説明

インプリント装置、そのモールド及び物品の製造方法

【課題】 ショット領域間の相対位置の計測を容易に行いうるインプリント装置を提供する。
【解決手段】 インプリント装置は、基準マークが形成されたモールドを保持する支持体と、各ショット領域に第1マーク及び第2マークが形成された基板を保持する基板ステージと、前記各ショット領域に形成された前記第1マーク及び前記第2マークと前記モールドに形成された前記基準マークとを検出することによって前記各ショット領域間の相対位置を計測する検出器とを備える。前記検出器は、隣接しあう2つのショット領域のそれぞれに形成された隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークそれぞれの前記基準マークに対する位置を検出することによって、隣接しあう前記2つのショット領域間の相対位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、そのモールド及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体露光装置等のリソグラフィー装置に関して、重ね合わせ精度やパターン転写性能に対する要求が年々増加している。この要求に対応するために、従来の投影露光装置に代えてインプリント技術を応用したインプリント装置の半導体製造用途への応用が期待されている。このインプリント技術の1つに、光硬化法を用いたインプリント装置がある。光硬化法を用いたインプリント装置では、モールドに形成された微細パターンをウエハに塗布された樹脂に押し付け、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによってウエハ上のショット領域に原版の微細パターンを形成する。モールドは、原版、マスク、テンプレートとも呼称され、樹脂は、レジスト、レジンとも呼称される。
【0003】
ウエハ上には複数のショット領域が構成される。これらのショット領域の重ね合わせ精度を保証するために、さまざまな性能検証を実施する必要がある。代表的な検証項目としては、配列精度の検査、ディストーション検査、配列再現性の検査、オーバーレイ精度の検査などがある。配列精度の検査では、ショット領域が精度良く格子状に配置されていることが確認される。ディストーション検査では、ショット形状の歪みが確認される。配列再現性の検査では、ショット領域の配列の再現性が確認される。オーバーレイ精度の検査では、下地パターンに対する重ね合わせ精度が確認される。従来の投影露光装置は、これらの精度検査を実施するために、各ショット領域をウエハに転写する際に下地となるパターンの一部または全部に重ね合わせてパターンの転写を行っている(以後、重ね露光と呼称する)。そして、パターンが重ねられた領域上に形成されたマークを露光装置内の計測器により計測することでショット領域間のずれ量を求めてこれらの精度検査を行っている。
【0004】
一例として、従来のリソグラフィー装置の配列精度の検査方法を、図14を使って以下に述べる。図14Aは、リソグラフィー工程を終了した、配列精度を計測するためのウエハ上のショットレイアウトである。図14Bは図14Aのショットレイアウトの一部を拡大したものである。従来は、図14Bのように、ショット領域の一部が上下左右の隣接するショット領域の一部とが重なり合い(図中斜線領域)、所定のマーク同士を重ねるようにリソグラフィー工程が行われる。図14Cは、レチクル上の原画の一例であり、図14C中の上と右には小さいマークが配置され、下と左には大きいマークが配置されている。図14C中の点線と実線とで囲まれる領域は隣接するショット領域と重ね露光される。これにより、重ね露光されたとき、図14Dのように、大きいマークと小さいマークが重なって構成され、大きいマーク、小さいマークそれぞれの相対位置を精度良く計測することが出来る。これを上下左右のマーク毎にショット毎で行うことで、隣接するショット領域間の相対位置がわかり、ショット領域毎にステップして露光する際の焼付け位置を認識することが出来る。配列精度の検査方法の詳細については特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−299278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インプリント装置では、硬化させた樹脂により形成されたマーク上に別のマークを重ねると、下方に位置するマークを検出することができなくなってしまう。したがって、投影露光装置では実現できていたような重ね露光によって形成したマークを使用するショット領域間の相対位置の計測をインプリント装置では実施することができない。
【0007】
そこで、本発明は、ショット領域間の相対位置の計測を容易に行いうるインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板のショット領域ごとに行うインプリント装置であって、基準マークが形成されたモールドを保持する支持体と、各ショット領域に第1マーク及び第2マークが形成された基板を保持する基板ステージと、前記各ショット領域に形成された前記第1マーク及び前記第2マークと前記モールドに形成された前記基準マークとを検出することによって前記各ショット領域間の相対位置を計測する検出器と、を備え、前記検出器は、隣接しあう2つのショット領域のそれぞれに形成された隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークそれぞれの前記基準マークに対する位置を検出することによって、隣接しあう前記2つのショット領域間の相対位置を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ショット領域間の相対位置の計測を容易に行いうるインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インプリント装置の構成を示す概略図である。
【図2】インプリント処理を説明するための図である。
【図3】スコープを示す図である。
【図4】マーク及びモアレ模様を示す図である。
【図5】ショット領域間の相対位置を計測する手法のフローチャートである。
【図6】ウエハに構成されるショット領域を示す図である。
【図7】第1実施形態のモールドに配置されるマークを示す図である。
【図8】第1実施形態のショット領域間の相対位置を計測する流れを示す図である。
【図9】第2実施形態のモールドに配置されるマークを示す図である。
【図10】第2実施形態のショット領域のショット領域間の相対位置を計測する流れを示す図である。
【図11】第3実施形態のマークを示す図である。
【図12】第3実施形態のマークの別例を示す図である。
【図13】基準マークを備えたスコープを示す図である。
【図14】ショット領域間の相対位置を計測する従来の手法示す図である。
【図15】マークの別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係るインプリント装置の一例について説明する。インプリント装置は、基板(ウエハ)101に塗布された樹脂とモールド111のパターン面とを接触させて光硬化するインプリント処理を行うことによってパターンをショット領域ごとに転写する。図1において、モールド111に対する紫外線の照射軸に平行にxyz座標系のz軸を取り、該z軸に垂直な平面内で、塗布機構121に対して基板ステージ106が移動する方向にy軸を取り、該y軸に直交する方向にx軸を取って説明する。インプリント装置100は、照明系ユニット142と、モールド111を保持する支持体(ヘッドマウント)112と、基板(ウエハ)101を保持する基板ステージ106と、塗布機構121とを備える。照明系ユニット142は、インプリント処理の際に、モールド111に対して紫外線を照射する。照明系ユニット142は、光源141と、該光源141から射出された紫外線をモールド111に照射するように折り曲げるためのミラー143と、インプリント処理に適切な光に調整するための複数の光学素子から構成される。モールド(テンプレート)111は、ウエハ101側の対向面に、所定の凹凸パターン(例えば、回路パターン)が三次元状に形成された型材である。凹凸パターンの表面は、ウエハ101の表面との密着性を保つために、高平面度に加工されている。なお、モールド111の材質は、石英等、紫外線を透過させることが可能な材料である。
【0012】
ヘッドマウント112は、複数の検出器(スコープ)113と、不図示であるが、モールド111を保持し固定するヘッドと、該ヘッドを駆動する駆動機構を備えた転写機構である。前記駆動機構は、ウエハ101上に形成された紫外線硬化樹脂にモールド111の押印領域を押し付けるために、ヘッドをz、ωx、ωyの各方向に駆動可能である。駆動機構に採用されるアクチュエータとしては、リニアモータやエアシリンダが採用可能である。アクチュエータは、紫外線硬化樹脂からモールド111を引き離す離型動作の際に、硬化した紫外線硬化樹脂が破壊しないように高精度に離型動作を行うために、粗動作及び微動作を分割して実施するアクチュエータであっても良い。スコープ113は、モールド111に形成されたマーク(第1基準マーク、第2基準マーク)と、ウエハ101上に形成されたマーク(第1マーク、第2マーク、第3マーク、第4マーク)とを光学的に観察し、両者の相対位置関係を計測する。スコープは、モールド111とウエハ101との相対位置関係が計測できれば良いので、両者のマークを観察する結像光学系を内部に構成したものでも良いし、両者のマークの干渉信号やモアレ模様(干渉縞)等の相乗効果による信号を検知するものでも良い。
【0013】
ウエハ101は、例えば、単結晶シリコンからなり、被処理面には、成形部となる紫外線硬化樹脂122が塗布される。また、基板ステージ106は、3次元方向に駆動可能であり、微動ステージ102と粗動ステージ104とを備える。微動ステージ102は、微動アクチュエータ103によりx、y、z、ωx、ωy、ωzの各方向に微小な駆動可能であり、不図示のウエハチャックを介してウエハ101を吸着保持する。また、粗動ステージ104は、微動ステージ102を保持しつつ、粗動アクチュエータ105によりx、y、ωzの各方向に駆動可能であり、床面上に載置されたステージ定盤107上に設置されている。塗布機構121は、ウエハ101上の所定の領域に紫外線硬化樹脂122を塗布する。紫外線硬化樹脂122は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する樹脂(インプリント樹脂)であり、製造する半導体デバイスの種類により適宜選択される。以下、簡単のために、紫外線硬化樹脂を単に「樹脂」と表記する。
【0014】
また、インプリント装置100は、ウエハ101の位置決めを実施するためのアライメント検出系と、モールド111やウエハ101をインプリント装置100内に搬出入するための搬送系と、制御部Cとを備える。アライメント検出系は、アライメントスコープ131と、フォーカスセンサ132とを有する。アライメントスコープ131を比較的空間や光学的制約が少ない位置に構成することで、プロセス対応力に秀でた光学系を構成することができる。アライメントスコープ131は、グローバルアライメント計測に用いることが一般的である。アライメントスコープ131は、ウエハ101等のx、y方向の位置ズレの計測を実施する。フォーカスセンサ132は、ウエハ101等のz位置の計測を実施する。搬送系は、モールド111を搬出入させるための不図示のモールド搬送系と、ウエハ101を搬出入させるためのウエハ搬送系とを有する。モールド搬送系は、搬送ロボットを有し、所定の位置に載置されるモールドストッカーとヘッドマウント112と間における搬送を実施する。ここで、モールドストッカーは、複数枚のモールド111を内部に保管するキャリアである。ウエハ搬送系は、搬送ロボット152により、所定のウエハ搬入口に載置されるウエハキャリア151と基板ステージ106との間における搬送を実施する。制御部Cは、インプリント装置100の各構成要素の動作、及び調整処理等を制御する。制御部Cは、インプリント装置100の各構成要素に回線により接続された、磁気記憶媒体等の記憶部を有するコンピュータ、又はシーケンサ等で構成され、プログラム、若しくはシーケンスにより、各構成要素の制御を実行する。
【0015】
次に、インプリント装置100によるインプリント処理について図2を用いて略説する。最初に、ウエハ搬送系は、被処理対象のウエハ101をウエハキャリア151からウエハチャックまで搬送する。また、モールド搬送系は、当該ロットに採用するモールド111をモールドストッカーからヘッドマウント112まで搬送し、ヘッドに固定する。ウエハ101を保持した基板ステージ106は、アライメント検出系の直下に移動し、アライメントスコープ131がウエハ101上のマークを計測することによって位置決めが行われる。その後、基板ステージ106は塗布機構121の直下へ移動し、塗布機構121は、ウエハ101上の所定の領域に樹脂122を塗布する。その後、基板ステージ106の駆動によりウエハ101はヘッドマウント112の直下の所定の位置に配置される。この時の位置関係を図2Aに示す。次に、ヘッドマウント112は、モールド111をz軸方向に駆動することにより、ウエハ101上の樹脂122にモールド111上に構成される押印領域201を押印する。このとき、樹脂122にモールド111が押し付けられることにより、樹脂122はモールド111上の押印領域201に形成された凹凸パターンに沿って流動する。この時の位置関係を図2Bに示す。この状態で、照明系ユニット142は、モールド111の背面(上面)から紫外線を照射し、モールド111を透過した紫外線により、樹脂122が硬化する。樹脂122が硬化した後、次に、ヘッドマウント112は、モールド111をウエハ101から離型させる。これにより、ウエハ101の表面には、押印領域201のパターンに倣った3次元形状の樹脂122の層が形成される。この時の位置関係を図2Cに示す。その後、インプリント装置100は、順次基板ステージ106を駆動し、転写処理を繰り返すことによって、ウエハ101の全面に渡り凹凸パターンを転写する。
【0016】
スコープ113によるモールド111上のマークとウエハ101上の基準マークの相対ずれ量を計測する処理について概説する。図3は信号を検出するスコープ113とその計測対象を示す図である。スコープ113は、押印領域に構成されたマーク311と、ウエハ101に構成されたマーク321を光学的に観察することで両者の相対位置関係を計測する。スコープ113がモールド111やウエハ101に対して傾いているのは、押印時に樹脂を硬化させるための紫外線をモールド111の上方から照射するときに露光光である紫外線の光路を確保するためである。スコープ113は、不図示の光源からの光を、ハーフプリズムや偏光ビームスプリッタといったプリズム331を用いて、スコープ113の光軸上へ導きマークへ照射する。マーク311とマーク321に対して光が照射されることにより発生するモアレ信号は、プリズム331を透過し、スコープ113に構成された撮像素子332上で結像する。撮像素子332上へ結像されたマーク311とマーク321の相対位置関係から発生するモアレ信号を処理することで、両者の相対位置関係を計測することができる。
【0017】
モアレ倍率Pは、2者の計測方向(図4ではy方向)のマークのピッチP1とピッチP2から以下の式で示される。
P=|(P1+P2)/(P1−P2)|
なお、上記式中、P1、P2はどちらがモールド側のマーク311でどちらがウエハ側のマーク321でもモアレ倍率Pは変わらない。
【0018】
図4を用いてモアレ信号による計測を説明する。図4A、図4Bに示されるピッチの異なる二種類の格子マークを用意する。これらを重ねると、明暗の縞模様が生じる。これを図4Cに示す。これがモアレ信号である。モアレ信号は、二種類の格子マークの相対位置関係によって明暗の位置が変化する。例えば、片方を少しだけ計測方向にずらすと、図4Cは図4Dのようなモアレ信号に変化する。このモアレ信号は、実際のずれ量を拡大し、大きな明暗縞として発生するためスコープの解像力が低くても、精度良く二者の相対位置関係を計測することができる。インプリント装置100で用いるスコープ113では、前記のとおり傾ける必要があるため、図4Aで示した格子状のマークでは、光が撮像素子332まで返ってこない。そこで、ウエハ101上のマーク321は図4Eに示したような、チェックボード状のマークとすることで、傾けたスコープ113によりモアレ信号を計測することが可能となる。なお、チェックボード状のマークは回折角θ、照明光波長λ、マークピッチd、回折次数nからなる回折の式(2d×sinθ=nλ)から導かれる関係で最適化する。これにより、傾けて計測しても格子状マークと同等のモアレ信号を得ることができる。
【0019】
〔第1実施形態〕
図5は、性能検証項目の1つであるショット領域の配列精度の検査を実施するフローチャートである。なお、本発明では同様の手法により配列精度に限定されない性能の検証を実施することが可能である。S501で処理が開始される。S502で、モールド搬送系は、モールドストッカーに保持されているモールド111をヘッドマウント112へ搬送する。モールド111の搬送後、ヘッドマウント112に構成されているモールドチャックがモールド111を吸着等により固定する。S503で、搬送ロボット152は、ウエハキャリア151に保持されているウエハ101を基板ステージ106へ搬送する。ウエハ101の搬送後、基板ステージ106に構成されているウエハチャックがウエハ101を吸着等により固定する。S504で、塗布機構121は、ウエハ101上の所定のショット領域に紫外線硬化樹脂122を塗布する。図6はウエハ101に構成されるショット領域を示す図である。ウエハ101上には複数のショット領域411が構成され、これらが規則正しく配列されることによりショットレイアウト412が決定される。なお、本実施形態では各ショット領域411同士が規則正しく隣接している例を示している。しかし、これらのショット領域411は必ずしも隣接している必要はなく、ショット領域411同士が離れていても良い。S504では、所定のショット領域411に対して、モールドのパターンに適した配置になるよう基板ステージ106を駆動させながら塗布機構121が紫外線硬化樹脂122を塗布する。S505で、基板ステージ106は、ウエハ101をヘッドマウント112の直下の位置に配置する。S506で、制御部Cは、ヘッドマウント112をZ軸方向に駆動させることで、原板111に構成された押印領域のパターンを紫外線硬化樹脂122が塗布されたショット領域411にインプリント(転写)する。
【0020】
ここで、モールド111のパターン面に構成され、ショット領域411に転写されて、ショット領域411間のずれを計測するために使用されるマークについて図7を用いて説明する。モールド111のパターン面は、x軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有する中央領域を有する。中央領域は、回路パターンが形成された回路パターン領域であってもよい。中央領域のy軸に平行な一対の辺よりそれぞれの外側に中央領域を挟むように第1領域及び第2領域が配置される。中央領域のx軸に平行な一対の辺よりそれぞれの外側に中央領域を挟むように第3領域及び第4領域が配置される。第1実施形態において、y軸は、x軸及びy軸の一方の第1軸を構成し、x軸は、x軸及びy軸の他方の第2軸を構成している。
【0021】
図7において、Wから始まる符号で示されるマークは、スコープ113による計測時にウエハ側マークとして使用される。ウエハ側マークは、例えば、図4Eに示されるようなチェックボード状のマークである。また、Mから始まる符号で示されるマークは、スコープ113による計測時にモールド側マークとして使用される基準マークである。モールド側マークは、例えば、図4Bに示されるようなスリットのマークである。さらに、各符号の末尾に付加されているxおよびyは、各マークの計測軸の方向を表す。なお、以後の説明では簡単のため、例えば、W701LXマークとW701LYマークをあわせてW701Lマークと呼称する。したがってW701Lマークによってxとyの2軸方向に対する計測を行うことができる。W711Uマーク〜W713Uマークは、第3領域に形成された第3マークを構成し、W711Dマーク〜W713Dマークは、第4領域に形成された第4マークを構成する。W711Uマーク〜W713UマークとW711Dマーク〜W713Dマークとは、それぞれx座標が同じ位置に配置されている。同様に、W701Rマーク〜W703Rマークは、第1領域に形成された第1マークを構成し、W701Lマーク〜W703Lマークは、第2領域に形成された第2マークを構成する。W701Rマーク〜W703RマークとW701Lマーク〜W703Lマークとは、それぞれy座標が同じ位置に配置されている。
【0022】
図8に、ウエハ101のx方向に沿って隣り合う2つのショット領域にW701Rマーク〜W703Rマーク(第1マーク)とW701Lマーク〜W703Lマーク
(第2マーク)とが転写された様子を示している。図7において、M70RマークとM70Lマーク(基準マーク)は、図8の右側のショット領域に転写されたW701Rマークと左側のショット領域に転写されたW701Lマークとの設計上の位置関係と等しい押印領域上の位置に配置される。また同様に、M71DマークとM71Uマーク(基準マーク)は、上側のショット領域に転写されたW711Dマーク(第2マーク)と下側のショット領域に転写されたW711Uマーク(第1マーク)の設計上の位置関係と等しい位置に配置される。図7に示すマークは、インプリント処理によりすべてウエハ101の各ショット領域に転写される。しかし、スコープ113によるショット領域間の相対位置を計測する場合に、ウエハ101に転写されたモールド側マーク(基準マーク)を計測することがない。そこで、以後の図面ではウエハ101側に転写されたモールド側マークの表示を省略するものとする。また、ここではモールド側マークが押印領域に構成される例を示したが、ウエハ101に転写する必要がないマークであるためモールド側マークはモールド上の押印領域外に構成しても良い。
【0023】
S506で、制御部Cは、ウエハ101上の全ショット領域に対してインプリント処理が完了したかどうかを判断する。制御部Cは、全ショット領域へのインプリント処理が完了していない場合、S504に戻って未処理のショット領域への樹脂の塗布とインプリント処理を行う。制御部Cは、全ショット領域へのインプリントが完了した場合、次のS507に遷移する。S507で、制御部Cは、所定のショット領域の同一のx位置に配置されるマークのずれ量を複数のスコープ113を用いて計測する。マークのずれ量の計測は、図8に示す流れで行われる。まず図8Aに示すように、制御部Cは、モールド111のM70Rマークと左側のショット領域411のW701Rマークが重なり、モールド111のM70Lマークと右側のショット領域411’のW701Lが重なるように基板ステージ106を駆動する。そして、制御部Cは、M70RマークとW701Rマークとの重なり合いによって形成されるモアレ模様の信号S701Rを検出可能な位置に第1スコープ113を駆動する。さらに、制御部Cは、M70LマークとW701Lマークとの重なり合いによって形成されるモアレ模様の信号S701Lを検出可能な位置に第2スコープ113を駆動する。基板ステージ106、第1及び第2スコープ113の位置を固定した状態で、第1及び第2スコープ113がそれぞれモアレ信号S701R及びS701Lを検出する。その結果から、制御部Cは、M70Rマークに対するW701Rマークのxy方向のずれ量(Offset:S701R)、及び、M70Lマークに対するW701Lマークのxy方向のずれ量(Offset:S701L)を求めることができる。モールド111上のM70RマークとM70Lマークの位置関係はウエハ101に転写されたW701RマークとW701Lマークの設計上の位置関係に等しい。したがって、制御部Cは、第1ショット領域411にインプリントされたW701Rマークに対する第2ショット領域411’にインプリントされたW701Lマークの設計値からのずれ量(Offset:S701)とする)を以下の式で求めることができる。
Offset(S701) = Offset(S701L) - Offset(S701R)
【0024】
制御部Cは、図8Bに示すように、モールド111のM70Rマークと左側のショット領域411のW702Rマークとが、モールド111のM70Lマークと右側のショット領域411’のW702Lマークとが重なるように基板ステージ106を駆動する。制御部Cは、図8Aと同様にして、左側のショット領域411にインプリントされたW702Rマークに対する右側のショット領域411’にインプリントされたW702Lのずれ量を求める。さらに、制御部Cは、図8Cに示すように、モールド111のM70Rマークと左側のショット領域411のW703Rマークとが、モールド111のM70Lマークと右側のショット領域411’のW703Lマークとが重なるように基板ステージ106を駆動する。制御部Cは、図8Aと同様にして、左側のショット領域411にインプリントされたW703Rマークに対する右側のショット領域411’にインプリントされたW703Lのずれ量を求める。これらの動作を行うことによって、隣り合う2つのショット領域間のx方向に関する相対ずれ量、つまり相対位置(配列精度)を求めることができる。各マークが配置される位置は図8の形態に限られない。すなわち、ショット領域(中央領域)を含む任意の位置に配置することができる。
【0025】
S508で、制御部Cは、所定ショットの同一のy方向に配置されるマークのずれ量を複数のスコープ113を用いて計測する。具体的な計測の流れはS507と同一であり、計測対象となるマーク、隣り合う2つのショット領域の位置関係、および計測時の基板ステージ106の駆動方向が異なるのみである。これにより、隣り合う2つのショット領域間のY方向に関する相対ずれ量、つまり相対位置(配列精度)を求めることができる。S507及びS508における説明において、単一のスコープ113がxとyの2軸方向を計測できる機能を有する前提で説明したが、xまたはyの1軸方向のみを計測できる機能を有するスコープを複数組み合わることによっても実現することが可能である。
【0026】
S509で、制御部Cは、ウエハ101上の計測可能な全ショット領域に対してずれ量の計測が完了したかどうかを判断する。制御部Cは、計測可能な全ショット領域に対してずれ量の計測が完了していない場合、S507に戻って未計測のショット領域に対するずれ量の計測を行う。制御部Cは、計測可能な全ショット領域に対してずれ量の計測が完了した場合、次のS510に遷移する。S510で、制御部Cは、計測が完了したウエハ101を基板ステージ106と搬送ロボット152を駆動させることにより、ウエハキャリア151内の元の位置へ搬送する。S511で、制御部Cは、S507〜S508で計測したすべてのずれ量から、ウエハ101全面における配列精度を演算によって求める。この演算により、配列精度パラメータである基板ステージ106の移動軸の直線性および回転ずれを求めることができる。
【0027】
S512で、制御部Cは、S511で求めたパラメータに対して、その一部またはすべてに対する規格判定を行う。規格判定を行ったすべてのパラメータが規格値以内であればS513に遷移して処理終了(配列精度検査成功)となる。規格判定を行ったパラメータに規格値外のものがあればS514に遷移する。S514で、制御部Cは、S512で規格外となったパラメータについてインプリント装置に対するオフセットを反映することで、配列精度パラメータを変更する。S515で、制御部Cは、無限回のオフセットの反映および規格判定を実施することを抑止するため、S514での配列精度パラメータの変更回数が規定値以内であるかどうかを判定する。配列精度パラメータの変更回数が既定値を超えた場合はS516に遷移して処理終了(配列精度の検査失敗)となる。配列精度パラメータの変更回数が規定値以内の場合、制御部Cは、S514で反映したオフセット量が正しいことを確認するため、S503に戻って再度インプリント処理および計測を実施する。
【0028】
[第2実施形態]
基本的な流れは第1実施形態と同一であり、異なるのはモールド111の押印領域に構成される各種マークの配置と、図5におけるS507及びS508での計測の流れのみであるため、ここでは異なる点のみを説明する。図9はモールド111の押印領域に構成される各種マークの配置を示す図である。この図において、Wから始まる符号で示されるマークは、スコープ113による計測時にウエハ側に構成されるウエハ側マーク(第1マーク、第2マーク)となり、図4Eに示されるようなチェックボード状のマークである。また、Mから始まる符号で示されるマークは、スコープ113による計測時にモールド側に構成されるモールド側マーク(基準マーク)となり、図4Bに示されるようなスリットマークである。さらに、各符号の末尾に付加されているxおよびyは、各マークの計測軸の方向を表す。なお、以後の説明では簡略化のため、たとえばW901LXとW901LYのマークをあわせてW901Lマークと呼称する。したがって、このW901Lマークによってxとyの2軸方向に対する計測を行うことができる。
【0029】
M901RマークとM901Lマークは、隣り合う2つのショット領域の左側のショット領域411に転写されたW901Rマークと右側のショット領域411’に転写されたW901Lマークの設計上の位置関係と等しい押印領域上の位置に配置される。同様にして、M902RマークとM902Lマークの位置、M903RマークとM903Lマークの位置も決定される。また、W901L〜W903LとW901R〜W903Rはそれぞれ押印領域上の同一のx位置に配置されている。なお、図9に示すマークに関しては押印によりすべてウエハ101に転写される。しかし、スコープ113によるずれ量計測時にはウエハに転写されたモールド側マークを計測することがない。そのため、以後の図面ではウエハ101に転写されたモールド側マークの表示を省略する。また、ここではモールド側マークがモールド111の押印領域に構成される例を示したが、ウエハ101に転写する必要がないマークであるためモールド側マークはモールド111上の押印領域外に構成しても良い。
【0030】
S507で、制御部Cは、隣り合う2つのショット領域の同一のy位置に配置されるマークのxy方向のずれ量を単一のスコープ113を用いて計測する。具体的には、図10に示す位置関係で計測を行う。制御部Cは、図10に示すように、モールド111のM901Rマークと左側のショット領域411のW901Rマークが重なるように基板ステージ106を駆動する。そして、制御部Cは、M901RマークとW901Rマークから発生するモアレ信号S901Rを検出可能な位置にスコープ113を駆動する。基板ステージ106、スコープ113の位置を固定した状態で、スコープ113がモアレ信号S901Rを検出する。制御部Cは、その結果から、M901Rマークに対するW901Rマークのxy方向のずれ量(Offset:S901R)を求める。次に、制御部Cは、基板ステージ106の位置を固定したまま、M901LマークとW901Lマークから発生するモアレ信号S901Lを検出可能な位置にスコープ113を駆動する。基板ステージ106、スコープ113の位置を固定した状態で、スコープ113がモアレ信号S901Lを検出する。制御部Cは、その結果から、M901Lマークに対するW901Lのxy方向のずれ量(Offset:S901L)を求める。モールド111のM901RマークとM901Lの位置関係はウエハ101に転写されたW901RマークとW901Lマークの設計上の位置関係に等しい。したがって、左側のショット領域411にインプリントされたW901Rマークに対する右側のショット領域411’にインプリントされたW901Lマークの設計値からのずれ量(Offset:S901)は以下の式で求めることができる。
Offset(S901) = Offset(S901L) - Offset(S901R)
同様にして、制御部Cは、モアレ信号S902RとS902Lから左側のショット領域411にインプリントされたW902Rマークに対する右側のショット領域411’にインプリントされたW902Lマークの設計値からのずれ量を求める。制御部Cは、また、モアレ信号S903RとS903Lから左側のショット領域411にインプリントされたW903Rマークに対する右側のショット領域411’にインプリントされたW903Lマークの設計値からのずれ量を求める。これらのずれ量から、x方向に隣り合う2つのショット領域間のx方向に関する相対ずれ量、つまり配列精度を求めることができる。
【0031】
S508で、制御部Cは、隣り合う2つのショット領域の同一のy位置に配置されるマークのずれ量を単一のスコープ113を用いて計測する。具体的な計測の流れはS507と同一であり、計測対象となるマーク、隣り合う2つのショット領域間の位置関係、およびスコープ113の計測位置が異なるのみである。なお、図9にはx方向に関する配列精度を計測するためのマークのみ示している。しかし、y方向に関する配列精度を計測するためのマークについてもx方向と同様の考え方でモールド上にマークを配置することが可能である。これにより、制御部Cは、y方向に隣り合う2つのショット領域間のy方向に関する相対ずれ量、つまり配列精度を求めることができる。なお、S507及びS508における説明において、単一のスコープがxとyの2軸方向を計測できる機能を有する前提で説明したが、x又はyの1軸方向のみを計測できる機能を有するスコープを複数組み合わることによっても実現することが可能である。
【0032】
[第3実施形態]
図11Aに、第3実施形態におけるモールド111に構成したマークの配置を示す。黒い部分がウエハ101へ転写されるべきウエハ側マーク(第1乃至第4マーク)5、白抜き部分が、モールド側マーク4(第1、第2基準マーク)である。ショットレイアウト情報に基づいて、ステップしながらインプリント処理を繰り返すことで、マーク4,5が、図11Bのように、ウエハ101の各ショット領域411に転写される。モールド111を用いて転写された隣接する2つのショット領域411に形成された一対のウエハ側マーク5の部分(図11Bの点線で囲われた部分)を拡大したのが図11Cである。図11Dには、モールド側マーク4を拡大した図を示す。モールド側マーク4は、隣接するショット領域で転写されたウエハ側マーク5の計測方向(ここではy方向)の位置が同じになるように設計されている。この為、図11Cのように、スクライブラインを隔てて、隣接しあうショット領域の一対のウエハ側マーク5が同じy方向の位置に転写される。
【0033】
これにモールド111に構成した図11Dに示されるモールド側マーク(基準マーク)4を重ねる。そうすると、図11Eのようにモアレ信号が発生する。このとき、計測方向(y方向)に対して一対のウエハ側マーク5の相対位置がそろっていれば図11Eのように、明暗線が同じ位置に発生する。一方、一対のウエハ側マーク5のy方向の相対位置にずれが発生している場合は図11Fのように、少しずれた位置に明暗線が発生する。制御部Cは、このずれ量を演算することで、隣接するショット領域間の相対位置(ずれ量)を算出するので、ステッピング精度を算出することが出来る。よって、事前に知っておいたウエハ側マーク5及びモールド側マーク4のピッチから求められる上記倍率分だけ補正したものが、隣接するショット領域相互の相対位置(ずれ量)となる。
【0034】
このショット領域相互の相対位置量の算出を、上下左右の隣接するショット領域間で行い、さらにショット領域毎に行うことで、焼付け位置を求めることが出来る。なお、ウエハ側マーク5とモールド側マーク4とが重なる状態が出来なければモアレ信号は発生しないので、例えば、周辺に大きなマークを構成し粗合わせして計測可能レンジに送り込む工程も必要に応じて追加する。本実施形態では、モールド側マーク(基準マーク)5は、中央領域の外側の領域(第1〜第4領域)に形成されている。
【0035】
図11Aの縦辺領域(第1、第2領域)に配置したウエハ側マーク(第1、第2マーク)5ではx方向の相対位置のみ、横辺領域(第3、第4領域)に配置したウエハ側マーク(第3、第4マーク)5では、y方向の相対位置のみを求めることになる。そこで、図12に示すように、モールド111の第1領域乃至第4領域を中央領域の反対側に凹部及び凸部を有するように構成し、隣接するショット領域間で凹部に凸部が入り込むように構成する。そして、凹部及び凸部を利用して、隣接しあう2つのショット領域に転写され隣り合うウエハ側マーク(第1マーク及び第2マーク、第3マーク及び第4マーク)が互いに近接して位置するようにする。そうすると、隣接しあう2つのショット領域間のイ相対位置を計測する各計測箇所においてx方向及びy方向の計測が可能となる。
【0036】
本実施形態では、モールド側マーク4とウエハ側マーク5を同一のモールド111に構成することを示したが、これにこだわることは無い。例えば、ウエハ101上へウエハ側マーク5を転写する為のモールド111と、転写後モアレ信号を計測する為のモールド111とを別に持っても良い。本実施形態では、モールド111とウエハ101の相対位置合わせを行うスコープ113を使う方法を述べたが、これとは別に専用のスコープを構成しても良い。図11Cのように隣り合うモールド側マーク4やウエハ側マーク5は、同じマークである必要は無く、違う計測ピッチを持つ場合は、そこから導かれる倍率Pを用いて実際の相対ずれ量に変換すればよい。
【0037】
〔第4実施形態〕
図13に用いて第4実施形態のスコープ113について説明する。図13は第4実施形態のスコープ113を構成したインプリント装置の図である。第1〜3実施形態では、モールド111に構成されたモールド側マークを使って、モアレ信号の計測を行うことを記載した。第4実施形態のスコープ113は、図13に示すようにスコープ自体にモールド側マークに代わる基準マーク9を保持している。図13Aは図3と同様の構成をとっており、モールド側マーク4に相当する基準マーク9をスコープ113の先端に取り付けている。ショットレイアウトに従って、ウエハ側マークがインプリントしたウエハ101は図13Aのスコープ113の下へ送られる。ここで、スコープ113の基準マーク9とウエハ側マーク5とを重ね合わせることでモアレ信号が発現する。以降は第1〜3実施形態と同様に、モアレ信号の位置ずれから隣接するショット領域間の相対位置ずれ量が求められる。
【0038】
図13Bは、基準マーク9をウエハ側マーク5と光学的に共役なスコープ内部の位置へ配置し、ウエハ側マーク5の像を基準マーク9へ結像することで、モアレ信号を発生させる形態を示している。基準マーク9の配置位置は、光学的に共役な位置であればよいので、例えば撮像素子332の前面に構成しても良い。図13Cは、スコープ113の途中で分岐し、ウエハ側マーク5と光学的に共役な位置へ基準マーク9を配置しモアレ計測を行う手法を示している。この手法であれば、基準マーク9を例えばアライメントスコープ131の内部に構成することで、アライメントスコープ131をショット領域間の相対位置を検出する検出器として構成することが可能となる。以上のように、モールド111のモールド側マーク4を使うだけではなく、スコープ113に基準マーク9を構成することで、モアレ信号の計測が可能となる。
【0039】
第1〜4実施形態では、スコープ113をインプリント装置の内部に構成しているが、特に限定するものではなく、インプリント装置外にスコープ113を用意しても良い。スコープ113をヘッドマウント112の露光光の光路にかからない位置に別途構成する場合は、露光光を避ける為に傾ける必要は無く、ウエハ101に対して垂直に構成しても良い。
【0040】
以上、本明細書ではモアレ信号を用いた計測方法を主として述べてきた。しかし、隣接するショット領域A,B間の相対位置を計測するために計測する信号はモアレ信号に限定されない。例えば、ウエハ側マーク5とモールド側マーク4としてそれぞれ図15A、図15Bに示されるようなマークを使用する。このとき、モールド側マーク4,4の位置関係は既知であり、製造誤差がある場合は予め計測しておく。そして、隣接しあう2つのショット領域A,Bに形成されたウエハ側マーク5,5にモールド側マーク4,4を図15Cのように重ね合わせる。このときの、モールド側マーク4,4を基準としたときの2つのウエハ側マーク5,5間の相対位置を計測することで、ショット領域A,B間の相対位置を計測することが出来る。
【0041】
[物品の製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。
【0042】
以上のようにして、本発明では、従来のようにマークを重ねることなく、隣接するショット領域間の相対位置を精度良く計測することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板のショット領域ごとに行うインプリント装置であって、
基準マークが形成されたモールドを保持する支持体と、
各ショット領域に第1マーク及び第2マークが形成された基板を保持する基板ステージと、
前記各ショット領域に形成された前記第1マーク及び前記第2マークと前記モールドに形成された前記基準マークとを検出することによって前記各ショット領域間の相対位置を計測する検出器と、
を備え、
前記検出器は、隣接しあう2つのショット領域のそれぞれに形成された隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークそれぞれの前記基準マークに対する位置を検出することによって、隣接しあう前記2つのショット領域間の相対位置を検出する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記基準マークに加えて前記第1マーク及び前記第2マークが前記モールドに形成され、
前記検出器は、前記モールドを用いて前記基板の各ショット領域に転写された前記第1マーク及び前記第2マークと前記モールドに形成された前記基準マークとを検出することによって前記各ショット領域間の相対位置を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板のショット領域ごとに行うインプリント装置であって、
各ショット領域に第1マーク及び第2マークが形成された基板を保持する基板ステージと、
前記基板ステージに保持された基板の前記第1マーク及び前記第2マークと光学的に共役な位置に基準マークを有し、前記各ショット領域間の相対位置を計測する検出器と、
を備え、
前記検出器は、隣接しあう2つのショット領域のそれぞれに形成された隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークそれぞれの前記基準マークに対する位置を検出することによって、隣接しあう前記2つのショット領域間の相対位置を検出する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項4】
前記基準マークは、各ショット領域の前記第1マークの位置を検出するための基準マークと該基準マークとは別に各ショット領域の前記第2マークの位置を検出するための基準マークとを含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1マーク及び前記第2マークは、各ショット領域のxyz座標系のx軸に平行なx方向の相対位置を検出するためのマークと各ショット領域のy軸に平行なy方向の相対位置を検出するためのマークとをそれぞれ含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記基準マークと隣接しあう2つのショット領域の隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークそれぞれとの重なり合いによってモアレ模様が形成される、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記検出器は、各ショット領域に形成された前記第1マークの前記基準マークに対する位置を検出する検出器と、各ショット領域に形成された前記第2マークの前記基準マークに対する位置を検出する検出器とを含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記各ショット領域は、xyz座標系のx軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有する中央領域と、前記中央領域の前記y軸に平行な一対の辺よりそれぞれの外側に前記中央領域を挟むように配置された第1領域及び第2領域と、を含み、
前記第1マークは前記第1領域に配置され、前記第2マークは前記第2領域に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記第1領域及び前記第2領域は、それぞれ前記中央領域の反対側に凹部及び凸部を有し、前記凹部及び前記凸部を利用して、隣接しあう2つのショット領域の隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークが近接して位置するように構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記中央領域は、回路パターンが形成される領域である、ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記検出器は、xyz座標系のx軸に平行なx方向に沿って隣接しあう2つのショット領域間のx方向又はy軸に平行なy方向における相対位置を検出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記第1マーク及び前記第2マークはそれぞれ前記第1領域及び前記第2領域の前記y軸の座標が同じ位置に配置される、ことを特徴とする請求項11に記載のインプリント装置。
【請求項13】
基板に塗布された樹脂にインプリント処理によって回路パターンを転写するためのモールドであって、
前記モールドは、そのパターン面に、第1マーク、第2マーク及び基準マークを有し、
基板の隣接しあう2つのショット領域のそれぞれに前記モールドを用いて転写された隣接しあう第1マーク及び第2マークの前記モールドの前記基準マークに対する位置を検出することによって、隣接しあう前記2つのショット領域間の相対位置が検出可能である、
ことを特徴とするモールド。
【請求項14】
前記モールドのパターン面は、xyz座標系のx軸に平行な一対の辺とy軸に平行な一対の辺とを含む境界を有する中央領域と、前記中央領域の前記y軸に平行な一対の辺よりそれぞれの外側に前記中央領域を挟むように配置された第1領域及び第2領域を含み、
前記基準マークは、前記中央領域の外側に形成されている、ことを特徴とする請求項13に記載のモールド。
【請求項15】
前記第1領域及び前記第2領域は、それぞれ前記中央領域の反対側に凹部及び凸部を有し、前記凹部及び前記凸部を利用して、隣接しあう2つのショット領域のそれぞれに前記モールドを用いて転写された隣接しあう前記第1マーク及び前記第2マークが互いに近接して位置するように構成されている、ことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のモールド。
【請求項16】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパタ−ンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パタ−ンを形成された基板を加工する工程と、
を含む物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図4】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−129314(P2012−129314A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278399(P2010−278399)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】