説明

アンテナ装置、受信装置、受信システム、アンテナ設置方向判定方法及びプログラム

【課題】アンテナの設置方向が変位していることを、降雨減衰、受信装置の不具合及びケーブルの劣化等の影響を受けずに検知するアンテナ装置、受信装置、受信システム、アンテナ設置方向判定方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】方向センサ12をアンテナ11に取り付ける。アンテナ設置時に、受信レベルが視聴可能なレベルになるアンテナ11の設置方向を、受信可能範囲として記憶しておく。視聴中にアンテナ11の設置方向が受信可能範囲を外れた場合には、画面に警告を出すなどしてユーザにそのことを伝える。これにより、降雨減衰、受信装置の不具合及びケーブルの劣化等の影響を受けずに、アンテナ11の設置方向が変位していることを検知し、ユーザにアンテナ11の設置方向の調整が必要であることを伝えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向検知手段をアンテナに取り付けたアンテナ装置、受信装置、受信システム、アンテナ設置方向判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ受信機に入力される電波の受信信号の強度が低下する場合には、テレビ受信機の映像・音声は劣化するか、又は受信不能となる。この受信信号の強度低下の原因として、アンテナの設置方向の変位、降雨減衰、受信装置の不具合及びケーブルの劣化等がある。降雨減衰とは、電波エネルギーの一部が雨滴によって吸収・散乱されて減衰する現象である。
【0003】
特許文献1には、アンテナの設置方向が変位したことを知らせる受信装置が開示されている。この受信装置は、電波の受信信号の強度が最大となるアンテナの設置方向を見つけ出して、この設置方向の受信信号の強度を記憶手段に記憶する。そして、前記受信装置の電源を入れた時に検知される受信信号の強度を前記記憶手段に記憶されている受信信号の強度と比較し、その差分が一定値を超えたときに、前記アンテナの設置方向について調整を必要とする旨の警告を発するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−58331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の受信装置では、降雨減衰により受信強度が低くなった場合でも警告が出てしまう。つまり、警告の出た原因がアンテナの設置方向の変位なのか、アンテナの設置方向の変位以外の原因なのか判別がつかない。
【0006】
電波の受信強度の低下には複数の原因があるため、受信信号の強弱のみからアンテナの設置方向変位を検知する従来の方法には原理的に無理がある。そこで、本発明はアンテナ自体に方向検知手段を設置することで、アンテナの設置方向変位を直接検知するものである。
本発明の目的は、降雨減衰、テレビ受信機の不具合及びケーブルの劣化等の影響を受けずに、アンテナの設置方向がアンテナ設置時の方向から変位しているときにのみ、警告をユーザに知らせることが可能なアンテナ装置、受信装置、受信システム、アンテナ設置方向判定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るアンテナ装置は、アンテナの設置方向を検知し、検知した設置方向を示す方向信号を出力する方向検知手段と、該方向検知手段が出力した方向信号及びアンテナの受信信号を重畳する信号重畳手段とを備え、該信号重畳手段が重畳した信号を出力するように構成してあることを特徴とする。
【0008】
第2の発明に係る受信装置は、アンテナの設置方向を示す方向信号及びアンテナの受信信号が重畳された信号を取り込む取込手段と、該取込手段が取り込んだ信号を、アンテナの設置方向を示す方向信号とアンテナの受信信号とに分離する信号分離手段と、該信号分離手段により分離された方向信号が示すアンテナの設置方向を記憶する記憶手段と、前記信号分離手段により分離された方向信号が示すアンテナの設置方向が、前記記憶手段に記憶したアンテナの設置方向又は該設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第3の発明に係る受信装置は、前記判定手段による判定結果を示す映像を生成する手段を備えることを特徴とする。
【0010】
第4の発明に係る受信システムは、第1の発明に係るアンテナ装置と、第2の発明又は第3の発明に係る受信装置とを含み、前記アンテナ装置が出力した信号を前記受信装置が取り込む構成としてあることを特徴とする。
【0011】
第5の発明に係るアンテナ装置は、アンテナの設置方向を検知する方向検知手段と、該方向検知手段により検知されるアンテナの設置方向を記憶する記憶手段と、前記方向検知手段により検知されるアンテナの設置方向が、前記記憶手段に記憶したアンテナの設置方向又は該設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定する判定手段とを備え、該判定手段による判定結果を示す信号を出力する構成としてあることを特徴とする。
【0012】
第6の発明に係る受信システムは、第5の発明に係るアンテナ装置と、該アンテナ装置が出力した信号を取り込む受信装置とを備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明に係るアンテナ設置方向判定方法は、アンテナの設置方向を検知する方向検知ステップと、該方向検知ステップにより検知されるアンテナの設置方向を記憶する記憶ステップと、前記方向検知ステップにより検知されるアンテナの設置方向が所定の条件を満たすか否かを、前記記憶ステップにより記憶したアンテナの設置方向に基づいて判定する判定ステップとを備えることを特徴とする。
【0014】
第8の発明に係るアンテナ設置方向判定方法では、前記判定ステップは、前記方向検知ステップにより検知されるアンテナの設置方向が、前記記憶ステップにより記憶したアンテナの設置方向又は該設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする。
【0015】
第9の発明に係るアンテナ設置方向判定方法は、前記判定ステップによる判定結果を示す映像を生成するステップを備えることを特徴とする。
【0016】
第10の発明に係るプログラムは、アンテナの設置方向が格納されているコンピュータに、アンテナの設置方向の変位を判定させるプログラムであって、コンピュータに、前記変位の判定対象であるアンテナの設置方向が、コンピュータに格納されているアンテナの設置方向にあるか否かを判定するステップと、該ステップにより判定された判定結果を出力するための所定処理をするステップとを実行させることを特徴とする。
【0017】
第11の発明に係るプログラムは、アンテナの設置方向が格納されているコンピュータに、アンテナの設置方向の変位を判定させるプログラムであって、コンピュータに、前記変位の判定対象であるアンテナの設置方向が、コンピュータに格納されているアンテナの設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定するステップと、該ステップにより判定された判定結果を出力するための所定処理をするステップとを実行させることを特徴とする。
【0018】
第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9、第10及び第11の発明にあっては、アンテナの設置方向を検知する方向検知手段がアンテナ装置に備えられている。そして、前記アンテナ装置の信号重畳手段は前記方向検知手段が検知したアンテナの設置方向を示す方向信号とアンテナの受信信号とを重畳した信号を生成して出力する。該信号は受信装置の取込手段により前記受信装置へ取り込まれ、前記受信装置の信号分離手段によりアンテナの方向信号と受信信号とに分離される。該分離手段により分離された方向信号が示すアンテナの設置方向は、前記受信装置の記憶手段に記憶される。前記分離手段により分離された方向信号が示すアンテナの設置方向は、前記記憶手段に記憶したアンテナの設置方向と同じ方向にあるか否か、又は前記設置方向によって画定される範囲内にあるか否か前記受信装置の判定手段により判定される。前記判定手段による判定結果を示す映像が生成される。
【0019】
第5、第6、第7、第8、第9、第10及び第11の発明にあっては、アンテナの設置方向を検知する方向検知手段がアンテナ装置に備えられている。前記アンテナ装置の記憶手段は前記方向検知手段が検知するアンテナの設置方向を記憶する。前記方向検知手段により検知されるアンテナの設置方向は、前記アンテナ装置の記憶手段に記憶した設置方向と同じ方向にあるか否か、又は前記設置方向によって画定される範囲内にあるか否か前記アンテナ装置の判定手段により判定される。前記アンテナ装置は前記判定手段により判定された判定結果を示す信号を出力する。該信号は受信装置に取り込まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、降雨減衰、受信装置の不具合及びケーブルの劣化等の影響を受けずに、アンテナの設置方向がアンテナ設置時から変位しているときに、警告をユーザに知らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1に係る受信システムを示すブロック図である。
【図2】判定部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】アンテナの設置方向が視聴可能範囲外であることを示す警告画像が表示される動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】アンテナの設置方向が視聴可能範囲外であることを示す警告画像が表示される動作中のアンテナの設置方向と視聴可能範囲との比較のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】アンテナの設置方向が視聴可能範囲内にある場合に、回転座標上でアンテナの設置方向と視聴可能範囲とを示した説明図である。
【図6】アンテナの設置方向が視聴可能範囲外にある場合に、回転座標上でアンテナの設置方向と視聴可能範囲とを示した説明図である。
【図7】アンテナの設置方向が視聴可能範囲外であると判定された場合に生成される警告画像表示を例示した説明図である。
【図8】アンテナの設置方向が視聴可能範囲外であると判定された場合に生成される警告画像表示を例示した説明図である。
【図9】アンテナの設置方向が視聴可能範囲外であると判定された場合に生成される警告画像表示を例示した説明図である。
【図10】実施の形態1に係る視聴可能範囲記憶部にアンテナの設置方向を視聴可能範囲として記憶させる手順を示すフローチャートである。
【図11】方向センサから出力された方向信号が示すアンテナの設置方向と、視聴可能範囲記憶部に記憶したアンテナの設置方向とを比較する処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2に係る受信システムを示すブロック図である。
【図13】実施の形態2における受信システムの動作を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態2に係る視聴可能範囲記憶部にアンテナの設置方向を視聴可能範囲として記憶させる手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は実施の形態1に係る受信システムを示すブロック図である。受信システムはアンテナ装置1及び受信装置2を含んで構成される。アンテナ装置1及び受信装置2は1本の被覆電線3、例えば1本の同軸ケーブル又は平行フィーダで接続されている。
【0023】
アンテナ装置1は家屋の屋根、ベランダ等に固定して取り付けられており、アンテナ11、方向センサ12(方向検知手段)及び信号重畳部13を含んで構成される。アンテナ11は、例えばテレビ放送波を受信する八木式UHFアンテナである。方向センサ12はアンテナ11の受信感度に影響を与えないように、また強風、自動車による振動等の外力を受けても方向センサ12の向きとアンテナ11の向きの変位が生じないようにアンテナ11に固定して取り付ける。方向センサ12は磁気方向センサ、加速度センサ等、方向を検知できるものであれば、どのようなセンサでもよい。
【0024】
アンテナ装置1に対しては、図示しない電源供給路を使って受信装置2から給電する。これは一般に衛星放送受信用アンテナの給電方法と同じ方法を使うものとする。なお、アンテナ装置1への電源は電池又は太陽光発電システムによって供給されてもよい。
【0025】
受信装置2は、例えばテレビ受信機、チューナ内臓DVD装置又はチューナ内臓BDレコーダ等が用いられる。受信装置2は例えば一般家庭の住居内に据え置きされていて、信号分波部21、視聴可能範囲記憶部22、判定部23、判定結果データ生成部24、映像生成部25、映像合成部26及び画面表示部27を含んで構成される。
【0026】
図2は判定部23のハードウェア構成を示すブロック図である。判定部23はCPU(Central Processing Unit)231、記憶部232及びRAM(Random Access Memory)233を含んで構成され、CPU231、記憶部232及びRAM233はバス234を介して接続されている。記憶部232は主にROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性半導体メモリで構成され、その内部にプログラムが記憶されている。CPU231は記憶部232からプログラムを、また視聴可能範囲記憶部22から記憶したアンテナ11の設置方向を読み出し、さらに作業用の情報をRAM233との間で出し入れすることにより、各種処理を実行する。
【0027】
方向センサ12が検知した方向を示す方向信号は、方向センサ12から信号重畳部13へ11ビットで出力される。信号重畳部13は、取り込んだ方向信号をテレビ放送波(90MHz〜108MHz:VHF−low、170MHz〜222MHz:VHF−High、470MHz〜770MHz:UHF)と干渉しないような周波数、例えば、周波数100kHzの搬送波上にASK(Amplitude Shift Keying)方式でデジタル変調した上で、アンテナ11の受信信号と重畳する。重畳された信号は、信号重畳部13から被覆電線3を通して受信装置2に出力される。
このように方向信号を受信装置2に出力するに際し、テレビ放送波の周波数と異なる周波数を利用することで、テレビ放送波には影響を与えずに、アンテナ11の方向信号を伝達することができる。なお、デジタル変調の方式はASK方式に限定するものではなく、FSK(Frequency Shift Keying)方式を用いても、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式を用いてもよい。
【0028】
信号分波部21はアンテナ装置1の信号重畳部13により重畳・出力された信号を取り込み、方向信号とアンテナ11の受信信号とに分離する。そして、信号分波部21は方向信号をアンテナ11の設置方向として視聴可能範囲記憶部22及び判定部23に出力するとともに、アンテナ11の受信信号を映像生成部25に出力する。なお、アンテナ11の設置方向とは、方向センサ12が検知する方向のことであり、例えばアンテナ11の主ローブの方向であってもよいし、なくてもよい。
【0029】
視聴可能範囲記憶部22は主にEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のような非揮発性半導体メモリから構成され、信号分波部21から取り込んだアンテナ11の設置方向を視聴可能範囲として記憶する。視聴可能範囲とは、対象とするアンテナの設置場所にて正常に電波を受信できるアンテナ11の設置方向範囲である。本実施形態での視聴可能範囲は北を基準とした略水平面内において、上方から見て時計回りの角度により示される2つの方向で画定される方向範囲である。ただし、アンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時の方向から単に変位したか否かを知るためには、視聴可能範囲記憶部22はアンテナ11の設置方向を1つ記憶するか、又は2つの同じ方向をアンテナ11の設置方向として記憶する。つまり、本受信システムの稼働準備として、アンテナ装置設置時に予め視聴可能範囲記憶部22はアンテナ11の設置方向を1つ又は2つ記憶する。また、視聴可能範囲はアンテナ11の受信強度が最大となる1つの方向から所定の角度±αだけ幅を持った方向範囲であってもよい。
【0030】
判定部23は信号分波部21から取り込んだアンテナ11の設置方向を用いて、アンテナ11の振動を判定する。また、判定部23は視聴可能範囲記憶部22から視聴可能範囲として記憶したアンテナ11の設置方向を読み出した後、読み出したアンテナ11の設置方向と信号分波部21から取り込んだアンテナ11の設置方向とを比較し、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内か否かを判定する。あるいは、判定部23は視聴可能範囲記憶部22からアンテナ装置設置時のアンテナ11の設置方向として記憶したアンテナ11の設置方向を読み出した後、読み出したアンテナ11の設置方向と信号分波部21から取り込んだアンテナ11の設置方向とを比較し、アンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時の方向から変位しているか否かを判定する。判定部23は、視聴可能範囲記憶部22にアンテナ11の設置方向が記憶されていない場合の情報を含む判定結果を、判定結果データ生成部24に出力する。
【0031】
判定結果データ生成部24は判定部23から前記判定結果を取り込み、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外である場合、アンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時の方向から変位している場合、又は視聴可能範囲記憶部22にアンテナ11の設置方向が記憶されていない場合には、警告画像の画像データを生成する。一方、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内である場合、又はアンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時の方向から変位していない場合には、判定結果データ生成部24は確認画像の画像データを生成する。
【0032】
映像生成部25は信号分波部21から受信信号を取り込み、取り込んだ受信信号から放送映像の画像データを生成して、該映像データを映像合成部26へ出力する。映像合成部26は映像生成部25が生成した放送映像の画像データと、判定結果データ生成部24が生成した警告画像又は確認画像の画像データとを合成する。合成された映像データは映像合成部26から画面表示部27へ出力される。画面表示部27は映像合成部26から取り込んだ画像データに基づいて、警告画像又は確認画像が含まれる放送映像を受信装置2の画面に表示する。
なお、受信装置2がチューナ内臓DVD装置、デジタル放送チューナ等の場合には、画面表示部27は受信装置2以外の表示装置(図示せず)に設ければよい。また、判定結果データ生成部24が生成した警告画像又は確認画像の画像データに基づいて、放送映像を含まない警告画像又は確認画像だけを画面表示する形態であってもよい。
【0033】
次に、本受信システムによる視聴時の動作を、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを示す警告画像が表示される場合について説明する。図3はアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを示す警告画像が表示される動作のメインルーチンを示すフローチャートである。方向センサ12はアンテナ11の設置方向を検知し、検知したアンテナ11の設置方向を示す方向信号を信号重畳部13へ出力する(ステップS31)。信号重畳部13は取り込んだ方向信号とアンテナ11の受信信号を重畳して(ステップS32)、受信装置2の信号分波部21へ出力する(ステップS33)。信号分波部21は重畳された信号を取り込み(ステップS34)、方向信号と受信信号に分離する(ステップS35)。信号分波部21は分離された方向信号が示すアンテナ11の設置方向を視聴可能範囲記憶部22と判定部23に出力する。
【0034】
判定部23のCPU231はアンテナ11の略水平方向の振動を判定する(ステップS36)。アンテナ11が風により振動をしている場合には、方向センサ12により検知されるアンテナ11の設置方向はアンテナ11が静止している場合と異なる可能性が高く、正確なアンテナ11の方向検知が困難になるからである。アンテナ11の略水平方向の振動の影響を除外するためには、アンテナ11の略水平方向の振動周期よりも十分短い周期以下の周期で、例えば0.06秒で、アンテナ11の設置方向を検知すればよい。
【0035】
判定部23のCPU231はアンテナ11の設置方向をRAM233に記憶するとともに、0.06秒前に記憶したアンテナ11の設置方向をRAM233から読み出し、この0.06秒前のアンテナ11の設置方向と最新のアンテナ11の設置方向とが一致するか判定する。0.06秒前のアンテナ11の設置方向と最新のアンテナ11の設置方向とが一致する場合には(ステップS36:YES)、判定部23のCPU231はアンテナ11は振動していないと判定し、ステップS37の処理へ進む。0.06秒前のアンテナ11の設置方向と最新のアンテナ11の設置方向とが一致しない場合には(ステップS36:NO)、判定部23のCPU231はステップS36の処理を繰り返す。このようにアンテナ11の振動を判定することによって、一時的なアンテナ11の設置方向変位による誤警告をなくすことができる。
【0036】
ただし、アンテナ11の振動振幅と視聴可能範囲のレンジとを比較して、アンテナ11の振動振幅が視聴可能範囲のレンジに比べて十分小さい場合には、ステップS36を省略してもよい。この場合には、アンテナ11の振動を考慮しなくても、アンテナ11の設置方向と視聴可能範囲との比較結果に十分な妥当性が期待できるからである。
【0037】
判定部23のCPU231は視聴可能範囲記憶部22に視聴可能範囲として記憶したアンテナ11の設置方向を読み出し、読み出した方向と信号分波部21により分離された方向信号が示すアンテナ11の設置方向とを比較する(ステップS37)。この比較ステップS37については、サブルーチンとして後に詳述する。
【0038】
ステップS37の比較処理の結果、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内である場合には(ステップS38:YES)、ステップS36へ戻る。一方、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外である場合には(ステップS38:NO)、ステップS39へ進む。
【0039】
判定部23のCPU231がアンテナ11の設置方向は視聴可能範囲外であると判定した場合には、判定結果データ生成部24はこの判定結果を受け取ってアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外である旨の警告画像の画像データを生成する(ステップS39)。映像合成部26は判定結果データ生成部24が生成した警告画像の画像データとアンテナ11の受信信号から映像生成部25が生成した放送映像の画像データとを合成し、画面表示部27へ出力する。画面表示部27はこの合成されたデータに基づいて警告画像を含む放送映像を受信装置2の画面に表示する(ステップS40)。こうして、ユーザはアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを認識することができる。
【0040】
信号分波部21により分離された方向信号が示すアンテナ11の設置方向と、視聴可能範囲記憶部22に視聴可能範囲として記憶したアンテナ11の設置方向との比較処理を、以下に詳述する。図4は、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを示す警告画像が表示される動作中のアンテナ11の設置方向と視聴可能範囲との比較のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0041】
判定部23のCPU231は記憶部232からプログラムを読み出し、視聴可能範囲記憶部22から第1の方向及び第2の方向を読み出す。ステップS41では、判定部23のCPU231は視聴可能範囲記憶部22から読み出した2つの方向の内、第1の方向をX、第2の方向をY、信号分波部21により分離された方向信号が示すアンテナ11の設置方向をTとする。なお、X、Y、Tの値の取り得る範囲は0°以上360°未満である。
【0042】
次に判定部23のCPU231はYがX以上か否かを判定する(ステップS42)。判定部23のCPU231はYがX以上であればステップS43の処理へ進み(ステップS42:YES)、YがXよりも小さければステップS47の処理へ進む(ステップS42:NO)。
【0043】
ステップS43では、判定部23のCPU231はX≦T≦Yが真であれば視聴可能範囲内であると判定し(ステップS43:YES)、偽であれば視聴可能範囲外であると判定する(ステップS43:NO)。判定部23のCPU231は、視聴可能範囲内であれば、視聴可の判定結果を出力し(ステップS45)、視聴可能範囲外であれば、視聴不可の判定結果を出力する(ステップS46)。
【0044】
図5はアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内にある場合に、回転座標上でアンテナ11の設置方向と視聴可能範囲とを示した図である。ここで具体的に図5を用いてステップS43のYES判定例を説明する。図5では真北を0°として、真東は90°、真南は180°、真西は270°とする。図5は第1の方向Xが45°、第2の方向Yが135°、アンテナ11の設置方向Tが80°の場合を示している。図4のフローチャートに従えば、X=45°、Y=135°よりX≦Yなので、判定部23のCPU231はステップS42からステップS43へ処理を移し、X≦T≦Yか否かの判定を行う。アンテナ11の設置方向Tは80°であるからX≦T≦Yが成立するので、判定部23のCPU231は視聴可能範囲内であると判定する。
【0045】
ステップS47では、判定部23のCPU231はT≦Y又はX≦Tが真であれば視聴可能範囲内であると判定し(ステップS47:YES)、偽であれば視聴可能範囲外であると判定する(ステップS47:NO)。判定部23のCPU231は、視聴可能範囲内であれば、視聴可の判定結果を出力し(ステップS48)、視聴可能範囲外であれば、視聴不可の判定結果を出力する(ステップS49)。
【0046】
図6はアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外にある場合に、回転座標上でアンテナ11の設置方向と視聴可能範囲とを示した図である。ここで、具体的に図6を用いてステップS47のNO判定例を説明する。図6では図5と同様に、真北を0°として、真東は90°、真南は180°、真西は270°とする。図6は第1の方向が315°、第2の方向が45°、アンテナ11の設置方向が80°の場合を示している。図4のフローチャートに従えば、X=315°、Y=45°よりY<Xなので、判定部23のCPU231はステップS42からステップS47へ処理を移し、T≦Y又はX≦Tか否かの判定を行う。アンテナ11の設置方向Tは80°であるからT≦YもX≦Tも成立しないので、判定部23のCPU231は視聴可能範囲外であると判定する。
【0047】
図7、図8及び図9は、どれもアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であると判定された場合に生成される警告画像表示を例示した図である。図7の例では、警告画像は放送映像に単に上書きされる形で表示される。警告画像は横長の矩形静止画像であり、警告内容を示す文字列並びに視聴可能範囲及び現在のアンテナ11の設置方向を示す図形を含む。警告内容を示す文字列は、例えば「アンテナの設置方向は視聴可能範囲内にありません」である。視聴可能範囲及び現在のアンテナ11の設置方向を示す図形は、例えば画面上方を北とする回転座標上で原点を中心とする円を描き、該円上で視聴可能範囲を示す扇部分を塗りつぶしにより、またアンテナ11の設置方向を回転座標の原点を通る矢印により表したものである。視聴可能範囲及びアンテナ11の設置方向を示す図形には、インデックスとして方位記号が含まれてもよい。図8の例では、放送映像が縮小表示され、空いた画面空間の隅に上記と同様の警告画像が表示される。図9の例では、上記と同様の警告画像がテレビメニューの一部として、画面の略中央に表示される。また、画面上端に、例えば「アンテナ情報」のタイトルが表示されてもよい。
【0048】
ここで、本受信システムの稼働前に予め視聴可能範囲を視聴可能範囲記憶部22に記憶する手順を説明する。図10は実施の形態1に係る視聴可能範囲記憶部22にアンテナ11の設置方向を視聴可能範囲として記憶させる手順を示すフローチャートである。以下、アンテナ設置者はアンテナ11の設置方向を手動で変えるものとする。
【0049】
アンテナ設置者は方向センサ12がアンテナに取り付けられたアンテナ装置1を所定の場所に設置する(ステップS101)。アンテナ設置者は受信装置2の受信画像を見ながら、アンテナ11を略水平面内で回転して、映像が映るアンテナ11の設置方向を探す(ステップS102)。アンテナ設置者は受信装置2の映像を見ながら、アンテナ11を下から見上げる状態で天空に対し時計回りにアンテナ11を動かし、映像が映らなくなる方向を見つける(ステップS103)。アンテナ設置者はアンテナ装置1の視聴可能範囲記憶部22に設けられた視聴可能範囲記憶指示ボタン(図示せず)を押して、視聴可能範囲記憶部22にアンテナ11の設置方向を第1の方向として記憶させる(ステップS104)。次にアンテナ設置者は受信装置2の映像を見ながら、アンテナ11を下から見上げる状態で天空に対し反時計回りにアンテナ11を動かし、映像が映らなくなる方向を見つける(ステップS105)。アンテナ設置者は視聴可能範囲記憶指示ボタンを押して、視聴可能範囲記憶部22にアンテナ11の新たな設置方向を第2の方向として記憶させる(ステップS106)。アンテナ設置者は受信強度検知器を用いて、最大受信強度になる方向にアンテナ11の設置方向を合わせる(ステップS107)。こうして、第1の方向と第2の方向とで画定された方向範囲として、視聴可能範囲が視聴可能範囲記憶部22に記憶される。
【0050】
上記では視聴可能範囲を第1の方向と第2の方向との2方向を用いて視聴可能範囲記憶部22に記憶したが、1方向と該方向を中心とした所定の角度とから視聴可能範囲を視聴可能範囲記憶部22に記憶してもよい。例えば、受信強度検知器を用いて最大受信強度になる方向にアンテナ11の設置方向を合わせ、そのときに前記視聴可能範囲記憶指示ボタンを押してアンテナ11の設置方向を第1の方向又は第2の方向として視聴可能範囲記憶部22に記憶させる。そして、記憶させた1方向から所定の角度αだけ張った方向範囲を視聴可能範囲とする。つまり、前記の記憶させた1方向を示す角度をXとしたときに、X±αの範囲を視聴可能範囲とする。αは、例えばアンテナ11の主ローブ幅の半分とする固定値でもよいし、ユーザが自由にαを設定できる手段を視聴可能範囲記憶部22に備えたパラメータとしてもよい。
【0051】
ところで、アンテナ11の設置方向をいずれの方向にしても映像が映らなかった場合には、本受信システム稼働以前に、アンテナ設置者はその原因を特定して対策を講ずるべきである。また、かかる場合には、視聴可能範囲の記憶処理を行うべきではない。そこで、受信装置2が正常に画像を表示することできる所定のレベル以上の受信強度が得られない場合には、視聴可能範囲の記憶処理を実行することができない態様としてもよい。例えば、かかる場合にはアンテナ設置者が視聴可能範囲記憶指示ボタンを押しても、ステップS104及びステップS106において視聴可能範囲の記憶処理が実行されない態様としてもよい。これにより本受信システムから脆弱性又は不整合をもたらし得る一因を排除できる。
【0052】
前述の「アンテナ11の略水平方向の振動周期よりも十分短い周期以下の周期」を求める手順について、以下に説明する。アンテナ11の水平方向の振動(いわゆる「ねじり振動」)の周期T[s]は、アンテナ11の慣性モーメントI[kg・m2 ]、アンテナ11の支持棒の剛性率G[Pa]、アンテナ11の支持棒の半径r[m]及びアンテナ11の支持棒の長さl[m]から、次式により導かれる。
【0053】
【数1】

【0054】
例えば、慣性モーメント1[kg・m2 ](=質量2kg、半径1mの円盤と同等)のアンテナ11が、剛性率70[GPa]、半径0.015[m]、長さ2[m]のアンテナ11の支持棒に保持されていた場合には、このアンテナ11の水平方向の振動周期は、約0.12秒となる。標本化定理によりアンテナ11の水平方向の振動を検知するためには、振動周期の1/2以下の周期でアンテナ11の設置方向をサンプリング検知すればよいので、この場合にはサンプリング周期を0.06秒以下にすればよい。
【0055】
現在一般に市販されているアンテナ11の質量と大きさ、及びアンテナ11の支持棒の太さと剛性を考慮した場合には、アンテナ11の設置方向検知のサンプリング周期を先に例として示した0.06秒に取れば、ほとんどのアンテナ11において略水平方向の振動を検知することが可能となる。もちろんアンテナ11の設置方向検知のサンプリング周期はこの値に限定するものではなく、使用するアンテナの振動を検知するのに十分小さい値であればどのような値であってもよい。例えば、アンテナの設置方向検知のサンプリング周期は0.5秒としても、1秒としてもよい。また、アンテナの振動の収束を調べる方法として、アンテナ11の設置方向と0.06秒前のアンテナ11の設置方向を比較する方法を示したが、この方法はアンテナの振動の収束を調べる方法を限定したものではなく、条件次第で1秒前のものと比較しても、5秒前のものと比較してもよい。
【0056】
上記では、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外にある場合に警告画像を表示する場合について説明した。以下に、視聴可能範囲は設定済みか否か、アンテナ11の設置方向は視聴可能範囲内にあるか否か、及びアンテナ11の設置方向はアンテナ装置設置時の方向と一致するか否かの判定を含む、アンテナ11の設置方向のより広範な判定について、説明する。図11は方向センサ12から出力された方向信号が示すアンテナ11の設置方向と、視聴可能範囲記憶部22に記憶したアンテナ11の設置方向とを比較する処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
まず、判定部23のCPU231は記憶部232からプログラムを読み出し、視聴可能範囲記憶部22から第1の方向又は第2の方向を読み出す。そして、CPU231は視聴可能範囲記憶部22に第1の方向又は第2の方向が設定されているか否かを判定する(ステップS1101)。第1の方向又は第2の方向が設定されていなければ(ステップS1101:NO)、視聴可能範囲未設定と判定し、第1の方向又は第2の方向が設定されていれば(ステップS1101:YES)、ステップS1103の処理へ進む。視聴可能範囲記憶部22に第1の方向又は第2の方向が設定されていない場合、すなわち第1の方向及び第2の方向の両方が設定されていない場合には、判定部23のCPU231は視聴可能範囲未設定の判定結果を出力する(ステップS1102)。
【0058】
ステップS1103では、視聴可能範囲記憶部22に第1の方向及び第2の方向が設定されていれば(ステップS1103:YES)、判定部23のCPU231はステップS1104の処理へ進む。一方、視聴可能範囲記憶部22に第1の方向及び第2の方向の設定がない場合、すなわち第1の方向又は第2の方向のいずれか一方のみが設定されている場合には(ステップS1103:NO)、CPU231はステップS1112の処理へ進む。
【0059】
ステップS1104では、判定部23のCPU231は視聴可能範囲記憶部22が記憶している2つの方向の内、第1の方向をX、第2の方向をY、アンテナ11の設置方向をTとする。なお、X、Y、Tの値の取り得る範囲は0°以上360°未満である。
【0060】
次に判定部23のCPU231はYがX以上か否かを判定する(ステップS1105)。CPU231はYがX以上であれば(ステップS1105:YES)、ステップS1106の処理へ進み、YがXよりも小さければ(ステップS1105:NO)、ステップS1109の処理へ進む。
【0061】
ステップS1106では、判定部23のCPU231はX≦T≦Yが真であれば視聴可能範囲内であると判定し(ステップS1106:YES)、偽であれば視聴可能範囲外であると判定する(ステップS1106:NO)。判定部23のCPU231は、視聴可能範囲内であれば、視聴可の判定結果を出力し(ステップS1107)、視聴可能範囲外であれば、視聴不可の判定結果を出力する(ステップS1108)。
なお、X=T=Yの場合には、アンテナ11の設置方向は設置時から変位しておらず、CPU231は視聴可と判定する(ステップS1107)。
【0062】
ステップS1109では、判定部23のCPU231はT≦Y又はX≦Tが真であれば視聴可能範囲内であると判定し(ステップS1109:YES)、偽であれば視聴可能範囲外であると判定する(ステップS1109:NO)。判定部23のCPU231は、視聴可能範囲内であれば、視聴可の判定結果を出力し(ステップS1110)、視聴可能範囲外であれば、視聴不可の判定結果を出力する(ステップS1111)。
【0063】
ステップS1103で視聴可能範囲記憶部22に第1の方向又は第2の方向のいずれか一方のみが設定されていると判定された場合には、判定部23のCPU231は第1の方向又は第2の方向をX、アンテナ11の設置方向をTとする(ステップS1112)。
【0064】
ステップS1113では、判定部23のCPU231はX−α≦T≦X+αが真であれば視聴可能範囲内であると判定し(ステップS1113:YES)、偽であれば視聴可能範囲外であると判定する(ステップS1113:NO)。判定部23のCPU231は、視聴可能範囲内であれば、視聴可の判定結果を出力し(ステップS1114)、視聴可能範囲外であれば、視聴不可の判定結果を出力する(ステップS1115)。
なお、α=0と設定した場合には、T=Xのときに、アンテナ11の設置方向はアンテナ装置設置時から変位しておらず、判定部23のCPU231は視聴可の判定結果を出力する(ステップS1114)。一方、T≠Xのときには、アンテナ11の設置方向はアンテナ装置設置時から変位しており、判定部23のCPU231は視聴不可の判定結果を出力する(ステップS1115)。
【0065】
実施の形態1では、受信装置2の映像、音声等が乱れたときに、ユーザは警告画像を通してその原因が被覆電線3によるものでも、受信装置2によるものでもなく、受信強度と無関係にアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることによるものだと素早く判定でき、アンテナ11の設置方向を調整することで問題を解決することができる。特に、本発明はアンテナ11の設置方向が変位しやすい地域、例えば風が比較的継続して吹く地域又は台風による暴風に見舞われる頻度が高い地域で、大きな効果を奏するものである。また、本発明は風圧荷重が大きなアンテナ11に対して効果的である。
【0066】
実施の形態1では、図3から図9までを用いてアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外である場合に警告画像を表示する形態を説明した。しかし、本発明の受信システムはかかる形態に限定されるものではなく、アンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時から単に変位していることを示す警告画像を表示する形態であってもよい。また、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内である場合又はアンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時から変位していない場合には(図11のステップS1107、ステップS1110又はステップS1114)、その旨を示す確認画像を表示する形態を追加したものでもよい。これにより、ユーザはアンテナ11の設置方向は変位していないという安心感を得ることができる。また、アンテナ装置1の近傍で豪雨が発生している時に、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内であると画面表示されているにもかかわらず、受信強度の低下に起因する画像の乱れが観察される場合には、高い確からしさでその原因は降雨減衰であるとユーザは判断することができる。そのため、この場合の画像の乱れは一過性のものであり、しばらくすれば画像は正常復帰するものとユーザは予測することも可能である。さらに、晴天時に、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内であると画面表示されているにもかかわらず、受信強度に起因する画像の乱れが観察される場合には、ユーザは受信強度低下の原因をアンテナ11の設置方向の変位及び降雨減衰を除いたものに絞り込むことができる。
【0067】
実施の形態1では、アンテナ11の設置方向の変位を画面によりユーザに通知する形態を説明したが、受信装置2が通常有する音声出力機能を利用して、音声通知としてもよい。あるいは、ユーザへの通知方法は画像及び音声によるものでもよい。
【0068】
実施の形態1では、アンテナ装置1は信号重畳部13を、受信装置2は信号分波部21を含んで構成されている。これはアンテナ11の方向信号と受信信号とを1本の被覆電線3で伝達させるためである。そこで、アンテナ11の方向信号を受信装置2に伝達する専用の被覆電線を既存の被覆電線3の他に別途設置して、アンテナ11の方向信号をアンテナ装置1の方向センサ12から受信装置2の視聴可能範囲記憶部22と判定部23とに直接入力することで、信号重畳部13と信号分波部21を省略した形態としてもよい。
【0069】
実施の形態1では、判定部23の記憶部232に例えば、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magnet Optical disc)若しくはDVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)等の可搬型記憶媒体又はネットと接続するインターフェースを設けて、記憶部232内部のプログラムをインストール又はダウンロードする形態としてもよい。
【0070】
実施の形態1では、視聴可能範囲記憶部22及び判定部23を受信装置2が備えているが、視聴可能範囲記憶部22及び判定部23をアンテナ装置1、チューナ内臓DVD装置又はデジタル放送チューナ等が備える形態であってもよい。
【0071】
実施の形態1では、視聴可能範囲の設定時にアンテナ11の設置方向を手動操作により変位させる例を扱った。しかし、アンテナ11の設置方向の変更は、視聴可能範囲の設定時及び警告画像表示後のアンテナ調整時双方について、モータの動力と該動力の制御回路を利用した自動制御としてよい。
【0072】
実施の形態1では、地上波テレビ放送を扱ったが、これに限定されるものではなく、本受信システムは衛星放送にも適用可能である。かかる場合には、アンテナ11の設置方向を方位角と仰角とで規定すればよい。そのためには、視聴可能範囲を水平方向の方位角及び仰角の2方向で定義する。そして、方向信号が示すアンテナ11の設置方向と視聴可能範囲記憶部22に記憶したアンテナ11の設置方向との比較処理(図3のステップS37)に、仰角を用いた比較処理を追加し、アンテナ11の設置方向が水平方向の視聴可能範囲と仰角方向の視聴可能範囲の両方に入る場合に、アンテナ11の設置方向は正常と判定すればよい。あるいは、視聴可能範囲を1方向から所定の角度αだけ張った立体角の方向範囲とし、方向信号が示すアンテナ11の設置方向が前記立体角の方向範囲にあるか否かを判定する形態であってもよい。
【0073】
本受信システムはラジオ放送にも適用可能である。かかる場合には、アンテナ装置1から受信装置2へ方向信号を出力するときに、好ましくはラジオ放送波(30kHz〜300kHz:LF、300kHz〜3MHz:MF、3MHz〜30MHz:HF)と干渉しない周波数の搬送波を利用する。
【0074】
実施の形態2
実施の形態2はアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることをメールによりユーザへ通知する形態に関する。もちろん、アンテナ11の設置方向がアンテナ装置設置時から変位していることをメールによりユーザへ通知する形態であってもよい。
【0075】
図12は実施の形態2に係る受信システムを示すブロック図である。本受信システムは被覆電線3で接続されたアンテナ装置1及び受信装置2を含んで構成される。なお、図12の受信装置2、被覆電線3、視聴可能範囲記憶部22、判定部23、映像生成部25及び画面表示部27は、夫々実施の形態1で説明したものと同様の構成と作用を有するため、対応する部分に同一の参照番号を付してこれらの詳細な説明は省略する。
【0076】
アンテナ装置1はアンテナ11、方向センサ12、積分部121、視聴可能範囲記憶部22、判定部23、メール作成部122、メールアドレス登録部123及び通信部124を含んで構成される。アンテナ11は、例えばテレビ放送波を受信する八木式UHFアンテナである。アンテナ装置1に対しては、実施の形態1と同様に図示しない電源供給路、電池等を使って電源が供給される。
【0077】
アンテナ装置1の方向センサ12は実施の形態1と同様に方向を検知できるものであれば、どのようなセンサでもよい。以下では、例としてMEMS型加速度センサ、動電式加速度センサ、圧電式加速度センサ、ジャイロスコープ等の加速度センサの内、MEMS型加速度センサを方向センサ12として想定する。
【0078】
積分部121は方向センサ12が検知したアンテナの加速度を時間で2重積分してアンテナ11の変位を長さの変位として求め、さらにこの長さの変位を時々刻々累積する。そして、積分部121はこの時々刻々累積する長さの変位を角度に変換して、アンテナ11の設置方向とする。つまり、実施の形態2においては、方向センサ12により検知されるアンテナ11の設置方向は、アンテナ装置設置時のアンテナ11の設置方向に対する相対的な方向である。
視聴可能範囲記憶部22及び判定部23は夫々積分部121からアンテナ11の設置方向を取り込む。
【0079】
メール作成部122は、判定部23からアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲内にあるか否かの情報を取り込み、該情報をユーザに知らせるためのメールを作成する。このメールの内容には、例えばアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外へ変位したことを検知した年月日と時間、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外へ変位したこと又はアンテナ11の設置方向が変位した程度、アンテナ補修業者の連絡先が含まれる。メールアドレス登録部123は、例えばEPROM、フラッシュメモリ等のような非揮発性半導体メモリから構成され、メール作成部122に提供するメールの宛先、すなわちユーザのメールアドレスが1つ又は複数登録されている。
【0080】
通信部124はメール作成部122で作成されたメールをサーバ4へ送信するため、サーバ4と通信回線で常時接続されており、メールを送信する機能を有している。サーバ4はインターネットと常時接続されている。
【0081】
図13は実施の形態2における受信システムの動作を示すフローチャートである。方向センサ12はアンテナ11の略水平方向の加速度を例えば0.06秒毎に検知し、この加速度値を積分部121に出力する(ステップS131)。積分部121は、方向センサ12から取り込んだ加速度値を0.06秒間について時間で2重積分するとともに、この積分値の累積値を求め、角度に変換し、これをアンテナ11の設置方向とする。そして、積分部121は算出したアンテナ11の設置方向を視聴可能範囲記憶部22と判定部23に出力する(ステップS132)。
【0082】
判定部23が実行するアンテナの振動判定処理及び積分部121から取り込んだアンテナ11の設置方向と視聴可能範囲記憶部22に記憶したアンテナ11の設置方向との比較処理(図13のステップS133、ステップS134及びステップS135)は、実施の形態1で判定部23が実行するこれらの処理(図3のステップS36、ステップS37及びステップS38)と基本的に同様であるので、説明を省略する。メール作成部122は判定部23から取り込んだ判定結果に基づいて、アンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外にある場合には、警告メールを作成する(ステップS136)。また、メール作成部122はアドレス登録部123から取得したユーザのメールアドレスを作成した警告メールの宛名に設定して、通信部124へ出力する。通信部124はメール作成部122から取り込んだ警告メールをサーバ4へ送信する(ステップS137)。
【0083】
図14は実施の形態2に係る視聴可能範囲記憶部22にアンテナ11の設置方向を視聴可能範囲として記憶させる手順を示すフローチャートである。実施の形態2において視聴可能範囲を視聴可能範囲記憶部22に記憶させる処理は、実施の形態1において対応する処理と、視聴可能範囲記憶部22がアンテナ11の設置方向を信号分波部21から取り込むか、積分部121から取り込むかの違いを除いて同一の処理であるため、詳細な説明を省略する(図1及び図12参照)。ただし、実施の形態1での視聴可能範囲の第1の方向及び第2の方向は北からの角度で表現されたが、実施の形態2ではアンテナ装置設置時のアンテナ11の設置方向からの相対的な角度で表現される。また、図14のステップS141の処理には、図12に図示しない積分部リセットボタンを押して積分部121をリセットする処理が含まれる。積分部121には時事刻々変化するアンテナ装置設置時からのアンテナ11の累積方向変位が格納されるので、この累積方向変位をアンテナ装置設置時にゼロに初期化しておく必要があるからである。
【0084】
実施の形態2では、ユーザはアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを警告メールにより知ることができる。そのため、自宅でテレビ放送を視聴していない場合でも、ユーザはアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを知ることができる。また、メールアドレス登録部123に携帯電話のメールアドレスを登録しておくことで、外出先でも又は屋上でのアンテナ調整作業中でもユーザはアンテナ11の設置方向が視聴可能範囲外であることを知ることができる。
【0085】
実施の形態2では、積分部121、視聴可能範囲記憶部22及び判定部23をアンテナ装置1が有しているが、積分部121、視聴可能範囲記憶部22及び判定部23を受信装置が有する形態であってもよい。かかる場合には、さらに受信装置2がメールの作成・送信機能を担う形態であってもよい。また、受信システムがアンテナ装置1と受信装置2との接続間にDVD装置、デジタル放送チューナ等を介在する構成である場合には、DVD装置等がメールの作成を担い、サーバ4と常時接続環境にある受信装置2がメールの送信を担う形態であってもよい。
【0086】
上記実施の形態1及び2は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 アンテナ装置
2 受信装置
3 被覆電線
4 サーバ
11 アンテナ
12 方向センサ
13 信号重畳部
21 信号分波部
22 視聴可能範囲記憶部
23 判定部
24 判定結果データ生成部
25 映像生成部
26 映像合成部
27 画面表示部
121 積分部
122 メール作成部
123 メールアドレス登録部
124 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの設置方向を検知し、検知した設置方向を示す方向信号を出力する方向検知手段と、
該方向検知手段が出力した方向信号及びアンテナの受信信号を重畳する信号重畳手段と
を備え、
該信号重畳手段が重畳した信号を出力するように構成してあることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
アンテナの設置方向を示す方向信号及びアンテナの受信信号が重畳された信号を取り込む取込手段と、
該取込手段が取り込んだ信号を、アンテナの設置方向を示す方向信号とアンテナの受信信号とに分離する信号分離手段と、
該信号分離手段により分離された方向信号が示すアンテナの設置方向を記憶する記憶手段と、
前記信号分離手段により分離された方向信号が示すアンテナの設置方向が、前記記憶手段に記憶したアンテナの設置方向又は該設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項3】
前記判定手段による判定結果を示す映像を生成する手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナ装置と、
請求項2又は請求項3に記載の受信装置とを含み、
前記アンテナ装置が出力した信号を前記受信装置が取り込む構成としてあることを特徴とする受信システム。
【請求項5】
アンテナの設置方向を検知する方向検知手段と、
該方向検知手段により検知されるアンテナの設置方向を記憶する記憶手段と、
前記方向検知手段により検知されるアンテナの設置方向が、前記記憶手段に記憶したアンテナの設置方向又は該設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定する判定手段と
を備え、
該判定手段による判定結果を示す信号を出力する構成としてあることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナ装置と、
該アンテナ装置が出力した信号を取り込む受信装置と
を備えることを特徴とする受信システム。
【請求項7】
アンテナの設置方向を検知する方向検知ステップと、
該方向検知ステップにより検知されるアンテナの設置方向を記憶する記憶ステップと、
前記方向検知ステップにより検知されるアンテナの設置方向が所定の条件を満たすか否かを、前記記憶ステップにより記憶したアンテナの設置方向に基づいて判定する判定ステップと
を備えることを特徴とするアンテナ設置方向判定方法。
【請求項8】
前記判定ステップは、前記方向検知ステップにより検知されるアンテナの設置方向が、前記記憶ステップにより記憶したアンテナの設置方向又は該設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項7に記載のアンテナ設置方向判定方法。
【請求項9】
前記判定ステップによる判定結果を示す映像を生成するステップを備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のアンテナ設置方向判定方法。
【請求項10】
アンテナの設置方向が格納されているコンピュータに、アンテナの設置方向の変位を判定させるプログラムであって、
コンピュータに、
前記変位の判定対象であるアンテナの設置方向が、コンピュータに格納されているアンテナの設置方向にあるか否かを判定するステップと、
該ステップにより判定された判定結果を出力するための所定処理をするステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
アンテナの設置方向が格納されているコンピュータに、アンテナの設置方向の変位を判定させるプログラムであって、
コンピュータに、
前記変位の判定対象であるアンテナの設置方向が、コンピュータに格納されているアンテナの設置方向によって画定される範囲内にあるか否かを判定するステップと、
該ステップにより判定された判定結果を出力するための所定処理をするステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−213116(P2010−213116A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58631(P2009−58631)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】