説明

SMC成形装置

【課題】季節によるSMCシートの硬さ変動を考慮した成形条件の調整を必要とせず、生産性を向上させることができるSMC成形装置を提供する。
【解決手段】長尺のSMC(シートモールディングコンパウンド)シート4を搬送する搬送手段1と、搬送されたSMCシート4をプレス成形用に切断する切断手段2と、切断されたSMCシート4を金型で成形するプレス手段3とを有するSMC成形装置において、搬送手段1は、SMCシート4を支持搬送し、SMCシート4を加熱または冷却する温調ロール11を備えており、SMCシート4を前記温調ロール11で所定の温度にして切断手段2に搬送して切断し、SMCシート4の温度をほぼ維持した状態で金型に供給してプレス手段3で成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SMC成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂および充填材、硬化剤、増粘剤などの添加剤を含む樹脂組成物と、ガラス繊維とを含むSMC(シートモールディングコンパウンド)は、SMCを構成する樹脂組成物およびガラス繊維を上下2枚の離型フィルムで挟み込み、シート状にして搬送しつつ含浸装置で押圧含浸を行ってSMCシートとして製造される。このSMCシートは含浸装置を出た後、巻取軸に円筒状に巻き取られて収納されるか、またはつづら折れ状にコンテナに収納される。収納されたSMCシートは搬送装置で切断装置に搬送されてプレス成形用に所定の重量に切断され、次いで下金型に所定の形状(チャージパターン)にセットされ、上金型を降下して上下金型でプレスすることで成形品を得る。
【0003】
SMCシートの成形に際して、品質上重要なものとしてSMCシートの硬さが挙げられる。これは下金型にセットされるSMCシートの硬さが変わればプレス時の流動性も変わり成形品の不良発生率に大きく影響するからである。
【0004】
SMCシートの硬さは、SMCシートの樹脂成分の粘度と関係があり、温度が高いと柔らかくなり、温度が低いと硬くなる特性がある。SMCシートは同じ製造条件で製造されたものであっても、それを収納しているコンテナが室内の成り行き温度下で置かれているため、夏場はSMCシートの温度が高くなって硬さが柔らかくなり、冬場はSMCシートの温度が低くなって硬さが硬くなるなど、季節によりSMCシートの硬さが変動していた。このため、正常に成形でき、不良を抑えるためには、状況に応じて成形条件を調整する必要があった。例えば、SMCシートの温度が低くて硬さが硬いときは、SMCシートが昇温するまで時間がかかるため、プレス機の締切り速度を遅くするといった調整が必要であった。
【0005】
本出願人は、この問題を解決するために、コンテナからSMCシートを取り出した後、高周波誘電加熱装置による加熱を行い、その後SMCシートをプレス成形用に切断してプレス機に供給して成形する方法を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−241847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1による方法は、冬場において温度が低下したSMCシートに対しては有効ではあるものの、夏場において温度が高くなったSMCシートへの対策は不十分であった。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、季節によるSMCシートの硬さ変動を考慮した成形条件の調整を必要とせず、生産性を向上させることができるSMC成形装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、本発明のSMC成形装置は、長尺のSMC(シートモールディングコンパウンド)シートを搬送する搬送手段と、搬送されたSMCシートをプレス成形用に切断する切断手段と、切断されたSMCシートを金型で成形するプレス手段とを有するSMC成形装置において、搬送手段は、SMCシートを支持搬送し、SMCシートを加熱または冷却する温調ロールを備えており、SMCシートを前記温調ロールで所定の温度にして切断手段に搬送して切断し、SMCシートの温度をほぼ維持した状態で金型に供給してプレス手段で成形する。
【0010】
第2に、上記第1の発明のSMC成形装置において、温調ロールは、SMCシートの上面側および下面側に配設されており、SMCシートの上面側と下面側から加熱または冷却する。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、所定の温度に調節された温調ロールによってSMCシートの温度が所定の温度に調整される。所定の温度に調整されたSMCシートは切断手段に搬送されてプレス成形用に切断され、SMCシートの温度をほぼ維持した状態でプレス手段で成形される。SMCシートの成形に際しては、SMCシートが所定の温度に調整されているため、季節によるSMCシートの硬さ変動を考慮した成形条件の調整が不要になり、生産性を向上させることができる。しかも、成形条件の調整不足を起因とする不良発生を低減することができる。
【0012】
上記第2の発明によれば、SMCシートの温度の調節をより確実に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態であるSMC成形装置の概略図である。
【0015】
本実施形態に係るSMC成形装置は、長尺のSMCシート4を搬送する搬送手段1と、搬送されたSMCシート4をプレス成形用に切断する切断手段2と、切断されたSMCシート4を金型で成形するプレス手段3とを備えている。
【0016】
図1に示すように、搬送手段1では、つづら折れ状に折り畳まれてコンテナ5に収納されている長尺のSMCシート4がコンテナ5上方に設けられた支持ロール13を介して送りロール14で引き出されて切断手段2に搬送されるようになっている。
【0017】
搬送手段1における送りロール14は、並設された上下一対のロール14a,14bで構成されており、SMCシート4を上ロール14aと下ロール14bとの間に通過させ、上下ロール14a,14bで押圧しつつ下ロール14bの回転駆動または上下ロール14a,14bの回転駆動により搬送する。上下ロール14a,14bは金属製でもゴム製でもよく、金属製であれば梨地処理やローレット処理を、ゴム製であればライニング加工をロール周面に施して摩擦係数を上げるようにしてもよい。
【0018】
本実施形態において特徴的なのは、搬送手段1が温調ロール11を備えており、SMCシート4の搬送工程でSMCシート4の温度の調整が行われることである。この温調ロール11は支持ロール13と送りロール14との間に設けられており、SMCシート4を支持搬送しつつ、SMCシート4を加熱または冷却して所定の温度に調整する。
【0019】
具体的には、温調ロール11は、送りロール14の直前の位置において、SMCシート4の上面側のみまたは下面側のみあるいは両側に近接して配設される。ここで、温調ロール11の配置や、数、温度は、SMCシート4の厚み、設定する温度に応じて適宜設定される。例えば、図1では、4本の温調ロール11を上下に一列に配設し、隣接するロール間にSMCシート4を搬送方向に順次通過させている。このような温調ロール11の配置は、SMCシート4の上面と下面を交互に温調ロール11に接触させ、温調ロール11とSMCシート4との接触面積を大きくしている。SMCシート4はその上面側と下面側から温調ロール11によって加熱または冷却されるため、より効果的にSMCシート4の温度の調整がなされる。
【0020】
温調ロール11の配置はこれに限定されるものではなく、例えば、SMCシート4を挟むように配設された一対の温調ロール11をSMCシート4の搬送方向に複数組配設してもよい。また、温調ロール11の数も、図1のように4本に限定されるものではなく、例えば、2本とされていてもよい。また、温調ロール11は、熱伝導性の観点から金属製とすることが好ましい。
【0021】
温調ロール11の温度調節は、温調機12から温調ロール11の内部に水やオイル等の流体を流し、温調機12で流体の温度や流量を調節することで行われ、例えば、15℃〜25℃の間の一定の温度に設定される。この温調ロール11の温度調節は、温調ロール11と送りロール14の間にSMCシート4の温度を測定する手段を設けて温度調節してもよく、雰囲気温度に応じて温度調節してもよい。
【0022】
このように本実施形態では、搬送工程でSMCシート4を温調ロール11に接触させることにより、SMCシート4の温度を、例えば15℃〜25℃の間の一定の温度に調整している。
【0023】
所定の温度に調整されて切断手段2に搬送されたSMCシート4は、プレス成形用に所定の重量に切断されてプレス手段3に供給される。プレス手段3では、切断されたSMCシート4が下金型32に所定の形状(チャージパターン)にセットされ、上金型31を降下して上下金型31,32でプレスすることにより成形品が得られる。ここで、プレス手段3へのSMCシート4の供給は、SMCシート4の温度をほぼ維持した状態で行われ、プレス手段3の下金型32にセットされる。これによって、プレス手段3では、コンテナ5収納時のSMCシート4の温度にかかわらず、一定温度のSMCシート4の成形が行われることになる。
【0024】
SMCシート4が収納されたコンテナ5は室内の成り行き温度下に置かれるため、季節によりSMCシート4の温度が変動し、それに伴いSMCシート4の硬さも変動し、SMCシート4の成形ではSMCシート4の硬さに応じて調整する必要があったが、本実施形態によれば、SMCシート4を所定の温度に調整してプレス手段3で成形するため、このような季節によるSMCシート4の硬さ変動に応じた成形条件の調整が不要になる。よって、SMC成形品の生産性を向上させることができる。しかも、SMCシート4の成形条件の調整不足を起因とする不良発生を低減することができる。
【0025】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態であるSMC成形装置の概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 搬送手段
11 温調ロール
12 温調機
13 支持ロール
14 送りロール
14a 上ロール
14b 下ロール
2 切断手段
3 プレス手段
31 上金型
32 下金型
4 SMCシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のSMC(シートモールディングコンパウンド)シートを搬送する搬送手段と、搬送されたSMCシートをプレス成形用に切断する切断手段と、切断されたSMCシートを金型で成形するプレス手段とを有するSMC成形装置において、搬送手段は、SMCシートを支持搬送し、SMCシートを加熱または冷却する温調ロールを備えており、SMCシートを前記温調ロールで所定の温度にして切断手段に搬送して切断し、SMCシートの温度をほぼ維持した状態で金型に供給してプレス手段で成形することを特徴とするSMC成形装置。
【請求項2】
温調ロールは、SMCシートの上面側および下面側に配設されており、SMCシートの上面側と下面側から加熱または冷却することを特徴とする請求項1に記載のSMC成形装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−76231(P2010−76231A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246494(P2008−246494)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】