説明

アイドリングストップ車両の制御装置

【課題】アイドリングストップ機能によって自動的にエンジンを停止させる際に、運転手に違和感を与えることのないようにタコメータを制御する。
【解決手段】エンジン制御ユニットは、エンジン回転に応じて出力されるパルス信号の時間間隔ΔTに基づいてエンジン回転数Neを算出する。また、エンジン制御ユニットは、車両状態に基づいてエンジンの停止条件が成立するか否かを判定し、停止条件が成立する場合にはエンジン停止を想定した上限回転数Nlimを設定する。そして、エンジン制御ユニットは、エンジン回転数Neと上限回転数Nlimとを比較するとともに、低い方の回転数を表示回転数Netとして設定し、この表示回転数Netに基づいてタコメータの指針を制御する。これにより、アイドリングストップ機能によって自動的にエンジンを停止させる際に、運転手に違和感を与えることなくタコメータを制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両状態に応じて自動的にエンジンを停止させるアイドリングストップ車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランク軸やカム軸等の回転部位には、所定の回転角度でパルス信号を出力するエンジン回転センサが取り付けられている。そして、エンジン制御ユニットは、出力されるパルス信号の時間間隔に基づいてエンジン回転数を算出するとともに、所定の判定時間に渡ってパルス信号が出力されない場合にエンジン回転数が0であると判定する。このような方法によって算出されるエンジン回転数は、点火時期制御や燃料噴射制御に用いられるとともに、インストルメントパネルのタコメータに表示されることになる。
【0003】
ところで、エンジンの燃料消費量を抑制するため、車両状態に応じて自動的にエンジンを停止させるアイドリングストップ車両が開発されている。このアイドリングストップ車両においては、タコメータを作動させた状態のもとでエンジンを停止させるため、運転手に違和感を与えることなくタコメータの指針を制御することが重要となっている。ここで、前述の方法を用いてエンジン回転数を算出した場合には、エンジン回転数が0であることを判定するために所定の判定時間の経過が必要となっていた。このため、自動的にエンジンを停止させる際には、所定の判定時間が経過するまでタコメータの指針が所定の回転数を指し続けた後に、最低位置(0rpm)まで急に移動することになっていた。すなわち、エンジン音等から運転手が感じるエンジン停止のタイミングと、タコメータの指針が最低位置を指し示すタイミングとに、ズレが生じることになるため、運転手に違和感を与えてしまうという問題があった。このような違和感を解消するため、エンジンの停止判定を待つことなくエンジン回転数が0近傍まで低下した場合に、タコメータの指針を最低位置に移動させるようにした技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−139578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、エンジン回転数が0近傍まで低下したときに、タコメータの指針を0に移動させたとしても、運転手の違和感を解消することは困難であった。すなわち、タコメータの指針を最低位置に移動させるための判定回転数を低く設定した場合には、エンジンが停止する直前までエンジン回転数を算出することになるが、エンジン停止直近の低回転領域においてはパルス信号の時間間隔が延びてしまうため、タコメータの指針が停滞してから最低位置に移動するという問題は解決できなかった。一方、タコメータの指針を最低位置に移動させるための判定回転数を高く設定した場合には、実際にエンジンが停止する前にタコメータの指針が最低位置に移動してしまうため、運転手に対して違和感を与えることになっていた。
【0006】
この問題を解決するため、エンジン回転センサに対向するロータの突起を増やすことにより、エンジン停止直近の低回転領域においてもパルス信号の時間間隔が短くなるように設計することも考えられる。このように、低回転領域におけるパルス信号の時間間隔を短くすることにより、エンジンの停止直前までエンジン回転数を算出することができ、タコメータの指針の停滞を防止するとともに滑らかに最低位置まで移動させることが可能となる。しかしながら、ロータに突起を増設することはロータ径の拡大を招くことから、艤装面やコスト面での困難を伴うものとなっていた。
【0007】
本発明の目的は、アイドリングストップ機能によって自動的にエンジンを停止させる際に、運転手に違和感を与えることのないようにタコメータを制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアイドリングストップ車両の制御装置は、車両状態に応じて自動的にエンジンを停止させるアイドリングストップ車両の制御装置であって、エンジン回転に応じて出力されるパルス信号の時間間隔に基づいて、エンジン回転数を算出する回転数算出手段と、車両状態に基づいて前記エンジンの停止条件が成立するか否かを判定するアイドリングストップ判定手段と、前記エンジンの停止条件が成立すると判定された場合に、前記エンジンの仮想回転数を設定する仮想回転数設定手段と、前記エンジン回転数が前記仮想回転数を下回る場合には、前記エンジン回転数をタコメータに表示する一方、前記エンジン回転数が前記仮想回転数を上回る場合には、前記仮想回転数を前記タコメータに表示するメータ制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のアイドリングストップ車両の制御装置は、前記仮想回転数設定手段は、前記エンジンの停止条件が成立したときの前記エンジン回転数に基づいて、前記仮想回転数を設定することを特徴とする。
【0010】
本発明のアイドリングストップ車両の制御装置は、前回のパルス信号からの経過時間に基づき前記エンジンの停止状態を判定した後に、車両状態に基づいて前記エンジンを再始動させるか否かを判定する再始動判定手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンの停止条件が成立すると判定された場合にエンジンの仮想回転数を設定し、エンジン回転数が仮想回転数を上回る場合には仮想回転数をタコメータに表示するようにしたので、運転手が感じるエンジン停止のタイミングに合わせてタコメータを制御することが可能となる。これにより、運転手に違和感を与えることなくエンジンを停止させることができ、アイドリングストップ車両の商品性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態である制御装置が適用されるアイドリングストップ車両の構成を示す概略図である。
【図2】タコメータ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】タコメータに表示されるエンジン回転数を示す説明図である。
【図4】(A)および(B)はそれぞれに上限回転数の例を示す線図である。
【図5】再始動判定を許可するか否かの判定ステップを加味したタコメータ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】再始動判定に伴う再始動許可フラグの設定タイミングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である制御装置が適用されるアイドリングストップ車両10の構成を示す概略図である。図1に示すように、アイドリングストップ車両10に搭載されるパワーユニット11はエンジン12と変速機13とを有しており、変速機13にはプロペラシャフト14およびデファレンシャル機構15を介して駆動輪16が連結されている。また、エンジン12にはスタータモータ17が取り付けられており、このスタータモータ17によって図示しないクランク軸を始動回転させることが可能となっている。さらに、エンジン12の吸気系には燃料を噴射するインジェクタ18が設けられており、エンジン12の運転状態に応じてインジェクタ18から燃料が供給されている。これらスタータモータ17やインジェクタ18等を制御するため、アイドリングストップ車両10にはエンジン制御ユニット19が設けられている。なお、エンジン制御ユニット19は、制御信号等を演算するCPUを備えるとともに、制御プログラム、演算式、マップデータ等を格納するROMや、一時的にデータを格納するRAMを備えている。
【0014】
また、エンジン制御ユニット19には、運転手によって起動時や停止時に操作されるイグニッションスイッチ20、車速を検出する車速センサ21、変速機13の作動状況を検出するシフトポジションセンサ22、運転手によるブレーキペダルの踏み込み状況を検出するブレーキ油圧センサ23、スタータモータ17等に電力を供給するバッテリの電圧を検出するバッテリ電圧センサ24等が接続されている。さらに、エンジン制御ユニット19には、クランク軸の回転を検出するエンジン回転センサ25が接続されている。クランク軸には突起27を備えたロータ26が固定されており、エンジン回転センサ25はロータ26の突起27に対向するように設置されている。エンジン回転センサ25からはロータ26の回転に応じてパルス信号が出力され、このパルス信号はエンジン制御ユニット19に入力される。エンジン制御ユニット19は、回転数算出手段として機能しており、エンジン回転に応じて出力されるパルス信号の時間間隔に基づいてエンジン回転数を演算する。そして、エンジン制御ユニット19からタコメータ28にエンジン回転数に応じた制御信号が出力され、タコメータ28にエンジン回転数が表示されるようになっている。なお、ステッピングモータによってタコメータ28の指針29を駆動しても良く、交差コイルによってタコメータ28の指針29を駆動しても良い。また、ロータ26をクランク軸に固定しているが、ロータ26をエンジン12の図示しないカム軸に固定しても良い。
【0015】
また、エンジン制御ユニット19はアイドリングストップ機能を有しており、車両状態に応じてエンジン12を自動的に停止させることが可能となっている。アイドリングストップ判定手段として機能するエンジン制御ユニット19は、車速、ブレーキ油圧、バッテリ電圧等の車両状態に基づいて、エンジン12の停止条件が成立するか否かを判定している。例えば、運転手によってブレーキペダルが踏み込まれた停車状態であり、再始動に必要なバッテリ電圧が確保されている場合には、エンジン制御ユニット19によってエンジン12の停止条件が成立したと判定され、エンジン制御ユニット19は停止許可フラグを設定してエンジン12を停止させる。さらに、エンジン制御ユニット19は再始動判定手段として機能しており、ブレーキペダルの踏み込みが解除される等の発進動作が認められた場合に、スタータモータ17やインジェクタ18等を作動させてエンジン12を再始動させることになる。
【0016】
このようなアイドリングストップ車両10においては、タコメータ28が作動している状態のもとでエンジン12を停止させることから、運転手に対して違和感を与えることなくタコメータ28の指針29を制御することが重要である。そこで、エンジン制御ユニット19は、以下の手順に沿って、タコメータ28に表示するエンジン回転数を設定している。以下、アイドリングストップ時におけるタコメータ制御について説明する。図2はタコメータ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、図3はタコメータ28に表示されるエンジン回転数を示す説明図である。なお、図2に示すフローチャートは、図3に示す所定の演算周期毎に実行されている。
【0017】
図2に示すように、ステップS1において、パルス信号の割込みの有無が判定される。パルス信号の割込みが有ると判定された場合には、ステップS2に進み、判定タイマTをリセットした後に、続くステップS3において、前回のパルス信号からの時間間隔ΔTが算出される。続いて、ステップS4では、以下の式(1)に基づいてエンジン回転数Neが算出される。なお、定数Kとはロータ26の突起27の数に基づき設定される定数である。続くステップS5では、エンジン12の停止条件が成立したときに設定される停止許可フラグの有無が判定される。ステップS5において、停止許可フラグが設定されていないと判定された場合(OFF判定)には、エンジン12の運転状態が継続されるため、ステップS6に進み、エンジン回転数Neがタコメータ28用の表示回転数Netとして設定される。そして、ステップS7では、表示回転数Netであるエンジン回転数Neに基づいてタコメータ28の指針29が制御される。
Ne=K/ΔT …(1)
【0018】
一方、ステップS1において、パルス信号の割込みが無いと判定された場合には、ステップS8に進み、判定タイマTがカウントされた後に、続くステップS9において、判定タイマTが判定時間C1を下回るか否かが判定される。ステップS9において、判定タイマTが判定時間C1以上と判定された場合、すなわち判定時間C1が経過するまでに新たなパルス信号が検出されなかった場合には、ステップS10に進み、エンジン回転数Neが0に設定される。そして、ステップS6において、エンジン回転数Neが表示回転数Netとして設定され、続くステップS7において、表示回転数Netであるエンジン回転数Neに基づいてタコメータ28の指針29が制御される。一方、ステップS9において、判定タイマTが判定時間C1を下回ると判定された場合には、そのままルーチンを抜ける。
【0019】
すなわち、図3に示すように、新たなパルス信号が検出されたときには、パルス信号の時間間隔ΔTが算出されるとともに、この時間間隔に基づいてエンジン回転数Neが算出される。また、新たなパルス信号が検出されたときには、エンジン停止を判定するための判定タイマTがリセットされる。そして、演算周期毎にカウントされる判定タイマTが判定時間C1を上回った場合、つまり新たなパルス信号を検出することなく判定時間C1を経過した場合には、エンジン回転数Neが0と判定される(符号α)。
【0020】
また、図2に示すように、ステップS5において、停止許可フラグが設定されていると判定された場合(ON判定)には、エンジン12が停止されるため、ステップS11に進み、エンジン停止を想定した仮想回転数としての上限回転数Nlimが設定される。このように、エンジン制御ユニット19は仮想回転数設定手段として機能している。ここで、図4(A)および(B)はそれぞれに上限回転数Nlimの例を示す線図である。図4(A)および(B)に示すように、上限回転数Nlimとして複数の特性線a〜dが設定されており、これらの特性線a〜dは直近のエンジン回転数Neに基づき選択されるようになっている。例えば、特性線aはエンジン回転数Neが250rpm(revolutions per minute)であるときに選択され、特性線bはエンジン回転数Neが500rpmであるときに選択され、特性線cはエンジン回転数Neが750rpmであるときに選択され、特性線dはエンジン回転数Neが1000rpmであるときに選択される。このように、上限回転数Nlimは、直近のエンジン回転数Neよりも高い初期値を備えており、時間経過とともに0に向けて緩やかに低下するように設定されている。
【0021】
図2に示すように、ステップS11において、上限回転数Nlimが設定されると、続くステップS12において、エンジン回転数Neと上限回転数Nlimとが比較判定される。ステップS12において、エンジン回転数Neが上限回転数Nlim以上と判定された場合には、ステップS13に進み、上限回転数Nlimがタコメータ28用の表示回転数Netとして設定される。そして、続くステップS7において、表示回転数Netである上限回転数Nlimに基づいてタコメータ28の指針29が制御される。一方、ステップS12において、エンジン回転数Neが上限回転数Nlimを下回ると判定された場合には、ステップS6に進み、エンジン回転数Neがタコメータ28用の表示回転数Netとして設定される。そして、ステップS7では、表示回転数Netであるエンジン回転数Neに基づいてタコメータ28の指針29が制御される。
【0022】
すなわち、図3に符号βで示すように、停止許可フラグが設定された場合には、直近のエンジン回転数Neに基づいて上限回転数Nlimが設定される。そして、メータ制御手段として機能するエンジン制御ユニット19により、演算周期毎にエンジン回転数Neと上限回転数Nlimとが比較され、低い方の回転数がタコメータ28用の表示回転数Netとして設定される。これにより、図3に太線で示すように、停止許可フラグが設定されてエンジン12を停止する際には、タコメータ28の指針29を0に向けて滑らかに制御することが可能となる。すなわち、上限回転数Nlimを設定しなかった場合には、算出されるエンジン回転数Neに従ってタコメータ28が制御されるため、図3に破線で示すように、判定時間C1が経過するまでは指針29が一定に保たれ、その後に最低位置(0rpm)に急落するという不自然な動きとなる。これに対し、上限回転数Nlimを設定することにより、運転手に違和感を与えずにタコメータ28の指針29を制御することができるため、アイドリングストップ車両10の商品性を向上させることが可能となる。なお、図4に示す上限回転数Nlimは、エンジン12の音や振動から運転手が感じるエンジン停止のタイミングと、タコメータ28の指針29が最低位置を指し示すタイミングとが一致するように、実験やシミュレーション等に基づき設定されている。
【0023】
また、上限回転数Nlimを直近のエンジン回転数Neに基づいて設定することにより、運転手に違和感を与えることのないように、エンジン12の運転状態に合った上限回転数Nlimを設定することが可能となる。しかも、直近のエンジン回転数Neを上回る初期値を備えた上限回転数Nlimを設定することにより、エンジン回転数Neから上限回転数Nlimに対して滑らかに移行させることができ、アイドリングストップ車両10の商品性を向上させることが可能となる。
【0024】
さらに、上限回転数Nlimを用いてタコメータ28の指針29を制御することから、商品性を向上させつつ開発コストや製造コストを抑制することが可能となる。すなわち、上限回転数Nlimを用いることなく、タコメータ28の指針29を0に向けて滑らかに制御するためには、低回転領域においても細かくエンジン回転数Neを算出する必要がある。このため、低回転領域におけるパルス信号の時間間隔ΔTを短縮する必要があるが、時間間隔ΔTを短縮するためにはロータ26の大径化を図るとともに突起27の数を増やす必要があるため、艤装面やコスト面から好ましいことではない。そこで、前述したように、上限回転数Nlimを用いてタコメータ28の指針29を制御することにより、ロータ26等の構造的な変更を回避することが可能となり、開発コストや製造コストを抑制することができるのである。さらに、ロータ26を用いて得られるパルス信号は、エンジン回転数の算出だけでなく点火時期制御や燃料噴射制御にも用いられるため、パルス信号の仕様を変更することは多大な開発コストを発生させる要因となる。これに対し、前述したように上限回転数Nlimを用いることにより、従来のロータ26をそのまま利用することができるため、開発コストを抑制することが可能となる。
【0025】
ところで、アイドリングストップ車両10においては、ブレーキペダルの踏み込みが解除される等の発進動作が認められた場合に、スタータモータ17やインジェクタ18等を作動させてエンジン12を再始動させているが、この再始動判定を許可するか否かについては、表示回転数Netを用いることなく判定タイマTに基づき判定している。ここで、図5は再始動判定を許可するか否かの判定ステップを加味したタコメータ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、図6は再始動判定に伴う再始動許可フラグの設定タイミングを示す説明図である。なお、図5のフローチャートにおいて、図2のフローチャートと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
図5に示すように、ステップS9において判定タイマTが判定時間C1を上回ると判定され、ステップS10においてエンジン回転数Neが0に設定されると、続くステップS100において、判定タイマTが判定時間C2以上であるか否かが判定される。ステップS100において、判定タイマTが判定時間C2を下回ると判定された場合には、再始動判定を許可するための再始動許可フラグを設定することなくルーチンを抜ける。一方、ステップS100において、判定タイマTが判定時間C2以上と判定された場合には、ステップS101に進み、再始動許可フラグが設定されてルーチンを抜けることになる。すなわち、図5に示すように、演算周期毎にカウントされる判定タイマTが判定時間C2以上である場合、つまり新たなパルス信号を検出することなく判定時間C2を経過した場合には、再始動許可フラグが設定されることになる(符号γ)。
【0027】
このように、表示回転数Netを用いることなく判定タイマTに基づいて再始動許可フラグを設定することにより、エンジン12の停止を確実に判定することができるため、ギヤ鳴き等の不具合現象やスタータモータ17の損傷を招くことなくエンジン12の再始動が可能となる。すなわち、前述した表示回転数Netにあっては、運転手に違和感を与えることの無いように設定される値であるため、実際にエンジン12が停止する前に表示回転数Netが0となる場合も考えられる。このような表示回転数Netを再始動許可フラグの設定に用いることなく、前回のパルス信号からの経過時間を示す判定タイマTを用いることにより、エンジン12の停止を確実に判定した上でエンジン12の再始動判定を実施することが可能となる。なお、再始動許可フラグを設定するため、前述した判定時間C1とは別個の判定時間C2を設定しているが、判定時間C1を用いて再始動許可フラグの設定を判定しても良い。
【0028】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、図示するアイドリングストップ車両10は、駆動源としてエンジン12のみを備えるアイドリングストップ車両であるが、駆動源としてエンジン12および電動モータを備えるハイブリッド型のアイドリングストップ車両であっても良い。また、アイドリングストップ車両10が備える変速機13としては、自動変速機や無段変速機であっても良く、手動変速機であっても良い。
【0029】
また、前述の説明では、予め設定された複数の上限回転数Nlimから、エンジン回転数Neに応じて適切な上限回転数Nlimを選択しているが、これに限られることはなく、演算式を用いて上限回転数Nlimを設定しても良い。また、前述の説明では、直近のエンジン回転数Neに基づいて上限回転数Nlimを設定しているが、これに限られることはなく、停止許可フラグが設定されたときの判定タイマTの値に基づいて上限回転数Nlimを設定しても良い。さらに、シフトレンジ、冷却水温、エアコンディショナの使用の有無に基づいて、上限回転数Nlimを設定しても良い。さらに、停止許可フラグの設定とともに上限回転数Nlimを設定するのではなく、停止許可フラグの設定後にエンジン回転数Neが所定値を下回ってから、或いは停止許可フラグの設定から所定時間が経過してから、上限回転数Nlimを設定しても良い。
【符号の説明】
【0030】
10 アイドリングストップ車両
19 エンジン制御ユニット(回転数算出手段,アイドリングストップ
判定手段,仮想回転数設定手段,メータ制御手段,再始動判定手段)
28 タコメータ
ΔT 時間間隔
Ne エンジン回転数
Nlim 上限回転数(仮想回転数)
T 判定タイマ(経過時間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両状態に応じて自動的にエンジンを停止させるアイドリングストップ車両の制御装置であって、
エンジン回転に応じて出力されるパルス信号の時間間隔に基づいて、エンジン回転数を算出する回転数算出手段と、
車両状態に基づいて前記エンジンの停止条件が成立するか否かを判定するアイドリングストップ判定手段と、
前記エンジンの停止条件が成立すると判定された場合に、前記エンジンの仮想回転数を設定する仮想回転数設定手段と、
前記エンジン回転数が前記仮想回転数を下回る場合には、前記エンジン回転数をタコメータに表示する一方、前記エンジン回転数が前記仮想回転数を上回る場合には、前記仮想回転数を前記タコメータに表示するメータ制御手段とを有することを特徴とするアイドリングストップ車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のアイドリングストップ車両の制御装置において、
前記仮想回転数設定手段は、前記エンジンの停止条件が成立したときの前記エンジン回転数に基づいて、前記仮想回転数を設定することを特徴とするアイドリングストップ車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のアイドリングストップ車両の制御装置において、
前回のパルス信号からの経過時間に基づき前記エンジンの停止状態を判定した後に、車両状態に基づいて前記エンジンを再始動させるか否かを判定する再始動判定手段を有することを特徴とするアイドリングストップ車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31775(P2011−31775A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180919(P2009−180919)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】