説明

ウェーハの送風乾燥装置及び送風乾燥方法

【課題】ウェーハ乾燥時にウェハ表面にウォータマークが形成されないようにすると共に、ウェーハの乾燥効率及び品質性能を向上させる。
【解決手段】ウェーハ用送風乾燥装置1は、窒素ガスN2が吹き付けられるウェーハWの上面に気流を発生させるための回転板11を備え、回転板11の下面は円錐状に形成されている。回転板11は窒素ガス供給ノズル5の外側に回転駆動可能に配設され、該回転板11の下面には渦巻き状又は放射状に配置された複数の羽根15,・・が形成されている。羽根15,・・はウェーハW上面の中心部が外周部よりも、羽根15,・・のピッチが狭く、且つ、羽根15,・・の高さ寸法及び幅寸法が小さい。また、回転板11の回転数を調整することにより、ウェーハW上に発生する気流の大きさが適宜変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハの送風乾燥装置及び送風乾燥方法に関するものであり、特に、ウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにしたウェーハの送風乾燥装置及び送風乾燥方法に関するものであル。
【背景技術】
【0002】
従来、CMP装置により研磨されたウェーハ、洗浄処理を実施した後に、ウェーハ表面に付着している洗浄水を除去乾燥している。即ち、洗浄水によりウェーハ表面を洗浄した後、更に、該ウェーハを回転させながら、該ウェーハ表面に窒素ガスを吹き付けて水分を除去乾燥させている。
【0003】
例えば、従来のスピン乾燥方式では、回転するウェーハに供給ノズルから乾燥用の窒素ガスを吹き付けている。これにより、該ウェーハ表面に付着している水玉が遠心力により分離されると共に、蒸発によってウェーハ表面の水分が除去乾燥される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−126264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のスピン乾燥方式では、遠心分離された微小な水玉がウェーハ表面と反応することにより、ウォータマークと呼ばれる水玉の残痕がウェーハ表面に発生する。
【0005】
ウェーハの表面は、撥水性材料(Low−k材料)により形成されているために、遠心力により分離できない微小な水玉が発生し、該水玉がウェーハ表面に残存してウォータマークが形成され易い。特に、水玉がウェーハと同じ方向に一体的に回転移動し、水玉のウェーハ表面に対する付着力が大きいため水玉が残存しやすい。
【0006】
ウェーハ表面にウォータマークが形成された場合は、該ウォータマークに塵埃が付着してデバイス性能の低下、例えば、信号遅延(RC遅延)などの品質低下を招来させる。従って、ウェーハの乾燥処理において、ウォータマークを形成させないことが大きな課題になっている。
【0007】
又、前記窒素ガス供給ノズルは可動アームにより移動可能に保持されているが、該可動アームのスキャン速度はウェーハの回転速度及び窒素ガス供給量に応じた水切り速度に合致させるべく、その都度、適正な速度に厳密に調整する必要がある。
【0008】
この場合、可動アームのスキャン速度の調整は、常に水切り速度と合致するように厳密に設定しなければならないので、調整作業が面倒であるだけでなく、かなり高度な熟練技術を要するため、前記調整作業が行い難い。更に、可動アームのスキャン速度が水切り速度と合致しない場合は、ウェーハの乾燥効率及び品質性能が低下するという問題があった。
【0009】
そこで、ウェーハ乾燥時に該ウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにすると共に、ウェーハの乾燥効率及び品質性能を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ウェーハが水平に保持固定される保持部材と、該ウェーハの上面中央部の直上に設けられた不活性ガス用の供給ノズルと、該供給ノズルの外側に回転駆動可能に配設された回転板とを備えて成るウェーハの送風乾燥装置であって、前記回転板の下面は円錐面状に形成されていると共に、該回転板の下面に複数の羽根が渦巻き状又は放射状に配設され、前記ウェーハ上面に不活性ガスを吹き付けるとともに前記回転板を回転駆動することにより、ウェーハ上面に沿って気流を強制的に発生させるように構成して成るウェーハの送風乾燥装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、保持部材によりウェーハを水平に保持固定し、該ウェーハの上面中央部に供給ノズルからウェーハ不活性ガスを吹き付けると共に、該供給ノズルの外側に配設された回転板を回転駆動させる。これにより、該回転板と一体に複数の羽根が回転するため、不活性ガスが吹き付けられたウェーハ上面に強制的な気流が発生する。この場合、ウェーハ上面と回転板下面の間の隙間は、ウェーハ上面の中央部から外周部に行くに伴い漸次拡大しているので、気流の圧力はウェーハ上面の中央部が外周部よりも大きくなる。従って、前記不活性ガスはウェーハ中心部から放射方向に向かって強い気流を形成して流れる。斯くして、ウェーハ上面に付着している水玉は、前記気流の圧力によりウェーハの径方向外方へ略直線状に移動して分離除去される。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記羽根の枚数は上記回転板の中心部が外周部よりも多くなるように設けられている請求項1記載のウェーハの送風乾燥装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、羽根の枚数(単位面積当たりの枚数)は、回転板の中心部が外周部よりも多いので、気流の気圧は該回転板の中心部が外周部よりも更に高くなる。その結果、ウェーハの放射方向に向かう気流の強さが一層増大する。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記羽根の高さ寸法は上記回転板の中心部が外周部よりも高くなるように形成されている請求項1又は2記載のウェーハの送風乾燥装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、羽根の高さ寸法は回転板の中心部が外周部よりも大きいので、気流の気圧は該回転板の中心部が外周部よりも更に高くなる。その結果、請求項2記載の発明と同様に、ウェーハの放射方向に向かう気流の強さが一層増大する。
【0016】
請求項4記載の発明は、上記羽根の幅寸法は、上記回転板の中心部が外周部よりも幅広になるように形成されている請求項1,2又は3記載のウェーハの送風乾燥装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、羽根の幅寸法は、即ち、該羽根における回転板の回転方向と直交する方向の幅寸法は、回転板の中心部が外周部よりも広幅であるので、気流の気圧は該回転板の中心部が外周部よりも更に高くなる。その結果、請求項2又は3記載の発明と同様に、羽根の回転により発生する気流の大きさが一層強くなる。
【0018】
請求項5記載の発明は、上記回転板の回転数は調整可能に構成されている請求項1,2,3又は4記載のウェーハの送風乾燥装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、回転板の回転数は調整可能であるので、ウェーハの種類や乾燥条件が変更されたときは、それに応じて回転板の回転数が変更される。従って、回転板の羽根によって発生する気流の強さが適宜調整される。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3,4又は5記載のウェーハの送風乾燥装置を用いたウェーハの乾燥方法であって、保持部材により前記ウェーハを水平に保持固定する工程と、該水平に保持固定されたウェーハの上面中央部に供給ノズルから不活性ガスを吹き付ける工程と、該不活性ガスをウェーハに吹き付ける共に回転板を回転駆動させる工程とを含み、前記ウェーハ上面に沿って気流を強制的に発生させるウェーハの送風乾燥方法を提供する。
【0021】
この方法によれば、保持部材によりウェーハを水平に保持固定し、該ウェーハの上面中央部に供給ノズルからウェーハ不活性ガスを吹き付けると共に、該供給ノズルの外側に配設された回転板を回転駆動させる。これにより、該回転板と一体に複数の羽根が回転するため、不活性ガスが吹き付けられたウェーハ上面に強制的な気流が発生する。この場合、ウェーハ上面と回転板下面の間の隙間は、ウェーハ上面の中央部から外周部に行くに伴い漸次拡大しているので、気流の圧力はウェーハ上面の中央部が外周部よりも大きくなる。従って、前記不活性ガスはウェーハ中心部から放射方向に向かって強い気流を形成して流れる。斯くして、ウェーハ上面に付着している水玉は、前記気流の圧力によりウェーハの径方向外方へ略直線状に移動して分離除去される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明は、ウェーハの乾燥時に、ウェーハ表面の水玉はウェーハの放射方向に略直線状に移動分離することにより、水玉の水切り作用が促進されるので、水玉の残痕を発生させることなく、ウェーハ表面を迅速に蒸発乾燥させることができる。斯くして、ウェーハの乾燥効率及びデバイス性能が向上するだけでなく、ウェーハ表面にウォータマークが形成されることを効果的に抑制することができる。
【0023】
又、従来のように、可動アームのスキャン速度を特定範囲に厳密に設定調整する必要がなく、ウェーハの品質性能及び乾燥効率が従来に比べて向上する。
【0024】
請求項2記載の発明は、回転板の中心部と外周部の羽根の枚数の差に応じて、ウェーハの放射方向に向かう気流の強さが増大するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、ウェーハ上面における水玉の移動分離作用が促進され、ウォータマークの形成を一層効果的に抑制することができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、ウェーハの放射方向に向かう気流の強さが増大するので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、前記水玉の移動分離作用が更に促進され、ウェーハの乾燥効率が一層向上すると共に、ウォータマークの形成をより効果的に抑制することができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、回転板の中心部の羽根を外周部の羽根よりも幅広に形成したことによって、ウェーハの中心部から放射方向に向かう気流の大きさが更に強くなるので、請求項1,2又は3記載の発明の効果に加えて、ウェーハ上面における水玉の水切り作用、ウェーハの乾燥効率、並びにウォータマークの発生の抑制効果を一層向上させることができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、ウェーハの乾燥条件などに応じて回転板の回転数を調整できるので、請求項1,2,3又は4記載の発明の効果に加えて、ウェーハの乾燥条件などが異なった場合でも、これに対応して気流の強さを最適値に容易に変更させることができる。
【0028】
請求項6記載の発明は、ウェーハ表面の水玉はウェーハの放射方向に略直線状に移動分離することにより、水玉の水切り作用が促進されるので、水玉の残痕を発生させることなく、ウェーハ表面を迅速に蒸発乾燥させることができる。
【0029】
斯くして、ウェーハの乾燥効率及びデバイス性能が向上するだけでなく、ウェーハ表面にウォータマークが形成されることを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明はウェーハ表面におけるウォータマークの形成を抑制し、且つ、ウェーハの品質性能及び乾燥効率を向上させるという目的を達成するため、ウェーハが水平に保持固定される保持部材と、該ウェーハの上面中央部の直上に設けられた不活性ガス用の供給ノズルと、該供給ノズルの外側に回転駆動可能に配設された回転板とを備えて成るウェーハの送風乾燥装置であって、前記回転板の下面は円錐面状に形成されていると共に、該回転板の下面に複数の羽根が渦巻き状又は放射状に配設され、前記ウェーハ上面に不活性ガスを吹き付けるとともに前記回転板を回転駆動することにより、ウェーハ上面に沿って気流を強制的に発生させることによって実現した。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図8に従って説明する。本実施例では、CMP装置により研磨され、且つ、1次洗浄処理済みのウェーハを乾燥させる際に、ウェーハ表面にウォータマークが形成されないようにしたものである。即ち、窒素ガス用の供給ノズルより窒素ガスをウェーハの上面中央部に吹き付ける共に、該ウェーハ上方に設けた回転板(気流発生手段)を回転させ、ウェーハの上面に放射方向に気流を発生させる。
【0032】
斯くして、ウェーハ上の水玉は、ウェーハの径方向外方へ最短路で移動分離するため、水玉の水切り作用が促進されて、水玉の残痕を発生させることなく、ウェーハを効果的に蒸発乾燥でき、ウェーハ表面上においてウォータマークが形成されなくなる。
【0033】
本実施例に係るウェーハの送風乾燥装置1の全体構成を図1に示す。同図において、2は洗浄後のウェーハWを乾燥処理するための処理チャンバであって、該処理チャンバ2は上面開口の箱状に形成されている。前記処理チャンバ2内には、ウェーハWを水平に保持するための保持部材3が高さ調整可能に設けられている。
【0034】
前記保持部材2の上端部の複数個所には夫々チャックピン4,4,・・が取り付けられている。これらチャックピン4,4,・・は、図2に示すように、保持部材2上のウェーハWの外周部に沿って等間隔を有して配置され、該チャックピン4,4,・・により前記ウェーハWの外周部が着脱自在にチャックされる。
【0035】
ウェーハWの上方位置には、該ウェーハWの上面中央部に窒素ガスN2(IPA蒸気を混入させたものを含む。)を吹き付けるための窒素ガス供給ノズル5が設けられ、該窒素ガス供給ノズル5は、図3に示すように、ウェーハWの上面中央部の真上位置に支持部材5Aにより支持固定されている。
【0036】
又、窒素ガス供給ノズル5には供給路6を介して窒素ガスタンク7が接続され、該供給路6の途中には流量調整器8及び圧力調整器9が設けられている。又、流量調整器8及び圧力調整器9には制御手段10が電気的に接続されている。
【0037】
従って、前記制御手段10により流量調整器8又は圧力調整器9を動作制御することによって、窒素ガス供給ノズル7から吹き出される窒素ガスN2の流速又は圧力は、所望値に調整変更することができる。尚、流量調整器8及び圧力調整器9の弁開度や開閉時期などの動作条件は、必要により手動にて調整設定することもできる。
【0038】
前記処理チャンバ2の上面開口部には、ウェーハW上面に気流を強制的に発生させるための回転板(気流発生板)11が配設され、該回転板11は窒素ガス供給ノズル5と同心状に配置されている。図4の構成例では、回転板11の中心部には孔12が形成されている。
【0039】
又、回転板11上面における孔12の周縁部には、該孔12と連通する中空状の中心軸13が立設されている。該中心軸13及び孔12には前記窒素ガス供給ノズル5が下方に貫通して配設され、該窒素ガス供給ノズル5の下端開口部は、ウェーハWの上面中央部を指向するように回転板11下面から突出している。
【0040】
中心軸13には回転力伝達手段14を介してモータMが回転駆動可能に連結され、該モータMにより中心軸13を回転駆動することによって、回転板11は窒素ガス供給ノズル5の周りを水平回転する。更に、モータMには回転数調整器(図示せず)が付設され、該回転数調整器により中心軸13の回転数を変更することによって、回転板11の回転速度を適宜調整できるように構成されている。
【0041】
前記回転板11の下面は、下方に凸の円錐状面を有するように形成され、回転板11の中央部から外周部に向かって上方に緩やかに傾斜している。尚、回転板11の下面形状は図示例に限らず、その中央部から外周部に行くに伴い漸次上方に傾斜する形状であれば、例えば、円錐台形状と類似する縦断面略V字形(緩やかな略V字形)の形状も含まれる。
【0042】
更に、回転板11の下面には多数の羽根15,15,・・が形成され、該羽根15,15,・・は回転板11の中心部を基点とする渦巻き状(螺旋状を含む)又は放射状に配置されている。図5は、回転板11の下面に、該回転板11の回転方向Rと同一方向へ渦巻き状に延びる斜面16を形成すると共に、該斜面16に沿って多数の羽根15,15,・・を配設した構成例を示す。又、図6は、回転板11下面の中心部から放射方向に多数の羽根15,15,・・を配設した構成例を示す。
【0043】
本実施例では、回転板11を回転させたときに、該回転板11の中心部が外周部よりも高い風圧が発生するようにするために、これら羽根15,15,・・の単位面積当たりの枚数(配列ピッチ)、或いは、該羽根15,15,・・の寸法形状は、回転板11の中心部と外周部とでは異なるように形成されている。即ち、羽根15,15,・・は回転板11の中心部から外周部にいくに伴い、羽根15,15,・・の配列ピッチが連続的若しくは非連続的(段階的)に大きくなるように構成されている。又、羽根15,15,・・は回転板11の中心部から外周部にいくに伴い、羽根15,15,・・の幅寸法B及び/又は高さ寸法Hが連続的若しくは非連続的に小さくなるように構成されている(図7参照)。
【0044】
図7(a)〜(c)は羽根15,15,・・の具体的な形状構造例を示す。同図において、羽根15,15,・・は回転板11下面において、該回転板11の回転方向Rに傾斜して開口し、且つ、球面状を有するように突設されている。又、該羽根15,15,・・の開口面形状及び平面視形状はD字状に形成されている。従って、回転板11と一体に羽根15,15,・・が回転することによって、回転板11下面とウェーハW上面の間に形成されたクサビ形の隙間に、ウェーハWの中心部から放射方向に向かって強い空気の流れが発生する。
【0045】
次に、本実施例によるウェーハWの乾燥処理の工程例について説明する。尚、ウェーハWは既に移送手段(図示せず)によって処理チャンバ2内の保持部材3上に載置セットされた後、ウェーハWの外周部がチャックピン4,4,・・により水平状態に固定されているものとする。先ず、窒素ガス供給ノズル5より窒素ガスN2をウェーハWの上面中央部に吹き付けると共に、前記モータMによって回転板11を回転駆動させる。これにより、回転板11下面とウェーハW上面の間の隙間に、ウェーハWの中心部から放射方向に向かって強い空気の流れが発生する。
【0046】
この場合、ウェーハW上面の中心部の羽根15,15,・・は外周部の羽根15,15,・・に比べて、羽根15,15,・・の配列ピッチが狭く、且つ、羽根15,15,・・の幅寸法B及び高さ寸法Hも大きいので、ウェーハW上面の中心部が外周部よりも気圧の高い気流が発生する。加えて、ウェーハW上面と回転板11下面の間の隙間の上下寸法は、ウェーハWの中央部から外周部に行くに伴い漸次拡大しているため、ウェーハWの中心部の気圧が外周部の気圧よりも更に高くなる。
【0047】
従って、ウェーハW上面と回転板11下面の間に形成された気流は、ウェーハWの中心部から外周部に向かう放射方向に強く流れるように形成される。その結果、ウェーハW上の水玉Dは、該ウェーハW表面に対して付着力が小さくなり、図8中の符号Aで示すように、強い気流の移動力によってウェーハWの径方向外方へ略直線状に移動して分離される。
【0048】
因みに、従来のスピン乾燥方法では、水玉DがウェーハW表面に付着したまま、ウェーハWと同一の方向に回転移動していたため、図8中の符号Bで示すように、ウェーハW表面上で大きな円弧状の軌跡を描きながら、ウェーハWの径方向外方に徐々に移動して、水切り作用が良くなかった。従って、ウェーハW上に水玉Dの残痕が発生して、ウェーハW表面にウォータマークが形成されやすいという問題があった。
【0049】
その点、本実施例によれば上述したように、ウェーハW上の水玉Dは、ウェーハWの径方向外方へ直線状に移動分離する。従って、水玉DがウェーハWの放射方向へ最短距離で円滑に移動するため、該水玉Dの水切り作用が促進され、水玉Dの残痕を発生させる虞がない。斯くして、ウォータマークの形成を効果的に抑制しつつ、ウェーハW表面が迅速に蒸発乾燥される。
【0050】
また、本実施例では回転板11の回転数は適宜調整できるので、ウェーハWの種類や乾燥条件が異なった場合でも、乾燥条件等に応じた最適値に気流の強さを容易に変更させることができる。
【0051】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例を示し、ウェーハの送風乾燥装置の構成を示す一部断面正面図。
【図2】一実施例に係るウェーハのチャック状態を示す平面図。
【図3】一実施例に係る窒素ガス供給ノズルの回路の一例を示すブロック図。
【図4】一実施例に係るウェーハの送風乾燥装置を示す正面断面図。
【図5】一実施例に係る羽根の配置例を示す回転板の下面図。
【図6】一実施例に係るウェーハの送風乾燥装置の回転板の部分を示し、(a)は回転板の正面図、(b)は回転板の下面図。
【図7】一実施例に係る羽根の構造例を示し、(a)は羽根の正面図、(b)は羽根の平面図、(c)は(a)のA−A線に沿う断面図。
【図8】一実施例に係るウェーハ上の水玉の移動経路を説明する平面図。
【符号の説明】
【0053】
1 送風乾燥装置
2 処理チャンバ
3 保持部材
4 チャックピン
5 窒素ガス供給ノズル
10 制御手段
11 回転板(気流発生板)
12 孔
13 中心軸
15 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハが水平に保持固定される保持部材と、該ウェーハの上面中央部の直上に設けられた不活性ガス用の供給ノズルと、該供給ノズルの外側に回転駆動可能に配設された回転板とを備えて成るウェーハの送風乾燥装置であって、
前記回転板の下面は円錐面状に形成されていると共に、該回転板の下面に複数の羽根が渦巻き状又は放射状に配設され、
前記ウェーハ上面に不活性ガスを吹き付けるとともに前記回転板を回転駆動することにより、ウェーハ上面に沿って気流を強制的に発生させるように構成したことを特徴とするウェーハの送風乾燥装置。
【請求項2】
上記羽根の枚数は上記回転板の中心部が外周部よりも多くなるように設けられていることを特徴とする請求項1記載のウェーハの送風乾燥装置。
【請求項3】
上記羽根の高さ寸法は上記回転板の中心部が外周部よりも高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のウェーハの送風乾燥装置。
【請求項4】
上記羽根の幅寸法は、上記回転板の中心部が外周部よりも幅広になるように形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載のウェーハの送風乾燥装置。
【請求項5】
上記回転板の回転数は調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のウェーハの送風乾燥装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5記載のウェーハの送風乾燥装置を用いたウェーハの乾燥方法であって、
保持部材により前記ウェーハを水平に保持固定する工程と、
該水平に保持固定されたウェーハの上面中央部に供給ノズルから不活性ガスを吹き付ける工程と、
該不活性ガスをウェーハに吹き付ける共に回転板を回転駆動させる工程とを含み、
前記ウェーハ上面に沿って気流を強制的に発生させることを特徴とするウェーハの送風乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−16687(P2009−16687A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178954(P2007−178954)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】