アキシャルギャップ型回転電機
【課題】低速回転であっても効果的に円盤状回転子を冷却することができるアキシャルギャップ型回転電機。
【解決手段】アキシャルギャップ型回転電機は、周方向に所定間隔で配置され、かつ、磁化方向が交互に逆向きとなるように配置された複数の永久磁石103を有する円盤状回転子102と、円盤状回転子102の一方の面に対向するように配置された磁極歯111、円盤状回転子102の他方の面に対向するように配置された磁極歯111、およびそれらの磁極歯111を繋ぐコア部112を有し、円盤状回転子102の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子110と、磁極子110に巻回された巻線104と、隣接する磁極子110の間の空隙を通して、少なくとも円盤状回転子102に冷媒を放出する冷媒供給部材120と、を備える。
【解決手段】アキシャルギャップ型回転電機は、周方向に所定間隔で配置され、かつ、磁化方向が交互に逆向きとなるように配置された複数の永久磁石103を有する円盤状回転子102と、円盤状回転子102の一方の面に対向するように配置された磁極歯111、円盤状回転子102の他方の面に対向するように配置された磁極歯111、およびそれらの磁極歯111を繋ぐコア部112を有し、円盤状回転子102の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子110と、磁極子110に巻回された巻線104と、隣接する磁極子110の間の空隙を通して、少なくとも円盤状回転子102に冷媒を放出する冷媒供給部材120と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護や省エネルギの観点から電気推進船の開発が進んでいる。電機推進用電動機としては低速時に大トルクが得られる構造や、ダイレクトドライブを実現できる低速回転電機の開発が望まれている。そのような低速時に大トルクが得られる回転電機として、円盤状の回転子と、回転子に配置された永久磁石を挟み込むように配置された磁極子を有するアキシャルギャップ型回転電機が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このアキシャルギャップ型回転電機では、巻線が発熱する事により耐久信頼性が低下するといった問題が知られている。また、温度上昇に伴い永久磁石の磁力が低下する場合があるため、回転子の温度上昇を低減する必要がある。そのため、従来からアキシャルギャップ型回転電機の冷却技術が多数提案されている。
【0004】
例えば、特許文献2に記載の技術では、ロータの回転軸近傍に設けられた注入口から、ロータとステータとの間のギャップの内周側に冷媒を注入し、その冷媒をロータの回転作用を利用してロータおよびステータの全面に循環させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−243617号公報
【特許文献2】特開2007−20382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、回転子の回転を利用して冷媒を移動させているため、低速回転時には冷媒の移動速度が低下する。そのため、低速回転時には冷却性能が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るアキシャルギャップ型回転電機は、周方向に所定間隔で配置され、かつ、磁化方向が交互に逆向きとなるように配置された複数の永久磁石を有する円盤状回転子と、円盤状回転子の一方の面に対向するように配置された第1の磁極歯、円盤状回転子の他方の面に対向するように配置された第2の磁極歯、およびそれらの磁極歯を繋ぐコア部を有し、円盤状回転子の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子と、磁極子に巻回された巻線と、隣接する磁極子の間の空隙を通して、少なくとも円盤状回転子に冷媒を放出する冷媒供給部材と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、隣接する磁極子間の周方向配置のピッチ角度が、隣接する永久磁石間の周方向配置のピッチ角度の偶数倍に設定されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、隣接する2以上の前記磁極子で構成される磁極子群を複数備え、巻線を磁極子群毎に設けるとともに、該巻線の内周側に冷媒供給部材を配置したものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材を、空隙に挿入するように配置された管部材としたものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材は、空隙に挿入するように配置されて円盤状回転子に向けて冷媒を放出する第1の管部材と、空隙に挿入するように配置されて巻線に向けて冷媒を放出する第2の管部材とを備えたものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、巻線、磁極子および円盤状回転子が収納されるとともに、冷媒供給部材に冷媒を供給する冷媒流路が形成されたハウジングを備えたものである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、隣接する磁極子の間に面接触するように挟持され、冷媒流路が形成された複数の冷却ブロックを備え、複数の冷却ブロックに冷媒供給部材を配置したものである。
請求項8の発明は、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材は、円盤状回転子および巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、複数の領域の温度を測定する温度測定部と、温度測定部で測定された温度に基づいて、冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたものである。
請求項9の発明は、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材は、円盤状回転子および前記巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、複数の領域に関して回転電機の運転条件に応じた発熱量が予め記憶されている記憶部と、記憶部に記憶されている発熱量および実際の運転状態に基づいて複数の領域温度を予測し、予測に基づいて冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アキシャルギャップ型の回転電機において、低速回転であっても効果的に円盤状回転子を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】回転電機1の外観を示す斜視図である。
【図2】ハウジング2の一部を断面とした回転電機1を示す図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】磁極子110と回転子102に設けられた永久磁石103の配置を説明する図である。
【図5】図1のB−B断面図である。
【図6】冷媒供給部材120の配置を示す図である。
【図7】冷媒供給部材120の断面形状を説明する図である。
【図8】冷媒噴出管123による冷却構造を説明する図である。
【図9】冷媒噴出管122による冷却構造を説明する図である。
【図10】変形例1を示す図である。
【図11】変形例2を示す図である。
【図12】変形例3を示す図である。
【図13】変形例4を示す図である。
【図14】変形例5を示す図である。
【図15】変形例5の冷媒供給部材の配置を示す図である。
【図16】磁極子110間に設けられた補助部材130を示す図である。
【図17】回転電機における補助部材130が配置されている部分の断面を示す図である。
【図18】冷媒流路132が形成された補助部材130を説明する断面図である。
【図19】有効磁束および無効磁束を説明する図である。
【図20】第3の実施の形態を示す図である。
【図21】永久磁石103および磁極子110の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1はアキシャルギャップ型の回転電機1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す回転電機1のハウジング2の一部を断面としたものである。図3は図1のA−A断面図であり、後述する磁極子110が設けられている部分を通る断面図である。図5は図1のB−B断面図であり、後述する冷媒供給部材120の部分を通る断面図である。
【0011】
本実施の形態の回転電機1は、図2に示すように、中心が回転軸101に固定された円盤状の回転子102と、ギャップを介して回転子102を挟み込むように配置された複数の磁極子110と、複数の磁極子110のうちの隣り合う複数の磁極子110に共通して巻かれた巻線104と、それらを覆うように配置されたハウジング2と、隣り合う磁極子110間の空隙に設置された複数の冷媒供給部材120とを備えている。冷媒供給部材120は、ハウジング2の軸方向の端面2a,2bに形成された開口20に固定されている。回転子102には、複数の永久磁石103が所定間隔を空けて周方向に配置されている。回転子102が固定された回転軸101は、ハウジング2に設けられた軸受によって回転可能に支持されている。
【0012】
複数の磁極子110は、ハウジング2の周方向に沿って配置されている。図3に示すように、回転子102を挟み込むように配置された各磁極子110は、回転子102の表裏両面に対向する一対の磁極歯111とそれらを連結するコア112とを備えている。回転子102に設けられた永久磁石103は回転子102の厚さ方向に磁化されており、回転子102の一方の側がS極で他方の側がN極になっている。
【0013】
磁極子110の各磁極歯111は、回転子102の径方向に関して永久磁石103と対向する位置に配置されている。図3に示す例では、各磁極子110はハウジング2の両端面2a,2bの内周面に固定されているが、ハウジング2の側周2cの内周面に固定するようにしても良い。また、ハウジング2に磁極子110位置決め用ガイド等を設けることで、磁極子110を正確に位置決めすることが可能となる。
【0014】
本実施の形態の回転電機1では、12個の磁極子110が円周方向に設けられており、4個で一つのグループ(以下では、磁極子グループと呼ぶことにする)を形成している。巻線104は磁極子グループ毎に設けられており、図2に示す例では、巻線104は、磁極子グループに含まれる4個の磁極子110の磁極歯111を囲むように巻回されている。すなわち、一つの磁極子グループに対して2つの巻線104が設けられ、その一方は回転子102の表面側に対向する4つの磁極歯111に共通して巻回され、他方は回転子102の裏面側に対向する4つの磁極歯111に共通して巻回されている。なお、巻線104の固定方法としては、巻線104を磁極歯111に固定しても良いし、また、ハウジング2側に固定しても良い。
【0015】
図4に、磁極子110と回転子102に設けられた永久磁石103との配置を示す。なお、図2に示したように、回転電機1には3つの磁極子グループが設けられていているが、図4では、その内の一組の磁極子110と、それらに巻回された巻線104とを示した。上述したように、巻線104は裏面側の磁極歯111に対しても設けられている。
【0016】
一方、回転子102には13個の永久磁石103が設けられている。各永久磁石103は回転子102の厚さ方向に磁化されており、図4に示すように、回転方向(周方向)に隣り合う磁極が交互に逆向きとなるように、すなわちN,S,N,S,N,S,・・・となるように配置されている。同一磁極子グループ内の4つの磁極子110は、磁極子間の周方向配置のピッチ角度θ2が永久磁石間の周方向配置のピッチ角度θ1に対して2倍となるように配置されている。なお、磁極子間の周方向配置のピッチ角度とは、軸中心と磁極子110の中央とを結ぶ径方向直線が成す角度であり、永久磁石間の周方向配置のピッチ角度とは、軸中心と永久磁石103の中央とを結ぶ径方向直線が成す角度である。
【0017】
上述のように磁極子110を配置することにより、磁極子110内で磁束の流れる方向がほぼ等しくなるため巻線104を隣り合う複数の磁極子110に共通に巻くことが可能となる。ここでは、θ1に対してθ2を2倍としているが、巻線104を複数の磁極子110で共通化するためには必ずしも正確に2倍である必要はない。略2倍とすることで巻線104の共通化を行うことができ、磁極子110間にスペース的な余裕が生じる。
【0018】
巻線104に電流を供給することにより、磁極子グループ内の4つの磁極子110の一方の側の磁極歯111が全てS極に、他方の側の磁極子110の全てがN極となる。巻線104に交流電流を供給すると、例えば、図2に示した3組の巻線104に対して3相交流電流を供給すると、各磁極子グループの4つの磁極子110は、4つ揃って交番磁界を発生する。そのような交番磁界によって、永久磁石103を備えた回転子102が回転駆動されることになる。
【0019】
なお、磁極子110、巻線104、永久磁石103の数は本実施形態のものに限らない。例えば、磁極子グループを構成する磁極子110の数をここでは4としたが、4以外であっても構わない。また、磁極子110間の角度θ2をθ1の2倍(または、略2倍)としたが、偶数倍(または、略偶数倍)とすることで上述したような巻線104の共通化を行うことが可能となる。このように、本実施の形態では、磁極子110間の角度θ2をθ1の偶数倍(または、略偶数倍)としたことにより、図2に示したように磁極子110間に冷媒供給部材120を容易に配置することができる。その結果、低速回転であっても回転子102の冷却効果が低下することなく、十分な冷却を行うことができる。さらに、巻線104を共通化することで、磁極子110間に巻線104が配置されない構造となり、巻線104を内周側から冷媒により冷却することが可能となり、巻線104に関する冷却性能が向上する。
【0020】
図5,6は冷媒供給部材120の配置を示す図である。図5は図1のB−B断面図である。図6に示すように、磁極子グループを構成する4つの磁極子110の間には、冷媒供給部材120がそれぞれ3つずつ配置されている。3つの冷媒供給部材120は、巻回された巻線104の内周側に配置される巻線用の冷媒滴下管121aおよび回転子用の冷媒噴出管122と、巻線104の外周側に配置される巻線用の冷媒滴下管121bとで構成されている。
【0021】
図5に示すように、冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122の根元部分はハウジング2の両端面2a,2bに形成された開口20に固定され、配管3によって冷媒5が供給される。供給された冷媒5は、冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122の先端部から、矢印で示すように巻線104および回転子102へと供給される。本実施の形態の回転電機1は、図5のように回転軸101を水平に配置される構成であって、冷媒滴下管121bは巻線104の上方に配置される。冷媒供給部材120として冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122のいずれを用いるかは、回転電機1の取り付け姿勢に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
図7は、冷媒供給部材120の断面形状を示す図である。図7(a)は巻線用の冷媒滴下管121a,121bの一例を示したものである。回転軸方向に供給された冷媒5は、冷媒滴下管121a,121bの中で向きを変え、鉛直下方向に滴下される。図7(b)は回転子用の冷媒噴出管122の一例を示したものである。回転軸方向に供給された冷媒5は、配管内で向きを変えずに噴出される。図7(c)に示すように、冷媒噴出管122の内径を出口に向かって内径を小さく絞ることにより、噴出される冷媒の流速をより速くすることができる。
【0023】
なお、上述では、冷媒滴下管121a,121bによって巻線104に冷媒を滴下させるように構成したが、冷媒の流速を上げて噴出させるようにしても良い。図7(d)は、回転子102および巻線104への冷媒の供給を同時に行うことができる冷媒供給部材120の一例を示したものであり、例えば、これを図5の冷媒滴下管121aの位置に配置しても良い。
【0024】
本実施の形態では、冷媒5として冷却水、冷却油、液体窒素、液体ヘリウムなどのような液体冷媒を例に説明しているが、冷却ガスのような気体冷媒を用いることもできる。冷媒5が液体の場合には、回転子102や磁極子110および巻線104などに供給された冷媒5は、重力によりハウジング2の下部に流れ落ち、ハウジング2の下部に設けられた冷媒排出口4から排出される。一方、冷媒5に気体を用いた場合には、冷媒排出口4の設ける位置はハウジング2の下部に限定されない。排出された冷媒5は、図示しないポンプによって再び配管3に供給することで、冷媒5を循環させるような構成とすることができる。
【0025】
なお、冷媒滴下管121a,121b、冷媒噴出管122の配置やそれらの数は、上述したものに限るものではなく、巻線用または回転子用の冷媒供給部材120のいずれか一方のみを配置することも可能である。図8は巻線用の冷媒供給部材(冷媒噴出管123)のみを配置した場合を示したものである。冷媒噴出管123は、配管3から供給された冷媒の方向を90度曲げてから噴出する冷媒噴出管であり、巻線104の内側および外側から冷媒を噴出するような構成とした。このように巻線104に内側と外側の両側から冷媒5を供給することにより、巻線104に対して高い冷却性能を得ることができる。
【0026】
一方、図9は回転子用の冷媒供給部材(冷媒噴出管122)のみを配置した場合を示したものである。なお、冷媒噴出管122は、上述した場合と同様に巻線104の内側に挿入されるように配置されているが、回転軸101よりも鉛直上側においては冷媒噴出管122を回転子102の外周側に偏らせて配置し、回転軸101よりも鉛直下側においては冷媒噴出管122を回転子102の内周側に偏らせて配置するようにしている。このような配置とすることで、重力の影響で落下する冷媒5を回転子102の広い面積に接触させることができる。
【0027】
(変形例1)
図10は、ハウジング2に冷媒流路6を設けて、冷媒5をハウジング2の外周側から供給するように構成した場合を示す。なお、図10では、回転軸101の中心より上側を示す半断面図とした。配管3から供給された冷媒を、一つの冷媒流路6を介して複数の冷媒供給部材120に分流することで、ハウジング2に接続される配管3の数を削減することができる。また、ハウジング2内に形成された冷媒流路6に冷媒を流すことによりハウジング2自体も冷却されるので、ハウジング2を熱伝導性のよい材料で構成することにより、ハウジング2に接触して配置された磁極子110も効果的に冷却することができる。
【0028】
(変形例2)
図11は、一つの回転軸101に2枚の回転子102が設けられた場合の冷却構造の一例を示す図である。なお、図11では、回転軸101の中心より上側を示す半断面図とした。2枚の回転子102に対応させて、複数の磁極子110(不図示)および複数の巻線104が軸方向に沿って2組設けられている。図示左側に配置される磁極子110は、ハウジング2の端面2aとハウジング2の内周面に設けられたリング部材124とに固定される。一方、図示左側に配置される磁極子110は、ハウジング2の端面2bとリング部材124とに固定される。リング部材124の軸方向両端面には、冷媒供給部材120(冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122)がそれぞれ配置されている。ただし、回転子102の数は2つに限るものではなく、3以上の回転子102を一つの回転軸101に取り付ける構造においても、同様に適用することができる。
【0029】
(変形例3)
図12は変形例3を説明する図である。図10,11の場合と同様、図12の場合も半断面図とした。上述した実施形態では、ハウジング2から隣り合う磁極子110の間に延在するように冷媒供給部材120を構成したが、図12に示すように、冷媒供給部材120が磁極子110間の空隙まで延在しないような構成としても良い。この場合、冷媒供給部材120を冷媒噴出管122とし、それらは、磁極子110間の空隙に対向する位置であって、かつ、永久磁石103および巻線104に対向する位置に配置される。冷媒噴出管122から噴出された冷媒5は、永久磁石103および巻線104に吹き付けられる。
【0030】
(変形例4)
上述の実施の形態では巻線104を磁極子110の磁極歯111に設けたが、図13に示すように磁極子110のコア112の部分に巻き回すようにしても良い。図13に示す例では、巻線用の冷媒供給部材として、巻き回された巻線104の内側に冷媒噴出管125を配置し、巻線104の回転軸側の外周に対向する位置に、冷媒噴出管123を配置した。冷媒噴出管125は、供給された冷媒の方向を90度曲げて、外径方向および内径方向の2方向に噴出させる冷媒噴出管である。冷媒噴出管125から2方向に噴出された冷媒によって巻線104の内側に冷媒を吹き付けると共に、冷媒噴出管123によって巻線104の外周側に冷媒を吹き付けることにより、巻線104の冷却を向上させている。
【0031】
また、回転子用の冷媒供給部材としては、磁極子110間の永久磁石103に対向する位置に、冷媒噴出管122を配置した。これにより、永久磁石103および回転子102を効果的に冷却することができる。
【0032】
(変形例5)
上述の実施の形態では、複数の磁極子110に対して一つの巻線104を巻き回したが、図14,15に示すように複数の磁極子110のそれぞれに巻線104を設けるようにしても良い。この場合も、図4に示す場合と同様に、磁極子110間の角度θ2は永久磁石103間の角度θ1の2倍(または、略2倍)に設定されているため、磁極子110間の空隙が大きくなり、冷媒供給部材(冷媒噴出管122,125)を挿入するためのスペースを十分に確保することができる。そして、磁極子110間に形成された空隙に、冷媒供給部材を挿入するように配置する。図15に示す例では、巻線用に2つの冷媒噴出管125を配置すると共に、回転子用の冷媒噴出管122を一つ配置するようにした。冷媒噴出管125からは左右の巻線104に冷媒が噴出される。
【0033】
なお、図14,15に示す例では、一つの巻線104を複数の磁極子110に巻回す場合と同様に角度θ2をほぼθ1の2倍としているが、個別に巻線が設けられている場合には必ずしもこのように設定する必要はない。θ2<2・θ1のように設定するとともに、磁極子110の磁化の方向を交互に逆方向としても良い。さらに、永久磁石毎に磁極子110を配置する場合であっても、隣接する永久磁石103の影響を小さくするためには、ある程度空隙をあけて磁極子110を配置する必要があるため、そのように空隙をあけることで冷媒供給部材120を配置するスペースを確保することが可能となる。
【0034】
また、隣り合う巻線104間に冷媒供給部材120を挿入することができなくても、巻線104間に空隙が空いていれば、図12に示すような冷媒噴出管122を用いることで、その空隙を通して冷媒を回転子102に吹き付けることが可能である。特に、それぞれの巻線104を磁極子110のコア112に設けるような構成とすれば、回転子用の冷媒噴出管122を磁極子110間に配置し易くなる。
【0035】
−第2の実施の形態−
図16〜19は、第2の実施の形態を説明する図である。第2の実施の形態では、図16に示すように、冷媒供給部材の一部を構成する冷却ブロックである補助部材130を磁極子110間に設け、その補助部材130を介して冷媒5を供給するような構成とした。図16に示す補助部材130には貫通孔131が形成されており、その貫通孔131に冷媒噴出管122が固定されている。そのため、冷媒噴出管122をハウジング2に固定することなく、隣り合う磁極子110間の空隙に配置することができる。なお、図16は磁極子110と補助部材130のみを示した図であり、図17は回転電機において補助部材130が配置されている部分の断面図である。補助部材130の周方向端面(磁極子110に対向する面)は隣接する磁極子110に接触しており、磁極子110間の距離を規定するスペーサとしての機能も有している。
【0036】
なお、図17に示す例では、回転子102用の冷媒供給部材120(冷媒噴出管122)のみを設けているが、貫通孔131をさらに設けて、その貫通孔131に巻線用の冷媒供給部材120を固定するようにしてもよい。また、一つの冷媒供給部材120の先端部分に、回転子用の噴出口および巻線用の噴出口を設けるようにしても良い。さらに、冷媒供給部材120と補助部材130とを一体に形成するようにしても良い。
【0037】
図18に示す他の例では、補助部材130の内部に冷媒流路132が形成されている。冷媒流路132には、巻線104および永久磁石103と対向する位置に冷媒放出部132a,132bが形成されており、それらの冷媒放出部132a,132bから巻線104および永久磁石103に向けて冷媒が放出される。なお、冷媒流路132の出口に冷媒滴下管121a,121bや冷媒噴出管122を冷媒放出部として固定するようにしても良い。
【0038】
また、本実施の形態では、図17,18に示すように、内部に冷媒を流している補助部材130を、磁極子110と面接触させているので、磁極子110で発生した熱が補助部材130を介して冷媒へと放熱される。特に、図18に示す構成の場合には、補助部材130の内部に冷媒流路132が形成されているため補助部材130がより冷却され易く、磁極子110の冷却効率に優れている。補助部材130の材料としては、圧粉磁心や電磁鋼板などの磁性体材料や、アルミニウム、ステンレス、樹脂などが用いられるが、冷却性の点では金属を用いるのが好ましい。
【0039】
さらに、補助部材130を磁性体で構成した場合、磁気回路の磁気抵抗が低下するため、アキシャルギャップ型の回転電機1をより小型化することができる。ただし、補助部材130の形状を、図16に示すように、無効な磁束の影響を受けない形状とするのが好ましい。図19は有効磁束および無効磁束を説明する図であり、図17のC−C断面を示したものである。図19(a)は補助部材130が好ましい形状である場合(本実施の形態の場合)を示し、図19(b)は好ましくない形状を示したものである。
【0040】
図19では、回転方向(周方向)に並べられた複数の永久磁石103の内、図示上側がN極となるように磁化された永久磁石を符号103aで示し、図示下側がN極となるように磁化された永久磁石を符号103bで示した。図19に示したタイミングでは、共通の巻線104が設けられた4つの磁極子110は、図示上側の磁極歯111がS極で下側の磁極は111がN極となっている。そして、次のタイミングでは図示上側の磁極歯111がN極で下側の磁極は111がS極となる。
【0041】
永久磁石103aの磁束の方向は太線矢印で示すように上向きとなっており、永久磁石103bの磁束の方向は細線矢印で示すように下向きとなっている。そして、図19に示す配置の場合、上向きの磁石磁束が有効な磁束となり、下向きの磁石磁束が無効な磁束となる。そのため、補助部材130を磁性体材料で構成する場合には、図19(a)に示すように補助部材130(130a)の永久磁石103に対向する部分を、永久磁石103から十分に離し、無効な磁束(下向きの磁石磁磁束)を補助部材130が拾わないようにすることが重要である。一方、図19(b)に示す補助部材130bのように永久磁石103に対向した部分が永久磁石103に近い場合には、無効磁束の影響を受けやすく効率が低下する。
【0042】
−第3の実施の形態−
図20は、冷媒5の供給方法の一例を示す図である。冷媒5には冷却油のような液体が用いられ、ハウジング2の冷媒排出口4から排出された冷媒5は、冷媒タンク506へと回収される。冷媒タンク506の冷媒5は、冷媒送液用ポンプ504によって再び冷媒供給部材120に接続された配管3へと送られ、冷媒供給部材120に供給される。冷媒送液用ポンプ504はモータ505によって回転駆動される。
【0043】
冷媒送液用ポンプ504と各配管3との間の冷媒経路507には、各冷媒供給部材120から噴出または滴下される冷媒5の流量を制御するための流量調整弁503a〜503cがそれぞれ設けられている。例えば、冷媒送液用ポンプ504の吐出量を調整することによりトータルの冷媒供給量を調整することができ、また、各流量調整弁503a〜503cの調整量を変更することにより、各冷媒供給部材120による冷媒供給量を個別に調整することができる。
【0044】
各流量調整弁503a〜503cは制御部501によって制御される。制御部501には温度センサ502の検出値が入力される。図20では、温度センサ502を一つしか記載していないが実際には複数設けられ、回転子102や永久磁石103や磁極子110や巻線104等の計測が行われる。温度センサ502には、計測対象に応じて熱電対や赤外線センサ等が用いられる。
【0045】
回転電機1の運転状態によっては、巻線104や回転子102の発熱に分布ができる場合がある。そこで、制御部501は、温度センサ502によって計測された各部の温度に応じて、各冷媒供給部材120に関して設けられた流量調整弁503a〜503cの絞り量を調整する。これにより、発熱が小さい個所の冷媒供給部材120に対する冷媒5の供給量を少なくして、発熱が大きい個所の冷媒供給部材120に対する冷媒5の供給量を多くすることが可能となり、冷却効率を上げることができる。例えば、永久磁石103の温度が管理温度範囲よりも高くなった場合には、流量調整弁503bの絞りを開けて冷媒噴出管122から回転子102方向に噴出される冷媒5の流量を増加させる。
【0046】
なお、図20に示す例では、複数の冷媒供給部材120の各々に流量調整弁を設けているが、複数の冷媒供給部材120をいくつかのグループに分けて、そのグループ毎に冷媒流量を調整するようにしても良い。
【0047】
また、温度センサ等によって実際に温度計測を行う代わりに、運転条件(電流値や回転数などの条件)に応じた発熱量を予めシミュレーションや実験等によって求めておき、その結果を制御部501の記憶部501aに記憶させておく。そして、実際の運転状態においては、記憶されたデータと実際の運転条件に基づいて温度を予測し、その予測値に基づいて流量調整弁503a〜503cの絞り量を調整するようにしても良い。
【0048】
上述した実施の形態では、図4に示すように、永久磁石103の磁化方向を、回転子102の厚さ方向と一致させるようにしたが、図21に示すように、回転方向に隣り合う永久磁石103の磁極を向かい合うように配置させるようにしても良い。図21(a)は回転子102に取り付けられた永久磁石103の配置図であり、回転子102の一部を回転軸101の軸方向から見た図である。図21(b)は、回転子102および磁極子110を回転方向(周方向)に断面した断面図であり、断面の一部のみを示した。
【0049】
図21(b)に示すように、永久磁石103は周期P(永久磁石103の中央を通る円上での周期)で周方向に交互に配置され、隣接する永久磁石103は同一磁極同士が向かい合うように配置されている。磁極子110に設けられた2つの磁極歯111は、周方向(図示左右方向)に距離bだけずれるように形成されている。図21に示す例では、距離bは、永久磁石103の周期Pとほぼ同一値に設定されている。このように永久磁石103の同一磁極同士を向かい合わせるように配置することで、一つの永久磁石103に用いられる材料の使用量を、図4の場合に比べて低減することができる。
【0050】
上述した実施の形態においては、以下に示すような作用効果を奏することができる。
アキシャルギャップ型の回転電機1は、複数の永久磁石103を有する円盤状の回転子102と、回転子102の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子110と、磁極子110に巻回された巻線104と、を備えている。磁極子110は、回転子102の一方の面に対向するように配置された磁極歯111、回転子102の他方の面に対向するように配置された磁極歯111、およびそれらの磁極歯111を繋ぐコア112を有している。そして、本実施の形態では、隣接する磁極子110の間の空隙を通して、少なくとも回転子102に冷媒を放出する冷媒供給部材120をさらに備えている。
【0051】
このように、回転子102の周方向に沿って間隔を空けて複数の磁極子110を配設するとともに、隣接する磁極子110の間の空隙を通して冷媒供給部材120から冷媒を放出するようにしたので、低速回転であっても回転子102の冷却効果が低下することなく、十分な冷却を行うことができる。冷媒供給部材120としては、図5に示すような管部材である冷媒滴下管121aや冷媒噴出管122を空隙に挿入するように配置し、冷媒滴下管121aの冷媒により巻線104を冷却し、冷媒噴出管122の冷媒により回転子102を冷却するようにしても良い。
【0052】
また、図4に示すように、隣接する磁極子110間の周方向配置のピッチ角度θ2を、隣接する永久磁石103間の周方向配置のピッチ角度θ1の偶数倍または略偶数倍に設定することで、磁極子110間に十分な空隙が形成される。その結果、磁極子110間に冷媒供給部材120や補助部材130を配置することが容易となる。
【0053】
さらに、ピッチ角度θ1,θ2を上述のように設定し、隣接する2以上の磁極子110で構成される複数の磁極子群を形成し、巻線104を磁極子群毎に設けるようにしても良い。この場合、図4に示すように巻線104は磁極子群を構成する磁極子110の全体に対して巻回されるので、磁極子群の隣接する磁極子110間には巻線104は配置されず、十分な空隙が形成される。そのため、巻線104の内周側に冷媒供給部材120(冷媒噴出管122や冷媒滴下管121a)を配置することで巻線104を内周側からも冷却することが可能となり、巻線104の冷却性能の向上を図ることができる。
【0054】
また、図10,11に示すように、巻線104が巻回された磁極子110および回転子102が収納されるハウジング2に冷媒流路6を形成し、その冷媒流路6を介して冷媒供給部材120に冷媒を供給するようにしても良い。そうすることで、ハウジング2に接続される配管3の数を削減することができる。また、磁極子110をハウジング2に接触して配置した場合、冷媒流路6を流れる冷媒によりハウジング2が冷却され、そのハウジング2によって磁極子110が冷却される。
【0055】
さらにまた、冷媒供給部材として、図16〜18に示すような補助部材130を、隣接する磁極子110の各々に面接触するように磁極子110間に配置するようにしても良い。補助部材130には、回転子102に冷媒を放出する冷媒噴出管122を設けたり(図17参照)、図18に示すように冷媒流路132および冷媒放出部132a,132bを設けたりすることで、回転子102や巻線104に冷媒を供給することができる。その結果、回転子102や巻線104が冷媒により直接冷却されると共に、磁極子110は面接触している補助部材130によって冷却される。
【0056】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。さらに、艦船推進用や鉄道車両用の電動機として本発明のアキシャルギャップ型の回転電機1を用いることで、減速機を必要としないダイレクトドライブが実現可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1:回転電機、2:ハウジング、5:冷媒、6,132:冷媒流路、102:回転子、103:永久磁石、104:巻線、110:磁極子、111:磁極歯、112:コア、120:冷媒供給部材、121a,121b:冷媒滴下管、122,123,125:冷媒噴出管、130,130a,130b:補助部材、132a,132b:冷媒放出部、501:制御部、501a:記憶部、502:温度センサ、503a〜503c:流量調整弁、507:冷媒経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護や省エネルギの観点から電気推進船の開発が進んでいる。電機推進用電動機としては低速時に大トルクが得られる構造や、ダイレクトドライブを実現できる低速回転電機の開発が望まれている。そのような低速時に大トルクが得られる回転電機として、円盤状の回転子と、回転子に配置された永久磁石を挟み込むように配置された磁極子を有するアキシャルギャップ型回転電機が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このアキシャルギャップ型回転電機では、巻線が発熱する事により耐久信頼性が低下するといった問題が知られている。また、温度上昇に伴い永久磁石の磁力が低下する場合があるため、回転子の温度上昇を低減する必要がある。そのため、従来からアキシャルギャップ型回転電機の冷却技術が多数提案されている。
【0004】
例えば、特許文献2に記載の技術では、ロータの回転軸近傍に設けられた注入口から、ロータとステータとの間のギャップの内周側に冷媒を注入し、その冷媒をロータの回転作用を利用してロータおよびステータの全面に循環させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−243617号公報
【特許文献2】特開2007−20382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、回転子の回転を利用して冷媒を移動させているため、低速回転時には冷媒の移動速度が低下する。そのため、低速回転時には冷却性能が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るアキシャルギャップ型回転電機は、周方向に所定間隔で配置され、かつ、磁化方向が交互に逆向きとなるように配置された複数の永久磁石を有する円盤状回転子と、円盤状回転子の一方の面に対向するように配置された第1の磁極歯、円盤状回転子の他方の面に対向するように配置された第2の磁極歯、およびそれらの磁極歯を繋ぐコア部を有し、円盤状回転子の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子と、磁極子に巻回された巻線と、隣接する磁極子の間の空隙を通して、少なくとも円盤状回転子に冷媒を放出する冷媒供給部材と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、隣接する磁極子間の周方向配置のピッチ角度が、隣接する永久磁石間の周方向配置のピッチ角度の偶数倍に設定されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、隣接する2以上の前記磁極子で構成される磁極子群を複数備え、巻線を磁極子群毎に設けるとともに、該巻線の内周側に冷媒供給部材を配置したものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材を、空隙に挿入するように配置された管部材としたものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材は、空隙に挿入するように配置されて円盤状回転子に向けて冷媒を放出する第1の管部材と、空隙に挿入するように配置されて巻線に向けて冷媒を放出する第2の管部材とを備えたものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、巻線、磁極子および円盤状回転子が収納されるとともに、冷媒供給部材に冷媒を供給する冷媒流路が形成されたハウジングを備えたものである。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、隣接する磁極子の間に面接触するように挟持され、冷媒流路が形成された複数の冷却ブロックを備え、複数の冷却ブロックに冷媒供給部材を配置したものである。
請求項8の発明は、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材は、円盤状回転子および巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、複数の領域の温度を測定する温度測定部と、温度測定部で測定された温度に基づいて、冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたものである。
請求項9の発明は、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、冷媒供給部材は、円盤状回転子および前記巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、複数の領域に関して回転電機の運転条件に応じた発熱量が予め記憶されている記憶部と、記憶部に記憶されている発熱量および実際の運転状態に基づいて複数の領域温度を予測し、予測に基づいて冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アキシャルギャップ型の回転電機において、低速回転であっても効果的に円盤状回転子を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】回転電機1の外観を示す斜視図である。
【図2】ハウジング2の一部を断面とした回転電機1を示す図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】磁極子110と回転子102に設けられた永久磁石103の配置を説明する図である。
【図5】図1のB−B断面図である。
【図6】冷媒供給部材120の配置を示す図である。
【図7】冷媒供給部材120の断面形状を説明する図である。
【図8】冷媒噴出管123による冷却構造を説明する図である。
【図9】冷媒噴出管122による冷却構造を説明する図である。
【図10】変形例1を示す図である。
【図11】変形例2を示す図である。
【図12】変形例3を示す図である。
【図13】変形例4を示す図である。
【図14】変形例5を示す図である。
【図15】変形例5の冷媒供給部材の配置を示す図である。
【図16】磁極子110間に設けられた補助部材130を示す図である。
【図17】回転電機における補助部材130が配置されている部分の断面を示す図である。
【図18】冷媒流路132が形成された補助部材130を説明する断面図である。
【図19】有効磁束および無効磁束を説明する図である。
【図20】第3の実施の形態を示す図である。
【図21】永久磁石103および磁極子110の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1はアキシャルギャップ型の回転電機1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す回転電機1のハウジング2の一部を断面としたものである。図3は図1のA−A断面図であり、後述する磁極子110が設けられている部分を通る断面図である。図5は図1のB−B断面図であり、後述する冷媒供給部材120の部分を通る断面図である。
【0011】
本実施の形態の回転電機1は、図2に示すように、中心が回転軸101に固定された円盤状の回転子102と、ギャップを介して回転子102を挟み込むように配置された複数の磁極子110と、複数の磁極子110のうちの隣り合う複数の磁極子110に共通して巻かれた巻線104と、それらを覆うように配置されたハウジング2と、隣り合う磁極子110間の空隙に設置された複数の冷媒供給部材120とを備えている。冷媒供給部材120は、ハウジング2の軸方向の端面2a,2bに形成された開口20に固定されている。回転子102には、複数の永久磁石103が所定間隔を空けて周方向に配置されている。回転子102が固定された回転軸101は、ハウジング2に設けられた軸受によって回転可能に支持されている。
【0012】
複数の磁極子110は、ハウジング2の周方向に沿って配置されている。図3に示すように、回転子102を挟み込むように配置された各磁極子110は、回転子102の表裏両面に対向する一対の磁極歯111とそれらを連結するコア112とを備えている。回転子102に設けられた永久磁石103は回転子102の厚さ方向に磁化されており、回転子102の一方の側がS極で他方の側がN極になっている。
【0013】
磁極子110の各磁極歯111は、回転子102の径方向に関して永久磁石103と対向する位置に配置されている。図3に示す例では、各磁極子110はハウジング2の両端面2a,2bの内周面に固定されているが、ハウジング2の側周2cの内周面に固定するようにしても良い。また、ハウジング2に磁極子110位置決め用ガイド等を設けることで、磁極子110を正確に位置決めすることが可能となる。
【0014】
本実施の形態の回転電機1では、12個の磁極子110が円周方向に設けられており、4個で一つのグループ(以下では、磁極子グループと呼ぶことにする)を形成している。巻線104は磁極子グループ毎に設けられており、図2に示す例では、巻線104は、磁極子グループに含まれる4個の磁極子110の磁極歯111を囲むように巻回されている。すなわち、一つの磁極子グループに対して2つの巻線104が設けられ、その一方は回転子102の表面側に対向する4つの磁極歯111に共通して巻回され、他方は回転子102の裏面側に対向する4つの磁極歯111に共通して巻回されている。なお、巻線104の固定方法としては、巻線104を磁極歯111に固定しても良いし、また、ハウジング2側に固定しても良い。
【0015】
図4に、磁極子110と回転子102に設けられた永久磁石103との配置を示す。なお、図2に示したように、回転電機1には3つの磁極子グループが設けられていているが、図4では、その内の一組の磁極子110と、それらに巻回された巻線104とを示した。上述したように、巻線104は裏面側の磁極歯111に対しても設けられている。
【0016】
一方、回転子102には13個の永久磁石103が設けられている。各永久磁石103は回転子102の厚さ方向に磁化されており、図4に示すように、回転方向(周方向)に隣り合う磁極が交互に逆向きとなるように、すなわちN,S,N,S,N,S,・・・となるように配置されている。同一磁極子グループ内の4つの磁極子110は、磁極子間の周方向配置のピッチ角度θ2が永久磁石間の周方向配置のピッチ角度θ1に対して2倍となるように配置されている。なお、磁極子間の周方向配置のピッチ角度とは、軸中心と磁極子110の中央とを結ぶ径方向直線が成す角度であり、永久磁石間の周方向配置のピッチ角度とは、軸中心と永久磁石103の中央とを結ぶ径方向直線が成す角度である。
【0017】
上述のように磁極子110を配置することにより、磁極子110内で磁束の流れる方向がほぼ等しくなるため巻線104を隣り合う複数の磁極子110に共通に巻くことが可能となる。ここでは、θ1に対してθ2を2倍としているが、巻線104を複数の磁極子110で共通化するためには必ずしも正確に2倍である必要はない。略2倍とすることで巻線104の共通化を行うことができ、磁極子110間にスペース的な余裕が生じる。
【0018】
巻線104に電流を供給することにより、磁極子グループ内の4つの磁極子110の一方の側の磁極歯111が全てS極に、他方の側の磁極子110の全てがN極となる。巻線104に交流電流を供給すると、例えば、図2に示した3組の巻線104に対して3相交流電流を供給すると、各磁極子グループの4つの磁極子110は、4つ揃って交番磁界を発生する。そのような交番磁界によって、永久磁石103を備えた回転子102が回転駆動されることになる。
【0019】
なお、磁極子110、巻線104、永久磁石103の数は本実施形態のものに限らない。例えば、磁極子グループを構成する磁極子110の数をここでは4としたが、4以外であっても構わない。また、磁極子110間の角度θ2をθ1の2倍(または、略2倍)としたが、偶数倍(または、略偶数倍)とすることで上述したような巻線104の共通化を行うことが可能となる。このように、本実施の形態では、磁極子110間の角度θ2をθ1の偶数倍(または、略偶数倍)としたことにより、図2に示したように磁極子110間に冷媒供給部材120を容易に配置することができる。その結果、低速回転であっても回転子102の冷却効果が低下することなく、十分な冷却を行うことができる。さらに、巻線104を共通化することで、磁極子110間に巻線104が配置されない構造となり、巻線104を内周側から冷媒により冷却することが可能となり、巻線104に関する冷却性能が向上する。
【0020】
図5,6は冷媒供給部材120の配置を示す図である。図5は図1のB−B断面図である。図6に示すように、磁極子グループを構成する4つの磁極子110の間には、冷媒供給部材120がそれぞれ3つずつ配置されている。3つの冷媒供給部材120は、巻回された巻線104の内周側に配置される巻線用の冷媒滴下管121aおよび回転子用の冷媒噴出管122と、巻線104の外周側に配置される巻線用の冷媒滴下管121bとで構成されている。
【0021】
図5に示すように、冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122の根元部分はハウジング2の両端面2a,2bに形成された開口20に固定され、配管3によって冷媒5が供給される。供給された冷媒5は、冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122の先端部から、矢印で示すように巻線104および回転子102へと供給される。本実施の形態の回転電機1は、図5のように回転軸101を水平に配置される構成であって、冷媒滴下管121bは巻線104の上方に配置される。冷媒供給部材120として冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122のいずれを用いるかは、回転電機1の取り付け姿勢に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
図7は、冷媒供給部材120の断面形状を示す図である。図7(a)は巻線用の冷媒滴下管121a,121bの一例を示したものである。回転軸方向に供給された冷媒5は、冷媒滴下管121a,121bの中で向きを変え、鉛直下方向に滴下される。図7(b)は回転子用の冷媒噴出管122の一例を示したものである。回転軸方向に供給された冷媒5は、配管内で向きを変えずに噴出される。図7(c)に示すように、冷媒噴出管122の内径を出口に向かって内径を小さく絞ることにより、噴出される冷媒の流速をより速くすることができる。
【0023】
なお、上述では、冷媒滴下管121a,121bによって巻線104に冷媒を滴下させるように構成したが、冷媒の流速を上げて噴出させるようにしても良い。図7(d)は、回転子102および巻線104への冷媒の供給を同時に行うことができる冷媒供給部材120の一例を示したものであり、例えば、これを図5の冷媒滴下管121aの位置に配置しても良い。
【0024】
本実施の形態では、冷媒5として冷却水、冷却油、液体窒素、液体ヘリウムなどのような液体冷媒を例に説明しているが、冷却ガスのような気体冷媒を用いることもできる。冷媒5が液体の場合には、回転子102や磁極子110および巻線104などに供給された冷媒5は、重力によりハウジング2の下部に流れ落ち、ハウジング2の下部に設けられた冷媒排出口4から排出される。一方、冷媒5に気体を用いた場合には、冷媒排出口4の設ける位置はハウジング2の下部に限定されない。排出された冷媒5は、図示しないポンプによって再び配管3に供給することで、冷媒5を循環させるような構成とすることができる。
【0025】
なお、冷媒滴下管121a,121b、冷媒噴出管122の配置やそれらの数は、上述したものに限るものではなく、巻線用または回転子用の冷媒供給部材120のいずれか一方のみを配置することも可能である。図8は巻線用の冷媒供給部材(冷媒噴出管123)のみを配置した場合を示したものである。冷媒噴出管123は、配管3から供給された冷媒の方向を90度曲げてから噴出する冷媒噴出管であり、巻線104の内側および外側から冷媒を噴出するような構成とした。このように巻線104に内側と外側の両側から冷媒5を供給することにより、巻線104に対して高い冷却性能を得ることができる。
【0026】
一方、図9は回転子用の冷媒供給部材(冷媒噴出管122)のみを配置した場合を示したものである。なお、冷媒噴出管122は、上述した場合と同様に巻線104の内側に挿入されるように配置されているが、回転軸101よりも鉛直上側においては冷媒噴出管122を回転子102の外周側に偏らせて配置し、回転軸101よりも鉛直下側においては冷媒噴出管122を回転子102の内周側に偏らせて配置するようにしている。このような配置とすることで、重力の影響で落下する冷媒5を回転子102の広い面積に接触させることができる。
【0027】
(変形例1)
図10は、ハウジング2に冷媒流路6を設けて、冷媒5をハウジング2の外周側から供給するように構成した場合を示す。なお、図10では、回転軸101の中心より上側を示す半断面図とした。配管3から供給された冷媒を、一つの冷媒流路6を介して複数の冷媒供給部材120に分流することで、ハウジング2に接続される配管3の数を削減することができる。また、ハウジング2内に形成された冷媒流路6に冷媒を流すことによりハウジング2自体も冷却されるので、ハウジング2を熱伝導性のよい材料で構成することにより、ハウジング2に接触して配置された磁極子110も効果的に冷却することができる。
【0028】
(変形例2)
図11は、一つの回転軸101に2枚の回転子102が設けられた場合の冷却構造の一例を示す図である。なお、図11では、回転軸101の中心より上側を示す半断面図とした。2枚の回転子102に対応させて、複数の磁極子110(不図示)および複数の巻線104が軸方向に沿って2組設けられている。図示左側に配置される磁極子110は、ハウジング2の端面2aとハウジング2の内周面に設けられたリング部材124とに固定される。一方、図示左側に配置される磁極子110は、ハウジング2の端面2bとリング部材124とに固定される。リング部材124の軸方向両端面には、冷媒供給部材120(冷媒滴下管121a,121bおよび冷媒噴出管122)がそれぞれ配置されている。ただし、回転子102の数は2つに限るものではなく、3以上の回転子102を一つの回転軸101に取り付ける構造においても、同様に適用することができる。
【0029】
(変形例3)
図12は変形例3を説明する図である。図10,11の場合と同様、図12の場合も半断面図とした。上述した実施形態では、ハウジング2から隣り合う磁極子110の間に延在するように冷媒供給部材120を構成したが、図12に示すように、冷媒供給部材120が磁極子110間の空隙まで延在しないような構成としても良い。この場合、冷媒供給部材120を冷媒噴出管122とし、それらは、磁極子110間の空隙に対向する位置であって、かつ、永久磁石103および巻線104に対向する位置に配置される。冷媒噴出管122から噴出された冷媒5は、永久磁石103および巻線104に吹き付けられる。
【0030】
(変形例4)
上述の実施の形態では巻線104を磁極子110の磁極歯111に設けたが、図13に示すように磁極子110のコア112の部分に巻き回すようにしても良い。図13に示す例では、巻線用の冷媒供給部材として、巻き回された巻線104の内側に冷媒噴出管125を配置し、巻線104の回転軸側の外周に対向する位置に、冷媒噴出管123を配置した。冷媒噴出管125は、供給された冷媒の方向を90度曲げて、外径方向および内径方向の2方向に噴出させる冷媒噴出管である。冷媒噴出管125から2方向に噴出された冷媒によって巻線104の内側に冷媒を吹き付けると共に、冷媒噴出管123によって巻線104の外周側に冷媒を吹き付けることにより、巻線104の冷却を向上させている。
【0031】
また、回転子用の冷媒供給部材としては、磁極子110間の永久磁石103に対向する位置に、冷媒噴出管122を配置した。これにより、永久磁石103および回転子102を効果的に冷却することができる。
【0032】
(変形例5)
上述の実施の形態では、複数の磁極子110に対して一つの巻線104を巻き回したが、図14,15に示すように複数の磁極子110のそれぞれに巻線104を設けるようにしても良い。この場合も、図4に示す場合と同様に、磁極子110間の角度θ2は永久磁石103間の角度θ1の2倍(または、略2倍)に設定されているため、磁極子110間の空隙が大きくなり、冷媒供給部材(冷媒噴出管122,125)を挿入するためのスペースを十分に確保することができる。そして、磁極子110間に形成された空隙に、冷媒供給部材を挿入するように配置する。図15に示す例では、巻線用に2つの冷媒噴出管125を配置すると共に、回転子用の冷媒噴出管122を一つ配置するようにした。冷媒噴出管125からは左右の巻線104に冷媒が噴出される。
【0033】
なお、図14,15に示す例では、一つの巻線104を複数の磁極子110に巻回す場合と同様に角度θ2をほぼθ1の2倍としているが、個別に巻線が設けられている場合には必ずしもこのように設定する必要はない。θ2<2・θ1のように設定するとともに、磁極子110の磁化の方向を交互に逆方向としても良い。さらに、永久磁石毎に磁極子110を配置する場合であっても、隣接する永久磁石103の影響を小さくするためには、ある程度空隙をあけて磁極子110を配置する必要があるため、そのように空隙をあけることで冷媒供給部材120を配置するスペースを確保することが可能となる。
【0034】
また、隣り合う巻線104間に冷媒供給部材120を挿入することができなくても、巻線104間に空隙が空いていれば、図12に示すような冷媒噴出管122を用いることで、その空隙を通して冷媒を回転子102に吹き付けることが可能である。特に、それぞれの巻線104を磁極子110のコア112に設けるような構成とすれば、回転子用の冷媒噴出管122を磁極子110間に配置し易くなる。
【0035】
−第2の実施の形態−
図16〜19は、第2の実施の形態を説明する図である。第2の実施の形態では、図16に示すように、冷媒供給部材の一部を構成する冷却ブロックである補助部材130を磁極子110間に設け、その補助部材130を介して冷媒5を供給するような構成とした。図16に示す補助部材130には貫通孔131が形成されており、その貫通孔131に冷媒噴出管122が固定されている。そのため、冷媒噴出管122をハウジング2に固定することなく、隣り合う磁極子110間の空隙に配置することができる。なお、図16は磁極子110と補助部材130のみを示した図であり、図17は回転電機において補助部材130が配置されている部分の断面図である。補助部材130の周方向端面(磁極子110に対向する面)は隣接する磁極子110に接触しており、磁極子110間の距離を規定するスペーサとしての機能も有している。
【0036】
なお、図17に示す例では、回転子102用の冷媒供給部材120(冷媒噴出管122)のみを設けているが、貫通孔131をさらに設けて、その貫通孔131に巻線用の冷媒供給部材120を固定するようにしてもよい。また、一つの冷媒供給部材120の先端部分に、回転子用の噴出口および巻線用の噴出口を設けるようにしても良い。さらに、冷媒供給部材120と補助部材130とを一体に形成するようにしても良い。
【0037】
図18に示す他の例では、補助部材130の内部に冷媒流路132が形成されている。冷媒流路132には、巻線104および永久磁石103と対向する位置に冷媒放出部132a,132bが形成されており、それらの冷媒放出部132a,132bから巻線104および永久磁石103に向けて冷媒が放出される。なお、冷媒流路132の出口に冷媒滴下管121a,121bや冷媒噴出管122を冷媒放出部として固定するようにしても良い。
【0038】
また、本実施の形態では、図17,18に示すように、内部に冷媒を流している補助部材130を、磁極子110と面接触させているので、磁極子110で発生した熱が補助部材130を介して冷媒へと放熱される。特に、図18に示す構成の場合には、補助部材130の内部に冷媒流路132が形成されているため補助部材130がより冷却され易く、磁極子110の冷却効率に優れている。補助部材130の材料としては、圧粉磁心や電磁鋼板などの磁性体材料や、アルミニウム、ステンレス、樹脂などが用いられるが、冷却性の点では金属を用いるのが好ましい。
【0039】
さらに、補助部材130を磁性体で構成した場合、磁気回路の磁気抵抗が低下するため、アキシャルギャップ型の回転電機1をより小型化することができる。ただし、補助部材130の形状を、図16に示すように、無効な磁束の影響を受けない形状とするのが好ましい。図19は有効磁束および無効磁束を説明する図であり、図17のC−C断面を示したものである。図19(a)は補助部材130が好ましい形状である場合(本実施の形態の場合)を示し、図19(b)は好ましくない形状を示したものである。
【0040】
図19では、回転方向(周方向)に並べられた複数の永久磁石103の内、図示上側がN極となるように磁化された永久磁石を符号103aで示し、図示下側がN極となるように磁化された永久磁石を符号103bで示した。図19に示したタイミングでは、共通の巻線104が設けられた4つの磁極子110は、図示上側の磁極歯111がS極で下側の磁極は111がN極となっている。そして、次のタイミングでは図示上側の磁極歯111がN極で下側の磁極は111がS極となる。
【0041】
永久磁石103aの磁束の方向は太線矢印で示すように上向きとなっており、永久磁石103bの磁束の方向は細線矢印で示すように下向きとなっている。そして、図19に示す配置の場合、上向きの磁石磁束が有効な磁束となり、下向きの磁石磁束が無効な磁束となる。そのため、補助部材130を磁性体材料で構成する場合には、図19(a)に示すように補助部材130(130a)の永久磁石103に対向する部分を、永久磁石103から十分に離し、無効な磁束(下向きの磁石磁磁束)を補助部材130が拾わないようにすることが重要である。一方、図19(b)に示す補助部材130bのように永久磁石103に対向した部分が永久磁石103に近い場合には、無効磁束の影響を受けやすく効率が低下する。
【0042】
−第3の実施の形態−
図20は、冷媒5の供給方法の一例を示す図である。冷媒5には冷却油のような液体が用いられ、ハウジング2の冷媒排出口4から排出された冷媒5は、冷媒タンク506へと回収される。冷媒タンク506の冷媒5は、冷媒送液用ポンプ504によって再び冷媒供給部材120に接続された配管3へと送られ、冷媒供給部材120に供給される。冷媒送液用ポンプ504はモータ505によって回転駆動される。
【0043】
冷媒送液用ポンプ504と各配管3との間の冷媒経路507には、各冷媒供給部材120から噴出または滴下される冷媒5の流量を制御するための流量調整弁503a〜503cがそれぞれ設けられている。例えば、冷媒送液用ポンプ504の吐出量を調整することによりトータルの冷媒供給量を調整することができ、また、各流量調整弁503a〜503cの調整量を変更することにより、各冷媒供給部材120による冷媒供給量を個別に調整することができる。
【0044】
各流量調整弁503a〜503cは制御部501によって制御される。制御部501には温度センサ502の検出値が入力される。図20では、温度センサ502を一つしか記載していないが実際には複数設けられ、回転子102や永久磁石103や磁極子110や巻線104等の計測が行われる。温度センサ502には、計測対象に応じて熱電対や赤外線センサ等が用いられる。
【0045】
回転電機1の運転状態によっては、巻線104や回転子102の発熱に分布ができる場合がある。そこで、制御部501は、温度センサ502によって計測された各部の温度に応じて、各冷媒供給部材120に関して設けられた流量調整弁503a〜503cの絞り量を調整する。これにより、発熱が小さい個所の冷媒供給部材120に対する冷媒5の供給量を少なくして、発熱が大きい個所の冷媒供給部材120に対する冷媒5の供給量を多くすることが可能となり、冷却効率を上げることができる。例えば、永久磁石103の温度が管理温度範囲よりも高くなった場合には、流量調整弁503bの絞りを開けて冷媒噴出管122から回転子102方向に噴出される冷媒5の流量を増加させる。
【0046】
なお、図20に示す例では、複数の冷媒供給部材120の各々に流量調整弁を設けているが、複数の冷媒供給部材120をいくつかのグループに分けて、そのグループ毎に冷媒流量を調整するようにしても良い。
【0047】
また、温度センサ等によって実際に温度計測を行う代わりに、運転条件(電流値や回転数などの条件)に応じた発熱量を予めシミュレーションや実験等によって求めておき、その結果を制御部501の記憶部501aに記憶させておく。そして、実際の運転状態においては、記憶されたデータと実際の運転条件に基づいて温度を予測し、その予測値に基づいて流量調整弁503a〜503cの絞り量を調整するようにしても良い。
【0048】
上述した実施の形態では、図4に示すように、永久磁石103の磁化方向を、回転子102の厚さ方向と一致させるようにしたが、図21に示すように、回転方向に隣り合う永久磁石103の磁極を向かい合うように配置させるようにしても良い。図21(a)は回転子102に取り付けられた永久磁石103の配置図であり、回転子102の一部を回転軸101の軸方向から見た図である。図21(b)は、回転子102および磁極子110を回転方向(周方向)に断面した断面図であり、断面の一部のみを示した。
【0049】
図21(b)に示すように、永久磁石103は周期P(永久磁石103の中央を通る円上での周期)で周方向に交互に配置され、隣接する永久磁石103は同一磁極同士が向かい合うように配置されている。磁極子110に設けられた2つの磁極歯111は、周方向(図示左右方向)に距離bだけずれるように形成されている。図21に示す例では、距離bは、永久磁石103の周期Pとほぼ同一値に設定されている。このように永久磁石103の同一磁極同士を向かい合わせるように配置することで、一つの永久磁石103に用いられる材料の使用量を、図4の場合に比べて低減することができる。
【0050】
上述した実施の形態においては、以下に示すような作用効果を奏することができる。
アキシャルギャップ型の回転電機1は、複数の永久磁石103を有する円盤状の回転子102と、回転子102の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子110と、磁極子110に巻回された巻線104と、を備えている。磁極子110は、回転子102の一方の面に対向するように配置された磁極歯111、回転子102の他方の面に対向するように配置された磁極歯111、およびそれらの磁極歯111を繋ぐコア112を有している。そして、本実施の形態では、隣接する磁極子110の間の空隙を通して、少なくとも回転子102に冷媒を放出する冷媒供給部材120をさらに備えている。
【0051】
このように、回転子102の周方向に沿って間隔を空けて複数の磁極子110を配設するとともに、隣接する磁極子110の間の空隙を通して冷媒供給部材120から冷媒を放出するようにしたので、低速回転であっても回転子102の冷却効果が低下することなく、十分な冷却を行うことができる。冷媒供給部材120としては、図5に示すような管部材である冷媒滴下管121aや冷媒噴出管122を空隙に挿入するように配置し、冷媒滴下管121aの冷媒により巻線104を冷却し、冷媒噴出管122の冷媒により回転子102を冷却するようにしても良い。
【0052】
また、図4に示すように、隣接する磁極子110間の周方向配置のピッチ角度θ2を、隣接する永久磁石103間の周方向配置のピッチ角度θ1の偶数倍または略偶数倍に設定することで、磁極子110間に十分な空隙が形成される。その結果、磁極子110間に冷媒供給部材120や補助部材130を配置することが容易となる。
【0053】
さらに、ピッチ角度θ1,θ2を上述のように設定し、隣接する2以上の磁極子110で構成される複数の磁極子群を形成し、巻線104を磁極子群毎に設けるようにしても良い。この場合、図4に示すように巻線104は磁極子群を構成する磁極子110の全体に対して巻回されるので、磁極子群の隣接する磁極子110間には巻線104は配置されず、十分な空隙が形成される。そのため、巻線104の内周側に冷媒供給部材120(冷媒噴出管122や冷媒滴下管121a)を配置することで巻線104を内周側からも冷却することが可能となり、巻線104の冷却性能の向上を図ることができる。
【0054】
また、図10,11に示すように、巻線104が巻回された磁極子110および回転子102が収納されるハウジング2に冷媒流路6を形成し、その冷媒流路6を介して冷媒供給部材120に冷媒を供給するようにしても良い。そうすることで、ハウジング2に接続される配管3の数を削減することができる。また、磁極子110をハウジング2に接触して配置した場合、冷媒流路6を流れる冷媒によりハウジング2が冷却され、そのハウジング2によって磁極子110が冷却される。
【0055】
さらにまた、冷媒供給部材として、図16〜18に示すような補助部材130を、隣接する磁極子110の各々に面接触するように磁極子110間に配置するようにしても良い。補助部材130には、回転子102に冷媒を放出する冷媒噴出管122を設けたり(図17参照)、図18に示すように冷媒流路132および冷媒放出部132a,132bを設けたりすることで、回転子102や巻線104に冷媒を供給することができる。その結果、回転子102や巻線104が冷媒により直接冷却されると共に、磁極子110は面接触している補助部材130によって冷却される。
【0056】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。さらに、艦船推進用や鉄道車両用の電動機として本発明のアキシャルギャップ型の回転電機1を用いることで、減速機を必要としないダイレクトドライブが実現可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1:回転電機、2:ハウジング、5:冷媒、6,132:冷媒流路、102:回転子、103:永久磁石、104:巻線、110:磁極子、111:磁極歯、112:コア、120:冷媒供給部材、121a,121b:冷媒滴下管、122,123,125:冷媒噴出管、130,130a,130b:補助部材、132a,132b:冷媒放出部、501:制御部、501a:記憶部、502:温度センサ、503a〜503c:流量調整弁、507:冷媒経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に所定間隔で配置され、かつ、磁化方向が交互に逆向きとなるように配置された複数の永久磁石を有する円盤状回転子と、
前記円盤状回転子の一方の面に対向するように配置された第1の磁極歯、前記円盤状回転子の他方の面に対向するように配置された第2の磁極歯、およびそれらの磁極歯を繋ぐコア部を有し、前記円盤状回転子の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子と、
前記磁極子に巻回された巻線と、
隣接する前記磁極子の間の空隙を通して、少なくとも前記円盤状回転子に冷媒を放出する冷媒供給部材と、を備えたアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
隣接する前記磁極子間の周方向配置のピッチ角度が、隣接する前記永久磁石間の周方向配置のピッチ角度の偶数倍に設定されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
隣接する2以上の前記磁極子で構成される磁極子群を複数備え、
前記巻線を前記磁極子群毎に設けるとともに、該巻線の内周側に前記冷媒供給部材を配置したことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記空隙に挿入するように配置された管部材であることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記空隙に挿入するように配置されて前記円盤状回転子に向けて冷媒を放出する第1の管部材と、前記空隙に挿入するように配置されて前記巻線に向けて冷媒を放出する第2の管部材とを備えることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記巻線、前記磁極子および前記円盤状回転子が収納されるとともに、前記冷媒供給部材に冷媒を供給する冷媒流路が形成されたハウジングを備えたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
隣接する前記磁極子の間に面接触するように挟持され、冷媒流路が形成された複数の冷却ブロックを備え、
前記複数の冷却ブロックに前記冷媒供給部材を配置したことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記円盤状回転子および前記巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、
前記複数の領域の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部で測定された温度に基づいて、前記冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記円盤状回転子および前記巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、
前記複数の領域に関して回転電機の運転条件に応じた発熱量が予め記憶されている記憶部と、
前記記憶部に記憶されている発熱量および実際の運転状態に基づいて前記複数の領域温度を予測し、前記予測に基づいて前記冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項1】
周方向に所定間隔で配置され、かつ、磁化方向が交互に逆向きとなるように配置された複数の永久磁石を有する円盤状回転子と、
前記円盤状回転子の一方の面に対向するように配置された第1の磁極歯、前記円盤状回転子の他方の面に対向するように配置された第2の磁極歯、およびそれらの磁極歯を繋ぐコア部を有し、前記円盤状回転子の周方向に沿って間隔を空けて配設された複数の磁極子と、
前記磁極子に巻回された巻線と、
隣接する前記磁極子の間の空隙を通して、少なくとも前記円盤状回転子に冷媒を放出する冷媒供給部材と、を備えたアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
隣接する前記磁極子間の周方向配置のピッチ角度が、隣接する前記永久磁石間の周方向配置のピッチ角度の偶数倍に設定されていることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
隣接する2以上の前記磁極子で構成される磁極子群を複数備え、
前記巻線を前記磁極子群毎に設けるとともに、該巻線の内周側に前記冷媒供給部材を配置したことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記空隙に挿入するように配置された管部材であることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記空隙に挿入するように配置されて前記円盤状回転子に向けて冷媒を放出する第1の管部材と、前記空隙に挿入するように配置されて前記巻線に向けて冷媒を放出する第2の管部材とを備えることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記巻線、前記磁極子および前記円盤状回転子が収納されるとともに、前記冷媒供給部材に冷媒を供給する冷媒流路が形成されたハウジングを備えたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
隣接する前記磁極子の間に面接触するように挟持され、冷媒流路が形成された複数の冷却ブロックを備え、
前記複数の冷却ブロックに前記冷媒供給部材を配置したことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記円盤状回転子および前記巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、
前記複数の領域の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部で測定された温度に基づいて、前記冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記冷媒供給部材は、前記円盤状回転子および前記巻線に設定された複数の領域に対してそれぞれ設けられ、
前記複数の領域に関して回転電機の運転条件に応じた発熱量が予め記憶されている記憶部と、
前記記憶部に記憶されている発熱量および実際の運転状態に基づいて前記複数の領域温度を予測し、前記予測に基づいて前記冷媒供給部材の各々から放出される冷媒の流量をそれぞれ制御する流量制御部と、を備えたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−253899(P2012−253899A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124349(P2011−124349)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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