説明

SEMを用いて取得した画像の処理方法及びSEM装置

【課題】
撮像する度に発生する異なる歪を算出し、画像毎に異なる歪補正をすることによって、高感度での欠陥検出を可能とし、かつ、歪の無い検査画像を出力する。
【解決手段】
検査画像をビーム走査方向に長い小領域に分割し,領域毎に参照画像と位置合せを行い,検査画像と参照画像の歪状態を補正し、歪補正した検査画像と参照画像の差分を演算して欠陥を検出し、欠陥箇所の歪補正した検査画像と参照画像とをGUI上に表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハをSEMを用いて撮像して取得した画像の処理方法及びSEM装置に関し、特にSEMを用いて試料を検査又は観察又は計測するのに好適な方法及びSEM装置関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡を用いて半導体ウェハ上に形成した回路パターンを撮像し、この撮像して得た画像を処理して回路パターンの欠陥を検出する検査装置(以下、SEM式の半導体ウェハ検査装置と記す)における撮像は,電子ビームを偏向させて半導体ウェハを走査し、ウェハから発生する2次電子、反射電子を検出器で取得して画像化する。ここで、偏向制御を行う回路のわずかな不安定さや機械的振動等によって、ウェハ上の電子ビームの走査位置が揺らぐ状態、いわゆる偏向ジッタが発生する。このため、画像化した際に偏向ジッタに起因する画像歪が発生する。検査を行うために検査画像と参照画像とを比較して欠陥を検出するが、検査画像と参照画像とでは歪状態が異なるため,検査・参照画像の比較の際に,歪の差異を虚報として検出する。虚報を抑えるため感度を下げることを余儀なくされ,実欠陥見逃しが発生する。ジッタ歪は、半導体のプロセスノードの微細化に伴い,取得する画像の画素寸法が縮小することによって顕在化する方向にある。これを解決するためには、電子ビームの偏向ジッタに起因する画像歪に対して,歪補正画像処理を行なうことにより,欠陥検出感度の向上が必要である。
【0003】
SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)で試料を撮像した画像の歪補正を行う従来の技術としては、特開平11―194154号公報(特許文献1)に、第1の連続画像データと第2の連続画像データとを各々について画像上に生じる歪みを無視出来る程度の小さい領域単に分割して切り出し、この分割して切り出した画像の差画像を求め、この差画像から欠陥を抽出することについて記載されている。
【0004】
また、特開2008−147143号公報 (特許文献2)には、SEMを用いてパターンの寸法を計測する装置において、同じパターンを複数回走査して得た複数枚の画像を重ね合わせてノイズを低減した画像を得ることについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―194154号公報
【特許文献2】特開2008−147143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏向ジッタ歪は偏向制御を行う回路のわずかな不安定さや機械的振動等によって生じる。よって歪状態は撮像する度に異なる。上記特許文献1による方法では、予め既知の試料の画像を撮像角度を変えて複数回取得して歪を算出する。しかし,これは同じ角度で撮像する場合には同じ歪が発生することが前提となっている。偏向ジッタ歪は撮像する度に異なるため、予め歪を求めることはできない。
【0007】
本発明の目的は、撮像する度に発生する異なる歪を算出し、画像毎に異なる歪補正をすることによって、高感度での欠陥検出を可能とするSEMを用いて取得した画像の処理方法及びSEM装置を提供することである。また、参照画像に歪の無い画像を用いた場合、参照画像に合わせて検査画像を補正することで歪の無い検査画像に画質を改善することを可能とするSEMを用いて取得した画像の処理方法及びSEM装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面に本来同一形状となるパターンが複数形成された試料に電子ビームを照射して走査することにより前記試料を撮像し、該撮像して得た本来同一形状となるパターンの画像を複数枚重ねて処理するSEMを用いて取得した画像を処理する方法において、前記重ね合わせる複数枚の画像をそれぞれ前記電子ビームの走査方向に長い複数の小領域に分割するための前記走査方向に直角な方向の分割サイズを入力画面上で設定し、該設定した分割サイズで前記複数枚の画像をそれぞれ複数の小領域に分割して各小領域ごとの前記複数枚の各画像間のずれを補正し、該各画像間のずれを補正した複数の小領域の画像を統合して前記複数枚の画像を再構成し、該再構成した複数の画像を重ね合わせて該重ね合わせた複数の画像を処理するようにした。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明では、収束させた電子ビームを試料に照射して走査することにより試料から発生する二次電子を検出して試料の画像を取得する走査型電子顕微鏡(SEM)と、走査型電子顕微鏡で撮像して得た表面にパターンが形成された試料の画像を処理する画像処理手段と、走査型電子顕微鏡で試料を撮像する条件及び画像処理手段で画像を処理する条件を設定する条件設定手段と、走査型電子顕微鏡と画像処理手段と条件設定手段とを制御する制御手段とを備えたSEM装置において、条件設定手段は、走査型電子顕微鏡で撮像して得た試料の本来同一形状となるように形成されたパターンの複数枚の画像をそれぞれ電子ビームの走査方向に長い複数の小領域に分割するための走査方向に直角な方向の分割サイズを入力する入力画面を備え、制御手段は画像処理手段を制御して条件設定手段の入力画面から入力された小領域の分割サイズの情報に基づいて試料の本来同一形状となるように形成されたパターンの複数枚の画像をそれぞれ小領域に分割させ、分割させたそれぞれの小領域ごとの画像間のずれを補正させ、画像間のずれを補正させた小領域の画像を統合して複数枚の画像に再構成させ、再構成させた複数の画像を重ね合わせて処理をさせるように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像する度に発生する異なる歪を算出し、画像毎に異なる歪補正をすることによって、高感度でSEM画像の処理、即ち、欠陥の検出、欠陥画像の特徴量抽出、パターン寸法の計測などを行えるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例におけるSEM式の半導体ウェハ検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】偏向ジッタの概念の例を表すウェハ上を走査する電子ビームの斜視図である。
【図3】ウェハ上の電子ビームの走査範囲と取得した画像にジッタ歪が乗っている状態の概念を説明する図である。
【図4】検査画像と参照画像との間のジッタ歪の差異を概念的に説明する図である。
【図5A】検査画像と参照画像との間のジッタ歪による画像ずれを補正するために、参照画像のジッタ歪を検査画像のジッタ歪に合わせる例を示す参照画像である。
【図5B】検査画像と参照画像との間のジッタ歪による画像ずれを補正するために、参照画像に対する検査画像のジッタ歪を補正する例を示す検査画像である。
【図5C】検査画像と参照画像との間のジッタ歪による画像ずれを補正するために、参照画像のジッタ歪に対する検査画像のジッタ歪を半分修正し、参照画像に対する検査画像のジッタ歪を半分修正する例を示す検査画像と参照画像である。
【図6A】従来技術における検査画像と参照画像との間の差分画像を算出する例を示す図である。
【図6B】検査画像との間のジッタ歪にとる画像ずれを補正したジッタ補正参照画像を検査画像との間の差分画像を算出した例を示す図である。
【図7】マップ上で指定した領域の検査画像と参照画像及びそれらの画像の差画像とを表示したGUIの一例を示す図である。
【図8】参照画像に対する検査画像のジッタ歪による画像のずれを補正してから参照画像との差画像を算出し画面上に表示する手順の処理の流れを説明する図である。
【図9】マップ上で指定した領域の検査画像と参照画像及びそれらの画像の差画像とが表示された画面上でジッタ補正パラメータの入力部が表示されたGUIの一例を示す図である。
【図10】対物レンズに収差が有る場合に格子状の対象物1001を撮像して得られる周辺が縮小した画像1002の例を示す図である。
【図11】GUI上で入力したパラメータに基づいてジッタ歪を補正した検査画像と参照画像及びそれらの差画像を確認のために表示した状態を示すGUIの一例を示す図である。
【図12】第1の実施例における、ウェハを撮像して得た画像に対して予め設定したジッタ歪補正パラメータを用いて画像歪補正をした検査画像と参照画像とを比較して欠陥を検出する処理の流れを示したフロー図である。
【図13】第2の実施例におけるSEMを用いた欠陥観察装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図14】第3の実施例におけるSEMを用いた形状計測装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図15】第3の実施例においてマップ上で指定した領域の検査画像と参照画像及びそれらの画像の差画像とが表示された画面上でジッタ補正パラメータの入力部が表示されたGUIの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明による検査装置の構成の例を図1に示す。この検査装置は、操作型電子顕微鏡で半導体ウェハを撮像して得た画像を画像処理回路で処理して欠陥の判定を行うものである。
装置の主な構成は、電子線102を発生させる電子線源101、及び電子線源101からの電子線102をX方向に偏向させる偏向器103、及び電子線102を半導体ウェハ105に収束させる対物レンズ104、及び電子線102の偏向と同期して半導体ウェハ105をY方向に連続的に移動させるステージ106、及び半導体ウェハ105からの二次電子等107を検出する検出器108、及び検出信号をA/D変換してデジタル画像とするA/D変換器109、及び検出したデジタル画像を本来同一である事が期待できる場所のデジタル画像とを処理してジッタ歪を補正し両者を比較して差がある場所を欠陥候補と判定する複数のプロセッサとFPGA等の電気回路で構成された画像処理回路110、及び電子線源101と偏向器102と対物レンズ104と検出器108とステージ106等の画像を形成することに関与する部分を制御する検出条件制御部111、及び画像処理回路を制御する画像処理制御部112、及び全体を制御する全体制御部113、および検査条件と検査画像とを記憶しておくデータ記憶部114と、歪補正パラメータを入力し検査画像をGUIの画面1150上に表示するユーザインターフェース部115とを備えて構成される。必要に応じてデータのやり取りが行えるように接続されている。
【0014】
上記した構成を備えたSEM式の半導体ウェハ検査装置を用いて試料である半導体ウェハ105を撮像する際は,電子線源101から発射された電子ビーム102を偏向器103でX方向に一定の周期で繰り返し偏向させ対物レンズで収束させて、ステージ106によりY方向に一定の速度で移動している半導体ウェハ105の表面に焦点を合わせて、ステージ106によるY方向への移動と同期させて走査する。このようにして電子ビーム102が照射され走査された半導体ウェハ105から発生した二次電子(反射電子も含む)子107を検出器108で検出しA/D変換器109でデジタル信号に変換して検査画像を得、画像処理回路110でこの検査画像を記憶しておいた参照画像と比較して差異を抽出する画像処理を行い、欠陥を検出する。
【0015】
電子ビーム102を偏向器103でX方向に一定の周期で繰り返し偏向させY方向に一定の速度で移動している半導体ウェハ105の表面をY方向への移動と同期させて走査して照射させる場合、電子ビーム102は半導体ウェハ105の表面を一定の速度でかつ直線状に走査するのが理想だが、実際には偏向器103を制御する制御回路(図示せず)のわずかな不安定さやステージ106のピッチング、ヨーイングなどの移動量のばらつき、走査型電子顕微鏡本体の機械的振動などによって、現実には走査位置に揺らぎが生じる。この揺らぎは周期性がある。
【0016】
図2に、この周期性がある揺らぎの原因の一つである偏向ジッタの概念を示す。
Y方向に一定の速度で移動しているステージ106に載置された半導体ウェハ105の表面を電子ビーム201でX方向に走査する場合、電子ビーム201がある時点で半導体ウェハ105上の点(X1,Y1)に照射され、X方向に走査されて時間Δtの後に理想的には点(X2,Y2)を照射する。電子ビーム201が照射された半導体ウェハ105 (図2では走査部のみ示す)からの発生電子203を図1に示した検出器108で検出して画像化する。しかし、実際には、偏向器103を制御する制御回路(図示せず)のわずかな不安定さステージ106のピッチング、ヨーイングなどの移動量のばらつき、走査型電子顕微鏡本体の機械的振動などの原因により時間Δtの後の電子ビーム201の照射位置は(X2±ΔX,Y2±ΔY)の範囲でばらついてしまう。
【0017】
電子ビーム走査から得られるジッタ画像の概念を図3に示す。
半導体ウェハ105を図ではX方向に電子ビーム102を走査してY方向にステージ106を連続移動させる際に、電子ビーム102のX方向の走査範囲をある走査幅301で帯型に区切って試料を撮像する。即ち、先ずY方向にステージ106を連続移動させながら電子ビーム102を走査幅301で走査して帯状の領域301の帯状画像302を取得し、次にステージ106をX方向に走査幅301の分だけ移動した後にステージ106をY方向で前回とは逆方向に連続的に移動させながら電子ビーム102を走査幅301で走査して帯状の領域301の帯状画像302を取得する。この操作をX方向に走査幅301ずつずらしながら順次行うことで半導体ウェハ105の全面の走査を行う。このようにして得た複数の帯状画像302〜302を得る。これらの帯状の画像には偏向ジッタによる歪が生じている。そこで、検査を行う際には、電子ビーム102を走査幅301で走査して取得した半導体ウェハ105の各帯状画像302(i=1,2,3・・・n)を格子状に小さい区画、すなわち処理単位画像303ij(i=1,2,3・・・n:j=1,2,3・・・m)に分割して画像処理を行なう。
【0018】
例えば、電子ビーム102の走査幅301に渡る領域を検出器108の2048画素でサンプリングするとし、1画素あたりのサンプリング周波数を100MHzとすると、1ライン走査分の周波数は 100M(Hz)/2048≒50k(Hz) となる。一方、偏向ジッタは例えば400Hz程度の周期を持っているとする。よって、1ライン走査分のジッタの位相差は 400(Hz)/50kHz=0.008 となる。更に、処理単位画像を例えば128×128画素とすると各処理単位画像ごとの1ライン走査分のジッタの位相差は 0.008×128/2048=0.0005 となり、各処理単位画像ごとの1ライン走査内(128画素)ではほとんど変わらない。一方、走査送り方向(Y方向)の処理単位画像一個分のジッタの位相は128ライン分の走査が加算されることになるので 0.008×128≒1 となり、隣接する処理単位画像とのジッタの位相は1週期分変動する。
【0019】
このように、偏向ジッタは、ビーム走査方向(X方向)では位相差が小さく、走査送り方向(Y方向)では位相差が大きいことから、本発明では、検査画像と参照画像のそれぞれの128×128画素の処理単位画像を、X方向は128画素のままとして、Y方向に細分化することにより複数の小領域画像に分割し、この分割したそれぞれの小領域画像ごとに偏向ジッタによる位相のずれを補正するようにした。
【0020】
ジッタ歪補正手法の概念を図4に示す。半導体ウェハ105を撮像して得られた帯状画像302(i=1,2,3・・・n)を格子状に小さく分割した処理単位画像303ij(i=1,2,3・・・n:j=1,2,3・・・m)に相当する検査画像401ij(i=1,2,3・・・n:j=1,2,3・・・m)を、Y方向に細分化してビーム走査方向(X方向)に長い小領域402ijk(i=1,2,3・・・n:j=1,2,3・・・m:k=1,2,3・・・l)に分割する。この小領域402ijkの中ではジッタ位相はほぼ一定とみなせる。一方、参照画像403ijについても同様に小領域404ijk(i=1,2,3・・・n:j=1,2,3・・・m:k=1,2,3・・・l)に分割する。このようにして分割した検査画像401の小領域402ijkと対応する参照画像403ijの小領域404ijkの位置ずれ量(δ)の算出を行う。
【0021】
参照画像403ijとは検査画像401ijと本来同一である事が期待できる場所の画像である。例えば、ウェハ105上に形成された本来同一形状のパターンを有する複数ダイのうちの前記検出画像401ijを取得したダイとは別のダイの同一箇所の画像でも良く(ダイ比較)、対象の半導体ウェハがメモリデバイスである場合にはメモリセルに周期性があるため検出画像を同じダイ内の1周期または複数周期ずらした位置の画像でも良い(セル比較)。また、特開2006−220644号公報に記載の方法のように、検出画像の周期性を利用して加算平均をとりジッタ歪の無い状態の合成画像でも良い。更に、複数ダイの同一箇所の画像を加算平均したジッタ歪の無い状態の合成画像でも良い。
ここで位置ずれ量(δ)の算出には、例えば、検査画像401ijの小領域402ijkと対応する参照画像403ijの小領域404ijk(以下、参照画像の小領域404ijkと記す)との整合度が最良となるように、例えば、小領域402ijkの位置をずらす。整合度をあらわす式としては例えば次式などが考えられる。
E=ΣΣ|f-g| ・・・・(数1)
Eは検査画像401ijの小領域402ijk中の点f(x,y)と、この点f(x,y)に対応する参照画像403ijの小領域404ijk中の点g(x,y)との差の絶対値を小領域402ijk内について合計したものである。Eが小さいほど整合度が良い。あるいはよく知られているfとgの相互相関式を用いても良く、その他の式でも良い。
(数1)のEを用いた場合、例えば小領域f(x,y)のx方向のずらし量をmx、y方向のずらし量をmyとすると、整合度は次式であらわされる。
【0022】
E(m)=ΣΣ|f(x+mx,y+my))-g(x,y)| ・・・・(数2)
ここで求めたいのはE(m)が最小となるmx、myである。つまり、mx、myを少しずつずらしてそれぞれのE(m)を算出する。そしてE(m)が最小となるmx、myを求める。また、小領域の中の点f(x,y)のかわりに参照画像の小領域の中の点g(x,y)側をずらしても良い。なおずらし量mx、myの最大値はジッタ歪量を包含するように、ジッタ歪量が大きいほど大きくする必要がある。
【0023】
このようにして検査画像401ijの各小領域402ijkについて対応する参照画像403ijの小領域404ijkとのずれ量を補正したのち、ずれ量を補正後の各小領域402ijkを統合して検査画像401ijを再合成することにより、参照画像403ijに対して偏向ジッタによる画像歪が補正された検査画像411ijを取得することができる。
【0024】
図5A乃至図5Cにジッタ歪補正の例を示す。ここで図5Aは参照画像のジッタを検査画像のジッタに合わせる場合を示したもので、図4で説明した検査画像401ijの小領域402ijkを固定にして、小領域402ijkと参照画像の小領域404ijkとの整合度を表すE(m)が最小となるように参照画像の小領域404ijkをずらしてジッタ合わせ参照画像501ijを合成した場合を示す。この場合には、検査画像401ijのジッタ歪と同じジッタ歪がジッタ合わせ参照画像501ijに生じる。
【0025】
図5Bは検査画像のジッタを除去する場合を示したもので、図4で説明した参照画像403ijの小領域404ijkを固定にして、検査画像401ijの小領域402ijkと参照画像403ijの小領域404ijkとの整合度を表すE(m)が最小となるように検査画像401ijの小領域402ijkをずらしてジッタを除去した検査画像502ijを合成した場合を示す。この場合には、参照画像403ijのジッタ歪と同じジッタ歪が合成した検査画像502ijに生じる。このとき、ジッタ歪の無い理想的な参照画像403ijを用いた場合は、合成した検査画像502ijもジッタ歪の無いジッタ除去検査画像502ijとなる。ここで理想的な参照画像は、前述の、特開2005−274172号公報に記載されている方法で合成しても良い。
また、図5Cに示すように、ジッタ歪量の一部、例えば半分だけ小領域402ijkをずらしてジッタ半除去検査画像503ijkを合成し、ジッタ歪量の残り、半分だけ参照画像403ijkをずらしてジッタ半合わせ参照画像504ijkを合成しても良い。
【0026】
次に、上述のように歪補正した検査画像と参照画像の差分画像を演算する。図6Aに従来技術における差分画像の算出の例を、また、図6Bに本実施例による差分画像算出の例を示す。検査画像601に対して従来、例えば特開2002−74335号公報に開示されている方法では、図6Aに示したように参照画像602をそのまま用いて参照画像602との差分画像603を算出していた。これに対して本発明では図6Bに示すように、図5Aで説明したようなジッタ補正参照画像604(図5Aのジッタ合わせ参照画像501ijに相当)を用いて差分画像605を算出する。ここで差分画像は例えば次式であらわされる。
Sub(x,y)=|f(x,y)-g(x,y)| ・・・・(数3)
従来方法では検査画像と参照画像とのジッタ歪の差異が差分値となってあらわれるが、本発明では検査画像と参照画像とのジッタ歪の差分値を低減させてから差画像を求めているので、検査画像と参照画像とのジッタ歪の差異の影響が低減された差画像を得ることができる。
【0027】
図6Bに示した例では、図5Aで説明したような検査画像に合わせたジッタ補正を行った参照画像604を用いて差分画像605を算出する場合について説明したが、図5Bで説明したような参照画像に合わせたジッタ除去を行った検査画像を用いて差分画像を算出してもよいし、又は図5Cで説明したように検査画像と参照画像とをそれぞれジッタ補正した後に差分画像を算出してもよい。
【0028】
欠陥の検出は例えば、算出した差分画像に対して、予め設定した欠陥判定しきい値thを適用し、次式が成立する画素を欠陥として検出する。
Sub(x,y)>th ・・・・(数4)
欠陥を検出したらユーザが確認できるように、歪補正した欠陥箇所の検査画像と参照画像とをGUI上に表示する。GUIの例を図7に示す。本GUIは欠陥検出結果確認機能を有する。本画面700はGUI1150上で検査ボタン701をユーザが選択すると表示される。欠陥マップ欄702の欠陥マップ703上に欠陥を表すドット704がプロットされる。ドット704のうちの一つをユーザが選択すると、欠陥画像欄705に該当する欠陥の検査画像706、参照画像707、差分画像708が表示される。これにより歪補正された画像をユーザが確認することができる。終了ボタン709を押すと、一連の動作を終了する。以上はGUI表示の一例であり他の表示形態でも良い。
【0029】
以上をまとめて、ジッタ歪補正検査方法の手順の例を図8に示す。半導体ウェハ105を電子ビーム201で偏向ジッタ800を伴った状態で走査して取得した検査画像401ijと参照画像403ijとをビーム操作方向に長い小領域402ijkと404ijkとに分割してそれぞれジッタ歪による両画像間の差異が無視できる程度にし,分割した小領域毎に検査画像401ijの小領域402ijkと参照画像403ijの小領域404ijkとの位置ずれ算出805を行い,検査画像401ijの各小領域402ijkごとの参照画像403ijの小領域404ijkとの歪状態について歪補正806を行い、この参照画像403ijの小領域404ijkに対して位置ずれ量を補正した検査画像401ijの小領域402ijkの画像を再構成して補正検査画像411ijを得る。次に、歪補正した補正検査画像と411ij参照画像402ijとの差分807ijを演算して欠陥検出808を行う。欠陥箇所のマップ表示810と欠陥の画像811と歪補正した補正検査画像411と参照画像403とのGUI表示814を行う。
【0030】
ところで、図4に示したようなビーム走査方向に長い小領域402で位置ずれ算出805を行うためには、小領域402中に半導体のパターンを含むようにすることが望ましい。小領域402が細すぎると半導体パターンを含まない場合が出てくる。そこで、小領域402は走査送り方向にある程度以上のライン数を持つことが望ましい。例えば、対象の半導体がメモリデバイスである場合には、このメモリデバイスを撮像して得られる画像上で分割する小領域のステージ送り方向(Y方向)の画素数、即ちビームスキャン回数は、メモリセルのピッチの画素数以上であることが望ましい。例えば走査送り方向(Y方向)のセルピッチが4ラインなら、小領域402のライン数は4ライン以上であることが望ましい。また、小領域402の幅が太すぎると小領域402内でのジッタ歪を無視できなくなり、このような状態では分割した領域ごとにジッタ歪補正を行っても検査画像と参照画像との間のジッタ歪を補正することができない。
【0031】
分割する小領域402の走査送り方向(Y方向)のライン数はジッタ歪の周期の1/4程度以下が望ましい。前述の例では、ジッタ周期は約128ラインなので小領域402のライン数は32ライン以下であることが望ましい。このように、検査対象のセルピッチ、ジッタ周期によって、小領域の適したライン数が異なるため、ユーザが設定できるようにGUI上にジッタ歪補正パラメータ設定欄を設けても良い。
【0032】
ジッタ歪補正パラメータ設定欄を設けたGUIの例を図9に示す。本GUIはジッタ歪補正パラメータ設定機能を有する。本画面900はGUI1150上で設定ボタン901をユーザが選択すると表示される。ジッタ歪補正のパラメータ設定欄902に、小領域のライン数設定欄903を設けて、ユーザが小領域ライン数(画素)を設定する。ここで、セルピッチ画素数は予め設定されるセルピッチ寸法と画素寸法から次式で求められる。
セルピッチ画素数=セルピッチ寸法/画素寸法 ・・・・(数5)
そのため設定した小領域ライン数が次式を満たすかを判定し、満たさない場合はユーザに注意を喚起するためアラーム904を表示しても良い。
小領域ライン数設定≧セルピッチ画素数 ・・・・・・・・・(数6)
また、偏向ジッタ周期設定欄905を設けて、ユーザが補正したい偏向ジッタ周期(画素)を設定しても良い。設定した小領域ライン数が次式を満たすかを判定し、満たさない場合はユーザに注意を喚起するためアラーム906を表示しても良い。ここで除数の値は上記したジッタ歪の周期の1/4程度以下に基づいて4にしたが、4に限定するものではなく他の値でも良い。
小領域ライン数設定≦偏向ジッタ周期/4 ・・・・・・・・・(数7)
また、ジッタ補正ONN/OFFのラジオボタン907を設けて、ジッタ補正を行う場合はONを選択し、ジッタ補正を行わない場合はOFFを選択するようにしても良い。ユーザが保存ボタン908を選択すると現在表示されているジッタ歪補正パラメータが保存される。これによりジッタ歪補正のパラメータをユーザが設定することができる。
【0033】
ところで、検査装置の対物レンズ104に収差があると収差による歪が発生する。例えば、図10に示すような格子状の対象物1001を撮像した場合に、周辺が縮小したような画像1002が得られる場合がある。この場合、画像の周辺部のジッタ周期は中央部のジッタ周期より短くなる。このため、偏向ジッタ周期設定欄に設定した周期より短くなると(数7)式を満たしてもジッタ補正を正しく行えない可能性がある。そこで、図9において収差による画像縮小率設定欄909を設けて、ユーザが収差による画像縮小率を設定し、小領域ライン数が次式を満たすかを判定しても良い。
小領域ライン数設定≦偏向ジッタ周期×画像縮小率/4 ・・・・・・・・・(数8)
以上はGUI表示の一例であり他の表示形態でも良い。
【0034】
また、ジッタ歪補正が正しく行われるかをユーザが確認するためのGUIを設けても良い。GUIの例を図11に示す。本GUIはジッタ歪補正確認機能を有する。GUIの画面1150上のジッタ歪補正タブ1101をユーザがクリックすると、本画面1100が表示される。ウェハマップ1102にはウェハ上のチップレイアウトが表示される。ウェハマップ上でジッタ歪補正確認に使用する箇所1103をユーザがクリックして指定する。ジッタ歪補正確認箇所を指定した状態で図7の例と同様にユーザが検査ボタン701を選択すると、全体制御部113はステージ106と偏向器103及び対物レンズ107を制御して指定された箇所の画像を取得して画像処理部112でジッタ歪補正と欠陥検出処理を行なった結果の確認画像1104としてGUIの画面1150上に表示される。
【0035】
確認画像には図7の場合と同様に検査画像706、参照画像707、差分画像708が含まれている。ユーザは確認画像1104上に表示された検査画像706、参照画像707、差分画像708を見て、ジッタ歪補正が正しくない場合は図9の例と同様にジッタ歪補正のパラメータ設定欄902でジッタ歪補正パラメータ、すなわち、小領域のライン数設定欄903、偏向ジッタ周期設定欄905、収差による画像縮小率設定欄909を設定し直す。
このようにしてジッタ歪補正パラメータを設定し直した後に前述と同様にユーザが検査ボタン701を選択すると、全体制御部113は再度、ステージ106と偏向器103及び対物レンズ107を制御して指定された箇所の画像を取得して画像処理部112でジッタ歪補正と欠陥検出処理を行ない、その結果の各画像が確認画像1104に表示される。ユーザは確認画像1104を見て、ジッタ歪補正が正しければ、図9の例と同様に保存ボタン908をクリックしてジッタ歪補正のパラメータ設定欄902で設定し直されたジッタ歪補正パラメータを保存する。これによりジッタ歪補正の結果をユーザが確認、修正することができる。以上はGUI表示の一例であり他の表示形態でも良い。
以上をまとめて、ジッタ歪補正を行って欠陥を検査する方法の手順の例を図12に示す。まず、ジッタ歪補正のパラメータ設定ステップ(S1201)において、図9に示したGUI画面1150のジッタ歪補正パラメータ設定画面900上で小領域のライン数903、ジッタ周期905を入力し(S1202)、入力されたデータに基づいてライン数過小の評価904及びジッタ周期過小の評価906等の分割サイズの確認(S1203)を行う。次に、画像の歪補正状態を確認するステップ(S1204)において、図9のジッタ歪補正パラメータが設定されたGUI画面上で検査ボタン701をクリックすると全体制御部113はステージ106と偏向器103及び対物レンズ107を制御して指定された箇所の画像を取得し、画像処理部112で取得した検査画像706を図9のジッタ歪補正パラメータ設定のGUI画面上で設定された条件に基づいてビーム走査方向に長い小領域402に分割し(S1205),分割した小領域毎に参照画像の小領域との位置ずれ算出を行い,検査画像と参照画像の歪状態について歪補正を行う(S1206)。歪補正した補正検査画像と参照画像及びそれらの差画像を図11に示したGUIの画面1100に表示し、画面上でジッタ歪補正の状態を確認し、ジッタ歪補正が正しければ、保存ボタン908をクリックしてジッタ歪補正のパラメータ設定欄902で設定し直されたジッタ歪補正パラメータを保存する(S1207)。
【0036】
次に検査対象の半導体ウェハ105をステージ106に載置して(S1208)、図3で説明したようにステージ106を駆動してY方向に連続的に移動させながら電子ビーム102をX方向に走査幅301で走査させて、半導体ウェハ105の帯状画像302,302・・・302を取得し(S1209)、画像処理回路110においてS1207で保存されたジッタ歪補正パラメータを用いて検査画像について参照画像とのジッタ歪を補正した歪補正検査画像を作成し(S1210)、この歪補正検査画像と参照画像とを比較して差分画像を算出し(S1211)、算出した差分画像を予め設定しておいた欠陥判定しきい値と比較して欠陥を検出する(S1212)。
【0037】
本実施例に拠れば、ジッタによる画像歪を補正した画像同士を比較して欠陥を検出することができるので、従来のジッタ成分に埋もれてしまっていた微細な結果を検出することが可能になった。
【実施例2】
【0038】
本発明をSEMを用いた欠陥観察装置に適用した実施例を説明する。
図13に、本実施例におけるSEMを用いた欠陥観察装置(欠陥レビューSEM装置)の構成の例を示す。
【0039】
欠陥観察装置は、電子線式顕微鏡1300と、A/D変換器1310、処理手段1311、ユーザインターフェース部1312、記憶装置1313、全体制御部1314を備えて構成される。
【0040】
電子線式顕微鏡1300は、筐体1301の内部に平面内で移動可能なテーブル1302と、電子線1305を発射する電子線源1304、電子線源1304から発射された電子線1305を偏向させる偏向器1306、電子線1305のフォーカス位置を調整する電子レンズ1307、電子レンズ1307でフォーカス位置を調整された電子線1305が走査して照射された半導体ウェハ1303から発生する二次電子1308を偏向器1306による偏向の信号と同期させて検出する検出器1309を備えている。検出器1309で検出された二次電子は、電気信号に変換された後、更にA/D変換器1310によりデジタル画像信号に変換され、処理手段1311に入力されて画像処理される。
【0041】
上記した構成を備えた欠陥観察装置において、予め他の検査装置で検出されて記憶装置1313に記憶された半導体ウェハ1303上の欠陥の位置情報に基づいて全体制御部1314はテーブル1302を駆動して半導体ウェハ1303上の欠陥が電子線式顕微鏡1300の検出器1309による観察視野の中に入るように設定する。次に、全体制御部1314は電子線式顕微鏡1300を制御してこの観察視野の内部で比較的低い倍率で欠陥を含む領域の検査画像と同じ倍率で欠陥を含まない参照画像を取得し、比較的低い倍率の検査画像と参照画像とを比較して欠陥の位置を抽出する。次にこの抽出した欠陥の位置を電子線式顕微鏡1300の比較的高い倍率で撮像して高倍率の欠陥を含む画像を取得し、次に同じ高い倍率で本来欠陥を含む領域に形成されているパターンを同じ形状のパターンが形成されている欠陥を含まない領域を撮像して高倍率の参照画像を取得する。更に、取得した高倍率の欠陥を含む画像と高倍率の参照画像とを比較して欠陥を抽出する。最後に、この抽出した欠陥の画像上の特徴量を抽出して予め設定されたルールに基づいて欠陥を分類する。
【0042】
ここで、高倍率の欠陥を含む画像と高倍率の参照画像とを比較して欠陥を抽出する工程において、従来のジッタ歪成分を除去する処理を行わない場合、ジッタ歪がある高倍率の欠陥を含む画像と参照画像とを比較して抽出される欠陥の画像には歪成分が乗った状態になり、より微細な欠陥について正確な画像を抽出することが難しくなり、その次の欠陥を分類する工程において欠陥を正しく分類できなくなってしまい、欠陥分類の正解率を低下させる原因の一つになっていた。
【0043】
そこで、本実施例においては、高倍率の欠陥を含む画像と参照画像とを比較して欠陥を抽出する工程において、高倍率の欠陥を含む画像に対して図9で説明したようなジッタ補正を行って高倍率の欠陥を含む画像と参照画像とのジッタ歪の差を補正し、このジッタ歪の差を補正した高倍率の欠陥を含む画像と参照画像とを比較することにより、ジッタ成分を含まない高倍率の欠陥の画像を抽出できるようにした。
【0044】
本実施例に拠れば、ジッタ成分を含まない高倍率の欠陥の画像を抽出できるので、欠陥の分類の正解率をより高くすることができるようになった。
【実施例3】
【0045】
本発明をSEMを用いた形状計測装置に適用した例を説明する。
図14に、本実施例におけるSEMを用いた形状計測装置の構成の例を示す。SEMを用いた形状計測装置は、電子線式顕微鏡1400と、A/D変換器1410、処理手段1411、ユーザインターフェース部1412、記憶装置1413、全体制御部1414を備えて構成される。
【0046】
電子線式顕微鏡1400は、筐体1401の内部に平面内で移動可能なテーブル1402と、電子線1405を発射する電子線源1404、電子線源1404から発射された電子線1405を偏向させる偏向器1406、電子線1405のフォーカス位置を調整する電子レンズ1407、電子レンズ1407でフォーカス位置を調整された電子線1405が走査して照射された半導体ウェハ1403から発生する二次電子1408を偏向器1406による偏向の信号と同期させて検出する検出器1409を備えている。検出器1409で検出された二次電子は、電気信号に変換された後、更にA/D変換器1410によりデジタル画像信号に変換され、処理手段1411に入力されて画像処理され、所望の部分のパターンの寸法が計測されてユーザインターフェース部1412に計測されたデータが表示されるとともに、記憶装置1413に記憶される。
【0047】
上記した構成において、全体制御部1414はテーブル1402を制御して、テーブル1402に載置された半導体ウェハ1403の所望のパターンが電子線式顕微鏡1400の観察視野の内部に位置するように設定する。次にテーブル1402を固定した状態で全体制御部1414は電子線式顕微鏡1400の偏向器1406を制御して電子線源1404から発射された電子線1405を半導体ウェハ1403の表面でX方向にスキャンさせてY方向に1スキャンライン分ずつ移動させるラスタスキャンを行い所望のパターンを含む領域の電子線画像を取得する。
【0048】
この取得した電子線画像には、ジッタ歪を含むノイズ成分が含まれているために1枚の電子線画像から所望のパタンの正確な寸法情報を得ることは難しい。そこで通常は、例えば特開2008−147143号公報に記載されているように同じ箇所を繰り返して撮像し、毎回得られた画像を重ね合わせる(フレーム加算)ことによりランダムに発生するノイズ成分を平均化させてパターン信号のS/Nを向上させ寸法の計測を行っている。しかし、より高い精度で寸法計測を行うためにはこの重ね合わせの回数を10数回も行わなければならず、全体のスループットを低下させる原因となっている。
【0049】
そこで、本実施例においては、図15に示すように、初回に電子線1405をラスタスキャンして得られた電子線画像1506と2回目に電子線1405をラスタスキャンして得られた電子線画像1507とその差画像1508をGUI1150のジッタ歪補正画面1500上に並べて表示し、この画面1500上で初回に電子線1405をラスタスキャンして得られた電子線画像1506と2回目に電子線1405をラスタスキャンして得られた電子線画像1507とジッタ補正を行うようにした。
【0050】
すなわち、GUI1150の設定ボタン1501をクリックしてジッタ歪補正画面1500を表示させ、ジッタ歪補正画面1500上にウェハマップ1503を表示し、このウェハマップ1503上で計測対象のパターン1504を指定する。つぎに、全体制御部1414はテーブル1402を制御して、テーブル1402に載置された半導体ウェハ1403上の指定されたパターン1504が電子線式顕微鏡1400の観察視野の内部に位置するように設定する。次にテーブル1402を固定した状態で全体制御部1414は電子線式顕微鏡1400の偏向器1406を制御して電子線1405を半導体ウェハ1403の表面でラスタスキャンさせて指定されたパターン1504含む領域の1回目の電子線画像を取得する。全体制御部1414は偏向器1406を制御して電子線1405を再度ラスタスキャンさせて指定されたパターン1504含む領域の2回目の電子線画像を取得する。
【0051】
次に1回目の電子線画像1506と2回目の電子線画像1507との差画像1508を算出し、1回目の電子線画像1506、2回目の電子線画像1507及び差画像1508を画面1500上に表示する。
【0052】
この3つの画像が表示された画面1500上で、オペレータがジッタ歪補正のパラメータ設定欄1512でジッタ歪補正パラメータ、すなわち、小領域のライン数設定欄1513、偏向ジッタ周期設定欄1515、画像重ね合わせ枚数1517を設定する。このとき、設定された小領域のライン数1513、ジッタ周期1515のデータに基づいてライン数過小の評価1514及びジッタ周期過小の評価1516等の分割サイズの確認を行う。
【0053】
次に検査ボタン1505をクリックすると、全体制御部1414で電子線式顕微鏡1400を制御して指定されたパターン1504含む領域の1回目の電子線画像1506’、2回目の電子線画像1507’を取得し、2回目の電子線画像1507’に対して設定されたジッタ歪補正パラメータに基づいて補正した2回目の電子線画像1507’’(図示せず)と差画像1508’ (図示せず)を画面1500上に表示する。なお、ジッタ歪補正のパラメータ設定前に取得した1回目の電子線画像1506と2回目の電子線画像1507とを全て記憶手段1413に記憶しておけば、検査ボタン1505をクリックしても再度電子線画像を取得する必要は無く、記憶手段に記憶しておいた1回目の電子線画像1506と2回目の電子線画像1507とに対してジッタ歪補正のパラメータ設定欄1512で設定した条件で小領域画像を作成しジッタ補正後に再構成して2回目の電子線画像1507’’’ (図示せず)と差画像1508’’ (図示せず)とを作成し画面上に表示することもできる。
【0054】
このようにして設定されたジッタ歪補正のパラメータを用いて、電子線1405をラスタスキャンして毎回得られる電子線画像について、初回のラスタスキャンにより得られた所望のパターンの電子線画像を基準として2回目以降のラスタスキャンにより得られた所望のパターンの電子線画像について図15で説明したようなジッタ歪補正のパラメータを用いてジッタ補正を行い、この初回に得られた電子線画像に対するジッタ歪の差を補正した2回目以降のジッタ歪補正画像を作成し、このジッタ歪の差を補正した電子線画像を初回に得られた電子線画像に指定された枚数分順次重ね合わせるようにした。これにより、ジッタ歪成分が除去された画像を重ね合わせることができ、従来に比べて約半分の画像の重ね合わせで従来と同程度のS/Nのパターンの画像を得ることができるようになり、スループットを大幅に向上させることが可能になった。
【0055】
この従来に比べて約半分の画像の重ね合わせで得られた画像からパターンを抽出し、この抽出したパタンーンの予め設定された箇所または特徴的な箇所の寸法を計測することにより、SEM画像からパターンの寸法情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
106・・・GUI画面 201・・・電子ビーム 202・・・半導体ウェハ 302・・・帯状画像 303・・・処理単位画像 401・・・検査画像 402・・・小領域 403・・・参照画像 501・・・ジッタ合わせ参照画像 502・・・ジッタ除去検査画像 503・・・ジッタ半除去検査画像504・・・ジッタ半合わせ参照画像 601・・・検査画像 602・・・参照画像 603・・・差分画像 604・・・ジッタ補正参照画像 605・・・差分画像 701・・・検査ボタン 702・・・欠陥マップ欄 703・・・欠陥マップ 704・・・ドット 705・・・欠陥画像欄 706・・・検査画像 707・・・参照画像 708・・・差分画像 801・・・設定ボタン 802・・・パラメータ設定欄 803・・・ライン数設定欄 805・・・偏向ジッタ周期設定欄 901・・・電子線源903・・・偏向器 904・・・対物レンズ 905・・・半導体ウェハ 906・・・ステージ 908・・・検出器 909・・・A/D変換器 910・・・画像処理回路 911・・・検出条件制御部、912・・・画像処理制御部 913・・・全体制御部 914・・・データ記憶部 915・・・ユーザインターフェース部 1300,1400・・・走査型電子顕微鏡 1309,1409・・・検出器 1310,1410・・・A/D変換器 1311,1411・・・画像処理部 1312,1412・・・ユーザインターフェース部 1314,1414・・・全体制御部 1313,1413・・・記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面に本来同一形状となるパターンが複数形成された試料に電子ビームを照射して走査することにより前記試料を撮像し、該撮像して得た本来同一形状となるパターンの画像を複数枚重ねて処理するSEMを用いて取得した画像を処理する方法であって、
前記重ね合わせる複数枚の画像をそれぞれ前記電子ビームの走査方向に長い複数の小領域に分割するための前記走査方向に直角な方向の分割サイズを入力画面上で設定し、
該設定した分割サイズで前記複数枚の画像をそれぞれ複数の小領域に分割して各小領域ごとの前記複数枚の各画像間のずれを補正し、
該各画像間のずれを補正した複数の小領域の画像を統合して前記複数枚の画像を再構成し、
該再構成した複数の画像を重ね合わせて該重ね合わせた複数の画像を処理する
ことを特徴とするSEMを用いて取得した画像の処理方法。
【請求項2】
前記補正する各小領域ごとの各画像間のずれが周期的に繰り返すジッター歪であることを特徴とする請求項1記載のSEMを用いて取得した画像の処理方法。
【請求項3】
前記重ね合わせる複数枚の画像が、それぞれ前記試料上に形成されたパターンのうちの隣接する同一形状のパターン又は隣接する領域の本来同一形状に形成されたパターンの画像であり、前記再構成した複数の画像を重ね合わせて処理することが、該重ね合わせたパターンの画像間の差を抽出して欠陥を検出することであることを特徴とする請求項1又は2に記載のSEMを用いて取得した画像の処理方法。
【請求項4】
前記再構成した複数の画像を重ね合わせて処理を施すことが、前記重ね合わせた画像間の差から欠陥の画像を抽出し、該抽出した欠陥の画像の特徴量を算出することであることを特徴とする請求項1又は2に記載のSEMを用いて取得した画像の処理方法。
【請求項5】
前記重ね合わせる複数枚の画像が、前記試料上の同一の箇所の画像であり、前記再構成した複数の画像を重ね合わせて処理を施すことが、前記重ね合わせた試料上の同一の箇所の画像からパターンを抽出し、該抽出したパターンの寸法を計測することであることを特徴とする請求項1又は2に記載のSEMを用いて取得した画像の処理方法。
【請求項6】
収束させた電子ビームを試料に照射して走査することにより前記試料から発生する二次電子を検出して前記試料の画像を取得する走査型電子顕微鏡(SEM)と、該走査型電子顕微鏡で撮像して得た表面にパターンが形成された試料の画像を処理する画像処理手段と、前記走査型電子顕微鏡で前記試料を撮像する条件及び前記画像処理手段で画像を処理する条件を設定する条件設定手段と、前記走査型電子顕微鏡と前記画像処理手段と前記条件設定手段とを制御する制御手段とを備えたSEM装置であって、
前記条件設定手段は、前記走査型電子顕微鏡で撮像して得た前記試料の本来同一形状となるように形成されたパターンの複数枚の画像をそれぞれ前記電子ビームの走査方向に長い複数の小領域に分割するための前記走査方向に直角な方向の分割サイズを入力する入力画面を備え、
前記制御手段は、前記画像処理手段を制御して前記条件設定手段の入力画面から入力された前記小領域の分割サイズの情報に基づいて前記試料の本来同一形状となるように形成されたパターンの複数枚の画像をそれぞれ小領域に分割させ、該分割させたそれぞれの小領域ごとの画像間のずれを補正させ、該画像間のずれを補正させた小領域の画像を統合して前記複数枚の画像に再構成させ、該再構成させた複数の画像を重ね合わせて処理をさせることを特徴とするSEM装置。
【請求項7】
前記制御手段が前記画像処理手段を制御して補正する前記各小領域ごとの各画像間のずれが周期的に繰り返すジッター歪であることを特徴とする請求項6記載のSEM装置。
【請求項8】
前記走査型電子顕微鏡は、前記試料上に形成されたパターンのうちの隣接する同一形状のパターン又は隣接する領域の本来同一形状に形成されたパターンの画像を複数枚撮像し、
前記制御手段は前記画像処理手段を制御して前記走査型電子顕微鏡で撮像して得た前記複数枚の画像をそれぞれ小領域に分割して該小領域ごとに各画像間のずれを補正し統合して前記複数枚の画像に再構成させ、該再構成させた各画像を重ね合わせることにより前記隣接する同一形状のパターン又は隣接する領域の本来同一形状に形成されたパターンの画像間の差を抽出して欠陥を検出することを特徴とする請求項6又は7に記載のSEM装置。
【請求項9】
前記制御手段は前記画像処理手段を制御して前記再構成した複数の画像を重ね合わせ、該重ね合わせた画像間の差から欠陥の画像を抽出し、該抽出した欠陥の画像の特徴量を算出することを特徴とする請求項6又は7に記載のSEM装置。
【請求項10】
前記走査型電子顕微鏡は前記試料上の同一の箇所を複数回撮像して該同一の箇所の複数枚の画像を取得し、前記制御手段は前記画像処理手段を制御して前記走査型電子顕微鏡で取得した前記試料上の同一の箇所の複数枚の画像をそれぞれ小領域に分割して該小領域ごとに各画像間のずれを補正し統合して前記複数枚の画像に再構成させ、該再構成させた各画像を重ね合わせることにより該重ね合わせた試料上の同一の箇所の画像からパターンを抽出し、該抽出したパターンの寸法を計測することを特徴とする請求項6又は7に記載のSEM装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−43413(P2011−43413A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191961(P2009−191961)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】