説明

ICカード用コネクタ

【課題】肉厚の薄いカードと厚いカードの電極がハウジング内のコンタクトと正常な撓み量で接触することの可能なICカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】厚さの異なる少なくとも2種類のICカードを挿抜可能なハウジングと、各部品を収納した後に上に被せるカバーと、底部側の一方のカード用コンタクトと、天部側の他方のカード用コンタクトとを具備したICカード用コネクタにおいて、ハウジングに移動自在にスペーサを設け、一方のICカードの挿入時に、スペーサを押し込んで2個のカード用コンタクトとの間で一方のICカードを挟持接触し、他方のICカードの挿入時に、スペーサの上に乗り上げ、スペーサといずれか一方のコンタクトとの間で他方のICカードを挟持接触せしめるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さと幅が略同じで、厚さの異なる2種類のカードを表裏逆にして挿入して内部のコンタクトに接続するICカード用コネクタであって、2種類のカードの厚さの違いによって生じるハウジング内部のクリアランスをなくして2種類のカードが確実にコンタクトに接触できるようにしたICカード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つのICカード用コネクタに複数種類のICカードを挿入可能にしたICカード用コネクタが種々提案されており、図8に示したものもその一種類である(特許文献1)。
図8に示したものは、幅と長さが略同じ第1のICカード11と第2のICカード12の2種類と、幅が狭く長さの長いカード1種類(図示せず)と、幅と長さの長い1種類(図示せず)との4種類に対応可能なものを示している。
【0003】
前記幅と長さが略同じ2種類の第1のICカード11と第2のICカード12の場合、第1のICカード11は、肉厚で、かつ、両側縁部に段部を有し、第2のICカード12は、肉薄である。これらの第1のICカード11と第2のICカード12は、電極の形成されている部分のカードの肉厚と、電極の形状と配置がほとんど同じであるため、第1のICカード11をハウジング10のカード挿入口13に挿入すると、(a−1)と(a−2)に示すように、下向きの電極がICコンタクト15に接触し、また、第2のICカード12をカード挿入口13の内部の案内段差14に載せながら挿入すると、(b−1)と(b−2)に示すように、下向きの電極がICコンタクト15に接触する。2種類のカードの判別は、図示しないスイッチにより行われる。
【特許文献1】特開2003−100369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記第1のICカード11と第2のICカード12は、電極の形成されている部分のカードの肉厚と、電極の形状と配置がほとんど同じであるため、ICコンタクト15を兼用することができる。しかし、共通のカード挿入口を利用し、2種類のカードの電極の形状と配置が異なる場合には、ICコンタクト15の配置も異なるため、表裏逆にして挿入しなければならない。ところが、肉厚の薄いカードを挿入したときと、肉厚の厚いカードを挿入したときでは、ハウジングの内部でのクリアランスが異なる。
本発明の解決しようとする問題点は、肉厚の薄いカードを挿入したときにコンタクトと電極が正常な撓み量で接触するように構成すると、肉厚の厚いカードを挿入したときには、カードの挿入圧が大きすぎ、コンタクトと電極が異常に大きな撓み量で接触してコンタクトが変形したり破壊したりする恐れがある。逆に、肉厚の厚いカードを挿入したときにコンタクトと電極が正常な撓み量で接触するように構成すると、肉厚の薄いカードを挿入したときには、カードの挿入圧が小さすぎ、コンタクトと電極が接触不良を起こす恐れがある、ということである。
【0005】
本発明は、肉厚の薄いカードと肉厚の厚いカードを表裏逆にして挿入する場合において、いずれのカードであってもコンタクトと電極が正常な撓み量で接触することの可能なICカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薄い箱型をなし、厚さの異なる少なくとも2種類の第1及び第2のICカードを挿抜可能なハウジングと、このハウジング内に各部品を収納した後に上に被せるカバーと、前記ハウジング内の底部側に設けられ、前記第1のICカードの電極に接離する第1カード用コンタクトと、前記ハウジング内の天部側に設けられ、前記第2のICカードの電極に接離する第2カード用コンタクトとを具備したICカード用コネクタにおいて、前記ハウジングの底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い前記第1のICカードの挿入時に、前記スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部を前記スペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしたことを特徴とする。
【0007】
スペーサは、第2のICカードの幅の狭い先端部が乗り上がるための傾斜面部と、第1のICカードの先端部が当接してスペーサを押し込むための当接部と、ハウジングのスペーサガイド溝に嵌合して移動する摺動突条部とを具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ICカード用コネクタにおいて、ハウジングの底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い前記第1のICカードの挿入時に、スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部を前記スペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしたので、厚さの厚い第1のICカードと厚さの薄い第2のICカードの電極がともに対応するコンタクトに正常な撓み量で接触することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、スペーサは、厚さの薄い第2のICカードの幅の狭い先端部が乗り上がるための傾斜面部と、厚さの厚い第1のICカードの先端部が当接してスペーサを押し込むための当接部と、ハウジングのスペーサガイド溝に嵌合して移動する摺動突条部とを具備してなるので、厚さの薄い第2のICカードを挿入したときは、スペーサを移動させることなくスペーサの上にスムーズに第2のICカードを乗り上げ、また、厚さの厚い第1のICカードを挿入したときは、スペーサを確実に押し込むことができる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、ICカード用コネクタにおいて、ハウジングに設けたカード挿入口の両側に臨ませて、カバーの一部を下向きで、逆へ字形に切り起したガイド板部を設け、挿入された第1及び第2のICカードをこのガイド板部によりハウジングの底部側に付勢し、ハウジングの略中間の底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い第1のICカードの挿入時に、スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部をスペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしたので、厚さの薄い第2のICカードの挿入時にハウジングの内部だけでなく、ハウジングの入り口のカード挿入口付近でも適正なクリアランスを得ることができる。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、両側のガイド板部の外側に、挿入された第1のICカードと第2のICカードの幅方向の位置を規制する位置修正部を一体に切り起し形成したので、コンタクトと電極の幅の小さなものでも確実に接触させることができる。
【0012】
請求項5記載の発明によれば、ハウジングの内部の天部側に、カバーの一部を下向きに切り起し、この切り起し片を横向きへ字形に折曲したガイド部を設け、先端部側に細幅部を有する第2のICカードの正常挿入時の案内と、裏返し挿入時の誤挿入防止用として機能せしめたので、厚さが薄く、先端部に細幅部を有する第2のICカードであっても、裏返しの挿入が防止され、ハウジング内部の破損が防止される。
【0013】
請求項6記載の発明によれば、両側のガイド板部の外側に、挿入された第2のICカードの狭幅の側縁部の幅方向の位置を規制するとともに、この第2のICカードの広幅の側縁部が乗り越えるように位置修正部を一体に切り起し形成し、ハウジングの内部の天部側に、広幅の側縁部を下向きに付勢するガイド部を一体に切り起し形成したので、厚さが薄く、先端部に細幅部を有する第2のICカードの幅方向のずれがなく、かつ、厚さの厚い第1のICをカードのしっかりと保持できる。
【0014】
請求項7記載の発明によれば、ハウジングの内部に、第1のICカード又は第2のICカードの挿入時にロックし、再押圧時にロックを解除するロック用スライダを具備したので、第1又は第2のICカードの挿入固定と、抜去が確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、薄い箱型をなし、厚さの異なる少なくとも2種類の第1及び第2のICカードを挿抜可能なハウジングと、このハウジング内に各部品を収納した後に上に被せるカバーと、前記ハウジング内の底部側に設けられ、前記第1のICカードの電極に接離する第1カード用コンタクトと、前記ハウジング内の天部側に設けられ、前記第2のICカードの電極に接離する第2カード用コンタクトとを具備したICカード用コネクタに適用される。
このようなICカード用コネクタにおいて、前記ハウジングの底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い前記第1のICカードの挿入時に、前記スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部を前記スペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしたものである。
【0016】
前記スペーサは、第2のICカードの幅の狭い先端部が乗り上がるための傾斜面部と、第1のICカードの先端部が当接してスペーサを押し込むための当接部と、ハウジングのスペーサガイド溝に嵌合して移動する摺動突条部とを具備してなる。
【0017】
前記ハウジングに設けたカード挿入口の両側に臨ませて、前記カバーの一部を下向きで、逆へ字形に切り起したガイド板部を設け、挿入された第1及び第2のICカードをこのガイド板部によりハウジングの底部側に付勢し、前記ハウジングの略中間の底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い前記第1のICカードの挿入時に、前記スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部を前記スペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしてなる。
【0018】
両側のガイド板部の外側に、挿入された第1のICカードと第2のICカードの幅方向の位置を規制する位置修正部を一体に切り起し形成することができる。
【0019】
ハウジングの内部の天部側に、カバーの一部を下向きに切り起し、この切り起し片を横向きへ字形に折曲したガイド部を設け、先端部側に細幅部を有する第2のICカードの正常挿入時の案内と、裏返し挿入時の誤挿入防止用として機能せしめる。
【0020】
両側のガイド板部の外側に、挿入された第2のICカードの狭幅の側縁部の幅方向の位置を規制するとともに、この第2のICカードの広幅の側縁部が乗り越えるように位置修正部を一体に切り起し形成し、ハウジングの内部の天部側に、前記広幅の側縁部を下向きに付勢するガイド部を一体に切り起し形成する。
【0021】
ハウジングの内部に、第1のICカード又は第2のICカードの挿入時にロックし、再押圧時にロックを解除するロック用スライダを具備してなるものとすることもできる。
【実施例1】
【0022】
本発明のICカード用コネクタに挿抜される2種類のICカードを図4に基づき説明する。
図4(a−1)(a−2)に示される第2のICカード12と、図4(b−1)(b−2)(b−3)(b−4)に示される第1のICカード11とは、長さは同じで、幅は第1のICカード11の狭幅の側縁部18と第2のICカード12の外側縁とが略同じで、厚さは第1のICカード11が厚く、第2のICカード12が薄く、また、第1のICカード11の電極16と第2のICカード12の電極20は数、形状に違いがある。
さらに詳しくは、前記第1のICカード11は、長方形をなし、両側に広幅の側縁部17と狭幅の側縁部18が段差を持って形成され、前記広幅の側縁部17の面側に電極16が形成され、一方の側縁には2個の切り欠き24が形成され、他方の側縁には1個の切り欠き24が形成され、先端部19の両面はテーパーを有してやや尖っている。
前記第2のICカード12は、長方形をなし、一方の面に電極20が形成され、一方の側縁の先端部22側から途中まで細幅部21となっており、かつ、1個の切り欠き24が形成され、先端部22の片面にテーパーを有してやや尖っている。
【0023】
具体的な寸法は、それぞれ凡そ次の通りである。
前記第1のICカード11は、長さが15.0mm、幅が広幅の側縁部17で12.5mm、狭幅の側縁部18で11.0mm、厚さが1.2mmである。また、前記第2のICカード12は、長さが15.0mm、幅が11.0mm、厚さが0.7mmである。これらの数値は、一例であってこれに限定されるものではない。
【0024】
本発明のICカード用コネクタは、図2に示すハウジング25と、このハウジング25に被せるカバー35とを主たる構成部品とし、その他に、図3(a)に示すロック用スライダ30,ロックピン31、圧縮ばね32、図3(b)に示すスペーサ28,スペーサ用ばね29、図3(c)に示す開閉端子33,34、さらに図5に示す第1カード用コンタクト26,第2カード用コンタクト27とで構成されている。
【0025】
前記ハウジング25は、長方形で薄い箱型をなし、具体的には、幅16.8mm×長さ17.0mm×高さ2.3mm程度である。このハウジング25の底板部38、天板部42、左側板部44,右側板部47の間には前面に開口し、前記第1のICカード11と第2のICカード12とが選択的に差し込まれるカード挿入口36が形成されている。このカード挿入口36の内側に、前記第1のICカード11の狭幅の側縁部18が嵌合する誤挿入防止段部37が設けられている。前記底板部38の前面側から中間位置までに所定間隔でコンタクト差し込み溝39が形成され、それぞれに前記第1のICカード11の電極16に接触する第1カード用コンタクト26が差し込み固定されている。前記天板部42の両側部には、後述するガイド板部57が突出するための切り欠き部43が形成されている。また、底板部38の後方部には、スペーサ28の摺動突条部77が摺動する3本のスペーサガイド溝51が形成されている。前記ハウジング25の背板部40には、後面側から貫通して所定間隔でコンタクト差し込み溝41が形成され、それぞれに前記第2のICカード12の電極20に接触する第2カード用コンタクト27が差し込み固定されている。
【0026】
図2において、前記左側板部44の端子挿入溝45には、図3(c)に示す開閉端子33の係止片部81が下側から差し込み固定され、また、端子挿入溝46には、開閉端子34の係止片部84が上から差し込み固定される。また、左側板部44の側面と、後述する右側板部47の側面にそれぞれ前記カバー35を係止するための複数個の係止突部53が形成されている。
前記ハウジング25の右側板部47のスライダ嵌合溝48には、図3(a)に示す前記ロック用スライダ30が摺動自在に嵌合されるとともに、圧縮ばね32が両端のばね嵌合突部74、74間に嵌め込まれてロック用スライダ30を常時付勢している。前記ロック用スライダ30は、ハートカム69と係止突片部70からなり、ハートカム69には、公知のハート形の摺動溝65、ピン係止凹部66,スタート点67が設けられ、ロックピン31の一端部が右側板部47のロックピン挿入孔49に差し込まれ、他端部が摺動溝65に摺動自在に差し込まれている。
前記係止突片部70には、前記天板部42のスライダ係合突部50と係合する係合凹部68と、この係合凹部68に隣接して上部に第2のICカード12の係止部71、下部に第1のICカード11の係止部72が形成され、さらに側方にコンタクト受け部73が形成されている。
【0027】
前記スペーサ28は、図3(b)に示すように、細長角棒状の上面にカード挿入側から傾斜面部75が形成され、一端部には、垂直な当接部76が形成され、下面には、前記スペーサガイド溝51を摺動する摺動突条部77が設けられ、さらに、カード挿入面の反対側にはばね係止溝78が形成されている。このばね係止溝78には、前記スペーサ用ばね29の両端部79が移動自在に嵌合し、また、スペーサ用ばね29の中央部80は、前記背板部40のばね係合孔52に嵌め込まれている。
【0028】
前記カバー35は、ハウジング25内に各部品を収納した後に被せるもので、弾性を有する薄い金属板を下向きコ字形に折曲し、カード挿入側の両側部には、弾性を有するように切り溝64で切り起こされたガイド板部57がヘ字形に折曲されている。このガイド板部57には、一体に切り起こされてV字形に折曲された位置修正部58が設けられている。一方の左側板部55には、前記開閉端子34の可動片85が突出するための逃げ孔61が設けられ、この逃げ孔61のやや内側に第1のICカード11の広幅の側縁部17が乗り上がるガイド部59が設けられ、このガイド部59のやや内側に第2のICカード12の細幅部21をガイドし、かつ、第2のICカード12を裏返しに挿入したときのストッパとなるガイド部60が切り起し形成されている。他方の右側板部56のやや内側には、前記ロックピン31の浮き上がりを防止する押圧ばね部62が切り起して形成されている。前記天板部54の略中央には、第2カード用コンタクト27の突出のための逃げ孔63が形成されている。
【0029】
以上のように構成されたICカード用コネクタの作用を説明する。
(1−1)第2のICカード12の正常(電極20が上向き)状態での挿入
第2のICカード12を正常(電極20が上向きで、細幅部21が挿入方向左側)状態でICカード用コネクタのカード挿入口36へ挿入すると、第2のICカード12は、図5(a−1)及び図7(a)のように、ガイド板部57に案内されつつ両側の位置修正部58の間を通り、細幅部21側の先端部22がガイド部60に案内されつつ挿入され、先端部22が第1カード用コンタクト26と第2カード用コンタクト27の間に位置する。このとき、第2のICカード12は、薄いのでICカード用コネクタの内部で必要以上のクリアランスが生じる。
【0030】
図1に示すように、先端部22の右端が係止突片部70の係止部71に係合した状態でさらに挿入すると、係止突片部70と一体のハートカム69が圧縮ばね32に抗して移動し、ロックピン31の先端がスタート点67から摺動溝65内を図の左回りに摺動する。第2のICカード12は、薄く、かつ、細幅部21を有するので、先端部22の左端はスペーサ28の当接部76に当接することなく、図5(a−2)のように、先端部22が傾斜面部75を擦りながら乗り上がる。スペーサ28は、スペーサ用ばね29によって押圧されているので、もとの位置から移動しない。第2のICカード12の先端部22がスペーサ28の上に乗り上がることで、電極20は第2カード用コンタクト27に適正な接触圧で接続される。第2のICカード12が挿入できる位置まで達すると、ロックピン31の一端部が摺動溝65の端部に達するので、押し込み力を抜くと、圧縮ばね32によりロック用スライダ30が戻されてロックピン31の一端部がピン係止凹部66に係止して第2のICカード12の挿入状態が保持される。
この挿入状態では、カード挿入孔36の付近で第2のICカード12の基端部がガイド板部57で下方に適正圧力で付勢されている。
このとき、図6(a)に示すように、第2のICカード12の細幅部21を過ぎた外側縁で開閉端子33の接触可動片83が押し出されて開閉端子34の接触部86に接触して第2のICカード12を挿入した信号が出力される。
【0031】
第2のICカード12を抜き取るときは、第2のICカード12を再度押し込むと、ロックピン31の一端部がピン係止凹部66から外れ、押し込み力を抜くと、他方の摺動溝65を通り元のスタート点67に戻って、図5(a−1)のように電極20と第2カード用コンタクト27の接続から外れる。
【0032】
(1−2)第2のICカード12の異常(電極20が裏返し)状態での挿入
第2のICカード12を異常(電極20が下向きで、細幅部21が挿入方向右側)状態でICカード用コネクタのカード挿入口36へ挿入すると、第2のICカード12は、最初、ガイド板部57に案内されつつ両側の位置修正部58の間を通り抜けるが、図7(a)の異常時のように、細幅部21側が位置修正部58を通り、外側縁が位置修正部58に達し、細幅部21と反対側の先端部22がガイド部60に当接して第2のICカード12はそれ以上挿入することができない。
【0033】
(2−1)第1のICカード11の正常(電極16が下向き)状態での挿入
第1のICカード11を正常(電極16が下向きで、狭幅の側縁部18が上向き)状態でICカード用コネクタのカード挿入口36へ挿入すると、第1のICカード11は、図5(b−1)及び図7(b)のように、誤挿入防止段部37に嵌合し、狭幅の側縁部18がガイド板部57に案内されつつ両側の位置修正部58の間を通り、また、広幅の側縁部17が位置修正部58の下を通り、図1のように、広幅の側縁部17の先端部22の右端が係止突片部70の係止部72に係合する。このとき、第1のICカード11は、厚いので内部は適正なクリアランスで移動する。
【0034】
係合した状態で第1のICカード11をさらに挿入すると、係止突片部70と一体のハートカム69が圧縮ばね32に抗して移動し、ロックピン31の先端がスタート点67から摺動溝65内を図の左回りに摺動する。第1のICカード11は、厚く、かつ、第2のICカード12と異なり細幅部21を有しないので、先端部19の左端がスペーサ28の当接部76に当接しつつ、図5(b−2)のように、先端部19でスペーサ28を押しながらスペーサ用ばね29に抗してスペーサ28を押し込む。
この挿入状態では、カード挿入孔36の付近で第1のICカード11の基端部がガイド板部57で下方に適正圧力で付勢されている。
このとき、図6(b)に示すように、第1のICカード11の広幅の側縁部17が開閉端子33の接触可動片82を広げつつ第1のICカード11の正確な位置決めをしながらさらに挿入されると、広幅の側縁部17が開閉端子34の接触部87に係合して可動片85を外側に逃げさせる。この状態で第1のICカード11の狭幅の側縁部18が開閉端子33の接触可動片83に接して接触可動片83が外側にやや移動するが、接触可動片83が押し出される前に接触部86がそれ以上に逃げており、接触可動片83が開閉端子34の接触部86に接触することはなく、第1のICカード11を挿入しても信号が出力されない。
第1のICカード11をスペーサ28とともに移動することで、電極16は第1カード用コンタクト26に適正な接触圧で接続される。第1のICカード11が挿入できる位置まで達すると、ロックピン31の一端部が摺動溝65の端部に達するので、押し込み力を抜くと、圧縮ばね32によりロック用スライダ30が戻されてロックピン31の一端部がピン係止凹部66に係止して第1のICカード11の挿入状態が保持される。
【0035】
第1のICカード11を抜き取るときは、第1のICカード11を再度押し込むと、ロックピン31の一端部がピン係止凹部66から外れ、押し込み力を抜くと、圧縮ばね32により他方の摺動溝65を通りもとのスタート点67に戻って、図5(b−1)のように電極16と第1カード用コンタクト26の接続から外れる。
同時に、スペーサ28がスペーサ用ばね29によりもとの位置に戻される。
【0036】
(2−2)第1のICカード11の異常(電極16が裏返し)状態での挿入
第1のICカード11を異常(電極16が上向き)状態でICカード用コネクタのカード挿入口36へ挿入しようとすると、第1のICカード11の広幅の側縁部17と狭幅の側縁部18が逆のため、誤挿入防止段部37のあるカード挿入口36へ挿入することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるICカード用コネクタの一実施例を示すもので、カバー35を外した平面図である。
【図2】図1におけるハウジング25とカバー35の分解斜視図で、これらのうち、カバー35は裏返した状態を示すものある。
【図3】(a)は、ロック用スライダ30,ロックピン31、圧縮ばね32の分解斜視図、(b)は、スペーサ28とスペーサ用ばね29の分解斜視図、(c)は、開閉端子33と開閉端子34の分解斜視図である。
【図4】(a−1)は、第2のICカード12の平面図、(a−2)は、同じく正面図、(b−1)は、第1のICカード11の平面図、(b−2)は、同じく左側面図、(b−3)は、同じく正面図、(b−4)は、同じく(b−4)−(b−4)線断面図である。
【図5】(a−1)は、第2のICカード12の挿入直後の断面図、(a−2)は、第2のICカード12の挿入完了時の断面図、(b−1)は、第1のICカード11の挿入直後の断面図、(b−2)は、第1のICカード11の挿入完了時の断面図である。
【図6】(a)は、第2のICカード12の挿入時に開閉端子33と開閉端子34が接続している状態を示す説明図、(b)は、第1のICカード11の挿入時に開閉端子33と開閉端子34が接続していない状態を示す説明図である。
【図7】(a)は、第2のICカード12の正常時と裏返し時の挿入時状態を示す底部側から見た説明図、(b)は、第1のICカード11の正常時の挿入時状態を示す説明図である。
【図8】従来のICカード用コネクタを示すもので、(a−1)は、厚い第1のICカード11の挿入時の断面図、(a−2)は、厚い第1のICカード11の挿入時の正面図、(b−1)は、薄い第2のICカード12の挿入時の断面図、(b−2)は、薄い第2のICカード12の挿入時の正面図である。
【符号の説明】
【0038】
10…ハウジング、11…第1のICカード、12…第2のICカード、13…カード挿入口、14…案内段差、15…ICコンタクト、16…電極、17…広幅の側縁部、18…狭幅の側縁部、19…先端部、20…電極、21…細幅部、22…先端部、23…切り欠き、24…切り欠き、25…ハウジング、26…第1カード用コンタクト、27…第2カード用コンタクト、28…スペーサ、29…スペーサ用ばね、30…ロック用スライダ、31…ロックピン、32…圧縮ばね、33…開閉端子、34…開閉端子、35…カバー、36…カード挿入口、37…誤挿入防止段部、38…底板部、39…コンタクト差し込み溝、40…背板部、41…コンタクト差し込み溝、42…天板部、43…切り欠き部、44…左側板部、45…端子挿入溝、46…端子挿入溝、47…右側板部、48…スライダ嵌合溝、49…ロックピン挿入孔、50…スライダ係合突部、51…スペーサガイド溝、52…ばね係合孔、53…係止突部、54…天板部、55…左側板部、56…右側板部、57…ガイド板部、58…位置修正部、59…ガイド部、60…ガイド部、61…逃げ孔、62…押圧ばね部、63…逃げ孔、64…切り溝、65…摺動溝、66…ピン係止凹部、67…スタート点、68…係合凹部、69…ハートカム、70…係止突片部、71…係止部、72…係止部、73…コンタクト受け部、74…ばね嵌合突部、75…傾斜面部、76…当接部、77…摺動突条部、78…ばね係止溝、79…両端部、80…中央部、81…係止片部、82…接触可動片、83…接触可動片、84…係止片部、85…可動片、86…接触部、87…接触部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄い箱型をなし、厚さの異なる少なくとも2種類の第1及び第2のICカードを挿抜可能なハウジングと、このハウジング内に各部品を収納した後に上に被せるカバーと、前記ハウジング内の底部側に設けられ、前記第1のICカードの電極に接離する第1カード用コンタクトと、前記ハウジング内の天部側に設けられ、前記第2のICカードの電極に接離する第2カード用コンタクトとを具備したICカード用コネクタにおいて、前記ハウジングの底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い前記第1のICカードの挿入時に、前記スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部を前記スペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしたことを特徴とするICカード用コネクタ。
【請求項2】
スペーサは、第2のICカードの幅の狭い先端部が乗り上がるための傾斜面部と、第1のICカードの先端部が当接してスペーサを押し込むための当接部と、ハウジングのスペーサガイド溝に嵌合して移動する摺動突条部とを具備してなることを特徴とする請求項1記載のICカード用コネクタ。
【請求項3】
薄い箱型をなし、厚さの異なる少なくとも2種類の第1及び第2のICカードを挿抜可能なハウジングと、このハウジング内に各部品を収納した後に上に被せるカバーと、前記ハウジング内の底部側に設けられ、前記第1のICカードの電極に接離する第1カード用コンタクトと、前記ハウジング内の天部側に設けられ、前記第2のICカードの電極に接離する第2カード用コンタクトとを具備したICカード用コネクタにおいて、前記ハウジングに設けたカード挿入口の両側に臨ませて、前記カバーの一部を下向きで、逆へ字形に切り起したガイド板部を設け、挿入された第1及び第2のICカードをこのガイド板部によりハウジングの底部側に付勢し、前記ハウジングの略中間の底部側に移動自在にスペーサを設け、厚さの厚い前記第1のICカードの挿入時に、前記スペーサを第1のICカードの先端部で押し込んで第1カード用コンタクトと第2カード用コンタクトとの間で第1のICカードを挟持接触し、厚さの薄い第2のICカードの挿入時に、この第2のICカードの先端部を前記スペーサの上に乗り上げ、スペーサと第2カード用コンタクトとの間で第2のICカードを挟持接触せしめるようにしたことを特徴とするICカード用コネクタ。
【請求項4】
両側のガイド板部の外側に、挿入された第1のICカードと第2のICカードの幅方向の位置を規制する位置修正部を一体に切り起し形成したことを特徴とする請求項3記載のICカード用コネクタ。
【請求項5】
ハウジングの内部の天部側に、カバーの一部を下向きに切り起し、この切り起し片を横向きへ字形に折曲したガイド部を設け、先端部側に細幅部を有する第2のICカードの正常挿入時の案内と、裏返し挿入時の誤挿入防止用として機能せしめたことを特徴とする請求項1,2,3又は4項記載のICカード用コネクタ。
【請求項6】
両側のガイド板部の外側に、挿入された第2のICカードの狭幅の側縁部の幅方向の位置を規制するとともに、この第2のICカードの広幅の側縁部が乗り越えるように位置修正部を一体に切り起し形成し、ハウジングの内部の天部側に、前記広幅の側縁部を下向きに付勢するガイド部を一体に切り起し形成したことを特徴とする請求項5記載のICカード用コネクタ。
【請求項7】
ハウジングの内部に、第1のICカード又は第2のICカードの挿入時にロックし、再押圧時にロックを解除するロック用スライダを具備してなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載のICカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−21511(P2008−21511A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191722(P2006−191722)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】