説明

PI3キナーゼ阻害薬としてのキノキサリン誘導体

本発明は、キノキサリン誘導体を用いるPI3キナーゼの活性/機能を阻害する方法である。本発明はまた、キノキサリン誘導体の投与によって自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応または肺損傷から選択される1以上の病態の治療方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホイノシチド3'OHキナーゼファミリー(以下、PI3キナーゼという)、適当には、PI3Kα、PI3Kδ、PI3KβまたはPI3Kγの調節、特に、活性または機能の阻害のためのキノキサリン誘導体の使用に関する。適当には、本発明は、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応または肺損傷から選択される1以上の病態の治療における、キノキサリン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞膜には、様々なシグナル変換経路に関与しうる大量のセカンドメッセンジャーが存在する。リン脂質シグナル伝達経路におけるエフェクター酵素の機能および調節に関し、これらの酵素は、膜リン脂質プールからセカンドメッセンジャーを生じ(クラスI PI3キナーゼ(例えば、PI3Kα))、二重特異性キナーゼ酵素(それらが脂質キナーゼ活性(ホスホイノシチドのリン酸化)および基質としてのタンパク質のリン酸化(分子内調節機構としての自己リン酸化を包含する)が可能であることが示されるプロテインキナーゼ活性の両方を示すことを意味する。リン脂質シグナル伝達のこれらの酵素は、例えば、下記のスキームIに示されるように、種々の細胞外シグナル、例えば、成長因子、マイトジェン、インテグリン(細胞間相互作用)ホルモン、サイトカイン、ウイルスおよび神経伝達物質に応答して、そして、他のシグナル伝達分子(クロストーク、ここに、原シグナルが第2段階で細胞内シグナル事象によってシグナルをPI3Kに伝達するいくつかの平行した経路を活性化することができる)、例えば、小型GTPアーゼ、キナーゼまたはホスファターゼによる細胞内調節によっても活性化される。細胞内調節は、また、細胞性オンコジーンまたは腫瘍抑制因子の異常発現または発現欠如の結果として起こることもできる。イノシトールリン脂質(ホスホイノシチド)細胞内シグナル伝達経路は、シグナル伝達分子(細胞外リガンド、刺激、受容体二量体化、異種受容体によるトランス活性化(例えば、受容体型チロシンキナーゼ))および原形質膜中に一体化されたG−タンパク質結合膜貫通受容体の関与を包含するPI3Kの動員および活性化で開始する。
【0003】
PI3Kは、膜リン脂質PI(4,5)P2をセカンドメッセンジャーとして機能するPI(3,4,5)P3に変換する。PIおよびPI(4)Pは、また、PI3Kの基質でもあり、それぞれリン酸化されてPI3PおよびPI(3,4)P2に変換され得る。さらに、これらのホスホイノシチドは、5'−特異的および3'−特異的ホスファターゼによって他のホスホイノシチドに変換され得、かくして、PI3K酵素的活性は、直接または間接的に、細胞内シグナル伝達経路においてセカンドメッセンジャーとして機能する2つの3'−ホスホイノシチドサブタイプの生成をもたらす(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3および非特許文献4)。触媒サブユニット、対応する調節サブユニットによるその調節、発現パターンおよびシグナル伝達特異的機能によって類別された複数のPI3Kアイソフォーム(p110α、β、δおよびγ)がこの酵素反応を行う(非特許文献5および上記非特許文献3)。
【0004】
密接に関連のあるアイソフォームp110αおよびβは遍在的に発現するが、δおよびγは造血細胞系、平滑筋細胞、筋細胞および内皮細胞においてより特異的に発現する(非特許文献1)。それらの発現は、また、細胞型、組織型および刺激ならびに疾患状況に依存して誘導可能な方法で調節されるかもしれない。タンパク質発現の誘導可能性としては、タンパク質の合成、ならびに調節サブユニットとの結合によって一部調節されるタンパク質安定化が挙げられる。
【0005】
現在までに、8種類の哺乳動物PI3Kが同定されており、配列ホモロジー、構造、結合パートナー、活性化の様式および基質選択性に基づいて3つの主要クラス(I、IIおよびIII)に分けられている。イン・ビトロで、クラスI PI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール−4−ホスフェート(PI4P)およびホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート(PI(4,5)P2)をリン酸化して、それぞれホスファチジルイノシトール−3−ホスフェート(PI3P)、ホスファチジルイノシトール−3,4−ビスホスフェート(PI(3,4)P2)およびホスファチジルイノシトール−3,4,5−トリスホスフェート(PI(3,4,5)P3)を生産することができる。クラスII PI3KはPIおよびホスファチジルイノシトール−4−ホスフェートをリン酸化する。クラスIII PI3KはPIをリン酸化することができるだけである(上記非特許文献1;上記非特許文献5および上記非特許文献2)。
【0006】
【化1】

【0007】
上記のスキームIに示されるように、ホスホイノシチジド3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環の3番目の炭素のヒドロキシルをリン酸化する。PtdInsを生じるホスホイノシチジドの、3,4,5−トリスホスフェート(PtdIns(3,4,5)P3)、PtdIns(3,4)P2およびPtdIns(3)Pへのリン酸化は、細胞増殖、細胞分化、細胞成長、細胞サイズ、細胞生存、アポトーシス、接着、細胞運動性、細胞移動、走化性、浸潤、細胞骨格再構成、細胞形状変化、小胞輸送および代謝経路に必須のものを包含する種々のシグナル変換経路のためのセカンドメッセンジャーを産生する(上記非特許文献3および非特許文献6)。G−タンパク質結合受容体は、GβγおよびRasのような小型GTPアーゼによるホスホイノシチド3'OH−キナーゼ活性化を媒介し、結果として、PI3Kシグナル伝達は、細胞極性の確立および調整ならびに細胞骨格の動的組織化(これらは、一緒になって、細胞を動かす駆動力を提供する)において中心的役割を果たす。走化性、すなわち、化学誘引物質(ケモカインともいう)の濃度勾配に対する細胞の定方向移動は、炎症/自己免疫性、神経変性、血管形成、浸潤/転移および創傷治癒のような多くの重要な疾患に関与する(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9および非特許文献10)。
【0008】
遺伝子的アプローチおよび薬理学的ツールを用いる進歩は、化学誘引物質によって活性化されたG−タンパク質結合受容体に応答して走化性を媒介するシグナル伝達および分子経路についての洞察を提供している。これらのリン酸化したシグナル伝達産物を生じる原因となるPI3−キナーゼは、もともと、ウイルス性癌タンパク質、およびホスファチジルイノシトール(PI)をリン酸化する成長因子受容体チロシンキナーゼおよびそのイノシトール環の3'−ヒドロキシルにおけるリン酸化誘導体と関連した活性として同定された(非特許文献11)。しかしながら、さらに最近の生化学的研究により、クラスI PI3 キナーゼ(例えば、クラスIBアイソフォームPI3Kγ)が二重特異的キナーゼ酵素(それらが脂質キナーゼ活性ならびに基質としての他のタンパク質のリン酸化および分子内調節機構としての自己リン酸化が可能であることが示されるプロテインキナーゼ活性の両方を示すことを意味する)であることが明らかにされた。
【0009】
したがって、PI3−キナーゼ活性化は、細胞成長、分化およびアポトーシスを包含する様々な細胞応答に関与すると考えられる(非特許文献12;非特許文献13)。PI3−キナーゼは、白血球活性化のいくつかの態様に関与するようである。p85結合PI3−キナーゼ活性は、抗原に応答してT細胞が活性化するために重要な共刺激分子であるCD28の細胞質ドメインと物理的に結合することが示された(非特許文献14;非特許文献15)。CD28によるT細胞の活性化は抗原による活性化の閾値を下げ、増殖応答の規模および持続期間を増加させる。これらの効果は、重要なT細胞成長因子であるインターロイキン−2(IL2)を包含する多くの遺伝子の転写の増加と関連する(非特許文献16)。もはやPI3−キナーゼと相互作用できないようなCD28の変異の結果としてIL2産生が開始できなくなり、そのことはT細胞活性化におけるPI3−キナーゼの決定的な役割を示唆する。PI3Kγは、JNK活性のGベータ−ガンマ−依存性調節のメディエーターとして同定されとおり、Gベータ−ガンマは、ヘテロ三量体Gタンパク質のサブユニットである(非特許文献17)。PI3Kが必須の役割を果たす細胞プロセスとしては、アポトーシスの抑制、アクチン骨格の再組織化、心筋細胞成長、インスリンによるグリコーゲンシンターゼ刺激、TNFα媒介性好中球プライミングおよびスーパーオキシド発生、ならびに内皮細胞への白血球移動および接着が挙げられる。
【0010】
最近では(非特許文献18)、PI3Kγが種々のG(i)結合受容体およびその中心を介して炎症性シグナルをマスト細胞機能(白血球に関しては刺激)へ伝達すること、そして、免疫学が、例えば、サイトカイン、ケモカイン、アデノシン、抗体、インテグリン、凝集因子、成長因子、ウイルスまたはホルモンを包含することが記載されている(非特許文献19;上記非特許文献18、および非特許文献20)。
【0011】
酵素ファミリーの個々のメンバーに対する特異的阻害剤は、各酵素の機能を解読するための非常に貴重なツールを提供する。2つの化合物、LY294002およびワートマニン(wortmannin)(下記参照)は、PI3−キナーゼ阻害剤として幅広く使用されている。これらの化合物は、クラスI PI3−キナーゼの4つのメンバーを区別しないので、非特異的PI3K阻害剤である。例えば、種々のクラスI PI3−キナーゼの各々に対するワートマニンのIC50値は、1〜10nMの範囲である。同様に、これらのPI3−キナーゼの各々に対するLY294002のIC50値は約15〜20μMであり(非特許文献21)、また、CK2プロテインキナーゼに対しては5〜10μMであり、ホスホリパーゼに対してはある程度の阻害活性を有する。ワートマニンは真菌代謝産物であり、PI3Kの触媒ドメインと共有結合することによってPI3K活性を不可逆的に阻害する。ワートマニンによるPI3K活性の阻害は細胞外因子に対するその後の細胞応答を排除する。例えば、好中球は、PI3Kを刺激してPtdIns(3,4,5)P3を合成することによってケモカインfMet−Leu−Phe(fMLP)に応答する。該合成は、侵入微生物の好中球破壊に関与する呼吸バーストの活性化と相関する。ワートマニンでの好中球の処理はfMLP誘発性呼吸バースト反応を防止する(非特許文献22)。実際、ワートマニンを用いたこれらの実験、および他の実験的証拠は、造血系の細胞、特に、好中球、単球、および他の型の白血球におけるPI3K活性が、急性および慢性炎症に関連する非記憶免疫応答の多くに関与することを示す。
【0012】
【化2】

【0013】
ワートマニンを用いる研究に基づいて、PI3−キナーゼ機能がG−タンパク質結合受容体を介する白血球シグナル伝達のいくつかの態様にも必要とされるという証拠がある(上記非特許文献22)。さらに、ワートマニンおよびLY294002は、好中球移動をよびスーパーオキシド放出を遮断することが示された。非特許文献23にはシクロオキシゲナーゼ阻害性ベンゾフラン誘導体が開示されている。
【0014】
現在、オンコジーンおよび腫瘍抑制因子の調節解除が、例えば細胞成長および増殖の増加または細胞生存の増加によって、悪性腫瘍の形成に寄与することはよく理解されている。また、現在、PI3Kファミリーによって媒介されるシグナル伝達経路が増殖および生存を包含する多くの細胞プロセスにおいて中心的役割を有し、これらの経路の調節解除が広範囲のヒトの癌および他の疾患の病因因子であることが知られている(非特許文献24、非特許文献25)。
【0015】
クラスI PI3Kはp110触媒サブユニットおよび調節サブユニットからなるヘテロ二量体であり、該ファミリーは、さらに、調節パートナーおよび調節メカニズムに基づいて、クラスIa酵素およびクラスIb酵素に分けられる。クラスIa酵素は、5つの別個の調節サブユニット(p85α、p55α、p50α、p85βおよびp55γ)と二量体化する3つの別個の触媒サブユニット(p110α、p110βおよびp110δ)からなり、全ての触媒サブユニットは、全ての調節サブユニットと相互作用して種々のヘテロ二量体を形成することができる。クラスIa PI3Kは、一般に、活性化された受容体またはアダプタータンパク質(例えばIRS−1)の特異的ホスホチロシン残基と調節サブユニットSH2ドメインとの相互作用を介して、受容体チロシンキナーゼの成長因子による刺激に応答して活性化される。小型GTPアーゼ(一例として、ras)は、また、受容体チロシンキナーゼ活性化と併せてPI3Kの活性化に関与する。p110αおよびp110βはどちらも全ての細胞型において構成的に発現されるが、一方、p110δ発現はさらに白血球集団およびいくつかの上皮細胞に限定される。対照的に、単一のクラスIb酵素は、p101調節サブユニットと相互作用するp110γ触媒サブユニットからなる。さらにまた、クラスIb酵素はGタンパク質結合受容体(GPCR)系に応答して活性化され、その発現は白血球に限定されるようである。
【0016】
現在、クラスIa PI3K酵素が様々なヒトの癌における腫瘍形成に直接的または間接的に寄与することを示す相当な証拠がある(非特許文献26)。例えば、p110αサブユニットは、卵巣の腫瘍(非特許文献27)および子宮頚部の腫瘍(非特許文献28)のようないくつかの腫瘍において増幅する。さらに最近では、p110α(PIK3CA遺伝子)内の活性化変異は、結腸の腫瘍ならびに乳房および肺の腫瘍のような種々の他の腫瘍に関連していた(非特許文献29)。p85αにおける腫瘍関連変異は、また、卵巣および結腸の癌のような癌において同定された(非特許文献30)。直接的な影響に加えて、クラスIa PI3Kの活性化は、例えば、受容体チロシンキナーゼ、GPCR系またはインテグリンのリガンド依存性またはリガンド非依存性活性化によって、シグナル伝達経路の上流で起こる腫瘍形成事象に寄与すると考えられる(非特許文献31)。かかる上流シグナル伝達経路の例としては、PI3K媒介経路の活性化を導く種々の腫瘍における受容体チロシンキナーゼErb2の過剰発現(非特許文献32)およびオンコジーンRasの過剰発現(非特許文献33)が挙げられる。さらに、クラスIa PI3Kは、種々の下流シグナル伝達事象によって引き起こされる腫瘍形成に間接的に寄与しうる。例えば、PI(3,4,5)P3のPI(4,5)P2への逆変換を触媒するPTEN腫瘍抑制因子ホスファターゼの機能の喪失は、PI(3,4,5)P3のPI3K媒介産生の調節解除を介して、非常に幅広い腫瘍に関連する(非特許文献34)。さらにまた、他のPI3K媒介シグナル伝達事象の効果の増大は、例えばAKTの活性化によって、種々の癌に寄与すると考えられる(非特許文献35)。
【0017】
腫瘍細胞における増殖および生存シグナル伝達の媒介における役割に加えて、クラスIa PI3K酵素が腫瘍関連間質細胞におけるその機能を介して腫瘍形成にも寄与するという十分な証拠もある。例えば、PI3Kシグナル伝達は、VEGFのような血管新生促進因子に応答した内皮細胞における血管新生事象の媒介において重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献36)。クラスI PI3K酵素は、また、運動性および移動に関与するので(非特許文献37)、PI3K阻害剤は、腫瘍細胞浸潤および転移の阻害を介して治療効果があると予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Trends Biochem. Sci. 22(7) p.267-72 (1997) by Vanhaesebroeck et al.
【非特許文献2】Chem. Rev. 101(8) p.2365-80 (2001) by Leslie et al (2001)
【非特許文献3】Annu. Rev. Cell.Dev. Biol. 17p, 615-75 (2001) by Katso et al.
【非特許文献4】Cell. Mol. Life Sci. 59(5) p.761-79 (2002) by Toker et al.
【非特許文献5】Exp. Cell. Res. 25 (1) p. 239-54 (1999) by Vanhaesebroeck
【非特許文献6】Mol. Med. Today 6(9) p. 347-57 (2000) by Stein
【非特許文献7】Immunol. Today 21(6) p. 260-4 (2000) by Wyman et al.
【非特許文献8】Science 287(5455) p. 1049-53 (2000) by Hirsch et al.
【非特許文献9】FASEB J. 15(11) p. 2019-21 (2001) by Hirsch et al.
【非特許文献10】Nat. Immunol. 2(2) p. 108-15 (2001) by Gerard et al.
【非特許文献11】Panayotou et al., Trends Cell Biol. 2 p. 358-60 (1992)
【非特許文献12】Parker et al., Current Biology, 5 p. 577-99 (1995)
【非特許文献13】Yao et al., Science, 267 p. 2003-05 (1995)
【非特許文献14】Pages et al., Nature, 369 p. 327-29 (1994)
【非特許文献15】Rudd, Immunity 4 p. 527-34 (1996)
【非特許文献16】Fraser et al., Science 251 p. 313-16 (1991)
【非特許文献17】Lopez-Ilasaca et al., J. Biol. Chem. 273(5) p. 2505-8 (1998)
【非特許文献18】Laffargue et al., Immunity 16(3) p. 441-51 (2002)
【非特許文献19】J. Cell. Sci. 114(Pt 16) p. 2903-10 (2001) by Lawlor et al.
【非特許文献20】Curr. Opinion Cell Biol. 14(2) p. 203-13 (2002) by Stephens et al.
【非特許文献21】Fruman et al., Ann. Rev. Biochem., 67, p. 481-507 (1998)
【非特許文献22】Thelen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, p. 4960-64 (1994)
【非特許文献23】John M. Janusz et al., in J. Med. Chem. 1998; Vol. 41, No. 18
【非特許文献24】Katso et al., Annual Rev. Cell Dev. Biol., 2001, 17: 615-617
【非特許文献25】Foster et al., J. Cell Science, 2003, 116: 3037-3040
【非特許文献26】Vivanco and Sawyers, Nature Reviews Cancer, 2002, 2, 489-501
【非特許文献27】Shayesteh, et al., Nature Genetics, 1999, 21: 99-102
【非特許文献28】Ma et al., Oncogene, 2000, 19: 2739-2744
【非特許文献29】Samuels, et al., Science, 2004, 304, 554
【非特許文献30】Philp et al., Cancer Research, 2001, 61, 7426-7429
【非特許文献31】Vara et al., Cancer Treatment Reviews, 2004, 30, 193-204
【非特許文献32】Harari et al., Oncogene, 2000, 19, 6102-6114
【非特許文献33】Kauffmann-Zeh et al., Nature, 1997, 385, 544-548
【非特許文献34】Simpson and Parsons, Exp. Cell Res., 2001, 264, 29-41
【非特許文献35】Nicholson and Andeson, Cellular Signaling, 2002, 14, 381-395
【非特許文献36】abid et al., Arterioscler, Thromb. Vasc. Biol., 2004, 24, 294-300
【非特許文献37】Sawyer, Expert Opinion investing. Drugs, 2004, 13, 1-19
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、式(I):
【化3】

[式中:
R1は、式(II):
【化4】

で示される1〜2個の二重結合を含有する環系であり;
各Xは、独立して、C、O、NまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜3であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する付加的な5または6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で所望により置換されていてもよい;
ただし、R1がチオフェンである場合には、R4はピペラジンではない]
で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0020】
本発明はまた、癌の治療方法であって、有効量の式(I)の化合物をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法に関する。
【0021】
本発明はまた、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応または肺損傷から選択される1以上の病態の治療方法であって、有効量の式(I)で示される化合物をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法に関する。
【0022】
本発明には、本発明のPI3キナーゼ阻害化合物をさらなる活性成分と共投与する方法が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、式(I)で示される新規化合物に関する。
【0024】
本発明はまた、式(I)(A):
【化5】

[式中:
R1は、式(III)、(IV)、(V)および(VI):
【化6】

からなる群より選択される式で表され;
Xは、O、NまたはSであり;
Yは、OまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜2であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する付加的な5または6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で所望により置換されていてもよい;
ただし、R1がチオフェンである場合には、R4はピペラジンではない]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0025】
本発明はまた、式(I)(B):
【化7】

[式中:
R1は、式(III)、(IV)、(V)および(VI):
【化8】

からなる群より選択される式で表され;
Xは、O、NまたはSであり;
Yは、OまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜3である;
ただし、R1がチオフェンである場合には、R4はピペラジンではない]
で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0026】
本発明はまた、式(I)(A)または(I)(B)(式中:R1、R2およびR5は上記と同義であり;nは0であり;R4は水素またはアミノである)で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0027】
本発明はまた、式(I)(A)または(I)(B)(式中:XはNまたはOであり;R1、R2およびR5は上記とは別のものであり;nは0であり;R4は水素またはアミノである)で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0028】
本発明はまた、式(I)(A)または(I)(B)(式中:R2は、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群より選択され;Xは、NまたはOであり;R5は、ホルミル、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群より選択され;mは0〜3であり;R1は上記とは別のものであり;nは0であり;R4は水素またはアミノである)で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0029】
本発明はまた、式(I)(A)または(I)(B)(式中:R2は、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群より選択され;R1は、ピラゾール、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、イソオキサゾールおよびイソチアゾールからなる群より選択される環であり、各々独立して、ホルミル、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シアノ、ヒドロキシルおよびアルコキシからなる群より選択される、1〜2個の置換基で所望により置換されていてもよく;nは0であり;R4は水素またはアミノである)で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0030】
本発明はまた、式(I)(A)または(I)(B)(式中:R2は、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群より選択され;R1は、ホルミル、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シアノ、ヒドロキシルおよびアルコキシからなる群より選択される、1〜2個の基で所望により置換されていてもよいピラゾールであり;nは0であり;R4は水素またはアミノである)で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0031】
本発明はまた、式(I)(A)または(I)(B)(式中:R2は、C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群より選択され;R1は、ホルミル、ハロゲン、スルホニル、アミノ置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヒドロキシルおよびアルコキシからなる群より選択される、1〜2個の基で所望により置換されていてもよいピラゾールであり;nは0であり;R4は水素である)で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0032】
本発明はまた、式(I)(C):
【化9】

[式中:
R1は、式(II):
【化10】

で示される芳香族環系であり;
Xは、C、O、NまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜3であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する5または6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で所望により置換されていてもよい;
ただし、式(II)に示される5員環は0〜2個の窒素を含有し;
R1がチオフェンである場合には、R4はピペラジンではない]
で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0033】
本発明はまた、式(I)(D):
【化11】

[式中:
R1は、式(II):
【化12】

で示される芳香族環系であり;
Xは、C、O、NまたはSであり;
各R2、R3およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
R4は水素またはアミノであり;
nは0〜2であり;
mは0〜3であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する付加的な5または6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で所望により置換されていてもよい;
ただし、R1がチオフェンである場合には、R4はピペラジンではない]
で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0034】
本発明はまた、式(I)(E):
【化13】

[式中:
R1は、式(II):
【化14】

で示される芳香族環系であり;
Xは、C、O、NまたはSであり;
各R2、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
R3は、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキルからなる群より選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜3であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する付加的な5または6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で所望により置換されていてもよい;
ただし、R1がチオフェンである場合には、R4はピペラジンではない]
で示される新規化合物またはその医薬上許容される塩に関する。
【0035】
本発明はまた、以下の化合物:
5−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−2−フランカルバルデヒド;
{5−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−2−フラニル}メタノール;
{5−[3−(4−ピリジニル)−6−キノキサリニル]−2−フラニル}メタノール;
7−(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−5−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
2−(4−モルホリニル)−7−(3−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン;
7−{3−シクロヘキシル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−シクロヘキシル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
1−[7−(3−シクロヘキシル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−キノキサリニル]−N,N−ジメチル−4−ピペリジンアミン;
7−(3−シクロヘキシル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−メチル−1−ピペラジニル)キノキサリン;
1−[7−(5−シクロヘキシル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−キノキサリニル]−N,N−ジメチル−3−ピロリジンアミン;
7−(5−シクロヘキシル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−{4−[3−(メチルオキシ)フェニル]−1−ピペラジニル}キノキサリン;
7−(5−シクロヘキシル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−{4−[2−(メチルオキシ)フェニル]−1−ピペラジニル}キノキサリン;
2−(4−モルホリニル)−7−ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イルキノキサリン;
7−{3−メチル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−{3−シクロヘキシル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−[3−(1,1−ジメチルエチル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
2−(4−モルホリニル)−7−(1,3,5−トリメチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン;
3−{1−メチル−4−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−3−イル}アニリン;
4−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール−5−アミン;
7−{3−(4−クロロフェニル)−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−[3−(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−{3−[4−(メチルオキシ)フェニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−シクロプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
2−(4−モルホリニル)−7−[3−(3−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]キノキサリン;
7−[3−(4−フルオロフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−[3−(4−メチルフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(3−シクロペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−[1−メチル−3−(4−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
3−{4−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−3−イル}安息香酸;
1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−アミン;
N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}ベンゼンスルホンアミド;
N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}ベンズアミド;
7−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
7−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン;
4−{1−メチル−4−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−3−イル}アニリン;
7−[1−メチル−5−(1−ピペラジニルカルボニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン;
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)キノキサリン;
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)キノキサリン;
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(1−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)キノキサリン;
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−[1−(フェニルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−イル]キノキサリン;および
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリンに関する。
【0036】
本発明はまた、癌の治療方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩;ならびに、少なくとも1種の抗腫瘍薬、例えば、微小管阻害薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害薬、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害薬、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害薬、非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、ならびに細胞周期シグナル阻害薬からなる群より選択されるものをそれを必要とする対象に共投与することを含む、方法に関する。
【0037】
本明細書に用いられる、「有効量」なる用語は、例えば研究者または臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発する薬物または医薬品の量を意味する。さらにまた、「治療上有効量」なる用語は、このような量を投与されなかった対応する対象体と比べて、疾患、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防または寛解の改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす量を意味する。該用語はまた、その範囲内に正常な生理学的機能を増強するのに有効な量を含む。
【0038】
式(I)で示される化合物は、本発明の医薬組成物に含まれる。
【0039】
定義
本明細書に用いられる、「置換アミノ」なる語は、−NR30R40(式中:各R30およびR40は、独立して、水素、C1−6アルキル、アシル、スルホニル、C−Cシクロアルキルを含む基から選択され、少なくとも1つのR30およびR40は水素ではない)を意味する。
【0040】
本明細書に用いられる、「アシル」なる語は、特に明記しない限り、−C(O)(アルキル)、−C(O)(シクロアルキル)、または−C(O)(ヘテロシクロアルキル)を意味する。
【0041】
本明細書に用いられる、「スルホニル」なる語は、−SOR35(式中:R35は、C1−6アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールである)を意味する。
【0042】
本明細書に用いられる、「アリール」なる語は、特に明記しない限り、芳香族炭化水素環系を意味する。該環系は、単環式または縮合多環式(例えば、二環式、三環式など)であってもよい。種々の実施態様において、単環式アリール環は、C−C10、またはC−C、またはC−Cであり、ここで、これらの炭素数は、環系を形成する炭素原子の数を意味する。C環系、すなわち、フェニル環は、適当なアリール基である。種々の実施態様において、多環式環は、二環式アリール基であり、ここで、適当な二環式アリール基はC−C12またはC−C10である。10個の炭素原子を有するナフチル環は、適当な多環式アリール基である。
【0043】
本明細書に用いられる、「ヘテロアリール」なる語は、特に明記しない限り、炭素(複数)および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する芳香族環系を意味する。ヘテロアリールは、単環式または多環式であってもよい。単環式ヘテロアリール基は、環中に1〜4個のヘテロ原子を有しうるが、多環式ヘテロアリールは、1〜10個のヘテロ原子を含有していてもよい。多環式ヘテロアリール環は、縮合、スピロまたは架橋環結合を含有していてもよく、例えば、二環式ヘテロアリールは、多環式ヘテロアリールである。二環式ヘテロアリール環は、8〜12個のメンバー原子を含有しうる。単環式ヘテロアリール環は、5〜8個のメンバー原子(炭素およびヘテロ原子)を含有しうる。ヘテロアリール基の例として、限定されるものではないが、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、フラン、イミダゾール、インドール、イソチアゾール、オキサゾール、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、チアゾール、およびチオフェンが挙げられる。
【0044】
本明細書に用いられる、「単環式ヘテロアリール」なる語は、特に明記しない限り、1〜5個の炭素原子および1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式ヘテロアリール環を意味する。
【0045】
本明細書に用いられる、「アルキルカルボキシ」なる語は、特に明記しない限り、−(CHCOOR80(式中:R80は水素またはC−Cアルキルであり、nは0〜6である)を意味する。
【0046】
本明細書に用いられる、「アルコキシ」なる語は、−OCH、−OCHCHおよび−OC(CHを含む−O(アルキル)(式中:アルキルは本明細書に記載のとおりである)を意味する。
【0047】
本明細書に用いられる、「アルキルチオ」なる語は、−SCH、−SCHCHを含む−S(アルキル)(式中:アルキルは本明細書に記載のとおりである)を意味する。
【0048】
本明細書に用いられる、「シクロアルキル」なる語は、特に明記しない限り、非芳香族、不飽和または飽和の、環式または多環式C−C12を意味する。
【0049】
本明細書に用いられる、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル置換基の例として、シクロヘキシル、アミノシクロヘキシル、シクロブチル、アミノシクロブチル、4−ヒドロキシ−シクロヘキシル、2−エチルシクロヘキシル、プロピル−4−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシシクロヘキシル、4−カルボキシシクロヘキシル、シクロプロピル、アミノシクロペンチル、およびシクロペンチルが挙げられる。
【0050】
本明細書に用いられる、「ヘテロシクロアルキル」なる語は、少なくとも1個の炭素および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、非芳香族、不飽和または飽和の、単環式または多環式、複素環を意味する。単環式複素環の例として、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、およびモルホリンが挙げられる。多環式複素環の例として、キヌクリジンが挙げられる。
【0051】
本明細書に用いられる、「置換された」なる語は、特に明記しない限り、対象化学部分が、水素、ハロゲン、C−Cアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、C−Cシクロアルキル、置換アミノ、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アシルオキシ、アシル、アシルアミノ、アリールアミノ、ニトロ、オキソ、−CO50、−SO70、−NR50SO70、NR50C(O)R75およびCONR5560(式中:R50およびR55は、各々独立して、水素、アルキル、またはC−Cシクロアルキルから選択され;R55およびR60は、ヘテロシクロアルキル環を所望により形成してもよく;nは0〜6であり;R75は、C−Cアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アリールアミノ、C−Cヘテロシクロアルキル、置換C−Cヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;各R60およびR70は、独立して、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アリールアミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、−(CHCOOH、所望により5員環と縮合していてもよいまたはC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソおよび−(CHCOOHからなる群より選択される1〜5個の基で置換されていてもよいアリールならびに所望により5員環と縮合していてもよいまたはC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、ハロゲン、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、および−(CHCOOHからなる群より選択される1〜5個の基で置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される)からなる群より選択される、1〜5個、好適には、1〜3個の置換基を有することを意味する。
【0052】
35、R60、R70、R75、「アリールアミノ」、および「アリールオキシ」の定義中に言及される場合、「置換された」なる語は、水素、C−Cアルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、−(CHCOOH、アミノ、置換アミノ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシル、アリールアミノ、およびニトロ(nは0〜6である)からなる群より選択される1〜5個、好適には、1〜3個の置換基を有することを意味する。
【0053】
本明細書に用いられる、「アシルオキシ」なる語は、−OC(O)アルキル(式中:アルキルは本明細書に記載のとおりである)を意味する。本明細書に用いられるアシルオキシ置換基の例として、−OC(O)CH、−OC(O)CH(CHおよび−OC(O)(CHCHが挙げられる。
【0054】
本明細書に用いられる、「アシルアミノ」なる語は、−N(H)C(O)アルキル、−N(H)C(O)(シクロアルキル)、N(H)C(O)(アリール)(式中:アルキルは本明細書に記載のとおりであり、アリールはハロゲン、C1−3アルキル、アルコキシ、アミノおよびアシルからなる群より選択される1〜3個の置換基で所望により置換されていてもよい)を意味する。本明細書に用いられるN−アシルアミノ置換基の例として、−N(H)C(O)CH、−N(H)C(O)CH(CHおよび−N(H)C(O)(CHCHが挙げられる。
【0055】
本明細書に用いられる、「アリールオキシ」なる語は、−O(アリール)、−O(置換アリール)、−O(ヘテロアリール)または−O(置換ヘテロアリール)を意味する。
【0056】
本明細書に用いられる、「アリールアミノ」なる語は、−NR80(アリール)、−NR80(置換アリール)、−NR80(ヘテロアリール)または−NR80(置換ヘテロアリール)(式中:R80は、H、C1−6アルキルまたはC−Cシクロアルキルである)を意味する。
【0057】
本明細書に用いられる、「ヘテロ原子」なる語は、酸素、窒素または硫黄を意味する。
【0058】
本明細書に用いられる、「ハロゲン」なる語は、臭素、ヨウ素、塩素またはフッ素から選択される置換基を意味する。
【0059】
本明細書に用いられる、「−(CH2)n」、「−(CH2)m」なる用語および同類の用語によって定義されるアルキル鎖を含む「アルキル」なる用語およびその派生語ならびに全ての炭素鎖は、直鎖または分枝鎖状の飽和または不飽和炭化水素鎖を意味し、特に明記しない限り、該炭素鎖は、炭素原子1〜12個を含有する。
【0060】
本明細書に用いられる、「置換アルキル」なる語は、ハロゲン、トリフルオロメチル、アルキルカルボキシ、アミノ、置換アミノ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシル、アシルアミノ、カルバメート、尿素、スルホニル、C3−7シクロヘテロアルキル、C3−7シクロアルキルおよびニトロからなる群より選択される1〜6個の置換基で置換されたアルキル基を意味する。
【0061】
本明細書に用いられる、アルキルおよび置換アルキル基の例として、−CH、−CH−CH、−CH−CH−CH、−CH(CH、−CH−CH−C(CH、−CH−CF、−C≡C−C(CH、−C≡C−CH−OH,、シクロプロピルメチル、−CH−C(CH−CH−NH、−C≡C−C、−C≡C−C(CH−OH、−CH−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH−OH、ピペリジニルメチル、メトキシフェニルエチル、−C(CH、−(CH−CH、−CH−CH(CH、−CH(CH)−CH−CH、−CH=CH、および−C≡C−CHが挙げられる。
【0062】
本明細書に用いられる、「治療」なる用語およびその派生語は、予防的治療および治療的治療を意味する。予防的治療とは、ヒトを暴露されているかまたは暴露されうる疾患から保護するための対策の導入を意味する。
【0063】
本明細書に用いられる、「共投与」なる用語およびその派生語は、本明細書に記載のPI3キナーゼ阻害化合物、およびさらなる活性成分の同時投与または別々の連続投与を意味する。本明細書に用いられる、さらなる活性成分なる用語は、治療を必要とする患者に投与した場合に有利な特性を示すことが知られているかまたは該特性を示す化合物または治療剤を含む。好適には、投与が同時どはない場合には、該化合物は、お互いに近接した時間で投与される。さらにまた、化合物が同一剤形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、1つの化合物が局所投与され、別の化合物が経口投与されてもよい。
【0064】
本明細書に用いられる、「化合物」なる用語は、該化合物の全ての異性体を包含する。かかる異性体の例としては、エナンチオマー、互変異性体、回転異性体が挙げられる。
【0065】
「点線」の結合が2つの原子間に引かれている式では、かかる結合は、単結合である場合も二重結合である場合もあり得ることを意味する。かかる結合を含有する環系は芳香族である場合も非芳香族である場合もあり得る。
【0066】
本明細書中に記載のある種の化合物は、1以上のキラル原子を含有していてもよく、あるいは、2個のエナンチオマーとして存在することができ、または2以上のジアステレオ異性体として存在することができる。したがって、本発明の化合物は、エナンチオマー/ジアステレオ異性体の混合物、および精製したエナンチオマー/ジアステレオ異性体、またはエナンチオマー的/ジアステレオ異性体的に豊富な混合物を包含する。また、本発明の範囲内には、上記の式IまたはIIによって示される化合物の個々の異性体、およびそのいずれかの全体的または部分的に平衡化した混合物が包含される。本発明はまた、上記の式で示される化合物の個々の異性体を、1以上のキラル中心が反転するその異性体との混合物として包含する。さらに、可能な互変異性体の例は、ヒドロキシ置換基の代わりにオキソ置換基である。また、上記のように、全ての互変異性体および互変異性体混合物は、式IまたはIIで示される化合物の範囲内に包含されると理解される。
【0067】
式(I)で示される化合物は、本発明の医薬組成物中に含まれる。−COOHまたは−OH基が存在する場合、医薬上許容されるエステルを用いることができ、例えば、−COOHの場合にはメチル、エチル、ピバロイルオキシメチルおよび同類のもの、−OHの場合にはアセテートマレエートおよび同類のもの、そして、徐放性製剤またはプロドラッグ製剤として用いる場合には溶解特性および加水分解特性を変更するための当該技術分野で知られているこれらのエステルを用いることができる。
【0068】
このたび、本発明の化合物がホスファトイノシチド(phosphatoinositides)3−キナーゼ(PI3K)の阻害薬であることが見出された。ホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)酵素が本発明の化合物によって阻害される場合、PI3Kは、その酵素的、生物学的または薬理学的効果を発揮することができない。したがって、本発明の化合物は、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療に有用である。
【0069】
式(I)の化合物は、特に自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療のための医薬として有用である。本発明の1の実施態様によれば、式(I)の化合物は、1種または複数のホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、好適には、ホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kγ)、ホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kα)、ホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kβ)、またはホスファトイノシチド3−キナーゼγ(PI3Kδ)の阻害薬である。
【0070】
式(I)に記載の化合物は、ホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、好適には、ホスファトイノシチド3−キナーゼ(PI3Kα)の活性の調節、特に阻害に適している。そのため、本発明の化合物はまた、PI3Kによって媒介される障害の治療に有用である。該治療は、ホスファトイノシチド3−キナーゼの調節−特に、阻害またはダウンレギュレーション−に関与する。
【0071】
好適には、本発明の化合物は、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症、または髄膜炎もしくは脳炎のような脳感染/炎症、アルツハイマー病、ハンチントン病、CNS外傷、脳卒中または虚血性疾患、アテローム性動脈硬化症、心肥大、心筋細胞機能不全、血圧上昇もしくは血管収縮のような心血管疾患から選択される障害の治療のための薬剤の製造のために使用される。
【0072】
好適には、式(I)で示される化合物は、自己免疫疾患または炎症性疾患、例えば、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、肺炎症、血栓症または髄膜炎もしくは脳炎のような脳感染/炎症の治療に有用である。
【0073】
好適には、式(I)で示される化合物は、多発性硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン病、CNS外傷、脳卒中または虚血性疾患を包含する神経変性疾患の治療に有用である。
【0074】
好適には、式(I)で示される化合物は、アテローム性動脈硬化症、心肥大、心筋細胞機能不全、血圧上昇または血管収縮のような心血管疾患の治療に有用である。
【0075】
好適には、式(I)で示される化合物は、慢性閉塞性肺疾患、アナフィラキシーショック線維症、乾癬、アレルギー性疾患、喘息、脳卒中、虚血性疾患、虚血再灌流、血小板凝集/活性化、骨格筋萎縮/肥大、癌組織における白血球動員、血管新生、浸潤転移、特に黒色腫、カポジ肉腫、急性および慢性細菌およびウイルス感染症、敗血症、移植拒絶反応、移植片拒絶反応、糸球体硬化症、糸球体腎炎、進行性腎線維症、肺の内皮および上皮傷害、ならびに肺気道炎症の治療に有用である。
【0076】
本発明の医薬上活性な化合物は、PI3キナーゼ阻害薬、特にPI3Kαを選択的にまたはPI3Kδ、PI3KβまたはPI3Kγのうち1つ以上と共に阻害する化合物として活性があるので、それらは、癌の治療において治療的有用性を示す。
【0077】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、脳腫瘍(神経膠腫)、神経膠芽腫、白血病、バンナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロ病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、骨芽細胞腫、結腸癌、頭頚部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫および甲状腺癌から選択される、治療方法に関する。
【0078】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、プラズマ細胞腫、免疫芽球性大細胞型白血病、マントル細胞白血病、多発性骨髄腫、巨核芽球性白血病、多発性骨髄腫、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病および赤白血病から選択される、治療方法に関する。
【0079】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫から選択される、治療方法に関する。
【0080】
好適には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌の治療方法であって、癌が、神経芽細胞腫、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌、外陰癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、腎臓癌、中皮腫、食道癌、唾液腺癌、肝細胞癌、胃癌、上咽頭癌、口腔癌、口の癌、GIST(胃腸間質性腫瘍)および精巣癌から選択される、治療方法に関する。
【0081】
式(I)で示される化合物が癌の治療のために投与される場合、本明細書で用いる場合、「共投与」およびその派生語は、本明細書に記載のようなPI3キナーゼ阻害化合物、ならびに化学療法および放射線療法を包含する癌の治療に有用であることが知られているさらなる活性成分の同時投与または別々の連続投与を意味する。本明細書で用いる場合、さらなる活性成分なる用語は、癌の治療を必要とする患者に投与した場合に有利な特性を示すことが知られているかまたは該特性を示す化合物または治療剤を包含する。好ましくは、投与が同時ではない場合、該化合物はお互いに近接した時間で投与される。さらにまた、化合物が同一剤形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、1つの化合物が局所投与され、別の化合物が経口投与されてもよい。
【0082】
典型的には、本発明の癌の治療において、治療される感受性腫瘍に対する活性を有する抗腫瘍剤を共投与することができる。かかる薬剤の例は、Cancer Principles and Practice f Oncology by V.T. Devita and S. Hellman (editors), 6th edition (February 15, 2001), Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見ることができる。当業者は、薬剤および関係する癌の個々の特徴に基づいて薬剤のどの組合せが有用であるか識別することができる。本発明に有用な典型的な抗腫瘍薬としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドのような微小管阻害薬;白金配位錯体;ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼンのようなアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンのような抗生物質;エピポドフィロトキシンのようなトポイソメラーゼII阻害薬;プリンおよびピリミジンアナログならびに葉酸代謝拮抗化合物のような代謝拮抗薬;カンプトテシンのようなトポイソメラーゼI阻害薬;ホルモンおよびホルモンアナログ;シグナル伝達経路阻害薬;非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤;免疫療法薬;アポトーシス促進剤;ならびに細胞周期シグナル阻害薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本発明のPI3キナーゼ阻害化合物と組み合わせて使用するためのまたは共投与するためのさらなる活性成分の例は化学療法剤である。
【0084】
微小管阻害薬または有糸分裂阻害薬は、細胞周期のM期または有糸分裂期の間、腫瘍細胞の微小管に対して活性な期特異的薬剤である。微小管阻害薬の例としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
天然原料由来のジテルペノイドは細胞周期のG2/M期で効果をもたらす期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、このタンパク質と結合することによって微小管のβ−チューブリンサブユニットを安定化させると思われる。タンパク質の分解は、有糸分裂の停止および細胞死の続行を伴って阻害されると考えられる。ジテルペノイドの例としては、パクリタキセルおよびそのアナログ、ドセタキセルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
パクリタキセル、5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4,10−ジ酢酸エステル2−安息香酸エステルの(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの13−エステルは、タイヘイヨウイチイTaxus brevifoliaから単離された天然ジテルペン生成物であり、注射液TAXOL(登録商標)として商業的に入手可能である。それは、タキサンファミリーのテルペンの一員である。それは、まず、1971年に、化学的およびX線結晶学的方法によってその構造を特徴付けたWaniらによって単離された(J. Am. Chem, Soc., 93:2325. 1971)。その活性についての一のメカニズムは、パクリタキセルのチューブリン結合能に関連しており、それにより、癌細胞増殖を阻害する。Schiff et al., Proc. Natl, Acad, Sci. USA, 77:1561-1565(1980);Schiff et al., Nature, 277:665-667(1979);Kumar, J. Biol, Chem, 256: 10435-10441(1981)。いくつかのパクリタキセル誘導体の合成および抗癌活性の概説については以下の文献を参照:D. G. I. Kingston et al., Studies in Organic Chemistry vol. 26, entitled “New trends in Natural Products Chemistry 1986”, Attaur-Rahman, P.W. Le Quesne, Eds. (Elsevier, Amsterdam, 1986) pp 219-235。
【0087】
パクリタキセルは、米国では難治性卵巣癌の治療(Markman et al., Yale Journal of Biology and Medicine, 64:583, 1991;McGuire et al., Ann. lntem, Med., 111:273, 1989)および乳癌の治療(Holmes et al., J. Nat. Cancer Inst., 83:1797,1991.)において臨床用に承認されている。それは、皮膚における新生物(Einzig et. al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:46)および頭頚部癌(Forastire et. al., Sem. Oncol., 20:56, 1990)の治療のための有望な候補である。該化合物はまた、多発性嚢胞腎疾患(Woo et. al., Nature, 368:750. 1994)、肺癌およびマラリアの治療の可能性を示している。パクリタキセルによる患者の治療は、閾値濃度(50nM)以上を投与する期間と関連して(Kearns, C.M. et. al., Seminars in Oncology, 3(6) p.16-23, 1995)、骨髄抑制をもたらす(複数の細胞系譜、Ignoff, R.J. et. al, Cancer Chemotherapy Pocket Guide, 1998)。
【0088】
ドセタキセル、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステルの5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタクス−11−エン−9−オン4−酢酸エステル2−安息香酸エステルとの13−エステルの三水和物は、注射液としてTAXOTERE(登録商標)として商業的に入手可能である。ドセタキセルは、乳癌の治療に適応される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉から抽出した天然の前駆物質、10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製された任意量のパクリタキセルの半合成誘導体である。ドセタキセルの用量規制毒性は好中球減少である。
【0089】
ビンカアルカロイドは、ニチニチソウ由来の期特異的抗腫瘍剤である。ビンカアルカロイドは、チューブリンと特異的に結合することによって細胞周期のM期(有糸分裂)にて作用する。その結果、結合したチューブリン分子は、微小管へと重合することはできない。有糸分裂は、細胞死の続行を伴って分裂中期に停止されると考えられる。ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチンは、注射液としてVELBAN(登録商標)として入手可能である。それは、様々な固形腫瘍の第二次治療として可能な適応を有するが、主に、精巣癌、ならびにホジキン病、リンパ球性および組織球性リンパ腫を含む様々なリンパ腫の治療に適応とされる。骨髄抑制がビンブラスチンの用量規制副作用である。
【0091】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチン、22−オキソ−、硫酸エステル、は、注射液としてONCOVIN(登録商標)として商業的に入手可能である。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適応とされ、また、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫の治療計画における使用を見出した。脱毛症および神経学的作用がビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、それほどではないにせよ骨髄抑制および胃腸粘膜炎作用が生じる。
【0092】
酒石酸ビノレルビンの注射液(NAVELBINE(登録商標))として商業的に入手可能なビノレルビン、3',4'−ジデヒドロ−4'−デオキシ−C'−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R*,R*)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸エステル(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単剤としてまたはシスプラチンのような他の化学療法剤と組み合わせて、様々な固形腫瘍、特に、非小細胞肺癌、進行性乳癌およびホルモン難治性前立腺癌の治療に適応とされる。骨髄抑制がビノレルビンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0093】
白金配位錯体は、DNAと相互作用する期非特異的抗癌剤である。該白金錯体は、腫瘍細胞に侵入し、アクア化を受け、DNAとストランド内およびストランド間架橋を形成して、腫瘍に対して有害な生物学的影響を及ぼす。白金配位錯体の例としては、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
シスプラチン、シスジアンミンジクロロ白金は、注射液としてPLATINOL(登録商標)として商業的に入手可能である。シスプラチンは、主に、転移性の精巣癌および卵巣癌ならびに進行性膀胱癌の治療に適応とされる。シスプラチンの主要な用量規制副作用は、水分補給および利尿によって制御することができる腎毒性、ならびに聴器毒性である。
【0095】
カルボプラチン、白金、ジアンミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2−)−O,O']は、注射液としてPARAPLATIN(登録商標)として商業的に入手可能である。カルボプラチンは、主に、進行性卵巣癌の第一次および第二次治療に適応とされる。骨髄抑制がカルボプラチンの用量規制毒性である。
【0096】
アルキル化剤は、非周期性特異的抗癌剤であり、かつ、強い求電子試薬である。典型的には、アルキル化剤は、アルキル化によりホスフェート、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カルボキシルおよびイミダゾール基のようなDNA分子の求核部分を介してDNAと共有結合を形成する。かかるアルキル化は核酸機能を破壊して細胞死へと導く。アルキル化剤の例としては、シクロホスファミド、メルファランおよびクロラムブシルのようなナイトロジェンマスタード;ブスルファンのようなアルキルスルフォナート;カルムスチンのようなニトロソ尿素;ならびにダカルバジンのようなトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
シクロホスファミド、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド一水和物は、注射液または錠剤としてCYTOXAN(登録商標)として商業的に入手可能である。シクロホスファミドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫および白血病の治療に適応とされる。脱毛症、悪心、嘔吐および白血球減少がシクロホスファミドの最も一般的な用量規制副作用である。
【0098】
メルファラン、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、注射液または錠剤としてALKERAN(登録商標)として商業的に入手可能である。メルファランは、多発性骨髄腫および卵巣の切除不可能な上皮癌の対症療法に適応とされる。骨髄抑制がメルファランの最も一般的な用量規制副作用である。
【0099】
クロラムブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、LEUKERAN(登録商標)錠剤として商業的に入手可能である。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病、ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫およびホジキン病のような悪性リンパ腫の対症療法に適応とされる。骨髄抑制がクロラムブシルの最も一般的な用量規制副作用である。
【0100】
ブスルファン、ジメタンスルホン酸1,4−ブタンジオールは、MYLERAN(登録商標)錠剤として商業的に入手可能である。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の対症療法に適応とされる。骨髄抑制がブスルファンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0101】
カルムスチン、1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素は、BiCNU(登録商標)として凍結乾燥剤の単剤バイアルとして商業的に入手可能である。カルムスチンは、単剤としてまたは脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫のためには他の薬剤と組み合わせて、対症療法に適応とされる。遅発性骨髄抑制がカルムスチンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0102】
ダカルバジン、5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、DTIC−Dome(登録商標)として単剤バイアルとして商業的に入手可能である。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の治療に適応とされ、ホジキン病の第二次治療のためには他の薬剤と組み合わせて適応とされる。悪心、嘔吐および食欲不振がダカルバジンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0103】
抗生物抗腫瘍剤は、DNAと結合するかまたはインターカレートする期非特異的薬剤である。典型的には、かかる作用により安定なDNA複合体またはストランド切断が生じ、通常の核酸の機能を破壊して細胞死へと導く。抗生物質抗腫瘍剤の例としては、ダクチノマイシンのようなアクチノマイシン、ダウノルビシンおよびドキソルビシンのようなアントラサイクリン;ならびにブレオマイシンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
アクチノマイシンDとしても知られているダクチノマイシンは、注射液形のCOSMEGEN(登録商標)として商業的に入手可能である。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に適応とされる。悪心、嘔吐および食欲不振がダクチノマイシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0105】
ダウノルビシン、(8S−シス−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン・塩酸塩は、リポソーム注射液形としてDAUNOXOME(登録商標)として、または注射液としてCERUBIDINE(登録商標)として商業的に入手可能である。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病および進行性HIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入に適応とされる。骨髄抑制がダウノルビシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0106】
ドキソルビシン、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン塩酸塩は、注射液形としてRUBEX(登録商標)またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として商業的に入手可能である。ドキソルビシンは、主に、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に適応とされるが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の治療において有用な成分でもある。骨髄抑制がドキソルビシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0107】
ブレオマイシン、ストレプトマイセス・ヴェルチシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞障害性グリコペプチド系抗生物質の混合物は、BLENOXANE(登録商標)として商業的に入手可能である。ブレオマイシンは、単剤としてまたは他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮癌、リンパ腫および精巣癌の対症療法として適応とされる。肺毒性および皮膚毒性がブレオマイシンの最も一般的な用量規制副作用である。
【0108】
トポイソメラーゼII阻害薬としては、エピポドフィロトキシンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク由来の期特異的抗腫瘍剤である。エピポドフィロトキシンは、典型的には、トポイソメラーゼIIおよびDNAとの三元複合体を形成してDNAストランド切断を引き起こすことによって、細胞周期のS期およびG2期において細胞に影響を及ぼす。このストランド切断は蓄積し、次いで細胞死が起こる。エピポドフィロトキシンの例としては、エトポシドおよびテニポシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
エトポシド、4'−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液またはカプセル剤としてVePESID(登録商標)として商業的に入手可能であり、一般にVP−16として知られている。エトポシドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、精巣癌および非小細胞肺癌の治療に適応とされる。骨髄抑制がエトポシドの最も一般的な副作用である。白血球減少症の発生は、血小板減少症よりも重篤である傾向にある。
【0111】
テニポシド、4'−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液としてVUMON(登録商標)として商業的に入手可能であり、一般にVM−26として知られている。テニポシドは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、小児における急性白血病の治療に適応とされる。骨髄抑制がテニポシドの最も一般的な用量規制副作用である。テニポシドは、白血球減少症および血小板減少症の両方を誘発する可能性がある。
【0112】
代謝拮抗性抗腫瘍剤は、DNA合成を阻害することによってまたはプリンもしくはピリミジン塩基合成を阻害してDNA合成を制限することによって細胞周期のS期(DNA合成)で作用する期特異的抗腫瘍剤である。その結果、S期は進行せず、次いで細胞死が起こる。代謝拮抗性抗腫瘍剤の例としては、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニンおよびゲムシタビンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして商業的に入手可能である。5−フルオロウラシルの投与は、チミジル酸合成の阻害をもたらし、RNAおよびDNAの両方に取り込まれる。結果は、典型的には、細胞死である。5−フルオロウラシルは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌および膵臓癌の治療に適応とされる。骨髄抑制および粘膜炎が5−フルオロウラシルの用量規制副作用である。他のフルオロピリミジンアナログとしては、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0114】
シタラビン、4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、CYTOSAR−U(登録商標)として商業的に入手可能であり、一般的にAra−Cとして知られている。シタラビンは成長しているDNA鎖へシタラビンを末端取り込みすることによりDNA鎖伸長を阻害することによってS期で細胞期特異性を示すと考えられる。シタラビンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応とされる。他のシチジンアナログとしては、5−アザシチジンおよび2',2'−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンは、白血球減少症、血小板減少症および粘膜炎を誘発する。
【0115】
メルカプトプリン、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、PURINETHOL(登録商標)として商業的に入手可能である。メルカプトプリンは、現時点で詳細不明のメカニズムによりDNA合成を阻害することによってS期にて細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応とされる。骨髄抑制および胃腸粘膜炎が高用量のメルカプトプリンの副作用と思われる。有用なメルカプトプリンアナログはアザチオプリンである。
【0116】
チオグアニン、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、TABLOID(登録商標)として商業的に入手可能である。チオグアニンは、現時点で詳細不明のメカニズムによりDNA合成を阻害することによってS期にて細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の治療に適応とされる。白血球減少症、血小板減少症および貧血症を含む骨髄抑制がチオグアニン投与の最も一般的な用量規制副作用である。しかしながら、胃腸管副作用が生じ、用量規制となる可能性がある。他のプリンアナログとしては、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビンおよびクラドリビンが挙げられる。
【0117】
ゲムシタビン、2'−デオキシ−2',2'−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)は、GEMZAR(登録商標)として商業的に入手可能である。ゲムシタビンは、S期にて、そしてG1/S境界を介して細胞の進行を遮断することによって、細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の治療に適応とされ、単独で局所進行性膵臓癌の治療に適応とされる。白血球減少症、血小板減少症および貧血症を含む骨髄抑制がゲムシタビン投与の最も一般的な用量規制副作用である。
【0118】
メトトレキサート、N−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして商業的に入手可能である。メトトレキサートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸エステルの合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を介してDNA合成、修復および/または複製を阻害することによってS期にて細胞期特異性を示す。メトトレキサートは、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫ならびに乳癌、頭頚部癌、卵巣癌および膀胱癌の治療に適応とされる。骨髄抑制(白血球減少症、血小板減少症および貧血症)ならびに粘膜炎がメトトレキサート投与の副作用と考えられる。
【0119】
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシンは、トポイソメラーゼI阻害薬として入手可能であるか、または開発中である。カンプトテシン細胞障害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連していると考えられる。カンプトテシンの例としては、イリノテカン、トポテカン、ならびに下記7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの様々な光学形態が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
イリノテカンHCl、(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩は、注射液CAMPTOSAR(登録商標)として商業的に入手可能である。
【0121】
イリノテカンは、その活性代謝産物SN−38と一緒に、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合しているカンプトテシンの誘導体である。トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカンまたはSN−38三元複合体と複製酵素との相互作用により引き起こされる回復不能な二本鎖切断の結果として細胞障害性が生じると考えられる。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適応とされる。イリノテカンHClの用量規制副作用は、好中球減少を含む骨髄抑制、および下痢を含むGI作用である。
【0122】
トポテカンHCl、(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩は、注射液HYCAMTIN(登録商標)として商業的に入手可能である。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合しているカンプトテシンの誘導体であり、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIにより引き起こされる一本鎖切断の再連結を防止する。トポテカンは、転移性の卵巣癌および小細胞肺癌の第二次治療に適応とされる。トポテカンHClの用量規制副作用は骨髄抑制、主に好中球減少である。
【0123】
現在開発中の、化学名「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R,S)−カンプトテシン」(ラセミ混合物)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R)−カンプトテシン」(Rエナンチオマー)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン」(Sエナンチオマー)によって知られている、下記式Aで示されるカンプトテシン誘導体(ラセミ混合物(R,S)形ならびにRエナンチオマーおよびSエナンチオマーを含む)もまた対象である:
【0124】
【化15】

かかる化合物および関連化合物(製造方法を含む)は、米国特許第6,063,923号;第5,342,947号;第5,559,235号;第5,491,237号、および1997年11月24日に出願された出願係属中の米国特許出願第08/977,217号に記載されている。
【0125】
ホルモンおよびホルモンアナログは、ホルモンと癌の増殖または増殖欠如との間に関係がある癌の治療に有用な化合物である。癌治療に有用なホルモンおよびホルモンアナログの例としては、小児における悪性リンパ腫および急性白血病の治療に有用な、プレドニゾンおよびプレドニゾロンのようなアドレノコルチコステロイド;副腎皮質癌およびエストロゲン受容体を含有するホルモン依存性乳癌の治療に有用な、アミノグルテチミド、およびアナストロゾール、レトラゾール、ボラゾールおよびエキセメスタンのような他のアロマターゼ阻害物質;ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の治療に有用な、酢酸メゲストロールのようなプロゲストリン;前立腺癌および良性前立腺肥大症の治療に有用な、エストロゲン、アンドロゲン、およびフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンのような抗アンドロゲン、およびフィナステリドおよびデュタステリドのような5α−レダクターゼ;ホルモン依存性乳癌および他の感受性癌の治療に有用な、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンのような抗エストロゲン、ならびに米国特許第5,681,835号、第5,877,219号および第6,207,716号に記載されているもののような選択的エストロゲン受容体調節因子(SERMS);ならびに前立腺癌の治療のための、黄体ホルモン(LH)または濾胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびそのアナログ、例えば、酢酸ゴセレリンおよびロイプロリドのようなLHRHアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
シグナル伝達経路阻害物質は、細胞内変化を引き起こす化学プロセスを遮断または阻害する阻害物質である。本明細書で用いられる場合、この変化は、細胞増殖または細胞分化である。本発明において有用なシグナル伝達阻害物質としては、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断薬、セリン/スレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達およびRasオンコジーンの阻害物質が挙げられる。
【0127】
いくつかのプロテインチロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与している様々なタンパク質における特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。かかるプロテインチロシンキナーゼは受容体型または非受容体型キナーゼとして大きく分類することができる。
【0128】
受容体型チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体型チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与しており、一般に、増殖因子受容体と称される。例えば過剰発現または変異による、これらのキナーゼの多くの不適当な活性化または非制御の活性化、すなわち、異常なキナーゼ増殖因子受容体活性が非制御の細胞増殖を引き起こすことが示されている。したがって、かかるキナーゼの異常な活性は悪性の組織増殖と関連している。その結果、かかるキナーゼの阻害物質は癌治療方法をもたらすことができる。増殖因子受容体としては、例えば、上皮増殖因子受容体(EGFr)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、イムノグロブリン様および上皮増殖因子ホモロジードメイン(TIE−2)を有するチロシンキナーゼ、インスリン増殖因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkBおよびTrkC)、エフリン(eph)受容体ならびにRETプロトオンコジーンが挙げられる。増殖受容体のいくつかの阻害物質は開発中であり、リガンドアンタゴニスト、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害物質およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。増殖因子受容体、および増殖因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents(2000) 10(6):803-818;Shawver et al DDT Vol 2, No. 2 February 1997;およびLofts, F. J. et al, “Growth factor receptors as targets”, New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, ed. Workman, Paul and Kerr, David, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0129】
増殖因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは非受容体型チロシンキナーゼと称される。抗癌剤の標的または標的候補である本発明にて有用な非受容体型チロシンキナーゼとしては、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、BrutonsチロシンキナーゼおよびBcr−Ablが挙げられる。かかる非受容体型キナーゼ、および非受容体型チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8(5): 465-80;およびBolen, J.B., Brugge, J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15: 371-404に記載されている。
【0130】
SH2/SH3ドメイン遮断薬は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas−GAPを包含する様々な酵素またはアダプタータンパク質におけるSH2またはSH3ドメイン結合を破壊する薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods. 34(3)125-32に記載されている。
【0131】
セリン/トレオニンキナーゼの阻害物質としては、Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(MEK)および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断薬を含むMAPキナーゼカスケード遮断薬;ならびにPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)、IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバー、およびTGFβ受容体キナーゼの遮断薬を含むプロテインキナーゼCファミリーメンバー遮断薬が挙げられる。かかるセリン/トレオニンキナーゼおよびその阻害物質は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., (1999), Journal of Biochemistry. 126(5) 799-803;Brodt, P, Samani, A., and Navab, R. (2000), Biochemical Pharmacology, 60. 1101-1107;Massague, J., Weis-Garcia, F. (1996) Cancer Surveys. 27:41-64;Philip, P.A., and Harris, A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3-27;Lackey, K. et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000, 223-226;米国特許第6,268,391号;およびMartinez-Iacaci, L., et al, Int. J. Cancer (2000), 88(1), 44-52に記載されている。
【0132】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PKおよびKuの遮断薬を包含するホスファチジルイノシトール−3キナーゼファミリーメンバーの阻害物質もまた本発明において有用である。かかるキナーゼは、Abraham, R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8(3) 412-8;Canman, C.E., Lim, D.S. (1998), Oncogene 17(25) 3301-3308;Jackson, S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29(7):935-8;およびZhong, H. et al, Cancer res, (2000) 60(6), 1541-1545に記載されている。
【0133】
ホスホリパーゼC遮断薬およびミオイノシトールアナログなどのミオイノシトールシグナル伝達阻害物質もまた本発明に有用である。かかるシグナル阻害物質は、Powis, G., and Kozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy ed., Paul Workman and David Kerr, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0134】
別のグループのシグナル伝達経路阻害物質は、Rasオンコジーンの阻害物質である。かかる阻害物質としては、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル−ゲラニルトランスフェラーゼおよびCAAXプロテアーゼの阻害物質、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が挙げられる。かかる阻害物質は、野生型変異体rasを含有する細胞においてras活性化を遮断することにより抗増殖剤として作用することが示された。Rasオンコジーン阻害は、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, S.I. Matar, P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4)292-8;Ashby, M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9(2)99-102;およびBioChim. Biophys. Acta, (19899) 1423(3):19-30に記載されている。
【0135】
上記のように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストはまた、シグナル伝達阻害物質としての機能を果たすこともできる。このグループのシグナル伝達経路阻害物質は、受容体型チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗生物質の使用を含む。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al, Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000), 26(4), 269-286を参照);Herceptin(登録商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kniases, Breast cancer Res., 2000, 2(3), 176-183を参照);および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al, Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice, Cancer Res. (2000) 60, 5117-5124を参照)。
【0136】
非受容体型キナーゼ血管新生阻害物質はまた、本発明における用途を見出しうる。血管新生関連VEGFRおよびTIE2の阻害物質はシグナル伝達阻害物質に関して上記にて記載されている(両者の受容体は受容体型チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害物質が血管新生、主に、VEGF発現を阻害することが示されているので、血管新生は一般にerbB2/EGFRシグナル伝達に関連している。そのため、erbB2/EGFR阻害薬と血管新生阻害薬との組み合わせは意味がある。したがって、非受容体型チロシンキナーゼ阻害物質を本発明のerbB2/EGFR阻害薬と組み合わせて用いてもよい。例えば、VEGFR(受容体型チロシンキナーゼ)を認識しないがリガンドと結合する抗VEGF抗生物質;血管新生を阻害するインテグリン(αvβ3)の小分子阻害物質;エンドスタチンおよびアンジオスタチン(非RTK)もまた本明細書に記載したerbファミリー阻害薬と組み合わせて有用である。(Bruns CJ et al (2000), Cancer Res., 60: 2926-2935;Schreiber AB, Winkler ME, and Derynck R.(1986), Science, 232: 1250-1253;Yen L et al.(2000), Oncogene 19: 3460-3469を参照)。
【0137】
免疫療法計画で用いられる薬剤もまた式(I)で示される化合物と組み合わせて有用であり得る。erbB2またはEGFRに対する免疫応答を生じさせるための多くの免疫学的ストラテジーがある。これらのストラテジーは一般に腫瘍ワクチン投与の分野におけるものである。免疫学的アプローチの効力は、小分子阻害物質を用いてerbB2/EGFRシグナル伝達経路の複合阻害により非常に増強することができる。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチの考察は、Reilly RT et al. (2000), Cancer Res. 60: 3569-3576;およびChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998), Cancer Res. 58: 1965-1971に見られる。
【0138】
アポトーシス促進計画で用いられる薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた本発明の組合せにおいて用いることができる。bcl−2ファミリーのタンパク質のメンバーはアポトーシスを遮断する。したがって、bcl−2のアップレギュレーションは化学療法剤耐性と関連している。上皮増殖因子(EGF)がbcl−2ファミリー(すなわち、mcl−1)の抗アポトーシスメンバーを刺激することを示している研究がある。したがって、腫瘍におけるbcl−2の発現をダウンレギュレートするように設計されたストラテジーは、臨床的有用性を立証しており、現在、第II/III相試験中であり、すなわち、Genta社のG3139 bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチドである。bcl−2に対してアンチセンスオリゴヌクレオチドストラテジーを使用するかかるアポトーシス促進性ストラテジーは、Water JS et al. (2000), J. Clin. Oncol. 18: 1812-1823;およびKitada S et al.(1994), Antisense Res. Dev. 4: 71-79に記載されている。
【0139】
細胞周期シグナル伝達阻害物質は細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と称されるプロテインキナーゼのファミリー、およびサイクリンと称されるタンパク質のファミリーとそれらとの相互作用は真核生物細胞周期の進行を制御する。細胞周期の正常な進行には様々なサイクリン/CDK複合体の協調的な活性化および不活性化が必要である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害物質は開発中である。例えば、CDK2、CDK4およびCDK6を包含するサイクリン依存性キナーゼならびにそれらの阻害物質の例は、例えば、Rosania et al, Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-230に記載されている。
【0140】
一の実施態様では、本発明の癌の治療方法は、式Iで示される化合物またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグおよび少なくとも1種の抗腫瘍剤(例えば、微小管阻害薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害物質、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害物質、非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、ならびに細胞周期シグナル阻害物質からなる群から選択されるもの)の共投与を含む。
【0141】
本発明の医薬上活性な化合物は、選択的にあるいは1つまたは複数のPI3Kγ、PI3KβもしくはPI3Kδとともに、PI3キナーゼ阻害薬、特にPI3Kαを調節/阻害する化合物として活性があり、それらは、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、癌、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応または肺損傷から選択される病態の治療において治療的有用性を示す。
【0142】
式(I)で示される化合物が自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、癌、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応または肺損傷から選択される病態の治療のために投与される場合、本明細書に用いられる、「共投与」なる用語またはその派生語は、本明細書に記載のPI3キナーゼ阻害化合物、および自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、癌、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および/または肺損傷の治療に有用であることが知られているさらなる活性成分の同時投与または別々の連続投与を意味する。
【0143】
生物学的アッセイ
本発明の化合物は、以下のアッセイにしたがって試験され、PI3キナーゼ、特にPI3Kαの阻害物質として見出された。例示化合物を試験し、PI3Kαに対して活性であることが見出された。IC50は、約1nM〜10μMの範囲であった。大部分の化合物は、500nM未満であった;より活性な化合物は、100nM未満であった、最も活性な化合物は、10nM未満であることが見出されうる。
【0144】
実施例2の化合物は、一般的には、本明細書に記載のアッセイにしたがって試験され、少なくとも1つの実験において、PI3Kαに対して100nMに等しいIC50値を示した。
【0145】
実施例5の化合物は、一般的には、本明細書に記載のアッセイにしたがって試験され、少なくとも1つの実験において、PI3Kαに対して32nMに等しいIC50値を示した。
【0146】
実施例9の化合物は、一般的には、本明細書に記載のアッセイにしたがって試験され、少なくとも1つの実験において、PI3Kαに対して25nMに等しいIC50値を示した。
【0147】
実施例42の化合物は、一般的には、本明細書に記載のアッセイにしたがって試験され、少なくとも1つの実験において、PI3Kαに対して100nMに等しいIC50値を示した。
【0148】
PI3Kα TR−FRETアッセイ
アッセイの原理
PI3−キナーゼアッセイは開発され、Upstate(Millipore)によって生産されたキットから最適化されている。簡単に言えば、該キットは、ユーロピウム標識化抗GSTモノクローナル抗体、GSTタグ化プレクストリン相同(PH)ドメイン、およびストレプトアジピン−アロフィコシアニン(APC)と合した場合にHTRF(均質時間分解蛍光エネルギー転移)複合体を形成する、ビオチン化PIP3を含有する。PI3−キナーゼ活性によって生成された非標識化PIP3は、エネルギー転移の消失をもたらす複合体からビオチン−PIP3を転移させるようにして、シグナルが減少する。
Millipore、PI3−キナーゼ(ヒト)(商標)HTRFアッセイ、カタログ# 33−017に関連する技術文書
【0149】
アッセイプロトコール
化合物を、ポリプロピレン120μL母プレートのカラム1からカラム12までおよびカラム13からカラム24まで連続希釈し(100%DMSO中3倍)、DMSOのみを含有するカラム6および18はそのままにしておき、11種類の濃度の各試験化合物を得る。トリチュレーションするとすぐに、0.1μLをアッセイプレート(Greiner 784075)に移す。該アッセイプレートは、3つの対照:DMSO含有カラム6、ならびに20μMワートマニンおよび40μM PIP3を交互に行うカラム18を含有する。ワートマニン対照を、20μLの1mMワートマニンを含有するGreinerポリプロピレン120μL母プレートからウェル18A、C、E、G、I、K、M、O(0.1μLの100%DMSO中1mMワートマニン)中ハチドリまたは類似の装置を介してアッセイプレートに分配する。PIP3対照を、マトリックスピペットで手作業にてプレートに、すなわち、1μLの1X反応バッファー中200μM PIP3をウェル18B、D、F、H、J、L、N、Pに分配する。
【0150】
PI3−キナーゼアッセイは開発され、Upstate(Millipore)によって生産されたキットから最適化されている。該アッセイキット(cat:33−017)は7種類の試薬を含有する:1)4x反応バッファー、2)PIP2(1mM)、3)ストップA、4)ストップB、5)検出ミックスA、6)検出ミックスB、7)検出ミックスC。さらに、以下の品目を得たかまたは購入した、PI3キナーゼ(社内で調製)、4xPI3K検出バッファー(Millipore)、ジチオスレイトール(Sigma,D−5545)、アデノシン−5’−三リン酸(ATP,Sigma,A−6419)、PIP3(1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホイノシトール−3,4,5−三リン酸]テトラアンモニウム塩(Avanti polar lipids,850186P)、DMSO(Sigma,472301)、ワートマニン(Sigma,W−1628)。
【0151】
ストックを脱イオン水で1:4に希釈することによって1xPI3キナーゼ反応バッファーを調製し、新しく調製したDTTを使用する日に最終濃度5mMで加える。Multidrop Combiを用いて2.5μLの2x酵素溶液、1x反応バッファー中PI3Kαをすべてのウェルに加えることによって、酵素付加および化合物前培養を開始する。プレートを室温にて15分間培養する。基質添加および開始反応を、Multidrop Combiを用いて2.5μLの2x基質溶液、PIP2および1x反応バッファー中ATPをすべてのウェルに加えるまでに終了する。プレートを室温にて1時間培養する。反応物を、Multidrop Combiを用いて2.5μLのストップ溶液(ストップAおよびストップBをそれぞれ5:1の割合で混合、すわなち、総量6000μLについて、5000μLストップAおよび1000μLストップBを混合)をすべてのウェルに加えてクエンチする。Mulitdrop Combiを用いて2.5μLの検出試薬溶液(検出ミックスC、検出ミックスA、および検出ミックスBを一緒に18:1:1割合で混合、すなわち、総量6000μLについて、5400μL検出ミックスC、300μL検出ミックスA、および300μL検出ミックスBを混合、注釈:該溶液は使用2時間前に調製すべきである)をすべてのウェルに加え、次いで、光照射を避けるためにプレートを遮断する。1時間培養し、Envisionプレートリーダー上のHTRFシグナルを評価する。
【0152】
データ解析
ビオチン化PIP3置換をもたらす生成物形成によるPI3−キナーゼシグナルの消失は、増加生成物および時間の両方に関して非線形である。該非線形検出は、IC50計算の正確さに影響を及ぶであろう;そのため、より正確なIC50を得るために補正係数または逆算が必要である。該補正は、各アッセイプレート中で形成された生成物のアッセイプレート(カラム6および18)の標準的ウェルに基づき変化する。すべてのデータを最初にアセプターのドナー蛍光に対する割合を計算することによって正規化し、各化合物濃度に対する阻害%を次のとおりに計算した:阻害%=100*(シグナル−CtrlB)/(CtrlA−CtrlB)(式中:CtrlA=PI3キナーゼα+10μMワートマニンおよびCrtlB=PI3キナーゼα+DMSO)。次いで、IC50を、阻害%データを方程式:阻害%=min+(max−min)/(1+([阻害物質]/IC50)^n)(式中:minは阻害物質を伴わない阻害%(典型的には、0%)であり、maxは飽和阻害物質を伴う阻害%(典型的には100%)であり、nは傾き(典型的には1)である)に当てはめて計算した。最終的には、IC50をpIC50(pIC50=−log(IC50))に変換し、pIC50値をプレート対照および以下の方程式を用いて補正した:
pIC50(補正)=pIC50(観測)+log10((CtrlA−CtrlB)/(CtrlB−CtrlC))、ここで、CtrlAおよびCtrlBは上記と同義であり、CrtlC=10μM PI(3,4,5)P3、ビオチン化PI(3,4,5)P3の100%置換。
【0153】
PI3Kα Leadseeker SPAアッセイ
アッセイの原理
SPAイメージングビーズは、シンチラント(scintillant)を含有するミクロスフェアであり、可視スペクトルの赤領域において発光する。結果として、これらのビーズは、理論的にはViewluxのようなCCD画像装置での使用に適する。この系に用いられるLeadseekerビーズは、ポリエチレンイミンと結合したポリスチレンビーズである。アッセイ混合物に加えられた場合、該ビーズは基質(PIP2)および生産物(PIP3)の両方を吸収する。吸着したP33−PIP3は、シグナル増加を引き起こし、ADU(アナログ−デジタル変換単位)として測定される。このプロトコールは、His−p110/p85 PI3Kαを用いるアッセイのためのPEI−PSLeadseekerビーズの使用を詳述する。
【0154】
アッセイプロトコール
固体化合物を典型的には、384ウェル平底低容量プレート(Greiner 784075)の全てのウェル(カラム6および18を除く)中に100%DMSOの0.1μlと共に入れる。該化合物を、プレートのカラム1からカラム12まで、およびカラム13からカラム24まで連続希釈し(100%DMSO中で3倍)、DMSOのみを含有するカラム6および18はそのままにしておき、11種類の濃度の各試験化合物を得る。
【0155】
アッセイバッファーは、MOPS(pH6.5)、CHAPSおよびDTTを含有する。PI3KαおよびPIP2(L−α−D−myo−ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート[PI(4,5)P2]3−O−ホスホ結合型D(+)−sn−1,2−ジ−O−オクタノイルグリセリル,CellSignals#901)を混合し、化合物を含有するプレート中で30分間インキュベートした後、P33−ATPおよびMgCl2を添加して(試薬はZoomを用いて加える)反応を開始する。酵素不含ウェル(カラム18)は、典型的には、低対照を決定するために用いる。PBS/EDTA/CHAPS中におけるPEI−PS Leadseekerビーズを加えて(Multidropによる)、反応をクエンチし、プレートを少なくとも1時間(典型的には一夜)インキュベートした後、遠心分離する。Viewlux検出器を用いてシグナルを決定し、次いで、濃度応答曲線の構築のために、曲線適合ソフトウェア(Activity Base)中にインポートする。高対照(C1,カラム6中のDMSO 0.1μl、列A−P)および低対照(C2,カラム18中のバッファー中40uM PIP2 5μl,列A−P)に相対的な活性阻害パーセントを、100*(1−(U1−C2)/(C1−C2))を用いて算出した。50%阻害を生じる試験化合物の濃度を等式:
y=((Vmax*x)/(K+x))+Y2
(式中、「K」はIC50に等しい)
を用いて決定した。IC50値をpIC50値、すなわち、モル濃度における−logIC50に変換した。
【0156】
細胞アッセイ
1日目
●昼前に細胞を蒔く。
・透明平底96ウェルプレート(f.v.105μl)中、10K細胞/ウェル。
・最後のカラムの最後の4つのウェルに培地だけを入れる。
・37℃インキュベーター中に一夜置く。
●化合物プレート
・ポリプロピレン丸底96ウェルプレート中、1プレートにつき8化合物、各11点滴定(3倍段階希釈)、最後のカラムにDMSO(細胞上0.15%f.c.)を調製する。
・最初のウェル中に15μl、残りにDMSO 10μl;最初のウェルから5μlを取り、次のウェルに混合し、プレート全体にわたって続ける(最後のカラムを除く);ホイル蓋で閉じ、4℃で置く。
【0157】
2日目
●溶解バッファー阻害物質(4℃/−20℃)および化合物プレート(4℃)を取り出し、ベンチ上で解凍し;1xTris洗浄バッファー(WB)を調製して、プレートウォッシャーのリサーバーを満たし、ベンチサプライを充電し(MiliQを用いる)、遠心機の電源を入れて冷やす。
●MSDプレートをブロックする。
・20mLの3%ブロッキング溶液/プレート(WB 20mL中におけるブロッカーA 600mg)を作成し、150μl/ウェルを加え、RTで少なくとも1時間インキュベートする。
●化合物を加える(ブロッキングしながら)。
・各化合物プレートに、1ウェルにつき300μlの生育培地(RPMI w/Q,10%FBS)を加える(化合物の682倍希釈)。
・化合物希釈液5μlを二連プレート上の各ウェル(f.v.110μl)に加える。
・37℃インキュベーター中、30分間置く。
●ライゼートを調製する。
・MSD溶解バッファーを調製し;10mLにつき、プロテアーゼ阻害剤溶液200μl、ホスファターゼ阻害物質I&IIの各100μlを加える(使用するまで氷上で維持する)。
・インキュベーション後、プレートを取り出し、プレートウォッシャーで培地を吸引し、冷PBSで1回洗浄し、1ウェルにつき80μlのMSD溶解バッファーを加え;振盪機上、4℃で30分間以上インキュベートする。
・冷却下、2500rpmで10分間スピンし;使用するまで、プレートを4℃の遠心機中に放置する。
●AKT二連アッセイ
・プレートを洗浄し(プレートウォッシャー中、200μl/ウェルのWBで4回);ペーパータオル上でプレートを軽くたたいて吸水させる。
・1ウェルにつき60μlのライゼートを加え、振盪機上、RTで1時間インキュベートする。
・インキュベーションの間、検出Ab(3mL/プレート;2mL WBおよび1mLブロッキング溶液w/Ab 10nMにて)を調製し;上記の洗浄工程を繰り返す。
・1ウェルにつき25μlのAbを加え、振盪機上、RTで1時間インキュベートし;上記の洗浄工程を繰り返す。
・1ウェルにつき150μlの1xリードバッファー(貯蔵液をddH2O中で4倍希釈する,20mL/プレート)を加え、すぐに読み取る。
●分析
・各化合物濃度にて、データポイントの全てを観察する。
・最も高い阻害剤濃度由来のデータポイントは、DMSO対照の70%以上でなければならない。
・二連で実施したIC50は、お互いに2倍以内でなければならない(略式テンプレートにおいて警告が与えられない)。
・Y minは、ゼロより大きくなければならない。両方のminが警告を受けた場合(>35)、化合物を不活性と記載する(IC50=>最大用量)。1つのminのみが警告を受けた場合、まだ50以下であるが、IC50と記載する。
・曲線から30%以上離れたいずれのデータポイントも考慮しない。
【0158】
細胞成長/死アッセイ:
BT474、HCC1954およびT−47D(ヒト胸部)を5%CO2インキュベーター中37℃で、10%胎仔ウシ血清を含有するRPMI−1640中にて培養した。アッセイの2〜3日前に細胞をT75フラスコ(Falcon#353136)に分け、アッセイのために採取する時に約70〜80%のコンフルエンスになる密度で設定した。細胞を、0.25%トリプシン−EDTA(Sigma#4049)を用いて採取した。細胞のカウントは、Trypan Blue排除染色を用いて細胞懸濁液で行った。次いで、細胞を384ウェル黒色平底ポリスチレン(Greiner#781086)中、1ウェルにつき48μlの培養培地中、1,000細胞/ウェルにて蒔いた。全プレートを5%CO2にて37℃で一夜置き、翌日に試験化合物を加えた。0日(t=0)測定のために、1つのプレートをCellTiter−Glo(Promega #G7573)で処理し、下記のように読み取った。試験化合物を透明底ポリプロピレン384ウェルプレート(Greiner#781280)中、連続2倍希釈を用いて調製した。これらの希釈液4μlを培養培地105μlに加え、溶液を混合した後、これらの希釈液2μlを細胞プレートの各ウェルに加えた。全ウェル中におけるDMSO最終濃度は0.15%であった。細胞を37℃、5%CO2にて72時間インキュベートした。化合物と共に72時間インキュベートした後、各プレートを展開し、読み取った。CellTiter−Glo試薬をアッセイプレートに、ウェル中の細胞培養容量と等量を用いて加えた。プレートを約2分間振盪し、室温で約30分間インキュベートし、化学発光シグナルをAnalyst GT(Molecular Devices)リーダーで読み取った。結果は、t=0のパーセントで表し、化合物濃度に対してプロットした。細胞成長阻害は、各化合物について、XLfitソフトウェアを用いる4または6パラメーター曲線適合で用量応答をフィッティングし、t=0としてYminおよびDMSO対照としてYmaxを用いて、細胞成長の50%を阻害した濃度(gIC50)を決定することによって決定された。バックグラウンド補正のために、細胞不含ウェル由来の値を全ての試料から差し引いた。
【0159】
付加的な参考文献:
本発明の化合物はまた、PI3Kα、PI3Kδ、PI3KβおよびPI3Kγにおけるそれらの阻害活性を決定するために、下記の参考文献に従って試験することができる:
【0160】
全PI3Kイソ型について:
1.ヒトクラスIaホスホイノシチド3−キナーゼイソ型のクローニング、発現、精製および特徴付け:Meier, T.I.; Cook, J.A.; Thomas, J.E.; Radding, J.A.; Horn, C.; Lingaraj, T.; Smith, M.C. Protein Expr. Purif., 2004, 35(2), 218.
2.ホスホイノシチドキナーゼおよびホスファターゼ活性の検出のための競合的蛍光偏光アッセイ:Drees, B.E.; Weipert, A.; Hudson, H.; Ferguson, C.G.; Chakravarty, L.; Prestwich, G.D. Comb. Chem. High Throughput. Screen., 2003, 6(4), 321。
PI3Kγについて:WO 2005/011686 A1
【0161】
本発明の範囲内の医薬上活性な化合物は、PI3キナーゼ阻害を必要とする哺乳動物(特に、ヒト)においてPI3キナーゼ阻害剤として有用である。
【0162】
したがって、本発明は、PI3キナーゼ阻害に関連する疾患、特に、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷、ならびにPI3キナーゼ調節/阻害を要する他の疾患の治療方法であって、有効量の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグを投与することを含む方法を提供する。式(I)で示される化合物はまた、それらのPI3阻害物質として作用する能力のために上記適応病態の治療方法を提供する。該薬物は、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、皮下投与、皮内投与および非経口投与を包含するがこれらに限定されるものではない慣用的な投与経路で患者に投与することができる。
【0163】
本発明の医薬上活性な化合物は、カプセル剤、錠剤または注射製剤のような好都合な投与剤形に取り込まれる。固体または液体の医薬担体が用いられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム・二水和物、白土、シュークロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が挙げられる。液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、生理食塩水および水が挙げられる。同様に、該担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような持続放出材を単独でまたはワックスと共に含むことができる。固体担体の量は大きく異なるが、好ましくは、一投与単位あたり約25mg〜約1gである。液体担体を用いる場合、製剤は、シロップ、エリキシル、エマルション、軟ゼラチンカプセル、アンプルのような滅菌注射液、または水性もしくは非水性液体懸濁液の形態である。
【0164】
該医薬製剤は、所望の経口または非経口製剤を得るために、成分の混合、造粒、および錠剤形態について必要な場合には圧縮、または適当な場合には混合、充填および溶解を含む薬剤師の慣用的な技術に従って調製される。
【0165】
上記した医薬投与単位での本発明の医薬上活性な化合物の用量は、好ましくは活性化合物0.001〜100mg/kg、好ましくは、0.001〜50mg/kgの範囲から選択される有効な無毒性量である。PI3K阻害物質を必要とするヒト患者を治療する場合、選択された用量は、好ましくは1日1〜6回、経口または非経口投与される。非経口投与の好ましい形態としては、局所投与、直腸投与、経皮投与、注射による投与、および輸液による連続投与が挙げられる。ヒト投与のための経口投与単位は、好ましくは、活性化合物0.05〜3500mgを含有する。低投与量を使用する経口投与が好ましい。しかしながら、高投与量での非経口投与もまた、患者にとって安全かつ好都合である場合には使用することができる。
【0166】
投与されるべき最適な用量は、当業者が容易に決定することができ、使用される個々のPI3キナーゼ阻害物質、製剤の強度、投与方法、および病態の進行によって異なる。患者の年齢、体重、食事および投与の時を含む治療される個々の患者に依存するさらなる因子によって用量を調節する必要が生じる。
【0167】
本発明のヒトを含む哺乳動物におけるPI3キナーゼ阻害活性の誘発方法は、かかる活性を必要とする対象体に本発明の医薬上活性な化合物の有効なPI3キナーゼ調節/阻害量を投与することを含む。
【0168】
本発明はまた、PI3キナーゼ阻害物質として用いるための薬剤の製造における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0169】
本発明はまた、治療に用いる薬剤の製造における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0170】
本発明はまた、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療に用いるための薬剤の製造における式(I)で示される化合物の使用を提供する。
【0171】
本発明はまた、式(I)で示される化合物および医薬上許容される担体を含む、PI3阻害物質として用いるための医薬組成物を提供する。
【0172】
本発明はまた、式(I)で示される化合物および医薬上許容される担体を含む、自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷の治療に用いるための医薬組成物を提供する。
【0173】
本発明の化合物が本発明にしたがって投与される場合には、許容されない毒性効果は期待されない。
【0174】
加えて、本発明の医薬上活性な化合物は、PI3キナーゼ阻害物質と組み合わせて使用した場合に有用性を有することが知られている化合物を含むさらなる活性成分と共投与することができる。
【0175】
当業者は、さらに詳述しなくとも上記説明を用いて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、単なる説明と解釈され、如何なる場合も本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0176】
実験の詳細
スキーム
以下の実施例の化合物は、以下のスキームにしたがってまたは類似の方法によって容易に調製される。
【0177】
例えば、式Iの化合物で示されるキノキサリン誘導体は、例えば、文献(Journal of Medicinal Chemistry,1981,24(1),93−101)にて調製されているブロモキノキサリノール(2)から調製されうる。スキーム1に記載されるように、ブロモキノキサリノール誘導体、例えば、化合物2は、例えば、高温(典型的には120℃)にてオキシ塩化リンで処理することによってブロモクロロキノキサリン、例えば、化合物3に変換されうる。得られた塩化化合物(3)は、工程C、DまたはEによって示される種々のカップリング反応が起こりうる。カップリング工程が、例えば、求核置換反応、工程CまたはDである場合、適当な求核試薬、例えば、アミン類またはアルコキシド類は、商業的に入手可能であるかまたは当業者に周知の方法によって容易に調製される。カップリング工程が化合物3中の塩素のアミンまたはアルコキシド置換である例では、かかる置換は、室温にて行われうるかまたはニートな試薬中またはN,N’−ジメチルホルムアミドなどの適当な極性溶媒中70〜100℃などの温度に加熱することによってさらに容易にされうる。
【0178】
あるいは、式4の化合物を調製するカップリング工程は、アリールまたはヘテロアリールボロン酸エステルまたはボロン酸と化合物3との遷移金属(例えば、パラジウム)触媒クロスカップリング反応、例えば、工程Eでありうる。工程Eで示される鈴木クロスカップリングなどの例示的カップリング反応は、無機塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム)および適当な溶媒(例えば、1,4−ジオキサンまたはN,N’−ジメチルホルムアミド)の存在下において、高温(適当には100℃)にて化合物3を適当なパラジウム触媒(典型的には、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン複合体(1:1))で処理することによって達成されうる。得られた式(4)の化合物は、アリールまたはヘテロアリールボロン酸エステルまたはボロン酸と上記の別のパラジウム触媒カップリング反応を起こし、本発明の化合物、例えば、6が得られうる。同様に、化合物4中のR2がNまたはOである場合において、塩基(例えば、酢酸カリウム)の存在下において、溶媒(例えば、ジオキサン)中高温(典型的には、100℃)にてパラジウム触媒(例えば、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン複合体(1:1))でホウ素化を達成し、ボロン酸エステル、例えば、化合物5を得ることができる。かかるボロン酸エステルは、適当なハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールと(上記の)典型的な鈴木クロスカップリング反応を起こし、本発明の化合物、例えば、化合物6を得ることができる。必要であれば、スキーム2に示されるように、アミンまたはヒドロキシル脱保護工程が含まれうる。これらには、高温(典型的には、50℃)にてエタノールなどの極性溶媒中水性塩基(例えば、水酸化ナトリウム)でのトシルスルホニル保護基の除去あるいはフッ化物イオンまたは水性酸(例えば、酢酸)でのシリル保護基の除去などの実施例が含まれる。
【化16】

【0179】
スキーム2は、カップリング反応(例えば、上記スキーム1中の工程C、D、E、GまたはHにおける)が行われうる前にアミンを保護することが必要な場合の、アミン保護基の除去を記載している。例えば、Boc保護アミン、例えば、化合物7を、適当な溶媒(例えば、アセトニトリル)中室温にてトリフルオロ酢酸で処理して、本発明の化合物、例えば、化合物8を得ることができる。同様に、トシルスルホニル保護ピラゾールアミン、例えば、化合物9は、極性溶媒、典型的にはエタノール中高温、例えば、50℃にて水性塩基(例えば、水性水酸化ナトリウム)で処理することによって遊離ピラゾール化合物10に変換されうる。同様に、シリルエーテルを、フッ化イオンまたは水性酸、例えば、酢酸が関与する標準的方法を用いて脱保護して、ヒドロキシル化合物、例えば、12が得られうる。
【化17】

【0180】
あるいは、カルボニル含有化合物、例えば、13(スキーム3)を、極性プロトン性溶媒中で水素化物系還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを用いて対応するアルコールに還元し、ヒドロキシル含有化合物、例えば、14を得ることができる。
【化18】

【0181】
ピラゾール誘導体、例えば、化合物9(スキーム2)は、臭化アリール、例えば、化合物17(スキーム4)と化合物、例えば、5(スキーム1)との鈴木カップリングから調製されうる。式17の化合物は、置換ピラゾール誘導体、例えば、15から調製され得、そのいくつかは商業的に入手可能であり、そして、その調製は文献に記載されている(Inorganic Chemistry 2002,41(7),1889−1896)。
【化19】

【0182】
実験セクション:
本発明の化合物は、工程C、DおよびE(スキーム1)における異なるカップリング基を用いて、スキーム1〜4にしたがって調製されうる。あるいは、工程C、DおよびEのカップリング基はすべて、商業的に入手可能であるか、文献公知であるかまたは以下の中間体1および2の調製に記載されている。
【0183】
例示的な調製は、実施例1〜44に記載されている。すべての請求化合物は、該セクションに記載の調製によって調製されたかまたは調製されうる。
【0184】
実施例1
5−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−2−フランカルバルデヒドの調製
【化20】

7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(386mg、1.31mmol)、5−ホルミル−2−フランボロン酸(220mg、1.57mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(19mg、0.03mmol)、および2M水性炭酸ナトリウム(2.6mL、5.25mmol)の1,4−ジオキサン(15mL)中混合物を、100℃にて18時間加熱した。反応物を冷却し、ジクロロメタンで希釈し、次いで、脱色炭および硫酸ナトリウムで処理した。セライトのパッドで濾過し、次いで、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。得られた油を、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル中50%ヘキサン)に付して精製し、固体として標記化合物を得た(268mg、66%)。MS(ES)+ m/e 309.8[M+H]
【0185】
以下の化合物は、異なる複素環ボロン酸を用いて実施例1を調製するために用いられる製法にしたがって調製されたかまたは調製されうる:
【表1】

【0186】
実施例3
{5−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−2−フラニル}メタノールの調製
【化21】

5−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−2−フランカルバルデヒド(200mg、0.65mmol)の無水エタノール(20mL)中スラリーを、水素化ホウ素ナトリウム(35mg、1.26mmol)で少量ずつ処理した。常温にて20時間攪拌した後、反応物を減圧下で蒸発させた。得られた残渣を水に加え、次いで、酢酸エチルに抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで、残渣に抽出し、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノール)に付して精製した。得られた生成物をアセトニトリルから再結晶して、黄色固体として標記化合物を得た(45mg、22%)。MS(ES)+ m/e 311.8[M+H]
【0187】
実施例4
{5−[3−(4−ピリジニル)−6−キノキサリニル]−2−フラニル}メタノールの調製
【化22】

a)7−[5−({[(1,1−ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−2−フラニル]−2−(4−ピリジニル)キノキサリン
7−ブロモ−2−(4−ピリジニル)キノキサリン(170mg、0.59mmol)、[5−({[(1,1−ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−2−フラニル]ボロン酸(183mg、0.71mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(13mg、0.02mmol)、および2M水性炭酸ナトリウム(1.2mL、2.38mmol)の1,4−ジオキサン(15mL)中混合物を、100℃にて4時間加熱した。反応物を室温に冷却し、次いで、減圧下で濃縮した。得られた残渣をブラインに加え、次いで、酢酸エチルに抽出した。得られた残渣を硫酸ナトリウムで乾燥し、残渣に蒸発させて、シリカゲルクロマトグラフィー(20%酢酸エチル中ヘキサン)に付して精製し、黄色固体として標記化合物を得た(162mg、65%)。MS(ES)+ m/e 418.4[M+H]
【0188】
b){5−[3−(4−ピリジニル)−6−キノキサリニル]−2−フラニル}メタノール
7−[5−({[(1,1−ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−2−フラニル]−2−(4−ピリジニル)キノキサリン(162mg、0.39mmol)の酢酸、水およびテトラヒドロフランの各3:1:1混合液中溶液を室温にて5日間攪拌した。反応物を減圧下で蒸発させた。得られた残渣を飽和水性重炭酸ナトリウムに加え、硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで、減圧下で蒸発させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(100%酢酸エチル)に付して精製し、黄色固体として標記化合物を得た(57mg、48%)。MS(ES)+ m/e 303.9[M+H]
【0189】
実施例5
2−(4−モルホリニル)−7−(3−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリンの調製
【化23】

a)4−ブロモ−3−フェニル−1H−ピラゾール
商業的に入手可能なピラゾールまたは文献(Inorganic Chemistry2002,41(7),1889−1896)に記載のとおりに調製されたもの、例えば、3−フェニル−1H−ピラゾール(2.98g、20.67mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(40mL)中溶液を、N−ブロモスクシンイミド(3.68g、20.67mmol)で少しずつ処理した。反応物を室温にて1時間攪拌し、次いで、減圧下で蒸発させた。得られた油を熱アセトニトリル(15mL)に加え、次いで、生成物が溶液から沈殿するまで水で希釈した。固体を濾過により回収し、水でリンスし、真空乾燥して、白色固体として標記化合物を得た(4.19g、91%)。MS(ES)+ m/e 222.8、224.8、臭素パターン[M+H]
【0190】
b)4−ブロモ−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール
4−ブロモ−3−フェニル−1H−ピラゾール(4.15g、18.6mmol)およびピリジン(4.5mL、55.8mmol)の水性塩化メチレン(40mL)中溶液を、塩化p−トルエンスルホニル(4.26g、22.3mmol)で少しずつ処理し、次いで、室温にて3日間攪拌した。反応物を減圧下で蒸発させて、得られた残渣を酢酸エチルに加え、飽和水性重炭酸ナトリウムおよびブライン溶液の一部で洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。該有機溶液を減圧下で残渣に蒸発させて、シリカクロマトグラフィー(ヘキサン中5%酢酸エチル)に付して精製した。所望のフラクションを合し、減圧下で蒸発させて、白色固体として標記化合物を得た(6.90g、98%)。MS(ES)+ m/e 376.9、379.0、臭素パターン[M+H]
【0191】
c)7−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール−4−yl}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン
7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(112mg、0.38mmol)または関連キノキサリン、ビス(ピナコラト)ジブロン(106mg、0.42mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)とCHClとの複合体(16mg、0.02mmol)、および酢酸カリウム(75mg、0.76mmol)の1,4−ジオキサン(6.0mL)中スラリーを、100℃にて2時間加熱した。反応物を短時間で冷却し、次いで、4−ブロモ−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール(144mg、0.38mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジム(II)とCHClとの複合体(16mg、0.02mmol)および炭酸ナトリウムの2M水性溶液(0.76mL、1.52mmol)を加え、反応物を100℃にてさらに18時間加熱した。室温に冷却し、次いで、減圧下で濃縮した。得られた湿った残渣を、酢酸エチル(50mL)に加え、次いで、無水硫酸ナトリウム(5g)をかけたシリカゲル(20g)の短パッドで濾過した。濾液を減圧下で蒸発させ、得られた残渣をシリカクロマトグラフィー(30%酢酸エチル中ヘキサン)に付して精製した。所望の画分を合し、減圧下で蒸発させて、淡黄色固体として標記化合物を得た(122mg、63%)。MS(ES)+ m/e 512.2[M+H]
【0192】
d)2−(4−モルホリニル)−7−(3−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン
7−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(100mg、0.20mmol)のエタノール(15mL)中溶液を、NaOHの1N溶液(5mL)で処理し、次いで、50℃にて18時間加熱した。反応物を1N HCl(5mL)と反応させ、次いで、減圧下で濃縮した。水性濃縮物を、重炭酸ナトリウムの飽和水性溶液で希釈し、次いで、塩化メチレンに抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させた。得られた橙色残渣を、シリカクロマトグラフィー(20%酢酸エチル中ヘキサン)に付して精製し、所望の画分を合し、蒸発させて、黄色固体として標記化合物を得た(52mg、74%)。MS(ES)+ m/e 358.0[M+H]
【0193】
以下の化合物は、工程bにおける異なる臭化ピラゾールを用いて実施例5を調製するために用いられる製法にしたがって調製されたかまたは調製されうる:
【表2−1】

【表2−2】

【0194】
実施例23
7−{3−メチル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリンの調製
【化24】

7−{3−メチル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール−4−イル}−2−(4−モルホリニル)キノキサリン
密封管中にて、2−(4−モルホリニル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノキサリン(200mg、0.586mmol)、4−ブロモ−3−メチル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール(194mg、0.615mmol)およびジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(24mg、0.029mmol)の1,4−ジオキサン(2mL)および飽和水性重炭酸ナトリウム溶液(2mL)中溶液を、100℃にて1.5時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。反応物を100mL酢酸エチルおよび50mL水で希釈した。層を分離し、水層を酢酸エチル(20mL)で逆抽出した。合した有機層をブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色残渣を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%酢酸エチル/ヘキサン)に付して精製し、黄色固体として標記化合物を得た(223mg、80%)。MS(ES)+ m/e 450.1[M+H]
【0195】
以下の化合物は、異なる臭化ピラゾールを用いて実施例23を調製するために用いられる製法にしたがって調製されたかまたは調製されうる:
【表3】

【0196】
実施例31および32
7−(3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリンおよび7−(5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリンの調製:
【化25】

a)4−ブロモ−3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾールおよび4−ブロモ−5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール
窒素下0℃にて、オーブン乾燥丸底フラスコ中にて、無水N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)中の4−ブロモ−3−シクロヘキシル−1H−ピラゾール(2.876g、12.55mmol)を、水素化ナトリウム(0.502g、12.55mmol)で処理した。淡黄色溶液はわずかに発泡し、反応物を室温にて30分間攪拌した。ヨードメタン(0.942mL、15.06mmol)を加え、反応物を室温にて1時間攪拌した。反応物を100mLの氷水混合液に注ぎ、生成物を酢酸エチル(200mL)で抽出した。水層を(2x25mL)で逆抽出した。合した有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜30%酢酸エチル/ヘキサン)に付して精製し、無色液体として標記化合物の混合物を得た。MS(ES)+ m/e 243.0、245.0 臭素パターン[M+H]
【0197】
b)7−(3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリンおよび7−(5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン
密封管中にて、2−(4−モルホリニル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノキサリン(702mg、2.056mmol)、4−ブロモ−3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾールおよび4−ブロモ−5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール(500mg、2.056mmol)の混合物、ならびに二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(84mg、0.103mmol)の1,4−ジオキサン(5.14mL)および飽和水性重炭酸ナトリウム溶液(5.14mL)中溶液を100℃にて1.5時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。反応物を酢酸エチル(100mL)および水(50mL)で希釈し、混合物をセライトで濾過した。層を分離し、水層を酢酸エチル(20mL)で逆抽出した。合した有機層をブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色残渣を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(30〜100%酢酸エチル/ヘキサン)に付して精製し、淡黄色泡状固体として標記化合物の1:1混合物を得た(318mg)。逆相HPLCに付して精製し、カラムから回収した最初の異性体として黄色固体として7−(3−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(117mg、0.310mmol、収率15.07%)、次いで、黄色固体として7−(5−シクロヘキシル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−yl)−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(123mg、0.326mmol、収率15.85%)を得た。MS(ES)+ m/e 各々、378.1、378.0[M+H]
【0198】
実施例33
7−[1−メチル−3−(4−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリンの調製
【化26】

密封管中にて、1−メチル−3−(4−ニトロフェニル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(560mg、1.700mmol、WO2007024843A2)、7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(500mg、1.700mmol)および二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(69mg、0.084mmol)の1,4−ジオキサン(4.25mL)および飽和水性重炭酸ナトリウム溶液(4.250mL)中溶液を、100℃にて1.5時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。反応物を酢酸エチル(100mL)および水(50mL)で希釈し、層を分離した。水層を酢酸エチル(20mL)で逆抽出した。合した有機層をブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色固体を得た。固体をジクロロメタン中にトリチュレートして、真空濾過した後に黄色固体を得た。黄色固体をメタノールで洗浄して、標記化合物を得た(純度92%)。固体および濾液を合し、シリカゲルクロマトグラフィー(10〜100%酢酸エチル/ヘキサン、30分)に付して精製し、未反応7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(240mg)および淡黄色固体として標記化合物(231mg、33%)を得た。MS(ES)+ m/e 417.2[M+H]
【0199】
実施例34
(4−{1−メチル−4−[3−(4−モルホリニル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−3−イル}フェニル)アミンの調製
【化27】

窒素下、オーブン乾燥フラスコ中にて、炭素担体10%パラジウム(22mg、0.207mmol)および7−[1−メチル−3−(4−ニトロフェニル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(110mg、0.264mmol)の無水テトラヒドロフラン(15mL)中混合物を調製した。フラスコを真空にし(真空ライン)、窒素で充填し(3回)、再度真空にし、最終的に水素で充填した(バルーンを介して、3回)。反応物を水素(バルーンを介して1atm)下室温にて4時間攪拌した。反応物を、酢酸エチル(50mL)で洗浄しながら、セライトのパッドで濾過した。濾液を真空中で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30〜100%酢酸エチル/ヘキサン)に付して精製し、次いで、逆相HPLCに付して精製し、黄色固体として標記化合物を得た(5%)。MS(ES)+ m/e 387.3[M+H]
【0200】
実施例35
1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−アミンの調製
【化28】

密封管中にて、2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサンボロラン−2−イル)キノキサリン(600mg、1.784mmol)、4−ブロモ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン(314mg、1.784mmol)、および二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(72.8mg、0.089mmol)の1,4−ジオキサン(5mL)および飽和水性炭酸カリウム溶液(5mL)中溶液を、100℃にて1.5時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(100mL)および水(50mL)で希釈した。水層を酢酸エチル(20mL)で逆抽出した。合した有機層をブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色残渣を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%酢酸エチル/ヘキサン、次いで、100%酢酸エチル、次いで、10%メタノール/酢酸エチル)に付して精製し、黄色固体として標記化合物を得た(37%)。MS(ES)+ m/e 306.1[M+H]
【0201】
以下の化合物は、異なる臭化ヘテロアリールを用いて実施例35に記載の製法にしたがって調製されたかまたは調製されうる:
【表4】

【0202】
実施例37
N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}ベンゼンスルホンアミドの調製
【化29】

a)N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド
窒素下室温にて、オーブン乾燥丸底フラスコ中にて、1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−アミン(100mg、0.328mmol)およびピリジン(0.029mL、0.360mmol)のジクロロメタン(1.638mL)中溶液をシリンジにより塩化ベンゼンスルホニル(0.044mL、0.344mmol)で処理した。反応物を30分間攪拌した。さらに塩化ベンゼンスルホニル(0.044mL、0.344mmol)を加え、すべてのビス−スルホニル化生成物を反応させた。一晩攪拌し続けた。反応物を真空中で濃縮し、残渣を酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和水性塩化ナトリウム/塩化アンモニウム(sodium ammonium chloride)で中和した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜10%メタノール/酢酸エチル)に付して精製し、灰白色固体として標記化合物を得た(25mg、13%)。MS(ES)+ m/e 587.1[M+H]
【0203】
b)N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}ベンゼンスルホンアミド
N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}−N−(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド(25mg、0.043mmol)の無水ピリジン(1mL)中溶液を、ピロリジン(3.53μL、0.043mmol)で処理した。反応物を70℃にて1.5時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。黄色残渣を酢酸エチル(30mL)で希釈し、飽和水性塩化アンモニウム溶液を用いて中和した。有機層をブライン(15mL)で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、黄褐色固体を得た。ジクロロメタン中でトリチュレートして、真空オーブン中で乾燥した後にアイボリー白色固体として標記化合物を得た(69%)。MS(ES)+ m/e 446.3[M+H]
【0204】
実施例38
N−{1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−イル}ベンズアミドの調製
【化30】

窒素下室温にて、オーブン乾燥フラスコ中にて、1−メチル−4−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−6−キノキサリニル]−1H−ピラゾール−5−アミン(91mg、0.298mmol)およびトリエチルアミン(0.050mL、0.358mmol)のジクロロメタン(2.5mL)中溶液を塩化ベンゾイル(0.036mL、0.313mmol)で処理した。反応物を2時間攪拌した。反応物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和水性塩化アンモニウム溶液で中和した。水層を酢酸エチル(20mL)で逆抽出した。合した有機層をブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色残渣を得た。褐色残渣をメタノールで処理し、得られた黄色沈殿を濾去した。濾液を真空中で濃縮した。逆相HPLCに2回付した後に、わずかに灰白色の固体として標記化合物を得た(21%)。MS(ES)+ m/e 410.2[M+H]
【0205】
実施例39
7−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリンの調製
【化31】

オーブン乾燥密封管中にて、1−メチル−5−トリブチルスタンナニル−1H−イミダゾール(150mg、0.404mmol)、7−ブロモ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン(117mg、0.404mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(24mg、0.021mmol)の1,4−ジオキサン(2mL)中溶液を100℃にて18時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、LCMSは反応が終了へ進まなかったことを示した。さらに1−メチル−5−トリブチルスタンナニル−1H−イミダゾール(150mg、0.404mmol)を加え、反応物を100℃にてさらに7時間攪拌した。反応物を丸底フラスコに移し、真空中で濃縮して、褐色残渣を得た。酢酸エチル中でトリチュレートして、褐色固体として標記化合物を得た(81%)。MS(ES)+ m/e 291.1[M+H]
【0206】
実施例40
7−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)−2−(4−モルホリニル)キノキサリンの調製
【化32】

7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリンを用いて実施例39に記載の製法にしたがって、黄色固体として標記化合物を得た(69%)。MS(ES)+ m/e 296.1[M+H]
【0207】
実施例41
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(4−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)キノキサリンの調製
【化33】

窒素下、オーブン乾燥マイクロ波容器中にて、1,4−ジオキサン(2mL)中の7−ブロモ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン(150mg、0.519mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(158mg、0.623mmol)、酢酸カリウム(153mg、1.556mmol)、および二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(18.98mg、0.026mmol)を油浴中100℃にて45分間攪拌した。反応物を室温に冷却した。4−ブロモ−5−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(116mg、0.519mmol、US20050153877A1)および2M炭酸カリウム溶液(0.259mL、0.519mmol)を反応混合物に加え、再度容器を密封した。反応物を100℃にて15時間攪拌し、次いで、室温に冷却した。LCMSによるモニターは、反応が進行しなかったことを示した−両方の出発物質のみが観察された。さらなる二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(18.98mg、0.026mmol)を反応物に加え、100℃にてさらに24時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。反応物をセライトに通して、パッドを酢酸エチルで洗浄した。二相混合物を分液漏斗中で分離した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色固体を得た。固体をジクロロメタンおよびエーテル中でトリチュレートして、濾過した後に紫色固体を得た。濾液を真空中で濃縮し、残渣を酢酸エチル中でトリチュレートして、濾過した後、黄褐色固体を得た。紫色固体をジクロロメタン中でトリチュレートし、濾過して、別の紫色固体を得た。上記固体をすべて合し、ジメチルスルホキシドに溶解した。該溶液を逆相HPLCに付して精製し、白色固体を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル(1:1)中でトリチュレートし、沈殿を回収して、白色固体として標記化合物を得た(12.3mg、7%)。MS(ES)+ m/e 354.1[M+H]
【0208】
実施例42
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(1−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)キノキサリンの調製
【化34】

5−ブロモ−1−フェニル−1H−1,2,3−トリアゾール(120mg、0.428mmol、US20070249579A1)、2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノキサリン(176mg、0.471mmol)、二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(31mg、0.042mmol)および2M炭酸カリウム溶液(0.643mL、1.285mmol)の1,4−ジオキサン(3mL)中溶液を、100℃にて90分間攪拌した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(100mL)および水(50mL)で希釈した。水層を酢酸エチル(20mL)で逆抽出した。合した有機層を、ブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、褐色残渣を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、30分)に付して精製し、黄色固体として標記化合物を得た(純度92%)。黄色固体をエタノール中で再結晶し、次いで、真空オーブンで乾燥して、黄褐色固体として標記化合物を得た(25mg、16.5%)。MS(ES)+ m/e 354.1[M+H]
【0209】
実施例43
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−[1−(フェニルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−イル]キノキサリンおよび2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリンの調製
【化35】

a)1−(フェニルスルホニル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(100mg、0.515mmol)のピリジン(54μL、0.670mmol)およびジクロロメタン(3mL)中溶液に、塩化ベンゼンスルホニル(73μL、0.567mmol)を滴下した。2.5時間後、反応混合物を少量のメタノールでクエンチし、次いで、真空中で乾燥した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(15〜40%酢酸エチル/ヘキサン)に付して精製し、白色固体として標記化合物を得た(76%)。H NMR(DMSO−d,400MHz)δ:8.58(s,1H),8.04(d,2H,J=8.4Hz),7.97(s,1H),7.81(t,1H,J=7.6Hz),7.68(t,2H,J=7.8Hz),1.26(s,12H)。
【0210】
b)2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−[1−(フェニルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−イル]キノキサリンおよび2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン
7−ブロモ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン(100mg、0.346mmol)、1−(フェニルスルホニル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(138mg、0.413mmol)、および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)−ジクロロメタン付加物(8mg、9.80μmol)の2M水性炭酸ナトリウム(0.500mL、1.00mmol)および1,4−ジオキサン(2.5mL)中混合物を、100℃にて20.5時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)およびブライン(10mL)で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3x50mL)。合した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(45〜100%酢酸エチル/ヘキサン)に付して精製し、2種類の生成物、収率16%で黄色固体として2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−[1−(フェニルスルホニル)−1H−ピラゾール−4−イル]キノキサリン(MS(ES)+ m/e 417[M+H])および収率42%で黄色固体として2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン(MS(ES)+ m/e 277[M+H])を得た。
【0211】
いくつかの商業的に入手不可能な中間体、例えば、ヘテロアリール誘導体、臭化ヘテロアリール(R1またはR2)、ボロン酸(R1またはR2)およびボロン酸エステル(R1またはR2)は、スキーム3および4ならびに以下の製法にしたがってまたは文献公知の方法によって調製されたかまたは調製されうる。
【0212】
中間体1
2−(4−モルホリニル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサンボロラン−2−イル)キノキサリンの調製
【化36】

a)7−ブロモ−2(1H)−キノキサリノン:
Journal of Medicinal Chemistry,1981,24(1),93−101に記載の製法にしたがって調製された。
【0213】
b)7−ブロモ−2−クロロキノキサリン
7−ブロモ−2(1H)−キノキサリノン(22.2mmol)のニートなオキシ塩化リン(50mL)中スラリーを120℃にて20時間加熱した。反応物を常温に冷却し、次いで、減圧下で紫色残渣に濃縮した。残渣を酢酸エチルに加え、次いで、氷冷した飽和水性重炭酸ナトリウム溶液(約100mL)に徐々に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和水性重炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムおよび脱色炭で乾燥した。スラリーをセライトで濾過し、次いで、減圧下で濃縮して、白色固体として標記化合物を得た(3.0g、55%)。MS(ES)+ m/e 242.9;244.8[M+]
【0214】
c)7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリン
7−ブロモ−2−クロロキノキサリン(6.16mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)中溶液を、アミン、例えば、ニートなモルホリン(18.5mmol)で処理し、次いで、80℃にて1時間加熱した。反応物を常温に冷却し、次いで、減圧下で黄色残渣に濃縮した。残渣を酢酸エチルに加え、一部の飽和水性重炭酸ナトリウムで洗浄した。有機相を、無水硫酸ナトリウムおよび脱色炭で乾燥し、次いで、セライトで濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、黄色固体として得た(1.43g、95%)。MS(ES)+ m/e 293.7;295.9[M+]
【0215】
同様のキノキサリン誘導体は、置換工程cにおけるアミンの選択を変えることによって中間体1を調製するために用いられる製法にしたがって調製されたかまたは調製されうる。
【0216】
中間体2
2−(4−モルホリニル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノキサリン
【化37】

2−(4−モルホリニル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノキサリン
7−ブロモ−2−(4−モルホリニル)キノキサリン(0.67mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.87mmol)、酢酸カリウム(1.33mmol)および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン複合体(1:1)(0.03mmol)の無水1,4−ジオキサン(10mL)中スラリーを、110℃にて18時間加熱した。反応混合物を常温に冷却し、次いで、酢酸エチルでリンスしながら、無水硫酸ナトリウム(約5g)をかけた、シリカ(約15g)の短パッドで濾過した。濾液を褐色残渣に減圧下で濃縮して、次いで、シリカのカラムクロマトグラフィー(15%酢酸エチル中ヘキサン)に付して精製した。所望の画分を合し、濃縮して、黄色固体として標記化合物を得た(186mg、81%)。MS(ES)+ m/e 342.0[M+]
【0217】
他の同様のキノキサリンボロン酸誘導体は、出発臭化キノキサリンの選択を変えることによって中間体2を調製するために用いられる製法にしたがって調製されたかまたは調製されうる。.
【0218】
中間体3
4−ブロモ−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾールの調製
【化38】

a)4−ブロモ−3−フェニル−1H−ピラゾール
3−フェニル−1H−ピラゾール(20.67mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(40mL)中溶液を、N−ブロモスクシンイミド(20.67mmol)で少量ずつ処理した。反応物を室温にて1時間攪拌し、次いで、減圧下で蒸発させた。得られた油を、熱アセトニトリル(15mL)に加え、次いで、生成物が溶液から沈殿するまで水で希釈した。固体を濾過により回収し、水でリンスし、真空乾燥して、白色固体として標記化合物を得た(4.19g、91%)。MS(ES)+ m/e 222.8、224.8、臭素パターン[M+H]
【0219】
b)4−ブロモ−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−3−フェニル−1H−ピラゾール
4−ブロモ−3−フェニル−1H−ピラゾール(18.6mmol)およびピリジン(4.5mL)の無水塩化メチレン(40mL)中溶液を、塩化p−トルエンスルホニル(22.3mmol)で少しずつ処理し、次いで、室温にて3日間攪拌した。反応物を減圧下で蒸発させ、得られた残渣を酢酸エチルに加え、一部の飽和水性重炭酸ナトリウムおよびブライン溶液で洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。該有機溶液を残渣に減圧下で蒸発させ、次いで、シリカクロマトグラフィー(5%ヘキサン中酢酸エチル)に付して精製した。所望の画分を合し、減圧下で蒸発させて、白色固体として標記化合物を得た(6.90g、98%)。MS(ES)+ m/e 376.9、379.0、臭素パターン[M+H]
【0220】
*他の置換臭化ピラゾールは、商業的に入手可能であるかまたは文献(Inorganic Chemistry 2002,41(7),1889−1896)に記載の方法を用いて調製される、出発置換ピラゾールの選択を変えることによって該製法を用いて調製されうる。
【0221】
中間体4
4−ブロモ−3−シクロプロピル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾールの調製
【化39】

窒素下室温にて、オーブン乾燥フラスコ中にて、3−シクロプロピル−1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1H−ピラゾール(500mg、1.906mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(10mL)中溶液を、N−ブロモスクシンイミド(339mg、1.906mmol)で少しずつ処理した。反応物を室温にて一晩攪拌した。LCMSは、30%の出発物質が残っていることを示した。さらなるN−ブロモスクシンイミド(68mg、0.2当量)を反応混合物に加え、反応物を室温にて一晩攪拌した。反応混合物を氷水(100mL)に注ぎ、白色沈殿を形成した。沈殿を濾過により回収し、水(100mL)で洗浄し、一晩真空中で乾燥して、白色固体として標記化合物を得た(487mg、75%)。MS(ES)+ m/e 340.6、342.7 臭素パターン[M+H]
【0222】
中間体5
3−シクロペンチル−1H−ピラゾールの調製
【化40】

窒素下、オーブン乾燥丸底フラスコ中にて、ナトリウムメトキシド(0.482g、8.92mmol)を無水トルエン(8.92mL)中に懸濁し、次いで、1−シクロペンチルエタノン(1g、8.92mmol)およびギ酸エチル(1.045mL、12.84mmol)の混合物で少しずつ処理した。反応物は橙黄色になり、室温にて3時間攪拌された。反応物を冷水(2x50mL)に抽出し、水抽出液(250mL三角フラスコ中)を、ヒドラジン一水和物(0.430mL、8.92mmol)、次いで、氷酢酸(0.510mL、8.92mmol)で処理して、得られた酸性溶液を得た。混合物を30分間攪拌し、次いで、氷を加え、それを6N水酸化ナトリウムで処理して、塩基性溶液を得た。橙色油を分離し、ジクロロメタン(2x150mL)で抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、橙色油として標記化合物を得た(292mg、17%)。MS(ES)+ m/e 136.8[M+H]
【0223】
中間体6
7−ブロモ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリンの調製
【化41】

窒素下、密封圧力管中にて、7−ブロモ−2−クロロキノキサリン(5g、20.53mmol)、1−メチルピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(4.49g、21.56mmol)および二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(0.838g、1.027mmol)、2M炭酸カリウム溶液(30.8mL、61.6mmol)および1,4−ジオキサン(82mL)を合し、100℃にて1時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。反応物を酢酸エチル(100mL)および水(100mL)で希釈し、層を分離した。水層を酢酸エチル(50mL)で逆抽出した。合した有機層を、ブライン(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して、赤褐色残渣を得た。ジクロロメタン中でトリチュレートして、クリーム色固体として標記化合物を得た(4.52g、76%)。MS(ES)+ m/e 288.7、290.9 臭素パターン[M+H]。
【0224】
中間体7
2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)キノキサリンの調製
【化42】

7−ブロモ−2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)キノキサリン(1g、3.46mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.054g、4.15mmol)、酢酸カリウム(1.018g、10.38mmol)、および二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロロメタン複合体(0.141g、0.173mmol)の無水1,4−ジオキサン(14.1mL)中溶液を、100℃にて90分間攪拌した。反応物を室温に冷却し、100mLの酢酸エチルで洗浄しながら、セライトのパッドで濾過した。濾液を真空中で濃縮して、暗褐色固体を得た。固体を酢酸エチル(30mL)に溶解し、ヘキサン(60mL)を該溶液に加えると、それは濁った。15分以内に沈殿が形成され、酢酸エチル(20mL)で洗浄しながら、吸引濾過により回収した。暗褐色溶液を廃棄し、淡褐色/黄色濾液を真空中で濃縮して、淡褐色固体を得た。ヘキサン(20mL)および酢酸エチル(4mL)中でトリチュレートして、濾過により回収した後に黄褐色固体として標記化合物を得た(1.29g、純度90%、収率100%)。MS(ES)+ m/e エステルに対して337.3;酸に対して255.1[M+H]
【0225】
カプセル組成物の例
本発明を投与するための経口剤形は、標準的な2ピースの硬ゼラチンカプセルを以下の表IIに示される割合の成分で充填することによって製造される。
【表5】

【0226】
注射用非経口組成物の例
本発明を投与するための注射形態は、10容量%水中プロピレングリコール中にて1.5重量%の実施例1の化合物を攪拌することによって製造される。
【0227】
錠剤組成物の例
白糖、硫酸カルシウム二水和物および以下の表IIIに示されるPI3K阻害薬を合し、10%ゼラチン溶液と一緒に示される割合で造粒する。湿った顆粒をスクリーンし、乾燥し、スターチ、タルクおよびステアリン酸と合し、スクリーンして、錠剤に圧縮する。
【表6】

【0228】
本発明の好ましい実施態様は上記に示されているが、本発明は本明細書に記載の的確な指示に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内となるすべての修正を受ける権利を留保することが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
R1は、式(II):
【化2】

で示される1〜2個の二重結合を含有する環系であり;
各Xは、独立して、C、O、NまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜3であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する付加的な5または6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよい;
ただし、R2はHではなく、R1がチオフェンである場合、R4はピペラジンではない]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
式(II)で示される5員環が、0〜2個の窒素を含有する、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
R1が、式(III)、(IV)、(V)および(VI):
【化3】

[式中:
Xは、O、NまたはSであり;
Yは、OまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nは0〜2であり;
mは0〜3であり;
2つの隣接したR5基は、0〜2個のヘテロ原子を含有する付加的な6員環を形成してもよく、ここで、該付加的な環は、C1−3アルキル、ハロゲン、アミノおよびアルコキシからなる群より選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよい;
ただし、R2はHではなく、R1がチオフェンである場合、R4はピペラジンではない]
からなる群より選択される式で示される、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
R1が、式(III)、(IV)、(V)および(VI):
【化4】

[式中:
Xは、O、NまたはSであり;
Yは、OまたはSであり;
各R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;nは0〜2であり;mは0〜3である;
ただし、R2はHではなく、R1がチオフェンである場合、R4はピペラジンではない]
からなる群より選択される式で示される、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項5】
各R2、R3およびR5が、独立して、ハロゲン、アシル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ニトロ、アシルオキシまたはアリールオキシから選択され;
nが0であり;
mが0〜3であり;
R4が水素またはアミノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R5が、水素、ハロゲン、アシル、アミノ、ホルミル、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキルからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
nが0であり;mが0〜3であり;および、R4が水素またはアミノである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
nが0であり;mが0〜3であり;XがNまたはOであり;および、R4が水素またはアミノである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R2が、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群より選択され;
Xが、NまたはOであり;
R5が、ホルミル、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アルキルカルボキシ、アリールアミノ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アシルオキシおよびアリールオキシからなる群より選択され;
R1が上記とは別のものであり;
nが0であり;
mが0〜3であり;および
R4が水素またはアミノである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R2が、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群より選択され;
R1が、ピラゾール、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、イソオキサゾールおよびイソチアゾールからなる群より選択される環であり、それらは各々、独立して、ホルミル、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シアノ、ヒドロキシルおよびアルコキシkらなる群より選択される、1〜2個の置換基で置換されていてもよく;
nは0であり;
R4は水素またはアミノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項11】
R1がピラゾールであり、独立して、ホルミル、ハロゲン、アシル、スルホニル、アミノ、置換アミノ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、置換C3−7シクロアルキル、C3−7ヘテロシクロアルキル、置換C3−7ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シアノ、ヒドロキシルおよびアルコキシからなる群より選択される、1〜2個の置換基で置換されていてもよく;
nが0であり;および
R4が水素である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
ヒトの1種または複数のホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)の阻害方法であって、治療上有効な量の請求項1記載の式(I)の化合物または医薬上許容される塩をヒトに投与することを含む、方法。
【請求項14】
ヒトにおける自己免疫障害、炎症性疾患、心血管疾患、神経変性疾患、アレルギー、喘息、膵炎、多臓器機能不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動能、移植拒絶反応、移植片拒絶反応および肺損傷からなる群より選択される1以上の病態の治療方法であって、治療上有効な量の請求項2記載の化合物を該ヒトに投与することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1記載の化合物および/またはその医薬上許容される塩、水和物、溶媒和物もしくはプロドラッグと少なくとも1種の抗腫瘍薬、例えば、微小管阻害薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害物質、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害物質、非受容体チロシンキナーゼ血管新生抑制剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、ならびに細胞周期シグナル阻害物質からなる群より選択されるものとの共投与を含む、癌の治療方法。
【請求項16】
疾患が癌である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
癌が、脳腫瘍(神経膠腫)、神経膠芽腫、白血病、バンナヤン−ゾナナ症候群、カウデン病、レルミット−デュクロ病、乳癌、炎症性乳癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、上衣腫、骨芽細胞腫、結腸癌、頭頚部癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、骨肉腫、骨巨細胞腫および甲状腺癌からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
疾患が、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌および白血病からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
該PI3キナーゼがPI3αである、請求項13記載の方法。
【請求項20】
該PI3キナーゼがPI3γである、請求項13記載の方法。
【請求項21】
請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩が、医薬組成物中に投与される、請求項13記載の方法。

【公表番号】特表2010−535804(P2010−535804A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520295(P2010−520295)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/072401
【国際公開番号】WO2009/021083
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】