説明

アセチレン誘導体

本発明は、式(I):
【化1】


[式中、該置換基は、本明細書中で定義した通りである。]の化合物、その製造方法、および医薬としてのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のアセチレン誘導体、その製造方法、医薬としてのその使用、およびそれらを含む医薬組成物に関する。
【発明の開示】
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、遊離塩基または酸付加塩の形態の式(I):
【化1】

[式中、
は、水素またはC−Cアルキルを表し、そして
は、非置換または置換ヘテロ環を表すか、
あるいは、
は、水素またはC−Cアルキルを表し、そして
は、アリールまたは置換アリールを表すか、
あるいは、
は、水素またはC−Cアルキルを表し、そして
は、C(O)R21を表し、ここで、R21は、非置換または置換アルキル、非置換または置換アルコキシ、非置換または置換ヘテロ環、非置換または置換アリールを表すか、
あるいは、
およびRは、窒素原子と一体となって、非置換または置換ヘテロ環を形成し;
【0003】
は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−CHO、−COO(C1−4)アルキル、−CO(C1−4)アルキルを表し;
nは、0、1、2、3、4または5を表し;
は、OHを表し、そして
およびRは、HまたはC−Cアルキルを表すか、
あるいは、
およびRは、結合を形成し、そして
は、HまたはC−Cアルキルを表すか、
あるいは、
およびRは、結合を形成し、そして
は、HまたはC−Cアルキルを表す。]
の化合物を提供する。
【0004】
本明細書において、特に異なる定義をしない限り、下記の定義を適用する。
“アルキル”は、直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、好ましくは直鎖または分枝鎖のC1−12アルキル、特に好ましくは直鎖または分枝鎖のC1−6アルキルを表し;例えばメチル、エチル、n−またはイソ−プロピル、n−、イソ−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルであり、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピルおよびイソ−プロピルである。
【0005】
“アルカンジイル”は、2つの異なる炭素原子によって分子に結合している直鎖または分枝鎖のアルカンジイル基を表し、それは、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1−12アルカンジイルを表し、特に好ましくは直鎖または分枝鎖のC1−6アルカンジイルを表し;例えば、メタンジイル(−CH−)、1,2−エタンジイル(−CH−CH−)、1,1−エタンジイル(−CH(CH)−)、1,1−、1,2−、1,3−プロパンジイルおよび1,1−、1,2−、1,3−、1,4−ブタンジイルであり、特に好ましくはメタンジイル、1,1−エタンジイル、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイルである。
【0006】
“アルコキシ”、“アルコキシアルキル”、“アルコキシカルボニル”、“アルコキシカルボニルアルキル”および“ハロゲンアルキル”のそれぞれのアルキル部分は、上記定義の“アルキル”で記載されたものと同様の意味を有する。
【0007】
“アルケニル”は、直鎖または分枝鎖のアルケニル基を表し、好ましくはC2−6アルケニルを表し、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルなどであり、好ましくはC2−4アルケニルを表す。
【0008】
“アルケンジイル”は、2つの異なる炭素原子によって分子に結合している直鎖または分枝鎖のアルケンジイル基を表し、それは、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC2−6アルケンジイルを表し;例えば、−CH=CH−、−CH=C(CH)−、−CH=CH−CH−、−C(CH)=CH−CH−、−CH=C(CH)−CH−、−CH=CH−C(CH)H−、−CH=CH−CH=CH−、−C(CH)=CH−CH=CH−、−CH=C(CH)−CH=CH−であり、特に好ましくは、−CH=CH−CH−、−CH=CH−CH=CH−である。
【0009】
“アルキニル”は、直鎖または分枝鎖のアルキニル基を表し、好ましくはC2−6アルキニルであり、例えば、エテニル、プロパルギル、1−プロピニル、イソプロペニル、1−(2−もしくは3−)ブチニル、1−(2−もしくは3−)ペンテニル、1−(2−もしくは3−)ヘキセニルなどであり、好ましくはC2−4アルキニルを表し、特に好ましくはエチニルを表す。
【0010】
“アリール”は芳香族性炭化水素基を表し、好ましくはC6−10芳香族性炭化水素基であり;例えばフェニル、ナフチルであり、特にフェニルである。
【0011】
“アラルキル”は、“アルキル”に結合した“アリール”(共に上で定義した通り)を表し、例えばベンジル、α−メチルベンジル、2−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジルであり、特にベンジルである。
【0012】
“ヘテロ環”は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む、飽和の、部分的に飽和の、または芳香族性の環系を表す。好ましくは、ヘテロ環は、3から11個の環原子からなり、そのうち1〜3個の環原子がヘテロ原子である。ヘテロ環は、単環式環系として、または、二環式または三環式環系として存在してもよく;好ましくは単環式環系として、またはベンゾ縮合環系として存在し得る。二環式または三環式環系は、架橋原子、例えば酸素、硫黄、窒素による、または架橋基、例えばアルカンジイルまたはアルケンジイルによる、2個以上の環の縮合によって形成され得る。ヘテロ環は、オキソ(=O)、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、アルカンジイル、アルケンジイル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、ハロゲンアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルからなる群から選択される、1個以上の置換基によって置換され得る。ヘテロ環部分の例は、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾール、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾール、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、フラザン(オキサジアゾール)、ジオキソラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、チアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリン、イソチアゾリジン、チアジアゾール、チアジアゾリン、チアジアゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、ピラン、テトラヒドロピラン、チオピラン、テトラヒドロチオピラン、オキサジン、チアジン、ジオキシン、モルホリン、プリン、プテリン、および対応するベンゾ縮合ヘテロ環、例えばインドール、イソインドール、クマリン、クマロン、キノリン(cinoline)、イソキノリン(isochinoline)、シンノリンなどである。
【0013】
“ヘテロ原子”は、炭素および水素以外の原子であり、好ましくは窒素(N)、酸素(O)または硫黄(S)である。
“ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを表し、好ましくは、フルオロ、クロロまたはブロモを表し、特に好ましくはクロロを表す。
【0014】
式(I)の化合物は、遊離塩基または酸付加塩の形態で存在する。この明細書中において、特記しない限り、“式(I)の化合物”のような語は、全ての形態(例えば遊離塩基または酸付加塩の形態)の該化合物を含むと理解されるべきである。薬学的使用に不適当であるが、例えば遊離の式(I)の化合物の単離または精製に用いられ得る塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩もまた含まれる。治療的使用のためには、薬学的に許容される塩または遊離の化合物のみが用いられ(医薬製剤の形態で適応され得る)、従ってそれらが望ましい。
【0015】
式(I)の化合物およびその塩中に存在し得る不斉炭素原子のために、該化合物は、光学的に活性な形態、または光学異性体の混合物の形態(例えばラセミ混合物またはジアステレオマー混合物の形態)で存在してもよい。全ての光学異性体およびラセミ混合物を含むその混合物は、本発明の一部である。望ましい式(I)の化合物は、RおよびNに関してtrans配座を有する。
【0016】
式(I)および対応する中間体化合物に存在する望ましい置換基、数値の望ましい範囲、または基の望ましい範囲は、以下に定義される。
【0017】
nは、好ましくは、0、1または2を表す。
nは、特に好ましくは、1を表す。
は、好ましくは、水素またはメチルを表す。
は、特に好ましくは、水素を表す。
【0018】
は、好ましくは、ハロゲン、C1−4アルキルを表す。
は、特に好ましくは、フルオロ、クロロ、メチルを表す。
は、好ましくは、OHを表す。
は、好ましくは、Hを表す。
は、好ましくは、Hを表す。
【0019】
は、好ましくは、3〜11個の環原子および1〜4個のヘテロ原子を有する、非置換または置換ヘテロ環を表し;該ヘテロ原子は、N、O、Sからなる群から選択され、該置換基は、オキソ(=O)、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルコキシアルキル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルコキシカルボニルアルキル、C1−4ハロゲンアルキル、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0020】
は、さらに好ましくは、フェニルまたは置換フェニルを表し、該置換基は、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルコキシアルキル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルコキシカルボニルアルキル、C1−4ハロゲンアルキル、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0021】
21は、好ましくは、非置換または置換C1−4アルキルを表し、該置換基は、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C1−4アルキル−C6−10アリール、C1−4アルコキシ−C6−10アリール、C1−4ハロゲンアルキル−C6−10アリールからなる群から選択される。
【0022】
21は、好ましくは、非置換または置換C1−4アルコキシを表し、該置換基は、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C1−4アルキル−C6−10アリール、C1−4アルコキシ−C6−10アリール、C1−4ハロゲンアルキル−C6−10アリールからなる群から選択される。
【0023】
21は、好ましくは、3〜11個の環原子および1〜4個のヘテロ原子を有する、非置換または置換ヘテロ環を表し、該ヘテロ原子は、N、O、Sからなる群から選択され、該置換基は、オキソ(=O)、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルコキシアルキル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルコキシカルボニルアルキル、C1−4ハロゲンアルキル、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0024】
21は、好ましくは、非置換または置換フェニルを表し、該置換基は、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルコキシアルキル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルコキシカルボニルアルキル、C1−4ハロゲンアルキル、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0025】
さらに好ましくは、RおよびRは、窒素原子と一体となって、3〜11個の環原子および0〜3個のさらなるヘテロ原子を有する非置換または置換ヘテロ環を形成し;該ヘテロ原子は、N、O、Sからなる群から選択され;該置換基は、オキソ(=O)、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルコキシアルキル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルコキシカルボニルアルキル、C1−4ハロゲンアルキル、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0026】
は、特に好ましくは、5〜9個の環原子および1〜3個のヘテロ原子を有する、非置換、1置換または2置換ヘテロ環を表し;該ヘテロ原子は、N、Oからなる群から選択され;該置換基は、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0027】
は、特に好ましくは、非置換、1置換または2置換フェニルを表し、該置換基は、ハロゲン、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、フェニル、ハロゲンフェニル、フェニルオキシ、ベンジル、フェニルエチルからなる群から選択される。
【0028】
21は、特に好ましくは、C1−4アルキルまたは置換C1−4アルキルを表し、該置換基は、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0029】
21は、特に好ましくは、C1−4アルコキシまたは置換C1−4アルコキシを表し、該置換基は、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0030】
21は、特に好ましくは、5〜9個の環原子および1〜3個のヘテロ原子を有する、1置換または2置換ヘテロ環を表し、該ヘテロ原子は、N、Oからなる群から選択され;該置換基は、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0031】
21は、特に好ましくは、非置換、1置換または2置換フェニルを表し、該置換基は、ハロゲン、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、フェニル、ハロゲンフェニル、フェニルオキシ、ベンジル、フェニルエチルからなる群から選択される。
【0032】
さらに特に好ましくは、RおよびRは、窒素原子と一体となって、5〜9個の環原子および0〜2個のさらなるヘテロ原子を有する、1置換または2置換ヘテロ環を形成し;該ヘテロ原子は、N、Oからなる群から選択され;該置換基は、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C6−10アリール、ハロゲン−C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10−アリール−C1−4アルキルからなる群から選択される。
【0033】
は、非常に特に好ましくは、クロロフェニルまたはジクロロフェニルを表す。
21は、非常に特に好ましくは、メトキシ、tert−ブチルオキシを表す。
21は、非常に特に好ましくは、フリル、ベンゾフラニル、ピリジルを表す。
【0034】
上記の一般的なまたは望ましい基の定義は、式(I)の最終生成物、ならびにその製造のためにそれぞれの場合で必要とされる対応する出発物質または中間体の両方に適用される。これらの基の定義は、互いに組み合わされてもよく、すなわち示された望ましい範囲の間での組み合わせを含む。さらに、個々の定義は適用しなくてもよい。
【0035】
本発明によると、上で望ましいと記載された意味の組み合わせを含む式(I)の化合物が望ましい。
本発明によると、上で特に望ましいと記載された意味の組み合わせを含む式(I)の化合物が特に望ましい。
本発明によると、上で非常に特に望ましいと記載された意味の組み合わせを含む式(I)の化合物が非常に特に望ましい。
【0036】
式(I'):
【化2】

[式中、R、R、Rは、上で定義した通りである。]の化合物が望ましい。
式(I)の化合物のさらに望ましいグループは、Rがメタ位である化合物である。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、式(I)の化合物およびその塩の製造方法であって、
a) Rがヒドロキシであり、RおよびRが水素またはC−Cアルキルである、式(I)の化合物を製造するために、式(II):
【化3】

[式中、R、R、R、Rは上で定義した通りである。]の化合物を、式(III):
【化4】

[式中、Rおよびnは上で定義した通りである。]の化合物と反応させること、または
【0038】
b) RおよびRが結合を形成し、そしてRが水素またはC−Cアルキルを表す、またはRおよびRが結合を形成し、そしてRが水素を表す、式(I)の化合物を製造するために、Rがヒドロキシルであり、RおよびRが水素またはC−Cアルキルである式(I)の化合物を脱水すること、または
【0039】
c) i) Rがヒドロキシを表し、Rが水素またはC−Cアルキルを表し、そしてRが非置換または置換ヘテロ環を表す、またはii) Rが水素またはC−Cアルキルを表し、そしてRがアリールまたは置換アリールを表す、式(I)の化合物を製造するために、式(IV):
【化5】

[式中、R、R、R、nは、上で定義した通りである。]の化合物を、式(V):
【化6】

[式中、RおよびRは、上で定義した通りである。]の化合物で還元アミノ化すること、または
【0040】
d) Rがヒドロキシを表し、RおよびRが窒素原子と一体となって非置換または置換ヘテロ環を形成する、式(I)の化合物を製造するために、式(VI):
【化7】

の化合物を環化縮合すること;
ならびに得られた遊離塩基または酸付加塩の形態の式(I)の化合物を回収すること;
の段階を含む方法を提供する。
【0041】
工程a)およびc)およびd)の反応は、慣用の方法に従って、例えば実施例に記載された通りに行われ得る。
工程b)の反応によって式(I)の化合物が得られ、同品はまた、慣用の方法に従って、例えばWO 03/047581 に記載により製造される。
【0042】
工程c)の反応は、還元剤、例えばアルカリ金属アルキル、水素化金属、または水素化ホウ素塩、好ましくは水素化ホウ素塩、例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で行われる。
そのようにして得られた式(I)の化合物は、慣用の方法に従って、別の式(I)の化合物に変換され得る。
【0043】
一般的に、式(I)の化合物を製造するための出発物質は、既知であるか、または既知の方法によって得られる。式(I)の化合物の製造に有用である、ある種の出発物質は、新規であり、また本発明の対象である。
【0044】
式(IV):
【化8】

[式中、R、R、R、nは、式(I)の化合物について上で定義した通りである。]
の化合物。
【0045】
式(IV)の化合物は、式:
【化9】

[式中、R、nは、上で定義した通りである。]の化合物を、式:
【化10】

[式中、R、Rは、上で定義した通りであり、そしてOは、カルボニル基の酸素が、例えばアセタール形成によって保護されていることを表す。]の化合物と反応させることによって得られる。
【0046】
下記の考慮を上記の個々の反応段階に適応する。
a) 1個以上の官能基は、例えばカルボキシ、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプトは、出発物質中で保護基によって保護される必要があり得る。用いられる保護基は、前駆体においてすでに存在してもよく、また望ましくない副反応(例えばアシル化、エーテル化、エステル化、酸化、加溶媒分解および同様の反応)に関係する官能基を保護するべきである。保護基は、それ自身、典型的には加溶媒分解、還元、光分解、または例えば生理学的条件と類似の条件下で酵素活性によって、容易に、すなわち望ましくない副反応を起こすことなく除去されること、ならびに最終生成物中では存在しないことが、保護基の特徴である。専門家は、上記および下記の反応に適切である保護基を知っているか、または容易に得られる。該保護基による該官能基の保護、保護基自身、およびその除去反応は、例えば標準的な参考書に、例えば J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973、T. W. Greene, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Wiley, New York 1981、“The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981、“Methoden der organischen Chemie” (Methods of organic chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974、H.D. Jakubke and H. Jescheit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine”(Amino acids, peptides, proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982、および Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate”(Chemistry of carbohydrates: monosaccharides and derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974 に記載されている。
【0047】
b) 酸付加塩は、既知の方法で、遊離塩基から製造され、またその逆も行い得る。光学的に純粋な形態の式(I)の化合物は、周知の手順に従って、例えばキラル・マトリックスでのHPLCによって、対応するラセミ体から得ることができる。あるいは、光学的に純粋な出発物質を用い得る。
【0048】
c) 立体異性体の混合物、例えばジアステレオマーの混合物は、それ自身既知の方法で、適当な分割方法によって、対応する異性体に分割され得る。ジアステレオマーの混合物は、例えば、分別結晶、クロマトグラフィー、溶媒分配および同様の方法によって、個々のジアステレオマーに分割され得る。この分割は、出発化合物のレベルまたは式(I)の化合物自身の何れかで起こり得る。エナンチオマーは、ジアステレオマー塩の形成を介して、例えばエナンチオマーとして純粋なキラルの酸との塩形成によって、またはクロマトグラフィー法によって、例えばキラルなリガンドを有するクロマトグラフィー支持体を用いたHPLCによって分割され得る。
【0049】
d) 上記反応を行うのに適当な希釈剤は、特に不活性有機溶媒である。これらは、特に、脂肪族性、脂環式性、または芳香族性の、所望によりハロゲン化された炭化水素、例えばベンジン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピル エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、またはエチレン グリコール ジメチル エーテル、またはエチレン グリコール ジエチルエーテル;ケトン類、例えばアセトン、ブタノン、またはメチル イソブチル ケトン;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、またはブチロニトリル;アミド類、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ホルムアニリド、N−メチル−ピロリドンまたはヘキサメチルリン トリアミド;エステル類、例えば酢酸メチルまたは酢酸エチル;スルホキシド類、例えばジメチルスルホキシド;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、n−またはi−プロパノール、エチレン グリコール モノメチル エーテル、エチレン グリコール モノエチル エーテル、ジエチレングリコール モノメチル エーテル、ジエチレングリコール モノエチル エーテルを含む。さらに、希釈剤の混合物を用いてもよい。出発物質、反応条件および補助剤に依存して、水または水を含む希釈剤が適当であり得る。出発物質に希釈剤を兼ねさせることも可能である。
【0050】
e) 反応温度は、比較的広い範囲内で変化し得る。一般的に、該工程は、0℃から150℃の温度で、好ましくは10℃から120℃の温度で行われる。脱プロトン化反応は、比較的広い範囲内で変化し得る。一般的に、該工程は、−150℃から+50℃の温度で、好ましくは−75℃から0℃の範囲の温度で行われる。
【0051】
f) 該反応は、一般的に、大気圧で行われる。しかし、本発明による工程を、高圧下または減圧下で、一般的に0.1barから10barで行うことも可能である。
【0052】
g) 出発物質は、一般的に等モル量で用いられる。しかし、比較的大過剰の該成分を使用することも可能である。反応は、一般的に、適当な希釈剤中、反応補助剤の存在下で行われ、反応混合物は、一般的に、必要な温度で数時間撹拌される。
h) 後処理は、慣用の方法によって行われる(製造例を参照のこと)。
【0053】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩(以後本発明の薬物と記載)は、有益な薬理学的性質を示し、従って医薬として有用である。
【0054】
特に、本発明の薬物は、ヒトの代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)での著しくかつ選択的な調節作用、特にアンタゴニスト作用を示す。これは、例えばリコンビナントのヒト代謝型グルタミン酸受容体にて、特にそのPLC結合サブタイプ(例えばmGluR5)にて、例えば L. P. Daggett et al., Neuropharm. Vol. 34, pages 871-886 (1995)、P. J. Flor et al., J. Neurochem. Vol. 67, pages 58-63 (1996)に従う細胞内Ca2+濃度上昇を誘発するアゴニストの阻害の測定のような異なる手順を用いて、またはT. Knoepfel et al., Eur. J. Pharmacol. Vol. 288, pages 389-392 (1994)、L. P. Daggett et al., Neuropharm. Vol. 67, pages 58-63 (1996)およびそれらに引用された参考文献に記載された通りにイノシトール ホスフェート・ターンオーバーの上昇を誘発するアゴニストがどの程度阻害されるかを測定することによって、in vitro で測定され得る。ヒトのmGluRサブタイプの単離および発現は、米国特許第5,521,297号に記載されている。本発明の選択された薬物は、約1nMから約50μMのhmGluR5aを発現するリコンビナント細胞において測定される、細胞内Ca2+濃度上昇を誘発するアゴニスト(例えばグルタメートまたはキスカレート(quisqualate))またはイノシトール ホスフェート・ターンオーバーを誘発するアゴニスト(例えばグルタメートまたはキスカレート)の阻害についてのIC50値を示す。
【0055】
本発明の薬物は、従って、グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常(irregularity)に関連する消化器疾患および尿路疾患、およびmGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患の処置に有用である。
【0056】
グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する疾患は、例えば癲癇、脳虚血、特に急性虚血、眼の虚血性疾患、筋肉攣縮、例えば局所または全身痙攣、皮膚疾患、肥満疾患、および、特に痙攣または疼痛である。
【0057】
消化器疾患は、手術後イレウス機能性胃腸疾患(FGID)、例えば機能性消化不良(FD)、胃食道逆流疾患(GERD)、過敏性腸症候群(IBS)、機能性腹部膨満、機能性下痢、慢性便秘、胆汁管の機能性障害、ならびに Gut 1999; Vol. 45 Suppl. II による他の状態を含む。
【0058】
尿路疾患は、尿路の疼痛および/または不快感に関連する状態、ならびに過敏性膀胱(OAB)を含む。
【0059】
mGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患は、例えば神経系の急性、外傷性および慢性変性プロセス、例えばパーキンソン病、老年性認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、および脆弱X症候群、精神医学的疾患、例えば統合失調症および不安症、鬱病、疼痛、掻痒および薬物乱用である。不安関連疾患は、パニック障害、社会性不安、強迫性障害(OCD)、外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害(GAD)、恐怖症である。
【0060】
上記疾患の処置における本発明の薬物の有用性は、以下に示した試験を含む標準的な試験の範囲で確認され得る。
本発明の薬物の不安症における活性は、標準的なモデル、例えばマウスのストレス誘発性高熱症で示され得る[A. Lecci et al., Psychopharmacol. 101, 255-261を参照のこと]。約0.1から約30mg/kgの経口投与で、本発明の選択された薬物は、ストレス誘発性高熱症を回復させる。
【0061】
約4から約50mg/kgの経口投与で、本発明の選択された薬物は、フロイント完全アジュバント(FCA)誘発性痛覚過敏の回復を示す[J. Donnerer et al., Neuroscience 49, 693-698 (1992) および C.J. Woolf, Neuroscience 62, 327-331 (1994)を参照のこと]。
【0062】
全ての上記の適応のために、例えば、用いられる化合物、宿主、投与方法、ならびに処置される状態の性質および重症度に依存して、適切な投与量は当然に変化する。しかし、一般的に、約0.5から約100mg/kg動物体重の1日投与で、動物における満足のいく結果が得られることが示されている。より大きな哺乳動物、例えばヒトにおいて、適応される1日投与は、約5から1500mg、好ましくは約10から約1000mgの本化合物であり、これは、便宜的に、1日4回までの分割投与で、または徐放形で投与される。
【0063】
上記に従って、本発明はまた、医薬としての使用のための、例えばグルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する疾患、およびmGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患の処置における医薬として使用する本発明の薬物を提供する。
【0064】
本発明はまた、グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する疾患、およびmGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患の処置における、本発明の薬物の使用を提供する。
【0065】
さらに、本発明は、グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する疾患、およびmGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患の処置のために作られる医薬組成物の製造のための、本発明の薬物の使用を提供する。
【0066】
さらなる態様において、本発明は、mGluR5が完全にまたは一部に介在する疾患を処置する方法であって、該処置の必要な温血生物に、治療有効量の本発明の薬物を投与することを含む方法を提供する。
【0067】
さらに、本発明は、1種以上の薬学的担体または1種以上の薬学的に許容される希釈剤と組み合わせた、本発明の薬物を含む医薬組成物に関する。
【0068】
本発明による医薬組成物は、有効量の薬理学的に活性な成分を単独でまたは多量の薬学的に許容される担体と共に含む、温血動物(ヒトおよび動物)への経腸(例えば鼻腔内、直腸または経口)、または非経腸(例えば筋肉内または静脈内)の投与のための組成物である。活性成分の用量は、温血動物の種、体重、年齢および個々の状態、個々の薬物動態学的データ、処置される疾患、および投与方法に依存する。
【0069】
医薬組成物は、約1%から約95%、好ましくは約20%から約90%の活性成分を含む。本発明による医薬組成物は、例えば単位投与形、例えばアンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよい。
【0070】
本発明による医薬組成物は、それ自身既知の方法で、例えば、慣用の溶解、凍結乾燥、混合、顆粒化、または糖衣プロセスによって製造される。
【0071】
本発明の望ましい薬物は、遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の4−(3−クロロ−フェニルアミノ)−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノールを含む。
【0072】
4−(3−クロロ−フェニルアミノ)−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノールは、hmGluR5発現細胞において、4000nMのIC50濃度で、キスカレート誘発性イノシトール ホスフェート・ターンオーバーを阻害する。
【0073】
さらに、適切に同位体標識された本発明の薬物は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5受容体)の選択的な標識化のための病理組織学的標識剤、造影剤および/またはバイオマーカー(以後“マーカー”とする)として有益な性質を示す。より特定的には、本発明の薬物は、in vitro または in vivo における中枢および末梢mGlu5受容体を標識するマーカーとして有用である。特に、適切に同位体標識された本発明の化合物は、PETマーカーとして有用である。このようなPETマーカーは、11C、13N、15O、18Fからなる群から選択される1種以上の原子で標識される。
【0074】
本発明の薬物は、従って、例えばmGlu5受容体で作用する薬物の受容体占有度のレベルを測定するのに、またはmGlu5受容体の不均衡または機能不全に起因する疾患の診断目的に、および該疾患の薬物治療の有効性をモニターするのに有用である。
【0075】
上記に従って、本発明は、神経画像処理用マーカーとして使用するための本発明の薬物を提供する。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、本発明の薬物を含む in vivo および in vitro においてmGlu5受容体に関係する脳および末梢神経系構造を標識するための組成物を提供する。
【0077】
いっそうさらなる態様において、本発明は、mGlu5受容体に関係する脳および末梢神経系構造を標識する方法であって、脳組織を本発明の薬物と接触させることを含む方法を提供する。
【0078】
本発明の方法は、本発明の薬物が標的構造を標識するかどうかを決定することを目的とするさらなる段階を含む。該さらなる段階は、陽電子放出断層撮影(PET)または単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、または放射活性放射能の検出が可能な全ての装置を用いて標的構造を観察することによって行い得る。
【0079】
下記の非制限的実施例は、本発明を説明している。用いた略号のリストを以下に示す。
【表1】

【実施例】
【0080】
実施例1: trans−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸メチルエステルおよびcis−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸メチルエステル
THF(10ml)中の、n−ブチル リチウム(5.5ml, ヘキサン中1.6M溶液, 8.76mmol, 1.0eq)の溶液に、−70℃で、アルゴン下、THF(7ml)中の1−クロロ−3−エチニル−ベンゼン(1.22g, 8.76mmol, 1.0eq)の溶液を加える。反応混合物を−70℃で30分間撹拌後、THF(7ml)中の(4−オキソ−シクロヘキシル)−カルバミン酸メチルエステル(1.50g, 8.76mmol, 1eq)の溶液を加え、混合物をさらに30分間撹拌する。溶液を10% 塩化アンモニウム水溶液(3ml)およびEtOAc(5ml)で希釈する。有機層を1N HCl水溶液(3×5ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させる。得られたcis/trans異性体の混合物は、シリカ(Flashmaster, EtOAc/ヘキサン)で分離することができ、1:1比の単一の異性体を得る(0.45g, 17%)。
trans異性体:
MS (LC/MS): 330 [M+H]
TLC Rf: 0.42 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
cis異性体:
MS (LC/MS): 330 [M+Na]
TLC Rf: 0.45 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0081】
同様の手順に従って、下記の化合物が得られる。
実施例1.1: trans−[4−(4−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸メチルエステルおよびcis−[4−(4−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸メチルエステル
trans異性体:
MS (LC/MS): 330 [M+Na]
TLC Rf: 0.37 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
cis異性体:
MS (LC/MS): 330 [M+Na]
TLC Rf: 0.43 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0082】
実施例1.2: cis−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステルおよびtrans−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル
THF(60ml)中のn−ブチル リチウムの溶液(3.7ml, ヘキサン中1.6M溶液, 5.90mmol, 1.01eq)に、−70℃で、アルゴン下、THF(20ml)中の1−クロロ−3−エチニル−ベンゼン(0.83g, 6.05mmol, 1.04eq)の溶液を加える。反応混合物を−70℃で30分間撹拌後、THF(20ml)中の(4−オキソ−シクロヘキシル)−カルバミン酸 tert−ブチルエステル(1.24g, 5.81mmol, 1eq)の溶液を加え、混合物をさらに10時間撹拌する。該溶液を、10% 塩化アンモニウム水溶液(50ml)およびEtOAc(100ml)で希釈する。有機層を1N HCl水溶液(3×20ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させた。得られたcis/trans異性体の混合物は、シリカ(Flashmaster, EtOAc/ヘキサン)で分離することができ、10:1のcis/trans比で単一の異性体を得た(1.12g, 55%)。
cis異性体:
MS (LC/MS): 372 [M+Na]
TLC Rf: 0.60 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
trans異性体:
MS (LC/MS): 372 [M+Na]
TLC Rf: 0.23 (EtOAc/ヘキサン = 1/2)
【0083】
実施例1.3: cis−フラン−3−カルボン酸 [4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−アミド
DCM(2ml)中のcis−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−カルバミン酸 tert−ブチルエステル(92mg, 0.26mmol)の溶液に、0℃で、ジオキサン中のHClの4N溶液(0.5ml)を加える。反応混合物を室温で1時間撹拌後、溶媒を蒸発させ、粗製のアミンをその塩酸塩として得る。この物質をDCM(3ml)に溶解し、フラン−3−カルボン酸(35.0mg, 0.31mmol, 1.2eq)を加え、続いてEDC(61mg, 0.31mmol, 1.2eq)、HOBt(43mg, 0.31mmol, 1.2eq)およびトリエチルアミン(0.11ml, 1.30mmol, 5eq)を加える。室温で23時間撹拌後、1N 水性HCl(2ml)を加え、溶液をEtOAc(3×7ml)で抽出する。合わせた有機層を10% 炭酸水素塩水溶液(3ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物をシリカ(Flashmaster, EtOAc/ヘキサン)で精製し、純粋なアミドを得る(23mg, 25%)。
MS (LC/MS): 366 [M+Na]
TLC Rf: 0.40 (EtOAc/ヘキサン = 1/1).
【0084】
1.3の手順に従って下記の化合物が得られる。
実施例1.4: trans−フラン−3−カルボン酸 [4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−アミド
MS (LC/MS): 344 [M+H]
TLC Rf: 0.19 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0085】
実施例1.5: cis−ベンゾフラン−2−カルボン酸 [4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−アミド
MS (LC/MS): 416 [M+Na]
TLC Rf: 0.55 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0086】
実施例1.6: cis−フラン−2−カルボン酸 [4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−アミド
MS (LC/MS): 366 [M+Na]
TLC Rf: 0.33 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0087】
実施例1.7: cis−ピリジン−2−カルボン酸 [4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−アミド
MS (LC/MS): 377 [M+Na]
TLC Rf: 0.32 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0088】
実施例1.8: cis−N−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−ニコチンアミド
MS (LC/MS): 355 [M+H]
TLC Rf: 0.06 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0089】
実施例1.9: cis−N−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシル]−イソニコチンアミド
MS (LC/MS): 355 [M+H]
TLC Rf: 0.75 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0090】
実施例2.0: 1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)−シクロヘキサノール
1,2−ジクロロエタン(15ml)中の、4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキサノン(70mg, 0.281mmol)、3−アミノ−5−メチルピラゾール(27.3mg, 0.281mmol)および酢酸(0.016ml, 0.281mmol)の溶液を、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(83.5mg, 0.394mmol)で処理し、室温で21時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、重炭酸ナトリウムで、そして塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、溶媒を蒸発させた。シリカゲルのクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物の1:1のcis/trans混合物を非晶性粉末として得た(26.2mg, 28%)。
MS (LC/MS): 330 [M+H].
TLC Rf: 0.08/0.16 (MeOH/DCM/Et3N = 94/5/1)
【0091】
出発物質を下記の通り製造した。
i) 8−(3−クロロ−フェニルエチニル)−1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オール
1−クロロ−3−エチニル−ベンゼン(2.7ml, 19.2mmol)を、THF(250ml)に溶解し、−70℃まで冷却した。ヘキサン中のn−BuLiの溶液(11.6ml, 1.6M, 19.0mmol)を、0.5時間以内で加え、溶液をさらに1時間この温度で撹拌した。THF(30ml)中の1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オン(2.5g, 18.3mmol)の溶液を、30分以内で滴下し、反応混合物をさらに5時間撹拌した。室温に至らしめた後、EtOAcを加え、混合物を、水性重炭酸ナトリウムで、そして塩水で洗浄し、乾燥し、蒸発させ、橙色の油状物を得た(8.43g)。シリカゲルのクロマトグラフィーにより、表題化合物を黄色の油状物として得た(4.63g, 86%)。
【0092】
ii) 4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキサノン
アセトン(50ml)中の、8−(3−クロロ−フェニルエチニル)−1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オール(4.6g, 15.7mmol)およびp−TsOH(598mg)の溶液を、45℃で24時間撹拌した。EtOAcで希釈し、水性重炭酸ナトリウムで、そして塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発させ、粗生成物を得た。これをシリカゲル上で精製し、純粋な表題化合物を得た(1.18g, 30%)。
【0093】
同様の手順に従って、下記の化合物が得られる。
実施例2.1: 3−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−ヒドロキシ−シクロヘキシルアミノ]−ジヒドロ−フラン−2−オン
MS (LC/MS): 356 [M+Na]
TLC Rf: 0.45/0.55 (MeOH/DCM = 95/5)
【0094】
実施例2.2: 4−(3−クロロ−フェニルアミノ)−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノール
MS (ESI-MS): 360 [M]
TLC Rf: 0.58 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0095】
実施例2.3: 1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−(3−メトキシ−フェニルアミノ)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 356 [M+H]
TLC Rf: 0.36/0.48 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0096】
実施例2.4: 1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−(1H−ピラゾール−3−イルアミノ)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 316 [M+H]
TLC Rf: 0.67/0.75 (MeOH/DCM = 5/1)
【0097】
実施例2.5: 4−(4−クロロ−フェニルアミノ)−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 360 [M]
TLC Rf: 0.53 (EtOAc/ヘキサン = 1/1)
【0098】
実施例2.6: 4−(3,5−ジクロロ−フェニルアミノ)−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 394 [M+H]
Mp: 145-149℃.
【0099】
実施例2.7: 1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−モルホリン−4−イル−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 320 [M+H]
TLC Rf: 0.08/0.08 (MeOH/DCM = 95/5)
【0100】
実施例2.8: 1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−(1−メチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 347 [M+H]
TLC Rf: 0.06/0.14 (MeOH/DCM/Et3N = 94/5/1)
【0101】
実施例2.9: 4−(1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタ−3−イルアミノ)−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 359 [M+H]
TLC Rf: 0.07/0.14 (MeOH/DCM/Et3N = 94/5/1)
【0102】
実施例2.10: 1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルアミノ)−シクロヘキサノール
MS (LC/MS): 334 [M+H]
TLC Rf: 0.50/0.50 (MeOH/DCM/Et3N = 94/5/1)
【0103】
実施例2.11: trans−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−イミダゾール−1−イル−シクロヘキサノール
水(1.4ml)中のtrans−4−アミノ−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−シクロヘキサノール(75mg, 0.3mmol)の溶液を、リン酸でpH=2.0まで酸性にした。ジオキサン(0.6ml)、パラホルムアルデヒド(27mg, 0.3mmol)およびグリオキサール(40%水溶液, 0.034ml, 0.3mmol)を加え、混合物を80度まで加熱した。塩化アンモニウム(19mg, 0.3mmol)を加え、加熱を9時間続けた。さらに、パラホルムアルデヒド(27mg, 0.3mmol)、グリオキサール(0.034ml, 0.3mmol)および塩化アンモニウム(19mg, 0.3mmol)を加え、加熱を2時間続けた。混合物を室温まで冷却し、30% NaOHで塩基性とした。EtOAcで抽出し、有機抽出物をNaSOで乾燥し、溶媒を蒸発させ、75mgの粗生成物を得た。これを、分取TLCによって、EtOAc/EtOH/NHOH 9:1:0.1を移動相として用いて精製し、純粋なtrans−1−(3−クロロ−フェニルエチニル)−4−イミダゾール−1−イル−シクロヘキサノールを得た(15mg, 17%)。
MS (LC/MS): 301 [MH+],
TLC Rf: 0.42 (EtOAc/EtOH/NH4OH 9:1:0.1).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基または酸付加塩の形態の式(I):
【化1】

[式中、
は、水素またはC−Cアルキルを表し、そして
は、非置換または置換ヘテロ環を表すか、
あるいは、
は、水素またはC−Cアルキルを表し、そして
は、アリールまたは置換アリールを表すか、
あるいは、
は、水素またはC−Cアルキルを表し、そして
は、C(O)R21を表し、ここで、R21は、非置換または置換アルキル、非置換または置換アルコキシ、非置換または置換ヘテロ環、非置換または置換アリールを表すか、
あるいは、
およびRは、窒素原子と一体となって、非置換または置換ヘテロ環を形成し;
は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−CHO、−COO(C1−4)アルキル、−CO(C1−4)アルキルを表し;
nは、0、1、2、3、4または5を表し;
は、OHを表し、そして
およびRは、HまたはC−Cアルキルを表すか、
あるいは、
およびRは、結合を形成し、そして
は、HまたはC−Cアルキルを表すか、
あるいは、
およびRは、結合を形成し、そして
は、HまたはC−Cアルキルを表す。]
の化合物。
【請求項2】
式(I'):
【化2】

[式中、R、R、Rは、請求項1で定義した通りである。]
の化合物。
【請求項3】
請求項1で定義した式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、
a) Rがヒドロキシであり、RおよびRが水素またはC−Cアルキルである、式(I)の化合物を製造するために、式(II):
【化3】

[式中、R、R、R、Rは上記で定義した通りである。]の化合物を、式(III):
【化4】

[式中、Rおよびnは上記で定義した通りである。]の化合物と反応させること、または
b) RおよびRが結合を形成し、そしてRが水素またはC−Cアルキルを表す、またはRおよびRが結合を形成し、そしてRが水素を表す、式(I)の化合物を製造するために、Rがヒドロキシルであり、RおよびRが水素またはC−Cアルキルである式(I)の化合物を脱水すること、または
c) i) Rがヒドロキシを表し、Rが水素またはC−Cアルキルを表し、そしてRが非置換または置換ヘテロ環を表す、またはii) Rが水素またはC−Cアルキルを表し、そしてRがアリールまたは置換アリールを表す、式(I)の化合物を製造するために、式(IV):
【化5】

[式中、R、R、R、nは、上記で定義した通りである。]の化合物を、式(V):
【化6】

[式中、RおよびRは、上記で定義した通りである。]の化合物で還元アミノ化すること、または
d) Rがヒドロキシ、RおよびRが、窒素原子と一体となって、非置換または置換ヘテロ環を形成する、式(I)の化合物を製造するために、式(VI):
【化7】

の化合物を環化縮合すること;
ならびに得られた遊離塩基または酸付加塩の形態の式(I)の化合物を回収すること;
の段階を含む方法。
【請求項4】
医薬として使用するための、遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する消化器疾患および尿路疾患、およびmGluR5が完全にまたは部分的に介在する神経系疾患の予防、処置または進行の遅延に使用するための、遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
薬学的な担体または希釈剤と組み合わせた、遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する消化器疾患および尿路疾患、およびmGluR5が完全にまたは部分的に介在する神経系疾患の予防、処置または進行の遅延における、遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項8】
グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する消化器疾患および尿路疾患、およびmGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患の予防、処置または進行の遅延のために作られる医薬組成物の製造のための、遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項9】
グルタミン酸作動性シグナル伝達の異常に関連する疾患およびmGluR5が完全にまたは一部に介在する神経系疾患を処置する方法であって、該処置が必要な対象に、治療有効量の遊離塩基または薬学的に許容される酸付加塩の形態の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2008−538779(P2008−538779A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508135(P2008−508135)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003768
【国際公開番号】WO2006/114264
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】