気泡が残留しないよう、脱泡ローラで丹念に除去する等の方法がある。
【0034】
液状樹脂4の塗布量は、1mのチョップドストランドマット12に対し、1層当たり700〜900gが好ましい。この塗布量が、1層当たり450g/m未満では、樹脂不足となりガラス繊維が白化する傾向があり、1層当たり900g/mを超えると、樹脂過多となり積層作業がし難くなる傾向がある。
【0035】
構成方法としては、例えば、図6に示すように、FRP型5にゲルコート層10を施し、硬化した後に、硬化剤を配合した液状樹脂4を綿ローラで塗布し、その上にサーフィスマット11を載せ、更に液状樹脂4をサーフィスマット層11に含浸させる。この際、サーフィスマット層11に気泡が残らないよう綿ローラで樹脂を含ませる。次に、チョップドストランドマット12を1層載せ、綿ローラで樹脂を塗布後、脱泡ローラで気泡を除去する。この方法で更にチョップドストランドマット12を積層する。
【0036】
積層後の硬化方法は、常温で6時間以上自然硬化させ、その後、好ましくは50〜60℃の温度で、好ましくは60〜120分間維持して樹脂の硬化を促進させる。この温度が、40℃未満では、樹脂の硬化が充分でなくゲルコート層の表面高度が得られず、表面に傷が付きやすい傾向があり、硬化温度が60℃を超えると、積層したFRP成形品7の製品面と型面とが剥がれ、表面に型離れ模様が出て、仕上げが必要がとなる傾向がある。硬化したFRP成形品7は、型温度が常温に戻ってから、FRP型5から脱型し所定の寸法に切断し所望の製品になる。
【0037】
以上のように、モデル型1、FRP型5、及びFRP成形品7を作製することにより、織物2の織り目模様3が精密に転写され自然な風合が再現でき、装飾性に優れるFRP成形品7の製造方法及びこの製造方法により作製したFRP成形品7を提供することが可能となる。また、モデル型1やFRP型5の作製期間も従来より短縮することができ、これらの型の作製費用も低減できるため、FRP成形品7の製品単価に占める型費用が少なく、比較的少量生産となる車両用内装FRP製品、住宅用内装製品等に好適に適用可能なFRP成形品7の製造方法及びこの製造方法により作製したFRP成形品7を提供することが可能となる。
【実施例】
【0038】
以下、図1〜図6に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0039】
本実施例では、液状樹脂4として、低粘度エポキシ樹脂(800〜1,200mPa・s、東都化成株式会社製 YD−118)を用いた。また、硬化剤としては、富士化成工業株式会社製フジキュアーFXJー8073−Bを用いた。モデル型1に使用する織物2としては、刺繍付レース織物を用いた。織物2の繊維9としては、ポリエステル繊維を用いた。織物2の厚さとしては、約1mmのものを用いた。
【0040】
モデル型1は、以下のように作製した。図1に示すように、モデル型1の織り目模様3を施す表面を♯150程度のサンドペーパーで粗面化し、その上にモデルとなる織物2を載せ、この上から織物2を固める硬化剤を配合した液状樹脂4を、脱泡ローラで織物2の全体に含浸させる。その後、図2に示すように、必要とする織り目模様3が鮮明に出るよう、含浸させた液状樹脂4が硬化する前に、液状樹脂4を含まない綿ローラで織物2の上を何度か移動させ、織り目8に残る余分な液状樹脂4を綿ローラに吸着させ除去する。更に、織り目8がより鮮明に出るよう2〜5回程度アセトンを含ませたハケで、織り目8に残る液状樹脂4を丹念に洗浄し除去する。このように、液状樹脂4を含ませ織り目模様3を浮き出させた織物2を、常温で120分硬化させた後に、80℃の硬化炉に60分入れアフターキュアーし、モデル型1を作製する。
【0041】
モデル型1からFRP型5を作製する方法は、図5にその構成を示すが、以下のように行った。モデル型1の織り目模様3を施した部分について、液状のシリコン系離形剤(FREKOTE社製 FREKOTE 700−NC)をハケ塗りし、60℃の乾燥機で30分乾燥させる。これを5回繰り返した後に、同様に液状離形剤をハケ塗りし、自然乾燥後タオルで離形剤塗布面を丹念に拭き取る。モデル型1のその他の型面14は、液状離形剤を含ませたタオルで全面塗布し自然乾燥後、乾いたタオルで型面を磨き、60℃の乾燥機に30分入れる。これを3回繰り返し、最後に固形ワックス(TR INDUSTRIES社製 MOLD RELEASE)を全面に塗りタオルで拭き取り、離形処理は終了する。
【0042】
前記離形処理したモデル型1に施された織り目模様3の部分は微細な凹凸模様となるため、気泡が残らないように、ハケを用いた手塗りにより、FRP型5用ゲルコート樹脂10(東京インキ株式会社製 PCG−8K 327)を塗布する。織り目模様3の部分のゲルコート層10厚みとしては、0.5mm程度とし、その他の型面14の部分は、0.3mm程度とする。
【0043】
図5に示すように、モデル型1にゲルコート層10を施し、硬化した後に硬化剤を配合した液状樹脂4を綿ローラで塗布し、その上にサーフィスマット11(旭ファイバー株式会社製 SMB−3600C)を載せ、更に液状樹脂4をサーフィスマット層11に含浸させる。この際、サーフィスマット層11に気泡が残らないよう綿ローラで液状樹脂4を含ませる。次に、チョップドストランドマット12(富士ファイバー株式会社製 FEM−450)を1層載せ、綿ローラで液状樹脂4を塗布後、脱泡ローラで気泡を除去する。チョップドストランドマット12をもう1層載せて同様に液状樹脂4を含浸させた後、その上にロービングクロス13(富士ファイバー株式会社製 WR−570)を1層載せ、同様に液状樹脂4を含浸させる。この方法で、全体としては、サーフィスマット11(1層)+チョップドストランドマット12(2層)+ロービングクロス13(1層)+チョップドストランドマット12(1層)+ロービングクロス13(1層)+チョップドストランドマット12(2層)の順で積層する。液状樹脂4の塗布量は、1層当たり、塗布面積1mに対し、800g程度とする。また、全体の肉厚は、約5mmとする。
【0044】
積層後の硬化方法は、常温で12時間自然硬化させ、木材や金属で変形防止の補強後、80℃の温度で、120分維持して樹脂を硬化させる。硬化したFRP型は、型温度が常温に戻ってからモデル型から脱型し、所定の寸法に切断して量産型とする。以上のようにして、図3に示すFRP型5を作製する。
【0045】
FRP型5からFRP成形品7を作製する方法は、図6にその構成を示すが、以下のように行った。
【0046】
FRP型5の織り目模様3を施した部分については、液状のシリコン系離形剤(FREKOTE社製 FREKOTE 700−NC)をハケ塗りし、60℃の乾燥機で30分乾燥させる。これを5回繰り返した後に、同様に液状離形剤をハケ塗りし、自然乾燥後タオルで離形剤塗布面を丹念に拭き取る。FRP型5の織り目模様3を施した部分の他の型面14は、液状離形剤を含ませたタオルで全面塗布し自然乾燥後、乾いたタオルで型面を磨き、60℃の乾燥機に30分入れる。これを3回繰り返し、最後に固形ワックス(TR INDUSTRIES社製MOLD RELEASE)を全面に塗り、タオルで拭き取り、離形処理は終了する。
【0047】
離形処理したFRP型5に施された織り目模様3の部分は微細な凹凸模様となるため、ゲルコート樹脂10(東京インキ株式会社製 PCG−8K 327)を塗布する場合、ハケを用いた手塗りする。織り目模様3の部分のゲルコート層10厚みとしては、0.5mm程度とし、それ以外の部分は、0.3mm程度とする。
【0048】
図6に示すように、FRP型5にゲルコート層10を施し、硬化した後に、硬化剤を配合した液状樹脂4を綿ローラで塗布し、その上にサーフィスマット11(旭フアイバー株式会社製 SMB−3600C)を載せ、更に液状樹脂4をサーフィスマット層11に含浸させる。この際、サーフィスマット層11に気泡が残らないよう綿ローラで液状樹脂4を含ませる。次に、チョップドストランドマット12(富士ファイバー株式会社製 FEM−450)を1層載せ、綿ローラで液状樹脂4を塗布後、脱泡ローラで気泡を除去する。この方法で更にチョップドストランドマット12を2層積層する。液状樹脂4の塗布量は、1層当たりの塗布面積1mに対し、800g程度とする。また、全体の肉厚は、約5mmとする。
【0049】
積層後の硬化方法は、常温で6時間自然硬化させ、60℃の温度で、120分間維持して液状樹脂4の硬化を促進させる。硬化したFRP成形品7は、型温度が常温に戻ってから、FRP型5から脱型し所定の寸法に切断し所望の製品になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例のモデル型の断面図である。
【図2】実施例のモデル型の断面図である。
【図3】実施例のFRP型の断面図である。
【図4】実施例のFRP成形品の断面図である。
【図5】実施例のFRP型の構成の断面図である。
【図6】実施例のFRP成形品の構成の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…モデル型、2…織物、3…織り目模様、4…液状樹脂(エポキシ樹脂)、5…FRP型、6…補強層、7…FRP成形品、8…織り目、9…繊維、10…ゲルコート樹脂(層)、11…サーフィスマット(層)、12…チョップドストランドマット(層)、13…ロービングクロス(層)、14…その他の型面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデル型の織り目模様を施す表面の上にモデルとなる織物を載せ、この織物に硬化剤を配合した液状樹脂を含浸させた後、前記織物の織り目模様が浮き出るように、織り目に残る前記液状樹脂の量を調整し、この織物を硬化させてモデル型を作製する工程と、
このモデル型から反転してFRP型を作製する工程と、
このFRP型から反転してFRP成形品を作製する工程とを有するFRP成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
モデルとなる織物が、レース織物、又は刺繍織物であるFRP成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法により作製したFRP成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−66919(P2009−66919A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237949(P2007−237949)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】