説明

ウェーハ洗浄装置

【課題】超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することが可能なウェーハ洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄液2で満たされた洗浄槽11と、洗浄槽11内でウェーハ1を揺動可能に保持する受け台12と、ウェーハ1を保持して上下方向に移動させるウェーハチャック13とを備えている。ウェーハ1の回転動作時には、受け台12の揺動角度が−θ度の位置でウェーハ1が受け台12から浮いた状態となるようにウェーハチャック13でウェーハ1を持ち上げる。次に、受け台12だけを回動させて+θの角度まで傾けた後、ウェーハチャック13を開放してウェーハ1を再び受け台12に載せることによって、ウェーハ1を周方向に回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ洗浄装置に関し、特に、ウェーハの洗浄ムラを防止する機構を備えたウェーハ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられるシリコンウェーハは、シリコンインゴットからスライスされた略円盤状のウェーハ基材に、面取り、研磨、エッチング等の加工が施されて製品とされる。これらの加工工程では、ウェーハ加工時に研磨粉等のパーティクルが発生し、ウェーハに付着してしまうので、加工後にはウェーハ洗浄装置を用いてウェーハを洗浄する必要がある。
【0003】
一般的なバッチ式のウェーハ洗浄装置では、洗浄液で満たされた洗浄槽内に複数枚のウェーハを一定時間浸漬すると共に、洗浄槽内の超音波発生器から超音波を発生させてウェーハの表面を洗浄する。その際、ウェーハの表面をムラなく均一に洗浄することが重要である。しかし、洗浄槽内でウェーハを静止させたままでは、超音波の影となる部分の洗浄が不十分となり、ウェーハを均一に洗浄することができない。そのため、洗浄槽内のウェーハを保持する受け台を揺動させることにより、超音波の影の部分を少なくして、ウェーハの表面を均一に洗浄する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、洗浄槽内でウェーハを保持する部分が超音波の影となり、ウェーハを均一に超音波洗浄できないという問題を解決するため、ウェーハ洗浄中に第1リフト部材と第2リフト部材とを所定の順序で昇降させることにより、ウェーハを周方向に回転させる方法も提案されている(特許文献2参照)。また、底部に超音波発生器が設けられた洗浄槽内でウェーハを洗浄すると共に、上下移動可能なウェーハチャックとリフター式のウェーハガイドとを備え、ウェーハ洗浄中にウェーハチャックとウェーハガイドとでウェーハを交互に持ち替えることにより、超音波の影となる部分を最小限に抑える方法も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−328572号公報
【特許文献2】特開平11−87299号公報
【特許文献3】特開2006−324495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された従来の洗浄方法は、第1及び第2のリフト部材の傾きをガイドする傾斜スリットが洗浄槽内にあるため、摺動部分からの発塵が懸念される。また、ウェーハを引き上げる際にウェーハが液面から出ないようにするためには、洗浄槽の高さを高くする必要があり、洗浄槽の容量を大きくする必要がある。
【0007】
また、特許文献3に記載された従来の洗浄方法は、超音波の影となる部分を少なくすることはできるが、超音波発振源からの距離に起因する超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流によるウェーハ面内の洗浄ムラに対しては効果がない。近年、ウェーハサイズの主流が大口径化してきており、大口径のウェーハサイズになると、洗浄槽の底部から上方に向かって超音波を発生させたときにウェーハの上端部での超音波強度の減衰が著しいことから、その対策が強く求められている。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することが可能なウェーハ洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるウェーハ洗浄装置は、第1の洗浄槽と、前記第1の洗浄槽内でウェーハを揺動可能に保持する第1の受け台と、前記第1の受け台を揺動させる第1の揺動機構と、前記第1の洗浄槽内に超音波を供給する第1の超音波発生器と、前記第1の洗浄槽内の前記ウェーハを保持して昇降させるウェーハ保持機構とを備え、前記ウェーハ保持機構は、前記第1の受け台の揺動角度が第1の角度であるときに前記第1の受け台上の前記ウェーハを持ち上げ、前記第1の角度とは異なる第2の角度であるときに前記ウェーハを前記第1の受け台上に再び載置することによって、前記第1の受け台上の前記ウェーハを周方向に回転させることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、受け台とウェーハ保持機構との協働によってウェーハを周方向に回転させ、受け台上のウェーハの搭載角度を変更するので、超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することができる。また、ウェーハ保持機構は、ウェーハの洗浄槽内へのセットや取り出しの際にウェーハを保持して昇降させるものであるため、ウェーハを回転させるための専用の機構を必要とせず、効率的なシステムを実現することができる。
【0011】
本発明において、前記ウェーハ保持機構は、基準位置から見た前記第1の受け台の揺動角度が−θであるときに前記第1の受け台上の前記ウェーハを持ち上げ、前記基準位置から見た前記第1の受け台の揺動角度が+θであるときに前記ウェーハを前記第1の受け台上に再び載置することによって、前記第1の受け台上の前記ウェーハを周方向に2θ回転させることが好ましい。ここにいう基準位置とは、第1の受け台が揺動していないときの位置を意味し、このときの揺動角度は0°である。
【0012】
本発明において、前記ウェーハ保持機構は、前記第1の受け台上の前記ウェーハの持ち上げ動作と前記第1の受け台への前記ウェーハの載置動作とを交互に繰り返し、前記ウェーハを周方向に連続的に回転させることが好ましい。この構成によれば、受け台の揺動角度に制約されることなく、ウェーハを任意の角度に回転させることができ、ウェーハを180°回転させることも容易である。
【0013】
本発明によるウェーハ洗浄装置は、第2の洗浄槽をさらに備え、前記ウェーハ保持機構は、前記第1及び第2の洗浄槽の一方から他方への前記ウェーハの移動を行うことが好ましい。複数の洗浄槽に対して共通に使用されるウェーハ保持機構をウェーハの回転動作に用いることにより、複数の洗浄槽の各々に対して専用のウェーハ回転機構を用意する必要がない。したがって、効率的なシステムを実現することができる。
【0014】
本発明によるウェーハ洗浄装置は、前記第2の洗浄槽内でウェーハを揺動可能に保持する第2の受け台と、前記第2の受け台を揺動させる第2の揺動機構と、前記第2の洗浄槽内に超音波を供給する第2の超音波発生器とをさらに備え、前記ウェーハ保持機構は、前記第2の洗浄槽内の前記ウェーハを保持して昇降させると共に、前記第2の受け台の揺動角度が第3の角度であるときに前記第2の受け台上の前記ウェーハを持ち上げ、前記第3の角度とは異なる第4の角度であるときに前記ウェーハを前記第2の受け台上に再び載置することによって、前記第2の受け台上の前記ウェーハを周方向に回転させることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、第2の洗浄槽内でのウェーハの向きを第1の洗浄槽内でのウェーハの向きと異ならせることができるので、超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することができる。さらに、例えば第1及び第2の洗浄槽の順にウェーハを処理し、第2の洗浄槽からウェーハを取り出す際に、ウェーハを周方向に回転させることにより、第1の洗浄槽内に第1のウェーハをセットしたときと同じ向き、すなわちウェーハを回転させる前の向きでウェーハを取り出すことができる。
【0016】
本発明において、前記ウェーハ保持機構は、前記第1の受け台と協働して前記第1の洗浄槽内のウェーハを周方向に所定の角度回転させた後、前記第2の洗浄槽に移動させることが好ましい。また、前記ウェーハ保持機構は、前記第1の洗浄槽内のウェーハを前記第2の洗浄槽に移動させた後、前記第2の受け台と協働して第2の洗浄槽内のウェーハを周方向に所定の角度回転させることが好ましい。どちらの場合であっても、第2の洗浄槽内でのウェーハの向きを第1の洗浄槽内でのウェーハの向きと異ならせることができるので、超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することが可能なウェーハ洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるウェーハ洗浄装置の構成を示す略側面断面図である。
【図2】図1のウェーハ洗浄装置の略上面図である。
【図3】搬送ロボット21の構成を示す略側面図である。
【図4】ウェーハ洗浄装置によるウェーハ回転動作を説明するための模式図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるウェーハ洗浄装置の構成を示す略上面図である。
【図6】第2の実施の形態におけるウェーハ洗浄動作の一例を説明するための模式図であって、(a)は第1の洗浄槽11A、(b)は第2の洗浄槽11Bをそれぞれ示している。
【図7】第2の実施形態におけるウェーハ洗浄動作の他の例を説明するための模式図であって、(a)〜(f)は第1の洗浄槽11A、(g)〜(l)は第2の洗浄槽11Bをそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるウェーハ洗浄装置の構成を示す略側面断面図である。また、図2は、図1のウェーハ洗浄装置の略上面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、ウェーハ洗浄装置10は、複数枚のウェーハ1を一括洗浄処理するバッチ式の装置であって、洗浄液2を貯液する洗浄槽11と、複数枚のウェーハ1を保持する受け台12と、受け台12上の複数枚のウェーハ1を持ち上げるウェーハチャック13と、洗浄槽11の下方に設けられた超音波発生器14を備えている。
【0022】
洗浄槽11は、複数枚のウェーハ1を収容可能な容器であり、上方にはウェーハ1の出入口としての開口11aが設けられている。また、洗浄槽11の外側には洗浄液回収槽15が設けられている。洗浄槽11にはその底部に設けられた洗浄液供給口11bから常に一定量の洗浄液2が供給されているので、洗浄槽11は常に洗浄液2で満たされ、さらに外側に溢れ出している。オーバーフローした洗浄液2は洗浄液回収槽15によって回収され、ポンプ16及びフィルター17を通ることによってパーティクルが除去された後、洗浄槽11に再び戻される。このように、洗浄液2は洗浄液処理システムによって循環処理され、洗浄槽11内の洗浄液2は常に対流している。特に限定されるものではないが、洗浄液としてはAPM(アンモニア過酸化水素水)、超純水等を用いることができる。
【0023】
受け台12は、洗浄槽11内の底部近くに配置されており、垂直状態のウェーハ1の下端部の3点P1,P2,P3を支持している。受け台12上の複数枚のウェーハ1は等間隔の隙間をあけて整列して配置される。受け台12は上下方向に延びる支持棒18の下端部に固定されており、受け台12の上方に位置する揺動軸18aを中心として矢印D1方向に揺動可能に構成されている。また、支持棒18の上端部が矢印D2で示す水平方向に揺動され、これに対応して受け台12が揺動するように構成されている。換言すれば、支持棒18の揺動軸18aの位置が支点、支持棒18の上端部が力点、支持棒18の下端部が作用点となり、支持棒18の下端部に設けられた受け台12は、支持棒18の力点に付与される周期的な駆動力に連動して角度2θの振り子運動を行う。
【0024】
ウェーハチャック13はウェーハ1を搬送する搬送ロボットの一部を構成するウェーハ保持機構であり、2本のアーム13a,13bによってウェーハ1の左右の端面を挟持して昇降させる装置である。
【0025】
図3は、搬送ロボット21の構成を示す略側面図である。
【0026】
図3に示すように、搬送ロボット21は、アーム13a,13bを含むウェーハチャック13と、ウェーハチャック13を支持する支持部材22と、支持部材22と共にウェーハチャック13を昇降させるウェーハチャック昇降機構23と、ガイドレール24に沿ってウェーハチャック13を移動させる移動機構25とを備えている。搬送ロボット21によるウェーハ1の昇降動作は、洗浄前のウェーハ1を洗浄槽11内にセットする場合及び洗浄後のウェーハ1を洗浄槽11から取り出す場合に実施される。また、搬送ロボット21はウェーハ1を受け台12から持ち上げて洗浄槽11内で回転させる際にも用いられる。
【0027】
次に、ウェーハ洗浄装置10による洗浄動作について説明する。
【0028】
図1に示すように、通常のウェーハ洗浄動作では、ウェーハチャック13を用いて複数枚のウェーハ1を挟持し、洗浄液2で満たされた洗浄槽11内にウェーハ1を沈めて受け台12上に載置し、洗浄液2に浸漬する。その後、ウェーハチャック13を洗浄槽11の上方に待避させ、受け台12を所定の周期で左右に揺動させると共に、超音波発生器14から超音波を発生させてウェーハ表面を超音波洗浄する。
【0029】
超音波発生器14からの超音波は洗浄槽11の上方に向かって進行すると共に徐々に減衰するので、ウェーハ1の上端部では超音波洗浄の効果が十分ではない。また、ウェーハ1の下端部の3点P1,P2,P3が受け台12に接触しているので、ウェーハ1と受け台12とが重なった部分は超音波の影となり、洗浄ムラが発生し、ウェーハ1を均一に洗浄できない。そのため、搬送ロボット21のウェーハチャック13と受け台12との協働によってウェーハ1を周方向に回転させて、ウェーハ1の搭載角度を変更し、ウェーハ面内の均一な洗浄を実施する必要がある。
【0030】
図4(a)〜(d)は、ウェーハ洗浄装置によるウェーハ回転動作を説明するための模式図である。
【0031】
ウェーハ1の角度を変更する場合、まず図4(a)に示すように、受け台12が−15°傾いた状態にする。なお、受け台12の揺動角度は、支持棒18が垂直状態であり、受け台12が最も低い位置にあるときを基準とする。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、ウェーハ1をウェーハチャック13で持ち上げて受け台12から浮かせる。このとき、洗浄ムラを防止するため、ウェーハ1の上端部が洗浄液2の液面から露出しないことが好ましい。具体的には、受け台12から高さ1〜5cmの範囲内で持ち上げればよい。
【0033】
次に、図4(c)に示すように、ウェーハ1が載っていない受け台12を−15°の位置から+15°の位置まで回動させる。さらに、図4(d)に示すように、ウェーハチャック13を降下させてウェーハ1を受け台12に載置し、ウェーハチャック13を開放する。このとき、受け台12上のウェーハ1は、図4(a)のウェーハ1に比べて30°回転した状態になる。ウェーハ1が受け台12と接触する部分は、図4(a)において受け台12と接触していた部分と異なるので、受け台12によって超音波の影となる部分を変更することができる。
【0034】
以上により、受け台12上でのウェーハ1の搭載角度を30°回転させることができる。ウェーハ1をさらに回転させたい場合には、上記(a)〜(d)の動作を繰り返えせばよく、例えばウェーハを180°回転させたい場合には上記動作を6回繰り返せばよい。なお、ウェーハ1の回転角度を±15度としているが、ウェーハ1の回転角度は任意である。また、ウェーハ1の回転方向は図示の時計回りに限定されず、反時計回りであってもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるウェーハ洗浄装置10は、受け台12とウェーハチャック13との協働によってウェーハ1を周方向に回転させ、受け台12上のウェーハ1の搭載角度を変更するので、超音波の減衰や洗浄槽内での不均一な液流の影響を受けることなくウェーハ面内をムラ無く均一に洗浄することができる。また、ウェーハチャック13は、ウェーハ1の洗浄槽11内へのセットや取り出しの際に使用されるものであるため、ウェーハを回転させるための専用の機構を必要とせず、効率的なシステムを実現することができる。
【0036】
次に、複数の洗浄槽を用いた第2の実施形態について説明する。ウェーハチャック13は通常の洗浄動作中には使用されず、ウェーハ1の回転時に使用されるだけである。そのため、複数の洗浄槽を用いた構成においては、一台の搬送ロボット21のウェーハチャック13が各洗浄槽に対して共通に使用される。
【0037】
図5は、本発明の第2の実施の形態によるウェーハ洗浄装置の構成を示す略上面図である。
【0038】
図5に示すように、このウェーハ洗浄装置20は、2つの洗浄槽を並べて順番にウェーハの洗浄を行うものであり、2つの洗浄槽11A,11Bと、洗浄槽11A,11B内にそれぞれ設けられた2つの受け台12A,12Bと、各洗浄槽11A,11Bに対して共通に使用される一台の搬送ロボット21とを備えている。洗浄槽11A,11B内の受け台12A,12Bは揺動可能に構成されており、洗浄槽11A,11Bの底部には超音波発生器(不図示)が設けられている。上記のように、搬送ロボット21はウェーハチャック13を備えており、ガイドレール24に沿って各洗浄槽11A,11B間を移動可能に構成されている。
【0039】
ウェーハ1は搬送ロボット21によってローディングされ、第1の洗浄槽11A,第2の洗浄槽11Bの順に処理される。搬送ロボット21は、洗浄槽11Aと洗浄槽11Bとの間を移動してウェーハ1の装入及び取り出しを行う。搬送ロボット21は、通常の洗浄動作中は使用されず待機状態にあるため、複数の洗浄槽で共用した場合には搬送ロボット21の稼働率を高めることができ、効率的なシステムを実現することができる。さらに本実施形態においては、このような待機状態にある搬送ロボット21を有効利用して、ウェーハの回転動作を行うことにより、回転専用の装置を不要とし、さらに効率的なシステムを実現することができる。
【0040】
図6は、第2の実施形態におけるウェーハ洗浄動作の一例を説明するための模式図であって、(a)は第1の洗浄槽11A、(b)は第2の洗浄槽11Bをそれぞれ示している。
【0041】
図6(a)に示すように、第1の洗浄槽11Aではウェーハ1のオリエンテーションフラット1aが上向きの状態で受け台12にセットして洗浄する。このとき、洗浄槽11Aの底部に設けられた超音波発生器14から超音波を発生させるが、超音波の減衰によってウェーハ上端部の超音波洗浄は不十分となり、上下方向にムラのある洗浄となる。そのため、第1の洗浄槽11A内でウェーハ1を180°回転させた後、ウェーハ1を取り出して第2の洗浄槽11Bに移動させる。或いは、ウェーハを第1の洗浄槽11Aから第2の洗浄槽11Bに移動させた後、第2の洗浄槽11B内でウェーハを180°回転させてもよい。ウェーハ1を回転させる動作は図4で説明した通りであり、一回につき30°の回転動作を6回繰り返せばよい。
【0042】
そして、図6(b)に示すように、第2の洗浄槽11Bではウェーハ1のオリエンテーションフラット1aが下向きの状態でセットして洗浄する。これにより、第1の洗浄槽11Aの受け台12と接触して超音波の影となっていた部分が変更されると共に、第1の洗浄槽11Aでは弱かった部分の超音波が強く、強かった部分の超音波が弱くなるので、全体として面内均一な超音波洗浄を実施することができる。その後、第2の洗浄槽11B内でウェーハ1を180°回転させ、ウェーハ1を取り出して移動させる。こうすることにより、最終的にはウェーハ1を回転させる前のオリエンテーションフラット1aが上向きの状態で取り出すことができる。
【0043】
図7は、第2の実施形態におけるウェーハ洗浄動作の他の例を説明するための模式図であって、(a)〜(f)は第1の洗浄槽11A、(g)〜(l)は第2の洗浄槽11Bをそれぞれ示している。
【0044】
上記図6に示した洗浄処理では、洗浄槽11A,11B内でのウェーハ1の向きは0°と180°の2通りとし、洗浄処理中はウェーハ1を回転させず固定状態としたが、洗浄の途中で徐々に回転させてもよい。すなわち、第1の洗浄槽11Aでは、図7(a)〜(f)に示すように、0°の位置にあるウェーハを30°回転させる動作を定期的に6回繰り返し、前半の洗浄工程の最終までにウェーハを150°まで回転させる。ウェーハを回転させる動作は図4で説明した通りである。次に、このウェーハ1を第2の洗浄槽11Bに移し、後半の洗浄工程を行う。第2の洗浄槽11Bでは、図7(g)〜(l)に示すように、180°の角度からウェーハ1の洗浄を開始し、30°回転させる動作を定期的に6回繰り返し、後半の洗浄工程の最終までにウェーハを330°まで回転させる。その後、ウェーハ1を360°(=0°)まで回転させてから取り出す。このようにすれば、ウェーハ1の洗浄ムラをさらに少なくすることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によるウェーハ洗浄装置20は、2つの洗浄槽11A,11Bに対して共用される搬送ロボット21が備えるウェーハチャック13を用いて、ウェーハ1の回転動作を行うので、ウェーハ1を回転させるための専用の機構を必要とせず、効率的なシステムを実現することができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、ウェーハの1回の回転動作時の回転角度を±15度としているが、ウェーハの回転角度は任意である。また、ウェーハの回転動作は1回に限らず、2回以上行っても構わない。さらに、各洗浄槽で一度に処理されるウェーハの枚数は特に限定されず、1枚以上であれば何枚でもかまわない。
【0048】
また、上記実施形態においては、ウェーハを保持して昇降させるウェーハ保持機構の一例として、2本のアームによってウェーハの左右の端面を挟持するウェーハチャックを挙げたが、ウェーハ保持機構の構成は特に限定されない。
【0049】
さらに、上記第2の実施形態においては、2つの洗浄槽を用いているが、洗浄槽の数は特に限定されない。また、2つの洗浄槽内でウェーハの回転動作を行っているが、ウェーハを回転動作させる洗浄槽の数も特に限定されない。さらに、複数の洗浄槽のうちの少なくとも一つにウェーハの回転動作を行わない一般的な洗浄槽が含まれていてもかまわない。
【符号の説明】
【0050】
1 ウェーハ
1a オリエンテーションフラット
2 洗浄液
10,20 ウェーハ洗浄装置
11,11A,11B 洗浄槽
11a 洗浄槽の開口
11b 洗浄液供給口
12,12A〜12G 受け台
13 ウェーハチャック
13a,13b アーム
14 超音波発生器
15 洗浄液回収槽
16 ポンプ
17 フィルター
18 支持棒
18a 揺動軸
18b クランク
21 搬送ロボット
22 支持部材
23 ウェーハチャック昇降機構
24 ガイドレール
25 移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の洗浄槽と、
前記第1の洗浄槽内でウェーハを揺動可能に保持する第1の受け台と、
前記第1の受け台を揺動させる第1の揺動機構と、
前記第1の洗浄槽内に超音波を供給する第1の超音波発生器と、
前記第1の洗浄槽内の前記ウェーハを保持して昇降させるウェーハ保持機構とを備え、
前記ウェーハ保持機構は、前記第1の受け台の揺動角度が第1の角度であるときに前記第1の受け台上の前記ウェーハを持ち上げ、前記第1の角度とは異なる第2の角度であるときに前記ウェーハを前記第1の受け台上に再び載置することによって、前記第1の受け台上の前記ウェーハを周方向に回転させることを特徴とするウェーハ洗浄装置。
【請求項2】
前記ウェーハ保持機構は、基準位置から見た前記第1の受け台の揺動角度が−θであるときに前記第1の受け台上の前記ウェーハを持ち上げ、前記基準位置から見た前記第1の受け台の揺動角度が+θであるときに前記ウェーハを前記第1の受け台上に再び載置することによって、前記第1の受け台上の前記ウェーハを周方向に2θ回転させることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項3】
前記ウェーハ保持機構は、前記第1の受け台上の前記ウェーハの持ち上げ動作と前記第1の受け台への前記ウェーハの載置動作とを交互に繰り返し、前記ウェーハを周方向に連続的に回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項4】
第2の洗浄槽をさらに備え、
前記ウェーハ保持機構は、前記第1及び第2の洗浄槽の一方から他方への前記ウェーハの移動を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項5】
前記第2の洗浄槽内でウェーハを揺動可能に保持する第2の受け台と、
前記第2の受け台を揺動させる第2の揺動機構と、
前記第2の洗浄槽内に超音波を供給する第2の超音波発生器とをさらに備え、
前記ウェーハ保持機構は、前記第2の洗浄槽内の前記ウェーハを保持して昇降させると共に、前記第2の受け台の揺動角度が第3の角度であるときに前記第2の受け台上の前記ウェーハを持ち上げ、前記第3の角度とは異なる第4の角度であるときに前記ウェーハを前記第2の受け台上に再び載置することによって、前記第2の受け台上の前記ウェーハを周方向に回転させることを特徴とする請求項4に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項6】
前記ウェーハ保持機構は、前記第1の受け台と協働して前記第1の洗浄槽内のウェーハを周方向に所定の角度回転させた後、前記第2の洗浄槽に移動させることを特徴とする請求項5に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項7】
前記ウェーハ保持機構は、前記第1の洗浄槽内のウェーハを前記第2の洗浄槽に移動させた後、前記第2の受け台と協働して第2の洗浄槽内のウェーハを周方向に所定の角度回転させることを特徴とする請求項5に記載のウェーハ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−151320(P2012−151320A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9472(P2011−9472)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】