説明

インクジェット用インク及び導電性パターン形成方法

【課題】吐出孔における射出安定性、目詰まり耐性に優れ、高精度の描画、より詳しくは導電性パターンを高精度で形成することができる非水系のインクジェット用インクと、それを用いた導電性パターン形成方法を提供する。
【解決手段】吐出口が0.1μm以上、20μm未満である電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置で用いられるインクジェット用インクであって、電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒を全溶媒量の80質量%以上含有し、かつ脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界アシスト吐出方式のインクジェット吐出装置に用いるインクジェット用インクと、それを用いた導電性パターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセス等で用いられる基板はシリコン等で構成され、また電子回路等においてはフレキシブルな基板(フィルム等)が使用されている。従来このような基板に集積回路等を形成する際には、フォトリソグラフィー法が使用されていた。フォトリソグラフィー法等とは、例えば「薄膜ハンドブック」日本学術振興会編pp283−305に記載されているように、レジスト層を積層し、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射を行って、現像した後、不要なレジスト層を除去する方法である。しかしながら、このフォトリソグラフによる方法は、多数の工程が必要であり、また高コスト及び除去したレジスト層の廃棄という環境的な問題もあった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、金属材料をする含有インクジェットインクを用いて、インクジェット方式により基材面に導電回路パターンを形成し、加熱乾燥及び溶融を経て金属コロイド間の接触を向上させることにより導電率を向上させる方法が、特開2004−247667号公報等に開示されている。
【0004】
オンデマンドタイプのインクジェット方式としては、圧電現象を利用したピエゾ方式、インクの膜沸騰現象を利用したサーマル方式等が開発されている。
【0005】
しかしながら、ピエゾ方式を用いたインクジェット方式における吐出エネルギーは、駆動する圧電素子の変位量及び発生圧力と関わっているため、インク液滴サイズを小さくするためには変位量も小さくする必要があり、吐出するインク液滴の単位体積当たりの吐出エネルギーも小さくなるため、インク液滴サイズを小さくするには限界があった。
【0006】
一方、サーマル方式を用いたインクジェット方式においては、吐出エネルギーは、インクの膜沸騰現象を利用しているため、加熱素子の面積によりほぼ吐出エネルギーが決定される。加熱素子の面積は、発生させるバブルの体積、すなわちインク吐出量とほぼ比例するため、インク液滴サイズを小さくすれば、発生バブルの体積が小さくなり、吐出エネルギーも小さくなってしまい、ピエゾ方式を同様に、インク液滴サイズを小さくするには限界があった。
【0007】
上記課題に対し、微小化されたノズルから低粘度のみならず高粘度の液滴を吐出させる技術として、ノズル内の液体を帯電させ、ノズルと液滴の着弾を受ける対象物となる各種の基材との間に形成される電界から受ける静電吸引力により吐出させるいわゆる静電吸引方式の液滴吐出技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、この液滴吐出技術と、ピエゾ素子の変形や液体内部での気泡の発生による圧力を利用して液滴を吐出する技術とを組み合わせた、いわゆる電界アシスト吐出方式を用いた液滴吐出装置の開発が進んでいる。この電界アシスト吐出方式は、ピエゾ素子等の圧力発生手段であるメニスカス形成手段と静電吸引力を用いてノズルの吐出孔に液体のメニスカスを隆起させることにより、メニスカスに対する静電吸引力を高め、液表面張力に打ち勝ってメニスカスを液滴化し吐出する方法である。
【0009】
しかしながら、電界アシスト法を用いたこれらの液体吐出装置は、従来のピエゾ方式やサーマル方式を用いたインクジェット記録法に比べて吐出効率は良いが、電界による静電吸引力が最大限に活用されていないため、メニスカスの形成や液滴の吐出が効率的に行われていない。このため、微細パターン形成および高粘度のインク吐出の要請に応えようとすると、従来のインクジェット記録法と同様に、圧力発生手段に印加する駆動電圧を高くする必要が生じ、記録ヘッドや装置のコストが高価になってしまうという問題があった。
【0010】
一方、電圧印加によって帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させる静電吸引型吐出装置で、吐出孔の直径が0.01〜25μmであり、ノズル内に2つ以上の流体供給路を設け、1つの吐出孔に各流体供給路を連結した静電吸引型吐出装置により、ノズル先端部の詰まりを防止し、ノズルから吐出される流体の材料に制約されずに流体の高速吐出できる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)しかしながら、特許文献2に記載されている方法では、高精度描画(±1μm)という観点では不十分であった。
【0011】
また、静電吸引方式に適用しうるインクジェットインクとして、インクベヒクル、着色剤と有機塩を含有して、導電率を向上させた相変化型インクが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、特許文献3で開示されている有機塩化合物は、ホットメルト適性を付与するための化合物であり、通常のインクジェットインクで使用している溶剤系では安定して溶解することができず、一部の特定な構成のインクにしか適用することができないため、用途が極めて限定された方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第03/070381号明細書
【特許文献2】特開2007−289845号公報
【特許文献3】特開2007−297626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
通常、電界アシスト吐出方式では、ピエゾ素子を用いてインクジェットインクを押し出して高精度の描画を行う場合には、静電力でインク液滴を引っ張り、基材上の所望の位置に高精度で着弾させることにより、高精度描画を達成することができる。しかしながら、吐出孔(ノズル径)が0.1〜20μmと極めて微小な吐出孔である場合には、インク溶媒がノズル近傍でより乾燥しやすく、目詰まりを起こしやすくなる。また、インクの電気伝導度を確保する為、従来は水系のインクジェットインクを用いていたが、水系インクジェットインクでは、溶媒の蒸発が早く目詰まりするという問題があった。また、水系インクジェットインクは、非水系インクジェットインクに比べインク液滴サイズが大きく、射出性が劣化する(例えば、サテライト等の発生)という問題もあった。本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、吐出孔における射出安定性、目詰まり耐性に優れ、高精度の描画を達成することができる非水系のインクジェット用インクと、それを用いた導電性パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.吐出口が0.1μm以上、20μm未満である電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置で用いられるインクジェット用インクであって、電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒を全溶媒量の80質量%以上含有し、かつ脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【0016】
2.前記溶媒が、無極性溶媒であることを特徴とする前記1に記載のインクジェット用インク。
【0017】
3.金属粒子または半導体の前駆体を、0.5質量%以上、20質量%以下含有することを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット用インク。
【0018】
4.前記1から3のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを、電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置より基板上に吐出してパターン画像を描画した後、該パターン画像に無電解メッキ処理を施すことを特徴とする導電性パターン形成方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、吐出孔における射出安定性、目詰まり耐性に優れ、高精度の描画、より詳しくは導電性パターンを高精度で形成することができる非水系のインクジェット用インクと、それを用いた導電性パターン形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】形状が異なるノズルの変形例を示す図である。
【図3】シミュレーションによるノズルの吐出孔付近の電位分布を示す模式図である。
【図4】マルチノズルヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図5】マルチノズルヘッドの内部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、吐出口が0.1μm以上、20μm未満である電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置で用いられるインクジェット用インクであって、電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒を全溶媒量の80質量%以上含有し、かつ脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤を含有することを特徴とするインクジェット用インクにより、吐出孔における射出安定性、目詰まり耐性に優れ、高精度の描画を達成することができる非水系のインクジェット用インクを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0023】
本発明の電界アシスト吐出方式のインクジェット吐出装置を用いた導電性パターン形成方法においては、静電力でインク液滴を引っ張り、基材上の所定の位置に正確に着弾させることにより、高精度の導電性パターンの描画(±1μm)を達成する為、インクジェット用インクの電気伝導度が、極めて重要な要件となる。高精度の描画を達成する為のインクの電気伝導度としては、25℃において0.05μS/cm以上が必要であることがわかっており、更には0.1μS/cm以上であることが好ましい。水系インクを用いると電気伝導度は問題ないが、射出性(インク粘度、インク沸点)からは水が含まれないインクの方が好ましい。特に、銀ナノ粒子の場合には、無極性溶媒であると分散性が良好で粒径が小さく、吐出口が小さいインクジェット装置を用いる場合にはより好ましい。
【0024】
すなわち、本発明のインクを導電性パターン形成方法に適用する場合には、パターン形成材料として用いる導電性微粒子の十分な分散安定性を確保する観点から、分散媒である溶媒として、電気伝導度が0.01μS/cm未満の溶媒(以下、溶媒Aと称す)を適用し、更に、電界アシスト吐出方式のインクジェット吐出装置における導電性パターン画像を高精度で描画するために付与するインクの電気伝導度を、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤を含有することに係るより達成するものである。その結果、インクの高い分散安定性によりインク吐出時の吐出孔における射出安定性及び目詰まり耐性と、形成する導電性パターンの高精度描画の両立を果たすことができたものである。
【0025】
なお、本発明において、溶媒及びインクジェット用インクの電気伝導度の測定は、JIS K 0130(1995)に記載される方法に従って容易に行うことができる。具体的な電気伝導度の測定装置としては、電気伝導度計SC−51型(横河北辰電機社製)を用いて求めることができる。
【0026】
《インクジェット用インク》
はじめに、本発明のインクジェット用インク(以下、単にインクともいう)の各構成要件の詳細について説明する。
【0027】
〔界面活性剤〕
本発明のインクにおいては、界面活性剤として脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤を含有することが特徴である。
【0028】
(脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤)
本発明に適用可能な脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、特に制限はないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体付加物、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリエタノールアミン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0029】
より具体的には、例えば、本発明で用いることができるソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸としてはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等を用いることができ、具体的化合物としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等を挙げることができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルは、市販品としても容易に入手することができ、例えば、レオドールSP−L10、同SP−P10、同SP−S10、同SP−S30、同SP−O10、同SP−O30、同AS−10、同AO−10、同AO−15、レオドールスーパーSP−L10、同SP−S10、エマゾールL−10(F)、同P−10(F)、同S−10(F)、同O−10(F)、同O−30(F)、同O−15R、同S−20、エマゾールスーパーL−10(F)、同S−10(F)(以上、花王社製)を挙げることができる。
【0030】
また、本発明で用いることができるポリオキシレンエチレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルとして、特に制限はないが、脂肪酸としてはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等を用いることができ、具体的化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等を挙げることができる。また、本発明に係るポリオキシレンエチレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルは、市販品としても容易に入手することができ、例えば、レオドールTW−L120、同TW−L106、同TW−P120、同TW−S120、同TW−S106、同TW−S320、同TW−O120、同TW−O106、同TW−O320、レオドールスーパーTW−L120、同TW−S120、同TW−O120、アマゾールO−105R(以上、花王社製)を挙げることができる。
【0031】
(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)
本発明に適用可能なポリカルボン酸型高分子界面活性剤としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などが挙げられる。
【0032】
ポリカルボン酸型高分子界面活性剤の具体例としては、例えば、BYK Chemie社製のAnti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)、Disperbyk−107(ヒドロキシル基含有カルボン酸エステル)、BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)、P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)、Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)、楠本化成社製のディスパロン#2150(脂肪族多価カルボン酸)、花王社製のホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)等が挙げられる。
【0033】
本発明において、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤の添加量としては、本発明のインクの電気伝導度を0.05μS/cm以上とするのに必要とする添加量であることが好ましく、使用する界面活性剤の種類により最適量は異なるが、概ね0.01質量%以上、20質量%未満であり、好ましくは0.1質量%以上、10質量%以下である。20質量%以上になると、インクの分散状態が不安定になる恐れがある。
【0034】
本発明のインクにおいては、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤は、従来公知の各種溶媒に溶解して添加することが好ましいが、例えば、無極性溶媒の場合には、溶解可能な界面活性剤の種類が大幅に制限を受けるため、主溶媒である溶媒Aと相溶性のある溶媒に溶解してから添加することが好ましい。相溶性のある溶媒が主たる溶媒Aよりも極性がある方が、インクの電気伝導度が良くなり好ましいが、極性がありすぎると分離してインク安定性が悪くなる。
【0035】
〔電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒〕
本発明のインクジェット用インクにおいては、電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒を全溶媒量の80質量%以上含有することを特徴とする。
【0036】
インクを構成する溶媒として、電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒を全溶媒量の80質量%以上とすることにより、導電性パターンの形成に用いるインクにおいて、含有する金属粒子あるいは半導体の前駆体のインク中における良好な分散安定性を維持しうることができ、その結果、インク吐出時の吐出孔における射出安定性及び目詰まり耐性を向上することにより、形成する導電性パターンの高精度描画を実現することができる。
【0037】
本発明に係る溶媒としては、電気伝導度が0.01μS/cm未満であれば特に制限はないが、好ましくは、無極性溶媒である。
【0038】
本発明のインクに適用可能な電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素系有機溶剤:トルエン、ベンゼン、キシレン等、脂肪族炭化水素系有機溶剤:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン等、脂環族炭化水素系有機溶剤:テトラリン、デカリン、シクロヘキサン、シクロヘキサンの置換誘導体等、ハロゲン化炭化水素系有機溶剤:メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等、エステル系有機溶剤:酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、酪酸ブチル等、ケトン系有機溶剤:メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができるが、好ましくは、テトラデカン、テトラリン、リモネン等が挙げられる。これら有機溶剤は単独で使用してもよく、又必要に応じて2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0039】
〔導電性パターン形成材料〕
本発明においては、導電性パターンを形成する際に用いるインクでは、金属粒子または半導体の前駆体を、0.5質量%以上、20質量%以下含有することが好ましい。
【0040】
本発明のインクに適用可能な金属粒子としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等が挙げられるが、その中でも特に、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、かつ腐食に強い回路パターンを形成することができるので好ましい。特にコスト・安定性の観点からはAg(銀)を含む金属微粒子が好ましく、メッキ触媒として機能させる場合にはAg/Pdの合金であることが好ましい。これらの金属微粒子は、平均粒子径が1〜100nmであることが好ましく、更には3〜50nmであることが好ましい。
【0041】
また、半導体の前駆体としては金属酸化物半導体の前駆体が挙げられ、金属酸化物半導体の前駆体となる材料としては、銅、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、アルミニウム等の金属のハロゲン化物、例えば、塩化亜鉛(ZnCl)、塩化インジウム(InCl)、酸化錫(SnCl)等の金属ハライドが好ましい。
【0042】
本発明において、半導体の前駆体を含むインクを基板上に吐出した後、先ず、これに対し、還元処理を施し一旦金属パターンとした後、更に酸化処理を施して、金属酸化物半導体に転化させ、酸化物半導体パターンとする。
【0043】
また、半導体の前駆体として、有機半導体材料を用いることもできる。本発明に適用可能な有機半導体材料としては、例えば、縮合多環芳香族化合物や共役系化合物を挙げることができる。
【0044】
有機半導体材料としての縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、フタロシアニン、ポルフィリンなどの化合物及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0045】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタンなどのシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体或いは混合物を挙げることができる。
【0046】
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、などのオリゴマーが好適に用いることができる。
【0047】
さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601号に記載のフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N′−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N′−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N′−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N′−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、C60、C70、C76、C78、C84等フラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などがあげられる。
【0048】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0049】
また、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることができる。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0050】
〔インクの液物性〕
本発明において、インクとしては、容易に粘度上昇したり、乾燥したりしないために、蒸気圧が低く、沸点の高い溶媒を使用することが好ましい。溶媒の沸点は150℃以上が好ましく、200℃以上が更に好ましい。本発明に有用である金属粒子あるいは半導体の前駆体を含有するインクの粘度は、射出温度において0.5mPa・s以上、10.0mPa・s以下が射出安定性の観点から好ましく、1.0mPa・s以上、6.5mPa・s以下がより好ましい。インクの粘度については、従来公知の粘度計を用いて求めることができる。射出温度については、20〜60℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。20℃未満であると冷却する必要がある場合があり、60℃を超えるとヘッド及び流路部材等に負担がかかる懼れがあるためである。
【0051】
本発明に有用である金属粒子あるいは半導体の前駆体を含有するインクにおいては、射出性及び描画性の観点から表面張力は20mN/m以上、50mN/m以下が好ましい。表面張力が20mN/mより低いと、ノズル表面の撥水膜にインクが濡れ広がり射出性が悪化し、50mN/mより高いと、描画した際に濡れ広がりにくく連続射出による直線性の高いライン形成が難しくなるためである。本発明でいうインクの表面張力の測定方法は一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P68〜117を参照することができる。
【0052】
〔焼成方法〕
本発明に有用である金属粒子あるいは半導体の前駆体を含有するインクを基材に吐出して描画後、該インクの焼成方法としては、熱風循環炉(オーブン)での焼結、ホットプレートでの焼結などの方法が挙げられる。焼結は100〜120℃で5〜15分の予備乾燥後、140〜200℃で10〜60分の本焼結を行うことが好ましい。予備乾燥に用いる機器に特に指定はない。本焼結の温度が140℃未満では金属ナノ粒子の融着状態が悪く、配線作成を行った際は抵抗値が高くなるおそれがある。本焼結に用いる機器はホットプレートが好ましい。ホットプレートを用いると、インクに直接熱が伝わり、金属ナノ粒子の融着が進みやすくなるためである。金属配線を形成する場合には、電気抵抗値として10μΩcm以下であることが好ましい。
【0053】
〔無電解メッキ〕
本発明の導電性パターン形成方法においては、電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置より基板上に吐出してパターン画像を描画した後、さらに抵抗値を下げ、より優れた導電性が得られる観点から、金属ナノ粒子をメッキ触媒として該パターン画像に無電解メッキ処理を施すことを特徴とする。無電解メッキを行う場合には、金属粒子は触媒として働く量だけついていればいいので濃度が低い方がコスト的にも有利である。無電解メッキをする場合、例えば、銀ナノ粒子の濃度としては5〜20質量%が好ましい。
【0054】
本発明においては、低抵抗の導電性パターンを、煩雑な工程なしに簡便、低コストでメッキ処理することができる観点から、無電解メッキ法を適用する。
【0055】
無電解メッキ法によるメッキ処理は、メッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性パターンに、メッキ剤を接触させる方法である。メッキ触媒である金属微粒子とメッキ剤とが接触し、導電性パターン部に無電解メッキが施されて、より優れた導電性を得ることができる。
【0056】
本発明に係るメッキ処理で使用できるメッキ剤としては、例えば、メッキ材料として析出させる金属イオンが均一溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有される。ここで、通常は溶液が用いられるが、無電解メッキを生じさせるものであればこれに限らず、ガス状や粉体のメッキ剤を適用することも可能である。
【0057】
具体的に、この金属塩としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが適用可能である。還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜燐酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が、析出する電極に含有されていてもよい。或いはこれらの金属塩の混合物を用いて合金が形成されていてもよい。
【0058】
メッキ剤は、上記金属塩と還元剤とが混合されたものを適用するようにしてもよいし、或いは金属塩と還元剤とを別個に適用するようにしてもよい。ここで、導電性パターンをより鮮明に形成するためには、金属塩と還元剤とが混合されたものを適用することが好ましい。また、金属塩と還元剤とを別個に適用する場合には、導電性パターン部にまず金属塩を配した後、還元剤を配することで、より安定した電極パターンを形成することができる。
【0059】
メッキ剤には、必要があれば、pH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶液に用いる溶媒としては、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしてもよい。
【0060】
メッキ剤の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、および必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、メッキ剤の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、メッキ剤の温度を調整する方法、また例えばメッキ剤中に浸漬する場合、浸漬前に基板を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。さらに、メッキ剤に浸漬する時間で析出する金属薄膜の膜厚を調整することもできる。
【0061】
《インクジェット吐出装置》
本発明においては、本発明のインクジェット用インクを電界アシスト吐出方式を用いたインクジェットヘッドを備えたインクジェット吐出装置により、基板上に吐出してパターン画像を描画することを特徴とする。
【0062】
本発明に係る電界アシスト吐出方式のインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)は、微小液滴を形成させるため、吐出口の内径が1.0μm以上、20μm未満とかなり小さい特徴を備えている。
【0063】
〈電界アシスト吐出方式〉
本発明の導電性パターンの形成方法としては、インクジェット吐出装置を用いたインクジェット方式を適用している。インクジェット方式によれば、基板のパターニングを必要としないため、また先にバンクを形成したりすることなしに、連続して射出描画することができ、直線性が高く、細いラインを形成できることができる。
【0064】
更には、電気回路等に使用される線幅が40μm以下の細線を高精度に形成できる観点から、吐出口の内径は0.1〜20μm未満である電界アシスト吐出方式のインクジェット装置を用いることが特徴である。
【0065】
以下、電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット記録方法について説明する。
【0066】
一般に、電子回路等で要求されている微細な線幅のパターンを高精細に描画するには、インクジェット記録装置から射出するインク液滴をより微細化する必要がある。
【0067】
しかしながら、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)や電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)のみの出力手段を用いて、極微小インク液滴を吐出した場合、ノズルから吐出したインク液滴に付与される運動エネルギーは、インク液滴の半径の3乗に比例して小さくなるため、微小液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などによる擾乱を受け、正確な着弾が困難となる。更に、インク液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため微細液滴は、飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。このように着弾位置の高精度化は、インク液滴の微細化と相反する課題であり、これら2つを同時に実現することに対し、障害を抱えていた。
【0068】
本発明においては、上記課題を解決する方法として、電界アシスト吐出方式を適用する。この射出方法は、0.1〜20μm未満の内径の吐出口を有するノズルを用い、導電性インクに任意波形の電圧を印加して、この導電性インクを帯電させることにより、そのインク液滴を吐出口から、基板に吐出する方法である。吐出口の内径は、射出性及び細線性の観点より3〜10μmであることが更に好ましい。3μm未満であると金属ナノ粒子含有インクを用いた場合目詰まりし易く、10μmを超えると所望の細線が形成できない場合がある。
【0069】
図1に、本発明に好ましく用いられる電界アシスト吐出方式のインクジェット装置の全体構成の一実施形態を断面図で示した。液体吐出ヘッド2は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
【0070】
インクジェット装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出するノズル10が形成された液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2のノズル10に対向する対向面を有すると共にその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極3とを備えている。
【0071】
液体吐出ヘッド2の対向電極3に対向する側には、複数のノズル10を有する樹脂製のノズルプレート11が設けられている。液体吐出ヘッド2は、ノズルプレート11の対向電極3に対向する吐出面12からノズル10が突出されない、或いは前述したようにノズル10が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている(例えば、後述する図2(D)参照)。
【0072】
各ノズル10は、ノズルプレート11に穿孔されて形成されており、各ノズル10には、それぞれノズルプレート11の吐出面12に吐出孔13を有する小径部14とその背後に形成されたより大径の大径部15との2段構造とされている。本実施形態では、ノズル10の小径部14及び大径部15は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部14の吐出孔13の内部直径(以下、ノズル径という。)が10μm、大径部15の小径部14から最も離れた側の開口端の内部直径が75μmとなるように構成されている。
【0073】
なお、ノズル10の形状は前記の形状に限定されず、例えば、図2(A)〜(E)に示すように、形状が異なる種々のノズル10を用いることが可能である。また、ノズル10は、断面円形状に形成する代わりに、断面多角形状や断面星形状等であってもよい。
【0074】
ノズルプレート11の吐出面12と反対側の面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル10内の液体Lを帯電させるための帯電用電極16が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極16は、ノズル10の大径部15の内周面17まで延設されており、ノズル内の液体Lに接するようになっている。
【0075】
また、帯電用電極16は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源18に接続されており、単一の帯電用電極16が全てのノズル10内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、全ノズル10内の液体Lが同時に帯電され、液体吐出ヘッド2と対向電極3との間、特に液体Lと基材Kとの間に静電吸引力が発生されるようになっている。
【0076】
帯電用電極16の背後には、ボディ層19が設けられている。ボディ層19の前記各ノズル10の大径部15の開口端に面する部分には、それぞれ開口端に略等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
【0077】
ボディ層19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21により液体吐出ヘッド2が外界と画されている。
【0078】
なお、ボディ層19には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層19としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ20、共通流路、及び共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路が設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル10等の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
【0079】
可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が接続されている。ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
【0080】
駆動電圧電源23及び帯電用電極16に静電電圧を印加する前記帯電電圧電源18は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受けるようになっている。
【0081】
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM27等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源18及び各駆動電圧電源23を駆動させてノズル10の吐出孔13から液体Lを吐出させるようになっている。
【0082】
なお、本実施形態では、液体吐出ヘッド2のノズルプレート11の吐出面12には、吐出孔13からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層28が吐出孔13以外の吐出面12全面に設けられている。撥液層28は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面12に成膜されている。なお、撥液層28は、ノズルプレート11の吐出面12に直接成膜してもよいし、撥液層28の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
【0083】
液体吐出ヘッド2の下方には、基材Kを支持する平板状の対向電極3が液体吐出ヘッド2の吐出面12に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3と液体吐出ヘッド2との離間距離は、0.1mm〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
【0084】
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界が生じるようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると、対向電極3はその電荷を接地により逃がすようになっている。
【0085】
なお、対向電極3又は液体吐出ヘッド2には、液体吐出ヘッド2と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド2の各ノズル10から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
【0086】
次いで、液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理について図3を用いて説明する。
【0087】
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧を印加し、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させる。
【0088】
本実施形態のように、ノズルプレート11の絶縁性が高くなると、図3にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル10の小径部14の液体Lや液体Lのメニスカス部分に向かう強い電界が発生する。
【0089】
特に、図3でメニスカスの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカス先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の静電力によってメニスカスが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。更に、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基材Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近いところに着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等が安定し正確に行われる。
【0090】
このように、本発明の液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理を利用すれば、フラットな吐出面を有する液体吐出ヘッド2においても、高い絶縁性を有するノズルプレート11を用い、吐出面12に対して垂直方向の電位差を発生させることで強い電界集中を生じさせることができ、正確で安定した液体Lの吐出状態を形成することができる。
【0091】
例えば、電極間の電界の電界強度が実用的な値である1.5kV/mmとなるように構成し、各種の絶縁体でノズルプレート11を形成して下記の実験条件、
[実験条件]
ノズルプレート11の吐出面12と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート11の厚さ:125mm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
に基づいて行った実験では、メニスカス先端部の電界強度を、電界シミュレーションソフトである「PHOTO−VOLT」(株式会社フォトン製)で電流分布解析モードによるシミュレーションにより算出したところ(直接測定することが困難であるため)、メニスカス先端部の電界強度は3×10V/m(30kV/mm)以上であった。
【0092】
また、前記実験条件と同様のパラメータを同ソフトに入力してメニスカス先端部の電界強度を演算した結果、電界強度はノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗率に強く依存することがわかり、ノズル10から液滴Dを安定に吐出させるためにはメニスカス先端部の電界強度が3×10V/m以上であると共に、少なくともノズルプレート11の体積抵抗率は1015Ωm以上であることが必要である。
【0093】
また、メニスカス先端部の電界強度は、ノズルプレート11の厚さ及びノズル径にも依存するので、それぞれ75μm以上及び15μm以下であることが好ましい。
【0094】
ノズルプレート11の厚さがより厚くなることで、ノズル10の吐出孔13と帯電用電極16との距離が遠くなり、ノズルプレート内の等電位線が略垂直方向に並び易くなるためメニスカス先端部への電界集中が生じ易くなること、また、ノズル径が小径になると、メニスカスの径が小さくなり、より小径となったメニスカス先端部に電界が集中することで電界集中の度合が大きくなると考えられる。
【0095】
ノズルプレート11の厚さとメニスカス先端部の電界強度との関係及びズル径とメニスカス先端部の電界強度との関係は、本実施形態のような小径部14及び大径部15よりなる2段構造のノズル10の場合のみならず、1段構造、すなわち、単純なテーパ状のノズルや円筒状のノズル、或いは多段構造のノズルの場合も同様の結果が得られている。
【0096】
この場合、小径部14及び大径部15の区別がないテーパ状又は円筒状の1段構造のノズル10において、メニスカス先端部の電界強度は、ノズル10のテーパ角に依存することがわかる。ノズル10のテーパ角は30°以下であることが好ましい。なお、テーパ角とはノズル10の内面とノズルプレート11の吐出面12の法線とがなす角のことをいい、テーパ角が0°の場合はノズル10が円筒形状であることに対応する。
【0097】
以下、本発明に好ましく用いられる静電吸引方式の液体吐出装置の好ましい一態様について図面を参照しながら説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0098】
本発明に用いられる静電吸引方式のインクジェット装置は、図4に示すようにマルチノズルヘッド100を有している。マルチノズルヘッド100はノズルプレート31、ボディプレート32及び圧電素子33を有している。ノズルプレート31は150μm〜300μm程度の厚みを有したシリコン基板また酸化シリコン基板である。ノズルプレート31には複数のノズル101が形成されており、これら複数のノズル101が1列に配列されている。
【0099】
ボディプレート32は、200μm〜500μm程度の厚みを有したシリコン基板である。ボディプレート32にはインク供給口201、インク貯留室202、複数のインク供給路203及び複数の圧力室204が形成されている。
【0100】
インク供給口201は直径が400μm〜1500μm程度の円形状の貫通孔である。
【0101】
インク貯留室202は幅が400μm〜1000μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
【0102】
インク供給路203は幅が50μm〜150μm程度で深さが30μm〜150μm程度の溝である。圧力室204は幅が150μm〜350μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
【0103】
ノズルプレート31とボディプレート32とは互いに接合されるようになっており、接合した状態ではノズルプレート31のノズル101とボディプレート32の圧力室204とが1対1で対応するようになっている。
【0104】
ノズルプレート31とボディプレート32とが接合された状態でインク供給口201にインクが供給されると、当該インクはインク貯留室202に一時的に貯留され、その後にインク貯留室202から各インク供給路203を通じて各圧力室204に供給されるようになっている。
【0105】
圧電素子33はボディプレート32の圧力室204に対応した位置に接着されるようになっている。圧電素子33はPZT(lead zirconium titanate)からなるアクチュエータであり、電圧の印加を受けると変形して圧力室204の内部のインクをノズル101から吐出させるようになっている。
【0106】
なお、図4では図示しないが、ノズルプレート31とボディプレート32と間には硼珪酸ガラスプレート34(図5参照)が介在している。
【0107】
図5に示す通り、1つの圧電素子に対応してノズル101と圧力室204とが1つずつ構成されている。
【0108】
ノズルプレート31においてノズル101には段が形成されており、ノズル101は下段部101aと上段部101bとで構成されている。下段部101aと上段部101bとは共に円筒形状を呈しており、下段部101aの直径D1(図5中左右方向の距離)が上段部101bの直径D2(図5中左右方向の距離)より小さくなっている。
【0109】
ノズル101の下段部101aは上段部101bから流通してきたインクを直接的に吐出する部位である。下段部101aは直径D1が1μm〜10μmで、長さL(図5中上下方向の距離)が1.0μm〜5.0μmとなっている。下段部101aの長さLを1.0μm〜5.0μmの範囲に限定するのは、インクの着弾精度を飛躍的に向上させることができるからである。
【0110】
他方、ノズル101の上段部101bは圧力室204から流通してきたインクを下段部101aに流通させる部位であり、その直径D2が10μm〜60μmとなっている。
【0111】
上段部101bの直径D2の下限を10μm以上に限定するのは、10μmを下回ると、ノズル101全体(下段部101aと上段部101b)の流路抵抗に対し上段部101bの流路抵抗が無視できない値となり、インクの吐出効率が低下しやすいからである。
【0112】
逆に、上段部101bの直径D2の上限を60μm以下に限定するのは、上段部101bの直径D2が大きくなるほど、インクの吐出部位としての下段部101aが薄弱化して(下段部101aが面積増大して機械的強度が小さくなる。)、インクの吐出時に変形し易くなり、その結果インクの着弾精度が低下するからである。すなわち、上段部101bの直径D2の上限が60μmを上回ると、インクの吐出に伴い下段部101aの変形が非常に大きくなり、着弾精度を規定値(=0.5°)以内に抑えることができなくなる可能性があるからである。
【0113】
ノズルプレート31とボディプレート32との間には数百μm程度の厚みを有した硼珪酸ガラスプレート34が設けられており、硼珪酸ガラスプレート34にはノズル101と圧力室204とを連通させる開口部34aが形成されている。開口部34aは、圧力室204とノズル101の上段部101bとに通じる貫通孔であり、圧力室204からノズル101に向けてインクを流通させる流路として機能する部位である。圧力室204は、圧電素子33の変形を受けて当該圧力室204の内部のインクに圧力を与える部位である。
【0114】
以上の構成を具備するマルチノズルヘッド100では、圧電素子33が変形すると、圧力室204の内部のインクに圧力を与え、当該インクは圧力室204から硼珪酸ガラスプレート34の開口部34aを流通してノズル101に至り、最終的にノズル101の下段部101aから吐出されるようになっている。
【0115】
なお、本発明に係るインクジェット装置の一態様としては、マルチノズルヘッド100のノズルプレート1に対向する位置に基板電極が設けられており(図示略)、ノズル101と当該基板電極との間には静電界が作用するようになっている。
【0116】
そのため、ノズル101から吐出されたインクはその静電界の作用を受けながら基板電極上の被記録物に着弾するようになっている。
【0117】
《基板》
本発明に適用可能な基板としては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。基板には絶縁膜等表面処理が施されていてもよい。
【実施例】
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0119】
実施例1
《インクの調製》
〔インク1の調製〕
ハリマ化成製銀インク(溶媒:テトラデカン、銀濃度:64質量%)を、テトラデカン(電気伝導度:0.001μS/cm未満)を用いて希釈し、銀濃度が10質量%、溶媒としてテトラデカンが90質量%のインク1を調製した。
【0120】
〔インク2の調製〕
上記インク1の調製において、ドデシルアミンを0.5質量%添加した以外は同様にしてインク2を調製したが、ドデシルアミンがテトラデカンに不溶解のため、均一のインク液を調製することができなかった。
【0121】
〔インク3の調製〕
ハリマ化成製銀インク(溶媒:テトラデカン、銀濃度:64質量%)に、テトラデカン及びレオドールSP−L10(脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、花王社製)を添加し、銀濃度が10質量%、テトラデカンが70質量%、レオドールSP−L10が20質量%のインク3を調製した。
【0122】
〔インク4の調製〕
はじめに、界面活性剤であるホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、花王社製)10.0gを、酢酸エチル(電気伝導度:0.001μS/cm未満)の34.0gを用いて溶解して、ホモゲノールL−18溶液を調製した。
【0123】
次いで、ハリマ化成製銀インク(原液濃度;64質量%)の15.6gに、テトラデカンを40.3g、上記ホモゲノールL−18溶液44.0gを添加して、銀濃度が10質量%、テトラデカンが46質量%、ホモゲノールL−18が10質量%、酢酸エチルが34.0質量%のインク4を調製した。
【0124】
〔インク5の調製〕
上記インク4の調製において、ホモゲノールL−18溶液を調製する際に、酢酸エチルに代えてリモネン(電気伝導度:0.001μS/cm未満)を用いた以外は同様にして、インク5を調製した。
【0125】
〔インク6の調製〕
はじめに、界面活性剤であるホモゲノールL−1820(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、原液濃度:20質量%、花王社製)20.0gを、酢酸エチルの29.5gを用いて溶解して、ホモゲノールL−1820溶液を調製した。
【0126】
次いで、ハリマ化成製銀インク(原液濃度;64質量%)の15.6gに、テトラデカンを34.9g、上記ホモゲノールL−1820溶液49.5gを添加して、銀濃度が10質量%、テトラデカンが40.5質量%、ホモゲノールL−1820が4質量%、酢酸エチルが45.5質量%のインク6を調製した。
【0127】
〔インク7の調製〕
上記インク3の調製において、レオドールSP−L10(脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤)に代えて、同量のホモゲノールL−95(イミダゾリン系界面活性剤、花王社製)を用いた以外は同様にして、インク7を調製した。
【0128】
〔インク8の調製〕
上記インク3の調製において、レオドールSP−L10(脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤)に代えて、同量のピュアミールCCS−40(脂肪族アミン系界面活性剤)を用いた以外は同様にして、インク8を調製した。
【0129】
〔インク9の調製〕
上記インク3の調製において、レオドールSP−L10(脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤)に代えて、同量のフタージェント730LM(フッ素系界面活性剤、ネオス社製)を用いた以外は同様にして、インク9を調製した。
【0130】
《導電性パターンの形成》
上記調製した各インクを図1に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備え、ノズルの吐出孔が10μmのインクジェット方式の液体吐出装置に装填し、シリコン基板上に、各インクを射出し、線幅10μm、線間隔285μmの格子状の導電性パターンを描画した。
【0131】
次に、下記の無電解銅メッキ浴中に浸漬し、75℃で20分間の無電解メッキ処理を行って、平均膜厚が4.5μmの導電性パターン1〜9を形成した。
【0132】
(無電解銅メッキ液)
硫酸銅 0.04モル
ホルムアルデヒド(37質量%) 0.08モル
水酸化ナトリウム 0.10モル
トリエタノールアミン 0.05モル
ポリエチレングリコール 100ppm
水を加えて全量を1Lとする。
【0133】
《インク及び導電性パターンの評価》
〔インクの特性評価〕
(インクの電気伝導度の測定)
上記調製した各インクの電気伝導度を、JIS K 0130(1995)に準拠した方法に従って、電気伝導度計SC−51型(横河北辰電機社製)を用いて測定した。
【0134】
(インクの保存安定性の評価)
ガラス瓶に充填、密栓した状態の各インクを、25℃の環境下で2週間放置し、放置前後での粘度及び銀粒子の平均粒子径を測定した。
【0135】
次いで、放置前の各インクの粘度及び銀粒子の平均粒子径に対する放置後の粘度及び銀粒子の平均粒子径の変動率〔(放置後の特性値−放置前の特性値)/放置前の特性値×100(%)〕を測定し、下記の基準に従って保存安定性を評価した。
【0136】
なお、インクの粘度は、25℃にて回転式レオメーター(レオストレス RS600:Thermo HAAKE)を用いて測定した。また、銀粒子の平均粒子径は、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて測定した(体積平均粒子径)。
【0137】
○:粘度及び平均粒子径の変動値が、10%未満である
△:粘度または平均粒子径の変動値が、10%以上、20%未満である
×:粘度または平均粒子径の変動値が、20%以上である
〔導電性パターンの評価〕
(細線再現性)
キーエンス社製マイクロスコープVHX−600を用いて形成した導電性パターン表面を観察して、下記の基準に従って、細線再現性を評価した。
【0138】
◎:線幅及び線の間隔が±10%以内の精度で再現されている
○:線幅及び線の間隔が±20%以内の精度で再現されている
△:線幅及び線の間隔が±50%以内の精度で再現されている
×:線幅及び線の間隔の再現精度が±50%を超える。
【0139】
(描画精度の評価)
上記電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置を用いて、特定の位置に対して、インク液滴を連続して30発の出射を行い、形成したドット群の分散を計算してσを測定し、下記の基準に従って描画精度の評価を行った。
【0140】
○:3σが1μm以下である(±1μmに入る点が99.7%以上)
△:σが1μm以下であり、3σが1μm以上である(±1μmに入る点が66.9〜99.6%)
×:σが1μmを越えている(±1μmに入る点が66.8%未満)
以上により得られた測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明のインクジェット用インクは、高い電気伝導度を有し、保存安定性(分散安定性)に優れ、かつそれを電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置を用いて形成した導電性パターンは、細線再現性及び描画精度に優れていることが分かる。また、形成した導電性パターンは、良好な導電性を有していることを確認した。
【0143】
実施例2
実施例1に記載の導電性パターン1〜9の形成において、描画に用いる圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット方式の液体吐出装置のノズルの吐出孔径を0.1〜50μmまで変化させて、同様の評価を行った結果、ノズルの吐出孔径が0.1〜20μmの範囲で、実施例1に記載したのと同様の効果を得ることができた。
【符号の説明】
【0144】
1 インクジェット装置
2 液体吐出ヘッド
3 対向電極
10 ノズル
11 ノズルプレート
12 吐出面
13 吐出孔
18 静電電圧電源
20 キャビティ
22 ピエゾ素子
23 駆動電圧電源
24 動
作制御手段
28 撥液層
L 液体
100 マルチノズルヘッド
31 ノズルプレート
101 ノズル
101a 下段部
101b 上段部
32 ボディプレート
33 圧電素子
34 硼珪酸ガラスプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口が0.1μm以上、20μm未満である電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置で用いられるインクジェット用インクであって、電気伝導度が0.01μS/cm未満である溶媒を全溶媒量の80質量%以上含有し、かつ脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤またはポリカルボン酸型高分子界面活性剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項2】
前記溶媒が、無極性溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
金属粒子または半導体の前駆体を、0.5質量%以上、20質量%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを、電界アシスト吐出方式を用いたインクジェット吐出装置より基板上に吐出してパターン画像を描画した後、該パターン画像に無電解メッキ処理を施すことを特徴とする導電性パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−265420(P2010−265420A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119668(P2009−119668)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】