説明

ウエハ端面検査装置

【課題】ウエハの位置が変動した場合でも、受光光学系を高価にすることなく、小さな欠陥を検出可能なウエハ端面検査装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ11の瞳位置に開口絞り12が設けられており、撮像面16は対物レンズ11の瞳位置と共役な位置に設けられている。欠陥C、Dから放出された光は、視野絞り上では、対応する異なった位置C’、D’に結像するが、第2リレーレンズ15により、それぞれ平行光とされ、撮像面16を照明する。撮像面16には、対物レンズ11の瞳像が結像する。よって、図に示すように、欠陥C、Dから放出された光は、撮像面16の同じ位置を照明する。すなわち、照明光が照明する位置が変わっても、その反射光が撮像面16を照明する位置は変わらない。すなわち、ウェハ1の反りや径方向のシフト等に起因して、照明光がウェハ1を照明する位置が異なっても、撮像面16で受光される位置は変わらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ端面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを製造するリソグラフィー工程では、レジスト塗布工程、露光工程、洗浄工程、エッチング工程、レジスト除去工程などがあり、通常、これら工程毎に欠陥検査を行う。この欠陥検査中には、半導体ウエハの周縁部位に生じる各種の欠陥、例えばレジスト残渣、ひび、欠け、パーティクルの付着などの検査がある。
【0003】
これまでウエハの検査においては、ウエハの表裏面の傷やゴミ、クラックの有無、膜ムラ等を検出することが主流であり、端面部は比較的軽視されがちであった。しかし近年端面部の欠陥が歩留に大きく影響することが認識され始め、ウエハ端面部を検査する要求が高まっている。
【0004】
具体的には、ウエハ端面部に欠陥がある場合、最悪の場合には、チップの製造プロセス中にウエハが割れることがある。この場合、そのウエハ上の全チップが不良となるだけでなく、製造装置、検査装置の汚染をも引き起こすことになり、製造プロセスそのものに大きな影響を与えることになる。
【0005】
ウエハ端面部(エッジ)は、図4にその断面を示すように、側面に向かって傾斜したベベル(上ベベル1a、下ベベル1b)、及び側面のアペックス1cからなり、欠陥としては膜のエッジカット不良やクラック、傷などがある。これらのウエハ端面部の欠陥を検出する装置として、例えばWO2003/028089号公報(特許文献1)に示す装置がある。この装置は顕微鏡対物レンズや落射テレセントリック照明結像光学系を用いて、ウエハ端面部の画像を取得し、画像から欠陥を検出するものである。
【特許文献1】WO2003/028089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の欠陥検査装置においては、受光光学系において、被検査部からの正反射光を受光し、その受光量又は画像に基づいて欠陥の検出を行うものであったため、バックグラウンド光が大きく、小さな欠陥を検出できないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウエハの端面にある小さな欠陥を検出可能なウエハ端面検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、ウエハの一方のベベル、アペックス、他方のベベルのうちのいずれかを照明する照明光学系と、照明された前記一方のベベル、前記アペックス、前記他方のベベルのいずれかからの散乱光を受光する受光光学系と、前記受光光学系の対物レンズの瞳位置又は瞳共役位置に撮像面を配置した撮像装置と、前記撮像装置で検出した光に基づいて欠陥を検出する欠陥検出部を有することを特徴とするウエハ端面検査装置である。
【0009】
本手段においては、対物レンズの瞳像が撮像面で撮像されているので、撮像されるのは、対物レンズの瞳像である。従って、ウエハからの光は、照明装置の照射位置がずれても、その散乱光が撮像面を照明する位置は変わらない。よって、ウエハの位置が変動しても、反射光の撮像面照明位置が撮像面から外れることがないので、ウエハの位置変動に関わらず欠陥の検出ができる。
【0010】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段を、前記一方のベベル用、前記アペックス用、前記他方のベベル用に複数有し、前記複数の照明光学系はそれぞれ互いに異なる波長域の光を照明光とし、前記受光光学系はそれぞれの前記照明光学系に対応した波長域の光のみを受光するものであることを特徴とするウエハ端面検査装置である。
【0011】
本手段は、例えば、上ベベル、アペックス、下ベベルの欠陥を3つの端面検査装置によって同時に検出しようとするものである。このような場合、照明光学系と受光光学系との配置によっては、例えば、上ベベルを照明する照明光が、下ベベルからの乱反射光を検出する受光光学系に入ってノイズとなるような場合がある。本手段においては、複数の端面検査装置のそれぞれが使用する光の波長を、完全に分離しているので、たとえ、他の端面検査装置の照明光が受光光学系に入射しても、それがノイズとなることを避けることができる。
【0012】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、前記それぞれの照明光学系は、前記ウエハの円周部のほぼ同一箇所を照明するように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
本手段においては、前記それぞれの照明光学系が、前記ウエハの円周部のほぼ同一箇所を照明するようにしているので、構成をコンパクトにすることができる。
【0014】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段又は第2の手段のウエハ端面検査装置を複数有し、前記それぞれの照明光学系からの照明光が、他のウエハ端面検査装置の受光光学系に入射しないようにされていることを特徴とするものである。
【0015】
本手段にいおいては、他のウエハ端面検査装置からの照明光が受光光学系に入射してノイズとおなることがない。
【0016】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段のいずれかであって、前記ウエハの半径をR、前記ウエハの回転角速度をω、前記照明光学系が照明する領域の幅をd、前記欠陥検出部の欠陥サンプリング周波数をΩとしたとき、ω≦Ωd/R
であることを特徴とするものである。
【0017】
本手段によれば、ウエハの円周全体に亘って、検査もれなく検査を行うことができる。なお、スループットを上げるためには、Ωd/Rの値が、できるだけωに近いことが望ましい。
【0018】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1の手段から第5の手段のいずれかであって、欠陥の検出された場所を記憶する記憶手段を有することを特徴とするものである。
【0019】
本手段においては、欠陥の検出された場所が記憶されるので、それに基づいて、検査されたウエハの取扱を最適に決定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ウエハの端面にある小さな欠陥を検出可能なウエハ端面検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例であるウエハ端面検査装置の主要部の概要を示す図である。被検査対象物であるウエハ1は、回転ステージ2の上に載せられており、回転ステージ2ごと回転している。上ベベル用照明光源3aから放出された光は、上ベベル用照明光学系5aにより、ウエハ1の上ベベルの被照明領域を、幅dのスリット光でテレセントリックに照明する。スリット光の長さ方向は、ウエハ1の半径方向であり、この方向の照明領域は、上ベベル全体をカバーする。スリット光の幅方向は、ウエハ1の円周方向であり、幅はdである。
【0022】
上ベベルの被照明領域からの散乱光は、上ベベル用受光光学系7aで集光されてSPD等の上ベベル用受光装置8aで受光される。
【0023】
同様、下ベベル用照明光源3bから放出された光は、下ベベル用照明光学系5bにより、ウエハ1の下ベベルの被照明領域を、幅dのスリット光でテレセントリックに照明する。スリット光の長さ方向は、ウエハ1の半径方向であり、この方向の照明領域は、下ベベル全体をカバーする。スリット光の幅方向は、ウエハ1の円周方向であり、幅はdである。
【0024】
下ベベルの被照明領域からの散乱光は、下ベベル用照明光学系7bで集光されて下ベベル用受光装置8bで受光される。
【0025】
又、アペックス用照明光源3cから放出された光は、アペックス用照明光学系5cにより、ウエハ1のアペックスの被照明領域を、幅dのスリット光でテレセントリックに照明する。スリット光の長さ方向は、ウエハ1の上下方向であり、この方向の照明領域は、アペックス全体をカバーする。スリット光の幅方向は、ウエハ1の円周方向であり、幅はdである。
【0026】
アペックスの被照明領域からの散乱光は、アペックス用照明光学系7cで集光されてアペックス用受光装置8cで受光される。
【0027】
各照明光学系からの各被検査領域への照明光の入射角は約60°とされている。又、各受光光学系の受光角(被検査領域面の法線と受光光学系の光軸とのなす角)は、約30°とされている。よって、各被検査領域で反射された照明光の正反射光は、受光光学系には入射しない。すなわち、照明は暗視野照明である。また、各受光光学系には、他の検査装置からの照明光が直接入射しないように、各機器の配置がなされている。
【0028】
被検査領域に欠陥が存在すると、その欠陥が照明光を散乱するため、その散乱光が受光光学系に入射し、場所に応じて、それぞれ上ベベル用受光装置8a、下ベベル用受光装置8b、アペックス用受光装置8cで検出される。図示しない欠陥検出部は、上ベベル用受光装置7a、下ベベル用受光装置7b、アペックス用受光装置7cに閾値を超える光が入射したとき、欠陥があると判定する。
【0029】
図2に、これら、上ベベル用受光光学系7a、下ベベル用受光光学系7b、アペックス用受光装置7cの光学系の概要を示す。ウエハ1から放出された散乱光は、対物レンズ11で集光され、開口絞り12、第1リレーレンズ13、視野絞り14、第2リレーレンズ15を通って、撮像面16を照明する。第1リレーレンズ13、第2リレーレンズ15はアフォーカルな光学系を構成している。
【0030】
対物レンズ11の瞳位置に開口絞り12が設けられており、撮像面16は対物レンズ11の瞳位置と共役な位置に設けられている。又、視野絞り14は、ウエハ1と共役な位置に設けられている。図3に欠陥Cから放出された散乱光の光路を実線で、欠陥Dから放出された散乱光の進路を破線で示す(実際には、ウエハ1は受光装置の光軸と傾いているが、説明の都合上、垂直におかれているとして説明する。焦点深度を問題にしなければ、このようにしても本質は変わらない)。
【0031】
欠陥C、Dから放出された散乱光は、視野絞り上では、対応する異なった位置C’、D’に結像するが、第2リレーレンズ15により、それぞれ平行光とされ、撮像面16で受光される。撮像面16には、対物レンズ11の瞳像が結像する。よって、図2に示すように、欠陥C、Dから放出された散乱光は、撮像面16の同じ位置で受光される。すなわち、照明光が照明する位置が変わっても、それが発生する散乱光が撮像面16で受光される位置は変わらないことになる。すなわち、ウエハ1の反りや径方向のシフト等に起因して、照明光がウエハ1を照明する位置が異なっても、撮像面16で受光される位置は変わらないので、散乱光による像が、検査像が撮像面16から外れて検査ができないようなことが無くなる。観察できる範囲は、開口絞り12の径によって可変とされるが、その最大範囲は、対物レンズ11のNAによって決定される。前述のように、閾値を超える光が入射したとき、欠陥があると判定する。
【0032】
なお、ここで、ウエハ22と撮像面とが共役関係になっている受光光学系23を用いた場合に、ウエハ22の反りや径方向のシフトがあるとき、ウエハ面上での照明視野が動いてしまい、その結果、受光光学系23で受光した散乱光による像が撮像面から外れてしまう点について、図3を用いて説明する。
【0033】
図3においてウエハ22が正規の位置にある場合は、照明光学系21からの照明光の照射点はA点となり、これが被検査部に一致している。ウエハ22の反り等により、ウエハの位置が22ヂの位置に移動した場合には照明光はB点となってしまう。その照明位置の移動にともなって、受光光学系23はウエハ22と撮像面とが共役関係になっているので、散乱光による像の受光位置もずれ、撮像面から外れてしまう。
【0034】
図1のような配置において、例えば下ベベルを照明した下ベベル用照明光源3bからの照明光が、上ベベル用受光装置8aに入射してバックグラウンドノイズとなることを防ぐために、各照明光学系5a、5b、5cに、それぞれ、上ベベル用干渉フィルタ、下ベベル用干渉フィルタb、アペックス用干渉フィルタを配置し、図2に示す受光光学系7a、7b、7cの開口絞り12の前後に、上ベベル用干渉フィルタ、下ベベル用干渉フィルタ、アペックス用干渉フィルタを配置してもよい。すなわち、上ベベルを検査する光の波長を例えば450〜500nm、アペックスを検査する光の波長を例えば550〜600nm、下ベベルを検査する光の波長を例えば650〜700nmとし、各干渉フィルタが、それぞれ対応する波長域の光しか透過しないようにしておく。これにより、他の部分を検査するための照明光が、受光光学系に迷光として入り込んでも、上ベベル用干渉フィルタ、下ベベル用干渉フィルタ、アペックス用干渉フィルタでカットされ、ノイズとなることを防止できる。
【0035】
図示しない欠陥検出部は、あるサンプリング周波数Ωで受光光学系へ入射してくる光の出力値を測定する。ウエハ半径をR、ウエハが回転する角速度をωとしたとき、ω≦Ωd/Rが成り立つようにすると、ウエハの円周部のすべて欠陥検査ができ、かつ高スループット検査が可能となる。Ωd/Rの値がωに近いほど、ウエハの円周部のすべて欠陥検査ができ、かつスループットが高まる。
【0036】
また、図示しない記憶装置により、欠陥が存在した部位の位置情報も記憶することにより、例えば、別の検査装置で欠陥の拡大画像を撮影することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の1例であるウエハ端面検査装置の主要部の概要を示す図である。
【図2】受光装置の光学系の概要を示す図である。
【図3】被検査部に照明光を照射し、その正反射方向以外の方向から、欠陥から散乱される散乱光を検出することにより欠陥を検出する装置の概要を示す図である。
【図4】ウエハ端面部(エッジ)の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…ウエハ、1a…上ベベル、1b…下ベベル、1c…アペックス、2…回転ステージ、3a…上ベベル用照明光源、3b…下ベベル用照明光源、3c…アペックス用照明光源、5a…上ベベル用照明光学系、5b…下ベベル用照明光学系、5c…アペックス用照明光学系、7a…上ベベル用受光光学系、7b…下ベベル用受光光学系、7c…アペックス用受光光学系、8a…上ベベル用受光装置、8b…下ベベル用受光装置、8c…アペックス用受光装置、11…対物レンズ、12…開口絞り、13…第1リレーレンズ、14…視野絞り、15…第2リレーレンズ、16…撮像面、21…照明光学系、22…ウエハ、23…受光光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの一方のベベル、アペックス、他方のベベルのうちのいずれかを照明する照明光学系と、照明された前記一方のベベル、前記アペックス、前記他方のベベルのいずれかからの散乱光を受光する受光光学系と、前記受光光学系の対物レンズの瞳位置又は瞳共役位置に撮像面を配置した撮像装置と、前記撮像装置で検出した光に基づいて欠陥を検出する欠陥検出部を有することを特徴とするウエハ端面検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハ端面検査装置を、前記一方のベベル用、前記アペックス用、前記他方のベベル用に複数有し、前記複数の照明光学系はそれぞれ互いに異なる波長域の光を照明光とし、前記受光光学系はそれぞれの前記照明光学系に対応した波長域の光のみを受光するものであることを特徴とするウエハ端面検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウエハ端面検査装置を複数有し、前記それぞれの照明光学系は、前記ウエハの円周部のほぼ同一箇所を照明するように配置されていることを特徴とするウエハ端面検査装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のウエハ端面検査装置を複数有し、前記それぞれの照明光学系からの照明光が、他のウエハ端面検査装置の受光光学系に入射しないようにされていることを特徴とするウエハ端面検査装置。
【請求項5】
前記ウエハの半径をR、前記ウエハの回転角速度をω、前記照明光学系が照明する領域の幅をd、前記欠陥検出部の欠陥サンプリング周波数をΩとしたとき、
ω≦Ωd/R
であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のウエハ端面検査装置。
【請求項6】
欠陥の検出された場所を記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のウエハ端面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−170686(P2009−170686A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7727(P2008−7727)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】