説明

アンダーフィル樹脂組成物およびこれを用いた半導体装置

【課題】 アンダーフィルにより樹脂封止された半導体チップを、樹脂残渣少なく且つ基板表面を傷つけることなく配線基板から取り外すことができるようにする。
【解決手段】 配線基板10上にはんだバンプ8を介して半導体チップ1が搭載され、封止樹脂9により封止されている半導体装置において、封止樹脂9にはシロキサン骨格を有する多層構造の粒子が添加されている。半導体チップ1をリペアする際には、加熱して封止樹脂9の密着強度を低下させた状態で剥離用プレート12を、配線基板10と半導体チップ1との隙間に挿入して〔(b)図〕、封止樹脂9を配線基板10から剥離し、半導体チップ1を取り除く〔(c)図〕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル樹脂組成物と、配線基板上に複数の半導体デバイスがフリップチップ接続により搭載され、それぞれの半導体デバイスがアンダーフィル樹脂組成物により樹脂封止されている半導体装置に関し、特にリペア性に優れた半導体装置を提供するためのアンダーフィル樹脂組成物およびこれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の急速な発達に伴い、LSIなどの半導体デバイスにはこれまで以上に高機能化が求められるようになった。半導体デバイスの多機能化に伴い半導体デバイスの入出力端子数は増加し、また半導体デバイスを高速動作させるための配線長は短縮化が求められている。こうした要求を実現するために開発された接続工法としてフリップチップ接続がある。フリップチップ接続は半導体チップの配線面にエリア上に接続パッドを設けることができるため多ピン化に適している。また、ワイヤボンディングやテープオートメイティッドボンディング(TAB)のような他の半導体チップ接続工法と比較し、引き出し線を必要としないため配線長の短縮化が可能である。一般にフリップチップ接続される高機能半導体デバイスの多くは高付加価値のものであり、またこれらの半導体デバイスが搭載される微細配線基板は高多層なものが必要となるため非常に高価であり、実装歩留まりを向上させるための要求は非常に強いものがある。
【0003】
以上のように高付加価値の電子機器に用いられる半導体デバイスの実装には、フリップチップ接続を使用したものが増加している。一方、フリップチップ接続される半導体デバイスの多くは、半導体デバイス−配線基板間の熱膨張差を緩和するため、接続部に封止樹脂とよばれる液状の封止剤を注入し硬化させることにより接続信頼性を確保する必要がある。この樹脂封止により、耐落下衝撃性、耐熱衝撃性、耐振動性、耐埃性、耐水性を向上させることができる。
【0004】
樹脂封止に用いられる材料にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等があるが、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、接着性、コスト等の面で優れているエポキシ樹脂が広く使用されている。エポキシ樹脂を含む多くの封止樹脂はその接着強度の高さのため、高い実装信頼性が確保できる反面、一度熱処理を施して樹脂を硬化させてしまうと、その高い樹脂強度、接着強度のため除去することが非常に困難となってしまう。したがって半導体デバイスあるいは配線基板の不良発生時に不良部品を交換することが非常に困難となり、実装コストが高くなるという問題がある。特にハイエンドサーバー、ハイエンドコンピュータ等、高付加価値な装置については、1枚の微細配線基板上に搭載される半導体デバイスが数十個に及ぶこともあり、1個の半導体デバイスの不良によりその他の良品部品全てが廃棄となってしまうことは非常に多額のコスト損失を招くことになる。
【0005】
半導体デバイスを実装する基板には主にセラミックを用いたものと有機材料を用いたものの2種類がある。高密度実装に用いられる配線基板の多くは、狭ピッチ化に優れ、軽量、低コストであることから有機材料を用いたものである。高密度配線基板の多くはビルドアップと呼ばれる積層構造をとっている(図1参照)。ビルドアップ配線基板はコア層とビルドアップ層の2つの部分からなっている。コア層は配線基板の反りを低減し、実装歩留まりを向上させる構造上の支持体としての役割と、電源層などの配線密度の低い層を受け持つことで高密度配線層を低い密度で使用することを可能ならしめ、配線密度のバランスをとる役割を果たしている。
【0006】
狭ピッチの配線を描くことのできる点で有利な有機基板材料には、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、フッ素を含むポリマー、ポリエステル、フェノール樹脂、フルオレン樹脂、ベンゾシクロブテン、シリコ−ン系ポリマー等様々な材料があるが、コスト、低熱膨張、低誘電損失、耐熱性等の面に優れるエポキシ樹脂が一般に用いられている。また配線基板の最外層には、はんだ流れ防止を目的としてソルダーレジストが塗布されている。このソルダーレジストの多くも基板材料や封止樹脂と同様にエポキシ樹脂であり、現在の有機配線基板の多くはエポキシ樹脂により形成されているといえる。
【0007】
次に、リペアを可能にする封止樹脂の従来技術について述べる。第1の方法として、封止樹脂に熱可塑性の成分を添加し、高温下にさらすことで樹脂の密着強度、あるいは樹脂強度を低下させ、半導体チップを取り外す工程と、基板上に残された残渣樹脂を高温下における可塑性を利用することにより除去する工程を含むコンセプトが考案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかし一般的な熱可塑性成分の添加に関しては、増粘やチキソ性(揺変性)発現による狭ギャップへの充填性の悪化、線膨張係数の増大による接続信頼性低下、耐マイグレーション性の低下等の性能劣化を招く場合が多く、充填性、接続信頼性、リペア性を同時に満足させることは困難である。
【0008】
その他の取り外し方法として、有機溶剤を用い、封止樹脂を膨潤させることで封止樹脂と配線基板の間の密着強度、樹脂強度を低下させ、半導体チップの取り外し、残渣樹脂の除去を行う方法が考案されている(例えば、特許文献2、4、5参照)。しかし現在用いられている封止樹脂および配線基板の多くは共にエポキシ樹脂であるため、樹脂残渣除去用の溶剤が封止樹脂のみでなく配線基板も膨潤させ、ビルドアップ基板の層間剥離を起こす恐れがある。さらに配線基板表面の状態が樹脂残渣除去用の溶剤により変化し、配線基板を再利用する際に封止樹脂の再充填性を悪化させる恐れがある。以上のように溶剤を用いた場合に配線基板に影響を与えずに封止樹脂のみを選択的に除去することは一般的には困難である。
【0009】
上記のような懸念から不良発生時に備えて、実装形態自体を再利用可能な構造とする方法も考案されている。この例として、半導体チップ実装時にインターポーザ構造を取り、不良発生時にははんだリフローによってインターポーザごと取り外してしまう方法が考案されている(例えば、特許文献6参照)。
しかし、インターポーザを用いた実装方法は、配線長が長くなるため一般的には信号の高速伝搬に不利であり、またインピーダンス整合をとるのが困難であるという欠点がある。また、インターポーザ構造をとることで実装面積、実装高さが増大し、小型化、高密度化との両立ができないという欠点がある。以上のようにインターポーザ構造をとることによる半導体デバイスのリペアは根本的な問題解決の手段としては不十分である。
溶剤を必要としない封止樹脂除去方法として、樹脂残渣に電磁波を照射することにより樹脂残渣を除去する方法(例えば、特許文献7参照)、レーザ光が透過する配線基板を実装時に用い、半導体チップの実装されている裏面からレーザ光を照射し、封止樹脂の密着力を弱める方法(例えば、特許文献8参照)等が考案されている。
しかし、現在用いられている封止樹脂および配線基板の基板材料の多くは共にエポキシ樹脂であるため、封止樹脂のみを選択的に加工することは難しく、また封止樹脂除去を可能にする程度の強度でレーザ光照射を行うと、配線基板の損傷および配線基板表面状態の変化により配線基板再利用時の封止樹脂再充填性を悪化させる恐れがある。また現在使用されている配線基板の多くはレーザ透過性を持っておらず、特許文献9の方法による問題解決は困難である。以上のように非接触のエネルギーを用いた方法による封止樹脂のみの選択的加工は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−323193号公報
【特許文献2】特開平11−274376号公報
【特許文献3】特開平9−221650号公報
【特許文献4】特開平10−67916号公報
【特許文献5】特開平7−102225号公報
【特許文献6】特開平4−124845号公報
【特許文献7】特開平6−77264号公報
【特許文献8】特開平4−257240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上述べたように、従来技術では配線基板に損傷を与えることなく半導体デバイスならびに封止樹脂を選択的に除去し、充填性、接続信頼性、リペア性のいずれをも同時に満足させることはできない。また、樹脂封止された半導体デバイスのリペアを困難にしている大きな原因の一つにリペア部品除去後に基板等の再生したい面に残った樹脂組成物を取り除くクリーニング工程での課題が挙げられる。一つ目の課題は、クリーニング作業中に再生面である基板表面を損傷してしまって再利用ができなくなることである。2つ目の課題は、たとえ再生面をきれいにできた場合でも、クリーニング時に生じた樹脂組成物の微細なカスが再生面の電極部に入り込んでしまい、部品再実装の際に電極部に入り込んだ樹脂組成物のカスの影響で接続不良を起こしてしまう問題である。3つ目の課題はクリーニング工程に多大な時間を要することである。樹脂組成物の除去についても、再生面を損傷しないように注意深い作業が要求されることは勿論であるが、前記の微細な電極部に入り込んだ樹脂組成物のカスを取り除く必要が生じた場合は、数多くの電極についてそれぞれ除去作業を実施する必要があり、その手間は莫大なものとなる。
【0012】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、リペアしたい半導体デバイスを除去する際、半導体デバイスや配線基板を損傷することなく、リペアしたい箇所の樹脂組成物の大部分を再利用する基板等の界面から剥離させることで樹脂残りを最小限に抑え、クリーニング工程を簡単確実に行うことが可能となるリペア方法を提供することである。さらに複数の半導体デバイスが隣接して実装された場合においても、リペアしたいデバイスのみを確実に除去可能なリペア方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、配線基板とそれに搭載された半導体デバイスとの間を充填するために用いられるアンダーフィル樹脂組成物であって、シロキサン骨格を有する多層構造の粒子が添加されていることを特徴とするアンダーフィル樹脂組成物、が提供される。
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、配線基板に1ないし複数の半導体デバイスが、それぞれに形成されたパッド同士が導電性バンプを介して接続される態様にて、実装され、前記半導体デバイスと前記配線基板との隙間が封止樹脂により充填されている半導体装置あって、前記封止樹脂にはシロキサン骨格を有する多層構造の粒子が添加されていることを特徴とする半導体装置、が提供される。
そして、好ましくは、前記多層構造の粒子は、コア部の硬度がシエル部のそれより小さい多層構造の粒子である。
【発明の効果】
【0014】
多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した封止樹脂を使用することにより、加熱により容易に封止樹脂の密着強度を低下させることが可能になり、プレ−トを使用した半導体デバイスの除去作業時に封止樹脂は基板面より容易に剥離されるようになり、半導体デバイスの分離後に基板上の再生したい面に残存する樹脂成分をほとんど無くすことが可能になる。したがって、半導体デバイス除去に続く基板面のクリーニングが容易になり、基板面の再生を確実にすることができ、リペア作業を短時間で簡単にかつ確実に行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】半導体チップをビルドアップ配線基板上にフリップチップ接続し、本発明のアンダーフィル樹脂組成物を充填した半導体装置の断面図。
【図2】本発明の半導体装置のリペア方法を示す工程順の断面図。
【図3】本発明の半導体装置のリペアに用いる剥離用プレートの平面図と部分断面図。
【図4】配線基板上に複数の半導体チップが搭載された場合において、ホットエアにより局部加熱する様子を示す模式図。
【図5】配線基板上に複数の半導体チップが搭載された場合において、ヒータブロックにより局部加熱する様子を示す模式図。
【図6】配線基板上に複数の半導体チップが搭載された場合において、ホットエアにより局部加熱しながら、隣接チップを冷却ブロックにより局部冷却する様子を示す模式図。
【図7】配線基板上に複数の半導体チップが搭載された場合において、隣接する半導体チップを封止する樹脂が連結した場合のリペアを説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の半導体装置の一例として、LSIなどの複数の半導体デバイスを1枚のビルドアップ配線基板にフリップチップ実装したモジュール(MCM)の例を示す(但し、図1にはフリップチップ実装された半導体チップの内一個のみを示す)。ビルドアップ配線基板3には、感光性樹脂層、プリプレグ硬化層等からなる絶縁層4が1ないし複数層(図示した例では2層)形成されており、絶縁層4上には配線5が形成されている。ビルドアップ配線基板3の表面にはソルダーレジスト7が形成されており、最上層の配線5のソルダーレジスト7に被覆されない領域は、基板側パッド6となっている。半導体チップ1にはチップ側パッド2が形成されており、チップ側パッド2と基板側パッド6とははんだバンプ8により電気的に接続されている。そして、半導体チップ1とビルドアップ配線基板3の隙間には、封止樹脂(アンダーフィル樹脂)9が充填されている。図1には、半導体デバイスとしてフリップチップが示されているが、本発明においてリペアの対象となる半導体デバイスは、フリップチップに限定されず、配線基板上に導電性バンプを介して接続されるデバイスであれば、ベアチップ、CSP(chip size package)、BGA(ball grid array)等でいずれであってもよい。
半導体チップなどのデバイスとビルドアップ配線基板の間の電気接続を取る材料ははんだ材料のみに限るものではなく、導電性を有する材料であれば特に限定されない。例えば導電粒子を分散させた導電性樹脂による接続、あるいは金バンプの導電性塗料ないしはんだによる接続等であってもよい。なお、本明細書においてバンプとは、はんだボールのような導電性ボールをも含むものである。
ビルドアップ配線基板の表面を覆っているソルダーレジスト、コア材等の配線基板を構成している有機ならびに無機材料については、金属配線、接続パッド等に対し、腐食性等の悪影響を及ぼさない材料を選択する必要があり、また半導体デバイスのリペア工程に耐える耐熱性を有することが望ましい。例えば一般的に使用される鉛フリーはんだのリフロー温度250℃のプロセスにおいて、配線基板、半導体デバイス、電子部品等に対して悪影響を及ぼさないものが望ましい。
【0017】
アンダーフィル樹脂の基材となる材料には、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、フルオレン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シリコーン樹脂等様々な材料があるが、特に限定されるものではなく、これらを1種あるいは2種以上組み合わせて用いることもできる。粘度、コスト、耐熱性等の面に優れるエポキシ樹脂が一般に用いられるが、25℃の室温において液状である樹脂が望ましい。
【0018】
半導体デバイスを取り外すための加熱温度(以下、リペア温度)での封止樹脂の密着性を低下させるための手段の1例として、アンダーフィル封止樹脂にシロキサン骨格を有する多層粒子を添加することが有効であるが、多層粒子についてさらに詳細に説明すると、コア部分の硬度がシエル部分の硬度よりも低くなるように設計されている。たとえば2層の粒子を用いる場合、好適なコア部の硬度は75未満であり(スプリング式硬さ計JIS-A形JISK6301)、シエル部の硬度は75以上であるが、より好適にはコア部の硬度を40以下に設定することが望ましい。コア部の硬度を小さく設計した場合、低弾性化の効果が大きくなる。この効果により、リペア温度における樹脂密着性を低下させることができる。
アンダーフィル封止樹脂に添加するシロキサン骨格を有する多層粒子は、コア部の体積比率がシエル部分の体積比率よりも高い構造となっている。具体的にはコア部の体積比率がシエル部の体積比率の1.5倍以上、より好ましくは2倍以上大きい場合に、低弾性化効果と線膨張を抑える効果がより強く現れる。
アンダーフィル封止樹脂に添加するシロキサン骨格を有する多層粒子は、シエル部のガラス転移温度がコア部のガラス転移温度よりも高い構造となっている。具体例の一つとしてコア部のガラス転移温度が−80℃、封止樹脂母材が110℃、シエル部のガラス転移温度が260℃の構成で用いた場合、封止樹脂充填時の増粘がなく、また180℃を超えるリペア温度域において配線基板に損傷を与えることなく封止樹脂のクリーニングができた。現行のLSIチップの動作温度105℃を想定した場合の信頼性への影響、リペア時の作業性から、コア部のガラス転移温度は100℃未満かつシエル部のガラス転移温度が125℃以上であることが望ましい。コア部分のガラス転移温度点がこれ以上に高い場合にはリペア性が損なわれる傾向が強く、またシエル部分のこれ以上のガラス転移温度低下は半導体デバイスの熱サイクル試験に用いられる温度上限を下回るからである。こうした設計により、リペア性と信頼性の両立が実現できる。
【0019】
アンダーフィル封止樹脂に加えるシロキサン骨格を有する多層粒子は球状であることが望ましく、添加量としては1〜30vol%程度が望ましい。より好ましくは15〜25vol%程度の添加が望ましい。球状以外の粒子添加は増粘等傾向が強く、またこれ以上の添加は粘度増加、チキソ性発現による充填性の悪化が見られる場合が多いため、半導体デバイスと配線基板の間の狭ギャップに対する充填性を損なうことになる。
アンダーフィル封止樹脂に添加されるシロキサン骨格を有する多層粒子の平均粒子径は、充填される半導体デバイス−配線基板間ギャップの1/10以下のサイズのものが好適であり、平均粒径が0.1〜30μm程度の範囲にあることが望ましい。また、シリコーン粒子の粒径、硬度等のパラメータにより低線膨張化に与える効果は異なる。たとえば同種のシリコーン原料を用いてシロキサン骨格を有する多層粒子を形成し、平均粒径0.5μmの粒度分布を有する粒子、平均粒径3μmの粒度分布を有する粒子、平均粒径5μmの粒度分布を有する粒子を封止樹脂に添加した場合の線膨張係数に与える影響においては、粒子径5μmのものに、より強く線膨張係数の増大を抑える効果が見られた。
【0020】
アンダーフィル封止樹脂に添加される無機フィラーにはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニウム、酸化チタン等様々な材料が用いられるが、コスト、真球度、低線膨張化等のメリットが最も顕著なシリカを用いることが多い。添加するシリカの平均粒子径は充填される半導体デバイス−配線基板間ギャップの1/10以下のサイズのものが好適であり、平均粒径が0.1〜30μm程度の範囲にあることが望ましい。また、これらの無機添加剤の表面には封止樹脂との濡れ性を改善し、充填性を高めるためにカップリング剤を用いてもよい。カップリング剤はシラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミネート系、クロメート系、ボレート系、スタネート系、イソシアネート系等といった共有結合性タイプのものや、β−ジケトンカプラーのように配位結合性のものなど各種用いることができる。
【0021】
以上に述べた手法により、リペア温度での密着強度を低下させたアンダーフィル樹脂を用いて封止された半導体デバイスをリペアする際のプロセス例について、図2を参照して説明する。図2(a)に示される配線基板10上に搭載された半導体チップ1を取り外すものとする。配線基板10の表面には、ソルダーレジスト7に区画されて基板側パッド6が形成されており、この基板側パッド6には、半導体チップ1に形成されたチップ側パッド2がはんだバンプ8により電気的に接続されており、そして配線基板10と半導体チップ1の隙間には封止樹脂9が充填されている。取り外しのために、まず、半導体チップ1をホットプレート(図示せず)等によりリペア温度まで加熱する。リペア温度については、はんだバンプのように金属結合している場合は、バンプが溶融する融点温度以上まで加熱する必要がある。一例を示すと、共晶はんだであれば、183℃以上、鉛フリ−はんだ(Sn−3Ag−0.5Cu)では220℃以上となるが、実際には全てのはんだバンプが確実に溶融している必要があるので、融点温度より、20℃以上高めに設定することが望ましく、その際の封止樹脂の密着強度は、350gf/mm(3.43N/mm)以下、より好ましくは345gf/mm(3.38N/mm)以下であることが望ましい。また、バンプ自体が金属結合等で一体になっているわけではなく、封止樹脂の接着力等により単に接触している場合においては、封止樹脂の密着強度が350gf/mm以下となる温度に設定すればよい。さらに導電性接着剤等をバンプとして使用している場合は、導電性樹脂バンプの密着強度および封止樹脂の密着強度が共に350gf/mm以下となる温度でリペアすることが望ましい。封止樹脂の密着強度が350gf/mm以上の場合で、350gf/mmより十分大きい場合は、半導体チップ除去時に基板を損傷する。350gf/mmよりわずかに大きい場合は、半導体チップの除去は成功するが、封止樹脂が再生したい基板表面の電極部付近にも残るため、この樹脂を後のクリーニング工程で除去しようとした場合、基板損傷が生じたり電極部に樹脂のカスが入り込むことによる再実装工程での接続不良が発生する可能性が高くなる。ここで、半導体チップを配線基板より除去する際に必要な図3に示す剥離用プレート12を準備する。図3(a)は剥離用プレート12の平面図、図3(b)はそのA−A線での断面図である。剥離用プレートの材質は、リペア温度で封止樹脂よりも十分に強いことが望ましく、一例としてはSUS等の金属が挙げられるがこれに限定されるものではない。剥離用プレート12の幅Wは、リペアする半導体チップの幅と同程度であることが目安となるが、隣接部品がない場合は半導体チップよりやや大きめの幅とし、隣接部品がある場合は半導体チップよりやや小さめの幅とすることが望ましい。剥離用プレートの厚さtについては、半導体チップと配線基板の隙間に挿入する関係上、半導体チップと配線基板の隙間より薄いことが必要である。剥離用プレートの長さLは半導体チップの長さよりも長くし、半導体チップの末端まで剥離用プレートを挿入できるようにすることが望ましい。剥離用プレート12の先端のコーナ部12aの形状は直角でもよいが、基板表面の状態等によっては剥離用プレート挿入中にプレートコーナ部にて基板表面を傷つける可能性があるため、丸みのある形状に加工しておくことが望ましい。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、半導体チップ1と配線基板10の隙間を封止している樹脂の側面に対して、配線基板表面に沿って剥離用プレート12を挿入していく。挿入直後は、側面外周の封止樹脂を破壊することとなるが、さらに少しずつ剥離用プレートを挿入するとすぐに樹脂が破壊された際に生じた樹脂クラックは封止樹脂9と基板の界面剥離に進展するため、その後は剥離プレート12先端を利用してさらに界面剥離を進行させ、最終的には剥離用プレート先端を挿入辺の反対側の辺まで到達させることにより、リペアしたい半導体チップを配線基板から除去することができる。
この際、図2(c)に示すように、配線基板上には半導体チップの搭載エリア外周にわずかに樹脂残渣13が残るが、基板表面の他の部分には樹脂の残渣なく、表面から封止樹脂をきれいに剥離することができる。このとき、基板側パッド6上には残留はんだ14が薄く残る。
最後に、図2(d)に示すように、半導体チップの搭載エリア外周にわずかに残った樹脂をクリーニングにより除去するが、その方法の一例として、常温にてDMF(ジメチルホルムアミド)等の溶剤を用いながら、綿棒等でこすり落とすことにより、基板上に残った樹脂を完全に除去することができる。この状態で半導体チップの再搭載が可能となるが、基板側パッドを含めた基板表面は、DMF(ジメチルホルムアミド)アルコール等で表面をふき取ると微細な汚れ等が落ち、安定した再実装を行うために効果的である。
【0023】
なお、剥離用プレートを挿入する際、挿入開始時は封止樹脂表面を破壊し、樹脂内部へプレート先端を侵入させる必要があるため、プレート先端は鋭利な形状で材質は金属製である方が作業性がよいが樹脂と基板界面の剥離が発生した後は、場合によっては基板表面の凹凸等のある個所で基板を傷つける可能性があるので、図3(b)に示すように、剥離用プレート12の先端部12bは丸く加工しておくことが望ましく、またプレートの材質も可能な限りやわらかい方がよい。そこで挿入開始時はプレート先端が鋭利なものを使用し、樹脂表面を破壊した後は剥離用プレートを交換し、先端が丸く材質も基板材質と同等のものを使用すると効果的である。また、金属プレートの先端部に耐熱性のある樹脂、例えばポリイミド等のコーティングやテープを貼る等も基板表面の保護に効果がある。
【0024】
次に、複数の半導体チップが搭載された基板で不良の半導体チップのみをリペアしたい場合の方法について述べる。全体を加熱ながらリペアしたい半導体チップのみを除去してもよいが、部品の耐熱性等の問題で必要以上に加熱したくない場合、リペアしたい半導体チップのみを局部加熱することが有効である。例えば、図4に示すように、リペア対象の半導体チップ11にのみエアノズル15よりホットエア16を噴射して、局部加熱を行う。この方法により、リペアしたい半導体チップが所定の温度に達した後、前述した方法によって、リペア対象の半導体チップ11を取り外すことで他部品の熱ストレスを低減することができる。
【0025】
また、図5に示すように、リペア対象の半導体チップ11にのみヒータブロック17を接触させて、局部加熱を行ってもよい。
なお、図4、図5に示した加熱方法は、チップ取り外し時のみでなく半導体チップの再実装にも利用することで、他部品の熱ストレスを低減することができる。
また、リペアしたい半導体チップに局部加熱を施すとともに近接する部品を冷却するのも、他の部品の熱ストレスを低下させるのに効果がある。例えば、図6に示すように、リペア対象の半導体チップ11にのみエアノズル15よりホットエア16を放射すると共に、近隣の半導体チップ1には金属製の冷却ブロック18を接触させる。この例では冷却の際に冷却ブロックを接触させるものであるが、他の例としてゲル状の材料を接触させたり、室温以下のエアを吹きつける方法等であってもよい。
【0026】
複数の半導体チップが近接配置された場合、それぞれの半導体チップを封止している樹脂がつながってしまうことがある。図7(a)は、リペア対象の半導体チップ11の封止樹脂9と隣接する半導体チップ1の封止樹脂9とが連結した場合を示したものである。この場合、不良側の半導体チップ11の封止樹脂の基板界面をきれいに剥離させることができても、封止樹脂がつながっているためにリペア対象でない良品の半導体チップ1側に樹脂剥離等の損傷を与えてしまう可能性がある。これを回避するには、図7(b)に示すように、連結した封止樹脂間に切り込み19を入れるのがよい。このようにすることにより、チップ取り外し時の樹脂剥離の進行を切り込み箇所にて分断させ、隣接部品への悪影響を防止することができる。この際の樹脂に切れ込みを入れる手段としては、加熱した後に先端が鋭利な金属等で行ってもよいし、常温にて切り込み深さを調整可能な電動カッター等を用いてもよい。切り込みの深さについては、樹脂厚さの半分以上であることが望ましく、さらには基板表面ぎりぎりであればより効果的である。
以下に本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
まず、エポキシ樹脂のリペア温度における密着性を低下させるための検討を実施した。エポキシ樹脂母材に対し、異なる種別の粒子を添加したアンダーフィル樹脂組成物を試作した。多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した組成A、ポリブタジエン系粒子を添加した組成B、アクリル系粒子を添加した組成C、前記の有機粒子未添加の組成Dを下記表に示す割合で混合し、その線膨張係数、弾性率を測定した。結果を表1に示す。なお、表1において、α1はガラス転位温度以下の温度での線膨張係数、α2はガラス転位温度以上の温度での線膨張係数である(表5においても同じ)。本発明の多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した組成Aは、組成B、組成Cと比較し、多量の有機フィラー添加にもかかわらず、線膨張係数を増加させることがない。また、有機フィラーは添加せず無機フィラーのみ他と同量添加した組成Dと比較し、リペア時に必要となる弾性率を低くすることができた。すなわち、本発明の方法により、耐ヒートサイクル性確保に必要な低線膨張係数と、リペア時に必要な低弾性を両立させることができた。なお、表1に示す線膨張係数のデータは3回以上の繰り返し測定を行い、平均した値を記載したものである。
【0028】
【表1】

【0029】
エポキシ樹脂母材に対し、シリコーンフィラーを下記表2に示す割合で添加し、粘弾性測定を実施した。その結果、シリコーンフィラーの添加はガラス転移温度の大幅な低下を生じさせることなく、アンダーフィル封止樹脂の弾性率を低下させることができた。
【0030】
【表2】

【0031】
エポキシ母材に対し異なる種別の粒子を添加したアンダーフィル樹脂組成物を試作した。多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した組成A、多層構造を持たないシリコーンゴム粒子を添加した組成E、アクリル系粒子を添加した組成Cを下記に示す割合で混合し、その粘度、チクソトロピー指数、浸透性を測定した結果を、表3に示す。結果、多重シロキサン骨格を有する粒子を用いることにより、低粘度、低チクソトロピー指数で、浸透性を向上させることができた。
【0032】
【表3】

【0033】
樹脂のリペア温度における密着強度の測定を行った。評価方法は、利昌工業(株)製ガラスエポキシ材CS−3357sの表面に太陽インキ製造(株)製のソルダーレジストPSR−4000CC02をコートした基板材料を準備した。この基板材料を2mm角に切断し、同様の基板材料の上に評価対象となるエポキシ樹脂にて接着し、エポキシ樹脂を十分に硬化した試料を用いた。評価に使用した樹脂は、ビフェニル系エポキシ樹脂に多層シロキサン骨格を有する粒子を25vol%添加したものを組成F、有機粒子未添加のビフェニル系エポキシ樹脂を組成G、有機粒子未添加のナフタレン系エポキシ樹脂を組成Hとした。これらの試験片を25℃及びはんだ溶融温度に合わせたリペア温度である240℃にてシェア(shear)試験により、各樹脂の密着強度測定を行った。試験数は各温度について9としたが、組成Fの240℃に関しては、3倍の27とした。結果を表4に示す。



















【0034】
【表4】

(単位:N)
【0035】
結果の中で数字の後に以上と記載があるものは、測定器の上限値を超えても剥離しなかったものであり、正確な密着強度を測定することはできなかったものである。
結果は、ナフタレン系エポキシ樹脂の組成Hとビフェニル系エポキシ樹脂の組成Gを比較した場合、25℃、240℃ともにナフタレン系エポキシ樹脂の組成Hの密着強度が強いことが確認できた。ビフェニル系エポキシ樹脂に多層シロキサン骨格を有する粒子を25vol%添加した組成Fと有機粒子未添加のビフェニル系エポキシ樹脂である組成Gを比較した場合、リペア温度での密着強度の平均値が70%程度となっており、多層シロキサン骨格を有する粒子を添加することにより、リペア温度での密着性を低下させる効果があることを確認した。なお、組成Fの240℃における単位面積あたりの密着強度の最大値は、353gf/mmであった。
【0036】
以下に、実際に半導体チップを使用したリペアの実施例を示す。なお、リペア実験に使用したビフェニル系エポキシ樹脂に多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した樹脂の詳細を表5に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
実験に使用した半導体チップはサイズが13mm×18mm、ピッチは0.8mm、電極数は66である。半導体チップのバンプは、Sn−3Ag−0.5Cuの鉛フリーはんだを使用した。次に、半導体チップをビルドアップ配線基板上に実装する方法について述べる。フラックスを均一に薄く塗布したガラス板上に半導体チップのはんだバンプ先端を押しつけた状態で所定の荷重でのせた後に剥がし、半導体チップのはんだバンプ先端にフラックスを転写する。引き続きビルドアップ配線基板上に、半導体チップをフリップチップマウンタにて位置あわせし、搭載した後ピーク温度240℃のリフロー炉にてはんだリフローを行い、ビルドアップ配線基板と半導体チップを接続することができた。なお、半導体チップとビルドアップ配線基板との隙間は約250μmである。
得られた半導体チップ搭載済みのビルドアップ配線基板をアルコール中で揺動し、半導体チップとビルドアップ配線基板間の隙間に残るフラックス残渣を洗浄した。得られた洗浄済みの実装品を125℃のオーブン中で2時間ベーキングし、フラックス洗浄に用いたアルコールを乾燥させた。
さらに乾燥済みパッケージをホットプレート上で加温し、ビルドアップ配線基板の表面温度が100℃であることを確認した後、樹脂塗布装置を用いて半導体チップの側面より樹脂組成物を供給した。この際、封止樹脂組成物は毛細管現象により半導体チップの下面を流動し、約250μmのギャップにボイドが発生することなく充填することができた。
【0039】
樹脂の充填が完了した実装品を150℃大気雰囲気中で約1時間硬化させることで、半導体チップの実装を完了した。
このようにして得られた半導体装置を用いて、半導体チップをビルドアップ配線基板よりリペアする実験を試みた。
ホットプレート上に半導体チップ実装面を上にして置き、基板表面がはんだバンプの溶融温度である240℃になるように加熱した。まず、リペア方法として本発明の剥離用プレートを使用する方法にて、リペア実験を行なった。
リペア実験に使用した剥離用プレートは、幅22mm、長さ130mm、厚さが0.15mmで材質はSUS420である。ビルドアップ配線基板が動かないように押さえながら、半導体チップの幅13mmの辺の封止樹脂フィレット部に剥離用プレート幅22mmの先端を当てて配線基板表面に沿って押し込み、封止樹脂側面を破壊して、さらに剥離用プレートを少しずつ挿入した。剥離用プレートを挿入すると樹脂が破壊された際に生じた樹脂クラックは封止樹脂と基板の界面剥離に進展し、そのまま剥離用プレートを挿入し続けてさらに界面剥離を進展させ、最終的には剥離用プレート先端を挿入辺の反対側の辺まで到達させることにより、半導体チップをビルドアップ配線基板から除去することができた。この段階でビルドアップ配線基板上を観察してみると、基板上の樹脂残渣は半導体チップ周辺の樹脂フィレット部でわずかに残る程度で、電極パッド部では基板界面からきれいに剥離していることが確認された。わずかに残った樹脂残渣は、常温でDMF(ジメチルホルムアミド)を用いながら綿棒にてこする等のクリーニングを施すことにより、基板表面から除去することができた。再生したビルドアップ配線基板に新たな半導体チップを前述した方法により、再実装してみたが問題なく実装することができた。以上の結果から、剥離用プレートを使用した本発明のリペア方法により、リペアが可能であることを確認した。
また、前記リペア評価はホットエアによる局部加熱方式も含め、5個実験を行ったが、いずれの試料についても全て同様に基板界面から半導体チップを除去することができた。
【0040】
次に、ピンセットを用いた取り外し実験を行なった。前述した方法と同様に実装品を240℃まで加熱した後、ピンセット先端を半導体チップの側面に引っ掛けた後、半導体チップを持ち上げるようにして基板から引き剥がした。するとビルドアップ配線基板上には、多数の電極エリアも含め、面積比で50%以上樹脂が残っており、基板界面で樹脂剥離させることはできなかった。
また、前述の樹脂密着強度試験に使用した有機粒子未添加のビフェニル系エポキシ樹脂と有機粒子未添加のナフタレン系エポキシ樹脂を用いて、前述した剥離用プレートを用いたリペア実験と同様の条件でリペア実験を実施した。まず、密着強度が強いナフタレン系エポキシ樹脂の場合では、剥離用プレートを樹脂側面に押し当てた後の樹脂破壊が困難であったが、さらに強い力で剥離用プレートを挿入したところ、ビルドアップ基板表面の大部分のソルダーレジストが剥離する基板破壊が発生した。
【0041】
次に、有機粒子未添加のビフェニル系エポキシ樹脂で剥離用プレートを用いたリペア実験を実施した結果は、基板を破壊することなく、半導体チップを取り外すことができたが、基板上に50%程度の面積比で樹脂残渣が発生し、さらに樹脂除去を試みたところ、部分的にビルドアップ基板表面のソルダーレジストが剥離する基板破壊が発生した。この結果に関しては、有機粒子未添加のビフェニル系エポキシ樹脂の場合、240℃における樹脂の密着強度とリペア性を比較した場合、非常に微妙な関係にあることと、前記した樹脂密着強度測定結果からもわかるように密着強度に多少のバラツキが生じるためにこのような結果になったと考えることができる。つまり、密着強度が低い箇所では基板界面から樹脂が剥離するが、密着強度が高い箇所では樹脂が基板に残り、樹脂除去時のソルダーレジスト剥離に至ったのである。
【0042】
以上の結果より、ビフェニル系エポキシ樹脂に多層シロキサン骨格を有する粒子を添加したアンダーフィル樹脂が、リペアに対して効果的であることと、樹脂の密着強度が350gf/mm以下となる条件で剥離用プレートを用いたリペアを行なうことで、基板界面から封止樹脂を剥離させることが可能であることを確認した。
ビフェニル系エポキシ樹脂に多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した樹脂による信頼性評価を行なった。封止なし、封止あり(リペアなし)、封止あり(リペアあり)の3種のパッケージを、それぞれ10セット(10p)ずつ作製した。得られたパッケージを−25℃〜125℃の温度条件(各槽10分保持、中間保持なし)の温度サイクル試験槽に投入し、電気抵抗をモニターした結果、封止なしの試料は50〜400サイクルでパッケージ全数に高抵抗化不良が検出されたのに対し、封止ありのサンプル20試料については、半導体チップをリペアし、再搭載したパッケージについても1500サイクルを超える耐熱サイクル信頼性を確認することができた。
【0043】
【表6】

【0044】
信頼性試験完了後の半導体装置を断面観察し、はんだ接続部周辺の封止樹脂の充填状態を観察した。その結果、シロキサン骨格を2層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂硬化後においても球形を維持していることが確認できた。シロキサン骨格を2層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂の硬化温度において溶融せず、また封止樹脂の母材となるエポキシ樹脂と相溶していないことを確認した。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体チップ
2 チップ側パッド
3 ビルドアップ配線基板
4 絶縁層
5 配線
6 基板側パッド
7 ソルダーレジスト
8 はんだバンプ
9 封止樹脂
10 配線基板
11 リペア対象の半導体チップ
12 剥離用プレ−ト
13 樹脂残渣
14 残留はんだ
15 エアノズル
16 ホットエア
17 ヒータブロック
18 冷却ブロック
19 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板とそれに搭載された半導体デバイスとの間を充填するために用いられるアンダーフィル樹脂組成物であって、シロキサン骨格を有する多層構造の粒子が添加されていることを特徴とするアンダーフィル樹脂組成物。
【請求項2】
配線基板に1ないし複数の半導体デバイスが、それぞれに形成されたパッド同士が導電性バンプを介して接続される態様にて、実装され、前記半導体デバイスと前記配線基板との隙間が封止樹脂により充填されている半導体装置あって、前記封止樹脂にはシロキサン骨格を有する多層構造の粒子が添加されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記多層構造の粒子は、コア部の硬度がシエル部のそれより小さい多層構造の粒子であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記多層構造の粒子のコア部が線状ポリマーによって構成され、シエル部が3次元ポリマーによって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置のリペア方法。
【請求項5】
前記多層構造の粒子のコア部がシリコーンゴムであり、シエル部がシリコーンレジンであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置のリペア方法。
【請求項6】
前記封止樹脂がエポキシ樹脂を含有していることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169684(P2012−169684A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134984(P2012−134984)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2005−269665(P2005−269665)の分割
【原出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】