説明

ウエザーストリップ

【課題】圧縮成形体のスリット状開口部を容易に閉じることができるウエザーストリップを提供する。
【解決手段】二つの押出成形品10、20の端末部同士が圧縮成形体40によって一体連続状に連結され、圧縮成形体40の中空シール部43の周壁部のうち、一側壁部46に中空シール部43の内周壁面を形成する中子型を脱型するためのスリット状開口部47が形成される。スリット状開口部47は、打込工具80によって打ち込まれる連結ピン70によって閉じられ、連結ピン70は、スリット状開口部47に跨る連結柱部71と、この連結柱部71の両端に直交する方向に形成されてスリット状開口部47の両側部近傍の外側面にそれぞれ係止される係止部72、73を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はウエザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両のドア(フロントドア、リヤドア、バックドア、トランクリッド等)の周囲に装着されるウエザーストリップにおいて、コーナ部や断面形状の変化部に対応するため、少なくとも二つの押出成形品と、これら押出成形品を一体連続状に連結する圧縮成形体(コンプレッション成形、トランスファー成形等の圧縮成形によって形成される)によって構成されるものが知られている。
このようなウエザーストリップにおいて、図13〜図15に示すように、少なくとも二つの押出成形品210、220の長手方向に沿って中空シール部213、223がそれぞれ形成され、これら中空シール部213、223を連通する中空シール部243が圧縮成形体240に形成される場合、圧縮成形体240の中空シール部243の周壁部のうち、一側壁部246に中空シール部243の内周壁面を形成する中子型を脱型するためのスリット状開口部247が形成される。
そして、圧縮成形体240の中空シール部243のスリット状開口部247が過大に開くことがないように、スリット状開口部247の一部(例えば、長手方向中央部)が接着剤270によって接着されて閉じられるようになっている。
なお、長手方向に沿って中空シール部を有するウエザーストリップにおいて、そのコーナ部の中空部に軟質ゴムよりなる挿入体をインサートピンによって固定するものとしては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3107204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来のウエザーストリップにおいては、図15に示すように、圧縮成形体240のスリット状開口部247の対向壁面のうち、少なくとも一方の壁面に接着剤270を塗布し、その後、図13と図14に示すように、スリット状開口部247の両対向壁面を突合せ、この突合せ状態を保って接着剤270を硬化させて接着しなければならず、多くの手間と時間を必要としている。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、圧縮成形体のスリット状開口部を容易に閉じることができるウエザーストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るウエザーストリップは、押出成形によって長尺に形成され、かつ長手方向に沿って中空シール部を有する少なくとも二つの押出成形品の端末部同士が圧縮成形体によって一体連続状に連結され、前記圧縮成形体には、前記押出成形品の中空シール部を連通する中空シール部が圧縮成形と同時に形成され、前記圧縮成形体の中空シール部の周壁部のうち、一側壁部に中空シール部の内周壁面を形成する中子型を脱型するためのスリット状開口部が形成されたウエザーストリップであって、
前記圧縮成形体の中空シール部のスリット状開口部は、打込工具によって打ち込まれる連結ピンによって閉じられ、
前記連結ピンは、前記スリット状開口部に跨る連結柱部と、この連結柱部の両端に直交する方向に形成されて前記一側壁部の前記スリット状開口部の両側部近傍の外側面にそれぞれ係止される係止部を有していることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、圧縮成形体の中空シール部のスリット状開口部を、打込工具によって打ち込まれる連結ピンによって容易に閉じることができ、コスト低減に効果が大きい。
【0008】
請求項2に係るウエザーストリップは、請求項1に記載のウエザーストリップであって、
圧縮成形体の中空シール部の一側壁部には、連結ピンの係止部を収納する収納凹部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、圧縮成形体の収納凹部に連結ピンの係止部が収納されることで、連結ピンの係止部に、異物(作業者の衣服、作業手袋、その他物品等)が引っ掛かることを防止することができる。
【0010】
請求項3に係るウエザーストリップは、請求項2に記載のウエザーストリップであって、
収納凹部の壁部の一部には、打込工具の先端部の挿入を容易化するために除去部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、収納凹部の壁部の除去部によって、打込工具による連結ピンの打ち込み作業がより一層容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例1に係るウエザーストリップ全体を簡略化して示す説明図である。
【図2】同じく第1の押出成形品と第2の押出成形品とが第1の圧縮成形体によって連結された状態を示す斜視図である。
【図3】同じく図2のIII−III線に沿う横断面図である。
【図4】同じく第1の押出成形品と第3の押出成形品とが第2の圧縮成形体によって連結された状態を示す側面図である。
【図5】同じく第2の押出成形品と第3の押出成形品とが第3の圧縮成形体によって連結された状態を示す側面図である。
【図6】同じく第1の圧縮成形体のスリット状開口部が閉じられる前の状態を示す斜視図である。
【図7】同じく図6のVII−VII線に沿う横断面図である。
【図8】同じく圧縮成形体のスリット状開口部に対し打込工具によって連結ピンを打ち込む状態を示す説明図である。
【図9】この発明の実施例2に係るウエザーストリップの第1の押出成形品と第2の押出成形品とが第1の圧縮成形体によって連結された状態を示す斜視図である。
【図10】同じく図9のX−X線に沿う横断面図である。
【図11】この発明の他の実施例に係るウエザーストリップの第1の押出成形品と第2の押出成形品とが第1の圧縮成形体によって連結された状態を示す斜視図である。
【図12】同じく図11のXII−XII線に沿う横断面図である。
【図13】従来のウエザーストリップの第1の押出成形品と第2の押出成形品とが第1の圧縮成形体によって連結された状態を示す斜視図である。
【図14】同じく図13のXIV−XIV線に沿う横断面図である。
【図15】同じく圧縮成形体のスリット状開口部に接着剤が塗布された状態を示す横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1を図1〜図8にしたがって説明する。
図1に示すように、この実施例1に係るウエザーストリップは、車両のフロントドア(図示しない)に用いられる場合を例示するものであり、第1〜第3の押出成形品10、20、30と、第1〜第3の圧縮成形体40、50、60とを備えて構成されている。
図2〜図5に示すように、第1〜第3の押出成形品10、20、30は、軟質の発泡樹脂材、ゴム材等のエラストマー材料の押出成形によって長尺に形成されている。
また、第1〜第3の押出成形品10、20、30は、その長手方向に沿って基部11、21、31と、中空シール部13、23、33と、リップ15、25、35とをそれぞれ一体に有している。
【0015】
図2、図3及び図6に示すように、第1の圧縮成形体40は、ウエザーストリップの前側中間部を構成するために、第1の押出成形品10の端末部と第2の押出成形品20の端末部とを一体連続状に連結するものであり、加硫ゴム材のコンプレッション成形、トランスファー成形等の圧縮成形によって形成される。
すなわち、圧縮成形の成形型(図示はしないが上型、下型、中子型を備える)内に、第1の押出成形品10の端末部と第2の押出成形品20の端末部とがセットされた状態で、成形型内に加硫ゴム材が充填されることによって、第1の圧縮成形体40が形成され、これと同時に第1、第2の押出成形品10、20の端末部同士が第1の圧縮成形体40を介して一体連続状に接合される。
【0016】
図6と図7に示すように、第1の圧縮成形体40には、第1、第2の押出成形品10、20の中空シール部13、23を連通する中空シール部43が圧縮成形と同時に形成される。
また、第1の圧縮成形体40の中空シール部43の周壁部のうち、一側壁部46に中空シール部43の内周壁面を形成する中子型(図示しない)を脱型するためのスリット状開口部47が第1の圧縮成形体40の長手方向に沿って形成される。
【0017】
図2と図3に示すように、第1の圧縮成形体40の中空シール部43のスリット状開口部47は、図8に示す打込工具80によって打ち込まれる単数又は複数の連結ピン70によって閉じられる。
連結ピン70は、スリット状開口部47に跨る連結柱部71と、この連結柱部71の両端に直交する方向に形成されて中空シール部43の一側壁部46のスリット状開口部47の両側部近傍の外側面にそれぞれ係止される係止部72、73を有している。
【0018】
図2と図3に示すように、この実施例1においては、第1の圧縮成形体40の中空シール部43の一側壁部46には、連結ピン70の両係止部72、73をそれぞれ収納する収納凹部48、49が形成されている。
【0019】
図7と図8に示すように、両収納凹部48、49のうち、一方の収納凹部49の一部、例えば収納凹部49の一側壁には、打込工具80先端部の外針81を、スリット状開口部47を間に挟む両収納凹部48、49の対向壁を貫通して差込む作業を容易化するための除去部49aが必要に応じて形成される。
また、除去部49aは、収納凹部49の一側内壁面が開口部側に向けてしだいに拡開されたるように形成された傾斜面によって構成されている。
【0020】
すなわち、図7と図8に示すように、第1の圧縮成形体40の中空シール部43のスリット状開口部47に跨って、打込工具80によって連結ピン70を打ち込む際、先ず、図7に示すように、収納凹部49の一側内壁面の除去部(傾斜面)49a側から打込工具80の外針81を挿入しながら、この外針81を収納凹部48、49の対向壁を貫通して差込む。
ここで、打込工具80のトリガー操作によって、外針81の中心溝に進退可能に挿入された内針82を前進させる。
この際、外針81の中心溝には、連結ピン70の一方の係止部72が挿通され、中心溝に案内されて収納凹部48、49の対向壁を通過する。そして、内針82の前進によって、連結ピン70の一方の係止部72が外針81の中心溝から抜け出る位置まで打ち込まれる。ここで、打込工具80の外針81を抜き取ることで、図3に示すように、第1の圧縮成形体40のスリット状開口部47が連結ピン70によって閉じられるようになっている。
なお、打込工具80及び連結ピン70は、既存(市販品)のものが使用される。
【0021】
また、図1と図4に示すように、第2の圧縮成形体50は、ウエザーストリップの後上コーナ部を構成するために、第1の押出成形品10の後上部の端末部と第3の押出成形品30の後端末部とを一体連続状に連結する。
さらに、図1と図5に示すように、第3の圧縮成形体60は、ウエザーストリップの前上コーナ部を構成するために、第2の押出成形品20の上端末部と第3の押出成形品30の前端末部とを一体連続状に連結する。
そして、第2、第3の圧縮成形体50、60においても、第1の圧縮成形体40と同様にして加硫ゴム材のコンプレッション成形、トランスファー成形等の圧縮成形によって形成される。
【0022】
また、第2、第3の圧縮成形体50、60の中空シール部53、63のスリット状開口部57、67においても、第1の圧縮成形体40と同様にして打込工具80によって打ち込まれる単数又は複数の連結ピン70によってそれぞれ閉じられる。
【0023】
この実施例1に係るウエザーストリップは上述したように構成される。
したがって、第1〜第3の押出成形品10、20、30を一体連続状に連結している第1〜第3の圧縮成形体40、50、60のスリット状開口部47、57、67を、打込工具80によって打ち込まれる各単数又は複数の連結ピン70によって閉じることができる。このため、スリット状開口部47、57、67を接着剤によって接着して閉じる場合と比べ、スリット状開口部47、57、67を容易にかつ手早く閉じることができ、コスト低減に効果が大きい。
【0024】
また、第1の圧縮成形体40の両収納凹部48、49に連結ピン70の両係止部72、73が収納されることで、連結ピン70の係止部72、73に、異物(作業者の衣服、作業手袋、その他物品等)が引っ掛かることを防止することができる。第2、第3の圧縮成形体50、60においても同様である。
また、第1の圧縮成形体40の両収納凹部48、49のうち、一方の収納凹部49の一側内壁面に傾斜面よりなる除去部49aが形成されることによって、打込工具80による連結ピン70の打ち込み作業がより一層容易となる。
【実施例2】
【0025】
この発明の実施例2に係るウエザーストリップを図9と図10にしたがって説明する。
図9と図10に示すように、この実施例2においては、連結ピン70の両係止部72、73が収納される両収納凹部48、149のうち、一方の収納凹部149の一側壁全体が除去されて除去部149aが形成されている。
この実施例2のその他の構成は、実施例1と同様に構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省略する。
【0026】
したがって、この実施例2においても実施例1と同様の作用効果を奏すると共に、収納凹部149の一側壁全体が除去されて除去部149aが形成されることで、打込工具の外針の差し込み操作をより一層容易に行うことができる。
【0027】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。
例えば、前記実施例1及び2においては、第1の圧縮成形体(第2及び第3の圧縮成形体50、60も含む)40の一側壁部46に、収納凹部48、49を形成して連結ピン70の係止部72、73を収納するように構成したが、図11と図12に示すように、第1の圧縮成形体(第2及び第3の圧縮成形体50、60も含む)40の中空シール部43の一側壁部46にスリット状開口部47に跨って連結ピン70を打ち込んでスリット状開口部47を閉じることも可能である。
また、前記実施例1及び2においては、車両のフロントドアに用いられるウエザーストリップを例示したが、フロントドアの他、リヤドア、バックドア、トランクリッド等でああてもこの発明のウエザーストリップを用いることができる。
また、押出成形によって長尺に形成され、かつ長手方向に沿って中空シール部を有する二つの押出成形品の端末部同士を圧縮成形体の圧縮成形と同時に一体連続状に連結してウエザーストリップを構成してもこの発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 第1の押出成形品(押出成形品)
13 中空シール部
20 第2の押出成形品(押出成形品)
23 中空シール部
40 第1の圧縮成形体(圧縮成形体)
43 中空シール部
46 一側壁部
47 スリット状開口部
48、49 収納凹部
49a 除去部
70 連結ピン
71 連結柱部
72、73 係止部
80 打込工具
81 外針
82 内針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形によって長尺に形成され、かつ長手方向に沿って中空シール部を有する少なくとも二つの押出成形品の端末部同士が圧縮成形体によって一体連続状に連結され、前記圧縮成形体には、前記押出成形品の中空シール部を連通する中空シール部が圧縮成形と同時に形成され、前記圧縮成形体の中空シール部の周壁部のうち、一側壁部に中空シール部の内周壁面を形成する中子型を脱型するためのスリット状開口部が形成されたウエザーストリップであって、
前記圧縮成形体の中空シール部のスリット状開口部は、打込工具によって打ち込まれる連結ピンによって閉じられ、
前記連結ピンは、前記スリット状開口部に跨る連結柱部と、この連結柱部の両端に直交する方向に形成されて前記一側壁部の前記スリット状開口部の両側部近傍の外側面にそれぞれ係止される係止部を有していることを特徴とするウエザーストリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のウエザーストリップであって、
圧縮成形体の中空シール部の一側壁部には、連結ピンの係止部を収納する収納凹部が形成されていることを特徴とするウエザーストリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のウエザーストリップであって、
収納凹部の壁部の一部には、打込工具の先端部の挿入を容易化するために除去部が形成されていることを特徴とするウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−116338(P2012−116338A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268135(P2010−268135)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000123549)化成工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】