説明

アルミニウム及びアルミニウム酸化物の少なくとも一方を有し、ルチル構造を具えるチタン酸化物透明被膜

屈折率が高く且つ熱的及び機械的安定性が向上した、チタン酸化物を主成分とする温度安定性のある透明被膜は、アルミニウム及びアルミニウム酸化物からなる群から選択した少なくとも1種の添加物を入れたチタン酸化物を有し、この透明被膜中の金属原子の総数に対するAl原子の比率を、2〜40%の範囲内にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アルミニウム及びアルミニウム酸化物からなる群から選択した少なくとも1種の添加物を有し、ルチル構造を具えるチタン酸化物透明被膜に関するものである。
【0002】
本発明は、特に、ルチル構造を有するチタン酸化物の透明被膜であって、アルミニウム又はアルミニウム酸化物を含む当該透明被膜を基礎とする薄肉の被膜即ちフィルムの形態の透明被膜に関するものである。
【背景技術】
【0003】
光スペクトルの特定の波長範囲に亘って選択した光成分を選択的に反射させるために、投射ランプのようなランプの外面又は内面に被膜を被着させることは既知である。この際、被膜の作用原理及びランプ管の幾何学形状によっては、ランプ管全体を被覆することがある。この場合は、例えば市販のハロゲンランプの場合である。このようハロゲンランプでは、ランプ管の中央にフィラメント又はワイヤが配置されており、ランプ管の外面に光学干渉フィルム即ち光学干渉被膜が被着されている。この光学干渉被膜は、可視範囲の光線を透過するが、赤外線を反射する。フィラメントから放出された光に含まれる赤外線は、この光学干渉被膜により反射されてフィラメントに戻されフィラメントを加熱する。このことにより、放出光中の赤外線成分を減少させ発光効率を増大させる。
【0004】
ランプ管に被膜を完全にコーティングする代わりに、ランプ管表面を所定割合でのみコーティングすることもできる。このことは、例えばボールリフレクタランプの場合にあてはまり、特にハイパフォーマンス(HP)ランプにおいて利用される。高輝度放電(HID)ランプ、特にウルトラハイパフォーマンス(UHP)ランプは、特にこれらの光学的特性から投射目的に好ましいものである。これらの用途では、電極先端間に形成されるアークの長さが約0.5〜2.5mmを超えないように、できる限り集束させうる光源が必要とされる。更に、光度ができる限り高いのが望ましい。
【0005】
これらの特徴はUHPランプを用いることにより最も良好に達成させることができる。これらのランプは、厚肉の壁部を具える石英ガラス管内に水銀放電容器を有しており、この石英ガラス管は、楕円形状のガラス体内に、水銀放電容器のプラズマ中央点が楕円の焦点に一致するように固着されている。この楕円形状のガラス体の内面には、選択性で薄肉誘電体よりなるミラーコーティングが施されている。
【0006】
多層の干渉フィルタは、スペクトル効果に関する融通性が大きいため光学被膜として頻繁に用いられる。このような多層の干渉フィルタは、互いに異なる屈折率を有する少なくとも2種の異なる誘電体材料の積層体を有するものが多い。これらフィルタの透過及び反射範囲は、被着した高屈折率及び低屈折率の個々の材料の被膜の厚さにより決定される。このようなフィルタは、極めて簡単なミラーコーティングの場合のように単一の被膜を有するようにしうるし、又は光通信におけるマルチプレクサの場合のように数百の被膜を有するようにしうる。
【0007】
このようなフィルタ積層体の設計においては、使用する材料の屈折率の違いが特に重要である。一般に、この屈折率の違いが大きいほど、特定の目標スペクトルの達成が容易になる。例えば、屈折率の違いが大きければ、設計における被膜の数が少なくなり全被膜厚がより小さくなるため製造費用が廉価となる。これらの光学的観点の他に、使用温度範囲における相転移や、基板と比較しての材料の熱膨張係数のような熱機械的特性も、製品の生産性や有用性に対して極めて重要である。
【0008】
ランプ、特に石英ガラス管を有するランプの光学被膜に対しては、通常SiO2 が用いられる。その理由は、SiO2 の熱膨張係数がランプの壁部材料のものとほぼ完全に一致しており、且つその屈折率が低く低屈折率の被膜として用いられるためである。高屈折率の被膜に対しては、Ta25、Si34及びNb25のような種々の材料を使用することができる。上述した材料の中で最も高い屈折率を有するTiO2 が特に好適な材料である。また、TiO2 には、特に、約650℃まで安定な低温変態のアナターゼと、限界温度範囲において安定な高温変態のルチルとがある。ここでルチルはより高い屈折率を有する。
【0009】
あらゆるコーティング方法に関して、TiO2 がいずれの変形体でいかなる屈折率を有して存在することになるのかは、製造条件及びその後の処理により決まる。現在のコーティング方法では、TiO2 は、堆積後アナターゼとして即ち低屈折率の材料として存在する。これをより高い屈折率のルチル相へ転移させるのは、製造処理中の別個の工程により、又は例えばハイパフォーマンスHIDランプの放電容器のように点灯温度が充分に高い場合には単純にランプの点灯により、転移温度より高い温度でテンパーリングすることにより達成することができる。
【0010】
特開平 8-51103号明細書から、TiO2 −Al23を有するハロゲンランプ用の被膜が既知となっており、これは湿式化学法により被着されその後焼成される。このような被膜は、機械的に不安定でありクラックを生じるおそれがある。その理由は、特に、湿式化学法により被膜が厚くなるためである。
【0011】
ドイツ国特許公開第4037179 号明細書には、Sb、Si及びTaからなる群から選択した少なくとも1種の金属添加物を添加することにより、高温の影響下で非晶質又はアナターゼのTiO2 からルチルのTiO2 への相転移を制御しうることが開示されている。この場合、これらの金属添加物は、金属原子比M/Tiを0.1〜30%として用いられている。
【0012】
しかし、相転移により多数の問題が生じる。第1に、相転移温度が不可欠であるために、温度的に安定している基板上でしか相転移を行うことができない。従って、上述した方法では、これらの温度で熱処理し得ない基板にはコーティングを行うことができない。更に、アナターゼからルチルへのTiO2 の相転移は、格子特性の変化を伴うため、材料密度が約10%増大する。従って、被膜は幾何学的に収縮させる必要があり、このことは被膜中にひずみをもたらすことになる。特に、より厚肉の被膜積層体(全厚さが1μmより大きいもの)では、これらの応力によりフィルタ内にクラックが生じ、それによりランプ寿命中にフィルタが破損するおそれがある。
【0013】
相転移即ち材料特性の変化は、例えば屈折率及び被膜厚の双方又はいずれか一方を変化させることによりそれぞれの構成部材を損傷させるおそれがある。
【0014】
本発明の目的は、欠点を伴わざるを得ない高温処理を行うことなく、温度安定性を向上させたルチル含量の多い高屈折率のチタン酸化物被膜を用いうるようにすることにある。
【0015】
被膜中に少量のアルミニウム又はアルミニウム酸化物を組み入れれば、ルチル状短範囲規則構造を有する高屈折率のチタン酸化物被膜が得られることを確かめた。屈折率は、純粋なルチル(TiO2 )及びアルミニウム酸化物(Al23)の混合物に相当するものとするのが好ましい。
【0016】
本発明の目的は、第1の例においては、チタン酸化物を含む温度安定性のある透明被膜であって、アルミニウム及びアルミニウム酸化物からなる群から選択した少なくとも1種の添加物を有する透明被膜において、ルチル構造を有するこの被膜中の金属原子の総数に対する当該被膜中のAl原子の比率が、2〜40%の範囲内にあることを特徴とする透明被膜により達成される。
【0017】
本発明による被膜は、非晶質とするのが好ましく、ルチル状の短範囲規則構造を有し、これによりアナターゼ構造を有しないようにするのが好ましい。
【0018】
本発明によるこのような被膜は、特に自動車の照明用途に適したランプのような照明媒体をコーティングするのに用いることができる。
【0019】
本発明による透明な、特に光学的に透明な被膜は、アルミニウム及びアルミニウム酸化物の双方又はいずれか一方の添加物を含むチタン酸化物を有する。このAl添加物は、この透明被膜中の金属原子の総数に対して以下の原子比となる所定量で使用する。
0.02≦Al/Me≦0.40
ここで、Meは透明被膜中の金属原子の総数を示すものである。本発明による好適な透明被膜は、Al及びTi以外の金属原子を有しないため、以下の原子比の関係が得られる。
0.02≦Al/(Al+Ti)≦0.40
ここで原子記号は、それぞれの金属原子の数を示すものである。
【0020】
本発明による更に好適な透明屈折性被膜は、アルミニウム及びチタンを酸化物の形態、好ましくはAl23又はTiO2 として有する。従って、チタン酸化物及びアルミニウム酸化物を有するようにしたこのような光学被膜は、この被膜中の金属原子の総数に対して、Al原子を、2〜40%、特には10〜30%、好ましくは15〜20%の比率で有するようにする。
【0021】
以下の段落の説明は、それぞれ、干渉積層体の高屈折率被膜にのみ関するものである。この干渉積層体において、低屈折率材料の量に対する高屈折率材料の量の比率は、フィルタの設計に応じたものとする。しかし、本発明によれば、2種以上の被膜材料、例えば最も少なくて2種の異なる高屈折率の材料を含むフィルタを用いることもできる。
【0022】
本発明による光学被膜のチタン二酸化物の全重量に対するルチルの比率は、特に、少なくとも75重量%、好ましくは80重量%より大きく、より好ましくは85重量%より大きく、更に好ましくは90重量%より大きく、最も好ましくは95重量%〜100重量%にすべきである。
【0023】
被膜中の金属原子の総数に対するチタン原子の比率は、60〜98%、特に70〜90%、好ましくは80〜85%にする。
【0024】
本明細書中でTiO2 とも称するチタン酸化物は、本発明においてはx=1.9〜2.1であるTiOx をも意味しうる。
本明細書中でAl23とも称するアルミニウム酸化物は、本発明においてはx=2.9〜3.1であるAl2xをも意味しうる。
【0025】
被膜中の金属原子の総数に対するAl原子の比率は、2〜40%、特には5〜35%、好ましくは10〜30%、更に好ましくは15〜20%の範囲内のものとすることができる。
【0026】
被膜中の金属原子の総数に対する当該被膜中のAl原子の最も好ましい比率は、10〜20%であり、また被膜中の金属原子の総数に対する当該被膜中のTi原子の最も好ましい比率は、80〜90%である。
【0027】
本発明による被膜の全重量に対するアルミニウム及びチタンの比率は、それぞれ最大100%を占めるように選択する。
【0028】
ルチル構造を具える温度安定性のある透明被膜であって、チタン酸化物を有し、アルミニウム及びアルミニウム酸化物からなる群から選択した少なくとも1種の添加物を含む透明被膜は、化学気相堆積、特にスパッタリングにより、基板上の堆積温度を20〜300℃にして、チタン及びチタン酸化物の双方又はいずれか一方を有する少なくとも1つのターゲットと、チタン及びアルミニウムを有する少なくとも1つの金属合金ターゲットとから、規定可能な酸素分圧pで基板表面上に堆積してルチル構造を得ることができる。少なくとも1つの金属チタンターゲット及び少なくとも1つのアルミニウムターゲットから堆積処理を行うこともできる。
【0029】
堆積処理は、一般にアルゴン−酸素雰囲気中で行う。
このようにすると、既知の方法よりも著しく低い温度でルチル相即ちルチル構造を形成することができる。このことにより、150℃より高い温度に加熱すべきでない基板にも光学的に有用なルチルを被覆しうるという利点が得られる。既に述べたようにルチルは極めて高い屈折率を有する。
【0030】
前述した本発明の目的は、高温での処理を必要とすることなく前述した温度安定性の問題を回避してルチルを使用可能とすることにある。これに加えて、本発明は、高屈折率を有するルチル構造の被膜を直接コーティングすることを目的とする。
【0031】
本発明による被膜を、ビーム形成装置、ビーム分割装置、光ファイバ部材、ランプ、ガラス特に断熱ガラス、プラスチック、ガスセンサ、透明干渉フィルタ、透明フィルタシステム、特に加熱用ランプリフレクタ、冷却用ランプリフレクタ、レーザーミラー、反射防止システム、帯域通過フィルタ、エッジフィルタ、低放射(Low-e )ガラスのような光情報技術における部材、又は電気部材、拡散障壁若しくはキャパシタ素子のような電気用途に用いる本体上又は内に本発明による被膜を配置又は被着することにより、ルチルによる極めて高い屈折率をもたらすと共に、それにより得られる効率的で且つ費用節減となる設計を利用しうる可能性を広げる。この利点は、150℃を超える温度ではいかなる熱処理もなしえない製品又は基板に対しても得ることができる。更に、上述した材料を高点灯温度のランプに使用した場合に、アナターゼからルチルへの相転移及びそれに伴うランプ寿命の問題が生じなくなる。
【0032】
更に、本発明は、例えばある波長範囲を選択する又は種々の信号路に信号を分割するための、光ファイバ又は小型光学部材に対するビーム形成又はビーム分割装置にも適用することができる。
【0033】
本発明による被膜は、テンパーリングにより増大させる必要がなく高屈折率としたことを特徴とする。
【0034】
本発明による透明酸化被膜は、440nmの被膜厚及びλ=550nmの波長において、n=2.3〜n=2.68、好ましくはn=2.4〜n=2.65、より好ましくはn=2.45〜n=2.60の屈折率を有する。低屈折率より高屈折率の方が好ましいこと、即ち屈折率が高いほど光学特性がより良好になることを確かめた。
測定は、特に記載しない限り23℃の周囲温度において行っている。
【0035】
本発明による透明酸化被膜は、950℃とした炉内で15時間熱処理を行った後も透明のままであり、λ=550nmの波長において、n=2.3〜n=2.68、好ましくはn=2.40〜n=2.65、より好ましくはn=2.45〜n=2.60の屈折率を有するものである。
【0036】
本発明による酸化被膜の散乱指数(以下“iHaze"としても示す)は、900℃とした炉内でテンパーリングを行って15時間後も、400nmの被膜厚の場合に、0nm〜80nm、好ましくは20nm〜70nm、より好ましくは30nm〜60nm、最も好ましくは40nm〜50nmのiHaze値を有する。最適な被膜は、散乱のない、即ちiHaze=0となるものである。従って、最も好ましいiHaze値は=0であり、次に好ましいiHaze値は>0である。次に好適なiHaze値は、iHaze≧1nm、iHaze≧10nm及びiHaze≧15nmである。0nm〜1nmが最も可能性があり最も好ましいiHaze値である。
900℃とした炉内で15時間テンパーリングを行った後のTiAlOx の原子数比及び散乱指数は以下の表1の通りである。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明による透明被膜は、それ自体だけではなく他の被膜と組み合わせて、基板、特に透明基板に被着するのが好ましい。このようにすると透明干渉被膜が得られる。このような透明干渉被膜は、対面して接触させることにより重畳させた2つの屈折性又はその他の被膜より成っており、これらの被膜はそれぞれ異なる屈折率を有している。
【0039】
本発明によれば、250〜5000nm、好ましくは380〜3000nm、より好ましくは350〜2500nm、更に好ましくは400〜2000nm、特に好ましくは420〜1500nmの透明スペクトル波長範囲内の光を反射するのが好ましい透明干渉被膜を、本発明による少なくとも1つの第1の被膜、及びこの第1の被膜より屈折率の低い少なくとも1つの第2の被膜を有し、これらの被膜が、基板、好ましくは透明基板上に交互に重ね合せて配置されるように設計する。更に好適な反射波長範囲は、680〜2600nm、800〜2500nm、820〜2450nm及び850〜2400nmであり、特に好ましくは1000〜1900及び1050〜1800nmの範囲である。
【0040】
第2の被膜は、λ=550nmの波長において、n=1.32〜n=2.0、好ましくはn=1.35〜n=1.80、最も好ましくはn=1.44〜n=1.75の屈折率を有しうる。更に好適な屈折率nは、1.36、1.42、1.46、1.48及び1.50である。例えば、SiO2 被膜に対しては屈折率をn=1.45にすることができる。
【0041】
本発明の他の目的は、透過スペクトルの所定の波長範囲内の光を反射する透明干渉被膜であって、この透明干渉被膜が、透明基板上に交互に重ね合せて配置された第1の被膜と、この第1の被膜より屈折率の低い第2の被膜とを有しており、前記第1の被膜が、主としてチタン酸化物を有し、且つアルミニウム及びアルミニウム酸化物から成る群から選択した少なくとも1種の添加物を含み、当該第1の被膜における金属原子の総数に対するAl原子の比率が2〜40%の範囲内にある透明干渉被膜を得ることにある。
【0042】
従って、本発明による透明干渉被膜は、本発明による透明被膜と、低屈折率の少なくとも1つの他の被膜とを有する。上述したところから類推するに、本発明による透明干渉被膜は、第1の被膜がチタン酸化物及びアルミニウム酸化物を有し、この第1の被膜における金属原子の総数に対するAl原子の比率が、2〜40%、特には5〜35%、好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜20%の範囲内にあるようにするのも好ましい。本発明による透明干渉被膜の他の好適な特徴は、上述の好適な透明被膜の開示から推測しうるものであるため、ここで重複する説明は省略する。
【0043】
高屈折率の被膜は、ガラス形成媒体として、リン化合物及びホウ素化合物からなる群から選択した少なくとも1種の化合物を有しうる。
本発明による透明干渉被膜中の低屈折率の被膜としては、シリコン二酸化物を用いるのが好ましい。
【0044】
高屈折率又は低屈折率の被膜の厚さは、広い範囲で、例えば500nm〜3μmの範囲で変更することができる。個々の被膜の代表的な厚さは、20〜500nmであり、多くの場合10〜200nmである。
【0045】
本発明による透明干渉被膜系は、最少で2つの被膜を有しうるが、高屈折率及び低屈折率の被膜を順次に繰り返して設けることにより構成することもできる。この場合、数百までの一連の被膜が存在するようにしうる。
【0046】
本発明による干渉被膜系の厚さも同様に、広い範囲で、例えば500nm〜3μmの範囲で変更することができる。本発明によれば、この干渉被膜系の好適な被膜厚を、50nm〜5μm、好ましくは75nm〜1.5μm、多くの場合100nm〜1μmとする。
【0047】
本発明によれば、特に好適な被膜厚は、50nm〜20μm、好ましくは75nm〜8μmであるが、100nm〜4μmとすることが多く、300nm〜3μmとすることも頻繁にある。
【0048】
本発明の上述した及びその他の観点は、以下に記載する例を参照にした説明から明らかとなるであろう。
図1に示されるように、透明干渉被膜3は、主成分が酸化チタン(TiO2 )である高屈折率の被膜1と、主成分が酸化シリコン(SiO2 )である低屈折率の被膜2とを有している。高屈折率の被膜1を、透明基板4の外面上に形成し、その後この被膜1上に低屈折率の被膜2を形成する。更に、高屈折率及び低屈折率の被膜1及び2を交互に形成することにより、所望数の被膜1及び2を有する重畳構造を形成する。
【0049】
本発明による透明干渉被膜は、赤外線を反射させると共に透過スペクトルの可視領域の光線を通過させるために、ランプ管の内面及び外面の双方即ち両面に形成することができる。
【0050】
更に、本発明の目的は、本発明による透明干渉被膜を有するランプを得ることにある。このような本発明によるランプは、透明のランプ管と、このランプ管内に配置された、光を発生させるためのフィラメントと、赤外線を反射させると共に可視光領域の光線を通過させる本発明による透明干渉被膜であって、ランプ管の内面及び外面の双方又はいずれか一方に設けられている当該透明干渉被膜とを有する。
【0051】
本発明によるこのようなランプは、例えば、ハロゲンランプや、又はボールリフレクタランプや、又は例えば高輝度放電(HID)ランプ、特にウルトラハイパフォーマンス(UHP)ランプであるハイパフォーマンス(HP)ランプとして設計することができる。
【0052】
アルミニウム及びアルミニウム酸化物を有する群から選択した少なくとも1種の添加物を含む本発明によるチタン酸化物の被膜は、種々の方法により基板上に形成することができる。
【0053】
この薄肉の被膜を形成するのに好適な方法は、おおまかに4つの部類に分けることができる。即ち、物理気相堆積(PVD)法、化学気相堆積(CVD)法、電気メッキ法及び噴霧法である。噴霧法による成長速度は極めて速いため、噴霧法は厚肉の被膜を設けるのにも適しうる。一般に、CVD及び電気メッキ法は、酸化被膜を形成するのにあまり適していない。ただし、プラズマ衝撃化学気相堆積(PICVD)はこの場合にも適しうる。
【0054】
本発明により使用することができる堆積法は、物理気相堆積、反応性マグネトロンスパッタリング、イオンスパッタリング、イオン若しくはプラズマエンハンスド堆積、プラズマ衝撃化学気相堆積及びその他の当業者に既知のスパッタリング法である。
【0055】
PVD法は、更に3つの技術、即ち、堆積技術、スパッタリング法及びレーザーアブレーション法(PLD)に分けることができる。
これらの中ではスパッタリング法が、酸化被膜の形成に特に適しており、従って本発明では好ましい技術である。
スパッタリングの用語は、イオンによるカソードの微粉化を意味し、広い意味ではこの微粉化した材料を基板上にスパッタ堆積することも表している。
【0056】
スパッタリング法の最も簡単な例では、正に帯電させたアノードと負に帯電させたカソードとを有する二極の構成部材を容器内に配置する。この容器を、数ミリバール(1バール=105 パスカル)の圧力の残留ガスが存在するようになるまで排気する。使用する残留ガスは、ターゲット又は基板との反応を防止するために不活性ガス(通常はアルゴン)とするのが好ましい。これらアノード及びカソード間に150〜3000Vの電圧を印加する。電子はアノードに向けて加速され、その途中で遭遇するアルゴン原子と衝突しこれらアルゴン原子をイオン化する。イオン化され正に帯電されたこれらのアルゴン原子は、次にカソードに向けて加速され、カソード又はその頂面上にあるターゲットから原子を放出させる。ターゲットからは中性原子以外に、二次電子も放出され、これら二次電子により他のアルゴン原子をイオン化する。従って、好適な条件下ではこれら2つの電極間でプラズマが静止状態となる。ターゲットから放出された中性原子は、チャンバの全体に亘って均一に分散され、基板上に薄肉の被膜を形成する。
【0057】
中性ターゲット原子及びイオン化されたスパッタガス原子の運動エネルギーは、1〜300eVになる。この運動エネルギーは、蒸着技術における原子の運動エネルギーである約0.1eVと比較すると極めて高い。特に、電界中で加速されたイオンのこの高い運動エネルギーは、蒸着法と比べてより緻密で且つ平滑な被膜の形成に寄与するものである。
【0058】
この一般的なスパッタリング法は、既に多くの観点のおいて改良されている。簡単な二極構成に代えて、プラズマを発生させるのに三極又はRF二極構成も使用することができる。マグネトロンスパッタリングによれば、磁界を印加することによりイオン化確率及びスパッタリング速度が向上する。
【0059】
DC(直流)マグネトロンスパッタリング法では、約1kVの2極電圧の他に磁界も加える。磁界は、ターゲットのエッジを囲むリングマグネットと、中央のセントラルマグネットとにより発生させ、ターゲット表面上で数百テスラの強度を有する。
【0060】
この磁界は、ターゲット近傍で発生する二次電子を保持する。これにより電子−原子のイオン化衝突の確率が増大するためターゲットの近傍におけるプラズマ密度も増大する。このことにより、通常のスパッタリング法よりも優れた2つの大きな利点が得られる。第1の利点は、スパッタリング速度が増大することであり、第2の利点は、プラズマが燃焼するのに必要な圧力が低くて足りることである。工業的な製造では、より短い製造時間を保証するためにスパッタリング速度をより速くすることが重要である。しかも、スパッタリングの圧力がより低くなることは、薄肉被膜にとって有利となりうる。圧力が低いため異質なガス原子がより少なくなり、従ってスパッタリング形成される被膜がより純粋なものになる。
【0061】
酸素分圧pは、p<100mPaに設定する。本発明によれば、好適な酸素分圧は5〜25mPaであり、特に好ましくはp<20mPaである。本発明による他の好適な酸素分圧は、3〜40mPaであり、好ましくは4〜20mPaであり、特に好ましくは8〜14mPaである。
【0062】
本発明の他の目的は、スパッタリング技術を用いて、アルミニウム及びアルミニウム酸化物から成る群から選択した少なくとも1種の添加物を有するチタン酸化物の透明被膜の製造方法であって、チタン及びチタン酸化物の双方又はいずれか一方のターゲットを、アルミニウム及びアルミニウム酸化物の双方又はいずれか一方を有するターゲットと同時に使用する透明被膜の製造方法を提供することにある。或いは又、チタン及びアルミニウムを含む合金ターゲット、又はチタン酸化物及びアルミニウム酸化物を含むセラミック複合ターゲットからコーティング処理を行うこともできる。
【0063】
本発明による方法は、残留ガスとしてアルゴンを用いて実施するのが好ましく、この場合の好適な方法は、いわゆる酸化物モード、即ち酸素の存在下で行うものである。ここで、この好適な方法は、5〜20mPa、好ましくは7〜15mPa、特に好ましくは10〜12mPaの酸素分圧で当該方法を実施することを特徴とするものである。
【0064】
本発明による方法の特定の利点は、作業温度を低く選択しうることである。即ち、本発明による好適な方法は、20〜300℃、好ましくは50〜280℃、特に好ましくは80〜250℃、最も好ましくは100〜200℃の基板温度で当該方法を実施することを特徴とする。
【0065】
本発明による被膜即ち被膜特性及び温度安定性は、例えば加熱処理を行うことなく得ることもできる。この場合の特に好適な温度範囲は50〜150℃でもある。
【0066】
本発明による方法では、作業温度を低い温度にした場合であっても、アルミニウム酸化物及びチタン二酸化物の混合物に相当する屈折率を有する混合酸化物により、ルチル変態が対応する割合で得られる。屈折率を高めるためにこれに続くテンパーリング処理が不要であるため、一方において、被膜及び基板の熱負荷による欠点が回避されると共に、他方において、温度の影響を受けやすい基板に対するコーティング処理が可能になる。本発明の方法によれば、TiO2 成分が非晶質で且つ高屈折率の形態であり、温度の影響下での結晶化力が著しく制限された被膜が得られる。TiO2 成分は、テンパーリング処理中に全くアナターゼを形成しないため、アナターゼからルチルへの相転移も起こらない。このため、本発明による被膜の機械的及び熱的安定性が増大する。被膜の温度安定性及び透明性を保つ温度は、ドープしていないTiO2 では約800℃までであるのに対し、本発明では特に約950℃まで増大する。
【0067】
本発明による方法によれば、透明性の品質が高い特徴を有する極めて平滑な被膜も得られる。本発明によるこの被膜の屈折率は、Al含有量に応じて、λ=550nmにおいてn=2.2〜n=2.65である。
【0068】
本発明による方法の好適例では、マグネトロンスパッタリング技術を用いるが、二重マグネトロンスパッタリング法を用いるのも好ましい。好適なマグネトロン又は二重マグネトロンスパッタリング法の磁界強度は、10〜約200mTである。
【0069】
マグネトロン又は二重マグネトロン法のいずれを用いるかに拘わらず、パルス法が好ましい。この場合、本発明による方法は、例えば、10〜100kHz、好ましくは10〜70kHz、特には30〜50kHzのパルス周波数で実施するのが好ましい。
【0070】
好適な純粋ルチル相を有する被膜を得るために、スパッタ密度を9〜15W/cm2 、特に好ましくは11〜12W/cm2 にする。スパッタ密度は、1W/cm2 〜40W/cm2 にすることができる。
スパッタ密度とは、使用するターゲット面積に対してノーマライズして導出した処理電力として規定される。
【0071】
更に、本発明による被膜の厚さを変えうる他の方法は、それぞれTi又はAlターゲットに加える電力を調整する方法である。この場合、本発明による方法では、ターゲットに加える全電力P=PTitan-Target(チタンターゲット電力)+PAluminum-Target(アルミニウムターゲット電力)を、2000〜 10000W、好ましくは3000〜6000W、特には3500〜5000Wにするのが好ましい。
【0072】
本発明によれば、例えば2種の異なる金属ターゲット又は1種以上の金属合金ターゲットと、セラミック酸化物ターゲットとから混合酸化物被膜をスパッタリング形成することができる。
スパッタリング作業は、一般に酸素/アルゴン雰囲気中で行う。
【0073】
本発明を、以下の実施例につき説明するも、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例:
二極パルスマグネトロンスパッタリング法を用いて、50×50mmの寸法の石英ガラス基板上に、チタン酸化物及びアルミニウム酸化物からなる本発明による透明被膜を形成した。
【0074】
この目的のために、チタン及びアルミニウムから形成した2つの金属マグネトロンターゲットを、端を突き合わせて見て互いに20°の角度になるように配置し、これらを40kHzのパルス周波数及び11mPaの酸素分圧を用いて酸化物モードで同時に浸食させた。ターゲット当りのパルス周期は25μsである。基板の位置においてマグネトロンに加えられる磁界の水平成分は、約30mTとした。
【0075】
チタン及びアルミニウムの成分比率は、双方のターゲットに対して加えられる個別に調整可能な電力であって、全電力P(P=PTitan-Target+PAluminum-Target)が常に4kWになるようにした電力に応じて変化させた。
【0076】
本発明によるこの方法により、400nmの被膜厚の透明酸化被膜が得られた。Al/(Al+Ti)の比率は、0.13であり、λ=550nmにおける屈折率は、n=2.55であった。
【0077】
測定条件の概要
T=23℃(周囲温度)
大気圧=実験室の空気圧(常圧)
【0078】
テンパーリング処理:
実験室の雰囲気中で常圧下でテンパーリング処理した。テンパーリング時間は、それぞれの場合について15時間とした。
X線回折:
相の組成及び粒子寸法に関する情報を得るために、Siemens 社の型番D5000である回折装置によりX線回折測定を行った。ここでは、モノクロメータのないBragg-Brentano型の装置を(θ‐2θ)法において使用した。入射するCu‐Kβ線をNiフィルタにより除去した。
【0079】
放射源としてCu‐Kα線管を用いた。代表的な測定パラメータは、各ステップ:2θ=0.02°、積算時間:Δt=1sとした。使用した加速電圧は、30mAのビーム電流に対して40kVにした。
相の割り当てを決定するために、Siemens 社により開発され、測定用ソフトウェアに組み込まれているパッケージを使用した。
【0080】
ヘーズ:
サンプルの散乱レベルは、“へーズ(Haze)”と称されるパラメータの測定に基づき定量化した。この測定方法では、分光光度計を用いて、透過電磁放射の拡散散乱成分を測定し、これを全透過成分(Ttotal=Tspec+Tdiffus)に対してノーマライズする。従って、透過電磁放射のへーズは0〜1の範囲の値であり次式(1)として定義されるものである。
【数1】

測定曲線は、一般に干渉の影響による変調分を含んでおり、これは標準化のために完全に補償することができないことに注意すべきである。しかし、これらの影響は、測定を広いスペクトル範囲に亘って行うことにより大幅に抑制される。
【0081】
適切な数学的手法を用いて、スペクトルの測定データからそれぞれのサンプルの散乱レベルを定量化することができる。本実施例においては、この目的のために、以下の式(2)により、可視スペクトル範囲(λ=380〜800nm)の曲線の下側にある面積を積分することにより(“iHaze”)、変調分をも除去した。全てのサンプルの被膜厚を約400±10nmに設定してあるため、散乱のいかなる密度影響をも考察しないですむようになった。この評価においては、ガラス基板のいかなる不均一性又は表面清浄の不完全性によるガラス基板の散乱への影響も、測定精度の範囲内にあるため無視することができる。無次元の変数“Haze”をスペクトル範囲に亘って積分することにより、得られる変数“iHaze"は次元[長さ(nm)]を有するものとなる。
【数2】

【0082】
測定装置:
測定は、Varian社の型番Cary 5E である分光光度計により非偏光を用いて350〜800nmのスペクトル範囲において行った。拡散透過信号成分Tdiffus(λ)を測定するために、積分球(測定スポット寸法:10×10mm)を設けた。
【0083】
この場合、放射を垂直に入射させた場合、透過電磁放射の指向性のある非散乱成分が、測定球から取出され、ビームダンプ中に集束される。拡散透過信号成分Tdiffus(λ)は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を被覆した球(直径110mm)中に捕捉され、直接照射から保護されたホトダイオードにより測定される。測定値が大きいほど、サンプルから散乱する光がより強くなる。球の内面上で光が複数回反射することにより球容積の各点において同じ波長依存放射強度が存在することになる。この場合グレアのために、検出器は、サンプルからの又は(ビームダンプを閉鎖した場合の)間接照射球面からのいかなる直接信号も測定しない。ビームダンプを、硫酸バリウムプレートで被覆した場合、測定信号中には、拡散透過信号成分の他に正透過信号成分Tspec(λ)も含まれることになる。ヘーズは式(1)により計算される。
【0084】
偏光解析:
サンプルの屈折率及び被膜厚を決定するために偏光解析測定法を利用した。この方法は、検査中のサンプル表面上で反射させた場合の波の偏光状態の変化に基づくものである。偏光状態の変化は2つの複素フレネル反射係数rp 及びrs の商ρにより表される。これは偏光解析の基本方程式としても知られる次式(3)により示すことができる。
【数3】

ここで、Ψは、垂直及び平行成分の振幅比の変化を表し、Δは、反射の結果生じる2つの部分波間の位相差の変化を表すものである。添字のs及びpは、入射面に対して垂直及び平行に偏光した部分波を示す記号である。屈折率は、R.M.A. Azzam氏及びN.M. Bashara氏著の文献“Ellipsometry and polarized light”(オランダアムステルダムのNorth Holland社により1987に発行)に応じて決定した。
【0085】
被膜/基板系に対し、特性(透明率、被膜厚)を複素反射係数及び測定パラメータ(波長、入射角)と関連づけた適切な材料モデルが明確になれば、偏光状態の変化から、一連の重要なフィルムパラメータに関する正確な情報が得られる。サンプルの透明率の広がりは、標準のパラメータ化したローレンツ振動子モデルを用いることにより表した。これは、電磁放射により励起された場合に、固体原子とのフレキシブル結合を有する電子の振動特性を規定するものである

与えられる屈折率n550 は、波長λ=550に関するもので、その精度は±0.01内である。
【0086】
偏光解析測定のために、SENTECH Instruments社のex-situ SE800分光エリプソメータを使用した。この分光エリプソメータは、いわゆるPCSSA(Polarizer-Compensator-Sample-Step scan-Analyzer)の構成で動作する。
【0087】
380〜850nmのスペクトル範囲において入射角を55〜75°(Δ=5°)の間で変化させて評価を行った。測定データをモデルに適合させるために、シンプレックスアルゴリズムによる計算方法を組み込んだSENTECH Instruments社のAdvancedFitと称される市販の評価パッケージを使用した。
【0088】
符号の説明
1.透明被膜(第1の被膜)
2.第1の被膜より屈折率が低い第2の被膜
3.透明干渉被膜
4.透明基板
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明による透明干渉被膜の側部断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸化物を含む温度安定性のある透明被膜であって、アルミニウム及びアルミニウム酸化物からなる群から選択した少なくとも1種の添加物を有する透明被膜において、
ルチル構造を有するこの被膜中の金属原子の総数に対する当該被膜中のAl原子の比率が、2〜40%の範囲内にあることを特徴とする透明被膜。
【請求項2】
請求項1に記載の透明被膜において、
前記ルチル構造を有する透明被膜が、チタン酸化物及びアルミニウム酸化物を主成分としており、この被膜中の金属原子の総数に対する当該被膜中のAl原子の比率が、10〜30%とするのが好ましく15〜20%とするのがより好ましい2〜40%の範囲内にあることを特徴とする透明被膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の透明被膜において、
波長λ=550nmにおける前記透明被膜の屈折率nが、n=2.40〜n=2.65であるのが好ましくn=2.45〜n=2.60であるのがより好ましいn=2.30〜n=2.68であることを特徴とする透明被膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明被膜において、
前記透明被膜が、950℃にした炉内で15時間熱処理を行った後も、透明のままであるか、又はλ=550nmの波長において、n=2.40〜n=2.65であるのが好ましくn=2.45〜n=2.60であるのがより好ましいn=2.30〜n=2.68の屈折率を有するか、又はこれらの双方に該当することを特徴とする透明被膜。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明被膜において、
400nmの被膜厚を有する前記透明被膜が、900℃にした炉内で15時間熱処理を行った後も、透明のままであるか、又は20nm〜70nmであるのが好ましく、30nm〜60nmであるのがより好ましく、40nm〜50nmであるのが更に好ましい0nm〜80nmであるiHaze値を有するか、又はこれらの双方に該当することを特徴とする透明被膜。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明被膜において、
この透明被膜が、完全に非晶質であるのが好ましいほぼ非晶質であり、いかなるアナターゼ構造をも有してないのが好ましいルチル状の短範囲規則構造を有していることを特徴とする透明被膜。
【請求項7】
380nm〜3000nmとするのが好ましく、350nm〜2500nmとするのがより好ましく、400nm〜2000nmとするのが特に好ましく、420nm〜1500nmとするのが最も好ましい250nm〜5000nmの透過スペクトル波長範囲内の光を反射する透明干渉被膜であって、この透明干渉被膜が、透明とするのが好ましい基板上に、第1の被膜と、この又はこれらの第1の被膜より屈折率の低い第2の被膜とを交互に重ね合せて有している当該透明干渉被膜において、
前記第1の被膜が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明被膜であることを特徴とする透明干渉被膜。
【請求項8】
請求項7に記載の透明干渉被膜において、
前記第2の被膜に対する屈折率が、λ=550nmにおいてn=1.35〜n=1.80とするのが好ましく、n=1.44〜n=1.75とするのが最も好ましいn=1.32〜n=2.0であることを特徴とする透明干渉被膜。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明被膜及び請求項6又は7に記載の透明干渉被膜の少なくとも一方を有する特に高圧放電ランプとするランプにおいて、
前記透明被膜及び前記透明干渉被膜の双方又はいずれか一方が、ランプ管の内面及び外面の双方又はいずれか一方の上及び管壁内の双方又はいずれか一方に設けられていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項10】
本体を被覆するための請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度安定性のある透明被膜及び請求項7又は8に記載の透明干渉被膜の少なくとも一方の使用方法において、
前記本体が、ビーム形成装置、ビーム分割装置、光ファイバ部材、特にランプである照明媒体、ランプハウジング、ガスセンサ、特に断熱ガラスであるガラス、プラスチック、透明素子、フィルタ、レンズ、ミラー、特に透明フィルタシステムであるレーザーミラー、ホットミラー、コールドミラー、反射防止システム、帯域フィルタ、エッジフィルタ、低放射ガラスのような光情報技術における部材と、特に拡散障壁及びキャパシタ素子である電気部材のような電気用途に用いる本体とからなる群から選択したものであることを特徴とする使用方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のルチル構造を具える温度安定性のある透明被膜であって、チタン酸化物を有し、アルミニウム及びアルミニウム酸化物からなる群から選択した少なくとも1種の添加物を含む透明被膜の製造方法において、
チタン、チタン酸化物、アルミニウム及びアルミニウム酸化物から成る群から選択した少なくとも1つのターゲットから、規定可能な酸素分圧pで、20〜300℃の堆積温度で、特にスパッタリングとする気相堆積処理により、ルチル構造を達成したチタン酸化物を有する前記透明被膜を、被覆すべき基板面上に堆積することを特徴とする透明被膜の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−518809(P2006−518809A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502354(P2006−502354)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000129
【国際公開番号】WO2004/067791
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】