説明

アクチュエータと計測点対応付け装置、その方法、およびプログラム

【課題】外乱の影響を受けることなく、アクチュエータの操作点とシートの幅方向の計測点との位置対応を高精度に検出することが可能なアクチュエータと計測点対応付け装置、アクチュエータと計測点対応付け方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】制御装置19のアクチュエータと計測点対応付け手段は、アクチュエータの操作量を時系列の所定パターンで変化させた場合のシートの厚み変化を計算モデルを使用して予め予測値として算出しておき、所定パターンで複数のアクチュエータを操作した場合に、計測手段で計測される実計測値を取得し、予測値と実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、各アクチュエータと計測点の対応位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータと計測点対応付け装置、アクチュエータと計測点対応付け方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関し、詳細には、シートの幅方向に配置された複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータの下流側に配置され、シートの幅方向の複数の計測点で当該シートの厚みを計測する計測手段とを有するプラントにおいて、アクチュエータと計測点の対応位置を検出するアクチュエータと計測点対応付け装置、アクチュエータと計測点対応付け方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムなどのシートは、溶融した樹脂を細長いリップ(口金)から押し出して延伸することによってシート状にされ、そのシートが巻取機によってロール状に巻き取られることによって製造される。図10は、シートのネッキング現象を説明するための図である。押出成形されるフィルムシートの厚さムラが生じる原因として、押し出されたフィルムシートが収縮する、いわゆるネッキング現象が知られている。図10に示すように、口金100から複数のアクチュエータ101により押し出されたフィルムシートは、幅方向に収縮し(1次ネッキング)、口金100のスリットの幅よりも狭くなっている。このネッキング現象は、プラスチック材料の粘弾性によって生じるものである。この後、フィルムシートは、縦延伸機201によって縦方向に延伸されて幅方向に収縮(2次ネッキング)し、横延伸機201によって幅方向に延伸された後、厚み計300で各アクチュエータ101に対応した計測位置でフィルムシートの厚みを測定する。そして、この測定結果に基づいて、フィルムシートの厚さが目標値になるように、各アクチュエータ101の操作量を制御している。
【0003】
しかしながら、フィルムシートのネッキング現象のためアクチュエータ101の操作点と厚み計300の計測位置とのズレが生じて、フィルムシートに厚さムラが生じるという問題がある。図10では、縦延伸機201および横延伸機201の下流側に厚み計300を配置した場合について説明したが、縦延伸機201および横延伸機201がなく、厚み計300が口金100の下流側に配置されている場合にも同様の問題が生じる。
【0004】
例えば、特許文献1では、抄紙機のシステム同定装置において、アクチュエータの操作点とシートの幅方向の測定点との位置対応を正確に検出するために、抄紙機のシステム同定装置において、操作前後での厚み変化量について、ウェーブレット変換により、操作量の幅方向拡がりから想定される厚み変化以外の要因を排除して、押出圧変化やノイズ等による外乱除去を行い、変化中心を強調検出する技術を開示している。
【0005】
【特許文献1】特開平9−49185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、押出変化やノイズによる外乱が、操作量の幅方向拡がりから想定される厚み変化に近い値となる場合に、変化中心の検出が困難であるため、外乱がある場合に、アクチュエータの操作点とシートの幅方向の計測点との位置対応を高精度に検出することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、外乱の影響を受けることなく、アクチュエータの操作点とシートの幅方向の計測点との位置対応を高精度に検出することが可能な
アクチュエータと計測点対応付け装置、アクチュエータと計測点対応付け方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、シートの幅方向に配置された複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの下流側に配置され、前記シートの幅方向の複数の計測点で当該シートの厚みを計測する計測手段とを有するプラントにおいて、前記アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出するアクチュエータと計測点対応付け装置であって、前記アクチュエータの操作量を時系列の所定パターンで変化させた場合の前記シートの厚み変化を計算モデルを使用して予め予測値として算出しておき、前記所定パターンで前記複数のアクチュエータを操作した場合に、前記計測手段で計測される実計測値を取得し、前記予測値と前記実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、前記各アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出することを特徴とする。
【0009】
本発明は、アクチュエータ操作時の厚み変化を計算モデルを使用して予測値を算出しておき、予測値と実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、各アクチュエータと計測点の対応位置を検出しているので、すなわち、アクチュエータの操作量を変化させてからシート厚みが時間的に変化していく過程を予測値と比較して、予測値に最も一致する成分だけを抽出して外乱除去を行っているため、外乱除去効果が高く、外乱の影響を受けることなく、アクチュエータの操作点とシートの幅方向の計測点との位置対応を高精度に検出することができる。
【0010】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、前記所定パターンは、ステップ状パターンであることを特徴とする。これにより、計測時間を短縮することができ、検出に要するコストを低減することができる。
【0011】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、前記相関は、共分散、相互相関関数、共分散と相互相関関数との積、窓関数と共分散または相互相関関数との積のいずれかであることを特徴とする。これにより、予測値と実計測値との相関を簡単かつ高精度に算出することができる。
【0012】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、前記相関値が最大値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする。これにより、対応位置を高精度かつ簡単に算出することができる。
【0013】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、前記相関値が閾値以上となる範囲を切り出し、その中間値または重心値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする。これにより、対応位置を高精度かつ簡単に算出することができる。
【0014】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、前記検出した各対応位置対応付けに加えて、前記シートの幅方向の高い周波数成分を除去することを特徴とする。これにより、近くに位置する対応点の位置(対応位置)が幅方向に大きくばらつかないという性質を利用して、位置誤差低減を行うことができる。
【0015】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け装置によれば、過去に検出した他の対応位置から最小二乗法等で内挿した結果と、今回検出した前記対応位置との平均を、最終的な対応位置とすることを特徴とする。これにより、他の対応点との整合性を確保することによって、突発的なノイズによる誤検出を排除することができる。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この本発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、シートの幅方向に配置された複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの下流側に配置され、前記シートの幅方向の複数の計測点で当該シートの厚みを計測する計測手段とを有するプラントにおいて、前記アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出するアクチュエータと計測点対応付け方法であって、前記アクチュエータの操作量を時系列の所定パターンで変化させた場合の前記シートの厚み変化を計算モデルを使用して予め予測値として算出しておく工程と、前記所定パターンで前記複数のアクチュエータを操作した場合に、前記計測手段で計測される実計測値を取得する工程と、前記予測値と前記実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、前記各アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出する工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、前記所定パターンは、ステップ状パターンであることを特徴とする。
【0018】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、前記相関は、共分散、相互相関関数、共分散と相互相関関数との積、窓関数と共分散または相互相関関数との積のいずれかであることを特徴とする。
【0019】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、前記相関値が最大値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする。
【0020】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、前記相関値が閾値以上となる範囲を切り出し、その中間値または重心値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする。
【0021】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、前記検出した各対応位置対応付けに加えて、前記シートの幅方向で高い周波数成分を除去することを特徴とする。
【0022】
また、この発明によるアクチュエータと計測点対応付け方法によれば、過去に検出した他の対応位置から最小二乗法等で内挿した結果と、今回検出した前記対応位置との平均を、最終的な対応位置とすることを特徴とする。
【0023】
また、この発明によるコンピュータが実行するためのプログラムによれば、上述のアクチュエータと計測点対応付け方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とする。これにより、上述のシート製造装置の制御方法をコンピュータを利用して実現できる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、アクチュエータ操作時の厚み変化を計算モデルを使用して予測値を算出しておき、予測値と実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、各アクチュエータと計測点の対応位置を検出しているので、外乱の影響を受けることなく、アクチュエータの操作点とシートの幅方向の計測点との位置対応を高精度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。下記実施の形態では、プラントとしてシート製造装置を例示して説明する。
【0026】
図1は、本発明に係るアクチュエータと計測点対応付け装置およびアクチュエータと計測点対応付け方法を適用したシート製造装置1の構成例を示す図である。シート製造装置1は、図1に示すように、延伸機12、押出機13、口金14、冷却ロール15、巻取機16、搬送ロール17、厚み計18、および制御装置19を備えている。
【0027】
押出機13から、加熱されて溶融した樹脂が押し出される。押出機13には、口金14が接続されている。口金14は長いスリットを有しており、溶融した樹脂は冷却ロール15で冷却されて凝固する。シート状の樹脂は搬送ロール17を介して搬送され、延伸機12で延伸される。延伸機12は、シート11を縦方向および/または幅方向に延伸する。
延伸機12から出たシート11は、厚み計18によって厚みを計測される。その後、シートは搬送ロール17を介して搬送され、巻取機16によって巻き取られる。
【0028】
厚み計18は、制御装置19に接続され、シート11の幅方向の複数の計測点で当該シート11の厚みを計測し、各計測点で計測したシートの厚みを示す信号を制御装置19に送信する。厚み計18は、接触式、非接触式のいずれでも良いが、非接触式のものは、シート11を損傷する危険が少なく好ましい。非接触式厚み計としては、光干渉式のほか、β線、X線、赤外線などを利用する光吸収式のものなどが例示される。
【0029】
制御装置19は、アクチュエータと計測点対応付け手段41(図8参照)と、シート厚み制御手段42(図8参照)とを備えており、厚み計18および口金14のアクチュエータ20(図2参照)に接続されている。アクチュエータと計測点対応付け手段41は、各アクチュエータ20と厚み計18の計測点の対応位置を検出する。シート厚み制御手段42は、厚み計18から入力されるシート11の厚みを示す信号に基づいて、口金14のアクチュエータ20を制御する。
【0030】
図2は口金14の構成例を示す図である。口金14は、スリットの長手方向に多数並んだアクチュエータ20を備えている。このアクチュエータ20は、制御装置19に接続され、制御装置19からの信号によって、スリット21から出るシート11の厚みを調整する。
【0031】
アクチュエータ20としては、例えば、ねじによりスリット21を押し引きするボルト材、内部にヒータを内蔵してそのヒータの加熱量に応じて熱膨張を制御することによりスリット21の押し引きをするヒートボルトなどがある。または、スリット21の一部を加熱すると樹脂流量が増すことを利用してシート11の厚みを調整することも可能である。
【0032】
図3は、アクチュエータと計測点対応付け手段41の制御を説明するためのフローである。図3において、まず、アクチュエータと計測点対応付け手段41は、初期計算処理を実行する(ステップS1)。具体的には、アクチュエータ20の操作量を時系列の所定パターンで変化させた場合のシート11の厚み変化の応答データ(予測値の時系列データ)Tppを、Tptn[sec]分、計算モデルで算出する。
【0033】
図4は、所定パターンの一例を示す図、図5は、図4の所定パターンに対応する応答データ(テンプレート)Tppの一例を示す図である。図4において、横軸は時間T、縦軸はアクチュエータの操作量を示している。図4に示すパターンは、ステップ状パターンとなっている。図5において、横軸は時間T、縦軸は厚み変化率を示している。計測時間を短縮するために、応答データの時系列観測期間は、操作から計測値までの時定数の所定倍数とすることが望ましい。なお、所定パターンとその応答データとを、予めテーブルとして記憶しておくことにしても良い。
【0034】
つぎに、一度に操作するアクチュエータ20の組み合わせCを決定する。例えば、アクチュエータ20間の相互干渉が無視できるアクチュエータ20の間隔が8本の場合は、8本単位の組み合わせとすることができる。例えば、8本間隔の組み合わせC=1〜8の場合には、以下に示す組み合わせでアクチュエータ20を駆動する(ただし、Noは、アクチュエータ20の番号)。
【0035】
C=1:No1,No9,No17,No25,・・・
C=2:No2,No10,No18,No26,・・・
C=3:No3,No11,No19,No27,・・・
C=4:No4,No12,No20,No28,・・・
C=5:No5,No13,No21,No29,・・・
C=6:No6,No14,No22,No30,・・・
C=7:No7,No15,No23,No31,・・・
C=8:No8,No16,No24,No32,・・・
【0036】
なお、一度に操作するアクチュエータ20の組み合わせCは如何なるものとしてもよく、例えば、1本単位としてもよい。また、収束計算の時間を短縮するために、アクチュエータ20と計測点の対応位置の初期値を用意しておくことが望ましい。
【0037】
後述するヒータ出力パターン出力処理(ステップS4)、応答データ処理(ステップS5)、仮対応位置決定処理(ステップS6)、および対応位置補正処理(ステップS7)では、初期値計算処理(ステップS1)で生成した所定パターンでアクチュエータ20を駆動し、シート厚みの変化として現れる応答パターンを検出して、各アクチュエータ20の計測点の対応位置(応答中心点)を算出する。これらのヒータ出力パターン出力処理(ステップS4)、応答データ処理(ステップS5)、仮対応位置決定処理(ステップS6)、対応位置補正処理(ステップS7)は、N回実行され、その都度、アクチュエータ20と計測点の対応位置が更新される。
【0038】
アクチュエータと計測点対応付け手段41は、カウンタIを初期化して、カウンタI=0とした後(ステップS2)、カウンタIを「1」インクリメントして、カウンタI=I+1とする(ステップS3)。
【0039】
アクチュエータと計測点対応付け手段41は、ヒータ出力パターン出力処理を実行する(ステップS4)。具体的には、上記ステップS1で決定したアクチュエータ20の組み合わせCで、アクチュエータ操作量をTptn[sec]の間、上記所定パターンで変化させる。他のアクチュエータ20については現在値を保持する。
【0040】
同時に、アクチュエータと計測点対応付け手段41は、応答データ処理を実行する(ステップS5)。具体的には、ステップS4にて変化させたシート厚みの変化の計測値(実計測値)を、厚み計18の計測周期毎に取得する。図6は、アクチュエータ20(No12)に対応するシート厚み変化量の実計測値の一例を説明するための図である。同図において、横軸はサンプリング回数、縦軸は、シートの厚み変化(μm)を示している。
【0041】
そして、実計測値と応答データ(予測値)Tppとの共分散を、下式(1)で計測点毎に算出する。このときy(n)に、各計測点の計測値を代入する。
【0042】
【数1】

【0043】
つぎに、アクチュエータと計測点対応付け手段41は、仮対応位置決定処理を実行する(ステップS6)。具体的には、共分散値が閾値以上である範囲を切り出し、その中間値または重心値をアクチュエータ20に対応する計測点の仮対応位置pとする。ここでは、共分散値を切り出す範囲を閾値以上とした場合について説明したが、アクチュエータ20の操作量を増減させた場合に、厚み変化がそれに追従して増減する範囲を切り出すことにしてもよい。図7は、アクチュエータ20の操作量を増減させた場合の厚み変化の一例を示す図である。同図において、横軸は計測点、縦軸は共分散を示している。また、共分散値の最大値を与える計測点を、アクチュエータ20に対応する計測点の仮対応位置pとすることにしてもよい。
【0044】
なお、実施例では、予測値と実計測値との時系列データの相関を算出する場合に、共分散を使用することとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、相互相関関数、共分散と相互相関関数との積、窓関数と共分散または相互相関関数との積を使用することにしてもよい。
【0045】
下式(2)は、相互相関関数の算出式を示している。
【数2】

【0046】
また、窓関数W(u)としては、例えば、ハニング窓やブラックマン窓等の各種窓関数を使用することができる。下式(3)はその一例である。
【0047】
【数3】

【0048】
つぎに、アクチュエータと計測点対応付け手段41は、対応位置補正処理を実行する(ステップS7)。具体的には、各アクチュエータ20に対応する計測点の仮対応位置pについて、両側M個隣接する仮対応位置pを選び出し、下式(4)で対応位置の補正を行う。
【0049】
【数4】

【0050】
なお、上記式(4)において、α(j)=1/(2・M+1)(全てのjについて)として、得られた各対応位置について、幅方向における高い空間周波数成分を除去することにしてもよい。
【0051】
また、上記式(4)において、M=1として、α(0)=0.5,α(1)=α(−1)=0.25とすると、隣接対応位置から最小二乗法で求めた値と仮対応位置の平均をとることになる。これによれば、2つの隣接対応位置の中間点の方向へ位置補正することができる。
【0052】
この後、アクチュエータと計測点対応付け手段41は、カウンタI≧Nであるか否かを判断し(ステップS8)、カウンタI≧Nである場合には(ステップS8の「Yes」)、当該フローを終了する一方、カウンタI≧Nでない場合には(ステップS8の「No」)、ステップS3に戻り、カウンタI≧Nとなるまで、同一の処理を繰り返し実行する(ステップS3〜ステップS7)。
【0053】
図8は、制御装置19の構成を示す図である。制御装置19は、アクチュエータと計測点対応付け手段41と、シート厚み制御手段42と、切替スイッチ43,44とを有している。
【0054】
切替スイッチ43は、アクチュエータ20との接続を、アクチュエータの計測点対応付け手段41とシート厚み制御手段42とで切り換える。切替スイッチ44は、厚み計18との接続を、アクチュエータと計測点対応付け手段41とシート厚み制御手段42とで切り換える。
【0055】
切替スイッチ43、44は、アクチュエータと計測点対応付け手段41がアクチュエータと計測点の対応付けを行う場合には、アクチュエータと計測点対応付け手段41をアクチュエータ20,厚み計18に接続する。アクチュエータと計測点対応付け手段41は、上述したように、各アクチュエータ20と厚み計18の計測点との対応位置を検出し、検出結果をシート厚み制御手段42に出力する。
【0056】
切替スイッチ43、44は、シート厚み制御手段42がシートの厚み制御を行う場合には、シート厚み制御手段42をアクチュエータ20,厚み計18に接続する。シート厚み制御手段42は、厚み計18から入力されるシート11の厚み計測値に基づいて、口金14のアクチュエータ20の操作量を制御する。この場合、シート厚み制御手段42は、アクチュエータと計測点対応付け手段41で検出された、各アクチュエータ20と厚み計18の計測点との対応位置の厚み計測値を使用して、各アクチュエータ20の操作量を制御する。これにより、均一な厚みのシートを製造することができる。
【0057】
以上説明したように、上記実施例によれば、アクチュエータと計測点対応付け手段41は、アクチュエータ20の操作時の厚み変化を計算モデルを使用して予測値を算出しておき、予測値と実計測値との時系列データの相関(例えば、共分散、相互相関関数、共分散と相互相関関数との積、窓関数と共分散または相互相関関数との積)を算出し、当該相関値に基づいて、各アクチュエータ20と厚み計18の計測点の対応位置を検出しているので、すなわち、アクチュエータの操作量を変化させてからシート厚みが時間的に変化していく過程を予測値と比較して、予測値に最も一致する成分だけを抽出して外乱除去を行っているため、外乱除去効果が高く、外乱の影響を受けることなく、アクチュエータ20の操作点とシート11の幅方向の計測点との位置対応を高精度に検出することができる。
【0058】
なお、前述した一実施例においては、制御装置19の機能を実現するためのプログラムを図9に示したコンピュータ読み取り可能な記録媒体60に記録して、この記録媒体60に記録されたプログラムを同図に示したコンピュータ50に読み込ませ、実行することにより各機能を実現してもよい。
【0059】
同図に示したコンピュータ50は、上記プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)51と、キーボード、マウス等の入力装置52と、各種データを記憶するROM(Read Only Memory)53と、演算パラメータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)54と、記録媒体60からプログラムを読み取る読取装置55と、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置56とから構成されている。
【0060】
CPU51は、読取装置55を経由して記録媒体60に記録されているプログラムを読み込んだ後、プログラムを実行することにより、前述した機能を実現する。なお、記録媒体60としては、光ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかるアクチュエータと計測点対応付け装置、アクチュエータと計測点対応付け方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムは、シート製造装置、押出成形機、抄紙機、コータ等の各種プラントに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例に係るシート製造装置の構成を示す図である。
【図2】口金の構成を示す図である。
【図3】アクチュエータと計測点対応付け手段の制御を説明するためのフローを示す図である。
【図4】アクチュエータを操作する所定パターンの一例を示す図である。
【図5】図4の所定パターンに対応する応答データ(テンプレート)の一例を示す図である。
【図6】厚み変化量の実計測値の一例を説明するための図である。
【図7】アクチュエータの操作量を上下方向に変更した場合の共分散の一例を示す図である。
【図8】図1の制御装置の構成例を示す図である。
【図9】本発明の一実施例を示す図である。
【図10】ネッキング現象を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1 シート製造装置
11 シート
12 延伸機
13 押出機
14 口金
15 冷却ロール
16 巻取機
17 搬送ロール
18 厚み計
19 制御装置
20 アクチュエータ
21 スリット
41 アクチュエータと計測点対応付け手段
42 シート厚み制御手段
43,44 切替スイッチ
50 コンピュータ
51 CPU
52 入力装置
53 ROM
54 RAM
55 読取装置
56 出力装置
60 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの幅方向に配置された複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの下流側に配置され、前記シートの幅方向の複数の計測点で当該シートの厚みを計測する計測手段とを有するプラントにおいて、前記アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出するアクチュエータと計測点対応付け装置であって、
前記アクチュエータの操作量を時系列の所定パターンで変化させた場合の前記シートの厚み変化を計算モデルを使用して予め予測値として算出しておき、
前記所定パターンで前記複数のアクチュエータを操作した場合に、前記計測手段で計測される実計測値を取得し、
前記予測値と前記実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、前記各アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出することを特徴とするアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項2】
前記所定パターンは、ステップ状パターンであることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項3】
前記相関は、共分散、相互相関関数、共分散と相互相関関数との積、窓関数と共分散または相互相関関数との積のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項4】
前記相関値が最大値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項5】
前記相関値が閾値以上となる範囲を切り出し、その中間値または重心値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項6】
前記検出した各対応位置対応付けに加えて、前記シートの幅方向で高い周波数成分を除去することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項7】
過去に検出した他の対応位置から最小二乗法等で内挿した結果と、今回検出した前記対応位置との平均を、最終的な対応位置とすることを特徴とするアクチュエータと計測点対応付け装置。
【請求項8】
シートの幅方向に配置された複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの下流側に配置され、前記シートの幅方向の複数の計測点で当該シートの厚みを計測する計測手段とを有するプラントにおいて、前記アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出するアクチュエータと計測点対応付け方法であって、
前記アクチュエータの操作量を時系列の所定パターンで変化させた場合の前記シートの厚み変化を計算モデルを使用して予め予測値として算出しておく工程と、
前記所定パターンで前記複数のアクチュエータを操作した場合に、前記計測手段で計測される実計測値を取得する工程と、
前記予測値と前記実計測値との時系列データの相関を算出し、当該相関値に基づいて、前記各アクチュエータと前記計測点の対応位置を検出する工程と、
を含むことを特徴とするアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項9】
前記所定パターンは、ステップ状パターンであることを特徴とする請求項8に記載のアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項10】
前記相関は、共分散、相互相関関数、共分散と相互相関関数との積、窓関数と共分散または相互相関関数との積のいずれかであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項11】
前記相関値が最大値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項12】
前記相関値が閾値以上となる範囲を切り出し、その中間値または重心値となる計測点を、前記対応位置とすることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項13】
前記検出した各対応位置対応付けに加えて、前記シートの幅方向で高い周波数成分を除去することを特徴とする請求項8〜請求項12のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項14】
過去に検出した他の対応位置から最小二乗法等で内挿した結果と、今回検出した前記対応位置との平均を、最終的な対応位置とすることを特徴とする請求項8〜請求項13のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け方法。
【請求項15】
請求項8〜請求項14のいずれか1つに記載のアクチュエータと計測点対応付け方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータが実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−255944(P2006−255944A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73289(P2005−73289)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】