説明

GLP−1ペプチドを含む球状のマイクロカプセル、その製造及び使用

本発明は、少なくとも一つの表面コーティング及び一つの核を含み、上記一つの表面コーティングは架橋ポリマーを含んでおり、上記一つの核は架橋ポリマー及びGLP−1ペプチド、そのフラグメント若しくは変異又はGLP−1ペプチドを含む融合ペプチド、そのフラグメント若しくは変異を発現及び分泌する、球状のマイクロカプセルを提供する。本出願はさらにこれらの球状のマイクロカプセルを製造する方法、並びに、例えば、タイプ2の糖尿病、体重疾患及び病気若しくはこれらに関連する症状、神経変性の疾患及び病気若しくはこれらに関連する症状の処置、又はアポトーシスに関連する疾患及び病気若しくは症状の処置への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの表面コーティング、及び核を含み、上記少なくとも一つの表面コーティングは架橋ポリマーを含み、上記核は、架橋ポリマー、並びにGLP−1ペプチド、そのペプチドのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異の発現及び分泌が可能な細胞を含む、球状のマイクロカプセルに関するものである。本発明はさらに、これらの球状のマイクロカプセルを製造する方法、並びに、これらのマイクロカプセルの使用であって、例えば、糖尿病タイプII、体重疾患及びそれに関連する病気若しくは症状、神経変性の疾患及びそれに関連する病気若しくは症状、又はアポトーシスに関連する疾患及び病気若しくは症状を処置するための使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン遺伝子はよく研究されている遺伝子である(例えば、非特許文献1を参照のこと)。高分子量の前駆体分子であるプレプログルカゴン分子は、膵臓α細胞並びに空腸及び大腸L細胞において合成される。プレプログルカゴンは、180アミノ酸長のプロホルモンであり、その配列は、グルカゴンに加えて、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)及びグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)という、関連した構造の二つの配列を含んでいる。プレプログルカゴン分子では、GLP−1及びGLP−2の間に、17アミノ酸のペプチド配列(より正確に言えば、15アミノ酸の配列にC末端のRR切断部位が付加したもの)の介在ペプチド2(IP2)がある。IP2の配列(上記前駆体分子において、GLP−1及びGLP−2の間に位置している)は、通常、GLP−1の第37番目のアミノ酸の後ろでタンパク質分解的に切断される。従って、プレプログルカゴン分子は、細胞及び環境に依存して、処理を受けていない形態の37アミノ酸のペプチドであるGLP−1(1−37)を含む、様々なペプチドに切断される。一般に、上記処理は、膵臓及び腸において行われる。GLP−1(1−37)の配列は、さらにタンパク質分解的に切断されて、処理された形態の31アミノ酸である活性型GLP−1(7−37)、又はGLP−1(7−36)アミドになり得る。即ち、GLP−1(7−37)という表示は、上記親ペプチドGLP−1のN末端から数えて第1番目から(第1番目を含む)第37番目まで(第37番目を含む)のアミノ酸残基からなる問題のフラグメントを意味する。GLP−1(7−36)アミド及びGLP−1(7−37)のアミノ酸配列は、下記式(I)により与えられる(配列番号25)。
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−X (I)
上記式(I)は、XがNHのとき、GLP−1(7−36)アミドを示し、XがGly−OHのとき、GLP−1(7−37)を示す。
【0003】
GLP−1は、消化管ホルモンであり、β細胞においてアデニル酸シクラーゼ及びプロテインキナーゼの活性を促進する働きを有する、最も強力な内在性のインスリン分泌性因子である。生理的には、上部の腸からの胃抑制ポリペプチドとともに、血糖値を下げる内分泌ホルモンとして働く。即ち、GLP−1は、食物の摂取に応じて分泌され、例えば、胃、肝臓、膵臓及び脳への複合的な効果を有しており、それらは一斉に血糖を調整する。その結果、グルカゴン様ペプチドGLP−1(7−37)アミド及びそのアミド化されていない類似体であるGLP−1(7−37)は、その炭水化物代謝への強力な作用及び糖尿病タイプIIを含む糖尿病の処置への適用可能性により、相当な注目を集めている。糖尿病タイプIIは、インスリンが存在していても細胞が適切な反応を示さないことから、インスリン抵抗性として特徴付けられている。このことは、糖尿病タイプIよりも、より複雑な問題となる。糖尿病タイプIIは、その症状が典型的には軽症であり(ケトアシドーシス無し)、散発性であるために、診断されるまで、何年もの間、患者に認識されないことがある。しかし、認識されなかった糖尿病タイプIIは、腎不全及び冠状動脈性心臓病を含む深刻な合併症が発生し得る。これは、罹患率及び死亡率の増加を招く。
【0004】
しかし、GLP−1(7−36)アミド又はGLP−1(7−37)は血中における寿命が短い。これらのペプチドは、ジペプチジル・ペプチダーゼIV(DPP−IV)によって第8番目の残基と第9番目の残基との間が切断され、不活性のペプチドとなる。そのため、外から投与されたGLP−1は、処置された患者の体内で非常に短命であり、治療のための適用におけるその生理学的な効果を発揮しない。
【0005】
自然に存在するGLP−1(GLP−1(7−37))の類似体であって、(DPP−IVに対して)安定しているものを合成するための様々な試みが行われている。特に、生体ではAlaである第8番目の残基が、他の残基、例えばGly、Ser又はThrに置き換えられた(非特許文献2)。Gly8又はG8類似体は、合成された分子として、又、変異ポリペプチドを分泌するように遺伝学的に改変された細胞株により製造されたものとして、頻繁に試験された(非特許文献3)。生物学的な活性を損なわずに生体における安定性を向上させることを目的として、様々な改変がGLP−1(7−37)に導入されている。しかし、付随する問題のために、これらの手法はいかなる治療上の有効性も獲得していない。
【0006】
さらに、これらの手法は、生体において長期間に渡ってGLP−1を供給するものではない。これは、上述したようなタンパク質分解的な分解、GLP−1の代謝、及び体内で典型的に起きる通常のタンパク質の分解が原因である。従って、GLP−1を必要とする患者は、長期間、悪ければ生涯に渡って、治療が必要な疾病を患っている間、短い間隔毎に、GLP−1又はその類似体若しくは変異体の、一回又は複合回の投与を受けなくてはならない。そして、GLP−1の投与は、医師又は患者本人の何れかによって行われる必要がある。この問題を回避するために、GLP−1をエンコードし、発現する核酸を含んでいる細胞を患者に提供することによって、GLP−1を投与することもできる。そのような細胞の移植は、生体における長期のGLP−1供給を確保し、移植された細胞からのGLP−1の分泌は、GLP−1を目的の部位へ直接供給する。
【0007】
特許文献1は、公衆が利用可能な不死化された細胞株から、初代培養株を分化させたものまで様々なタイプの細胞に対して組み込むことができる、多量体の、GLP−1発現カセットを作り出すための手法を開示している。実施例は、哺乳類の中枢神経系から得られた、EGF応答性のニューロスフィア、bFGF応答性の神経前駆幹細胞を含んでいるが、稼働した実施例は、ハムスターの乳児の肝臓(BHK)細胞を用いている。形質移入され、移植された細胞は、首尾よく糖尿病のマウスを処理し、糖尿病でないマウスと実質的に同等の血糖値調節が行われたと記載されている。しかし、この種の移植技術は、例えば糖尿病患者に対する日常的な治療に適合するものではない。
【0008】
その上、例えばよく知られているように、免疫システムは、典型的には、外来の細胞を認識し、個体を外来性の物体、例えば外来の細胞から保護するために、免疫反応を引き起こす。従って、GLP−1又はその変異体若しくは誘導体を発現することができる細胞の移植は、個体における免疫反応を導く。そのような防衛反応は、治療中における甚大且つ望ましくない副作用を引き起こす可能性があり、治療する個体に深刻な合併症又は死さえももたらす可能性がある。
【特許文献1】国際公開WO99/53064号パンフレット
【非特許文献1】White, J.W. et al., 1986 Nucleic Acid Res. 14(12) 4719−4730
【非特許文献2】Burcelin, R. et al. (1999) Metabolism 48, 252−258
【非特許文献3】Burcelin, R., et a1 (1999) Annals of the New York Academy of Sciences 875: 277−285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上をまとめると、現時点において、GLP−1に基づき、長期間に渡って血糖値を下げることができる有効な糖尿病タイプIIの治療法は知られていない。言い換えれば、従来の技術は、GLP−1ペプチドの複数回にわたる投与の必要性がなく、又例えば、移植されたGLP−1を発現する同種異系(Allogenic)細胞に対する望ましくない免疫反応の危険性を伴わずに、GLP−1について知られている有益な効果、例えば、その、肥満した患者において、栄養分の血流への移行を強力に低減させる活性や、インスリンを促進する活性などを全般的に引き出した治療法を提供することに失敗している。
【0010】
従って、本発明は、GLP−1をベースとするペプチド分子であって、GLP−1ペプチドを繰り返し投与する必要性、又は、望ましくない免疫反応を引き起こす危険性がなく、生体において長期間に渡って生物学的に活性なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基礎を成す目的は、少なくとも一つの表面コーティング、及び(球状の)核を含み、上記少なくとも一つの表面コーティングは、架橋ポリマーからなるか、それを含み、上記(球状の)核は、架橋ポリマー、並びにGLP−1ペプチド、そのペプチドのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異の発現及び分泌が可能な細胞からなるか、それらを含む、球状のマイクロカプセルを提供することにより、解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の球状のマクロカプセルの(球状の)核は、典型的には、架橋ポリマー、並びにGLP−1ペプチド、そのペプチドのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異の発現及び分泌が可能な細胞からなるか、それらを含んでいる。
【0013】
本発明において、(球状の)核の架橋ポリマーは、細胞をその空洞に埋め込んでいる骨格構造を形成する。なお、上記核は、球状であってもよいし、非球状であってもよい。細胞は、上記骨格構造内に個別に埋め込まれていてもよいし、典型的には、例えば、約10から約10000の細胞(例えば、約10から約500、約10から約1000、又は約10から約10000の細胞)の凝集した細胞(のプール)のような凝集した状態で埋め込まれていてもよい。上記(球状の)核は好ましくは、上記架橋ポリマーと、GLP−1ペプチド、そのペプチドのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異の発現及び分泌が可能な細胞とのの均質な分布を含んでいる。骨格構造及び埋め込まれた細胞を上で規定したように含んでいる上記核は、好ましくは、下に開示する方法により調製される。
【0014】
本発明の球状のマイクロカプセルの核内において細胞は、0.5×10細胞/ml架橋骨格ポリマーから5×10細胞/ml架橋骨格ポリマーの濃度で存在し得、より好ましくは、1×10細胞/ml架橋骨格ポリマーから5×10細胞/ml架橋骨格ポリマーの濃度で存在し得、最も好ましくは、2×10細胞/ml架橋骨格ポリマーから4×10細胞/ml架橋骨格ポリマーの濃度で存在し得る。
【0015】
好適には、本発明の球状のマイクロカプセルの核の直径は、具体的な処置に応じて適宜変化し得る。典型的には、本発明の球状のマイクロカプセルの核の直径は、約20から約4000μmの範囲であり、より好ましくは、約20から約3000μmの範囲であり、最も好ましくは、約20から約2000μmの範囲である。
【0016】
本発明の球状のマイクロカプセルを調製するとき、カプセル封入された(同種異系の)細胞の全体を、上記ポリマー基質に埋め込むことが非常に重要である。用語「球状」は、最も広い意味に理解される。球状の粒子は、球に似た形状を有していると理解される。また、上記形状は、対称形状であっても非対称形状であってもよい。例えば、球状のマイクロカプセルは、楕円体形状を有していてもよい。それほど好ましくない実施形態では、発明のマイクロカプセルは、上述した意味において球状ではなく、例えば、マイクロカプセルの表面上の部分が突き出ていたり、陥没していたりするといった、任意の形状であってもよい。本明細書では、「球状の」マイクロカプセルについて言及されているが、「非球状の」マイクロカプセルも又供給され、調整され、使用され得る。
【0017】
核の周縁に配置されている(同種異系の)細胞、又は、骨格構造から突き出ている細胞は、免疫学的な問題を引き起こし得る。即ち、免疫システムは、そのようなマイクロカプセルを外来性の成分として認識するだろうし、それゆえ、それらのマイクロカプセルは、免疫システムにより攻撃されるだろう。このような作用は、細胞の濃度を低減させることにより避けることができるだろうが、本発明は、マイクロカプセルの効能を改善するために、核の細胞数を増加させることを含む。カプセル封入された細胞の濃度が高まるに従い、移植すべきそのマイクロカプセルの総量は小さくなる。核内において高濃度の細胞を用いた場合の免疫学的な問題を避けるために、本発明は、少なくとも一つの、本発明の球状のマイクロカプセルの(球状の)核上の表面コーティングを提案する。この表面コーティングは、例え、細胞が核の周縁に非常に近いところに位置していたとしても、免疫応答が生じることを防ぐ。なぜなら、表面コーティングが、障壁として働くため、宿主の免疫システムは、上記細胞に接触することができないからである。この表面コーティングは、典型的には、上記で規定した架橋ポリマーであり、細胞を伴わない。具体的な実施形態によれば、上記で規定した(球状の)核は、少なくとも一つ以上の表面コーティング、例えば、1、2、3、4、5、5〜10又はそれ以上の表面コーティングにより覆われている。典型的には、各表面コーティングは、核の周りに一様な厚みを有している。発明のマイクロカプセルの表面コーティングの厚さは、適宜変更し得、典型的には、約10から約4000μmの範囲であり、好ましくは、約10から約3000の範囲であり、なお好ましくは、約10から約2000μmの範囲である。
【0018】
カプセル封入のために好適である公知の任意の(架橋)ポリマーを、本発明の球状のマイクロカプセルの(球状の)核及び表面コーティングの形成のために用いることができる。好ましくは、一方で、その架橋された状態において、酸素及び栄養素を供給のための浸透性を有し、他方で、核の細胞により発現及び分泌されるペプチドを、マイクロカプセルから患者の組織又は血流へと拡散させ得るようなポリマーが用いられる。その上、架橋ポリマーは、個体の免疫システムの成分が、基質を通過して浸入することを防ぐ。一例として、例えば、選ばれたタンパク質又はタンパク質をベースとしたポリマー(例えば、コラーゲン、アルブミン等)、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−L−リジン、ポリ−L−グルタミン酸等)、多糖類及びその誘導体(例えば、カルボキシルメチルセルロース、セルロース硫酸塩、アガロース、褐藻類(例えば、コンブ(Laminarales)種、エクトカルパレス(Ectocarpales)種、ヒバマタ(Fucales)種等)のアルギン酸を含むアルギン酸、カラギーナン、ヒアルロン酸、ヘパリン及び関連するグルコサミノ硫酸塩、デキストラン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体)のような天然のポリマーから得られる合成、半合成、及び、天然の水溶性の(バイオ)ポリマーを用いることができる。又例えば、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸塩等)、ポリアミド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリフォスファゼン、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリテトラフルオロエチレン等のような合成ポリマーも用いることができる。さらに、ブロックポリマー、即ち、上述のポリマーの二つ以上の組み合わせ由来のポリマーも同様に用いることができる。そのようなブロックポリマーは、当業者は、所望の特性、例えば、孔のサイズ、架橋の状態、毒性、ハンドリング、生体適合性等に応じて、適宜選択することができる。任意の上記ポリマーは、本発明において、「化学的に異なるポリマー」として規定される。即ち、これらの各ポリマーは、それぞれ、基本的には、他の上述のポリマーと、同一の分子量及び構造を示すことはない。対照的に、「化学的に同一のポリマー」とは、同一の分子量及び構造を有するポリマーを意味する。最後に、上記ポリマーの混合物も又同様に包含され、そのような混合物に含まれるポリマーの量は、例えば上述したような所望の特性に応じて、当業者は適宜選択することができる。この点において、ポリマーの混合物は、他のポリマーの混合物(「化学的に同一なポリマー」)と、もし、得られるポリマー混合物の全体的な分子量、及び、混合物の個々のポリマーのモル百分率が同一であれば、化学的に同一であり得る。
【0019】
好ましくは、本発明において、アルギン酸が、その生体適合性及び架橋特性により、(球状の)核及び/又は表面コーティングの形成のためのポリマーとして用いられる。化学的な観点から見ると、アルギン酸は、β−D−マンヌロン酸及びα−L−グルロン酸のヘテロポリマー領域から分離される、両酸のホモポリマー群由来のアニオン性多糖類である。アルギン酸は、水溶性であり、ナトリウム又はカリウムのような一価の陽イオンの存在下で高粘度溶液を形成する。アルギン酸の単鎖と、二価、三価、又は多価の陽イオン(例えば、カルシウム、バリウム、又はポリリジン)との相互作用により、架橋された水に不溶のヒドロゲルが形成される。好ましくは、(例えば、本明細書において参考として援用される独国特許出願公開第DE19836960号明細書に従って)精製されたアルギン酸、より好ましくは、生理食塩溶液に溶けたアルギン酸ナトリウム又はカリウムが、カプセル封入のために用いられる。このようなアルギン酸は、典型的には、約20kDaから約10000kDa、より好ましくは、約100kDaから約1200kDaの平均分子量を示す。本発明の球状のマイクロカプセルの(球状の)核及び表面コーティングの形成のために用いるアルギン酸は、好ましくは、溶液、より好ましくは、水溶液として供給され得る。例えば、用いられるアルギン酸の0.1%(w/v)アルギン酸水溶液の粘度は、約3から約100mPa・sの範囲であり、より好ましくは、約10から約60mPa・sの範囲である。
【0020】
本発明において、アルギン酸が用いられる場合、β−D−マンヌロン酸が豊富なアルギン酸(例えば、Biomaterials,Vol.8,1997,pp.707〜713に開示されているようなもの)が好ましい。本発明の球状のマイクロカプセルを調製するために好適なアルギン酸は、これに限定するものではないが、例えば、Laminarales、Ectocapales、Fucales等の褐藻類及び他のアルギン酸を含有している藻類を含む、ある種の藻類から抽出することにより取得可能である。アルギン酸は、当業者において公知のアルギン酸を調製するための任意の方法に従い、新鮮な藻類の材料又は乾燥された材料から単離することができる。好ましくは、本明細書において参考として援用される欧州特許第EP1109837号明細書に従った方法が適用される。欧州特許第EP1109837号明細書に従った方法は、簡潔に言えば、以下の工程からなる:最初の藻類の材料が、まず、錯化剤の存在下において抽出される。抽出は、炭酸ナトリウム溶液中が適切である。次に、造粒剤、及び、必要であればイオン交換体(例えば、アンバーライト)を加えることにより、溶液中に存在する全ての細胞成分及び粒子を沈殿させる。続いて、溶液が濾過される。濾過は、複数の濾過工程を包含しており、各濾過工程毎に、例えば、20μmから0.2μmまで、孔のサイズを減少させるようにしてもよい。アルギン酸は、好適な沈殿剤により、濾過された溶液において沈殿させられる。沈殿は、好ましくは、アルコール(例えば、エタノール)を用いて行われる。或いは、酸、又は、その他の好適な沈殿剤が、沈殿のために用いられ得る。沈殿溶液中のアルコール濃度は、典型的には、10%(v/v)及び50%(v/v)の間の範囲であり、好ましくは、30%(v/)及び約50%(v/v)の間の範囲である。この濃度範囲内であれば、免疫学的に活性な多糖類(例えば、フコイダン)に起因する不純物は、溶液内に残存するため、アルギン酸から分離することができる。好ましくは、沈殿の間、推進体(例えば、空気)が溶液中を流れる。沈殿したアルギン酸は、注入された空気により、上方に押し上げられ、適切な器具(例えば、網、篩等)を用いることにより、溶液表面から容易に分離することができる。収集されたアルギン酸は、続いて、圧濾器を用いて乾燥され得る。上述した方法の工程は、上記のように行ってもよいし、加えて、一つかそれ以上の工程を、一回かそれ以上適宜繰り返してもよい。さらに、上述した方法の工程は、用途に応じて、部分的に改変された形態で繰り返してもよい。最後まで実行された後、高度に精製されたアルギン酸は、エタノールで洗浄され、それが適切ならば水でも洗浄され、室温にて乾燥される。最初の材料によって、精製されたアルギン酸は、マンヌロン酸及びグルロン酸におけるモノマー比率が0.1から9の範囲であり(マンヌロン酸が1%から90%に対応)、平均分子量は、約10kDaから1000kDa超の間である。自己免疫性糖尿病のBB/OKラットに移植されたこのタイプの精製されたアルギン酸は、いかなる免疫反応も引き起こさないか、移植の3週間後に、非常に弱い反応を示すのみであった。
【0021】
本発明の球状のマイクロカプセルの(球状の)核及び少なくとも一つの表面コーティングの調製のために用いられる上記架橋ポリマーは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1の実施形態において、核及び少なくとも一つの表面コーティングの調製のために用いられる架橋ポリマーは、同一又は異なる濃度の、化学的に同一なポリマーから構成され得る。好ましくは、核及び少なくとも一つの表面コーティング内に存在するポリマーは、上記で規定した任意のポリマーから選ばれた架橋していないポリマーの溶液を用いて調製される。ポリマー溶液において、架橋していないポリマーは、典型的には、架橋していないポリマーが約0.1%(w/v)から約8%(w/v)の濃度で、より好ましくは、約0.1%(w/v)から約4%(w/v)の濃度で、なお好ましくは、約0.5%(w/v)から約2.5%(w/v)の濃度で、最も好ましくは、約1%(w/v)から約2%(w/v)の濃度で存在する。上記で開示したアルギン酸をポリマーとして用いた場合、本発明の球状のマイクロカプセルの(球状の)核及び少なくとも一つの表面コーティングの調製のためのポリマー溶液の濃度は、0.1から4%(w/v)、好ましくは0.4から25(w/v)の範囲から選択され得る。アルギン酸の異なる濃度が、本発明の球状のマイクロカプセルの(球状の)核及び少なくとも一つの表面コーティングの調製のために用いられ得る。好ましくは、核及び/又は少なくとも一つの表面コーティングの調製のために用いられる架橋されていないポリマーは、化学的に同一なポリマーであり、より好ましくは、同一の濃度であり、例えば、上記で規定した濃度の上記で規定したポリマーである。この場合、用語「%(w/v)」は、架橋されていないポリマーの濃度を表し、典型的には、例えば、好適な溶液に架橋していないポリマーを溶かした後に(架橋の前に)、ポリマー溶液の総容量に対するポリマーの乾燥時の信頼できる量に基づいて測定される。しかし、上記濃度は又、例えば、通常の条件下(室温、常圧等)で液状の凝縮状態で存在するポリマーを用いる場合等、それが適切であれば、対応する「%(v/v)」濃度によって示され得る。
【0022】
第2の実施形態において、核及び/又は少なくとも一つの表面コーティングの調製のために用いられる架橋ポリマーは、同一又は異なる濃度の、化学的に異なるポリマーから構成され得る。濃度は、上記で規定したものから選択され得る。さらに、ポリマーは、例えば、天然のポリマー、合成のポリマー及びポリマーの組み合わせ、即ちブロックポリマーを含む、上記で規定したポリマーから選択され得る。
【0023】
加えて、各表面コーティングのポリマーは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。即ち、各表面コーティングの架橋ポリマーは、同一又は異なる濃度の、化学的に同一な又は異なるポリマーによって構成され得る。例えば、本発明の球状のマイクロカプセルは、上述したように、少なくとも一つの表面コーティングを有し、当該表面コーティングは、上記で規定した任意のポリマーからなり、追加の外部の表面ポリマーは、ポリ陽イオン(例えば、上記で規定したポリアミノ酸、ポリ−L−リジン、ポリ−L−グルタミン酸等)からなる。用いられるポリマーの性質の違いはさらに、用いられるポリマーの分子量の違い、及び/又は同一のポリマーの架橋の違い等に起因することがある。
【0024】
上述したように、本発明の球状のマイクロカプセルの核は、GLP−1ペプチドを発現及び分泌する細胞をさらに含んでいる。これらのGLP−1ペプチドを発現し分泌する細胞は、GLP−1を発現し分泌することができる任意のタイプの細胞から選択することができる。そのような細胞は、典型的には、上記で規定したような、GLP−1、GLP−1のフラグメント若しくは変異体、又は、GLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント、変異体をエンコードする核酸又はより好ましくはそのような核酸を含んだベクターを用いて細胞に安定的に形質移入することにより取得することができる。
【0025】
好適な細胞は、全能性、多能性、又は複能性の(未分化の)幹細胞から選択され得る。この場合に用いられる幹細胞は、好ましくは、胚性幹細胞、又は、外胚葉、中胚葉、若しくは内胚葉由来の幹細胞、又は、(例えば、ヒト骨髄由来、又は脂肪組織由来の)(ヒト)間葉系幹細胞(MSC、hMSC)、造血幹細胞、表皮幹細胞、神経幹細胞、皮膚由来の線維芽細胞(筋線維芽細胞)を含む、未成熟の線維芽細胞等のような成体の幹細胞から構成される。これらの(未分化の)幹細胞は、典型的には、対称的な。細胞分裂、即ち、同一のコピーを生む細胞分裂をなし得る。幹細胞は、任意のタイプの細胞になる能力を維持している。その上、幹細胞は、幹細胞のコピーとともに幹細胞のコピーから分化した他の細胞、例えば分化した細胞をもたらす非対称的な分裂を行なうことができる。
【0026】
本発明の球状のマイクロカプセルは、又、上記幹細胞から得ることができる細胞、結合組織の細胞、(成熟した)線維芽細胞、軟骨組織の細胞(軟骨細胞)、骨の細胞(骨芽細胞/骨細胞/破骨細胞)、脂肪の細胞(脂肪細胞)、平滑筋細胞、リンパ系前駆細胞及びそれに由来する細胞を含む血球細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、T細胞、B細胞、若しくは、樹状細胞)、一般的な骨髄系前駆細胞及びそれに由来する細胞(例えば、樹状細胞、単球、マクロファージ、破骨細胞、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、巨核球、若しくは、赤血球)、マクロファージ、神経細胞(星状細胞、乏突起膠細胞等を含む)、上皮細胞、又は表皮細胞のような、(分化した)細胞から選択することもできる。これらの分化した細胞は、典型的には、対称的な細胞分裂、即ち、分化した親の細胞と同一のコピーをもたらす細胞分裂をすることができる。その上、いくつかの場合において、これらの分化した細胞は、親の細胞と同一のコピーをもたらすとともに、親の細胞とは異なる他の細胞、即ち、親の細胞からさらに分化した細胞をもたらす、非対称的な細胞分裂をなすことができる。又、いくつかの場合には、上記で規定した分化した細胞は、例えば、選択的分化誘導因子を加える等により、細胞分裂を伴わずに更なる分化を行なうことも可能である。
【0027】
さらに、本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞は、処置されるべき患者本人から採取された細胞(自系細胞)、又は、同種異系の細胞(例えば、HEK293株、hTERT−MSC細胞株等の、試験管内で培養されている、確立された細胞株)であり得る。本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた表面コーティングにより、本発明は、処置すべき患者からの如何なる望ましくない免疫応答も伴わずに、同種異系の細胞を用いることができる。
【0028】
本発明の球状のマイクロカプセルの核には、複数のタイプの細胞の組み合わせが存在し得る。例えば、本明細書において規定される本発明の球状のマイクロカプセルの核は、一部の細胞が試験管又は生体内で上記で規定したタイプの細胞(例えば、脂肪細胞(脂肪組織への移植に好適)等)に分化されたヒト間葉系幹細胞を含み得る。以上のように、様々なタイプの細胞(例えば、特定の幹細胞由来のもの)が、例えば、系統を共有しつつ、核内に配置され得る。
【0029】
まとめると、本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するための本発明に係る細胞は、分化されていない、又は分化された細胞から選択することができる。一実施形態において、上記で規定した分化されていない細胞が好適である。分化されていない細胞は、例えば、分化されていない細胞の寿命の長さに起因して、本発明の球状のマイクロカプセルの効果の延長、GLP−1ペプチドの発現及び分泌する能力の延長といった有利な特性を付与し得る。他の実施形態において、上記で規定した分化した細胞は、典型的にはそれ以上増殖しないため、本発明の球状のマイクロカプセルの核内において、望ましくない細胞の増殖をもたらすことがないことから、本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するために好適である。当業者は、選択された分化誘導因子を前駆体細胞に添加することにより、公知の方法を用いて、試験管内で特定の細胞分化を実施することができる。好ましくは、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた大部分の(又は、少なくとも90%の、より好ましくは、少なくとも95%の、最も好ましくは、すくなくとも99%の)細胞が、同じ細胞のタイプに属するように、細胞が分化される。特に、上記で規定した間葉系幹細胞は、試験管内において、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、例えば脂肪組織の細胞、神経様細胞、例えば脳の細胞等に分化され得、本明細書の記載のように用いられる。本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するために、分化していない細胞、又は、分化された細胞の何れを用いるかは、処置すべき疾病の特定の必要性、例えば、苦痛の部位、投与の形態、移植のために選定された組織等に基づく。これらの基準を評価することにより、当業者は、適切な細胞を選択することができる。
【0030】
さらに、本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するために用いられる細胞は、不死化された細胞でもよく、不死化されていない細胞でもよく、好ましくは、不死化された細胞であり得る。不死化された細胞が用いられた場合、好ましくは、これらの細胞は、上述したような対称的又は非対称的な細胞分裂をする能力を有している。本発明において、細胞が、通常の細胞(即ち、不死化されていない細胞)よりも二倍を超える寿命を有していた場合、その細胞は不死化されていると規定する。試験管内における通常の二倍体細胞の最大寿命は、細胞のタイプ(例えば、胎児の細胞か成体の細胞か)及び細胞の状態による。従って、通常の試験管内で培養された細胞の最大寿命は、おおよそ60から80集団倍化時間に及ぶ。例えば、ケラチノサイトはおよそ80回、線維芽細胞は50回以上、リンパ球は約20回、それぞれ分裂する。通常の骨髄間質細胞は、30から40集団倍化時間の最大寿命を示し得る。好ましくは、本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するために用いられる細胞は、350集団倍化時間を超えて増殖し続け得、若い細胞に特徴的な通常の成長速度を維持し得る。
【0031】
細胞を不死化する方法は、広く知られており、よって、本発明に適用することができる(国際公開WO03/010305号パンフレット及び国際公開WO98/66827号パンフレットを参照のこと。これらの文献は、本明細書に参考として援用される)。典型的な方法(国際公開WO03/010305号パンフレットに従ったもの)は、例えば、以下の工程を包含する:
(a)当業者間において周知慣用の標準的な細胞培養方法に従って、例えば幹細胞、特にヒトの骨髄に由来する、(例えば、ヒト)間葉系幹細胞(MSC、hMSC)のような細胞を培養する;
(b)以下の(b1)〜(b5)のステップにより、少なくともヒトテロメア反復サブユニット(hTRT)遺伝子又はその変異体のフラグメントを含むレトロウイルスベクターを用いて、上記培養細胞に形質導入する:
(b1)レトロウイルスベクターが製造される細胞であるパッケージング細胞株(例えば、PA317細胞、PG13細胞、Phenix等)を培養し、
(b2)少なくともヒトテロメア反復(hTRT)遺伝子又はその変異体の触媒的なサブユニットのフラグメント、より好ましくは、例えば、pGRN145(ゲロン社(Geron Corporaion))の3452塩基対のEcoRIフラグメント等のhTERTcDNAフラグメントを含む、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス由来のもの等)を構築し、
(b3)上記レトロウイルスベクターを用いて上記パッケージング細胞株を形質移入し、
(b4)好ましくは、細胞を上記レトロウイルスベクターとともに遠心分離することにより、形質移入した細胞を用いて、上記パッケージング細胞株に形質導入し、
(b5)上記レトロウイルスベクターを含む細胞である、ステップ(b4)のパッケージング細胞を用いて、ステップ(1)において上述した培養細胞に形質導入する;
(c)ステップ(a)の細胞と比較して実質的に同一の特徴及び特性を有する不死化された細胞株を取得する。その結果として、ヒトテロメアサブユニット(hTRT)遺伝子由来の、挿入されたポリヌクレオチド配列が転写及び翻訳され、機能的なテロメラーゼを製造する。コドン縮退の結果、多数のポリヌクレオチド配列が、同一のテロメラーゼをエンコードすることを当業者は理解するだろう。なお、野生型のテロメラーゼポリペプチドの配列と実質的に同一の配列を有しており、野生型のテロメラーゼポリペプチドの機能を維持しているテロメラーゼ変異体(例えば、野生型のポリペプチドに対してアミノ酸の保存的に置換して得られるもの)も又含まれる。
【0032】
本発明の球状のマイクロカプセルに含まれる細胞により発現及び分泌されるGLP−1ペプチドは、公知のGLP−1ペプチド配列から選択することができる。この場合、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞は、典型的には、当該核を調製する前に、当該細胞がGLP−1を発現及び分泌するようにGLP−1ペプチド等をエンコードする核酸配列によって形質移入されている。本発明の球状のマイクロカプセルに含まれる細胞によって発現及び分泌されるGLP−1ペプチドは好ましくは、GLP−1の第7番目から第35番目までのアミノ酸からなるペプチド、およびこのペプチドに対して、少なくとも80%、90%、95%又は99%の相同性を示すペプチドからなる群より選択されるものである。GLP−1ペプチドは、より好ましくは、GLP−1の第1番目から第37番目までのアミノ酸からなるペプチド、GLP−1の第7番目から第35番目、第36番目又は第37番目までのアミノ酸からなるペプチド、GLP−1(7−36)アミド、及びこれらのペプチドの何れかに対して、少なくとも80%、90%、95%又は99%の相同性を示す、ペプチドであり得る(改変されたペプチドを含む)。この場合、「改変されたGLP−1ペプチド」は、任意のGLP−1の変異体又はGLP−1のフラグメントが意図されており、それらの組み合わせ(例えば、変異体のフラグメント)も含まれる。変異体及びフラグメントは、例えば、GLP−1(7−35、36又は37)のような、改変されていない配列の改変として特徴付けられる。本発明の範囲内において、全ての変異体及びフラグメントは機能する必要がある。例えば、変異体及びフラグメントは、改変されていない(GLP−1)ペプチドと同一又は類似した生物学的な活性を発揮する必要がある。用語「活性」は、生物学的な活性(例えば、受領体結合、受容体の活性化、インスリン分泌性活性の発揮、即ち、インスリン分泌を促進する能力、グルカゴン分泌を低減させる能力、体重減少に影響を及ぼす能力等を含む一つ以上の生物学的な活性)であって、本明細書において規定する自然に存在するGLP−1ペプチド並びにその任意のフラグメント及び変異体と同一条件下において比較し得るものについて言及する。本明細書において規定するGLP−1ペプチドの変異体又はフラグメントは、好ましくは、GLP−1(7−35、36又は37)の少なくとも25%の活性を発揮し、より好ましくは、少なくとも50%の(生物学的な)活性を発揮し、なお好ましくは、少なくとも60、70、80又は90%の(生物学的な)活性を発揮し、最も好ましくは、GLP−1(7−35、36又は37)の少なくとも95%又は99%の(生物学的な)活性を発揮する。
【0033】
他の実施形態において、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1ペプチドは、GLP−1融合ペプチド又はその変異体若しくはフラグメントから選択され得る。本明細書において規定されるGLP−1融合ペプチドは、例えば、成分(I)及び成分(II)、成分(I)及び成分(III)、又は、成分(I)、成分(II)及び成分(III)といった、少なくとも二つの成分を有しており、GLP−1の生物学的な活性を発揮し、同時に、C末端の延長により、GLP−1融合ペプチドの成分(I)に安定性を付与する。本明細書において規定するGLP−1融合ペプチドの成分(I)は、配列番号1に示される配列に対し、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、なお好ましくは、少なくとも90%の相同性を有する配列を含んでいる。配列番号1は、哺乳動物において厳密に保存されている、GLP−1(7−37)(長さ31アミノ酸)の天然のアミノ酸配列を示す。
【0034】
本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1ペプチド(より一般的には、融合ペプチドのフラグメント又は変異体を含む任意のGLP−1ペプチド)の成分(II)は、典型的には、少なくとも9個のアミノ酸を有するペプチド配列を含んでいる。GLP−1融合ペプチドの成分(II)はさらに、少なくとも一つのプロリン残基をその配列中に含み得る。プロリン残基は、βターンを形成する四量体アミノ酸配列内の共通するアミノ酸である。従って、GLP−1融合ペプチドの成分(II)は、βターン様構造を形成する。βターン構造は、タンパク質又はペプチドの典型的な二次構造要素である。典型的には4つのアミノ酸から形成され、ペプチド又はタンパク質の背骨となる鎖の方向を反転させる。プロリン残基は、もし存在すれば、GLP−1融合ペプチドの成分(II)に生じた四量体βターン配列の第2番目又は第3番目、好ましくは第2番目の位置に共通して配置されている。
【0035】
本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞は、典型的には、当該核を調製する前に、当該細胞がGLP−1融合ペプチドを発現及び分泌するようにGLP−1ペプチド融合ペプチド等をエンコードする核酸配列によって形質移入されている。この場合、特に好ましいのは、本明細書において規定するGLP−1融合ペプチドであって、成分(II)が、配列番号22に示される配列(RRDFPEEVAI)(全てのアミノ酸配列は、一文字表記されている)、又は、配列番号22に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を有している配列を含んでいるものである。配列番号22は、IP−2(介在ペプチド2)の全長配列の部分配列であって、15アミノ酸長の全長IP−2配列のN末端の10アミノ酸を含んでいる配列を示す。本明細書において、IP−2は、成分(II)の好ましい例である。そして、成分(II)に含まれる、他のより好ましい配列は、IP−2の配列のより長い部分配列、例えば、ヒトに存在するN末の14アミノ酸の配列(配列番号23(RRDFPEEVAIVEEL))若しくはそのマウスのカウンターパート(配列番号24(RRDFPEEVAIAEEL))又は配列番号23若しくは24に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を示す配列である。上記融合ペプチドの成分(II)に含まれる最も好ましい因子は、自然に存在するIP−2配列の15アミノ酸の全てを有する全長IP−2配列(ヒト:配列番号2(RRDFPEEVAIVEELG)、マウス:配列番号3(RRDFPEEVAIAEELG))又は配列番号2若しくは3に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を有する配列である。本発明の範囲は、IP−2の哺乳動物におけるイソ型(哺乳動物におけるIP2の自然のバリエーション)のすべてを含む。例えば、IP2又はIP2のフラグメント若しくは変異体の2、3、又はそれ以上の多コピーの配列が成分(II)に含まれているものも又、供給され得る。
【0036】
従って、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1融合ペプチドは、配列番号8に示される配列(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIAEELG)、即ち、GLP−1(7−37)が、そのC末端を介してマウスIP−2に、リンカー配列をともなわずに連結した配列、又は、配列番号12に示される配列(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIVEELG)、即ち、GLP−1(7−37)が、そのC末端を介してヒトIP−2に、リンカー配列をともなわずに連結した配列を好適に含む。配列番号8又は12に示される配列又はそのフラグメント若しくは変異体に対して少なくとも80%の相同性を有する配列も又、使用することができる。この場合、好ましいGLP−1融合ペプチドは、配列番号13、14、19及び20に示される配列をさらに含み得る。
【0037】
移植された本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞によって、生体内で、患者の周りの組織にGLP−1(7−35、36又は37)が分泌された場合、GLP−1(7−35、36又は37)の不安定性は、その保護されていない3次元構造に起因することを、本発明者らは独自に見出した。生体内において、プロテアーゼは、GLP−1(7−35、36又は37)分子を切断し、その生理学的な活性を急速に消失させる。GLP−1(7−35、36又は37)のC末端にペプチドの配列を連結させることにより、GLP−1(7−35、36又は37)の構造は、酵素的な分解に対して安定性を獲得する。このような安定性の獲得は、C末端の付加的なペプチド配列(本発明に係る融合ペプチドの成分(II)に含まれている)が折り曲がっている場合、例えば、βターン構造が存在するような一次構造を有しており、成分(II)に堅牢性を付与している場合に、特に顕著となる。そのC末端の延長されたペプチドにより、βターン構造要素を好適には含んいる、上記で規定したようなGLP−1ペプチドは、DPP−IVによる不活性化に対して向上した抵抗性を有することが見出された。C末端のペプチドは、そのターゲットとする細胞のその受容体に作用する前には、GLP−1(7−35、36又は37)配列から切断されないか、又は、生体内において、GLP−1(7−35、36又は37)を形成するように酵素的に切断され得る。GLP−1受容体の部位に結合するGLP−1ペプチドの厳密な形状によらず、上記で規定したようなGLP−1ペプチドは、活性のあるインスリン分泌性の化合物としての働きを奏する。
【0038】
上記で規定したようなGLP−1融合ペプチドの成分(II)に含まれるに好適と考えられるGLP−1ペプチド配列は、そのβターン要素を導く一時構造によって、例えば、分光学的な手法、円偏光二色性分析、その他の当業者に公知な方法を用いて、容易に、適宜特定することができる。
【0039】
本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1融合ペプチドの成分(II)及び成分(I)は、直接連結されていてもよいし、リカー配列を介して連結されていてもよい。好ましくは、両成分は、互いに直接連結されている。それらがリンカー(又はスペーサー)を介して連結されている場合、当該リンカーはペプチドリンカーであることが好ましい。ペプチドリンカーは、典型的には、1から10のアミノ酸長を有しており、好ましくは、1から5の、なお好ましくは1から3のアミノ酸長を有しており、またいくつかの場合において、リンカー配列は、なお長い11から50のアミノ酸を含む配列であり得る。ペプチドリンカーは、様々な(自然に存在する)アミノ酸配列から構成され得る。好ましくは、ペプチドリンカーは、連結される成分間に構造的な柔軟性を導入する。構造的な柔軟性は、例えば、様々なグリシン又はプロリン残基を含むペプチドを用いることにより達成され、好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも40%、なおさらに好ましくは、少なくとも60%のプロリン及びグリシンをリンカー配列内に含む。ペプチドリンカーは、具体的な配列によらず、好ましくは、免疫学的に不活性であり得る。
【0040】
本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1融合ペプチドは、付加的に成分(III)を含み得る。一般的に、成分(III)は、少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでおり、好ましくは、少なくとも10個の付加的なアミノ酸残基を含んでおり、より好ましくは、少なくとも20個、又は少なくとも30個のアミノ酸残基を含んでいる。機能の観点から言えば、成分(III)は、GLP−1の安定性をさらに増強することを目的としている。成分(III)は、GLP−1(7−37)の生物学活性とほぼ同程度であるGLP−1融合ペプチドの生物学的活性を阻害しないことが期待されている。一般的に、上記で規定したような成分(I)のC末端の任意の延長は、それが、上記で規定したような成分(II)、成分(III)、又は、成分(II)及び(III)の組み合わせであるかによらず、成分(I)、即ち、上記で規定したようなGLP−1(7−37)又はそのフラグメント若しくは変異体の安定性を増強する。
【0041】
好ましくは、本発明において、本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するために用いられた細胞に形質移入された核酸によりエンコードされたGLP−1融合ペプチドの成分(III)は、少なくとも4個の、好ましくは、少なくとも10個の、より好ましくは、少なくとも20個の付加的なアミノ酸残基を、例えば、配列番号4及び5に示されるマウス又はヒトのイソ型のような、任意の哺乳動物の個体のGLP−2のイソ型(他の、哺乳動物において、自然に存在するGLP−2の変異体)の配列のN末端に含んでいる。GLP−2は、プログルカゴン内に存在し、炭水化物代謝に関与する。本発明において、用語「GLP−2ペプチド」は、好ましくは、GLP−2(1−33、34又は35)を意味し、「改変されたGLP−2ペプチド」は、任意の、GLP−2のフラグメント若しくは変異体又はGLP−2(1−33、34又は35)のフラグメント若しくは変異体を意味することが意図される。変異体又はフラグメントは、改変されていない配列、例えば、GLP−2(1−33、34又は35)の改変として分類される。成分(I)に含まれる生物学的に活性な配列(GLP−1ペプチド)と同様、成分(III)は、GLPー2の自然に存在する形態の変異体又はフラグメントを含んでいてもよい。他の局面において、成分(III)は、少なくとも4個の、好ましくは、少なくとも10個の、より好ましくは、少なくとも20個の付加的なアミノ酸残基を、同様に、全ての哺乳動物のイソ型、又は(本明細書において記載したような)、その全ての機能的なフラグメント若しくは変異体を含む、GLP−1(7−37)のN末端配列に含んでいてもよい。一般に、成分(III)は、GLP−1ペプチド、又は、本明細書において示すような、GLP−1融合ペプチドの成分(I)に適合するような、改変されたGLP−1ペプチドの任意の形態を含んでいてもよい。さらに他の局面において、成分(III)は、GLP−1(7−37)及びGLP−2のキメラ形態を含んでいてもよい。キメラ形態は、GLP−1(7−37)とGLP−2(又はそのフラグメント若しくは変異体)とを互いに結合させることにより生産することができ、続いて、このキメラ形態は成分(III)としてGLP−1融合ペプチドに導入される。好ましくは、上記キメラ形態は、一つに結合したGLP−1(7−37)の部分配列及びGLP−2の部分配列から構成される。例えば、上記キメラ形態は、GLP−1のN末端の5から30個のアミノ酸及びGLP2のC末端の5から30個のアミノ酸、又はその逆の構成であり得、又例えば、GLP−1(7−37)の第7又は第8番目から第22、第23、第24、第25、第26、第27又は第28番目までのアミノ酸、及び、GLP−2のアミノ酸配列の第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23又は第24から、例えばC末端までであり得る。
【0042】
もし、自然に存在する形態のGLP−2又はCLP−1(7−37)のそれぞれの改変が、成分(III)に含まれていた場合、成分(III)は、好ましくは、配列番号4若しくは5に示される配列か、配列番号1に示される配列か、又は、配列番号4若しくは5に示されるか、配列番号1に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を有する配列を含んでいる。
【0043】
他の実施形態において、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1融合ペプチドの成分(III)は、上述したような配列を複数個含んでいる。例えば、成分(III)は、少なくとも二つの、好ましくは、2、3、又は4コピーのGLP−1(7−37)及び/若しくはGLP−2、又は、少なくとも2コピーの、配列番号1、4若しくは5に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を有する配列を含んでいてもよい。又、成分(III)は、少なくとも一コピー以上の、上述したような、例えば、最終的には、GLP−1(7−37)及び/若しくはGLP−2又はその、少なくとも80%の配列上の相同性を有する改変のキメラ形態のバリエーションを形成する、GLP−1(7−37)又はGLP−2のキメラ形態を含んでいてもよい。好ましくは、本発明において、本発明の球状のマイクロカプセルの核を調製するために用いられた細胞に形質移入された核酸によりエンコードされたGLP−1融合ペプチドは又、二つ以上の、好ましくは二つの成分(III)を含んでいてもよく、それらは、例えば、(1)そのN末端により、成分(I)又は(II)のC末端に連結されており、(2)そのC末端により、成分(I)のN末端にリンカーを介して又は直接連結されている。もし二つの成分(III)が供給されている場合、それらは同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0044】
好ましい実施形態によれば、細胞(本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれている)は、好ましくは、三つの成分(I)、(II)及び(III)を含んでいるGLP−1融合ペプチドをエンコードする核酸配列によって形質移入されている。これらの全ての成分を含んでいる具体的な実施形態は、配列番号6(N−GLP−1(7−37)−IP2(マウス)−RR−GLP−1(7−37)−C、本明細書においてマウスCM1とも称される)、配列番号7(N−GLP−1(7−37)−IP2(マウス)−RR−GLP2−C、本明細書においてマウスCM2とも称される)、配列番号10(N−GLP−1(7−37)−IP2(ヒト)−RR−GLP−1(7−37)−C、本明細書においてヒトCM1とも称される)、若しくは配列番号11(N−GLP−1(7−37)−IP2(ヒト)−RR−GLP−2−C、本明細書においてヒトCM2とも称される)に示される配列、配列番号6、7、10若しくは11に示される配列に対して、少なくとも80%の相同性を有する配列、又は、それらのフラグメント若しくは変異体である。配列番号6、7、10又は11に示される全ての配列は、IP2(成分(II))のC末端にRR−リンカー(二つのアルギニン残基)を有している。これは、排除されていてもよい。配列番号6、7、10又は11に係る各実施形態のそれぞれの成分(I)は、GLP−1(7−37)であり、成分(III)(これらの各実施形態において、成分(II)のC末端に結合されている)は、GLP−1(7−37)又はGLP−2である。この場合、好ましいGLP−1融合ペプチドは、配列番号15、16、17、18及び26に示される配列をさらに含んでいる。
【0045】
他の好ましい実施形態において、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1融合ペプチドは、成分(I)に加えて成分(III)(上記にて規定した成分(II)を伴わず)を、成分(I)のC末端及び/又は成分(I)のN末端の何れかに結合されて、含んでいる。好ましくは、成分(III)は、成分(I)のC末端に位置している。成分(III)が、(そのC末端により)成分(I)のN末端に、又は、(そのN末端により)成分(I)のC末端に結合しているかとは関わりなく、結合は、直接又は間接的にリンカー配列を介して行われる。リンカー配列に関しては、成分(I)及び成分(II)を結合するリンカーについての上述の開示において言及されている。
【0046】
本発明の他の好ましい実施形態において、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれた細胞により発現及び分泌されるGLP−1融合ペプチドは、成分(I)及び成分(II)に加えて成分(III)を、成分(II)のC末端及び/又は成分(I)のN末端の何れかに結合されて、含んでいる。好ましくは、成分(III)は、成分(II)のC末端に位置している。成分(III)が、(そのC末端により)成分(I)のN末端に、又は、(そのN末端により)成分(II)のC末端に結合しているかとは関わりなく、結合は、直接又は間接的にリンカー配列を介して行われる。リンカー配列に関しては同様に、成分(I)及び成分(II)を結合するリンカーについての上述の開示において言及されている。
【0047】
最後に、本発明の球状のマイクロカプセルの核に埋め込まれたGLP−1融合ペプチドは、融合ペプチドの成分の任意の上述した組み合わせ(即ち、成分(I)及び(II)、成分(I)及び(III)、又は成分(I)、(II)及び(III))に加えて、成分(IV)としてキャリアタンパク質、特にトランスフェリン又はアルブミンを含んでいてもよい。そのような成分(IV)は、融合ペプチドの成分の任意の上述した組み合わせ、即ち、成分(I)及び(II)、成分(I)及び(III)、又は成分(I)、(II)及び(III)のN及び/又はC末端に、直接又は上述したリンカーを用いて結合されていてもよい。
【0048】
GLP−1ペプチドは、上述のように定義され、本発明に係る球状のマイクロカプセルの上記核の調製のための本発明に従って用いられる細胞の中にトランスフェクトされる核酸によってコードされており、様々な変形態様を生じうる。このような変形態様は以下に開示され、詳細に説明される。
【0049】
本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌されるGLP−1ペプチドの「フラグメント」は、上記にて説明されたGLP−1融合ペプチドを含むGLP−1ペプチドのいかなる下位集合、つまり、より短い、所望の生物学的活性を保持するペプチドについて言及される。フラグメントは、分子の両末端からアミノ酸を除去することにより、及び、分泌物としての性質の結果をテストすることにより、調製され得る。ポリペプチドのN末端及び/又はC末端のいずれかから一度にアミノ酸を除去するためのプロテアーゼは公知であり、所望の生物学的活性を保持する特定のフラグメントは、単に通常の実験操作を必要とする。最終的に、フラグメントは、ペプチド末端のアミノ酸及び又はペプチド配列の中に位置するアミノ酸の削除によって存在し得る。
【0050】
さらに、抗タイプ2糖尿病活性を有する、ここで定義されるGLP−1ペプチドはそれ自身の融合ペプチド、それらの機能的な変異及び/又はフラグメントが存在し、GLP−1ペプチドの側面に付加的なアミノ酸残基をも含み得る。
【0051】
結果物の分子がそのプロテアーゼに対する抵抗性又は安定性及び分泌物としてのその活性を保持する限り、いかなるそのような側面の残基が、例えば、その膵臓細胞の効果によって、通常の実験操作によって、上記核のペプチドの基本特性に影響を及ぼすかを認定することができる。特定の配列について言及するときの、用語「実質的に構成する」は、GLP−1ペプチドに特異的な基本的な特性に影響を及ぼさずに、付加的な側面の残基が存在し得ることを意味する。この用語は特定の配列中の置換、削除又は付加を意味しない。
【0052】
本発明に係る球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌されるGLP−1ペプチドの「変異」とは、上記にて定義される完全なGLP−1ペプチド又はそのフラグメントのいずれもについて実質的に同じ分子について言及される。変異ペプチドは本技術分野においてよく知られる方法を用いて好適に調製される。もちろん、そのようなGLP−1ペプチドの変異は、GLP−1ペプチドが自然に起こすものに対応する例えばインスリン刺激活性等の抗糖尿病を同様に有するであろう。例えば、上記にて定義されたGLP−1ペプチドの変異のアミノ酸配列は、合成された変異をコードするDNA配列の変異させることによって調製される。そのような変異は、例えば、アミノ酸配列中の残基からの欠損、又は挿入若しくは置換が含まれる。欠損、挿入及び置換のいかなる組み合わせも、本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌されるGLP−1ペプチドに保持され、所望の活性を保有する最終コンストラクトを提供する。明らかに、変異ペプチドをコードするDNAに成される変異は、リーディングフレームを変えてはならず、好ましくは第二のmRNAコンストラクトを製造し得る相補的領域を作らない。
【0053】
本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌されるGLP−1ペプチドに保持されるであろう置換のタイプは、様々な種類の相同タンパク/ペプチドの間におけるアミノ酸配列の変化の頻度の解析に基づかれ得る。そのような解析に基づいて、保存的な置換は次の5つのグループのうちの一つ中の交換にて規定され得る。
【0054】
I.小さい、脂肪族化合物の、非極性又は微小な極性を有する残基:Ala, Ser, Thr, Pro, Gly;II.極性、負荷電の残基及びそのアミド:Asp, Asn, Glu, Gln;III.極性、正荷電の残基:His, Arg, Lys;IV.大きい、脂肪族化合物の、非極性残基:Met, Leu, Ile, Val, Cys°;V.大きい、芳香族の残基:Phe, Try, Trp。
【0055】
上述のグループにおいて、次の置換は「高い保存」とみなされる:Asp/Glu; His/Arg/Lys; Phe/Tyr/Trp; Met/Leu/Ile/Val。次いで保存的な置換は、上記(I)、(II)及び(III)を含む上位グループ(A)又は上記グループ(IV)及び(V)を含むグループ(B)として規定される上記グループ(I)〜(IV)の二つの間での交換として定義される。置換は遺伝的にコードされた又は天然に存在するアミノ酸にさえも限定されない。
【0056】
一般に、上記にて定義されるGLP−1ペプチド(及びGLP−1融合ペプチド)の変異は、溶解性促進の強化(疎水性アミノ酸の親水性アミノ酸への置換)によって作り出されるアミノ酸の置換をも含み得る。
【0057】
一実施形態において、本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌される、上記にて定義された(GLP−1融合ペプチドの成分(I)及び/又は成分(III)に発生する)GLP−1融合ペプチドを含む(改質された)GLP−1ペプチドは、GLP−1ペプチドの7、8、11、12、16、22、23、24、25、27、30、33、34、35、36又は37の位置における1又はそれ以上の置換によって特徴付けられる。例えば、次の用語[Arg34−GLP−1(7−37)]は、34位の天然リジンがアルギニンに置換されたGLP−1の類似物を指定する。
【0058】
特に、GLP−1ペプチド、或いは、ここで定義されるGLP−1融合ペプチドの成分(I)及び/又は(III)は、例えば、Gln9−GLP−1 (7−37), D−Gln9−GLP−1(7−37), アセチル−Lys9−GLP−1 (7−37), Thr16−Lys18−GLP−1 (7−37), 及びLys18−GLP−1 (7−37), Arg34−GLP−1 (7−37), Lys38−Arg26−GLP−1 (7−38)−OH, Lys36−Arg26−GLP−1 (7−36), Arg26,34−Lys38−GLP−1 (7−38), Arg26,34−Lys38−GLP−1(7−38), Arg26,34−Lys38−GLP−1 (7−38), Arg26,34−Lys38−GLP−1 (7−38), Arg26,34−Lys38−GLP−1 (7−38), Arg26−Lys38−GLP−1(7−38), Arg26−Lys38−GLP−1(7−38), Arg26−Lys38−GLP−1 (7−38), Arg34−Lys38−GLP−1 (7−38), Ala37−Lys38−GLP−1 (7−38), 及びLys37−GLP−1 (7−37)を含むGLP−1(7−35, 36, 37 又は38)の変異に対応する。
【0059】
特に好ましい本発明の実施形態において、(成分(I)又は(III)に関して)上記にて定義されたGLP−1融合ペプチドを含む本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた声望から発現及び分泌されるGLP−1ペプチドは、GLP−1 (7−35), GLP−1 (7−36), GLP−1 (7−36)−アミド, GLP−1 (7−37)又はそのフラグメント若しくは変異から選ばれる(改質された)GLP−1ペプチドである/含んでいる。
【0060】
好ましくは、本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌される、GLP−1ペプチドの変異((成分(I)又は(III)に関する)GLP−1融合ペプチドの変異を含む)は、天然アミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を有しその生物学的活性を保持する、例えばGLP−1(7−37)若しくはGLP−2又は生物学的に活性なそれらのフラグメント又はあらゆるIP2イソ型の天然の配列と同じ核配列を有する。さらに好ましくは、天然の配列に対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、特に好ましくは95%の同一性を示すような配列である。
【0061】
用語「配列同一性」は、ここで、配列が次の通り比較されることを意味するものと定義される。二つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、それらの配列は裁量の比較目的となるように位置合わせされ得る(例えば、最初のアミノ酸配列の配列中にギャップが導入される)。そして、アミノ酸の位置に対応するアミノ酸の位置が比較され得る。第1の配列中の位置が対応する第2のアミノ酸の同じ位置に存在するとき、それらの分子はその位置において同一である。二つの配列間の同一性パーセントは配列間に共有される同一的な位置の数の関数である。例えば、特定のペプチドが規定の長さの参照ポリペプチドに対する特定の同一性パーセントを有するといわれるところにおいて、同一性パーセントは参照ペプチドに関連する。つまり、100アミノ酸の長さの参照ポリペプチドと50%の同一性であるペプチドは、参照ポリペプチドの50個のアミノ酸の位置と完全に同一な50個のアミノ酸ポリペプチドであり得る。それはまた、その全ての長さの参照ポリペプチドと50%同一である、100個の長さのアミノ酸ポリペプチドであってもよい。もちろん、他のポリペプチドは同じ基準を満たすであろう。このような二つの配列の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いることにより達成され得る。好ましくは、二つの配列の比較を用いられる数学的アルゴリズム限定されない例は、Karlin et al. (1993), PNAS USA, 90:5873−5877.である。このようなアルゴリズムはNBLASTプログラムに組み込まれており、本発明のアミノ酸配列の所望の同一性を有する配列を同定するために用いることができる。ギャップを入れた、比較目的のアラインメントを得るために、Altschul et al. (1997), Nucleic Acids Res, 25:3389−3402.にて説明されているGapped BLASTを活用することができる。BLAST及びGapped BLASTを利用するとき、各プログラム(例えばNBLAST)のデフォルトのパラメータを用いることができる。さらに、−12(ギャップの最初の空値)のギャップオープンペナルティ(gap open penalty)及び−4(ギャップにおける付加的で連続的な空値当たり)のギャンプエキステンションペナルティ(gap extension penalty)としてデフォルト(BLOSUM62)マトリクス(値−4から+12)を用いて、Genetic Computing Group’s GAP (global alignment program)のバージョン9を用いて、配列をアラインしてもよい。アラインメントの後、要求された配列中のアミノ酸の数のパーセンテージとしてマッチする数を表すことにより同一性パーセンテージを計算する。説明した二つのアミノ酸配列の同一性パーセントの決定をする方法は核酸配列にも対応的に適用することができる。
【0062】
本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から分泌されるGLP−1ペプチド、特に融合GLP−1ペプチドは、上に概要を述べたタンパク質分解的切断に対して保護されていてもよい。それらは、好ましくは、ジペプチジル アミノペプチダーゼ−IV(DPP−IV)に対して保護されていてもよい。ここで定義するGLP−1ペプチドは、これらのフラグメント及び変異、特にGLP−1融合ペプチドと同様に、血漿ペプチダーゼ(DPP−IV)に抵抗性を有する、例えばGLP−1(7−35、36又は37)等のGLP−1の配列を含んでいてもよい(GLP−1融合ペプチドの場合は成分(I)及び/又は(III))。
【0063】
ジペプチジル アミノペプチダーゼ IVによる分解に対するペプチドの抵抗性は、例えば、次の分解評価:ペプチダーゼのサンプルを37℃で精製したジペプチジル アミノペプチダーゼ IVの存在下で、4〜22時間、適当なpH7〜8の緩衝液(アルブミンが存在しない緩衝液)の中でインキュベートする、により決定される。トリフルオロ酢酸の添加により止められる酵素反応、及びペプチド分解生成物はHPLC又はLC−MS分析を用いることにより分離され精製される。この分析を行なう一つの方法は次の通りである:ミクスチャーをZorbax300SB−C18(30nm穴、5μm粒子)、150×2.1mmカラム上に加え、流速0.5ml/分にて、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトライルの線形勾配(0%〜100%アセトニトライル、30分間)によって溶出する。ペプチド及びその分解性生物は、それらの214nm(ペプチド結合)又は280nm(芳香族アミノ酸)の吸光度を計測されてもよく、それらのピーク領域の積分により定量されてもよい。分解パターンは、分離されたピークのMSスペクトラが決定され得るLC−MSを用いることにより決定され得る。一時の損傷の無い/分解された化合物のパーセンテージはペプチドDPP−IV安定性の評価に用いられる。
【0064】
ここで定義され、本発明の球状のマイクロカプセルに埋め込まれた細胞から発現及び分泌されるGLP−1(融合)ペプチドは、一時的な損傷の無い化合物のパーセンテージに基づくGLP−1(7−37)の非改質ペプチド配列より10倍であるDPP−IV安定性により定義される。従って、DPP−IV安定なGLP−1ペプチドは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20倍、例えばGLP−1(7−37)ペプチドより安定であることが好ましい。安定性は、例えば、DPP−IVを供試されるペプチドの溶液に加え、例えば一定の時間、分光法、ウェスタンブロット解析、抗体スクリーニングする等によってペプチドの分解の決定(上記参照)を行なう等の当業者によく知られた方法により、評価されてもよい。別途、上記にて特定されるGLP−1ペプチド(例えば、フラグメント及び/若しくは変異又はGLP−1融合ペプチド)は、例えば、そのネガティブレセプター(GLP−1受容体)への結合によるGLP−1(7−37)の効果を与える化合物として特定される。好ましくは、上記にて特定されるGLP−1(融合)ペプチドは、天然に存在するGLP−1ペプチドの結合特性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%の、GLP−1受容体に対する結合特性を有する。結合特性は、例えば表面プラズモン共鳴等のあらゆる適切な方法によって決定され得る。さらに、もし、ここで特定されるGLP−1(融合)ペプチドが、細胞内にシグナルを伝達するその細胞外受容体への結合によって細胞内cAMPの形成を誘導するのであれば、それは好ましい。
【0065】
インビトロで制御する目的のため、ここで定義されたGLP−1(融合)ペプチドは、例えば汎用の分離技術を用いて、当該ペプチドを発現する細胞から単離してもよい。例えば、細胞を、適切な条件下、例えば、支持体と栄養素とを含み、インビトロな条件下で育成して、分泌されたタンパク質、すなわち、上記定義がされたGLP−1ペプチドを細胞外培地から回収してもよい。したがって、細胞内に工作された配列は、好適には、上記定義がされたGLP−1ペプチド(下記参照)の分泌を可能にするためのシグナル(ペプチド)配列(下記参照)を含む。当該細胞は、好適には、当該シグナル配列を切断することができるプロテアーゼを、そのまま内生的に発現する、又は、遺伝子工学的手法により細胞内に導入しトランスフェクションした後に発現する。あるいは、他の選択肢として、GLP−1ペプチドをコードする工作された遺伝子配列は、そのようなシグナル配列を含まず、そのため細胞内に発現したGLP−1ペプチドは概して分泌がなされず、細胞溶解を含む工程により細胞から回収される。この方法では、コード配列は、培地からペプチド産物を効率的に抽出するための精製用のタグを含んでよく、当該タグは、単離されたGLP−1ペプチドをリリースするために切断されてよい。しかしながら、この選択肢は、患者に移植され、かつその周囲の組織にGLP−1ペプチドを送達する要請のある、本発明のマイクロカプセルにかかる細胞としては、概して不適当である。
【0066】
上記定義がされたGLP−1ペプチドは、上記定義がなされた細胞内で産生される。例えば、GLP−1ペプチドは、本発明にかかる球状のマイクロカプセルの核内に埋め込んだ細胞内で発現され、分泌される。この目的のため、上記定義がなされたGLP−1ペプチド、又はその断片、又はその変異体が、これら細胞内に含まれた核酸配列によりコードされる。これら核酸配列は、細胞内にもともと存在するものであってもよく、又は、本発明の球状のマイクロカプセルを調製する前に、細胞トランスフェクション技術によって当該細胞に導入されていてもよい。本発明に関して、上記定義がされたGLP−1ペプチドをコードする、好適な如何なる核酸配列をも使用することができる。遺伝コードの縮重が起こるため、多数の核酸配列がそのようなGLP−1ペプチドをコードしうる。本発明の好適な実施形態の一つでは、ここで定義される細胞のトランスフェクションに用いる核酸配列は、上記定義がなされたGLP−1ペプチドをコードする核酸配列と、追加的な(機能性の)核酸配列と、を含んでよい。本発明は、好適には、ここで定義される細胞のトランスフェクションに用いるに好適な核酸配列であり、(a)完全なGLP−1アミノ酸配列(GLP−1(1−37)、又は機能のあるGLP−1(変異)配列(7−35、36又は37)、又は他の如何なるGLP−1ペプチド、例えば上記定義がされたGLP−1融合ペプチドを含む)をコードし、(b)任意に(a)にかかるGLP−1配列のN末端において、プロテアーゼ切断配列をコードし、及び、任意に(b)の上流においてシグナルペプチド配列をコードしてもよいもの、を提供する。好適には、当該シグナル(ペプチド)配列は、以下に定義する配列から選択される。
【0067】
上記定義した核酸配列はベクターに含まれていてもよい。このベクターは、本発明の球状のマイクロカプセルを調製するに好適な、ここで定義する細胞を、トランスフェクトする目的で使用されてもよい。典型的には、このベクターは、特に発現ベクターであり、少なくとも上記定義した核酸配列の一つを含む。本発明で意味する範囲内における「ベクター」とは、上記定義したGLP−1ペプチドをコードする核酸配列の一つを少なくとも含み、必要であれば、コードされたGLP−1ペプチド配列の発現を操作するに好適な追加的なエレメントをさらに含む。ここで用いるベクターのあるクラスは、動物ウイルス(ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、又はSV40等)に由来する、染色体外で独立に複製されるプラスミドを供するDNAエレメントを用いるものである。ここで用いる本発明のベクターの第2のクラスでは、宿主細胞の染色体内に所望する遺伝子配列を組み込むことによるものである。
【0068】
上記定義がされたベクターは、一般的には、少なくとも一つのGLP−1ペプチドをコードする核酸配列を、好適なベクターに挿入することで調製される。当該好適なベクターは当業者にはよく知られており、例えば、Cloning Vectors(Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam−New York−Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)内にレビューすることができる。好適なベクターには、また、プラスミド;ファージ;SV40、CMV、バキュロウイルス、アデノウイルス、シンドビスウイルス等のウイルス;トランスポゾン;IS−エレメント;ファスミド;コスミド;直鎖状又は環状DNA;等の、当業者に知られている如何なるベクターをも含むことを意図する。哺乳動物細胞内への組み込みには、一般的には、直鎖状DNAが用いられる。好適には、本発明にて用いられるベクターの種類は、宿主細胞特有の要求に対応したものである。市販品を入手可能な好適な発現ベクターであって、本発明の核酸配列が挿入されてよいものとしては、pSPORT、pBluescriptIISK、バキュロウイルス発現ベクターpBlueBac、原核生物発現ベクターpcDNAII、等が包含され、これらは全てカリフォルニア州サンディエゴにあるインビトロジェン社(Invitrogen Corp.)から入手可能である。
【0069】
本発明の球状のマイクロカプセルの構成物として用いられ得る細胞のトランスフェクションに好適な、ここで定義されたベクターは、一般的には、GLP−1をコードする核酸配列と他の調節エレメント(regulatory elements)、例えばコードされた(本発明の)アミノ酸配列の発現を制御するもの、とを組合わせてなる。このような調節エレメントは、例えば、1)体の一組織又は一領域に特異的、2)構成的、3)グルコース反応性、及び/又は、4)誘導可能/調節可能、なものである。この調節エレメントは、好適には、調節配列及び複製起点(origins of replication)(ベクターが自律的複製をする場合には)、から選択される。本発明の範疇において、調節配列は、GLP−1をコードする核酸配列の転写発現及び/又は翻訳発現に影響を持ち、かつ当業者に知られた如何なるエレメントであってもよい。プロモータ配列以外に、調節配列には、RNAポリメラーゼとDNAとの相互作用を高めることにより発現の増強を導きうる、いわゆるエンハンサー配列も含まれる。さらに、本発明のベクターにかかる調節配列は、転写調節及び転写開始シグナル、いわゆる「ターミネータ配列」等である、又はこれらの部分配列である。
【0070】
概して、自然に存在する如何なるプロモータも、本発明の球状のマイクロカプセルの調製目的で用いられる細胞のトランスフェクションに好適な発現ベクターに含まれていてもよい。このようなプロモータは、如何なる真核生物の、原核生物の、ウイルスの、バクテリアの、植物の、ヒト又は動物の、例えば哺乳動物の、プロモータから選択することができる。好適なプロモータとしては、例えば、サイトメガロウイルスプロモータ;lacZプロモータ;gal 10プロモータ:及びAcMNPV ポリヘッド(polyhedral)プロモータ;例えば、cos−、tac−、trp−、tet−、trp−tet−、lpp−、lac−、lpp−lac−、laclq−、T7−、T5−、T3−、gal−、trc−、ara−、SV40−、SP6、I−PR−のプロモータ;又は、グラム陰性バクテリアに優位に見出されるI−PL−プロモータ;を包含していてもよい。さらに、プロモータは、amy及びSPO2等のグラム陽性バクテリアプロモータ;ADC1、Mfa、AC、P−60、CYC1、GAPDH等の、酵母のプロモータ;又は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ等の哺乳動物プロモータ;哺乳動物の筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモータ、哺乳動物のデスミンプロモータ、哺乳動物のトロポニンI(TNNI2)プロモータ、又は哺乳動物の骨格α−アクチン(ASKA)プロモータ、を包含する筋特異的プロモータ;又は肝臓型ピルビン酸キナーゼプロモータ、取り分け(−183から+12)又は(−96から+12)に相当するこれらの断片(Thompsonら, J Biol Chem, (1991). 266:8679−82.; Cuifら, Mol Cell Biol, (1992). 12:4852−61);spot 14プロモータ(S14, −290から+18) (Jump,ら, J. Biol Chem, (1990). 265:3474−8);アセチル−CoA カルボキシラーゼ(O’Callaghan,ら, J. Biol Chem, (2001). 276:16033−9);脂肪酸合成酵素(−600から+65) (Rufo,ら, J Biol Chem, (2001). 28:28);及びグルコース−6−フォスファターゼ(ラット及びヒト) (Schmoll,ら., FEBS Left, (1996). 383:63−6; Argaud,ら., Diabetes, (1996). 45:1563−71);又は、CaM−キナーゼllのプロモータ、Nestinのプロモータ、L7のプロモータ、BDNFのプロモータ、NFのプロモータ、MBPのプロモータ、NSEのプロモータ、β−グロブリンのプロモータ、GFAPのプロモータ、GAP43のプロモータ、チロシン水酸化酵素のプロモータ、カイナット(Kainat)−受容体−サブユニット1、グルタミン酸−受容体−サブユニットB、又はヒト・ユビキチンプロモータB(ヒトubiB)、ヒト・フェリチンHプロモータ(FerH);等、から取得されてもよい。特に好適なプロモータはヒト又は哺乳動物起源のものである。最後に、都合に応じて合成プロモータも使用可能である。インビトロでの制御目的のために、(例えば、育成培地中における栄養素又は他の誘導物質の存在又は非存在により)発現の調節を可能とする目的で、本発明のベクターに含まれるプロモータ配列もまた誘導可能なものであってよい。一例として、バクテリオファージ・ラムダ・plac5から取得されたLacオペロンがあり、これはIPTGにより誘導することができる。最後に、上記定義がなされたプロモータは、GLP−1をコードする核酸配列の5’上流側に位置するように、当該GLP−1をコードする核酸配列と連結されてもよい。好適には、例えば、ヒト・ユビキチンプロモータB(ヒトubiB)、又はヒト・フェリチンHプロモータ(FerH)等の、ヒト由来のプロモータが用いられる。
【0071】
GLP−1をコードする核酸配列の発現をアップレギュレーションするエンハンサー配列は、好適には、上記定義がなされたベクターの他の構成物である。当該エンハンサー配列は、一般的には、ベクターの非コード3’領域内に位置する。好適には上記定義がなされた対応するプロモータと共に、上記定義がなされたベクター内に組み込まれるエンハンサー配列は、如何なる真核生物、原核生物、ウイルス、バクテリア、植物、ヒト又は動物、例えば哺乳動物の宿主、から得られたものであってもよい。本発明において最も有用なエンハンサーエレメントは、グルコース応答性、インシュリン応答性、及び/又は肝臓特異的なものである。エンハンサーエレメントとしては、例えば、CMVエンハンサー(例えば、ユビキチンプロモータ(Cubi)に連結されたもの);肝臓ピルビン酸キナーゼ(L−PK)プロモータのグルコース応答性エレメント(G1RE)(−172から−142)を包含する、一つ又はそれ以上のグルコース応答性のエレメント;及び、応答性が改良されたその改良版(Cuifら, supra; Louら, J. Biol Chem, (1999). 274:28385−94);補助的(auxiliary)L3ボックス(−172から−126)を備えたL−PKのG1RE(Diaz Guerra,ら, Mol Cell Biol, (1993). 13:7725−33);補助的L3ボックスを備え、応答性が増強されたG1REの改良版;S14のカルボヒドラーゼ応答性エレメント(ChoRE)(−1448から−1422)、及び低グルコース濃度において活性化されるその改良版(Shih及びTowle, J Biol Chem, (1994). 269:9380−7;Shih,ら, J Biol Chem, (1995). 270:21991−7;及びKaytor,ら, J Biol Chem, (1997). 272:7525−31);隣接するS14のアクセサリー因子を備えたChoRE(−1467から−1422)[et al., supra];アルドラーゼ(+1916から+2329)(Gregoriら, J Biol Chem, (1998). 273:25237−43; Sabourin,ら, J. Biol Chem, (1996). 271:3469−73;及び脂肪酸合成酵素(−7382から−6970)(Rufo,ら, supra.)、さらに好適には、グルコース−6−ホスファターゼのインシュリン応答性エレメント(−780から−722)(Ayalaら, Diabetes, (1999). 48:1885−9)等のインシュリン応答性エレメント;及び、プロトロンビン(940から−860)(Chowら, J Biol Chem, (1991) 266: 18927−33)、等の肝臓特異的エンハンサーエレメント;及び、α−1−ミクログロビン(−2945から−2539)(Rouetら, Biochem J, (1998). 334:577−84);哺乳動物のMCKエンハンサー、哺乳動物のDESエンハンサー、及び脊椎動物のトロポニンI IRE(TNI IRE:以降、FIREと称する)エンハンサー、等の筋特異的エンハンサー;を包含してもよい。最後に、SV40エンハンサー配列もまた包含されてもよい。
【0072】
エンハンサーエレメントは、上記定義がなされたプロモータと共に使用されてもよい。例えば、そのようなプロモータ/エンハンサーの組み合わせには、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータとCMVエンハンサーとの組合わせ;ユビキチンプロモータ(Cubi)に結合されたCMVエンハンサー;ヒト血清アルブミン(HAS)エンハンサー、ヒトプロトロンビン(HPrT)エンハンサー、α−1ミクログロブリン(A1MB)エンハンサー、及びイントロン性の(intronic)アルドラーゼエンハンサー、からなる肝臓特異的エンハンサーエレメントの一群であり、対応するプロモータと組合わせて使用されるもの;又は、CMVプロモータ又はHSAプロモータからなる群から選択されたプロモータと組合わせて使用されるHASエンハンサー;ヒトプロトロンビン(HPrT)及びα−1ミクログロブリン(A1MB)からなる群より選択されるエンハンサーであり、CMVプロモータと組合わせて使用されるもの;ヒトプロトロンビン(HPrT)及びα−1ミクログロブリン(A1MB)からなる群より選択されるエンハンサーであり、α−1−アンチトリプシンプロモータと組合わせて使用されるもの;等が包含される。
【0073】
さらに、本発明の球状のマイクロカプセルの構成物として用いられうる細胞をトランスフェクションするために好適な、上記定義がなされたベクターは、転写シグナル、及び/又は翻訳シグナルを含んでもよく、好適には、適切な宿主により認識される、例えば、転写調節シグナル及び翻訳開始シグナル等の、転写シグナル及び/又は翻訳シグナルを含んでもよい。転写シグナル及び/又は翻訳シグナルは、如何なる真核生物、原核生物、ウイルス、バクテリア、植物から取得することができ、例えば宿主が哺乳動物の場合には好適にはヒト又は動物から取得することができ、好適には、上記定義がなされた対応するプロモータと関連するものである。それゆえに、宿主の性質に応じて、広範な転写及び翻訳調節配列を使用することができる。宿主細胞が、GLP−1をコードした核酸配列に関連する転写調節シグナル及び翻訳開始シグナルを認識できる限りにおいて、元から存在するGLP−1をコードする核酸配列に隣接する5’領域は、そのまま維持されて、かつ本発明のベクター内の転写及び翻訳の調節に用いられてもよい。この領域は、一般的には、例えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列、その他の、転写及び翻訳の開始に関与する配列を含む。一般的には、この領域は、少なくとも約150塩基対の長さがあり、さらに一般的には、約200bpの長さがあり、稀に1kbを超え2kbの長さがある。
【0074】
転写開始調節シグナルは、抑制又は活性化を制御した結果、遺伝子の発現が調節されうるように選択される。このような制御可能な調節技術の一つとして、温度を変えることにより発現の抑制又は開始をするための、温度感受性の調節シグナルの使用がある。他の制御可能な調節技術として、特定の化学物質に感受性のある調節シグナルを使用することがある。転写シグナル及び/又は翻訳シグナルにはまた、例えばストップシグナル及びポリアデニル化領域などの、転写終了調節配列が包含される。好適には、転写終了調節配列は、上記定義がなされた、GLP−1をコードする核酸配列を含んだベクターのノンコーディング3’領域に位置する。好適な終了配列は、例えば、ウシ成長ホルモンのシグナル、SV40のシグナル、lacZのシグナル、EF1 αのシグナル、及びAcMNPVポリヘッド(polyhedral)ポリアデニル化シグナル、を包含する。
【0075】
本発明の球状のマイクロカプセルの調製のために用いることができる細胞のトランスフェクションに好適な発現ベクターは、ここで定義されるGLP−1ペプチドの最適な発現のために他の配列をさらに含むことができる。このような配列としては、シグナル(ペプチド)配列をコードする配列、例えば、分泌されたタンパク質を細胞膜へ移動又は細胞膜を通過させる、N末端に位置するペプチド配列をコードする配列;発現産物の安定性を供するための配列;制限エンドヌクレアーゼによる切断部位を供する、制限酵素認識配列;が包含される。これらの材料は全てこの技術分野では知られており、商業的に入手可能である(例えば、Okayama (1983), Mol. Cell. Biol., 3:280、を参照)。
【0076】
ここで定義するように「シグナル配列」とは、一般的には、発現したGLP−1(融合)ペプチドのN末端に位置する約15から30アミノ酸からなるシグナル(ペプチド)配列であり、GLP−1ペプチドを分泌可能にする、例えば、細胞膜を通過可能にするものを指す。そのようなシグナル配列は、通常、野生型のGLP−1前駆タンパク質と関連するシグナル配列(例えば、全長プログルカゴン前駆分子のシグナル配列)、並びに、通常、これらと関連しないシグナル(ペプチド)配列、例えば、野生型のGLP−1前駆タンパク質のもの(例えば、全長プログルカゴン前駆分子のシグナル配列)とは異型のシグナル配列、を包含する。ここで定義された「シグナル配列」は、例えば、シグナルペプチド配列、又はリーダー配列(例えば、分泌シグナル(及びリーダー)配列)であってもよい。さらに、ここで定義されたシグナル(ペプチド)配列は、好適には、例えばシグナル配列プロテアーゼ等のプロテアーゼによる(GLP−1)前駆ペプチドの切断を提供するものである。プロテアーゼにより(GLP−1)前駆ペプチドからシグナル配列を切断することで、生物学的活性のある上記定義のなされたGLP−1ペプチドが生産される。このようなシグナル配列は、一般的に、プロテアーゼによる切断において認識される切断部位をコードする領域を含む。代わりに、プロテアーゼによる切断において認識される切断部位をコードする領域を、当該シグナル配列に導入することもできる。さらに、プロテアーゼによる切断において認識される切断部位をコードする追加的な(一つ又は一を超える)配列が、シグナル配列に付加されてもよい。
【0077】
上記定義がなされたベクターによりコードされうるシグナル配列の例として、例えばGLP−1又はGLP−1以外のような分泌タンパク質、サイトカイン、凝固因子、イミュノグロブリン、分泌酵素、又はホルモン(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)/グルカゴン スーパーファミリー、を包含する)及び血清タンパク質、に由来するシグナル配列を包含する。例えば、ここで定義されるシグナル配列は、分泌マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)由来のもの、例えば、ストロメライシンリーダー配列;分泌ヒトアルカリ性フォスファターゼ(SEAP)由来のもの;プロ−エクセンディン(pro−exendin)、例えば、プロ−エクセンディン−4リーダー配列;プロ−ヘロデルミン(pro−helodermin);プロ−グルコース依存性インシュリン分泌刺激ポリペプチド(pro−glucose−dependent insulinotropic polypeptide (GIP));プロ−インシュリン様成長因子(pro−insulin−like growth factor (IGF1));プレプログルカゴン(preproglucagon);α−1アンチトリプシン;インシュリン様成長因子1;ヒト因子IX;ヒトリンフォトキシンA(Genbank Accession no. BAA00064);又はヒトクラスタリン(Genbank Accession no. AAP88927);由来であってよい。ここで定義されるシグナル配列の特定の例としては、シグナルペプチダーゼ、フリン(furin)又は他のプロホルモンの変換酵素(例えば、PC3)による前駆体切断のためのシグナルをコードする領域を含む配列がある。例えば、フリン(PACEとしても知られる:米国特許第5,460,950号を参照)、他のズブチリシン(PC2, PC1/PC3, PACE4, PC4, PC5/PC6, LPC/PC7IPC8/SPC7及びSKI−1を包含する:Nakayama, Biochem. J., 327:625−635 (1997))、エンテロキナーゼ(米国特許第5,270,181号を参照)又はキモトリプシン、により切断されるシグナルが、ここで定義したシグナル配列として導入することができる。上記書類に開示された内容は、参照としてここに組込まれる。フリンは偏在的に発現しているプロテアーゼであり、ゴルジ体を貫いて(trans−golgi)存在しており、タンパク質の前駆体が分泌される前にそのプロセシングを行なう。フリンは、COOH末端の共通認識配列、Arg−X−Lys−Arg、又はArg−X−Arg−Arg、又は(Lys/Arg)−Arg−X−(Lys/Arg)−Arg、及び、例えばArg−Gln−Lys−ArgのようなArg−X−X−Arg、において切断する。これらのアミノ酸配列は、プロテアーゼフリンによる前駆体切断のシグナルである。したがって、これとは異種のシグナル配列もまた、シグナル配列に応じた共通配列(例えば、シグナルペプチダーゼにより切断される分泌タンパク質に応じた共通配列)から合成により得ることができる。
【0078】
上記定義がなされた調節配列に関して追加すれば、上記定義がなされた自律的複製をするベクターは、一般的に、複製起点を含む。好適な複製起点は、これらに限定されるものではないが、例えば、ColE1、pSC101、SV40、pMPI(ori pMPI)及びM13等、の複製起点が包含される。
【0079】
上記定義がなされたベクターは、好適には、追加的に、自殺遺伝子を含んでもよい。本発明において「自殺遺伝子」とは、好適には、特定の物質を投与することで、本発明のマイクロカプセルの核中に含まれる自殺遺伝子収容細胞を殺すことによって、本発明の球状のマイクロカプセルによる治療を停止させることができるものである。例えば、本発明に好適な自殺遺伝子は、ヒト又は動物の体内で通常は存在していない外因性のアクチベータを投与することで活性化されるものであってよい。この場合、通常は、自殺遺伝子は、細胞がアポトーシスを受けるようなカスケードを開始する。これに代えて、本発明に好適な自殺遺伝子は、ヒト又は動物の体内で通常は存在していない、投与された外因性かつ非毒性なプロドラッグを代謝するものであってよい。外因性かつ非毒性なプロドラッグの代謝は、好適には、当該プロドラッグを細胞毒にするものである。自殺遺伝子は、上記定義がなされたGLP−1ペプチドをコードするのと同じベクターに含まれてもよく、又は代わりに第二のベクターに含まれてもよい。さらに、自殺遺伝子は、ここで発現ベクターの構成物として言及したプロモータ、エンハンサー等、又は、元来有している制御及び調節エレメントなどの、如何なる制御及び調節エレメントにより調節されてもよい。好適には、上記した制御メカニズムの何れかを可能にするものとして、本発明に応じて自殺遺伝子は選択される。例えば、シトシンデアミナーゼ(CD)、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRTase)、HSV チミジンキナーゼ(HSV−Tk)、から選択される自殺遺伝子や、例えばバクテリアのTet リプレッサータンパク質(TetR)等のようなテトラサイクリンの添加により誘導される自殺遺伝子がある。特定の例では、シトシンデアミナーゼ(CD)が使用されてもよい。当該シトシンデアミナーゼ(CD)は、一般的には、様々な生物において存在し、5−フルオロシトシン(5−FC)を、一般的な化学療法剤を象徴する5−フルオロウラシル(5−FU)に変換することができるものである。5−フルオロウラシル(5−FU)は生物にとり非常に毒性が高い一方で、そのプロドラッグである5−フルオロシトシン(5−FC)は細胞に対する毒性がない。5−フルオロウラシル(5−FU)は、次いで、細胞キナーゼによりリン酸化され、細胞のRNA合成を抑止することができる。したがって、プロドラッグである5−フルオロシトシン(5−FC)は、特定の細胞の自殺を誘導するに優れたツールの象徴である。さらに、5−フルオロ−dUMPは抗葉酸剤としても機能し、デオキシリボヌクレオチドの新規合成(de novo synthesis)経路においてdUMPからdTMPへのメチル化を触媒する酵素チミジル酸シンターゼ(thymidylat synthase)を阻害する。これにより、細胞内のDNA合成の抑制が、阻害されてもよい。また、好適には、HSV−1 チミジンキナーゼ(ATP:チミジン−5−ホスホトランスフェラーゼ)及びその対応するプロドラッグであるガンシクロビル(GCV)が用いられてもよい。グアノシンのアナログであるGCVは特異的にリン酸化され、DNA合成の伸長(elongation)が阻害され、結果として細胞の自殺を導く。
【0080】
本発明のマイクロカプセルの調製に用いる好適な細胞内に、上記定義がなされたベクターをトランスフェクションする、又は、これに代えて、GLP−1ペプチドをコードする核酸そのものをトランスフェクションすることは、当業者に知られた如何なる方法にても達成することができる(例えば、Maniatis ら、(2001) Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Habor, NY、を参照)。上記定義がなされた好適な細胞内にベクターがトランスフェクションされる場合、当該ベクターは、好適には、GLP−1ペプチドをコードする核酸を持つプラスミドDNAの形態で存在する。当該プラスミドDNAは、好適には、環状プラスミドDNAである。好適なトランスフェクションの方法は、特にこれらに限定されないが、例えば、改良型エレクトロポレーション技術を包含したエレクトロポレーション技術(例えば、ヌクレオフェクション(nucleofection))、例えば、リン酸カルシウム共沈法などのリン酸カルシウム技術、DEAE−Dextran法、転写介在(transferring−mediated)リポフェクション法等のリポフェクション法、等がある。好適には、トランスフェクションは、改良型エレクトロポレーション技術(例えば、ヌクレオフェクション)を用いて、上記定義がなされたベクターを保持したプラスミドDNAにより行われる。
【0081】
本発明の他の実施形態では、ここで定義されたGLP−1(融合)ペプチドであって、本発明の球状のマイクロカプセル内に埋め込まれた細胞から分泌されるものは、成分(I)及び/又は(III)として、次の式(II)のアミノ酸配列を含んでなる修飾GLP−1ペプチドを含む。
式(II):
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり、Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であって、Glyが特に好ましく;Xaa16はVal又はLeuであり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa19はTyr又はGlnであり;Xaa20はLeu又はMetであり;Xaa22はGly、Glu又はAibであり;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa25はAla又はValであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa27はGlu又はLeu;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa33はVal又はLysであり;Xaa34はLys、Glu、Asn又はArg;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg、Gly若しくはLys若しくはアミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミド又は欠損している。
【0082】
本発明のさらに他の実施形態では、本発明の球状のマイクロカプセルに用いられる当該GLP−1(融合)ペプチドの、本発明の成分(I)及び/又は(III)として、次の式(III)のアミノ酸配列を含んでなる修飾GLP−1ペプチドを含む。
式(III):
Xaa7‐Xaa8‐Glu‐Gly‐Thr‐Phe‐Thr‐Ser‐Asp‐Val‐Ser‐Xaa8‐Tyr‐Leu‐Glu‐Xaa22‐Xaa23‐Ala‐Ala‐Xaa26‐Glu‐Phe‐lle‐Xaa30‐Trp‐Leu‐Val‐Xaa34‐Xaa35‐Xaa36‐Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり;Xaa8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa22はGly、Glu又はAib;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa34はLys、Glu又はArgであり;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg又はLys、アミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu又はLys、アミド又は欠損している。
【0083】
特に好適な実施形態では、本発明の球状のマイクロカプセルは、GLP−1(融合)ペプチドであって、その成分(I)及び/又は(III)として、GLP−1(7−35)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−36)−アミド、GLP−1(7−37)、又はこれらの変異体、アナログ、又は誘導体、から選択される(修飾)GLP−1ペプチドを含むもの、を含むものである。好適なものとしてはまた、GLP−1(融合)ペプチドであって、その成分(I)及び/又は(III)中8番目の位置にAib残基を持つ修飾GLP−1ペプチドを含むもの、又は、当該GLP−1ペプチドの7番目の位置に、D−ヒスチジン、デス−アミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン、及び4−ピリジルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸残基を持つものである。
【0084】
式(II)及び式(III)により上記定義がなされ、かつ本発明に使用可能なGLP−1(融合)ペプチドの成分(I)及び/又は(III)にかかる具体例は何れも、GLP−1(融合)ペプチドにかかる上記開示と組合わせてもよい。換言すれば、一般式(II)及び(III)は、例えば、成分(II)、リンカー、製造工程等にかかる上記開示と組合わせてもよい。
【0085】
さらに、本発明のマイクロカプセルの核内に埋め込まれる細胞により発現され、分泌されるGLP−1(融合)ペプチドは、好適には、例えば、ポリアミノ酸等の、少なくとも一つの合成ポリマー又は天然ポリマーを含んでもよい。当該少なくとも一つのポリマー成分は、一般的には、融合ペプチドサブユニットと共有結合をしている。本発明において「コンジュゲートした」とは、「化学的に結合した」ことを意味することを意図している。「化学的に結合した」とは、共有結合又は非共有結合を介して結合したことを意味することを意図している。共有結合が好適である一方で、当該ポリマー成分はまた、共有結合なく複合化すること、例えば、水素結合又は静電気的な相互作用、疎水的な相互作用等、を介して、当該融合ペプチドと連結されてもよい。当該融合ペプチド及び当該ポリマーを含んだ複合体全体を、以下、「GLP−1コンジュゲート複合体」、又は「GLP−1コンジュゲート分子」、と称する。
【0086】
この結果、当該GLP−1コンジュゲート複合体は、さらに、主にタンパク質分解にかかるエンドペプチダーゼIVの活性を原因とする、ビボにおけるタンパク質分解から保護されてさえいる。少なくとも二つの成分(I)及び(II)と当該合成ポリマーとからなるGLP−1(融合)ペプチドを持つ又は含んでなる、当該コンジュゲート複合体は、GLP−1の生物学的活性を示し、同時に、C末端の伸長(elongation)によりGLP−1にその成分(I)と同等の安定性を与える。それゆえに、当該融合ペプチドをポリマーにコンジュゲートすることで、そのビボでの安定性が相当に増大する。
【0087】
ここで使用される当該ポリマーは、生理学的に受け入れ可能なポリマーであってよい。このようなポリマーには、水溶性の溶液又は懸濁液中に溶解することができ、かつ、薬学的に有効な量の当該融合ペプチドを投与したときに動物に与えるネガティブな影響、例えば、副作用等、を持たないものが包含される。本発明に関して使用される、生理学的に受け入れ可能なポリマーは特に限定されない。当該ポリマーは、合成性のもの、又は天然に生じたポリマー(天然ポリマー、例えば、タンパク質)であってもよい。
【0088】
1、2、又は3つのポリマー成分、好ましくは1つのポリマー成分は、当該融合ペプチドサブユニットに共有結合により結合してGLP−1コンジュゲート分子を形成してもよい。しかしながら、特定の実施形態では、融合ペプチドサブユニット当たり3つ以上のポリマー成分が、供されてもよい。当該成分は、当該融合ペプチドの成分(I)又は(II)の何れか、又は双方と、共有結合してもよい。少なくとも一つの当該ポリマー成分が、成分(II)に結合することが好ましい。1つ又はそれを超えるポリマー成分が成分(I)に結合する場合には、当該ポリマー成分は、N末端、又は、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン又はアルギニン残基の側鎖、に結合することが好適である。好適には、成分(I)が有する、Thr11、Thr13、Asp15、Ser17、Ser18、Tyr19、Glu21、Lys26、Glu27、Lys34、Arg36残基の一つ又はそれを超える側鎖が、結合の目的で使用される。天然に存在するIP2の配列が成分(II)として用いられる場合、そのArg、Glu、及びAsp残基の一つ又はそれを超える残基が、その側鎖において、ポリマー成分により修飾される。
【0089】
ポリマー、特にPEGをN末端に結合することは、当該コンジュゲート分子の精製に有益である。また、他の如何なる残基、例えば、他の如何なるリジン残基、へポリマーがランダムに結合することと比較して、ポリマーがN末端に結合することは、生物学的活性がよりよく保存されると考えられる。よって、好適な実施形態では、少なくとも一つのポリマー成分は、融合タンパク質のN末端に位置する。PEG化(PEGylation)が用いられる場合、本発明のペプチドに含まれる、末端又は側鎖のカルボキシル基、又はリジンのイプシロンアミノ基のPEG化は、酸化に対する耐性を与えるが、これもまた本発明の範疇に含まれる。
【0090】
さらに、一般的には、本発明の球状のマイクロカプセルの核内に用いられるGLP−1(融合)ペプチドが有する合成ポリマーは、好適には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチレンポリオール(polyoxyethylated polyol)、ポリオレフィンアルコール(polyolefinic alcohol)、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシアルキルメタクリルアミド、ポリヒドロキシエチレンメタクリレート等のポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリサッカライド、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリビニルアルコール、ポリフォスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルフォリン)、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリ乳酸グリコール酸、ポリ乳酸、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、ポリウレタン(polyurethyne)、ポリシアル酸セルローストリアセテート(polysialic acid cellulose triacetat)、ニトロセルロース、及び前述した如何なるもの同士の組合わせ、から選択される。好適には、天然ポリマーは、その側鎖又は末端基(アミノ基及び/又はカルボキシル基)を介してGLP−1(融合)ペプチドに結合するペプチド又はタンパク質であり、好適にはアルブミン及びトランスフェリンである。
【0091】
上記定義がなされた本発明の球状のマイクロカプセルは、好適には、2又はそれを超える方法工程によって調製される。方法工程1)によれば、上記定義がなされた核が調製される。方法工程2)によれば、方法工程1)により調製された当該核が、表面コーティングにより被覆される。さらなる任意の工程は、追加的な表面コーティングの調製を含む。好適には、追加的な表面コーティングでは、方法工程2)と同じ工程が実行される。さらなる任意の工程は、洗浄工程を含む。
【0092】
典型的には、上記開示がなされた核は、本発明の球状のマイクロカプセルを調製する方法工程1)によって調製される。そのような核は、架橋ポリマーと、上記開示した方法によりトランスフェクションされたGLP−1を発現し分泌する細胞と、から構成される。方法工程1)によれば、典型的には、溶解可能な形態のポリマー、例えば、溶解可能な形態のアルギナート(例えば、生理的食塩水中のカルシウムアルギナート又はナトリウムアルギナート)と、GLP−1を発現し分泌する細胞と、の混合物(懸濁液)が調製され、好適には、ポリマー溶液1mlあたりの細胞数が5×10個までの濃度で調製される。
【0093】
均質化された細胞/ポリマー懸濁液(例えば、細胞/アルギナート懸濁液)は、典型的には空気注入スプレーノズルを介して押し出される。当該空気注入スプレーノズルは、内側チャネル、中間チャネル、外側チャネル(エアーリング)の3つのチャネルからなり、これらは共通の中心の周りに配された3つの同心円リングとして、同心円状に配される。好適には、50μmから2,000μmまでの内径を持つ中空針(hollow needles)が、内側チャネルの目的で使用される。典型的には中間チャネルは60μmから4,000μmの内径を有し、外側チャネル(エアーリング)は、好適には100μmから5,000μmの内径を有する。もっぱら内側チャネルと外側チャネル(エアーリング)とが、本発明のマイクロカプセルの核を調製するために、方法工程1)において使用される。したがって、二つのチャネル(内側及び外側チャネル)のみからなるスプレーノズルもまた、方法工程1)において使用することができる。3つのチャネルを持つ空気注入スプレーノズルを用いた場合、典型的には、中間チャネルを材料が流れることはない。細胞/ポリマー溶液の懸濁液は、典型的には、内側チャネルを通り10μl/minから5ml/minの速度で押し出され、当該チャネルの出口で液滴となり、この液滴は、典型的には0.5l/minから10l/minの速度で外側チャネル(エアーリング)により供給されるエアーフローにより粉砕される。細胞と架橋されていないポリマー溶液とを含む液滴は、架橋剤を含む溶液(投下槽(precipitation bath))中に落ち込む。架橋剤を含む当該溶液は、典型的には、空気注入スプレーノズルの出口の下、約4cmから約60cmの距離に位置する。液滴は、好適には、落下する最中に回転し、それにより実質的に幾何学的に球状な形態となる。架橋剤は、当該ポリマーにイオン性の架橋をもたらし、約20μmから約4,000μmの直径を有する本発明の球状(水溶性)マイクロカプセルの核が、はじめに形成される。本発明の球状のマイクロカプセルの核の直径は、方法工程1)にて使用される、選択したチャネルのサイズと結合構造とに依存する。ポリマーとしてアルギナートを使用する場合、架橋剤を含む当該溶液(投下槽)は、好適には二価のカチオン、例えば、カルシウムイオン又はバリウムイオン(5−100mM)、又は他の二価又は多価のカチオン、を含んでなる。さらに、投下槽は、好適には、バッファー物質(例えば、1mM−10mMのヒスチジン)、及び塩化ナトリウム(例えば、290mOsmol±50mOsmol)を含む。アルギナート以外のポリマーが使用された場合、当該技術分野で知られた、他の好適な架橋剤及びバッファーをここで用いることもできる。
【0094】
方法工程1)は、架橋したポリマーと細胞とからなる本発明のマイクロカプセルの核を提供する。方法工程1)に次いで、任意の方法工程として、洗浄工程を含むことができる。本発明の球状のマイクロカプセルの核は、例えば、生理的食塩水又は他の好適な洗浄溶液により洗浄され、適用可能な場合には、当該核は、硫酸ナトリウム溶液中で、好適には、US6,592,886に従った硫酸ナトリウム溶液中でインキュベートされる。US6,592,886の開示は、ここに参照として組み込まれる。本発明の球状のマイクロカプセルの核を、投下槽及び/又は洗浄槽から分離することは、典型的には、遠心分離又は他の好適な方法を用いて実行される。
【0095】
方法工程2)によって、方法工程1)により調製された本発明の球状のマイクロカプセルの核は、実質的に架橋ポリマーからなる表面コートにより被覆される。よって、工程1)により調製された、本発明の球状のマイクロカプセルの核は、上記開示をした架橋されていないポリマーを含み細胞を含まない、ポリマー溶液に加えられる。好適には、当該ポリマーは、上記定義がなされた濃度で、架橋されていない形態で供される。典型的には、当該ポリマー溶液と本発明の球状のマイクロカプセルの核とを含むこの混合物は、上記記述をした空気注入スプレーノズルの内側チャネルを通して、例えば、15μl/minから2ml/min、好適には、10μl/minから5ml/minの速度で押し出される。同時に、細胞を含まない、純粋な、架橋されていないポリマー溶液、好適には、約0.1%から約4%(w/v)のポリマーを含む溶液、例えば、細胞を含まないアルギナート溶液は、中間チャネルを通して、典型的には15μl/minから2ml/min、好適には10μl/minから5ml/minの速度で押し出される。これにより、中間チャネルの末端に、当該核と、架橋されていないポリマーからなる表面と、を含む液滴が形成される。これらの液滴は、典型的には0.5l/minから10l/minの速度で外側チャネル(エアーリング)を介して供されるエアーフローにより粉砕される。本発明の球状のマイクロカプセルの核におけるポリマー濃度、本発明のマイクロカプセルの核が添加される当該ポリマー溶液におけるポリマー濃度、及び、表面コーティングにおける当該ポリマー濃度、は異なっていてもよい(上記参照)。本発明の球状のマイクロカプセルの核(方法工程2)に従い調製される)を含む液滴は、上記定義がなされた架橋剤を含む溶液(投下槽)中に落ち込む。落下する間に、好適には、当該液滴は丸まり、おおよそ幾何学的に球状な形態となる。方法工程1)に類似して、架橋剤は当該ポリマーにイオン性の架橋をもたらす。これにより、60μmから4,000μmの直径を有する、水溶性の球状のマイクロカプセルが形成される。方法工程2)で得られる本発明の球状のマイクロカプセルの直径は、ここで使用される、選択したチャネルのサイズと結合構造とに依存する。1又はそれを超える表面コーティングを持つ本発明のマイクロカプセル、例えば、上記定義がなされた核と、2、3、4、5、5−10又はそれ以上の表面コーティングとを含んでなる本発明の球状のマイクロカプセル、を調製するために、方法工程2)を必要な頻度で反復実施してもよい。
【0096】
方法工程2)に引き続いて、上記定義がなされた洗浄工程を任意に行ってもよい。
【0097】
本発明のさらに他の側面によれば、本発明の球状のマイクロカプセルを投与することによる、動物の治療方法、好適にはヒトの治療方法が提供される。当該発明は、本発明の球状のマイクロカプセルを、製品の製造、例えば、医薬組成物又はキットの調製、に使用することも包含する。好適には、本発明の球状のマイクロカプセルは、グルコース代謝と関連する病気又は健康状態(condition)の治療又は予防に用いられる(医薬組成物の調製の目的で)。グルコース性不調(glucose disorders)の制限されない例として、例えば、真性糖尿病タイプI又はタイプII、インシュリン耐性、体重不調、これらに関連する疾患又は健康状態、等が包含され、ここで、当該体重不調又は関連する健康状態には、肥満、体重超過関連症状(overweight−associated conditions)、満腹感による調節の欠如(satiety deregulation)、血漿中のインシュリンレベルの低下、血中のグルコースレベルの増加、又は膵臓β細胞量の減少、が包含される。好適には、タイプII糖尿病(NIDDM)の治療のための、本発明の球状のマイクロカプセルの使用(医薬組成物の調製の目的で)がここで開示される。結果として、本発明は、本発明の球状のマイクロカプセルの使用(医薬組成物の調製の目的で)、例えば、患者の体重減少、患者の満腹感(satiety)の低下、食後における患者の血漿中のインシュリンレベルの増加、絶食時の患者の血中グルコースレベルの減少、患者における膵臓β細胞量の増加、又は、患者における糖尿病タイプI又はIIの治療、を目的とする使用、に言及する。
【0098】
他の病気又は不調にかかる患者も、同様に、本発明の球状のマイクロカプセルにより治療されうる。本発明の球状のマイクロカプセルは、神経変性不調及び疾患又はこれに関する状態の治療目的で(医薬組成物の調製のために)用いられてもよい。また、本発明の球状のマイクロカプセルは、アポトーシスに関連する不調及び疾患又は状態の治療目的で(医薬組成物の調製のために)用いられてもよい。GLP−1を発現し分泌する細胞がその核に埋め込まれている本発明の球状のマイクロカプセルを、これら不調の治療に用いる結果、次のことが起こる。サイクリックAMPセカンドメッセンジャー経路に結合するGLP−1受容体が、げっし類及びヒトの脳全体に発現する。脳における受容体の分布の化学構造(chemoarchitecture)は、食物の摂取及び有害なストレスへの応答の制御におけるGLP−1の中心的な役割と単に相関をしているだけではない。さらに、そのGLP−1受容体におけるGLP−1結合は、向神経性(neurotrophic)の特性を発揮し、培養神経細胞におけるグルタミン酸誘導性のアポトーシス及び酸化による損傷に対する保護をも提供する。さらにGLP−1は、細胞培養において、アミロイドβタンパク質前駆体のプロセシングを調節する作用を示し、かつ、投与量依存的に(dose−dependently)、インビボの脳におけるアミロイドβタンパク質を減少させる。ゆえに、GLP−1はまた、中枢神経系の制御因子(regulator)としても知られる。生理学的に活性のあるGLP−1の生物学的活性を模倣したGLP−1ペプチドは、例えば、アルツハイマー病(AD)及び他の中枢神経又は末梢神経変性状態、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アレキサンダー(Alexander)病、アルパース病(Alper’s disease)、毛細血管拡張性運動失調(Ataxia telangiectasia)、カナバン(Canavan)病、コケーン(Cockayne)症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、サントホフ(Sandhoff)病、ピック(Pick’s)病、脊髄小脳失調症(Spinocerebellar Ataxia)、シルダー(Schilder’s)病、及びパーキンソン病、並びに、脳卒中、脳出血(ICH)、くも膜下出血、副腎白質ジストロフィー(x−ALD)又は他の白質ジストロフィー等、の治療において治療的効果(therapeutic relevance)を有する。
【0099】
さらに、生理学的に活性なGLP−1は、様々な細胞に対して抗アポトーシス効果を示し、例えば、GLP−1は新鮮な単離されたヒト・ランゲルハンス島又は他の細胞タイプの量及び機能を保存するに効果的である。すなわち、本発明の球状のマイクロカプセル(生物学的活性のあるGLP−1ペプチドを発現し分泌している)は、細胞又は組織のアポトーシスにより引き起こされる不調の治療に用いられてもよい。
【0100】
本発明の他の側面としては、本発明の球状のマイクロカプセルを含む医薬組成物であり、これは外的に(exogenously)投与されてよい。そのような医薬組成物は、上記した不調を患っている患者に適用されてよい。
【0101】
本発明の球状のマイクロカプセルを「活性成分」として含む医薬組成物の調製は、概して、当該技術分野ではよく理解されており、例えば、米国特許第4,608,251号、第4,601,903号、第4,599,231号、第4,599,230号、第4,596,792号、及び第4,578,770号が典型例として示される。これらは全て、ここに参照として組み込まれる。
【0102】
本発明の医薬組成物(又は、本発明の球状のマイクロカプセル)は、患者に対して外的に投与されてよい。典型的な投与形態には、特に限定されるものではないが、注射等による、例えば、皮下(subcutaneously)投与、皮内投与、皮下(subdermally)投与、筋内投与、又は、患部における経静脈、皮膚又は皮下注射、等の非経口投与がある。前記した疾患又は不調の何れかにとり適した治療法としての他の投与形態には、本発明の医薬組成物又は球状のマイクロカプセル(好適には、例えば、好適な医薬担体の付加により、好適な形態、例えば、ゲル状、カプセル状、タブレット状等に調剤されて)の移植、が包含される。非経口投与用の本発明の医薬組成物は、例えば、WO03/002136の記載のように調製されてよい。WO03/002136における開示は、ここに参照として組み込まれる。
【0103】
本発明に適した投与部位には、治療を受ける患者の組織、例えば、脂肪組織、脳、肝臓、筋肉、等、並びに体液、例えば、血液、リンパ液、脳液(brain liquid)等、が包含される。本発明の医薬組成物の投与に適したデバイスには、投与形態に応じて選択される如何なる好適なデバイスも含まれ、かつ、当業者により選択されてよい。
【0104】
これに限定されないが、本発明の医薬組成物は、例えば、サイズが12から26Gの、より好ましくは18から22Gの注射針を持つような、適切な注射針を用いた注射等により投与されてよい。或いは、好ましくは適切な形態に調剤された本発明の医薬組成物を、例えば外科用メスや上記定義がなされた注射針などの外科デバイスを用いて移植することで、投与されてよい。これにより本発明の実施形態を限定的に解釈するべきではないが、特定の例によれば、タイプ2糖尿病、又はそれに関連する他の疾患、又はここに開示した患者であって、上記投与を必要とする者は、本発明の医薬組成物(本発明の球状のマイクロカプセルを含む)を、例えばその者の脂肪組織等に対し皮下注射又は移植を受けてもよい。本発明の球状のマイクロカプセルを含む当該本発明の医薬組成物は、上記定義がなされた細胞、例えば、インビボ又はインビトロで脂肪細胞(adipocytes)に分化する間葉系幹細胞を含んでもよい。さらに、ここで定義がなされた神経変性疾患の患者は、本発明の医薬組成物を、脳組織、例えば脳実質(brain parenchyma)に移植を受けてもよい。
【0105】
典型的には、医薬組成物は、水性溶液又は懸濁液として注射可能に調製され、好適には水を含み(水性調剤(aqueous formulation))又は乳化されていてもよい。「水性調剤」との用語は、少なくとも50%w/wの水を含む調剤として定義付けられる。同様に、「水性溶液(aqueous solution)」との用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義付けられる。「水性懸濁液(aqueous suspension)」との用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義付けられる。
【0106】
静脈、皮膚、又は皮下注射、又は患部への注射の目的では、本発明の医薬組成物は、非経口投与で受け入れ可能な水性溶液であり、発熱物質フリー(pyrogen−free)でかつ適切なpH、等張性及び安定性を有する形態にされる。液状医薬組成物は、概して、水などの液状媒体(liquid vehicle)を含む。好適には、当該液状媒体は、生理的食塩水、デキストロース−エタノール、又は他のサッカライド溶液、又は、エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール又はこれらの組合わせ等のグリコール類、が含まれてよい。さらに他の例では、例えばリンガー液や乳酸化リンガー液等の生理的塩類溶液等の、その他の等張性媒体を含む。
【0107】
本発明の医薬組成物が、本発明の球状のマイクロカプセルの水性溶液と、例えばバッファーとを含みなる場合、当該本発明の球状のマイクロカプセルは、典型的には、医薬組成物中に、0.1mg/ml又はそれを超える濃度で存在し、また、当該医薬組成物は、通常、約2.0から約10.0のpHであり、好適には、約7.0から約8.5のpHである。
【0108】
本発明の医薬組成物には、他の成分が存在する場合もある。そのような追加的な成分には、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、バルク剤(bulking agents)、pH緩衝剤(例えば、リン酸塩バッファー、クエン酸塩バッファー、マレイン酸塩バッファー)、保存剤、界面活性剤、安定化剤、強壮修飾剤(tonicity modifiers)、キレート剤、金属イオン、油性媒体(oleaginous vehicles)、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)、及び/又は双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リシン及びヒスチジン等のアミノ酸)、が包含される。当該成分は、本発明の球状のマイクロカプセルの核内に埋め込まれた細胞が持つ特定の要求、例えば、当該成分は細胞毒性がなくかつ当該細胞の生存を確保できる等、に従って、熟練者により選択される。さらに、当該成分は、本発明の球状のマイクロカプセルの核内に埋め込まれた細胞により既に発現及び分泌がなされたGLP−1ペプチドを安定化してもよい。
【0109】
緩衝剤(buffers)に関すれば、好適には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リシン、アルギニン、ジヒドロゲンリン酸ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate)、ヒドロゲンリン酸ジナトリウム(disodium hydrogen phosphate)、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、ヘペス、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、又はこれらの混合物、からなる群より選択される。これら特定の緩衝剤はそれぞれ、本発明の他の実施形態を構成する。
【0110】
本発明の球状のマイクロカプセルを含む医薬組成物中に、上で言及した添加物を使用すること、特にこれらの濃度範囲、に関しては、熟練者には良く知られている。丁度よい参照として、レミントン(Remington)「The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995.」がある。
【0111】
本発明の球状のマイクロカプセルを含む本発明の医薬組成物は、好適には、1回分の投薬量(dosage)処方に適合するような方法にて投与され、かつ、治療上有効な量にて投与される。本発明の医薬組成物とともに(又は、必要に応じて単独で)投与される本発明の球状のマイクロカプセルの量は、治療を受ける患者及び病気、例えば患者の病気の重症度等を含む、による。
【0112】
好適な1回分の投薬量の範囲は、予め予定した期間内での、本発明の球状のマイクロカプセル(本発明の医薬組成物に含まれて)により分泌された生物学的活性を有するGLP−1ペプチドの量に依存するが、典型的には、一日あたり1マイクログラムから数百マイクログラムのオーダーの範囲内である。典型的には、本発明の医薬組成物中に含まれる、本発明の球状のマイクロカプセルは、1日あたり、当該本発明の球状のマイクロカプセル1mlあたり約0.5μgのGLP−1を分泌する。従って、一回分の投薬量の範囲は、例えば、1日あたり約0.01μgから20mgの、生物学的活性のある分泌されたGLP−1ペプチドの範囲内であってよい(しかしながら、1−100mgの範囲内より多量の範囲内もまた考えられる)、例えば、1日あたり約0.01μgから10mgの範囲内であり、好適には1日あたり0.01μgから5mgの範囲内であり、及びさらにより好適には1日あたり約0.01μgから1mgの範囲内であり、最も好適には1日あたり約0.01μgから500μgの範囲内である。
【0113】
〔図面の説明〕
図1は、本発明の球状のマイクロカプセルの調製に用いられる細胞内に含まれる、特に限定されない例示のコンストラクトa−m(実施例1も参照)の概観を表す。
【0114】
図2は、一時的なトランスフェクション後における、hTERT−MSC細胞及びHEK293細胞内における異なるGLP−1コンストラクトの一時的(transient)発現、及び活性型のGLP−1の一時的発現、の結果を描写するものである(実施例2もまた参照)。単量体性(monomeric)のGLP−1コンストラクト♯103及び♯317(GLP−1(7−37)を一コピーのみ有する)において、ごくわずかな活性型のGLP−1の発現を見ることができる。hTERT−MSC細胞及びHEK293細胞内の双方で、二量体性(monomeric)のGLP−1コンストラクト♯217(GLP−1(7−37)を成分(I)及び成分(III)として有する)において、発現の非常な増加が観察された。
【0115】
図3は、GLP−1分泌細胞からの細胞培養上清をウェスタンブロット解析した結果を示す(実施例3もまた参照)。レーン1:模擬(mock)トランスフェクトがなされたhTERT−MSC細胞の上清中に溶解した100ngの合成GLP−1(7−37);レーン2:コンストラクト♯217からの二量体性のGLP−1を分泌しているhTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清;レーン3:コンストラクト♯217からの二量体性のGLP−1を分泌しているAtT20細胞(クローン81−A−217/3)の上清;レーンM:前染色されたタンパク質マーカー(kDa);この結果は、ここで定義がなされた、GLP−1(7−37)及びC末端の付加(図3の2及び3)を含むポリペプチドは、トランスフェクトされたセルラインから分泌され、GLP−1(7−37)の中央分子(mid−molecular)エピトープに結合する抗GLP−1抗体を用いて検出されることを示す。
【0116】
図4及び図5は、本発明に従い使用されるGLP−1を用いて行なった、血漿安定性試験(インビトロ)を記述する。この目的のため、HEK293細胞及びhTERT−MSC細胞は、GLP−1(7−37)(1)、GLP−1(7−37)−IP2−11アミノ酸により伸長(2)、及びGLP−1(7−37)−IP2−GLP−1(7−37)(3)のコンストラクトにより、一時的にトランスフェクトされた。結果は、図4(HEK293細胞)及び図5(hTERT−MSC細胞)に示す。HEK293細胞及びhTERT−MSC細胞はともに、当該遺伝子コンストラクトにとり有効な宿主である(実施例4もまた参照)。
【0117】
図6は、下記に示すペプチドのウェスタンブロットを示す。以下の意味が付与される:配列番号1(ID1syn)はGLP−1(7−37)に対応し、31アミノ酸、3.3kDである;配列番号8(ID8syn,CM3)はGLP−1(7−37)−IP2に対応し、46アミノ酸、5.1kDである;配列番号7(ID7rec,CM2)はGLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP2に対応し、83アミノ酸、9.4kDである;配列番号6(ID6syn,CMl)はGLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP1(7−37)に対応し、79アミノ酸、8.7kDである(実施例5もまた参照)。
【0118】
図7は、インビトロでのGLP−1ペプチドの血漿安定性試験を例証する。そのままのGLP−1(7−37)(配列番号1)と対照して、そのC−末端が伸長されたGLP−1ペプチドである配列番号6、配列番号7、及び配列番号8は、インビトロでのヒト血漿中で相当に安定化される。コントロールとして(右手側)、DPP−IVインヒビターを添加した実験で得られた結果を示す。GLP−1の活性は、これらのコントロール実験において完全に維持される(実施例6もまた参照)。
【0119】
図8は、サイクリックAMP(cAMP)の産生をともなうインビトロでのバイオアッセイの結果を示す:図8より見ることができるように、100%cAMP産生は、GLP−1が不存在の場合の基礎産生に対応する。GLP−1は、Gタンパク質結合受容体に結合して、cAMP産生を刺激する。試験したすべてのGLP−1分子(ID1syn、ID6syn、ID6rec、ID7rec、ID8syn)が、細胞のcAMP産生を増加させる(実施例7もまた参照)。
【0120】
図9は、ここで定義がなされたGLP−1コンストラクトを用い、11週齢のタイプII糖尿病マウス(C57BL/Ks−Leprdb/db,Harlan)に対して行った、インビボにおける生物学的活性の試験の結果を例証する。テストされた全てのGLP−1(配列番号6(合成の、または、組換え型の)と配列番号7(合成の、または、組換え型の))が、多糖症に抗する効果(anti−hyperglycemia effect)を持つ。最良の結果は、組換え型の配列番号6(CM1)及び合成の配列番号8(CM3)を用いた場合に得られた(実施例8もまた参照)。
【0121】
図10は、一時的かつ安定的な遺伝子発現を行なうための典型的なベクターを表す。当該ベクターは二つの別々の転写ユニットからなり、一つは対象となる遺伝子のためのもの(GOI)であり、一つは自殺遺伝子HSVチミジンキナーゼとブラスティシジン(blasticidin)耐性遺伝子との融合のためのものである。第一の転写ユニット用に、ヒトユビキチンBプロモータが使用され、第二の転写ユニット用に、ヒトフェリチンプロモータが使用された(実施例9もまた参照)。
【0122】
図11、12は、本発明の球状のマイクロカプセルに用いられる細胞を予め不死化した後の、当該細胞のキャラクタリゼーションを例証する。図11から見られるように、不死化細胞はいまだに、不死化されていない対応細胞と同様に、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞に分化することができる(図11参照)。不死化細胞は繊維芽細胞の形態を持ち、例えば、ここで使用した一次細胞の特徴であるCD44及びCD166エピトープマーカーを用いたフローサイトメトリーにより示されるように、致死のMSCsと同様に大きさや粒度に関してより均質である。不死化細胞は、不死化されていない対応細胞と同じCDマーカーを発現する(図12を参照)。
【0123】
図13、14、15は、異なる細胞タイプ(hTERT−MSC細胞:図13;AtT20細胞:図14;又はHEK293細胞:図15)及びクローン番号を用いた、GLP−1分泌のウェスタンブロット分析を示す。この結果は、トランスフェクトされたセルラインからGLP−1/C末端ペプチドのコンストラクトが分泌される、すなわち、当該タンパク質は予期した分子量を持つことを示す。さらに、当該タンパク質は、GLP−1(7-37)のN末端に結合する抗GLP−1抗体に結合する。
【0124】
図13Aは、hTERT−MSCセルラインからのGLP−1の分泌である(1:模擬トランスフェクトがなされたhTERT−MSC細胞の上清に溶解した100ngの合成GLP17−37 2:GLP−1CM1分泌hTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清,M:前染色したタンパク質マーカー[kDa])。
【0125】
図13Bは、hTERT−MSCセルラインからのGLP−1の分泌である(M:前染色したタンパク質マーカー[kDa], 1:hTERT−MSCの細胞外培地中に溶解した100ngの合成GLP17−37, 2:アナログGLPCM1(G8)分泌hTERT−MSC細胞(クローン78TM216/2)の上清, 3:GLPCM1分泌hTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清)。
【0126】
図14は、AtT20セルラインから分泌されたGLP1である(1:AtT20細胞が分泌するアナログGLPCM1(G8)(クローン80−A−216/1)の上清, 2:AtT20細胞が分泌する野生型のGLPCM1(クローン81−A−217/3)の上清)。
【0127】
図15は、一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞から分泌されたGLP1である(1:ストロメライシン−GLP17−37コンストラクト(#103)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清、 2:ストロメライシン−GLP17−37−IP2−11アミノ酸により伸長されたコンストラクト(#317)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清、 3:ストロメライシン−GLP1CM1コンストラクト(#217)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清、 4:ストロメライシン−GLP17−37−IP2(4x)コンストラクト(#159)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清)。
【0128】
図16は、GLP1CMペプチドの免疫沈降を示す。抗GLP−1補足抗体HYB147−12又はHYB147−12(Antibodyshop)を用いた、細胞培養上清由来のGLPCM1ペプチドの免疫沈降により、GLPCM1ペプチドの蓄積と交差コンタミネーションするタンパク質の除去という結果が得られた。1:GLPCM1分泌hTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清、 2:タンパク質G(Protein G)との免疫沈降、ただし、GLP1抗体は用いない、 3:タンパク質G及びGLP1抗体sc−7782(Santa Cruz)を用いた免疫沈降、 4:タンパク質G及びGLP1抗体sc−26637(Santa Cruz)を用いた免疫沈降、 5:タンパク質G及びGLP1抗体HYB147−12(Antibodyshop)を用いた免疫沈降, 6:タンパク質G及びGLP1抗体HYB147−08(Antibodyshop)を用いた免疫沈降、 7:10ngの合成GLP17−37, 8:31ngの合成GLP17−37, 9:100ngの合成GLP17−37,当該GLP1、抗体HYB147−08及び抗体HYB147−12を用いた免疫沈降により、当該GLPCM1ペプチドの蓄積と、それにより交差コンタミネーションしたタンパク質が上清から除去される、という結果が得られた(レーン1のクマシー染色を参照)。
【0129】
図17は、本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ(CellBeads))をdb/dbマウスに適用した動物試験を例証する。使用したマウスモデルはタイプII糖尿病マウスC57/Ks−RJ db/db (レプチン受容体の劣性変異)であって、マウスGLP/CM1(配列番号6)を分泌する細胞ビーズを移植したものである。GLP分泌セルラインはAtT20であった。糖尿病マウスの血清中の活性型GLPを、本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)の移植後2日目、22日目に、GLP−I(活性型) ELISA(#EGLP−35K, Biotrend)を用いて測定した。カラムは次を表す。:
動物7−10:db/dbマウスでありGLP−1CM1分泌細胞ビーズ移植の治療を受けたもの。動物13,15:db/dbマウスであり、細胞ビーズ(GLP1分泌なし)移植の治療を受けたもの。動物db/−:非糖尿病コントロールマウス、治療を受けていない。
【0130】
図18は、糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウス(db/db n=3)の絶食時の血中グルコースレベルを示す。非糖尿病のヘテロ接合性の同腹仔(db/− n=1)及び糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウスを、GLPCM1(G8)(配列番号6ただし2番目の残基がG)(n=3)又はGLPCM1(配列番号6)(n=3)を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(GLP−1 細胞ビーズ)を用いて治療し、移植後、2、9および22日目に測定した。
【0131】
図19は、糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウス(db/db n=3)の絶食時の血中グルコースレベルを描写する。非糖尿病のヘテロ接合性の同腹仔(db/− n=1)及び糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウスを、その首の脂肪塊(fat pad)(n=2)又は筋肉(n=2)に、GLPCM1(G8)を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を移植することで治療し、移植後、2、9、および22日目に測定した。
【0132】
図20は、IPGTT(i.pグルコース負荷試験)を例証する。一晩絶食させたマウスに20%のグルコース溶液のi.p注射をした(グラム体重あたり1mgのグルコース)。血中グルコースの測定は、注射前及び注射後の2時間に行われた。図20は14週齢の糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウス(db/db n=3)でのIPGTTを示す。非糖尿病のヘテロ接合性の同腹仔(db/− n=1)及び糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウスに対して、その首の脂肪塊(fat pad)(n=2)又は筋肉(n=2)に、GLPCM1(G8)を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を、試験を行なう9日前に移植した。
【0133】
本発明はここに記載する実施例においてさらに明らかにされる。しかし、本発明の範囲が以下に示される実施例の記載に限定することが意図されるものではない。
【実施例】
【0134】
〔実施例1〕
遺伝子コンストラクトの作成
GLP−1(7−37)の配列をコードするcDNAは、図1aに示すようにHincII及びEcoRI部位を含む配列において、合成的に合成した。別途、図1bに示されるように、GLP−1(7−37)、IP2並びにSfoI、EcoRI及びXbaIの制限酵素認識部位をコードする配列を含むcDNAを合成した。GLP−1の直接の分泌経路のために、ストレプトマイシン3の異種シグナル配列(ACC番号 NM_005940)を用いた。それゆえ、ストレプトマイシンのシグナル及びリーダー配列をコードするこのcDNAは、ヒトRNAからの逆転写酵素PCRによって増幅され、図1a又は図1bのコンストラクトと共に、図1c及び図1dのそれぞれに示すコンストラクトを形成するために使用された。
【0135】
図1eのコンストラクトを形成するために、図1aのコンストラクトのHincII/EcoRIフラグメントを図1dの配列のSfo1部位の中にクローンした。同様に図1fに示されるコンストラクトを製造するために、真核性の発現プラスミドのEcoR1部位の中に図1dのEcoR1フラグメントをクローンした。また、図1gに示されるコンストラクトを形成するために、図1bに示されるコンストラクトのHincII/XbaIフラグメントを図1dに示されるコンストラクトのSfoI/XbaI部位の中にクローンした。図1hは、短縮した内因性イントロン配列により遮断された、ストレプトマイシンのリーダー及びシグナル配列をコードし、ヒトGLP−1(7−37)、IP2及びGLP−2(1−35)の配列と融合され、コドンが最適化された配列を合成したものを示す。図1hのコンストラクトのDNA配列は配列番号16であり、配列番号15も翻訳されたペプチドの配列を示している。
【0136】
また、図1i及び1jの配列を合成した。そして、これらを、図1hの線形化したNael/BssHII配列の中に、図1jのNael/BssHIIフラグメントをクローニングすることによって、図1kに示される配列を形成するために用いた。図1kのコンストラクトのDNA配列は配列番号14であり、配列番号13も翻訳されたペプチドの配列を示している。図1hの配列のBssHIIによる消化及び再連結によって図1lのコンストラクトを形成した。図1lのコンストラクトのDNA配列は配列番号18であり、配列番号17も翻訳されたペプチドの配列を示している。図1hの線形化したAfel/BssHII配列の中に、図1iの配列のAfel/BssHIIフラグメントをクローンすることによって、図1mのコンストラクトを形成した。図1mのコンストラクトのDNA配列は配列番号20であり、配列番号19も翻訳されたペプチドの配列を示している。
【0137】
上述したコンストラクトは当業者が通常の技術を用いることにより製造してもよい。
【0138】
〔実施例2〕
哺乳動物細胞の、トランスフェクション、栄養系選抜及びGLP−1の発現
細胞の入手先:HEK293(ヒト胚腎臓細胞系、#ACC 305、DSMZ Cell Culture Collection、ドイツ)、AtT20(マウスLAF1下垂体腫瘍細胞系、#87021902, European Cell Culture Collection, イギリス)、hTERT−MSC細胞はKassem教授(University Hospital of Odense、デンマーク)より供与された。
【0139】
10個の細胞をトランスフェクションするために、異なるGLP−1コンストラクトを複数含む0.5〜2μgのプラスミドDNAを用いた。このコンストラクトは実施例1の記載に従って生成した物である。Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al. 1994ff Harvard Medical School Vol2., Unit 9.1)に記載されている、標準的なリン酸カルシウム共沈殿法によってHEK293細胞をトランスフェクトした。AtT20細胞のトランスフェクトには、FuGene (Roche)を用い、current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et. al. 1994ff, Harvard Medical School Vol 2., Unit 9.4)の記載に従った。hTERT−MSC細胞のトランスフェクションは、Nucleofector technology (Amaxa)を用い、電気的パラメータ及び細胞型特異的溶液の組み合わせに基づく非ウイルス性の方法により行なわれた。Nucleofector装置(プログラム C17)及びNucleofector溶液VPE−1001を用いて、トランスフェクション効率>60%を達成した。細胞クローンのトランスフェクションから48時間後、DNAの染色体中への融合を安定化させた細胞クローンの選択は、選択試薬ブラストサイジン(2μg/ml)を含む培地に供することにより行なわれた。12〜15日後、安定した、トランスフェクトされた細胞クローンは単離され、特徴付けのために拡張された。
【0140】
hTERT−MSC及びHEK293細胞内における様々なGLP−1コンストラクトの一過性発現を測定した。単量のGLP−1コンストラクトの#103及び#317(GLP−1(7−37)のコピーを一つだけ有している)からは検出限界程の活性GLP−1レベルが確認されたのに対し、二量体のGLP−1コンストラクトである#217(GLP−1(7−37)を成分(I)及び成分(III)として有している)からは、hTERT−MSC及びHEK293細胞の両方において大量の発現が確認された。結果を図2にまとめた。GLP−1コンストラクト#159(4個のIP2のコピーを成分(II)として有している)にコンストラクトを伸張させたものについては、有意に増加しない結果となった(図示せず)。様々なコンストラクトを有するhTERT−MSC細胞のトランスフェクション後の、安定してGLP−1を発現するクローンが選択された。発現レベルを表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
〔実施例3〕
哺乳動物細胞から分泌された、GLP−1ペプチドのウェスタンブロット解析
GLP−1分泌細胞からの細胞培養上清を、10%〜20%の勾配SDS PAGEによって分離して(120V,90分間)、半乾燥ブロッティング(2.0mA/cm、60分間)PVDF膜(Immobilon−P Membrane 0、45 μm Millipore IPVH 00010)に転写した。メタノール固定及びブロッキング(3% (w:v) BSA、0.1% (v:v)Tween−20を含むTBS)の後、膜を1μg/ml anti−GLP−1 antibody (HYB 147−12, Antibodyshop)4℃o/nにて免疫ブロットした。洗浄、及び0.02μg/mlの検出抗体(Anti Mouse IgG, HRP conjugated, Perkin Elmer PC 2855−1197)による、室温にて4時間のインキュベーションの後、化学蛍光検出によりタンパク質の位置を明らかにした。
【0143】
ウェスタンブロット解析を図3に示す(1:擬似トランスフェクトされたhTERT−MSC細胞の上清に100ngの合成GLP−1(7−37)を溶解させたもの、2:コンストラクト#217からの2両体GLP−1を分泌するhTERT−MSC細胞(クローン79 TM217/13)の上清、3:コンストラクト#217からの2量体GLP−1を分泌するAtT20細胞(クローン 81−A−217/3)の上清;M:予め染色したタンパク質マーカー[kDa])。この結果は、GLP−1(7−37)及びC末端に付加物(図3の2及び3)を含むペプチドが、トランスフェクトされた細胞系から分泌され、GLP−1の分子中央のエピトープに結合する抗GLP−1抗体により検出されることができることを示している。
【0144】
〔実施例4〕
ヒト細胞から分泌されたGLP−1ペプチドのインビトロ血漿安定性
HEK293及びhTERT−MSC細胞を、次のペプチドをコードするGLP−1変異体に連結しており、非相同ストロメライシンシグナル配列をコードするコンストラクトにて、一過的にトランスフェクトした。
1:GLP−1(7−37)
2:GLP−1(7−37)−IP2−11AAにて延長
3:GLP1(7−37)−IP2−GLP1(7−37)。
【0145】
細胞から分泌されるGLP−1又は合成GLP−1(7−37)(Bachem)を含む細胞培養液の上清を、ジペプチジルペプチダーゼ活性を含む血漿を多く含むヒトリンパ球と共に、37℃で、5%のCO濃度で、3又は4時間インキュベートした。擬似トランスフェクトされた細胞からの合成GLP−1(7−37)は、DPP−IV阻害剤(#DPP4, Biotrend)の添加によって阻害されることが示されている、DPP−IV活性のポジティブコントロールとして用いた。活性GLPは、不活性GLP−1(9−37)ペプチド、DPP−IVに分解されたGLP−1(7−37)のN末端のエピトープを識別して結合する抗体を用いた、the GLP−1 (Active) ELlSA (#EGLP−35K, Biotrend)を用いて測定した。
【0146】
結果を図4(HEK293細胞)及び図5(hTERT−MSC細胞)に示す。HEK293及びhTERT−MSC細胞は共に遺伝子コンストラクトの有効なホストである。タイプ1〜3のトランスフェクトされた細胞の結果の計測は実施例3と同様に行なった(1:擬似トランスフェクトされたhTERT−MSC細胞の上清に100ngの合成GLP−1(7−37)を溶解させたもの、2:コンストラクト#217からの2両体GLP−1を分泌するhTERT−MSC細胞(クローン79 TM217/13)の上清、3:コンストラクト#217からの2量体GLP−1を分泌するAtT20細胞(クローン 81−A−217/3)の上清)。
【0147】
合成GLP−1と同様に、コンストラクト1はDPP−IVにより不活性化される野生型GLP−1を生産する一方で、伸張されたGLP−1が形成するC末端(図4の2及び3、図5の3)は、分解に対してさらに抵抗性を有しており、少なくとも40%の活性を維持する。伸張されたGLP−1ペプチドのC末端は、ヒト血漿中においてインビトロにて極めて安定である。2量体GLP−1配列(3)を有するペプチドはほぼ完全にインビトロのDPP−IV分解に対して安定である。
【0148】
〔実施例5〕
GLP−1ペプチドのウェスタンブロット解析
様々なGLP−1ペプチドを、固相(syn)にて、E.coli(rec)を用いた組み換えにて合成的に生産した。GLP−1ペプチド(配列番号1を31ng、及び配列番号6、配列番号7、配列番号8をそれぞれ10ng)を10%〜20%の勾配SDS PAGEにて分離し(120V、90分間)、半乾燥ブロッティング(2.0mA/cm、60分間)によりPVDF膜(Immobilon−P Membran 0.45μm Millipore IPVH 00010)に転写した。メタノール固定及びブロッキング(3%(w:v)BSA、0.1%(v:v)Tween−20を含むTBS)の後、膜を1μg/mlの抗GLP−1抗体(HYB 147−12、Antibodyshop)を用いて、4℃ o/nにて免疫ブロットした。洗浄、及び0.02μg/mlの検出抗体(Anti Mouse IgG, HRP conjugated, Perkin Elmer PC 2855−1197)を用いた、室温にて4時間のインキュベーションの後、化学蛍光検出にてタンパク質の位置を明らかにした。図6は表されたペプチドのウェスタンブロットを示す。次の値が得られた:配列番号1GLP−1(7−37)に相当する(ID1syn)、31aa、3.3kD;GLP−1(7−37)−IP2に相当する配列番号8、46aa、5.1kD;GLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP2に相当する配列番号7(ID7rec, CM2)83aa、9.4kD;GLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP1(7−37)に相当する配列番号6(ID6syn, CM1)、79aa、8.7kD。
【0149】
〔実施例6〕
GLP−1CMペプチドのインビトロヒト血漿安定性
合成GLP−1ペプチド(配列番号1syn、配列番号6syn、配列番号7rec、配列番号8syn)を濃度20ng/mlにて、ヒト血漿と共に、37℃、5%COにて3時間培養した。血漿のジペプチジルペプチダーゼ活性はDPP−IV阻害剤(#DPP4,
Biotrend)を用いて阻害した。活性GLPはGLP−1 (Active) ELISA (#EGLP−35K, Biotrend)を用いて測定した。
【0150】
野生型のGLP−1(7−37)(配列番号1)に対して、配列番号6、配列番号7及び配列番号8の伸張されたGLP−1ペプチドのC末端は、有意に、ヒト血漿中において、インビトロで安定であった(図7)。コントロール(右手側)としてDDP−IV阻害剤を加えた実験から得られた結果を示す。GLP−1活性はコントロールの実験において完全に維持されていた。
【0151】
〔実施例7〕
インビトロバイオアッセイ
サイクリックAMP生産
RIN−5F(ラット島細胞腫、ECACC No. 95090402)細胞を、24穴プレートにて、4日間、70%集密になるまで育てた。細胞をDMEM(E15−009, PAA)で2度洗浄した後、1% HSA(Aventis)、0.2mM IBMX (858455, Sigma)及び供試ペプチドを加えた0.5mlDMEM(E15−009, PAA)に加えた。25℃で20分間インキュベートした後、PBSで細胞を2回洗浄した。細胞のcAMPを0.5% TritonX−100を含む0.1N HClを加えることによって抽出した。サイクリックAMPをcAMP(低pH)EIA(Cat. DE0355, R&D)を用いて定量した。刺激のために3×108Mの配列番号1、配列番号6syn、配列番号6rec、配列番号7rec、配列番号8synを用いた。
【0152】
結果を図8に示す。GLP−1が存在しない状態における基本的な生産量を100%のcAMP生産とした。GLP−1はGプロテイン共役型の受動態に結合し、cAMP生産を刺激する。全ての供試分子において細胞cAMP生産が増加している。
【0153】
〔実施例8〕
インビトロ生物活性
11週齢のタイプII糖尿病マウス(C57BL/Ks−Leprdb/db, Harlan)を、午前9時及び午後5時の1日に2回、5μgのペプチドを皮下注射する処置をした(1グループあたりn=5)。血中グルコースは処置前(0日)及びGLPCMペプチドを処置した後(2日、4日、7日、10日)、午前10時に一晩の絶食期間の日測定した。データは0日目の血中グルコース濃度の測定値と相対的に表した。全ての供試GLP−1ペプチド(配列番号6(合成又は組み換え)及び配列番号7(合成又は組み換え))は抗高血糖効果を有している。最も良い結果は組み替え配列番号6(CM1)及び合成配列番号8(CM3)より得られた。図9(y軸)は処置の相対的な効果を示している。0日目の血中グルコースを1とした。未処置動物は血中グルコース濃度が増加し続け、GLP−1ペプチドで処置された動物は、ここでは大雑把に表示しているが、長期にわたり血中グルコース濃度が減少し続けた。
【0154】
〔実施例9〕
プラスミドの作成
一過的に安定して遺伝子を発現するベクターを2つの別々の転写ユニットにより構成した。一つは(GOI)に関与する遺伝子であり、もう一つは自殺HSVチミジンキナーゼ遺伝子及びブラストサイジン抵抗遺伝子を融合したものである。一つ目の転写ユニットでは、ヒトユビキチンBプロモータを用い、二つ目の転写ユニットでは、ヒトフィリチンプロモータを用いた。プラスミドは、図10に概略的に示す、7,919bpの長さのpCM4プラスミドをベースとしている。
【0155】
図10に示すように一つ目の転写ユニットは次の構成を含んでいる。
CMVenh:ヒトサイトメガロウィルス極初期エンハンサー
ubiB human:ユビキチンプロモータB
Stro−GLP:ストロメライシンのシグナルペプチド及びリーダー配列をコードする融合遺伝子
ori pMBI:E coliの自己複製最小起源
Hygro:ハイグロマイシンB抵抗遺伝子。
【0156】
転写ユニット2
SV 40 enh:SV40エンハンサー
FerH:ネズミEFI遺伝子と連結したヒトフェリチンHプロモータ
Tk−bla:単純疱疹ウィルスタイプIチミジンキナーゼ及びブラストサイジン抵抗遺伝子をコードする融合遺伝子。
【0157】
一過性発現のため円形プラスミドを用いた。安定して発現する細胞を選択するため、プラスミドを線形化して、細菌の配列(pMB1起点及びハイグロマイシン遺伝子)を除去した。
【0158】
〔実施例10〕
間葉幹細胞系の製造
間葉幹細胞はKassem教授(University Hospital of Odense, Denmark (Simonsen et al., 2002, Nature Biotechnology 20m, 592−596にて公開))から供与され、次の特性を有している。
【0159】
・起源
細胞生産系は間葉幹細胞(MSC)から成っており、健康男性ドナー(33歳)の骨髄から吸引された物から単離された。
【0160】
・不死化
細胞に、テロメラーゼ逆転写酵素をコードする配列を導入することにより不死化した。レトロウィルス形質導入については、モロニーマウス白血病ウイルスのPG13の長鎖繰り返し末端にて駆動するトランス遺伝子を発現する、GCsamレトロウィルスベクターをパッケージングすることにより行なった。形質導入は培養の第9日目(PDL12)に実施された。細胞系を260の集団倍加レベル(PDL)に達するまで培養した。
【0161】
挿入遺伝子座は蛍光in situハイブリダイゼーション及びサザンブロットにより確認した。染色体5(5q23−31)におけるエコトピック(ecotopic)hTERTの挿入遺伝子座は一つのみであった。解析はPDL186にて行なわれた。ギムザバンディング及び遺伝子ハイブリダイゼーションの比較により、hMSC−TERTが全く数的にも構造的にもPDL96にて染色体異常を起こさず、通常の2倍体の男性核型が維持されることが明らかになった。腫瘍形成性は、6ヶ月間の皮下移植後の免疫不全マウスにより確認され、PDL80においてネガティブであることが分かった。
【0162】
・フローサイトメトリー(FACS)解析
標準成長培地にて80%集合になるまで細胞を培養した。細胞をトリプシン処理し、FACScanフロー血球計算機(Becton−Dickinson)にて大きさ及び粒度を評価した。表面のマーカーを検査するためトリプシン処理された細胞を、蛍光色素(FITC−コンジュゲートマウス抗ヒトCD44モノクローナル抗体、#CBL154F、Cymbus Biotechnology;フィコエリトリンコンジュゲートマウス抗ヒトCD166モノクローナル抗体、#559263、BD Pharmingen)にコンジュゲートする抗体によって直接、30分間、氷上で、染色した。サンプルを洗浄し、1%のパラフォルムアルデヒドでFACScan(Becton−Dickinson)による解析まで固定した。
【0163】
・特徴づけ
不死化細胞は、さらに、非不死化対応である含脂肪細胞、骨細胞及び軟骨細胞に分化できる(図11に示す)。不死化細胞は、繊維芽細胞様形態を有しており、例えば、ここで用いた最初の細胞の特徴であるCD44及びCD166エピトープマーカーを用いた、フローサイトメトリーに示されるように、モータル(mortal)MSCsのように大きさ及び粒度の点でさらに均質である。不死化細胞はそれらの非不死化対応物と同じCDマーカーを分泌する。
【0164】
・培養
血清含有培地 7% アールスMEM
10% FCS
2mM L−グルタミン
1mM ピルビン酸ナトリウム
100U/ml ペニシリン
0.1mg/ml ストレプトマイシン
集団倍加は26〜30時間の間である。
【0165】
・トランスフェクション及びクローンの選択
10個の細胞のトランスフェクションのために、0.5〜2μgのプラスミドを様々なGLP1コンストラクトと共に用いた。HEK293細胞は標準的なリン酸カルシウム共沈殿法によりトランスフェクトした。AtT20細胞はFuGene (Roche)を用いてトランスフェクトした。
【0166】
hTERT−MSC細胞のトランスフェクションは、Nucleofector technology (Amaxa)を用い、電気的パラメータ及び細胞型特異的溶液の組み合わせに基づく非ウイルス性の方法により行なわれた。Nucleofector装置(プログラム C17)及びNucleofector溶液VPE−1001を用いて、トランスフェクション効率>60%を達成した。細胞クローンのトランスフェクションから48時間後、DNAの染色体中への融合を安定化させた細胞クローンの選択は、選択試薬ブラストサイジン(2μg/ml)を含む培地に供されることにより行なわれた。12〜15日後、安定した、トランスフェクトされた細胞クローンは単離され、特徴付けのために拡張された。
【0167】
・発現
hTERT−MSC及びHEK293細胞中の様々なGLPコンストラクトの一過性発現を測定した。活性GLP1レベルは、hTERT−MSC及びHEK293細胞共に、単量のGLPコンストラクト#103(Stro−GLP1(7−37))及び#317(Stro−GLP1(7−37)−IP2−11aaにて延長)に見られ、また、2量体のGLP1コンストラクト#217(Stro−GLP1(7−37)−IP2−GLP1(7−37))において大量の発現を確認できた。コンストラクト#317の3量体GLP1コンストラクト#159(Stro−GLP1(7−37)−IP2 (4x)−11aa)への伸長により同様の活性が得られる結果となった(上記図2も参照のこと)。様々なコンストラクトクローンによるhTERT−MSC細胞のトランスフェクションの後、GLP1(上記図4及び5、実施例4を参照)を安定的に発現するクローンを選択した。
【0168】
〔実施例11〕
カプセル化
培養した細胞をカプセル化するために、PBS(PAA、オーストリア)にて洗浄し、トリプシン/EDTA(PAA、オーストリア)を用いて分離した。反応を培地(細胞依存型、例えば、RPMI,PAA,オーストリア)を用いて速やかに止め、細胞上清を遠心分離した(8分間で1,200rpm)。ペレットをPBSに再度懸濁して、細胞計数を決定した。1.4×10細胞の所望量を再度遠心分離した(8分間で1200rpm)。吸引によりPBSを完全に除去し、60μlのペレットを、空気を抜いて、80μlPBSに再度懸濁した。この細胞上清を0.8%(w/v) 560μlのアルギン酸カリウム溶液(0.1%(w/v)で粘度約40mPa.sのものを室温で用いた)中に入れた。
【0169】
細胞の再懸濁物とアルギナート水溶液を混合するために、水溶液をカヌーラ付きシリンジ1mlに入れて、均一的に、ゆっくりと入れたり、出したりを繰り返す方法により、細胞と混ぜた。細胞濃度2×10cell/mlとなった。このようにして、2×10cell/mlの量が得られた。
【0170】
直径約400μmのマイクロカプセルを製造するために、内直径400μmのカヌーラを、3つの流路のスプレーノズルにより流路の中を空気で満たして用いた。カヌーラは内直径700μmの外側のノズル中に固定した。1.5mmに開いたエアーリング(air ring)は2つのインナーカヌーラに締め付けられた。この装置は国際公開公報00/09566号パンフレットに記載された装置を適用したバージョンである。均一の細胞/アルギナート溶液ミクスチャーを上述のスプレーノズルから滴下した。このために、ミクスチャーを包含した1mlシリンジを、ルアコネクター(luer connector)を用いて、内側の流路に置かれた。細胞/アルギナート溶液ミクスチャーを内側の流路中に300μl/minのスピードで押出した。気流はエアーリングの外側を2.5I/minのスピードで運ばれた。その結果、マイクロカプセルは、スプレーノズルより約10cmしたに設けられたバリウム含有沈殿浴(20mM BaCl,5mM L−ヒスチジン,124mM NaCI,pH7.0±0.1,290mOsmol±3)の中に沈殿した。それぞれのケースにおいて、バリウム含有沈殿浴内で5分間静置した後、20mlPBSで5回マイクロカプセルを洗浄した。
【0171】
単層マイクロカプセルの500μlを0.8%(w/v)アルギナート溶液500mlに取り、核を用いて、上記と同じように均一に混ぜた。この懸濁液を1mlシリンジに取り、ルアコネクター(luer connector)を用いて、スプレーノズルの内側の流路(内直径:400μm)に繋ぎ、50μl/minのスピードで押出した。0.8%アルギナート溶液を入れた5mlシリンジを、ルアコネクター(luer connector)を用いて、第2の内側の流路(内直径:700μm)に繋ぎ、250μl/minのスピードで押出した。気流はエアーリングの外側に2.9I/minのスピードで運ばれた。その結果、マイクロカプセルは、スプレーノズルより約10cmしたに設けられたバリウム含有沈殿浴(20mM BaCl,5mM L−ヒスチジン,124mM NaCI,pH7.0±0.1,290mOsmol±3)の中に沈殿した。それぞれのケースにおいて、バリウム含有沈殿浴内で5分間静置した後、20mlPBSで4回マイクロカプセルを洗浄し、1回培養液で洗浄した。合計の直径が約600μm±100μm(アルギナート層を含む)であり、細胞を含む核の内側の直径が380μm±20μm2層マイクロカプセルは、この方法で製造した。核内の細胞の濃度は約2〜3×10細胞/mlアルギナートである。この結果、球のボリュームが0.065〜0.180μlで一つの球あたり1000個の細胞を含む本発明の球状のマイクロカプセル(CellBeads)が得られた。GLP−1分泌細胞を含むCellBeadsは1時間当たり平均5fmolの活性GLPを生産する。
【0172】
本発明の球状のマイクロカプセル(CellBeads)をカプセル化した後、ウシ胎仔血清(FCS)フリーの培地(10%のリプミン(Lipumin)を含むLP02)の中で培養することで、GMPガイドラインに従って、少なくとも6日間、活性が減ることなく生産することができる。
【0173】
脂肪組織に埋め込むために、カプセル化されたhTERT−MSC細胞を含脂肪細胞に分化させた(実施例12参照)。
【0174】
〔実施例12〕
含脂肪細胞への分化(Bead)
インスリン、デキサメタゾン及びイソブチルキサンチンを含むMEMベースの培地による、間葉幹細胞の含脂肪細胞への分化は、Gimble et al. (1995, J.Cell Biochem. 58, 393−402)及びSimonsen et al. (op cit.)の記載にしたがって行なわれた。これらの実験では含脂肪細胞への分化プロセスは動物成分フリーの培地の中で行なわれた。分化プロセスには2週間を要し、含脂肪細胞の収率が>90%であった。成分としては典型的に、次に示す動物成分フリーの培地を用いた:DMEM/HAM´s F12、HEPES、ヒドロコルチゾン、インスリン、トリイドチロニン(Triidothyronine)、ビオチン、DL−パントテン酸、ヘミカルシウム、トログリタゾン(Troglitazone)、オクタン酸(CA)、デキサメタゾン、動物成分フリー脂質ミクスチャー、イソブチルメチルキサンチン。
【0175】
含脂肪細胞分化のマーカーとなる細胞内トリグリセリドの蓄積(Greenberger JS. Corticosteroid−dependent differentiation of human marrow preadipocytes in vitro. In vitro. 1979 Oct, 15(10):823−8)は、親水性色素ナイルレッド(Greenspan P, Mayer EP, Fowler SD. Nile red: a selective fluorescent stain for intracellular lipid droplets. J Cell Biol. 1985 Mar, 100(3):965−73)の溶液であるアジポレッド(AdipoRed)によりモニターされ得る。このモニタリングはアジポレッドアッセイ試薬(#PT−7009, Cambrex)の指示マニュアルに従って実行された。グリセロール−3−リン酸ジヒドロゲナーゼ(GPDH)は成熟含脂肪細胞において高く発現される(Sottile v, Seuwen K. A high−capacity screen for adipogenic differentiation. Anal. Biochem. 2001 Jun 1; 293(1):124−8)。この酵素活性を、グリセロール−3−リン酸ジヒドロゲナーゼ(GPDH)活性評価キット(#MK426, Takara)の指示マニュアルに従って、細胞の脂質生成分化を評価することで測定した。FABP4/aP2は細胞内の脂肪に結合するタンパク質であり成熟含脂肪細胞にて特に発現される(Graves RA, Tontonoz P, Platt KA, Ross SR, Spiegelman BM. ldentification of a fat cell enhancer: analysis of requirements for adipose tissue−specific gene expression. J Cell Biochem. 1992 Jul, 49(3):219−24)。FABP4陽性細胞は成熟含脂肪細胞に分類され得る。メタノール固定及びブロッキングの後、ウサギ抗FABP4ポリクローナル抗体(#10004944, IBL Hamburg)及びCy−3−コンジュゲート抗ウサギIgG(#111−166−006 Dianova)を用いて免疫染色を行なった。分化した含脂肪細胞の生存能力は未分化細胞と同等である。しかしながら、未分化の本発明のマイクロカプセル(CellBeads)培地に確認される増殖は、分化した本発明のマイクロカプセル(CellBeads)培地では起こらない。
【0176】
〔実施例13〕
GLP−1のウェスタンブロット解析
カプセル化し、分化し、トランスフェクトされた含脂肪細胞又は他のタイプの細胞は培地(上記参照)で成長させた。細胞培養上清は10%〜20%の勾配SDS PAGEにて分離し(120V、90分間)、半乾燥ブロッティング(2.0mA/cm,60分間)によりPVDF膜(Immobilon−P Membran 0.45μm Millipore IPVH 00010)に転写した。メタノール固定及びブロッキング(3% (w/v) BSA ,0.1% (v/v) Tween−20を含むTBS)の後、膜を、1pg/ml抗GLP1抗体(HYB 147−12, Antibodyshop)を用いて4℃o/cにて免疫ブロットした。洗浄、及び0.02μg/mlの検出抗体(HRPがコンジュゲートした抗マウスIgG,Perkin Elmer PC 2855−1197)を用いた室温にて4時間のインキュベーションの後、化学蛍光検出によりタンパク質の位置を明らかにした。結果を図13、14及び15に示す。これは細胞のタイプ(hTERT−MSC、AtT20又はHEK293細胞)及びクローン番号を示している。この結果は、GLP−1/C末端ペプチドのコンストラクトがトランスフェクトされた細胞から分泌されたこと、換言すれば、タンパク質が予想された分子量を有していることを示している。さらに、それはGLP−1(7−37)のN末端に結合する抗GLP−1抗体に結合する。
【0177】
〔実施例14〕
ペプチドの免疫沈降
GLP1CMペプチドの免疫沈降のため、培地上清を4℃、o/nにて、Protein−G−Agarose(20μl アガロース/ml 上清)を用いてプレインキュベートした。タンパク質の非特異的な結合は0.2μmフィルターを通すろ過により排除した。1μg/ml抗GLP1捕獲抗体(HYB 147−12, Antibodyshop)を用いた、12時間4℃のインキュベーションの後、1μl/ml Protein−G−Agaroseを室温で2時間加えた。沈殿物にはPBSによる洗浄工程を繰り返した後に遠心分離した。免疫沈降はLaemmliローディング緩衝液中で煮沸され、10%〜20%のSDS PAGEゲルにより分けられ、上述の方法で免疫ブロットした。
【0178】
細胞培養液上清からのGLPCM1ペプチド免疫沈降は、抗GLP1捕獲抗体HYB 147−12又はHYB 147−12(Antibodyshop)を用いて行なわれ、GLPCM1ペプチドの集積及びタンパク質のクロスコンタミネーションの排除という結果となった。結果を図16A及びBに示す。
【0179】
〔実施例15〕
動物試験:db/dbマウスにおける本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ(CellBeads))の試験
ここで用いたマウスのモデルはタイプII糖尿病マウスC57/Ks−RJ db/db (レプチン受容体における劣性変異)であった。動物試験のため、本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)が分泌したネズミGLP/CM1(配列番号6)を12週齢のC57/KS−RJ dbマウスに移植した。GLP分泌細胞系はAtT20であり、ネズミ下垂体分泌腺腫細胞系を上述の方法でトランスフェクトした。本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を、19Gニードルを介して注入した。様々な移植部位(筋肉、脂肪)及び移植量(10μl、100μl)にて試験した。本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を移植した後、2日目及び22日目における糖尿病マウスの血中の活性GLPの測定については、GLP−1 (Active)ELISA(#EGLP−35K, Biotrend)を用いて行なった。空腹動物の血中グルコース濃度の出力が測定され、IPGTTs(腹腔内の耐糖能試験:一晩絶食させたマウスの腹腔内にグルコースを注入し、2時間後に血中グルコース濃度を測定する)を行なった。野生型GLP1CM1を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)の移植から2日目の15時、22日目の14時の平均濃度にて、移植された動物の血中における活性GLP−1を確認した(図17参照)。
【0180】
糖尿病マウスにおける絶食グルコース濃度の重要な正常化が、野生型GLP1CM1(配列番号6)又はアナログGLP1CM1(G8)(配列番号6、但し、第2番目の残基がGに置換されている)を、筋肉(後足)及び脂肪(首脂肪体)のいずれに本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を移植したことにより達成された(図18及び19)。また、IPGTTの結果(図20)、注入の点(t=0)におけるグルコース濃度におけるグルコース代謝の効果は通常のマウスとほぼ同じであることが確認された(糖尿病マウスの高いレベルと比較して)。また、処置したマウスは通常のマウスより濃度が上昇するにも関わらす、この濃度は通常の濃度まで比較的早く戻った。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1は、本発明の球状のマイクロカプセルの調製に用いられる細胞内に含まれる、特に限定されない例示のコンストラクトa−m(実施例1も参照)の概観を表す。
【図2】図2は、一時的なトランスフェクション後における、hTERT−MSC細胞及びHEK293細胞内における異なるGLP−1コンストラクトの一時的(transient)発現、及び活性型のGLP−1の一時的発現、の結果を描写するものである(実施例2もまた参照)。単量体性(monomeric)のGLP−1コンストラクト♯103及び♯317(GLP−1(7−37)を一コピーのみ有する)において、ごくわずかな活性型のGLP−1の発現を見ることができる。hTERT−MSC細胞及びHEK293細胞内の双方で、二量体性(monomeric)のGLP−1コンストラクト♯217(GLP−1(7−37)を成分(I)及び成分(III)として有する)において、発現の非常な増加が観察された。
【図3】図3は、GLP−1分泌細胞からの細胞培養上清をウェスタンブロット解析した結果を示す(実施例3もまた参照)。レーン1:模擬(mock)トランスフェクトがなされたhTERT−MSC細胞の上清中に溶解した100ngの合成GLP−1(7−37);レーン2:コンストラクト♯217からの二量体性のGLP−1を分泌しているhTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清;レーン3:コンストラクト♯217からの二量体性のGLP−1を分泌しているAtT20細胞(クローン81−A−217/3)の上清;レーンM:前染色されたタンパク質マーカー(kDa);この結果は、ここで定義がなされた、GLP−1(7−37)及びC末端の付加(図3の2及び3)を含むポリペプチドは、トランスフェクトされたセルラインから分泌され、GLP−1(7−37)の中央分子(mid−molecular)エピトープに結合する抗GLP−1抗体を用いて検出されることを示す。
【図4】図4及び図5は、本発明に従い使用されるGLP−1を用いて行なった、血漿安定性試験(インビトロ)を記述する。この目的のため、HEK293細胞及びhTERT−MSC細胞は、GLP−1(7−37)(1)、GLP−1(7−37)−IP2−11アミノ酸により伸長(2)、及びGLP−1(7−37)−IP2−GLP−1(7−37)(3)のコンストラクトにより、一時的にトランスフェクトされた。結果は、図4(HEK293細胞)及び図5(hTERT−MSC細胞)に示す。HEK293細胞及びhTERT−MSC細胞はともに、当該遺伝子コンストラクトにとり有効な宿主である(実施例4もまた参照)。
【図5】図4及び図5は、本発明に従い使用されるGLP−1を用いて行なった、血漿安定性試験(インビトロ)を記述する。この目的のため、HEK293細胞及びhTERT−MSC細胞は、GLP−1(7−37)(1)、GLP−1(7−37)−IP2−11アミノ酸により伸長(2)、及びGLP−1(7−37)−IP2−GLP−1(7−37)(3)のコンストラクトにより、一時的にトランスフェクトされた。結果は、図4(HEK293細胞)及び図5(hTERT−MSC細胞)に示す。HEK293細胞及びhTERT−MSC細胞はともに、当該遺伝子コンストラクトにとり有効な宿主である(実施例4もまた参照)。
【図6】図6は、下記に示すペプチドのウェスタンブロットを示す。以下の意味が付与される:配列番号1(ID1syn)はGLP−1(7−37)に対応し、31アミノ酸、3.3kDである;配列番号8(ID8syn,CM3)はGLP−1(7−37)−IP2に対応し、46アミノ酸、5.1kDである;配列番号7(ID7rec,CM2)はGLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP2に対応し、83アミノ酸、9.4kDである;配列番号6(ID6syn,CMl)はGLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP1(7−37)に対応し、79アミノ酸、8.7kDである(実施例5もまた参照)。
【図7】図7は、インビトロでのGLP−1ペプチドの血漿安定性試験を例証する。そのままのGLP−1(7−37)(配列番号1)と対照して、そのC−末端が伸長されたGLP−1ペプチドである配列番号6、配列番号7、及び配列番号8は、インビトロでのヒト血漿中で相当に安定化される。コントロールとして(右手側)、DPP−IVインヒビターを添加した実験で得られた結果を示す。GLP−1の活性は、これらのコントロール実験において完全に維持される(実施例6もまた参照)。
【図8】図8は、サイクリックAMP(cAMP)の産生をともなうインビトロでのバイオアッセイの結果を示す:図8より見ることができるように、100%cAMP産生は、GLP−1が不存在の場合の基礎産生に対応する。GLP−1は、Gタンパク質結合受容体に結合して、cAMP産生を刺激する。試験したすべてのGLP−1分子(ID1syn、ID6syn、ID6rec、ID7rec、ID8syn)が、細胞のcAMP産生を増加させる(実施例7もまた参照)。
【図9】図9は、ここで定義がなされたGLP−1コンストラクトを用い、11週齢のタイプII糖尿病マウス(C57BL/Ks−Leprdb/db,Harlan)に対して行った、インビボにおける生物学的活性の試験の結果を例証する。テストされた全てのGLP−1(配列番号6(合成の、または、組換え型の)と配列番号7(合成の、または、組換え型の))が、多糖症に抗する効果(anti−hyperglycemia effect)を持つ。最良の結果は、組換え型の配列番号6(CM1)及び合成の配列番号8(CM3)を用いた場合に得られた(実施例8もまた参照)。
【図10】図10は、一時的かつ安定的な遺伝子発現を行なうための典型的なベクターを表す。当該ベクターは二つの別々の転写ユニットからなり、一つは対象となる遺伝子のためのもの(GOI)であり、一つは自殺遺伝子HSVチミジンキナーゼとブラスティシジン(blasticidin)耐性遺伝子との融合のためのものである。第一の転写ユニット用に、ヒトユビキチンBプロモータが使用され、第二の転写ユニット用に、ヒトフェリチンプロモータが使用された(実施例9もまた参照)。
【図11】図11、12は、本発明の球状のマイクロカプセルに用いられる細胞を予め不死化した後の、当該細胞のキャラクタリゼーションを例証する。図11から見られるように、不死化細胞はいまだに、不死化されていない対応細胞と同様に、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞に分化することができる(図11参照)。不死化細胞は繊維芽細胞の形態を持ち、例えば、ここで使用した一次細胞の特徴であるCD44及びCD166エピトープマーカーを用いたフローサイトメトリーにより示されるように、致死のMSCsと同様に大きさや粒度に関してより均質である。不死化細胞は、不死化されていない対応細胞と同じCDマーカーを発現する(図12を参照)。
【図12】図11、12は、本発明の球状のマイクロカプセルに用いられる細胞を予め不死化した後の、当該細胞のキャラクタリゼーションを例証する。図11から見られるように、不死化細胞はいまだに、不死化されていない対応細胞と同様に、脂肪細胞、骨細胞、及び軟骨細胞に分化することができる(図11参照)。不死化細胞は繊維芽細胞の形態を持ち、例えば、ここで使用した一次細胞の特徴であるCD44及びCD166エピトープマーカーを用いたフローサイトメトリーにより示されるように、致死のMSCsと同様に大きさや粒度に関してより均質である。不死化細胞は、不死化されていない対応細胞と同じCDマーカーを発現する(図12を参照)。
【図13】図13、14、15は、異なる細胞タイプ(hTERT−MSC細胞:図13;AtT20細胞:図14;又はHEK293細胞:図15)及びクローン番号を用いた、GLP−1分泌のウェスタンブロット分析を示す。この結果は、トランスフェクトされたセルラインからGLP−1/C末端ペプチドのコンストラクトが分泌される、すなわち、当該タンパク質は予期した分子量を持つことを示す。さらに、当該タンパク質は、GLP−1(7-37)のN末端に結合する抗GLP−1抗体に結合する。 図13Aは、hTERT−MSCセルラインからのGLP−1の分泌である(1:模擬トランスフェクトがなされたhTERT−MSC細胞の上清に溶解した100ngの合成GLP17−37 2:GLP−1CM1分泌hTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清,M:前染色したタンパク質マーカー[kDa])。 図13Bは、hTERT−MSCセルラインからのGLP−1の分泌である(M:前染色したタンパク質マーカー[kDa], 1:hTERT−MSCの細胞外培地中に溶解した100ngの合成GLP17−37, 2:アナログGLPCM1(G8)分泌hTERT−MSC細胞(クローン78TM216/2)の上清, 3:GLPCM1分泌hTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清)。
【図14】図13、14、15は、異なる細胞タイプ(hTERT−MSC細胞:図13;AtT20細胞:図14;又はHEK293細胞:図15)及びクローン番号を用いた、GLP−1分泌のウェスタンブロット分析を示す。この結果は、トランスフェクトされたセルラインからGLP−1/C末端ペプチドのコンストラクトが分泌される、すなわち、当該タンパク質は予期した分子量を持つことを示す。さらに、当該タンパク質は、GLP−1(7-37)のN末端に結合する抗GLP−1抗体に結合する。 図14は、AtT20セルラインから分泌されたGLP1である(1:AtT20細胞が分泌するアナログGLPCM1(G8)(クローン80−A−216/1)の上清, 2:AtT20細胞が分泌する野生型のGLPCM1(クローン81−A−217/3)の上清)。
【図15】図13、14、15は、異なる細胞タイプ(hTERT−MSC細胞:図13;AtT20細胞:図14;又はHEK293細胞:図15)及びクローン番号を用いた、GLP−1分泌のウェスタンブロット分析を示す。この結果は、トランスフェクトされたセルラインからGLP−1/C末端ペプチドのコンストラクトが分泌される、すなわち、当該タンパク質は予期した分子量を持つことを示す。さらに、当該タンパク質は、GLP−1(7-37)のN末端に結合する抗GLP−1抗体に結合する。 図15は、一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞から分泌されたGLP1である(1:ストロメライシン−GLP17−37コンストラクト(#103)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清、 2:ストロメライシン−GLP17−37−IP2−11アミノ酸により伸長されたコンストラクト(#317)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清、 3:ストロメライシン−GLP1CM1コンストラクト(#217)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清、 4:ストロメライシン−GLP17−37−IP2(4x)コンストラクト(#159)によって一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞の上清)。
【図16】図16は、GLP1CMペプチドの免疫沈降を示す。抗GLP−1補足抗体HYB147−12又はHYB147−12(Antibodyshop)を用いた、細胞培養上清由来のGLPCM1ペプチドの免疫沈降により、GLPCM1ペプチドの蓄積と交差コンタミネーションするタンパク質の除去という結果が得られた。1:GLPCM1分泌hTERT−MSC細胞(クローン79TM217/13)の上清、 2:タンパク質G(Protein G)との免疫沈降、ただし、GLP1抗体は用いない、 3:タンパク質G及びGLP1抗体sc−7782(Santa Cruz)を用いた免疫沈降、 4:タンパク質G及びGLP1抗体sc−26637(Santa Cruz)を用いた免疫沈降、 5:タンパク質G及びGLP1抗体HYB147−12(Antibodyshop)を用いた免疫沈降, 6:タンパク質G及びGLP1抗体HYB147−08(Antibodyshop)を用いた免疫沈降、 7:10ngの合成GLP17−37, 8:31ngの合成GLP17−37, 9:100ngの合成GLP17−37,当該GLP1、抗体HYB147−08及び抗体HYB147−12を用いた免疫沈降により、当該GLPCM1ペプチドの蓄積と、それにより交差コンタミネーションしたタンパク質が上清から除去される、という結果が得られた(レーン1のクマシー染色を参照)。
【図17】図17は、本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ(CellBeads))をdb/dbマウスに適用した動物試験を例証する。使用したマウスモデルはタイプII糖尿病マウスC57/Ks−RJ db/db (レプチン受容体の劣性変異)であって、マウスGLP/CM1(配列番号6)を分泌する細胞ビーズを移植したものである。GLP分泌セルラインはAtT20であった。糖尿病マウスの血清中の活性型GLPを、本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)の移植後2日目、22日目に、GLP−I(活性型) ELISA(#EGLP−35K, Biotrend)を用いて測定した。カラムは次を表す。:動物7−10:db/dbマウスでありGLP−1CM1分泌細胞ビーズ移植の治療を受けたもの。動物13,15:db/dbマウスであり、細胞ビーズ(GLP1分泌なし)移植の治療を受けたもの。動物db/−:非糖尿病コントロールマウス、治療を受けていない。
【図18】図18は、糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウス(db/db n=3)の絶食時の血中グルコースレベルを示す。非糖尿病のヘテロ接合性の同腹仔(db/− n=1)及び糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウスを、GLPCM1(G8)(配列番号6ただし2番目の残基がG)(n=3)又はGLPCM1(配列番号6)(n=3)を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(GLP−1 細胞ビーズ)を用いて治療し、移植後、2、9および22日目に測定した。
【図19】図19は、糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウス(db/db n=3)の絶食時の血中グルコースレベルを描写する。非糖尿病のヘテロ接合性の同腹仔(db/− n=1)及び糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウスを、その首の脂肪塊(fat pad)(n=2)又は筋肉(n=2)に、GLPCM1(G8)を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を移植することで治療し、移植後、2、9、および22日目に測定した。
【図20】図20は、IPGTT(i.pグルコース負荷試験)を例証する。一晩絶食させたマウスに20%のグルコース溶液のi.p注射をした(グラム体重あたり1mgのグルコース)。血中グルコースの測定は、注射前及び注射後の2時間に行われた。図20は14週齢の糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウス(db/db n=3)でのIPGTTを示す。非糖尿病のヘテロ接合性の同腹仔(db/− n=1)及び糖尿病C57/Ks−RJ db/dbマウスに対して、その首の脂肪塊(fat pad)(n=2)又は筋肉(n=2)に、GLPCM1(G8)を分泌する本発明の球状のマイクロカプセル(細胞ビーズ)を、試験を行なう9日前に移植した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの表面コーティング、及び核を含み、
上記少なくとも一つの表面コーティングは架橋ポリマーを含み、
上記核は、架橋ポリマー、並びにGLP−1ペプチド、そのペプチドのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異
の発現及び分泌が可能な細胞を含む、球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項2】
上記核及び/又は上記少なくとも一つの表面コーティングの架橋ポリマーがバイオポリマーを含む、請求項1に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項3】
上記核及び/又は上記少なくとも一つの表面コーティングの架橋ポリマーがアルギナートを含む、請求項1又は2に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項4】
上記核及び/又は上記少なくとも一つの表面コーティングの架橋ポリマーが、化学的に同質のポリマーを、同じ又は異なる濃度にて含み、当該ポリマーは様々な分子量であってもよく、及び/又は、それぞれ架橋されていてもよい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項5】
上記核が約20〜約2000μmの直径を有し、上記少なくとも一つの表面コーティングが約10〜約2000μmの厚さを有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項6】
上記マイクロカプセルが1、2、3、4、5、5〜10又はそれ以上の表面コーティングを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項7】
上記マイクロカプセルが、ポリカチオンからなる付加的な外側の表面コーティングを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項8】
上記付加的な外側の表面コーティングがポリ−L−リジンからなる、請求項7に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項9】
上記GLP−1ペプチドがGLP−1のaa7−35を含むペプチド及びこのペプチドとの相同性が少なくとも80%を示すペプチドからなる群より選ばれるものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項10】
上記GLP−1ペプチドが、GLP−1のaa1−35を含むペプチド、GLP−1のaa7−35を含むペプチド、GLP−1のaa7−36を含むペプチド、GLP−1(7−36)アミド、化学式II
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり、Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であって、Glyが特に好ましく;Xaa16はVal又はLeuであり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa19はTyr又はGlnであり;Xaa20はLeu又はMetであり;Xaa22はGly、Glu又はAibであり;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa25はAla又はValであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa27はGlu又はLeu;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa33はVal又はLysであり;Xaa34はLys、Glu、Asn又はArg;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg、Gly若しくはLys若しくはアミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミド又は欠損している、
に示される配列を含むペプチド、化学式III
Xaa7‐Xaa8‐Glu‐Gly‐Thr‐Phe‐Thr‐Ser‐Asp‐Val‐Ser‐Xaa8‐Tyr‐Leu‐Glu‐Xaa22‐Xaa23‐Ala‐Ala‐Xaa26‐Glu‐Phe‐lle‐Xaa30‐Trp‐Leu‐Val‐Xaa34‐Xaa35‐Xaa36‐Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり;Xaa8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa22はGly、Glu又はAib;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa34はLys、Glu又はArgであり;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg又はLys、アミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu又はLys、アミド又は欠損している、
に示される配列を含むペプチド、及び、これらのいずれかのペプチドと少なくとも80%以上の相同性を示すペプチドである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項11】
上記GLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異が、
成分(I)として、N末端に、GLP−1(7−35、7−36又は7−37)配列、化学式II
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり、Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であって、Glyが特に好ましく;Xaa16はVal又はLeuであり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa19はTyr又はGlnであり;Xaa20はLeu又はMetであり;Xaa22はGly、Glu又はAibであり;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa25はAla又はValであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa27はGlu又はLeu;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa33はVal又はLysであり;Xaa34はLys、Glu、Asn又はArg;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg、Gly若しくはLys若しくはアミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミド又は欠損している、
に示される配列を含むペプチド、及び化学式III
Xaa7‐Xaa8‐Glu‐Gly‐Thr‐Phe‐Thr‐Ser‐Asp‐Val‐Ser‐Xaa8‐Tyr‐Leu‐Glu‐Xaa22‐Xaa23‐Ala‐Ala‐Xaa26‐Glu‐Phe‐lle‐Xaa30‐Trp‐Leu‐Val‐Xaa34‐Xaa35‐Xaa36‐Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり;Xaa8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa22はGly、Glu又はAib;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa34はLys、Glu又はArgであり;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg又はLys、アミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu又はLys、アミド又は欠損している、
に示される配列を含むペプチド、
成分(II)として、C末端に、少なくとも9個のアミノ酸の配列のペプチド若しくは機能的フラグメント又はそれらの変異
を含む融合ペプチドからなる群より選ばれるものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項12】
上記融合ペプチドの成分(I)が配列番号1と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項11に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項13】
成分(II)が、配列番号22(RRDFPEEVAI)に示される配列、又は配列番号22と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項11又は12に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項14】
成分(II)が、配列番号23(RRDFPEEVAIVEEL)若しくは配列番号24(RRDFPEEVAIAEEL)に示される配列又は配列番号23若しくは配列番号24と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項15】
成分(II)が、配列番号2(RRDFPEEVAIVEELG)若しくは配列番号3(RRDFPEEVAIAEELG)に示される配列又は配列番号2若しくは配列番号3と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項11〜14のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項16】
成分(I)及び成分(II)が直接に連結している又はリンカー配列を介して連結している、請求項11〜15のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項17】
上記リンカー配列がアミノ酸1〜10の長さを有する、請求項16に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項18】
上記融合ペプチドが、配列番号8(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIAEELG)若しくは配列番号12(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIVEELG)に示される配列又は配列番号8若しくは12と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項11〜17のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項19】
上記融合ペプチドが、成分(II)の代わりに又は付加的に成分(III)を包含し、成分(III)が、成分(I)及び(III)が上記融合ペプチド内に存在する場合、成分(I)のC末端及び/又は成分(I)のN末端に連結していてもよく、成分(I)、(II)及び(III)が上記融合ペプチド内に存在する場合、成分(III)が成分(II)のC末端及び/又は成分(I)のN末端と連結していてもよい、請求項11〜18のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項20】
成分(III)が少なくとも4個のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10個の付加的なアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも20個又は30個を含む、請求項19に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項21】
成分(III)が、プログルカゴン中のGLP−2のN末端配列、GLP−1(5−37、6−37又は7−37)、化学式II
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり、Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であって、Glyが特に好ましく;Xaa16はVal又はLeuであり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa19はTyr又はGlnであり;Xaa20はLeu又はMetであり;Xaa22はGly、Glu又はAibであり;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa25はAla又はValであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa27はGlu又はLeu;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa33はVal又はLysであり;Xaa34はLys、Glu、Asn又はArg;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg、Gly若しくはLys若しくはアミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミド又は欠損している、
に示される配列を有するペプチド、又は化学式III
Xaa7‐Xaa8‐Glu‐Gly‐Thr‐Phe‐Thr‐Ser‐Asp‐Val‐Ser‐Xaa8‐Tyr‐Leu‐Glu‐Xaa22‐Xaa23‐Ala‐Ala‐Xaa26‐Glu‐Phe‐lle‐Xaa30‐Trp‐Leu‐Val‐Xaa34‐Xaa35‐Xaa36‐Xaa37
ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり;Xaa8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロブチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボキシル酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボキシル酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボキシル酸であり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa22はGly、Glu又はAib;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa34はLys、Glu又はArgであり;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg又はLys、アミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu又はLys、アミド又は欠損している、
に示される配列を有するペプチドの、少なくとも4個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個の付加的なアミノ酸残基を含む、請求項11〜20のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項22】
成分(III)が、配列番号4若しくは5に示される配列又は配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項19〜21のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項23】
上記融合ペプチドが、配列番号6、配列番号7、配列番号10、配列番号11及び配列番号26からなる群より選ばれるペプチド配列又は配列番号6、7、10、11若しくは26と少なくとも80%以上の相同性を有する配列を包含する、請求項19〜22のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項24】
上記融合ペプチドが、運搬体タンパク、特にトランスフェリン又はアルブミンを成分(IV)として含む、請求項11〜23のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項25】
上記球状のマイクロカプセルの上記核内に包含される上記細胞が、ヒト間葉幹細胞、ヒト間葉幹細胞から分化した細胞、骨芽細胞を含むもの、軟骨細胞、脂肪細胞(含脂肪細胞)、又は脳細胞を含む神経様細胞から選ばれるものである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項26】
上記球状のマイクロカプセルの上記核に包含される上記細胞が、ヒト間葉幹細胞、インビトロ又はインビボにおいて脂肪細胞(含脂肪細胞)中に分化した細胞であって、脂肪細胞への移植に適したものから(インビトロにて)選ばれるものである、請求項25に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセル及び薬学的に受容可能なキャリアを任意に含む薬学的組成物。
【請求項28】
少なくとも一つの表面コーティング及び核を含む球状又は非球状のマイクロカプセルの製造方法であって、上記少なくとも一つの表面コーティングが架橋ポリマーを含み、上記核が、架橋ポリマー並びにGLP−1、そのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異を、発現及び分泌可能な生物学的細胞を含み、次の工程を含む方法:
(a)架橋ポリマー並びにGLP−1、そのフラグメント若しくは変異、又はGLP−1を含む融合ペプチド若しくはそのフラグメント若しくは変異を、発現及び分泌可能な生物学的細胞の調整;
(b)架橋ポリマーを含む少なくとも一つの表面コーティングの調整。
【請求項29】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセルを製造するための請求項28に記載の方法。
【請求項30】
糖尿病タイプI又はタイプII、インスリン耐性、体重疾患及び病気、又はこれらに関連する症状を処置するための薬学的組成物を調製するための請求項1〜26のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセルの使用。
【請求項31】
上記体重疾患又は関連する症状が、肥満、体重超過関連症状、満腹感による調節の欠如(satiety deregulation)、血漿インスリン濃度の減少、血中グルコース濃度の増加又は膵臓ベータ細胞塊の減少である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
神経変性の疾患及び病気又はこれに関連する症状を処置するための薬学的組成物を調製するための請求項1〜26のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセルの使用。
【請求項33】
上記神経変性の疾患及び病気又はこれに関連する症状が、アルツハイマー病(AD)、並びに、筋萎縮性側索硬化症、アレキサンダー病、アルパース病(Alper’s disease)、毛細血管拡張性運動失調症、カナバン病、コケーン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、サンドホフ病、ピック病、脊髄小脳失調症、シルダー病及びパーキンソン病、又は脳卒中、大脳内出血、くも膜下出血、副腎白質ジストロフィー(x−ALD)、又はその他の大脳白質萎縮症、他の主要な又は周辺の神経変性の症状からなる群より選ばれるものである、請求項32の使用。
【請求項34】
アポトーシスに関連する疾患及び病気又は症状を処置するための薬学的組成物を調製するための請求項1〜26のいずれか1項に記載の球状又は非球状のマイクロカプセルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2009−536166(P2009−536166A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508185(P2009−508185)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003775
【国際公開番号】WO2007/128443
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】