説明

ウエハーのシート抵抗および/または光電池の出力密度を増大するための溶液

光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板であり、pnまたはnp接合および部分的なホスホシリケートまたはボロシリケートガラス層の少なくとも1つを該ウエハー基板の上面に有する該ウエハー基板を処理して、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された該光電池の出力密度レベルの少なくとも一方を増大させること。少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、酢酸、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種の金属キレート剤、アンモニアの無金属供給源、フッ化物イオンの無金属供給源および水を有する緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液を、酸化剤溶液および場合により水と混合した酸処理溶液である、処理溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸処理組成物に関し、さらに、光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板であり、pnまたはnp接合および部分的なホスホシリケートまたはボロシリケートガラス層の少なくとも1つを該ウエハー基板の上面に有する該ウエハー基板を処理して、前記ウエハーから作製された光電池にウエハーのシート抵抗および/または出力密度の増大を提供するための方法における、そのような酸処理組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンベースの太陽電池、つまり光電池は、入射光を電流に変換できるようにするためにいくつかの加工ステップを必要とする。これらのステップの1つは、最も一般的にはホウ素ドープされたシリコンウエハーへのリンの熱ドライブインによって遂行される、エミッターの生成を伴う。この工程は、生成電荷の高再結合速度を付与し、太陽電池の効率および出力密度レベルにとって有害となる、いわゆるデッドレイヤーの生成をもたらす。加えて、この工程は、リン、ケイ素および酸素を含有するいわゆるホスホシリケートガラス(PSG)層をウエハーの上に作製し、このPSG層は、電池製造を進めることができるように除去されなくてはならない。熱ドライブイン工程の後、リンの深さプロファイルは、工程条件に応じて、表面から数十または数百ナノメートルの深さまで伸展する高濃度のプラトーを示す。理想的には、表面付近の濃度は、電極と良好に接触させることができるように、高くなる(すなわち、1020〜21原子/cm)。
【0003】
多結晶光電池製造業者の主な目的は、その太陽電池によって送達されるエネルギーのコストを削減することである。これは、概して、2つの手法の一方、電池製造コスト全体の削減および/または太陽電池変換効率の改善のいずれかにおいて遂行され得る。後者の目的を達成するための試みにおいて、現在の製造工程ではリン拡散後にポストエミッターエッチングを適用しており、これは、ウエハーをHFに浸漬することによってPSG層を除去するものである。過去の実験では、HF浸漬後の追加処理が、最大0.3絶対%のより高い電池効率をもたらし得ることが示されている。現在、この追加ステップにおいては、Mallinckrodt Baker,Inc.の製品、すなわち製品PV−160が使用されている。しかしながら、この製品の使用には、概して製品の加熱した浴(70℃以上)中におけるウエハー基板の加工が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PSG層の残存物のエッチングの改善およびデッドレイヤーのより深いエッチングにより、現在使用されているPV−160製品で得られる結果と比較して、同等またはより短い加工時間および低温で、太陽電池におけるより高い出力密度を作製することができる組成物が利用可能となることが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の実施形態において、本発明は、光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板を処理して、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)該ウエハーから作製された該光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるための方法であって、該ウエハー基板は、pnもしくはnp接合ならびに/または部分的なホスホシリケートおよび/もしくはボロシリケートガラス層を該ウエハー基板の上面に有し、該処理方法は、該ウエハー基板を酸処理溶液と、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された該光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるのに十分な時間および温度で接触させるステップを含み、該溶液は、
約0.1から約20重量%までの少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、
約0.1から約5重量%までの酢酸、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の金属キレート剤、
約0.1から約20重量%までのアンモニウムイオンの無金属供給源、
約0.01から約20重量%までのフッ化物イオンの無金属供給源、
100%とするまでの残部水
を有する緩衝酸化物エッチング(buffered oxide etch、BOE)溶液を、
酸化剤および場合により水と、0.01〜10/0〜100/1の酸化剤/水/BOE溶液の体積比で混合したもの
を含む、処理方法を提供する。エミッター付きウエハーには、pおよびn供給源シリコン型の両方を含める。
【0006】
処理により、ウエハーのシート抵抗または光電池の出力密度のいずれかを増大させることができるが、両方を増大させることが好ましい。加えて、処理により、このウエハーから作製された光電池の効率を増大させることもできる。
【0007】
本発明のさらなる実施形態において、光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板を処理して、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された該光電池の出力密度レベルの少なくとも一方を増大させるための酸処理溶液であって、該ウエハー基板は、pnもしくはnp接合ならびに/または部分的なホスホシリケートおよび/もしくはボロシリケートガラス層を該ウエハー基板の上面に有し、
約0.1から約20重量%までの少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、
約0.1から約5重量%までの酢酸、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の金属キレート剤、
約0.1から約20重量%までのアンモニウムイオンの無金属供給源、
約0.01から約20重量%までのフッ化物イオンの無金属供給源、
100%とするまでの残部水
を有する緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液を、
酸化剤および場合により水と、0.01〜10/0〜100/1の酸化剤/水/BOE溶液の体積比で混合した混合物
を含む酸処理溶液が提供される。エミッター付きウエハーは、pおよびn供給源シリコン型の両方を含める。
【0008】
これらの実施形態の両方において、BOE溶液中の塩化テトラアルキルアンモニウムの重量での量は、好ましくは0.5から15%、より好ましくは1から10%、より一層好ましくは1.5から8%、最も好ましくは2から4%、とりわけ3.1%である。
【0009】
酢酸の重量での量は、好ましくは0.5から4%、より好ましくは0.8から3%、より一層好ましくは1から2%、最も好ましくは1から1.5%、とりわけ1〜2%である。
【0010】
非イオン性界面活性剤について、重量での量は、好ましくは0.2から4%、より好ましくは0.3から2%、より一層好ましくは0.5から1%、最も好ましくは0.7から0.9%、とりわけ0.8%である。
【0011】
キレート剤について、重量での量は、好ましくは0.2から4%、より好ましくは0.3から3%、より一層好ましくは0.4から1%、最も好ましくは0.5から0.8%、とりわけ0.6%である。
【0012】
アンモニウムイオンの供給源について、重量での量は、好ましくは0.2から10%、より好ましくは0.3から5%、より一層好ましくは0.5から2%、最も好ましくは0.6から1%、とりわけ0.8%である。
【0013】
フッ化物イオンの供給源について、重量での量は、好ましくは1から10%、より好ましくは0.5から5%、より一層好ましくは1.0から3%、最も好ましくは1.5から2.5%、とりわけ2.1%である。
【0014】
処理により、ウエハーのシート抵抗または前記ウエハーから作製された光電池の出力密度のいずれかを増大させることができるが、両方を増大させることが好ましい。加えて、処理により、このウエハーから作製された光電池の効率を増大させることもできる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、処理は、約20℃から約70℃未満までの温度で行われる。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態において、BOE溶液は、約3から7未満までのpH、好ましくは約3から約6までのpH、より好ましくは約4.3から約5までのpHを有する。
【0017】
本発明のさらに一層好ましい実施形態において、酸化剤は過酸化水素を含む。概して、酸化剤は、任意の適切な比率の水および過酸化水素の水溶液(0.01%から50%、より好ましくは0.1%から30%、なお一層好ましくは約30%水溶液)中にあるが、概して約6/10.2から約6/1までの比率である。
【0018】
本発明のまた別の好ましい実施形態において、BOE溶液は、水酸化テトラアルキルアンモニウムとして水酸化テトラメチルアンモニウム、少なくとも1種の界面活性剤として3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、および少なくとも1種の金属キレート剤としてEDTAを含み、酸化剤溶液は過酸化水素および水を含む。
【0019】
本発明のまた別の好ましい実施形態において、BOE溶液は、約3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウム、約1.2%の酢酸、約2.1%のHF、約0.8%の3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、約0.8%の水酸化アンモニウム、約0.6%のEDTA、約91.5%の水を含み、ここで、パーセンテージは重量に基づく。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態において、BOE溶液は、酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/過酸化水素の比率で混合されている。本発明の別の好ましい実施形態において、BOE溶液は、酸化剤溶液と、約1/6/0.8のBOE/水/過酸化水素の比率で混合されている。本発明の別の好ましい実施形態において、BOE溶液は、酸化剤溶液と、約1/6/1のBOE/水/過酸化水素の比率で混合されている。
【0021】
本発明のまたさらに他の好ましい実施形態において、該実施形態は、前述の好ましい実施形態の組合せの1つまたは複数を含む。
【0022】
加えて、本発明は、現在の業界標準である70℃よりも低い、約20℃から約40℃までの加工温度で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によって、光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板を処理して、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された該光電池の出力密度の少なくとも一方を改善するための方法であって、該ウエハー基板は、pnもしくはnp接合ならびに/または部分的なホスホシリケートおよび/もしくはボロシリケートガラス層を該ウエハー基板の上面に有し、該方法は、該ウエハー基板を酸処理溶液と、(a)シート抵抗および(b)該光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるのに十分な時間および温度で接触させるステップを含み、該酸処理溶液は、
約0.1から約20重量%までの少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、
約0.1から約5重量%までの酢酸、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の金属キレート剤、
約0.1から約20重量%までのアンモニウムイオンの無金属供給源、
約0.01から約20重量%までのフッ化物イオンの無金属供給源、
100%とするまでの残部水
を有する緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液を、
酸化剤および場合により水と、0.01〜10/0〜100/1の酸化剤/水/BOE溶液の体積比で混合したもの
を含む、方法が提供される。エミッター付きウエハーは、pおよびn供給源シリコン型の両方を含める。
【0024】
処理により、ウエハーのシート抵抗または前記ウエハーから作製された光電池の出力密度のいずれかを増大させることができるが、両方を増大させることが好ましい。加えて、処理により、このウエハーから作製された光電池の効率を増大させることもできる。
【0025】
同様に、本発明は、光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板を処理して、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された該光電池の出力密度レベルの少なくとも一方を増大させるための溶液であって、該ウエハー基板は、pnもしくはnp接合ならびに/または部分的なホスホシリケートおよび/もしくはボロシリケートガラス層を該ウエハー基板の上面に有し、
約0.1から約20重量%までの少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、
約0.1から約5重量%までの酢酸、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の金属キレート剤、
約0.1から約20重量%までのアンモニウムイオンの無金属供給源、
約0.01から約20重量%までのフッ化物イオンの無金属供給源、
100%とするまでの残部水
を有する緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液を、
酸化剤および場合により水と、0.01〜10/0〜100/1の酸化剤/水/BOE溶液の比率で混合した混合物
を含む酸処理溶液を提供する。エミッター付きウエハーは、pおよびn供給源シリコン型の両方を含める。
【0026】
処理により、ウエハーのシート抵抗または前記ウエハーから作製された光電池の出力密度のいずれかを増大させることができるが、両方を増大させることが好ましい。加えて、処理により、このウエハーから作製された光電池の効率を増大させることもできる。
【0027】
本発明の工程において、酸処理溶液を用いるステップは、HFによるホスホシリケートまたはボロシリケートガラス除去(不完全除去)の後、かつ、別のHF浸漬およびその後の反射防止コーティング(ARC)、例えばSiNxH堆積等の直前に、光電池ウエハー基板上で利用される。工程は、ウエハー基板を溶液の加熱した浴中に、(a)該ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるのに十分な時間および温度で浸すことによって等、ウエハー基板を酸処理溶液に曝露することを含む。ウエハー基板と酸処理溶液との接触は、概して、約0.01から約20分まで、好ましくは約0.5から約5分まで、より好ましくは約1分間の期間となる。溶液の温度は、概して、約20℃から約70℃未満まで、好ましくは約20℃から約60℃まで、より好ましくは約20℃から約40℃まで、なお一層好ましくは約40℃となる。
【0028】
本発明の酸処理組成物において使用するのに適切なものとして、水酸化テトラアルキルアンモニウム、または式[(R)[X−q]の塩[式中、各Rは、独立に、置換または非置換アルキル、好ましくは、1から22個まで、より好ましくは1から6個、最も好ましくは1個の炭素を有するアルキルであり;X=OHまたはカーボネート等の適切な塩アニオンであり;pおよびqは等しく、1から3までの整数である]が挙げられる。これらのうち最も好ましいのは、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)である。他の使用可能な水酸化第四級アンモニウムの例は、水酸化トリメチル−3−ヒドロキシプロピルアンモニウム、水酸化トリメチル−3−ヒドロキシブチルアンモニウム、水酸化トリメチル−4−ヒドロキシブチルアンモニウム、水酸化トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化トリプロピル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化トリブチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化ジメチルエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化モノメチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化モノメチルトリエチルアンモニウム、水酸化モノメチルトリプロピルアンモニウム、水酸化モノメチルトリブチルアンモニウム、水酸化モノエチルトリメチルアンモニウム、水酸化モノエチルトリブチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジブチルアンモニウム等、およびそれらの混合物を含む。
【0029】
アンモニウムイオンの無金属供給源は、例えば、水酸化アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等、任意の適切な無金属アンモニウム塩であってよいが、好ましくは水酸化アンモニウムである。フッ化物イオンの無金属供給源は、例えば、フッ化水素、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム等のフッ化第四級アンモニウム等、任意の適切な無金属フッ化物化合物であってよい。好ましくは、フッ化物イオンの無金属供給源はHFである。別の好ましい実施形態において、アンモニウムイオンおよびフッ化物イオンはいずれも、1種の化合物、すなわちフッ化アンモニウムによって提供され得る。
【0030】
本発明の酸処理組成物は、任意の適切な非イオン性界面活性剤を含有し得る。本発明の処理組成物において有用である種々の適切な非イオン性界面活性剤の中でも、例えば、アルキノール界面活性剤等の低発泡性非イオン性界面活性剤、フッ素化界面活性剤(Fluorad(登録商標)FC−171等のフッ素化アルキルアルコキシレート、FC−430およびFC−431等のフッ素化アルキルエステル、ならびにFluorad(登録商標)FC−170C等のフッ素化ポリオキシエチレンアルカノール等)、多価アルコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジオール、シロキサンタイプの界面活性剤、ならびにブトキシプロパノール等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。本発明のアルカリ処理組成物において非イオン性界面活性剤として使用するのに好ましいのは、アルキノール界面活性剤、とりわけ3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール(Surfynol(登録商標)−61)または任意の他のSurfynol(登録商標)界面活性剤、フッ素化アルキルポリオキシエチレンエタノール、とりわけFluorad(登録商標)FC−170C、およびアルキレングリコールモノアルキルエーテル、とりわけブトキシプロパノールである。
【0031】
溶液中の金属を保持する調合物の能力を増大させるための任意の適切な金属キレート剤を、本発明の酸処理組成物において用いてよい。この目的のためのキレート剤の典型的な例は、下記の有機酸およびその塩である:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ブチレンジアミン四酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミン四酢酸(CyDTA)ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、メチルイミノ二酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸(nitrolotriacetic acid)(NTA)、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、糖酸、グリセリン酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸、サリチル酸、カテコール、8−ヒドロキシキノリン、N,N,N’,N’−エチレンジアミン四酢酸(メチレンホスホン酸)等。
【0032】
例えば、酸化アニオン(例えば、過酸化物、硝酸およびその塩、ならびに、アンモニウムの硝酸塩、過硫酸塩、過ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、過塩素酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩および塩素酸塩等)等、任意の適切な酸化剤を用いてよい。好ましいのは、過酸化物、特に過酸化水素である。
【0033】
本発明の酸処理組成物は、必要な成分を適切な容器中で混合して組成物を形成することによって作製され得る。好ましくは、成分の反応からの考えられるあらゆる熱を最小化するために、組成物の必要な成分を、塩基/酸/塩基/酸の順序で容器に添加する。
【0034】
しかしながら、太陽電池製造において、製品は酸化ケイ素だけではなくケイ素およびリンもエッチングしなくてはならない。これを達成するために、BOEを酸化剤としての過酸化水素と組み合わせる。これは、BOEが酸化ケイ素をエッチング除去し、その一方で、酸化剤が、エッチング−酸化の連続工程で、表面上に新たな酸化ケイ素を生成することを暗示している。加えて、酸化剤は、層中に存在するリンを酸化し、それによって層を可溶化する。エッチングされた種(金属不純物を含むがこれに限定されない)は、キレート剤の添加によって溶液中に部分的に維持されるのに対し、表面の湿潤性(すなわち、酸化剤が表面を酸化し得る効率)は、界面活性剤の添加によって改善される。酢酸の添加は、二重緩衝系(doubly buffered system)を確実にし、これによって工程安定性を補助する。
【0035】
本発明は、下記の実施例によって例示されるが、これに限定されない。実施例中、パーセンテージは重量に基づく。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
約180〜200μmの厚さを有する約15.6×15.6cmのサイズの隣接する多結晶シリコンウエハー25枚のセットを、産業用直列光電池製造順序で加工した。エミッター堆積およびHFによるリンガラス除去後、ウエハーはウエハー基板の上面に部分的なホスホシリケートガラス層を有し、該ウエハーを、(1)本発明の酸処理溶液と40℃で接触させた、(2)先行技術のPV−160溶液と、その溶液に必要な70℃で接触させた、または(3)対照として処理溶液と接触させなかった。本発明の酸処理溶液は、約3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウム、約1.2%の酢酸、約2.1%のHF、約0.8%の3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、約0.8%の水酸化アンモニウム、約0.6%のEDTA、約91.5%の水のBOE溶液を含んでいた。このBOE溶液を、過酸化水素酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合した。先行技術のPV−160溶液も、過酸化水素酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合して用いた。その後、処理したウエハーを、1重量パーセントのHF溶液中における室温での1分間の湿式化学処理、続いて日常的慣習の光起電製造ステップに供して、所望の光電池を作製した。異なる群を加工している間、電極焼成設定を一定に維持し、先行技術群については最適な焼成設定に設定した。電池を、それらの出力密度レベルについて測定した(単位mW/cm、短絡電流密度および開路電圧の積、Jsc×Vocとして定義される)。結果を下記の表1に明記する。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例2)
約180〜200μmの厚さを有する約15.6×15.6cmのサイズの隣接する多結晶シリコンウエハー25枚のセットを、産業用直列光電池製造順序で加工した。エミッター堆積およびHFによるリンガラス除去後、ウエハーはウエハー基板の上面に部分的なホスホシリケートガラス層を有し、該ウエハーを、(1)本発明の酸処理溶液と40℃で接触させ、(2)先行技術のPV−160溶液と、その溶液に必要な70℃で接触させた。本発明の処理溶液は、約3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウム、約1.2%の酢酸、約2.1%のHF、約0.8%の3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、約0.8%の水酸化アンモニウム、約0.6%のEDTA、約91.5%の水のBOE溶液を含んでいた。このBOE溶液を、過酸化水素酸化剤溶液と、約1/6/0.8のBOE/水/30%過酸化水素の比率で混合した。先行技術のPV−160溶液も、過酸化水素酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合して用いた。その後、処理したウエハーを、1重量パーセントのHF溶液中における室温での1分間の湿式化学処理、続いて日常的慣習の光起電製造ステップに供して、所望の光電池を作製した。異なる群を加工している間、電極焼成設定を一定に維持し、先行技術群については最適な焼成設定に設定した。電池を、それらの出力密度レベルについて測定した(単位mW/cm、短絡電流密度および開路電圧の積、Jsc×Vocとして定義される)。結果を下記の表2に明記する。
【0039】
【表2】

【0040】
(実施例3)
約180〜200μmの厚さを有する約15.6×15.6cmのサイズの隣接する多結晶シリコンウエハー25枚のセットを、産業用直列光電池製造順序で加工した。エミッター堆積およびHFによるリンガラス除去後、ウエハーはウエハー基板の上面に部分的なホスホシリケートガラス層を有し、該ウエハーを、(1)本発明の酸処理溶液と、25℃、30℃および40℃で接触させた、(2)先行技術のPV−160溶液と、その溶液に必要な70℃で接触させた、または(3)対照として溶液と接触させなかった。本発明の酸処理溶液は、約3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウム、約1.2%の酢酸、約2.1%のHF、約0.8%の3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、約0.8%の水酸化アンモニウム、約0.6%のEDTA、約91.5%の水のBOE溶液を含んでいた。このBOE溶液を、過酸化水素酸化剤溶液と、約1/6/1のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合した。先行技術のPV−160溶液も、過酸化水素酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/過酸化水素溶液の比率で混合して用いた。その後、処理したウエハーを、1重量パーセントのHF溶液中における室温での1分間の湿式化学処理、続いて日常的慣習の光起電製造ステップに供して、所望の光電池を作製した。異なる群を加工している間、電極焼成設定を一定に維持し、先行技術群については最適な焼成設定に設定した。結果を下記の表3に明記する。
【0041】
【表3】

【0042】
結果に示されるように、本発明の組成物は、シート抵抗および/または電池の出力密度レベルを、対照を有意に上回って増大させた。混合比を変更することにより、特に過酸化水素の量を増大させることにより、本発明の組成物は、PV−160と比較して同等または優れた出力密度を示した。しかしながら、本発明の組成物は、20℃から40℃の温度範囲内でそうすることができたのに対し、PV−160組成物はそのために70℃の温度を必要とした。
【0043】
本明細書において、本発明をその具体的な実施形態を参照して記述してきたが、本明細書において開示されている発明概念の趣旨および範囲から逸脱することなく、変更、改変および変形が為され得ることが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に入るそのような変更、改変および変形をすべて包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板であり、pnまたはnp接合および部分的なホスホシリケートまたはボロシリケートガラス層の少なくとも1つを前記ウエハー基板の上面に有する前記ウエハー基板を処理して、(a)シート抵抗および(b)前記光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるための方法であって、前記ウエハー基板を酸処理溶液と、(a)前記ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された前記光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるのに十分な時間および温度で接触させるステップを含み、前記酸処理溶液は、
約0.1から約20重量%までの少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、
約0.1から約5重量%までの酢酸、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の金属キレート剤、
約0.1から約20重量%までのアンモニアイオンの無金属供給源、
約0.01から約20重量%までのフッ化物イオンの無金属供給源、
100%とするまでの残部水
を有する緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液を、
酸化剤溶液および場合により水と、0.01〜10/0〜100/1の酸化剤溶液/水/BOE溶液の比率で混合したもの
を含む、方法。
【請求項2】
前記処理が、約20℃から約70℃までの温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BOE溶液が約3から約6までのpHを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記BOE溶液が約4.3から約5までのpHを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤溶液が過酸化水素を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記BOE溶液が、前記水酸化テトラアルキルアンモニウムとして水酸化テトラメチルアンモニウム、前記少なくとも1種の界面活性剤として3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、および前記少なくとも1種の金属キレート剤としてEDTAを含み、前記酸化剤溶液が過酸化水素および水を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記BOE溶液が、約3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウム、約1.2%の酢酸、約2.1%のHF、約0.8%の3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、約0.8%の水酸化アンモニウム、約0.6%のEDTA、約91.5%の水を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、1/6/0.2〜1.0の範囲内のBOE/水/30%過酸化水素の比率で混合されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、約1/6/0.8のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、約1/6/1のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記処理が、約20℃から約70℃までの温度で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記処理が、前記ウエハーから作製された光電池の効率も改善する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
光電池において使用するための薄膜アモルファス、単結晶または多結晶シリコンウエハー基板であり、pnまたはnp接合および部分的なホスホシリケートまたはボロシリケートガラス層の少なくとも1つを前記ウエハー基板の上面に有する前記ウエハー基板を処理して、(a)前記ウエハーのシート抵抗および(b)前記ウエハーから作製された前記光電池の出力密度の少なくとも一方を増大させるための酸処理溶液であって、
約0.1から約20重量%までの少なくとも1種の水酸化テトラアルキルアンモニウム、
約0.1から約5重量%までの酢酸、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
約0.1から約5重量%までの少なくとも1種の金属キレート剤、
約0.1から約20重量%までのアンモニアイオンの無金属供給源、
約0.01から約20重量%までのフッ化物イオンの無金属供給源、
100%とするまでの残部水
を有する緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液を、
酸化剤溶液および場合により水と、0.01〜10/0〜100/1の酸化剤溶液/水/BOE溶液の比率で混合した混合物を含む、酸処理溶液。
【請求項15】
前記BOE溶液が約3から約6までのpHを有する、請求項14に記載の酸処理溶液。
【請求項16】
前記BOE溶液が約4.3から約5までのpHを有する、請求項15に記載の酸処理溶液。
【請求項17】
前記酸化剤溶液が過酸化水素を含む、請求項14から15のいずれかに記載の酸処理溶液。
【請求項18】
前記BOE溶液が、前記水酸化テトラアルキルアンモニウムとして水酸化テトラメチルアンモニウム、前記少なくとも1種の界面活性剤として3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、および前記少なくとも1種の金属キレート剤としてEDTAを含み、前記酸化剤溶液が過酸化水素および水を含む、請求項14から17に記載の酸処理溶液。
【請求項19】
前記BOE溶液が、約3.1%の水酸化テトラメチルアンモニウム、約1.2%の酢酸、約2.1%のHF、約0.8%の3,5−ジメチルヘキサ−1−イン−3−オール、約0.8%の水酸化アンモニウム、約0.6%のEDTA、約91.5%の水を含む、請求項18に記載の酸処理溶液。
【請求項20】
前記BOE溶液が、前記酸化剤溶液と、1/6/0.2〜1.0の範囲内のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項19に記載の酸処理溶液。
【請求項21】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、約1/6/0.2のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項19に記載の酸処理溶液。
【請求項22】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、約1/6/0.8のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項19に記載の酸処理溶液。
【請求項23】
前記BOE溶液が、酸化剤溶液と、約1/6/1のBOE/水/30%過酸化水素溶液の比率で混合されている、請求項19に記載の酸処理溶液。

【公表番号】特表2012−515444(P2012−515444A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545669(P2011−545669)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000076
【国際公開番号】WO2010/081661
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511170652)
【Fターム(参考)】