説明

アミノピリジンキナーゼ阻害剤

PKC−θの活性化に関係した障害の大部分に現在利用されている治療が不十分なものであることを考えれば、PKC−θの阻害剤として有用な化合物を開発することは重要である。本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は、前記化合物を含む薬学的に許容される組成物、および様々な疾患、状態または障害の治療においてその組成物を使用する方法も提供する。本発明は、本発明の化合物を調製するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、2008年8月6日に出願された米国仮特許出願第61/086,614号に対する優先権を主張する。この仮特許出願の内容は、その全体が本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、細胞内の様々なシグナル伝達過程の制御に関与する構造的に関連した酵素の大きなファミリーを構成する(非特許文献1)。
【0003】
一般に、プロテインキナーゼは、シグナル伝達経路に関係するヌクレオシド三リン酸からタンパク質受容体へのリン酸基転移に影響を及ぼすことによって、細胞内のシグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化イベントは、標的タンパク質の生物学的機能を調節または制御することができる分子オン/オフスイッチとして作用する。これらのリン酸化イベントは根本的には様々な細胞外の刺激や他の刺激に応答して引き起こされる。そうした刺激の例には、環境的および化学的ストレスシグナル(例えば、ショック、熱ショック、紫外線、細菌内毒素およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)および成長因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および線維芽細胞成長因子(FGF))が含まれる。細胞外刺激は、細胞の増殖、遊走、分化、ホルモンの分泌、転写因子の活性化、筋肉収縮、グルコース代謝、タンパク質合成の制御、細胞周期の存続および制御に関係する1つまたは複数の細胞応答に影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
キナーゼは、それがリン酸化する物質(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/トレオニン、脂質等)によって複数のファミリーに分類することができる。これらのキナーゼファミリーのそれぞれに概ね対応する配列モチーフが同定されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照されたい)。
【0005】
セリン/トレオニンキナーゼ、プロテインキナーゼC−シータ(PKC−θ)は、T細胞および骨格筋において選択的に発現する新規なカルシウム非依存性PKCサブファミリーのメンバーである。複数の系統からの証拠によって、T細胞活性化においてPKC−θが重要な役割をもつことが示されている。T細胞の抗原刺激によって、他のPKCアイソフォームではなく、PKC−θが、細胞質から、T細胞と抗原提示細胞(APC)の間の細胞接触部位へ急速に転座し、そこで、中心部超分子活性化クラスター(cSMAC)と称される領域においてT細胞受容体(TCR)とともに局在化する(非特許文献7;非特許文献8)。
【0006】
PKC−θは、転写因子AP−1およびNF−κBを選択的に活性化し、TCRおよびCD28共刺激性シグナルを統合して、IL−2プロモーターにおけるCD28応答要素(CD28RE)の活性化をもたらすことが報告されている(非特許文献9;非特許文献10)。T細胞のCD3/CD28共刺激におけるPKC−θについての特異的役割は、キナーゼデッドPKC−θ変異体またはアンチセンスPKC−θの発現が、TNF−α刺激NF−κB活性化ではなく、CD3/CD28共刺激NF−κB活性化を用量依存的に阻害したという研究において強調されている。これは他のPKCアイソフォームでは見られていない(非特許文献11)。SMACへのPKC−θの動員は、そのN末端制御ドメインによって媒介されることが報告されており、これは、T細胞活性化のために必要である。その理由は、過剰発現したPKC−θ触媒断片は転座せず、NF−κBを活性化することはできないが、PKC−θ触媒ドメイン−Lck膜結合ドメインキメラは、シグナル伝達を再構成することができたからである(非特許文献12)。
【0007】
PKC−θのSMACへの転座は、VavおよびPI3−キナーゼを含む、主としてPLC−γ/DAG非依存性機序によって媒介されるようであるが(非特許文献13)、PKC−θの活性化は、Lck、ZAP−70、SLP−76、PLC−γ、VavおよびPI3−キナーゼを含む複数のシグナル伝達成分からのインプットを必要とする(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17)。ヒトT細胞におけるこれらの生化学的研究は、PKC−θノックアウトマウスにおける研究によって信頼性が獲得されている。その研究ではT細胞機能におけるこの酵素についての重要な役割が確認されている。PKC−θ−/−マウスは健康で繁殖性があり、正常に育った免疫系をもつが、成熟T細胞活性化において著しい欠陥を示す(非特許文献18)。TCRおよびTCR/CD28共刺激に対する増殖応答は、抗原に対するインビボでの応答と同様に阻害されている(>90%)。ヒトT細胞についての研究によれば、転写因子AP−1およびNF−κBの活性化は抑制され、IL−2産生およびIL−2Rアップレギュレーションにおける重大な欠陥がもたらされている(非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21)。最近になって、PKC−θ欠失マウスでの研究で、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)および過敏性腸疾患(IBD)を含む自己免疫疾患のマウスモデルの開発におけるPKC−θについての役割が示されている(Salek−Ardakaniら、2006年;Tanら、2006年;Healyら、2006年;Andersonら、2006年)。これらのモデルでは、PKC−θ欠失マウスは、自己反応性T細胞の増殖およびエフェクター機能における重大な欠陥と関連する疾病重症度の著しい低下を示している。
【0008】
T細胞活性化におけるその役割に加えて、PKC−θは、T細胞をFas−およびUV−誘発アポトーシスから保護するホルボールエステル誘発生存シグナルを媒介することが報告されている(非特許文献22;非特許文献23)。ヒトPKC−θ遺伝子が、T細胞白血病およびリンパ腫をもたらす変異に関係する領域である染色体10(10p15)にマップされているので、この生存促進的な役割は興味深いものである(非特許文献24;非特許文献25)。
【0009】
インビボでの、感染症に対する免疫応答におけるPKC−θについての役割は、遭遇する病原体の種類に依存する。PKC−θ欠失マウスは、いくつかのウイルス感染症および寄生原生動物、リーシュマニア寄生虫(Leishmania major)に対する正常なTh1および細胞毒性T細胞媒介応答を誘発し、これらの感染症を効果的に排除する(Marslandら、2004年;Berg−Brownら、2004年;Marslandら、2005年;Giannoniら、2005年)。しかし、PKC−θ欠失マウスは、寄生虫のニッポストロンギルスブラジリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)および特定のアレルゲンに対する正常なTh2T細胞応答を遂行することができず(Marslandら、2004年;Salek−Ardakaniら、2004年)、リステリア菌感染症を排除することはできない(Sakowicz−Burkiewiczら、2008年)。明らかに状況によっては、T細胞活性化におけるPKC−θのための要件は回避することができ、これは、先天性免疫系の細胞からか、または直接、病原体関連分子パターン(PAMP)の形態の病原体からのT細胞への追加的シグナルの提供を伴うようである(Marslandら、2007年)。
【0010】
最近になって、PKC−θ欠失マウスにおける研究によって、多発性硬化症、関節リウマチおよび炎症性腸疾患を含む自己免疫疾患のマウスモデルの開発における、PKC−θについての役割が示されている。試験したすべてのケースで、PKC−θ欠失マウスは、新たに発見されたクラスのT細胞、Th17細胞の増殖における著しい欠陥に関連する疾病重症度の顕著な低下を示している(Salek−Ardakaniら、2006年;Tanら、2006年;Healyら、2006年;Andersonら、2006年;Nagahamaら、2008年)。したがって、PKC−θは、自己免疫の関連で、病原性の自己反応性Th17細胞の増殖に必須であるようである。これらの観察は、PKC−θを標的とすることが、多くのT細胞応答(例えば、ウイルス感染症に対する)を損なわずに、自己免疫T細胞応答を標的とする方向性を提供するという考え方を支持している。
【0011】
T細胞活性化におけるその役割に加えて、PKC−θは、T細胞をFas−およびUV−誘発アポトーシスから保護するホルボールエステル誘発生存シグナルを媒介する(非特許文献26;非特許文献27)。ヒトPKC−θ遺伝子が、T細胞白血病およびリンパ腫をもたらす変異に関係する領域である染色体10(10p15)にマップされているので、この生存促進的な役割は興味深いものである(非特許文献28;Vermaら、1987年、J.Cancer Res.Clin.Oncol.、113巻:192〜196頁)。
【0012】
以上を併せると、これらのデータは、PKC−θが、炎症性障害、免疫障害、リンパ腫およびT細胞白血病における治療的介入のための魅力的な標的であることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Hardie,G and Hanks, S.The Protein Kinase Facts Book、I巻およびII巻、Academic Press、San Diego、CA:1995年
【非特許文献2】Hanks,S.K.、Hunter,T.、FASEB J.1995年、9巻、576〜596頁
【非特許文献3】Knightonら、 Science 1991年、253巻、407〜414頁
【非特許文献4】Hilesら、Cell 1992年、70巻、419〜429頁
【非特許文献5】Kunzら、Cell 1993年、73巻、585〜596頁
【非特許文献6】Garcia−Bustosら、EMBO J 1994年、13巻、2352〜2361頁
【非特許文献7】Monksら、1997年、Nature、385巻:83〜86頁
【非特許文献8】Monksら、1998年、Nature、395巻:82〜86頁
【非特許文献9】Baier−Bitterlichら、1996年、Mol.Cell.Biol.、16巻:1842〜1850頁
【非特許文献10】Coudronniereら、2000年、PNAS、97巻:3394〜3399頁
【非特許文献11】Linら、2000年、Mol.Cell.Biol.、20巻:2933〜2940頁
【非特許文献12】Biら、2001年、Nat.Immunol.、2巻:556〜563頁
【非特許文献13】Villalbaら、2002年、JCB、157巻:253〜263頁
【非特許文献14】Liuら、2000年、JBC、275巻:3606〜3609頁
【非特許文献15】Herndonら、2001年、J.Immunol.、166巻:5654〜5664頁
【非特許文献16】Dienzら、2002年、J.Immunol.、169巻:365〜372頁
【非特許文献17】Bauerら、2001年、JBC、276巻:31627〜31634頁
【非特許文献18】Sunら、200、Nature、404巻:402〜407頁
【非特許文献19】Baier−Bitterlichら、1996年、MBC、16巻、1842頁
【非特許文献20】Linら、2000年、MCB、20巻、2933頁
【非特許文献21】Courdonniere、2000年、97巻、3394頁
【非特許文献22】Villalbaら、2001年、J.Immunol.166巻:5955〜5963頁
【非特許文献23】Berttolottoら、2000年、275巻:37246〜37250頁
【非特許文献24】Erdelら、1995年、Genomics25巻:295〜297頁
【非特許文献25】Vermaら、1987年、J.Cancer Res.Clin.Oncol.、113巻:192〜196頁
【非特許文献26】Villalbaら、2001年、J.Immunol.166巻:5955〜5963頁
【非特許文献27】Berttolottoら、2000年、275巻:37246〜37250頁
【非特許文献28】Erdelら、1995年、Genomics25巻:295〜297頁
【非特許文献29】Vermaら、1987年、J.Cancer Res.Clin.Oncol.、113巻:192〜196頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物を開発する必要性が大いにある。具体的には、特に、PKC−θの活性化に関係した障害の大部分に現在利用されている治療が不十分なものであることを考えれば、PKC−θの阻害剤として有用な化合物を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、一般に、キナーゼ阻害剤として有用な本明細書で説明する化合物を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、被験体のプロテインキナーゼ媒介状態を治療または予防する方法であって、被験体に有効量の本発明の化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物を投与することを含む方法である。
【0017】
一実施形態では、本発明は、被験体のプロテインキナーゼ媒介状態の治療または予防において使用するための本発明の化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物の製造である。
【0018】
他の実施形態では、本発明の化合物、薬学的に許容されるその塩および組成物は、生物学的および病理学的現象におけるキナーゼの試験;そうしたキナーゼによって媒介される細胞内シグナル変換経路の試験;および新規なキナーゼ阻害剤の比較評価にも有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用な化合物、薬学的に許容されるその塩および組成物(医薬組成物など)に関する。
【0020】
一実施形態では、本発明の化合物、薬学的に許容されるその塩および組成物はPKCθの阻害剤として有効である。
【0021】
本発明の化合物は、本明細書で全般的に説明するものを含み、これらは、本明細書で開示するクラス、サブクラスおよび種によってさらに例示される。本明細書で用いるように、別段の指示のない限り、本明細書で規定される定義が適用されるものとする。本発明のためには、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics、75th Edの元素周期律表、CAS版によって特定される。さらに、有機化学の一般的原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University ScienceBooks、Sausalito:1999年、および「March's Advanced Organic Chemistry」、5th Ed.、Ed.、Smith,M.B.およびMarch, J.編集、John Wiley & Sons、New York:2001年に記載されている。これらの内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0022】
一実施形態では、本発明の化合物は、以下の構造式:
【0023】
【化1】

で表される化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0024】
は−H、C1〜C3脂肪族、FまたはClである。
【0025】
環Bは5または6員単環式複素芳香環である。
【0026】
Xは−CH−、−S−または−NR−である。
【0027】
は存在しないかまたは−Hである。
【0028】
Yは−Y1または−Q1である。
【0029】
Y1は、1つまたは複数のFで任意選択でかつ独立に置換されたC1〜10脂肪族基である。
【0030】
Q1は、フェニル、または窒素、酸素およびイオウから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員単環式ヘテロアリール環であり;Q1は1つまたは複数のJで任意選択でかつ独立に置換されている。
【0031】
Dは環Cまたは−Q−Rである。
【0032】
環Cは、1〜2個の窒素原子を有する6〜8員非芳香族単環、または窒素および酸素から選択される1〜3個のヘテロ原子を有する8〜12員非芳香族架橋二環系であり;環Cは、1つまたは複数のJで任意選択でかつ独立に置換されている。
【0033】
Qは−NH−または−O−である。
【0034】
は、−OHまたは−NHで置換されたC1〜10アルキルであり;Rの3つ〜6つのメチレン単位は任意選択でC3〜C6員シクロアルキル環を形成することができ;Rは、1つまたは複数のJでさらに独立に任意選択でかつ独立に置換されている。
【0035】
各Jは独立にFまたはC1〜C6アルキルである。
【0036】
はC1〜C10アルキルであり、最大で3つのメチレン単位は−O−で任意選択で置き換えられており;C1〜C10アルキルは1つもしくは複数のJで任意選択でかつ独立に置換されているか;あるいはJはC3〜C6シクロアルキルまたはC5〜C6ヘテロアリールであるか;あるいはJはJで任意選択でかつ独立に置換されたフェニルであるか;あるいは同一炭素原子上の2つのJは=OまたはスピロC3〜C6シクロアルキルを形成している。
【0037】
各Jは独立にF、−OHまたはC3〜C6シクロアルキルである。
【0038】
各Jは独立にFまたはClである。
【0039】
各Jは独立に、フェニル、または窒素、酸素およびイオウから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員の単環式芳香環もしくは非芳香環であるか、あるいは同一炭素原子上の2つのJはスピロC3〜C6シクロアルキルを形成している。
【0040】
uは0または1である。
【0041】
ただし、上記化合物は
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

ではないという前提である。
【0049】
一実施形態では、環Bはピリジルであり;環Cは、ピペリジニル、ピペラジニル(piperizinyl)、ジアゼパニル、トリアゼパニル、アゾカニル、ジアゾカニル、トリアゾカニル、インドリル、インダゾリルまたはジアザビシクロオクチルからなる群から選択され;環Cは1つまたは複数のJで任意選択でかつ独立に置換されており、その変数の残りは上記説明通りである。
【0050】
キナーゼ阻害剤は、2007年1月31日出願の「キナーゼ阻害剤」という名称の米国仮特許出願第60/898,643号、2007年4月25日出願の「キナーゼ阻害剤」という名称の米国仮特許出願第60/913,867号、2007年8月31日出願の「キナーゼ阻害剤」という名称の米国仮特許出願第60/969,312号、および2007年12月19日出願の「キナーゼ阻害剤」という名称の米国仮特許出願第60/014,893号、ならびに2008年1月30日出願の「キナーゼ阻害剤」という名称のPCT出願PCT/US2008052443に記載されている。これらの内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0051】
本明細書で説明する、指定された範囲の原子の数は、その範囲内の任意の整数を含む。例えば、1〜4個の原子を有する基は、1、2、3または4個の原子を含むということである。
【0052】
本明細書で用いる「存在しない」および「結合」という用語は、互換的に用いることができ、その実施形態ではその変数が不在、すなわち、その変数が原子または原子の群を表さないことを意味する。
【0053】
本明細書で用いる「安定な」という用語は、その製造、検出、回収、貯蔵、精製、および本明細書で開示する目的の1つまたは複数のための使用を可能にする条件に付したとき、実質的に変化しない化合物を指す。いくつかの実施形態では、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分または他の化学的反応性条件の非存在下、40℃以下の温度で少なくとも1週間保持して実質的に変化しない化合物である。
【0054】
本明細書で用いる「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、完全に飽和しているか、1つもしくは複数の不飽和単位を含むが芳香族ではない直鎖(すなわち、非分岐)または分岐の炭化水素鎖を意味する。別段の言及のない限り、脂肪族基は1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。脂肪族基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であってよい。具体的な例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、sec−ブチル、ビニル、n−ブテニル、エチニルおよびtert−ブチルが含まれる。
【0055】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、飽和の直鎖または分岐鎖の炭化水素を意味する。本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の二重結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を意味する。本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の三重結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を意味する。
【0056】
「環状脂肪族」(または「炭素環」もしくは「カルボシクリル」もしくは「炭素環式」)という用語は、3〜14個の環炭素原子を有する、飽和していても1つまたは複数の不飽和単位を含んでもよい非芳香族の単環式炭素含有環を指す。この用語は、多環式の縮合、スピロまたは架橋炭素環系を含む。この用語は、その炭素環が1つもしくは複数の非芳香族炭素環または複素環あるいは1つもしくは複数の芳香環またはその組合せと縮合していてよく、そのラジカルまたは結合点が炭素環上にある多環式環系も含む。縮合二環系は2個の隣接環原子を共有する2つの環を含み、架橋二環式基は3個または4個の隣接環原子を共有する2つの環を含み、スピロ二環系は1個の環原子を共有する。環状脂肪族基の例には、これらに限定されないが、シクロアルキルおよびシクロアルケニル基が含まれる。具体的な例には、これらに限定されないが、シクロヘキシル、シクロプロペニル、シクロプロピルおよびシクロブチルが含まれる。
【0057】
本明細書で用いる「複素環」(または「ヘテロシクリル」もしくは「ヘテロシクリル(の)」)という用語は、1つもしくは複数の環炭素がN、SまたはOなどのヘテロ原子で置き換えられた3〜14個の環原子を有する、飽和していても1つもしくは複数の不飽和単位を含んでもよい非芳香族単環を指す。この用語は、多環式の縮合、スピロまたは架橋複素環系を含む。この用語は、その複素環が1つもしくは複数の非芳香族炭素環または複素環あるいは1つもしくは複数の芳香環またはその組合せと縮合していてよく、そのラジカルまたは結合点が複素環上にある多環式環系も含む。複素環の例には、これらに限定されないが、ピペリジニル、ピペラジニル(piperizinyl)、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、トリアゼパニル、アゾカニル、ジアゾカニル、トリアゾカニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾカニル、オキサゼパニル、チアゼパニル、チアゾカニル、ベンズイミダゾロニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、例えば3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノを含むモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、3−ピペラジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラニル、ベンゾジチアニル、ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−2−オニルおよび1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オニル、アザビシクロペンチル、アザビシクロヘキシル、アザビシクロヘプチル、アザビシクロオクチル、アザビシクロノニル、アザビシクロデシル、ジアザビシクロヘキシル、ジアザビシクロヘプチル、ジヒドロインダゾリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、テトラヒドロピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピラジニル、ジヒドロピラジニル、テトラヒドロピリミジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロイミダゾリル、オクタヒドロピロロピラジル、オクタヒドロピロロピリジル、オクタヒドロピリドピラジル、オクタヒドロピリドピリジル、ジアザビシクロオクチル、ジアザビシクロノニルならびにジアザビシクロデシルが含まれる。
【0058】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素(窒素、イオウ、リンまたはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態;または複素環の置換可能な窒素、例えばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルのような)、NH(ピロリジニルのような)またはNR(N置換ピロリジニルのような)を含む)の1つまたは複数を意味する。
【0059】
本明細書で用いる「不飽和(の)」という用語は、ある部分が1つまたは複数の不飽和単位を有することを意味する。
【0060】
本明細書で用いる「アルコキシ」または「チオアルキル」という用語は、酸素(「アルコキシ」、例えば−O−アルキル)またはイオウ(「チオアルキル」、例えば−S−アルキル)原子を介してその分子と結合している上記定義のアルキル基を指す。
【0061】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロ脂肪族」および「ハロアルコキシ」(または「アミノアルキル」、「ヒドロキシアルキル」等)という用語は、場合によって1つまたは複数のハロゲン原子で置換されたアルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。この用語は、−CFおよび−CFCFなどのペルフルオロ化アルキル基を含む。
【0062】
「ハロゲン」、「ハロ」および「hal」という用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。ハロ脂肪族および−O(ハロ脂肪族)という用語は、モノ−、ジ−およびトリ−ハロ置換脂肪族基を含む。
【0063】
単独か、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、「アリールオキシアルキル」もしくは「ヘテロアリール」のような大きな部分の一部として用いられる「アリール」という用語は、炭素環および/または複素環芳香環系を指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に用いることができる。
【0064】
炭素環芳香環基は炭素環原子のみを有し(一般に6個〜14個)、それらは、フェニルなどの単環式芳香環および2つ以上の炭素環芳香環が互いに縮合している縮合多環式芳香環系を含む。その例には、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシルおよび2−アントラシルが含まれる。そのラジカルまたは結合点が芳香環上にある、インダニル、フタリミジル、ナフチミジル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロナフチルのように、芳香環が1つまたは複数の非芳香環(炭素環または複素環)と縮合している基も本明細書で用いられるような「炭素環芳香環」という用語の範囲に含まれる。
【0065】
単独か、または「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」のような大きな部分の一部として用いられる「ヘテロアリール」、「複素環芳香族」、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」および「複素環芳香基」という用語は、単環式複素芳香環、および単環式芳香環が1つまたは複数の他の芳香環と縮合している多環式芳香環を含む5〜14個の員数を有する複素芳香環基を指す。ヘテロアリール基は1つまたは複数の環ヘテロ原子を有する。芳香環が1つまたは複数の非芳香環(炭素環または複素環)と縮合しており、そのラジカルまたは結合点が芳香環上にある基も本明細書用いられるような「ヘテロアリール」という用語の範囲に含まれる。本明細書で用いる二環式6,5複素芳香環は、例えば、第2の5員環と縮合した6員複素芳香環である。ラジカルまたは結合点は6員環上である。ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルまたはチアジアゾリルが含まれ、例えば2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサジアゾリル、5−オキサジアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、3−ピリダジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−トリアゾリル、5−トリアゾリル、テトラゾリル、2−チエニル、3−チエニル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、アクリジニル、ベンゾイソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)およびイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニルまたは4−イソキノリニル)が含まれる。
【0066】
本明細書で用いる「保護基(protecting group)」および「保護基(protective group)」という用語は互換的に用いることができ、これは、複数の反応部位を有する化合物中の1つまたは複数の所望官能基を一時的に遮断するために使用される試剤(agent)を指す。特定の実施形態では、保護基は以下の特徴:a)官能基に選択的に付加されて良好な収率で保護された基質をもたらす、すなわち、b)他の反応部位の1つまたは複数で起こる反応に対して安定であり;c)再生され、脱保護された官能基を攻撃しない試薬によって良好な収率で選択的に取り外すことができるという特徴の1つもしくは複数、または好ましくはそのすべてを有する。当業者に理解されるように、いくつかの場合、その試薬は化合物中の他の反応基を攻撃しない。他の場合、その試薬はその化合物中の他の反応基と反応することもできる。保護基の例は、Greene,T.W.、Wuts,P.Gの「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、John Wiley & Sons、New York:1999年(およびこの本の他の版)に詳細に記されている。この内容全体を参照により本明細書に組み込む。本明細書で用いる「窒素保護基」という用語は、多官能性化合物中の1つまたは複数の所望の窒素反応部位を一時的に遮断するために使用される基を指す。好ましい窒素保護基も上記保護基について例示した特徴を有し、窒素保護基の具体的な例は、やはり、Greene,T.W.、Wuts,P.Gの「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、John Wiley & Sons、New York:1999年のChapter 7に詳細に記されている。この内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0067】
いくつかの実施形態では、脂肪族鎖の表示されたメチレン単位は別の原子または基で任意選択で置き換えられている。そうした原子または基の例には、これらに限定されないが、−N(R)−、−O−、−C(O)−、−C(=N−CN)−、−C(=NR)−、−C(=NOR)−、−S−、−S(O)−および−S(O)−が含まれる。これらの原子または基は一緒になってより大きな基を形成していてよい。そうしたより大きな基の例には、これらに限定されないが、−OC(O)−、−C(O)CO−、−CO−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)O−、−S(O)N(R)−、−N(R)SO−、−N(R)C(O)N(R)−、−OC(O)N(R)−および−N(R)SON(R)−が含まれる。ここでRは本明細書で定義される通りである。
【0068】
安定な構造をもたらす基の置き換えおよび組合せだけを考慮する。任意選択の置き換えは、その鎖内および/または鎖のどちらかの末端の両方;すなわち、結合点および/または末端の両方で起こり得る。化学的に安定な化合物が得られる限り、2つの任意選択の置き換えは、鎖の中で互いに隣接していてもよい。その任意選択の置き換えは、その鎖中のすべての炭素原子を完全に置き換えることであってもよい。例えば、C脂肪族を、−N(R)−、−C(O)−および−N(R)−で任意選択で置き換えて−N(R)C(O)N(R)−(尿素)を形成するか、またはC脂肪族を、例えば−OH、NH等で任意選択で置き換えることができる。
【0069】
別段の言及のない限り、その置き換えが末端で起こる場合、その置き換え原子は末端でHと結合している。例えば−CHCHCHが−O−で任意選択で置き換えられた場合、得られる化合物は−OCHCH、−CHOCHまたは−CHCHOHとなる。
【0070】
本明細書で用いる、脂肪族鎖における「(そこで)3つ〜6つのメチレン単位はC3〜C6員シクロアルキル環を形成することができる」という語句では、以下の構造:
【0071】
【化9】

が包含される。
【0072】
別段の言及のない限り、本明細書で示す構造は、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、配座異性体および回転異性体)を含むことも意味する。例えば、各不斉中心についてのR型およびS型構造、(Z)型および(E)型二重結合異性体ならびに(Z)型および(E)型の配座異性体も本発明に含まれる。当業者は理解されるように、置換基は、回転可能な任意の結合周りを自由に回転することができる。例えば、
【0073】
【化10】

と表示された置換基は、
【0074】
【化11】

も表す。
【0075】
したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体、ならびに鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、配座異性体および回転異性体混合物は本発明の範囲内である。
【0076】
別段の言及のない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形態は本発明の範囲内である。
【0077】
さらに、別段の言及のない限り、本明細書で示す構造は、1つまたは複数の同位体的に富化された原子が存在することだけが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、水素を重水素または三重水素で置き換えていること、あるいは、炭素を13C−または14C−富化炭素で置き換えていることを除いて、本発明の構造を有する化合物は本発明の範囲内である。そうした化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0078】
本明細書で説明する、本発明の指定された化合物は、本明細書で概説したように、あるいは、本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示されるように、1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてよい。「任意選択で置換された」という語句は「置換または非置換(の)」という語句と互換的に用いられることを理解されよう。一般に、「置換(された)」という用語は、「任意選択で」という用語が先行していてもいなくても、所与の構造中の水素ラジカルを、指定された置換基のラジカルで置き換えることを指す。別段の言及のない限り、任意選択で置換された基は、その基の各置換可能な位置で置換基を有することができる。また、所与の任意の構造中の2つ以上の位置を、指定された基から選択される2つ以上の置換基で置換できる場合、その置換基はその位置ごとに同じであっても異なっていてもよい。
【0079】
安定な構造をもたらす置換基の選択および組合せだけを考慮する。そうした選択および組合せは当業者に明らかであろう。また、必要以上の実験を行うことなくそれらを決定することができる。
【0080】
「環原子」という用語は、芳香族基、シクロアルキル基または非芳香族複素環の中にあるC、N、OまたはSなどの原子である。
【0081】
芳香環または非芳香環基中の「置換可能環原子」は、水素原子と結合している環炭素または窒素原子である。その水素は、適切な置換基で任意選択で置き換えることができる。したがって、「置換可能環原子」という用語は、2つの環が縮合している場合に共有される環窒素または環炭素原子を含まない。さらに、その構造が、環炭素または環窒素原子が水素以外の部分とすでに結合していることを示している場合、「置換可能環原子」は環炭素または環窒素原子を含まない。
【0082】
本明細書で定義のアリール基は、適切な置換基と結合していてよい1つまたは複数の置換可能な環原子を含むことができる。アリール基の置換可能環炭素原子上の適切な置換基の例にはRが含まれる。Rは、−Ra、−Br、−Cl、−I、−F、−ORa、−SRa、−O−CORa、−CORa、−CSRa、−CN、−NO、−NCS、−SOH、−N(RaRb)、−COORa、−NRcNRcCORa、−NRcNRcCORa、−CHO、−CON(RaRb)、−OC(O)N(RaRb)、−CSN(RaRb)、−NRcCORa、−NRcCOORa、−NRcCSRa、−NRcCON(RaRb)、−NRcNRcC(O)N(RaRb)、−NRcCSN(RaRb)、−C(=NRc)−N(RaRb)、−C(=S)N(RaRb)、−NRd−C(=NRc)−N(RaRb)、−NRcNRaRb、−S(O)NRaRb、−NRcSON(RaRb)、−NRcS(O)Ra、−S(O)Ra、−OS(O)NRaRbまたは−OS(O)Raである。ここで、pは1または2である。
【0083】
Ra−Rdはそれぞれ独立に、−H、脂肪族基、芳香族基、非芳香族炭素環もしくは複素環基または−N(RaRb)であり、一緒に非芳香族複素環基を形成する。Ra−Rdで表される脂肪族、芳香族および非芳香族複素環基ならびに−N(RaRb)で表される非芳香族複素環基はそれぞれ、Rで表される1つまたは複数の基で任意選択でかつ独立に置換されている。Ra−Rdは置換されていないことが好ましい。
【0084】
は、ハロゲン、R、−OR、−SR、−NO、−CN、−N(R、−COR、−COOR、−NHCO、−NHC(O)R、−NHNHC(O)R、−NHC(O)N(R、−NHNHC(O)N(R、−NHNHCO、−C(O)N(R、−OC(O)R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NHSON(R、−NHSO、−C(=S)N(Rまたは−C(=NH)−N(Rである。
【0085】
は、−H、C1〜C4アルキル基、単環式アリール基、非芳香族炭素環または複素環基であり、それぞれは、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロゲン、−CN、−NO、アミン、アルキルアミンまたはジアルキルアミンで任意選択で置換されている。Rは置換されていないことが好ましい。
【0086】
本明細書で使用する脂肪族または非芳香族複素環もしくは炭素環基は、1つまたは複数の置換基を含むことができる。脂肪族基または非芳香族複素環基の環炭素に適した置換基の例はR’’である。R’’には、Rについて上記に挙げた置換基、および=O、=S、=NNHR**、=NN(R**、=NNHC(O)R**、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、=NR**、スピロシクロアルキル基または縮合シクロアルキル基が含まれる。各R**は、水素、非置換アルキル基または置換アルキル基から独立に選択される。R**で表されるアルキル基上の置換基の例には、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシまたはハロアルキルが含まれる。
【0087】
ヘテロシクリル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキル基が窒素原子を含む場合、それは置換されていても置換されていなくてもよい。ヘテロアリール基の芳香環中の窒素原子が置換基を有する場合、その窒素は四級窒素であってよい。
【0088】
非芳香族窒素含有複素環基の置換のための好ましい位置は窒素環原子である。非芳香族複素環基またはヘテロアリール基の窒素上の適切な置換基には、−R^、−N(R^)、C(O)R^、COR^、−C(O)C(O)R^、−SOR^、SON(R^)、C(=S)N(R^)、C(=NH)−N(R^)および−NR^SOR^が含まれる。ここで、R^は、水素、脂肪族基、置換脂肪族基、アリール、置換アリール、複素環もしくは炭素環または置換複素環もしくは炭素環である。R^で表される基の上の置換基の例には、アルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、アルコキシアルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アリール、炭素環もしくは複素環、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルが含まれる。R^は置換されていないことが好ましい。
【0089】
環窒素上で置換されており、環炭素原子でその分子の残りと結合している非芳香族窒素含有複素環は、N置換されていると称される。例えば、Nアルキルピペリジニル基は、ピペリジニル環の2、3または4位でその分子の残りと結合しており、環窒素においてアルキル基で置換されている。環窒素上で置換されており、第2の環窒素原子でその分子の残りと結合しているピラジニルなどの非芳香族窒素含有複素環はN’置換−N−複素環と称される。例えば、N’アシルN−ピラジニル基は、1個の環窒素原子でその分子の残りと結合しており、第2の環窒素原子においてアシル基で置換されている。
【0090】
本明細書で用いる任意選択で置換されたアラルキルは、アルキル部とアリール部の両方の上で置換されていてよい。別段の言及のない限り、本明細書で用いる任意選択で置換されたアラルキルは、アリール部上で任意選択で置換されている。
【0091】
「結合」および「存在しない」という用語は、互換的に用いられて基が存在しないことを表す。
【0092】
本発明の化合物は本明細書ではその化学構造および/または化学名によって定義される。化合物が、化学構造と化学名の両方について参照されており、その化学構造と化学名が相反する場合、化学構造がその化合物の同一性を決定する。
【0093】
本発明の化合物は治療のために、遊離形態で存在することができ、または、適切な場合には薬学的に許容される塩として存在することができる。
【0094】
本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、毒性、炎症、アレルギー反応などの過度の副作用を伴うことなくヒトや下等動物の組織と接触して用いるのに適しており、かつ、妥当な便益/リスク比に相応している化合物の塩を指す。
【0095】
薬学的に許容される塩は当業界で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1〜19頁(これを参照により本明細書に組み込む)に薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、適切な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものが含まれる。これらの塩は、化合物の最終単離および精製の際にインサイチュで調製することができる。酸付加塩は、1)その遊離塩基の形態の精製された化合物を適切な有機または無機酸と反応させ、2)生成した塩を単離することによって調製することができる。
【0096】
薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と形成させるか、あるいは、イオン交換などの当業界で用いられる他の方法によるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。
【0097】
塩基付加塩は、1)その酸の形態の精製された化合物を適切な有機または無機の塩基と反応させ、2)生成した塩を単離することによって調製することができる。適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、リチウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウムおよびカルシウム)、アンモニウムおよびN(C1〜4アルキル)塩が含まれる。本発明は、本明細書で開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。そうした四級化によって、水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物を得ることができる。
【0098】
さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート、ナイトレート、低級アルキルスルホネートならびにアリールスルホネートなどの対イオンを用いて形成される非毒性のアンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオンが含まれる。それ自体は薬学的に許容されなくても、他の酸および塩基を、本発明の化合物およびその薬学的に許容される酸または塩基付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に用いることができる。
【0099】
本発明は、異なる薬学的に許容される塩の混合物/組合せを含み、また、遊離形態および薬学的に許容される塩での化合物の混合物/組合せも含むことを理解すべきである。
【0100】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の薬学的に許容される溶媒和物(例えば、水和物)およびクラスレートも、本明細書で特定される障害を治療または予防するための組成物において使用することができる。
【0101】
本明細書で用いる「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、1つまたは複数の薬学的に許容される溶媒分子と本発明の化合物の1つとの会合によって形成される溶媒和物である。溶媒和物という用語は水和物(例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など)を含む。
【0102】
本明細書で用いる「水和物」という用語は、非共有結合分子間力によって結合された化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む、本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0103】
本明細書で用いる「クラスレート」という用語は、その中に捕捉されたゲスト分子(例えば、溶媒または水)を有する空間(例えば、チャンネル)を含む結晶格子の形態の本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0104】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグも、本明細書で特定される障害を治療または予防するための組成物で用いることができる。
【0105】
別段の言及のない限り、本明細書で用いる「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件下で(インビトロまたはインビボで)加水分解、酸化あるいは反応して本発明の化合物を生成できる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下でのそうした反応によって活性になることができるか、またはその未反応形態で活性をもつことができる。本発明で考慮するプロドラッグの例には、これらに限定されないが、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイドおよび生加水分解性ホスフェート類似体などの生加水分解性部分を含む本発明の化合物の類似体または誘導体が含まれる。プロドラッグの他の例には、−NO、−NO2、−ONOまたは−ONO2部分を含む本発明の化合物の誘導体が含まれる。プロドラッグは代表的に、BURGER’S MEDICINAL CHEMISTRY AND DRUG DISCOVERY(1995年)172〜178頁、949〜982頁(Manfred E. Wolff ed.、第5版)に記載されているような周知の方法を用いて調製することができる。
【0106】
「薬学的に許容される誘導体」は、それを必要とする患者に投与されると、直接間接を問わず、本明細書で説明する化合物または代謝産物もしくはその残基を提供できる付加体または誘導体である。薬学的に許容される誘導体の例には、これらに限定されないが、エステルおよびそうしたエステルの塩が含まれる。
【0107】
「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」には、レシピエントに投与されると、直接間接を問わず、本発明の化合物または阻害剤的に活性な代謝産物もしくはその残基を提供できる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容されるエステル、エステルの塩または他の誘導体もしくはその塩が含まれる。特に好都合な誘導体またはプロドラッグは、そうした化合物が患者に投与されたとき本発明の化合物の生物学的利用能を増大させる(例えば、経口で投与された化合物がより簡単に血液中に吸収されるようにすることによって)もの、あるいは、親種と比較して、生物学的部位(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を増進させるものである。
【0108】
本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグには、これらに限定されないが、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩およびスルホン酸エステルが含まれる。
【0109】
本明細書で用いる「副作用」という語句は、治療薬(例えば、予防または治療薬)による望んでいない悪い影響を包含する。副作用は常に望んでいないが、望んでいない影響は必ずしも不都合なものではない。治療薬(例えば、予防または治療薬)による悪影響は有害であり得、不愉快であり得、またはリスクがあり得る。副作用には、これらに限定されないが、発熱、悪寒、けん怠感、胃腸毒性(胃腸の潰瘍およびびらんを含む)、吐き気、嘔吐、神経毒性、腎臓毒性、腎臓毒性(乳頭壊死および慢性間質性腎炎などの状態を含む)、肝障害(高い血清肝酵素値を含む)、骨髄毒性(白血球減少、骨髄抑制、血小板減少症および貧血を含む)、口渇、金属味、妊娠期間の延長、衰弱、眠気、疼痛(筋肉痛、骨痛および頭痛を含む)、脱毛、無力感、目まい、錐体外路系症状、静座不能、心血管障害および性的機能不全が含まれる。
【0110】
一実施形態では、本発明は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤またはビヒクルを含む薬学的組成物である。一実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物および薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤またはビヒクルを含む薬学的組成物である。薬学的に許容される担体には、例えば、予定する投与形態に関して適切に選択され、かつ慣行的な薬学的実務に合致する薬剤用希釈剤、賦形剤または担体が含まれる。
【0111】
薬学的に許容される担体は、化合物の生物学的活性をあまり阻害しない不活性成分を含むことができる。薬学的に許容される担体は、被験体に投与したとき、生体適合性のもの、例えば非毒性、非炎症性、非免疫原性、または他の望ましくない反応もしくは副作用がないものでなければならない。標準的な医薬処方技術を用いることができる。
【0112】
本明細書で用いる、薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルには、具体的な所望剤形に適合した溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散助剤もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤などのありとあらゆるものが含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Sixteenth Edition、E. W. Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980年)は、薬学的に許容される組成物を処方するのに使用される様々な担体およびそれを調製するための公知の技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的作用をもたらすか、あるいは、薬学的に許容される組成物の他のいずれかの成分と有害な仕方で相互作用するなどによって、慣用的な担体媒体が本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であるものとする。
【0113】
薬学的に許容される担体として役目を果たすことができる材料のいくつかの例には、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;でんぷん、例えばトウモロコシでんぷんおよびジャガイモでんぷん;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガント粉末;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび坐薬用ワックス;オイル、例えばピーナッツ油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;コーンオイルおよび大豆油;グリコール;例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性の適合性滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムが含まれ、また、処方責任者(formulator)の判断にしたがって、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤も組成物中に含めることもできる。
【0114】
プロテインキナーゼ阻害剤またはその薬剤用塩を処方して、本明細書で規定する被験体に投与するための薬学的組成物にすることができる。プロテインキナーゼ媒介状態を治療または予防するのに有効な量のタンパク質阻害剤、および薬学的に許容される担体を含むこれらの薬学的組成物は、本発明の他の実施形態である。
【0115】
一実施形態では、本発明は、プロテインキナーゼ媒介障害の治療または予防を必要とする被験体におけるプロテインキナーゼ媒介障害を治療または予防する方法であって、その被験体に有効量の本明細書に記載の本発明の化合物、組成物または薬学的に許容される塩を投与することを含む方法である。他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の疾患または障害の治療または予防を必要とする被験体における本明細書に記載の疾患または障害を治療または予防するための有効量の本明細書に記載の化合物、組成物または薬学的に許容される塩の使用である。さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の疾患または障害の治療または予防を必要とする被験体における本明細書に記載の疾患または障害を治療または予防する医薬品の製造のための有効量の本明細書に記載の化合物、組成物または薬学的に許容される塩の使用である。一実施形態では、そのプロテインキナーゼ媒介疾患はプロテインキナーゼC(PKC)媒介疾患である。他の実施形態では、プロテインキナーゼ媒介疾患はプロテインキナーゼCθ(PKCθ)媒介疾患である。
【0116】
本明細書で用いる「被験体」、「患者」および「哺乳動物」という用語は互換的に用いられる。「被験体」および「患者」という用語は、動物(例えば、ニワトリ、ウズラもしくはシチメンチョウなどのトリまたは哺乳動物)、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌおよびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよびヒト)を含む哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。一実施形態では、その被験体は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタまたはヒツジ)または愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、またはウサギ)などのヒト以外の動物である。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0117】
本明細書で用いる「有効量」という用語は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。本発明では、所望の生物学的応答は、プロテインキナーゼ媒介状態の重篤度、期間、進行または発症を軽減(短縮、遅延)または緩和する、プロテインキナーゼ媒介状態の進行を阻止する、プロテインキナーゼ媒介状態の退縮を引き起こす、プロテインキナーゼ媒介状態に付随する症状の再発、発生、発症または進行を阻止する、あるいは、他の治療法の予防または治療効果を高めるまたは改善させることである。被験体に投与される化合物の正確な量は、投与方式、その疾患または状態の種類および重篤度ならびに総体的な健康状態、年齢、性別、体重および薬物耐性などの被験体の特徴に依存することになる。また、プロテインキナーゼ媒介状態の程度、重篤度および種類ならびに投与方式にも依存することになる。当業者は、上記および他の因子に応じて適切な投薬量を決定することができよう。他の薬剤と併用する場合、例えば、プロテインキナーゼ媒介状態用薬剤と併用する場合、第2の薬剤の「有効量」は、使用する薬物の種類によることになる。適切な投薬量は、承認されている薬剤について公知であるが、これは被験体の状態、治療される状態の種類、使用される本発明の化合物の量に応じて当業者によって調節することができる。量が明示されていない場合、有効量を想定しなければならない。
【0118】
本明細書で用いる「治療する(treat)」、「治療」および「治療する(treating)」という用語は、プロテインキナーゼ媒介状態の進行、重篤度および/またはその期間の軽減または改善、あるいは、1つまたは複数の治療薬(例えば、本発明の化合物などの1つまたは複数の治療薬)の投与によりもたらされるプロテインキナーゼ媒介状態の1つまたは複数の症状(好ましくは1つまたは複数の識別できる症状)の改善を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療」および「治療する(treating)」という用語は、プロテインキナーゼ媒介状態の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメーターの改善を指す。他の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療」および「治療する(treating)」という用語は、例えば識別できる症状の安定化によって物理的に、または例えば物理的パラメーターの安定化によって生理学的に、あるいはその両方でプロテインキナーゼ媒介状態の進行を阻止することを指す。他の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療」および「治療する(treating)」という用語は、プロテインキナーゼ媒介状態の軽減または安定化を指す。
【0119】
本明細書で用いる「予防する(prevent)」、「予防」および「予防する(preventing)」という用語は、所与のプロテインキナーゼ媒介状態の獲得または発現のリスクの軽減、あるいは、プロテインキナーゼ媒介状態の再発の減少または阻止を指す。一実施形態では、本明細書に記載の状態、疾患または障害のいずれかに対して遺伝性素因を有する患者、好ましくはヒトに対する予防的手段として、本発明の化合物を投与する。
【0120】
本明細書で用いる「疾患」、「障害」および「状態」という用語は、プロテインキナーゼ媒介状態を指すために本明細書では互換的に用いることができる。
【0121】
一態様では、本発明は、プロテインキナーゼがその病状に関与する疾患、状態または障害の重篤度を治療または軽減するための方法を提供する。他の態様では、本発明は、酵素活性の阻害がその疾患の治療に関与するキナーゼ疾患、状態または障害の重篤度を治療または軽減するための方法を提供する。他の態様では、本発明は、プロテインキナーゼと結合することによって酵素活性を阻害する化合物を用いて、疾患、状態または障害の重篤度を治療または軽減するための方法を提供する。他の態様は、プロテインキナーゼ阻害剤でキナーゼの酵素活性を阻害することによってキナーゼ疾患、状態または障害の重篤度を治療または軽減するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記プロテインキナーゼ阻害剤はPKCθ阻害剤である。
【0122】
本明細書で用いる「プロテインキナーゼ媒介状態」という用語は、プロテインキナーゼが役割を果たす任意の疾患または他の有害な状態を意味する。そうした状態には、これらに限定されないが、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性および過剰増殖性疾患、免疫学的に媒介される疾患、免疫不全障害、免疫調節または免疫抑制障害、骨疾患、代謝性疾患、神経疾患および神経変性疾患、心臓血管疾患、ホルモン関連疾患、糖尿病、アレルギー、ぜんそくおよびアルツハイマー病が含まれる。
【0123】
本明細書で用いる「PKC媒介状態」という用語は、PKCが役割を果たす任意の疾患または他の有害な状態を意味する。そうした状態には、これらに限定されないが、上記に挙げたもの、特に、これらに限定されないが、自己免疫疾患、慢性または急性の炎症性疾患ならびに増殖性および過剰増殖性疾患を含むT細胞媒介疾患が含まれる。
【0124】
本明細書で用いる「PKCθ媒介状態」という用語は、PKCθが役割を果たす任意の疾患または他の有害な状態を意味する。そうした状態には、これらに限定されないが、上記に挙げた疾患、特に自己免疫疾患、慢性または急性の炎症性疾患ならびに増殖性および過剰増殖性疾患が含まれる。
【0125】
本明細書で用いる「炎症性疾患」または「炎症性障害」という用語は、一般に白血球浸潤によって引き起こされる、炎症をもたらす病理学的状態を指す。そうした障害の例には、これらに限定されないが、乾癬およびアトピー性皮膚炎を含む炎症性皮膚疾患;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(IBD)(クローン病および潰瘍性大腸炎など)に付随する反応;外科的組織再かん流傷害を含む虚血性再かん流障害、心筋虚血状態、例えば心筋梗塞症、心停止、心臓手術後の再かん流および経皮経管冠動脈形成後の狭窄、脳卒中および腹部大動脈瘤;脳卒中に続く脳水腫;頭蓋外傷、血液量減少性ショック;呼吸停止;成人呼吸窮迫症候群;急性肺損傷;ベーチェット病;皮膚筋炎;多発性筋炎;多発性硬化症(MS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;変形性関節症;ループス腎炎;自己免疫疾患、例えば関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、脈管炎;白血球漏出に伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害、敗血症または外傷性傷害に続く多臓器損傷症候群;アルコール性肝炎;細菌性肺炎;糸球体腎炎を含む抗原抗体複合体媒介疾患;敗血症;サルコイドーシス;組織または臓器移植に対する免疫病理学的反応;胸膜炎、肺胞炎、脈管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症(IPF)、および嚢胞性線維症を含む肺の炎症などが含まれる。
【0126】
増殖性または過剰増殖性疾患は過剰または異常な細胞増殖を特徴とする。そうした疾患には、これらに限定されないが、癌および骨髄増殖性障害が含まれる。
【0127】
「癌」という用語には、これらに限定されないが、以下の癌、すなわち:口腔類表皮(epidermoid Oral):心臓:肺:胃腸:尿生殖路:肝臓:骨:神経系:婦人科:血液:甲状腺:および副腎の癌が含まれる。血液癌は:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫]毛様細胞;リンパ球障害;皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫(Karposi’s sarcoma)、角化棘細胞腫、異形成性母斑(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイドおよび乾癬を含む。したがって、本明細書で示す「癌性細胞」という用語は、上記に特定した状態のいずれか1つにかかった細胞を含む。
【0128】
「骨髄増殖性障害」という用語には、真性赤血球増加症、血小板血症、骨髄線維症を伴う骨髄様化生、好酸球増加症候群、若年性骨髄単球性白血病、全身性肥満細胞疾患および造血障害、特に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性前骨髄球性白血病(APL)および急性リンパ性白血病(ALL)などの障害が含まれる。
【0129】
神経変性疾患の例には、これらに限定されないが、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連認知症および双極性障害が含まれる。
【0130】
一実施形態では、PKCθ媒介疾患には、これらに限定されないが、慢性炎症、自己免疫糖尿病、関節リウマチ(RA)、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、多発性硬化症(MS)、ぜんそく、全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythrematosis)、成人呼吸窮迫症候群、ベーチェット病、乾癬、慢性肺炎症性疾患、対宿主性移植片反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病および過敏性腸症候群を含む炎症性腸疾患(IBD);アルツハイマー病、T細胞白血病、リンパ腫、移植片拒絶反応、癌およびパイレシス(pyresis)が含まれ、併せて炎症および関連障害に関係する任意の疾患または障害が含まれる。
【0131】
一実施形態では、PKCθ媒介疾患には、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、関節の炎症、狼瘡、多発性硬化症、ぜんそく、乾癬、癌、T細胞リンパ腫、白血病、IまたはII型糖尿病ならびに炎症性腸疾患、移植片拒絶反応、クローン病および結腸炎などが含まれる。
【0132】
自己免疫疾患の例には、これらに限定されないが、多発性硬化症、関節リウマチおよび過敏性腸疾患が含まれる。
【0133】
本発明の薬学的に許容される組成物は、治療を受ける感染症の重篤度に応じて、経口、経直腸、非経口、嚢内、経膣、腹腔内、局所(散剤、軟膏剤またはドロップ剤によるなど)、頬側(bucally)で、または経口もしくは経鼻スプレーまたは同種のものによりヒトおよび他の動物に投与することができる。
【0134】
経口投与用の液体剤形には、これらに限定されないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当業界で通常用いられる不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(具体的には、綿実油、ラッカセイ油、コーンオイル、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにその混合物などの可溶化剤および乳化剤などを含むことができる。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤ならびに芳香剤などの補助剤も含むことができる。
【0135】
注射用製剤、例えば滅菌した水性または油性の注射用懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当分野の公知の技術によって処方することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射用の液剤、懸濁剤または乳剤、例えば1,3−ブタンジオール中の液剤であってもよい。使用できる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁化媒体として慣用的に使用される。そのために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の滅菌固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射用物質の製剤で使用される。
【0136】
注射用処方物は、例えば、細菌保持フィルターでろ過するか、あるいは、使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を混ぜ込むことによって滅菌することができる。
【0137】
本発明の化合物の作用を持続させるために、皮下または筋肉内注射による化合物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、水への溶解性の低い結晶性または無定型の物質の懸濁液を使用することによって実現することができる。化合物の吸収速度はその溶解速度に依存する。したがってその速度は結晶サイズや結晶形態に依存する場合がある。あるいは、非経口で投与された化合物形態の吸収を遅延させることは、化合物を油性媒体に溶解または懸濁させることによって実現される。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成させることによって作製される。化合物とポリマーの比、および使用する具体的なポリマーの特性に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が含まれる。デポー注射用処方物は、生体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を取り込むことによっても調製される。
【0138】
経直腸または経膣投与のための組成物は、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが体温で液体であり、したがって、直腸または膣腔内で溶融して活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬用ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製することができる。
【0139】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が含まれる。そうした固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1つの薬学的に許容される不活性な賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、および/または、a)フィラーすなわち増量剤、例えばでんぷん、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシア、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカでんぷん、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、ならびに、i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびその混合物と混合させる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、その剤形は緩衝剤を含むこともできる。
【0140】
同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質のゼラチンカプセル中のフィラーとして用いることもできる。固体剤形の錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、腸溶コーティングおよび製薬技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、任意選択で乳白剤を含むことができ、また、任意選択で遅延した形で、腸管内の特定の部分において、活性成分だけか、またはそれを優先して放出する組成物でできていてもよい。使用できる埋め込み型組成物の例には、ポリマー性物質およびワックスが含まれる。同種の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質のゼラチンカプセル中のフィラーとして用いることもできる。
【0141】
活性化合物は、上記したような1つまたは複数の賦形剤でマイクロカプセル化した形態であってもよい。固体剤形の錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび製薬技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性化合物を、スクロース、ラクトースまたはでんぷんなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することができる。そうした剤形は、通常実施されるように、不活性希釈剤以外の他の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムや微結晶性セルロースのような錠剤化用滑剤および他の錠剤化用助剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、その剤形は緩衝剤を含むこともできる。それらは任意選択で乳白剤を含むことができ、また、任意選択で遅延した形で、腸管内の特定の部分において、活性成分だけを放出するか、またはそれを優先して放出する組成物でできていてもよい。使用できる埋め込み型組成物の例には、ポリマー性物質およびワックスが含まれる。
【0142】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、噴霧剤、吸入剤またはパッチ剤を含む。活性成分は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、必要に応じて任意の所要保存剤または緩衝剤と混合する。眼科用処方物、点耳剤および点眼剤も考えられ、これらも本発明の範囲内である。さらに、本発明は、身体に化合物を制御送達するという追加的な利点を有する経皮パッチ剤の使用を考慮する。そうした剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解または分散させて調製することができる。吸収促進剤を用いて、皮膚を通る化合物フラックスを増大させることもできる。その速度は、速度制御膜を提供するか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0143】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入噴霧、局所、経直腸、経鼻、頬側、経膣または埋め込み式リザーバーにより投与することができる。本明細書で用いる「非経口」という用語には、これらに限定されないが、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術が含まれる。組成物は、経口、腹腔内または静脈内で投与することが好ましい。
【0144】
本発明の組成物の滅菌注射剤の形態は、水性または油性の懸濁剤であってよい。これらの懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当業界で公知の技術に従って処方することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射液剤または懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオール中の液剤であってもよい。使用できる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁化媒体として慣用的に使用される。そのために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の滅菌固定油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射剤の調製に有用であり、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油(特にそのポリオキシエチル化されたタイプのもの)も同様に有用である。これらの油状液剤または懸濁剤は、カルボキシメチルセルロース、または乳剤および懸濁剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤化で通常用いられる同様の分散剤などの長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含むことができる。Tweens、Spansなどの他の通常使用される界面活性剤、および、薬学的に許容される固体、液体または他の剤形の製造において通常使用される他の乳化剤または生物学的利用能増進剤を処方のために使用することができる。
【0145】
本発明の薬学的組成物は、これらに限定されないが、カプセル剤、錠剤、水性の懸濁剤または液剤を含む経口的に許容される任意の剤形で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体には、これらに限定されないが、ラクトースやトウモロコシでんぷんが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も通常添加される。カプセルの形態での経口投与に有用な希釈剤には、ラクトースや乾燥トウモロコシでんぷんが含まれる。経口使用のために水性懸濁剤が必要な場合、活性成分を、乳化剤および懸濁化剤と混合する。望むなら、特定の甘味剤、香味剤または着色剤も加えることができる。
【0146】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。これらは、その薬剤を、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、したがって直腸内で溶融して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そうした材料には、これらに限定されないが、ココアバター、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0147】
本発明の薬学的組成物は、特に、治療の標的が、眼、皮膚または下部腸管の疾患などの局所適用により容易に到達できる領域または器官を含む場合、局所で投与することもできる。適切な局所処方物は、これらの領域または器官のそれぞれを目的として容易に調製される。
【0148】
下部腸管のための局所適用は、直腸坐剤処方(上記参照)または適切なかん腸製剤で実施することができる。局所用経皮パッチも使用することができる。
【0149】
局所使用のために、薬学的組成物は、1つまたは複数の担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含む適切な軟膏剤で処方することができる。本発明の化合物の局所投与のための担体には、これらに限定されないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が含まれる。あるいは、薬学的組成物は、1つもしくは複数の薬学的に許容される担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含む適切なローション剤またはクリーム剤で処方することができる。適切な担体には、これらに限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれる。
【0150】
眼での使用のために、薬学的組成物は、塩化ベンザルコニウム(benzylalkonium chloride)などの保存剤を用いるか用いないで、等張性のpH調節滅菌食塩水中の微粉末懸濁剤として、または、好ましくは等張性のpH調節滅菌食塩水中の液剤として処方することができる。あるいは、眼での使用のために、薬学的組成物を、ワセリンなどの軟膏剤で処方することができる。
【0151】
本発明の薬学的組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入により投与することもできる。そうした組成物は、製剤処方技術分野で周知の技術によって調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生物学的利用能を促進させる吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または他の慣用的な可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の液剤として調製することができる。
【0152】
本明細書に記載の化合物を用いる投薬レジメンは、治療を受ける障害およびその障害の重篤度;使用する具体的な化合物の活性;使用する具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;使用する具体的な化合物の投与時間、投与経路および排出速度;被験体の腎機能および肝機能;および使用する具体的な化合物またはその塩、治療の期間;使用する具体的な化合物と併用するかまたは同時に使用する薬物を含む様々な因子、ならびに医学的技術分野で周知の同様の因子によって選択することができる。当業者は、その疾患を治療する、例えば予防、阻害(完全にまたは部分的に)するまたはその進行を停止させるのに必要な本明細書に記載の化合物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0153】
本明細書に記載の化合物の投薬量は、約0.01〜約100mg/kg体重/日、約0.01〜約50mg/kg体重/日、約0.1〜約50mg/kg体重/日または約1〜約25mg/kg体重/日の範囲であってよい。1日当たりの合計量は、単一用量で投与するか、または、日に2回、3回もしくは4回などの複数用量で投与することができることを理解されよう。
【0154】
本発明の方法で使用する化合物は、単位剤形で処方することができる。「単位剤形」という用語は、治療を受ける被験体のための単位投薬量に適している物理的に離散した単位を指す。その各単位は、任意選択で適切な薬剤用担体と一緒に、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を含む。単位剤形は1日1回投与のためであっても、1日複数回投与(例えば、1日に約1〜4回またはそれ以上)のためであってもよい。1日複数回投与する場合、その単位剤形は、各用量について同じであっても異なっていてもよい。
【0155】
有効量は、本明細書に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物(例えば、水和物)を用いる本発明の方法または薬学的組成物において、単独か、または追加の適切な治療薬、例えば、癌治療薬と併用して達成することができる。併用療法を用いる場合、有効量は、第1の量の本明細書に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物(例えば、水和物)と第2の量の追加の適切な治療薬を用いて達成することができる。
【0156】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物および追加の治療薬はそれぞれ有効量で(すなわち、それぞれ、単独で投与されたとき治療的に有効な量で)投与される。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物および追加の治療薬はそれぞれ、単独では治療効果をもたらさない量(治療量以下の用量(sub−therapeutic dose))で投与される。さらに他の実施形態では、本明細書に記載の化合物を有効量で投与し、追加の治療薬を治療量以下の用量で投与する。さらに他の実施形態では、本明細書に記載の化合物を治療量以下の用量で投与し、追加の治療薬、例えば適切な癌治療薬を有効量で投与する。
【0157】
本明細書で用いる「併用(して)(in combination)」または「同時投与」という用語は互換的に用いることができ、これは2つ以上の治療薬(例えば、1つまたは複数の予防および/または治療薬)の使用を指す。これらの用語の使用は、被験体に投与される治療薬(例えば、予防および/または治療薬)の順番を限定するものではない。
【0158】
同時投与は、単一薬学的組成物、例えば第1の量と第2の量が一定の比を有するカプセル剤または錠剤、あるいは、それぞれについて複数の別々のカプセル剤または錠剤などの本質的に同時での第1および第2の量の同時投与化合物の投与を包含する。さらに、そうした同時投与は、どちらかの順番による逐次的な仕方での各化合物の使用も包含する。
【0159】
同時投与が、第1の量の本明細書に記載の化合物および第2の量の追加の治療薬の個別投与を含む場合、それらの化合物を、所望の治療効果をもたらすために十分近接した時間で投与する。例えば、所望の治療効果をもたらし得る各投与間の時間を数分〜数時間にすることができ、これは、効能、溶解度、生物学的利用能、血中濃度半減期および速度論的プロファイルなどの各化合物の特性を考慮に入れて決定することができる。例えば、本明細書に記載の化合物および第2の治療薬は、任意の順番で、互いに約24時間以内に、互いに約16時間以内に、互いに約8時間以内に、互いに約4時間以内に、互いに約1時間以内に、または互いに約30分間以内に投与することができる。
【0160】
より具体的には、第1の治療薬(例えば、本発明の化合物などの予防または治療薬)を、第2の治療薬(例えば、抗癌剤などの予防または治療薬)を被験体に投与する前に(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間前に)、あるいはその投与と同時またはそれに続いて(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間後に)投与することができる。
【0161】
第1の量の本明細書に記載の化合物と第2の量の追加の治療薬を同時投与する方法は、増進的または相乗的な治療効果をもたらすことができ、その併用効果は、第1の量の本明細書に記載の化合物と第2の量の追加の治療薬の個別投与によって得られる相加効果より大きいことを理解されよう。
【0162】
本明細書で用いる「相乗的」という用語は、これらの治療薬の相加効果より効果的な本発明の化合物と他の治療薬(例えば、予防または治療薬)の併用を指す。これらの治療薬の併用(例えば、予防または治療薬の併用)の相乗効果は、治療薬の1つまたは複数のより少ない投薬量の使用、および/または被験体への前記治療薬のより少ない頻度での投与を可能にする。より少ない投薬量の治療薬(例えば、予防または治療薬)を用いかつ/またはより少ない頻度で前記治療薬を投与することができると、障害の予防、管理または治療における前記治療薬の効能を低下させることなく、前記治療薬の被験体への投与に伴う毒性を低減させることになる。さらに、相乗効果は、障害の予防、管理または治療における薬剤の効能の改善をもたらすことができる。最終的に、治療薬の併用(例えば、予防または治療薬の併用)の相乗効果は、どちらかの治療薬単独での使用に伴う有害なまたは不都合な副作用を回避または低減することができる。
【0163】
相乗効果の存在は、薬物間相互作用を評価するのに適した方法を用いて判断することができる。適切な方法には、例えばシグモイドEmaxの式(Holford, N.H.G. and Scheiner, L.B., Clin. Pharmacokinet.6巻:429〜453頁(1981年))、ラウエの相加式(Loewe, S. and Muischnek、H.、Arch. Exp.Pathol Pharmacol.114巻:313〜326頁(1926年))およびメジアン効果式(Chou, T.C. and Talalay、P., Adv. Enzyme Regul.22巻:27〜55頁(1984年))が含まれる。上記に参照したそれぞれの式を実験データに適用して、薬物併用の効果を評価する助けとなる対応グラフを作成することができる。上記したその式に伴う対応グラフはそれぞれ、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線および組合せ指数曲線(combination index)である。
【0164】
いくつかの実施形態では、前記追加の治療薬は、抗癌剤、抗増殖剤または化学療法薬などの癌治療薬から選択される。
【0165】
いくつかの実施形態では、前記追加の治療薬は、カンプトセシン、MEK阻害剤:U0126、KSP(キネシンスピンドルタンパク質)阻害剤、アドリアマイシン、インターフェロンおよびシスプラチンなどの白金誘導体から選択される。
【0166】
他の実施形態では、前記追加の治療薬は、タキサン;bcr−ablの阻害剤(Gleevec、ダサチニブおよびニロチニブなど);EGFRの阻害剤(TarcevaおよびIressaなど);DNA損傷剤(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、トポイソメラーゼ阻害剤およびアントラサイクリンなど);および代謝拮抗物質(AraCおよび5−FUなど)から選択される。
【0167】
さらに他の実施形態では、前記追加の治療薬は、カンプトセシン、ドキソルビシン、イダルビシン、シスプラチン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、Tarceva、MEK阻害剤、U0126、KSP阻害剤、ボリノスタット、Gleevec、ダサチニブおよびニロチニブから選択される。
【0168】
他の実施形態では、前記追加の治療薬は、Her−2阻害剤(Herceptinなど);HDAC阻害剤(ボリノスタットなど)、VEGFR阻害剤(Avastinなど)、c−KITおよびFLT−3阻害剤(スニチニブなど)、BRAF阻害剤(Bayer社のBAY43−9006など)MEK阻害剤(Pfizer社のPD0325901など);ならびに紡錘体毒(エポチロンなど)およびパクリタキセルタンパク質結合粒子剤(Abraxane(登録商標)など)から選択される。
【0169】
本発明の薬剤と併用できる他の治療法または抗癌剤には、外科手術、放射線治療(数例挙げると、γ線、中性子ビーム放射線治療、電子ビーム放射線治療、陽子線治療、近接照射療法および全身放射性アイソトープで)、内分泌療法、生物反応修飾物質(数例挙げると、インターフェロン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法および寒冷療法、何らかの悪影響を弱める薬剤(例えば、鎮吐作用)、ならびに、これらに限定されないが、アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)ならびにホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミドおよびメゲストロール)、Gleevec(商標)、アドリアマイシン、デキサメタゾンおよびシクロホスファミドを含む他の承認された化学療法薬が含まれる。
【0170】
本発明の化合物は、以下の治療薬:アバレリックス(Plenaxis depot(登録商標));アルデスロイキン(Prokine(登録商標));アルデスロイキン(Proleukin(登録商標));アレムツズマブ(Alemtuzumabb)(Campath(登録商標));アリトレチノイン(Panretin(登録商標));アロプリノール(Zyloprim(登録商標));アルトレタミン(Hexalen(登録商標));アミホスチン(Ethyol(登録商標));アナストロゾール(Arimidex(登録商標));三酸化ヒ素(Trisenox(登録商標));アスパラギナーゼ(Elspar(登録商標));アザシチジン(Vidaza(登録商標));ベバシズマブ(bevacuzimab)(Avastin(登録商標));ベキサロテンカプセル剤(Targretin(登録商標));ベキサロテンゲル剤(Targretin(登録商標));ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標));ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));ブスルファン静脈内用(Busulfex(登録商標));ブスルファン経口用(Myleran(登録商標));カルステロン(Methosarb(登録商標));カペシタビン(Xeloda(登録商標));カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));カルムスチン(BCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチン(Gliadel(登録商標));ポリフェプロザン20インプラントを有するカルムスチン(Gliadel Wafer(登録商標));セレコクシブ(Celebrex(登録商標));セツキシマブ(cetuximab)(Erbitux(登録商標));クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シスプラチン(Platinol(登録商標));クラドリビン(Leustatin(登録商標)、2−CdA(登録商標));クロファラビン(Clolar(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan Injection(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan錠剤(登録商標));シタラビン(Cytosar−U(登録商標));シタラビンリポソーム(DepoCyt(登録商標));ダカルバジン(DTIC−Dome(登録商標));ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(Cosmegen(登録商標));ダルベポエチンアルファ(Aranesp(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(DanuoXome(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(Daunorubicin(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(Cerubidine(登録商標));デニロイキンジフチトクス(Ontak(登録商標));デクスラゾキサン(Zinecard(登録商標));ドセタキセル(Taxotere(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS(登録商標));ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標));ドキソルビシン(AdriamycinPFS注射用(登録商標));ドキソルビシンリポソーム(Doxil(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(masterone注射用(登録商標));エリオットB液(Elliott’s B Solution(登録商標));エピルビシン(Ellence(登録商標));エポエチンアルファ(epogen(登録商標));エルロチニブ(Tarceva(登録商標));エストラムスチン(Emcyt(登録商標));エトポシドリン酸塩(Etopophos(登録商標));エトポシド、VP−16(Vepesid(登録商標));エキセメスタン(Aromasin(登録商標));フィルグラスチム(Neupogen(登録商標));フロクスウリジン(動脈内)(FUDR(登録商標));フルダラビン(Fludara(登録商標));フルオロウラシル、5−FU(Adrucil(登録商標));フルベストラント(Faslodex(登録商標));ゲフィチニブ(Iressa(登録商標));ゲムシタビン(Gemzar(登録商標));ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標));ゴセレリン酢酸塩(Zoladex Implant(登録商標));ゴセレリン酢酸塩(Zoladex(登録商標));ヒストレリン酢酸塩(Histrelin implant(登録商標));ヒドロキシウレア(Hydrea(登録商標));イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標));イダルビシン(Idamycin(登録商標));イホスファミド(IFEX(登録商標));メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標));インターフェロンα 2a(Roferon A(登録商標));インターフェロンα−2b(Intron A(登録商標));イリノテカン(Camptosar(登録商標));レナリドミド(Revlimid(登録商標));レトロゾール(Femara(登録商標));ロイコボリン(Wellcovorin(登録商標)、Leucovorin(登録商標));ロイプロリド酢酸塩(Eligard(登録商標));レバミゾール(Ergamisol(登録商標));ロムスチン、CCNU(CeeBU(登録商標));メクロレタミン、ナイトロジェンマスタード(Mustargen(登録商標));メゲストロール酢酸塩(Megace(登録商標));メルファラン、L−PAM(Alkeran(登録商標));メルカプトプリン、6−MP(Purinethol(登録商標));メスナ(Mesnex(登録商標));メスナ(Mesnex tabs(登録商標));メトトレキサート(Methotrexate(登録商標));メトキサレン(Uvadex(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ミトタン(Lysodren(登録商標));ミトキサントロン(Novantrone(登録商標));フェニルプロピオン酸ナンドロロン(Durabolin−50(登録商標));ネララビン(Arranon(登録商標));ノフェツモマブ(Verluma(登録商標));オプレルベキン(Neumega(登録商標));オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));パクリタキセル(Paxene(登録商標));パクリタキセル(Taxol(登録商標));パクリタキセルタンパク質結合粒子剤(Abraxane(登録商標));パリフェルミン(Kepivance(登録商標));パミドロネート(Aredia(登録商標));ペガデマーゼ(Adagen(Pegademase Bovine)(登録商標));ペグアスパルガーゼ(Oncaspar(登録商標));ペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標));ペメトレキセド二ナトリウム(Alimta(登録商標));ペントスタチン(Nipent(登録商標));ピポブロマン(Vercyte(登録商標));プリカマイシン、ミトラマイシン(Mithracin(登録商標));ポルフィマーナトリウム(Photofrin(登録商標));プロカルバジン(Matulane(登録商標));キナクリン(Atabrine(登録商標));ラスブリカーゼ(Elitek(登録商標));リツキシマブ(Rituxan(登録商標));サルグラモスチム(Leukine(登録商標));サルグラモスチム(Prokine(登録商標));ソラフェニブ(Nexavar(登録商標));ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));スニチニブマレイン酸塩(Sutent(登録商標));タルク(Sclerosol(登録商標));タモキシフェン(Nolvadex(登録商標));テモゾロマイド(Temodar(登録商標));テニポシド、VM−26(Vumon(登録商標));テストラクトン(Teslac(登録商標));チオグアニン、6−TG(Thioguanine(登録商標));チオテパ(Thioplex(登録商標));トポテカン(Hycamtin(登録商標));トレミフェン(Fareston(登録商標));トシツモマブ(Bexxar(登録商標));トシツモマブ/I−131 トシツモマブ(Bexxar(登録商標));トラスツズマブ(Herceptin(登録商標));トレチノイン、ATRA(Vesanoid(登録商標));ウラシルマスタード(Uracil Mustardカプセル剤(登録商標));バルルビシン(Valstar(登録商標));ビンブラスチン(Velban(登録商標));ビンクリスチン(Oncovin(登録商標));ビノレルビン(Navelbine(登録商標));ゾレドロネート(Zometa(登録商標))およびボリノスタット(Zolinza(登録商標))のいずれかと併用して癌を治療するのにも有用であり得る。
【0171】
最新の癌治療の包括的な考察は、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmでFDAに認可された癌用薬物のリストhttp://www.nci.nih.gov/、およびThe Merck Manual、第17版、1999年を参照されたい。これらの内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0172】
本発明の他の化合物とやはり併用できる他の薬剤の例には、これらに限定されないが:アルツハイマー病の治療用のAricept(登録商標)およびExcelon(登録商標)など;パーキンソン病の治療用のL−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール(ropinrole)、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキシフェニジル(trihexephendyl)およびアマンタジンなど;多発性硬化症(MS)の治療用の薬剤のβインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロンなど;ぜんそくの治療用のアルブテロールおよびSingulair(登録商標);統合失調症の治療用の薬剤のジプレキサ(zyprexa)、リスパダール、セロケール(seroquel)およびハロペリドールなど;抗炎症剤のコルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびスルファサラジンなど;免疫調節剤および免疫抑制剤のシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリンおよびスルファサラジンなど;神経栄養因子のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗けいれん剤、イオンチャンネルブロッカー、リルゾール、および抗パーキンソン病薬など;心臓血管疾患の治療用の薬剤のβブロッカー、ACE阻害剤、利尿薬、ナイトレート、カルシウムチャンネルブロッカーおよびスタチンなど;肝疾患の治療用の薬剤のコルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロンおよび抗ウイルス剤など;血液疾患の治療用の薬剤のコルチコステロイド、抗白血病薬および成長因子など;ならびに免疫不全疾患の治療用の薬のγグロブリンなどが含まれる。
【0173】
プロテインキナーゼの阻害剤として、本発明の化合物および組成物は生物学的試料においても有用である。本発明の1つの態様は、生物学的試料のプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、前記生物学的試料を、本明細書に記載の化合物または前記化合物を含む組成物と接触させることを含む方法に関する。本明細書で用いる「生物学的試料」という用語は、これらに限定されないが、細胞培養液またはその抽出物;哺乳動物から得られた生検物質またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙もしくは他の体液またはその抽出物を含むインビトロまたはエクスビボの試料を意味する。
【0174】
生物学的試料におけるプロテインキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の様々な目的に有用である。そうした目的の例には、これらに限定されないが、輸血、臓器移植および生物学的試料の保管が含まれる。
【0175】
本発明の他の態様は、生物学的および病理学的現象におけるプロテインキナーゼの試験;そうしたプロテインキナーゼによって媒介される細胞内のシグナル変換経路の試験;新規なプロテインキナーゼ阻害剤の比較評価に関する。そうした使用の例には、これらに限定されないが、酵素アッセイおよび細胞に基づいたアッセイなどの生物学的アッセイが含まれる。
【0176】
プロテインキナーゼ阻害剤としての化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞系でアッセイすることができる。インビトロでのアッセイには、活性化キナーゼのキナーゼ活性かまたはATPase活性の阻害を判定するアッセイが含まれる。別のインビトロアッセイは、阻害剤がプロテインキナーゼと結合する能力を定量化する。これは、阻害剤を放射性標識化し、次いで結合させ、阻害剤/キナーゼ複合体を単離して結合した放射性標識の量を測定するか、または、新規な阻害剤を、公知の放射性リガンドと結合したキナーゼでインキュベートする競争実験を実施することによって測定することができる。本発明で用いる化合物をアッセイするための詳細な条件を、以下の実施例において示す。
【0177】
本発明の他の態様は、化学的最適化のための出発点としての本明細書で説明する化合物(特に、生化学的標的に対して中程度の観察親和力(IC50 1〜10μM)を有するもの)の使用に関する。特に、本発明の1つの態様は、化学的最適化のための標的酵素に対する日常的阻害試験に関する。
【0178】
本発明の他の態様は、結晶学のための本明細書で説明する化合物(特に、生化学的標的に対して中程度の観察親和力を有するもの)の使用に関する:特に、本発明の1つの態様は、本明細書で説明する化合物を含む共複合体(co−complex)結晶構造の形成に関する。
【0179】
本発明の他の態様は、インビトロおよびインビボで標的生物をプローブするための化学的ツールとしての本明細書で説明する化合物の使用に関する:特に、生化学的アッセイにおいて中程度の観察親和力を有する阻害剤を、細胞、および疾患の完全動物モデルにおいて標的酵素を阻害する生物学的影響をプローブするのに使用することができる。
【0180】
本発明の他の態様は、本明細書に記載の化合物をプロテインキナーゼと接触させることによって酵素活性を調節する方法を提供する。
【0181】
略語
以下の略語を使用する:
DMSO ジメチルスルホキシド
TCA トリクロロ酢酸
ATP アデノシン三リン酸
BSA ウシ血清アルブミン
DTT ジチオスレイトール
MOPS 4−モルホリンプロパンスルホン酸
NMR 核磁気共鳴
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
TLC 薄層クロマトグラフィー
Rt 保持時間
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は表1で表される。特定の実施形態では、本明細書で用いる変数は、表1に示す具体的な実施形態で定義した通りである。
【0182】
【表1−1】

【0183】
【表1−2】

【0184】
【表1−3】

【0185】
【表1−4】

【0186】
【表1−5】

【0187】
【表1−6】

【0188】
【表1−7】

【0189】
【表1−8】

【0190】
【表1−9】

本発明の化合物は、当業者に一般に公知のステップを用いて本明細書に照らして調製することができる。これらの化合物は、限定されないが、LCMS(液体クロマトグラフィー質量分析)、HPLCおよびNMR(核磁気共鳴)を含む公知の方法で分析することができる。以下に示す具体的な条件は例としてに過ぎず、本発明の化合物を作製するために用いることができる条件の範囲を限定しようとするものではいことを理解すべきである。それどころか、本発明は、本発明の化合物を作製するために本明細書に照らして当業者に明らかな条件も包含する。別段の言及のない限り、以下のスキームにおけるすべての変数は本明細書で定義する通りである。基本スキーム:
スキームI
【0191】
【化12】

試薬および条件:a)n−BuLi、THF、−30℃〜室温(r.t.);b)NBS、CHCN;c)1−Bocホモピペラジン、KCO、DMF、95℃;HCl、ジオキサン;d)RCOOH、DCC、HOBt、DCMまたはClCOR、THF、塩基またはRCHO、NaCNBH;e)R−Y、Pd、カップリング。
【0192】
上記スキームIは、式6の化合物(RおよびJ2は本明細書で定義する通りである。Pは上記定義のqに相当する。X、X1、X2、X3は、本明細書で定義のBを形成するのに必要な環原子である。)の調製のための一般的経路を示す。上記に示したように、2−アミノ−3−シアノピリジンを、n−ブチルリチウムの存在下でハロ誘導体1と反応させて式2の化合物を生成する。任意選択で、次いで、式2の化合物をN−ブロモスクシンイミド(NBS)を用いて臭素化して誘導体3を得る。次いで、適切な塩基および適切な溶媒の存在下で、化合物3をアミン(例えば、1−Boc−ホモピペラジン)と加熱して化合物を生成し、これを酸性条件で脱保護して式4の化合物を得る。式4の化合物は、アミド形成、カルバメート形成および還元的アミノ化を含む当技術分野で周知のいくつかの方法を用いてさらに官能化して式5の化合物を生成させることができる。さらに、当技術分野で周知のカップリング法を用いて触媒としてのパラジウムの存在下、R−Y(Y、例えば−B(OR)、SnR3)で処理することによって、式5の化合物をさらに誘導化して化合物6を生成することができる。反応は様々な置換R−Yによってもたらされる。
【0193】
スキームII
【0194】
【化13】

試薬および条件:a)TBTU、N−メトキシ−N−メチルアミン、DIPEA、CHCl.;b)n−BuLiまたはグリニャール試薬、−78℃、THF;c)NHOH、MW、110℃、25分間;d)NBS、CHCN;e)R−Y、Pd、カップリング。
【0195】
上記スキームIIは、式12の化合物(RおよびRは本明細書で定義する通りである。X、X1、X2、X3は、本明細書で定義の環Bを形成するのに必要な環原子である。)の調製のための一般的経路を示す。上記に示したように、2−フルオロニコチン酸を、アミドカップリング剤(例えば、TBTU)の存在下でN−メトキシ−N−メチルアミン(metylamine)とカップリングしてワインレブアミド7を生成する。次いでアミド7を、n−ブチルリチウムまたはグリニャール試薬の存在下で化合物8とカップリングして式9の化合物を生成する。化合物9を、マイクロ波下、NHOHの存在下で加熱して式10のアミンを生成する。次いで式10の化合物をNBSで臭素化して誘導体11を生成する。さらに、当技術分野で周知のカップリング法を用いて触媒としてのパラジウムの存在下、R−Y(Y、例えば−B(OR)、SnR3)で処理することによって、式10の化合物をさらに誘導化して化合物12を生成することができる。反応は様々な置換されたR−Yによってもたらされる。
【0196】
スキームIII
【0197】
【化14】

試薬および条件:a)R(アミンをベースとした求核試薬(nucleofile)、DMF、KCO、90℃.;b)n−BuLi、−78℃、THF;c)NHOH、MW、110℃、25分間。
【0198】
上記スキームIIIは、式16の化合物(Rは本明細書で定義する通りである)の調製のための一般的経路を示す。
【0199】
上記に示したように、1,3−ジブロモイソキノリンを、a)適切な塩基および適切な溶媒の存在下でアミンをベースとした求核試薬(nuclofile)(例えば、1−Boc−ホモピペラジン)と加熱して式14の化合物を生成する。反応は様々なアミンをベースとした求核試薬(R)によってもたらされる。
【0200】
次いでb)アミド7を、例えばn−ブチルリチウムの存在下で化合物14とカップリングして式15の化合物を生成する。
【0201】
次いでc)化合物15を、マイクロ波下、例えばNHOHの存在下で加熱して式16のアミンを生成する。
【0202】
スキームIV
【0203】
【化15】

試薬および条件:a)TBTU、N−メトキシ−N−メチルアミン、DIPEA、CHCl;b)n−BuLiまたはグリニャール試薬、−78℃、THF;c)NHOH、MW、110℃、25分間。
【0204】
上記スキームIVは、式21の化合物(R、Rおよび環Bは本明細書で定義する通りである。HalはBrまたはIを表す。)の調製のための一般的経路を示す。上記に示したように、出発原料17を、アミドカップリング剤(例えば、TBTU)の存在下でN−メトキシ−N−メチルアミンとカップリングしてワインレブアミド18を生成する。次いで、アミド18を、n−ブチルリチウムまたはグリニャール試薬の存在下で化合物19とカップリングして式20の化合物を生成する。次いで化合物20をマイクロ波下、NHOHの存在下で加熱して式21のアミンを生成する。
【0205】
スキームV
【0206】
【化16】

試薬および条件:a)TBTU、N−メトキシ−N−メチルアミン、DIPEA、CHCl;b)n−BuLiまたはグリニャール試薬、−78℃、THF;c)i)Boc−アミン、KCO、DMF、95℃;ii)HCl、ジオキサン;d)RCOOH、DCC、HOBt、DCMまたはClCOR、THF、塩基またはRCHO、NaCNBH
【0207】
上記スキームVは、式27の化合物(R、Jおよび環Bは本明細書で定義する通りである。Halはハロゲンを表す。)の調製のための一般的経路を示す。上記に示したように、出発原料23を、アミドカップリング剤(例えば、TBTU)の存在下でN−メトキシ−N−メチルアミンとカップリングしてワインレブアミド24を生成する。次いでアミド24を、n−ブチルリチウムまたはグリニャール試薬の存在下で化合物19とカップリングして式25の化合物を生成する。さらに、適切な塩基および適切な溶媒の存在下でそれらを保護されたジアミン(例えば、1−Boc−ホモピペラジン)と加熱して化合物を生成させ、これを酸性条件下で脱保護して式26の化合物を得ることによって、式25の化合物をさらに誘導化して化合物26を生成することができる。式26の化合物は、とりわけ、アミド形成、カルバメート形成または還元的アミノ化を含む当技術分野で周知のいくつかの方法を用いてさらに官能化して式27の化合物を生成させることができる。
【0208】
スキームVI
【0209】
【化17】

試薬および条件:a)TBTU、HNR、EtN、CHCl;b)NHOH、MW、160℃、25分間。
【0210】
上記スキームVIは、式29の化合物(環Bは本明細書で定義する通りであり、C(O)NRにおいて一方のRは−Hであり、他方のRは本明細書で定義するQ2である)の調製のための一般的経路を示す。上記に示したように、出発原料27を、アミドカップリング剤(例えば、TBTU)の存在下でアミンHNRとカップリングしてアミド28を生成する。反応は様々なアミンHNRによってもたらされる。次いでアミド28を、マイクロ波下、NHOHの存在下で加熱して式29のアミンを生成する。
【0211】
スキームVII
【0212】
【化18】

試薬および条件:a)i)LDA、THF、−78°C;ii)MnO2、DCM、75°C;b)脱保護条件;c)NaH、HalR、DMF;d)NHOH、MW、100℃、25分間。
【0213】
上記スキームVIIは、式35の化合物(Rおよび環Bは本明細書で定義する通りである。PGは保護基を表す。)の調製のための一般的経路を示す。30のアニオンのアルデヒド31との求核付加反応で得られた式32の化合物を脱保護して中間体33を生成する。33を、塩基(例えば、NaH)の存在下HalR(Halはハロゲンである)と反応させて誘導体34を生成する。反応は様々なHalRによってもたらされる。次いで式34の化合物を、マイクロ波下、NHOHの存在下で加熱して式35のアミンを生成する。
【0214】
スキームVIII
【0215】
【化19】

試薬および条件:a)RH(アミンをベースとした求核試薬)、エチレングリコール、150°C;b)BuLi、2−ジメチルアミノエタノール、THF、ヘキサン、−78°C;c)NHOH、MW、120℃、30分間。
【0216】
上記スキームVIIIは、式39の化合物(Rは本明細書で定義する通りである)の調製のための一般的経路を示す。3−クロロイソキノリン36を、適切な溶媒中でアミンRH(例えば、1−Boc−ピペラジン)と加熱して式37の化合物を生成する。反応は様々なアミンによってもたらされる。次いでワインレブアミド7を、ブチルリチウムおよび2−ジメチルアミノエタノールの存在下で化合物37とカップリングして式38の化合物を生成する。最後に、式38の化合物を、マイクロ波下、NHOHの存在下で加熱して式39のアミンを生成する。
【0217】
したがって、本発明は、上記に説明した方法を用いて本発明の化合物を調製する工程を提供する。
【0218】
一実施形態では、本発明は、以下のステップを含む、本発明で説明する化合物の調製方法である:
a)例えばテトラヒドロフラン(THF)、EtO、ジオキサンなどの適切な溶媒中、n−ブチルリチウム、アルキルリチウムまたはグリニャール(gringnard)試薬などの存在下、約15℃〜約35℃、約20℃〜約30℃、約25℃〜約30℃でアミノピリジンとジハロゲン化複素芳香族化合物をカップリングしてヘテロアロイルアミノピリジンを生成する;
任意選択で、b)ヘテロアロイルアミノピリジンを、例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、トリクロロメタンなどの適切な溶媒中で、例えばN−ブロモスクシンイミドまたは臭素で臭素化してヘテロアロイルハロゲン化アミノピリジンを生成する;
c)例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−ブタノール(n−Bu−OH)などの適切な溶媒中、炭酸カリウム、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などの適切な塩基の存在下、約70℃〜約110℃、約80℃〜約100℃、約90℃〜約100℃で、ステップa)からのヘテロアロイルアミノピリジン、またはステップb)からのヘテロアロイルハロゲン化アミノピリジンのハロゲンを、任意選択で保護されたアミンで求核置換してアミン置換ヘテロアロイルアミノピリジンまたはアミン置換ヘテロアロイルハロゲン化アミノピリジンを生成する;
任意選択で、d)ステップc)からのアミン基を、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中、例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸を用いるなどの酸性条件を用いて脱保護して、脱保護されたアミン置換ヘテロアロイルアミノピリジンまたはアミン置換ヘテロアロイルハロゲン化アミノピリジンを得ることができる;
任意選択で、e)アミド形成、カルバメート形成などの当技術分野で公知の手法を用いて、ステップd)からのアミン基を官能化する;
任意選択で、f)パラジウムなどの触媒の存在下、R−Y(Yは例えば、−R(OR)または−SnR3である)で処理してステップd)またはe)からのアミノピリジン基を誘導体化する;
以下はそうした合成の例である:
【0219】
【化20】

あるいは、本発明は、以下のステップを含む本明細書で説明する化合物の調製方法である:
a)例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン(tetrahydrofurna)(THF)、ジオキサンなどの適切な溶媒中、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)またはN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのカップリング剤の存在下、例えばジイソプロピルホスホルアミドクロリダイト(diisopropylphosphoramidochloridite)(DIPEA)、トリエチルアミン(EtN)などの適切な塩基の存在下でハロニコチン酸とアルコキシアミンをカップリングしてワインレブアミドを生成する;
b)例えばテトラヒドロフラン(THF)、EtO、ジオキサンなどの適切な溶媒中、n−ブチルリチウムまたはグリニャール試薬の存在下、約10℃〜約95℃、約10℃〜約30℃、約20℃〜約30℃、約55℃〜約95℃、約65℃〜約85℃、約70℃〜約80℃でワインレブアミドを複素芳香族化合物と加熱してヘテロアリールハロピリジンを生成する;
c)ヘテロアリールハロピリジンを、マイクロ波下、約80℃〜約130℃、約90℃〜約120℃、約100℃〜約110℃で、約5〜約45分間、約15〜約35分間または約20〜約30分間、例えば水酸化アンモニウムと加熱してヘテロアリールアミノピリジンを生成する;
任意選択で、d)ヘテロアロイルアミノピリジンを、例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、トリクロロメタンなどの適切な溶媒中、例えばN−ブロモスクシンイミドまたは臭素で臭素化してヘテロアロイル臭素化アミノピリジンを生成する;
任意選択で、e)パラジウムなどの触媒の存在下、R−Y(Yは例えば、−R(OR)または−SnR3である)で処理してステップc)のヘテロアリールアミノピリジン、ステップd)のヘテロアロイル臭素化アミノピリジンのアミノピリジン基を誘導体化する。
【実施例】
【0220】
質量分析試料を、エレクトロスプレーイオン化を用いた単一MSモードで動作するMicroMass Quattro Micro質量分析計で分析した。試料を、クロマトグラフィーを用いて質量分析計中に導入した。すべての質量分析について、移動相は、10mM pH7酢酸アンモニウムおよび1:1アセトニトリル−メタノール混合物からなった。方法A:カラム勾配条件は、3.5分の勾配時間にわたって5%〜100%アセトニトリル−メタノールであり、ACE5C8 3.0×75mmカラムで4.8分の実行時間であった。流量は1.2ml/分であった。方法B:カラム勾配は、10分の勾配時間にわたって5%〜100%アセトニトリル−メタノールであり、ACE5C8 4.6×150mmカラムで12分の実行時間であった。流量は1.5mL/分であった。本明細書で用いる「Rt(分)」という用語は、その化合物に伴うLCMS保持時間(分)を指す。別段の言及のない限り、報告した保持時間を得るのに用いたLCMS法は上記に詳細を示した通りである。Rt(分)が<5分の場合は方法Aを用い、Rt(分)が>5分の場合は方法Bを用いた。
【0221】
1H−NMRスペクトルは、Bruker DPX400装置を用いて400MHzで記録した。
表2に本発明の特定の例示的な化合物についてのデータを示す。
【0222】
【表2−1】

【0223】
【表2−2】

【0224】
【表2−3】

【0225】
【表2−4】

【0226】
【表2−5】

【0227】
【表2−6】

【0228】
【表2−7】

一般に、表1の化合物を含む本発明の化合物はPKCθの阻害に有効である。本発明の化合物によるPKCθの阻害に対する選択性を試験する。PKCθアイソフォームの選択性についての結果を、PKCθ、PKCδおよびPKCαについてのKi効力で示す。
【0229】
(実施例1)
PKCθ
100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、0.1mM EDTAおよび0.01%Brijからなるアッセイ緩衝溶液を調製した。以下の最終アッセイ濃度となるように試薬、0.00001%のTriton X−100、200μg/mLホスファチジルセリン、20μg/mLジアシルグリセロール、360μM NADH、3mMホスホエノールピルベート、70μg/mLピルベートキナーゼ、24μg/mL乳酸脱水素酵素、2mM DTT、100μM基質ペプチド(ERMRPRKRQGSVRRRV配列番号1)および18nM PKCθキナーゼを含む酵素緩衝液をアッセイ緩衝液で調製した。384ウェルプレート中の60μLのこの酵素緩衝液に2μLのDMSO中のVRTストック溶液を加えた。混合物を、30℃で10分間平衡化させた。酵素反応を、240μMの最終アッセイ濃度となるようにアッセイ緩衝液で調製した5μLのストックATP溶液を加えて開始させた。初速度データを、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale、CA)を用いて、30℃で15分間かけて、340nMでの吸光度の変化速度(NADHの化学量論的消費に相当する)から測定した。各Ki測定について、0〜20μMのVRT濃度範囲をカバーする12のデータ点で二通り取った(DMSOストックは、最初の10mM VRTストック液で調製し、続いて1:2で連続希釈して調製した)。Ki値を、Prismソフトウェアパッケージ(Prism4.0a、Graphpad Software、San Diego、CA)を用いて非線形回帰法により初速度データから算出した。Ki値を、A<0.05μM、B<0.5μM、C<2.8μM、D>2.8μMで示す。
【0230】
PKCδ
100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、0.1mM EDTAおよび0.01%Brijからなるアッセイ緩衝溶液を調製した。以下の最終アッセイ濃度となるように試薬、0.002%Triton X−100、200μg/mLホスファチジルセリン、20μg/mLジアシルグリセロール、360μM NADH、3mMホスホエノールピルベート、70μg/mLピルベートキナーゼ、24μg/mL乳酸脱水素酵素、2mM DTT、150μM基質ペプチド(ERMRPRKRQGSVRRRV配列番号2)および46nM PKCδキナーゼを含む酵素緩衝液をアッセイ緩衝液で調製した。384ウェルプレート中の16μLのこの酵素緩衝液に1μLのDMSO中のVRTストック溶液を加えた。混合物を、30℃で10分間平衡化させた。酵素反応を、150μMの最終アッセイ濃度となるようにアッセイ緩衝液で調製した16μLのストックATP溶液を加えて開始させた。初速度データを、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale、CA)を用いて、30℃で15分間かけて、340nMでの吸光度の変化速度(NADHの化学量論的消費に相当する)から測定した。各Ki測定について、0〜20μMのVRT濃度範囲をカバーする12のデータ点で二通り取った(DMSOストックは、最初の10mM VRTストック液で調製し、続いて1:2で連続希釈して調製した)。Ki値を、Prismソフトウェアパッケージ(Prism4.0a、Graphpad Software、San Diego、CA)を用いて非線形回帰法により初速度データから算出した。
【0231】
PKCα
100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、0.1mM EDTA、100μM CaClおよび0.01%Brijからなるアッセイ緩衝溶液を調製した。以下の最終アッセイ濃度となるように試薬、0.002%Triton X−100、100μg/mLホスファチジルセリン、20μg/mLジアシルグリセロール、360μM NADH、3mMホスホエノールピルベート、70μg/mLピルベートキナーゼ、24μg/mL乳酸脱水素酵素、2mM DTT、150μM基質ペプチド(RRRRRKGSFKRKA配列番号1)および4.5nM PKCαキナーゼを含む酵素緩衝液をアッセイ緩衝液で調製した。384ウェルプレート中の16μLのこの酵素緩衝液に1μLのDMSO中のVRTストック溶液を加えた。混合物を、30℃で10分間平衡化させた。酵素反応を、130μMの最終アッセイ濃度となるようにアッセイ緩衝液で調製した16μLのストックATP溶液を加えて開始させた。初速度データを、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale、CA)を用いて、30℃で15分間かけて、340nMでの吸光度の変化速度(NADHの化学量論的消費に相当する)から測定した。各Ki測定について、0〜20μMのVRT濃度範囲をカバーする12のデータ点で二通り取った(DMSOストックは、最初の10mM VRTストック液で調製し、続いて1:2で連続希釈して調製した)。Ki値を、Prismソフトウェアパッケージ(Prism4.0a、Graphpad Software、San Diego、CA)を用いて非線形回帰法により初速度データから算出した。
【0232】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、我々の基本的な実施例を変えて、本発明の化合物および方法を用いた他の実施形態を提供することができることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、実施例として示してきた特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

からなる群から選択される構造式で表される化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
【化29】

からなる群から選択される構造式で表される化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含む組成物。
【請求項4】
被験体のプロテインキナーゼ媒介状態を治療または予防する方法であって、前記被験体に有効量の請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩または組成物を投与することを含む方法。
【請求項5】
前記プロテインキナーゼ媒介状態がPKC媒介状態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PKC媒介状態がPKCθ媒介状態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PKCθ媒介状態が、自己免疫疾患、炎症性疾患または増殖性もしくは過剰増殖性疾患である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記PKCθ媒介状態が、ぜんそく、乾癬、関節炎、関節リウマチ、関節の炎症、多発性硬化症、糖尿病、炎症性大腸炎、移植片拒絶、T細胞白血病、リンパ腫および狼瘡からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記PKCθ媒介状態が自己免疫疾患である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症、関節リウマチ、過敏性腸疾患からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記自己免疫疾患が関節リウマチである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記自己免疫疾患が過敏性腸疾患である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記PKCθ媒介状態が、T細胞白血病およびリンパ腫からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2011−530527(P2011−530527A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522231(P2011−522231)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/052940
【国際公開番号】WO2010/017350
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】