説明

複合バリアフィルムおよび方法

一つの実施形態において、本発明は、バリア特性を有する複合フィルムに関する。より具体的には、可撓性プラスチック基板上に窒化ケイ素ベースのコーティングを備える複合フィルムに関する。この窒化ケイ素ベースのコーティングは、約220nm以下の厚みを有し、少なくとも75容量%の窒素を含む大気中においてシリコン標的のスパッタリングによりプラスチック基板上に堆積される。この複合バリアフィルムは、少なくとも約75%の可視光透過率を有する。別の実施形態において、本発明は、複合バリアフィルムを形成するためにプラスチック基板上に窒化ケイ素ベースのコーティングを堆積させるバリア方法に関する。この方法は、少なくとも約75容量%の窒素を含む大気中において、シリコン標的のスパッタリングにより基板上の窒化ケイ素ベースのコーティングを堆積させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、一般に、窒化ケイ素ベースのコーティングを含む複合バリアフィルムに関し、より具体的には、改善されたバリア特性および光学的特性を有するこのような複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多くの異なる型の製品およびデバイスが、環境に敏感である。より具体的には、その製品またはデバイスの劣化を引き起こし得、かつ最終的に、その製品またはデバイスを役に立たなくし得る気体および液体に敏感である、多くの異なるデバイスおよび製品がある。このような製品としては、食品、薬品、健康用品および美容用品、電子機器、医療用デバイスおよびディスプレイデバイスが挙げられる。バリアコーティングは、このような製品の梱包に含められて、それらを環境的なガスまたは気体(例えば、大気中の酸素、水蒸気)または製品の処理、取り扱い、貯蔵および使用において使用される化学物質から保護してきた。多くの梱包用途(例えば、焼上げられた品物(baked goods)、電子機器、薬品、練り歯磨きなど)は、約5cc/m/日未満の比較的低い酸素透過率(「OTR」)および/または約0.5g/m/日未満の水蒸気透過率(「MVTR」)を要する。
【0003】
プラスチックフィルムは、しばしば、製品梱包に使用されるが、その使用されるプラスチックフィルムの耐気体および液体透過性は、常に、所望のレベルの保護を提供するに十分であるわけではない。また、特定のディスプレイデバイス(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光デバイス(LED)および発光ポリマー(LEP)は、非常に低いOTRおよびMVTRを有する梱包を要する。一般に利用可能なプラスチックのバリア特性を改善するために、プラスチック基材にコーティングが塗布されて、その気体透過性および液体透過性が減少されうる。例えば、非透過性(opaque)金属化プラスチックフィルムが使用され,これらのフィルムは比較的高価であるにも拘わらず、透明ではない。代わりに、透明なSiOコーティングプラスチックフィルムは時折使用されうるが、SiOコーティングプラスチックフィルムの費用は、しばしば、多くの商業用用途には高価すぎる。他の無機物質(例えば、アルミニウム、AlO、SiOおよびSi)で真空コーティングされたプラスチックフィルムはまた、そのプラスチックフィルムの酸素透過性および水蒸気透過性を低下させると示唆されてきた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
一実施形態において、本発明は、バリア特性を有する複合フィルム、より具体的には、可撓性プラスチック基材上に窒化ケイ素ベースのコーティングを含む複合フィルムに関し、ここでその窒化ケイ素ベースのコーティングは、約220nmまでの厚みを有し、少なくとも75窒素容積%を含む大気中でのシリコン標的のスパッタリングによってそのプラスチック基材に被覆される。その複合バリアフィルムは、少なくとも約75%の可視光線透過性を有する。
【0005】
別の実施形態において、本発明は、窒化ケイ素ベースのコーティングをプラスチック基材上に被覆して、複合バリアフィルムを形成する方法に関し、この方法は、窒化ケイ素ベースのコーティングを、その基材上に、少なくとも約75窒素容積%を含む大気中でシリコン標的をスパッタリングすることによって、被覆する工程を包含する。
【0006】
本発明の複合フィルムは、望ましい酸素および/またはミスバリア特性を示し、非常に透明な複合フィルムが、本発明の方法に従って調製されうる。一実施形態において、本発明の複合フィルムはまた、以下の所望の特性のうちの1以上を有するとして特徴付けられる:高い透明性、低いヘーズ、高い表面平滑性、良好な可撓性、低い水接触角、および改善された界面接着。
【0007】
(発明の詳細な説明)
用語「透明な」とは、その複合フィルムのコーティングの1以上の層に言及する場合、そのような層の直下にあるいずれの目に見える物質も、そのような層を通して見られ得ることを意味する。本発明のバリアフィルムは、紫外線/可視光線分光光度計(UVNIS).で決定される場合、少なくとも75%の可視光線透過性を有する。
【0008】
用語「透明」は、一層以上の層が本発明の複合フィルムである場合、複合フィルムの層の透明度が少なくとも約95%であること、および複合フィルムの層が約10%未満の曇りを有することを意味する。透明度は、TAPPIテストT425osに従って測定され、曇りは、ASTMテスト方法D−1003に従って測定される。
【0009】
一実施形態において、本発明は、少なくとも約75体積%の窒素を含む雰囲気中でシリコン標的のスパッタリングによる、上部表面および下部表面を有するプラスチック基材の少なくとも一つの表面上に約250nmまでの厚さを有する窒化ケイ素ベースのコーティングを蒸着させる工程を包含する複合バリアフィルムを調製する方法に関し、ここで、その上に窒化ケイ素ベースのコーティングを蒸着させたプラスチック基材の表面は、約5nm以下の二乗平均平方根(RMS)粗度を有し。そして、その複合物は、少なくとも約75%の可視光透過率を有する。
【0010】
本発明の方法は、最小限の欠損(例えば、ピンホールおよび亀裂)を含む比較的平坦なコーティング(低RMS粗度)としても特徴付けられるコーティングに基づく窒化ケイ素ならびにプラスチック基材に対する良好な接着性(層間接着)を示すコーティングに基づく窒化ケイ素を提供する。以下により十分に考察されるように、これらの有利な特性は、いくつかの実施形態において、窒化ケイ素ベースの層を蒸着させる前に、ポリマーフィルム層を基材上に蒸着させることによりさらに改良され得る。このポリマーフィルム層は、下層または平坦化層とも呼ばれ得る。このポリマーは、基材層の粗度を低減させ、それによって、ポリマーコーティング基材上に蒸着した窒化ケイ素ベース層の特性を、窒化ケイ素ベース層中欠損の密度、大きさおよび形状を低減することにより改善する。
【0011】
本発明中で使用されるスパッタリング技術またはプロセスは、当該分野で公知のスパッタリング技術を含む。このような技術としては、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、イオンビーム増強または補助蒸着、レーザーアブレーション蒸着などが挙げられる。一実施形態において、本発明の方法に使用されるマグネトロンスパッタリングプロセスは、DCマグネトロンスパッタリング手順またはRFマグネトロンスパッタリング手順であり得る。一実施形態において、蒸着手順は、DCマグネトロンスパッタリングである。プラスチック基材上の所望の窒化ケイ素ベースのコーティングを蒸着させるためのシリコン標的のスパッタリングは、標準的な市販のスパッタリング装置を使用して実施され得る。
【0012】
窒化ケイ素ベースのコーティングは、少なくとも約75体積%の窒素を含む雰囲気中でのシリコン標的のスパッタリングにより形成される。一実施形態において、その雰囲気は、少なくとも75体積%の窒素を含む窒素およびアルゴンの混合物を含む。別の実施形態において、その雰囲気は、水素を含まない。なお別の実施形態において、その雰囲気は、少なくとも約80体積%の窒素を含む窒素およびアルゴンの混合物を含み、そしてその雰囲気は、水素を含まない。
【0013】
本発明のスパッタリングプロセスに使用されるシリコン標的は、一般的に、少なくとも約99%のケイ素を含有する。一実施形態において、シリコン標的は、少なくとも99.5%のシリコンを含む。窒化ケイ素ベースのコーティングの厚さは、一般的に、約250nmまでである。一実施形態において、窒化ケイ素ベースのコーティングの厚さは、約5nm〜約220nmである。いくつかの実施形態において、約220nmより大きい厚さが蒸着され得るが、220nm以下の蒸着が適切なバリア特性を提供することが見出された。基材上の窒化ケイ素ベースのコーティングの厚さおよび/または蒸着割合は、スパッタリング力の量、雰囲気および連続的なプロセス中の窒素の濃度、ならびに以下により十分に記載されるライン速度によって制御され得る。例えば、蒸着速度は、スパッタリング力を増加させることによるか、またはライン速度および/または窒素/アルゴン割合を低減させることにより増加され得る。しかし、アルゴンの量が増加するにつれて、コーティングが黄色い色を発する傾向がある。
【0014】
本発明の方法によって獲得される窒化ケイ素ベースのコーティングは、高密度である。一実施形態において、窒化ケイ素ベースのコーティングは、無定形構造である。窒化ケイ素ベースのコーティングは、ある程度の酸素(約3〜約25原子%)およびある程度の炭素(約2〜約15原子%)を含有する。一実施形態において、無定形窒化ケイ素ベースのコーティングは、約1.1〜1.5のSi/Nの原子比、および約0.2〜0.6のO/N比を有する。スパッタリングプロセスの雰囲気に酸素は添加されないので、酸素は、装置内に残留する酸素、および複合フィルムがスパッタリング装置から取り除かれる時に、雰囲気から吸収された酸素に由来すると考えられる。炭素は、主に、表面の汚染に由来すると考えられる。従って、本発明のプロセスから得られた窒化ケイ素ベースのコーティングは、窒化ケイ素ベースのSiCONフィルムとして特徴付けられ得る。一実施形態において、窒化ケイ素ベースのフィルムは、N/Ar比およびスパッタリング力を増加させることによって、Si/NおよびO/Nのより低い原子比およびより低い炭素含量を伴なって形成され得る。
【0015】
本明細書中に記載される窒化ケイ素ベースのコーティングによってコーティングされ得るプラスチック基材としては、薄い窒化ケイ素ベースのコーティングを支持し得る種々の自己支持型プラスチックフィルム(self−supporting plastic film)特に、可撓性自己支持型プラスチックフィルムが挙げられ得る。用語「プラスチック」は、高重合体、通常は、他の成分(例えば、治療薬、充填剤、強化剤、耐性(tolerance)、可塑剤など)と組合せられ得るポリマー合成レジンから作製される高重合体を言及するために使用される。プラスチックフィルムは、熱可塑性プラスチック材料および熱硬化性材料から調製され得る。
【0016】
可塑性プラスチックフィルムは、自己支持するために、十分な厚さおよび機械的保全性を有するべきである。しかし、一実施形態において、このフィルムは、強固になるほど厚くあるべきではない。一実施形態において、可撓性プラスチック基材は、複合フィルムの最も厚い層であり、その可撓性基材の厚さは、例えば、約200ミクロン(8ミル)までであってもよい。その結果、その基材は、十分に構造化された複合フィルムの大きさの範囲、力学的安定性および熱安定性を決定する。
【0017】
プラスチック基材が、平坦な表面をゆうすることもまた、好ましい。なぜなら基材表面の粗度は、窒化ケイ素ベースのコーティングの粗度および他の特性に対して影響を有するからである。従って、一実施形態において、プラスチック基材の表面のRMS粗度は、5nm以下である。別の実施形態において、プラスチック基材の表面のRMS粗さは、4nm以下または3nm以下の均一さである。
【0018】
一実施形態における可撓性プラスチック基材材料の別の特性は、材料のTgである。Tgは、プラスチック材料がガラス状の状態からゴム状の状態に変化するガラス転移温度として規定される。ガラス転移温度は、材料が実際に流動し得る前の範囲を含み得る。
【0019】
プラスチック基材のための好適な材料としては、比較的低いガラス転移温度(約150℃まで)の熱可塑性物質、およびより高いガラス転移温度(約150℃を超える)の材料が挙げられる。プラスチック基材のための材料の選択は、製造プロセス条件(例えば、堆積温度およびアニーリング温度など)および製造後条件(例えば、ディスプレイ製造業者のプロセスラインにおける条件)のような因子に依存する。以下で考察するプラスチック基材の幾つかは、損傷なくより高いプロセス温度(約200℃まで、および幾つかの場合、300℃〜350℃まで)に耐久する。従って、一実施形態において、本方法において本発明のコンポジットフィルムに使用されるプラスチック基材は、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、セルロースアセテート、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフルオロカーボン、ポリ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオレフィンもしくは環状ポリオレフィン、またはこれらの混合物である。
【0020】
有用なポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。脂肪族ポリオレフィンから調製されるポリオレフィンの例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン、プロピレンの他のαオレフィン(例えば、エチレンおよびブチレン)とのコポリマー延伸(oriented)ポリプロピレン(OPP)などが挙げられる。
【0021】
市販される環状ポリオレフィンの例としては:Japan Synthetic Rubber Company,Tokyo,Japanによって製造されるArtonTM、Zeon Chemicals L.P.,Tokyo,Japanによって製造されるZeanorTM;およびCelanese A.G.,Kronberg,Germanyによって製造されるTopasTMが、挙げられる。Artonは、ポリ(ビス(シクロペンタジエン))濃縮物であり、ここで、シクロペンタジエン基は、結合する極性基を含む。
【0022】
一実施形態において、プラスチック基材は、窒化ケイ素ベースのコーティングがその上に堆積される前に、産業において硬質コーティング(HC)と呼ばれるポリマーコーティングによって強化され得る。このような硬質コーティングは、代表的に、約1ミクロン〜約50ミクロンの厚みを有し、このコーティングは、適当な重合可能材料の遊離ラジカル重合(熱または紫外線照射によって開始される)によって提供され得る。基盤に依存して、異なった硬質コーティングが使用され得る。例えば、基材がポリエステル(例えば、Arton)である場合、特に有用な硬質コーティングは、「Lintec」として公知のコーティングである。Lintecは、UV硬化ポリエステルアクリレートおよびコロイド性ケイ素を含有し、Artonの上に堆積された場合、これは、35atom%炭素、45atom%酸素および20atom%ケイ素であり、水素をふくまない表面組成を有する。別の特に有用な硬質コーティングは、商標「Terrapin」の下でTekra Corporation,New Berlin,Wisconsinによって市販されるアクリルコーティングである。幾つかの実施形態において、硬質コーティングは、コンポジットフィルムの特定の性質において有意な改善(例えば、窒化ケイ素ベースのフィルムとプラスチック基材との間の改善された界面接着、およびコンポジットフィルムの粗さの減少)を提供することが観察されている。すなわち、硬質コーティングは、平坦化層として寄与し得る。硬質コーティングの使用はまた、コンポジットフィルムの表面形態学における改善をもたらし得る。別の実施形態において、コンポジットフィルムをレーザーエッチングして電極を形成する場合、硬質コーティングは、エッチングプロセスを促進し得る。種々の市販の好適なプラスチック基材の特徴および特性を、以下の表Iにまとめる。
【0023】
【表1】

いくつかの実施形態において、本発明の方法は、さらに、堆積前パージング工程を包含し得る。この工程は、窒化ケイ素ベースのフィルムの堆積の前に、プラスチック基材の表面をプラズマでパージする工程を包含する。プラズマは、アルゴンまたはアルゴンおよび窒素の混合物であり得る。気体のプラズマもまた使用され得る。堆積前プラズマ工程の使用は、本発明に従う複合フィルムの層間接着を改善し得る。
【0024】
上記のように、窒化ケイ素ベースのコーティングが、約5nm以下のRMS粗度を有する基材表面上に堆積される場合、窒化ケイ素ベースのコーティングが改善され得ることが発見された。1つの実施形態において、窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される表面のRMS粗度が、4nm未満または3nm未満でさえある。プラスチック基材の表面上記粗度を超える場合、窒化ケイ素ベースのコーティングの適用の前に、プラスチック基材の表面粗度を減少させる効果を有する平滑化コーティングまたは平坦化コーティングと呼ばれているコーティングでプラスチック基材をコーティングすることが可能であり、望ましい。1つの実施形態において、先に記載される硬質コーティングは、このコーティングが、一般的に、硬質コーティングされたプラスチック基材の表面の粗度を減少させるので、平坦化層として機能し得る。別の実施形態において、ポリアクリレートコーティングは、平坦化層として有用である。1つの実施形態において、UV硬化性アクリレート処方物は、プラスチック基材上にアクリレート平坦化層を堆積する際に有用である。UV硬化によって重合され得るアクリレートの特定の例は、ペンタエリスリトールトリアクリレートである。アクリレートコーティングは、代表的に、約1ミクロン〜約50ミクロンの厚みを有する。よりしばしば、平坦化層の厚みは、約1〜約10ミクロンであり得る。
【0025】
UV硬化によって重合され得るアクリレートモノマーとしては、モノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレートおよびテトラアクリレートが挙げられる。有用なアクリレートモノマーの例としては、2−フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート’TRPGDA)、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0026】
以下の処方物は、上記プラスチック基材上にアクリレート平坦化コーティングを堆積する際に有用なUV硬化性アクリレート処方物の例である。
【0027】
【化1】

Irgacure 907は、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホジニル−1)−1−プロパノンである。Tinuvin 292は、bis−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート;メチル−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート;およびジメチルセバケートの混合物である。
【0028】
Tinuvin 1130は、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル),α−[3−[3−[2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキシプロピル]−ω−[3−[3[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−5−(1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−オキソプロピル]を含む。
【0029】
他の実施形態において、本発明の方法は、溶着後焼きなまし工程をさらに包含する。代表的に、この溶着後焼きなまし工程は、空気中で、約125℃と約175℃との間の温度で0.5時間〜3時間、窒化ケイ素ベースの被覆を焼きなます工程を包含する。この焼きなましプロセスの温度は、複合フィルムの成分の特性によって制限され、かつ決定される。適切な焼きなまし条件を確立する場合、複合フィルムの特定の外見的特性(例えば、色および明るさ)が考慮される。溶着後焼きなまし工程は、本発明の複合フィルムの界面接着を改善し得る。
【0030】
本発明の方法は、連続的もしくは半連続的原理(すなわち、ロールツーロール溶着)で実行され得るか、または本方法は、バッチプロセスで実行され得る。したがって、本発明の方法は、複合バリヤーフィルムを形成するための連続的もしくは半連続的プロセスであり得、以下:
(A)上面および下面を有する、可撓性プラスチック基材の移動する連続的シートを提供する工程;
(B)少なくとも75体積%の窒素を含む大気中で、シリコン標的のスパッタリングによって、この可撓性プラスチック基材の少なくとも一つの表面上に窒化ケイ素ベースの被覆を連続的に溶着して複合フィルムを形成する工程であって、この窒化ケイ素ベースの被覆の厚さが約10nm〜約220nmであり、かつこの窒化ケイ素ベースの被覆が溶着される可撓性プラスチック基材の表面が、約5nm未満のRMS粗度を有する、工程;および
(C)連続的ロールに複合フィルムを回収する工程であって、この複合バリヤーフィルムが、少なくとも75%の可視光透過率を有する、工程、
を包含する。プラスチック材料のロールのラインスピードは、調整されて、基材に溶着される窒化ケイ素ベースの層の厚さを制御し得る。このラインスピードはまた、調整されて、使用される標的の大きさに対しておよび溶着プロセスの規模に対して最適になり得る。例えば、より速いラインスピードは、より薄い被覆を生じ、一方より遅いスピードは、より厚い被覆を生じる。
【0031】
本発明の複合バリヤーフィルム(窒化ケイ素ベースの被覆で被覆されたプラスチック基材を含み、この被覆は、上記のように、少なくとも75体積%の窒素を含む大気中で、シリコン標的のスパッタリングを用いて溶着されている)は、以下の所望の特性:低MVTRおよび/もしくは低OTRによって証明されるような良好なバリヤー特性;高光学的透過率;高清澄性;低ヘーズ;良好な表面平滑性;低水含有量水接触角;良好な可撓性;ならびに良好なフィルムの界面接着、の一以上を有するとして特徴づけられる。
【0032】
以下の例は、DCマグネトロンスパッタリングプロセスを用いた本発明の連続的ロール複合バリヤーフィルムの調製を示す。溶着チャンバーのベース圧力は、1.5〜4×10−6mTであり、使用圧力または溶着圧力は、2.4〜3.1mTである。純度99.999%のシリコン標的は、窒化ケイ素ベースフィルムの溶着のため、400〜2000ワットの力でスパッタリングされる。溶着の間、大気の窒素およびアルゴン含有量は、表示されるように変動する。水素は大気に添加されない。加えて、プラスチックロールのラインスピードは、0.1〜2.0フィート/分に調整されて、無定形の窒化ケイ素ベースフィルムの厚さもしくは成長速度を制御する。プラスチックと標的との間の距離は、溶着のために、10インチである。
【0033】
表IIは、HC/Arton基材に基づく本発明の複合フィルムの調製を示す例をまとめる。表IIIは、GE PETおよびオートタイプHC/PET基材に基づく本発明の複合フィルムの調製を示す例をまとめ、ここでは全ての例について、N/Ar流速は8:2であり、そしてスパッタリング力は1500Wである。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

本発明に従って調製され、例1〜38に示される複合バリヤーフィルムの特徴および特性のいくつかを、以下に決定し、まとめた。フィルムの厚さは、楕円偏光計によって測定された。窒化ケイ素ベースの被覆の化学組成をXPSスペクトルによって決定し、一方、表面形態学および粗度を原子間力顕微鏡(AFM)、スクリーン電子顕微鏡(screen electric microscope)(SEM)および光学顕微鏡を用いて決定した。フィルムの可視光透過率を、紫外/可視分光計(UV/VIS)を用いて決定した。バリヤー特性を、4インチ×4インチの大きさのサンプルを用いて決定した。各サンプルの表面積50.00 cmを、PERMATRAN−W 3/31(MG)機器によって分析してASTM Method F1249によるMVTRを決定し、そしてOX−TRAN 2/20(ML System)機器によって分析してASTM Method F1927によるOTRを決定した。これらの機器を、35℃、90%の相対湿度で操作する。MVTRの測定では、水蒸気を運ぶため、10sccmの窒素流を使用し、一方、OTR測定における浸透体として、10sccmの酸素流を使用する。
【0036】
このフィルムの界面接着を、以下でより十分に記載されるように、斜めに交差されたサンプル上での3M Tape 810を用いた180°剥離試験法を用いて証明する。
【0037】
サンプルが後で焼きなましされる場合、この焼きなましプロセスは、大気中で、150℃未満の温度で120分間である。
【0038】
以下の表IVは、上記の例で溶着された窒化ケイ素ベースフィルムのいくつかの化学組成をまとめる。分析前、サンプル表面を、Arで2分間スパッタエッチングして(6分間スパッタエッチングする例6を除く)、表面汚染物を除去する。
【0039】
【表4】

複合フィルムの表面は、AFMによって観察した場合、滑らかでかつ平坦である。HC/Arton表面の粗度および実施例のいくつかの窒化ケイ素ベースのフィルムの表面の粗度を決定し、以下の表Vに報告する。走査のサイズは、20ミクロンである。表Vの結果から分かり得るように、窒化ケイ素ベースのフィルムの堆積は、HC/Arton基材(コントロール)の表面の滑らかさを改善する。窒化ケイ素ベースのフィルム厚みの増加は、複合物のRMS粗度に影響を有するようではない。
【0040】
【表5】

窒化ケイ素ベースのフィルムおよび本発明の複合フィルムは、食物、エレクトロニクス、オプティクス、薬学などのような種々の産物およびデバイスのための環境バリアとして有用である。特に、本発明の複合フィルムは、酸素および/または水蒸気の透過に対するバリアとして有効である。いくつかの実施形態において、MVTRは、0.5cc/m/日に減少され得、そしてOTRは、基材のバリア特性および滑らかさに一部依存して、35℃および90%相対湿度において、5cc/m/日または1.5cc/m/日未満のレベルに減少され得る。本発明の他の実施形態において、複合フィルムのMVTRおよび/またはOTRは、35℃および90%相対湿度において、それぞれ、0.005g/m/日および0.005cc/m/日以下に減少され得る。
【0041】
表VIおよびVIIの示される結果は、35℃および90%相対湿度で測定した場合の、本発明の複合フィルムのいくつかのバリア特性を示す。
【0042】
【表6】

【0043】
【表7】

本発明の複合フィルムはまた、高い光学透過率および透明度ならびに低いヘイズ(haze)のような所望の光学特性を有するとして特徴付けられる。1つの実施形態において、フィルムは、少なくと約75%の可視光透過率を有する(一般的に、550nmで測定される)。別の実施形態において、可視光透過率は、少なくとも約80%、85%、90%、またはさらに少なくとも約95%であり得る。さらに、窒化ケイ素ベースのフィルムが透明なプラスチック物質(例えば、HC/ArtonおよびPET)に上に堆積される場合、複合フィルムは、低いヘイズ値(例えば、1.0未満、よりしばしば、0.50未満)および高い透明度(例えば、95%以上、99%以上でさえ)を有する。窒化ケイ素でコーティングされた基材のいくつかについての光学的測定の結果を、以下の表VIIIに要約する。
【0044】
【表8】

基材フィルムの疎水特性はまた、基材が本発明の窒化ケイ素ベースのフィルムでコーティングされる場合に改善される。特に、GE PETに対する水の接触角は、GE PETが本発明に従う窒化ケイ素ベースのフィルムでコーティングされる場合に減少する。GE PETについて、および窒化ケイ素ベースのフィルムでコーティングされたGE PETについての水の接触角の測定の要約を、以下の表IXに示す。接触角の減少は、窒化ケイ素ベースのフィルムの堆積後のプラスチック材料の表面エネルギーの増加を示唆する。
【0045】
【表9】

プラスチック基材に対する窒化ケイ素ベースのコーティングの界面接着特性はまた、180°剥離試験を使用して、上記実施例のいくつかの複合バリアフィルムについて決定された。以下の表に列挙された実施例の複合フィルムのサンプル(3インチ×1インチ)を、通常の様式で、網状の陰影を付け(cross−hatched)、そして3Mテープ810を、4.5lb.ローラーを使用して表面に積層する。テープを20時間のドウェル時間の間、このサンプル上に維持する。ゲージ長さは、1インチであり、そしてクロスヘッド速度は、12インチ/分である。平均剥離力を決定し、結果を以下の表に示す。網状の陰影付けおよび180°剥離試験の完了後、窒化ケイ素ベースのフィルムの表面特性をまた、損傷について観察する。最小損傷は、良好な界面接着の良好な指標である。
【0046】
【表10】

1つの実施形態において、本発明の複合フィルムが、特に、窒化ケイ素ベースのコーティングの厚みが100nm未満、50nm未満ですらある場合、良好な可撓性特性を示すことがまた観察された。すなわち、本発明の複合フィルムは、プラスチック基材に対する窒化ケイ素ベースのフィルムの界面接着に対する有意な損害無しに、可撓性試験に供され得る。可撓性試験後に、表面の割れまたは欠陥がほとんどまたは全く観察されず、複合フィルムは依然として非常に低いOTRを示す。可撓性複合フィルムは、複合フィルムが可撓性ディスプレイに対するバリアとして使用される場合に望ましい。
【0047】
本発明が、その種々の実施形態に関連して説明されているものの、その他の改変が、本明細書を読んだ際に当業者に明らかになることが理解される。従って、本明細書中において開示される本発明が、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るこのような改変を網羅することが意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合バリアフィルムを調製する方法であって、該方法は、
少なくとも約75容量%の窒素を含む大気中においてシリコン標的のスパッタリングによって、窒化ケイ素ベースのコーティングを堆積させる工程であって、該窒化ケイ素ベースのコーティングは、上面および下面を有するプラスチック基材の少なくとも片面に約250nmまでの厚みを有する、工程、を包含し、該窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される該プラスチック基材の表面は、約5nm以下のRMS粗度であり、そして該複合物は、少なくとも約75%の可視光透過率を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記大気は、窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、方法。
【請求項3】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、アモルファスコーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングの前記厚みは、約10nm〜約220nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スパッタリングは、D.C.マグネトロンスパッタリングである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記大気は、少なくとも約80%の窒素を含有する窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される前記プラスチック基材の前記表面のRMS粗度は、約3nm以下である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記プラスチック基材は、プラスチック層およびポリマー性平面化層を備え、該平面化層は、約3nm以下のRMS表面粗度を有する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、酸素を含み、該コーティング中の酸素対窒素の原子の比率は、約1:1未満である、方法。
【請求項10】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、炭素を含み、該炭素含有量は、約15%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記平面化層は、アクリルコーティングを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記複合物は、少なくとも約90%の可視光透過率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複合フィルムは、少なくとも約99%の透明度を有しかつ約1.5%以下のヘイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、約36°以下の水接触角度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記複合バリアフィルムは、35℃、相対湿度90%の条件で、約0.005g/m/日未満の水分バリア透過率および0.005cc/m/日未満の酸素透過率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、180°剥離接着試験下で前記複合バリアの残りに対して、層間剥離を避けるために充分な界面接着を有する、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記プラスチック基材は、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、酢酸セルロース、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフルオロカーボン、ポリ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオレフィンもしくは環式ポリオレフィン、またはそれらの混合物である、方法。
【請求項18】
前記プラスチック基材は、環式ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記プラスチック基材は、ポリエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
複合バリアフィルムの形成方法であって、該方法は、以下:
(A)上面および下面を有する可撓性プラスチック基材の移動している連続性シートを提供する工程;
(B)少なくとも約75容量%の窒素を含む大気中においてシリコン標的のスパッタリングによって、窒化ケイ素ベースのコーティングを該可撓性プラスチック基材の少なくとも片面に連続的に堆積させて複合フィルムを形成する工程であって、該窒化ケイ素ベースのコーティングの厚みは、約10nm〜約220nmであり、該窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される該プラスチック基材の該表面は、約5nm未満のRMS粗度を有する、工程;ならびに
(C)連続的なロール中に該複合フィルムを収集する工程であって、該複合バリアフィルムは、少なくとも約75%の可視光透過率を有する、工程、
を、包含する、方法。
【請求項21】
前記大気は、窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、アモルファスコーティングである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記スパッタリングは、D.C.マグネトロンスパッタリングである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、前記大気は、少なくとも約80%の窒素を含有する窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される前記プラスチック基材の前記表面のRMS粗度は、約3nm以下である、方法。
【請求項26】
請求項20に記載の方法であって、前記プラスチック基材は、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、酢酸セルロース、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフルオロカーボン、ポリ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオレフィンもしくは環式ポリオレフィン、またはそれらの混合物である、方法。
【請求項27】
前記プラスチック基材は、環式ポリオレフィンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記プラスチック基材は、ポリエステルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
請求項20に記載の方法であって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、酸素を含み、該コーティング中の酸素対窒素の原子の比率は、約1:1未満である、方法。
【請求項30】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、炭素を含み、該炭素含有量は、約15%未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
請求項20に記載の方法であって、前記プラスチック基材は、プラスチック層およびポリマー性平面化層を備え、該平面化層は、約3nm以下のRMS表面粗度を有する、方法。
【請求項32】
前記平面化層は、アクリルコーティングを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複合物は、少なくとも約90%の可視光透過率を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記複合フィルムは、少なくとも約99%の透明度を有しかつ約1.5%以下のヘイズを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、約36°以下の水接触角度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
請求項20に記載の方法であって、前記複合バリアフィルムは、35℃、相対湿度90%の条件で、約0.005g/m/日未満の水分バリア透過率および0.005cc/m/日未満の酸素透過率を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
請求項20に記載の方法であって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、180°剥離接着試験下で前記複合バリアの残りに対して、層間剥離を避けるために充分な界面接着を有する、方法。
【請求項38】
可撓性プラスチック基材上にアモルファス窒化ケイ素ベースのコーティングを含む複合バリアフィルムであって、該窒化ケイ素ベースのコーティングの厚みは、約220nm未満であり、該コーティングは、約25原子%の酸素を含み、そして該複合フィルムは、
(A)可視領域において少なくとも約75%の可視光透過率;
(B)35℃、相対湿度90%で約0.005g/m/日未満のMVTR;および
(C)35℃、相対湿度90%で約約0.005cc/m/日以下のOTR、
を、有する、複合フィルム。
【請求項39】
(D)少なくとも約99%の透明度かつ約1.5%以下のヘイズ、もまた有する、請求項38に記載の複合フィルム。
【請求項40】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、約36°以下の水接触角度を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記可視領域において少なくとも90%の光透過率を有する、請求項38に記載の複合フィルム。
【請求項42】
請求項38に記載の複合フィルムであって、前記可撓性プラスチック基材は、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、酢酸セルロース、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフルオロカーボン、ポリ(メタ)アクリル、脂肪族ポリオレフィンもしくは環式ポリオレフィン、またはそれらの混合物である、複合フィルム。
【請求項43】
少なくとも約99.5%の透明度を有しかつ約0.5%以下のヘイズを有する、請求項38に記載の複合フィルム。
【請求項44】
24°以下の水接触角度を有する、請求項38に記載の複合フィルム。
【請求項45】
請求項38に複合フィルムであって、前記プラスチック基材は、プラスチック層およびポリマー性平面化層を備え、該平面化層は、約3nm未満のRMS表面粗度を有する、複合フィルム。
【請求項46】
請求項38に複合フィルムであって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、180°剥離接着試験下で前記複合バリアの残りに対して、層間剥離を避けるために充分な界面接着を有する、複合フィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合バリアフィルムを調製する方法であって、該方法は、
少なくとも約75容量%の窒素を含む大気中においてシリコン標的のスパッタリングによって、窒化ケイ素ベースのコーティングを堆積させる工程であって、該窒化ケイ素ベースのコーティングは、上面および下面を有するプラスチック基材の少なくとも片面に約250nmまでの厚みを有する、工程、を包含し、該窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される該プラスチック基材の表面は、約5nm以下のRMS粗度であり、そして該複合物は、少なくとも約75%の可視光透過率を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記大気は、窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、方法。
【請求項3】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、アモルファスコーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スパッタリングは、D.C.マグネトロンスパッタリングである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記大気は、少なくとも約80%の窒素を含有する窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記プラスチック基材は、プラスチック層およびポリマー性平面化層を備え、該平面化層は、約3nm以下のRMS表面粗度を有する、方法。
【請求項7】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、炭素を含み、該炭素含有量は、約15%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複合体は、少なくとも約90%の可視光透過率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複合フィルムは、少なくとも約99%の透明度を有しかつ約1.5%以下のヘイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記複合バリアフィルムは、35℃、相対湿度90%の条件で、約0.005g/m/日未満の水分バリア透過率および0.005cc/m/日未満の酸素透過率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、以下:
(A)上面および下面を有する可撓性プラスチック基材の移動している連続性シートを提供する工程;
(B)少なくとも約75容量%の窒素を含む大気中においてシリコン標的のスパッタリングによって、窒化ケイ素ベースのコーティングを該可撓性プラスチック基材の少なくとも片面に連続して堆積させて複合フィルムを形成する工程であって、該窒化ケイ素ベースのコーティングの厚みは、約10nm〜約220nmであり、該窒化ケイ素ベースのコーティングが堆積される該プラスチック基材の該表面は、約5nm未満のRMS粗度を有する、工程;ならびに
(C)連続的なロール中に該複合フィルムを収集する工程であって、該複合バリアフィルムは、少なくとも約75%の可視光透過率を有する、工程、
を、包含する、方法。
【請求項12】
前記大気は、窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スパッタリングは、D.C.マグネトロンスパッタリングである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記大気は、少なくとも約80%の窒素を含有する窒素およびアルゴンの混合物を含み、該混合物は、水素を含まない、方法。
【請求項15】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、炭素を含み、該炭素含有量は、約15%未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、前記複合バリアフィルムは、35℃、相対湿度90%の条件で、約0.005g/m/日未満の水分バリア透過率および0.005cc/m/日未満の酸素透過率を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
可撓性プラスチック基材上にアモルファス窒化ケイ素ベースのコーティングを含む複合バリアフィルムであって、該窒化ケイ素ベースのコーティングの厚みは、約220nm未満であり、該コーティングは、約25原子%未満の酸素を含み、そして該複合フィルムは、
(A)可視領域において少なくとも約75%の可視光透過率;
(B)35℃、相対湿度90%で約0.005g/m/日未満のMVTR;および
(C)35℃、相対湿度90%で約0.005cc/m/日以下のOTR、
を、有する、複合フィルム。
【請求項18】
(D)少なくとも約99%の透明度かつ約1.5%以下のヘイズ、もまた有する、請求項17に記載の複合フィルム。
【請求項19】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、約36°以下の水接触角度を有する、請求項17に記載の複合フィルム。
【請求項20】
前記可視領域において少なくとも90%の光透過率を有する、請求項17に記載の複合フィルム。
【請求項21】
請求項17に記載の複合フィルムであって、前記可撓性プラスチック基材は、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、酢酸セルロース、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフルオロカーボン、ポリ(メタ)アクリル、脂肪族ポリオレフィンもしくは環式ポリオレフィン、またはそれらの混合物である、複合フィルム。
【請求項22】
少なくとも約99.5%の透明度を有しかつ約0.5%以下のヘイズを有する、請求項17に記載の複合フィルム。
【請求項23】
請求項17に記載の複合フィルムであって、前記プラスチック基材は、プラスチック層およびポリマー性平面化層を備え、該平面化層は、約3nm未満のRMS表面粗度を有する、複合フィルム。
【請求項24】
請求項17に記載の複合フィルムであって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、180°剥離接着試験下で前記複合バリアの残りに対して、層間剥離を避けるために充分な界面接着を有する、複合フィルム。
【請求項25】
請求項17に記載の複合フィルムであって、前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、約3原子重量%〜約25原子重量%の酸素および約2原子重量%〜約15原子重量%の炭素を含む、複合フィルム。
【請求項26】
前記窒化ケイ素ベースのコーティングは、水素を含まない、請求項17に記載の複合フィルム。

【公表番号】特表2006−512482(P2006−512482A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565265(P2004−565265)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/038998
【国際公開番号】WO2004/061158
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(594177391)エーブリー デニソン コーポレイション (26)
【氏名又は名称原語表記】Avery Dennison Corporation
【Fターム(参考)】