説明

Tie受容体およびTieリガンド物質および雌受胎能を制御する方法

本発明は、ヒトを含む哺乳類における雌の受胎能を制御するための、Tie受容体およびアンジオポエチンリガンドが関与する物質および方法を提供する。受胎能の阻害のため (例えば避妊のため)、または受胎能の増強のため (例えば不妊の処置のため) の物質および方法が考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第60/582858号(2004年6月25日出願)(全体として引用により本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトを含む哺乳類における雌受胎能を制御(阻害または増強)するための物質および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
血管新生は、既存の血管ネットワークから血管新生刺激に応答して毛細血管が発芽することにより、新しい血管が形成されるプロセスである。内皮細胞の増殖および移動に続いて、血管は、内皮細胞の動員および内皮細胞と壁細胞との相互作用ならびに周囲の細胞外マトリクス(ECM)の再構成を必要とするプロセスにおいて安定化され、完全に機能的な血管へと成熟する必要がある。成体では、血管新生は通常、創傷治癒、組織修復、および雌の生殖周期および妊娠の間にのみ起こる。さらに、血管新生は、病的状態、例えば腫瘍の進行、糖尿病性失明、加齢性黄斑変性症、リウマチ性関節炎、乾癬、および70を超える他の病気において生じる。正および負の調節分子のバランスが血管新生を調節すると考えられる。体の第二の脈管系であるリンパ管系は、リンパ管形成と呼ばれるプロセスを通して、胚血管からの血管の成熟と同時に発達中に形成される (Saharinen et al., 2004に総説)。
【0004】
血管新生の正のレギュレーターは、非常によく特徴決定されている。血管内皮増殖因子(VEGF) ファミリーのメンバーおよびそれらの受容体は初期の胚血管網の形成中に機能するが、アンジオポエチン (Ang) およびそれらの受容体であるTie-2はその後の再構築プロセスに関係することが示唆されている(以下に総説:Ferrara et al., Nat. Med., 9:669-676, 2003; Rossant and Howard, Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 18:541-573, 2002)。内皮特異的受容体チロシンキナーゼであるTie-1はTie-2と高度の相同性を共有する。これらの受容体は、その細胞外ドメインに2つのイムノグロブリン様ループ、3つのEGF様ドメイン、および3つのフィブロネクチンタイプ IIIリピートを、その細胞質尾部に多くのリン酸化部位およびタンパク質相互作用部位とともにチロシンキナーゼドメインを含む。tie遺伝子の発現は、内皮細胞および一部の造血系細胞株に限定されている (Korhonen et al., Oncogene, 9:395-403, 1994; Partanen et al., Mol. Cell. Biol., 12:1698-1707, 1992)。Tie-1発現の上方調節は、創傷治癒、卵胞成熟および腫瘍血管新生中に観察されている (Kaipainen et al., Cancer Res., 54:6571-6577, 1994; Korhonen et al., Blood, 80:2548-2555,1992)。Ang-2、Tie-1およびTie-2の異常な発現はまた、月経過多子宮内膜症(menorrhagic endometrium)においても検出された(Blumenthal et al., Fertil. Steril., 78:1294-1300, 2002)。
【0005】
Tie-1は、血管内皮細胞の完全性および生存のため胚発生中に、特に毛細血管の血管新生的成長が起こっている領域において、必要とされる。マウスにおいてTie-1遺伝子を標的化して破壊すると、重度の浮腫、大量出血、および微細血管の完全性の欠如のため、バックグラウンドの株に依存してE13.5〜E18.5の間に胚致死がもたらされる(Puri et al., EMBO J., 14:5884-5891, 1995; Sato et al., Nature, 376:70-74, 1995)。Tie-2遺伝子を欠失すると、内皮周囲支持細胞の不適切な動員の結果生じる心不全、出血、および血管再構築および成熟における欠陥のため、E10.5で胚致死が起こる。(Dumont et al., Gene Dev., 8:1897-1909, 1994; Sato et al., Nature, 376:70-74, 1995)。Tie-1およびTie-2受容体の両方を欠損するマウスもまた、Tie-2ヌル動物と同様の欠陥により約E10.5で死亡する (Puri et al., Development, 126:4569-4580, 1999)。
【0006】
Tie-1はリガンドが報告されていないオーファン受容体であるが、Tie-2のリガンドとしてはアンジオポエチンファミリーの3つのメンバー (Ang-1、Ang-2およびAng-3/4) が同定されている。Ang-1およびAng-2は近年広く研究されている。Ang-1は血管系の血管再構築、成熟および安定化を促進し、Ang-1ヌル表現型は、多少重症度は低いもののTie-2ヌル表現型と非常によく似ており、E12.5で胚致死にいたる (Suri et al., Cell, 87:1171-1180, 1996)。皮膚におけるケラチン-14 (K14) プロモーター下のAng-1の過剰発現により、内皮増殖および生存におけるAng-1の役割が確認される(Thurston et al., Science, 286:2511-2514,1999)。Ang-2は、内皮細胞におけるTie-2の天然のアンタゴニストであり、胚発生中は必ずしも必要でないが、生後の血管再構築中に必要とされる。さらに、Ang-2を欠失すると、リンパ管系のパターン形成および機能に欠陥が生じる (Gale et al., Dev. Cell., 3:411-423, 2002)。このリンパ管系の欠陥はAng-1によって完全に回復するが血管再構築の欠陥は回復せず、このことは、Ang-2がリンパ管系ではTie-2 アゴニストとして作用するが血管系ではアンタゴニストとして作用することを示唆する (Gale et al., Dev. Cell., 3:411-423, 2002)。血管におけるAng-2の過剰発現はTie-2ヌル動物の表現型に似ており、 E9.5-E10.5で胚致死にいたる (Maisonpierre et al., Science, 277:55-60,1997)。内皮細胞においてAng-1がTie-2へ結合すると受容体のリン酸化が誘導されるが、一方Ang-2がTie-2へ結合しても受容体のリン酸化を誘導できない (Maisonpierre et al., Science, 277:55-60, 1997)。いずれのアンジオポエチンも直接Tie-1に結合することは報告されていない。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、雌受胎能および胚形成の制御のための組成物およびその使用方法を包含する。
【0008】
ある局面において、本発明は、雌受胎能および胚形成の阻害に有用な可溶性Tie-1受容体細胞外ドメイン組成物である。マウスで発現させたTie-1-Igコンストラクトは、卵巣の血管系を安定化し、その退行を阻害することが観察された。
【0009】
ヒトにおいて、Tie-1は、約1138アミノ酸の受容体チロシンキナーゼタンパク質を含む (Swiss ProtデータベースアクセションNO.P35590および米国特許第5955291号、いずれも引用により本明細書に含まれる)。このTieアミノ酸配列は、切断されてアミノ酸25-1138より構成される成熟タンパク質を生じるシグナルペプチド (aa 1-24)を含む。細胞外ドメインはおよそアミノ酸25-759を含み、ここで残基43-105はIg様C2-タイプ 1 ドメインを含む; 残基83、161、503、596および709は推定N結合グリコシル化部位である; 残基214-256、258-303および305-345はEGF様配列を含む; 残基372-426はIg様C2-タイプ 2 ドメインを含む; そして残基446-537、545-637および644-736はフィブロネクチンタイプ-III-様ドメインを含む。残基760-784は推定膜貫通ドメインを含む。本発明の実施のため、受胎能または胚形成の阻害に有効なTie-1細胞外ドメインフラグメントもまた使用可能である。有効なフラグメントは、本明細書に記載のインビボスクリーニングにより同定可能である。特定の理論に限定されないが、Tie-2および/または(Tie-1またはTie-2、あるいはTie-1/Tie-2複合体に結合する)アンジオポエチンリガンドとの相互作用に有効な配列を含むフラグメントが特に考慮される。
【0010】
ある態様において、Tie-1細胞外ドメインは、イムノグロブリン定常ドメイン (Fc)、好ましくはIgG Fcドメインに融合される。血清半減期を増加させるため(すなわちクリアランスを遅らせるため)のかかるポリペプチドに対する融合が特に考慮される。さらなる修飾、例えば血清半減期を増加させるためのペグ化または他の部分の付加などもまた考えられる。
【0011】
本明細書に記載の正確なヒトTie-1配列の変異体もまた考えられる。例えば、本明細書に記載のTie-1受容体細胞外ドメインの配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有するポリペプチド、またはその有効なフラグメントが特に考慮される。
【0012】
組成物は、好ましくはさらに医薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む。
【0013】
関連する態様において、本発明は、雌受胎能および胚形成の阻害に有用な可溶性Tie-2受容体細胞外ドメイン組成物である。Tie-1と類似の構造を有するヒトTie-2 (Swiss ProtデータベースアクセションNo.Q02763、引用により本明細書に含まれる)は、1124アミノ酸のアミノ酸配列を含み、そのほぼ残基1-22がシグナルペプチドを含み、残基746-770が推定膜貫通ドメインを含む。
【0014】
本発明の実施のため、受胎能または胚形成の阻害に有効なTie-2細胞外ドメインのフラグメントもまた使用可能である。有効なフラグメントは、インビボスクリーニング (Tie-1/Ig ペプチドに関して本明細書に記載)により同定可能である。特定の理論に限定されないが、Tie-1および/または(Tie-1またはTie-2、あるいはTie-1/Tie-2複合体に結合する)アンジオポエチンリガンドとの相互作用に有効な配列を含むフラグメントが特に考えられる。
【0015】
ある態様において、Tie-2細胞外ドメインは、イムノグロブリン定常ドメイン (Fc)、好ましくはIgG Fcドメインに融合される。血清半減期を増加させるため(すなわちクリアランスを遅らせるため)のかかるポリペプチドに対する融合が特に考慮される。さらなる修飾、例えば血清半減期を増加させるためのペグ化または他の部分の付加などもまた考えられる。
【0016】
本明細書に記載の正確なヒトTie-2配列の変異体もまた考えられる。例えば、本明細書に記載のTie-2受容体細胞外ドメインの配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有するポリペプチド、またはその有効なフラグメントが特に考慮される。
【0017】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のTie-1またはTie-2組成物の、雌受胎能の制御のための医薬、例えば避妊薬、の製造のための使用である。
【0018】
ポリペプチドが治療薬と考えられるこれらその他の態様のため、本発明はまた、そのポリペプチドをコードし、かつエクスビボまたはインビボでそのポリペプチドを発現するのに使用可能なポリヌクレオチドおよびベクター (例えば、遺伝子治療用ベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスまたはレンチウイルス) を含む。かかるポリヌクレオチドまたはベクターと医薬上許容される希釈剤または担体とを含む組成物は、本発明のさらなる局面と考えられる。
【0019】
本発明はまた、受胎能の阻害に有効な量の本明細書に記載のポリペプチドまたはポリヌクレオチド物質を雌哺乳類に投与することにより雌哺乳類の受胎能を阻害する方法である。すべての投与経路 (経口、静脈内、筋肉内その他の注射、皮膚パッチ、局所、膣内など)が考えられる。
【0020】
特定の理論に限定される意図ではないが、可溶性Tie物質は、血中のアンジオポエチン分子に結合し、それが雌の生殖系において発現するTie-1/Tie-2を刺激することを妨げることにより、受胎能を阻害に有効である。別の変形として、本発明は、雌受胎能を阻害するためのアンジオポエチン抗体もしくは低分子干渉RNAもしくはアンチセンス分子、または他のアンジオポエチン阻害薬の使用である。
【0021】
本発明はまた、対象における受胎能および胚形成を促進するための医薬の製造に使用するための、アンジオポエチン-1ポリペプチドを含む組成物、を包含する。本発明はさらに、雌対象における受胎能および胚形成を促進するための医薬の製造に使用するための、アンジオポエチン-2分子を含む組成物、を包含する。さらなる態様において、本発明が考慮する組成物はさらに、医薬上許容される希釈剤または担体を含む。本発明は、受胎能を増加させるため、または流産の可能性を減少させるため、雌対象にかかる組成物を投与する方法を包含する。排卵 (体温または他の雌の周期の観察により予測可能である) の後の投与が特に考慮される。
【0022】
Tieペプチドに関して前述したように、不妊を処置するためのアンジオポエチンのフラグメントおよび配列変異体の使用が特に考えられる。
【0023】
アンジオポエチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド (またはベクター) の投与もまた考えられ、不妊を処置するための医薬の製造のための、かかるポリペプチドおよびポリペプチドの使用、が考えられる。
【0024】
別の態様において、本発明は、対象における受胎能の制御に有効な量にてTie-1 細胞外ドメイン組成物を対象に投与する工程を含む、雌受胎能を制御する方法、を提供する。ある局面において、Tie-1 組成物は、対象において受胎能を阻害し、また胚形成を阻害する。
【0025】
本発明はまた、対象における受胎能の促進に有効な量にて対象にアンジオポエチン-1 組成物を投与する工程を含む、対象における受胎能を促進する方法を提供する。受胎能の促進には、胚の着床の促進、または胚の成長の促進が含まれる。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、哺乳類雌由来の生物学的サンプル (例えば、組織もしくは体液サンプルまたは生検) においてTie受容体の発現または活性を測定する工程を含む、雌における不妊をスクリーニングする方法、または雌における不妊に寄与している可能性のある生化学的経路をスクリーニングする方法、であり、ここで、Tie発現または活性は受胎能と相関する。Teilman and Christensen は最近Cell Biol. International (2005) において、Tie-1およびTie-2 受容体が雌生殖器官、例えばヒトにおける卵巣表面上皮、の一次繊毛に局在することを報告した。特定の理論に限定される意図ではないが、これら組織における異常なTie受容体の発現または機能は、ヒトの不妊の原因であるか、あるいはそれと相関することが示唆される。好ましい変形において、スクリーニング方法は、雌生殖組織、例えば卵巣、卵管、子宮組織など、を含む生物学的サンプルを使用して行われる。特に好ましい変形において、生物学的サンプルは、卵巣表面内皮の一次繊毛を含む。関連する変形において、本発明は、Tie-1/Tie-2相互作用またはTie/アンジオポエチン相互作用を破壊する変異についてTie受容体配列を解析することを含む。
【0027】
本発明のさらに別の変形は、Tie-1および/またはTie-2および/またはアンジオポエチンの間の相互作用を制御することにより雌受胎能を変化させる物質をスクリーニングする方法である。より具体的には、血中のアゴニストであるアンジオポエチンTie リガンドと雌生殖系に発現するTie受容体との間の正常な相互作用を破壊する物質は、受胎能を阻害し、避妊薬として有用であることが期待され、また、かかる相互作用を模倣または増強する物質は、受胎能の促進に有用であることが期待される。
【0028】
以下の番号を付した項は、本発明のさらなる局面および態様を概説する:
1. 以下の工程を含む、哺乳類雌における受胎能または胚形成を制御する方法:
哺乳類雌に、該雌の細胞におけるアンジオポエチン誘発Tie受容体活性のモジュレーターを含む医薬を、該雌における受胎能または胚形成の制御に有効な量にて投与する工程。本発明の目的において、「受胎能」は、生存可能な子孫を妊娠および出産する能力を意味する。本発明はいずれの哺乳類についても適用可能であるが、ヒト、愛玩動物 (例えばイヌ、ネコ)、農業または狩猟に重要な動物(ウマ、メウシ、ブタ、オウシ)、絶滅の危機にある種、および動物園の動物とって特に興味深い。「制御する」なる用語は、上方調節 (受胎能の増加) および下方調節または阻害 (受胎能の減少または除去)の両方を意味する。
【0029】
2. 哺乳類雌における受胎能または胚形成を制御するための医薬の製造における、アンジオポエチン誘発Tie受容体活性のモジュレーターの使用。
【0030】
3. 雌がヒトである、項1または2の方法または使用。
【0031】
4. 医薬がさらに医薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む、項1〜3のいずれかの方法または使用。適切な担体は、各種物質および選択された投与経路について明らかである。
【0032】
5. モジュレーターがアンジオポエチン誘発Tie受容体活性の阻害薬であり、該モジュレーターが受胎能または胚形成の阻害に有効な量にて医薬中に存在する、項1〜4のいずれかの方法または使用。Tie受容体活性は、受容体のリン酸化または受容体を発現する細胞の下流の生理学的プロセスをスクリーニングすることにより測定可能である。
【0033】
6. 阻害薬が、アンジオポエチンタンパク質に結合し、かつ哺乳類Tie-1またはTie-2受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む可溶性ポリペプチドを含む、項5の方法または使用。
【0034】
7. 阻害薬が以下からなる群より選択されるメンバーを含む、項5の方法または使用:
(A) 以下を含むポリペプチド:
(i) 配列番号 2のアミノ酸25-759と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列;
(ii) 配列番号 4のアミノ酸23-745と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列; および
(iii) (i)または(ii)のフラグメント;
ここで、該ポリペプチドは、アンジオポエチン-1 (配列番号 6)、アンジオポエチン-2 (配列番号 8)、アンジオポエチン-3 (配列番号 10)、およびアンジオポエチン-4 (配列番号 12) からなる群より選択される少なくとも1つのアンジオポエチンポリペプチドに結合する;
(B) (A)のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド; および
(C) (B)のポリヌクレオチドを含むベクター。
【0035】
8. ポリペプチドがさらにイムノグロブリンFcフラグメントを含む、項6または7の方法または使用。
【0036】
9. イムノグロブリンFcフラグメントがIgG Fcドメインを含む、項8の方法または使用。
【0037】
10. 阻害薬がTie-1またはTie-2受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインに特異的に免疫反応する抗体物質を含む、項5の方法または使用、ここで該抗体物質は以下を含む: (a) モノクローナルまたはポリクローナル抗体; (b) 該免疫反応性を保持する(a)のフラグメント; または(c) (a)の抗原結合フラグメントを含み、かつ該免疫反応性を保持するポリペプチド。
【0038】
11. 阻害薬が、Tie-1受容体チロシンキナーゼ、Tie-2受容体チロシンキナーゼ; アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、アンジオポエチン-3およびアンジオポエチン-4からなる群より選択されるポリペプチドの発現を阻害する干渉RNAを含む、項5の方法。
【0039】
12. モジュレーターが、Tie受容体活性のアゴニストであり、該雌における受胎能の増加または胚形成の促進に有効な量にて医薬中に存在する、項1〜4のいずれかの方法または使用。
【0040】
13. アゴニストが、(a) Tie受容体チロシンキナーゼに結合してそれを刺激するのに有効である哺乳類アンジオポエチンポリペプチドまたはそのフラグメントと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド; または(b)該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド; または(c) 該ポリヌクレオチドを含むベクターを含む、項12の方法または使用。
【0041】
14. アンジオポエチンポリペプチドが、ヒトアンジオポエチン-1 (配列番号 6)、アンジオポエチン-2 (配列番号 8) 、アンジオポエチン-3 (配列番号 10)およびアンジオポエチン-4 (配列番号 12) からなる群より選択される、項13の方法または使用。
【0042】
15. 医薬が、経口的に、静脈内注射、筋肉内注射または他の注射により、経皮パッチにより、局所的に、または経膣的に投与される、項1〜14のいずれかの方法または使用。
【0043】
16. 医薬が排卵後に投与される、項1〜14のいずれかの方法。
【0044】
17. 哺乳類雌由来の生物学的サンプルにおけるTie受容体の発現または活性を測定する工程を含む、雌における不妊についてスクリーニングする方法、ここでTie発現または活性が受胎能と相関する。
【0045】
18. 生物学的サンプルが卵巣表面内皮の一次繊毛を含む、項17の方法。
【0046】
19. 以下の工程を含む、Tie受容体チロシンキナーゼとアンジオポエチンリガンドとの結合のモジュレーターをスクリーニングする方法:
a) 推定モジュレーター化合物の存在および非存在下において、Tie受容体組成物とアンジオポエチンリガンドとを接触させる工程;
b) 該推定モジュレーター化合物の存在および非存在下において、Tie受容体とアンジオポエチンリガンドとの結合を測定する工程; および
c) 該推定モジュレーター化合物の非存在下における結合と比較した、該推定モジュレーター化合物の存在下における該結合の減少または増加に基づきモジュレーター化合物を同定する工程。
【0047】
20. Tie受容体組成物がTie-1受容体をその表面に発現する細胞を含む、項19の方法。
【0048】
21. 細胞がさらにTie-2受容体をその表面に発現する、項20の方法。
【0049】
22. さらに以下の工程を含む、項19〜21のいずれかの方法:
(d) 工程 (c)により同定されたモジュレーターを医薬上許容される担体中に製剤化することによりモジュレーター組成物を製造する工程。
【0050】
23. さらに以下の工程を含む、請求項22の方法:
(e) Tie受容体を発現する細胞を含む哺乳類に該モジュレーター組成物を投与し、該哺乳類における該モジュレーター組成物の生理学的効果を測定する工程。
【0051】
24. 哺乳類における受胎能を評価することを含む、請求項23の方法。
【0052】
25. Tie受容体が、哺乳類Tie-1および哺乳類Tie-2ならびにその混合物からなる群より選択される、項19〜24のいずれかの方法。
【0053】
26. Tie受容体およびアンジオポエチンがヒトである、項25の方法。
【0054】
本発明のさらなる特徴および変形は、詳細な説明を含む本願全体から当業者にとって明らかであり、かかる特徴のすべてが本発明の局面として意図される。しかしながら理解されるべきことに、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい態様を示すものであるが、単に例示されるものであり、なぜなら本発明の精神および範囲内における各種変更および改変は本明細書の詳細な説明から当業者に明らかとなるからである。
【0055】
さらに、本明細書に記載の本発明の特徴は、その特徴の組合せが具体的に本発明の局面または態様として前述されているか否かによらず、同様に本発明の局面として意図されるさらなる態様と再度組み合わせることができる。また、本発明に決定的に重要であると本明細書に記載されている限定のみがそのように見なされるべきである;本明細書に決定的に重要と記載されていない特徴を欠く本発明の変形は、本発明の局面として意図される。
【0056】
組(set)または属として記載されている本発明の局面に関して、組または属のすべての個々のメンバーが、独立に、たとえ簡略化のためすべての個々のメンバーが本明細書に具体的に記載されていないとしても、本発明の局面と意図される。本明細書に記載の本発明の局面が属から選択される場合、その選択はその属の2以上のメンバーの混合物を含みうると理解されるべきである。
【0057】
以上に加えて、本発明は、さらなる局面として、本明細書に具体的に記載される変形より何らかの意味において範囲の狭い本発明の態様をすべて包含する。出願人は、本明細書に添付した特許請求の範囲の全範囲を発明したが、添付の特許請求の範囲はその範囲内に他人よる先行技術を包含することを意図していない。それゆえ、請求項の範囲内にある法定先行技術が特許庁または他の団体もしくは個人によって出願人に対して示された場合には、出願人は、適用される特許法のもと補正の権利を行使し、かかる請求項の主題を再規定して、そのような法定先行技術または法定先行技術の明らかな変形をかかる請求項の範囲から除外する権利を留保する。このように補正された請求項により規定される本発明の変形もまた、本発明の局面と意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明は、細胞生物学および分子生物学の分野に関与し、これら分野に関連する多くの標準技術が本発明の実施に関連する。かかる技術の多くは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)、および/または Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishers Inc. and Wiley and Sons, NY (1994-2001)に記載されており、これらはいずれも引用により全体が本明細書に含まれる。
【0059】
A.本発明にとって興味深い遺伝子配列
少なくとも2つのTie受容体が同定されており、Tie (Tie-1)およびTie-2と呼ばれている。文献に報告されている脊椎動物種のすべての既知のアンジオポエチンおよびTie受容体のDNAおよび推定アミノ酸配列が、引用により本明細書に含まれる。しかしながら、本発明にとって特に重要なため、以下の表を読者の利便性のために提供する:

【0060】
アンジオポエチンファミリーメンバー
アンジオポエチンは、Tie-2を制御(刺激または阻害)することが知られていることから、本発明にとって特に興味深い。アンジオポエチン (Ang 1-4) 分子ファミリーは、もともとオーファンTie-2受容体チロシンキナーゼに対するリガンドのためのcDNA ライブラリースクリーニングにより同定された [Davis et al., Cell, 87: 1161 69 (1996)]。最初に同定されたアンジオポエチンリガンドであるAng 1は、分泌因子がTie-2 Fc 分子への結合を示す細胞株を用いた分泌トラップ発現クローニング(secretion trap expression cloning)により単離された。この新規技術により、498 アミノ酸、70 kDaの糖タンパク質が単離された。このタンパク質のN末領域は、分泌シグナル配列に特徴的な疎水性配列を示した。Ang 1の残基 100-280はミオシンに見られるようなコイルドコイル構造と類似しており、一方残基 280-498はフィブリノゲンを含むタンパク質ファミリーに相同性を示し、つまりこの領域はフィブリノゲン様ドメインである。Ang-1はTie-2に対して4 nM未満の結合親和性を示し、Tie-2 チロシンキナーゼのリン酸化および活性化を誘導する。
【0061】
アンジオポエチンファミリーの残りのメンバーは、Ang-1のcDNA配列に対するホモロジーサーチにより単離された。ヒト Ang-2(496 アミノ酸のタンパク質) (Maisonpierre et al, Science. 277: 55 60 (1997))は、マウスAng-2に対して85%の相同性、およびヒトAng-1 タンパク質に対して60%の相同性を示す。Ang-2は、Ang-1にも見られるアミノ末端分泌シグナル配列を有し、またコイルドコイル構造およびフィブリノゲン様ドメインも有する。Ang-2はまた、ジスルフィド結合の形成に重要であると考えられている、Ang-1 配列全体に見られる9個のシステイン残基のうち8個を共有する。Tie-2 受容体に対するAng-2の活性の解析により、Ang-2はTie-2に結合するが受容体のリン酸化を誘導しないことが示され、このことはAng-2がTie-2のAng-1による活性化のアンタゴニストであることを示唆する。
【0062】
アンジオポエチン 3は、Ang-1およびAng-2との配列類似性に基づき、幾つかのグループにより同定されている。例えば以下を参照: Kim et al., FEBS Lett. 443: 353 6 (1999); Nishimura et al, FEBS Lett. 448: 254 6 (1999)。これらグループは、それぞれAng-3の503または491 アミノ酸のクローンを同定した。Nishimura et al.は、Ang-3をヒト大動脈cDNAライブラリーからクローニングし、ヒトAng-1と45.1%の同一性、およびAng-2に対して44.7%の同一性を有する503 アミノ酸のタンパク質を同定した。三番目のグループは、独立に460 アミノ酸のAng-3 クローン (ANGPTL3) をヒト肝臓組織から同定した(Conklin et al., Genomics, 62: 477 82 (1999)。3つのクローンはいずれも、他のアンジオポエチンファミリーメンバーに特徴的なN末分泌シグナル配列、コイルドコイルモチーフ、およびフィブリノゲン様ドメインを有する。
【0063】
ヒトAng-4は、マウスゲノムライブラリーに対する配列相同性によりValenzuela, et al (Proc. Natl. Acad. Sci USA. 96:1904 09. 1999)よって同定されたが、アンジオポエチンファミリーメンバーを示すリーダーシグナル配列、コイルドコイル、およびフィブリノゲン様配列を有する、503 アミノ酸のタンパク質である。Ang-3およびAng-4はいずれも、Ang-1に存在する9個のシステインのうち8個を保存している。Ang-3およびAng-4はいずれも、Tie-2受容体には結合するがTie-1には結合しないことが報告されている。Ang-3はアンタゴニストとして作用するが、一方Ang-4はアゴニストとしてTie-2を活性化する。
【0064】
前述のものに加えて、本発明は、血管新生プロセスの局面の促進または阻害に関与するいくつかの他のポリペプチド因子を含む。以下の記載は、それゆえ、本発明の実施に有用である。
【0065】
本発明の実施に使用されるアンジオポエチンまたは他のポリペプチドに関して、理解されることには、天然の配列が通常最も好ましいが、ほとんどのタンパク質配列に対してそのタンパク質の興味ある活性を破壊することなく改変を行うことができ、それは特に保守的アミノ酸置換である。「保守的アミノ酸置換」は、アミノ酸の、化学的特性の類似する側鎖を有するアミノ酸との置換を意味する。保守的置換を行うための類似アミノ酸には、以下を有するものが含まれる:酸性側鎖 (グルタミン酸、アスパラギン酸); 塩基性側鎖 (アルギニン、リジン、ヒスチジン); 極性アミド側鎖 (グルタミン、アスパラギン); 疎水性脂肪族側鎖 (ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン); 芳香属側鎖 (フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン); 低分子側鎖 (グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン); または脂肪族ヒドロキシル側鎖 (セリン、スレオニン)。
【0066】
さらに、アミノ酸の欠失および付加が、所望の活性を破壊することなく可能であることが多い。結合活性が特に興味深く、また結合に際して受容体チロシンキナーゼを活性化または阻害する分子の能力がとりわけ興味深い本発明に関して、結合アッセイおよびチロシンリン酸化アッセイは、特定のリガンドまたはリガンド変異体が (a) RTKに結合するか、および(b) RTK活性を刺激または阻害するか、を決定するために利用可能である。
【0067】
ポリペプチド変異体の属(genera)を規定する2つの方法には、天然ポリペプチドに対するアミノ酸同一性割合(例えば、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99% の同一性が好ましい)、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドが特定の条件下で互いにハイブリダイズする能力、が含まれる。典型的な条件の組は以下である:ハイブリダイゼーション、42℃、50% ホルムアミド、5X SSC、20 mM Na・PO4、pH 6.8中; および洗浄、1X SSC中、55℃、30分間。所望のストリンジェンシーレベルを達成するための同等のハイブリダイゼーション条件の計算および/または他の条件の選択のための式は周知である。当業界において理解されることには、同等のストリンジェンシーの条件は、Ausubel, et al. (Eds.), Protocol in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1994), pp. 6.0.3 to 6.4.10に記載のように、温度または緩衝液、あるいは塩濃度の変化により達成可能である。ハイブリダイゼーション条件の改変は、実験により決定することができ、あるいはプローブの長さおよびグアノシン/シトシン (GC) 塩基対合の割合に基づき正確に計算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook, et al., (Eds.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor、New York (1989)、pp. 9.47 to 9.51に記載のように計算することができる。
【0068】
B.遺伝子治療
実施例も含め本出願の大部分は、タンパク質-タンパク質相互作用およびタンパク質の投与に関して記載されているが、明らかであるべきことは、タンパク質の発現または活性の制御を達成する遺伝子操作が特に考えられることである。例えば、タンパク質の投与が考えられる場合、遺伝子治療ベクターを投与して興味あるタンパク質をインビボで産生させることもまた考えられる。タンパク質の阻害(例えば抗体または低分子阻害薬の使用による)が考えられる場合、遺伝子技術、例えばノックアウト技術、または干渉RNAもしくはアンチセンス治療による、インビボにおけるタンパク質発現の阻害が考えられる。
【0069】
いずれの好適なベクターも、興味ある導入遺伝子を動物へ導入するために使用可能である。文献に記載されている典型的なベクターには以下が含まれる:複製欠失レトロウイルスベクター、例えば限定はされないが、レンチウイルスベクター [Kim et al., J. Virol., 72(1): 811-816 (1998); Kingsman & Johnson, Scrip Magazine, October, 1998, pp. 43-46.]; アデノ関連ウイルスベクター [Gnatenko et al., J. Investig. Med., 45: 87-98 (1997)]; アデノウイルスベクター [例えば以下を参照: 米国特許第5792453号; Quantin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 2581-2584 (1992); Stratford-Perricadet et al., J. Clin. Invest., 90: 626-630 (1992); およびRosenfeld et al., Cell, 68: 143-155 (1992)]; リポフェクチン仲介遺伝子導入 (BRL); リポソームベクター [例えば以下を参照:米国特許第5631237号 (センダイウイルスタンパク質を含むリポソーム)] ; およびそれらの組合せ。前述の文献はすべて全体が引用により本明細書に含まれる。複製欠失アデノウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターが好ましい態様を構成する。
【0070】
ウイルスベクターを用いる態様において、好ましいポリヌクレオチドは、興味ある標的組織における発現を促進するための好適なプロモーターおよびポリアデニル化配列を含む。本発明の多くの適用にとって、Tieプロモーター (米国特許第5877020号、引用により含まれる) が特に好適である。哺乳類細胞における発現のための他の好適なプロモーター/エンハンサーには、例えば以下が含まれる: サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー [Lehner et al., J. Clin. Microbiol., 29:2494-2502 (1991); Boshart et al., Cell, 41:521-530 (1985)]; ラウス肉腫ウイルスプロモーター [Davis et al., Hum. Gene Ther., 4:151 (1993)]; またはシミアンウイルス40プロモーター。
【0071】
アンチセンスポリヌクレオチドは、興味あるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを認識してハイブリダイズし、それによりそのタンパク質の転写または翻訳を阻害できるポリヌクレオチドである。完全長およびフラグメントのアンチセンスポリヌクレオチドが使用可能である。アンチセンス配列の選択を最適化するため、また選択された配列を既知のゲノム配列と比較して選ばれた遺伝子に対する特有性(uniqueness)/特異性(specificity)を確実にすることを補助するために、市販のソフトウェアが利用可能である。かかる特有性は、さらにハイブリダイゼーション解析によって確認できる。アンチセンス核酸 (好ましくは10〜20 塩基対のオリゴヌクレオチド) は、(例えばウイルスベクター、またはリポソームのようなコロイド分散系により)細胞に導入される。アンチセンス核酸は、細胞内の標的ヌクレオチド配列に結合して標的配列の転写または翻訳を妨げる。ホスホロチオエートおよびメチルホスホネートアンチセンスオリゴヌクレオチドが、本発明による治療的用途に特に考慮される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリ-L-リジン、トランスフェリン、ポリリシン、またはコレステロール部分によりその5’末端においてさらに修飾されうる。
【0072】
遺伝子の調節はまた、天然の細胞および動物における興味ある遺伝子の発現を制御するための新規転写因子の設計によっても達成できる。例えば、Cys2-His2 ジンクフィンガータンパク質は、そのジンクフィンガードメインを介してDNAに結合するものであるが、構造変化に敏感に反応し、様々な標的配列を認識することが報告されている。これらの人工ジンクフィンガータンパク質は、高い親和性と小さい解離定数をもって特異的標的部位を認識し、遺伝子発現を制御する遺伝子スイッチとして機能しうる。本発明の特定の標的配列についての知識により、既知の方法、例えば構造に基づくモデリングとファージディスプレイライブラリーのスクリーニングとの組合せ、を用いる、標的配列特異的なジンクフィンガータンパク質の設計が促進される [Segal et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:2758-2763; Liu et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:5525-30; Greisman and Pabo (1997) Science 275:657-61; Choo et al., (1997) J Mol Biol 273:525-32]。各ジンクフィンガードメインは、通常3以上の塩基対を認識する。18塩基対の認識配列がいずれの既知のゲノムにおいてもそれを特有ならしめるのに通常十分な長さであるので、6つのジンクフィンガーのタンデムリピートからなるジンクフィンガータンパク質は、ある特定の配列に対して確実に特異的であることが期待される[Segal et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:2758-2763]。標的配列に基づき設計された人工的ジンクフィンガーリピートは、遺伝子発現を促進または抑制する活性化ドメインまたは抑制ドメインと融合される [Liu et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:5525-30]。あるいは、ジンクフィンガードメインをTATAボックス結合因子 (TBP) と、ジンクフィンガーペプチドとTBPとの間のリンカー領域を様々な長さとして融合し、転写アクチベーターまたはリプレッサーを作成することができる[Kim et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:3616-3620]。かかるタンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチドは、天然の細胞、動物およびヒトのいずれにおけるインビボでの発現の制御にも有用である。この新規の転写因子は、この転写因子を発現するコンストラクトをトランスフェクトすることにより (遺伝子治療)、あるいはそのタンパク質を導入することにより、標的細胞に送達することができる。改変されたジンクフィンガータンパク質は、アンチセンスの代替物として治療に用いるため、または触媒的RNA法に用いるため、RNA配列に結合するよう設計することができる[McColl et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:9521-6; Wu et al., (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92:344-348]。
【0073】
本明細書に記載の標的遺伝子/経路の発現(そして活性)を阻害するための別の治療のクラスは干渉RNA技術であり、これはRNA干渉 (RNAi)または低分子干渉RNA (siRNA)としても知られる。
【0074】
標的遺伝子、例えばTie-1、Tie-2およびAng-1の配列の知識を用いて、それら遺伝子の発現に干渉するsiRNA分子が作成される。SiRNAは、二本鎖RNA (dsRNA:センス鎖およびアンチセンス鎖の両方の混合物)の直接的導入によって誘導される転写後遺伝子サイレンシング (PTGS) による技術について説明する (Fire et al., Nature 391:806-811, 1998)。PTGSの現在のモデルは、短い一続きの干渉dsRNA (21-23 ヌクレオチド; siRNAは「ガイドRNA」としても知られる)がPTGSを仲介することを示す。siRNAは、直接または導入遺伝子またはウイルスを介して導入されたdsRNAの切断により産生されるようである。これらの siRNAは、RNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRP) により増幅され得、RNA誘発サイレンシング複合体 (RISC)に組み込まれ、この複合体を相同性ある内因性mRNAへと導き、ここで複合体が転写物を切断する。RNAiは、組織特異的に遺伝子発現を破壊するために用いることができると考えられる。誘導性または組織特異的プロモーターの後ろに所望のdsRNAをコードする遺伝子フラグメントを配置することにより、生物内の特定の位置で、または特定の発達段階中に、遺伝子を不活性化することが可能となるはずである。
【0075】
ある局面において、本発明は、一方の鎖がAng-1、Tie-1またはTie-2をコードする標的ポリヌクレオチド中の標的領域に相補的である二本鎖RNA (dsRNA)を提供する。通常、30ヌクレオチド未満の長さのこのタイプのdsRNAが当業界において低分子干渉RNA (siRNA)と呼ばれる。しかしながら本発明はまた、30ヌクレオチドより長いdsRNA分子の使用を考慮し、本発明のある局面において、これらのより長いdsRNA分子は約30ヌクレオチド長〜200ヌクレオチド長まで、またはそれ以上であり得、またその間のすべての長さのdsRNA分子が含まれる。他のRNA阻害薬と同様に、dsRNA分子における一方の鎖の相補性は、標的ポリヌクレオチド中の標的領域に完全にマッチしていてもよく、あるいはAng-1、Tie-1またはTie-2をコードする標的ポリヌクレオチド中の標的領域に対する特異的ハイブリダイゼーションを排除しない程度にミスマッチを含んでいてもよい。他のRNA阻害技術と同様に、dsRNA分子には、オリゴヌクレオチドの安定性を改善する、すなわちオリゴヌクレオチドを特にインビボにおけるヌクレアーゼによる分解に対してより抵抗性とすることが当業界に知られる、修飾ヌクレオチド間結合を含むもの、および/または修飾ヌクレオチドを含むものが含まれる。RNAi化合物の調製および使用は米国特許出願第20040023390号に記載され、その開示は全体が引用により本明細書に含まれる。
【0076】
本発明はさらに、Ang-1、Tie-1またはTie-2の阻害がRNA lasso技術を用いて行われる方法を考慮する。環状RNA lasso阻害薬は、本質的に分解に対してより抵抗性であり、それゆえ通常修飾ヌクレオチド間結合または修飾ヌクレオチドを含まない、あるいは必要としない、高度に構造化された分子である。環状lasso構造は標的ポリヌクレオチド中の標的領域にハイブリダイズできる領域を含み、このlasso中のハイブリダイズ領域は他のRNA阻害技術について典型的な長さである。他のRNA阻害技術と同様に、lasso中のハイブリダイズ領域は標的ポリヌクレオチド中の標的領域と完全にマッチしていてもよく、あるいはPDGF-BまたはPDGFR-βをコードする標的ポリヌクレオチド中の標的領域に対する特異的ハイブリダイゼーションを排除しない程度にミスマッチを含んでいてもよい。RNA lassoは、環状であり標的領域と強固なトポロジー結合を形成するので、このタイプの阻害薬は、典型的なアンチセンスオリゴヌクレオチドと異なり通常ヘリカーゼの作用により置き換えられず、それゆえ典型的なアンチセンスオリゴヌクレオチドより低い投与量で利用することができる。RNA lassoの調製および使用は米国特許第6369038号に記載され、その開示は全体が引用により本明細書に含まれる。
【0077】
Ang-1、Tie-1またはTie-2に対するアンチセンスRNAおよびDNA分子、リボザイム、RNAi、ならびに三重らせん分子は、DNAおよびRNA分子の合成について当業界に知られるいずれの方法によっても調製可能である。これらには、当業界にて周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドを化学的に合成する技術が含まれ、例えば限定はされないが、固相ホスホラミダイド化学合成である。あるいは、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写により作成できる。かかるDNA配列は、好適なRNAポリメラーゼプロモーター、例えばT7またはSP6ポリメラーゼプロモーターが組み込まれた、様々なベクターに組み込むことができる。あるいは、用いたプロモーターに依存して恒常的または誘導的にアンチセンスRNAを合成するアンチセンスcDNAコンストラクトは、安定に、または一過性に細胞に導入することができる。
【0078】
C.アプタマー治療
アプタマーは、Tie/Ang相互作用に干渉するための別の核酸に基づく方法である。アプタマーは、他の分子に対する結合能に基づきランダムなプールから選択されたDNAまたはRNA分子である。核酸、タンパク質、低分子有機化合物、さらには完全生物に結合するアプタマーが選択されている。アプタマーを同定および製造するための方法および組成物は当業者に知られており、例えば米国特許第5840867号および米国特許第5582981号に記載され、これらは引用により本明細書に含まれる。TieまたはAngに結合するアプタマーは当業者に知られており、本発明の治療態様に特に有用と考えられる。
【0079】
コンビナトリアルサイエンスの分野における最近の進歩により、所定の標的に対して高い親和性と特異性を有する短いポリマー配列が同定された。例えば、SELEX技術は哺乳類抗体に匹敵する結合性を有するDNAおよびRNAアプタマーを同定するために使用されており、免疫分野では無数の化合物に結合する抗体または抗体フラグメントが作成および単離され、ファージディスプレイは非常に好ましい結合性を有する新規ペプチド配列を発見するために利用されている。これらの分子進化技術の成功に基づき、いずれの標的分子に結合する分子も作成可能に違いない。ループ構造は、以下の場合に、しばしば所望の結合特性の提供に関与する:相補的塩基対合をしない短い領域から形成されるヘアピンループをしばしば利用するアプタマー、ループ状の超可変領域のコンビナトリアルアレンジメントを利用する天然の抗体、および直鎖ペプチドのファージディスプレイの結果と比較して結果が改善された環状ペプチドを利用する新規なファージディスプレイライブラリー。このように、十分な証拠により、高親和性リガンドがコンビナトリアルな分子進化技術によって作成および同定されうることが示唆される。本発明のため、分子進化技術は、本明細書に記載のリガンドに特異的な結合コンストラクトの単離に使用可能である。アプタマーについての詳細は一般的には以下を参照のこと: Gold, L., Singer, B., He, Y.Y., Brody. E., ”Aptamers As Therapeutic And Diagnostic Agents,” J. Biotechnol. 74:5-13 (2000)。アプタマーの作成に適する技術は米国特許第6699,843号に見ることができ、これは全体が引用により含まれる。
【0080】
一部の態様において、アプタマーは、核酸ライブラリーを作成し、この核酸ライブラリーを成長因子と接触させることにより調製でき、ここでその成長因子に対して(ライブラリー中の他の核酸と比較して)より優れた結合親和性を有する核酸が選択され、増幅されて、その成長因子に対する結合について比較的高い親和性および特異性を有する核酸に富む核酸混合物が生じる。このプロセスを繰り返し、選択された核酸を変異させ再びスクリーニングし、それにより成長因子アプタマーを同定することができる。
【0081】
D.抗体
抗体は、関連ある特異性を有する抗体が容易に作成できること、およびヒトの治療に抗体を適合させるための技術の改良が続いていることから、Tie/Ang相互作用の制御に有用である。したがって、本発明は、本発明の興味あるポリペプチド、特にTie受容体およびアンジオポエチン、に特異的な抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二機能性/二重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および相補性決定領域(CDR)移植抗体、本発明のポリペプチドを特異的に認識するCDR配列を含む化合物を含む)の使用を考慮する。好ましい抗体は、WO93/11236(1993年6月20日公開、その全体が引用により本明細書に含まれる)に記載の方法により製造および同定されるヒト抗体である。抗体フラグメント、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびFvなども本発明により提供される。用語「特異的」は、本発明の抗体の説明に使用される場合、本発明の抗体の可変領域が興味あるポリペプチドを優先的かつ実施的に排他的に認識し、かつそれに結合する(すなわち、局所的な配列同一性、相同性、または類似性がファミリーメンバー間に存在しうるにもかかわらず、結合親和性が測定可能に異なることにより、興味あるポリペプチドを同じファミリーの他の既知のポリペプチドと区別できる) ことを意味する。理解されるように、特異的抗体はまた、その抗体の可変領域の外側の配列、特に当該分子の定常領域との相互作用を介して、他のタンパク質(例えばELISA技術におけるS. aureus タンパク質 A その他の抗体)と相互作用しうる。本発明の抗体の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当業界にて一般的に行われている。かかるアッセイの総合的考察については以下を参照のこと: Harlow et al. (Eds), Antibodies A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor , NY (1988), Chapter 6。本発明の抗体は、当業界にて周知かつ一般的に行われるいずれの方法によっても製造可能である。
【0082】
Tieまたはアンジオポエチンタンパク質に対するモノクローナル抗体は、継続的な培養細胞株による抗体分子の産生をもたらすいずれの技術を用いても調製可能である。これらには、限定はされないが、最初にKohler et al., (Nature, 256: 495-497, 1975)により説明されたハイブリドーマ技術、ならびにより最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術 (Kosbor et al., Immunology Today, 4: 72, 1983)およびEBVハイブリドーマ技術 (Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., pp. 77-96, 1985)があり、これら文献はすべて具体的に引用により本明細書に含まれる。抗体はまた、細菌においてクローン化されたイムノグロブリンcDNAから製造できる。組換えファージ抗体システムを使用すると、細菌培養物中において迅速に抗体を作成して選択すること、およびその構造を遺伝子操作することが可能である。
【0083】
ハイブリドーマ技術を用いる場合、骨髄腫細胞株を使用すればよい。ハイブリドーマ産生融合法における使用に適するかかる細胞株は、好ましくは非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、かつ所望の融合細胞 (ハイブリドーマ) のみの成長を支持するある種の選択培地において成長できなくなる酵素の欠損を示す。例えば、免疫化動物がマウスの場合、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7および S194/5XX0 Bulが使用できる;ラットについては、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210が使用できる;そして、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6は、いずれも細胞融合に関して有用でありうる。
【0084】
抗体分子のイディオタイプを含む抗体フラグメントは、既知の技術により作成することができる。例えば、かかるフラグメントには、限定はされないが、抗体分子のペプシン消化によって産生されうるF(ab')2 フラグメント; F(ab')2 フラグメントのジスルフィド架橋の還元により形成されうるFab' フラグメント、および抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって形成されうる2本のFabフラグメントが含まれる。
【0085】
非ヒト抗体は、当業界に知られるいずれの方法によってもヒト化することができる。好ましい「ヒト化抗体」は、ヒト定常領域を有する一方、抗体の可変領域または少なくとも相補性決定領域(CDR)は非ヒト種に由来する。ヒト軽鎖定常領域はκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれに由来してもよく、ヒト重鎖定常領域はIgM、IgG (IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4) 、IgD、IgA、またはIgEイムノグロブリンのいずれに由来してもよい。
【0086】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当業界に周知である (米国特許第5585089号および5693762を参照)。通常、ヒト化抗体は、1以上のアミノ酸残基がそのフレームワーク領域に非ヒト源から導入されている。ヒト化は、例えばJones et al. (Nature 321: 522-525, 1986), Riechmann et al., (Nature, 332: 323-327, 1988) およびVerhoeyen et al. (Science 239:1534-1536, 1988) に記載の方法により、齧歯類相補性決定領域 (CDR) の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域と置換することで行うことができる。改変抗体の調製のための多くの技術は、例えばOwens and Young, J. Immunol. Meth., 168:149 165, 1994に記載される。続いてさらなる変化を抗体フレームワークに導入して、親和性または免疫原性を制御することができる。
【0087】
E.投与
本発明のポリペプチドは、適切な医薬上許容される媒体、例えば医薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を用いて、いずれの好適な方法にても投与することができる。本発明の方法により投与される組成物は、好ましくは (ポリヌクレオチドまたはベクターに加えて) 医薬上許容される担体溶液、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、グルコース、または治療薬の送達に好都合に使用される他の担体、を含む。
【0088】
本発明により行われる「投与」は、哺乳類対象に直接的または間接的に治療薬を導入するためのいずれの医学上許容される手段により行ってもよく、それは、限定はされないが、注射 (例えば、静脈内、筋肉内、皮下またはカテーテル); 経膣投与; 経口摂取; 鼻腔内または局所投与;などである。治療用組成物は、複数の箇所において患者に送達してもよい。複数の投与は、同時であってもよく、あるいは数時間かけて投与してもよい。ある場合には、治療用組成物の連続流を与えることが有益でありうる。さらなる治療を、期間を基準として、例えば、毎日、毎週、または毎月投与してもよいが、排卵後の投与が好ましい。
【0089】
投与用ポリペプチドは、その効力を増強するため、摂取または吸収エンハンサーとともに製剤化してもよい。かかるエンハンサーには、例えば以下が含まれる:サリチル酸塩、グリココール酸塩/リノール酸塩、グリコール酸塩、アプロチニン、バシトラシン、SDSカプロン酸塩など。例えば以下を参照:Fix (J. Pharm. Sci., 85(12) 1282-1285, 1996) および Oliyai and Stella (Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:521-544, 1993)。
【0090】
所定の投与量におけるペプチドの量は、治療を施そうとする個体の大きさ、およびその薬物の血清半減期および効力により変化する。医薬は、単回投与形態にて投与しても複数回投与形態にて投与してもよい。標準的用量反応研究(はじめは動物モデル、例えばマウスまたはラット、次いで霊長類、そして臨床試験)により、最適投与量が明らかとなる。
【0091】
F.キット
さらなる局面として、本発明は、本発明の方法を実施するための本発明の化合物または組成物の使用を促進する様式で包装された、本発明の化合物または組成物を含むキットを包含する。最も単純な態様において、かかるキットは、本発明の方法の実施に有用な本明細書に記載の化合物または組成物 (例えばヒトに投与するためのポリヌクレオチドまたはポリペプチド)を含み、密閉ボトルまたは密閉容器のような容器に包装され、容器に貼られたラベルまたは包装に含まれるラベルに本発明の方法の実施のための化合物または組成物の使用について説明されている。好ましくは、化合物または組成物は、単位投与形態にて包装される。キットはさらに、好ましい投与経路にて組成物を投与するのに好適な装置を含んでもよい。
【0092】
本発明の化合物または組成物はまた、雌受胎能を制御するための他の物質または方法、例えば天然または合成のホルモン、例えば限定はされないがエチニルエストラジオール (EE)、エストラン(estrane)、プロゲスチン、レボノルゲストレルなど、と共に、または混合して、包装してもよい。
【0093】
本発明のさらなる局面および詳細は以下の実施例から明らかであるが、これらは限定ではなく例示を意図する。
【実施例】
【0094】
実施例1
Tie-1の機能を明らかにするため、K14プロモーターのもと皮膚ケラチノサイトにおいてヒトIgG Fc領域に融合されたヒトTie-1 (IgおよびEGFホモロジードメインを有するチロシンキナーゼ(tyrosine kinase with Ig and EGF homology domains 1)) 受容体の細胞外ドメインを発現するマウス系統を作成した。このコンストラクトがインビボで発現すると、可溶性受容体分子が真皮内に分泌され、徐々に血流および各種組織液中に拡散し、ここで可能性あるリガンド分子を捕捉してそれらと内因性受容体との相互作用を防ぐと期待される。3つの異なる創始系統を用いた。FVB/N バックグラウンドのK14-Tie-1/Fc マウスは、生存可能であり見かけ上正常であった。しかしながら、このトランスジェニックマウス系統を交配するうちに、雌が子孫を残せず、この導入遺伝子は雄を介してしか次世代に移行しないことが明らかとなった。2つの異なる創始系統に由来するトランスジェニック雌を、トランスジェニック雄と7回交尾させた。毎回プラグを観察したが、これら雌の一方においてE18.5で2匹の胎児が見られたのみであり、6回の交尾では子孫はできなかった。これに対して、トランスジェニック雄をFVB/N雌を交配した場合、15回の交尾のそれぞれで正常な産仔数となった(同腹仔6〜12匹、雌:雄の比が約50:50)。
【0095】
これら雌の不妊をもたらす問題を明らかにするため、胚着床について研究した。この目的ため、トランスジェニックおよび正常FVB/N雌をいずれも過排卵させ、正常FVB/N雄と交配した。E7.5に動物を屠殺し、組織学的解析のため子宮を取り出した。トランスジェニックおよび非トランスジェニックの子宮のいずれにおいても胚は着床し、見かけ上正常であり、このことはこれらのマウスにおいて着床は正常に起こっていることを示唆する。しかしながら、E12.5において胎児は観察されなかった。
【0096】
過排卵の後に卵巣を解析すると、トランスジェニック動物において異常な黄体形成が観察されたが、これは正常FVBN雌では観察されなかった。さらに、卵巣において嚢胞形成が検出された。その上、子宮では薄い子宮内膜で囲まれた嚢胞が形成されていた。
【0097】
トランスジェニックマウスの皮膚におけるK14プロモーター下での可溶性Tie-1受容体の発現は、結果として雌の不妊をもたらした。このマウスはそれ以外は正常なようであり、また雄は繁殖力があり、導入遺伝子を次世代に移行させることができた。また、トランスジェニック雌と交尾させると子孫をつくらない同じトランスジェニック雄が、正常FVB/N雌とでは正常な子孫をつくることができ、このことは雌マウスに問題があることを示唆する。卵巣は、見かけ上ほぼ正常ないくつかの成熟卵胞とともに大規模な黄体形成を示した。しかしながら、卵胞の数は野生型の卵巣と比較して幾分減少しているようであった。胚の着床は正常より劣るようであった;トランスジェニックの子宮では正常な子宮よりも着床した胚が少なかった。E12.5において胎児は検出されず、このことは着床後の事象における問題を示唆する。これらの観察はまた、精子には欠陥がなかったことを示唆する。胎児における導入遺伝子の発現はE14〜E15の間に、すなわちトランスジェニック子孫の流産の後に始まること、およびトランスジェニック胚のみが流産となるわけではないことから、これらの結果は不妊が母親における導入遺伝子の発現によるものであることを示唆する。
【0098】
Tie-1およびTie-2は、以下の実施例2およびMarron et al., 2000に記載のように、ヘテロ二量体を形成することが示されている。以下の実施例2に記載されるようにTie-1はAng-1またはAng-4による刺激に際してリン酸化されるが、不思議なことにTie-1のリガンドは報告されておらず、またTie-1に直接結合すると報告されているTie-2リガンドは存在しない。しかしながら、Ang-2の発現は、正常成体において血管再構築が顕著な部位であり、またK14-Tie-1/Fc動物において表現型が見られた部位である、卵巣、胎盤および子宮でのみ容易に検出できる。さらに、Ang-2のmRNA発現は、血管が退化する老化黄体において高度に上方調節される。たとえアンジオポエチンがTie-1に直接的に結合しないとしても、Tie-1/Tie-2複合体が存在し、それがAng-2および/またはAng-1の存在下に特異的シグナルを生じることが考えられる。本発明者らは、トランスジェニック動物における可溶性Tie-1受容体の過剰発現の結果、内因性Tie-1受容体を介するシグナルを消失し、卵巣において黄体が維持されるモデルを提案する。卵巣の大規模な黄体形成がこの考えを支持し、これはおそらく卵巣による不適切なホルモン産生をもたらす。この表現型は、同じく雌の不妊をおこすヒト絨毛性ゴナドトロピンを過剰発現するトランスジェニックマウス(Rulli et al., 2002)において得られる表現型と非常に良く似ている。さらに、これらのトランスジェニック動物では、胚の胎盤形成に欠陥がある場合があった。
【0099】
野生型雌成体マウスにおける可溶性Tie-1細胞外ドメインコンストラクトの投与 (または遺伝子治療によるそのインビボ発現) を行えば、可溶性Tie-1受容体の存在がトランスジェニックマウスにおいて卵巣/子宮の発達不全をもたらしたという可能性を排除することができる。
【0100】
K14-Tie1/Fcトランスジェニックマウスについての結果はTie-1受容体を介するシグナルの遮断により雌において不妊がおこることを示唆し、このことは、可溶性Tie-1が避妊薬として示唆されることを示す。この現象の基礎となる分子メカニズムもまた、受胎能の増強に使用される。
【0101】
実施例2
Tie-2およびアンジオポエチンとTie-1との相互作用
Tie-2およびアンジオポエチンファミリーメンバーとTie-1との相互作用を評価および特徴決定するため実験を行った。本明細書に要約される結果は、より詳細にはSaharinen et al., 2005, J. Cell Biol., 169(2): 239-43(全体として引用により本明細書に含まれる)に記載される。
【0102】
材料および方法
293、293T (American Type Culture Collection)、およびEA.hy926 不死化ハイブリッド HUVEC (Edgell et al., 1983) は、DME(10% FBS (PromoCell)含有)中で培養した。HUVECは、Marron et al., 2000, J. Biol. Chem., 275: 3974139746に記載のように培養した。LEC、BEC (Makinen et al., 2001, EMBO J., 20: 47624773)およびSV40ラージT抗原により不死化されたHMEC-1ヒト皮膚微小血管細胞(Ades et al., 1992, J. Invest. Dermatol., 99: 683690) は、内皮細胞基礎培地(PromoCell)(製造元により供給されたサプリメントを含有)中で培養した。特記なきかぎり、コンフルエントの細胞プレートの血清を一晩除去し、続いて15分間リガンドで刺激した。
【0103】
以下の試薬を使用した: Tie-1-Fc、Tie-2-Fc、Ang-1、VEGF (すべてR&D Systemより入手) 、Ang-2、Ang-3、Ang-4 (Lee et al., FASEB J., 18: 12001208.2004)、COMP-HFARP (Kim et al., 2000, Biochem. J., 346:603610)、およびAng-2 (Scharpfenecker et al., 2005, J. Cell Sci., 188:771780)。
【0104】
以下の抗体を使用した: 抗ホスホチロシン(4G10; Upstate Biotechnology)、抗Tie-1および抗Tie-2 (R&D System; Santa Cruz Biotechnology, Inc.; clone 33 [Upstate Biotechnology])、抗V5 (Invitrogen)、および抗Tie-2 (Harris et al., 2001, Clin. Cancer Res., 7: 19921997)。
【0105】
細胞をFugene6 (Roche Diagnostics)を用いてトランスフェクトし、48時間後に血清不含培地に交換し、そしてトランスフェクションの72時間後に回収した。ヒトTie-2 (リジン855をアルギニンへ)、ヒトTie-1 (リジン870をアルギニンへ)、Tie1-V5およびTie2-Mycコンストラクトにおけるキナーゼ不活性化変異はPCRにより作成した。コンストラクトはすべてシークエンス (Applied Biosystems)により確認した。
【0106】
免疫沈降およびイムノブロッティングのため、溶解バッファー(50 mM Hepes、pH 7.5、1% Triton X-100、5% グリセロール、1 mM EGTA、150 mM NaCl、1.5 mM MgCl2、100 mM NaF、1 mM Na3VO4、PMSF、アプロチニン、およびロイペプチン) 、またはSDS溶解バッファー (Saharinen et al., 1997, Blood, 90: 43414353)により細胞を溶解した。等量の細胞溶解物タンパク質をProtein GSepharose (Amersham Biosciences)とインキュベートしてプレクリアし、続いてBSA (1%)および特異的抗体を添加した。Protein GSepharoseにより捕捉される免疫複合体を7.5% SDS-PAGE (Ready-Gels; Bio-Rad Laboratories) において分離し、特異的一次抗体、ビオチン化抗マウスまたは抗ヤギ二次抗体(DakoCytomation)、およびストレプトアビジンビオチンHRP結合体 (Amersham Biosciences) 、続いてSuperSignal West Femto Maximun Sensitivity Substrate (Pierce Chemical Co.)によるECL検出を用いて、ブロッティングおよび検出した。
【0107】
HUVECは、PBS(0.5 mM DTSSP含有)中で30分間架橋し、Tris、pH 7.5を100 mMまで添加してクエンチし、50 mM Tris、pH 7.4、50 mM NaCl、1% Triton X-100、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1 mM フッ化ナトリウム、1 mM EGTA、および完全プロテアーゼ阻害薬中に溶解した。
【0108】
293T細胞は、氷上にて1 mM DTSSP により40分間架橋した。
【0109】
RNA単離およびノザンブロッティングのため、全RNAをRNeasy キット (QIAGEN)により単離し、電気泳動し、ブロットし、そして32P標識cDNAプローブをハイブリダイズさせた。
【0110】
結果
Tie-1のシグナル伝達経路について調べるため、ヒト皮膚血管内皮細胞(BEC) およびリンパ内皮細胞(LEC; Makinen et al., 2001, EMBO J., 20: 47624773)をCOMP-Ang-1キメラタンパク質で刺激した (Cho et al., 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 101: 55475552; Cho et al., 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 101: 55535558、いずれも引用により本明細書に含まれる)。
【0111】
驚いたことに、COMP-Ang-1は、Tie-2のリン酸化に加えてTie-1のチロシンリン酸化を誘導した。Tie-1リン酸化は、内皮細胞においてCOMP-Ang-1 刺激の5分以内におこり、1時間で最大レベルに達し、その後徐々に下方制御された。Tie-2リン酸化の速度論は、Tie-1について観察されたこれら変化とパラレルであった。100 ng/ml濃度のCOMP-Ang-1により有意なリン酸化が起こったが、両受容体の最大のリン酸化には600 ng/mlが必要であった。COMP-Ang-1はまた、ハイブリッド内皮細胞株 EA.hy926においてTie-1およびTie-2のリン酸化を誘導した。
【0112】
これに対して、600 ng/mlのAng-2は、Tie-1またはTie-2のいずれも活性化しなかった。実際、COMP-Ang-1を過剰なAng-2と組み合わせて与えた場合、Tie-1リン酸化の減少が観察された。
【0113】
Tie-2の可溶性細胞外ドメイン (Tie-2-Fc) は、Ang-1に結合し、Ang-1誘発Tie-2活性化を阻害することがわかっているが、一方可溶性Tie-1受容体では効果が見られていない (Davis et al., 1996; Peters et al., 2004)。 Tie-2-FcはCOMP-Ang-1誘発Tie-1およびTie-2リン酸化を阻害したが、一方Tie-1-Fcはほとんど効果がなく、このことは、COMP-Ang-1は細胞表面におけるTie-1の活性化を誘導できるが、可溶性型Tie-2に結合するものの可溶性Tie-1には結合しないことを示唆する。
【0114】
COMP-Ang-1誘発Tie-1活性化のメカニズムを理解するため、Tie-1およびTie-2の両方を欠失する293T細胞においてTie-1を過剰発現させた。様々な、かつ低レベルのTie-1チロシンリン酸化が、これら細胞を600 ng/mlのCOMP-Ang-1で刺激した後に検出された。この知見は、過剰発現させたTie-1はTie-2の非存在下において高濃度のCOMP-Ang-1によりある程度活性化されうることを示唆した。
【0115】
このトランスフェクト細胞におけるCOMP-Ang-1によるTie-1活性化に対するTie-2の効果を調べた。293T細胞では定常状態でTie-2の強い自己リン酸化が観察されたため、トランスフェクトされた発現プラスミドを一時的に複製しない293細胞を使用した。293細胞にTie-1、Tie-2、または両受容体をコードするベクターをトランスフェクトし、COMP-Ang-1で刺激した。COMP-Ang-1誘発性のTie-1チロシンリン酸化は、Tie-1のみをトランスフェクトした細胞と比較して二重にトランスフェクトした細胞において増加し、このことはTie-1およびTie-2のヘテロ二量体化がTie-1活性化を増強することを示唆する。これに対して、Tie-2リン酸化は、Tie-2のみをトランスフェクトした細胞と比較してTie-1の存在によって増強されなかった。
【0116】
Tie-2がCOMP-Ang-1のTie-1への高親和性結合に必要であるか、あるいはTie-2がリン酸化を誘導し、それによりTie-1Tie-2複合体におけるTie-1の活性化を増強する可能性が考えられた。この仮説を解析するため、K870R-Tie-1をTie-2とともに、またはTie-2なしで発現させた。このTie-1変異体は、キナーゼドメインに不活性化置換を有する。K870R-Tie-1は、Tie-2とともに発現させた場合にリガンド依存的にリン酸化されたが、Tie-2の非存在下ではリン酸化は検出されなかった。つまり、Tie-2がTie-1リン酸化を誘導できた。
【0117】
キナーゼ不活性なK855R-Tie-2を試験し、野生型Tie-2のようにTie-1リン酸化を増強できるか調べた。Tie-1リン酸化はK855R-Tie-2と共発現させた場合に減少し、このことはTie-2のキナーゼ活性がCOMP-Ang-1によるTie-1活性化の完全な増強に必要であることを示唆する。
【0118】
トランスフェクト細胞から得られた結果は、Tie-1およびTie-2がCOMP-Ang-1により刺激された場合にヘテロ二量体化をおこすことを示唆した。この知見を解析するため、Tie-1-V5およびTie-2-Myc コンストラクトをトランスフェクトした293T細胞を使用した。COMP-Ang-1で刺激した後、膜非透過性架橋剤である3,3’-ジチオビス[スルホスクシニミジルプロピオナート] (DTSSP)により細胞表面タンパク質を化学的に架橋し、そして細胞溶解物からTie-1を免疫沈降した。興味深いことに、Tie-2は二重にトランスフェクトした細胞からTie-1とともに共沈した。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をDTSSPで処置するとTie-1とTie-2が共沈したが、非処置細胞では共沈がみられなかった。この証拠は、Tie-1とTie-2が細胞表面においてヘテロ複合体を形成することを示唆する。
【0119】
これらの結果はまた、Tie-2がキナーゼ不活性型Tie-1のリン酸化をCOMPAng-1依存的に誘導することから、このヘテロ複合体においてTie-2がTie-1を直接リン酸化することを示唆する。COMP-Ang-1は、天然のAng-1より強力なアンジオポエチンリガンドであることが示されている (Cho et al., 2004)。
【0120】
天然のAng-1がTie-1リン酸化を誘導できるか否かを解析するための実験も行った。天然のAng-1は内皮細胞においてTie-1リン酸化誘導したが、効果はCOMP-Ang-1よりも数倍低かった。Tie-1またはTie-2に結合しないキメラタンパク質COMP-HFARP (肝臓フィブリノゲン/アンジオポエチン関連タンパク質) (Kim et al., 2000) は、高濃度でも効果がなかった。このように、COMP-Ang-1誘発Tie-1活性化は、COMPドメインではなくAng-1によって仲介される。Ang-1に加えて、Ang-4はヒトTie-2に対するリガンドであり、一方Ang-3はマウスTie-2に対する特異的リガンドである (Lee et al., 2004, FASEB J., 18:12001208.)。さらなる実験において、Tie-1リン酸化は天然のAng-4により誘導されたが、Ang-3またはAng-2によっては誘導されなかった。
【0121】
文献

Blumenthal, R. D., Taylor, A. P., Goldman, L., Brown, G., and Goldenberg, D. M. (2002). Abnormal expression of the angiopoietins and Tie receptors in menorrhagic endometrium. Fertil Steril 78, 1294-1300.
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Maisonpierre, P. C., Suri, C., Jones, P. F., Bartunkova, S., Wiegand, S. J., Radziejewski, C., Compton, D., McClain, J., Aldrich, T. H., Papadopoulos, N., et al. (1997). Angiopoietin-2, a natural antagonist for Tie2 that disrupts in vivo angiogenesis. Science 277, 55-60.
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Rulli, S. B., Kuorelahti, A., Karaer, O., Pelliniemi, L. J., Poutanen, M., and Huhtaniemi, I. (2002). Reproductive disturbances, pituitary lactotrope adenomas, and mammary gland tumors in transgenic female mice producing high levels of human chorionic gonadotropin. Endocrinology 143, 4084-4095.
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【0122】
本明細書に引用される文献はすべて、全体が引用により本明細書に含まれる。
【0123】
本発明は、具体的態様および実施例と関連して記載されている。しかしながら、先の記載は例示であって限定ではないと解されるべきである。本発明を規定する、または本発明に課される限定は、請求項に記載のもののみである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、哺乳類雌における受胎能または胚形成を制御する方法:
哺乳類雌に、該雌の細胞におけるアンジオポエチン誘発Tie受容体活性のモジュレーターを含む医薬を、該雌における受胎能または胚形成の制御に有効な量にて投与する工程。
【請求項2】
哺乳類雌における受胎能または胚形成を制御するための医薬の製造における、アンジオポエチン誘発Tie受容体活性のモジュレーターの使用。
【請求項3】
雌がヒトである、請求項1または2の方法または使用。
【請求項4】
医薬がさらに医薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む、請求項1〜3のいずれかの方法または使用。
【請求項5】
モジュレーターがアンジオポエチン誘発Tie受容体活性の阻害薬であり、該モジュレーターが受胎能または胚形成の阻害に有効な量にて医薬中に存在する、請求項1〜4のいずれかの方法または使用。
【請求項6】
阻害薬が、アンジオポエチンタンパク質に結合し、かつ哺乳類Tie-1またはTie-2受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む可溶性ポリペプチドを含む、請求項5の方法または使用。
【請求項7】
阻害薬が以下からなる群より選択されるメンバーを含む、請求項5の方法または使用:
(A) 以下を含むポリペプチド:
(i) 配列番号 2のアミノ酸25-759と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列;
(ii) 配列番号 4のアミノ酸23-745と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列; および
(iii) (i)または(ii)のフラグメント;
ここで、該ポリペプチドは、アンジオポエチン-1 (配列番号 6)、アンジオポエチン-2 (配列番号 8)、アンジオポエチン-3 (配列番号 10)、およびアンジオポエチン-4 (配列番号 12) からなる群より選択される少なくとも1つのアンジオポエチンポリペプチドに結合する;
(B) (A)のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド; および
(C) (B)のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
ポリペプチドがさらにイムノグロブリンFcフラグメントを含む、請求項6または7の方法または使用。
【請求項9】
イムノグロブリンFcフラグメントがIgG Fcドメインを含む、請求項8の方法または使用。
【請求項10】
阻害薬がTie-1またはTie-2受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインに特異的に免疫反応する抗体物質を含む、請求項5の方法または使用、ここで該抗体物質は以下を含む: (a) モノクローナルまたはポリクローナル抗体; (b) 該免疫反応性を保持する(a)のフラグメント; または(c) (a)の抗原結合フラグメントを含み、かつ該免疫反応性を保持するポリペプチド。
【請求項11】
阻害薬が、Tie-1受容体チロシンキナーゼ、Tie-2受容体チロシンキナーゼ; アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、アンジオポエチン-3およびアンジオポエチン-4からなる群より選択されるポリペプチドの発現を阻害する干渉RNAを含む、請求項5の方法。
【請求項12】
モジュレーターが、Tie受容体活性のアゴニストであり、雌における受胎能の増加または胚形成の促進に有効な量にて医薬中に存在する、請求項1〜4のいずれかの方法または使用。
【請求項13】
アゴニストが、(a) Tie受容体チロシンキナーゼに結合してそれを刺激するのに有効である哺乳類アンジオポエチンポリペプチドまたはそのフラグメントと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド; または(b)該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド; または(c) 該ポリヌクレオチドを含むベクターを含む、請求項12の方法または使用。
【請求項14】
アンジオポエチンポリペプチドが、ヒトアンジオポエチン-1 (配列番号 6)、アンジオポエチン-2 (配列番号 8) 、アンジオポエチン-3 (配列番号 10)およびアンジオポエチン-4 (配列番号 12) からなる群より選択される、請求項13の方法または使用。
【請求項15】
医薬が、経口的に、静脈内注射、筋肉内注射または他の注射により、経皮パッチにより、局所的に、または経膣的に投与される、請求項1〜14のいずれかの方法または使用。
【請求項16】
医薬が排卵後に投与される、請求項1〜14のいずれかの方法。
【請求項17】
哺乳類雌由来の生物学的サンプルにおけるTie受容体の発現または活性を測定する工程を含む、雌における不妊についてスクリーニングする方法、ここでTie発現または活性が受胎能と相関する。
【請求項18】
生物学的サンプルが卵巣表面内皮の一次繊毛を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、Tie受容体チロシンキナーゼとアンジオポエチンリガンドとの結合のモジュレーターをスクリーニングする方法:
a) 推定モジュレーター化合物の存在および非存在下において、Tie受容体組成物とアンジオポエチンリガンドとを接触させる工程;
b) 該推定モジュレーター化合物の存在および非存在下において、Tie受容体とアンジオポエチンリガンドとの結合を測定する工程; および
c) 該推定モジュレーター化合物の非存在下における結合と比較した、該推定モジュレーター化合物の存在下における該結合の減少または増加に基づきモジュレーター化合物を同定する工程。
【請求項20】
Tie受容体組成物がTie-1受容体をその表面に発現する細胞を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
細胞がさらにTie-2受容体をその表面に発現する、請求項20の方法。
【請求項22】
さらに以下の工程を含む、請求項19〜21のいずれかの方法:
(d) 工程 (c)により同定されたモジュレーターを医薬上許容される担体中に製剤化することによりモジュレーター組成物を製造する工程。
【請求項23】
さらに以下の工程を含む、請求項22の方法:
(e) Tie受容体を発現する細胞を含む哺乳類に該モジュレーター組成物を投与し、該哺乳類における該モジュレーター組成物の生理学的効果を測定する工程。
【請求項24】
哺乳類における受胎能を評価することを含む、請求項23の方法。
【請求項25】
Tie受容体が、哺乳類Tie-1および哺乳類Tie-2ならびにその混合物からなる群より選択される、請求項19〜24のいずれかの方法。
【請求項26】
Tie受容体およびアンジオポエチンがヒトである、請求項25の方法。

【公表番号】特表2008−504248(P2008−504248A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517215(P2007−517215)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006906
【国際公開番号】WO2006/002854
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(501129435)ライセンティア・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】