インサート樹脂成形部品とその製造方法とそれに用いられる樹脂成形金型および圧力センサ
【目的】従来の単純な樹脂成形金型を用いて低コストでピン跡を塞ぐことができるインサート樹脂成形部品とその製造方法とそれに用いられる樹脂成形金型および圧力センサを提供する。
【解決手段】金属端子2を樹脂成形金型に設置したピン13で支える場合に、ピン13の構造を上側の金型11にも接触するようにすることで、固化した樹脂1にピン跡の貫通孔6を形成する。金属端子2の表側をコーティング材7で被覆するとき、同時にこの貫通孔6を通して、金属端子2の裏面もコーティング材7で被覆する。この方法により、一回のコーティング材7の塗布でインサード樹脂成形部品を裏返しにすることなく、金属端子2の表裏を被覆できて、設備費用や製造コストを下げることができる。
【解決手段】金属端子2を樹脂成形金型に設置したピン13で支える場合に、ピン13の構造を上側の金型11にも接触するようにすることで、固化した樹脂1にピン跡の貫通孔6を形成する。金属端子2の表側をコーティング材7で被覆するとき、同時にこの貫通孔6を通して、金属端子2の裏面もコーティング材7で被覆する。この方法により、一回のコーティング材7の塗布でインサード樹脂成形部品を裏返しにすることなく、金属端子2の表裏を被覆できて、設備費用や製造コストを下げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インサート部品を樹脂成形金型内に保持し、液状化した樹脂をこの金型内に注入し、液状化した樹脂を固形化させた後、樹脂を金型から取り出し、インサート部品をコーティング材(保護膜)で被覆して形成されるインサート樹脂成形部品とその製造方法とそれに用いられる樹脂成形金型および圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図11、図12は、圧力センサの要部構成図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のX−X線での断面図である。また、図12(a)は図11(a)のY−Y線で切断した断面図であり、図12(b)は図11(b)穴83の周辺の要部拡大図である。
この圧力センサ90は、インサート樹脂成形部品80と圧力センサセル59と、圧力センサセル59を覆うようにインサート樹脂成形部品80と接合される図示しないふた板を備え、圧力センサセル59はインサート樹脂成形部品80のセンサ嵌合部86に嵌合されている。
【0003】
インサート樹脂成形部品80は、圧力導入口81と、インサート成形される金属端子82と、金属端子82を樹脂成形時に支持するためのピンの跡である穴83と、プラグ挿入部84と、取り付け部85とを備えている。
圧力センサセル59は、気体や液体の圧力を検出し電気信号に変換する。この電気信号を外部に伝送する端子55を備え、この端子55は金属端子82と接合部87にて溶接される。
【0004】
接合部87は、コーティング材58により覆われている。また、コーティング材57が穴83に形成され金属端子82の露出部を覆っている。
図13および図14は、図11および図12のインサート樹脂成形部品80の製造方法であり、図13(a)〜図13(f)は工程順に示した要部製造工程概略断面図である。ここではプラグ挿入部84を形成する第3金型は省略した。また、この要部製造工程概略断面図は図12(a)のB部に相当する断面図である。図14は、図13(a)のO−O線で切断した要部断面図である。
【0005】
まず、樹脂成形金型を構成する下側の金型62(第2金型)に金属端子82を設置し、上側の金型61(第1金型)の外周部(図示せず)をピン63が設置された下側の金型62(第2金型)の外周部(図示せず)に接触させ、さらに、図示しないプラグ挿入部84を形成するための第3金型を設置する(図13(a))。
つぎに、射出成形やトランスファ成形などの方法で液状化した樹脂51を樹脂成形金型内に注入し、空間を樹脂51で充填した後、樹脂51を硬化させて金属端子82の裏側をこの樹脂51で支える(同図(b))。
【0006】
つぎに、樹脂51で支えられた金属端子82を樹脂成形金型から取り出す(同図(c))。
つぎに、圧力センサセル59を装填した後、圧力センサセル59の端子55と金属端子52を溶接により固着し、その後で溶接箇所を保護するように金属端子82および端子55をコーティング材58で被覆する(同図(c))。
【0007】
つぎに、金属端子82を含む全体を裏返しにして樹脂51に形成されたピン跡である穴83をコーティング材57で塞ぐ(同図(d))。
つぎに、再度裏返しにして、金属端子52をインサート部品とするインサート樹脂成形部品が出来上がる(同図(f))。
前記の穴83をコーティング材57で塞ぐ方法には前記の他に、説明を省略するが樹脂51を超音波や熱により溶着させる方法がある。
【0008】
また、特許文献1に開示されているように、樹脂成形の工程で樹脂を金型内に注入し、固化する前にこのピンを引き抜くことで、樹脂でピン跡を塞ぐ方法がある。
また、特許文献2に開示されているように後工程でピン跡を樹脂で塞ぐ方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2587585号公報
【特許文献2】特許第2785770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記したように金属端子82を裏返しにしてピン跡である穴83を上方へ向けて、コーティング材57でピン跡である穴83を塞ぐ方法では、金属端子82(インサート樹脂成形部品)を裏返しにする工程が必要になり、工程が増える。
また、前記した特許文献1や特許文献2に開示されている方法では、樹脂成形の工程で樹脂を金型内に注入し、固化する前にこのピンを引き抜くことが必要になる。そのため、今までの樹脂成形金型にピンを引き抜く機構を別途設けるなど、金型構造や金型を可動する成形設備が複雑でコスト面でも大きな負担となってしまう。また、ピンを引き抜くタイミングを間違えると、未充填など成形品質の低下も大きな課題である。
【0011】
また、ピン跡を塞ぐために超音波や熱を利用してピン跡の周りの樹脂を溶着する方法においても、設備費や、作業費などがかかるためコストが増大する。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、従来の単純な樹脂成形金型を用いて低コストでピン跡を塞ぐことができるインサート樹脂成形部品とその製造方法とそれに用いられる樹脂成形金型および圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品において、
前記インサート部品の一部が、前記インサート樹脂成形部品の開口部内に露出する接続面を有し、
前記接続面に隣接し、前記インサート部品の前記接続面と反対側の面を露出させ、前記インサート樹脂成形部品の開口部内と前記インサート樹脂成形部品の外部を連通するように形成された貫通孔と、
前記貫通孔を塞ぎ前記インサート部品の前記反対側の面を被覆するコーティング材とを具備する構成とする。コーティング材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0013】
また、前記インサート樹脂成形部品の開口部内に、圧力を電気信号に変換する半導体センサとその信号処理回路とその処理された信号を出力する出力端子とを備えたセンサセル、が配置され、前記インサート部品が金属端子であり、該金属端子と前記出力端子とが前記樹脂ケースの開口部内で電気的に接続された圧力センサとする。
また、インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造で用いられる樹脂成形金型において、上側の第1金型、下側の第2金型および該第2金型に形成されたインサート部品を支持する支持体とを具備し、該支持体の上部が前記第1金型に接する形状をしている樹脂成形金型とする。
【0014】
また、前記樹脂成形金型において、前記支持体の上部が凸部となっており、該凸部の底部が前記インサート部品の支持部であり、前記凸部の上端と前記第1金型とが接触する構成とする。さらに、前記支持体が前記インサート部品の両側で前記第1金型に接触する構成とする。
また、前記樹脂成形金型において、前記支持体が前記インサート部品の長手方向の端部に配置される構成とする。
【0015】
また、インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造方法において、
樹脂成形金型を構成する第2金型と一体化した支持体の上部に前記インサート部品の裏側の面を接触して配置する工程と、
前記第2金型に第1金型を被せ、前記第1金型に前記支持体の上端および前記インサート部品の表側の面を接触させる工程と、
前記第1金型と前記第2金型で構成される樹脂成形金型内に液状化した樹脂を注入し該
液状化した樹脂を固化させる工程と、
前記インサート部品が配置された前記固化した樹脂を前記樹脂成形金型から外す工程と、
前記インサート部品の表側の面にコーティング材を塗布し、該表側の面を被覆すると同時に前記樹脂に形成された前記支持体跡である貫通孔に前記コーティング材を流し込み前記インサート部品の裏側の面が露出した箇所を該コーティング材で被覆し、かつ前記貫通孔を塞ぐ工程と、
を含む製造方法とする。
【0016】
また、前記インサート樹脂成形部品の製造方法において、前記支持体がピンであり、該ピンの上部が凸部もしくは凹部となっており、前記インサート部品の裏側の面に前記凸部もしくは凹部の底部を接触させ、前記第1金型に前記インサート部品の表側の面を接触させ、同時に前記第1金型に前記凸部もしくは凹部の上端を接触させる構成とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、金属端子などのインサート部品を樹脂成形金型に設置したピンで支える場合に、ピンの構造を上側の金型にも接触するようにすることで、固化した樹脂にピン跡の貫通孔が形成される。
インサート部品の表側をコーティング材で被覆するとき、同時にこの貫通孔を通して、インサート部品の裏面をコーティング材で被覆する。
【0018】
この方法により、一回のコーティング材の塗布でインサード樹脂成形部品を裏返しにすることなく、インサート部品の表裏を被覆できて、設備費用や製造コストを下げることができる。
本発明により、品質の良いインサート樹脂成形部品または圧力センサを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1実施例の圧力センサの構成図である。
【図2】この発明の第1実施例の圧力センサの構成図である。
【図3】図1および図2の圧力センサの製造方法を示す図である。
【図4】図1の圧力センサ30の製造で用いられる樹脂成形金型の概略図である。
【図5】この発明の金型の例を示す要部断面図である。
【図6】この発明の第2実施例の圧力センサの要部概略図である。
【図7】図6の圧力センサの製造で用いられる樹脂成形金型の要部断面図である。
【図8】この発明の第3実施例の圧力センサの要部概略図である。
【図9】図8の圧力センサの製造方法を示す図である。
【図10】この発明の第4実施例の圧力センサの要部該略図である。
【図11】圧力センサの要部構成図である。
【図12】図11(b)穴83の周辺の要部拡大図である。
【図13】インサート樹脂成形部品の製造方法を工程順に示した要部製造工程概略断面図である。
【図14】図13(a)のO−O線で切断した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0021】
図1、図2は、この発明の第1実施例の圧力センサの構成図であり、図1(a)は要部平面図、図1(b)はX−X線で切断した要部断面図である。図2(a)は、図1(a)のZ−Z線で切断した要部断面図であり、図2(b)は、図1(a)のY−Y線で切断した要部断面図である。
圧力センサセル59の端子55と接続する金属端子2は、圧力センサ30の端子数に合わせて3本あり、インサート樹脂成形部品1にインサートされている。インサート樹脂成形部品1の樹脂材料は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。また、インサート樹脂成形部品1は、開口部10に金属端子2の表面が露出しており、開口部10に形成されたセンサ嵌合部4に圧力センサセル59を配置し、圧力センサセル59の端子55と金属端子2を接合部9において溶接により接合する。金属端子2と端子55の接合は、ボンディングワイヤによるものであってもよい。また、インサート樹脂成形部品1は、インサート成形時に金属端子2を支持するピンの跡である貫通孔6を有し、貫通孔6は、インサート樹脂成形部品1の外部から開口部10に達するように形成されている。金属端子2の裏面の一部および側面の一部は貫通孔6に露出している。この貫通孔6を塞ぎ接合部9(金属端子2がボンディングワイヤと接合されている場合はその接合部)を覆うようにコーティング材7が形成されている。また、インサート樹脂成形部品1は、プラグを挿入するプラグ挿入部3、圧力を導入する圧力導入口5および取り付け部8を有している。
【0022】
つぎに、図1、図2で示した、圧力センサ30の製造方法を説明する。
図3は、図1および図2の圧力センサの製造方法を示す図であり、図3(a)〜図3(d)は工程順に示した要部製造工程断面図である。説明に用いられる製造工程断面図は、図2(b)のA部に相当する断面図である。ここではプラグ挿入部3を形成する第3金型の説明は省略した。また、図中の符号1は、固化した樹脂と液状化した樹脂の双方に付与し、インサート樹脂成形部品と同じ符号とした。
【0023】
まず、樹脂成形金型を構成する下側の金型12(第2金型)に金属端子2を設置し、上側の金型11(第1金型)をピン13が設置された下側の金型12(第2金型)に接触させる。このときピン13の凸部の底部aを金属端子2の裏側の面と接触させ、ピン13の凸部の上端bを上側の金型11に接触させ、図1に示した開口部10に露出させる箇所の金属端子2の上側の面を上側の金型11に接触させる。さらに、図示しないプラグ挿入部3を形成するための第3金型を設置する(同図(a))。
【0024】
つぎに、射出成形やトランスファ成形などの方法で液状化した樹脂1を樹脂成形金型12,13内に注入し、空間を樹脂1で充填した後、樹脂1を硬化させて金属端子2の裏側を硬化した樹脂1で支える(同図(b))。
つぎに、樹脂1で支えられた金属端子2を樹脂成形金型から取り出す(同図(c))。
つぎに、センサ嵌合部4に図示しない圧力センサセル59を装填した後、圧力センサセル59の端子55と金属端子2を接合部9において溶接し、その後で金属端子2と端子55との接合部9(図3では図示せず)をエポキシ樹脂からなるコーティング材7で被覆する。このときピン跡である貫通孔6を通ってコーティング材7が金属端子2の裏側の面にも流れて行き、ピン跡の貫通孔6で露出した金属端子2はコーティング材7で被覆される。この貫通孔6は小さいためにコーテイング材7は重力で下方へ流れる他に毛管現象でも流れて行き貫通孔6を塞ぐ(同図(d))。
【0025】
このようにして、インサート樹脂成形部品1に圧力センサセル59を装着した圧力センサ30が完成する。この実施例では、最後にコーティング材7を被覆してインサート樹脂成形部品1を完成させているが、圧力センサセル59を装着する前に、端子55と重なるる箇所を除いて金属端子2にコーティング材7を被覆して、その後、圧力センサセル59を装着し端子55と金属端子2とを接合部9にて溶接する場合もある。この場合は、最後に端子55上から再度コーテイング材(必ずしも最初のコーティング材7と同じである必要はない)を塗布して接合部9を被覆することがある。
【0026】
いずれにも本発明でのインサート樹脂成形部品1の構成要素としては、樹脂1と金属端子2(インサート部品)およびコーティング材7である。またインサート樹脂成形部品1の製造方法としては、金属端子2の表面を被覆するコーティング材7で金属端子2の裏面の貫通孔6に露出した箇所も同時に被覆することがポイントである。
図4は、図1の圧力センサ30の製造で用いられる樹脂成形金型の概略図であり、図3(a)のP−P線で切断した要部断面図である。尚、上側の金型11、下側の金型12の内、一方が可動金型であり、他方が固定金型となっている。
【0027】
以下図3(a)、図3(b)と図4を参照し樹脂成形金型について説明する。
樹脂成形金型を構成する上側の金型11の底面は平坦であり、下側の金型12には上部が凸部になっているピン13(支持体)が設置され(金型12とピン13は一体化している)、そのピンの凸部の底部(aの箇所)は金属端子2の裏面と接しており、凸部の上端(bの箇所)は上側の金型11の底面と接している。このピン13の凸部の側面部で金属端子2を挟みんでいる。ピン13で底面を押さえられた金属端子2の上面は上側の金型11の底面と密着し、液状化した樹脂1が金属端子2の表側の面に付着するのを防止している。
【0028】
また、ピン13の上端(bの箇所)が上側の金型11の底部と接触することで、ピン跡が貫通孔6として形成され、金属端子2の表側の表面をコーティング材7で被覆するとき、この貫通孔6を通ってコーティング材7が下方へ流れてピン跡である貫通孔6を塞ぎ、ピン跡で露出した金属端子2の露出面をコーティング材7で被覆することができる。
尚、本発明によって製造されたインサート樹脂成形部品1は、金属端子2のようなインサート部品を保持する下側の金型12に付いているピン13が上側の金型11の底面とも接触しているため、金型を外した後の樹脂1に形成されるピン跡の開口部が金属端子2の表側の面と同一高さの面に露出して樹脂1を貫通する貫通孔6が形成される。
【0029】
図5は、この発明の金型の例を示す要部断面図であり、図3(a)の金型の他の例を示す図である。
図3(a)の金型と比較して、下側の金型12に付いているピン13の上端bの高さを低くし、上側の金型11にこのピン13の先端部と接触し、金属端子2をはめ込める凹部を形成し、凹部の底面14に金属端子2の上側の面を接触させることで、貫通孔6の開口部の高さを金属端子2の表側の面より低くすることができる。こうすることでコーティング材7が貫通孔6に流入し易くなる。
【0030】
以上に説明したように、コーティング材7を金属端子2に塗布することで、コーテイング材7で金属電極2を被覆するとともに、貫通孔6を通して金属端子2の裏側も同時に被覆される。この貫通孔6の開口面積は上部から注型樹脂を注入したときに注入れる樹脂が適度に通れる大きさとするのが望ましい。
適度とは、一方からコーティング材7を注入したとき、貫通孔6を通り、金属端子2の裏側の露出した面に達するようにできることである。露出面に達したコーティング材7は液体状であるため毛細管現象により露出面全体を覆い、また貫通孔6も塞ぐことが同時にできる大きさのことである。また、この状態で熱などによりコーティング材7を固化させると完成となる。
【0031】
貫通孔6の開口面積が大きすぎると、コーティング材7の注入時に貫通孔6をより多くのコーティング材7が流れ込み、表面張力を維持できずにたれ落ち、品質の低下を引き起こしてしまう。また反対に開口面積が小さいと、貫通孔6を流れ込むコーティング材7の量が少ないため、金属端子2などのインサート部品の露出面全体を覆えない結果となる。
【実施例2】
【0032】
図6は、この発明の第2実施例の圧力センサの要部概略図であり、貫通孔6を形成する位置が異なる以外は第1実施例と同じである。図6(a)は、圧力センサセル59を接合する前の要部平面図、図6(b)は、図6(a)のQ−Q線で切断した要部断面図、図6(c)は、図6(b)において圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9(図1を参照)で溶接し、コーティング材7で溶接部9を覆い、かつコーティング材7で貫通孔6を塞いだ状態の要部断面図である。コーティング材7で埋められた貫通孔6は金属端子2の先端部に形成されている。
【0033】
図7は、図6の圧力センサの製造で用いられる樹脂成形金型の要部断面図である。
図4との違いは金属端子2の先端部にピン13を設置している点である。この場合も図4と同様の効果がある。インサート樹脂成形部品1の製造方法は図3と同じである。この場合は、貫通孔6のある箇所でコーティング材7が貫通孔6に入り込むように、端子55により貫通孔6を塞がない形状とする。端子55の幅を貫通孔6よりも狭い幅とするとよい。
【実施例3】
【0034】
図8は、この発明の第3実施例の圧力センサの要部概略図であり、貫通孔6の形状が異なる以外は第1実施例と同じである。図8(a)は、圧力センサセル59を接合する前の要部平面図、図8(b)は、図8(a)のR−R線で切断した要部断面図、図8(c)は図8(a)のS−S線で切断した要部断面図であり、圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9(図1を参照)で溶接し、コーティング材7で溶接部9を覆い、かつコーティング材7で貫通孔6を塞いだ状態を示す。
【0035】
コーティング材7で埋められる貫通孔6は、金属端子2の裏面側で金属端子2を横切って形成されている。
図9は、図8の圧力センサの製造方法であり、同図(a)〜同図(d)は工程順に示した要部製造工程断面図であり、図3に対応している。
このピン13の上部は凹部を備え、金属端子2はこの凹部に嵌めまれ、金属端子2の底面はこの凹部の底面に接触して支えられ、凹部の両側の上端部および金属端子2の表側の上面は上側の金型11と接触し、液状化した樹脂1が金属端子2の表側の面に付着するのが防止される。
【実施例4】
【0036】
図10は、この発明の第4実施例の圧力センサの要部概略図であり、貫通孔6の形成位置、仕切壁1aおよびコーティング材7以外は第3実施例と同じである。図10(a)は、圧力センサセル59を接合する前の要部平面図、図10(b)は、図10(a)のT−T線で切断した要部断面図、図10(c)は、図10(b)において貫通孔6をコーティング材7で埋めた後の図、図10(d)は、図10(c)において圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9(図1を参照)で溶接し、コーティング材7aで溶接部9を覆った図である。
【0037】
この実施例は、実施例3とは異なり、金属端子2をインサート成形した後、インサート樹脂成形部品1に圧力センサセル59を取り付ける前に貫通孔6をコーティング材7で埋め、その後で、圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9で溶接し、接合部9をエポキシ樹脂からなるコーティング材7aで覆うものである。コーテイング材7aは、コーティング材7と同じ材料を用いたが異なるものであっても良い。具体的には、コーティング材7と同様に、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0038】
この場合は、インサート成形の際に、仕切壁1aを設ける。仕切壁は、樹脂1で形成することができる。仕切壁1aは、接合部9と貫通孔6との間に形成され、コーティング材7をコーティングする際に、コーティング材7が接合部9を覆ってしまうことを防ぐものである。コーティング材7により接合部9が覆われることがないため、金属端子2と端子55を良好に接合することができる。
【0039】
このように、圧力センサセル59をインサート樹脂成形部品1に装填する前にコーティング材7で貫通孔6を塞ぐ場合には、端子55が金属端子2と重なる箇所を除いてコーテイング材7を塗布すればよい。
以上説明したように、貫通孔6を形成することで、コーティング材7を金属端子2の表側の表面に塗布するときに、ピン跡である貫通孔6もコーティング材7で充填されて塞がれるために、従来技術で説明したように、金属端子2を反転させることもなく、また樹脂1を注入中にピンを抜くための装置も不要となる。その結果、低コストでピン跡を塞ぐことができる。
【0040】
尚、本実施例では、圧力センサを例に説明したが、これに限らず、本発明はIGBTモジュールなどを構成する金属端子や配線板(リードフレーム)などのインサート部品を樹脂にインサート成形し、その後インサート部品をコーティング材で被覆するインサート樹脂成形部品にも適用できる。
また、前記の樹脂成形金型に設置されるピン13には2つの役割がある。一つ目は金属端子2を上側の金型11に接触させること、二つ目は樹脂1に形成されたピン跡を貫通孔6にして、金属端子2と端子55やボンディングワイヤなどの導電部材との接合部をコーティング材7で被覆するとき、この貫通孔6を通してコーティング材7で貫通孔6を塞ぎ、貫通孔6に露出する箇所をコーティング材7で被覆することである。この二つの役割が果たせるピン構造であれば、前記の実施例の樹脂成形金型の構造に限るものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 インサート樹脂成形部品
2 金属端子
3 プラグ挿入部
4 センサ嵌合部
6 貫通孔
7 コーティング材
8 取付部
9 接合部
11 上側の金型
12 下側の金型
13 ピン
30 圧力センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、インサート部品を樹脂成形金型内に保持し、液状化した樹脂をこの金型内に注入し、液状化した樹脂を固形化させた後、樹脂を金型から取り出し、インサート部品をコーティング材(保護膜)で被覆して形成されるインサート樹脂成形部品とその製造方法とそれに用いられる樹脂成形金型および圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図11、図12は、圧力センサの要部構成図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のX−X線での断面図である。また、図12(a)は図11(a)のY−Y線で切断した断面図であり、図12(b)は図11(b)穴83の周辺の要部拡大図である。
この圧力センサ90は、インサート樹脂成形部品80と圧力センサセル59と、圧力センサセル59を覆うようにインサート樹脂成形部品80と接合される図示しないふた板を備え、圧力センサセル59はインサート樹脂成形部品80のセンサ嵌合部86に嵌合されている。
【0003】
インサート樹脂成形部品80は、圧力導入口81と、インサート成形される金属端子82と、金属端子82を樹脂成形時に支持するためのピンの跡である穴83と、プラグ挿入部84と、取り付け部85とを備えている。
圧力センサセル59は、気体や液体の圧力を検出し電気信号に変換する。この電気信号を外部に伝送する端子55を備え、この端子55は金属端子82と接合部87にて溶接される。
【0004】
接合部87は、コーティング材58により覆われている。また、コーティング材57が穴83に形成され金属端子82の露出部を覆っている。
図13および図14は、図11および図12のインサート樹脂成形部品80の製造方法であり、図13(a)〜図13(f)は工程順に示した要部製造工程概略断面図である。ここではプラグ挿入部84を形成する第3金型は省略した。また、この要部製造工程概略断面図は図12(a)のB部に相当する断面図である。図14は、図13(a)のO−O線で切断した要部断面図である。
【0005】
まず、樹脂成形金型を構成する下側の金型62(第2金型)に金属端子82を設置し、上側の金型61(第1金型)の外周部(図示せず)をピン63が設置された下側の金型62(第2金型)の外周部(図示せず)に接触させ、さらに、図示しないプラグ挿入部84を形成するための第3金型を設置する(図13(a))。
つぎに、射出成形やトランスファ成形などの方法で液状化した樹脂51を樹脂成形金型内に注入し、空間を樹脂51で充填した後、樹脂51を硬化させて金属端子82の裏側をこの樹脂51で支える(同図(b))。
【0006】
つぎに、樹脂51で支えられた金属端子82を樹脂成形金型から取り出す(同図(c))。
つぎに、圧力センサセル59を装填した後、圧力センサセル59の端子55と金属端子52を溶接により固着し、その後で溶接箇所を保護するように金属端子82および端子55をコーティング材58で被覆する(同図(c))。
【0007】
つぎに、金属端子82を含む全体を裏返しにして樹脂51に形成されたピン跡である穴83をコーティング材57で塞ぐ(同図(d))。
つぎに、再度裏返しにして、金属端子52をインサート部品とするインサート樹脂成形部品が出来上がる(同図(f))。
前記の穴83をコーティング材57で塞ぐ方法には前記の他に、説明を省略するが樹脂51を超音波や熱により溶着させる方法がある。
【0008】
また、特許文献1に開示されているように、樹脂成形の工程で樹脂を金型内に注入し、固化する前にこのピンを引き抜くことで、樹脂でピン跡を塞ぐ方法がある。
また、特許文献2に開示されているように後工程でピン跡を樹脂で塞ぐ方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2587585号公報
【特許文献2】特許第2785770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記したように金属端子82を裏返しにしてピン跡である穴83を上方へ向けて、コーティング材57でピン跡である穴83を塞ぐ方法では、金属端子82(インサート樹脂成形部品)を裏返しにする工程が必要になり、工程が増える。
また、前記した特許文献1や特許文献2に開示されている方法では、樹脂成形の工程で樹脂を金型内に注入し、固化する前にこのピンを引き抜くことが必要になる。そのため、今までの樹脂成形金型にピンを引き抜く機構を別途設けるなど、金型構造や金型を可動する成形設備が複雑でコスト面でも大きな負担となってしまう。また、ピンを引き抜くタイミングを間違えると、未充填など成形品質の低下も大きな課題である。
【0011】
また、ピン跡を塞ぐために超音波や熱を利用してピン跡の周りの樹脂を溶着する方法においても、設備費や、作業費などがかかるためコストが増大する。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、従来の単純な樹脂成形金型を用いて低コストでピン跡を塞ぐことができるインサート樹脂成形部品とその製造方法とそれに用いられる樹脂成形金型および圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品において、
前記インサート部品の一部が、前記インサート樹脂成形部品の開口部内に露出する接続面を有し、
前記接続面に隣接し、前記インサート部品の前記接続面と反対側の面を露出させ、前記インサート樹脂成形部品の開口部内と前記インサート樹脂成形部品の外部を連通するように形成された貫通孔と、
前記貫通孔を塞ぎ前記インサート部品の前記反対側の面を被覆するコーティング材とを具備する構成とする。コーティング材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0013】
また、前記インサート樹脂成形部品の開口部内に、圧力を電気信号に変換する半導体センサとその信号処理回路とその処理された信号を出力する出力端子とを備えたセンサセル、が配置され、前記インサート部品が金属端子であり、該金属端子と前記出力端子とが前記樹脂ケースの開口部内で電気的に接続された圧力センサとする。
また、インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造で用いられる樹脂成形金型において、上側の第1金型、下側の第2金型および該第2金型に形成されたインサート部品を支持する支持体とを具備し、該支持体の上部が前記第1金型に接する形状をしている樹脂成形金型とする。
【0014】
また、前記樹脂成形金型において、前記支持体の上部が凸部となっており、該凸部の底部が前記インサート部品の支持部であり、前記凸部の上端と前記第1金型とが接触する構成とする。さらに、前記支持体が前記インサート部品の両側で前記第1金型に接触する構成とする。
また、前記樹脂成形金型において、前記支持体が前記インサート部品の長手方向の端部に配置される構成とする。
【0015】
また、インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造方法において、
樹脂成形金型を構成する第2金型と一体化した支持体の上部に前記インサート部品の裏側の面を接触して配置する工程と、
前記第2金型に第1金型を被せ、前記第1金型に前記支持体の上端および前記インサート部品の表側の面を接触させる工程と、
前記第1金型と前記第2金型で構成される樹脂成形金型内に液状化した樹脂を注入し該
液状化した樹脂を固化させる工程と、
前記インサート部品が配置された前記固化した樹脂を前記樹脂成形金型から外す工程と、
前記インサート部品の表側の面にコーティング材を塗布し、該表側の面を被覆すると同時に前記樹脂に形成された前記支持体跡である貫通孔に前記コーティング材を流し込み前記インサート部品の裏側の面が露出した箇所を該コーティング材で被覆し、かつ前記貫通孔を塞ぐ工程と、
を含む製造方法とする。
【0016】
また、前記インサート樹脂成形部品の製造方法において、前記支持体がピンであり、該ピンの上部が凸部もしくは凹部となっており、前記インサート部品の裏側の面に前記凸部もしくは凹部の底部を接触させ、前記第1金型に前記インサート部品の表側の面を接触させ、同時に前記第1金型に前記凸部もしくは凹部の上端を接触させる構成とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、金属端子などのインサート部品を樹脂成形金型に設置したピンで支える場合に、ピンの構造を上側の金型にも接触するようにすることで、固化した樹脂にピン跡の貫通孔が形成される。
インサート部品の表側をコーティング材で被覆するとき、同時にこの貫通孔を通して、インサート部品の裏面をコーティング材で被覆する。
【0018】
この方法により、一回のコーティング材の塗布でインサード樹脂成形部品を裏返しにすることなく、インサート部品の表裏を被覆できて、設備費用や製造コストを下げることができる。
本発明により、品質の良いインサート樹脂成形部品または圧力センサを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1実施例の圧力センサの構成図である。
【図2】この発明の第1実施例の圧力センサの構成図である。
【図3】図1および図2の圧力センサの製造方法を示す図である。
【図4】図1の圧力センサ30の製造で用いられる樹脂成形金型の概略図である。
【図5】この発明の金型の例を示す要部断面図である。
【図6】この発明の第2実施例の圧力センサの要部概略図である。
【図7】図6の圧力センサの製造で用いられる樹脂成形金型の要部断面図である。
【図8】この発明の第3実施例の圧力センサの要部概略図である。
【図9】図8の圧力センサの製造方法を示す図である。
【図10】この発明の第4実施例の圧力センサの要部該略図である。
【図11】圧力センサの要部構成図である。
【図12】図11(b)穴83の周辺の要部拡大図である。
【図13】インサート樹脂成形部品の製造方法を工程順に示した要部製造工程概略断面図である。
【図14】図13(a)のO−O線で切断した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0021】
図1、図2は、この発明の第1実施例の圧力センサの構成図であり、図1(a)は要部平面図、図1(b)はX−X線で切断した要部断面図である。図2(a)は、図1(a)のZ−Z線で切断した要部断面図であり、図2(b)は、図1(a)のY−Y線で切断した要部断面図である。
圧力センサセル59の端子55と接続する金属端子2は、圧力センサ30の端子数に合わせて3本あり、インサート樹脂成形部品1にインサートされている。インサート樹脂成形部品1の樹脂材料は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。また、インサート樹脂成形部品1は、開口部10に金属端子2の表面が露出しており、開口部10に形成されたセンサ嵌合部4に圧力センサセル59を配置し、圧力センサセル59の端子55と金属端子2を接合部9において溶接により接合する。金属端子2と端子55の接合は、ボンディングワイヤによるものであってもよい。また、インサート樹脂成形部品1は、インサート成形時に金属端子2を支持するピンの跡である貫通孔6を有し、貫通孔6は、インサート樹脂成形部品1の外部から開口部10に達するように形成されている。金属端子2の裏面の一部および側面の一部は貫通孔6に露出している。この貫通孔6を塞ぎ接合部9(金属端子2がボンディングワイヤと接合されている場合はその接合部)を覆うようにコーティング材7が形成されている。また、インサート樹脂成形部品1は、プラグを挿入するプラグ挿入部3、圧力を導入する圧力導入口5および取り付け部8を有している。
【0022】
つぎに、図1、図2で示した、圧力センサ30の製造方法を説明する。
図3は、図1および図2の圧力センサの製造方法を示す図であり、図3(a)〜図3(d)は工程順に示した要部製造工程断面図である。説明に用いられる製造工程断面図は、図2(b)のA部に相当する断面図である。ここではプラグ挿入部3を形成する第3金型の説明は省略した。また、図中の符号1は、固化した樹脂と液状化した樹脂の双方に付与し、インサート樹脂成形部品と同じ符号とした。
【0023】
まず、樹脂成形金型を構成する下側の金型12(第2金型)に金属端子2を設置し、上側の金型11(第1金型)をピン13が設置された下側の金型12(第2金型)に接触させる。このときピン13の凸部の底部aを金属端子2の裏側の面と接触させ、ピン13の凸部の上端bを上側の金型11に接触させ、図1に示した開口部10に露出させる箇所の金属端子2の上側の面を上側の金型11に接触させる。さらに、図示しないプラグ挿入部3を形成するための第3金型を設置する(同図(a))。
【0024】
つぎに、射出成形やトランスファ成形などの方法で液状化した樹脂1を樹脂成形金型12,13内に注入し、空間を樹脂1で充填した後、樹脂1を硬化させて金属端子2の裏側を硬化した樹脂1で支える(同図(b))。
つぎに、樹脂1で支えられた金属端子2を樹脂成形金型から取り出す(同図(c))。
つぎに、センサ嵌合部4に図示しない圧力センサセル59を装填した後、圧力センサセル59の端子55と金属端子2を接合部9において溶接し、その後で金属端子2と端子55との接合部9(図3では図示せず)をエポキシ樹脂からなるコーティング材7で被覆する。このときピン跡である貫通孔6を通ってコーティング材7が金属端子2の裏側の面にも流れて行き、ピン跡の貫通孔6で露出した金属端子2はコーティング材7で被覆される。この貫通孔6は小さいためにコーテイング材7は重力で下方へ流れる他に毛管現象でも流れて行き貫通孔6を塞ぐ(同図(d))。
【0025】
このようにして、インサート樹脂成形部品1に圧力センサセル59を装着した圧力センサ30が完成する。この実施例では、最後にコーティング材7を被覆してインサート樹脂成形部品1を完成させているが、圧力センサセル59を装着する前に、端子55と重なるる箇所を除いて金属端子2にコーティング材7を被覆して、その後、圧力センサセル59を装着し端子55と金属端子2とを接合部9にて溶接する場合もある。この場合は、最後に端子55上から再度コーテイング材(必ずしも最初のコーティング材7と同じである必要はない)を塗布して接合部9を被覆することがある。
【0026】
いずれにも本発明でのインサート樹脂成形部品1の構成要素としては、樹脂1と金属端子2(インサート部品)およびコーティング材7である。またインサート樹脂成形部品1の製造方法としては、金属端子2の表面を被覆するコーティング材7で金属端子2の裏面の貫通孔6に露出した箇所も同時に被覆することがポイントである。
図4は、図1の圧力センサ30の製造で用いられる樹脂成形金型の概略図であり、図3(a)のP−P線で切断した要部断面図である。尚、上側の金型11、下側の金型12の内、一方が可動金型であり、他方が固定金型となっている。
【0027】
以下図3(a)、図3(b)と図4を参照し樹脂成形金型について説明する。
樹脂成形金型を構成する上側の金型11の底面は平坦であり、下側の金型12には上部が凸部になっているピン13(支持体)が設置され(金型12とピン13は一体化している)、そのピンの凸部の底部(aの箇所)は金属端子2の裏面と接しており、凸部の上端(bの箇所)は上側の金型11の底面と接している。このピン13の凸部の側面部で金属端子2を挟みんでいる。ピン13で底面を押さえられた金属端子2の上面は上側の金型11の底面と密着し、液状化した樹脂1が金属端子2の表側の面に付着するのを防止している。
【0028】
また、ピン13の上端(bの箇所)が上側の金型11の底部と接触することで、ピン跡が貫通孔6として形成され、金属端子2の表側の表面をコーティング材7で被覆するとき、この貫通孔6を通ってコーティング材7が下方へ流れてピン跡である貫通孔6を塞ぎ、ピン跡で露出した金属端子2の露出面をコーティング材7で被覆することができる。
尚、本発明によって製造されたインサート樹脂成形部品1は、金属端子2のようなインサート部品を保持する下側の金型12に付いているピン13が上側の金型11の底面とも接触しているため、金型を外した後の樹脂1に形成されるピン跡の開口部が金属端子2の表側の面と同一高さの面に露出して樹脂1を貫通する貫通孔6が形成される。
【0029】
図5は、この発明の金型の例を示す要部断面図であり、図3(a)の金型の他の例を示す図である。
図3(a)の金型と比較して、下側の金型12に付いているピン13の上端bの高さを低くし、上側の金型11にこのピン13の先端部と接触し、金属端子2をはめ込める凹部を形成し、凹部の底面14に金属端子2の上側の面を接触させることで、貫通孔6の開口部の高さを金属端子2の表側の面より低くすることができる。こうすることでコーティング材7が貫通孔6に流入し易くなる。
【0030】
以上に説明したように、コーティング材7を金属端子2に塗布することで、コーテイング材7で金属電極2を被覆するとともに、貫通孔6を通して金属端子2の裏側も同時に被覆される。この貫通孔6の開口面積は上部から注型樹脂を注入したときに注入れる樹脂が適度に通れる大きさとするのが望ましい。
適度とは、一方からコーティング材7を注入したとき、貫通孔6を通り、金属端子2の裏側の露出した面に達するようにできることである。露出面に達したコーティング材7は液体状であるため毛細管現象により露出面全体を覆い、また貫通孔6も塞ぐことが同時にできる大きさのことである。また、この状態で熱などによりコーティング材7を固化させると完成となる。
【0031】
貫通孔6の開口面積が大きすぎると、コーティング材7の注入時に貫通孔6をより多くのコーティング材7が流れ込み、表面張力を維持できずにたれ落ち、品質の低下を引き起こしてしまう。また反対に開口面積が小さいと、貫通孔6を流れ込むコーティング材7の量が少ないため、金属端子2などのインサート部品の露出面全体を覆えない結果となる。
【実施例2】
【0032】
図6は、この発明の第2実施例の圧力センサの要部概略図であり、貫通孔6を形成する位置が異なる以外は第1実施例と同じである。図6(a)は、圧力センサセル59を接合する前の要部平面図、図6(b)は、図6(a)のQ−Q線で切断した要部断面図、図6(c)は、図6(b)において圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9(図1を参照)で溶接し、コーティング材7で溶接部9を覆い、かつコーティング材7で貫通孔6を塞いだ状態の要部断面図である。コーティング材7で埋められた貫通孔6は金属端子2の先端部に形成されている。
【0033】
図7は、図6の圧力センサの製造で用いられる樹脂成形金型の要部断面図である。
図4との違いは金属端子2の先端部にピン13を設置している点である。この場合も図4と同様の効果がある。インサート樹脂成形部品1の製造方法は図3と同じである。この場合は、貫通孔6のある箇所でコーティング材7が貫通孔6に入り込むように、端子55により貫通孔6を塞がない形状とする。端子55の幅を貫通孔6よりも狭い幅とするとよい。
【実施例3】
【0034】
図8は、この発明の第3実施例の圧力センサの要部概略図であり、貫通孔6の形状が異なる以外は第1実施例と同じである。図8(a)は、圧力センサセル59を接合する前の要部平面図、図8(b)は、図8(a)のR−R線で切断した要部断面図、図8(c)は図8(a)のS−S線で切断した要部断面図であり、圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9(図1を参照)で溶接し、コーティング材7で溶接部9を覆い、かつコーティング材7で貫通孔6を塞いだ状態を示す。
【0035】
コーティング材7で埋められる貫通孔6は、金属端子2の裏面側で金属端子2を横切って形成されている。
図9は、図8の圧力センサの製造方法であり、同図(a)〜同図(d)は工程順に示した要部製造工程断面図であり、図3に対応している。
このピン13の上部は凹部を備え、金属端子2はこの凹部に嵌めまれ、金属端子2の底面はこの凹部の底面に接触して支えられ、凹部の両側の上端部および金属端子2の表側の上面は上側の金型11と接触し、液状化した樹脂1が金属端子2の表側の面に付着するのが防止される。
【実施例4】
【0036】
図10は、この発明の第4実施例の圧力センサの要部概略図であり、貫通孔6の形成位置、仕切壁1aおよびコーティング材7以外は第3実施例と同じである。図10(a)は、圧力センサセル59を接合する前の要部平面図、図10(b)は、図10(a)のT−T線で切断した要部断面図、図10(c)は、図10(b)において貫通孔6をコーティング材7で埋めた後の図、図10(d)は、図10(c)において圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9(図1を参照)で溶接し、コーティング材7aで溶接部9を覆った図である。
【0037】
この実施例は、実施例3とは異なり、金属端子2をインサート成形した後、インサート樹脂成形部品1に圧力センサセル59を取り付ける前に貫通孔6をコーティング材7で埋め、その後で、圧力センサセル59の端子55と金属端子2とを接合部9で溶接し、接合部9をエポキシ樹脂からなるコーティング材7aで覆うものである。コーテイング材7aは、コーティング材7と同じ材料を用いたが異なるものであっても良い。具体的には、コーティング材7と同様に、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0038】
この場合は、インサート成形の際に、仕切壁1aを設ける。仕切壁は、樹脂1で形成することができる。仕切壁1aは、接合部9と貫通孔6との間に形成され、コーティング材7をコーティングする際に、コーティング材7が接合部9を覆ってしまうことを防ぐものである。コーティング材7により接合部9が覆われることがないため、金属端子2と端子55を良好に接合することができる。
【0039】
このように、圧力センサセル59をインサート樹脂成形部品1に装填する前にコーティング材7で貫通孔6を塞ぐ場合には、端子55が金属端子2と重なる箇所を除いてコーテイング材7を塗布すればよい。
以上説明したように、貫通孔6を形成することで、コーティング材7を金属端子2の表側の表面に塗布するときに、ピン跡である貫通孔6もコーティング材7で充填されて塞がれるために、従来技術で説明したように、金属端子2を反転させることもなく、また樹脂1を注入中にピンを抜くための装置も不要となる。その結果、低コストでピン跡を塞ぐことができる。
【0040】
尚、本実施例では、圧力センサを例に説明したが、これに限らず、本発明はIGBTモジュールなどを構成する金属端子や配線板(リードフレーム)などのインサート部品を樹脂にインサート成形し、その後インサート部品をコーティング材で被覆するインサート樹脂成形部品にも適用できる。
また、前記の樹脂成形金型に設置されるピン13には2つの役割がある。一つ目は金属端子2を上側の金型11に接触させること、二つ目は樹脂1に形成されたピン跡を貫通孔6にして、金属端子2と端子55やボンディングワイヤなどの導電部材との接合部をコーティング材7で被覆するとき、この貫通孔6を通してコーティング材7で貫通孔6を塞ぎ、貫通孔6に露出する箇所をコーティング材7で被覆することである。この二つの役割が果たせるピン構造であれば、前記の実施例の樹脂成形金型の構造に限るものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 インサート樹脂成形部品
2 金属端子
3 プラグ挿入部
4 センサ嵌合部
6 貫通孔
7 コーティング材
8 取付部
9 接合部
11 上側の金型
12 下側の金型
13 ピン
30 圧力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品において、
前記インサート部品の一部が、前記インサート樹脂成形部品の開口部内に露出する接続面を有し、
前記接続面に隣接し、前記インサート部品の前記接続面と反対側の面を露出させ、前記インサート樹脂成形部品の開口部内と前記インサート樹脂成形部品の外部を連通するように形成された貫通孔と、
前記貫通孔を塞ぎ前記インサート部品の前記反対側の面を被覆するコーティング材とを具備することを特徴とするインサート樹脂成形部品。
【請求項2】
請求項1に記載のインサート樹脂成形部品の開口部内に、圧力を電気信号に変換する半導体センサとその信号処理回路とその処理された信号を出力する出力端子とを備えたセンサセル、が配置され、前記インサート部品が金属端子であり、該金属端子と前記出力端子とが前記樹脂ケースの開口部内で電気的に接続されたことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造で用いられる樹脂成形金型において、上側の第1金型、下側の第2金型および該第2金型に形成されたインサート部品を支持する支持体とを具備し、該支持体の上部が前記第1金型に接する形状をしていることを特徴とする樹脂成形金型。
【請求項4】
前記支持体の上部が凸部となっており、該凸部の底部が前記インサート部品の支持部であり、前記凸部の上端と前記第1金型とが接触することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項5】
前記支持体が前記インサート部品の両側で前記第1金型に接触することを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形金型。
【請求項6】
前記支持体が前記インサート部品の長手方向の端部に配置されることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項7】
前記支持体の上部が凹部となっており、該凹部の底部が前記インサート部品の支持部であり、前記凹部の上端と前記第1金型が接触することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項8】
インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造方法において、
樹脂成形金型を構成する第2金型と一体化した支持体の上部に前記インサート部品の裏側の面を接触して配置する工程と、
前記第2金型に第1金型を被せ、前記第1金型に前記支持体の上端および前記インサート部品の表側の面を接触させる工程と、
前記第1金型と前記第2金型で構成される樹脂成形金型内に液状化した樹脂を注入し該
液状化した樹脂を固化させる工程と、
前記インサート部品が配置された前記固化した樹脂を前記樹脂成形金型から外す工程と、
前記インサート部品の表側の面にコーティング材を塗布し、該表側の面を被覆すると同 時に前記樹脂に形成された前記支持体跡である貫通孔に前記コーティング材を流し込み 前記インサート部品の裏側の面が露出した箇所を該コーティング材で被覆し、かつ前記 貫通孔を塞ぐ工程と、
を含むことを特徴とするインサート樹脂成形部品の製造方法。
【請求項9】
前記支持体がピンであり、該ピンの上部が凸部もしくは凹部となっており、前記インサート部品の裏側の面に前記凸部もしくは凹部の底部を接触させ、前記第1金型に前記インサート部品の表側の面を接触させ、同時に前記第1金型に前記凸部もしくは凹部の上端を接触させることを特徴とする請求項7に記載のインサート樹脂成形部品の製造方法。
【請求項1】
インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品において、
前記インサート部品の一部が、前記インサート樹脂成形部品の開口部内に露出する接続面を有し、
前記接続面に隣接し、前記インサート部品の前記接続面と反対側の面を露出させ、前記インサート樹脂成形部品の開口部内と前記インサート樹脂成形部品の外部を連通するように形成された貫通孔と、
前記貫通孔を塞ぎ前記インサート部品の前記反対側の面を被覆するコーティング材とを具備することを特徴とするインサート樹脂成形部品。
【請求項2】
請求項1に記載のインサート樹脂成形部品の開口部内に、圧力を電気信号に変換する半導体センサとその信号処理回路とその処理された信号を出力する出力端子とを備えたセンサセル、が配置され、前記インサート部品が金属端子であり、該金属端子と前記出力端子とが前記樹脂ケースの開口部内で電気的に接続されたことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造で用いられる樹脂成形金型において、上側の第1金型、下側の第2金型および該第2金型に形成されたインサート部品を支持する支持体とを具備し、該支持体の上部が前記第1金型に接する形状をしていることを特徴とする樹脂成形金型。
【請求項4】
前記支持体の上部が凸部となっており、該凸部の底部が前記インサート部品の支持部であり、前記凸部の上端と前記第1金型とが接触することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項5】
前記支持体が前記インサート部品の両側で前記第1金型に接触することを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形金型。
【請求項6】
前記支持体が前記インサート部品の長手方向の端部に配置されることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項7】
前記支持体の上部が凹部となっており、該凹部の底部が前記インサート部品の支持部であり、前記凹部の上端と前記第1金型が接触することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形金型。
【請求項8】
インサート部品がインサート成形され、該インサート部品が露出する開口部を有するインサート樹脂成形部品の製造方法において、
樹脂成形金型を構成する第2金型と一体化した支持体の上部に前記インサート部品の裏側の面を接触して配置する工程と、
前記第2金型に第1金型を被せ、前記第1金型に前記支持体の上端および前記インサート部品の表側の面を接触させる工程と、
前記第1金型と前記第2金型で構成される樹脂成形金型内に液状化した樹脂を注入し該
液状化した樹脂を固化させる工程と、
前記インサート部品が配置された前記固化した樹脂を前記樹脂成形金型から外す工程と、
前記インサート部品の表側の面にコーティング材を塗布し、該表側の面を被覆すると同 時に前記樹脂に形成された前記支持体跡である貫通孔に前記コーティング材を流し込み 前記インサート部品の裏側の面が露出した箇所を該コーティング材で被覆し、かつ前記 貫通孔を塞ぐ工程と、
を含むことを特徴とするインサート樹脂成形部品の製造方法。
【請求項9】
前記支持体がピンであり、該ピンの上部が凸部もしくは凹部となっており、前記インサート部品の裏側の面に前記凸部もしくは凹部の底部を接触させ、前記第1金型に前記インサート部品の表側の面を接触させ、同時に前記第1金型に前記凸部もしくは凹部の上端を接触させることを特徴とする請求項7に記載のインサート樹脂成形部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
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【図14】
【公開番号】特開2010−190596(P2010−190596A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32421(P2009−32421)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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