説明

ウェーハ保持ジグ

【課題】 薄化ウェーハを接着剤を使用せずに簡単に保持して、その保持した状態でWafer to Wafer装置で薄化ウェーハの貼り合せを行うことができ、さらに貼り合せ後は貼り合せ薄化ウェーハを溶剤を使用せずに容易に剥離することを可能とするウェーハ保持ジグを提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂シート、キャリアウェーハ又はガラス基板からなるキャリア20と、粘着フィルム30と、を備え、キャリア20の1方の表面の少なくとも外縁部領域に、粘着フィルム30の1方の表面を接着剤40で接着固定し、粘着フィルム30のもう1方の表面の面内に、粘着フィルム30の面内に収まる寸法の面を有するウェーハ60の1方の面を貼り付けて保持するウェーハ保持ジグ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の薄ウェーハの積層、搬送等に使用するウェーハ保持ジグに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、半導体ウェーハを積層するには、ガラスやシリコンウェーハに接着剤や粘着剤をスピンコート等によって塗布したキャリアを用いて、その上にウェーハを貼り付け、その状態でWafer−to−Wafer装置に投入して、ウェーハ貼り合せを行うのが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。この方法では、ウェーハ貼り合せ後に、溶剤等を用いて接着剤や粘着剤を除去してキャリアを剥離する必要があった。
【0003】
半導体ウェーハのダイシング工程後に、チップを表面保護テープから容易に剥離除去する方法として、レーザ光線等を照射して保護テープに易剥離性を与える方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−250790号公報
【特許文献2】特開2011−54641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法で、ウェーハの貼り合せ後に溶剤を用いて接着剤や粘着剤を溶解する場合、溶剤処理やその装置コストが大きくなるという問題があった。また、ウェーハを保持するための接着剤等は、1回毎に溶剤等を用いて溶解する必要があり、環境負荷が大きいことも問題視されてきた。
【0006】
特許文献2に開示されている方法は、溶剤の代りにレーザ光線等を用いて、キャリアと粘着剤、接着剤界面を改質し剥離する方法を示唆するものである。この場合も、粘着剤や接着剤はスピンコート等の手段で塗布されるため、その多くは廃棄されることなり、また、ウェーハの形成パターンによっては接着剤等が複雑な形状内部まで入り込み、貼り合せ終了後うまく剥離できない場合があるなどの問題を抱えるものであった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、薄化ウェーハを接着剤を使用せずに簡単に保持して、その保持した状態でWafer to Wafer装置で薄化ウェーハの貼り合せを行うことができ、さらに貼り合せ後は貼り合せ薄化ウェーハを溶剤を使用せずに容易に剥離することを可能とするウェーハ保持ジグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
【0009】
(1)熱可塑性樹脂シート、キャリアウェーハ又はガラス基板からなるキャリアと、粘着フィルムと、を備え、キャリアの1方の表面の少なくとも外縁部領域に、粘着フィルムの1方の表面を接着固定し、粘着フィルムのもう1方の表面の面内に、粘着フィルムの面内に収まる寸法の面を有するウェーハの1方の面を貼り付けて保持することを特徴とするウェーハ保持ジグ。
【0010】
本発明においては、熱可塑性樹脂シート、ワークとなるウェーハとは別のシリコンウェーハ等のウェーハ又はガラス基板をキャリアとして用いることができる。また、本発明においては、キャリアと粘着フィルムを含む組立物をウェーハ保持ジグという。
【0011】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから容易に剥離することができる。
【0012】
(2)粘着フィルムを、弾性変形領域内において、使用温度領域における線膨張分より大きく予め延伸して、キャリアに接着固定することを特徴とする(1)に記載のウェーハ保持ジグ。
【0013】
これにより、使用温度領域の高温下で粘着フィルムが伸びた場合においても、ウェーハ貼り付け領域において粘着フィルムがたるむことがないため、そこに貼り付けられたウェーハの位置がずれることがない。
【0014】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから容易に剥離することができる。
【0015】
(3)ウェーハを貼り付けた粘着フィルム表面に対向する、粘着フィルムのもう1方の表面の、キャリア表面からの高さが、粘着フィルムを接着固定するための接着剤の厚さより大きいことを特徴とする(1)又は(2)に記載のウェーハ保持ジグ。
【0016】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから容易に剥離することができる。
【0017】
(4)キャリアの表面に接着固定する粘着フィルムの表面の、粘着フィルムのもう1方の表面のウェーハ貼り付け領域に対応する領域、及び/又は粘着フィルムを接着固定するキャリアの表面の、粘着フィルム表面のウェーハ貼り付け領域に対応する領域に、エンボス加工、マット加工又はヘアライン加工を施したことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のウェーハ保持ジグ。
【0018】
本構成によれば、ウェーハを剥離する際に、ウェーハをキャリアジグと垂直方向に引き剥がすとき、粘着フィルム裏面がキャリアジグ表面と密着するのを防止することができる。
【0019】
(5)粘着フィルムに外気流通路となる厚さ方向に貫通する孔もしくは切れ目を設け、及び/又はキャリアに外気流通路となる厚さ方向に貫通する孔を設け、及び/又は粘着フィルムを接着固定するキャリアの表面の外縁部領域に外気流通路となる非接着部を設けることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のウェーハ保持ジグ。
【0020】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから剥離するときに、粘着フィルムとキャリア間が真空となってウェーハが剥がれ難くなるのを防止することができる。
【0021】
(6)粘着フィルムの表面のキャリアの外縁部に接着固定されている領域に対応する、粘着フィルムのもう1方の表面の領域が、非粘着性の加工を施されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のウェーハ保持ジグ。
【0022】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから容易に剥離することができる。
【0023】
(7)粘着フィルムの1方の表面が、キャリアの1方の表面の外縁部領域及び内側の領域に接着固定されており、少なくともその領域に対応する、粘着フィルムのもう1方の表面が非粘着性の加工を施されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のウェーハ保持ジグ。
【0024】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから容易に剥離することができる。
【0025】
(8)キャリアと粘着フィルムの接着固定界面に、接着剤のない外気流通路を周期的に設けたことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のウェーハ保持ジグ。
【0026】
本構成によれば、ウェーハを粘着フィルムから容易に剥離することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、薄化ウェーハを接着剤を使用せずに簡単に保持して、その保持した状態でWafer to Wafer装置で薄化ウェーハの貼り合せを行うことができ、さらに貼り合せ後は貼り合せ薄化ウェーハを溶剤を使用せずに容易に剥離することを可能とするウェーハ保持ジグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。(b)本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグからウェーハを剥離しつつある状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。
【図3】(a)本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。(b)本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグからウェーハを剥離しつつある状態を示す断面図である。
【図4】(a)本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。(b)本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグからウェーハを剥離しつつある状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る、ウェーハ保持ジグがウェーハを保持している状態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るキャリアを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
半導体等の薄化ウェーハの積層は、ウェーハとウェーハを貼り舎わせるいわゆるWafer to Waferの手法、装置を用いて、ウェーハとウェーハを各種の接合方法により貼り合せることが可能である。
【0030】
接合方法には、以下の代表的な方法がある。
(イ)ウェーハ直接接合:表面洗浄・表面処理→貼り合せ→熱処理、
(ロ)表面活性化常温接合:イオンビームやプラズマなどによる表面汚染物除去→貼り合せ、
(ハ)樹脂接合:ベンゾシクロブテン(BCB)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂等を用いて接合する方法、
等である。厚いウェーハの場合は特に問題なく各種装置のウェーハ保持部位にウェーハを保持させて、各種接合を行なえばよいが、厚さが薄い場合は、それ単体でのハンドリングが難しく、各種接合装置への投入が難しいため、次のようなキャリアを用いてウェーハを装置に投入している。
【0031】
キャリアは、熱可塑性樹脂シート、ウェーハ又はガラスを用いて、その上に、後で不用になったときに溶剤等で溶かして剥離できるような接着剤をスピンコートし、加熱、仮硬化、もしくは、硬化させた状態でウェーハをキャリアに貼り合せ、バックグラインド等でウェーハを薄化した後、ウェーハ接合装置に導入するなどしてウェーハの接合を行なっている。この際、貼り合せる面によっては、一度キャリアの接着剤を溶剤等で溶かし、薄化したウェーハをキャリアから剥離した後、改めて何らかのキャリアに載せ換えてからウェーハ接合装置に投入する。
【0032】
しかし、この時に容易にウェーハを保持でき、また、剥離できる装置がなく、結局、ウェーハを改めてキャリアに接着剤等をスピンコートして載せ換えることを行なっており、生産性やコストの面で大きな問題となっている。
【0033】
本発明は、Wafer to Wafer 装置で、仮に50μm程度に薄化したウェーハであっても、接着剤を使用せずに簡単に保持でき、その状態でウェーハ接合を行なうことができ、さらに、接合後は、溶剤等を使用せずに、容易に剥離することが可能な、ウェーハ保持ジグを提供することを課題とする。すなわち、これまでのガラスやウェーハをキャリアとしたジグとほぼ同形状であるが、接着剤を使用せず、したがって、剥離の際に溶剤等を使用する必要がないウェーハ保持ジグを提供することを課題としている。
【0034】
本発明のウェーハ保持ジグの技術的なポイントは、
[1] 装置適合性:ジグサイズはウェーハとほぼ同サイズ、同形状であること、
[2] ウェーハ保持性:ウェーハを下向きにしても、ウェーハが外れて落下することが無い程度の密着性を有すること、
[3] ウェーハ固定性:ジグに貼られたウェーハの位置がずれないこと、
[4] 耐熱性:ウェーハ接合時の温度耐性(常温から250℃くらい)を有すること、
[5] 耐圧性:ウェーハ接合時の耐圧力性(5〜10N/cmくらい)を有すること、
[6] 載置性:容易にウェーハを載せることができること、
[7] 剥離性:容易にウェーハとジグを分離することができること、
等を満足することである。このウェーハ保持ジグは、貼り合せる相手側のウェーハと加圧、場合によっては加熱も行うことで接合する、いわゆるウェーハ接合プロセスに耐え得ることが必要であり、これらの加熱加圧耐性に加えて、ウェーハの密着保持性と剥離容易性との両立が重要である。
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0036】
図1(a)、(b)は、本発明の実施形態に係るウェーハ保持ジグの一実施例を示す断面図である。
【0037】
図1(a)に示したように、キャリア20の上面の外縁部領域に接着剤40が塗布され、粘着フィルム30がこの外縁部領域でキャリア20に接着固定されている。外縁部領域に囲まれた内側の領域においては、キャリア20と粘着フィルム30は、粘着フィルム30の粘着性によって粘着した状態にある。粘着フィルム30の上面には、粘着フィルム30の粘着性によってウェーハ60が粘着されている。ここで、キャリア20と粘着フィルム30を接着剤40で接着固定した組立物がウェーハ保持ジグ10を形成している。
【0038】
キャリア20と粘着フィルム30は、円形、楕円形、矩形等の表面形状で構成することがでる。キャリア20と粘着フィルム30の形状、寸法は同様で、重ねて接着剤40で接着固定される。ウェーハ60は、キャリア20及び粘着フィルム30と同様の表面形状で、同等かやや小さい寸法を有し、粘着フィルム30の上面の面内に収まるように載置される。
【0039】
キャリア20は、熱可塑性樹脂シート、シリコンウェーハ等のウェーハ、ガラス基板等から構成することができる。
【0040】
キャリア20に用いる熱可塑性樹脂シートは、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂から構成することができる。
【0041】
粘着フィルム30は、ポリオレフィン系エラストマーやウレタンゴム等、それ自身が粘着性を示すものであってもよいし、それ自身は粘着性を示さないフィルム上にアクリル系などの粘着剤を塗布積層した形態であってもよい。また、これらのフィルムは、柔らかく、伸びがある方が、ウェーハを剥がすときに剥がれやすいので好ましい。逆に、伸びが少ないものは、ウェーハが剥がれ難い場合があるので好ましくない。
【0042】
また、はんだ接合の場合などでは、概ね250℃程度まで加熱する必要があり、この場合には、シリコーン系やフッ素系のゴムやエラストマーフィルムを用いることで、高温下においてもウェーハを保持することが可能である。
【0043】
これらのフィルムは、単層でも、複層でも良く、必要な物性や耐熱性、表面の粘着性、裏面の非密着性を適当なものとするために、各種の処理を行うことも可能である。例えば、化学エッチングやガスによるエッチングなどを用いて、レジスト印刷などとの組合せにより、粘着面の任意な場所を粘着、非粘着にすることもできる。
【0044】
接着剤40はアクリル系やウレタン系、エボキシ系などの他、シリコーンゴムやスチレンゴムなどのゴム系のものなどが代表例として挙げられる。特に250℃程度を必要とするハンダパンプによる接合などでは、ハンダの溶融温度まで均一に加熱することが必要であり、その場合には、シリコーン系やフッ素系、エポキシ系などの耐熱接着剤を用いるとよい。接着剤40の代りに、粘着性の強固な粘着剤を用いることもできる。
【0045】
半導体等のウェーハ60は、図1(a)に示したように、ウェーハ保持ジグ10の粘着フィルム30に粘着した状態で、上面をグラインダで研削することにより、50μm以下の厚さに薄化することができ、そのままウェーハ保持ジグ10ごとWafer to Wafer装置に搬送してウェーハどうしの貼り合せを行うことができる。
【0046】
ウェーハ保持ジグ10の形状、寸法は、半導体等のウェーハ60の形状、寸法と略同一またはウェーハ60の寸法よりも大きいことが好ましい。ウェーハ保持ジグ10が半導体ウェーハの規格サイズの最大径(例えばφ300mm)に対応できる外径を有していれば、それより小さい全ての半導体ウェーハに対して適用することができる。また、ウェーハ保持ジグ10の厚さは、0.5〜2.0mmが好ましく、0.5〜0.8mmがより好ましい。ウェーハ保持ジグ10の厚さが上記範囲にあれば、ウェーハ60の研削の後にも薄化されたウェーハ60を湾曲させずに十分に支持することができる。
【0047】
薄化されたウェーハ60は、ウェーハ保持ジグ10の粘着フィルム30に粘着した状態で、ダイシング等の公知の方法でチップに分割されていてもよい。
【0048】
図1(b)に示したように、ウェーハ60を面に垂直に上方(白抜き矢印方向)に剥離する場合、ウェーハ60の粘着フィルム30への粘着部は、図の矢印の方向に、徐々に巾が狭くなり、容易に剥離することができる。ここで、粘着フィルム30の外縁部領域は、接着剤40によって、キャリア20に接着固定されたままである。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施形態に係る実施例について説明する。
【0050】
(実施例1)
図1(a)に示した構成で、直径φ202mmの円形にカットした厚さ0.7mmのポリカーボネートシートからなるキャリア20の外縁部領域に全周にわたって、変性シリコーン系接着剤からなる接着剤40を塗布した。これに、厚さ100μmのエチレンメチルメタクリレート樹脂フィルム(アクリフトWH303、住友化学社製商品名)からなる粘着フィルム30を接着固定し、直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ10を作製した。このウェーハ保持ジグ10に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ60を同心円状に載置して、粘着フィルム30に粘着させた。これを、ウェーハ研削装置(DFG−840、ディスコ社製商品名)の処理テーブルに支持固定し、ウェーハの厚さが50μmとなるまで研削を行って薄化した。
【0051】
図1(b)に示したように、厚さ50μmに薄化したウェーハ60を白抜き矢印方向に面に垂直に引き上げると、ウェーハ60の粘着フィルム30への粘着部は、図の矢印の方向に、徐々に巾が狭くなり、ウェーハ60はウェーハ保持ジグ10から容易に剥離することができた。
【0052】
(実施例2)
図2に示したように、直径φ202mmの円形にカットした厚さ0.7mmのポリカーボネートシートからなるキャリア21の外縁部領域に全周にわたって、変性シリコーン系接着剤からなる接着剤41を塗布した。これに、厚さ100μmのエチレンメチルメタクリレート樹脂フィルム(アクリフトWH303、住友化学社製商品名)からなる粘着フィルム31を弾性変形領域内において、使用温度領域における線膨張分より大きく予め延伸した状態で接着固定し、直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ11を作製した。このウェーハ保持ジグ10に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ61を、実施例1と同様にして、粘着フィルム31に粘着させ、シリコンのウェーハ61を厚さ50μmまで薄化した。粘着フィルム31は、延伸されているため、接着剤41を塗布したキャリア21の外縁部領域の内側においては、キャリア21と粘着していない。使用温度領域の高温下で粘着フィルム31が伸びた場合においても、ウェーハ61貼り付け領域において粘着フィルム31がたるむことがないため、そこに貼り付けられたウェーハ61の位置がずれることがない。
【0053】
厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハ61のウェーハ保持ジグ10からの剥離は、実施例1と同様に容易に行うことができた。
【0054】
(実施例3)
図3(a)に示したように、直径φ202mmの円形にカットした厚さ0.7mmのポリカーボネートシートからなるキャリア22の外縁部領域に全周にわたって、変性シリコーン系接着剤からなる接着剤42を塗布した。これに、厚さ100μmのエチレンメチルメタクリレート樹脂フィルム(アクリフトWH303、住友化学社製商品名)からなる粘着フィルム32を接着固定し、直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ12を作製した。複数のスペーサ52を配置して、キャリア22の上側面から粘着フィルム32の下側面までの高さが、接着剤42の厚さより大きくなるようにした。このウェーハ保持ジグ12に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ62を、実施例1と同様にして、粘着フィルム32に粘着させ、シリコンのウェーハ62を厚さ50μmまで薄化した。
【0055】
図3(b)に示したように、実施例3の構成では粘着フィルム33の下面がキャリア23の上面と密着するのを防止できるため、厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハ62のウェーハ保持ジグ12からの剥離は、容易に行うことができた。
【0056】
(実施例4)
図4(a)に示したように、直径φ202mmの円形にカットした厚さ0.7mmのポリカーボネートシートからなるキャリア23の外縁部領域に全周にわたって、変性シリコーン系接着剤からなる接着剤43を塗布した。これに、厚さ100μmのエチレンメチルメタクリレート樹脂フィルム(アクリフトWH303、住友化学社製商品名)からなる粘着フィルム33を接着固定し、直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ13を作製した。図の、粘着フィルム33の下側面、及び/又はキャリア23の上側面には、エンボス加工、マット加工、ヘアライン加工等の非粘着加工部53を設けた。このウェーハ保持ジグ13に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ63を、実施例1と同様にして、粘着フィルム33に粘着させ、シリコンのウェーハ63を厚さ50μmまで薄化した。
【0057】
図4(b)に示したように、実施例4の構成では粘着フィルム33の下面がキャリア23の上面と密着するのを防止できるため、厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハ63のウェーハ保持ジグ13からの剥離は、容易に行うことができた。
【0058】
(実施例5)
図5に示したように、実施例1〜4のいずれかと同様の材料、構成において、粘着フィルム34に厚さ方向に貫通する孔又は切れ目からなる外気流通路341a、341bを設け、及び/又はキャリア24に厚さ方向に貫通する孔からなる外気流通路241a、241bを設け、及び/又は前記粘着フィルムを接着固定する前記キャリアの外縁部領域に外気流通路となる非接着部(図示せず)を設けた直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ14を作製した。このウェーハ保持ジグ14に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ64を、実施例1と同様にして、粘着フィルム34に粘着させ、シリコンのウェーハ64を厚さ50μmまで薄化した。
【0059】
厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハ64のウェーハ保持ジグ14からの剥離は、粘着フィルム34とキャリア24の間に外気の流入するので、界面が真空になることがないため、容易に行うことができた。
【0060】
(実施例6)
図6に示したように、実施例1〜5のいずれかと同様の材料、構成において、粘着フィルム35が接着剤45によりキャリア25に接着固定されている外縁部領域に対応する上面側に、エンボス加工、マット加工、ヘアライン加工等による非粘着加工部352a、352bを設けた直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ15を作製した。このウェーハ保持ジグ15に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ65を、実施例1と同様にして、粘着フィルム35に粘着させ、シリコンのウェーハ65を厚さ50μmまで薄化した。非粘着加工部352a、352bにおける粘着性は、キャリア保持ジグ15、又はウェーハ65の自重で剥がれる程度とした。
【0061】
厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハ65のウェーハ保持ジグ15からの剥離は、容易に行うことができた。
【0062】
(実施例7)
図7に示したように、実施例1〜6のいずれかと同様の材料、構成において、キャリア26の下面から粘着フィルム36の上面までの厚さが同じになるように、キャリア26と粘着フィルム36の間にスペーサ56a、56bを周期的に配置した。キャリア26と粘着フィルム36の間の、スペーサ56a、56bの間の領域に接着剤46a、46bを塗布し、キャリア26と粘着フィルム36を全面にわたって周期的に接着固定した。さらに図の粘着フィルム36の上面には、エンボス加工、マット加工、ヘアライン加工等による非粘着加工部362a、362bを設け、直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ16を作製した。このウェーハ保持ジグ16に、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハ66を、実施例1と同様にして、粘着フィルム36に粘着させ、シリコンのウェーハ66を厚さ50μmまで薄化した。
【0063】
キャリア26の下面から粘着フィルム36の上面までの厚さが同じであるため、ウェーハ接合装置で圧力をかけても、薄化されたウェーハ66がウェーハ保持ジグ16の厚さの違いにより割れたりクラックが入ったりすることはなかった。
【0064】
厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハ66のウェーハ保持ジグ16からの剥離は、容易に行うことができた。
【0065】
(実施例8)
図8は、実施例8に係るウェーハ保持ジグ(図示せず)のキャリア27を示す上面図である。直径φ202mmの円形にカットした厚さ0.7mmのポリカーボネートシートからなるキャリア27の1方の表面の全面にわたって、変性シリコーン系接着剤からなる接着剤を、図のように格子状に配置した外気流通路272を除く部分に塗布して接着部271を形成した。このキャリア27を用いて、実施例1〜7のいずれかと同様の材料構成で、直径φ202mmの円形のウェーハ保持ジグ(図示せず)を作製した。このウェーハ保持ジグに、直径φ200mm、厚さ750μmのシリコンのウェーハを、実施例1と同様にして、粘着フィルムに粘着させ、シリコンのウェーハを厚さ50μmまで薄化した。
【0066】
ウェーハを引き剥がす際に、接着剤の塗布されない外気流通部272を設けることにより、粘着フィルムとキヤリアの界面が真空となって剥がれ難くなることが防止されたため、厚さ50μmに薄化したシリコンのウェーハのウェーハ保持ジグからの剥離は、容易に行うことができた。
【0067】
以上の実施形態で説明したように、本発明のウェーハ保持ジグは、粘着フィルム自体の粘着性を利用したものであり、ウェーハ保持のための接着剤は使用しない。従って、ウェーハ表面のパターン内部まで接着剤が入り込むようなことなくウェーハを密着保持することが可能である。さらに、本発明のウェーハ保持ジグのサイズはウェーハとほぼ等しくすることができるため、Wafer to Wafer装置を改造することなくウェーハをウェーハ保持ジグに保持したまま投入することが可能である。さらに、本発明のウェーハ保持ジグを用いれば、Wafer to Wafer装置によるウェーハ貼り合せ後、ウェーハ保持ジグをウェーハからほぼ垂直に引き剥がすことで、容易にウェーハとウェーハ保持ジグを分離することが可能であるため、接着剤を除去するための溶剤やレーザ光といった特別な手段が不要となり、大きな装置コストを必要とせず、しかも、生産性良く、ウェーハの貼り合せが可能となる。
【0068】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが、当業者には明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
10、11、12、13、14、15、16 ウェーハ保持ジグ
20、21、22、23、24、25、26、27 キャリア
30、31、32、33、34、35、36 粘着フィルム
40、41、42、43、44、45 接着剤
46a、46b 接着剤
52 スペーサ
53、54、55 非粘着加工部
56a、56b スペーサ
60、61、62、63、64、65、66 ウェーハ
241a、241b、251a、251b 外気流通路
271 接着部
272 外気流通路
341a、341b、351a、351b 外気流通路
352a、352b 非粘着加工部
362a、362b 非粘着加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シート、キャリアウェーハ又はガラス基板からなるキャリアと、
粘着フィルムと、
を備え、
前記キャリアの1方の表面の少なくとも外縁部領域に、前記粘着フィルムの1方の表面を接着固定し、前記粘着フィルムのもう1方の表面の面内に、前記粘着フィルムの面内に収まる寸法の面を有するウェーハの1方の面を貼り付けて保持することを特徴とするウェーハ保持ジグ。
【請求項2】
前記粘着フィルムを、弾性変形領域内において、使用温度領域における線膨張分より大きく予め延伸して、前記キャリアに接着固定することを特徴とする請求項1に記載のウェーハ保持ジグ。
【請求項3】
前記ウェーハを貼り付けた前記粘着フィルム表面に対向する、前記粘着フィルムのもう1方の表面の、前記キャリア表面からの高さが、前記粘着フィルムを接着固定するための接着剤の厚さより大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハ保持ジグ。
【請求項4】
前記キャリアの表面に接着固定する前記粘着フィルムの表面の、前記粘着フィルムのもう1方の表面のウェーハ貼り付け領域に対応する領域、及び/又は前記粘着フィルムを接着固定する前記キャリアの表面の、前記粘着フィルム表面のウェーハ貼り付け領域に対応する領域に、エンボス加工、マット加工又はヘアライン加工を施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェーハ保持ジグ。
【請求項5】
前記粘着フィルムに外気流通路となる厚さ方向に貫通する孔もしくは切れ目を設け、及び/又は前記キャリアに外気流通路となる厚さ方向に貫通する孔を設け、及び/又は前記粘着フィルムを接着固定する前記キャリアの表面の外縁部領域に外気流通路となる非接着部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェーハ保持ジグ。
【請求項6】
前記粘着フィルムの表面の前記キャリアの外縁部に接着固定されている領域に対応する、前記粘着フィルムのもう1方の表面の領域が、非粘着性の加工を施されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のウェーハ保持ジグ。
【請求項7】
前記粘着フィルムの1方の表面が、前記キャリアの1方の表面の外縁部領域及び内側の領域に接着固定されており、少なくとも当該領域に対応する、前記粘着フィルムのもう1方の表面が非粘着性の加工を施されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のウェーハ保持ジグ。
【請求項8】
前記キャリアと前記粘着フィルムの接着固定界面に、接着剤のない外気流通路を周期的に設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のウェーハ保持ジグ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−256666(P2012−256666A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127985(P2011−127985)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】