説明

PLL回路

【課題】ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化をとバランス良く達成する。
【解決手段】電圧制御発振器(104)の制御電圧VCONTをアナログ/デジタル変換して得られるデジタル信号(ADCO)を出力するアナログ/デジタル変換回路(106)と、基準クロック信号(FREF)と帰還クロック信号(FDIV)とがロックしたことを検出した時にロック検出信号(S201)を出力するロック検出部(201)と、ロック検出部からロック検出信号が入力された時にアナログ/デジタル変換回路から入力されたロック時デジタル信号を保持する保持部(107)と、保持部に保持されたロック時デジタル信号とアナログ/デジタル変換回路から出力されたデジタル信号との比較結果に基づいてチャージポンプ電流の電流量を段階的に減少させるチャージポンプ電流量制御信号(CPCONT)を生成するチャージポンプ制御部(108)と、を備えるPLL回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のPLL回路の構成について図8を用いて説明する。図8に示すPLL回路は、位相周波数差検出回路701と、チャージポンプ回路702と、ローパスフィルタ703と、電圧制御発振器704と、分周器705と、を備えて構成されている。
【0003】
位相周波数差検出回路701は、基準クロック信号FREFと出力クロック信号FVCOに応じた帰還クロック信号FDIVとの間の位相差及び周波数差を検出し、当該位相差及び当該周波数差に応じてチャージポンプ回路702を制御するためのアップパルス信号UP及びダウンパルス信号DOWNを出力する。具体的には、帰還クロック信号FDIVが基準クロック信号FREFよりも位相が遅れている(又は周波数が低い)場合、帰還クロック信号FDIVの周波数を高くさせる位相差及び周波数差に応じたパルス幅のアップパルス信号UPを出力する。逆に、帰還クロック信号FDIVが基準クロック信号FREFに比べて位相が進んでいる(又は周波数が高い)場合、帰還クロック信号FDIVの周波数を低くさせる位相差及び周波数差に応じたパルス幅のダウンパルス信号DOWNを出力する。
【0004】
チャージポンプ回路702は、位相周波数差検出回路701から出力されたアップパルス信号UP又はダウンパルス信号DOWNに応じたチャージポンプ電流ICPOを出力する。ローパスフィルタ703は、チャージポンプ回路702からのチャージポンプ電流ICPOを平滑化してアナログ電圧信号VCONTを出力する。電圧制御発振器704は、ローパスフィルタ703からのアナログ電圧信号VCONTに応じて決まる発振周波数の出力クロック信号FVCOを出力する。分周器705は、出力クロック信号FVCOを任意の分周数で分周した帰還クロック信号FDIVを生成して、位相周波数差検出回路701にフィードバックする。これにより、基準クロック信号FREFに位相同期しており、かつ上記分周数の逆数で逓倍した基準クロック信号FREFの周波数を持つ出力クロック信号FVCOを得ることができる。
【0005】
ところで、PLL回路の性能向上を図るためには、PLL動作開始からロック完了までの時間であるロックアップタイムの高速化と、ロック後の安定性や出力クロック信号のノイズに影響を与えるリファレンスリーク(スプリアス)の低減化とを実現する必要がある。ロックアップタイムを高速化するためには、チャージポンプ回路の出力電流を大きくすればよいが、その反面、ロック後にリファレンスリークが悪化してしまう。反対にリファレンスリークを良化させるためには、チャージポンプの出力電流を小さくすればよいが、その反面、ロックアップタイムが長くなってしまう。
【0006】
このように、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化との間にはトレードオフの関係が成立するので、両方をバランス良く実現する必要がある。そこで、特許文献1と特許文献2とにそれぞれ開示された従来技術が提案されている。
【0007】
特許文献1では、チャージポンプ電流を切替可能なPLL回路において、チャージポンプ電流を制御するアップパルス信号とダウンパルス信号とのパルス幅の差がパルス幅差生成器によって識別され、当該パルス幅が大きい場合にはチャージポンプ電流を大きくさせ、一方当該パルス幅の差が小さい場合にはチャージポンプ電流を小さくさせることが提案されている。
【0008】
特許文献2では、PLL回路において、ローパスフィルタから出力された電圧制御発振器の制御電圧に基づいて、ループゲイン及びダンピングファクタが変動しないように、チャージポンプ電流を補正することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−233681号公報
【特許文献2】特開平11−251902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1、2に開示されたPLL回路の技術には次のような課題がある。
【0011】
特許文献1に開示されたPLL回路では、位相比較器とチャージポンプ回路の間には、ロック検出及びチャージポンプ電流を切り替えるためのパルス幅差検出器が設けられている。PLL回路の設計上、位相比較器とチャージポンプ回路との間の信号パスはノイズなどの外乱により特性劣化の影響を受けやすいことが知られており、ロック後のPLL回路の安定性(ジッタなど)に影響を与える可能性がある。よって、チャージポンプ電流を適切に切り替えることができない虞がある。
【0012】
特許文献2に開示されたPLL回路では、電圧制御発振器の制御電圧に応じてチャージポンプ電流を補正しているが、電圧制御発振器の制御電圧と発振周波数との関係は、図9に示すように、特に温度変化の影響を受けやすく、同じ制御電圧であっても発振周波数が変化するため、温度変化に対応した制御が必要となる。よって、電圧制御発振器の制御電圧に応じてチャージポンプ電流を適切に補正できない虞がある。
【0013】
また、特許文献1、2それぞれのPLL回路に共通する点として、ロック検出用の回路及び制御回路はアナログ回路として設計されるため、PLL回路規模の増大やプロセスばらつきによる不安定な要素を含んでいる。
【0014】
本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化とをバランス良く達成したPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、基準クロック信号と出力クロック信号に応じた帰還クロック信号との間の位相差及び周波数差に応じたパルス幅の位相周波数差信号を出力する位相周波数差検出回路と、前記位相周波数差信号に応じた出力電流であるチャージポンプ電流を出力するとともに、チャージポンプ電流量を段階的に減少させるチャージポンプ電流量制御信号に基づいて当該チャージポンプ電流量を段階的に減少させるように構成されたチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ電流を平滑化して得られる制御電圧を出力するローパスフィルタと、前記制御電圧に応じた発振周波数の前記出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路と、前記制御電圧をアナログ/デジタル変換して得られるデジタル信号を出力するアナログ/デジタル変換回路と、前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号とがロックしたか否かを検出して当該ロックを検出した時にロック検出信号を出力するロック検出部と、前記ロック検出部から前記ロック検出信号が入力された時に前記アナログ/デジタル変換回路から入力された前記デジタル信号(以下、ロック時デジタル信号という)を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記ロック時デジタル信号と前記アナログ/デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号との比較結果に基づいて前記チャージポンプ電流量制御信号を生成して前記チャージポンプ回路に出力するチャージポンプ制御部と、を備えるPLL回路である。
【0016】
この構成によれば、基準クロック信号と帰還クロック信号とが同期したことが検出されるまでは、チャージポンプ電流量が変わらないので、ロックアップタイムの高速化が図られる。また、基準クロック信号と帰還クロック信号とが同期したことが検出された時は、チャージポンプ電流量を段階的に減少させるので、リファレンスリークの低減化が図られる。このように、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化とをバランス良く達成できる。
【0017】
上記のPLL回路において、前記チャージポンプ制御部は、前記保持部に保持された前記ロック時デジタル信号の保持値を上回る上限閾値及び当該保持値を下回る下限閾値を生成する閾値生成部と、前記アナログ/デジタル変換回路からの前記デジタル信号が前記下限閾値から前記上限閾値までのロック検出範囲内にあるか否かを検出する比較部と、前記比較部において前記アナログ/デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号が前記ロック検出範囲内に初めて到達したことが検出されたことを契機として、初期電流量である第1電流量から当該第1電流量よりも少ない第2電流量に切り替える前記チャージポンプ電流量制御信号を生成する前記制御信号生成部と、を備えるとしてもよい。
【0018】
この構成によれば、PLL回路が前回ロックした時に保持部に保持されたデジタル信号を含むロック検出範囲内を事前に設定しておくことで、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化とをバランス良く達成すべく、チャージポンプ電流量を減少させるタイミング(デジタル信号がロック検出範囲内に初めて到達したこと)を最適化できる。
【0019】
上記のPLL回路において、前記制御信号生成部は、前記比較部において前記アナログ/デジタル変換回路からの前記デジタル信号が前記ロック検出範囲内に初めて到達したことが検出されたことを契機として、前記比較部において前記アナログ/デジタル変換回路からの前記デジタル信号が前記ロック検出範囲内から外れるか又は前記ロック検出範囲内に到達したことが検出される毎に、チャージポンプ電流の初期電流量から当該初期電流量よりも少ない電流量に段階的に減少させる前記チャージポンプ電流量制御信号を生成する、としてもよい。
【0020】
この構成によれば、チャージポンプ電流量を急激に減少させるのではなく、PLL回路のロックが安定化するに従ってチャージポンプ電流量を徐々に減少させるので、PLL回路の動作をより安定化させることができる。
【0021】
上記のPLL回路において、前記保持部に保持させる前記ロック時デジタル信号は任意に設定可能である、としてもよい。
【0022】
この構成によれば、チャージポンプ電流量を減少させる最適なタイミングを容易に設定可能となる。
【0023】
上記のPLL回路において、外部からの外部ロック検出信号又は前記ロック検出部からの前記ロック検出信号を所定の選択制御信号に基づいて選択して前記保持部に出力する選択部を備える、としてもよい。
【0024】
この構成によれば、外部ロック検出信号又はロック検出部から出力されるロック検出信号を用いて、保持部においてデジタル信号を保持させるタイミングをより柔軟に決定できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化とをバランス良く達成した高性能のPLL回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態に係るPLL回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1に示す保持部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は図2に示すロック検出部のロック検出方法を説明するための図である。
【図4】図4は図1に示す制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は図4に示すチャージポンプ制御部によるチャージポンプ電流量の2値切り替えを説明するための図である。
【図6】図6は本発明の第2の実施の形態に係るPLL回路におけるチャージポンプ制御部によるチャージポンプ電流量の多値切り替えを説明するための図である。
【図7】図7は本発明の第4の実施の形態に係るPLL回路における保持部の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は従来のPLL回路の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は従来のPLL回路のVCO制御電圧と発振周波数との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
[PLL回路]
以下、図1を用いて本発明の第1の実施の形態に係るPLL回路の構成を説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るPLL回路の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すPLL回路は、位相周波数差検出回路101と、チャージポンプ回路102と、ローパスフィルタ103と、電圧制御発振器104と、分周器105と、アナログ/デジタル変換回路106と、ロック検出部201と、保持部107と、チャージポンプ制御部108と、を備えて構成されている。
【0030】
位相周波数差検出回路101は、基準クロック信号FREFと帰還クロック信号FDIVとの間の位相差及び周波数差を検出し、当該位相差及び周波数差に応じてチャージポンプ回路102を制御するアップパルス信号UP及びダウンパルス信号DOWNを出力し続ける。具体的には、帰還クロック信号FDIVが基準クロック信号FREFよりも位相が遅れている(又は周波数が低い)場合、帰還クロック信号FDIVの周波数を高くさせる位相差及び周波数差に応じたパルス幅のアップパルス信号UPを出力する。逆に、帰還クロック信号FDIVが基準クロック信号FREFに比べて位相が進んでいる(又は周波数が高い)場合、帰還クロック信号FDIVの周波数を低くさせる位相差及び周波数差に応じたパルス幅のダウンパルス信号DOWNを出力する。
【0031】
チャージポンプ回路102は、位相周波数差検出回路101から出力されたアップパルス信号UP及びダウンパルス信号DOWNを合成したチャージポンプ電流ICPOを出力するように構成されている。さらに、チャージポンプ回路102は、チャージポンプ制御部108から出力されたチャージポンプ電流量制御信号CPCONTに基づいて、チャージポンプ電流ICPOの電流量を第1の電流量又は当該第1の電流量よりも少ない第2の電流量の2段階に切り替え可能なように構成されている。例えば、特開平11−251902号公報の図11に示されているように、チャージポンプ回路102は、第1の電流量に対応した第1の電流源と、第2の電流量に対応した第2の電流源とを備え、チャージポンプ制御部108から出力されたチャージポンプ電流量制御信号CPCONTに基づいて第1の電流源又は第2の電流源を動作させるように構成すればよい。
【0032】
ローパスフィルタ103は、チャージポンプ回路102からのチャージポンプ電流ICPOを平滑化してアナログ電圧信号VCONTを出力する。電圧制御発振器104は、ローパスフィルタ103からのアナログ電圧信号VCONTに応じて決まる周波数の出力クロック信号FVCOを出力する。分周器105は、電圧制御発振器104からの出力クロック信号FVCOを任意の分周数により分周された帰還クロック信号FDIVを出力する。これにより、基準クロック信号FREFに同期し、かつ基準クロック信号FREFを上記分周数の逆数で逓倍した周波数を持つ出力クロック信号FVCOを得ることができる。なお、周波数を変更する必要がない場合には、分周器105を設ける必要はない。
【0033】
アナログ/デジタル変換回路106は、ローパスフィルタ103から出力されたアナログ電圧信号VCONTをデジタル信号ADCOに変換する。保持部107は、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOを保持する。チャージポンプ制御部108は、保持部107から読み出したロック時デジタル信号S107(ADCO)と、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOとを比較し、その比較結果に応じてチャージポンプ電流ICPOの電流量を第1の電流量から当該第1の電流量よりも少なく第2の電流量に切り替えるチャージポンプ電流量制御信号CPCONTを出力する。
【0034】
ロック検出部201は、基準クロック信号FREFと帰還クロック信号FDIVとがロックしたか否かを検出して、当該ロックを検出した時にロック検出信号S201を出力する。
【0035】
保持部107は、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOとロック検出信号S201とが入力され、ロック検出部201からロック検出信号S201が入力された時にアナログ/デジタル変換回路106から入力されたデジタル信号(以下、ロック時デジタル信号という)S107を保持する。
【0036】
チャージポンプ制御部108は、保持部107に保持されたロック時デジタル信号S107とアナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOとが入力され、両者の比較結果に基づいてチャージポンプ電流量制御信号CPCONTを生成してチャージポンプ回路102に出力する。
[保持部]
以下、図2を用いて図1に示した保持部107の構成を説明する。
【0037】
図2は、図1に示した保持部107の構成を示すブロック図である。図2に示す保持部107は、選択部202と、Dフリップフロップ203とを備えて構成されている。
【0038】
選択部202は、ロック検出部201からロック検出信号S201が出力されたことを契機として、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOを、出力信号S202としてDフリップフロップ203に向けて伝送し、そこに保持させる。具体的には、選択部202は、ロック検出信号S201のレベルがアクティブ(1)の場合、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOは、選択部202を介してDフリップフロップ203に伝送されて保持される。一方、ロック検出信号S201のレベルがネガティブ(0)の場合、Dフリップフロップ203の出力が選択部202を介してDフリップフロップ203の入力に帰還される。つまり、Dフリップフロップ203に保持されているデジタル信号ADCOが引き続き保持される。以後、Dフリップフロップ203は、ロック検出部201から再びロック検出信号S201が出力されない限り、デジタル信号ADCOを保持し続ける。かかる構成により、保持部107は、PLL回路がロックした時のロック時デジタル信号ADCOを保持することができる。
【0039】
図3を用いてロック検出部201におけるロック検出方法を説明する。なお、図3は、PLL動作開始からロック検出までのデジタル信号ADCOの変遷を例示した図である。図3に示す波形の中で、PLL動作開始から出現する各ピークはP1、P2、・・・、P4と順に表され、PLL動作開始から出現する各ボトムはB1、B2、・・・、B4と順に表される。ここで、ピークP1とボトムB1との差の絶対値をΔ1、ピークP2とボトムB1との差の絶対値をΔ2、・・・、ピークP4とボトムB3との差の絶対値をΔ6と表したとき、ロック検出部201は、ピークとボトムとの差の絶対値が基準値以下になった場合に、PLL回路がロックしたことを検出する。なお、上記の基準値は任意の値とする。
[チャージポンプ制御部]
まず、図4を用いて図1に示したチャージポンプ制御部108の構成を説明する。
【0040】
図4は、図1に示したチャージポンプ制御部108の構成を示すブロック図である。図4に示すチャージポンプ制御部108は、保持部107から出力されたロック時デジタル信号S107(ADCO)に基づいて上限閾値及び下限閾値を生成する閾値生成部301と、閾値生成部301により生成された上限閾値及び下限閾値とアナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOとを比較する比較部302と、比較部302からその比較結果を表す出力信号S302が入力され、その出力信号S302に基づいてチャージポンプ電流量を段階的に減少させるためのチャージポンプ電流量制御信号CPCONTを生成する制御信号生成部303と、を備える。
【0041】
つぎに、図5を用いて図1に示したチャージポンプ制御部108によるチャージポンプ電流量の切替動作を説明する。
【0042】
図5は、図4に示すチャージポンプ制御部108によるチャージポンプ電流量の2値切り替えを説明するための図である。初回のPLL動作時において帰還クロック信号FDIVと基準クロック信号FREFとがロックした時、保持部107は、ロック検出部201により当該ロックしたことを検出して、Dフリップフロップ203においてロック時デジタル信号ADCOを保持させる。また、チャージポンプ制御部108は、閾値生成部301によって、保持部107に保持されたロック時デジタル信号ADCOに対し、変数αを加算した値を上限閾値として生成するとともに、変数βを減算した値を下限閾値として生成する。なお、変数α及びβの値はレジスタ等により任意に設定可能とする。また、以下では、下限閾値から上限閾値までの範囲のことをロック検出範囲と呼ぶ。ロック検出範囲内にデジタル信号ADCOが収束していれば、初回のPLL動作時におけるロックと同程度のロックが検出されたことを意味している。
【0043】
2回目以降のPLL動作時において、チャージポンプ制御部108は、比較部302により、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOと、閾値生成部301により生成された上限閾値及び下限閾値と、を比較する。図5に示すように、デジタル信号ADCOが0Vに相当するデジタル値(最小値)から上昇開始する場合、チャージポンプ制御部108は、デジタル信号ADCOが初めて下限閾値と等しくなった時(ロック検出範囲に到達した時)、チャージポンプ電流量を第1電流量Icp1から当該第1電流量Icp1よりも少ない第2電流量Icp2(<Icp1)に切り替えるためのチャージポンプ電流量制御信号CPCONTを生成する。一方、図示はしないが、デジタル信号ADCOが電源電圧に相当するデジタル値(最大値)から下降開始する場合、チャージポンプ制御部108は、デジタル信号ADCOが初めて上限閾値と等しくなった時(ロック検出範囲に到達した時)、チャージポンプ電流量を第1電流量Icp1から第2電流量Icp2に切り替えるチャージポンプ電流量制御信号CPCONTを生成する。
【0044】
つまり、チャージポンプ制御部108は、初回のPLL動作時におけるロック時デジタル信号ADCOの保持値を含んだ下限閾値から上限閾値までのロック検出範囲内に、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOが初めて到達した時に、チャージポンプ電流量を段階的に減少させる制御を行う。この結果、図1に示すPLL回路は、温度や電源電圧などのICの動作条件に関わらず、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化をバランス良く達成すべく、チャージポンプ電流量を段階的に減少させる最適なタイミングを得ることができる。また、このようなチャージポンプ電流量の制御をアナログ回路ではなくデジタル回路によって実現したので、その制御の安定性が図られるとともに、プロセス微細化による面積削減や消費電力削減等の効果も見込まれる。
(第2の実施の形態)
以下、図6を用いて本発明の第2の実施の形態に係るPLL回路を説明する。
【0045】
本発明の第2の実施の形態に係るPLL回路の構成は、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るPLL回路と同様であるが、デジタル信号ADCOが初めて下限閾値又は上限閾値と等しくなった時以降では、チャージポンプ電流量を初期電流量から当該初期電流量よりも少ない電流量に3段階以上の多段階で切り替え可能とするものである。
具体的には、図6に示すように、チャージポンプ制御部108は、デジタル信号ADCOが下限閾値と等しくなる時(ロック検出範囲に到達した時)、第1電流量Icp1から第1電流量Icp1よりも少ない第2電流量Icp2に切り替える。引き続いて、チャージポンプ制御部108は、デジタル信号ADCOが上限閾値と等しくなると(ロック検出範囲から外れる時)、第2電流量Icp2から第3の電流量Icp3へ切り替える。
このように、チャージポンプ制御部108は、デジタル信号ADCOが下限閾値又は上限閾値と等しくなる毎に(ロック検出範囲内から外れる又はロック検出範囲内に到達する毎に)、チャージポンプ電流量を、第1の電流量Icp1、第2の電流量Icp2、・・・第8の電流量Icp8(Icp1>Icp2>・・・>Icp8)の順に切り替える制御を行う。この結果、チャージポンプ電流量を急激に減少させるのではなく、PLL回路のロックが安定化するに従ってチャージポンプ電流量を3段階以上の多段階で徐々に減少させるようにしたので、上記の第1の実施の形態の効果に加えて、PLL回路の動作をより安定化させることができる。
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係るPLL回路を説明する。
【0046】
本発明の第2の実施の形態に係るPLL回路の構成(保持部107、チャージポンプ制御部108を含む)は、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るPLL回路と同様である。但し、保持部107は、初回のPLL動作時においてロック時のデジタル信号ADCOを保持するのではなく、予め任意のデジタル信号ADCOを保持するようにする。なお、保持部107は、デジタル回路として実現されるため、保持部107に保持させる保持値をレジスタなどで任意に設定可能である。以上の構成により、チャージポンプ電流量を減少させる最適なタイミングを容易に設定可能となる。
(第4の実施の形態)
以下、図7を用いて本発明の第4の実施の形態に係るPLL回路を説明する。
【0047】
本発明の第4の実施の形態に係るPLL回路の構成は、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るPLL回路と同様であるが、図7に示すように、新たに選択部802が備えられている点が相違する。
【0048】
選択部802は、制御信号CTLKのレベルに応じて、PLL回路の外部から供給された外部ロック検出信号OUTLK、又はPLL回路内部のロック検出部201から出力されたロック検出信号S201を選択して出力するように構成される。具体的は、選択部802は、制御信号CTLKがHighレベル(1)の時、外部ロック検出信号OUTLKを選択して選択制御信号S802として出力し、制御信号CTLKがLowレベル(0)の時、ロック検出部201から出力されたロック検出信号S201を選択して選択制御信号S802として出力する。
【0049】
選択制御信号S802は、保持部107の選択部202における制御信号として用いられる。選択部202は、選択部802からの選択制御信号S802を受けて、アナログ/デジタル変換回路106から出力されたデジタル信号ADCOをDフリップフロップ203に送信する。以後、選択部802から選択制御信号S802が出力されない限り、Dフリップフロップ203は現在を保持し続ける。なお、ロック検出部201を用いることなく、外部ロック検出信号OUTLKのみを用いて、保持部107においてデジタル信号ADCOを保持させるタイミングを決定してもよい。
【0050】
以上の構成により、外部ロック検出信号OUTLK又はロック検出部201から出力されるロック検出信号S201を用いて、保持部107においてデジタル信号ADCOを保持させるタイミングをより柔軟に決定することが可能となる。
【0051】
上記の説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、ロックアップタイムの高速化とリファレンスリークの低減化をとバランス良く達成できるため、PLL回路の性能向上を図る上で有用である。
【符号の説明】
【0053】
101 位相周波数差検出回路
102 チャージポンプ回路
103 ローパスフィルタ
104 電圧制御発振器
105 分周器
106 アナログ/デジタル変換回路
107 保持部
S107 ロック時デジタル信号
108 チャージポンプ制御部
FREF 基準クロック信号
FDIV 帰還クロック信号
UP アップパルス信号
DOWN ダウンパルス信号
ICPO チャージポンプ電流
VCONT アナログ電圧信号
FVCO 出力クロック信号
ADCO デジタル信号
CPCONT チャージポンプ電流量制御信号
201 ロック検出部
S201 ロック検出信号
202 選択部
S202 出力信号
203 Dフリップフロップ
301 閾値生成部
302 比較部
S302 出力信号
303 制御信号生成部
802 選択部
S802 選択制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号と出力クロック信号に応じた帰還クロック信号との間の位相差及び周波数差に応じたパルス幅の位相周波数差信号を出力する位相周波数差検出回路と、
前記位相周波数差信号に応じた出力電流であるチャージポンプ電流を出力するとともに、チャージポンプ電流量を段階的に減少させるチャージポンプ電流量制御信号に基づいて当該チャージポンプ電流量を段階的に減少させるように構成されたチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ電流を平滑化して得られる制御電圧を出力するローパスフィルタと、
前記制御電圧に応じた発振周波数の前記出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記制御電圧をアナログ/デジタル変換して得られるデジタル信号を出力するアナログ/デジタル変換回路と、
前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号とがロックしたか否かを検出して当該ロックを検出した時にロック検出信号を出力するロック検出部と、
前記ロック検出部から前記ロック検出信号が入力された時に前記アナログ/デジタル変換回路から入力された前記デジタル信号(以下、ロック時デジタル信号という)を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記ロック時デジタル信号と前記アナログ/デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号との比較結果に基づいて前記チャージポンプ電流量制御信号を生成して前記チャージポンプ回路に出力するチャージポンプ制御部と、
を備えるPLL回路。
【請求項2】
前記チャージポンプ制御部は、
前記保持部に保持された前記ロック時デジタル信号の保持値を上回る上限閾値及び当該保持値を下回る下限閾値を生成する閾値生成部と、
前記アナログ/デジタル変換回路からの前記デジタル信号が前記下限閾値から前記上限閾値までのロック検出範囲内にあるか否かを検出する比較部と、
前記比較部において前記アナログ/デジタル変換回路から出力された前記デジタル信号が前記ロック検出範囲内に初めて到達したことが検出されたことを契機として、初期電流量である第1電流量から当該第1電流量よりも少ない第2電流量に切り替える前記チャージポンプ電流量制御信号を生成する前記制御信号生成部と、
を備える請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記制御信号生成部は、前記比較部において前記アナログ/デジタル変換回路からの前記デジタル信号が前記ロック検出範囲内に初めて到達したことが検出されたことを契機として、前記比較部において前記アナログ/デジタル変換回路からの前記デジタル信号が前記ロック検出範囲内から外れるか又は前記ロック検出範囲内に到達したことが検出される毎に、チャージポンプ電流の初期電流量から当該初期電流量よりも少ない電流量に段階的に減少させる前記チャージポンプ電流量制御信号を生成する、請求項2に記載のPLL回路。
【請求項4】
前記保持部に保持させる前記ロック時デジタル信号は任意に設定可能である、請求項1に記載のPLL回路。
【請求項5】
外部からの外部ロック検出信号又は前記ロック検出部からの前記ロック検出信号を所定の選択制御信号に基づいて選択して前記保持部に出力する選択部を備える、請求項1に記載のPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−259331(P2011−259331A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133540(P2010−133540)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】