説明

エネルギー吸収部材

金属ガードレールまたは自動車用ドア等の構造要素と接触した熱可塑性気泡状ポリマーを備える、改善されたエネルギー吸収部材であって、気泡状ポリマーは、少なくとも約0.75mmの平均気泡サイズを有し、C/C、C/CおよびC/Cの少なくとも1つは、約0.25から約0.4であり、C/C、C/CおよびC/Cの前記1つは、60%歪みで少なくとも70%の圧縮効率を有し、C、CおよびCは、3つの直交方向E、VおよびHのそれぞれにおける気泡状ポリマーの圧縮強度であり、これらの方向の1つは、フォーム中最大圧縮強度の方向であり、Cは、C、CおよびCの和に等しい、エネルギー吸収部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月4日出願の米国仮特許出願第60/933,054号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、自動車などの車両における衝突エネルギー吸収ポリマーフォームに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーフォームは、様々な緩衝用途に広く使用されている。フォームは、一般に、柔らかさおよび快適性が支配的因子となる枕、座席、マットレス、および同様の用途に使用される。フォームはまた、包装物の中身の緩衝にも使用される。包装中、フォームは、典型的には、包装物が押されたり落とされたりすることによりある程度の歪みを受けるだけであり、結果として、典型的には弾性変形するのみである(すなわち、フォームは変形後に回復し、これは典型的には約10%未満の歪みである)。包装用フォームはまた、フォームの寸法に関連した要件を(あるとしても)ほとんど有さず、低い衝撃に対して中身を緩衝しさえすればよい。結果的に、その各々が温度および湿度のそれぞれに起因する著しい変形を受けやすいとしても、安価な膨張ポリスチレンビーズフォームおよび膨張セルロース系梱包材を使用するのが極めて一般的である。
【0004】
近年、自動車は、衝突時における乗員の負傷を軽減するためのますます厳しくなる要求を満たすことが必要となっている。それを満たすために、自動車は、正面衝突に備えてエアバッグ等のアクティブシステムを組み込んでいる。より最近では、側面衝突および転覆事故による頭部負傷に対してより多くの配慮が払われている。これに対し、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテン(SABIC製)が採用され、また、単に弾性変形だけでなく、非弾性変形(すなわち圧壊)によりエネルギーを吸収するフォームも採用され始めている。
【0005】
自動車衝突軽減に使用されるフォームの大多数は、ポリウレタン/ポリ尿素およびその誘導体等の密閉気泡熱硬化性フォームであった。残念ながら、これらは、リサイクルが困難であり、衝突効率を達成するためには破砕性でなければならず、これは、例えば車両における振動または風化等により、それらを経時的に劣化させる可能性がある。
【0006】
採用されているその他のフォームは、米国特許第6,213,540号に記載のような膨張ポリプロピレンビーズおよびポリプロピレン融合フォームストランド等の密閉気泡結晶性または半結晶性熱可塑性フォームである傾向がある。これらの自動車用エネルギー吸収フォームはそれぞれ、高価であり、吸収される圧縮エネルギーの割に、望まれるよりも重量が大きい傾向がある。衝突エネルギーの効率的な吸収のためには、フォームは、米国特許第6,213,540号および米国特許公開第2006/0148919号に記載のように、異方性気泡による異方性強度を有する必要があった。この配向性のために、これらのフォームは、予測される衝撃吸収を得るためには、フォームに対する予測される衝撃の方向に対し適切に配向していなければならなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、安価で、低重量で、良好なエネルギー吸収性を有し、複数の衝撃方向における均一な効率的衝撃吸収を有する、車両用エネルギー吸収フォームを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所与の変位幅にわたりより多くのエネルギーを消散させることができる、優れた圧縮効率を達成しながら任意の配向で使用され得る熱可塑性フォームを発見した。この驚くべき、また望ましい結果は、フォームの破砕性を最小化または本質的に排除しつつ達成される。破砕性の最小化または排除は、例えば振動または風化により経時的に劣化しないフォームを実現する。
【0009】
本発明は、構造要素と接触した熱可塑性気泡状ポリマーを備えるエネルギー吸収部材であり、気泡状ポリマーは、少なくとも約0.75mmの平均気泡サイズを有し、C/C、C/CおよびC/Cの少なくとも1つは約0.25から約0.4であり、C/C、C/CおよびC/Cの前記1つは、60%歪みで少なくとも70%の圧縮効率を有し、C、CおよびCは、3つの直交方向E、VおよびHのそれぞれにおける気泡状ポリマーの圧縮強度であり、これらの方向の1つは、フォーム中の最大圧縮強度の方向であり、Cは、C、CおよびCの和に等しい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
エネルギー吸収部材
本発明は、構造要素と接触した熱可塑性気泡状ポリマーを備えるエネルギー吸収部材である。エネルギー吸収部材の構造要素は、車両事故等の衝撃のエネルギーを消散させるための気泡状ポリマー(本明細書において交換可能に「フォーム」と呼ばれる)を支持するかまたはそれと接触して機能する任意の構造である。構造要素の例は、車両用ドアパネル、ビーム、ダッシュボードおよび屋根;ヘルメットの外皮;ならびにガードレールである。好ましくは、構造要素は、レーストラック用ガードレールもしくは柵を含むガードレールもしくは車道上の柵、自動車もしくはトラックのドアパネル、ドアビーム、ダッシュボード、または屋根である。構造部材は、気泡状ポリマーを支持しその下地として機能するものであり、構造部材が、もしそうである可能性があるとしても、必然的により大きなデバイス(例えば車両等)の構造要素である構成部品であることを暗示することは意図されないことが理解される。
【0011】
エネルギー吸収部材はまた、熱可塑性気泡状ポリマーを含む。熱可塑性気泡状ポリマーは、半結晶性または非晶質であってもよい。非晶質とは、当技術分野において一般に理解されているように、(1)明確な結晶構造が欠如している、および(2)区別可能な顕著なゴム様領域を示すものを意味する。しかしながら、非常に微細な秩序構造がある程度存在し得るが、そのような秩序のサイズに起因して、例えばそのような秩序を測定する技術はそれらを検出できないか、または非晶質材料と実質的に異ならない。例えば、秩序領域は、そのような領域が存在する場合に、該領域が最大でも約50から100ナノメートルのサイズのものであるような散漫散乱をX線回折が示すような、小さいサイズのものであり得る。ポリマーが非晶質であっても、非常に明確なゴム様領域が存在しない限りは、ごく一部が局所的な秩序をいくらか示し得る。例えば、X線回折パターンは、X線技術のノイズの上に認識可能な小さなピークを示し得る。本明細書において、半結晶性とは、非晶質ポリマーに関する上記よりも高い明確な融点および結晶性構造を有するが、ミリメートルを超えるオーダーの領域を有さないことを意味する。好適な半結晶性ポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらのコポリマー等のポリオレフィンポリマーが含まれる。
【0012】
ポリマーとは、合成有機ポリマーを意味すると理解され、任意の好適な熱可塑性ポリマーであってよい。例示的な好適な非晶質ポリマーには、ポリスチレン系およびポリスチレン系コポリマーが含まれる。ポリスチレン系とは、スチレンモノマー、スチレンモノマーの誘導体(例えば置換スチレン)、またはこれらの組合せであるポリマーを意味する。置換スチレンの例は、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンである。好ましくは、ポリスチレン系ポリマーは、ポリスチレンである。
【0013】
ポリスチレン系コポリマーとは、上述のスチレン系モノマー(スチレンおよびスチレンモノマーの誘導体)と、スチレン系モノマーではないコモノマーとのコポリマーを意味する。例示的なコモノマーには、アクリロニトリル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、メチル、エチルもしくはブチルアクリレート、メタクリロニトリル、マレイミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸またはこれらの組合せが挙げられる。コモノマーは、好ましくはアクリロニトリル、無水マレイン酸、またはこれらの組合せである。より好ましくは、コモノマーは、アクリロニトリルである。
【0014】
一般に、ポリスチレン系コポリマー中のスチレン系モノマーの量は、コポリマーの少なくとも約50モル%である。典型的には、コモノマーの量は、ポリスチレン系コポリマーの約1モル%から50モル%である。好ましくは、コモノマーの量は、ポリスチレン系コポリマーの少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも約10モル%、さらにより好ましくは少なくとも約20モル%、最も好ましくは少なくとも約25モル%である。
【0015】
好ましいポリスチレン系コポリマーは、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)である。SANコポリマーは、1重量%から50重量%のアクリロニトリルを有し得る。好ましくは、アクリロニトリルは、SANコポリマーの少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、および最も好ましくは少なくとも約15重量%から、好ましくは最高40重量%、より好ましくは最高約35重量%、最も好ましくは最高約30重量%の量で存在する。
【0016】
ポリマーは、いかなる有用な重量平均分子量(Mw)のものであってもよい。例えば、ポリスチレン系またはポリスチレン系コポリマーのMwは、10,000から1,000,000であってもよい。ポリスチレン系またはポリスチレン系コポリマーのMwは、望ましくは約200,000未満であり、これは驚く程に効率を向上させながら破砕性に悪影響を与えない。昇順のさらなる優先順位において、ポリスチレン系またはポリスチレン系コポリマーのMwは、約190,000、180,000、175,000、170,000、165,000、160,000、155,000、150,000、145,000、140,000、135,000、130,000、125,000、120,000、115,000、110,000、105,000、100,000、95,000、および90,000未満である。明確性のために、本明細書において、分子量(MW)は、異なるように明示していない限り、重量平均分子量として報告される。MWは、当技術分野で知られているもの等の任意の好適な方法により決定することができる。
【0017】
さらに、ポリマーは、それが熱可塑性ポリマーを維持する限り、その他の添加剤も含有し得る。その他の添加剤の例には、少量の架橋剤(例えばジビニルベンゼン)、着色剤、UV保護剤、酸化防止剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤、気泡核形成調整剤等が挙げられる。
【0018】
エネルギー吸収部材中のポリマーは気泡状である。気泡状(フォーム)とは、当技術分野において一般に理解される意味を有し、ポリマーが実質的に低下した見掛け密度を有し、密閉したまたは開放した気泡を含む。密閉気泡は、その気泡内のガスが、気泡を形成するポリマー壁により別の気泡から隔離されていることを意味する。開放気泡は、その気泡内のガスがそれほど制限されておらず、いかなるポリマー気泡壁をも通過せずに大気中に流出することができることを意味する。慣例により、開放気泡フォームは、ASTM法D6226−05に従い、30%以上の開放気泡含有量を有する。密閉気泡フォームは、同方法による30%未満の開放気泡含有量を有する。
【0019】
気泡状ポリマーは、少なくとも1つの方向における驚くべき効率により特徴付けられ、C/C、C/CおよびC/Cの少なくとも1つは0.25から0.4であり、C/C、C/CおよびC/Cの前記1つは、60%歪みで少なくとも70%の圧縮効率を有し、C、CおよびCは、3つの直交方向E、VおよびHのそれぞれにおける気泡状ポリマーの圧縮強度であり、これらの方向の1つは、フォーム中の最大圧縮強度の方向であり、Cは、C、CおよびCの和に等しい。
【0020】
圧縮強度は、フォームの圧縮強度が3つの直行方向E、VおよびHにおいて評価される場合に確立される。これらの測定された圧縮強度C、CおよびCは、それぞれ、これらの圧縮強度の和Cに関連し、C/C、C/CおよびC/Cの少なくとも1つが0.25から0.4の値を有する、好ましくは少なくとも2つが0.25から0.4の値を有する、最も好ましくはそれらのそれぞれが0.25から0.4の値を有する。当然ながら、C/C、C/CおよびC/Cの和は常に1に等しい。完全に等方性の気泡状ポリマーの場合、C/C、C/CおよびC/Cのそれぞれが0.33に等しくなる。したがって、C/C、C/CおよびC/Cのいずれかが0.33を超える場合、他の2つのうちの少なくとも1つは0.33未満の値を有する。好ましい実施形態において、これらの比率のそれぞれは、0.30から0.37の値を有する。
【0021】
好ましい実施形態において、フォームは、押し出された気泡状ポリマーであり、方向Eは押出し方向であり、方向Vは、押出しダイを出た後の気泡状ポリマーの垂直膨張の方向であり、方向Hは、押出しダイを出た後の気泡状ポリマーの水平膨張の方向である。方向E、VおよびHは、他のプロセスで作製された気泡状ポリマーに関しては任意の記号表示である。フォームが押し出された気泡状ポリマーである場合、V方向は、最大の圧縮強度を有する方向とみなされる。
【0022】
本発明のフォームの驚くべき効率を達成するために、フォームは、ASTM D3576等の標準的方法により決定される、少なくとも約0.75mmの直径の平均気泡サイズを有する気泡を有する。平均気泡サイズは、直交方向E、VおよびHのそれぞれにおいて決定し、これらの方向の各々における平均寸法(それぞれD、DおよびD)を決定することができる。D、DおよびDの和が計算され、D気泡と指定される(すなわち、平均気泡サイズ)。平均気泡サイズは、一般に、約0.75mmから約10.0mmである。平均気泡サイズは、昇順で少なくとも1、1.1、1.2、1.3、1.4および1.5mmから、昇順で最大4、3.5、3、2.5および2mmとなることができ、典型的にはそれが望ましい。
【0023】
同じように、E、V、およびH方向における直径の比率は、圧縮強度に関して決定することができる。同様に、本明細書において、圧縮強度比に適用される同じ比率が直径に適用され、顕微鏡により、気泡形状を使用して最大圧縮強度の方向を速やかに決定することができる。すなわち、それと平行な最も大きい直径を有する方向が、通常最も大きい圧縮強度を有する方向に対応する。
【0024】
エネルギー吸収部材のフォームは、望ましくは破砕性ではなく、驚くべきことに、本発明のフォームは、25%重量損失よりも少ない破砕性を有し得る。破砕性は、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.5%、またはさらに1%材料損失より少なくてもよい。破砕性は、ASTM C421−00等の標準的方法により決定することができる。
【0025】
フォームは、開放気泡のみを含むか、密閉気泡のみを含むか、またその間の任意の組合せを含むことができる。例えば、フォームは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、さらに90%の開放気泡を有し得る。
【0026】
また、エネルギー吸収部材中のフォームは、望ましくは、十分なエネルギー吸収を提供しながら可能な限り低い密度を有し、これは、典型的には予測される特定の衝撃の関数である。頭部ライナー対策、ヘルメット等の頭部負傷軽減用途を意図した衝撃吸収部材において、気泡状ポリマーはまた、有利にも、0.08s−1の歪み速度で25〜50mm厚の試料に対し測定して、25%歪みで少なくとも250kPa、好ましくは少なくとも290kPaから、約700kPa、特に約600kPaまでの圧縮強度を示す。これらの用途において、気泡状ポリマーは、有利にも、約3.5ポンド/立方フィート(56kg/m)以下、好ましくは約2.5ポンド/立方フィート(40kg/m)以下、より好ましくは約2.35ポンド/立方フィート(37.6kg/m)以下の密度を有する。好ましくは、密度は、少なくとも約1.5ポンド/立方フィート(24kg/m)である。特に好ましい密度は、約1.75から約2.2ポンド/立方フィート(28〜35.2kg/m)である。これらの圧縮強度および密度を有する気泡状ポリマーは、FMVSS201(U)に従い測定された、特に低いHIC(d)値を有する傾向があることが判明している。頭部負傷軽減用途における使用に特に好ましい気泡状ポリマーは、上で示したように試験した場合、25%歪みで290〜600kPaの圧縮強度、1.5から2.2ポンド/立方フィート(24〜35.2kg/m)の密度、および3〜10%歪みの弾性限界を有する。
【0027】
骨盤用ボルスター等の骨盤負傷保護軽減用途では、気泡状ポリマーはまた、有利にも、0.08s−1の歪み速度で25〜50mm厚の試料に対し測定して、25%歪みで少なくとも250kPa、好ましくは少なくとも350kPaから、約1000kPa、特に約900kPaまでの圧縮強度を示す。これらの用途において、気泡状ポリマーは、有利にも、5ポンド/立方フィート(80kg/m)以下、好ましくは4.5ポンド/立方フィート(72kg/m)以下の密度を有する。好ましくは、密度は、少なくとも2.0ポンド/立方フィート(32kg/m)である。特に好ましい密度は、約2.1から約4.0ポンド/立方フィート(34〜64kg/m)である。これらのより堅い気泡状ポリマーはまだ、広い歪み範囲にわたり所望のほぼ一定な圧縮応力を示す傾向がある。骨盤負傷保護用途における使用に特に好ましい気泡状ポリマーは、上で示したように試験した場合、25%歪みで300〜900kPaの圧縮強度、2.1から4.0ポンド/立方フィート(34〜64kg/m)の密度、および3〜10%歪みの弾性限界を有する。
【0028】
胸部用ボルスター等の胸部軽減用途では、気泡状ポリマーはまた、有利にも、0.08s−1の歪み速度で25〜50mm厚の試料に対し測定して、予想される衝撃の方向において25%歪みで少なくとも150kPa、好ましくは少なくとも200kPaから、約700kPa、特に約500kPaまでの圧縮強度を示す。これらの用途において、気泡状ポリマーは、有利にも、3.0ポンド/立方フィート(48kg/m)以下、好ましくは2.0ポンド/立方フィート(32kg/m)以下の密度を有する。好ましくは、密度は、少なくとも1.25ポンド/立方フィート(20kg/m)である。特に好ましい密度は、約1.5から約2.0ポンド/立方フィート(24〜32kg/m)である。これらのより柔軟な気泡状ポリマーは依然として、広い歪み範囲にわたり所望のほぼ一定な圧縮応力を示す傾向がある。胸部負傷保護用途における使用に特に好ましい気泡状ポリマーは、上で示したように試験した場合、25%歪みで150〜400kPaの圧縮強度、1.5から2.0ポンド/立方フィート(24〜32kg/m)の密度、および3〜10%歪みの弾性限界を有する。
【0029】
気泡状ポリマーは、V、E、またはHのうちの少なくとも1方向において、60%歪みで少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも78%、好ましくは少なくとも80%の圧縮効率を有し、Cに対するC、C、またはCは、0.25から0.4である。同様に、前記方向が、65%歪みで少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、さらにより好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも75%の圧縮効率を有することが好ましい。本発明により、60〜65%歪みで85%以上の圧縮効率を得ることができる。好ましくは、少なくとも2つの方向が上述の効率および比率を有し、最も好ましくは、3つの方向のすべてが上述の効率および比率を有する。
【0030】
圧縮効率は、前述した様式で0.08s−1の歪み速度でフォームを圧縮し、瞬間的な負荷およびクロスヘッド変位を記録することにより計算される。瞬間的な負荷を、圧縮方向に垂直なフォーム検体の元の断面積で除することにより、一時的な公称応力(engineering stress)が計算される。一時的な公称歪み(engineering strain)は、厚さの変化を元の厚さで除することにより計算される。したがって、以下の関係
【0031】
【数1】

(σは、典型的にはMPaでの瞬間的な公称応力を表し、εは、公称歪みを表し、σmaxは、瞬間的な公称応力と同じ単位での、達成される最大公称応力を表す)を使用して、圧縮効率が計算される。例えば、垂直(すなわちy)軸を応力とした公称応力対公称歪み曲線を考えると、100%効率曲線は矩形として示され、50%効率曲線は直角三角形として示され、応力は直線的に増える。そのような矩形曲線は、米国特許公開第2006/0148919号の図1のグラフ1に示されている。
【0032】
気泡状ポリマーの気泡は、ASTM D−3576−98により測定すると、約0.75から約10.0mmの平均サイズを有し得る。気泡サイズは、一般に、昇順で少なくとも0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4および1.5mmから、昇順で最大4、3.5、3、2.5および2mmとなり得る。
【0033】
天然の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度とは対照的に、フォームの有効ガラス温度は、エネルギー吸収部材におけるフォームのガラス転移温度であり、有効なガラス温度は、例えば、発泡剤がフォームのポリマーのガラス転移温度に対し有し得る可塑化効果を考慮するために使用される。本発明は、フォームの有効ガラス転移温度が約75℃から約140℃である熱可塑性ポリマーに特に有用である。本発明は、低いガラス転移温度を有するフォームを可能とし、その他に加熱時に拡張または膨張してより高い温度で寸法的に安定となり得るので、特に有用である。好ましくは、有効ガラス転移温度は、少なくとも約80℃、より好ましくは少なくとも約85℃、さらにより好ましくは少なくとも約90℃、最も好ましくは少なくとも約95℃から、好ましくは最高約135℃、より好ましくは最高約130℃、さらにより好ましくは最高約125℃、最も好ましくは最高約120℃である。
【0034】
フォームの有効ガラス温度は、ASTM D4065−01動的機械的特性決定方法で決定することができる。フォームの弾性および損失係数は、動的熱力学分析機器、例えばRheometric Scientific Inc、TA Instruments Group(デラウェア州ニューキャッスル)製のRheometric Scientific RDA III Dynamic Mechanical AnalyzerまたはRheometrix Dynamic Mechanical Thermal Analyser RSA IIを用いて測定される。これらの係数は、温度の関数であり、特定の温度範囲で急速に変化する。急速な係数変化の領域は、通常、遷移領域と呼ばれ、標準に従いTgが決定される。
【0035】
エネルギー吸収部材のフォームは、常に発泡剤を使用して形成され、例えば、典型的には、気泡中にある程度の残留発泡剤を有するか、ポリマー自体に可溶化されている。フォームは、任意の好適な発泡剤、例えば揮発性脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素、クロロフルオロ化炭化水素、大気中に存在するガス(例えば酸素、窒素、二酸化炭素、水素、水蒸気、ヘリウム等)、またはそれらの組合せ等を有し得る。
【0036】
揮発性炭化水素の例には、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、イソブテン、ペンタン、シクロペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、またはこれらの混合物が挙げられる。塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素、およびクロロフルオロ化炭化水素の例には、塩化メチル、ジクロロジフルオロメタン、オクタフルオロシクロブタン、クロロジフルオロメタン、1,2−ジクロロテトラフルオロエタン、1,1−ジクロロテトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、2−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、2−クロロ−1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロプロパン、トリクロロトリフルオロエタン、ジフルオロメタン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン、2,2−ジフルオロプロパン、塩化エチル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
例えば、ポリスチレン系およびポリスチレン系コポリマーは、典型的には、ガス発泡剤としてクロロフルオロ炭化水素を用いている。これらは、ポリマーを可塑化して有効ガラス転移温度を低下させる傾向があり、これにより、フォームが寸法的に安定化できなくなる可能性がある。これらはまた、その遅い拡散速度のために、フォームが長時間エージングされた後であっても、平均ガス圧が1気圧を超えるフォームを形成する傾向があった。結果的に、少なくとも1種の発泡剤、または、発泡剤の混合物のうちの1成分は、空気よりも実質的に速いフォームを通した拡散速度を有し、上述の平均ガス圧を有するフォームの形成を促進することが好ましい。この文脈において、より実質的に速いとは、発泡剤の拡散速度が、空気の拡散速度より少なくとも約2倍速いことを意味する。空気の拡散は、空気中でのそれぞれの存在により加重された、酸素および窒素の平均拡散速度とみなされる。好ましくは、発泡剤の拡散速度は、空気の拡散速度よりも、少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、さらにより好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍速い。
【0038】
例えば、環境上の懸念のために、本発明の特に望ましい実施形態は、非晶質熱可塑性ポリマーがポリスチレン系またはポリスチレン系コポリマーであり、発泡剤が二酸化炭素、水またはそれらの組合せを含む場合である。この実施形態のためには、好ましくは、主発泡剤は二酸化炭素である。
【0039】
エネルギー吸収部材の形成
エネルギー吸収部材は、以下の方法等の任意の好適な方法により作製することができる。熱可塑性ポリマーおよび発泡剤を一緒に混合する。当技術分野で知られたもの等、ポリマーおよび発泡剤を混合する任意の好適な方法を使用することができる。例えば、米国特許第3,231,524号、第3,482,006号、第4,420,448号および第5,340,844号に記載のように、押出機内で加熱されているポリマーに発泡剤を注入してもよく、または、米国特許第4,485,193号、およびこの特許がカラム3、6〜13行目で引用している米国特許のそれぞれに記載のように、典型的には圧力下でポリマービーズに発泡剤を添加してもよい。
【0040】
ポリマーおよび発泡剤が混合された後、ポリマーおよび発泡剤はある形状に形成されるが、これは最終形状であっても、中間的形状であってもよく、また当技術分野で知られているもの等の任意の好適な方法により行うことができる(例えば、押し出された膨張厚板や膨張ビーズフォーム等)。例えば、押出しを使用する場合、フォームの厚板を形成し、後にこれをより複雑な最終形状にワイヤー切断してもよく、または、板を便利な形状に切断してからより望ましい最終形状に熱成形してもよい。
【0041】
そのような熱成形は当技術分野では周知であり、例えば米国特許第2,899,708号、第3,334,169号、第3,484,510号、第3923,948号および第4,359,160号に記載されており、成形フォームを形成した後任意の時点で行うことができるが、好ましくは、成形フォームが特定のガス圧に達した後に行われる。熱成形中の密閉気泡の平均ガス圧は、いかなる有用な圧力であってもよいが、圧力を高める可能性のある熱成形中のフォームの圧密のため、有利にはより低い圧力である。例えば、フォームのガス圧は、一般に、最大約1気圧、好ましくは最大約0.95気圧0.9、より好ましくは最大約0.85、最も好ましくは、最大約0.8から、少なくとも約0.5であるのが望ましい。
【0042】
好ましい方法において、押し出されたフォーム厚板が形成され、これは次いで、押し出されたフォーム厚板の表面で開放気泡を形成するために削られ、および/または穿孔される。フォーム厚板の少なくとも頂部および底部の両方が削られるのが好ましい(すなわち、厚板の大きな表面、または例えば、4’×8’×1”厚板の4’×8’表面)。厚板を穿孔する際、穿孔は厚板の深さ全体にわたって延びることができ、または止まり穴を形成することができる。穿孔は、捕捉された可燃性炭化水素ガス(例えばイソブタンおよびペンタン等)をフォーム厚板から解放するために使用される、米国特許第5,424,016号に記載のものと同様の様式で作製することができる。
【0043】
さらに、望ましい場合は、フォームは、部品を形成するために有用な気泡ガス圧を達成するために、周囲温度より高いがフォームが歪む可能性のある温度を下回る温度で処理されてもよく、これは、使用される特定のポリマーに依存して容易に決定することができる。フォームはまた、異なる雰囲気に曝されてもよく、例えば、雰囲気は、水が発泡剤として使用される場合は乾燥空気であってもよい。成形フォームの周囲の雰囲気の圧力は、フォームが歪む程には真空または加圧が大きくない限り、大気圧未満(真空)または加圧であってもよい。好ましくは、便宜上、圧力は周囲圧力であり、雰囲気は空気である。
【0044】
フォームはまた、フォームの表面の一部または表面全体に取り付けられた装飾用裏地または不透膜を有してもよい。不透膜は、フォームの中への、またはフォームから外へのガスの移動を制限または止める任意の材料のものであってよい。そのようなフィルムは、当技術分野で知られているもの等の任意の好適な方法により適用することができる(例えばスパッタリング、化学気相堆積、付着性の箔、接着剤または熱融着を使用したフィルムまたはシート等)。不透膜の例には、金属箔(例えば、銀、アルミニウム、スチール箔等の鉄系箔等)およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリアミドフィルム、またはその組合せ等のプラスチックフィルムが含まれる。
【0045】
最後に、エネルギー吸収部材を作製するために、フォームが構造部材に取り付けられる。処理された成形フォームは、例えばヘルメットの外皮またはドアパネルにおいて膨張性ビーズフォームを使用する場合、例えば構造部材の空洞内で直接発泡させることができる。フォームの付着を促進するために、空洞を構造要素中に組み込むことができる。フォームはまた、例えば、機械的なもの(例えばファスナー)または化学的なもの(例えば接着剤、および、フォームが構造要素に接触したときにフォームが構造部材に融着するように十分な温度まで構造部材を加熱する、および溶剤をフォーム表面に塗布して構造部材に接触させることにより融着する等)を含む、当技術分野で知られているもの等の任意の好適な方法により、構造要素に取り付けることができる。
【0046】
以下の特許請求の範囲は、明示的に互いに従属しない場合もあるが、本発明は、任意の1つまたは複数の請求項と組み合わせた任意の1つの請求項の1つまたは複数の実施形態の任意の組合せを企図する。
【0047】
試験方法
密度:フォーム密度は、重量および幾何学量から決定した。
【0048】
気泡サイズ:フォームの気泡サイズは、ASTM D3576−98に記載のようなラインインターセプト法により、直交方向E、V、およびHのそれぞれにおいて決定し、そこから平均気泡サイズを決定した。
【0049】
破砕性:破砕性は、ASTM C421−00を使用して決定した。
【0050】
圧縮強度:圧縮強度は、50kNロード気泡および0.08s−1の歪み速度を用いて駆動されるリニア可変差動トランスデューサ(LVDT)を装備したMaterials Test System Alliance RT−50を使用して、長方形フォーム試料に対して決定した。圧縮強度は、3つの直交方向に対して個々に決定したが、「E」方向は、押出しにより作製されるフォームの押出し方向に対応し、「V」は、フォームが押出しダイを出た後の起立方向に対応し(重力と平行)、「H」は、押出しダイを出た後のフォームの水平膨張に対応する。定義により、圧縮強度は、1)降伏応力または2)10%歪みでの応力のいずれかの最大値である。
【実施例】
【0051】
実施例1
米国特許第5,244,928号、実施例3に記載のものと同様の様式で作製された、10”×20”×109”STYROFOAM押出しフォームポリスチレンパイプビレット(The Dow Chemical Companyから市販されている)を、試験目的で入手した。フォームは、HCFC142B(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン)を発泡剤として使用して作製される。使用したアルケニル芳香族ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が168,000のポリスチレンであった。上述のようにフォームを分析および試験した。フォームの特性および試験結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
10.375”×24”×108.125”押出しポリスチレンの花およびクラフト用フォームビレット(The Dow Chemical Companyから市販されている)を入手した。フォームは、HCFC142B(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン)を発泡剤として使用して、米国特許第5,244,928号、実施例1に記載のものと同様の様式で作製される。使用したアルケニル芳香族ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が168,000のポリスチレンであった。上述のようにフォームを分析および試験した。フォームの特性および試験結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
R−7.8CELLOFOAM(商標)膨張ポリスチレン(EPS)ビーズフォームの2”×48”×96”厚板(Cellofoam North America Incorporated製)を、ミシガン州ミッドランドのLowe’s Home Center,Inc.から購入した(品番15357)。フォームは、ビーズフォームであったため、膨張時に互いに融合したフォームのビーズ間の細孔と、ビーズ内の気泡自体とに関連して、二峰性の気泡サイズを有していた。フォーム内の気泡の気泡サイズは、このフォームの特性の残りとともに表1に報告されている。フォームは、化学物質安全性データシート(MSDS)のセクション2に報告されているように、ペンタン(CAS No.109−66−0)で膨張された。
【0054】
比較例2
R−10 STYROFOAM SCOREBOARD(商標)押出しポリスチレン(XPS)被覆フォームの2”×48”×96”厚板(ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Company製)を、ミシガン州ミッドランドのLowe’s Home Center,Inc.から購入し(品番14541)、上述のように試験し、その結果を表1に示す。このフォームは、MWが約168,000のポリスチレンから作製され、HCFC 142B(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン)を使用して膨張された。
【0055】
比較例3
ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Co.から入手可能なETHAFOAM(商標)220を、上述のように試験し、結果を表1に示す。このフォームは、押出しポリエチレンフォームである。ポリエチレンは、MWが約137,000であり、イソブタンを用いて膨張された。
【0056】
比較例4
ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Co.から入手可能なIMPAXX(商標)300を、上述のように試験し、その結果を表1に示す。このフォームは、押出しポリスチレンフォームである。ポリスチレンは、MWが約146,000であり、二酸化炭素を用いて膨張された。
【0057】
比較例5
ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Co.から入手可能なSTYROFOAMTM FB−Xを、上述のように試験し、その結果を表1に示す。このフォームは、押出しポリスチレンフォームである。ポリスチレンは、MWが約146,000であり、HFC 134A(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)を用いて膨張された。
【0058】
比較例6
自動車Ford Freestyleの2006年モデルで利用されている骨盤用吸収材対策から、破砕性ポリウレタン(PU)フォーム検体を得た。複雑な3次元成形部品の元の寸法は、長さ約250mm、幅200mm、および厚さ60〜75mmであった。一般の帯鋸を用いて、この部品全体から単純な50mmの立方体試料を調製した。適切な配向を反映するように検体にラベルを付け(すなわち、垂直=厚さ、水平=幅、および伸長=長さ)、上述のように試験し、平均的結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1を検討すると、比較例1は、良好な等方性圧縮強度(R値は約0.33)を示しているが、全方向V、EおよびHにおけるその圧縮効率は実施例1より実質的に低く、実施例1は、60%歪みで70%を超える圧縮効率を有する0.3から0.4のR値を2つ有する。Rの等方性値のこの改善された効率は、主としてより大きな気泡サイズに起因すると考えられる。気泡サイズの効果はまた、実施例1から実施例2の気泡サイズの増加とともに効率が増加することによっても示されている(約75%から85%への効率の増加)。また、同様に、実施例1および2と同じプロセス(押出しポリスチレンフォーム)で作製された比較例2および4は、実質的により小さい気泡サイズを有し、複数の方向において同じ所望の圧縮効率を示さなかった。
【0061】
次に、比較例3を検討すると、このフォームはより大きい気泡サイズを有しているものの、すべての場合において、R値が0.4を超える場合でも、低い圧縮効率を示している。これは、半結晶性熱可塑性ポリマーであることに起因すると考えられる。
【0062】
比較例5に関して、このフォームは押出しポリスチレンフォームであり、実施例1と極めて類似しているが、0.25から0.4のR値で所望の圧縮効率を示さなかった。これは、比較例5の異なる発泡剤およびより大きな異方性に起因すると考えられる。すなわち、フッ化炭化水素発泡剤およびポリスチレン系またはポリスチレン系コポリマーを使用した場合、一般に、ハイドロ−フルオロ−カーボン(HFC)よりもハイドロ−フルオロ−クロロ−カーボン(HCFC)発泡剤を使用することが望ましい可能性があると思われる。
【0063】
本発明をさらに例示するために、作製されるフォームの密度を維持しながら、押出しポリスチレンおよびポリスチレンコポリマーを作製した。
【0064】
実施例3
本発明のプロセスに従い、9.5pph(重量百分率)のHCFC142B(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン)を主発泡剤として、3.5pphのHCFC22を二次発泡剤として使用して、押出しポリスチレンフォーム試料を調製した。直列式の2と1/2インチ(64mm)単軸押出機、ミキサー、冷却器、およびダイを使用して、91kg/hポリスチレン、フォーム温度約128℃でポリスチレンを押し出した。使用したアルケニル芳香族ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が168,000のポリスチレンであった。添加剤は、0.8pphのヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、0.05pphのステアリン酸バリウム、0.05pphのピロリン酸四ナトリウム、0.20pphの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であった。上述のようにフォームを分析および試験した。フォームの特性および各方向の圧縮効率を表2に示す。
【0065】
実施例4
本発明のプロセスに従い、2.0pphの二酸化炭素(CO)を主発泡剤として、1.7pphの水(HO)を二次発泡剤として使用して、押出しポリスチレンフォーム試料を調製した。実施例3の場合と同じ押出機を使用したが、102kg/hであり、成形温度は約139℃であった。使用したアルケニル芳香族ポリマーは、MWが168,000のポリスチレン90重量部と、MWが17,250のスチレン−アクリル酸(SAA)コポリマー10重量部のブレンドであった。SAAコポリマーは、約73%スチレンおよび27%アクリル酸(それぞれ重量%)を有していた。添加剤は、0.8pphのヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、0.05pphのステアリン酸カルシウム、0.05pphのピロリン酸四ナトリウム、0.20pphの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であった。上述のようにフォームを分析および試験した。フォームの特性および各方向の圧縮効率を表2に示す。
【0066】
実施例5
実施例4に関して説明されたのと同じ手順を使用してこのフォームを作製したが、ただしブレンドはポリスチレン80重量部およびSAAコポリマー20重量部であった。特性および各方向の圧縮効率を表2に示す。
【0067】
実施例6
本発明のプロセスに従い、2.0pphの二酸化炭素(CO)を主発泡剤として、1.7pphの水(HO)を二次発泡剤として使用して、押出しポリスチレンフォーム試料を調製した。生成されたフォーム構造は、所望の大きな平均気泡サイズを有していた。実施例3において説明されたのと同じ押出機を使用し、処理量を91kg/hrポリスチレン、および成形温度を123℃とした。使用したアルケニル芳香族ポリマーは、MWが84,100の85重量%スチレン−15重量%アクリロニトリル「SAN」コポリマーであった。添加剤は、1.1pphのヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、0.016pphのステアリン酸バリウム、0.10pphのピロリン酸四ナトリウム、0.20pphの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であった。上述のようにフォームを分析および試験した。フォームの特性および各方向の圧縮効率を表2に示す。
【0068】
実施例7〜11
実施例6に関して説明されたのと同じ手順を使用したが、ただしSANコポリマーのMWおよび/または発泡剤は、表2に示すように変更した。特性および各方向の圧縮効率を表2に示す。これらのそれぞれのフォーム温度は、約135℃から139℃であった。
【0069】
【表2−1】

【表2−2】

【0070】
表2から、本発明に有用なフォームを形成する際には、より低いMWのポリマーを有することが望ましいと思われる(例えば、実施例6、8および10または7、9および11を参照)。コポリマーに関する実施例はまた、70%歪みでさえも、全方向の圧縮効率は70%、またはさらに80%を超えることができることを実証している。
【0071】
以下の特許請求の範囲は、明示的に互いに従属しない場合もあるが、本発明は、任意の1つまたは複数の請求項と組み合わせた任意の1つの請求項の1つまたは複数の実施形態の任意の組合せを企図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造要素と接触した熱可塑性気泡状ポリマーを備えるエネルギー吸収部材であって、気泡状ポリマーは、少なくとも約0.75mmの平均気泡サイズを有し、C/C、C/CおよびC/Cの少なくとも1つは約0.25から約0.4であり、C/C、C/CおよびC/Cの前記1つは、60%歪みで少なくとも70%の圧縮効率を有し、C、CおよびCは、3つの直交方向E、VおよびHのそれぞれにおける気泡状ポリマーの圧縮強度であり、これらの方向の1つは、フォーム中の最大圧縮強度の方向であり、Cは、C、CおよびCの和に等しい、エネルギー吸収部材。
【請求項2】
構造要素が、ヘルメットの外皮、車両用ドアパネル、車両用ドアビーム、車両用屋根、車両用ダッシュボード、車道のガードレール、またはレーストラックの複合壁である、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項3】
構造要素が、車両用ドアパネル、車両用ドアビーム、車道のガードレール、またはレーストラックの壁である、請求項2に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項4】
熱可塑性気泡状ポリマーが、ポリスチレン系ポリマーまたはポリスチレン系コポリマーである、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項5】
熱可塑性気泡状ポリマーが、ポリスチレン系ポリマーである、請求項4に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項6】
ポリスチレン系ポリマーが、ポリスチレンである、請求項5に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項7】
熱可塑性気泡状ポリマーが、ポリスチレン系コポリマーである、請求項4に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項8】
ポリスチレン系コポリマーが、アクリロニトリル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、メチルアクリレート、メタクリロニトリル、マレイミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるスチレン系モノマーおよびコモノマーのコポリマーである、請求項7に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項9】
コモノマーが、アクリロニトリルである、請求項8に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項10】
アクリロニトリルが、熱可塑性気泡状ポリマーの約1重量%から約35重量%の量で存在する、請求項9に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項11】
アクリロニトリルが、最大約20%の量で存在する、請求項10に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項12】
アクリロニトリルが、最大約15%の量で存在する、請求項11に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項13】
熱可塑性気泡状ポリマーが、非晶質であり、発泡剤の残渣を含有する、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項14】
発泡剤が、揮発性脂肪族炭化水素、二酸化炭素、水、またはこれらの組合せである、請求項13に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項15】
発泡剤が、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、イソブテン、ペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、二酸化炭素、水またはこれらの組合せである、請求項14に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項16】
発泡剤が、二酸化炭素、水、またはこれらの組合せを含む、請求項15に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項17】
/C、C/CおよびC/Cのそれぞれが、0.3から0.4である、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項18】
/C、C/CおよびC/Cのそれぞれが、60%歪みで少なくとも70%である圧縮効率を有する、請求項17に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項19】
発泡剤が、二酸化炭素、水、またはこれらの組合せである、請求項13に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項20】
それぞれが、60%歪みで少なくとも70%の圧縮効率を有する、請求項17に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項21】
圧縮効率が、少なくとも75%である、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項22】
圧縮効率が、少なくとも80%である、請求項21に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項23】
熱可塑性気泡状ポリマーの気泡の少なくとも約70%が、密閉気泡である、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項24】
熱可塑性気泡状ポリマーの気泡の少なくとも約90%が、密閉気泡である、請求項23に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項25】
圧縮効率が、少なくとも75%である、請求項20に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項26】
/C、C/CおよびC/Cの少なくとも2つが、60%歪みで少なくとも70%である圧縮効率を有する、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項27】
圧縮効率が、60%歪みで少なくとも75%である、請求項26に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項28】
気泡状ポリマーの破砕性が、最大約10重量%材料損失の破砕性を有する、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項29】
破砕性が、最大5重量%材料損失である、請求項28に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項30】
熱可塑性気泡状ポリマーが、非晶質熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項31】
熱可塑性気泡状ポリマーが、半結晶性熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項32】
半結晶性熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン系ポリマーである、請求項31に記載のエネルギー吸収部材。
【請求項33】
ポリオレフィン系ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらのコポリマーである、請求項32に記載のエネルギー吸収部材。

【公表番号】特表2010−530499(P2010−530499A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511257(P2010−511257)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/065213
【国際公開番号】WO2008/150955
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】