説明

イソフラボンナノ粒子およびその使用

本発明は、ナノ粒子形態のイソフラボンおよび好ましくは担体を含むイソフラボンナノ粒子組成物に関する。イソフラボンナノ粒子組成物は、化粧料組成物、医薬組成物、食品、食品および飼料添加剤の調製に特に有用である。このイソフラボンナノ粒子組成物を含む組成物においては、イソフラボンが再結晶化してより大きな粒子になることが遅延される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ナノ粒子形態のイソフラボンおよび好ましくは担体を含むイソフラボンナノ粒子組成物に関する。イソフラボンナノ粒子組成物は、化粧料組成物、医薬組成物、食品、食品添加剤、動物飼料、および動物飼料添加剤の調製に特に有用である。このイソフラボンナノ粒子組成物を含む組成物においては、イソフラボンが再結晶化してより大きな粒子になることが遅延される。イソフラボンは、好ましくはゲニステインである。
【0002】
イソフラボンは、イソフラボンから抽出されるフラボノイド類に属する植物染料の一群である。以下のイソフラボンが特に重要である。
【化1】


【表1】

【0003】
イソフラボンの中でも最も重要なものの一つにゲニステインがある。
【0004】
ゲニステインは、抗菌活性を有する医薬上も化粧上も有効な周知の成分である。ゲニステインはカルモデュリン拮抗剤であり、例えばチロシンキナーゼやドーパ−カルボキシラーゼ等に対するゲニステインの酵素阻害活性は特に重要である。ゲニステインは殺虫剤に使用することもできる。ゲニステインの化学名は、4’,5,7−トリヒドロキシイソフラボンであり、この化合物は、大豆製品等の天然の産物を精製することによって得ることができる(例えば、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、第179巻、661〜667頁、1991年)が、当該技術分野において周知の方法により化学的に合成することも可能である。ゲニステインは、多くの供給業者から高純度のものが市販されている。ゲニステインの化学構造は以下の通りである。
【化2】

【0005】
ゲニステインおよびその使用を対象とするかなりの数の刊行物があり、この分野における多くの特許および特許出願の中でも最近の3件のみを挙げるならば、例えば、米国特許第5,824,702A号明細書、国際公開第03/068218号パンフレット、または米国特許第5,948,814A号明細書を参照することができる。
【0006】
ゲニステインは、例えば国際公開第2004/009576号パンフレットに開示されている方法に従い、通常は結晶性粉末の形態で製造される。このような粉末形態は非常に流動性に劣る。粉末の流動性が劣っていると、この結晶性粉末を錠剤や自由流動性を有する粉末が必要とされる他の適用形態の作製に用いることが難しくなる。他のイソフラボンを含む製剤の作製においても同様の問題が起こる。
【0007】
さらに、イソフラボン、特にゲニステインは、例えば補助食品中に妥当な高濃度で、かつイソフラボン(またはゲニステイン)の生物学的利用能が高くなる形態で含有させることが難しい。
【0008】
このような問題は、特に国際公開第99/38509号パンフレットにおいて対処されており、例えばゲニステインを両親媒性担体と結合させることにより平均径が約100nm未満のミセルを形成することによってこのような問題を解決することが提案されている。この文献において開示されている両親媒性担体は、基本的に、完全にまたは部分的に水素化された様々な植物油から得られるものなどの脂肪酸グリセリドをポリエチレングリコール化したものである。
【0009】
しかしながら、この種のミセルを得るのは難しく、また、その用途は比較的限られており、国際公開第99/38509号パンフレットには栄養補助食品が開示されているに過ぎない。
【0010】
外用形態に関して言えば、ゲニステインおよびその用途について記載された多くの文献があるにも拘わらず、現在上市されているゲニステインを含む外用組成物は、ゲニステインを例えば0.01重量%以下という非常に低濃度でしか含まないかまたはゲニステイン用の有機可溶化剤もしくはエタノール等の溶剤を含むかのいずれかである。しかしながら、エタノール等の有機溶剤の中には皮膚炎を起こし得るものがあるので、外用組成物中にエタノール等の有機溶剤を存在させることは可能であれば避けるべきである。
【0011】
溶剤として水のみをベースとし、市販のゲニステインをより高濃度で、例えば0.1重量%超、特に0.2重量%超または0.5重量%以上のゲニステインを含む外用組成物を調製すると、このような外用組成物は保管している間にザラつきを生じてしまう。このようなザラついた外用組成物を皮膚に適用すると炎症を起こす可能性があり、特にこの組成物が化粧料組成物である場合は消費者に受け容れられにくい。さらに、ザラつきが生じることに加えて、水性外用製剤中においては、保管中にゲニステインの活性が低下する可能性がある。
【0012】
水に不溶な医薬活性化合物のナノサスペンジョンおよびこの種のナノサスペンジョンの調製方法は当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第5,858,410A号明細書および米国特許第5,145,684A号明細書を参照することができる。これらの文献には、ナノサスペンジョンの形態で提供できる可能性のある多くの有効成分が開示されているが、ゲニステインについては触れられていない。両文献は主として薬剤の生物学的利用能を高める方法に関するものであり、外用組成物および外用組成物に起こる問題に対処するものではない。
【0013】
さらに、薬剤のナノ粒子またはミクロンサイズの薬剤粒子に関する幾つかの概説記事が、例えば「アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・リビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)、第47巻、(2001年)、3〜19頁」に存在する。この文献には、薬剤をナノ粒子形態で提供することによって薬剤の飽和溶解度および溶解速度が上昇し得ることが開示されている。この文献は主として、水に不溶な経口および非経口投与用薬剤の生物学的利用能に関するものである。外用製剤および外用製剤に起こり得る問題については開示されていない。ゲニステインについても開示されていない。
【0014】
他の概説記事である「ファーマスーティカル・デベロップメント・アンド・テクノロジー(Pharmaceutical Development and Technology)、第9巻、第1号、1〜13頁、2004年」においては、ミクロンサイズの薬物粒子の様々な製造方法ならびにそれらの利点および欠点が比較されている。この文献によれば、乾燥した小粒子の製造は依然として難題であり、特に小粒子の調製を、分子的に分散された薬剤を会合させることによって行うのではなく、より大きな乾燥粒子を粉砕することによって行う場合に起こる幾つかの問題点が議論されている。この文献は、概して、微粉化された薬剤を、静脈用、外用、経口用、または眼科用組成物に使用できることについて述べているが、主として、乾燥状態での経肺投与(pulmonary dry administration)および水溶性に乏しい薬剤の生物学的利用能の改善に焦点を当てている。上述の一般的な情報以外には、外用組成物についても述べられていないし、ゲニステインについても述べられていない。
【0015】
イソフラボンおよびゲニステインが、特に、外用および経口用組成物中に、固体および液体組成物として、医薬、化粧、および栄養産業に幅広く利用されていることを鑑みると、容易に取り扱うことができ、かつあらゆる種類の適用形態に(高濃度の経口用組成物だけでなく外用組成物としても)配合することができる形態のイソフラボン、特にゲニステインを提供することが必要である。
【0016】
したがって、本発明の目的は、イソフラボンおよび特にゲニステインを、上記要求を満たす形態で提供することにある。
【0017】
特にゲニステイン等のイソフラボンは、好ましくはエタノールを含まず、かつ好ましくは他の有機溶剤も含まず、そしてイソフラボン(特にゲニステイン)を、0.01重量%を超える高濃度で、しかしながら好ましくは0.3重量%以上等のより一層高い濃度で含む外用水性組成物、特に外用水性化粧料組成物の調製を可能にする形態で提供されることが必要である。この組成物は、少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、より好ましくは少なくとも1年間保存安定性を有するとともに、この期間にザラつきを生じないことが求められる。
【0018】
また、ゲニステイン等のイソフラボンは、高い生物学的利用能、混合性、含量均一性、物理的安定性等を提供しなければならない食品および食品添加剤または飲料または健康食品(豆腐、ヨーグルト、オレンジ果汁等)に特に好適な形態で提供されることも必要である。
【0019】
本発明は、イソフラボンが、場合により担体および水と一緒に、粒子の平均粒度D[4.3]が3μm以下であるナノ粒子組成物を得るための特定の方法によって微粉化されている場合、このミセル形態にないイソフラボン、特にゲニステインの組成物が安定であるという予期せぬ発見に基づくものである。本明細書においては、このような組成物をイソフラボンまたはゲニステインナノ粒子組成物と称する。
【0020】
したがって本発明は、イソフラボンナノ粒子組成物およびイソフラボンナノ粒子組成物の製造に好適な方法を提供する。
【0021】
イソフラボンナノ粒子組成物は、イソフラボンナノ粒子および場合により担体を含み、調製直後においては通常は水を含むが、この水は除去することが可能である。好ましくは、この組成物は、
(i)イソフラボンナノ粒子、または
(ii)イソフラボンナノ粒子および水、または
(iii)イソフラボンナノ粒子および担体、または
(iv)イソフラボンナノ粒子および水および担体
から本質的になる。
【0022】
「から本質的になる」とは、明記した成分以外に組成物中に存在する成分が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下であることを意味する。
【0023】
このイソフラボンは、国際公開第99/38509号パンフレットに開示されているミセル形態になく、このようなミセルは、本発明の方法では形成されない。好ましくは、本発明に従い使用される担体は、国際公開第99/38509号パンフレットに開示されている種類の両親媒性担体すなわち飽和またはモノ不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリドではない。
【0024】
予期せぬことに、本発明によるイソフラボンおよび場合により担体および場合により水のナノ粒子の組成物は、化粧料組成物等の外用水性組成物中に0.3重量%以上の高濃度で添加することができ、これらの外用組成物は保管中にザラつきを生じることがない。このような外用組成物中においては、保管中のいずれにおいてもイソフラボンの活性が低下しない。
【0025】
好ましくは、イソフラボンナノ粒子組成物は、好ましくは結晶性のイソフラボン、場合により担体、および水の混合物を高圧ホモジナイザーで処理する高圧均質化法によって調製される。さらには、好ましくは結晶性のイソフラボン、場合により担体、および水の混合物を撹拌型ビーズミルで処理する方法が特に好ましい。結果として得られた懸濁液は、場合により乾燥処理に付される。
【0026】
本発明により提供されるゲニステイン、場合により担体、および場合により水のナノ粒子の組成物は、先行技術には記載されていない。このような組成物と、医薬組成物、化粧料組成物、栄養組成物、およびこれらと同様に本発明に包含される他の組成物との混同を避けるため、上に定義した、イソフラボン、場合により担体、および場合により水のナノ粒子の組成物を、イソフラボン(またはゲニステイン)ナノ粒子組成物と称することとする。
【0027】
本発明はさらに、化粧料組成物、医薬組成物、食品、飲料、動物飼料、食品添加剤、殺虫剤、および専ら周知である他のイソフラボン含有組成物を提供する。栄養製品には、例えば、豆腐、ヨーグルト、オレンジ果汁等がある。外用組成物だけでなく、本発明のイソフラボンナノ粒子組成物を含む経口または非経口用組成物も包含される。医薬組成物および化粧料組成物、特に、好ましくはエタノールを含まない、イソフラボンナノ粒子組成物を含む水性外用組成物が好ましい。
【0028】
さらに本発明は、上に定義したイソフラボンナノ粒子組成物の製造方法も提供する。好ましい方法においては、好ましくは結晶性であるイソフラボン、場合により担体、および水の混合物は高圧ホモジナイザーで処理され、場合により、結果として得られた懸濁液が乾燥処理に付される。より一層好ましい方法においては、イソフラボン、場合により担体、および水が撹拌型ビーズミルで処理され、結果として得られた懸濁液は、場合により乾燥処理に付される。
【0029】
本発明を、本発明の最も好ましいイソフラボンであるゲニステインに関しさらに説明する。しかしながら、このさらなる説明は、本発明に包含される他のイソフラボンにも当てはまる。もちろん、1種を超えるイソフラボンの混合物、例えば、ゲニステインおよび1種またはそれ以上のさらなるイソフラボンを使用することも可能である。本明細書において用いられる「イソフラボン」という用語は、このような可能性をすべて含むことを意味している。
【0030】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物には、ゲニステインおよび好ましくは担体が含まれる。担体は特に制限されず、通常は、取り扱いがより容易な噴霧乾燥粉末の形成を促進することを目的として添加される。担体を使用しないと噴霧乾燥粉末は非常に微細になり、その結果として収率が低くなるとともに粉塵が多くなるであろう。好ましい実施態様においては、特に安定剤が、例えば、変性デンプン、セルロース誘導体、アラビアゴム、および乳蛋白質である場合は、担体は、水性懸濁液中におけるナノ粒子の凝集を最小限に抑える安定剤としても作用する。通常、担体は、1種もしくはそれ以上の炭水化物、1種もしくはそれ以上の蛋白質、または炭水化物および蛋白質の混合物から選択される。好ましい炭水化物は、変性デンプン、ソルビトール、マルトース、マルトデキストリン、アラビアゴム、ペクチン、アルギン酸塩、グアーガム、キサンタン、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、およびこれらの混合物である。変性デンプンおよび変性デンプンを含む混合物が最も好ましく、変性デンプンは、好ましくは、界面活性剤として作用することができるように疎水変性されたデンプンである。このような疎水変性されたデンプンとしては、例えば、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムがあり、これは、例えば、米国ニュージャージー州のナショナル・スターチ・アンド・カンパニー(National Starch and Co.,New Jersey,USA)から「カプスル(Capsul)」の商品名で入手することができる。
【0031】
担体が蛋白質を含む場合、蛋白質は、好ましくは、ゼラチン、乳蛋白質、大豆蛋白質、およびこれらの混合物から選択される。さらに、適切であれば、上に定義した1種またはそれ以上の炭水化物および上に定義した1種またはそれ以上の蛋白質の混合物を使用することができる。
【0032】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物に含まれる好ましい担体は、ゲニステインの水性懸濁液を安定化させる能力も有する担体である。この種の担体は、一般に、疎水変性デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、アラビアゴム、および乳蛋白質のように、疎水性部分および親水性部分を含んでいる。このような担体/安定剤は、本発明のゲニステインナノ粒子組成物に好ましい成分である。
【0033】
しかしながら、担体がゲニステイン懸濁液を安定化させる作用も有していることは本発明に必ずしも必要ではないことを理解されたい。本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、好ましくは、既に懸濁液安定剤を含んでいる場合もある(または配合処理のみでもゲニステインナノ粒子を再懸濁させるのに十分である)外用の医薬または化粧料組成物に使用され、したがって、本発明のゲニステインナノ粒子組成物中に懸濁液安定剤を存在させることが絶対に不可欠というわけではない。しかしながら、本発明のゲニステインナノ粒子組成物が懸濁液安定活性も有する担体を既に含有している場合は、本発明のゲニステインナノ粒子組成物を用いて調製された外用化粧料または医薬組成物中の懸濁液安定剤の量を減らすことができる場合もある。本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、通常、ゲニステイン、担体、および水を含む水性懸濁液として調製される。好ましい実施態様においては、この水性懸濁液を、次いで、噴霧乾燥や凍結乾燥等の好適な乾燥方法に付すことによって、水分がほとんどまたは完全に除去された顆粒状または粉末状生成物が得られる。本発明によれば、ゲニステイン、水、および場合により担体を含む水性懸濁液ならびにゲニステインおよび場合により担体を含む乾燥組成物の両方の組成物が好ましい。したがって、好ましい実施態様においては、本発明の組成物は、ゲニステイン、担体、および場合により水から構成される。ここで使用される担体という用語には、上に定義した数種の異なる担体の混合物も含まれることを理解されたい。
【0034】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物が粉末組成物または顆粒状組成物である場合、これらは、好ましくは、ゲニステインを少なくとも1重量%、好ましくはゲニステインを20重量%以上、より好ましくは50重量%以上含み、ゲニステインが90重量%以上であるものも好ましい。ゲニステインナノ粒子組成物の残部は、任意的な担体および乾燥処理に応じてゲニステインナノ粒子組成物から除去されなかった残留水である。したがって、好ましくは、ゲニステインナノ粒子組成物は、担体および該当する場合は残留水を99重量%以下、好ましくは、担体および該当する場合は残留水を80重量%以下、より好ましくは50重量%以下含み、担体および該当する場合は残留水を10重量%以下含むことも好ましい。好ましくは、本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、担体および該当する場合は残留水を少なくとも1重量%含み、好ましくは、本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、担体および該当する場合は残留水を5重量%以上含む。好ましい顆粒状または粉末ゲニステインナノ粒子組成物は、ゲニステインを1〜99重量%、30〜95重量%、30〜95重量%、50〜95重量%、70〜95重量%、70〜90重量%、90〜99重量%、90〜95重量%の量で含み、残部は担体および該当する場合は残留水である。もちろん、担体を含まず、ゲニステインおよび該当する場合は残留水を含む組成物も好ましい。粉末形態のゲニステインナノ粒子組成物は、以下に説明する水性懸濁液から、従来の噴霧乾燥処理または凍結乾燥処理によって調製することができる。
【0035】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物がゲニステイン、場合により担体、および水を含む水性懸濁液形態にある場合、水の量は特に制限されないが、通常、このような水性組成物はゲニステインおよび場合により担体を0.5%以上、好ましくは3%以上、好ましくは5%以上含み、より好ましくは、ゲニステインおよび場合により担体を10%以上、より好ましくは20%以上、30%以上、40%以上、または50%以上含み、残部が水となるであろう。ここで、ゲニステインおよび担体の相対量は上に定義した通りである。水性懸濁液中に存在する水の最小量は、懸濁液を形成するのに必要な量である。本発明の水性懸濁液は、製造工程からそのまま得ることができ、この場合の懸濁液中の固体粒子の量、したがって、同じく懸濁液中の水の量は、懸濁液の調整に用いられる設備に依存する。固形分含量をより多くする必要がある場合は、必要に応じて、例えば蒸発によって(好ましくは一定温度で)水性懸濁液から水を除去することが可能である。水性懸濁液は、ゲニステインおよび場合により担体を高圧均質化するかまたは撹拌型ボールミルで粉砕(湿式粉砕)することによって直接得ることが好ましく、このような懸濁液は、通常、水を40%以上含んでいる。水を50%以上含み、残部がゲニステインおよび場合により担体である(相対量は上に定義した通り)水性懸濁液も好ましい。
【0036】
同じく好ましい組成物は、10〜50重量%の範囲の量のゲニステインおよびゲニステイン対担体の比が10:1〜1:10、好ましくは10:1〜1:1または1:1〜1:5(例えば約1:2)の範囲となる量の担体を含み、組成物の残部が水である組成物、例えば、ゲニステインを25%、担体を5%、および水を70%含む組成物である。ゲニステインを10〜30%(好ましくは、ゲニステインを15〜25%、特にゲニステインを約20%)、担体を15〜40%(好ましくは、担体を20〜30%、特に担体を約25%)含み、残部が水である組成物も好ましい。
【0037】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物の重要な特徴は、ゲニステインの粒度が3μm以下、好ましくは1μm以下(約0.5μm等)であることにある。本発明のゲニステインナノ粒子組成物中におけるゲニステインの平均粒度の好ましい範囲は、0.05〜3μm、より好ましくは0.05〜1μm、よりさらに好ましくは0.05〜0.5μmである。さらには、粒度が0.3〜1.0μmであることが好ましい。上述の平均粒度の範囲の下限値を0.05に替えて0.1としても好ましい。上の粒度はすべて平均粒度D[4,3]、すなわち体積平均径またはド・ブレッケール(De Brouckere)平均径である。好ましくは、ゲニステイン粒子のD[3,2]による粒度は、0.05〜0.5、好ましくは0.1〜0.2の範囲内にあり、ここでD[3,2]は、面積平均径またはザウター(sauter)平均径である。本明細書において参照される粒度の測定はすべて英国のマルバーン・インストゥルメンツ・リミテッド(Malvern Instruments Ltd.,UK)の「マスターサイザー(Matersizer)2000」を用いたレーザー回折法によって行われるものであり、上記粒度D[4,3]およびD[3,2]に関するさらなる情報は、例えば、「粒度分析の基本原理(ベーシック・プリンシプルズ・オブ・パーティクル・サイズ・アナリティクス:Basic principles of particle size analytics)」、アラン・ロール博士(Dr.Alan Rawle)、マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッド、英国ウースターシャー州マルバーン、グローブウッドロード、エンジマ・ビジネス・パート、WR14 1XZ(Engima Business Part, Grovewood Road,Malvern,Worcestershire,WR14 1XZ,UK)および「マルバーン粒度分析装置マニュアル(マニュアル・オブ・パーティクル・サイズ・アナライザー:Manual of Malvern particle size analyzer)」で見ることができる。
【0038】
本出願人らは特定の理論に拘泥するわけではなく、また、担体を含む本発明のゲニステインナノ粒子組成物中の粒子がゲニステインおよび担体の混合物を含んでいるか(つまり、ゲニステインおよび担体が同じ粒子中に存在するか)どうかも、ゲニステインナノ粒子組成物中にゲニステインの粒子および担体の粒子が独立に存在するかどうかもわかっていない。ゲニステインナノ粒子組成物が、ゲニステインのみから構成される粒子、ゲニステインおよび担体の両方を含む粒子、ならびに担体のみから構成される粒子を含む可能性もある。これらの可能性はすべて本発明に包含され、本発明のゲニステインナノ粒子組成物がゲニステインおよび担体の両方を含む粒子を含む場合、上記粒度とは、ゲニステインおよび担体の両方を含む粒子を指す。
【0039】
別段の断りがない限り、本出願における部および百分率は重量によるものであり、組成物の重量を基準とするものである。
【0040】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、先行技術においてゲニステインが用いられてきたあらゆる目的に使用することができるが、特に本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、医薬組成物、化粧料組成物、食品、動物飼料、または食品添加剤に使用され、食品添加剤および化粧料組成物が最も好ましい。
【0041】
以下、本発明のゲニステインナノ粒子組成物を含む本発明の組成物を、広い意味で「一般組成物」と称する。
【0042】
好ましくは、本発明の一般組成物は、液状または固形の水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、複合エマルジョン、マイクロエマルジョン、PETエマルジョン、ビッカリング(bickering)エマルジョン、ヒドロゲル、アルコール性ゲル、リポゲル、単または多相液、フォーム、軟膏、貼付剤、懸濁液、粉末、クリーム、洗浄剤、石けん、および他の通常の組成物(筆を用いて、パックとして、またはスプレーとして適用することもできるもの)などの外用組成物である。
【0043】
本発明の一般組成物は、防腐剤/抗酸化剤、脂肪性物質/油、水、有機溶剤、シリコーン、増粘剤、柔軟剤、乳化剤、日焼け止め剤、化粧有効成分(cosmetic active)消泡剤、保湿剤、香料、界面活性剤、フィラー、金属イオン封鎖剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性、もしくは両性ポリマーもしくはこれらの混合物、噴射剤、酸性化もしくは塩基性化剤、染料、着色剤、顔料もしくはナノ顔料(例えば、紫外線を物理的に遮蔽することによって光防御作用を供するのに好適なもの)、または化粧料に通常配合される他の任意の成分等の通常の化粧用補助剤および添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の一般組成物は、1種またはそれ以上の医薬上または化粧上有効なさらなる成分、特にビサボロール、アルキルジオール(1,2−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等)、ビタミン類、パンテノール、フィトール、フィタントリオール、セラミドおよび擬似セラミド、アミノ酸および生理活性ペプチド、蛋白質加水分解物、AHA酸、多価不飽和脂肪酸、植物抽出物、DNAもしくはRNAおよびその断片化生成物、または炭水化物も含んでいてもよい。
【0045】
さらに、本発明の一般組成物は、UV−AおよびUV−B防御剤(filter)を含んでいてもよい。本発明の化合物と併用するのに好ましいUV−Bまたは広帯域の遮蔽剤(screening agent)、すなわち約290〜340nmの間に吸収極大を有する物質は、例えば、以下の有機および無機化合物である:
アクリル酸エステル、例えば、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン、パーソル(PARSOL)(登録商標)340)、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル等;
カンファー誘導体、例えば、4−メチルベンジリデンカンファー(パーソル(登録商標)5000)、3−ベンジリデンカンファー、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート、ポリアクリルアミジドメチルベンジリデンカンファー(polyacrylamjdomethyl benzylidene camphor)、スルホベンジリデンカンファー、スルホメチルベンジリデンカンファー、テレフタリデンジカンファースルホン酸(therephthalidene dicamphor sulfonic acid)等;
ケイヒ酸エステル誘導体、例えば、メトキシケイヒ酸オクチル(パーソル(登録商標)MCX)、メトキシケイヒ酸エトキシエチル、メトキシケイヒ酸ジエタノールアミン(パーソル(登録商標)ハイドロ(Hydro))、メトキシケイヒ酸イソアミル等に加えて、シロキサンに結合したケイヒ酸誘導体;
p−アミノ安息香酸誘導体、例えば、p−アミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N−オキシプロピレン化p−アミノ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸グリセリル、
ベンゾフェノン、例えば、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等;
ベンザルマロン酸のエステル、例えば、4−メトキシベンザルマロン酸ジ−(2−エチルヘキシル);
2−(4−エトキシアニリノメチレン)プロパン二酸のエステル、例えば、欧州公開特許EP0895776号明細書に記載の2−(4−エトキシアニリノメチレン)プロパン二酸ジエチルエステル;
欧州特許公開EP0358584B1号明細書、EP0538431B1号明細書、およびEP0709080A1号明細書に記載の、ベンズマロネート(benzmalonate)基を含む有機シロキサン化合物、特にパーソルSLX;
ドロメトリゾールトリシロキサン(メキソリル(Mexoryl)XL);
微粒子化されたTiO等の顔料。「微粒子化された」という用語は、粒度が約5nm〜約200nm、特に約15nm〜約100nmであることを指す。TiO粒子は、例えば、酸化アルミニウムもしくは酸化ジルコニウム等の金属酸化物または例えばポリオール、メチコン、ステアリン酸アルミニウム、アルキルシラン等の有機被覆等で被覆されていてもよい。このような被覆は当該技術分野において周知である。
イミダゾール誘導体、例えば、2−フェニルベンズイミダゾールスルホン酸およびその塩(パーソル(登録商標)HS)等。2−フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の塩とは、例えば、ナトリウムまたはカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モルホリン塩、第1級、第2級、および第3級アミンの塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等)等である。
サリチル酸エステル誘導体、例えば、サリチル酸イソプロピルベンジル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ブチル、サリチル酸オクチル(ネオ・ヘリオパン(NEO HELIOPAN)OS)、サリチル酸イソオクチル、またはサリチル酸ホモメンチル(ホモサレート、ヘリオパン(HELIOPAN))等。
トリアジン誘導体、例えば、オクチルトリアゾン(ユビナール(UVINUL)T−150)、ジオクチルブタミドトリアゾン(ユバソーブ(UVASORB)HEB)、ビスエトキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(チノソーブ(Tinosorb)S)等。
【0046】
本発明の化合物と併用することが好ましい広帯域またはUVA遮蔽剤すなわち約320〜400nmの間に吸収極大を有する物質は、例えば、以下の有機および無機化合物である:
ジベンゾイルメタン誘導体、例えば、4−tert.ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(パーソル(登録商標)1789)、ジメトキシジベンゾイルメタン、イソプロピルジベンゾイルメタン等;
ベンゾトリアゾール誘導体、例えば、2,2’−メチレン−ビス−(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−フェノール(チノソーブM)等;
フェニレン−1,4−ビス−ベンズイミダゾールスルホン酸または2,2−(1,4−フェニレン)ビス−(1H−ベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸)(ネオ・ヘリオパン(Neoheliopan)AP)等の塩;
アミノ置換ヒドロキシベンゾフェノン、例えば、欧州公開特許EP1046391号明細書に記載の2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−ベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル。
【0047】
ジベンゾイルメタン誘導体は光安定性が限られているので、このようなUV−A遮蔽剤を光安定化させることが望ましい場合もある。したがって、「従来のUV−A遮蔽剤」という用語は、例えば、
欧州公開特許EP−A0514491号明細書およびEP−A0780119号明細書に記載の3,3−ジフェニルアクリレート誘導体;
米国特許第5,605,680号明細書に記載のベンジリデンカンファー誘導体;
欧州特許公開EP−A0358584号明細書、EP−A0538431号明細書、およびEP−A0709080号明細書に記載のベンズマロネート基を含むオルガノシロキサン、特にパーソルSLX
によって安定化された、例えばパーソル(登録商標)1789等のジベンゾイルメタン誘導体も指す。
【0048】
本発明の組成物に添加することができるUV−AおよびUV−B防御剤の適切な概説はDE−A10327432号明細書において見ることもできる。この文献に開示されているUV防御化合物はいずれも本発明の組成物の成分としても有用であり、これを参照により本明細書に援用する。
【0049】
本発明の一般組成物は、好ましくは、1種またはそれ以上の抗酸化剤/防腐剤を含んでいる。本発明に基づき、化粧料に通常配合されるあらゆる周知の抗酸化剤を使用することができる。特に好ましい抗酸化剤は、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)および誘導体、ペプチド(例えば、D,L−カルノシン、D−カルノシン、L−カルノシン、および誘導体(例えばアンセリン))、カロテノイド、カロテン(例えば、α−カロテン、β−カロテン、リコペン)および誘導体、クロロゲン酸および誘導体、リポ酸および誘導体(例えばジヒドロリポ酸)、金チオグルコース、プロピルチオウラシル、および他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびにそのグリコシル−、N−アセチル−、メチル−、エチル−、プロピル−、アミル−、ブチル−、およびラウリル−、パルミトイル−、オレイル−、y−リノレイル−、コレステリル−、およびグリセリルエステル)およびその塩、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および塩)、さらにはスルホキシイミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタチオニンスルホキシイミン)を非常に低い適切な投与量(compatible dose)(例えば、pmol〜μmol/kg)で、さらには(金属)キレート剤(α−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン(palmic)−、フィチン酸(phytinic acid)、ラクトフェリン等)、β−ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミニック酸(huminic acid)、没食子酸、没食子酸抽出物、ビリルビン、ビルベリジン、EDTA、EGTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えば、γ−リノール酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールならびにその誘導体、ビタミンCおよび誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビルおよびテトライソパルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、リン酸アスコルビルNa、酢酸アスコルビル)、トコフェロールおよび誘導体(例えば酢酸ビタミンE)、天然ビタミンE、ビタミンA、および誘導体(パルミチン酸および酢酸ビタミンA)の混合物、さらには安息香酸コニフェリル、ルチン酸および誘導体、α−グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングリシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トリヒドロキシブチロフェノン、尿素およびその誘導体、マンノースおよび誘導体、亜鉛および誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、セレンおよび誘導体(例えばセレノメチオニン)、スチルベンおよび誘導体(例えば、スチルベンオキシド(stilbenoxide)、トランス−スチルベンオキシド(stilbenoxide))、ならびに上記した有効成分の好適な誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド、および脂質)からなる群から選択される。1種またはそれ以上の防腐剤/抗酸化剤は、本発明の組成物の総重量の約0.01重量%〜約10重量%の量で存在していてもよい。好ましくは、1種またはそれ以上の防腐剤/抗酸化剤は、約0.1重量%〜約1重量%の量で存在する。
【0050】
外用製剤は、典型的には、乳化剤、可溶化剤等の界面活性成分も含んでいる。乳化剤は、2種以上の不混和な成分を均質に合一することができるものである。さらに乳化剤は、組成物を安定化させる作用を有する。本発明においてO/W、W/O、O/W/O、またはW/O/Wエマルジョン/マイクロエマルジョンを形成するために使用してもよい乳化剤としては、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、オレイン/イソステアリン酸のポリグリセロールエステル、ヘキサリシノール酸ポリグリセリル−6、オレイン酸ポリグリセリル−4、オレイン酸ポリグリセリル−4/ヤシ油脂肪酸PEG−8プロピレングリコール、オレアミドDEA、ミリスチン酸TEA、ステアリン酸TEA、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、リシノール酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヒマシ油脂肪酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、およびこれらの混合物が挙げられる。さらなる好適な乳化剤は、リン酸エステルおよびその塩、例えば、リン酸セチル(アンフィソル(Amphisol)(登録商標)A)、セチルリン酸ジエタノールアミン(アンフィソル(登録商標))、セチルリン酸カリウム(アンフィソル(登録商標)K)、オレイン酸リン酸グリセリルナトリウム(sodium glyceryl oleate phosphate)、硬化植物油脂肪酸グリセリドのリン酸エステル(hydrogenated vegetable glycerides phosphate)、およびこれらの混合物である。さらに、乳化剤として1種またはそれ以上の合成ポリマーを使用してもよい。例えば、PVPエイコセンコポリマー、アクリル酸エステル/アクリル酸C10〜30アルキルクロスポリマー、アクリル酸エステル/メタクリル酸ステアレス−20コポリマー、PEG−22/ドデシルグリコールコポリマー、PEG−45/ドデシルグリコールコポリマー、およびこれらの混合物がある。好ましい乳化剤は、リン酸セチル(アンフィソル(登録商標)A)、セチルリン酸ジエタノールアミン(アンフィソル(登録商標))、セチルリン酸カリウム(アンフィソル(登録商標)K)、PVPエイコセンコポリマー、アクリル酸エステル/アクリル酸C10〜30アルキルクロスポリマー、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、およびこれらの混合物である。1種またはそれ以上の乳化剤は、総量が、本発明の組成物の総重量の約0.01重量%〜約20重量%で存在する。乳化剤は、好ましくは、約0.1重量%〜約10重量%で使用される。
【0051】
有利には、外用組成物の脂質相は、
鉱物油および鉱物ワックス;
カプリン酸またはカプリル酸のトリグリセリド等の油、好ましくはヒマシ油;
油またはワックスおよび他の天然または合成油、好ましい実施態様においては、脂肪酸とアルコール(例えば、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン)とのエステルまたは脂肪族アルコールとカルボン酸もしくは脂肪酸とのエステル;
安息香酸アルキル;および/または
ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シクロメチコン等のシリコーン油;
ならびにこれらの混合物
から選択することができる。
【0052】
本発明のエマルジョン、マイクロエマルジョン、油性ゲル(oleo gel)、水分散液(hydrodispersion)、または脂肪分散液(lipodispersion)の油相に添加することができる脂肪性物質は、有利には、例えば、3〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の線状または分岐のアルキルカルボン酸と3〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の線状および/または分岐のアルコールとのエステルならびに芳香族カルボン酸と3〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の線状または分岐のアルコールとのエステルから選択される。このようなエステルは、有利には、パルミチン酸オクチル、ヤシ油脂肪酸オクチル、イソステアリン酸オクチル、ドデシルミリスチン酸オクチル、イソノナン酸セテアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n−ブチル、ラウリン酸n−ヘキシル、オレイン酸n−デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−オクチルドデシル、ヘプタン酸ステアリル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシル、ステアリン酸トリデシル、トリメリト酸トリデシルに加えて、この種のエステルの合成、半合成、または天然の混合物(例えばホホバ油)から選択することができる。
【0053】
本発明の外用組成物中に使用するのに好適な他の脂肪性成分としては、レシチンおよび脂肪酸トリグリセリド(すなわち8〜24個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の直鎖または分岐のカルボン酸のトリグリセロールエステル)等の極性油(この脂肪酸トリグリセリドは、好ましくは、合成、半合成、または天然の油、例えば、ヤシ油脂肪酸グリセリド、オリーブ油、ヒマワリ油、大豆油、落花生油、菜種油、甘扁桃油、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、小麦油(wheat oil)、葡萄種子油、マカデミアナッツ油等から選択される);線状および/または分岐の炭化水素およびワックス等の非極性油、例えば、鉱物油、ワセリン(ペトロラタム);パラフィン、スクアラン、およびスクアレン、ポリオレフィン、水素化ポリイソブテン、およびイソヘキサデカン(好ましいポリオレフィンはポリデセン);ジカプリリルエーテル等のジアルキルエーテル;好ましくはシクロメチコン等の線状または環状シリコーン油(オクタメチルシクロテトラシロキサン;セチルジメチコン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン);ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
有利には、本発明の外用組成物に添加することができる他の脂肪性成分は、イソエイコサン;ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール;ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール;カプリル酸/カプリン酸/ジグリセリルコハク酸エステル;カプリル酸/カプリン酸ブチレングリコール;乳酸C12〜13アルキルエステル;酒石酸ジC12〜13アルキルエステル;トリイソステアリン;ヘキサカプリル酸/ヘキサカプリン酸ジペンタエリスリチル;モノイソステアリン酸プロピレングリコール;トリカプリリン;ジメチルイソソルビッドである。安息香酸C12〜15アルキルエステルおよびイソステアリン酸2−エチルヘキシルの混合物、安息香酸C12〜15アルキルおよびイソノナン酸イソトリデシルの混合物に加えて、安息香酸C12〜15アルキル、イソステアリン酸2−エチルヘキシル、およびイソノナン酸イソトリデシルの混合物を使用することが特に有利である。
【0055】
本発明の組成物の油相は、天然の植物または動物性ワックス、例えば、ミツロウ、シナロウ、マルハナバチのミツロウ(bumblebee wax)、および他の昆虫由来のワックスに加えてシヤ脂およびカカオ脂も含んでいてもよい。
【0056】
本発明の外用組成物には、皮膚の水和の維持または水分補給のために湿潤剤を添加してもよい。保護被膜を供することによって皮膚から水分が蒸発するのを防ぐ湿潤剤は、エモリエント剤と呼ばれる。エモリエント剤にはさらに、皮膚表面を柔軟化および沈静化する作用があり、一般に外用として安全であるとみなされている。好ましいエモリエント剤としては、鉱物油、羊毛脂、ペトロラタム、カプリン酸/カプリル酸トリグリセルアルデヒド、コレステロール、シリコーン(ジメチコン、シクロメチコン等)、扁桃油、ホホバ油、アボカド油、ヒマシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ヤシ油、および葡萄種子油、カカオ脂、オリーブ油アロエ抽出物、脂肪酸(オレイン、ステアリン等)、脂肪族アルコール(セチル、ヘキサデシル(エンジャイ(ENJAY))等)、アジピン酸ジイソプロピル、ヒドロキシ安息香酸エステル、C9〜15アルコールの安息香酸エステル、イソノナン酸イソノニル、エーテル(ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル等)、および安息香酸C12〜15アルキルエステル、ならびにこれらの混合物が挙げられる。最も好ましいエモリエント剤は、ヒドロキシ安息香酸エステル、アロエベラ、安息香酸C12〜15アルキルエステル、およびこれらの混合物である。エモリエント剤は、組成物の総重量の約1重量%〜約20重量%の量で存在する。エモリエント剤の好ましい量は、約2重量%〜約15重量%、最も好ましくは約4重量%〜約10重量%である。
【0057】
水と結合することによってこれを皮膚表面に保持する湿潤剤は、保湿剤と呼ばれる。本発明の外用組成物には、グリセリン、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、乳酸、ピロリドンカルボン酸、尿素、リン脂質、コラーゲン、エラスチン、セラミド、レシチンソルビトール、PEG−4、およびこれらの混合物等の好適な保湿剤を添加することができる。さらなる好適な湿潤剤は、水溶性および/または膨潤性/および/または水ゲル化性を有する多糖類系の高分子湿潤剤、例えば、ヒアルロン酸、キトサン、および/またはフコースに富む多糖類(例えば、フコゲル(Fucogel)(登録商標)1000(CAS番号178463−23−5)としてソラビア社(SOLABIA S)より入手可能)等である。本発明の組成物中には、1種またはそれ以上の保湿剤が、場合により約0.5重量%〜約8重量%、好ましくは約1重量%〜約5重量%存在する。
【0058】
本発明の好ましい外用組成物の水相は、通常の化粧料または医薬品添加剤、例えば、アルコール、特に低級アルコール、好ましくはエタノールおよび/またはイソプロパノール、低級ジオールまたはポリオールおよびそのエーテル、好ましくはプロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチル−またはモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル−または−モノエチル−または−モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル−または−モノエチルエーテルおよび類似の生成物、ポリマー、整泡剤;電解質、ならびに特に1種またはそれ以上の増粘剤を含んでいてもよい。生成物の粘稠性を好適なものにするのを助けるために本発明の製剤に使用してもよい増粘剤としては、カルボマー、二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウムおよび/またはアルミニウム、ミツロウ、ステアリン酸、ステアリルアルコール多糖類およびその誘導体(キサンタンガム等)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリルアミド、アクリレートクロスポリマー(好ましくは、カーボポール(carbopole)(登録商標)980、981、1382、2984、5984等のカルボマー)を、単独または混合物としたものが挙げられる。例えば乳化剤または起泡剤/整泡剤等の成分を中和するために本発明の組成物に含有させてもよい好適な中和剤としては、これらに限定されるものではないが、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、アミノメチルプロパノール、およびこれらの混合物等の有機塩基;アルギニンおよびリジン等のアミノ酸;ならびに上記したものの任意の組合せが挙げられる。中和剤は、本発明の組成物中に、約0.01重量%〜約8重量%、好ましくは1重量%〜約5重量%の量で存在してもよい。
【0059】
疎水性乳化剤の挙動を変えるために本発明の組成物中に電解質を添加することが必要な場合がある。したがって、本発明のエマルジョン/マイクロエマルジョンは、好ましくは、これらに限定されるわけではないが、塩化物、硫酸、炭酸、ホウ酸、アルミン酸等の陰イオンを含む1種または数種の塩である電解質を含んでいてもよい。他の好適な電解質は、これらに限定されるわけではないが、乳酸、酢酸、安息香酸、プロピオン酸、酒石酸、クエン酸等の有機陰イオンをベースとするものであってもよい。陽イオンとしては、好ましくは、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカリもしくはアルカリ土類金属、マグネシウム、鉄、または亜鉛イオンが選択される。特に好ましい塩は、塩化カリウムおよび塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、ならびにこれらの混合物である。電解質は、本発明の組成物中に、約0.01重量%〜約8重量%の量で存在してもよい。
【0060】
本発明の外用組成物は、好ましくは、ローション、濃稠化ローション、ゲル、クリーム、乳液、軟膏、粉末、または固形チューブスティックの形態で提供することができ、場合によりエアロゾルとして包装することができ、また、ムース、フォーム、またはスプレーの形態で提供することができる。本発明による組成物は、溶媒または脂肪性物質中の懸濁液または分散液の形態、あるいはクリーム、乳液、小胞体の分散液等のエマルジョンまたはマイクロエマルジョンの形態(特に、O/WまたはW/O型、O/W/OまたはW/O/W型)、軟膏、ゲル、固形チューブスティック、またはエアロゾルムースの形態であってもよい。このエマルジョンは、アニオン性、非イオン性、カチオン性または両性界面活性剤も含んでいてもよい。
【0061】
化粧料および医薬組成物が特に好ましく、化粧料組成物がよりさらに好ましい。
【0062】
本出願において使用される「化粧製剤」または「化粧料組成物」という用語は、レンプ化学百科事典(レンプ・レキシコン・ヘミー:Roempp Lexikon Chemie)、第10版、1997年、ゲオルグ・ティエメ・フェルラーク(Georg Thieme Verlag)、ニューヨーク州シュトットガルト(Stuttgart,New York)の「化粧料(コスメティカ:Kosmetika)」の項目に定義されている化粧料組成物を指す。
【0063】
本発明の化粧料または医薬組成物は、本発明のゲニステインナノ粒子組成物と一緒に化粧上または医薬上許容可能な賦形剤または希釈剤を含む。別段の断りがない限り、以下に述べる賦形剤、添加剤、希釈剤等は、医薬および化粧料組成物の両方に好適なものである。
【0064】
好ましくは、本発明の外用化粧料および医薬組成物は、ゲニステインのナノ粒子および場合により担体を、0.01%超、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上含む。しかしながら、ゲニステインナノ粒子組成物を外用化粧料および医薬組成物に添加することによって達成される効果は、ゲニステインを0.3%以上含む医薬および化粧料組成物で最も実感される。それは、このような高濃度においては、本発明の外用医薬および化粧料組成物の保管中におけるゲニステインナノ粒子の粒度の増加が特に小さくなる(ときには低下することさえある)ためである。このような高濃度による効果は、濃度が0.3%未満とより低い場合よりもはるかに顕著であり、先行技術のゲニステイン組成物を用いても得ることができなかった、ゲニステイン濃度が非常に高い化粧料および医薬組成物の提供が可能になるため、このことは特に驚くべきことであるとともに有利なことである。したがって、本発明の化粧料および医薬組成物は、ゲニステインおよび場合により担体を含むナノ粒子を、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上の濃度で含むであろう。以下の範囲のゲニステインおよび場合により担体のナノ粒子も好ましい:0.3%〜3%、0.3%〜2%、0.3%〜1%、および上述の範囲の下限値を0.3%に替えて0.4または0.5%としたもの。
【0065】
外用化粧料および医薬組成物の種類ならびに外用化粧および医薬品製剤の調製に加えて、さらなる好適な添加剤に関しては、適切な文献、例えば、ノバック・G・A(Novak G.A.)、化粧製剤(ディー・コスメティーシェン・プレパラーテ:Die kosmetischen Praeparate)、第2巻、化粧製剤−配合、原料、基礎科学(ディー・コスメティーシェン・プレパラーテ−レゼプツール、ロストッフェ、ヴィッセンシャフトリーヒェ・グルントラーゲン:Die kosmetischen Praeparate−Rezeptur,Rohstoffe,wissenschaftliche Grundlagen)(フェールラーク・フュー・ケミーシェ・インダストリー(Verlag fuer Chem.Industrie)、H・ゾイルコウスキーKG(H.Ziolkowski KG),アウグスブルク(Augsburg))を参照することができる。
【0066】
さらに、本発明のゲニステインナノ粒子組成物を、例えば当業者に一般に周知の丸剤、錠剤、顆粒もしくは小粒を含んでいてもよいカプセル剤の形態で、液状経口製剤として、または食品添加剤として、経口用化粧料および医薬組成物中に含有させることも可能である。経口用組成物を調製するための有用な手順および有用な添加剤は、例えば、規範的な文献であるレミントン:薬学の科学と実践(レミントン:ザ・サイエンス・アンド・プラクティス・オブ・ファーマシー:Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、リッピンコット・ウイリアムズ・アンド・ウイルキング(Lippincot,Williams&Wilking)編、2000年に開示されており、これを参照により本明細書に援用する。本発明の組成物は、食品、特に動物飼料、より具体的にはペットフードに添加することが好ましい。このような食品の調製方法は当該技術分野において周知である。
【0067】
経口用組成物、特に錠剤用の通常の添加剤として、通常の賦形剤(微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二ナトリウムまたは二カリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、グリシン等)、崩壊剤(デンプン、アルギン酸等)、結合剤(ポリビニルピロリドン、サッカロース、ゼラチン、アラビアゴム等)、滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、滑石粉等)を使用することができる。この組成物をゼラチンカプセル剤に充填する場合、顆粒剤を調製するためには、通常、乳糖または乳酸塩に加えて高分子量ポリエチレングリコールが添加剤として用いられる。さらなる添加剤および賦形剤に加えて他の経口製剤および食品添加剤用の添加剤および賦形剤は当業者に周知であり、「食品技術の基礎(グルントツーゲ・デア・レーベンズミッテルテクニーク:Grundzuege der Lebensmitteltechnik)」、ホルスト・ディーテル・チョイシュナー(Horst Dieter Tscheuschner)編、第2版、ハンブルク、ベールス(Hamburg,Beers)、1996年等の適切な文献を参照することができる。
【0068】
この組成物は、医薬上または化粧上有効な、特に、ニキビ、しわ、筋、萎縮、炎症を予防するかまたは低減するための1種またはそれ以上のさらなる成分に加えて、局所麻酔剤、人工日焼け剤および促進剤、抗菌剤、抗真菌剤、日焼け止め剤も含んでいてもよい。
【0069】
その例として、ペプチド(例えば、マトリキシル(Matrixyl)(商標)(ペンタペプチド誘導体))、グリセロール、尿素、グアニジン(例えばアミノグアニジン);ビタミン類およびその誘導体、例えば、アスコルビン酸、ビタミンA(例えば、パルミチン酸レチニル、プロピオン酸レチニル等のレチノイド誘導体)、ビタミンE(例えば酢酸トコフェロール)、ビタミンB(例えば、ナイアシンアミド)、およびビタミンB(例えばパンテノール)、ならびにこれらの混合物、ワックス系合成ペプチド(例えば、パルミチン酸オクチルおよびトリベヘニンおよびイソステアリン酸ソルビタンおよびパルミトイルオリゴペプチド)、抗ニキビ薬剤(レゾルシノール、サリチル酸等);抗酸化剤(例えば、フィトステロール、リポ酸);フラボノイド類(例えば、イソフラボン、フィトエストロゲン);皮膚鎮静および治療剤(アロエベラ抽出物、アラントイン等);キレート剤および金属イオン封鎖剤;および美容目的に好適な薬剤、例えば、精油、香料、皮膚清涼剤(skin sensate)、乳白剤、芳香族化合物(例えば、チョウジ油、メントール、ショウノウ、ユーカリ油、およびオイゲノール)、角質剥離活性物質(desquamatory active)、抗ニキビ活性物質、ビタミンB化合物、抗酸化剤、ペプチド、ヒドロキシ酸、ラジカル捕捉剤、キレート剤、ファルネソール、抗炎症剤、局所麻酔剤、日焼け活性物質、美白剤、抗セルライト剤、フラボノイド、抗菌活性物質および抗真菌活性物質、特にビサボロール、アルキルジオール(1、2−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール等)、ビタミン類、パンテノール、フィトール、フィタントリオール、セラミドおよび擬似セラミド、アミノ酸および生物活性ペプチド、蛋白質加水分解物、AHA酸、多価不飽和脂肪酸、植物抽出物、DNAまたはRNAおよびその断片化生成物、または炭水化物、ビオチン、共役脂肪酸、カルニチン、ビタミンE、A、C、B、B、B12、オリゴペプチド、カルノシン、バイオキノネン(biochinonen)、フィトフルエン、フィトエン、葉酸、ならびに対応するこれらの誘導体が挙げられる。
【0070】
本発明の経口用化粧料または医薬組成物中のゲニステイン含量は、通常、約0.1%〜90%、好ましくは約1%〜80%である。典型的には、錠剤等の医薬組成物中においては、ゲニステインを50%と多くすることも可能であるが、好ましくは、1%〜10%の範囲とする。その適用においては、患者および所望の効果に応じた所望の効果が得られるようにする。通常の1日の投与量は、約1mg/日〜1g/日、例えば、約5mg/日〜100mg/日の範囲とすることができる。
【0071】
本発明の化粧料および医薬組成物は、特に、この組成物が育毛促進用である場合は、注射用組成物の形態であってもよい。注射用の化粧料および医薬組成物の調製は当業者に周知であり、適切な文献、特に既に上に引用したレミントンを参照することができる。
【0072】
本発明によれば、本発明のゲニステインナノ粒子組成物を含むヨーグルト、豆腐、果汁(オレンジ果汁等)等の栄養製品も好ましい。ゲニステインナノ粒子の含量は特に制限されないが、通常、このような製品のゲニステイン含量は、0.01%以上、好ましくは0.1%以上であり、通常は、10%以下または5%以下である。本発明の経口用医薬品および栄養製品は、ゲニステインが高い生物学的利用能を有することに加えて、予想外の高い物理的安定性(ゲニステイン粒子が許容できない大きさに成長することがない)を兼ね備えていることが特に有利である。
【0073】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、好ましくは、ゲニステイン結晶および場合により担体を高圧ホモジナイザーで破砕することによって得られる。本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、より好ましくは、ゲニステイン(特にゲニステイン結晶)および場合により担体を撹拌型ビーズミルで粉砕することによって得られる。破砕および粉砕は、通常、水性懸濁液を用いて実施される。
【0074】
好適なホモジナイザーは先行技術において周知であって、市販されており、例えば、イスラエル国ミグダル・ハエメク(Migdal Haemek,Israel)のB・E・E・インターナショナル・リミテッド(B.E.E. International Ltd.)のDeBEE2000高圧ホモジナイザーを参照することができる。ホモジナイザーは、好ましくは、500bar〜4000barの圧力、より好ましくは500bar〜3000barの圧力、最も好ましくは500bar〜2000barの圧力で操作される。好ましくは、ホモジナイザーは、EP−A 1008380号明細書に開示されているようなノズル系を備えている。
【0075】
好ましくは、ゲニステインおよび担体は、高圧ホモジナイザーを1〜200回、より好ましくは5〜100回、例えば5〜30回循環される。所要の循環回数は、幾つかの決まった実験を行うことによって容易に見出される。
【0076】
特に好ましい実施態様においては、まず高圧ホモジナイザー内でゲニステインを担体抜きで例えば5〜100回(5〜30回等)均質化に付し、次いで、担体の溶液を加えて、均質化を例えばさらに1〜50回(1〜10回)継続する。必要に応じて循環回数を増やしてもよい。
【0077】
均質化を行う間に、ゲニステイン結晶は、主として高圧過程で生じるキャビテーションおよび剪断によって破砕されると考えられており、ここで処理される水性ナノ懸濁液の固形分含量は50%以下であるかまたはそれを超えてもよい。水性ナノ懸濁液は、そのままで本発明の医薬または化粧料組成物の調製に使用することができるが、また、ゲニステイン、場合により担体、および乾燥処理で除去されず最終的に残留した水から本質的になる粉末または顆粒状組成物を得ることを目的としてまず乾燥段階に付してもよい。乾燥は、噴霧乾燥または凍結乾燥等の通常の方法によって実施してもよい。
【0078】
本発明のゲニステインナノ粒子組成物は、最も好ましくは、撹拌型ビーズミルにおいて湿式粉砕処理により破砕することにより得られる。好適な湿式粉砕ミルは先行技術より周知であって、市販されており、例えば、独国セルブ(Selb,Germany)95100のセダンシュトラーセ(Sedanstrasse)70のネッチュ−ファインマールテクニークGmbH(NETZSCH−Feinmahltechnik GmbH)のネッチュ(Netzsch)LMZ4湿式粉砕ミルを参照することができる。好ましくは、ゲニステインおよび場合により担体は、撹拌型ビーズミルを1〜50回、より好ましくは3〜40回、より好ましくは5〜30回、最も好ましくは8〜25回循環される。
【0079】
粉砕媒体は、例えば、Al、Si、TiO、WC(炭化タングステン)、もしくはZrOまたはこれらの化合物の組合せから本質的になっていてもよい。最も好ましくは、Yで安定化されたZrO等のZrO系粉砕媒体が使用される。
【0080】
処理される水性ナノ懸濁液の固形分含量は25%以下であるかまたはそれを超えていてさえもよい。
【0081】
本発明の好ましい実施態様においては、水は、好適な乾燥条件を選択することによって可能な限り除去され、水分含量は例えば10%未満となる。
【0082】
本明細書において参照される粒度の測定はすべて英国のマルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドの「マスターサイザー2000」を用いたレーザー回折法によって行われる。
【0083】
以下の実施例は例示のみを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0084】
[実施例1]
米国ニュージャージー州のナショナル・スターチ・アンド・ケミカル・カンパニーよりカプスルの製品名で入手可能な、水分含量が8%のオクテニルコハク酸デンプンナトリウム(490g)を80℃の脱イオン水(490g)に溶解することによってオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(46%)を調製した。
【0085】
ゲニステイン粉末(20g)をオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(391.4g)および脱イオン水(390g)と混合し、流路に水を約200g含む、130ミクロンノズルを備えた高圧ホモジナイザーであるイスラエル国のB・E・E・インターナショナル・リミテッドのDeBEE2000を、均質化圧を1500barとして通過させた。均質化中の背圧を120barに設定した。ノズル通過後のゲニステイン懸濁液を熱交換器にて約20〜30℃に冷却した。この固形分含量が約20%の懸濁液を、所望の粒度に到達するまでホモジナイザーを42回循環させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表Iに示す。
【表2】

【0086】
均質化されたゲニステイン懸濁液をニロ(Niro)噴霧乾燥機(デンマーク国GEAニロA/S(GEA Niro A/S))でノズル圧を4barとして乾燥した。入口温度を約200℃、出口温度を約80℃とした。噴霧乾燥粉末はゲニステインを約9.4%含んでおり、水分含量は5.87%であった。噴霧乾燥粉末を水中に再分散させてレーザー回折法で測定することによってゲニステイン粒度を測定した。結果を表IIに示す。
【表3】

【0087】
[実施例2]
ゲニステイン粉末(30g)を脱イオン水(370g)と混合し、流路に水約200gを含む高圧ホモジナイザー(130ミクロンノズルを備えたDeBEE2000、イスラエル国BEEインターナショナル)を、均質化圧を1500barとして通過させた。均質化中の背圧を120barに設定した。ノズルを通過した後のゲニステイン懸濁液を熱交換器で約20〜30℃に冷却した。この固形分含量が約5%の懸濁液を、所望の粒度に到達するまでホモジナイザーを40回循環させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表IIIに示す。
【表4】

【0088】
水分含量が8%のオクテニルコハク酸デンプンナトリウム(490g)を80℃の脱イオン水(490g)に溶解することによってオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(46%)を調製した。上記40回通過させた後の均質化したゲニステイン懸濁液に、均質化工程を停止させることなくオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液の一部(65g)を供給漏斗内で加え、この混合物(固形分約9%)を高圧ホモジナイザーを2回通過させた。レーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)を用いてゲニステイン粒度を測定した。結果を表IVに示す。
【表5】

【0089】
均質化されたゲニステイン懸濁液をニロ噴霧乾燥機(デンマーク国GEAニロA/S)でノズル圧力を4barとして乾燥した。入口温度を約200℃、出口温度を約80℃とした。噴霧乾燥粉末はゲニステインを約48.5%含んでおり、水分含量は3.24%であった。噴霧乾燥粉末を水中に再分散させてレーザー回折法で測定することによってゲニステインの粒度を測定した。結果を表Vに示す。
【表6】

【0090】
[実施例3]
ゲニステイン粉末(36g)を脱イオン水(364g)と混合し、流路に水約200gを含む高圧ホモジナイザー(130ミクロンノズルを備えたDeBEE2000、イスラエル国BEEインターナショナル)を均質化圧を1500barとして通過させた。均質化中の背圧を120barに設定した。ノズルを通過した後のゲニステイン懸濁液を熱交換器で約20〜30℃に冷却した。この固形分含量が約6%の懸濁液を、所望の粒度に到達するまでホモジナイザーを40回循環させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表VIに示す。
【表7】

【0091】
水分含量が8%であるオクテニルコハク酸デンプンナトリウム(490g)を80℃の脱イオン水(490g)に溶解させることによってオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(46%)を調製した。上記40回通過させた後の均質化されたゲニステイン懸濁液に、均質化工程を停止させることなくオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液の一部(19.5g)を供給漏斗内で加え、この混合物(固形分約7.3%)を高圧ホモジナイザーを2回通過させた。レーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)を用いてゲニステインの粒度を測定した。結果を以下の表VIIに示す。
【表8】

【0092】
均質化されたゲニステイン懸濁液をニロ噴霧乾燥機(GEAニロA/S、デンマーク国)でノズル圧力を4barとして乾燥した。入口温度を約200℃とし、出口温度を約80℃とした。噴霧乾燥粉末はゲニステインを約78.2%含んでおり、水分含量は2.31%であった。噴霧乾燥粉末を水に再分散させてレーザー回折法で測定することによってゲニステインの粒度を測定した。結果を以下の表VIIIに示す。
【表9】

【0093】
[実施例4]
ゲニステイン粉末(120g)を脱イオン水(280g)と混合し、流路に水約200gを含む高圧ホモジナイザー(180ミクロンノズルを備えたDeBEE2000、イスラエル国BEEインターナショナル)を均質化圧を700barとして通過させた。均質化中の背圧を120barに設定した。ノズルを通過した後のゲニステイン懸濁液を熱交換器で約20〜30℃に冷却した。この固形分含量が約20%の懸濁液を、所望の粒度に到達するまでホモジナイザーを20回循環させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表IXに示す。
【表10】

【0094】
[実施例5]
ゲニステイン粉末(36g)を脱イオン水(364g)と混合し、流路に水約200gを含む高圧ホモジナイザー(130ミクロンノズルを備えるDeBEE2000、イスラエル国BEEインターナショナル)を均質化圧を1500barとして通過させた。均質化中の背圧を120barに設定した。ノズルを通過した後のゲニステイン懸濁液を熱交換器で約20〜30℃に冷却した。この固形分含量が約6%の懸濁液を、所望の粒度に到達するまでホモジナイザーを40回循環させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表Xに示す。
【表11】

【0095】
水分含量が6.18%のマルトデキストリン(25g)を脱イオン水(27g)に溶解することによってマルトデキストリン溶液(45%;52g)を調製した。上記40回通過させた後の均質化されたゲニステイン懸濁液に、均質化工程を停止させることなくマルトデキストリン溶液の一部(19.5g)を供給漏斗内で加え、この混合物(固形分約7.3%)を高圧ホモジナイザーをさらに2回通過させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定した。結果を以下の表XIに示す。
【表12】

【0096】
均質化されたゲニステイン懸濁液をニロ噴霧乾燥機(GEAニロA/S、デンマーク国)でノズル圧を4barとして乾燥した。入口温度を約200℃とし、出口温度を約80℃とした。噴霧乾燥粉末はゲニステインを約78.2%含んでいた。噴霧乾燥粉末を水中に再分散させてレーザー回折法で測定することによってゲニステインの粒度を測定した。結果を以下の表XIIに示す。
【表13】

【0097】
[実施例6]
水分含量が8%のカプスル(2.8kg;米国ニュージャージー州のナショナル・スターチ・アンド・ケミカル・カンパニー)を70℃の脱イオン水(5.7kg)に溶解することによってオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(30%)を調製した。
【0098】
ゲニステイン粉末(3.0kg)をオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(8.5kg)および脱イオン水(9.0kg)と混合し、Yで安定化されたZrOから構成される0.4mmのZrO系粉砕媒体を用いた1150Upmで回転する撹拌型ビーズミル(ネッチュ型LMZ4;独国セルブのネッチュGmbH&Co.ホールディングKG(Netzsch GmbH&Co.Holding KG,Selb,Germany))を通過させた。撹拌型ビーズミルを通過した後のゲニステイン懸濁液を熱交換器で40〜45℃に冷却した。この固形分含量が約27%の懸濁液を、所望の粒度に到達するまで撹拌型ビーズミルを2時間循環(ミルを11回循環)させた。
【0099】
ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)によって測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表XIIIに示す。
【表14】

【0100】
均質化されたゲニステイン懸濁液は、目的とする応用分野に噴霧使用することができ、また、実施例2に記載した手順を用いて噴霧乾燥することができる。
【0101】
[実施例7]
ゲニステイン粉末(6kg)を乾式粉砕法によりジェットミルで粉砕する。好適なミル:ジェット圧を5.0barとし、回転式分級機(sifter wheel)の速度を20,000Upmとした、ホソカワ・アルピネ・カンパニー(Hosokawa Alpine company)のアルピネ(Alpine)100AFG。比較のため、このゲニステインを図7に示す「スイング(swing)」試験に用いる。
【0102】
水分含量が8%であるオクテニルコハク酸デンプンナトリウム(6.0kg;米国ニュージャージー州のナショナル・スターチ・アンド・ケミカル・カンパニー)を70℃の脱イオン水(6.1kg)に溶解することによってオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(48%)を調製した。
【0103】
粉砕されたゲニステイン粉末(6.0kg)をオクテニルコハク酸デンプンナトリウム溶液(12.1kg)および脱イオン水(24kg)と混合し、EP1008380A2号明細書に記載された混合装置を備えた高圧ホモジナイザーを、均質化圧を700barとして通過させた。ノズルを通過した後のゲニステイン懸濁液を熱交換器で約20〜30℃に冷却した。この固形分含量が約20%である懸濁液を、図8に示すように所望の粒度(最終ゲニステイン)に到達するまでホモジナイザーを12回循環させた。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)により測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表XIVに示す。
【表15】

【0104】
均質化されたゲニステインを「スイング」試験にも用いた。結果を図8に示す。
【0105】
均質化された分散液を、多段噴霧乾燥機を用いて、ノズル圧を約40barとして噴霧乾燥した。入口温度を約160℃とし、出口温度を約80℃とし、内部流動床の入口空気温度を約50℃とした。ゲニステインの粒度をレーザー回折法(英国マルバーン・インストゥルメンツ・リミテッドのマスターサイザー2000)により測定し、屈折率1.469に基づいて算出した結果を以下の表XVに示す。
【表16】

【0106】
[実施例8]
【表17】


典型的な化粧製剤に従来の結晶性形態を使用することに対する、ナノ粒子から構成されるゲニステイン形態の利点を図1および図2に例示する。有効成分を含む化粧製剤は、様々な温度で保管され、室温で少なくとも1年間安定であるべきである。安定性の観察において監視される重要なパラメータの一つは、化粧製剤の顕微鏡下における外観である。可溶化が難しい有効成分を含む化粧製剤は、保管中に結晶が成長することが非常に多く、場合によってはわずか数日間で起こるであろう。この現象は、5℃で保管された製剤を観察するとより一層顕著である。このように大きな結晶が成長してしまった製剤には、#2の製剤の顕微鏡検査(室温で6ヶ月間保管した後の従来の結晶性ゲニステイン)を示す図2に例示するように多くの欠点がある。すなわち、有効成分の皮膚への生物学的利用能が低下するとともに、消費者が化粧品を皮膚につけるとその存在を感じ取ってしまう危険性がある。製剤#1の顕微鏡検査(室温で6ヶ月間保管した後の安定化されたゲニステインナノ粒子)を示す図1に例示するように、安定化されたゲニステインのナノ粒子を含む同じ化粧製剤は、室温で6ヶ月間保管した後でさえも完全に安定である。
【0107】
[実施例9]
【表18】


従来の結晶性ゲニステインを用いることに対する、ゲニステインナノ粒子を用いることにより得られる利点をさらに例示するために、上述の化粧製剤(#3および#4)を非常に負荷の高い安定性試験に供した。この製剤を24時間毎に温度を5℃から43℃まで変化させながら3週間保管した。製剤の外観を顕微鏡で観察した。これを図3(安定化されたゲニステインナノ粒子を含む製剤#3を5℃/43℃(各温度で24時間のサイクル)で19日間保管した後の顕微鏡検査を示す)および図4(従来の結晶性ゲニステインを含む製剤#4を5℃/43℃(各温度で24時間のサイクル)で19日間保管した後の顕微鏡検査を示す)に例示する。
【0108】
図3に示すように、ゲニステインのナノ粒子は依然として化粧製剤中に非常に微細に分散している。それとは対照的に、同じ製剤中の従来の結晶性ゲニステインを例示する図4では、大きな結晶が形成された。
【0109】
[実施例10]
分散系を強制的に結晶化させるため、温度を自己定義した時間枠で自己定義した順序で変化させる試験を用いた。この試験を「スイング」試験(温度変化試験)と呼ぶ。この試験の目的は、より高温で小粒子を溶解させることと、より低温で強制的に再結晶化させることにある。しかしながらこれは、製剤が安定であるかどうかを示す負荷試験方法でもある。以下の製剤を「スイング」試験に用いた。
【表19】

【0110】
[製造仕様]
油および水相(o+w)を別々に70℃(±5℃)まで加熱した後、合一した。増粘剤(t)を穏やかに撹拌しながら加えた。この混合物をウルトラ・ツラックス(Ultra−Turrax)T25ホモジナイザーを用いて24,000RPMで30秒間均質化した。このエマルジョンを穏やかに撹拌しながら(U字型撹拌機(horseshoe mixer)、120RPM)、45℃±5℃までゆっくりと冷却した。この温度で塩基(b)を加えてpH値をpH6.5〜7.0に調節した。依然として流体のエマルジョンにゲニステイン(g)を添加し、再びウルトラ・ツラックスT25ホモジナイザーを用いて24,000RPMで30秒間均質化を行うことにより混合した。この製剤を穏やかに撹拌しながら(U字型撹拌機、120RPM)、25℃±5℃に冷却した。
【0111】
[標準的な安定性評価]
標準的な安定性試験として、以下の条件を用いた。配合した化粧品試料を5℃±2℃、室温(例えば20〜25℃)、および43℃±2℃で保管し、2週間、6週間、3ヵ月、6ヵ月、および12ヵ月後に検査した。3ヵ月間目以降に結晶が成長した試料も幾つかあり、このことは、将来的な形態安定性を明言することができないまま長期間が経過することを意味している。
【0112】
[「スイング」試験による安定性評価]
この結晶化を強制的に行うために「スイング」試験を用い、最低および最高温度として5℃および43℃を選択した。各温度を24時間維持した。この試験を行う期間をまず20日間に設定した。これは、試料が一連の冷却/加熱(=1サイクル(sequence))を10回経験することを意味する。
【0113】
図5〜7は、「スイング」試験の結果を示すものである。ゲニステイン含有エマルジョンを、以下に示すゲニステインナノ粒子組成物を用いて上述したように調製した。以下のゲニステイン試料および濃度を用い、調製直後のエマルジョンおよび「スイング」試験を10サイクル実施した後の試料について測定を実施した。
図5(a):実施例3の濃度0.3%の組成物
図5(b):実施例3の濃度0.5%の組成物
図5(c):実施例3の濃度1.0%の組成物
図6(a):実施例6の濃度0.3%の組成物
図6(b):実施例6の濃度0.5%の組成物
図6(c):実施例6の濃度1.0%の組成物
図7(a):ジェットミルで乾式粉砕した後の実施例7の濃度0.3%の組成物
図7(b):ジェットミルで乾式粉砕した後の実施例7の濃度0.5%の組成物
図7(c):ジェットミルで乾式粉砕した後の実施例7の濃度0.1%の組成物
図8(a):実施例7に記載した実施例7の最終生成物の濃度0.3%の組成物
図8(b):実施例7に記載した実施例7の最終生成物の濃度0.5%の組成物
図8(c):実施例7に記載した実施例7の最終生成物の濃度1.0%の組成物
【0114】
どの図も倍率は同じであり、500μmの長さを図5(a)に示した。
【0115】
本発明の外用化粧料組成物は、「スイング」試験という厳しい条件下においてさえも、0.3〜1.0%という非常に高い濃度でさえも、粒度が全く増加していないことがわかる。実際、粒度も粒子分布も「スイング」試験によって影響されることはなかった。
【0116】
それとは対照的に、粉砕または均質化を行う前のゲニステインを用いた図7においては、「スイング」試験の間に粒度が著しく変化した。10サイクル後に巨大な結晶が形成されており、結晶の塊があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】室温で6ヶ月間保管した後の安定化されたゲニステインナノ粒子
【図2】室温で6ヶ月間保管した後の従来の結晶性ゲニステイン
【図3】安定化されたゲニステインナノ粒子を含む製剤#3を5℃/43℃(各温度で24時間のサイクル)で19日間保管した後の顕微鏡検査を示す。
【図4】従来の結晶性ゲニステインを含む製剤#4を5℃/43℃(各温度で24時間のサイクル)で19日間保管した後の顕微鏡検査を示す。
【図5(a)】実施例3の濃度0.3%の組成物
【図5(b)】実施例3の濃度0.5%の組成物
【図5(c)】実施例3の濃度1.0%の組成物
【図6(a)】実施例6の濃度0.3%の組成物
【図6(b)】実施例6の濃度0.5%の組成物
【図6(c)】実施例6の濃度1.0%の組成物
【図7(a)】ジェットミルで乾式粉砕した後の実施例7の濃度0.3%の組成物
【図7(b)】ジェットミルで乾式粉砕した後の実施例7の濃度0.5%の組成物
【図7(c)】ジェットミルで乾式粉砕した後の実施例7の濃度0.1%の組成物
【図8(a)】実施例7に記載した実施例7の最終生成物の濃度0.3%の組成物
【図8(b)】実施例7に記載した実施例7の最終生成物の濃度0.5%の組成物
【図8(c)】実施例7に記載した実施例7の最終生成物の濃度1.0%の組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソフラボン、場合により担体、および場合により水を含むイソフラボンナノ粒子組成物であって、
レーザー回折法により測定された前記イソフラボンの平均粒度D[4.3]が3μm未満であり、前記担体が、もし存在する場合は、炭水化物、蛋白質、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、イソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項2】
前記イソフラボンがゲニステインである、請求項1に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項3】
レーザー回折法によって測定された前記イソフラボンの平均粒度D[4.3]が1ミクロン以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項4】
レーザー回折法によって測定された前記イソフラボンの平均粒度D[4.3]が0.5ミクロン以下であることを特徴とする、請求項3に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項5】
レーザー回折法によって測定された前記イソフラボンの平均粒度D[4.3]が0.05ミクロン以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項6】
前記イソフラボンナノ粒子組成物が担体を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項7】
前記担体が、炭水化物、蛋白質、およびこれらの混合物から選択される、請求項6に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項8】
前記炭水化物が、変性デンプン、ソルビトール、マルトース、マルトデキストリン、アラビアゴム、ペクチン、アルギン酸塩、グアーガム、キサンタン、セルロース誘導体、およびこれらの混合物から選択される、請求項7に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項9】
前記蛋白質が、ゼラチン、乳蛋白質、大豆蛋白質、およびこれらの混合物から選択される、請求項7に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項10】
前記組成物が、粉末または顆粒状組成物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項11】
前記組成物が、イソフラボンを少なくとも1重量%含む、請求項10に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項12】
前記組成物が、イソフラボンを少なくとも20重量%含む、請求項11に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項13】
前記組成物が、イソフラボンを少なくとも70重量%含む、請求項12に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項14】
前記組成物が、水性懸濁液である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項15】
イソフラボンを10〜30%、担体を15〜40%、および水である残部から構成される、請求項14に記載のイソフラボンナノ粒子組成物。
【請求項16】
イソフラボン、場合により担体、および場合により水を含み、レーザー回折法により測定された前記イソフラボンの平均粒度D[4.3]が3μm未満であるイソフラボンナノ粒子組成物の製造方法であって、
結晶性イソフラボンおよび水および場合により担体を含む混合物を、所望の粒度に到達するまで高圧ホモジナイザーで処理し、場合により、結果として得られた懸濁液を乾燥処理に付すことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記方法が、請求項1〜15のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物の製造方法である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥処理が、噴霧乾燥または凍結乾燥である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記イソフラボンが、前記担体と一緒に混合および均質化される前に水中で予備均質化される、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記イソフラボンが、前記担体の存在下に、500bar〜4000barの圧力で高圧均質化に付される、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
イソフラボン、場合により担体、および場合により水を含み、レーザー回折法により測定された前記イソフラボンの平均粒度D[4.3]が3μm未満であるイソフラボンナノ粒子組成物の製造方法であって、
イソフラボン、水、および場合により担体を含む混合物を、所要の粒度に到達するまで撹拌型ビーズミルで湿式粉砕処理し、場合により、結果として得られた懸濁液を乾燥処理に付すことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記方法が、請求項1〜15のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物の製造方法である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記イソフラボンおよび場合により前記担体が、前記撹拌型ビーズミルを1〜50回循環される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記湿式粉砕処理においてZrO型粉砕媒体が使用される、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物を含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物を含む化粧料組成物。
【請求項27】
前記イソフラボンを0.05〜50重量%の濃度で含む、請求項25または26に記載の医薬または化粧料組成物。
【請求項28】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物を含む栄養製品。
【請求項29】
豆腐、ヨーグルト、および果汁から選択される、請求項28に記載の栄養製品。
【請求項30】
化粧料組成物、医薬組成物、食品、食品または飼料添加剤を調製するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載のイソフラボンナノ粒子組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【公表番号】特表2008−544963(P2008−544963A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518646(P2008−518646)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000827
【国際公開番号】WO2007/000193
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】