説明

イオンビームエッチングによる表面構造化方法、構造化した表面及び利用

本発明は、表面を構造化するための方法、言い換えれば、サブミクロンの高さHと、ミクロン又はサブミクロンの幅と称される少なくとも1つの横方向の特性寸法とを有する凹凸又はパターン(2)の少なくとも一組を、基材(1)、特にガラスの表面に、任意選択的に中和されたイオンビームを用いるイオンビームエッチングにより形成するための方法であって、次の工程、すなわち、厚さが少なくとも100nmの材料を供給し、この材料は混成且つ固体の材料であって、1以上の元素の単一の酸化物又は混合酸化物であり前記材料中の酸化物のモル百分率が少なくとも40%、とりわけ40%と94%の間であるもの、及び前記酸化物の元素と別の少なくとも1つの種、特に金属であって、当該材料中における種のモル百分率が6〜50%の範囲であって前記酸化物の百分率よりも小さく、当該種の少なくとも大部分は50nmより小さい最大特性寸法を有するもの、を含み、前記混成材料は特に、前記エッチングの前において準安定性である工程と、前記エッチングの前に前記混成材料を任意選択的に加熱する工程と、前記混成材料の表面の1cm2より大きいエッチング表面を1時間未満のエッチング時間で、前記パターンの組が形成されるまで構造化する工程を含み、この構造化工程は前記混成材料を加熱することを任意選択的に含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面構造化の分野に関し、特にイオンエロージョンを利用した表面構造化方法、構造化した表面を有する製品、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の構造化は、多くの技術分野に応用できることから、相当に興味の持たれるものである。
【0003】
幾何学的な表面構造の網状組織を作ることは、材料に新たなそして独自の機能を与えるのを可能にするが、その組成とそのバルクの特性は変更しない。
【0004】
表面構造の大きさは小さく、特に幅あるいは周期がサブミクロンの大きさのため、構造化の技術は主として、マスクとウェット又はドライエッチングを使用する技術であり、それらはとりわけマイクロエレクトロニクスあるいは(小さな)集積光学部品で用いられるリソグラフィー技術(光学リソグラフィー、e−ビームリソグラフィーなど)である。
【0005】
しかし、それらは、大量生産の製品、特にガラス製の製品には、次の理由の一つ以上のために不適当である。
・原価が高い(マスクの製造、設備、位置合わせなど)。
・処理能力が小さく(スキャン速度)、複雑である(いくつもの工程)。
・表面構造の大きさに制限がある(波長が限られる)。
・構造化できる面積が小さい。
【0006】
一般に大きな面積の、一箇所に集中しない低エネルギー(典型的に200eVと2000eVの間)イオン源、典型的にはAr+イオン下での、イオンエロージョンは、大きな面積に適用可能であるもう一つの構造化技術であり、この技術にはマスクを使用しないという利点がある。
【0007】
Nucl. Instr. and Meth. in Phys. Res. B, 230 (2005), pp551−554に掲載されたA. Tomaらの“Ion beam erosion of amorphous materials: evolution of surface morphology”と題された発表では、800eVのAr+イオンの0.4mA/cm2のフラックスの下に35°でガラスをエロージョン処理して、ミクロンサイズの長さと小さな高さ、すなわち1時間後に約5nm、3時間半後に20nmの、周期と幅が1時間後に175nm、3時間半後に350nmである、正弦波状の皺の周期性網状組織を得た。原子間力顕微鏡で調べられた1時間後及び3時間半後のこれらの形態と大きさは、図1cと1dに示されている。
【0008】
従って、イオンエロージョンはゆっくりであり、そして更に、幅に対する高さの比で定義されるアスペクト比が0.1未満と小さい皺を生じさせる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】A. Toma et al., “Ion beam erosion of amorphous materials: evolution of surface morphology”, Nucl. Instr. and Meth. in Phys. Res. B, 230 (2005), pp551−554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が対象とするのは、第一に、ミクロンサイズのスケールで構造化され、そして様々な工業的制約を満たす製品、とりわけガラス製品を製造するための有効な方法であり、それは迅速であって、製造するのが簡単であり(マスクの必要がなく、好ましくは単一の工程のみ)、及び/又は任意の大きさの面積に、最大の大きさのものにさえ、適していて、且つ表面構造のタイプ及び/又は大きさとそれらの密度について柔軟性をもたらし、それらの制御を行うものである。
【0011】
この方法はまた、得られる構造化した製品、とりわけガラス製品の範囲を拡大しようとするものでもあり、特に新たな幾何学的特性と新たな機能性及び/又は用途を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明はまず、表面を構造化するための方法、すなわち高さがサブミクロンサイズであり、そしてサブミクロンサイズ又はミクロンサイズ(サブミリメートルサイズ)である少なくとも1つの横方向の寸法(幅と呼ばれる)を有する、表面構造と呼ばれる凹凸の少なくとも1つの配列(平均して一般に同じ形状を有する)を、任意選択的に中和された(典型的には、構造化しようとする材料と衝突する前のビームにより分裂される電子によって)イオン(典型的にはカチオン)ビームを用いるイオンエロージョン(イオンと原子との間の弾性衝突を伴う)により形成するための方法を提供するものであり、この方法は次の工程、すなわち、
・前記材料を少なくとも100nmに等しい厚さで供給する工程であり、当該材料は次のものを含む固体混成材料である工程、
・1以上の元素の単一の酸化物又は混合酸化物であって、前記材料中の当該酸化物のモル百分率が少なくとも40%、とりわけ40%と94%の間であるもの、及び
・前記酸化物の前記1以上の元素と異なる性質の少なくとも1つの種であって、特に前記イオンエロージョンの作用下で前記酸化物より移動性(且つ、混合酸化物の場合、当該酸化物のうちの少なくとも1つよりも移動性)であり、当該種は好ましくは金属であって、当該材料中における当該1以上の種のモル百分率は6%から最大50%までの範囲、とりわけ20%から30%まで、あるいは更に40%までの範囲であるとともに、前記酸化物の百分率よりは小さいものにとどまり、当該種の少なくとも大部分、更には少なくとも80%又は少なくとも90%は、50nmより小さい、好ましくは25nm以下で、更には15nm以下の、最大特性寸法(大きさと称される)を有するもの、
・とりわけ前記混成材料は前記エロージョンより前において準安定性であり、すなわち標準的な温度及び圧力条件下で動力学的には安定であり且つ標準的な温度及び圧力条件下で熱力学的には不安定であって、所定の活性化エネルギーEaによって全体的な最小値とは別の局所的な極小ポテンシャルエネルギーにある、
・前記エロージョンの前に前記材料を、特に前記活性化エネルギーを当該エロージョンにより提供される値E1に低下させる(ゼロにはしない)(前記ビーム及びフラックス中のイオンのエネルギーのこの目的のための選択により)のを目的として、任意選択的に(前もって)加熱する工程であり、(任意選択的な加熱は、Eaが大きすぎる場合、移動性の金属種の凝集の動力学的挙動が前記混成材料のエロージョンの速度に比べ非常に遅くなるからである)、当該(前もっての)加熱とエロージョンは任意選択的に時間的に切り離され、当該前もっての加熱は任意選択的にIR放射処理で置き換えられる工程、
・前記混成材料の表面を前記イオンエロージョンの作用下で構造化する工程であり、前記ビームのイオンからのエネルギーの供給がかくして前記(準安定性の)混成材料を動力学的に不安定にし、かくして前記構造が、特に前記金属種の、ゾーン(液滴の形をした)の配列、及び/又は前記材料の前記金属種を富化したゾーンの配列で構成される自己組織化したマスクの形成によって得られ、当該マスクは前記混成材料の表面での前記金属種の凝集によって形成されて、
・前記(準安定性の)固体混成材料のエロージョンは1時間より短い時間継続し、好ましくは30分以下、あるいは15分以下の時間継続し、
・前記イオンビームは一般に、1種以上の希ガス、好ましくはArあるいはNe、Xe、Kr、及び/又は酸素O2、窒素N2又は二酸化炭素CO2のビームであり、
・大面積源と一般に称されるもの、とりわけライン(長く且つ細い)源を使って、1cm2より大きい、更には10cm2以上の、エロージョン面積が実現されて、当該面積の走査をより容易にし、
・前記ビームは5keV未満のエネルギー、更には2keV以下のエネルギーを有するのが好ましく、そして
・これは特に、表面構造の前記配列が形成されるまでは、標準的な腐食角、あるいは前記エロージョン処理される表面の法線に対して所定の角度、好ましくは70°未満の角度にある、
工程、
・前記エロージョン処理の間に、特に前記活性化エネルギーを低下させる(ゼロにはしない)よう、前記混成材料を任意選択的に加熱する工程、
を含む。
【0013】
これまでは、ガラスの、もっと広く言って酸化物の、高い処理能力での及び/又は不連続のもしくは“2D”表面構造での(長い周期的な皺とは対照的な)、イオンエロージョン作用下での構造化は、注目されてこなかった。
【0014】
しかしながら、本出願人は、イオンエロージョンを可能にし、そしてエッチング中に作られる表面の形態を制御する酸化物に基づく材料の、固有の特性を発見した。
【0015】
前記酸化物と移動性の元素とは、イオンエロージョンによってそれらに十分なエネルギーが供給されると分離する。
【0016】
マスクは、このエロージョンと同時に作り出される。材料の上記固有の特性が、エッチング中に作り出される表面形態を制御する。
【0017】
こうして、単一の工程でもって直接機能的に構造化された材料を作ることが可能になる。
【0018】
従って、酸化物にその目的のための少なくとも1つの種を加えることで十分であって、その種はとりわけ、当業者が選択することになる次の特性、すなわち、
・分離と「マスク」効果が表面を滑らかにする表面の緩和を支配するために、イオンエロージョン下で酸化物のものより高い移動性(例として、種を選択するために例えばケイ酸塩又は他の酸化物中でのイオン拡散の検討を利用することができる)、
・構造化の速度を大きくするために、酸化物のものとは十分に違うエロージョン速度。その違い(絶対値)は、好ましくは10%より大きく、より好ましくは20%より大きく、更に一層好ましくは50%より大きい(例として、種を選択するために、例えばマグネトロンスパッタリングについて、例えば既知の被着速度を利用することができる)、
・その分離を可能にするのに十分高い凝集エネルギー、
を有する。
【0019】
マスクを作り出しそして十分な密度の表面構造を得るためには、大きなエロージョン領域を覆って十分な量の種が存在する。
【0020】
種は、エッチング中にマスクを作り出すように、所望のエッチング深さに関して十分な深さであることが見いだされる。
【0021】
種は、酸化物と密接するが、混和はしない。
【0022】
種の大きさは、材料中における種の均一な分布のため、従ってより均一な構造化のために、制限される。
【0023】
酸化物中における種の含有量は、マイクロプローブ分析又はXPSで測定することができる。当然、構造化の作業後には、構造化した厚さにおいて、種の含有量は、例えば構造の高さに依存し、金属の状態にも依存する濃度プロファイルで、変動することができる。
【0024】
新しい表面構造、とりわけ不連続の表面構造(バンプ、ピット)を製作しようとするためには、近くに配置したターゲットからの又はイオンガンからの金属、例えばFe、Au、Ag又はPtなどを被着させることによって、イオンエロージョン中にその場で酸化物(ガラス)領域の異物混入を生じさせることを試みることが可能であろう。
【0025】
この方法は、異物の量を大きな面積にわたり一定に保つのを可能にしよう。異物の量は指定し制限される。従って、この構造化方法は、それほどうまく制御されず、それほど均一でなく、それゆえ工業的規模で実施するのが難しかろう。表面形態の範囲が更に限定される。この方法で異物を混入された酸化された材料は準安定性ではなかろう。
【0026】
本発明による厳選された部類の酸化物/金属混成材料は、イオンエロージョン中に自己組織化する十分に緻密で均一なマスクを自然に作り出して、それにより次に示す特性のうちの1つ以上をもたらす。
・均一な構造、すなわちエロージョン処理された領域全体にわたって同様である平均の高さH、平均的な形状、及び平均の密度。
・新たなくぼんだ表面構造。
・サブミクロンサイズの平均的な横方向の寸法、又は幅W、を有する新たな、一般に丸い(円形の)、くぼんだ2D表面構造。この表面構造は任意選択的に実質的に対称性を有し、従って、サブミクロンサイズであり上記の幅と同様の又は実質的にそれと等しい平均の最大横方向寸法、又は長さL、を有し(幅Wは長さLとほぼ等しく、あるいは少なくとも幅Wは斜めの腐食角について0.3Lより大きいかそれと等しく、垂直の腐食角について0.8Lより大きいかそれと等しい)、くぼみは腐食角に沿って配向している。
・一般に丸くなった(円形の)端部を備え、サブミクロンサイズの平均的な横方向の寸法、又は幅W、を有する、新たな2Dレリーフ表面構造、例えば円錐又はバンプ。この表面構造は任意選択的に実質的に対称性を有し、従って、サブミクロンサイズであり上記の幅と同様の又は実質的にそれと等しい平均の「最大」横方向寸法、又は長さL、を有し(幅Wは長さLとほぼ等しく、あるいは少なくとも幅Wは斜めの腐食角について0.3Lより大きいかそれと等しく、垂直の腐食角について0.8Lより大きいかそれと等しい)、レリーフは腐食角に沿って配向している。
・任意選択的に等方性である、すなわち優先的な配向方向を持たない、表面構造。典型的に垂直の又は垂直に近い腐食角の場合。
・任意選択的に異方性である表面構造。典型的に斜めの腐食角の場合。
・緻密な網状組織の表面構造、すなわち幅Wに対する平均の間隔Dの比が10未満、又は5未満、あるいは2未満であり、これが1cm2、100cm2、あるいは1m2の面積に及んでいる表面構造。
・場合により従来技術におけるよりも高くて、素速く得られる、表面構造高さH。
【0027】
各表面構造について、考慮される高さは最大高さであり、幅は底部で測定される。間隔Dは、2つの隣り合う表面構造の中心間の平均距離である。
【0028】
距離H、W、Dは、AFM又は走査型電子顕微鏡SEMで測定することができる。平均値は、例えば、少なくとも50の表面構造について得られる。
【0029】
構造化された材料は、一般に次のものを有する表面構造の配列を含む。
・5nmより大きく、あるいは30nm以上、又は50nm以上の、平均高さH。
・特に光学用途向けに、場合により300nm未満、好ましくは200nm未満の、平均幅W。
・300nm未満、好ましくは200nm未満の、平均間隔D。
【0030】
アスペクト比(H/W)は3より大きくてよい。
【0031】
密度、すなわちD/Wは、高さに依存することができる。
【0032】
好ましくは、幅Wは5D以下、とりわけD未満である。
【0033】
高さHと幅Wの平均二乗偏差は30%未満(例えば高温及び高フラックスにて)でよく、あるいは10%以下、又は5%以下でもよい。
【0034】
間隔Dの平均二乗偏差は50%未満(例えば高温で)でよく、あるいは30%未満、又は10%以下でもよい。
【0035】
表面構造は、従来のBradley−Harper理論で説明されるような、物理的なイオン/表面相互作用(組成とは無関係)では作り出されない。
【0036】
上記の混成材料は準安定性と称される。準安定性の既知の定義は、材料が動力学的には安定であるが熱力学的には安定でないというものである。定常状態への移行は、ゆっくりと起こるか、あるいは速度がゼロである。物理化学的系をそのポテンシャルエネルギーで表すと、準安定状態は局所的なポテンシャルエネルギーが最小であるものに相当する状態であることを特徴とする。系が熱力学的に平衡な状態に対応する全体的な最小エネルギーの状態に達することができるためには、活性エネルギーEaと称されるエネルギーの量がそれに供給されなくてはならない。
【0037】
所定の混成物については、活性エネルギーは製造方法に依存することがある。
【0038】
構造化は、表面を成分の1つで富化することの結果ではなく、材料の固有の準安定性によって誘起される。この準安定性は、酸化物と移動性種の選択によって制御される。
【0039】
上記の混成材料は、本質的に無機材料からなることができる。酸化物と前記金属との合計は、混成材料の少なくとも70モル%を構成することができる。
【0040】
上記の混成材料は、イオンエロージョンのためにほかの「中性」元素を含有することができる(とりわけ30%未満)。
【0041】
本発明による構造化方法は、容易に自動化し、製品に対し実施されるその他の通常の工程と結びつけることができる。この方法はまた、製造過程を単純化する。この方法は、大量の及び/又は大規模の製品製造、とりわけ、電子、建設又は自動車産業向けのガラス製品、特に窓ガラスの、製造に適している。本発明による構造化方法は更に、表面構造の特性寸法をより大きな領域にわたり、許容される公差で、すなわち所望の性能を損なわないもので、ますます小さくするのを可能にする。
【0042】
イオンが、構造化のための十分なエネルギー(活性化エネルギーを超える)を瞬時に供給することができる。
【0043】
エロージョンプロセスは更に、必然的に酸化物を、数分間にわたり徐々に、約80℃に、更には100℃に加熱し(エネルギーとフラックスとに依存して)、それだけで活性化エネルギーを供給するのに十分なこともあり、あるいはそれとは別に追加の加熱が必要なこともあって、その場合温度は上に見られるように調整される。必要とされるこの任意選択的な加熱は、種の含有量が低く選定される場合にはより多くなる。
【0044】
表面の到達温度は、混成材料に応じ、また構造化操作の条件に応じて変動する。基準の温度は材料の裏側(エロージョン処理される面の反対側)の温度である。
【0045】
より一般的に言うと、温度も本発明による混成材料の構造化に役割を演じることができる。
【0046】
更に、構造化を開始し又は加減する(構造化の一部変更及び/又は促進する)ために、例えばレリーフ(もしくはバンプ)の高さ又はアスペクト比を増大させるため、あるいは密度を低下させるために、エロージョン処理に先立ち及び/又はエロージョン処理(の全てもしくは一部)の間で、材料を50℃より高い温度、更には70℃以上、好ましくは100℃、更には120℃以上、とりわけ150〜300℃の範囲の温度に加熱する。
【0047】
イオンエロージョン中における分離と緩和との間には競合がある。好ましくは所定の制御された温度までの、エロージョン処理中の加熱は、以外にも緩和以上に分離を増進し、従って構造化が促進される。
【0048】
レリーフの構成において温度が上昇すると、種はより大きな凝集体を形成し(レリーフの頂点において)、これらの凝集体は間隔がより広がって、それゆえレリーフの高さが特に増加し、レリーフ間の間隔も増加する。
【0049】
加熱/エネルギー供給操作の温度は、更に制限されることがある(エネルギー費及び/又は関係する材料の耐性能力、例えば混成材料の被膜を支持する有機基材の耐熱能力の理由で)。
【0050】
フラックスも、本発明による混成材料の構造化において役割を演じる。
【0051】
構造化を促進するためには、エッチングフラックスは0.01mA/cm2より大きく、一般には0.05〜0.3mA/cm2以上であり、フラックスはとりわけ0.4mA/cm2以上である。
【0052】
フラックスを十分増加させると構造化の時間が短縮するが、それは温度を上昇させるのと同じように形成される構造体の外観も変更させることがある(レリーフが増加するが密度は低下する)。
【0053】
入射イオンのエネルギーが、本発明による混成材料の構造化において決定的に重要な役割を演じることもある。
【0054】
エネルギーの効果は複雑である。それはエロージョン速度を増加させるが、イオンの侵入深さも増加させ、それにより種のより効果的な体積拡散を可能にする。従って、構造体を形成する速度も加速され、構造体も幅と高さがより大きくなる。
【0055】
それにひきかえ、材料に依存して、一定の限界値(一般に1000eV)より高くなると、高過ぎるエネルギーが、構造化が妨げられるに至るまで、マスクの有効性を低下させる。
【0056】
エネルギーは200eVと5000eVの間にあることができ、一般には300eVと2000eVの間、更に好ましくは500eVと1000eVの間にあることができる。
【0057】
当然ながら、加熱、高フラックス及び/又は高エネルギーを組み合わせて、広範囲の幅/高さ/密度の構造を得てもよい。
【0058】
それが効果的であるため、新たな構造体(バンプ及びピット)及び/又は新たな高さ(50nmより高い)及び/又は規則的な間隔(など)を有する構造をもたらすエロージョンの時間は、30分以下でよく、15分以下でもよい。
【0059】
広がったイオン源を作り出すために、エロージョン処理は真空下で、例えば1×10-7mbar未満の圧力により定義される真空下で実施される。イオン源は、例えば薄膜被着反応器でよい。
【0060】
前記種は、特に選定された種が銀である場合、エロージョン速度が酸化物のそれより小さいので、エロージョンされた表面構造は穴になり、すなわち領域上で繰り返される基本的な表面構造は、特に、長さLと称される、サブミクロンサイズの、平均的な最大横方向寸法を有し、そして特に、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、垂直の腐食角について0.8Lより大きく、更に0.9Lよりも大きい幅Wを有する、凹部となる。
【0061】
前記種は、酸化物のものより小さいエロージョン速度を有する。
【0062】
特に選定された種が銅である場合、エロージョンされた表面構造はレリーフとなる。特にこのレリーフは不連続でよく、特に、長さLと称される、サブミクロンサイズの、平均的な最大横方向寸法を有し、そして特に、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、垂直の腐食角について0.8Lより大きく、更に0.9Lよりも大きい幅Wを有する、円錐状でよい。
【0063】
これは、前記種のエロージョン速度が酸化物のそれより小さいからである。
【0064】
本発明により構造化される前に、表面は必ずしも平滑であるとは限らず、既に構造化されていてもよい。
【0065】
構造化の可能な混成材料において(あるいは構造化された表面の下にある厚さにおいて)、前記種は任意選択的にイオン化されてもよく(従って酸化される)、あるいはそうされなくてもよく、それを希釈しても(材料中において孤立化させる)及び/又は凝集体の形にしてもよく、その凝集体は好ましくは(実質的に)球状である。
【0066】
これは、構造化可能である混成材料を製造するのに用いられる方法に依存し、また特にそれを取り込む方法に依存する。
【0067】
前記種は、下記で説明するように、イオン注入により(イオン衝撃により)、イオン交換により、あるいは粒子の取り込み又はその場での成長(金属塩などからの)により、取り込むことができる。
【0068】
前記種は、好ましくは、次に示す種、特に金属、のうちの少なくとも1つから選定される。
・銀Ag。特に光学機能(UVと可視光との境界で誘起される吸収)及び/又は触媒及び/又は抗菌機能向け。
・銅Cu。特に光学機能向け。
・金Au。生物分子のグラフト向け、センサー向け、(非線形の)光学用途向け、及び/又は抗菌機能向け。
・コバルトCo。磁性機能向け。
・鉄Fe。磁性及び/又は触媒機能向け。
・白金Pt。触媒機能向け。
・ニッケルNi。磁性及び/又は触媒機能向け。
・スズSn。電気機能向け。
・更にはガリウムGa、アンチモンSb又はインジウムIn。表示又は放送機能向け。
【0069】
鉛PbとモリブデンMoは、環境上の理由から使用しないのが好ましい。
【0070】
いくつかの金属は所定の機能性を提供する凝集体を形成することができ、例えば磁気メモリー用のCo/Ptが挙げられる。
【0071】
その他の遷移金属、例えばTi、Nb、Cr、Cd、Zr(特にシリカ中の)、Mnなど、を用いることも考えられる。
【0072】
より効果的な構造化のためには、種が凝集するのを可能にするように、種の有効電荷はゼロ又は0.5未満(EELSにより与えられる)である。
【0073】
酸化物単独では電気絶縁性である可能性があり、上記の種は電気伝導特性を提供することができる。
【0074】
特にシリカについては、アルミニウムAlとホウ素Bは使用しないのが好ましく、その理由はそれらはシリカの格子中に組み込まれて容易に凝集しないからである。
【0075】
より詳しく言えば、エロージョン速度が過度に大きいアルカリ又はアルカリ土類金属よりも、遷移金属と、そして一部のメタロイドの方が好ましい。例えば、ガラスの場合、LiとNaはスパッタリングされ、そして凝集しない(十分速く)ので適していない、と言うことができる。
【0076】
酸化物は更に、可視領域で、また目的とする用途に応じて近赤外又は遠赤外に至る領域においても、及び近紫外に至る領域においても、透明(十分に)であることができる。
【0077】
混成酸化物を使用してもよく、移動性の種は凝集しない(標準の温度及び圧力条件下で)が構造体を形成するためのイオンエロージョンの作用下でなおも十分移動性である。
【0078】
酸化物は好ましくは、次の酸化物、すなわち、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、とりわけ混合アルミニウム/ケイ素酸化物、混合ジルコニウム/ケイ素酸化物、混合チタン/ケイ素酸化物、のうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはガラスである。
【0079】
本発明による混成材料がいくつかある。
その混成材料は、まず、イオン交換ガラス、特にソーダ石灰ガラス、であることができ、好ましくは次の種、すなわち銀、銅、のうちの少なくとも一方でイオン交換されたものでよく、これらの種は交換中にイオン化される。
【0080】
交換の深さは一般に約1ミクロンであるが、数十ミクロンの深さになってもよい。従って、交換された金属は材料のうちのエロージョンされた部分(<1μm)にほとんど均一に分布する。
【0081】
イオン交換は、ガラス中の一部のイオン、特に例えばアルカリ金属イオンなどが、異なる特性を有するほかのイオンと交換できることである。
【0082】
イオン交換は、ガラス中の特定のイオンが、バリウム、セシウム、タリウム、そして好ましくは銀又は銅から選ばれる、組み合わせでのあるいはそうでない、イオンと交換されるものでよい。
【0083】
銀はマトリクス中において非常に移動性であり、凝集する傾向が強い。
【0084】
混成材料中における交換されたイオンの含有量は、構造化操作の前と後でマイクロプローブを使って測定することができる。
【0085】
イオン交換は既知の技術により行われる。処理しようとするガラス基材の表面を、交換イオンの溶融塩、例えば硝酸銀(AgNO3)の、200℃と550℃の間の温度の浴に、所望の交換深さに対応する十分な時間入れる。
【0086】
浴と接触するガラスは付随して、ガラスの導電率とその厚さに主に依存し、好ましくは10Vと100Vの間の様々な、電場にさらされるのが有利である。この場合、線形プロファイルの屈折率勾配を得るよう、電極を備えたガラスの面に垂直な方向に交換されたイオンを拡散させるために、ガラスをその後、有利には交換の温度とガラスのガラス転移温度との間の温度で、別の熱処理にかけることができる。
【0087】
選定されるガラスは、特別に透明な(extra−clear)ガラスでよい。特別に透明なガラスの組成については、国際公開第04/025334号パンフレットを参照することができる。特に、Fe III又はFe23を0.05%未満含有しているソーダ−石灰−シリカガラスを選定することができる。例えば、Saint−Gobain社からのDiamantガラス、Saint−Gobain社からのAlbarinoガラス(表面構造付きの又は平滑な)、Pilkington社からのOptiwhiteガラス、又はSchott社からのB270ガラスを選定することができる。
【0088】
このように、イオン交換は大きな面積の工業的に再現可能な処理を容易にすることができる。それは、被膜の被着あるいはエッチングなどの中間の及び/又は追加の工程を必要とすることなく直接且つ簡単にガラスを加工するのを可能にする。
【0089】
例えば、銀が用いられる。銀イオンAg+がガラス中に拡散し、ナトリウムイオンNa+と置き換わる深さは、基材が浴中に置かれる時間の関数である。
【0090】
AgNO3浴とは異なるものとして、金属銀の被膜を被着させてもよい。この被膜は、マグネトロンスパッタリング、CVD、インクジェット印刷、又はスクリーン印刷で被着される。更に、電極を形成する被膜を反対面に被着させる。このときは、電場を銀被膜と金属被膜との間に印加する。交換後、電極被膜は研磨又は化学エッチングにより除去される。
【0091】
その結果、金属被膜又は浴と電極との間に印加される電場がイオン交換を引き起こす。イオン交換は、250℃と350℃の間の温度で行われる。交換の深さは、電場の強さ、基材をこの電場に暴露する時間、及び交換を行う温度の関数である。電場の強さは10Vと100Vの間にある。
【0092】
例えば、そのようなイオン交換は、好ましくは特別に透明な、ガラスの2mm厚の板について、300℃の温度及び10V/mmの電場の下で、10時間行うことができる。
【0093】
Saint−Gobain社からのPlaniluxガラスなどの通常のソーダ石灰ガラスを使用して、ガラスとのイオン交換後に銀のナノ粒子を得てもよい。銀粒子の入り込む深さと大きさは、実験条件を変えることにより変更することができ、すなわち、交換の時間と温度を増加させるとより大きな粒子がより深くへ進み、その結果より際立った黄色が得られる。交換の際に電場を加えると、粒子を大きくすることなしに入り込む深さを増加するのが可能になる。こうして、エロージョン後の黄ばんだ外観、又は入り込む深さを、黄ばみがそれほど目立たず従ってエロージョン後に光学的に許容可能であるならばエロージョンの深さよりもわずかに数ミクロンだけ大きくすることができるように、入り込みの深さをエロージョンの深さに対応して調整することができる。
【0094】
代表的な銅交換ガラスとして、Don et al.による発表である“ultrafast dynamics of copper nanoparticles embedded in sodalime silicate glass fabricated by ion exchange”, Thin Solid Films 517 (2009) pp6046−6049を挙げることができる。
【0095】
交換し構造化したガラスは、一体式のユニット、積層式のユニット、又は2つの構成材のユニットであることができる。構造化操作を行った後に、交換し構造化したガラスをいろいろなガラス加工操作、すなわち強化、成形、積層などに付してもよい。
【0096】
混成材料はバルク材でもよく、あるいは基材全体に、その基材が厚いものであれ薄いものであれ、平坦であれ湾曲したものであれ、不透明であれ透明であれ、無機物であれ有機物であれ、付加された被膜でもよい。構造化可能な混成材料で作られた被膜を、とりわけガラス基材に、接着剤などで結合させてもよく、好ましくは被着させてもよい。この被膜は基材、特にガラス基材、の上に存在する(薄い)被膜の多層のうちの一部でもよい。
【0097】
構造化可能な混成材料で作られたこの被膜は、好ましくは、透明であることができ、ガラスの屈折率(一般に約1.5)よりも例えば大きい屈折率を有することができる。
【0098】
構造化可能な混成材料で作られた被膜は、任意の既知の被着技術によって、基材上に直接又は1以上の下層の(例えば薄い)機能性被膜の上に被着させてもよい。
【0099】
特に、それは、(薄い)機能性被膜の上に、例えば、透明な導電性酸化物(TCO)、例としてITO(酸化スズインジウム)、ZnO、又はスズ、インジウムもしくは亜鉛を基礎材料とする混合酸化物もしくは簡単な酸化物、あるいは光触媒被膜(例えばアナタース型のTiO2)などの、機能性酸化物被膜の上に、被着させてもよい。
【0100】
この混成材料被膜は、いろいろな熱処理(徐冷又は強化など)の際にガラスから被膜中へアルカリ金属イオンが移動するのを防ぐために、アルカリ金属バリヤ膜(一般にSi34又はSiO2で製作される)の上に有利に被着させることができる。
【0101】
基材は、必ずしも無機基材であるとは限らず、ガラス基材では手に入れることができない柔軟性及び成形特性を得ることを目的として、プラスチック又は混成材料で製作してもよい。この場合、300℃より高い温度での、ほとんどの場合は200℃より高い温度での熱処理が可能ではないので、使用する系は活性エネルギーが低くなければならない。
【0102】
混成材料製の前記被膜を被着させる工程を設けることが可能であり、この工程は構造化生産ラインで行われる。
【0103】
混成材料は、バルク状のゾル−ゲル又はゾル−ゲル被膜であることができ、特に透明な(無機又は有機の)ガラス基材上の被膜であることができる。ゾル−ゲルには、高温の熱処理(例えば(曲げ)強化操作)及び紫外線への暴露にも耐えるという利点がある。
【0104】
これは特に、次の元素、すなわち、Si、Ti、Zr、Al、V、Mg、Sn及びCe、のうちの少なくとも1種の、ゾル−ゲル法により得られ、任意選択的に沈降(ナノ)粒子の形をした前記金属又はメタロイド、特にAg、Cu又はAu、を取り入れることによって得られる、酸化物でよい。
【0105】
ナノ粒子は、バルク材又は被膜中に均一に分布するのが好ましい。好ましくは、粒子(形成され又は挿入された、個別の又は一団になった、沈降した)の最大寸法は、25nmより小さく、より好ましくは15nmより小さくて、粒子のアスペクト比は3未満であって、粒子は球形であるのが好ましい。
【0106】
ゾル−ゲル中のナノ粒子の含有量は、マイクロプローブ、XPS又はEDXで測定することができる。
【0107】
例えば、シリカは、透明な酸化物であるという明らかな利点を有し、酸化チタンとジルコニアは屈折率が高いという明らかな利点を有する。一例として、600nmにおいて、シリカ被膜の屈折率は一般に約1.45であり、酸化チタン被膜の屈折率は約2、ジルコニア被膜の屈折率は約2.2である。
【0108】
被膜はとりわけシリカを基にすることができ、特にその理由はそれがガラス基材によく付着しそれとの相性がよいからである。
【0109】
シリカ被膜を形成する材料のゾル前駆物質は、シラン又はケイ酸塩前駆物質でよい。
【0110】
(特に)無機の被膜については、テトラエトキシシラン(TEOS)又はケイ酸カリウム、ナトリウムもしくはリチウムを基にした被膜を選ぶことができ、そして例えばフローコーティングにより被着させることができる。
【0111】
例えばシリカ被膜は、CO2雰囲気への暴露によって硬質被膜に変えられるケイ酸ナトリウムの水溶液を基にすることができる。
【0112】
ゾル−ゲル法を利用したバルクの混成材料の製造は、例えば次の工程を含む。
・前記酸化物の構成材料の前駆物質の加水分解、特に、溶媒中での、とりわけ水性及び/又はアルコール性溶媒中での、ハロゲン化物又はアルコキシドなどの加水分解性化合物の加水分解、その後のゾルの熟成。
・前記金属の粒子をその場で成長させることを目的とする、溶媒中の、とりわけ水性及び/又はアルコール性溶媒中の前記金属の粒子のコロイド懸濁液の、及び/又は前記金属の塩の、前記ゾル中への混入。この添加は、できる限り前記加水分解の開始時、又は前記ゾルが反応速度を制限するのに十分熟成後に行う。
・粘度を上昇させそして固体ゲルを得るようにする、前記前駆物質の縮合と前記溶媒の任意選択的な除去。
【0113】
ゾル−ゲル法を利用した混成材料の被膜の製造は、例えば次の工程を含む。
・前記酸化物の構成材料の前駆物質の加水分解、特に、溶媒中での、とりわけ水性及び/又はアルコール性溶媒中での、ハロゲン化物又はアルコキシドなどの加水分解性化合物の加水分解、その後のゾルの熟成。
・前記金属の粒子をその場で成長させることを目的とする、溶媒中の、とりわけ水性及び/又はアルコール性溶媒中の前記金属の粒子のコロイド懸濁液の、及び/又は前記金属の塩の、前記ゾル中への混入。この添加は、できる限り前記加水分解の開始時、又は前記ゾルが反応速度を制限するのに十分熟成後に行う。
・例えばスピンコーティング又はフローコーティングによる、被膜の被着と、溶媒の蒸散。
・前記前駆物質を縮合させできるだけ前記溶媒を除去するようにする、熱処理の実施。
【0114】
コロイド懸濁液の選択は、挿入される粒子の大きさを必要に応じて調整するのを可能にする。懸濁液をゾル中に分散させるときは、それとゾルとの適合性を監視して粒子の凝集を防ぐ。前記金属の塩を添加するのははるかに容易であり、文献にしばしば報告されている。
【0115】
溶媒としては、金属塩が適切に溶解できるように、水又は低沸点(一般に100℃未満)の低モル質量のアルコールが好ましい。
【0116】
酸化物/金属混成物中に存在するナノ粒子の数は、合成条件を管理することにより容易に制御することができ、ナノ粒子の数はゾル中に導入される金属の量とともに増加する。
【0117】
ゾル−ゲル法を利用する混成金属/金属酸化物材料の生成は、広く文献に記載されている。例えば、被膜又はバルク材料の形をした広範囲の金属/酸化物の組み合わせが合成されてきた。金属粒子は、対応する金属の塩を添加し、その後還元処理(ほとんどの場合熱処理、さもなければ還元剤、すなわちH2、ヒドラジンなどを使用する処理)を適用して、マトリクス中においてその場で作り出すのが好ましい。
【0118】
“Recent trends on nanocomposites based on Cu, Ag, and Au cluters: A closer look”と題された発表(L. Armelao et al., Coordination Chemistry Reviews, 2006, 250, p1294)に、最大10wt%までの銀と銅の塩をゾル−ゲル法で得られたシリカ被膜中に導入し、そして熱処理(500℃より高い温度での)後に大きさが数nmの金属Agの粒子又はCu/CuOx粒子が管理されたやり方で得られたことが報告されている。著者は、熱処理が得られた粒子の大きさと酸化状態とにとって重要であることを実証しており、シリカマトリクス中に他の金属又は酸化物の粒子が得られたことも報告している。ほとんどの場合、多孔質のマトリクスがナノ粒子のためのホストとして用いられる。しかし、これらの研究に基づき、人為的な多孔性のない材料を得ることが可能である。例えば、発表の“Insight into the properties of Fe oxide present in high concentrations on mesoporous silica” (Gervasini et al., Journal of Catalysis 2009, 262, p224)では、最大で17wt%のFe23触媒粒子を含有するメソ多孔質シリカ(すなわち3〜10nmの特性細孔径を有する)が得られた。
【0119】
“Optical properties of sol−gel fabricated Ni/SiO2 glass nanocomposite”と題された発表(Yeshchenko O.A. et al., Journal of Physics and Chemistry of Solids, 2009, 69, p1651)では、シリカマトリクス中に含ませた硝酸ニッケルを熱処理することにより光学用途向けのニッケルナノ粒子が得られたことが報告された。最後に、“Synthesis and characterization of tin oxide nanoparticles dispersed in monolithic mesoporous silica”と題された発表(Y.S. Feng et al., Solid State Science, 2003, 5, p729)では、600℃での熱処理後に4〜6nmのSnO2粒子がメソ多孔質シリカ中に20%で得られた。
【0120】
ゾル−ゲル法によって、シリカマトリクス以外のマトリクスを使用してもよい。最も重要な点は、所望のイオンの塩の存在下において有機金属前駆物質のゾルの安定性を管理することである。例えば、酸化チタン中では、銀のナノ粒子を使用して導電率又は光触媒活性を増加させることができる。“Effect of incorporation of silver on the electrical properties of sol−gel derived titania film”と題された発表(Hong Li et al., Journal of cluster scienece, 2008, 19, pp667−673)では、5〜15nmのAgナノ粒子がアナタースTiO2マトリクス中に最大で10%取り入れられた。“Nonlinear optical and XPS properties of Au and Ag nanometer−size particle−doped alimina films prepared by the sol−gel method”と題された発表(T. Ishizaka, Optics Communication, 2001, 190, pp385−389)では、非線形光学用に金又は銀の5〜12nmの粒子がアルミナ膜中に最大で1%取り入れられた。前駆物質含有量を増加させると、ドープ量のより多いマトリクスを得ることが可能であった。最後に、“Structural and optical properties of silver−doped zirconia and mixed zirconia−silica matrix obtained by sol−gel processing”と題された発表(F. Gonella et al., Chemistry of Materials, 1999, 11, pp814−821)では、Agナノ粒子がジルコニア又は混合ジルコニウム酸化物中に最大10%まで取り入れられた。このマトリクスの組成は銀の凝集を制御するのを可能にした。
【0121】
その上、このゾル−ゲル法は追加の機能性を被膜に与えるのを可能にする。当該方法で構造化された表面は,その後機能化して新たな湿潤特性を得ることができる。特に、国際公開第00/64829号パンフレットには、式CF3−(CF2m−(CH2nSi(X)3-pp(式中、m=0〜15、n=1〜5、p=0、1又は2、そしてXは加水分解性基、Rはアルキル基である)を有する少なくとも1種のフルオロアルコキシシランと、好ましくはアルコールと約10%の水とからなる、水性溶媒の系と、酸及び/又はブレンステッド塩基から選ばれる少なくとも1種の触媒とを含む疎水性且つ疎油性のコーティングを作ることが記載されている。この合成物は、シリカに基づくプライマー層を任意選択的に被着後に、ガラス製品又は機能性金属酸化物被膜、特に表面構造化した製品、の広い面積(1m2より大きい)に被着させることができる。この方法と表面構造模様との組み合わせは、超疎水特性(ロータス効果タイプの)をもたらす。
【0122】
有機被膜を被着させるための好ましい方法は、とりわけ“Thermowetting structuring of the organic−inorganic hybrid materials”と題された論文(W−S. Kim, K−S Kim, Y−C Kim, B−S Bae, 2005, thin solid films, 476 (1), pp181−184)に記載されたように、ディップコーティング又はスプレイであり、この後にドクタリング又はブラシがけにより、あるいは加熱により、液滴を広げることが続く。選択される方法はスピンコーティングでもよい。
【0123】
当然ながら、少なくとも400℃での徐冷が好ましく、特に、酸化物を十分に濃縮し,活性エネルギーを低下させ,そして前記金属の凝集体を形成するためには、500℃より高い温度で、少なくとも30分間、更には1時間の徐冷が好ましく、十分な反応速度が得られるようにし且つガラス基材を損傷しないようにするには、800℃未満、とりわけ最高で750℃までの温度での徐冷が好ましい。
【0124】
この徐冷は、有利には、ガラスを強化する工程と組み合わせることができ、この操作はガラスを高温(一般に550℃と750℃の間)に加熱しその後それを急速に冷却するというものである。
【0125】
その他の構造化可能な混成材料の被膜が存在する。
【0126】
前記混成材料は、基材への、とりわけ透明なガラス基材への、物理気相成長、一般には蒸着又はスパッタリングによって(特にマグネトロンスパッタリングによって)被着させた、とりわけ、種(先に示したリストからの)、例えば銅、銀又は金などと、酸化物、特にシリカ、ジルコニア、酸化スズ又はアルミナとを、酸素雰囲気中で当該酸化物の元素で製作したターゲットを使用して、あるいは当該酸化物で製作したターゲットを使用して、共同被着させることによって被着させた被膜でよい。
【0127】
100nmの厚さの又はミクロンサイズの被膜をより素速く製造するためには、スパッタリングの方が蒸着よりも一般に好ましく、これはその被着速度がはるかに大きいからである。例えば、蒸着の場合の被着速度が一般に約1A/minで、最大の速度が1A/sであるとすれば、マグネトロンスパッタリングの被着速度は一般に1A/sと数十nm/sの間にある。
【0128】
例えば、混合SiO2/銅被膜を被着するためには、酸素を導入しながらケイ素ターゲットと銅ターゲットを使用する共同被着を利用するか、あるいは銅ターゲットとシリカターゲットを直接利用することが可能である。
【0129】
基材はガラス基材でよい。本発明に関して、「ガラス基材」という表現は無機ガラス(ソーダ−石灰−シリカ、ホウケイ酸塩、ガラス−セラミックなど)の基材を意味するか、あるいは有機ガラス(例えば熱可塑性ポリマー、例としてポリウレタン又はポリカーボネートなど)の基材を意味すると理解される。
【0130】
本発明に関して、基材は、標準の温度及び圧力条件下で、無機の構成要素については少なくとも60GPa、有機の構成要素については少なくとも4GPaのモジュラスを有する場合に、「硬質」と称される。
【0131】
ガラス基材は好ましくは透明であって、特に少なくとも70〜75%の全体としての光透過率を有する。
【0132】
ガラス基材の組成に関しては、用途にとって有効なスペクトル部分、一般には380〜1200nmの範囲のスペクトルにおいて、0.01mm-1未満の線吸収のあるガラスを使用するのが好ましい。
【0133】
更に好ましくは、特別に透明なガラス、すなわち380〜1200nmの範囲の波長スペクトルにおいて0.008mm-1未満の線吸収を有するガラスが用いられる。例えば、Saint−Gobain Glass社により商品名Diamantで市販されているガラスを選択することができる。
【0134】
基材は、一体式の基材、積層式の基材、又は2つの構成材の基材であることができる。構造化操作を行った後に、基材をいろいろなガラス加工操作、すなわち強化、成形、積層などに付してもよい。
【0135】
ガラス基材は薄くてもよく、例えば、無機ガラスについては厚さが約0.1mm、有機ガラスについては厚さが1mmでよく、あるいはもっと厚くてもよく、例えば、数mm以下、更には1cm以下の厚さでもよい。
【0136】
導電性の半導体及び/又は疎水性被膜、特に酸化物に基づく被膜を被着させる工程を、最初の構造化操作の後に行うことができる。
【0137】
この被着は連続して行うのが好ましい。
【0138】
被膜は例えば、銀又はアルミニウムで作られた金属被膜である。
【0139】
有利には、構造化した表面に、例えば誘電性であるかそれほど導電性でない、表面構造体に又はそれらの間に、導電性被膜(特に金属酸化物に基づく被膜)を選択的に被着させるための工程を設けてもよい。
【0140】
例えば金属の、特に銀又はニッケルの、被膜は、電着により被着させることができる。後者の場合に、電着のための電極を形成するために、構造化した被膜は有利には、導電性(半導体)被膜でもよく、あるいは金属粒子をドープしたゾル−ゲルタイプの誘電性被膜、さらには導電性の最上層シード層を有する多層であってもよい。
【0141】
上記の電解質混合物の化学ポテンシャルは、大きな曲率のゾーンでの被着を促進するために適合させられる。
【0142】
被膜を構造化後に、表面構造の配列のガラス基材及び/又は下にある層への、特にエッチングでの、転写を想定してもよい。
【0143】
構造化した被膜は犠牲被膜であってもよく、そしてそれは部分的に又は完全に除去することができる。
【0144】
一つの実施形態において、構造化した表面は、おのおのが別個の表面構造(それらの形状、それらの特性寸法の1つ、特にそれらの間隔が異なる)及び/又は配向が別々の表面構造を有する、複数の構造化領域に分けてもよい。
【0145】
材料を製造する際、移動性種の含有量及び/又は移動性種の数は、一つの領域と別のものとで違っても差し支えない。
【0146】
バルクの又は薄い皮膜の酸化物の特定の領域を、移動性種が取り込まれないように、あるいは取り込みの条件を局所的に変更するために、マスクしてもよい。
【0147】
当然ながら、構造化した被膜も下にある層のためあるいは隣り合った基材のためのマスクとして働くことができる。
【0148】
本発明はまた、構造化した表面を有する、すなわち高さがサブミクロンサイズであり少なくとも1つの(サブ)ミクロンサイズの特性横方向寸法を持つ凹凸又は表面構造の配列を有する、製品にも関するものであり、この固体混成材料は以下のものを含む。
・1種以上の元素の単純な酸化物又は混合酸化物。当該材料中の当該酸化物のモル百分率は少なくとも40%であり、特に40%と94%の間である。
・前記酸化物の1種以上の元素とは性質を異にし、特に金属である、少なくとも1つの種。
・当該材料中における当該1以上の種のモル百分率は6モル%から最大50モル%までの範囲であるとともに、前記酸化物の百分率よりは小さいものにとどまり、当該種は50nmより小さい最大特性寸法を有し、上述の方法を使って得ることができる。
【0149】
構造化した製品は、エレクトロニクス、建築、又は自動車用途向けのものでよく、あるいはマイクロ流体用途向けのものでもよい。
【0150】
様々な製品を挙げることができ、とりわけ、
・改変した化学的性質(「超」疎水性、親水性)を有するグレージングユニット、
・特に照明装置又はフラットLCDディスプレイにバックライトを当てるための装置のため、とりわけ発光デバイスのための光抽出手段のため、例えば表示スクリーン、照明又は信号送信用途向けの、光学製品のための、光学的特性を有するグレージングユニット、
・建築用のグレージングユニット、とりわけ日射及び/又は熱を制御するグレージングユニット、
を挙げることができる。
【0151】
構造化に関連する機能と特性は、特性寸法H、W及びDに依存する。
【0152】
ナノ構造化した製品の光学的機能性の範囲は広い。製品は、以下の特性のうちの少なくとも1つを有することができる。
・表面構造はレリーフであり、特に、長さLと呼ばれ、サブミクロンサイズである平均の最大横方向寸法を有し、且つ特に、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、直角の腐食角について0.8Lより大きい幅Wを有し、材料が当該レリーフのピークにおいて且つ表面厚さと呼ばれる10nmより薄い厚さを通して移動性種を特に多く含んでいるレリーフである。
・それは銀又は銅とイオン交換された、イオン交換ガラスであり、あるいはそれは上記の種を、特に銀又は銅及び/又は金を、基材上に、とりわけ透明基材上に含む、バルクのゾル−ゲル又はゾル−ゲル被膜である。
・表面構造は高さhの穴であり、特に、長さLと呼ばれ、サブミクロンサイズである平均の最大横方向寸法を有し、且つ特に、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、直角の腐食角について0.8Lより大きい幅Wを有し、材料が当該穴の底において且つ表面厚さと呼ばれる10nmより薄い厚さを通して金属を特に多く含んでいる穴。
・表面構造は高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定される。
・間隔Dは、マイクロ流体用途又は湿潤特性向けには5μmより小さくなるよう、赤外線用途向けには2μmより小さくなるよう、そして赤外領域にも及ぶ光学用途(光電池又は光触媒などのための反射防止、光抽出及び集光)向けには500nmより小さく、好ましくは300nmより小さく、より好ましくは200nmより小さくなるように選ばれる。
・高さHは好ましくは、光学(可視及び赤外)用途向けには20nmより大きく、より好ましくは50nmより大きく、更に一層好ましくは100nmより大きくなるよう、そして湿潤特性(超疎水性又は超親水性)向けには70nmより大きく、好ましくは150nmより大きくなるように選ばれる。
・幅Wは、D/10より大きく、より好ましくはD/5より大きく、更に一層好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる。
・表面構造は高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定される。
・間隔Dは、マイクロ流体用途向け又は湿潤特性用には5μmより小さくなるよう、赤外用途向けには2μmより小さくなるように選ばれる。
・高さHは好ましくは、湿潤特性(超疎水性又は超親水性)のためには70nmより大きく、より好ましくは150nmより大きくなるように選ばれる。
・幅Wは、D/10より大きく、より好ましくはD/5より大きく、更に一層好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる。
【0153】
エロージョンされた領域は、真空被着される薄い被膜の成長のための基材を構成してもよく、表面構造は高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定される。
・間隔Dは、200nmより小さくなるよう、好ましくは200nmと100nmの間になるよう、より好ましくは50nmより小さくなるように選ばれる。
・高さHは好ましくは、20nmより大きく、より好ましくは50nmより大きくなるように選ばれる。
・幅Wは、D/10より大きく、好ましくはD/5より大きく、より好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる。
【0154】
レリーフは特に、不連続の円錐状であることができる。
【0155】
レリーフの表面構造について言うと、レリーフのピークは、表面厚さ(ビームのイオンの注入波長よりも小さい)と呼ばれる、一般には2〜10nmの、厚さを通して前記金属が多くされている。
【0156】
くぼんだ表面構造の場合は、くぼみの底で、一般に2〜10nmの厚さ(ビームのイオンの注入波長よりも小さい)を通して前記金属が多くされている。
【0157】
金属が富化された領域の存在することは、既知の顕微鏡による検査手法、すなわちTEM、STEMにより、及び/又は既知の顕微鏡による検査手法もしくは分光的手法、すなわちSTEM、EELS、EDXを利用する化学マッピングにより、確認することができる。
【0158】
前記材料の2つの主要な領域を、同様の又は別個の表面構造で、同時に又は相次いで、構造化してもよい。
【0159】
構造化した製品は、マイクロ流体用途で使用される日射及び/又は熱の制御グレージングユニット、光学的機能、例えば反射防止機能などを備えたグレージングユニット、可視及び/又は赤外領域の反射偏光器、特に液晶表示装置用の、光を前方へ向け直すための構成部品、有機又は無機の発光デバイスから光を抽出するための手段、あるいは超疎水性又は超親水性のグレージングユニットでよい。
【0160】
本発明のこのほかの詳細と有利な特徴は、以下の図によって説明される実施例を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1a−1d】本発明の第1の実施形態で様々な時間構造化したバルクの混成シリカ/金属材料の4つのAFM顕微鏡写真の一組である。
【図2】図1dに関して説明した製造方法で得られた構造化ガラス製品の模式断面図である。
【図3】図1dに関して説明した製造方法で得られた構造化したバルクの混成シリカ/金属材料の平面SEM顕微鏡写真である。
【図4a−4b】本発明の第2の実施形態における構造化混成シリカ/金属材料の被膜の倍率を異にする2つのAFM顕微鏡写真の一組である。
【図5a−5c】本発明の第3の実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の被膜の倍率を変えた3つのAFM顕微鏡写真の一組である。
【図6】図5aに関して説明した製造方法で得られた構造化ガラス製品の模式図である。
【図7a−7c】本発明の第4の実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の被膜の倍率を変えた3つのAFM顕微鏡写真の一組である。
【図8】非構造化混成シリカ/銅材料の被膜の比較対照例のAFM顕微鏡写真である。
【図9】第5の標本実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の典型的な被膜のAFM顕微鏡写真である。
【図10】第6の標本実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の典型的な被膜のAFM顕微鏡写真である。
【図11】非構造化混成シリカ/銅材料の被膜の比較対照例のAFM顕微鏡写真である。
【実施例】
【0162】
〔第1のイオン交換した構造化ガラスの例〕
第1の厚さ2mmの銀イオン交換した窓ガラスを、Saint−Gobain社からのPlanilux(商標)ソーダ石灰フロートガラスとのイオン交換後に得た。
【0163】
イオン交換は、ガラス中のナトリウムイオンを硝酸銀の浴からの銀と交換するものであった。
【0164】
第1の工程で、ガラスを300℃の純粋な硝酸銀中に2時間浸漬した。
得られたガラスは、表面から数ミクロンの深さまでの銀濃度プロファイルを有していた。
【0165】
ガラスはわずかに黄色であることが観察された。この色は銀ナノ粒子の特徴である。ガラス中に入り込んだ銀の一部は還元され、交換反応中に凝集して数ナノメートルの大きさのナノ粒子になっていた。
【0166】
その結果、銀は約4ミクロンの深さまで入り込んでいた。シリカの割合は一定のままであり、表面にほとんど線形の銀濃度プロファイルが認められた。銀と交換されたのは実際にナトリウムであって、カルシウム、カリウム又はガラス中の他の何らかのカチオンではなかった。従って恐らくは、数ミクロンの深さまで粒子の形でもって銀が存在していた。
表面は約15モル%のAgを含有していた。
【0167】
ベース圧力が5×10-8mbarの超高真空反応器で、エロージョン処理を行った。500evのエネルギーを持つAr+イオンのビームのフラックスを、0.09mA/s・cm2に維持した。
【0168】
銀イオン交換ガラスの表面のAFM顕微鏡写真から、表面構造はエロージョン後に現れた穴で構成されていることが示される。高密度で分布し直径が数百ナノメートルであるこれらの穴は、ビーム下で30分後に現れた。
【0169】
図1a〜1dは、 本発明の第1の実施形態において様々な時間構造化したバルクの混成シリカ/金属材料の4つのAFM顕微鏡写真の一組を示している。
【0170】
図1a〜1dは、500eVのエネルギーを有しフラックスが0.09mA/s・cm2であるAr+イオンのビームを使って6、12、15、30分間エロージョン後の銀とイオン交換したPlaniluxガラスの一領域のAFM顕微鏡写真を示している。
【0171】
銀が凝集し、エロージョンされた表面に向かってシリカよりも素速く拡散していた。この銀の高いエロージョン速度は、マグネトロン被着において更に頻繁に観察される。
【0172】
図2は、図1dに関して説明した製造方法で得られた構造化ガラス製品の模式図であり、1はイオンエロージョンで影響を受けていない材料を示し、2はくぼみを示し、3はくぼみの底の前記金属種が多く含まれる領域を示し、10は構造化した表面を示している。
【0173】
次にSEMで、このエロージョン処理した銀イオン交換ガラスの表面の画像を得た。この画像で、エロージョンにより作られた穴の密度を観察することが可能である。図3は、図1dに関して説明した製造方法で得られた構造化したバルクの混成シリカ/金属材料の平面顕微鏡写真を示している。
【0174】
図3は、500eVのエネルギーを有しフラックスが0.09mA/s・cm2であるAr+イオンのビームを使って30分間エロージョン後の銀とイオン交換したPlaniluxガラスの一領域のSEM顕微鏡写真を示している。
【0175】
このような顕微鏡写真を、試料の表面の多数の場所で撮影した。その結果、AFMで観察した表面構造がイオンビームにさらされた領域全体にわたって実際に存在していることを確認することが可能であった。従って、構造体はエッジ効果と無縁であり、試料ホルダーの白金フィンガーの存在とも、また汚染物質とも無縁である。
【0176】
要約すれば、銀とイオン交換したPlanilux(商標)ガラスをエロージョン処理した。エロージョンする間に、直径数百ナノメートルの穴がビームにさらされた領域の全体にわたって形成された。得られた穴の直径Wは50nm、平均の高さHは20nmであった。エロージョン後に、試料の黄ばみはもはやほとんど目に見えなかった。
【0177】
穴がどのようにしてできるかについてもっと調べるために、銀を含有しているPlanilux(商標)ガラスをいろいろな時間エロージョン処理した(図1)。試料の表面の画像を、それをエロージョンしてから5分間AFMにより得た。それでもって、形成し始める穴を観察することが可能であった。
【0178】
穴は8〜10分のエロージョン後に現れ始め、エロージョン時間とともにそれらの大きさが増すことが観測された。
【0179】
もっと大量の及び/又はもっと素速い構造化を、次のパラメーター、すなわち、ガラス中に存在する銀の量を増加させること、エロージョンを行う間ガラスを加熱すること、イオンのフラックス及び/又はエネルギーを増加させること、入射イオンを変更すること、のうちの少なくとも1つを変更することによって行うことができる。
【0180】
〔第2の構造化の少ないイオン交換ガラスの反証例〕
大量のアルミナを含有しているJenaガラスを、硝酸銀中で2時間の同じイオン交換に付した。得られた銀イオン交換ガラスは、Planilux(商標)ガラスとは違って、着色していなかった。アルミニウムはケイ素よりも陽性が強いので、AlO2中では酸素イオンはSiO2中よりも更に負に帯電している。従って、アルミナの存在は格子中におけるイオン形態の銀を安定化させ、そのため金属銀が凝集して粒子を形成するのを妨げる。ナトリウム及び酸化銀とシリカの詳しい濃度プロファイルを、先のガラスについてEDXにより測定した。
【0181】
ここでも、ナトリウムの量と酸化銀の量とは実際に一致した。しかし、銀の侵入の深さは、それが400ミクロンまでの深さに存在していたので大きかった。表面には約25%のAg2Oが含まれていた。
【0182】
選定したエロージョン条件下で表面にナノスケールの構造化は認められず、逆に表面は平滑になり緩和されていた。銀はガラス中に均一に、イオンの形態で広がっており、凝集体の形では広がっていなかった。
【0183】
〔構造化したシリカ/銀ゾル−ゲル被膜の例〕
第2の混成材料をゾル−ゲル法を使って調製し、エロージョン処理した。
【0184】
ゾル−ゲル法は、例えばシリカなどの無機ポリマーを、有機の前駆物質から室温で合成するのを可能にする。第1の工程では、この前駆物質を、加水分解するよう水と混合した。得られた溶液(ゾルと呼ばれる)を、ガラス又はケイ素基材などの様々な基材上に被着させることができる。被着中に、加水分解した前駆物質が縮合して無機ポリマーマトリクスを形成するまで溶液の溶媒が蒸発する。得られた酸化物ゲルは、ポリマーが完全に縮合するまで、成形して特に薄い被膜にすることができる。
【0185】
被着条件(回転速度)が、厚さの制御を可能にする。従って、被膜の厚さを広い範囲(約10nmから数ミクロンまで)にわたりいろいろにすることができる。加水分解中には、その他の化合物、例えば染料、ドーパントや、被膜に多孔性をもたらす界面活性剤や、合成が室温で行われるため合成によって変更されることのない有機化合物など、を加えることができる。
【0186】
厚さが数百ナノメートルで銀を10モル%含有しているシリカ被膜を、ゾル−ゲル法で合成した。
【0187】
シリカ/銀のゾルを調製するために、pHが2のHNO3(18g)の溶液中にTEOSが10wt%(2g、9.6ミリモル)のゾルを調製し、攪拌しながら3時間放置した。これらのpH条件により、縮合をゆっくりにしながら高い加水分解速度が可能になった。反応中に生成したエタノールを減圧下で蒸発させた後、AgNO3溶液をゾルに加えて(1mL、1モル/L)、nAg=[Ag]/([Ag]+[Si])がnAg>10%になるようにした。
【0188】
シリカ/銅のゾルを調製するために、エタノール(17g)中にTEOSが15wt%(3g、9.6ミリモル)のゾルを調製した。その後、酢酸銅(320mg、1.6×10-3モル)及び、TEOSとこの酢酸塩を加水分解するのに必要な化学量論量(1g、57.7×10-3モル)の水を加えた。pHを3に調製してから、溶液を還流下に70℃で2時間放置した。ゾルにおけるモル比はnCu=[Cu]/([Cu]+[Si])=10%であった。
【0189】
銀含有ゾル−ゲル被膜の厚さを楕円偏光法で測定すると、250±20nmであった。
【0190】
純粋シリカの対照ゾル−ゲル被膜を、銀含有被膜と同じ条件下で合成した。
【0191】
被着及び被着後の処理: 銀含有ゾルと銅含有ゾルを基材上にスピンコーティングにより被着させた(1000rpm、100rpm/s、2時間)。
【0192】
得られた試料を、被膜から残留溶媒を除去しシリカマトリクスの縮合を開始させるよう、200℃で一晩焼成した。縮合を終了させ銀の凝集体を形成させるよう、銀含有試料に高温Tanneal(700℃)での熱処理を施した。それらの熱処理で、銀の酸化状態を決定した。金属銀を得るために、このアニールの温度は500℃と750℃の間である必要があった。
【0193】
対照の被膜は、熱処理がどんなものであれ、エロージョンの前後でほとんど違いがなかった。それらの粗さは小さかった(ほぼ5nm)。これらの分析により、純粋シリカの場合は構造化が起きていないことを確かめることができた。更に、シリカの表面は、その他の酸化物と同じように、エロージョン後に緩和することが知られている。
【0194】
pre-anneal=700℃で予めアニールした被膜を、エロージョンの作用下で構造化させた。気泡が抜ける間に、大きさが数十ナノメートルの穴ができ、材料の表面全体にわたり分布していた。
【0195】
図4a〜4bは、本発明の第2の実施形態における構造化混成シリカ/金属材料の被膜の倍率を異にする2つのAFM顕微鏡写真の一組を示している。
【0196】
図4は、上述のゾル−ゲル法により得られて室温あるいは200℃でエロージョン処理したシリカ/銀被膜のAFM顕微鏡写真を示している。
【0197】
700℃でアニールした被膜は金属銀の凝集体を含有していることが分かった。従って、これらの穴は、恐らくはこれらのナノ粒子のエロージョンの結果である。そうは言うものの、銀含有ゾル−ゲル被膜において一般に観察される粒子は、観察された穴のものより小さい特性寸法を有する。凝集体がエロージョンを受ける前に銀がこれらの凝集体に向かって拡散している可能性がある。
【0198】
10%の銀を含有しTpre-anneal=700℃でアニールしたゾル−ゲル被膜を、Tsubstrate=200℃でエロージョン処理した。200℃でのアニール後、穴はより高い密度で分布しているように見えた。エロージョンの高温が拡散を増加させ、従ってより大きな凝集体が形成するのを可能にしたのであろう。
【0199】
図4の顕微鏡写真の分析から、次の特性寸法が得られた。
【0200】
【表1】

【0201】
実際のところ、穴は、エロージョンを高温で行った場合に間隔がより接近していた。
【0202】
数分のエロージョン後に、直径が数十ナノメートルの穴が形成された。温度を上昇させると、穴の密度が上昇することが観察された。Planilux(商標)の例でなされた観察結果と非常に似ているこれらの観察結果は、銀のナノ粒子がシリカよりも素速くエロージョンされるという仮説を確認する。同じメカニズムをここでも想定することができる。
【0203】
〔構造化したシリカ/銅ゾル−ゲル被膜の例〕
銀の例と同じように、10モル%の銅を含有しているシリカのゾル−ゲル被膜を製造した。表面の構造を、室温でのエロージョンの前と15分後に比較した。
【0204】
図5a〜5cは、本発明の第3の実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の被膜の倍率を変えた3つのAFM顕微鏡写真の一組を示している。図5には、ゾル−ゲル法により得られた銅をドープしたシリカの被膜を室温でエロージョン処理した後に15分間撮影したAFM顕微鏡写真を示している。エロージョン前の表面は大して粗くない(ほぼ2nm)。被膜は均一である。
【0205】
銀とは著しく違って、エロージョン後にナノスケールの穴に代わってレリーフが得られた。高さが約10nmのバンプが形成された。
【0206】
図6は、図5aに関して説明した製造方法で得られた構造化ガラス製品の模式図であり、4はバンプを示し、5はくぼみの底の前記金属種が多く含まれる領域を示し(この領域は前記金属種の純粋な又はほとんど純粋な液滴を形成することができる)、10は構造化した表面を示している。
【0207】
バンプは、銀のメカニズムと逆のメカニズムで説明することができ、図6で説明されるように、銅がそれほど素速くエロージョンされずに、銅の供給を受けた構造体のピーク部に残存している。
【0208】
バンプの形成を促進するためには、エロージョン温度を200℃に上げて拡散を加速させる。エロージョン時間が10分に短縮され、バンプの大きさは増加しているように見えた。
【0209】
図7a〜7cは、本発明の第4の実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の被膜の倍率を変えた3つのAFM顕微鏡写真の一組を示している。
【0210】
これらの図は、被膜を200℃で10分間エロージョン処理した後のゾル−ゲル法により得られた銅をドープしたシリカ被膜の表面のAFM顕微鏡写真を示している。
【0211】
シリカ中に銅を取り込むと、エロージョン後に高さが約10nmのバンプで少し構造化された表面を素速く得ることが可能になる。これらの表面は、銀の場合よりも均一である。熱処理で、バンプの密度が低下し、それらの大きさが増加した。特性寸法を次の表に示す。
【0212】
【表2】

【0213】
もっと大量の及び/又はもっと素速い構造化を、次のパラメーター、すなわち、事前に熱処理を施すこと、ガラス中に存在する銅の量を増加させること、エロージョンを行う間ガラスを加熱すること、イオンのフラックス及び/又はエネルギーを増加させること、入射イオンを変更すること、のうちの少なくとも1つを変更することによって行うことができる。
【0214】
〔マグネトロンスパッタリングで構造化したシリカ/銅被膜の例〕
工業的には、マグネトロンスパッタリングによる被膜の被着は一般的であり、十分特性の知られた技術である。マグネトロンスパッタリングによって、組成を十分制御されたサブミクロンサイズ、更にはミクロンサイズの厚さの被膜を、共同被着により形成することが可能である。その上、イオンエロージョンとマグネトロン被着を同じ真空チャンバーで行うことができ、これは、構造化操作を行うのに要する時間とそのコストの点から見て非常に有利である。
【0215】
混合シリカ/銅被膜を、マグネトロンスパッタリングによりガラス基材上に被着させた。被着は、アルゴン中において1.6×10-3mbarの圧力で行った。一定磁場中の純粋銅のターゲットと高周波磁場中のSiO2のターゲットを使用した。シリカの被着速度は0.8A/sであり、銅の被着速度は所望の濃度(ターゲットの位置と出力により決まる)を得るように選定した。例えば、20%の銅濃度の場合、被着速度は0.2A/sに設定した。
【0216】
こうして、半時間で、厚さが1.5ミクロンより大きい混成シリカの被膜を、銅濃度20モル%で被着させた。十分な銅含有量が構造化にとってどれほど重要であるかを説明するように、銅の被着速度を低下させることにより、濃度が4モル%よりわずかに低い(3.8モル%)被膜も被着させた(対照試料)。XPS測定で、混合SiO2/銅被膜が形成されていることと、それぞれの濃度を確認した。
【0217】
これらの試料を、エネルギーが500eVで0.09mA/cm2の一定フラックスのAr+イオンにより、室温(対照試料)、そしてまた175℃及び250℃で、15分間エロージョン処理した。
【0218】
銅20%の被膜について
図8は、非構造化混成シリカ/銅材料の被膜の比較対照例のAFM顕微鏡写真を示している。それは、室温でのイオンエロージョン後のマグネトロンスパッタリングにより得られた銅をドープしたシリカの被膜のAFM顕微鏡写真である。室温では、AFMによって構造化は観測されなかった。表面は、標準の腐食角でのイオンエロージョン下で平滑にされる純粋なシリカ被膜とは対照的に、比較的粗いままであった。構造体がないのは、マグネトロンスパッタリングで被着させたシリカ中では銅は十分に移動性でないことによるのかもしれない。活性化エネルギーは非常に高く、熱処理が必要とされる。銅の含有量が少なくなればなるほど、熱処理の温度は高くする必要がある。
【0219】
図9は、第5の標本実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の典型的な被膜のAFM顕微鏡写真を示している。銅の拡散速度を上昇させるために、図8に示したものと同一であるこの試料の温度は、エロージョン中は175℃に上昇させた。
【0220】
今回は、シリカ/銅のゾル−ゲルについて、500nmの間隔Dにより分離された高さ3nm、幅200nmのバンプを、基材上に形成した。
【0221】
図10は、第6の標本実施形態における構造化混成シリカ/銅材料の典型的な被膜のAFM顕微鏡写真を示している。銅の拡散速度を上昇させるために、図8に示したものと同一であるこの試料の温度は、エロージョン中は250℃に上昇させた。こうして、密度はそれほど高くないがより大きなバンプが得られ、バンプは高さHが12nm、幅Lが350nmであり、3μmの間隔Dによって分離されていた。
【0222】
図11は、非構造化混成シリカ/銅材料の被膜の比較対照例のAFM顕微鏡写真を示している。図11は、4%未満の銅を含有している被膜について室温でエロージョン処理後のAFMで観察された表面を示している。温度を先行の例におけるように上昇させた場合でも、構造体ができているのは観察されなかった。これは、材料中には最小限の量の前記金属元素が必要とされることを例証している。
【0223】
マグネトロンでの被膜の被着を利用し続いてイオンエロージョンを使用することが可能であることが実証された。バンプのアスペクト比及び/又は密度を増大させるために、銅濃度のより高い被膜を被着させることができる。その上、表面を緩和はさせずナノサイズの円錐が形成されるのを可能にする温度の重要性が実証された。入射イオンのエネルギーとフラックスも調整することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を構造化するための方法、すなわち高さHがサブミクロンサイズであり、そしてミクロンサイズ又はサブミクロンサイズであって幅と呼ばれる少なくとも1つの横方向の特性寸法Wを有する凹凸又は表面構造(2、4)の少なくとも1つの配列を、材料(1)、特にガラスの、所定の領域に、任意選択的に中和されたイオンビームでの、イオンエロージョンによって形成するための方法であって、以下の工程、すなわち、
・前記材料を少なくとも100nmに等しい厚さで供給する工程であり、当該材料は次のもの、すなわち、
・1以上の元素の単一の酸化物又は混合酸化物であって、前記材料中の当該酸化物のモル百分率が少なくとも40%、とりわけ40%と94%の間であるもの、及び
・前記酸化物の前記1以上の元素と異なる性質の少なくとも1つの種であって、とりわけ金属であるもの、
を含む固体混成材料である工程、
・前記混成材料を前記エロージョンの前に任意選択的に加熱する工程、
・前記混成材料の表面を、前記表面構造の配列が形成されるまで、1cm2より大きいエロージョン領域への継続時間が1時間未満のエロージョンで構造化し、この構造化の操作には前記混成材料の加熱が任意選択的に付随する工程、
を含み、
前記材料中における前記1以上の種のモル百分率は6モル%から最大50モル%までの範囲であるとともに、前記酸化物の百分率よりは小さいものにとどまり、前記種の少なくとも大部分は50nmより小さい最大の特性寸法を有し、とりわけ前記混成材料は前記エロージョンより前において準安定性であること、を特徴とする表面構造化方法。
【請求項2】
前記材料を、前記エロージョンの前及び/又は前記エロージョンの間、70℃以上の温度、とりわけ120〜300℃の範囲の温度に加熱することを特徴とする、請求項1記載の表面構造化方法。
【請求項3】
前記エロージョンが、0.01mA/cm2より大きい、とりわけ0.05〜0.3mA/cm2の範囲の、エッチングフラックスを使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の表面構造化方法。
【請求項4】
前記エロージョンが、200〜2000eVの範囲、とりわけ500〜1000eVの範囲の、エネルギーを使用することを特徴とする、請求項1〜3の一つに記載の表面構造化方法。
【請求項5】
特に選定された前記種が銀である場合、エロージョンされた前記表面構造が穴(2)になり、とりわけ、サブミクロンサイズであり長さLと称される平均的な最大横方向寸法を有し、またとりわけ、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、垂直の腐食角について0.8L以上の幅Wを特に有することを特徴とする、請求項1又は2記載の表面構造化方法。
【請求項6】
特に選定された前記種が銅である場合、エロージョンされた前記表面構造がレリーフ(2)になり、とりわけ、サブミクロンサイズであり長さLと称される平均的な最大横方向寸法を有し、またとりわけ、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、垂直の腐食角について0.8L以上の幅Wを特に有することを特徴とする、請求項1又は2記載の表面構造化方法。
【請求項7】
前記種が、特にシリカ中の銅については、イオン化され、及び/又は特にガラス中の銀については、凝集体であること、及び/又は前記種が好ましくは、次の種、とりわけ金属種、すなわち、銀、銅、コバルト、白金、ニッケル、スズ、金、のうちの少なくとも1つから選ばれ、且つ好ましくは当該種の有効電荷がゼロであるか0.5未満であることを特徴とする、請求項1〜6の一つに記載の表面構造化方法。
【請求項8】
前記酸化物が好ましくは、次の酸化物、すなわち、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、とりわけ混合酸化ケイ素アルミニウム、混合酸化ケイ素ジルコニウム、混合酸化ケイ素チタン、のうちの少なくとも1つから選ばれ、好ましくはガラスであることを特徴とする、請求項1〜7の一つに記載の表面構造化方法。
【請求項9】
前記混成材料がガラス、とりわけソーダ石灰ガラスであり、好ましくは銀及び銅の少なくとも一方とイオン交換されていることを特徴とする、請求項1〜8の一つに記載の表面構造化方法。
【請求項10】
前記混成材料が、バルク材料であれ基材上の被膜であれ、ゾル−ゲルであること、そして前記酸化物がとりわけ、前記金属を、粒子の形で、特にAg、Cu又はAuの粒子の形で、任意選択的には粒子の凝集体の形でもって取り込んでいる次の元素、すなわちSi、Ti、Zr、Al、V、Mg、Sn及びCe、のうちの少なくとも1つのものの酸化物であることを特徴とする、請求項1〜9の一つに記載の表面構造化方法。
【請求項11】
前記混成材料が、基材上への物理気相成長により、前記種、とりわけ金属種、例えば銅、銀又は金など、及び酸化物、例えばシリカ、ジルコニア、酸化スズ又はアルミナの、酸素雰囲気中で金属ターゲットを使用し又は前記酸化物で作られたターゲットを使用する共同被着により、被着された被膜であることを特徴とする、請求項1〜10の一つに記載の表面構造化方法。
【請求項12】
構造化した表面を有する製品、すなわち高さがサブミクロンサイズであり少なくとも1つのサブミクロンサイズの特性横方向寸法を持つ凹凸又は表面構造の配列を有する製品であって、この固体混成材料は、
・1種以上の元素の単純な酸化物又は混合酸化物であって、当該材料中の当該酸化物のモル百分率が少なくとも40%であり、とりわけ40%と94%の間であるもの、及び
・前記酸化物の前記1種以上の元素とは性質を異にし、特に金属である、少なくとも1つの種、
を含み、
当該材料中における前記1以上の種のモル百分率は4モル%から最大50モル%までの範囲であるとともに、前記酸化物の百分率よりは小さいものにとどまり、当該種は50nmより小さい最大特性寸法を有し、請求項1〜11の一つに記載の方法を使って得ることができる、構造化した表面を有する製品。
【請求項13】
前記表面構造がレリーフであり、特に、長さLと呼ばれ、サブミクロンサイズである平均の最大横方向寸法を有し、且つ特に、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、直角の腐食角について0.8Lより大きい幅Wを有し、前記材料が特に、当該レリーフのピークにおいて且つ表面厚さと呼ばれる10nmより薄い厚さを通して移動性種を多く含んでいることを特徴とする、請求項12記載の構造化した製品。
【請求項14】
イオン交換したガラス、とりわけ銀又は銅とイオン交換したガラスであること、あるいは、前記種、とりわけ銀又は銅及び/又は金を含む、バルクのゾル−ゲル又は基材上の、特に透明基材上の、ゾル−ゲル被膜であることを特徴とする、請求項12又は13記載の構造化した製品。
【請求項15】
前記表面構造が高さHの穴であって、特に、長さLと呼ばれ、サブミクロンサイズである平均の最大横方向寸法を有し、且つ特に、斜めの腐食角について0.3Lより大きく、直角の腐食角について0.8Lより大きい幅Wを有し、前記材料が特に、当該穴の底において且つ表面厚さと呼ばれる10nmより薄い厚さを通して金属を多く含んでいる穴であることを特徴とする、請求項12〜14の一つに記載の構造化した製品。
【請求項16】
前記表面構造が高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定されて、
・間隔Dは、赤外領域にも及ぶ光学用途向け、とりわけ光電池又は光触媒のための反射防止、光抽出及び集光向けに、500nmより小さく、好ましくは300nmより小さく、より好ましくは200nmより小さくなるように選ばれ、
・高さHは好ましくは、光学(可視及び赤外)用途向けに20nmより大きく、より好ましくは50nmより大きく、更に一層好ましくは100nmより大きくなるように選ばれ、
・幅Wは、D/10より大きく、より好ましくはD/5より大きく、更に一層好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる、
ことを特徴とする、請求項12〜15の一つに記載の構造化した製品。
【請求項17】
前記表面構造が高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定されて、
・間隔Dは、湿潤特性用に5μmより小さくなるように選ばれ、
・高さHは好ましくは、湿潤特性(超疎水性又は超親水性)用に70nmより大きく、より好ましくは150nmより大きくなるように選ばれ、
・幅Wは、D/10より大きく、より好ましくはD/5より大きく、更に一層好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる、
ことを特徴とする、請求項12〜16の一つに記載の構造化した製品。
【請求項18】
前記表面構造が高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定されて、
・間隔Dは、マイクロ流体用途向け又は湿潤特性用には5μmより小さくなるよう、赤外用途向けには2μmより小さくなるように選ばれ、
・高さHは好ましくは、湿潤特性(超疎水性又は超親水性)のために70nmより大きく、より好ましくは150nmより大きくなるように選ばれ、
・幅Wは、D/10より大きく、より好ましくはD/5より大きく、更に一層好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる、
ことを特徴とする、請求項12〜17の一つに記載の構造化した製品。
【請求項19】
エロージョンされた領域がエロージョンされた被膜上に特に真空被着される薄い被膜の成長のための基材を構成しており、前記表面構造は高さHと幅W及び隣り合う表面構造間の間隔Dにより規定されて、
・間隔Dは、200nmより小さくなるよう、好ましくは200nmと100nmの間になるよう、より好ましくは50nmより小さくなるように選ばれ、
・高さHは好ましくは、20nmより大きく、より好ましくは50nmより大きくなるように選ばれ、
・幅Wは、D/10より大きく、好ましくはD/5より大きく、より好ましくはD/2より大きくなるように選ばれる、
ことを特徴とする、請求項12〜18の一つに記載の構造化した製品。
【請求項20】
マイクロ流体用途で使用される日射及び/又は熱の制御グレージングシート、光学的機能、例えば反射防止機能などを備えたグレージングユニット、可視及び/又は赤外領域の反射偏光器、特に液晶表示装置用の、光を前方へ向け直すための構成部品、有機又は無機の発光デバイスから光を抽出するための手段、あるいは超疎水性又は超親水性のグレージングユニットであることを特徴とする、請求項12〜19の一つに記載の構造化した製品。

【図1a−1d】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a−4b】
image rotate

【図5a−5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7a−7b】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2013−512178(P2013−512178A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541557(P2012−541557)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052507
【国際公開番号】WO2011/067511
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】