説明

PLL回路

【課題】VCOのVT端子側から見えるバラクタダイオード数を減少させることによりリファレンスリークを低減するPLL回路を提供する。
【解決手段】PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧とVCOを予め関連付けて設定し、ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応するVCOを選択し、該VCOの電圧制御発振器制御電圧端子とループフィルタの出力端子との接続を制御する切替信号を生成するVCO切替回路と、切替信号に基づいて、選択されたVCOのみの電圧制御発振器制御電圧端子とループフィルタの出力端子を接続し、他のVCOの電圧制御発振器制御電圧端子とループフィルタの出力端子との接続を解除するVT選択回路と、を備えるVCOの制御電圧端子にバラクタダイオードが接続された、発振周波数帯域の異なる複数のVCOを備えるPLL回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の発振周波数をカバーする一つ若しくは複数の電圧制御発振器(以下、VCO:Voltage Controlled Oscillator)を備えるPLL(Phase Locked Loop)回路の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広い周波数範囲の信号を受信するチューナでは、周波数範囲をカバーするために発振周波数帯域の異なる複数のVCOを切り替えて最適なVCOを選択しており、選択されていないVCOは電流をオフにし切り離されている(電流オフ)ことが知られている。
【0003】
しかしながら、従来のように使用しないVCOの電流をオフするだけではリファレンスリークが低減できないという問題がある。なぜならリファレンスリークは、例えば複数のVCO構成で使用する場合、各VCOのVCO制御電圧端子(以後VT端子と呼ぶ)へのバラクタダイオードからのリーク電流により発生する。そして、リーク電流はVCO内部のVT端子に接続されているバラクタダイオードにより増加する。そのため、VCOの電流をオフしても、VCOのバラクタダイオードの数量が減少しないためリファレンスリークの量が低減できないという問題がある。
【0004】
これに対して特許文献1によれば、発振回路と、共振回路と、P点に接続された帯域切替え用付加コンデンサをオン/オフするスイッチ回路とからなるVCOにおいて、付加コンデンサをオン/オフするSWダイオードの接地側に安価な低電圧ダイオードを逆方向に接続し、P3点にバイアス抵抗を介して一定電圧VZを印加しておく。SW制御電圧を0Vに切替えたとき、点P3の電圧VZが保持されているので、SWダイオードに逆方向の電圧が印加されオフ状態となってRFリーク電流が流れず、Qの低下がなく、高いC/Nが保たれる。V/UHF帯無線機の局発に用いられ、高群と低群に分割した周波数帯域を切替えるスイッチ回路を備えたVCOにおいて、低コストで、帯域を切替えた時のC/N低下を防ぐ提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−353917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような実情に鑑みてなされたものであり、バラクタダイオードを設けることにより発生するリファレンスリークを低減し、広帯域にわたり安定した発振信号を出力するPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様のひとつであるVCOの制御電圧端子にバラクタダイオードが接続された、発振周波数帯域の異なる複数のVCOを備えるPLL回路は、VCO切替回路、VT選択回路を備える。
【0008】
VCO切替回路は、上記PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧と上記VCOを予め関連付けて設定し、上記ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応する上記VCOを選択し、該VCOの電圧制御発振器制御電圧端子と上記ループフィルタの出力端子との接続を制御する切替信号を生成する。
【0009】
VT選択回路は、上記切替信号に基づいて、選択されたVCOのみの上記電圧制御発振器制御電圧端子と上記ループフィルタの出力端子を接続し、他のVCOの電圧制御発振器制御電圧端子と上記ループフィルタの出力端子との接続を解除する。
【0010】
他の態様のひとつである発振周波数帯域の異なる複数の電圧制御発振器制御電圧端子にバラクタダイオードの一方が接続されたVCOを備えるPLL回路は、VCO切替回路、スイッチ回路を備える。
【0011】
VCO切替回路は、上記PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧と上記VCOを予め関連付けて設定し、上記ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応する上記VCOを選択し、該VCOの前記バラクタダイオードのアノード端子とグランド端子との接続を制御する切替信号を生成する。
【0012】
スイッチ回路は、上記切替信号に基づいて、選択されたVCOのみのバラクタダイオードのアノード端子と上記グランド端子を接続し、他のVCOのバラクタダイオードのアノード端子と上記グランド端子との接続を解除する。
【0013】
上記構成により、VCOのVT端子側から見えるバラクタダイオード数を減少させることによりリファレンスリークを低減することができる。
また、上記VCO切替回路の上記切替信号は、選択された上記電圧制御発振器のみの電流をオンにし、他の上記VCOの電流をオフにするとともに、選択された上記VCOのみの出力を選択する。
【発明の効果】
【0014】
バラクタダイオードを設けることにより発生するリファレンスリークを低減し、広帯域にわたり安定した発振信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Aは実施例1のPLL回路の構成を示す図である。Bは実施例1のVCOの構成例を示す図である。
【図2】Aは実施例2のPLL回路の構成を示す図である。Bは実施例2のVCOの構成例を示す図である。
【図3】Aは、従来のVCO3個を用いたPLL回路のバラクタダイオードにより発生するリーク電流とVCO制御電圧との関係を示す図である。Bは、従来のVCO3個を用いたPLL回路のバラクタダイオードにより発生するリーク電流とVCO制御電圧との関係の温度特性を示す図である。
【図4A】実施例3のPLL回路の構成を示す図である。
【図4B】実施例3のVCOの構成例を示す図である。
【図5A】実施例4のPLL回路の構成を示す図である。
【図5B】実施例4のVCOの構成例を示す図である。
【図6】VCO発振周波数とVT(VCO制御電圧)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(実施例1)
図1のAは、PLL回路1の構成を示すブロック図である。
【0017】
PLL回路1は、例えば、テレビチューナ用ICに搭載され、複数のVCOの中から受信したい放送局の周波数に適した周波数帯域のVCOを選択するための回路である。PLL回路1は、基準クロック発生器2(OSC)、位相比較器3(PD)、可変チャージポンプ4(CP)、ループフィルタ5(FIL)、A/Dコンバータ6(AD)、VCO切替回路7(VAS)、VCO8(8a〜8c)、VCO選択回路9(SEL)、プログラマブル分周器10(1/N)、VT選択回路11を備えている。
【0018】
基準クロック発生器2は、水晶振動子等から基準クロック信号を生成する回路である。なお、基準クロック発生器2から出力される基準クロック信号を、予め定められた分周比で分周して特定の周波数のクロック信号を位相比較器3に出力してもよい。
【0019】
位相比較器3は、プログラマブル分周器10の出力信号と、基準クロック発生器2から出力されるクロック信号の位相を比較し、位相差に応じた信号を可変チャージポンプ4に出力する。
【0020】
可変チャージポンプ4は、位相比較器3から出力されるアップ信号またはダウン信号に従って、ループフィルタ5のキャパシタの充電または放電を行う。
ループフィルタ5は、可変チャージポンプ4の出力電流を平滑してVCO8a〜8nの発振周波数を制御するVCO制御電圧として出力する。
【0021】
A/Dコンバータ6は、ループフィルタ5の出力信号をディジタル変換してVCO切替回路7に出力する。
VCO切替回路7は、ループフィルタ5から出力されるVCO制御電圧をA/D変換したディジタル信号に基づいて複数のVCO8a〜8cの内の1つを選択する。例えば、ディジタル信号を取得して、VCO8a〜8cごとに関連付けられて記録部に記録されているVCO制御電圧値の範囲(ディジタル値)と該ディジタル信号とを比較して、対応するVCOを選択しても良いし、図6に示す(1)〜(5)の順に、ディジタル値を比較し予め決めたVT範囲(例えば、1V〜2V:ADC=001〜110)になるようにVCO8を選択しても良い。
【0022】
次に、ループフィルタ5の出力端子と選択されたVCO8a〜8cのVT端子(電圧制御発振器制御電圧端子)を接続するために、VT選択回路11を切り替える切替信号を生成する。例えば、VCO8aが選択された場合には、VT1のラインのみがループフィルタ5の出力端子と接続されるような切替信号を生成する。切替信号を生成する方法として、VCO8a〜8cに関連付けてVT選択回路11を切り替えるコードを予めテーブルに記録し、このテーブルを参照して対象のコードを選択して切替信号とする。なお、切替信号の生成はテーブルを用いなくてもよく、演算などにより算出してもよい。
【0023】
また、VCO切替回路7は、対応するVCOだけに電流を供給するためにスイッチSW1a、SW1bを切り替える制御をする。スイッチSW1a、SW1bの切り替えは、切替信号により行う。例えば、VCO8aが選択された場合には、切替信号に基づいてVCO8aのスイッチSW1aをクローズし、スイッチSW1bをオープンにする。また、他のVCO8b、8cのスイッチSW1aはオープンにしてスイッチSW1bはクローズにする。電流の供給を制御する場合も、上記コードを利用して切替信号にする。なお、該コードとは別に電流の供給制御用の切替信号を生成してもよい。
【0024】
VCO8(8a〜8c)は、それぞれ発振周波数帯域の異なる電圧制御発振器であり、これらのVCO8の発振信号の内の1つがVCO切替回路7により選択されVCO出力に出力される。
【0025】
VCO選択回路9は、切替信号に基づいて選択されたVCO8の出力信号のみを出力する回路である。
プログラマブル分周器10は、VCO8のいずれかひとつから出力される発振信号を、分周データで指定される分周比で分周して位相比較器3に出力する。プログラマブル分周器10の分周比は、VCOの発振周波数と、PLL回路1の比較周波数(クロック信号の周波数)から決めることができる。本実施例では、位相比較器3に入力するクロック信号の周波数は一定であるので、そのクロック信号の周波数と分周データに基づいて、放送局の周波数に対して好適な発振周波数帯域を有するVCOを予め決めておくことができる。従って、VCO切替回路7は、分周データに基づいて、好適な発振周波数帯域のVCOを選択する信号を生成することができる。
【0026】
VT選択回路11は、ループフィルタ5の出力と接続するVCO8のVT端子を、切替信号に基づいて選択する。
図1のBは、複数のVCO8(8a〜8c)のいずれかひとつの構成例を示す図である。VT端子にはバラクタダイオードD1、D2のカソード端子が接続されている。バラクタダイオードD1のアノード端子にはコンデンサC1と抵抗R1が接続されている。コンデンサC1の他方の端子にはコイルL1とコンデンサC4とトランジスタTr1のコレクタ端子が接続されている。抵抗R1の他方の端子はグランドGNDと接続されている。バラクタダイオードD2のアノード端子にはコンデンサC2と抵抗R2が接続されている。コンデンサC2の他方の端子にはコイルL2とコンデンサC3とトランジスタTr2のコレクタ端子が接続されている。抵抗R2の他方の端子はグランドGNDと接続されている。
【0027】
コイルL1、L2の他方の端子は電源(VCC)に接続されている。
トランジスタTr1のベース端子はコンデンサC3の他方の端子と抵抗R3に接続されている。トランジスタTr2のベース端子はコンデンサC4の他方の端子と抵抗R4に接続されている。抵抗R3、R4の他方の端子は定電圧源に接続され、VcontをトランジスタTr1、Tr2に供給している。
【0028】
また、トランジスタTr1、Tr2のエミッタとトランジスタTr3のコレクタは接続され、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R5に接続されている。抵抗R5の他方の端子はグランドGNDに接続されている。トランジスタTr3のベースは、スイッチSW1a、SW1bの一方の端子と接続されている。スイッチSW1aの他方の端子はトランジスタTr4のベースとコレクタと電流源Isourceに接続されている。トランジスタTr4のエミッタは抵抗R6の一方の端子に接続されている。スイッチSW1bの他方の端子と抵抗R6の他方の端子はグランドGNDに接続されている。このように、電流源IsourceとスイッチSW1aを介してカレントミラーにより接続され、電流源から電流が供給される。また、スイッチSW1a、SW1bは切替信号により制御され、スイッチSW1aがクローズしているときスイッチSW1bはオープンし、スイッチSW1aがオープンしているときスイッチSW1bはクローズする。
【0029】
上記のように構成されたVCOの場合、各VT端子にはバラクタダイオードD1、D2が接続されているため、常時ループフィルタ5の出力と各VT端子が接続状態にされているとリーク電流が増加してしまう。しかし、必要なときだけループフィルタ5の出力と選択されているVCO8のVT端子を接続する。
(実施例2)
図2のAは、PLL回路20の構成を示すブロック図である。
【0030】
PLL回路20は、基準クロック発生器2(OSC)、位相比較器3(PD)、可変チャージポンプ4(CP)、ループフィルタ5(FIL)、A/Dコンバータ6(AD)、VCO切替回路7(VAS)、VCO8(8a〜8c)、VCO選択回路9(SEL)、プログラマブル分周器10(1/N)を備えている。実施例1と違うのは、VCO8ごとにVCO8内に設けられたスイッチ回路SW2をVCO切替回路7の出力信号(切替信号)により切り替えるところである。
【0031】
VCO切替回路7は、ループフィルタ5から出力されるVCO制御電圧をA/D変換したディジタル信号に基づいて複数のVCO8a〜8cの内の1つを選択する。例えば、ディジタル信号を取得して、VCO8a〜8cごとに関連付けられて記録部に記録されているVCO制御電圧値の範囲(ディジタル値)と該ディジタル信号とを比較して、対応するVCOを選択しても良いし、図6に示す(1)〜(5)の順に、ディジタル値を比較し予め決めたVT範囲(例えば、1V〜2V:ADC=001〜110)になるようにVCO8を選択しても良い。
【0032】
次に、ループフィルタ5の出力端子と選択されたVCO8a〜8cのVT端子(電圧制御発振器制御電圧端子)だけにVCO制御電圧を供給するためにスイッチ回路SW2のスイッチS1、S2を制御する。例えば、VCO8aが選択された場合には、VCO8aのスイッチ回路SW2のスイッチS1、S2をクローズし、それ以外のVCO8b、8cのスイッチ回路SW2はオープンにするような切替信号を生成する。切替信号を生成する方法として、VCO8a〜8cに関連付けてスイッチ回路SW2のスイッチS1、S2を切り替えるコードを予めテーブルに記録し、このテーブルを参照して対象のコードを選択して切替信号とする。なお、切替信号の生成はテーブルを用いなくてもよく、演算などにより算出してもよい。
【0033】
また、VCO切替回路7は、対応するVCOだけに電流を供給するためにスイッチSW1a、SW1bを切り替える制御をする。スイッチSW1a、SW1bの切り替えは、切替信号により行う。例えば、VCO8aが選択された場合には、切替信号に基づいてVCO8aのスイッチSW1aをクローズし、スイッチSW1bをオープンにする。また、他のVCO8b、8cのスイッチSW1aはオープンにしてスイッチSW1bはクローズにする。電流の供給を制御する場合も、上記コードを利用して切替信号にする。なお、該コードとは別に電流の供給制御用の切替信号を生成してもよい。
【0034】
VCO8(8a〜8c)は、それぞれ発振周波数帯域の異なる電圧制御発振器であり、これらのVCO8の発振信号の内の1つがVCO切替回路7により選択され図示しない他の回路に出力される。
【0035】
図2のBは、複数のVCO8(8a〜8c)のいずれかひとつの構成例を示す図である。VT端子にはバラクタダイオードD1、D2のカソード端子が接続されている。バラクタダイオードD1のアノード端子にはコンデンサC1とスイッチ回路SW2のスイッチS1(例えばトランジスタ、以降のスイッチS2〜S14も同様)が接続されている。コンデンサC1の他方の端子にはコイルL1とコンデンサC4とトランジスタTr1のコレクタ端子が接続されている。スイッチ回路SW2のスイッチS1の他方の端子はグランドGNDと接続されている。バラクタダイオードD2のアノード端子にはコンデンサC2とスイッチ回路SW2のスイッチS2(例えばトランジスタ)が接続されている。コンデンサC2の他方の端子にはコイルL2とコンデンサC3とトランジスタTr2のコレクタ端子が接続されている。スイッチ回路SW2のスイッチS2の他方の端子はグランドGNDと接続されている。
【0036】
コイルL1、L2の他方の端子は電源(VCC)に接続されている。
トランジスタTr1のベース端子はコンデンサC3の他方の端子と抵抗R3に接続されている。トランジスタTr2のベース端子はコンデンサC4の他方の端子と抵抗R4に接続されている。抵抗R3、R4の他方の端子は定電圧源に接続され、VcontをトランジスタTr1、Tr2に供給している。
【0037】
また、トランジスタTr1、Tr2のエミッタとトランジスタTr3のコレクタは接続され、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R5に接続されている。抵抗R5の他方の端子はグランドGNDに接続されている。トランジスタTr3のベースは、スイッチSW1a、SW1bの一方の端子と接続されている。スイッチSW1aの他方の端子はトランジスタTr4のベースとコレクタと電流源Isourceに接続されている。トランジスタTr4のエミッタは抵抗R6の一方の端子に接続されている。スイッチSW1bの他方の端子と抵抗R6の他方の端子はグランドGNDに接続されている。このように、電流源IsourceとスイッチSW1aを介してカレントミラーにより接続され、電流源から電流が供給される。また、スイッチSW1a、SW1bは切替信号により制御され、スイッチSW1aがクローズしているときスイッチSW1bはオープンし、スイッチSW1aがオープンしているときスイッチSW1bはクローズする。
【0038】
上記のように構成されたVCOの場合、各VT端子にはバラクタダイオードD1、D2が接続されているため、常時ループフィルタ5の出力と各VT端子が接続状態にされているとリーク電流が増加してしまう。しかし、必要なときだけスイッチ回路SW2のスイッチS1、S2をクローズし、使用しないときはスイッチS1、S2をオープンにすることによりリーク電流を低減させることができる。
【0039】
図3のAは、従来のVCO3個を用いたPLL回路(VT端子から見えるバラクタダイオードの数量が6個)のバラクタダイオードにより発生するリーク電流(リファレンスリーク)とVCO制御電圧との関係を示す図である。縦軸にリーク電流Leak(A)、横軸にVCO制御電圧VT(V)が示されている。本実施例1、2場合には、リーク電流を従来の1/3にすることができる。このとき、VT端子側から見えるバラクタダイオードの数量は2個(1対)である。
【0040】
また、図3のBは、図3のAの温度特性を示す図である。VCO制御電圧が増加するに従いリファレンスリークが増加し、温度が上昇するほどリファレンスリークの変動が大きくなる傾向にある。そのため、温度が上昇した場合に本実施例1、2は特に有効であることが分かる。
(実施例3)
図4Aは、PLL回路40の構成を示すブロック図である。
【0041】
PLL回路40は、基準クロック発生器2(OSC)、位相比較器3(PD)、可変チャージポンプ4(CP)、ループフィルタ5(FIL)、A/Dコンバータ6(AD)、VCO切替回路7(VAS)、VCO8d、プログラマブル分周器10(1/N)を備えている。実施例1と違うのは、複数のVCO8a〜8cの代わりにVCO8dが設けられているところである。
【0042】
図4Bは、VCO8dの構成例を示す図である。VCO8dは3個の発振部を備えている。発振部AはバラクタダイオードD11、D21を有し、発振部BはバラクタダイオードD12、D22を有し、発振部CはバラクタダイオードD13、D23を有する。
【0043】
VT1端子にはバラクタダイオードD11、D21のカソード端子が接続されている。バラクタダイオードD11のアノード端子にはコンデンサC11と抵抗R7が接続されている。コンデンサC11の他方の端子にはスイッチS3の一方の端子が接続され、スイッチS3の他方の端子にはコイルL1とスイッチS5、S7、コンデンサC4、トランジスタTr1のコレクタが接続されている。バラクタダイオードD21のアノード端子にはコンデンサC21と抵抗R8が接続されている。コンデンサC21の他方の端子にはスイッチS4の一方の端子が接続され、スイッチS4の他方の端子にはコイルL2とスイッチS6、S8、コンデンサC3とトランジスタTr2のコレクタが接続されている。
【0044】
VT2端子にはバラクタダイオードD12、D22のカソード端子が接続されている。バラクタダイオードD12のアノード端子にはコンデンサC12と抵抗R9が接続されている。コンデンサC12の他方の端子にはスイッチS5の一方の端子が接続されている。バラクタダイオードD22のアノード端子にはコンデンサC22と抵抗R10が接続されている。コンデンサC22の他方の端子にはスイッチS6の一方の端子が接続されている。
【0045】
VT3端子にはバラクタダイオードD13、D23のカソード端子が接続されている。バラクタダイオードD13のアノード端子にはコンデンサC13と抵抗R11が接続されている。コンデンサC13の他方の端子にはスイッチS7の一方の端子が接続されている。バラクタダイオードD23のアノード端子にはコンデンサC23と抵抗R12が接続されている。コンデンサC23の他方の端子にはスイッチS8の一方の端子が接続されている。
【0046】
VCO8dの各VT端子とループフィルタ5の出力端子との接続は、切替信号に基づいて制御され、例えば、切替信号に基づいて選択された発振部AのVT1端子へVT信号を供給するように切り替えがされると、VT2、3端子にはVT信号は供給されない。また、スイッチS3、S4は切替信号に基づいてクローズし、スイッチS5、S6、S7、S8をオープンにする。このように、スイッチS3〜S8を制御することにより選択されている発振部だけを動作させ、選択されていない発振部は停止させる。
【0047】
コイルL1、L2の他方の端子は電源(VCC)に接続されている。
トランジスタTr1のベース端子はコンデンサC3の他方の端子と抵抗R3に接続されている。トランジスタTr2のベース端子はコンデンサC4の他方の端子と抵抗R4に接続されている。抵抗R3、R4の他方の端子は定電圧源に接続され、VcontをトランジスタTr1、Tr2に供給している。
【0048】
また、トランジスタTr1、Tr2のエミッタとトランジスタTr3のコレクタは接続され、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R5に接続されている。抵抗R5の他方の端子はグランドGNDに接続されている。トランジスタTr3のベースは、トランジスタTr4のベースとコレクタと電流源Isourceに接続されている。トランジスタTr4のエミッタは抵抗R6の一方の端子に接続され、抵抗R6の他方の端子はグランドGNDに接続されている。このように、電流源Isourceとカレントミラー接続され、電流源から電流が供給される。
【0049】
上記のように構成されたVCO8dの場合、各VT端子にはバラクタダイオードD11、D21、D12、D22、D13、D23が接続され、常時ループフィルタ5の出力と各VT端子が接続状態にされているためリーク電流が増加してしまう。しかし、必要なときだけループフィルタ5の出力とVCO8dの選択されている発振部のVT端子を接続することによりリーク電流を低減させることができる。
(実施例4)
図5Aは、PLL回路50の構成を示すブロック図である。
【0050】
PLL回路50は、基準クロック発生器2(OSC)、位相比較器3(PD)、可変チャージポンプ4(CP)、ループフィルタ5(FIL)、A/Dコンバータ6(AD)、VCO切替回路7(VAS)、VCO8e、プログラマブル分周器10(1/N)を備えている。実施例1と違うのは、複数のVCO8a〜8cの代わりにVCO8eが1つ設けられているところである。
【0051】
図5Bは、VCO8eの構成例を示す図である。VCO8eは3個の発振部を備えている。発振部AはバラクタダイオードD11、D21を有し、発振部BはバラクタダイオードD12、D22を有し、発振部CはバラクタダイオードD13、D23を有する。
【0052】
VT端子にはバラクタダイオードD11、D21、D12、D22、D13、D23のカソード端子が接続されている。バラクタダイオードD11のアノード端子にはコンデンサC11とスイッチ回路SW3のスイッチS9が接続されている。コンデンサC11の他方の端子にはスイッチS3の一方の端子が接続され、スイッチS3の他方の端子にはコイルL1とスイッチS5、S7、コンデンサC4とトランジスタTr1のコレクタ端子が接続されている。スイッチ回路SW3のスイッチS9の他方の端子はグランドGNDと接続されている。バラクタダイオードD21のアノード端子にはコンデンサC21とスイッチ回路SW3のスイッチS10(例えばトランジスタ)が接続されている。コンデンサC21の他方の端子にはスイッチS4の一方の端子が接続され、スイッチS4の他方の端子にはコイルL2とスイッチS6、S8、コンデンサC3とトランジスタTr2のコレクタ端子が接続されている。スイッチ回路SW3のスイッチS10の他方の端子はグランドGNDと接続されている。
【0053】
バラクタダイオードD12のアノード端子にはコンデンサC12とスイッチ回路SW3のスイッチS11が接続されている。コンデンサC12の他方の端子にはスイッチS5の一方の端子が接続されている。スイッチ回路SW3のスイッチS11の他方の端子はグランドGNDと接続されている。バラクタダイオードD21のアノード端子にはコンデンサC22とスイッチ回路SW3のスイッチS12が接続されている。コンデンサC22の他方の端子にはスイッチS6の一方の端子が接続されている。スイッチ回路SW3のスイッチS12の他方の端子はグランドGNDと接続されている。
【0054】
バラクタダイオードD13のアノード端子にはコンデンサC13とスイッチ回路SW3のスイッチS13(例えばトランジスタ)が接続されている。コンデンサC13の他方の端子にはスイッチS7の一方の端子が接続されている。スイッチ回路SW3のスイッチS13の他方の端子はグランドGNDと接続されている。バラクタダイオードD23のアノード端子にはコンデンサC23とスイッチ回路SW3のスイッチS14(例えばトランジスタ)が接続されている。コンデンサC23の他方の端子にはスイッチS8の一方の端子が接続されている。スイッチ回路SW3のスイッチS14の他方の端子はグランドGNDと接続されている。
【0055】
上記スイッチ回路SW3は切替信号に基づいてオープン/クローズが制御される。例えば、切替信号に基づいて選択された発振部AのVT1端子へVT信号を供給するように切り替えがされるとき、スイッチ回路SW3のS9、S10をクローズし、他のS11〜S14をオープンにする。また、スイッチS3、S4は切替信号に基づいて制御されクローズし、スイッチS5、S6、S7、S8はオープンにする。このように、スイッチS3〜S8を制御することにより選択されている発振部だけを動作させ、選択されていない発振部は停止させる。
【0056】
コイルL1、L2の他方の端子は電源(VCC)に接続されている。
トランジスタTr1のベース端子はコンデンサC3の他方の端子と抵抗R3に接続されている。トランジスタTr2のベース端子はコンデンサC4の他方の端子と抵抗R4に接続されている。抵抗R3、R4の他方の端子は定電圧源に接続され、VcontをトランジスタTr1、Tr2に供給している。
【0057】
また、トランジスタTr1、Tr2のエミッタとトランジスタTr3のコレクタは接続され、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R5に接続されている。抵抗R5の他方の端子はグランドGNDに接続されている。トランジスタTr3のベースはトランジスタTr4のベースとコレクタと電流源Isourceに接続されている。トランジスタTr4のエミッタは抵抗R6の一方の端子に接続され、抵抗R6の他方の端子はグランドGNDに接続されている。このように、電流源Isourceとカレントミラー接続され電流が供給される。
【0058】
上記のように構成されたVCO8eの場合、各VT端子にはバラクタダイオードD11、D21、D12、D22、D13、D23が接続されているため、常時ループフィルタ5の出力と各VT端子が接続状態にされているためリーク電流が増加してしまう。そこで、必要なときだけVCO8eの発振部を選択する。そして、選択した発振部に対応するスイッチS3〜S8を選択してクローズする。そして、使用しない発振部に対応するスイッチはオープンにしてリーク電流を低減させる。
【0059】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、20、40、50 PLL回路、
2 基準クロック発生器、
3 位相比較器、
4 可変チャージポンプ、
5 ループフィルタ、
6 A/Dコンバータ、
7 VCO切替回路、
8 VCO、
9 VCO選択回路、
10 プログラマブル分周器、
11 VT選択回路、
D1、D2 バラクタダイオード、
SW1a、SW1b スイッチ、
SW2、SW3 スイッチ回路、
S1〜S14 スイッチ、
C1〜C4、C11〜C13、C21〜C23 コンデンサ、
D1、D2、D11〜D13、D21〜D23 バラクタダイオード、
L1、L2 コイル、
R1〜R12 抵抗、
Tr1〜Tr4 トランジスタ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VCOの制御電圧端子にバラクタダイオードが接続された、発振周波数帯域の異なる複数のVCOを備えるPLL回路であって、
前記PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧と前記VCOを予め関連付けて設定し、前記ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応する前記VCOを選択し、該VCOの電圧制御発振器制御電圧端子と前記ループフィルタの出力端子との接続を制御する切替信号を生成するVCO切替回路と、
前記切替信号に基づいて、選択されたVCOのみの前記電圧制御発振器制御電圧端子と前記ループフィルタの出力端子を接続し、他のVCOの電圧制御発振器制御電圧端子と前記ループフィルタの出力端子との接続を解除するVT選択回路と、
を備えることを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記VCO切替回路の前記切替信号は、
選択された前記VCOのみの電流をオンにし、他の前記VCOの電流をオフにするとともに、選択された前記VCOのみの出力を選択することを特徴とする請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
VCOの制御電圧端子にバラクタダイオードが接続された、発振周波数帯域の異なる複数のVCOを備えるPLL回路であって、
前記PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧と前記VCOを予め関連付けて設定し、前記ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応する前記VCOを選択し、該VCOの前記バラクタダイオードのアノード端子とグランド端子との接続を制御する切替信号を生成するVCO切替回路と、
前記切替信号に基づいて、選択されたVCOのみの前記バラクタダイオードのアノード端子と前記グランド端子を接続し、他のVCOの前記バラクタダイオードのアノード端子と前記グランド端子との接続を解除するスイッチ回路と、
を備えることを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
前記VCO切替回路の前記切替信号は、
選択された前記VCOのみの電流をオンにし、他の前記VCOの電流をオフにするとともに、選択された前記VCOのみの出力を選択することを特徴とする請求項4に記載のPLL回路。
【請求項5】
VCOの制御電圧端子にバラクタダイオードが接続された、発振周波数帯域の異なる複数の発振部を備えるPLL回路であって、
前記PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧と前記発振部を予め関連付けて設定し、前記ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応する前記発振部を選択し、該発振部の電圧制御発振器制御電圧端子と前記ループフィルタの出力端子との接続を制御する切替信号を生成するVCO切替回路と、
前記切替信号に基づいて、選択された発振部のみの前記電圧制御発振器制御電圧端子と前記ループフィルタの出力端子を接続し、他の発振部の電圧制御発振器制御電圧端子と前記ループフィルタの出力端子との接続を解除するVT選択回路と、
を備えることを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
VCOの制御電圧端子にバラクタダイオードが接続された、発振周波数帯域の異なる複数の発振部を備えるPLL回路であって、
前記PLL回路を構成するループフィルタから出力されるVCO制御電圧と前記発振部を予め関連付けて設定し、前記ループフィルタのVCO制御電圧に基づいて対応する前記発振部を選択し、該VCOの前記バラクタダイオードのアノード端子とグランド端子との接続を制御する切替信号を生成するVCO切替回路と、
前記切替信号に基づいて、選択された発振部のみの前記バラクタダイオードのアノード端子と前記グランド端子を接続し、他の発振部の前記バラクタダイオードのアノード端子と前記グランド端子との接続を解除するスイッチ回路と、
を備えることを特徴とするPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−226286(P2010−226286A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69673(P2009−69673)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】