説明

ICチップ貼り合わせ用TCP及びそのTCPを用いたスタックトICパッケージ

【課題】配線チップをTCPテープに代替え化することにより、材料コストの削減し、工期の短縮することができる、さらに、TCPテープを使用することにより、LCR電気特性の向上するICチップ貼り合わせ用のTCPテープ及びそのTCPテープを用いたスタックトICパッケージを提供することである。
【解決手段】ポリイミド絶縁基材上に配線層を形成し、導通孔の枠型形状のICチップ貼り合わせ用TCPであって、前記TCPテープは、配線の端部に形成した、上側の及び下側のICチップとの接続端子を備えた複数からなる配線と、その上にソルダーレジスト層と積層した多層構造であり、前記配線層は、一対の銅配線回路及び接続端子からなる銅配線であり、一対の配線長は、各々が等長配線で形成、且つ配線幅が10〜30μmの配線を形成したICチップ貼り合わせ用TCP。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ貼り合わせ用TCP(Tape carrier package)に関し、特にその等長配線の配線回路を備えたICチップ貼り合わせ用TCPをインターポーザとして用いたスタックトICパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスタックトICパッケージは、その組み立て時、下側のICチップ、例えばNAND用ICチップ12上に、上側のICチップ、例えばASIC用ICチップ11を搭載する場合、そのICのチップサイズの差異、若しくは型番によるワイヤーボンデング用のパッドの配列が異なる場合がある。この場合の電気的な接続は、ワイヤーボンデングによるワイヤリングだけの電気的な接続ではLCRの電気特性を満足する配線が出来ない問題がある。この対策、改善方法は、種々の技術が開示されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記ICチップの搭載では、配線チップ41と呼称される配線のみを形成した基板を新規に追加し、その配線チップを介して、NAND用ICチップ上にASIC用ICチップを搭載する方法が提案されている。前記配線チップは、複数の配線のうち、1対の接続端子間の配線長がその他各々の配線長と等しい、すなわち等長配線に設計された配線を備えている。さらに、等長配線の設計方法等も開示されている。一般に、ICチップの回路自体がI/O回路を持つため静電容量の大きな負荷となり、各々の一対の配線上でこの負荷の分布に偏りがある場合、この部分でインピーダンスが変化する等の影響で信号波形にノイズが載ることがある。その負荷の偏りを均一にするために配線を等長等負荷配線にすることで解決する。なお、前記等長等負荷配線は等長配線と称し、一対の配線の長さを各々と同一距離に形成することを、等長配線とした。
【0004】
図6は、従来のスタックトICパッケージの配線チップを用いた場合の一例であり、(a)は、側断面図であり、(b)は、上面図である。なお、図6(a)は、図6(b)のx−x’面の断面図である。
【0005】
図6(a)の断面図は、NAND用ICチップ12上の左端にASIC用ICチップ11を貼り合わせている。NAND用ICチップ12は、横15.63mm×縦8.94mmの形状である。ASIC用ICチップ11は、横3.92mm×縦3.92mmの形状である。次に、ASIC用ICチップの右側に配線チップ41を貼り合わせている。配線チップ41は、横3.26mm×縦3.26mmの形状である。配線チップ41の接続端子間には、等長配線を介して一対の配線回路が形成されている。なお、NAND用ICチップ12は、配線基板31と張り合わされている。電気的な接続では、ASIC用ICチップ11の左側パッドは、配線基板31の接続端子にワイヤーボンデング13bされ、ASIC用ICチップ11の右側パッドは、配線チップ41左側の接続端子にワイヤーボンデング13aされ、さらに配線チップ41の後方の接続端子を経由して配線基板31の接続端子にワイヤーボンデング13bされている。NAND用ICチップ12の左側、右側のパッドと配線基板31の左側、右側の接続端子とをワイヤーボンデング13cされたことにより、配線基板31、NAND用ICチップ12、配線チップ41、ASIC用ICチップ11が電気的に接続される。なお、スタックトICパッケージとしての入出力端子は配線基板31の裏面側に形成した半田ボール32の役割である。
【0006】
図6(b)は、配線基板31の左上の角に近接した位置にASIC用ICチップ11が
配置されている。ASIC用ICチップ11は四辺にパッドが配置されている。ASIC用ICチップ11の右側(辺B)及び下側(辺C)に配線チップ41が配置されている。なお、前記角から時計回りに辺A、辺B、辺C、辺Dとする。NAND用ICチップ12は、辺B、辺D側にパッドが配置されている。ワイヤーボンデングによる接続では、配線基板31の接続端子(辺B、辺D側)とNAND用ICチップ12の辺B、辺D側のパッドに接続されている。配線チップ41は、各々隣り合う2つの辺にパッドが配置されている。ASIC用ICチップ11のパッド(辺A、辺D)は、配線基板31の接続端子(辺A、辺D側)に直接に接続されている。パッド(辺B、辺C)は、各々の配線チップ41(辺D、辺A)と各々接続され、該配線チップ41内の等長配線を経由して配線チップ(辺A、辺D)から配線基板31の接続端子(辺A、辺D)に接続されている。例えば、ASIC用ICチップ11のパッド(辺A)は、配線基板31の接続端子(辺A)に直接に接続される。ASIC用ICチップ11のパッド(辺B)は、配線チップ41(辺D)と、該配線チップ(辺A)とを経由して配線基板31の接続端子(辺A)に接続されている。すなわち、ASIC用ICチップ11のパッド(辺B)は、配線チップ41を経由して配線基板31の接続端子(辺A)に接続されている。前記配線では、配線チップ41の静電容量が負荷となり、この配線上での負荷の分布に偏りが発生する危険がある。
【0007】
図6に示す従来の配線チップを用いた一例のスタックトICパッケージでは、搭載したICチップが四辺パッド配置であるため、配線チップ41を2個使用して電気的な接続したことにより、ICチップの辺A若しくは辺Bの配線上の負荷が少なく、辺B、辺Cの配線上の負荷が配線チップの静電容量だけ加算されるために、配線チップの影響によりインダクタンスやインピーダンスの整合化、相互インダクタンスやクロスストロークに不具合が発生する問題、すなわち電気特性上の問題がある。
【0008】
近年、ICチップ間のデータ転送速度が向上し、データとクロック間のスキュー、及び転送データ、クロック波形のノイズ等による乱れが問題となっている。送信されたデータは配線バス(一対の配線)を経由して送信先に転送される際、その到達時間の差が或る限界を超えると、同時に受信することが不可能となり、すなわち、複数のデータを一度に転送することが出来なくなる問題がある。すなわちバス幅を狭くする必要があり、大容量のデータ伝送に不都合が生じる。
【0009】
近年、スタックトICパッケージでは、インターポーザとしてテープキャリアパッケージ(以下TCPと記す)が注目されている(特許文献3、特許文献4参照)。
【0010】
従来のICチップ貼り合わせ用TCP(以下、TCPテープと記す)は、ポリイミドのフイルムの絶縁基材上に、接着剤、銅箔と重ねて積層、又は直接に銅層を形成したテープの基材を使用しているため、層構成が単純であり、配線形成の自由度が大であり、且つ電気特性に優れた特徴がある。
【0011】
従来のスタックトICパッケージと、TCPテープについて説明する。
【0012】
図7は、従来のTCPテープを用いたスタックトICパッケージの一例の部分構造図であり、(a)は、TCPテープの側断面図であり、(b)は、そのICチップを搭載した側断面図であり、(c)は、スタックトICパッケージの側断面図である。
【0013】
図7(a)は、TCPテープ10は、表面には、ソルダーレジスト3が形成されている。ソルダーレジスト3の表面一部分には、配線のうちの、入出力用の接続端子2bが形成され、その表面がソルダーレジスト面から露出されている。配線回路2の表面はソルダーレジスト3が形成されている。中央部には、デバイスホールである導通孔6の開口部が形成されている。導通孔6の開口部内には、ICチップが配置される。前記接続端子2bは
、開口部の近傍であり、上側のICチップのパッドと等距離に配置されて形成されている。接続端子4bは、TCPテープ10の外周の近傍であり、下側のICチップのパッドと等距離に配置されて形成されている。ワイヤーボンデング時、近接したパッドと接続端子がそのワイヤーにより電気的に接続する。すなわち、ICチップのパッドと前記接続端子4b、2bとをワイヤーボンデングで電気的な接続をして一つの回路を形成する。なお、接続端子4b、2bでは、銅層表面にNi(ニッケル)、Au(金)と積層されている(Cu/Ni/Auの3層構造)。
【0014】
TCPテープ10は、支持基材であるポリイミド絶縁基材1の上面側に配線回路及び接続端子の銅配線層2、その上にソルダーレジスト層3が積層され、ポリイミド絶縁基材1の下面側に基材補強用の裏打ち材5が形成されている。中央部には、導通孔6が形成された形状である。
【0015】
図7(b)〜(c)は、従来のTCPテープ10上にASIC用ICチップ11、NAND用ICチップ12を貼り合わせ、搭載したスタックトICパッケージの工程フローを説明する側断面図である。すなわち、TCPテープ10をインターポーザとして用いたスタックトICパッケージである。最初に、図7(b)では、TCPテープ10上に、ASIC用ICチップ11を搭載する。次いで、ASIC用ICチップ11のパッドと、接続端子2bにワイヤーボンデング13aを形成する。次いで、外周近傍の入出力端子4bとNAND用ICチップ12のパッドにワイヤーボンデング13bを形成する。図7(b)は、ワイヤーボンデング13a、13bの形成により、ASIC用ICチップ11とNAND用ICチップ12がTCPテープ10の配線回路2aを介して回路が形成される。次いで、回路チェック等の検証を実施した後、次の工程の投入する。
【0016】
図7(b)の回路形成方法では、搭載するASIC用ICチップ11、NAND用ICチップ12は、ワイヤーボンデング13a、13bの形成、及びTCPテープ10の導体層2を介して回路形成されている。
【0017】
次いで、図7(c)では、形成した回路を湿度等外部環境から保護するために樹脂モールド14を形成する。
【0018】
近年、半導体パッケージでは、軽薄短小となる方向に加速されている。従って、TCPテープを用いたスタックトICパッケージにおいても、軽薄短小となる半導体パッケージの開発が急務となっている。搭載するICチップは、高機能化、高速度化、回路の微細化等の効果により、小型化、薄厚化への改善が加速している。一方では、IC回路のデザインルールも微細化、高速度化され、回路特性の許容範囲の狭くなり、ワイヤーボンデング13の距離、付随する配線長も影響されることが報告されている。
【0019】
従来のTCPテープの製造方法を説明する。
【0020】
最初に、絶縁基材のポリイミドのフイルムを製造する。はじめに、ポリイミドのフイルムに金型を用いて型抜きにより所定の形状の貫通孔、例えばスプロケットホール、デバイスホールを形成する。次いで、導体層、例えば銅箔と前記ポリイミドのフイルムとを接着剤を介してラミネートして、所定のポリイミドテープの絶縁基材を製造する。
【0021】
次いで、ポリイミドの絶縁基材上の銅層にパターンを形成する。前記パターンは、フォトプロセス法を用いた、すなわち、感光性レジスト形成、パターン露光処理、現像及びエッチング処理、剥膜処理により形成する。ポリイミド絶縁基材には、配線回路及び接続端子の銅配線が形成される。
【0022】
次いで、形成された配線回路を保護及び遮蔽するように電気絶縁を目的としたソルダーレジストを形成する。
【0023】
図8は、従来のTCPテープに形成した配線層を説明する側断面図である。配線層2aは、絶縁基材であるポリイミド上に形成されている。従って、各々配線の下側には絶縁性のポリイミドがあり、各々配線は左右及び上側には絶縁性のソルダーレジストが形成されている。配線層2aは、その周囲を絶縁性の基材とソルダーレジストの樹脂層により電気的に被覆して外部から電気的に遮断される。配線層2aは、絶縁基材と絶縁性のあるソルダーレジストで外部からの環境汚染、水分等が遮断される。配線の幅、配線間隔、形状では、フォトプロセス技術により自由に選択できる。
【0024】
近年、スタックトICパッケージでは、搭載するICチップは、高機能化及び高速度化するため、LCR電気特性の向上が要望されている。LCR電気特性では、電流の安定供給するための配線間の間隔を広げる工夫、低インダクタンス化を図るためのその配線幅を太くする工夫、配線材質の選択等が行われている。さらにインピーダンス整合化のための配線の上及び下側の絶縁層の厚さの調整、相互インダクタンスやクロスストロークの低減のための配線間隔を空ける工夫等が実行されている。
【0025】
前記LCR電気特性の向上では、TCPテープが持つ、電気特性の長所を活用することができ、TCPテープのコスト面等の低減効果も期待できる。最近、大容量データの転送、その一時記録等のICパッケージが増加し、メモリーIC、例えばNAND用ICチップ12に外付けのコントローラーIC、例えばASIC用ICチップ11を搭載したスタックトICパッケージ開発され、顧客側の開発作業を低減し、開発工期の短縮する流れが加速している。
【0026】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開平11−67970号公報
【特許文献2】特開平06−334104号公報
【特許文献3】特開2001−267713号公報
【特許文献4】特開2002−246510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の課題は、配線チップをTCPテープに代替え化することにより、材料コストの削減し、工期の短縮することができる、さらに、TCPテープを使用することにより、LCR電気特性の向上するICチップ貼り合わせ用のTCPテープ及びそのTCPテープを用いたスタックトICパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の請求項1に係る発明は、支持するポリイミドからなる絶縁基材の片側に、配線からなる導体層を形成し、その基材の中央部にデバイスホールである導通孔の開口部を設けた枠型形状のICチップ貼り合わせ用TCP(Tape carrier package)であって、
前記ICチップ貼り合わせ用TCPは、ポリイミドの絶縁基材上に、配線回路及びその配線の端部に形成した、上側に貼り合わせるICチップと、及び下側に貼り合わせるICチップとの信号の入出力用の接続端子を備えた複数からなる配線と、その配線上にソルダー
レジスト層と、その順序に積層した多層構造であり、
前記絶縁基材は、ポリイミドからなる、厚さ10〜40μmからなるテープ基材であり、前記配線層は、銅、若しくは銅を60%〜99%(重量%)含む銅合金からなる、銅配線回路及び接続端子からなる銅配線であり、
前記上側のICチップとの入出力用のうちの1個の接続端子と、下側のICチップとの入出力用のうちの1個の接続端子は、1本の銅配線を介して電気的に接続され、一対の配線を形成する配線回路であり、
前記一対の配線長は、各々が等長配線で形成され、且つ、一対の配線幅が10〜30μmからなり、各々配線の機能に応じて最適な配線幅に変更して配線を形成したことを特徴とするICチップ貼り合わせ用TCPである。
【0029】
本発明の請求項2に係る発明は、前記ICチップ貼り合わせ用TCPは、上側のICチップと下側のICチップ間に介在するインターポーザの役割を荷うものであって、スタックトIC用インターポーザとする用途に限定することを特徴とする請求項1記載のICチップ貼り合わせ用TCPである。
【0030】
本発明の請求項3に係る発明は、上側のICチップと、下側のICチップ間に介在するインターポーザとして、前記請求項1、又は2記載の等長配線を備えたICチップ貼り合わせ用TCPを用いたスタックトICパッケージであって、
前記上側のICチップと、下側のICチップ及びインターポーザ間との配線回路は、上側のICチップのパッドと、ICチップ貼り合わせ用TCPの接続端子とをワイヤーボンデングにより電気的な接続をし、下側のICチップのパッドと、ICチップ貼り合わせ用TCPの接続端子とをワイヤーボンデングにより電気的な接続をして形成され、前記上側のICチップのパッドからワイヤー長及びICチップ貼り合わせ用TCPの上側のICチップとの接続端子から下側のICチップとの接続端子までの配線長の合計配線長は、各々配線群の平均配線長の±10%の範囲の配線長に形成したことを特徴とするスタックトICパッケージである。
【発明の効果】
【0031】
本発明のICチップ貼り合わせ用のTCPテープを用いれば、配線チップをTCPに変更して用いたことにより、各々の配線長が等長配線となり、LCR電気特性の向上が図られる。
【0032】
本発明のICチップ貼り合わせ用のTCPテープを用いれば、等長配線の配線チップを等長配線のTCPテープに変更して用いたことにより、材料コストの削減が図られる。
【0033】
本発明のICチップ貼り合わせ用のTCPテープ及びそのTCPテープを用いたスタックトICパッケージを用いれば、配線チップをTCPテープに変更して用いたことにより、各々の配線長が等長配線となり、LCR電気特性の向上と工程が短縮することにより、又は材料調達期間の短縮により、工期の短縮が可能となり、さらに、材料費の削減、工数の削減をすることができ製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のICチップ貼り合わせ用の等長配線を備えたTCPテープ及びそのTCPテープをインターポーザとして用いたスタックトICパッケージを一実施形態に基づいて以下説明する。
【0035】
本発明のTCPテープは、支持するポリイミドからなる絶縁基材の片側に、等長配線からなる導体層を形成し、その基材の中央部にデバイスホールである導通孔の開口部を設けた枠型形状のICチップ貼り合わせ用TCP(Tape carrier packag
e)である。前記TCPテープは、ポリイミドの絶縁基材上に、配線回路及びその配線の端部に形成した、上側に貼り合わせるICチップと、及び下側に貼り合わせるICチップとの信号の入出力用の接続端子を備えた複数からなる配線と、その配線上にソルダーレジスト層と、その順序に積層した多層構造である。
【0036】
前記絶縁基材は、ポリイミドからなるフイルム基材で、その厚さが10〜40μmからなるテープ状の絶縁基材である。厚さは、搭載するICチップの機能、LCR電気特性に適する範囲で最適なものを選択する。
【0037】
前記配線層は、銅、若しくは銅を60%〜99%(重量%)含む銅合金からなる、銅配線回路及び接続端子からなる銅配線であり、電気特性に特に優れた金属から選択した。すなわち、本発明の等長配線は、銅配線に限定し、その電気特性の向上を支援するものである。
【0038】
前記上側のICチップとのうちの1個の接続端子と、下側のICチップとのうちの1個の接続端子は、1本の銅配線を介して電気的に接続され、一対の配線を形成する配線回路であり、一対の配線長は、各々が等長配線で形成されている。
【0039】
前記一対の配線幅は、10〜30μmの範囲のうちから選択した任意の寸法から形成する。TCPテープの各々配線幅は、その機能に応じて最適な配線幅に変更して形成している。例えば、電源、グランド等の低インダクタンス化のため30μmに近づける線幅に太くする、例えば、クロストークの低減のため配線幅を細くし、その配線間隔を広くする等、各々配線幅は、10〜30μmの範囲のうちから最適な幅に形成する。
【0040】
本発明のスタックトICパッケージでは、本発明のTCPテープを上側のICチップと下側のICチップ間の隙間に介在するインターポーザの役割を荷うものであって、スタックトIC用の等長配線の配線回路を備えたインターポーザとする用途に限定し、使用する。
【0041】
図1は、本発明のTCPテープの一実施例の構造図であり、(a)は、TCPテープの上面図であり、(b)は、その側断面図であり、(c)は、そのTCPテープをインターポーザとしたスタックトICパッケージの側断面図である。
【0042】
図1(a)は、TCPテープ10の上面図であり、TCPテープ10の表面には、ソルダーレジスト層3が形成されている。ソルダーレジスト層3の表面一部分には、配線層のうちの、信号入出力用の接続端子2bと、4bが露出され、形成されている。ソルダーレジスト層3は、配線回路2a(52a)の表面上に形成されている。中央部には、導通孔6の開口部が形成されている。該導通孔6には、ICチップが配置される。前記接続端子2b、4bは、導通孔の開口部の近傍に接続端子2b及びTCPテープ10の外周の近傍に接続端子4bが形成され、前記接続端子2bは等長配線52bを介して接続した接続端子4bはワイヤーボンデング時の相手側の接続端子に用いられている。すなわち、ICチップのパッドと前記接続端子2b、4bとをワイヤーボンデングで電気的に接続して一つの回路を形成する。図1(a)の事例では、NAND用ICチップ12の左側にTCPテープ10が配置されている。前記TCPテープ10は、図の上側と下側の2方の辺に接続端子2b、4bが形成されている。配線回路2a、52aは、一対の銅配線の群であり、各々の銅配線が等長配線であり、前記一対の配線の一方の端部に接続端子2bが形成され、他方の端部に接続端子4bが形成されている。従って、例えば1つの接続端子2bと銅配線2aと接続端子4bの一対の配線回路の長さは、その他の一対の配線回路の長さと等しく、すなわち各々一対の銅配線は、等長配線で形成されている。
【0043】
図1(b)は、図1(a)のy−y’面の断面図であり、TCPテープ10の部分は、支持基材であるポリイミド絶縁基材1の上面側に配線回路及び接続端子の導体層2、その上にソルダーレジスト層3が積層され、ポリイミド絶縁基材2の下面側に裏打ち材、若しくはエラストマ5が形成されている。なお、図1(a)〜(b)のTCPテープ10は、ICチップ貼り合わせ用でスタックトICパッケージのインターポーザであって、その層構成が片側1層のみに配線回路2aが形成した構造である。前記ポリイミド絶縁基材1は、2層構成(絶縁基材/導体層)、又は3層構成(絶縁基材/接着層/導体層)のテープ基材で形成されている。図1(b)では、導通孔6両端の近傍に複数個配列した接続端子2bが一列、等間隔に配置されている。同様に、TCPテープの両端部に複数個配列した接続端子4bが一列、等間隔に配置されている。前記接続端子2b、4b間は、等長配線52aを介して一対の配線が形成されている。接続端子4b、2bでは、銅配線層の表面にNi(ニッケル)、Au(金)と積層されており、Cu/Ni/Auの3層構造であり、この無電解、電解めっきでは銅面の残渣除去の処理を完全に行い、後工程の電気的な接続に対処した(図示せず)。
【0044】
本発明のTCPテープをインターポーザとして用いたスタックトICパッケージの作製方法を説明する。
【0045】
TCPテープに用いるポリイミド絶縁基材は、銅箔の片方側にポリイミド前駆体溶液を塗工して乾燥硬化させる方法、又は銅箔の片方側に熱可塑性樹脂シートを熱圧着する方法がある。また、ポリイミドの基材に、スパッター蒸着により銅層を形成する方法、又はポリイミドの基材に、無電解めっき及び電解めっきにより銅層を形成する方法がある。また、必要の場合、銅配線の形成では、無電解、電解のめっき法によるめっき銅を析出させ形成する、例えばアデティブ法がある。
【0046】
図1(c)は、TCPテープの側断面図であり、ICチップ貼り合わせ用、すなわち、TCPテープをインターポーザとして用いたスタックトICパッケージの側断面図である。スタックトICパッケージ用インターポーザ20aは、図1(b)のTCPテープ10と、NAND用ICチップ12とをエラストマ5を介して貼り合わせた構造である。スタックトICパッケージ用インターポーザ20aは、複数のICチップを重ね合わせて搭載するもので、導通孔6に配置する、例えば制御用ICチップを搭載し、フラツシュメモリのNAND用ICチップ12とを組み合わせたスタックトICパッケージ用インターポーザである。
【0047】
図2は、本発明のスタックトICパッケージ用インターポーザ(前記図1(c)の)にASIC用ICチップを搭載したスタックトICパッケージの一実施例の部分構造の側断面図である。
【0048】
前記スタックトICパッケージ用インターポーザ20aに、ASIC用ICチップ11、NAND用12を貼り合わせ、搭載したスタックトICパッケージを説明する側断面図である。最初に、図1(c)のスタックトICパッケージ用インターポーザ20a上に、ASIC用ICチップ11を搭載する。次いで、ASIC用ICチップ11の端子と、接続端子2bとにワイヤーボンデング13を形成する。次いで、外周近傍の接続端子4bとNAND用ICチップ12のパッドとにワイヤーボンデング13を形成する。ワイヤーボンデング13の形成により、ASIC用ICチップ11とNAND用ICチップ12がTCPテープ10の等長配線52aを介して最適な電気特性の回路が形成される。なお、図2のスタックトICパッケージ20の場合、最適な回路の形成では、インターポーザであるTCPテープの配線が等長配線とされたため、ワイヤーボンデングを含む配線長が各々同一距離となり、その電気特性が改善されている。
【0049】
図2を用いて、スタックトICパッケージの回路形成方法を説明する。
【0050】
搭載するASIC用ICチップ11、NAND用ICチップ12は、ワイヤーボンデング13の形成、及びスタックトICパッケージ用インターポーザ20aの配線回路2aを介して回路形成されている。ASIC用ICチップ11とスタックトICパッケージ用インターポーザ20aとのワイヤーボンデング13による電気的な接続は、TCPテープの各々の接続端子2bから等長配線52aと、接続端子4bまでの配線回路が形成されている。また、接続端子2bは、上側のICチップ、例えばASIC用ICチップ11のパッドと接続され、接続端子4bは、下側のICチップ、例えばNAND用ICチップ12のパッドと接続されている。従って、スタックトICパッケージの一対の配線回路の配線長は、その他の配線長と等長配線となる。絶縁基材表面の高さ、すなわちASIC用ICチップ11の表面との段差が縮小されて、ASIC用ICチップ11の配置位置も近接する工夫がされてワイヤーボンデング13の距離が接近した。その全配線長距離が等長配線となり、それに比例して、LCR特性等の回路特性も向上する。同様に、スタックトICパッケージ用インターポーザ20aとNAND用ICチップ12との電気的な接続は、TCPテープの配線回路の形成が、配線の幅、隣接配線との間隔、配線の下側(この場合絶縁基材の厚さ)、上側(この場合ソルダーレジスト厚さ)が最適な状態に調整され、電気特性が大幅に改善される。すなわち、従来の配線チップの配線とTCPテープの配線との比較では、TCPテープの方がより改善できる。さらにワイヤーボンデング13の距離も接近して、ワイヤーボンデング13の長さが短縮され、回路特性も向上する。また、本発明のスタックトICパッケージ用インターポーザは軽薄短小となるため、軽薄短小となるスタックトICパッケージを製造することができる。
【0051】
本発明のスタックトICパッケージでは、上側のICチップと、下側のICチップ間に介在するインターポーザとして、本発明の等長配線を備えたTCPテープを用いたことにより、前記上側のICチップと、下側のICチップ及びインターポーザ間との配線回路は、上側のICチップのパッドと、TCPテープの接続端子2bとをワイヤーボンデングにより電気的な接続をし、下側のICチップのパッドと、TCPテープの接続端子4bとをワイヤーボンデングにより電気的な接続をして形成されている。前記スタックトICパッケージでは、上側のICチップのパッドからワイヤー長、及びTCPテープの接続端子2b〜接続端子4bまでの配線長の合計配線長は、各々配線群の平均配線長の±10%の範囲の配線長に形成したことが特徴である。次に等長配線の形成方法について以下に説明する。
【0052】
図3は、本発明のICチップ貼り合わせ用TCPの一実施例の等長配線部分を説明する上面図であり、(a)は、等長配線の全面図であり、(b)は、一方の平行配線型の銅配線領域であり、(c)は他方の対角配線型の銅配線領域である。以下に、本発明のICチップ貼り合わせ用TCPテープの一実施例に於ける等長配線の設計方法を説明する。
【0053】
図3(a)では、ICチップのパッドは4辺に配置した場合で、且つTCPテープの接続端子4bは2辺に配置した事例の等長配線部分の全面図であり、中央に導通孔6が形成された銅配線層2a面である。この事例では、図6の相当する場合である。TCPテープの左上の角0から、導通孔の左上角0’の距離は、x、y方向ともに3L/2の距離とし、その位置に導通孔を形成した。なお、前記Lは、搭載するICチップの一辺の長さである。等長配線の設計では、起点位置を接続端子2bとし、その終点は接続端子4bとする。接続端子2bは、導通孔の4方の近傍に配置され、図上側の接続端子2bの位置に、左端側よりA0、A1・・・Anの順番に等間隔に所定数のn個が配置されている。同様に、時計まわりにB0、B1・・・Bnと、C0、C1・・・Cnと、D0、D1・・・Dnと配置されている。起点位置を接続端子2b、例えばA0、A1・・・An(以下、A0〜Anと記す)は、その終点は接続端子4b、例えばA0〜Anとに配線を介して接続する。以下同様
に、例えば、接続端子2bのB0〜Bnは、接続端子4bのB0〜Bnとに配線を介して接続する。接続端子4bのA0〜An、B0〜Bnは、図上側の接続端子4bの位置に、一列に並んで所定数のn個が配置されている。また、接続端子4bのC0〜Cn、D0〜Dnも同様に配置されている。TCPテープの左上の角0―0’対角線で、その上側に、接続端子4bのA0〜An、B0〜Bnまでの配線領域、対角線の下側はC0〜Cn、D0〜Dnまでの配線領域にし、等長配線の経路は、対角線を境に対象に形成する。前記の、A0〜AnとA0〜An配線領域は、平行した配線経路で形成、すなわち、平行配線型60であり、前記の、B0〜BnとB0〜Bnは、90度角度を変えた配線経路で形成する、対角配線型70で等長配線を形成する。
【0054】
辺Aの接続端子2bのA0〜Anからの配線は、直線A0’〜An’61を通過後、方向を変更し、直線直線A0’’〜An’’62を通過後、方向を元に戻して、接続端子4bのA0〜Anに到達する経路で形成する。
【0055】
同様に、辺Bの接続端子2bのB0〜Bnからの配線は、方向を変更して、直線B0’〜Bn’71を通過後、さらに方向を変更し、直線B0’’〜Bn’’72を通過後、直線B0’’’〜Bn’’’73を通過後、方向を変更し、直線B0’’’’〜Bn’’’’74通過後、方向を元に戻して接続端子4bのB0〜Bnに到達する経路で形成する。
【0056】
図3(b)は、対角線0−0’の上側の等長配線の平行配線型60の配線領域である。以下に説明する。
【0057】
最初に、平行配線型のA0〜AnとA0〜Anとの配線経路を説明する。接続端子2b〜4bまでの間に、直線A0’〜An’61と、直線A0’’〜An’’62を経由して接続端子4bのA0〜Anに到達する。最初の直線A0’〜An’61は、接続端子2bのA0〜AnからL/2の距離だけ離れた位置で、平行位置にあり、次の直線A0’’〜An’’62は、さらにL/2の距離だけ離れ、その位置は、左側へLの距離移動した位置で、平行位置にある。前記直線では、均等の距離、例えばパッドの間隔の距離に分割し、その分割点と他の直線の分割点間は直線経路で配線を形成する。この場合、直線A0’〜An’61と、直線A0’’〜An’’62と、接続端子4bのA0〜An間では所望の配線長となるように配線経路を延伸する区間である。この方法での配線長は、同一の配線長に形成されている。また配線とその隣の配線との距離、すなわち、回線間隔は、パッドの配置間隔と同一距離となる。例えば、配線長の延伸では、平行配置した接続端子2b〜4bの距離の増減、その間の左側の移動する回数の増減により調整する。各々の配線長の増減は、通過する直線上の分割点の左側への移動距離の加減により調整する。
【0058】
図3(c)は、対角線0−0’の上側の等長配線の対角配線型70の配線領域である。
【0059】
次いで、90度角度を変えた配置、すなわち対角配線型70の、B0〜Bnと、B0〜Bnとの配線経路を説明する。接続端子2b〜4bまでの間に、直線B0’〜Bn’71と、直線B0’’〜Bn’’72との通過で角度を90度変更し、直線B0’’’〜Bn’’’73を通過後、方向を変更し、直線B0’’’’〜Bn’’’’74を通過後、方向を元に戻して接続端子4bのB0〜Bnに到達する。最初の直線B0’〜Bn’71は45度角度を変更し対角線0−0’と平行し、次の直線B0’’〜Bn’’72は、さらに45度角度に変更し、B0〜Bnと平行となり、接続端子4bのB0〜Bnまでの距離は3L/2だけ離れた、平行位置にあり、次の直線B0’’’〜Bn’’’73は、L/2の距離だけ離れた位置で、平行位置にあり、次の直線B0’’’’〜Bn’’’’74は、さらにL/2の距離だけ離れ、その位置は、左側へLの距離移動した位置で、平行位置にある。前記直線71、72、73、では、均等の距離、例えばパッドの間隔の距離に分割し、その分割点と他の直線の分割点間は直線経路で配線を形成する。この場合、直線B0’’’〜Bn’’
’73と、直線B0’’’’〜Bn’’’’74と、接続端子4bのB0〜Bn間では所望の配線長となるように配線経路を延伸する。この場合、直線B0’’’’〜Bn’’’’74では、その長さは2Lとなり、この直線上のみパッド間隔の2倍の距離で等分する分割点とする。この方法での配線長は、同一の配線長に調整して形成されている。また配線とその隣の配線との距離、すなわち、回線間隔は、パッドの配置間隔と同一距離ではない。なお、前記等長配線の形成方法では、必要に応じて各々等長配線毎に線幅、配線間隔等を最適化する必要があり、必要な場合、この設計値を用いた回路シュミレィションを行い、その結果による各々の微調整する。
【0060】
図4は、本発明のTCPテープをインターポーザとして用いたスタックトICパッケージの一実施例の上面図である。スタックトICパッケージ用インターポーザ30aは、スタックトICパッケージ用インターポーザ20aと、配線基板31とをエラストマ35を介して貼り合せた構成である。図4に示すスタックトICパッケージは、図6の従来品と同じ組み合わせのスタックトICパッケージであり、すなわち、同一製造指示、同一検査仕様で作成したスタックトICパッケージであり、特にLCR電気特性の向上をめざしたものである。その相違点は、図6の従来品では、等長配線の配線チップ41を用いたもので、本発明の図4のスタックトICパッケージでは、等長配線のTCPテープ10を用いた(図6、図4参照)。
【0061】
図4は、配線基板31の上にNAND用ICチップ12を貼り合わせ、NAND用ICチップ12上の左端にASIC用ICチップ11がTCPテープ10を介して貼り合わせている。NAND用ICチップ12は、横15.63mm×縦8.94mmの形状である。TCPテープ10は、横8.94mm×縦8.94mmの形状である。ASIC用ICチップ11は、横3.92mm×縦3.92mmの形状である。電気的な接続では、ASIC用ICチップ11のパッドは、TCPテープ10の接続端子2b、4b、等長配線52bを経由して配線基板31の接続端子にワイヤーボンデング13a、13bされている。NAND用ICチップ12の左側、右側のパッドと配線基板31の左側、右側の接続端子とをワイヤーボンデング13cされたことにより、配線基板31、NAND用ICチップ12、TCPテープ10、ASIC用ICチップ11が電気的に接続される。なお、スタックトICパッケージとしての入出力端子は配線基板31の裏面側に形成した半田ボール32の役割である。
【0062】
前記配線基板31の左上の角(0)に近接した位置にASIC用ICチップ11が配置され、そのASIC用ICチップ11は、四辺にパッドが配置されている。なお、前記角(0)から時計回りに辺A、辺B、辺C、辺Dとする。NAND用ICチップ12は、辺B、辺Dの側にパッドが配置されている。ワイヤーボンデングによる接続では、配線基板31の接続端子(辺D、辺B側)とNAND用ICチップ12の辺B、辺D側のパッドにワイヤーボンデング13cにより接続されている。TCPテープ10は、導通孔6の近傍の4辺の接続端子2bが形成され、そのTCPテープの外周の辺A、辺Dに接続端子4bが形成されている。ASIC用ICチップ11のパッド(辺A、辺B)は、前記導通孔6の近傍の接続端子2bとワイヤーボンデング13aされ、前記外周の辺Aの接続端子4bを経由して配線基板31の接続端子(辺A)にワイヤーボンデング13bにより直接に接続され、同様に、パッド(辺D、辺C)は、前記外周の辺Dの接続端子2b、4bを経由して配線基板31の接続端子(辺D)に接続されている。例えば、ASIC用ICチップ11のパッド(辺A)は、TCPテープの接続端子2b、4bを介して、配線基板31の接続端子(辺A)に直接に接続される。ASIC用ICチップ11のパッド(辺B)も、TCPテープの接続端子2b、4bを介して、配線基板31の接続端子(辺A)に接続されている。すなわち、ASIC用ICチップ11のパッド(辺B)は、TCPテープ10を経由して配線基板31の接続端子(辺A)に接続されている。従って、TCPテープの配線を等長配線にしたことにより、前記各々配線回路では、静電容量の負荷が大幅に軽減
され、この配線上での負荷の分布が平均化し、偏りが発生する危険が防止できる。
【0063】
図4に示す本発明の等長配線からなるTCPテープを用いた一例のスタックトICパッケージでは、搭載したICチップが四辺パッド配置であるため、等長配線からなるTCPテープ使用して電気的な接続したことにより、インダクタンスやインピーダンスの整合化、相互インダクタンスやクロスストロークに不具合が発生する問題が防止され、すなわちLCR電気特性が改善された。
【0064】
図5(a)〜(c)は、本発明の等長配線のTCPテープをインターポーザとして用いた一実施例のスタックトICパッケージの工程フローを説明する側断面図である。なお、図5(a)は、図4上のx−x’の側断面図である。
【0065】
図5(a)では、本発明の等長配線を備えたTCPテープのインターポーザ30a上に、ASIC用ICチップ11を搭載する。次いで、ASIC用ICチップ11のパッドと、接続端子2bとにワイヤーボンデング13aを形成する。次いで、外周近傍の接続端子4bと配線基板31のパッドとにワイヤーボンデング13bを形成する。次いで、NAND用ICチップ12のパッドと配線基板31のパッドとにワイヤーボンデング13cを形成する。図5(a)は、ワイヤーボンデング13a、13b、13cの形成により、ASIC用ICチップ11とNAND用ICチップ12がスタックトICパッケージ用インターポーザ20aの配線回路2aを介して最適な回路が形成される。次いで、回路チェック等の検証を実施した後、次の工程の投入する。なお、外周近傍の接続端子4bとNAND用ICチップ12のパッドとワイヤーボンデング13bする場合もある。
【0066】
図5(a)を用いて、回路形成方法を説明する。搭載するASIC用ICチップ11、NAND用ICチップ12は、ワイヤーボンデング13a、13b、13c、及びスタックトICパッケージ用インターポーザ20aの配線回路2aを介して回路形成されている。ASIC用ICチップ11とスタックトICパッケージ用インターポーザ20aとのワイヤーボンデング13aによる電気的な接続は、等長配線となり、回路特性も向上する。同様に、スタックトICパッケージ用インターポーザ20aとNAND用ICチップ12との電気的な接続でも、その効果により等長配線となり、回路特性も向上する。
【0067】
次いで、図5(b)では、NAND用ICチップ12上に形成した回路を湿度等外部環境から保護するために樹脂モールド14を形成する。
【0068】
図5(c)は、搭載するASIC用ICチップ11、NAND用ICチップ12と、配線基板31とを一体化したT−BGA型のスタックトICパッケージ30であり、スタックトICパッケージ用インターポーザを用いたスタックトICパッケージの一実施例である。ASIC用ICチップ11とNAND用ICチップ12の間に介在するインターポーザに本発明の等長配線を備えたTCPテープ10を用いたスタックトICパッケージの一実施例である。
【0069】
図5(c)では、ASIC用ICチップ11とスタックトICパッケージ用インターポーザ20aは、ワイヤーボンデング13aを形成、スタックトICパッケージ用インターポーザ20aと配線基板31はワイヤーボンデング13bを形成、NAND用ICチップ12と配線基板31はワイヤーボンデング13cを形成し一つの回路を形成したスタックトICパッケージである。配線基板31の裏面側には半田ボール32が形成され、配線基板の端子31aと半田ボール32は、配線基板に形成した配線回路及び基板を貫通する導通路を介して電気的に接続され、前記半田ボール32が入出力端子する役割を荷っている。
【0070】
本発明のTCPテープ10を用いたスタックトICパッケージと、従来のスタックトICパッケージとを同一の、ASIC用ICチップ11、NAND用ICチップ12、配線基板31を用いて、本発明のTCPテープ10を用いた実施例1と、従来の配線チップ41を用いた比較例の実施例2を作製した。次いで実施例1、実施例2の試料では、キャパシタンスを実測した。なお実施例1では、図4のTCPテープ10を用いたスタックトICパッケージであり、実施例2では、図6の従来の配線チップのスタックトICパッケージである。
【実施例1】
【0071】
実施例1は、図4を参照に説明する。絶縁基材は、40μm厚のポリイミドフイルム(商品名:エスパネックス)、銅箔は、15μm厚の銅フイルム(商品名:エスパネックス)を使用した。最初に、TCPテープ用絶縁基材を作製した。
【0072】
次いで、絶縁基材上の銅層に配線パターンを形成した。パターン形成は、公知の製造方法、フォトプロセス法を用いた。ソルダーレジストは、PSR−4000/AUS12HF(太陽インキ(株)製造)を用い、その厚さは15μmで形成した。接続端子の形成では、配線端部の銅上に、電解ニッケルめっき、その上に電解金めっきを行い、0.35μm厚Ag/1.5μm厚Ni/Cuからなる3層構成とした。以上により実施例1のTCPテープ10を作製した。
【0073】
次いで、実施例1のスタックトICパッケージの製造指示、検査仕様配線に従って、基板31の上にNAND用ICチップ12を、その上の左端にASIC用ICチップ11を実装したTCPテープ10を貼り合わせた。NAND用ICチップ12は、横15.63mm×縦8.94mmの形状で、TCPテープ10は、横8.94mm×縦8.94mmの形状で、ASIC用ICチップ11は、横3.92mm×縦3.92mmの形状である。実施例1のスタックトICパッケージは、ASIC用ICチップ11と、TCPテープ10の接続端子2b、4bと、配線基板31の接続端子にワイヤーボンデング13a、13b13cにより電気的な接続をした。完成した実施例1のスタックトICパッケージの端子間の電気特性のうち、キャパシタンスを測定した(図4、図5参照)。
【実施例2】
【0074】
実施例2は、配線基板31上にNAND用ICチップ12と、その上の左端にASIC用ICチップ11と、そのASIC用ICチップの右側と下側に各々配線チップ41を張り合わせた。NAND用ICチップ12は、横15.63mm×縦8.94mmの形状で、ASIC用ICチップ11は、横3.92mm×縦3.92mmの形状で、配線チップ41は、横3.26mm×縦3.26mmの形状である。次いで、ASIC用ICチップ11のパッドは、直接配線基板31に接続と、配線チップ41を経由して直接配線基板31にワイヤーボンデングと、NAND用ICチップ12のパッドと配線基板31の接続端子とをワイヤーボンデングと電気的な接続をした。完成した実施例2のスタックトICパッケージの端子間の電気特性のうち、キャパシタンスを測定した(図6参照)。
【0075】
次いで、実施例1、2の試料を用いて、キャパシタンスを実測した。実測値は、以下の表1にしめす。
【0076】
【表1】

なお、単位は実測値/平均値×100で、単位は%である。
【0077】
実施例1、実施例2の評価では、キャパシタンスの実測値のバラツキは、実施例1では、最大値が123(%)で、最小値が83(%)の範囲に対して、実施例2では、最大値が151(%)で、最小値が71(%)の範囲となり、そのキャパシタンスの配線毎に偏
りが大幅に改善されている。一方、実施例1、実施例2では、キャパシタンスの実測値の平均値では大幅にキャパシタンスが低下し、その低下比率は、実施例2/実施例1が1.8/1.0である。実施例1のキャパシタンスは半減した。以上により、実施例1の本発明のTCPテープ10を用いたスタックトICパッケージは、LCR電気特性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のICチップ貼り合わせ用TCPの一実施例の部分構造図であり、(a)は、TCPテープの上面図であり、(b)は、その側断面図であり、(c)は、スタックトICパッケージ用インターポーザの側断面図である。
【図2】本発明のスタックトICパッケージ用インターポーザに搭載したスタックトICパッケージの一実施例の側断面図である。
【図3】本発明のICチップ貼り合わせ用TCPの一実施例の等長配線部分を説明する上面図であり、(a)は、全面図であり、(b)は、一方の配線領域であり、(c)は他方の配線領域である。
【図4】本発明のスタックトICパッケージ用インターポーザの一実施例の上面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明のスタックトICパッケージ用インターポーザに搭載したスタックトICパッケージの一実施例の工程フローを説明する側断面図である。
【図6】従来のスタックトICパッケージの配線チップを用いた場合の一例であり、(a)は、側断面図であり、(b)は、上面図である。
【図7】(a)〜(b)は、従来のスタックトICパッケージの工程フローを説明する側断面図である。
【図8】従来のTCPテープに形成した配線層を説明する部分拡大の側断面である。
【符号の説明】
【0079】
1…絶縁基材(ポリイミドの)
2…導体層、(銅)配線層
2a…配線回路(銅配線群)
2b…接続端子(信号入出力用端子)
3…ソルダーレジスト(層)
4b…接続端子
5…エラストマ
6…導通孔(デバイスホール用開口部の)
10…TCPテープ(TCP用テープ)
11…ASIC用ICチップ
12…NAND用ICチップ
13…ワイヤーボンデング
13a…ワイヤーボンデング(上側の)
13b…ワイヤーボンデング(TCPの)
13c…ワイヤーボンデング(下側の
14…樹脂モールド
20…スタックトICパッケージ(TCPテープを用いた半導体パッケージ)
20a…スタックトICパッケージ用インターポーザ
26…TCPテープを用いたスタックトICパッケージ
30a…スタックトICパッケージ用インターポーザ
30…T−BGA型のスタックトICパッケージ
31…配線基板
31a…接続端子
31b…接続端子
32…半田ボール
35…エラストマ
41…配線チップ
52a…等長配線
60…平行配線型
61…直線A0’〜An
62…直線A0’’〜An’’
70…対角配線型
71…直線B0’〜Bn
72…直線B0’’〜Bn’’
73…直線B0’’’〜Bn’’’
74…直線B0’’’’〜Bn’’’’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持するポリイミドからなる絶縁基材の片側に、配線からなる導体層を形成し、その基材の中央部にデバイスホールである導通孔の開口部を設けた枠型形状のICチップ貼り合わせ用TCP(Tape carrier package)であって、
前記ICチップ貼り合わせ用TCPは、ポリイミドの絶縁基材上に、配線回路及びその配線の端部に形成した、上側に貼り合わせるICチップとの、及び下側に貼り合わせるICチップとの信号の入出力用の接続端子を備えた複数からなる配線と、その配線上にソルダーレジスト層と、その順序に積層した多層構造であり、
前記絶縁基材は、ポリイミドからなる、厚さ10〜40μmからなるテープ基材であり、前記配線層は、銅、若しくは銅を60%〜99%(重量%)含む銅合金からなる、銅配線回路及び接続端子からなる銅配線であり、
前記上側のICチップとの入出力用のうちの1個の接続端子と、下側のICチップとの入出力用のうちの1個の接続端子は、1本の銅配線を介して電気的に接続され、一対の配線を形成する配線回路であり、
前記一対の配線長は、各々が等長配線で形成され、且つ、一対の配線幅が10〜30μmからなり、各々配線の機能に応じて最適な配線幅に変更して配線を形成したことを特徴とするICチップ貼り合わせ用TCP。
【請求項2】
前記ICチップ貼り合わせ用TCPは、上側のICチップと下側のICチップ間に介在するインターポーザの役割を荷うものであって、スタックトIC用インターポーザとする用途に限定することを特徴とする請求項1記載のICチップ貼り合わせ用TCP。
【請求項3】
上側のICチップと、下側のICチップ間に介在するインターポーザとして、前記請求項1、又は2記載の等長配線を備えたICチップ貼り合わせ用TCPを用いたスタックトICパッケージであって、
前記上側のICチップと、下側のICチップ及びインターポーザ間との配線回路は、上側のICチップのパッドと、ICチップ貼り合わせ用TCPの接続端子とをワイヤーボンデングにより電気的な接続をし、下側のICチップのパッドと、ICチップ貼り合わせ用TCPの接続端子とをワイヤーボンデングにより電気的な接続をして形成され、前記上側のICチップのパッドからワイヤー長及びICチップ貼り合わせ用TCPの上側のICチップとの接続端子から下側のICチップとの接続端子までの配線長の合計配線長は、各々配線群の平均配線長の±10%の範囲の配線長に形成したことを特徴とするスタックトICパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−10459(P2008−10459A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176313(P2006−176313)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】