説明

アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置

【課題】小型化を図りつつ、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定してかつ大きく回動させることのできるアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】光スキャナー1は、支持部3と、光反射性を有する光反射部22を備える可動板2と、支持部3に対して変位可能に設けられた駆動部41と、駆動部41と可動板2とを連結する第1の軸部42とを備え、可動板2を支持部3に対して変位可能に連結する連結部4を含む4つの連結部と、駆動部41の中心に対して可動板2側の規制位置で第1の軸部42が可動板2の厚さ方向に変位するのを局所的に規制する1対の捩り梁部44とを有し、駆動部41の変位に伴って、1対の捩り梁部44の規制位置を支点として第1の軸部42を回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザープリンター等にて光走査により描画を行うための光スキャナーとして、捩り振動系のアクチュエーターを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、一対の永久磁石が設けられた絶縁基板と、一対の永久磁石の間に位置するように絶縁基板に支持されたスキャナー本体とを有するアクチュエーターが開示されている。また、スキャナー本体は、枠状の支持部と、支持部の内側に設けられた枠状の外側可動板と、外側可動板の内側に設けられた内側可動板(ミラー)とを有している。また、外側可動板は、X軸方向に延在する一対の第1トーションバーを介して支持部に連結されており、内側可動板は、X軸方向と直交するY軸方向に延在する第2トーションバーを介して外側可動板に連結している。また、外側可動板および内側可動板には、それぞれコイルが設けられている。
このような構成のアクチュエーターでは、通電により各コイルから発生する磁界と一対の永久磁石間に発生する磁界とを作用させることにより、外側可動板が内側可動板とともに第1トーションバーを中心軸としてX軸まわりに回動し、内側可動板が第2トーションバーを中心軸としてY軸まわりに回動する。
【0003】
このように、特許文献1のアクチュエーターでは、内側可動板をX軸まわりに回動させる機構と、Y軸まわりに回動させる機構とが異なっている。そのため、内側可動板をX軸およびY軸まわりに等しい条件で回動させることができない。また、特許文献1のアクチュエーターでは、外側可動板に設けられたコイルから発生する磁場と、内側可動板に設けられたコイルから発生する磁場とが干渉し、内側可動板をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに独立して回動させることができない。したがって、特許文献1のアクチュエーターでは、内側可動板をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができないという問題がある。
また、特許文献1のアクチュエーターでは、内側可動板および外側可動板の回動角を大きくすると、大型化を招いてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−322227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、小型化を図りつつ、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定してかつ大きく回動させることのできるアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエーターは、光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ変位可能な可動板と、
変位可能な駆動部、前記駆動部と前記可動板とを連結する軸部、を備え、前記可動板に連結される3つまたは4つの連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、
前記駆動部の中心に対して前記可動板側の規制位置で前記駆動部または前記軸部に連結され、当該規制位置において当該駆動部または当該軸部が前記可動板の厚さ方向に変位するのを規制する規制部とを有し、
前記駆動部の変位に伴って、前記規制位置を支点として前記軸部を回動させることを特徴とする。
【0007】
このような構成を有するアクチュエーターによれば、可動板を互いに直交する2つの軸の一方の軸まわりの回動と他方の軸まわりの回動とを独立して行うことができる。そのため、可動板を互いに直交する2つの軸まわりにそれぞれ安定して回動させることができる。
また、規制部で規制された規制位置を支点として軸部を回動させることにより、軸部の長さを抑えつつ可動板の回動角を大きくすることができる。
【0008】
本発明のアクチュエーターでは、前記規制部は、前記軸部と前記支持部とを連結する1対の捩り梁部を有することが好ましい。
これにより、駆動部を支持部に対して変位させることにより、軸部の途中を支点として軸部を回動させることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記連結部は、前記駆動部と前記支持部とを連結する1対の曲げ梁部を備えることが好ましい。
これにより、駆動部を可動板の厚さ方向以外に変位するのを防止しつつ、駆動部を可動板の厚さ方向に変位させることができる。
【0009】
本発明のアクチュエーターでは、前記規制部は、前記駆動部と前記支持部とを連結する1対の捩り梁部を有することが好ましい。
これにより、駆動部を支持部に対して変位させることにより、駆動部の一部を支点として軸部を回動させることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記軸部は、当該軸部に作用する応力を緩和する応力緩和部を備えることが好ましい。
これにより、可動板側から軸部が受ける応力(捩りトルク)を応力緩和部で緩和することができ、その応力が駆動部側へ伝わるのを防止または抑制することができる。そのため、各軸部が他の軸部の屈曲の影響を受けるのを防止または抑制しつつ各軸部を屈曲させることができる。
【0010】
本発明のアクチュエーターでは、前記軸部は、前記応力緩和部と前記駆動部との間に設けられた駆動部側軸部を備えることが好ましい。
これにより、規制部で規制された規制位置を支点として駆動部側軸部を回動させることができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記軸部は、前記駆動部側軸部と前記駆動部とを連結する曲げ梁部を備えることが好ましい。
これにより、規制部で規制された規制位置を支点として軸部を回動させる際に、駆動部側軸部と駆動部との間の応力を緩和することができる。その結果、可動板の回動がより円滑なものとなる。
【0011】
本発明のアクチュエーターでは、前記各応力緩和部は、蛇行した形状をなす部分を有することが好ましい。
これにより、可動板側から軸部が受ける応力(捩りトルク)を応力緩和部で緩和することができ、駆動部側へ伝わるのを防止または抑制することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記可動板を変位させる変位付与部をさらに有し、
前記変位付与部は、前記各連結部の前記駆動部にそれぞれ設けられた永久磁石と、該永久磁石に作用する磁界を発生するコイルとを備えることが好ましい。
これにより、変位手段の構成が簡単となる。また、電磁駆動であるため大きな力を発生することができる。
本発明のアクチュエーターでは、前記永久磁石は、前記可動板の厚さ方向に両極が対向するように設けられており、前記コイルは、前記可動板の厚さ方向の磁界を発生させるように設けられていることが好ましい。
これにより、効率的に駆動部を可動板の厚さ方向に変位させることができる。
【0012】
本発明の光スキャナーは、光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ変位可能な可動板と、
変位可能な駆動部、前記駆動部と前記可動板とを連結する軸部、を備え、前記可動板に連結される3つまたは4つの連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、
前記駆動部の中心に対して前記可動板側の規制位置で前記駆動部または前記軸部に連結され、当該規制位置において当該駆動部または当該軸部が前記可動板の厚さ方向に変位するのを規制する規制部とを有し、
前記駆動部の変位に伴って、前記規制位置を支点として前記軸部を回動させることを特徴とする。
これにより、小型化を図りつつ、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定してかつ大きく回動させることができる。
【0013】
本発明の画像形成装置は、光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーとを有し、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ変位可能な可動板と、
変位可能な駆動部、前記駆動部と前記可動板とを連結する軸部、を備え、前記可動板に連結される3つまたは4つの連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、
前記駆動部の中心に対して前記可動板側の規制位置で前記駆動部または前記軸部に連結され、当該規制位置において当該駆動部または当該軸部が前記可動板の厚さ方向に変位するのを規制する規制部とを有し、
前記駆動部の変位に伴って、前記規制位置を支点として前記軸部を回動させることを特徴とする。
これにより、小型化を図りつつ、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定してかつ大きく回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光スキャナー(アクチュエーター)の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す光スキャナーの断面図(図1中A−A線断面図)である。
【図3】図1に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図である。
【図4】図1に示す光スキャナーの駆動を説明する図である。
【図5】本発明の光スキャナー(アクチュエーター)の第2実施形態を示す平面図である。
【図6】図5に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図である。
【図7】本発明の光スキャナー(アクチュエーター)の第3実施形態を示す平面図である。
【図8】本発明の画像形成装置の概略を示す図である。
【図9】図8に示す画像形成装置を用いた描画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明するが、本発明のアクチュエーターは、例えば、光スイッチ、光アッテネーター等の光スキャナー以外の光学デバイスにも適用可能である。
【0016】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光スキャナー(アクチュエーター)の第1実施形態を示す平面図、図2は、図1に示す光スキャナーの断面図(図1中A−A線断面図)、図3は、図1に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図、図4は、図1に示す光スキャナーの駆動を説明する図である。
【0017】
なお、以下では、説明の便宜上、図1中の左側を「左」、右側を「右」と言い、図2、4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1、3では、それぞれ、説明の便宜上、互いに直交する3軸としてX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸方向に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
図1および図2に示す光スキャナー1は、可動板2、支持部3および4つの連結部4、5、6、7で構成された振動構造体11と、振動構造体11を支持する基台12と、可動板2を変位させる変位手段8とを有している。以下、光スキャナー1の各構成について順次詳細に説明する。
【0018】
1−1.振動構造体11
本実施形態では、振動構造体11(すなわち、可動板2、支持部3および4つの連結部4、5、6、7)は、例えばシリコン基板やSOI基板の不要部位をドライエッチングおよびウェットエッチング等の各種エッチング法により除去することにより一体的に形成されている。
【0019】
可動板2は、所定の軸回りに変位可能に構成されている。具体的には、可動板2に接続された4つの連結部4、5、6、7の動作によって、互いに直交する2つの軸、X1軸およびY1軸回りにそれぞれ回動変位する。
支持部3は、可動板2を支持する機能を有する。具体的には、支持部3は、4つの連結部4、5、6、7を介して可動板2を支持する。
この支持部3は、互いに離間して設けられた4つの支持部31、32、33、34で構成されている。
【0020】
支持部31および支持部32は、互いにY軸方向に間隔を隔てて位置し、同様に、支持部33および支持部34は、互いにY軸方向に間隔を隔てて位置している。また、支持部31および支持部34は、互いにX軸方向に間隔を隔てて位置し、同様に、支持部32および支持部33は、互いにX軸方向に間隔を隔てて位置している。
また、支持部31および支持部33が可動板2を介して位置しているとともに、支持部32および支持部34が可動板2を介して位置している。
【0021】
支持部31〜34は、それぞれ、平面視にて、X軸方向に延びる1対の辺と、Y軸方向に延びる1対の辺とを有する四角形(より具体的には正方形)をなしている。
このような4つの支持部31、32、33、34で構成された支持部3は、平面視にて可動板2の周囲を囲むように設けられている。
なお、支持部3は、連結部4〜7を介して可動板2を支持することができるものであれば、前述したものに限定されず、例えば、可動板2の外周を囲むように枠状をなす一部材で構成されていてもよい。
【0022】
可動板2は、平板状をなし、一方の面(基台12と反対側の面)には、光反射性を有する光反射部22が形成されている。光反射部22は、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属膜などを蒸着等により形成することにより得られる。
なお、本実施形態では、可動板2の平面視形状は、円形であるが、可動板2の平面視形状としては、特に限定されず、例えば長方形、正方形等の多角形、楕円形等であってもよい。
【0023】
このような可動板2は、4つの連結部4、5、6、7によって支持部3に連結されている。各連結部4、5、6、7は、X軸およびY軸の双方に平行な面(仮想面)に沿って設けられている。具体的には、4つの連結部4、5、6、7は、可動板2の平面視にて(Z軸方向からみたとき)、可動板2の外周に沿って周方向に等角度間隔、すなわち90度間隔で配置されている。
【0024】
そして、4つの連結部4、5、6、7のうち、連結部4、6は、可動板2を介してX軸方向に対向しかつ可動板2に対して対称的に形成されており、連結部5、7は、可動板2を介してY軸方向に対向しかつ可動板2に対して対称的に形成されている。このような連結部4、5、6、7によって可動板2を支持することにより、可動板2を安定した状態で支持することができる。また、制御を容易なものとしつつ、可動板2を互いに直交する2つの軸まわりにそれぞれ安定して回動させることができる。
【0025】
より具体的に説明すると、連結部(第1の連結部)4は、駆動部41と、駆動部41と可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)42と、駆動部41と支持部31、32とを連結する一対の第2の軸部(梁部)43と、1対の捩り梁部44とを有している。同様に、連結部(第3の連結部)5は、駆動部51と、駆動部51と可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)52と、駆動部51と支持部32、33とを連結する一対の第2の軸部(梁部)53と、1対の捩り梁部54とを有している。また、連結部(第2の連結部)6は、駆動部61と、駆動部61と可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)62と、駆動部61と支持部33、34とを連結する一対の第2の軸部(梁部)63と、1対の捩り梁部64とを有している。また、連結部(第4の連結部)7は、駆動部71と、駆動部71と可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)72と、駆動部71と支持部31、34とを連結する一対の第2の軸部(梁部)73と、1対の捩り梁部74とを有している。
各連結部4、5、6、7をこのような構成とすることにより、連結部の構成が簡単となるとともに、後述するように可動板2の回動中心軸X1、Y1まわりの回動等をスムーズに行うことができる。
【0026】
以下、連結部4を代表してさらに詳述する。なお、連結部4、5、6、7の構成は、互いに同様であるため、他の連結部5、6、7については、その説明を省略する。ただし、連結部5、7は、可動板2の平面視にて、連結部4に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、連結部5、7については、下記の連結部4の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」、「X軸方向」を「Y軸方向」と適宜読み替えることで説明することができる。
【0027】
図3に示すように、一対の第2の軸部43は、駆動部41を介してY軸方向に対向配置されており、互いに同軸的に設けられ、駆動部41を両持ち支持している。ここで、図3では図示しないが、1対の第2の軸部43は、一方の軸部43が支持部31に接続され、他方の軸部43が支持部32に接続されている(図1参照)。また、一対の第2の軸部43は、それぞれ、Y軸方向に延在する棒状をなしている。このような一対の第2の軸部43は、Z軸方向に曲げ変形可能となっている。これにより、駆動部41は、Z軸方向に変位可能となっている。また、一対の第2の軸部43は、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。これにより、駆動部41が回動可能となっている。また、このような1つの第2の軸部43を介して駆動部41を支持部3に対して支持することにより、駆動部41を可動板2の厚さ方向以外(Z軸方向以外)に変位するのを防止しつつ、駆動部41を可動板2の厚さ方向(Z軸方向)に変位させることができる。
【0028】
駆動部41は、可動板2に対してX軸方向に離間して設けられている。また、駆動部41は、前述したように一対の第2の軸部43によって両持ち支持されている。このような駆動部41には、永久磁石811が固定されている。永久磁石811は、例えば、接着剤によって、駆動部41に固定されている。この永久磁石811は、変位手段8の一部を構成する。なお、永久磁石811の詳細については、変位手段8の説明とともに後述する。
【0029】
また、本実施形態では、駆動部41の平面視形状(平面視での外形)は、Y軸方向を長手とする長方形である。駆動部41をこのような形状とすることにより、永久磁石811を固定するスペースを確保しつつ、駆動部41の幅(X軸方向の長さ)を抑えることができる。駆動部41の幅を抑えることにより、駆動部41が回動中心軸Y2まわりに回動する際に発生する慣性モーメントを抑えることができ、駆動部41の反応性が高まり、より高速な回動が可能となる。また、駆動部41の反応性が高まると、駆動部41の回動(特に回動方向が切り替わる切り返しの時)によって、不本意な振動が発生するのを抑えることができる。そのため、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
【0030】
なお、駆動部41の平面視形状としては、特に限定されず、例えば、正方形や五角形以上の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
このような駆動部41は、第1の軸部42によって可動板2と連結されている。第1の軸部42は、全体的にX軸方向に延在するように設けられている。このような第1の軸部42は、応力緩和部421と、駆動部側軸部422と、曲げ梁部423とを有している。
【0031】
駆動部側軸部422は、X軸方向に延在する棒状をなしている。本実施形態では、駆動部側軸部422は、その横断面積が応力緩和部421や曲げ梁部423の横断面積よりも大きい。
この駆動部側軸部422は、光スキャナー1の駆動時に大きな変形が起こらない硬さに設定されているのが好ましく、実質的に変形しない硬さに設定されているとより好ましい。これに対して、後述するように応力緩和部421は捩じり変形可能となっている。このように、第1の軸部42が実質的に変形しない硬い部分およびその先端側に位置する捩じり変形可能な部位を有することにより、後述するように、可動板2をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができる。なお、前記「変形しない」とは、Z軸方向への屈曲または湾曲および中心軸まわりの捩じり変形が実質的に起きないことを言う。
【0032】
このような駆動部側軸部422は、駆動部41のZ軸方向での変位に伴って、後述する1対の捩り梁部44(規制部)で規制(支持)された規制位置(支持位置)を支点として回動する。
このような駆動部側軸部422は、前述した駆動部41に対して曲げ梁部423を介して連結されている。
【0033】
曲げ梁部423は、X軸方向に延在しており、駆動部側軸部422と同軸的に設けられている。また、曲げ梁部423は、その横断面積が前述した駆動部側軸部422の横断面積よりも小さい。これにより、曲げ梁部423は、Z軸方向に曲げ変形可能となっている。このように曲げ梁部423を介して駆動部41と駆動部側軸部422が連結されていることにより、後述する1対の捩り梁部44(規制部)で規制された規制位置を支点として第1の軸部42を回動させる際に、駆動部側軸部422と駆動部41との間の応力を緩和することができる。その結果、可動板2の回動がより円滑なものとなる。また、駆動部41の姿勢変化を抑えつつ、駆動部側軸部422を傾けることができ、この点でも、可動板2の回動をより円滑なものとすることができる。
また、駆動部側軸部422は、応力緩和部421を介して可動板2に連結している。応力緩和部421は、第1の軸部42が屈曲変形する際の節となる機能と、可動板2側から第1の軸部42が受ける捩りトルクを緩和(吸収)し、前記トルクが駆動部側軸部422に伝わるのを防止または抑制する機能とを有している。
【0034】
図3に示すように、応力緩和部421は、X軸方向およびY軸方向に交互に延在するように蛇行したミアンダー構造をなしている。
より具体的に説明すると、応力緩和部421は、可動板2に接続され、X軸方向に延在する第1の延在部4211と、第1の延在部4211の端部からY軸方向に延出する第2の延在部4212と、第2の延在部4212の端部からX軸方向に延出する第3の延在部4213と、第3の延在部4213の端部からY軸方向に延出する第4の延在部4214と、第4の延在部4214の端部からX軸方向に延出する第5の延在部4215と、第5の延在部4215の端部からY軸方向に延出する第6の延在部4216と、第6の延在部4216の端部からX軸方向に延出し駆動部側軸部422に接続される第7の延在部4217とを有している。
【0035】
X軸方向に延在する4つの延在部4211、4213、4215、4217のうちの第1の延在部4211および第7の延在部4217は、それぞれ、XY平面視にて回動中心軸X1上に設けられており、第3の延在部4213および第5の延在部4215は、XY平面視にて、回動中心軸X1に対して互いに反対側に設けられている。なお、第3の延在部4213および第5の延在部4215の回動中心軸X1との離間距離は互いに等しいことが好ましい。
【0036】
一方、Y軸方向に延在する3つの延在部4212、4214、4216のうちの第4の延在部4214は、XY平面視にて、回移動中心軸X1を跨いで設けられており、第2の延在部4212および第6の延在部4216は、XY平面視にて、回動中心軸X1に対して互いに反対側に設けられている。なお、これら3つの延在部4212、4214、4216は、X軸方向に等ピッチで並んでいるのが好ましい。すなわち第2の延在部4212と第4の延在部4214の離間距離と、第4の延在部4214と第6の延在部4216の離間距離が等しいことが好ましい。
【0037】
以上説明した7つの延在部4211〜4217は、それぞれ、その中心軸まわりに捩じり変形可能であり、また湾曲変形可能でもある。
このような応力緩和部421では、各延在部4211〜4217が捩じり変形および湾曲変形の少なくとも一方の変形をすることにより、第4の延在部4214(中心軸Y4)を軸にして第1の軸部42を屈曲させることができ、また、可動板2側から第1の軸部42が受ける捩りトルクを緩和することができる。
【0038】
また、前述した駆動部側軸部422は、1対の捩り梁部44を介して支持部31、32に連結されている。
この1対の捩り梁部44は、それぞれY軸方向に延在し、互いに同軸的に設けられ、中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このような1対の捩り梁部44は、後述するように、駆動部41を上下動させた際に、駆動部側軸部422の1対の捩り梁部44との接続部がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に変位するのを規制しつつ、捻れ変形する。そのため、駆動部41を上下動させると、駆動部側軸部422を1対の捩り梁部44を中心として回動させることができる。
【0039】
ここで、1対の捩り梁部44は、駆動部41の中心に対して可動板2側に位置する規制位置で第1の軸部42が可動板2の厚さ方向(すなわちZ軸方向)に変位するのを局所的に規制する規制部を構成する。
そのため、駆動部41を支持部3に対してZ軸方向に変位させることにより、1対の捩り梁部44で規制された規制位置(より具体的には捩り梁部44の中心軸)を支点として第1の軸部42(より具体的には駆動部側軸部422)を回動させることができる。これにより、第1の軸部42の長さを抑えつつ可動板2の回動角を大きくすることができる。
このように第1の軸部42と支持部3とを連結する1対の捩り梁部44で上記規制部を構成することにより、駆動部41のZ軸方向での変位に伴って、第1の軸部42の途中を支点として第1の軸部42を回動させることができる。
【0040】
また、1対の捩り梁部44の中心軸と前述した第2の軸部43の中心軸との間の距離をL1とし、応力緩和部421の中心(屈曲の中心)と1対の捩り梁部44の中心軸との間の距離をL2としたとき、L2>L1なる関係を満たしている。本実施形態では、1対の捩り梁部44は、駆動部側軸部422の駆動部41側の端部に接続されている。これにより、上記距離L1を上記距離L2よりも小さくすることができる。このようにL2>L1なる関係を満たしていると、可動板2の回動角を大きくすることができる。ここで、1対の捩り梁部44は、可動板2の回動角を拡大させる機能を有すると言える。
なお、L1=L2、または、L1>L2なる関係を満たしていてもよい。この場合、L2>L1なる関係を満たす場合に比し、可動板2の回動角は小さくなるが、可動板2の姿勢をより高精度に制御することができる。
【0041】
1−3.変位手段8
図1に示すように、変位手段8は、永久磁石811およびコイル812を有する第1の変位手段81と、永久磁石821およびコイル822を有する第2の変位手段82と、永久磁石831およびコイル832を有する第3の変位手段83と、永久磁石841およびコイル842を有する第4の変位手段84とを有している。
【0042】
そして、第1の変位手段81は、連結部4に対応して設けられており、第2の変位手段82は、連結部5に対応して設けられており、第3の変位手段83は、連結部6に対応して設けられており、第4の変位手段84は、連結部7に対応して設けられている。
このような構成によれば、変位手段8の構成が簡単となる。また、変位手段8を電磁駆動とすることにより、比較的大きな駆動力を発生させることができ、可動板2をより確実に回動させることができる。また、各連結部4、5、6、7に1つの変位手段が設けられているため、各連結部4、5、6、7を独立して変形させることができる。そのため、後述するように、可動板2を様々な態様で変位させることができる。
【0043】
以下、第1の変位手段81について代表して詳述する。なお、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84について、第1の変位手段81と同様の構成であるため、その説明を省略する。ただし、第2の変位手段82および第4の変位手段84は、可動板2の平面視にて、第1の変位手段81に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、第2の変位手段82および第4の変位手段84については、下記の第1の変位手段81の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」、「X軸方向」を「Y軸方向」と適宜読み替えることにより説明することができる。
【0044】
図2に示すように、永久磁石811は、棒状をなしており、その長手方向に磁化している。すなわち、永久磁石811は、その長手方向の一端側(本実施形態では下側)がS極となっており、他端側(本実施形態では上側)がN極となっている。このような永久磁石811は、駆動部41の下面のほぼ中央部に固定されている。なお、永久磁石811の上側がS極、下側がN極であってもよい。
【0045】
なお、永久磁石811は、駆動部41をZ軸方向に貫通して設けられていてもよい。この場合、駆動部41に対して下側だけでなく上側にもコイルを設けるのが好ましい。また、永久磁石811は、駆動部41の上面に設けられていてもよい。この場合、駆動部41に対して上側にコイルを設けるのが好ましい。
このような永久磁石811としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0046】
コイル812は、永久磁石811に作用する磁界を発生する。
本実施形態では、コイル812は、駆動部41に対して下側に設けられている。このようなコイル812は、基台12の上面上に設けられている。
このようなコイル812は、Z軸方向の磁界を発生させることができるように設けられている。
【0047】
すなわち、コイル812は、通電により、コイル812の永久磁石811側がN極となりその反対側がS極となる状態、または、コイル812の永久磁石811側がS極となりその反対側がN極となる状態の磁界を発生させるように設けられている。
これにより、効率的に駆動部41を可動板2の厚さ方向(Z軸方向)に変位させることができる。
【0048】
より具体的に説明すると、コイル812は、筒状をなし、その軸線がZ軸方向に延在するように設けられている。
また、コイル812は、永久磁石811の下端部を囲むように設けられている。言い換えると、永久磁石811の下端部がコイル812の内側に臨むように設けられている。
特に、本実施形態では、図2に示すように、Y軸方向からみたとき、コイル812の軸線は、永久磁石811の中心および駆動部41の中心を通る。そのため、コイル812の磁界の作用により永久磁石811および駆動部41を効率的にZ軸方向に変位させることができる。
【0049】
このようなコイル812は、図示しない電源に電気的に接続されている。かかる電源からコイル812に所望の電圧を印加することにより、コイル812から前述したような磁界を発生させることができる。コイル812に印加する電圧としては、周期的に電圧値が変化するものであれば、交番電圧であってもよいし、直流電圧であってもよい。また、コイル812に交番電圧を印加する際には、その強さ、周波数を変更してもよく、また、オフセット電圧(直流電圧)を重畳してもよい。
【0050】
2.光スキャナー1の作動
次いで、光スキャナーの作動について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、永久磁石811、821、831、841が全てN極を上側にして配置された構成について代表して説明する。
<回動中心軸Y1まわりの回動>
図4に示すように、可動板2を回動中心軸Y1を中心として時計回りに回動させるには、コイル812の永久磁石811側がN極、コイル832の永久磁石831側がS極となる第1の状態(以下、単に「第1の状態」とも言う)となるように、図示しない電源からコイル812、832に電圧を印加する。
【0051】
この第1の状態では、永久磁石811のS極がコイル812に引き付けられるため、1対の第2の軸部43を曲げ変形させつつ、駆動部41が下側に変位する。
【0052】
同様に、第1の状態では、1対の第2の軸部63を曲げ変形させつつ、駆動部61が上側に変位する。
このように、第1状態では、駆動部41が下側に変位するとともに、駆動部61が上側に変位する。
この駆動部41の変位(上下動)に伴って、駆動部側軸部422が可動板2側の端を上側に向けるように傾斜する。特に、その際、駆動部側軸部422は、1対の捩り梁部44を介して支持部31、32に連結されているので、1対の捩り梁部44の捩り変形を伴って、1対の捩り梁部44を中心として傾斜する。これにより、可動板2の連結部4側の端が上方に変位する。
このとき、第1の状態では、連結部4の第1の軸部42がその途中にある応力緩和部421で上側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)する。
同様に、駆動部61の変位に伴って、可動板2の連結部6側の端が下方に変位する。
これにより、回動中心軸Y1を中心として、可動板2が図4中時計回りに傾斜する。
【0053】
一方、可動板2を回動中心軸Y1を回動中心として反時計回りに回動させるには、前述した第1の状態と逆の状態、すなわち、コイル812の永久磁石811側がS極、コイル832の永久磁石831側がN極となる第2の状態(以下、単に「第2の状態」とも言う)となるように、コイル812、832に電圧を印加する。
第2の状態では、前述した第1の状態と逆の変形が起こる。これにより、回動中心軸Y1を中心として、可動板2が図4中反時計回りに傾斜する。
このような第1の状態と、第2の状態とを交互に切り替えることによって、可動板2を回動中心軸Y1まわりに回動させることができる。なお、可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動は、連結部5、7の第1の軸部52、72の捩じり変形によって許容される。
【0054】
<回動中心軸X1まわりの回動>
前述した可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動と同様に、回動中心軸X1を中心として、可動板2を回動させることができる。なお、可動板2の回動中心軸X1まわりの回動は、連結部4、6が有する第1の軸部42、62の捩じり変形により許容される。
前述したような回動中心軸X1まわりの回動と、回動中心軸Y1まわりの回動とを同時に行うことにより、可動板2を回動中心軸Y1および回動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに2次元的に回動させることができる。
【0055】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の光スキャナー(アクチュエーター)の第2実施形態を示す平面図、図6は、図5に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図である。
以下、第2実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0056】
第2実施形態の光スキャナーは、第1の軸部と駆動部との接続形態が異なるとともに、第2の軸部を省略した以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の光スキャナー1Aは、前述した第1実施形態の光スキャナー1において、連結部4〜7に代えて、連結部4A〜7Aを備える。より具体的には、光スキャナー1Aは、前述した第1実施形態の光スキャナー1において、第2の軸部43、53、63、73を省略するとともに、第1の軸部42、52、62、72に代えて、第1の軸部42A、52A、62A、72Aを備える。
【0057】
以下、連結部4Aを代表してさらに詳述する。なお、連結部4A、5A、6A、7Aの構成は、互いに同様であるため、他の連結部5A、6A、7Aについては、その説明を省略する。
連結部(第1の連結部)4Aは、駆動部41と、駆動部41と可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)42Aとを有している。
【0058】
第1の軸部42Aは、前述した第1実施形態の第1の軸部42において、曲げ梁部423を省略したものと同様の構成である。すなわち、第1の軸部42Aは、応力緩和部421と、駆動部側軸部422とで構成され、駆動部側軸部422が駆動部41に直接接続されている。
駆動部41は、第1の軸部42Aによって支持されている。これにより、駆動部41を上下に変位させようとすると、1対の捩り梁部44を中心として、駆動部41および駆動部側軸部422全体が回動する。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0059】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、本発明の光スキャナー(アクチュエーター)の第3実施形態を示す平面図である。
以下、第3実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0060】
第3実施形態の光スキャナーは、連結部の構成が異なる以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の光スキャナー1Bでは、支持部3Bと、可動板2を支持部3Bに対して変位可能に連結する連結部4B、5B、6B、7Bを有している。
支持部3Bは、可動板2を囲むように設けられ、互いに離間する4つの支持部31B〜34Bで構成されている。
【0061】
連結部(第1の連結部)4Bは、駆動部41Bと、駆動部41Bと可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)42Bと、駆動部41Bと支持部31B、32Bとを連結する一対の第2の軸部(梁部)43Bとを有している。同様に、連結部(第3の連結部)5Bは、駆動部51Bと、駆動部51Bと可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)52Bと、駆動部51Bと支持部32B、33Bとを連結する一対の第2の軸部(梁部)53Bとを有している。また、連結部(第2の連結部)6Bは、駆動部61Bと、駆動部61Bと可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)62Bと、駆動部61Bと支持部33B、34Bとを連結する一対の第2の軸部(梁部)63Bとを有している。また、連結部(第4の連結部)7Bは、駆動部71Bと、駆動部71Bと可動板2とを連結する第1の軸部(軸部)72Bと、駆動部71Bと支持部31B、34Bとを連結する一対の第2の軸部(梁部)73Bとを有している。
【0062】
以下、連結部4Bを代表してさらに詳述する。なお、連結部4B、5B、6B、7Bの構成は、互いに同様であるため、他の連結部5B、6B、7Bについては、その説明を省略する。
駆動部41Bの平面視形状は、X軸方向を長手とする長方形である。そして、駆動部41Bの長手方向での可動板2と反対側に永久磁石811が設けられ、可動板2側に1対の第2の軸部43Bが設けられている。
【0063】
1対の第2の軸部43Bは、それぞれ中心軸まわりに捻れ変形可能である。
そして、永久磁石811の中心が1対の第2の軸部43Bに対して可動板2とは反対側に位置している。そのため、永久磁石811が上下動しようとすると、駆動部41Bが1対の第2の軸部43Bを中心として回動する。駆動部41Bが1対の第2の軸部43Bを中心として回動すると、後述する第1の軸部42Bの駆動部側軸部422Bの駆動部41B側の端がZ軸方向に変位する。
【0064】
ここで、1対の第2の軸部43Bは、駆動部41Bの中心に対して可動板2側の位置で駆動部41Bの可動板2の厚さ方向(すなわちZ軸方向)での変位を局所的に規制する規制部を構成する。
このような1対の第2の軸部43B(捩れ変形部)で上記規制部を構成することにより、駆動部41BのZ軸方向での変位に伴って、駆動部41Bの一部(1対の第2の軸部43Bの中心軸)を支点として第1の軸部42Bを回動させることができる。
【0065】
第1の軸部42Bは、応力緩和部421と、駆動部側軸部422Bとを有する。
応力緩和部421は、可動板2に対して駆動部41Bと反対側に設けられている。
駆動部側軸部422Bは、応力緩和部421と駆動部41Bとを連結する長尺状をなすものであり、その一端が応力緩和部421に連結され、他端が駆動部41Bに連結されている。そして、第1の軸部42Bは、鉤状に屈曲している。この第1の軸部42には、その長手方向の途中が屈曲した4つの屈曲点を有する。
【0066】
このような屈曲点を有する第1の軸部42Bは、一端が可動板2を介して他端と反対側に配置されることとなる。このような構成により、光スキャナー1Bの小型化を図りつつ、第1の軸部42Bの長尺化を図り、可動板2の回動角を大きくすることができる。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
以上説明したような光スキャナーは、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。その結果、優れた描画特性を有する画像形成装置を提供することができる。
【0067】
具体的に、図8に示すようなプロジェクター200について説明する。なお、説明の便宜上、スクリーンSの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。
プロジェクター200は、レーザーなどの光を照出する光源装置210と、複数のダイクロイックミラー220、220、220と、光スキャナー1とを有している。
【0068】
光源装置210は、赤色光を照出する赤色光源装置211と、青色光を照出する青色光源装置212と、緑色光を照出する緑色光源装置213とを備えている。各ダイクロイックミラー220は、赤色光源装置211、青色光源装置212、緑色光源装置213のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
このようなプロジェクター200は、図示しないホストコンピュータからの画像情報に基づいて、光源装置210(赤色光源装置211、青色光源装置212、緑色光源装置213)から照出された光をダイクロイックミラー220で合成し、この合成された光が光スキャナー1によって2次元走査され、スクリーンS上でカラー画像を形成するように構成されている。
【0069】
2次元走査の際、光スキャナー1の可動板2の、回動中心軸Y1まわりの回動により光反射部22で反射した光がスクリーンSの横方向に走査(主走査)される。一方、光スキャナー1の可動板2の、回動中心軸X1まわりの回動により光反射部22で反射した光がスクリーンSの縦方向に走査(副走査)される。
光スキャナー1による光の走査は、前述のようなラスタースキャンによって行ってもよいし、ベクタースキャンによって行ってもよい。特に、光スキャナー1は、その構成上、ベクタースキャンに適しているため、ベクタースキャンによって光を走査するのが好ましい。
【0070】
ベクタースキャンとは、光源装置210から出射した光をスクリーンSに対し、当該スクリーンS上の異なる2点を結ぶ線分を順次形成するように走査する手法である。すなわち、微少な直線を集合させることにより、スクリーンSに所望の画像を形成する手法である。光スキャナー1では、前述したように、可動板2を不規則に連続的に変位させることができるため、このようなベクタースキャンに特に適している。
【0071】
具体的に説明すれば、図9に示すような文字の集合をベクタースキャンにて描画する場合には、光源装置210から出射した光をそれぞれの文字を書くように光を走査する。この際、光スキャナー1が有する可動板2の回動中心軸X1まわりの姿勢(回動)と回動中心軸Y1まわりの姿勢(回動)とをそれぞれ制御することにより、不規則に光を走査することができ、図9に示すような文字を一筆書きのごとく描画することができる。このようなベクタースキャンによれば、ラスタースキャンのように、スクリーンSの全面に光を走査させなくてよいため、効率的に画像を描画することができる。
なお、図8中では、ダイクロイックミラー220で合成された光を光スキャナー1によって2次元的に走査した後、その光を固定ミラー250で反射させてからスクリーンSに画像を形成するように構成されているが、固定ミラー250を省略し、光スキャナー1によって2次元的に走査された光を直接スクリーンSに照射してもよい。
【0072】
以上、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、例えば、本発明の光スキャナーでは、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0073】
また、前述した実施形態では、変位手段の構成として永久磁石と電磁コイルとを用いた電磁駆動を採用した構成について説明したが、可動板を前述のように変位させることができれば、これに限定されず、例えば、変位手段として、静電駆動、圧電駆動を採用してもよい。また、例えば、駆動部にコイルを設け、基台上に永久磁石を設けたムービングコイル方式の電磁駆動を採用することもできる。
【0074】
また、前述した実施形態では、各連結部の第1の軸部が応力緩和部を有する構成について説明したが、これに限定されず、応力緩和部を省略してもよい。すなわち、各連結部の第1の軸部は、可動板側軸部と駆動部側軸部とが直接接続されていてもよい。
また、前述した実施形態では、光スキャナーの駆動時に、各連結部の駆動部側軸部が実質的に変形しない構成について説明したが、これに限定されず、例えば、Z軸方向に曲げ変形(湾曲変形)するように構成されていてもよい。
【0075】
また、前述した実施形態では、規制部が連結部に設けられた場合を説明したが、規制部は、連結部の特定部位を回動中心とするように、その特定部位の位置を規制するものであれば、前述した実施形態のものに限定されず、連結部とは別体として設けられていてもよい。例えば、基台上に連結部の特定部位に接触または近接するように設けた突起で規制部を構成することも可能である。
また、前述した実施形態で連結部の数が4つである場合を説明したが、連結部の数は3つであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、1A、1B……光スキャナー 11……振動構造体 12……基台 2……可動板 22……光反射部 3、3B、31、31B、32、32B、33、33B、34、34B……支持部 4、4A、4B、5、5A、5B、6、6A、6B、7、7A、7B……連結部 41、41B、51、51B、61、61B、71、71B……駆動部 42、42A、42B、52、52A、52B、62、62A、62B、72、72A、72B……第1の軸部 421……応力緩和部 4211……第1の延在部 4212……第2の延在部 4213……第3の延在部 4214……第4の延在部 4215……第5の延在部 4216……第6の延在部 4217……第7の延在部 422……可動板側軸部 422B……駆動部側軸部 423……曲げ梁部 43、43B、53、53B、63、63B、73、73B……第2の軸部 44、54、64、74……捩り梁部 8……変位手段 81……第1の変位手段 82……第2の変位手段 83……第3の変位手段 84……第4の変位手段 811、821、831、841……永久磁石 812、822、832、842……コイル 200……プロジェクター 210……光源装置 211……赤色光源装置 212……青色光源装置 213……緑色光源装置 220……ダイクロイックミラー 250……固定ミラー S……スクリーン X1、Y1、Y2……回動中心軸 Y4……中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ変位可能な可動板と、
変位可能な駆動部、前記駆動部と前記可動板とを連結する軸部、を備え、前記可動板に連結される3つまたは4つの連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、
前記駆動部の中心に対して前記可動板側の規制位置で前記駆動部または前記軸部に連結され、当該規制位置において当該駆動部または当該軸部が前記可動板の厚さ方向に変位するのを規制する規制部とを有し、
前記駆動部の変位に伴って、前記規制位置を支点として前記軸部を回動させることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項2】
前記規制部は、前記軸部と前記支持部とを連結する1対の捩り梁部を有する請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項3】
前記連結部は、前記駆動部と前記支持部とを連結する1対の曲げ梁部を備える請求項2に記載のアクチュエーター。
【請求項4】
前記規制部は、前記駆動部と前記支持部とを連結する1対の捩り梁部を有する請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項5】
前記軸部は、当該軸部に作用する応力を緩和する応力緩和部を備える請求項1ないし4のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項6】
前記軸部は、前記応力緩和部と前記駆動部との間に設けられた駆動部側軸部を備える請求項5に記載のアクチュエーター。
【請求項7】
前記軸部は、前記駆動部側軸部と前記駆動部とを連結する曲げ梁部を備える請求項6に記載のアクチュエーター。
【請求項8】
前記各応力緩和部は、蛇行した形状をなす部分を有する請求項5ないし7のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項9】
前記可動板を変位させる変位付与部をさらに有し、
前記変位付与部は、前記各連結部の前記駆動部にそれぞれ設けられた永久磁石と、該永久磁石に作用する磁界を発生するコイルとを備える請求項1ないし8のいずれかに記載のアクチュエーター。
【請求項10】
前記永久磁石は、前記可動板の厚さ方向に両極が対向するように設けられており、前記コイルは、前記可動板の厚さ方向の磁界を発生させるように設けられている請求項9に記載のアクチュエーター。
【請求項11】
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ変位可能な可動板と、
変位可能な駆動部、前記駆動部と前記可動板とを連結する軸部、を備え、前記可動板に連結される3つまたは4つの連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、
前記駆動部の中心に対して前記可動板側の規制位置で前記駆動部または前記軸部に連結され、当該規制位置において当該駆動部または当該軸部が前記可動板の厚さ方向に変位するのを規制する規制部とを有し、
前記駆動部の変位に伴って、前記規制位置を支点として前記軸部を回動させることを特徴とする光スキャナー。
【請求項12】
光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーとを有し、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部と、
前記光反射部を備え、かつ変位可能な可動板と、
変位可能な駆動部、前記駆動部と前記可動板とを連結する軸部、を備え、前記可動板に連結される3つまたは4つの連結部と、
前記連結部を支持する支持部と、
前記駆動部の中心に対して前記可動板側の規制位置で前記駆動部または前記軸部に連結され、当該規制位置において当該駆動部または当該軸部が前記可動板の厚さ方向に変位するのを規制する規制部とを有し、
前記駆動部の変位に伴って、前記規制位置を支点として前記軸部を回動させることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−123116(P2012−123116A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272893(P2010−272893)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】