説明

N2−キノリン又はイソキノリン置換のプリン誘導体及びその製造方法並びにその用途

本発明は、N−キノリン又はイソキノリン置換のプリン誘導体、及び前述化合物を含む医薬組成物を開示する。本発明の化合物は、毒性が低く、抗癌スペクトルが広く、抗癌活性が高く、かつ安定性に優れている。本発明はまた、同化合物の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物化学に関し、より詳細には、N−キノリン又はイソキノリン置換のプリン誘導体及びその製造方法並びにその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は、人類健康の大きな脅威の一つであって、ヒトの腫瘍の多くは、外部環境要因によって引き起こされるものである。毎年癌で死亡する人の数は、全世界では、すでに500万人を超えている。現在ではすでにいくつかの治療方法があり、例えば、外科手術、放射線治療、化学療法にて患者を治癒させることができるが、治癒率は高くない。現在、化学薬物を用いて癌を予防及び治療することは、腫瘍を抑制する最も有効な方法の一つである。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5等の特許文献の関連する記載によれば、プリン又はピリミジン誘導体は、抗ウイルス活性又は抗腫瘍活性を有することが既に明らかに示されている。
【0004】
天然に存在するヌクレオシドと人工合成のヌクレオシド類似物において、ピリミジン又はプリン若しくはその他の複素環置換基は、全て、糖環の1位に位置している。すなわち、ヒドロキシ水素化フラン誘導体を含むものの2位に相当する。近年、既にこの種類の誘導体が抗腫瘍活性又は抗ウイルス活性の少なくとも1種を有する有効な薬物となり得るという報告があった。
【0005】
他の種類のO−アルキルプリン誘導体は、O−アルキルグアニン−DNAアルキル基転移酵素活性を阻害する能力を有し、それにより、腫瘍細胞を殺すための化学治療剤としてのアルキル化剤の効果を増強させることが知られている。O−メチルグアニンがATase欠陥細胞において細胞を殺すことができるメカニズムは未だ解明されてはいないが、O−クロロエチルグアニンが細胞を死滅させるメカニズムは、環状エチリデングアニン中間物を介して、シトシン残基上にDNA二本鎖の間で交叉結合を形成するものと理解されている。この結合は、ATase介在の脱クロルエチル化又は複合物の形成により除去又は阻止され得る。特許文献6及び特許文献7では、共に宿主における腫瘍細胞のO−アルキルグアニン−DNAアルキル基転移酵素を拮抗化する方法が開示されている。
【0006】
従来の技術においても、いくつかのN−置換のプリン誘導体が公開されている。例えば、特許文献8では、N−二置換のプリン誘導体が開示され、該化合物はアナフィラキシー疾患の治療に用いることができる。特許文献9及び特許文献10には、抗ウイルス活性を有する6−シクロプロピルアミノ−9Hプリン類化合物が記載されている。非特許文献1には、抗炎症効果を有するグリコシル化のプリン類誘導体が報告されている。非特許文献2には、N−ブチルフェニル−2’−デオキシプリン誘導体が報告されおり、該化合物は、真核細胞DNAαポリメラーゼの活性を備えている。非特許文献3には、2,6,9−三置換のプリン誘導体が報告されている。上述のプリン化合物は本願化合物と一部の構造が同じ又は類似しているが、これらのプリン化合物はそれほど優れた抗腫瘍効果を備えていない。より優れた異常細胞の生長への抑制効果を備え、かつ抗腫瘍効果を備えるN−キノリン又はイソキノリン置換のプリン誘導体に関する報告も未だなされていない。
【0007】
従って、毒性が低く、抗癌スペクトルが広く、抗癌活性が高く、かつ安定性の良い抗腫瘍薬物を見出す必要がある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第173624号
【特許文献2】欧州特許出願公開第253412号
【特許文献3】欧州特許出願公開第353955号
【特許文献4】国際特許出願公開第9201698号
【特許文献5】欧州特許出願公開第481214号
【特許文献6】米国特許第5091430号明細書
【特許文献7】国際特許出願公開第9113898号
【特許文献8】米国特許第4853386号明細書
【特許文献9】特表2003−55377号
【特許文献10】特開2003−119197号
【非特許文献1】J.Org.Chem.、2004年、第69巻、3212−3215頁
【非特許文献2】J.Med.Chem.、1984年、第27巻、175−181頁
【非特許文献3】Tetrahedron Letters、1998年、第39巻、1827−1830頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術課題は、毒性が低く、抗癌スペクトルが広く、抗癌活性が高く、かつ安定性の良いN−置換のプリン化合物を研究及び設計することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構造式(A)で表されるN−キノリン又はイソキノリン置換のプリン化合物もしくはその塩あるいはその水和物を提供する。
【0010】
【化1】

式中:
Wは、H又は任意置換のC〜C−直鎖又は分枝鎖のアルキル基若しくは置換のC〜C−シクロアルキル基であり、同置換基はC〜C−直鎖又は分枝鎖のアルキル基若しくはハロゲンである。
【0011】
Yは、H又は薬学的に許容されうるグリコシルであって、そのグリコシルは、好ましくは以下の構造式から選択される。
【0012】
【化2】

Zは、以下の群のうちの一つである。
【0013】
【化3】

Qは、以下の群のうちの一つである。
【0014】
【化4】

式中、B、E、G、R、T及びMの各々は、H又はC〜C−直鎖又は分枝鎖のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、ハロゲン、CNあるいはNHである。
【0015】
Wは、好ましくは、H又は以下の群のうちの一つである。
【0016】
【化5】

より好ましくは、Wは以下の群のうちの一つである。
【0017】
【化6】

最も好ましくは、Wは:
【0018】
【化7】

となる。
【0019】
前記化合物において、Qは以下の群のうちの一つであり、
【0020】
【化8】

特に
【0021】
【化9】

である。
【0022】
前記化合物の置換基B、E、G、R、T及びMの各々は、H、F、CH、CF、CN又はNHであり、特にHである。
式中YはHである。
【0023】
本発明は、具体的に以下の式で表される化合物を提供した。
【0024】
【化10】



本発明は、更に、以下の式で表される化合物を提供した。
【0025】
【化11】

本発明の他の目的は、式I乃至式XVIIIで表される化合物の医薬組成物を提供することにあり、該医薬組成物は、式I乃至式XVIIIで表される任意の化合物又はその塩若しくは水和物と、薬用補助材料と、からなり、前記組成物は、腸内、局所投与と胃腸外投薬、又は噴霧吸入を介して哺乳動物に薬を与える医薬組成物に適用する。組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、経口用液体製剤、顆粒剤、散剤、注射剤、インプラント又は外用製剤である。
【0026】
本発明のもう一つの目的は、前記化合物又はその塩若しくはその水和物の製造方法を提供することにあり、該方法は、(1)式(j)で表される化合物を
【0027】
【化12】

Q−NHと反応させ、式(b)で表される化合物を生成し、
【0028】
【化13】

その際、式(j)で表される化合物において、有機溶媒及び0.8〜1.5mol/molのQ−NHを加え、50〜150℃まで加熱し、1〜72時間反応させ、反応液に水を加え、冷却及び放置する工程と、(2)式(b)で表される化合物を式(c)で表される化合物に製造し、
【0029】
【化14】

その際、式(b)で表される化合物において、ハロゲン化剤、有機溶媒を加え、50〜150℃の下で1〜72時間反応させ、冷却し、加水し、酸でpH値を2〜5まで調節し、そして、冷却及び放置する工程と、(3)式(c)で表される化合物とW−NHとから以下の式で表される化合物を合成し、
【0030】
【化15】

その際、式(c)で表される化合物において、0.8〜1.5mol/molのW−NH、酸受容体、有機溶媒を加え、50〜150℃の下で1〜72時間反応させ、同有機溶媒を蒸発させる工程と、を含み、同方法において、XはBrであり、X’はClであり、Wは請求項1に定義されているものと同じである。
【0031】
本出願は更に上述の化合物又はその塩の製造方法を提供するものであって、同方法は、(1)式(k)で表される化合物を
【0032】
【化16】

W−NHと反応させ、式(e)で表される化合物を生成し、
【0033】
【化17】

その際、式(k)で表される化合物において、有機溶媒を加え、0.8〜1.5mol/molのW−NH、酸受容体を加え、30〜120℃まで加熱し、1〜72時間反応させ、溶媒を蒸発させる工程と、(2)式(e)で表される化合物をQ−NHと反応させ、式(f)で表される化合物を生成し、
【0034】
【化18】

その際、式(e)で表される化合物において、0.8〜1.5mol/molのQ−NH、有機溶媒、酸受容体を加え、70〜170℃の下で、1〜72時間反応させ、溶媒を蒸発させる工程と、を含み、同方法において、X、X’はClであり、Wは請求項1に定義されているものと同じである。
【0035】
構造式(A)で表される化合物の塩は、薬学的に許容されうる塩を含む。例えば、無機酸又は有機酸から得られた酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩と安息香酸塩が挙げられる。塩は更にアルカリと形成する塩であってもよい。このような塩には無機アルカリ又は有機アルカリから得られた塩を含む。例えば、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、モルフォリン、ピペリジン、ジメチルアミン又はジエチルアミン塩のような有機アミン塩が挙げられる。
【0036】
本発明の化合物において、優先的に選択される合成ルートは合成ルートA及びBである。
合成ルートAを以下に示す。
【0037】
【化19】

合成ルートBを以下に示す。
【0038】
【化20】

本発明は更に前記化合物が例えば、経口適用、注射、インプラント又は外用等の形式にて腸内(例えば、経口適用又は直腸投薬)、局所と胃腸外への投薬、又は噴霧吸入を介して哺乳動物(ヒトを含む)への投薬に適用する医薬組成物に関するものである。その中、経口適用は錠剤(一般錠、口に含む錠剤、舌下錠、口腔貼付錠、咀嚼錠、分散錠、可溶錠、発泡錠、膣錠又は膣発泡錠、徐放性錠剤、放出制御錠剤、腸溶錠、口腔速放出錠等を含む)と、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、徐放性カプセル、放出制御カプセル、腸溶性カプセル等を含む)と、丸剤(滴丸、糖衣丸、小丸を含む)と、経口用液体製剤(シロップ剤、経口用溶液剤、経口用懸濁剤、経口用乳剤を含む)と、顆粒剤(懸濁用顆粒、発泡用顆粒、腸溶性顆粒、徐放性顆粒、放出制御顆粒を含む)と、散剤と、を含む。注射剤は、注射液、注射用無菌粉末又は無菌塊状物(溶媒結晶法、噴霧乾燥法又は凍結乾燥法等の工程を用いて製造することを含む)、注射用濃縮溶液と、インプラントとを含む。外用製剤は、坐剤と、エアロゾール剤と、粉末エアロゾール剤と、噴霧剤と、膜剤と、ゲル剤と、貼付剤等の製剤形式を含む。
【0039】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において公知である任意の医薬組成物を製造する方法剤形に基づき、製造され得る。該組成物は抗腫瘍に用いてもよく、且つ関連する疾病の治療に用いてもよい。該組成物は単独的にて、又は一種もしくは多種のその他の抗腫瘍薬物と共に、使用され得る。担体物質と組合せられる、単一の製剤における活性成分の量は、治療される宿主及び具体的な投薬様式によって変更され得る。
【0040】
本願は更に、前記化合物の薬物としての用途を提供した。同化合物は、異常細胞の生長に対する予防と治療と、に用いる。同異常細胞の生長は、腫瘍において認められ得る。同腫瘍は、肺癌、肝臓癌、白血病、骨髄腫、すい臓癌、皮膚癌、悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、軟組織肉腫、尿道癌、前立腺癌、リンパ細胞腫、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、脊椎腫瘍、脳神経膠腫、下垂体腺腫であってもよく、特に、肺癌、肝臓癌、白血病、すい臓癌と乳癌であってもよい。
【0041】
本発明の化合物に対する測定に基づく、生体外で腫瘍細胞の生長を抑制する実験では、該化合物は生体外で培養されたヒトの肺癌、肝臓癌、白血病細胞に対して、その生長を抑制する明らかな作用を示し、且つ用量効果の関係を示していることが見出された。式Iで表される好ましい化合物は、ヒトの肝臓癌細胞に対して、IC50=11.22μg/mlであり、ヒトの白血病細胞(血液癌)に対して、IC50=12.8μg/mlであり、ヒトの肺癌細胞に対して、IC50=10.24μg/mlである。本発明の前記薬物は、腹腔注射時、ネズミに対し、LD50が160mg/kgである。
【0042】
肝臓癌H22に対するネズミ腫瘍抑制実験では、80mg/kgで、該薬物の腫瘍抑制率は69%である。
該化合物は化学療法、放射線療法及び生物技術療法と結び付けて腫瘍を治療してもよい。それにより、効果を増強させ、かつ薬物副作用を低減させる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
薬理実験について
化合物Iを例にして、化合物の活性に対する測定を行った。
化合物I:
【0044】
【化21】

1、IC50値の測定(Lewis肺癌)
a)Lewis肺癌細胞を仔牛血清DMEM15%を含む栄養液にて培養し、96孔の培養板に接種し、1×10細胞/孔、37℃、5%のCOにて培養器に置き、仔牛血清DMEM15%を含む培養液を用いて、該化合物を必要な濃度まで希釈し、それぞれ96孔板の各孔の中に加え、各濃度毎に3孔を使用し、6孔を対照とした。72時間培養し、MTT液を加え、1時間後にDMSOを加えて発色させ、酵素標識器でOD値を測定した。各濃度における薬物の殺傷率を計算し、座標法を用いてIC50値を算出した。
【0045】
Lewis肺癌IC50=10.24μg/ml
b)上述試験と同じ方法を用いて、化合物Iによるヒトの肝臓癌細胞に対して、IC50=11.22μg/mlであることを検出した。
【0046】
c)上述試験と同じ方法を用いて、化合物Iによるヒトの白血病細胞(血液癌)に対して、IC50=12.8μg/mlであることを検出した。該化合物が非固形腫瘍細胞を抑制する機能を備えていることを示している。
【0047】
2、顕著な抗腫瘍作用
a)体重21〜22gの昆明種ネズミの30匹を、雄雌がそれぞれ半分となるようにし、無作為に3群に分けて、各群10匹とし、肝臓癌H22細胞懸濁液0.2mlを、各々のネズミの右側腹部皮下に接種した。翌日、2群を選択し、それぞれに、本化合物の80mg又は40mg/kgを腹腔に注射し、投与は一日1回で、連続7日間続けた。対照群にはDMSO+生理食塩水を腹腔内投与した。投薬を中止した翌日にネズミを屠殺して、体重及び腫瘍の重量を測定し、腫瘍抑制率を計算した。該化合物はH22に対して、明らかな抗腫瘍作用を有し、80mg及び40mg/kgを投与した場合の腫瘍抑制率はそれぞれ69%及び40%であった。
【0048】
【表1】

b)生体外での癌細胞生長抑制実験
8μg/ml及び16μg/mlの化合物Iでヒトの肺癌細胞(Lewis)及びヒトの白血病細胞を処理し、細胞の動態生長状況を4日間観察した。2日以内では投薬群と対照群との細胞数の差異は大きくなかったが、3日目以降では、投薬群の細胞数が急激に減少したのに対し、対照群の癌細胞では対数的な生長を引き続き呈していた。時間の経過とともに、両群間の差異はますます大きくなった。
【0049】
上述の薬理試験において、本発明の前記化合物は肝臓癌細胞、白血病細胞(固形腫瘍、非固形腫瘍)に対して明らかな生長抑制作用を示し、しかも、用量反応関係を示していた。
【実施例】
【0050】
以下の実施例に従って、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1−3:式I、II、IIIで表される化合物の製造
合成ルートA
【0051】
【化22】

実施例1:標題化合物Iの製造
1.2−ブロモヒポキサンチン(20g,93mmol)に、6−アミノキノリン(13g,90mmol)、エチレングリコールメチルエーテル(60ml)及び水(200ml)を加え、加熱還流させ、48時間後、TLC検出を行い、反応が完了していることを確認した。混合物を氷水に注入し、固体を析出した。その後濾過し、固体をそれぞれ濃アンモニア水(200ml)とメチルアルコール(3×50ml)で洗浄し、乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、生成物2(14.2g,収率57%)を得た。
【0052】
2.キノリン生成物2(12g,43mmol)に、オキシ塩化リン(150ml)とN,N−ジメチルアニリン(15ml)を加え、30分間還流して、室温まで冷却させ、反応液をゆっくりと氷水(2000ml)に注いだ。2時間後、酢酸にてpH値を3に調節し、その後濾過し、黄色の固体を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、塩化物3(11.5g,収率90%)を得た。
【0053】
3.塩化物3(10g,34mmol)にシクロプロピルアミン(10ml,145mmol)、トリエチルアミン(28ml,200mmol)及びDMF(100ml)を加え、100℃にて3時間反応させ、TLC検出を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を蒸発し、残存物をエチレングリコールジメチルエーテルで溶解し、濾過し、濾液を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目標化合物I(7g,22mmol,収率65%)を得た。(mp>250℃)
化合物I:HNMR(DMSO−d,δ):0.640〜0.642(2H,s)、0.845〜0.860(2H,m)、3.045(1H,s)、7.0411〜7.432(1H,m)、7.632(1H,s,重水を加えると消える)、7.865〜7.888(2H,m)、7.997〜8.018(1H,m)、8.116〜8.136(1H,m)、8.623〜8.682(2H,m)、9.242(1H,s,ピークは重水を加えると消える)、12.400(1H,s,ピークは重水を加えると消える)。MS(ESI):318(M+H),340(M+Na
実施例2:標題化合物IIの製造
無水アセトニトリル(10ml)、実施例1で得られた化合物I(4.76g,15mmol)及びN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA,6.3ml,25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、テトラアセチルリボフラノース(1.27g,4mmol)のをアセトニトリル(10ml)溶液及びTMSTF(1.10ml,16mmol)を混合物に加え、5時間加熱還流した。BSA(1.25ml,5mmol)を同混合物にさらに加え、24時間撹拌した。TLC試験を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を減圧下にて留去し、残渣をメチルアルコール(20ml)に溶解した。反応混合物にアンモニアガスを2時間通し、減圧下にて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物II(4.65g,収率72%)を得た。
【0054】
化合物II:MS(ESI):450(M+H),472(M+Na
実施例3:標題化合物IIIの製造
実施例1で得られた化合物である、2−(6−アミンキノリル)−6−シクロプロピルプリン、即ち化合物I(10g,31.5mmol)と、60%のNaH(1.5g,37.8mmol)と、無水アセトニトリル150mlとを混合し、窒素ガス雰囲気下にて30分間撹拌した。3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース1−クロライド(12g,31.5mmol)をバッチ式にて20分間で加えた。添加後、室温下で2時間反応させ、濾過した。濾液の溶媒を留去し、油状物を得た。同油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(6−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン(9.8g,収率47%)を得た。
【0055】
上述の生成物をナトリウムメトキシド(25mmol)及びメタノール(400ml)に加え、混合物を室温で5時間撹拌し、同混合物を酢酸でpH7に調節し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(6−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン、即ち、化合物III(5g,収率80%)を得た。
【0056】
化合物III:MS(ESI):434(M+H),456(M+Na
実施例4:式Iで表される化合物の製造
以下のルート即ち、合成ルートBを用いて、実施例1と同じ化合物Iを製造した。
【0057】
【化23】

1.ジクロロプリン4(3.78g,20mmol)を、DMF(50ml)に溶解し、更にシクロプロピルアミン(1.4ml,20mmol)及びトリエチルアミン(3.08ml,22mmol)を加え、80℃まで加熱し、5時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、シクロプロピル化合物5(3.34g,収率80%)を得た。
【0058】
2.シクロプロピル化合物5(2.99g,14.3mmol)、6−アミノキノリン(5.1g,36.1mmol)のDMF溶液(50ml)、及びトリエチルアミン(2.4ml,17.1mmol)を混合した。得られた混合物を140℃にて還流し、72時間反応させた。TLC分析を行い、反応がほぼ完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物I(3.54g,収率78%)を得た。
【0059】
実施例5−7:式IV、V、VIで表される化合物の製造
【0060】
【化24】

実施例5:式IV表される化合物の製造
1.2−ブロモヒポキサンチン(20g,93mmol)、5−アミノキノリン(13g,90mmol)及びエチレングリコールメチルエーテル(60ml)を、水(200ml)に加え、48時間加熱還流した。その後、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。反応混合物を室温まで冷却し、同混合物を氷水に注ぎ、固体を析出した。その後、濾過し、固体をそれぞれ濃アンモニア水(200ml)及びメチルアルコール(3×50ml)で洗浄し、乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、生成物6(8g,収率32%)を得た。
【0061】
2.キノリン生成物6(12g,43mmol)、オキシ塩化リン(150ml)及びN,N−ジメチルアニリン(15ml)を混合し、30分間還流した。混合物を室温まで冷却し、反応液をゆっくりと氷水(2000ml)に注ぎ、2時間後、酢酸でpH値を3に調節し、濾過して、黄色の固体を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、塩化物7(12.0g,収率94%)を得た。
【0062】
3.塩化物7(10g,34mmol)、シクロプロピルアミン(10ml,145mmol)、トリエチルアミン(28ml,200mmol)及びDMF(100ml)を混合し、100℃にて3時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を留去し、得られた残渣をエチレングリコールジメチルエーテルで溶解し、濾過し、濾液の溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物IV(9g,収率84%)を得た。
【0063】
化合物IV:MS(ESI):318(M+H),340(M+Na
実施例6:式Vで表される化合物の製造
無水アセトニトリル(10ml)、実施例5で得られた化合物IV(4.76g,15mmol)及びN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA,6.3ml,25mmol)を混合し、室温で1時間撹拌した。その後、テトラアセチルリボフラノース(1.27g,4mmol)アセトニトリル(10ml)溶液及びTMSTF(1.10ml,16mmol)を加え、5時間加熱還流した。BSA(1.25ml,5mmol)をさらに加え、24時間撹拌した。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をメチルアルコール(20ml)に溶解した。反応混合物にアンモニアガスを減圧下にて2時間通し、減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物V(4.07g,収率63%)を得た。
【0064】
化合物V:MS(ESI):450(M+H),472(M+Na
実施例7:式VIで表される化合物の製造
2−(5−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミンプリン、即ち、実施例5で得られた化合物V(10g,31.5mmol)、60%のNaH(1.5g,37.8mmol)及び無水アセトニトリル150mlを混合し、窒素ガス雰囲気下にて、30分間撹拌した。3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース1−クロライド(12g,31.5mmol)をバッチ式にて20分間で加えた。添加後、室温下で2時間反応させ、濾過した。濾液の溶媒を留去し、油状物を得た。得られた油状の残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(5−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン(8.0g,収率38%)を得た。
【0065】
上述の生成物と、ナトリウムメトキシド(25mmol)と、メタノール(400ml)と、を室温で5時間撹拌反応させ、酢酸でpH値を7に調節し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(5−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン、即ち、化合物VI(5.75g,収率92%)を得た。
【0066】
化合物VI:MS(ESI):434(M+H),456(M+Na
実施例8:以下のルートを用いて、実施例5と同じ化合物IVを製造する。
【0067】
【化25】

シクロプロピル化合物5(2.99g,14.3mmol)、5−アミノキノリン(5.1g,36.1mmol)、DMF(50ml)及びトリエチルアミン(2.4ml,17.1mmol)を混合し、140℃にて還流し、72時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物IV(2.88g,収率63%)を得た。
【0068】
実施例9−11:式VII、VIII、IXで表される化合物の製造
【0069】
【化26】

実施例9:式VIIで表される化合物の製造
1.2−ブロモヒポキサンチン(20g,93mmol)、8−アミノキノリン(13g,90mmol)及びエチレングリコールメチルエーテル(60ml)を水(200ml)に加え、加熱還流した。48時間後、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。混合物を氷水に注ぎ、固体を析出し、それぞれ濃アンモニア水(200ml)及びメチルアルコール(3×50ml)で洗浄し、乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、生成物8(11.4g,収率46%)を得た。
【0070】
2.キノリン生成物8(12g,43mmol)、オキシ塩化リン(150ml)及びN,N−ジメチルアニリン(15ml)を混合し、30分間還流して、反応液をゆっくりと氷水(2000ml)に注入した。2時間後、酢酸でpH値を3に調節し、濾過し、黄色の固体を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、塩化物9(10.3g,収率81%)を得た。
【0071】
3.塩化物9(10g,34mmol)、シクロプロピルアミン(10ml,145mmol)、トリエチルアミン(28ml,200mmol)及びDMF(100ml)を混合し、100℃にて3時間反応させ、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を留去し、得られた残渣をエチレングリコールジメチルエーテルで溶解し、濾過し、濾液の溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物VII(6g,収率56%)を得た。
【0072】
化合物VII:MS(ESI):318(M+H),340(M+Na
実施例10:式VIIIで表される化合物の製造
無水アセトニトリル(10ml)、化合物VII(4.76g,15mmol)及びN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA,6.3ml,25mmol)を混合し、室温で1時間撹拌した。その後、テトラアセチルリボフラノース(1.27g,4mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液及びTMSTF(1.10ml,16mmol)を混合物に加え、5時間加熱還流した。BSA(1.25ml,5mmol)をさらに加え、24時間撹拌した。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、残渣をメチルアルコール(20ml)に溶解し、反応混合物にアンモニアガスを2時間通した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物VIII(4.2g,収率65%)を得た。
【0073】
化合物VIII:MS(ESI):450(M+H),472(M+Na
実施例11:式IXで表される化合物の製造
2−(8−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミンプリン(10g,31.5mmol)、60%のNaH(1.5g,37.8mmol)及び無水アセトニトリル150mlを混合し、窒素ガス雰囲気下にて、30分間撹拌した。3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−クロライド(12g,31.5mmol)をバッチ式にて20分間で加えた。添加後、混合物を室温下で2時間反応させ、濾過した。濾液の溶媒を留去し、油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(8−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン(7.4g, 収率35%)を得た。
【0074】
上述の生成物、ナトリウムメトキシド(25mmol)及びメタノール(400ml)を室温で5時間撹拌反応させ、酢酸でpH値を7に調節し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(8−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン、即ち、化合物IX(3.2g,収率51%)を得た。
【0075】
化合物IX:MS(ESI):434(M+H),456(M+Na
実施例12:以下のルートを用いて、実施例9と同じの化合物VIIを製造する。
【0076】
【化27】

シクロプロピル化合物5(2.99g,14.3mmol)、8−アミノキノリン(5.1g,36.1mmol)、DMF(50ml)及びトリエチルアミン(2.4ml,17.1mmol)を混合し、140℃にて還流し、72時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物VII(4.10g,収率90%)を得た。
【0077】
実施例13−15:式X、XI、XIIで表される化合物の製造
【0078】
【化28】

実施例13:式Xで表される化合物の製造
1.2−ブロモヒポキサンチン(20g,93mmol)、3−アミノキノリン(13g,90mmol)、エチレングリコールメチルエーテル(60ml)及び水(200ml)を混合し、48時間、加熱還流した。その後、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。反応混合物を氷水に注ぎ、固体を析出した。次に、濾過し、固体をそれぞれ濃アンモニア水(200ml)及びメチルアルコール(3×50ml)で洗浄し、乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、生成物10(15.0g,収率60%)を得た。
【0079】
2.キノリン生成物10(12g,43mmol)、オキシ塩化リン(150ml)及びN,N−ジメチルアニリン(15ml)を加え、混合物を30分間還流した。室温まで冷却させ、反応液をゆっくりと氷水(2000ml)に注入した。2時間後、酢酸でpH値を3に調節し、濾過し、黄色の固体を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、塩化物11(10.9g,収率85%)を得た。
【0080】
3.塩化物11(10g,34mmol)、シクロプロピルアミン(10ml,145mmol)、トリエチルアミン(28ml,200mmol)及びDMF(100ml)を混合し、100℃にて3時間反応した。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を留去し、残渣をエチレングリコールジメチルエーテルで溶解し、濾過し、濾液の溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物X(10.1g,収率94%)を得た。
【0081】
化合物X:MS(ESI):318(M+H),340(M+Na
実施例14:式XIで表される化合物の製造
無水アセトニトリル(10ml)、化合物X(4.76g,15mmol)、及びN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA,6.3ml,25mmol)を混合し、室温で1時間撹拌した後、テトラアセチルリボフラノース(1.27g,4mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液及びTMSTF(1.10ml,16mmol)を加え、5時間加熱還流した。BSA(1.25ml,5mmol)をさらに加え、24時間撹拌して、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、残渣をメチルアルコール(20ml)に溶解した。反応混合物をアンモニアガスに2時間通した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XI(4.97g,収率77%)を得た。
【0082】
化合物XI:MS(ESI):450(M+H),472(M+Na
実施例15:式XIIで表される化合物の製造
2−(3−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミンプリン、即ち、化合物X(10g,31.5mmol)、60%のNaH(1.5g,37.8mmol)及び無水アセトニトリル150mlを混合し、窒素ガス雰囲気下にて、30分間撹拌した。3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース1−クロライド(12g,31.5mmol)をバッチ式にて20分間で加えた。添加後、室温下で2時間反応させ、濾過した。濾液の溶媒を留去し、油状物を得た。油状の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(3−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン(8.8g,収率42%)を得た。
【0083】
上述の生成物、ナトリウムメトキシド(25mmol)及びメタノール(400ml)を室温で5時間撹拌反応させ、酢酸でpH値を7に調節し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(3−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン、即ち、化合物XII(5.06g,収率81%)を得た。
【0084】
化合物XII:MS(ESI):434(M+H),456(M+Na
実施例16:以下のルートを用いて、実施例9と同じ化合物Xを製造する。
【0085】
【化29】

シクロプロピル化合物5(2.99g,14.3mmol)、3−アミノキノリン(51g,36.1mmol)、DMF(50ml)及びトリエチルアミン(2.4ml,17.1mmol)を混合し、140℃にて還流し、72時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物X(3.54g,収率78%)を得た。
【0086】
実施例17−19:式XIII、XIV、XVで表される化合物の製造
【0087】
【化30】

実施例17:式XIIIで表される化合物の製造
1.2−ブロモヒポキサンチン(20g,93mmol)、1−アミノイソキノリン(13g,90mmol)、エチレングリコールメチルエーテル(60ml)及び水(200ml)を混合し、48時間、加熱還流した。その後、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。混合物を氷水に注ぎ、固体を析出した。濾過し、固体をそれぞれ濃アンモニア水(200ml)及びメチルアルコール(3×50ml)で洗浄し、乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、生成物12(14.2g,収率57%)を得た。
【0088】
2.キノリン生成物12(12g,43mmol)、オキシ塩化リン(150ml)及びN,N−ジメチルアニリン(15ml)を加え、30分間還流し、室温まで冷却させた。反応液をゆっくりと氷水(2000ml)に注ぎ、2時間後、酢酸でpH値を3に調節し、濾過して黄色の固体を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、塩化物13(11.5g,収率90%)を得た。
【0089】
3.塩化物13(10g,34mmol)、シクロプロピルアミン(10ml,145mmol)、トリエチルアミン(28ml,200mmol)及びDMF(100ml)を混合し、100℃にて3時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を留去し、残渣をエチレングリコールジメチルエーテルで溶解し、濾過し、濾液の溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XIII(4.2g,収率39%)を得た。
【0090】
化合物XIII:MS(ESI):318(M+H),340(M+Na
実施例18:式XIVで表される化合物の製造
無水アセトニトリル(10ml)、化合物XIII(4.76g,15mmol)及びN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA,6.3ml,25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した後、テトラアセチルリボフラノース(1.27g,4mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液及びTMSTF(1.10ml,16mmol)を加え、5時間加熱還流した。BSA(1.25ml,5mmol)をさらに加え、24時間撹拌した。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、残渣をメチルアルコール(20ml)に溶解し、反応混合物をアンモニアガスに2時間通した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XIV(4.2g,収率64%)を得た。
【0091】
化合物XIV:MS(ESI):450(M+H),472(M+Na
実施例19:式XVで表される化合物の製造
2−(1−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミンプリン、即ち、化合物XIII(10g,31.5mmol)、60%のNaH(1.5g,37.8mmol)及び無水アセトニトリル150mlを混合し、窒素ガス雰囲気下にて、30分間撹拌した。3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース1−クロライド(12g,31.5mmol)をバッチ式にて20分間で加えた。添加後、室温下で2時間反応させ、濾過した。濾液の溶媒を留去し、油状物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(1−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン(7.09g,収率34%)を得た。
【0092】
上述の生成物、ナトリウムメトキシド(25mmol)及びメタノール(400ml)を室温で5時間撹拌反応させ、酢酸でpH値を7に調節し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(1−アミノキノリル)−6−シクロプロピルアミノ−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン、即ち、化合物XV(3.8g,収率60.8%)を得た。
【0093】
化合物XV:MS(ESI):434(M+H),456(M+Na
実施例20:以下のルートを用いて、実施例17と同じの化合物XIIIを製造する。
【0094】
【化31】

シクロプロピル化合物5(2.99g,14.3mmol)、3−アミノイソキノリン(51g,36.1mmol)、DMF(50ml)及びトリエチルアミン(2.4ml,17.1mmol)を混合し、140℃にて還流し、72時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XIII(4.16g,収率92%)を得た。
【0095】
実施例21−22:式XVI、XVII、XVIIIで表される化合物の製造
【0096】
【化32】

実施例21:式XVIで表される化合物の製造
化合物3(10g,34mmol)、シクロプロピルアミン(10.3ml,145mmol)、トリエチルアミン(28ml,200mmol)及びDMF(100ml)を混合し、100℃にて3時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。溶媒を留去し、残渣をエチレングリコールジメチルエーテルで溶解し、濾過し、濾液の溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XVI(6.8g,収率60%)を得た。
【0097】
化合物XVI:MS(ESI):332(M+H),354(M+Na
実施例22:式XVIIIで表される化合物の製造
無水アセトニトリル(10ml)、化合物XVI(4.97g,15mmol)及びN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA,6.3ml,25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した後、テトラアセチルリボフラノース(1.27g,4mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液及びTMSTF(1.10ml,16mmol)を加え、5時間加熱還流した。BSA(1.25ml,5mmol)をさらに加え、24時間撹拌して、TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、残渣をメチルアルコール(20ml)に溶解し、反応混合物をアンモニアガスに2時間通した。減圧下にて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XVII(4.71g,収率71%)を得た。
【0098】
化合物XVII:MS(ESI):464(M+H),486(M+Na
実施例23:式XVIIIで表される化合物の製造
2−(6−アミノキノリル)−6−シクロブチルアミノプリン、即ち、化合物XVI(10g,31.5mmol)、60%のNaH(1.5g,37.8mmol)及び無水アセトニトリル150mlを加え、窒素ガス雰囲気下にて、30分間撹拌した。3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース1−クロライド(12g,31.5mmol)をバッチ式にて20分間で加えた。添加後、室温下で2時間反応させ、濾過した。濾液の溶媒を留去し、油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(6−アミノキノリル)−6−シクロブチルアミノ−9−(3,5−ジパラトルエンスルホニル−2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリンを得た。
【0099】
上述の生成物、ナトリウムメトキシド(25mmol)及びメタノール(400ml)を室温で5時間撹拌反応させ、酢酸でpH値を7に調節し、溶媒を留去した。残渣はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2−(6−アミノキノリル)−6−シクロブチルアミノ−9−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース)プリン、即ち、化合物XVIII(7g,収率51.8%)を得た。
【0100】
化合物XVIII:MS(ESI):448(M+H),470(M+Na
実施例24:以下の合成ルートを用いて、式XVIで表される化合物を製造する。
【0101】
【化33】

1.ジクロロプリン4(3.78g,20mmol)をDMF(50ml)に加えて溶解し、更にシクロブチルアミン(1.4g,20mmol)及びトリエチルアミン(3.08ml,22mmol)を加え、80℃まで加熱し、5時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、シクロブチル化合物14(4.1g,収率92%)を得た。
【0102】
2.シクロブチル物14(3.19g,14.3mmol)、6−アミノキノリン(5.1g,36.1mmol)、DMF(50ml)及びトリエチルアミン(2.4ml,17.1mmol)を加えて、140℃にて還流し、72時間反応させた。TLC分析を行い、反応が完了していることを確認した。減圧下にて溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物XVI(3.82g,収率81%)を得た。
【0103】
実施例25
化合物Iの塩酸塩及び乳酸塩の製造
化合物Iの塩酸塩の製造:
化合物I(10g,31.54mmol)、エチルアルコール(210ml)及びHO(25ml)を加熱溶解して、同混合物に2mol/リットルの塩酸(0.7g,37.85mmol)を滴下し、滴下完了後、再び0.5時間還流反応させた。その後、ゆっくりと室温まで冷却し、5℃以下に冷却して、5時間放置した。濾過及び乾燥し、淡黄色の固体粉末10gを得た。収率は90%であった。
【0104】
融点:270℃より大きい。
化合物Iの乳酸塩の製造:
化合物I(5g,15.77mmol)、95%のエチルアルコール(105ml)、HO(12.5ml)を加熱溶解して、同混合物に10%の乳酸エチルアルコール溶液を滴下し、滴下完了後、再び1時間還流反応させた。その後、ゆっくりと室温まで冷却し、5℃以下に冷却して、5時間放置した。濾過及び乾燥し、黄色の固体粉末5.6gを得た。収率は87%であった。
【0105】
融点:239〜248℃。
実施例26:薬物製剤の製造:
コーティング錠の製造:
【0106】
【表2】

製造工程:処方量の化合物Iと乳糖を正確に秤量し、均一に混合した後、流動性を増大させるために、処方量の微粉シリカゲル助剤を加える。更にその他の補助剤を加えて、充分且つ均一に混合した後、粉末を直接圧縮すると、錠剤が得られる。
【0107】
コーティング液の処方:
適量の80%のエチルアルコールにオパドライ(OpadryI)25gを含むコーティング液。
【0108】
注射剤の製造:
【0109】
【表3】

製造工程:処方量の化合物Iとトウィーン−80を正確に秤量し、均一に混合した後、研磨する。0.3%の薬用エチルアルコール溶液を加え、加熱溶解する。0.22μm濾過膜で無菌濾過して、10ml/瓶で封入し、100℃の流通蒸気にて殺菌すると、得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【化1】

[上記式において、
Wは、H又は任意に置換されたC〜C−直鎖又は分枝鎖のアルキル基若しくは任意置換のC〜C−シクロアルキル基であり、前記置換基はC〜C−直鎖又は分枝鎖のアルキル基若しくはハロゲンであり、
Yは、H又は薬学的に許容されうるグリコシルであって、同グリコシルが以下の式より選択され、
【化2】

Zは、H又は以下の群から選択された一つであり、
【化3】

Qは、以下の群から選択された一つであり、かつ、
【化4】

式中、B、E、G、R、T及びMの各々は、H又はC〜C−直鎖又は分枝鎖のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、ハロゲン、CNあるいはNHである。]
【請求項2】
Wは、H、又は以下の群から選択された一つであることを特徴とする請求項1に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【化5】

【請求項3】
Yは、Hであることを特徴とする請求項1に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【請求項4】
請求項1に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物であって、Wは以下の群から選択された一つであり、かつ式中に記載されているB、E、G、R、T及びMは共にHであることを特徴とする、式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【化6】

【請求項5】
Wは、
【化7】

であり、Qは、以下の群から選択された一つであることを特徴とする請求項1又は3に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【化8】

【請求項6】
Qが、
【化9】

であることを特徴とする請求項5に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【請求項7】
前記化合物が以下に記載の化合物からなる群より選択された一つであることを特徴とする請求項1に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【化10】



【請求項8】
前記化合物が下記の式で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の式(A)で表される化合物又はその塩もしくはその水和物。
【化11】

【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の化合物又はその塩もしくは水和物と、薬用補助材料と、からなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は錠剤、カプセル剤、丸剤、経口用液体製剤、顆粒剤、散剤、注射剤、インプラント又は外用製剤であることを特徴とする請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物又はその塩もしくはその水和物の製造方法であって、該方法は、
(1)式(j)で表される化合物を
【化12】

Q−NHと反応させ、式(b)で表される化合物を生成する工程であって、
【化13】

前記式(j)で表される化合物に、有機溶媒及び0.8〜1.5mol/molのQ−NHを加え、50〜150℃まで加熱し、1〜72時間反応させ、得られた反応液に水を加えて、冷却及び放置する工程と、
(2)式(b)で表される化合物を式(c)で表される化合物に製造する工程であって、
【化14】

式(b)で表される化合物にハロゲン化剤及び有機溶媒を加え、50〜150℃の下で1〜72時間反応させ、冷却し、加水し、酸でpH値を2〜5まで調節し、そして、冷却及び放置する工程と、
(3)式(c)で表される化合物とW−NHとから以下の式で表される化合物を合成する工程であって、
【化15】

式(c)で表される化合物に、0.8〜1.5mol/molのW−NH、酸受容体、有機溶媒を加え、50〜150℃の下で1〜72時間反応させ、有機溶媒を留去させる工程と、を含み、
式中では、XはBrであり、X’はClであり、Wは請求項1に定義されているものと同じである、方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物又はその塩もしくはその水和物の製造方法であって、該方法は、
(1)式(k)で表される化合物を
【化16】

W−NHと反応させ、式(e)で表される化合物を生成する工程であって、
【化17】

式(k)で表される化合物に有機溶媒を加え、0.8〜1.5mol/molのW−NH、酸受容体を加え、30〜120℃まで加熱し、1〜72時間反応させ、かつ溶媒を留去する工程と、
(2)式(e)で表される化合物をQ−NHと反応させ、式(f)で表される化合物を生成する工程であって、
【化18】

式(e)で表される化合物に、0.8〜1.5mol/molのQ−NH、有機溶媒及び酸受容体を加え、70〜170℃の下で、1〜72時間反応させ、溶媒を留去する工程と、を含み、
式中では、X、X’はClであり、Wは請求項1に定義されているものと同じである、方法。
【請求項13】
前記塩が薬学的に許容されうる塩であり、該塩は、無機酸又は有機酸から得られた酸付加塩であり、好ましくは、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、トリフロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩及び安息香酸塩からなる群より選択され、或いは、該塩は更にアルカリと形成する塩であり、無機アルカリ又は有機アルカリから得られた塩を、含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
腫瘍を治療又は予防するための薬物の製造に応用されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の化合物又はその塩もしくは水和物。
【請求項15】
請求項14に記載される請求項1乃至8の何れか1項に記載の化合物又はその塩もしくは水和物の腫瘍を治療又は予防するための薬物の製造への応用において、前記腫瘍が、肺癌、肝臓癌、白血病、骨髄腫、すい臓癌、皮膚癌、悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、軟組織肉腫、尿道癌、前立腺癌、リンパ細胞腫、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、脊椎腫瘍、脳神経膠腫又は下垂体腺腫であることを特徴とする応用。

【公表番号】特表2008−546653(P2008−546653A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516106(P2008−516106)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/CN2006/000113
【国際公開番号】WO2006/133611
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507412287)ズェジャン メディシン カンパニー リミテッド シンチャン ファーマシューティカル ファクトリー (1)
【氏名又は名称原語表記】ZHE JIANG MEDICINE CO.,LTD.XINCHANG PHARMACEUTICAL FACTORY
【Fターム(参考)】