説明

アクチュエータ、ならびにこれを備える駆動装置及び撮像装置

【課題】3以上の磁極が着磁されている磁石を有するアクチュエータの駆動性能を向上させること、ならびにそのようなアクチュエータを備える駆動装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アクチュエータは、コイルと、コイルに通電することにより発生する磁力を受けてコイルに対して移動可能な磁石120と、磁石120の位置を検出する磁気検出素子を備える。磁石120は、コイルに対する移動方向に対して垂直な第1分極線128、および第1分極線128と平行な第2分極線129を有している。コイルは、第1分極線128に対向する位置に配置されている。磁気検出素子は、第2分極線129に対向する位置に配置されている。第2分極線129から磁石120の磁気検出素子側の端部120bまでの長さcは、磁石120の移動量の1.25倍以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、アクチュエータ、ならびにこれを備える駆動装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置等に使用される電磁アクチュエータとしては、特許文献1(特開2007−241254号公報)に示すような、磁石と、磁石に対向し、通電されることにより発生する磁力により磁石を移動させるコイルと、磁石に対向し、磁石の位置を検出する磁気検出素子とを有するものが普及している。
【0003】
ところで、特許文献2(特開2007−66499号公報)には、3以上の磁極が並ぶように着磁されている磁石を有する電磁アクチュエータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−241254号公報
【特許文献2】特開2007−66499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁アクチュエータには、電磁アクチュエータが収納される駆動装置および撮像装置の設計上の各種制約を満たすべく、磁石に対するコイルおよび磁気検出素子の配置に関し、ある程度の自由度が求められる。そこで、そのような自由度を向上させるべく、特許文献2のように、3以上の磁極が並ぶように着磁されている磁石を利用することが考えられる。
【0006】
ここに開示された技術は、3以上の磁極が並ぶように着磁されている磁石を有するアクチュエータの駆動性能を向上させること、ならびにそのようなアクチュエータを備える駆動装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されたアクチュエータは、コイルと、コイルに通電することにより発生する磁力を受けてコイルに対して移動可能な磁石と、磁石の位置を検出する磁気検出素子を備える。磁石は、コイルに対する移動方向に対して垂直な第1分極線、および第1分極線と平行な第2分極線を有している。コイルは、第1分極線に対向する位置に配置されている。磁気検出素子は、第2分極線に対向する位置に配置されている。第2分極線から磁石の磁気検出素子側の端部までの長さは、磁石の移動量の1.25倍以上である。
【発明の効果】
【0008】
ここに開示された技術によれば、3以上の磁極が並ぶように着磁されている磁石を有するアクチュエータの駆動性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタルカメラの前方から見た概略斜視図
【図2】その後方から見た概略斜視図
【図3】デジタルカメラの撮像光学系およびレンズ鏡筒の断面模式図
【図4】本発明の一実施形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図
【図5】レンズ駆動装置の斜視図
【図6】レンズ駆動装置の平面図
【図7】図6のVII−VII断面図
【図8】レンズ駆動装置の平面模式図
【図9】第1磁石の平面図
【図10】レンズ駆動装置の制御特性図
【図11】移動量d=0.30mmの場合の、ヨーホールセンサの出力の直線性と第1磁石からヨーホールセンサの感磁面までの距離との関係を表したグラフ
【図12】移動量d=0.50mmの場合の、ヨーホールセンサの出力の直線性と第1磁石からヨーホールセンサの感磁面までの距離との関係を表したグラフ
【図13】移動量d=0.70mmの場合の、ヨーホールセンサの出力の直線性と第1磁石からヨーホールセンサの感磁面までの距離との関係を表したグラフ
【図14】ヨーホールセンサの出力の直線性について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1:デジタルカメラの概要〕
図1及び図2を用いて本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例としてのデジタルカメラ1について説明する。図1および図2にデジタルカメラ1の概略斜視図を示す。
【0011】
デジタルカメラ1は被写体の画像を取得するためのカメラであり、デジタルカメラ1の外形を規定する概ね矩形のカメラ筐体2を有している。カメラ筐体2の内部には、高倍率化および小型化(特に、厚み方向の薄型化)のために、屈曲する撮像光学系Oを支持するレンズ鏡筒3が搭載されている。
【0012】
なお、以下の説明では、デジタルカメラ1の6面を以下のように定義する。
【0013】
デジタルカメラ1による撮影時に被写体側を向く面を前面、その反対側の面を背面とする。被写体の鉛直方向上下とデジタルカメラ1で撮像される長方形の像(一般には、アスペクト比(長辺対短辺の比)が3:2、4:3、16:9など)の短辺方向上下とが一致するように撮影を行う場合に、鉛直方向上側に向く面を上面、その反対側の面を下面とする。さらに、被写体の鉛直方向上下とデジタルカメラ1で撮像される長方形の像の短辺方向上下とが一致するように撮影を行う場合に、被写体側から見て左側にくる面を左側面、その反対側の面を右側面とする。なお、以上の定義は、デジタルカメラ1の使用姿勢を限定するものではない。
【0014】
以上の定義によれば、図1は、前面、上面および右側面を示す斜視図ということになる。
【0015】
なお、デジタルカメラ1の6面だけでなく、デジタルカメラ1に配置される各構成部材の6面も同様に定義する。すなわち、デジタルカメラ1に配置された状態の各構成部材の6面に対して、上述の定義が適用される。
【0016】
また、図1に示すように、カメラ筐体2の前面に垂直なY軸を有する3次元直交座標系(右手系)を定義する。この定義によれば、背面側から前面側に向かう方向がY軸正方向であり、右側面側から左側面側に向かう方向がX軸正方向であり、X軸およびY軸に直交し下面側から上面側に向かう方向がZ軸正方向となる。この定義は、全ての図面に共通する。
【0017】
〔2:デジタルカメラの全体構成〕
図1および図3に示すように、デジタルカメラ1は主に、各ユニットを収納するカメラ筐体2と、被写体の光学像を形成する撮像光学系Oと、撮像光学系Oを移動可能に支持するレンズ鏡筒3と、から構成されている。レンズ鏡筒3内には、像振れを補正する像振れ補正装置10と、光学像を画像信号に変換する、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal−oxide Semiconductor)センサ等からなる撮像素子11と、が収納されている。
【0018】
カメラ筐体2の上面または背面には、撮影者が撮影動作などの操作を行えるように、レリーズボタン4と、タッチパネル5と、電源スイッチ6と、ズーム調節レバー7と、が設けられている。レリーズボタン4は撮影者が露光のタイミングを入力するためのボタンである。タッチパネル5は液晶モニタ8上に配置されている。撮影者は、制御部9によって液晶モニタ8上に表示された操作画面を見つつタッチパネル5に触れることで、撮影動作に関する各種設定を行う。電源スイッチ6は撮影者がデジタルカメラ1のONおよびOFFを操作するためのスイッチである。ズーム調節レバー7は、撮影者がズーム倍率を調節するためのレバーであり、レリーズボタン4を中心として所定の角度の範囲内で回転可能である。なお、レリーズボタン4と、タッチパネル5と、電源スイッチ6と、ズーム調節レバー7とは、操作部材の一例である。操作部材は、プッシュボタン、スライドスイッチ、レバー、タッチパネル等、どのような形態であってもよい。
【0019】
カメラ筐体2の背面には、撮像素子11により取得された画像を表示する液晶モニタ8が設けられている。カメラ筐体2の内部には、デジタルカメラ1の各種の制御を行う、例えばマイクロコンピュータからなる制御部9と、撮像素子11により取得された画像を記憶する、着脱自在な記憶素子12が配置されている。
【0020】
〔3:撮像光学系およびレンズ鏡筒の構成〕
図3は、撮像光学系O及びレンズ鏡筒3の構成を示す断面模式図である。
【0021】
撮像光学系Oは、第1光軸A1を有し、被写体からの光をカメラ筐体2内に導く第1光学系21と、第1光軸A1上に配置され、第1光学系21で導かれた光を第1光軸A1に直交する第2光軸A2に沿った方向に折り曲げる屈曲光学系と、第2光軸A2を有する第2光学系22と、を有している。第2光学系22の出射側に第2光学系22から出射される被写体の光学像を画像信号に変換する撮像素子11が配置されている。
【0022】
第1光学系21は、第1光軸A1に沿って配置された第1レンズ群L1を有している。
【0023】
第1レンズ群L1は、例えば負のパワーを持つレンズ群であり、被写体からの光を取り込む対物レンズである。屈曲光学系は、本実施形態では、光軸を90度屈曲させるプリズム24で構成されているが、他の実施形態では、ミラーなどの反射部材でもよい。
【0024】
第2光学系22は、プリズム24に近接して配置された第2レンズ群L2と、第2レンズ群L2と撮像素子11との間に配置された第3レンズ群L3、第4レンズ群L4、第5レンズ群L5、第6レンズ群L6および補正レンズL7とを有している。第2レンズ群L2はプリズム24から出射された光を集光するレンズ群である。第1レンズ群L1、プリズム24、および、第2レンズ群L2全体で、正のパワーを持っている。第3レンズ群L3はズーム用のレンズ群である。第3レンズ群L3は、第2光軸A2方向に移動可能であり、当該移動によって焦点距離を変更する。第4レンズ群L4は第2光軸A2方向に固定されている固定レンズである。第5レンズ群L5は、フォーカス用のレンズ群である。第5レンズ群L5は、第2光軸A2方向に移動可能であり、当該移動によって焦点状態を変更する。第6レンズ群L6は第2光軸A2方向に固定されている固定レンズである。第6レンズ群L6から出射された光は、第6レンズ群L6に対向して配置された補正レンズL7(光学素子の一例)を通って撮像素子11に結像される。撮像素子11は、補正レンズL7に対向している。
【0025】
〔4:像振れ補正装置の構成〕
像振れ補正装置10は、カメラ筐体2のヨー補正方向及びピッチ補正方向の振れを検出する、たとえばジャイロセンサ等からなる振れ検出センサ(図示せず)と、振れ検出センサの検出結果に応じて補正レンズL7を二方向に駆動するレンズ駆動装置100(駆動装置の一例)を有している。レンズ駆動装置100は、振れ検出センサからの信号によりカメラ筐体2の振れを補正するように第2光軸A2と垂直なX軸正負方向(第1方向の一例であり、以下、ヨー補正方向という)とY軸正負方向(第2方向の一例であり、以下、ピッチ補正方向という)との二方向に補正レンズL7を駆動する。
【0026】
〔5:レンズ駆動装置の構成〕
図4は、本発明の一実施形態に係るレンズ駆動装置100の分解斜視図である。図5は、その斜視図である。図6は、その平面図である。図7は、図6のVII−VII断面図である。
【0027】
レンズ駆動装置100は、補正レンズL7を保持する移動部材101と、移動部材101をピッチ補正方向とヨー補正方向とに移動可能なように支持する固定部材102と、移動部材101をピッチ補正方向に駆動するピッチアクチュエータ103(第2アクチュエータの一例)と、移動部材101をヨー補正方向に駆動するヨーアクチュエータ104(第1アクチュエータの一例)と、を有している。また、レンズ駆動装置100には、移動部材101をピッチ補正方向またはヨー補正方向に案内する案内部105が設けられている。ヨーアクチュエータ104は、略直方体形状の第1磁石120と、第1コイル126と、固定部材102に対する移動部材101のヨー補正方向の位置を検出するホール素子であるヨーホールセンサ106(磁気検出素子の一例)を有している。ピッチアクチュエータ103は、略直方体形状の第2磁石121と、第2コイル127と、固定部材102に対する移動部材101のピッチ補正方向の位置を検出するホール素子であるピッチホールセンサ107を有している。ヨーアクチュエータ104と、ピッチアクチュエータ103とは、ヨー補正方向に補正レンズL7を挟んで配置されている。
【0028】
固定部材102は、レンズ鏡筒3内に固定された概ね矩形の板部108と、板部108から第2光軸A2方向に伸びる壁部109等からなる部材である。固定部材102は、カメラ筐体2に対して固定されている。板部108の略中心には、補正レンズL7により結像される光が通過可能な、4隅が円味を帯びた略長方形の開口110が形成されている。なお、開口110は単なる長方形や長円形あるいは円形等でもよい。また、壁部109には、第1案内軸111および第2案内軸112をそれぞれ支持するための第1支持部113および第2支持部114が形成されており、板部108には、回動軸115および回動規制軸116をそれぞれ支持するための第3支持部117および第4支持部118が形成されている。第1支持部113は、開口110よりもヨー補正方向のX方向正側(図4右側)にY軸方向に間隔を隔てて2箇所配置され、第2支持部114は、開口110よりもヨー補正方向のX方向負側(図4左側)に1箇所配置されている。また、第3支持部117は、開口110よりもヨー補正方向のX方向正側に配置され、第4支持部118は、開口110よりもヨー補正方向のX方向負側に配置されている。
【0029】
移動部材101は、固定部材102に対しピッチ補正方向およびヨー補正方向に移動自在に支持された移動枠119を有している。移動枠119には、第1磁石120および第2磁石121が固定されている。
【0030】
移動枠119は、第2光軸A2方向から見た大きさが、固定部材102より小さい概ね矩形板状の部材である。移動枠119の中央には、補正レンズL7を通過する光を透過するための長円形の開口131が形成されている。なお、移動枠119の開口131も4隅が円味を帯びた略長方形あるいは長方形等でもよい。移動枠119のヨー補正方向のX方向正側(図4右側)には、第1案内軸111と係合する第1案内機構122が設けられており、移動枠119のヨー補正方向のX方向負側(図4左側)には、第2案内軸112と係合する第2案内機構123が設けられている。つまり、移動部材101と、固定部材102とは、第2光軸A2方向から見て、補正レンズL7よりもヨーアクチュエータ104側に配置された第1案内軸111および第1案内機構122(第1規制部の一例)によって互いに係合しており、かつ、補正レンズL7よりもピッチアクチュエータ103側に配置された第2案内軸112および第2案内機構123(第2規制部の一例)によって互いに係合している。第1案内機構122および第2案内機構123は、移動部材101の自重を支持するとともに、第1案内軸111および第2案内軸112と摺動することで移動部材101を固定部材102に対してピッチ補正方向およびヨー補正方向に移動可能に支持し、固定部材102に対して第2光軸A2方向に移動不能に支持する。第1案内軸111、第2案内軸112、第1案内機構122および第2案内機構123は、案内部105を構成する。移動部材101と、固定部材102とは、案内部105によってピッチ補正方向およびヨー補正方向に相対的に移動するように案内されるが、第2光軸A2方向に相対的に移動しないように規制されている。
【0031】
移動枠119のヨー補正方向のX方向正側の端(図4右端)には、回動軸115と係合する回動案内溝124が形成されている。移動枠119は、回動軸115と回動案内溝124とが摺動することで、回動案内溝124が延びる方向と同方向すなわち、ヨー補正方向に直線移動可能であり、かつ、回動軸115を中心としてピッチ補正方向に回動移動可能である。これにより移動枠119に保持された補正レンズL7はピッチ補正方向およびヨー補正方向に移動可能となる。一方、移動枠119のX方向負側の端(図4左端)には、回動規制軸116と所定の隙間を空けて係合する概ね四角形の回動規制溝125が形成されている。回動規制軸116と回動規制溝125とが当接する位置で、移動枠119のピッチ補正方向およびヨー補正方向の移動範囲が規制される。回動規制溝125はピッチ補正方向およびヨー補正方向の移動規制が可能であれば概ね四角形以外の形状でもよい。回動軸115および回動規制軸116は、たとえば、それぞれ第3支持部117および第4支持部118に圧入などによって固定される。
【0032】
移動枠119のヨー補正方向のX方向正側(図4右側)には第1磁石120が取り付けられており、第1磁石120との間で補正レンズL7を挟んで移動枠119のX方向負側(図4左側)には第2磁石121が取り付けられている。このとき、第1案内機構122と第1磁石120とは互いに第2光軸A2方向から見て重複する位置に配置されており、同様に、第2案内機構123と第2磁石121とは互いに第2光軸A2方向から見て重複する位置に配置されている。
【0033】
図8に模式的に示すように、ヨーアクチュエータ104は、固定部材102に固定された第1コイル126と、第1コイル126と第2光軸A2方向に対向する位置において移動枠119に固定された第1磁石120と、を有している。また、ピッチアクチュエータ103は、固定部材102に固定された第2コイル127と、第2コイル127と第2光軸A2方向に対向する位置において移動枠119に固定された第2磁石121と、を有している。第1コイル126に通電することにより発生する磁力を受けて、第1磁石120は第1コイル126に対してヨー補正方向に移動し、第2コイル127に通電することにより発生する磁力を受けて、第2磁石121は第2コイル127に対してピッチ補正方向に移動する。
【0034】
第1磁石120は、6極に着磁されている。図8に示すように、第1磁石120は第2光軸A2方向から見て3極に着磁されており、異なる磁極の境界線である第1分極線128および第2分極線129がヨー補正方向に2つ並ぶように配置されている。第1分極線128および第2分極線129は、ヨー補正方向に垂直かつピッチ補正方向に平行に第1磁石120のピッチ補正方向の幅全体に亘って延びている。第1分極線128は、第1磁石120の第1無着磁領域に配置され、第2分極線129は、第1磁石120の第2無着磁領域に配置される。第2磁石121は2極に着磁されており、異なる磁極の境界線である第3分極線130が、ピッチ補正方向に垂直かつヨー補正方向に平行に第2磁石121のヨー補正方向の幅全体に亘って延びている。具体的には、第1磁石120は、第2光軸A2方向から見て、X方向正側の端からX方向負側に向かってN極、第2分極線129、S極、第1分極線128、N極と並ぶように着磁されている。第2磁石121は、Y方向正側の端からY方向負側に向かってN極、第3分極線130、S極と並ぶように着磁されている。
【0035】
第1コイル126および第2コイル127は、第2光軸A2と平行な軸を中心に導線が巻き付けられたものである。第1コイル126は、本実施形態では、補正レンズL7の中心が第2光軸A2上に位置する基準位置に配置されているとき(つまり、カメラ筐体2の振れがない状態で)、第2光軸A2方向から見て第1分極線128上にその中心(駆動中心)が位置するように固定部材102に固定されている。第2コイル127は、基準位置に移動枠119が配置されているとき(つまり、カメラ筐体2の振れがない状態で)、第2光軸A2方向から見て第3分極線130上にその中心(駆動中心)が位置するように固定部材102に固定されている。第1磁石120および第2磁石121は、回動規制軸116および回動規制溝125によりヨー補正方向およびピッチ補正方向の移動範囲が規制されており、案内部105により両方向に垂直な方向には移動しない。その結果、カメラ筐体2がいかに振れようとも、第1コイル126は、常に第1分極線128に対向する位置に配置されており、第2コイル127は、常に第3分極線130に対向する位置に配置されている。
【0036】
このとき、第1コイル126のうちヨー補正方向への駆動力発生部は、ピッチ補正方向に伸びた導線部分である。そのため、より駆動力を稼ぐために、基準位置に移動枠119が配置されているとき第2光軸A2方向から見て、第1コイル126の駆動力発生部以外の部分が第1磁石120と重複しない位置まで、第1コイル126のピッチ補正方向の寸法を大きくしてもよい。こうすれば、第1コイル126の駆動力発生部であるピッチ補正方向に伸びた導線部分が大きくなり、第1コイル126の駆動力が大きくなる。同様に、第2コイル127のうちピッチ補正方向への駆動力発生部は、ヨー補正方向に伸びた導線部分である。そのため、より駆動力を稼ぐために、基準位置に移動枠119が配置されているとき第2光軸A2方向から見て、第2コイル127の駆動力発生部以外の部分(ピッチホールセンサ127が障害になる場合には、当該2つの部分のうち、ピッチホールセンサ127から遠い側の部分)が第2磁石121と重複しない位置まで、第2コイル127のヨー補正方向の寸法を大きくしてもよい。こうすれば、第2コイル127の駆動力発生部であるヨー補正方向に伸びた導線部分が大きくなり、第2コイル127の駆動力が大きくなる。
【0037】
移動枠119は、ピッチ補正方向およびヨー補正方向に移動しても他の部材と干渉しないようにする必要がある。一方で、固定部材102には、そのような制約がない。つまり、レンズ駆動装置100のピッチ補正方向およびヨー補正方向の外形寸法は、それぞれ移動枠119のピッチ補正方向およびヨー補正方向の移動範囲と固定部材102のピッチ補正方向およびヨー補正方向の外形寸法との大きい方に影響される。従って、ピッチ補正方向およびヨー補正方向の両方向ともについて、固定部材102の外形寸法を移動枠119の外形寸法より大きくしても、レンズ駆動装置100の外形寸法への影響が小さい。そこで、前述したように第1コイル126および第2コイル127が移動枠119ではなく固定部材102に固定される場合には、第1コイル126および第2コイル127の外形寸法を固定部材102の外形に収まる範囲内で大きくしたとしても、レンズ駆動装置100の外形寸法には影響しない。従って、本実施形態では、第1コイル126または第2コイル127を固定部材102に固定し、その外形寸法を固定部材102の外形に収まる範囲内で大きくすることにより、駆動力を維持しつつ、レンズ駆動装置100のサイズを抑制している。
【0038】
ヨーホールセンサ106およびピッチホールセンサ107は、それぞれ第1磁石120および第2磁石121の自身に対する相対位置を検出可能である。ヨーホールセンサ106およびピッチホールセンサ107は、どちらも固定部材102に固定されている。ヨーホールセンサ106は第1磁石120と対向する位置に、ピッチホールセンサ107は第2磁石121と対向する位置に固定されている。ヨーホールセンサ106は、本実施形態では、基準位置に移動枠119が配置されているとき(つまり、カメラ筐体2の振れがない状態で)、第2光軸A2方向から見て第2分極線129上にその中心が位置するように固定部材102に固定されている。ピッチホールセンサ107は、基準位置に移動枠119が配置されているとき(つまり、カメラ筐体2の振れがない状態で)、第2光軸A2方向から見て第3分極線130上にその中心が位置するように固定部材102に固定されている。第1磁石120および第2磁石121は、回動規制軸116および回動規制溝125によりヨー補正方向およびピッチ補正方向の移動範囲が規制されており、案内部105により両方向に垂直な方向には移動しない。従って、カメラ筐体2がいかに振れようとも、ヨーホールセンサ106は、常に第2分極線129に対向する位置に配置されており、ピッチホールセンサ107は、常に第3分極線130に対向する位置に配置されている。
【0039】
従って、第1磁石120は、補正レンズL7のヨー補正方向の駆動部としての機能と補正レンズL7のヨー補正方向の位置を検出するための機能を有しており、第1コイル126とヨーホールセンサ106とに共用されている。また、第2磁石121は、補正レンズL7のピッチ補正方向の駆動部としての機能と補正レンズL7のピッチ補正方向の位置を検出するための機能を有しており、第2コイル127とピッチホールセンサ107とに共用されている。本実施形態では、ピッチホールセンサ107は、第2コイル127よりも回動軸115側に配置されている。従って、回動軸115を中心として移動枠119がピッチ補正方向に回転駆動されるときの、第3分極線130に対するピッチホールセンサ107のヨー補正方向の相対的移動量が比較的小さくなり、位置の検出精度が高くなっている。また、回動軸115から移動部分全体の重心Gまでの距離に対する回動軸115から第2コイル127までの距離の比が大きくなり、ピッチアクチュエータ103が発生する駆動力による回転モーメントが大きくなり、ピッチアクチュエータ103がより小型化されている。なお、ここでいう移動部分全体の重心Gとは、移動枠119、補正レンズL7、第1磁石120および第2磁石121を含む、固定部材102に対して移動する部品の重心を合成した重心であり、この実施形態では、第1磁石120の方が第2磁石121よりも大きいため、重心Gは、第2光軸A2方向から見て、補正レンズL7の中心と回動軸115との間にある。
【0040】
また、本実施形態では、ヨーホールセンサ106は、第1コイル126よりも回動軸115側に配置されている。従って、回動軸115を中心として移動枠119がピッチ補正方向に回転駆動されるときの、ヨーホールセンサ106のヨー補正方向の相対的移動量が比較的小さくなり、位置の検出精度が高くなっている。
【0041】
移動枠119を高精度に安定して駆動するためには、移動部材101と固定部材102とが接触する点を結んでできる支持多角形領域の中に移動部分全体の重心Gが配置されることが望ましい。この実施形態では、移動部分全体の重心Gにより近い位置に、第1案内機構122および第2案内機構123のうち、係合部のピッチ補正方向の大きさが大きい第1案内機構122を配置している。従って、本実施形態では、安定して移動部分全体の重心Gが支持多角形領域内に配置されるようになっている。なお、第1案内軸111と第1案内機構122との係合部のピッチ補正方向の大きさとは、第1案内軸111と第1案内機構122とがピッチ補正方向に離れた2つの接触部を有する場合、2つの接触部を合わせた領域の、ピッチ補正方向の両端の大きさをいい、1つの接触部のみ有する場合、その1つの接触部のピッチ補正方向の両端の大きさをいい、1つの接触点のみ有する場合、0である。また、第2案内軸112と第2案内機構123との係合部のピッチ補正方向の大きさとは、第2案内軸112と第2案内機構123とがピッチ補正方向に離れた2つの接触部を有する場合、2つの接触部を合わせた領域の、ピッチ補正方向の両端の大きさをいい、1つの接触部のみ有する場合、その1つの接触部のピッチ補正方向の両端の大きさをいい、1つの接触点のみ有する場合、0である。本実施形態の場合、支持多角形は、第1案内軸111と第1案内機構122との2つの接触部と、第2案内軸112と第2案内機構123との1つの接触部とを結ぶ略三角形である。さらに、この実施形態では、第1磁石120と、第1案内機構122とを、第2光軸A2方向から見て重複するように配置することにより、第1案内機構122が重心Gに近接して配置されるようになっており、より安定して移動部分全体の重心Gが支持多角形(略三角形)領域内に配置されるようになっている。
【0042】
回動軸115の中心、ヨーホールセンサ106の中心、第1コイル126の中心、補正レンズL7の中心、移動部分全体の重心G、ピッチホールセンサ107の中心、第2コイル127の中心は、移動枠119が基準位置にあるときに、ヨー補正方向に平行な略同一直線状に並んで配置されている。移動枠119が基準位置にあるときに、移動部分全体の重心Gと第1コイル126の中心とがヨー補正方向に略平行に並んで配置されることにより、移動枠119を基準位置からヨー補正方向へ駆動する際、ピッチ補正方向への回転モーメントが発生せず、高精度かつ高効率に駆動できる。また、移動枠119が基準位置にあるときに、移動部分全体の重心Gと第1コイル126の中心と回動軸115とがヨー補正方向に略平行に配置されることにより、移動枠119を基準位置からヨー補正方向へ駆動する際、ピッチ補正方向への回転モーメントが発生せず、回動案内溝124の摺動負荷が軽減でき、高精度かつ高効率に駆動できる。移動枠119が基準位置にあるときに、ヨーホールセンサ106の中心およびピッチホールセンサ107の中心が補正レンズL7の中心と回動軸115の中心とを結ぶ直線上に配置されることにより、移動枠119が基準位置からピッチ補正方向へ回転移動する際のヨー補正方向の移動量を最小限かつ補正方向(Y方向)正側と負側とで対称にでき、他軸の影響を軽減でき高精度かつ高効率に駆動できる。移動枠119が基準位置にあるときに、第1コイル126の中心が補正レンズL7の中心と回動軸115とを結ぶ直線上に配置されることにより、移動枠119が基準位置からピッチ補正方向へ移動する際のヨー補正方向の移動量を最小限にでき、他軸の影響を軽減でき高精度かつ高効率に駆動できる。
【0043】
本実施形態では、第1磁石120は、略直方体形状である。第1分極線128および第2分極線129が見える方向から見た場合の、第1磁石120の第1コイル126側の端部(端面)120aおよびヨーホールセンサ106側の端部(端面)120bは、Y方向に平行に延びている。ここで、図9に示すように、
第1磁石120の端部120aから第1分極線128までの(X方向の)長さをa、
第1分極線128から第2分極線129までの(X方向の)長さをb、
第2分極線129から第1磁石120の端部120bまでの(X方向の)長さをc、
移動枠119の固定部材102に対するX方向の移動量(第1磁石120のヨーホールセンサ106に対するX方向の移動量)をdとする。dは、移動枠119の固定部材102に対する基準位置から+X方向への移動量と、基準位置から−X方向への移動量との合計値を示す。例えば、移動枠119が固定部材102に対する基準位置から+X方向に0.10mm移動するとし、基準位置から−X方向に0.10mm移動するとしたとき、d=0.20mmとなる。
【0044】
また、第1分極線128が存在する第1無着磁領域のX方向の幅をWm1、第2分極線129が存在する第2無着磁領域のX方向の幅をWm2とする。
【0045】
図11から図13は、移動量dに対する長さcの倍率を様々に変化させた場合の(具体的には、c=3d、c=2.5d、c=2.25d、c=2d、c=1.75d、c=1.5d、c=1.25dおよびc=dの場合の)、ヨーホールセンサ106の出力の直線性(縦軸)と、第1磁石120のヨーホールセンサ106側の端面からヨーホールセンサ106の感磁面までの距離(横軸)との関係を表したグラフである。なお、図11は、d=0.30mmの場合のシミュレーション結果である。図12は、d=0.50mmの場合のシミュレーション結果である。図13は、d=0.70mmの場合のシミュレーション結果である。
【0046】
図14は、ヨーホールセンサ106の出力の直線性について説明するための図である。図14は、ヨーホールセンサ106の出力(縦軸)と、第1磁石120の位置(横軸)との関係を示している。図14の原点Oは、移動枠119が基準位置にある時、つまり、第2光軸A2方向から見てヨーホールセンサ106の中心が第2分極線129上にある時を示している。曲線C1は、ヨーホールセンサ106の実際の出力を示す曲線である。直線C2は、第1磁石120がその可動範囲の両端位置にある時(ヨーホールセンサ106の中心が原点Oから±d/2の位置にある時)のヨーホールセンサ106の出力を示す2点を結んでできる直線である。また、ヨーホールセンサ106の出力の直線性は、曲線C1と、直線C2とのずれの最大値(この場合、μm単位)によって示される。つまり、ヨーホールセンサ106の出力の直線性とは、ヨーホールセンサ106の実際の出力を示す曲線C1がどのくらい理論上の直線C2から崩れているかを示すものである。ヨーホールセンサ106の出力の直線性の値が小さければ小さいほど、ヨーホールセンサ106による第1磁石120の位置の検出精度が高いことを意味する。ヨーホールセンサ106による検出精度が高くなると、それだけ手振れ補正の精度が高くなる。一方、ヨーホールセンサ106による検出精度が低くなると、それだけ手振れ補正の精度が低くなる。従って、ヨーホールセンサ106の出力の直線性の値が小さければ小さいほど、画像がくっきりと映り、大きければ大きいほど、画像がにじむ。
【0047】
ヨーホールセンサ106の出力の直線性の目標性能は、移動量dの目標性能に依存する。一般的に、画像のブレをユーザが許容できる基準以下に収めるためには、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値は、d=0.30mmの場合には、15μm以下であることが好ましく、d=0.50mmの場合には、30μm以下であることが好ましく、d=0.70mmの場合には、40μm以下であることが好ましい。ここで、図11を見ると、d=0.30mmの場合には、移動量dに対する長さcの倍率が1.25倍以上であるときに、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値は、15μm以下になることがわかる。図12を見ると、d=0.50mmの場合においても、移動量dに対する長さcの倍率が1.25倍以上であるときに、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値は、30μm以下になることがわかる。図13を見ると、d=0.70mmの場合においても、移動量dに対する長さcの倍率は、1.25倍以上であるときに、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値は、40μm以下になることがわかる。従って、移動量dの目標性能に関わらず、移動量dに対する長さcの倍率が1.25倍以上であれば、ヨーホールセンサ106の出力の直線性の目標性能が確保され得ることがわかる。従って、本実施形態では、c≧1.25dとなるように、c,dの値が選択されている。その結果、ヨーホールセンサ106の検出精度が確保され、ひいてはヨーアクチュエータ104の駆動性能が向上する。
【0048】
また、移動量dに対する長さcの倍率は、1.5倍以上であることがより好ましい。なぜならば、図11から図13から分かるように、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値は、第1磁石120のヨーホールセンサ106側の端面からヨーホールセンサ106の感磁面までの距離(横軸)に応じて変動する。そして、移動量dに対する長さcの倍率が大きくなるほど、横軸のより広範囲にわたって、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値が一定の基準値以下に収まるようになる。横軸の広範囲にわたって、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値が一定の基準値以下に収まるようになるということは、第1磁石120とヨーホールセンサ106の感磁面との距離を、設計にて調整できる幅が大きくなることを意味する。すなわち、横軸の広範囲にわたって、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を示す値が一定の基準値以下に収まるようになると、ヨーアクチュエータ104の設計の自由度が増すことになる。図11から図13によれば、c≧1.5dであれば、d=0.30mmの場合も、d=0.50mmの場合も、d=0.70mmの場合も、横軸の広範囲にわたって、ヨーホールセンサ106の出力の直線性の目標性能が確保されることが分かる。従って、移動量dに対する長さcの倍率を1.5倍以上とすれば、設計の自由度を上げることができる。
【0049】
なお、ヨーアクチュエータ104の駆動性能は、ヨーアクチュエータ104が発生させる駆動力Fと移動部分全体の重量W(移動枠119、補正レンズL7、第1磁石120および第2磁石121を含む、固定部材102に対して移動する部品全体の重量)との関係で決まる。F/Wの値は、アクチュエータの組み立てのばらつき、磁石の個体差、環境温度等による変化を考慮すると、2.5以上であることが好ましい。F/Wの値は必ずしも2.5以上である必要はないが、本実施形態では、25℃使用時を想定し、F/Wが2.5以上になるように長さcの値が決められている。
【0050】
また、磁気回路からなるアクチュエータを設計する場合、磁石がコイルに対して最大移動した状態においても磁石とコイルとが対面するように設計するのが好ましい。本実施形態では、そのような観点から、長さaは、第1コイル126のヨー補正方向の幅の1/2と移動量dの半分のd/2との合計値+アルファの長さに設定されている。このような制約の下、仮に長さbが長さaより短くなるように設計すると、回動軸115の中心、ヨーホールセンサ106の中心、第1コイル126の中心および補正レンズL7の中心をヨー補正方向に平行な略同一直線状に並んで配置することができなくなり、第1コイル126とヨーホールセンサ106とをY方向にずらして配置する必要が生じる。従って、本実施形態では、長さaを長さbより短くし、回動軸115の中心、ヨーホールセンサ106の中心、第1コイル126の中心および補正レンズL7の中心をヨー補正方向に平行な略同一直線状に並んで配置している。その結果、第1磁石120を含むヨーアクチュエータ104のY方向のサイズが小型化され、デジタルカメラ1のY方向の小型化、つまり厚み方向の薄型化が図られている。また、本実施形態では、第2コイル127の中心およびピッチホールセンサ107の中心も、上記直線上に略並んで配置されており、ヨーアクチュエータ104とピッチアクチュエータ103とがY方向に略同じ範囲を占めている。従って、レンズ駆動装置100のY方向のサイズがさらに小型化され、デジタルカメラ1のY方向のさらなる小型化、つまり厚み方向のさらなる薄型化が図られている。
【0051】
さらに、長さbを長くするにつれて、第1コイル126のX方向正側の端部とヨーホールセンサ106のX方向負側の端部との距離が広くなるので、第1コイル126に通電することによって発生する磁界をヨーホールセンサ106が検出することが少なくなる。従って、本実施形態では、長さbを長さaより長くすることにより、本来ヨーホールセンサ106が検出するべき第2分極線129近傍の磁束の検出精度(S/N比)を向上させている。
【0052】
第1コイル126の通電により発生する磁界をヨーホールセンサ106が検出し、S/N比が劣化する(検出精度が悪くなる)場合、図10に示すように、レンズ駆動装置100の制御特性図における高周波数領域で制御特性が悪化し、点線のような制御特性が現われるようになる。このような問題は、長さbを長くすることによって解決することができる。従って、本実施形態では、長さbを長さaより長くすることにより、このような問題を解決している。
【0053】
また、本実施形態では、ヨーホールセンサ106の出力の直線性を小さくするために、無着磁幅Wm2を0.7mm程度としている。一方、無着磁幅Wm1については、第1コイル126による駆動力を優先し、無着磁幅Wm1をフル着磁(無着磁幅がゼロとなる着磁)に近づくように0.5mm〜0.6mm程度としている。その結果、無着磁幅Wm1が無着磁幅Wm2より小さくなっている。従って、本実施形態では、無着磁幅Wm1を無着磁幅Wm2と同様に0.7mm程度とする場合に比べ、第1磁石120のX方向の幅(a+b+c)が0.1mmから0.2mm程度短くなっている。従って、第1磁石120の重量が軽量化され、ヨーアクチュエータ104の駆動性能の向上が図られている。
【0054】
また、本実施形態では、長さcを第2分極線129近傍の磁界が検出可能な最小の長さまで短くし、長さcが長さaより短くなるようにしている。その結果、第1磁石120がX方向に小型化および軽量化され、レンズ駆動装置100の駆動性能の向上が図られている。
【0055】
最後に、本実施形態では、長さa、長さbおよび長さcの関係を、b>a>cとしている。その結果、第2分極線129近傍の磁界を検出するのに最適な長さcと、第1コイル126と第1磁石120の共働により発生する駆動力を得るために必要な長さa、bを個別に設定することが可能なっている。従って、X方向およびY方向の小型化、軽量化、および推力(駆動性能)の最適化が図られている。
【0056】
また、第1磁石120の各領域の着磁時にそれぞれの必要性能に応じた着磁を行うことが可能となっており、更なる小型化、軽量化、および推力(駆動性能)の最適化が図られている。
【0057】
〔6:レンズ駆動装置の動作〕
振れ検出センサからの出力に応じて、レンズ駆動装置100は制御される。手振れ等によるカメラ筐体2のピッチ補正方向及びヨー補正方向の振れが振れ検出センサにより検出されると、制御部9は、振れ検出センサからの検出結果およびヨーホールセンサ106の検出結果に応じた電流が第1コイル126に流れるように制御する。また、制御部9は、振れ検出センサからの検出結果およびピッチホールセンサ107の検出結果に応じた電流が第2コイル127に流れるように制御する。その結果、カメラ筐体2の振れによる像振れを解消するように、補正レンズL7がピッチ補正方向及びヨー補正方向に駆動される。
【0058】
第1コイル126の所定の方向に電流を流すと、図8において、駆動力ベクトルF1に示すヨー補正方向の電磁力が発生し、補正レンズL7が基準位置から案内部105および回動案内溝124の案内に沿って、回動規制溝125が回動規制軸116に当接しない範囲内で移動する。一方、第2コイル127の所定の方向に電流を流すと、図8において、駆動力ベクトルF2に示すピッチ補正方向の電磁力が発生し、補正レンズL7が基準位置から案内部105の案内に沿って、回動規制溝125が回動規制軸116に当接しない範囲内で移動する。また、第1コイル126に逆方向の電流を流すと、補正レンズL7はヨー補正方向において逆の方向に移動し、第2コイル127に逆方向の電流を流すと、補正レンズL7はピッチ補正方向において逆の方向に移動する。
【0059】
〔7:他の実施形態〕
本発明に係るレンズ駆動装置は、前述の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正および変更が可能である。
【0060】
(1)
レンズ駆動装置100は、回動軸115を中心に補正レンズL7が回動するものであったが、このような構成に限られない。たとえば、固定部材102に対して移動部材101をバネ等で付勢して当接させ、固定部材102に対して移動部材101を二方向に完全に直線方向に移動可能に保持してもよい。
【0061】
(2)
ピッチアクチュエータ103とヨーアクチュエータ104とは、補正レンズL7を挟むように配置されていたが、このような構成に限られない。例えば、ピッチアクチュエータ103とヨーアクチュエータ104とは、補正レンズL7に対して同じ側に配置されていてもよい。
【0062】
(3)
第1磁石120が固定部材102に固定され、第1コイル126が移動部材101に固定されていてもよい。また、第2磁石121が固定部材102に固定され、第2コイル127が移動部材101に固定されていてもよい。
【0063】
(4)
レンズ駆動装置100により駆動される光学素子として、補正レンズL7に加えて又はその代わりに、光学像を電気信号に変換する撮像素子11を選択してもよい。その場合、上述したようなレンズ駆動装置100により、補正レンズL7および撮像素子11の少なくとも一方を駆動し、両者を相対的に移動させることにより、カメラ筐体2の振れを補正することができる。
【0064】
あるいは、レンズ駆動装置100により駆動される光学素子として、その他のレンズ、光軸を屈曲させるプリズムやミラーなどの屈曲素子等、撮像装置に用いられる全ての光学素子の中から適宜選択してもよい。
【0065】
(5)
撮像光学系Oは、上記実施形態のものに限られない。例えば、第1レンズ群L1、プリズム24、および、第2レンズ群L2全体で負のパワーを持っていてもよい。
【0066】
(6)
回動軸115を移動部材101に配置し、固定部材102に回動案内溝124を形成してもよい。このとき、移動部材101は、回動軸115を中心にピッチ補正方向に回転移動可能であり、回動軸115と回動案内溝124との摺動により、ヨー補正方向に直線移動可能である。
【0067】
(7)
補正レンズL7は、1枚のレンズだけでなく、複数のレンズで構成される補正レンズ群であってもよい。
【0068】
(8)
第2案内機構123と第2案内軸112とが2つの部分で接触してもよい。この場合、第1案内機構122と第1案内軸111との2つの接触部と、第2案内機構123と第2案内軸112との2つの接触部を結んでできる支持多角形(略四角形)の中に移動部分全体の重心Gが配置されることが望ましい。上述の実施形態では、第1磁石120および第2磁石121を、それぞれ第1案内機構122および第2案内機構123に、第2光軸A2方向から見て重複するように配置することにより、第1案内機構122と第2案内機構123とを近接して配置している。本変形例の場合、第1案内機構122と第1案内軸111との2つの接触部と、第2案内機構123と第2案内軸112との2つの接触部を結んでできる支持多角形(略四角形)の領域内に、安定して、移動部分全体の重心Gを配置できる。さらに、移動部分全体の重心Gにより近い位置に、第1案内機構122および第2案内機構123のうち、係合部のピッチ補正方向の大きさ(2つの接触部の距離)が大きい方を配置することで、より安定して移動部分全体の重心Gを支持四角形領域内に配置できる。
【0069】
(9)
長さaと長さcを等しく又は概ね等しく、かつWm1とWm2の大きさを等しく又は概ね等しくしてもよい。その場合、第1磁石120の取り付け方向性がなくなる。すなわち、第1磁石120の着磁後の方向管理を行う必要がなくなり、管理コストの低コスト化を図ることができる。
【0070】
(10)
上記実施形態では、第1磁石120を、1つの方向から見て3つの磁極が並ぶように着磁されている磁石としたが、1つの方向から見て4つ以上の磁極が並ぶように着磁されている磁石としてもよい。その場合、3本以上の分極線が平行に並ぶことになる。ヨーホールセンサ106は、そのような3本以上の分極線のうち、そのような分極線が並ぶ方向の端の分極線に対向する位置に配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るアクチュエータ等は、3以上の磁極が並ぶように着磁されている磁石を有するアクチュエータ等として有用であり、駆動性能を向上させることができる。特に、本発明に係るアクチュエータ等は、像振れ補正装置の薄型化と高精度化との両立が求められる分野において有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 デジタルカメラ
2 カメラ筐体
3 レンズ鏡筒
11 撮像素子
L7 補正レンズ
100 レンズ駆動装置
101 移動部材
102 固定部材
103 ピッチアクチュエータ
104 ヨーアクチュエータ
105 案内部
106 ヨーホールセンサ
107 ピッチホールセンサ
108 板部
109 壁部
110、131 開口
111 第1案内軸
112 第2案内軸
113 第1支持部
114 第2支持部
115 回動軸
116 回動規制軸
117 第3支持部
118 第4支持部
119 移動枠
120 第1磁石
121 第2磁石
122 第1案内機構
123 第2案内機構
124 回動案内溝
125 回動規制溝
126 第1コイル
127 第2コイル
128 第1分極線
129 第2分極線
130 第3分極線
G 移動部分全体の重心
O 撮像光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルに通電することにより発生する磁力を受けて前記コイルに対して移動可能な磁石と、
前記磁石の位置を検出する磁気検出素子を備え、
前記磁石は、前記コイルに対する移動方向に対して垂直な第1分極線、および前記第1分極線と平行な第2分極線を有しており、
前記コイルは、前記第1分極線に対向する位置に配置されており、
前記磁気検出素子は、前記第2分極線に対向する位置に配置されており、
前記第2分極線から前記磁石の前記磁気検出素子側の端部までの長さは、前記磁石の移動量の1.25倍以上である、
アクチュエータ。
【請求項2】
前記第2分極線から前記磁石の前記磁気検出素子側の端部までの長さは、前記磁石の移動量の1.5倍以上である、
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第2分極線から前記磁石の前記磁気検出素子側の端部までの長さは、前記第1分極線から前記磁石の前記コイル側の端部までの長さ以下である、
請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1分極線が配置される無着磁領域の幅は、前記第2分極線が配置される無着磁領域の幅以下である、
請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータである第1アクチュエータと、
第2アクチュエータと、
移動部材と、
第1方向及び前記第1方向と交差する第2方向に移動可能なように前記移動部材を支持する固定部材と、
を備え、
前記第1アクチュエータは、前記第1方向に前記移動部材を駆動し、
前記第2アクチュエータは、前記第2方向に前記移動部材を駆動する、
駆動装置。
【請求項6】
前記固定部材または前記移動部材の一方に配置された回動軸、
をさらに備え、
前記固定部材または前記移動部材の他方には、前記回動軸と係合している回動案内溝が形成されており、
前記移動部材は、前記回動軸を中心に前記第2方向に回転移動可能であり、前記回動軸と前記回動案内溝との摺動により、前記第1方向に直線移動可能である、
請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記磁気検出素子は、前記コイルよりも前記回動軸側に配置されている、
請求項6記載の駆動装置。
【請求項8】
前記回動軸の中心と、前記コイルの駆動中心と、前記磁気検出素子の中心とは、前記第1方向に実質的に直線的に並んで配置されている、
請求項6又は7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記移動部材は、光学素子を固定し、
前記光学素子の中心と、前記コイルの駆動中心と、前記磁気検出素子の中心とは、前記第1方向に実質的に直線的に並んで配置されている、
請求項7又は8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第1アクチュエータと、前記第2アクチュエータは、前記第1方向に前記光学素子を挟んで配置され、
前記固定部材と前記移動部材とは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向から見て、前記光学素子よりも前記第1アクチュエータ側に配置された第1規制部によって互いに係合し、前記第2アクチュエータ側に配置された第2規制部によって互いに係合し、前記第1規制部および前記第2規制部によって前記第3方向に相対的に移動しないように規制されており、
前記第1規制部の係合部の前記第2方向の大きさは、前記第2規制部の係合部の前記第2方向の大きさより、大きい、
請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第1規制部は、前記第3方向から見て、前記第1アクチュエータに重複する位置に配置されている、
請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
被写体を撮影可能な撮像装置であって、
前記被写体の光学像を画像信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子に対向して配置されるレンズを含み、前記撮像素子に前記被写体の光学像を出射する撮像光学系と、
前記レンズ及び前記撮像素子のいずれか一方を駆動する、請求項6から9のいずれかに記載の駆動装置と、
前記撮像素子、撮像光学系、及び前記駆動装置を収納する筐体と、
を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−120303(P2012−120303A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266827(P2010−266827)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】