説明

エポキシ樹脂組成物および半導体装置

【課題】本発明の目的は、耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物および半導体装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材および(D)環状ジスルフィド構造を有する化合物を含むことを特徴とする。また、本発明の半導体装置は上記に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子の封止方法として、エポキシ樹脂組成物による成形封止が低コスト、大量生産に適しており、採用されている。さらに、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により特性の向上が図られてきた。
しかし、近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進み、また半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では解決出来ない問題点も出てきている。
【0003】
例えば、表面実装の採用により半導体装置が半田浸漬或いは半田リフロー工程で急激に200℃以上の高温にさらされ、吸湿した水分が爆発的に気化する際の応力により、半導体装置内、特に半導体素子、リードフレーム、インナーリード上の金メッキや銀メッキ等の各種メッキされた各接合部分とエポキシ樹脂組成物の硬化物の界面で剥離が生じたりして、信頼性が著しく低下する現象である。
さらに、環境問題に端を発した有鉛半田から無鉛半田への移行に伴い、半田処理時の温度が高くなり、半導体装置中に含まれる水分の気化によって発生する爆発的な応力による耐半田性が、従来以上に大きな課題となってきている。
【0004】
半田処理による信頼性低下を改善するために、エポキシ樹脂組成物中の無機質充填材の充填量を増加させることで低吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し耐半田性を向上させ、低溶融粘度の樹脂を使用して、成形時に低粘度で高流動性を維持させる手法がある(例えば、特許文献1参照。)。この手法を用いることにより耐半田性がかなり改良されるが、無機充填材の充填割合の増加と共に、流動性が犠牲になり、エポキシ樹脂組成物がパッケージ内に十分に充填されず、空隙が生じやすくなる欠点があった。
また、メッキ部とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面での剥離を防止する為、ジスルフィド化合物によって金属と樹脂の密着性を高めることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)が、十分な耐半田性を達成するには至っていない。このようなことから、無鉛半田に対応する高温の半田処理によっても剥離やクラックが発生しない良好な耐半田性を達成するための、更なる技術が求められている。
【0005】
【特許文献1】特公平7−37041号公報
【特許文献2】特開2004−285316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(7)に記載の本発明により達成される。
(1)半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材と、(D)環状ジスルフィド構造を有する化合物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(2)前記(D)成分が、α−リポ酸および/またはその誘導体である前記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)前記(D)成分が、アルコール性水酸基を有する環状ジスルフィド化合物である前期(1)又は(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4)さらに(E)硬化促進剤を含むものである前記(1)ないし(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0008】
(5)前記(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂である前記(1)ないし(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(6)前記(B)硬化剤が、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂である前記(1)ないし(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
(7)前記(1)ないし(6)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物および半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物および半導体装置について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材および(D)環状ジスルフィド構造を有する化合物を含むことを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、上記に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする。
【0015】
まず、エポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含む。本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。このようなエポキシ樹脂の中でも下記一般式(1)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐燃性、耐半田性を特に向上することができる。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)全体の配合割合としては、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、2重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、2.5重量%以上、8重量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂(A)全体の配合割合が上記範囲内であると、耐半田性の低下、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0018】

本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤(B)を含む。本発明で用いられる硬化剤(B)は、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、それらの具体例としてはフェノール系樹脂、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物およびメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンなどが挙げられこれらを単独で用いても、2種以上の硬化剤を併用しても良い。
【0019】
これらの硬化剤の中でも特にフェノール系樹脂を用いることが好ましい。本発明に用いるフェノール系樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。このようなフェノール系樹脂の中でも下記一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。これにより、耐燃性、耐半田性を特に向上することができる。
【0020】
【化2】

【0021】
本発明で用いられる硬化剤(B)の配合割合は、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、1重量%以上、8重量%以下であることが好ましく、2重量%以上、6重量%以下であることがより好ましい。硬化剤(B)の配合割合が上記範囲内であると、耐半田性の低下、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0022】
エポキシ樹脂と硬化剤であるフェノール系樹脂の配合割合としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(Ep)と全フェノール系樹脂のフェノール性水酸基数(Ph)との比(Ep/Ph)が0.8以上、1.3以下であることが好ましく、特に0.9以上、1.25以下であることが好ましい。比が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等を引き起こす可能性が低い。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無機充填材(C)を含む。本発明で用いられる無機充填材(C)としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状の溶融シリカである。これらの無機充填材は、1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0024】
本発明で用いられる無機充填材(C)の平均粒子径は、特に限定されないが、5μm以上、50μm以下が好ましく、特に10μm以上、45μm以下が好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、流動性は良好で、下限値を下回ると十分な流動性が得られず、上限値を上回ると成形時の充填性が悪くなり、空隙が多く生じる恐れがある。
【0025】
本発明で用いられる無機充填材(C)の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の75重量%以上、94重量%以下が好ましく、特に80重量%以上、92重量%以下が好ましい。含有量が上記範囲内であると、耐半田性の低下や流動性の低下を引き起こす可能性が低い。
【0026】
本発明においては、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)を使用することが必須である。非環状のジスルフィド化合物を使用することにより、エポキシ樹脂組成物の耐半田性を向上させる効果はあるが、環状ジスルフィド構造を使用することにより、その構造上の特性から耐半田性が顕著に向上する効果が得られる。このように、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)を用いることにより、耐半田性が優れる理由は、以下のように考えられる。非環状のジスルフィド化合物の場合、金属表面でS−S結合が解裂するため、金属と結合する硫黄原子が1分子につき1つになる。しかし、環状ジスルフィド構造を有する化合物の場合には、金属表面でS−S結合が解裂した後、金属と結合する硫黄原子の数が1分子につき2つになるため、より強固に金属と結合する。その結果、金属との密着性がさらに高まり、耐湿信頼性、耐半田性の更なる改善を可能にしていると考えられる。
環状ジスルフィド構造を有する化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
一般式(3)で表される構造を有する化合物において、kは1〜6の整数であり、R1〜R6は水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基もしくはこれらの置換基を有する炭素数1〜16の有機基、又は水素原子であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、分子量が500未満であることが好ましく、分子量が300未満であることがより好ましい。また、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基等の水素結合し得る置換基を有することが好ましく、アルコール性水酸基を有することが特に好ましい。このような置換基を、分子中に1個以上有することが好ましく、2個以上有することが特に好ましい。
【0029】
本発明で用いられる成分(D)の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.01重量%以上、1重量%以下が好ましく、特に0.02重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。下限値を下回ると密着性向上の効果が薄れる可能性があり、上限値を超えると成形物の強度を低下させ、パッケージの信頼性を損なう恐れがある。
【0030】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤を用いることが出来る。具体的な化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナミン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうちエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシランが好ましく、アミノシランとしては、1級アミノシラン又はアニリノシランが好ましい。またこれらは2種以上併用した方がより効果が高く、特にアニリノシランとエポキシシラン又はメルカプトシラン又は1級アミノシランを併用するのが好ましく、エポキシシラン、メルカプトシラン、1級アミノシラン、アニリノシラン4種類併用するのが最も好ましい。
【0031】
このようなシランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.01重量%以上、1.5重量%以下が好ましく、特に0.03重量%以上、1重量%以下が好ましい。シランカップリング剤の配合量が上記範囲内であると、さらなる低粘度化と流動性向上効果が期待できる。また、上記範囲内であれば、硬化性の低下を引き起こす可能性が低い。また、これらシランカップリング剤は、予め水或いは必要に応じて酸又はアルカリを添加して、加水分解処理して用いてもよく、また予め無機充填材に処理されていてもよい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に限定されないが、硬化促進剤(E)を含むことが好ましい。これにより、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進することができ、良好な流動性と硬化性を併せ持つことができる。
本発明で用いることができる硬化促進剤(E)は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤(例えば、フェノール系樹脂のフェノール性水酸基)との反応を促進するものであればよく、一般に半導体素子の封止材であるエポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物等のリン原子含有化合物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種類を単独で用いても2種以上を併用して差し支えない。これらのうち、リン原子含有化合物が好ましく、特に流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が好ましく、またエポキシ樹脂組成物の硬化物の高温下における低弾性率化という点を考慮するとホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物がより好ましい。
【0033】
有機ホスフィンとしては、例えば、エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0034】
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、テトラ置換ホスホニウムブロマイドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加える。すると、一般式(4)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(4)で表される化合物において、リン原子に結合するR7、R8、R9およびR10がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0037】
ホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化5】

【0039】
一般式(5)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。一般式(5)で表される化合物としては、例えば、Xが水素又はメチル基であり、かつYが水素又はヒドロキシル基であるものが好ましい。
【0040】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0041】
【化6】

【0042】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換あるいはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基の有機基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、例えば、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとキノン化合物の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR11、R12およびR13がフェニル基であり、かつR14、R15およびR16が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が好ましい。
【0043】
硬化促進剤(E)の配合量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.1重量%以上、1重量%以下が好ましい。配合量が上記範囲内であると、流動性を損なうことなく、良好な硬化性を得ることができる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて離型剤が用いられる。離型剤としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても構わない。これらのうちポリエチレン系ワックスが好ましく、ポリエチレン系ワックスとモンタン酸エステル系ワックスを併用した方がより好ましい。離型剤の配合量は、特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.05重量%以上3重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上1重量%以下である。配合量が上記下限値を下回ると離型性が低下する場合があり、上記上限値を上回ると密着性および耐半田性が低下する場合がある。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてイオントラップ剤が用いられる。イオントラップ剤としては従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類やマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても構わない。これらのうちハイドロタルサイト類が好ましい。イオントラップ剤の配合量は、特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.05重量%以上3重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上1重量%以下である。配合量が前記範囲内であると、充分なイオン補足作用を発揮し、他の材料特性に対する悪影響も少ない。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、無機質充填材、環状ジスルフィド化合物、シランカップリング剤、離型剤およびイオントラップ剤などの他、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0047】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ミキサー等を用いて原料を充分に均一に混合したもの、更にその後、熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度等を調整したものを用いることができる。
【0048】
また、上述のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形して半導体装置を得ることができる。
【0049】
本発明で封止を行う半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
トランスファーモールドなどの成形方法で封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0050】
図1は、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【実施例】
【0051】
以下に本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とした。
(実施例1)
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.3重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.3重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.2重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とをミキサーにて混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0052】
(実施例2)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)の配合量を多くし、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.0重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.0重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.8重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とをミキサーにて混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0053】
(実施例3)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)の配合量を減らし、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.4重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.4重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.015重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とをミキサーにて混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0054】
(実施例4)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)として、DL−α−チオクタミド(東京化成工業(株)製、分子量:205.34)を用いた。
【0055】
(実施例5)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)として、トランス−4,5−ジヒドロキシ−1,2−ジチアン(trans−4,5−Dihydroxy−1,2−dithiane、以下「DTTox」と称す、シグマ−アルドリッチ社製、分子量:152.24)を用いた。
【0056】
(実施例6)
シランカップリング剤の配合量を多くし、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)5.8重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.0重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.2重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.5重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0057】
(実施例7)
カップリング剤を用いずに、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.4重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.4重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.2重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0058】
(実施例8)
エポキシ樹脂として以下のものを用い、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名YX−4000、エポキシ当量190、融点105℃)5.4重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)5.2重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.2重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0059】
(実施例9)
フェノール樹脂として以下のものを用い、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.8重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂2:フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、商品名XLC−LL、水酸基当量165、軟化点79℃)3.8重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.2重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0060】
(実施例10)
無機充填材の含有量を多くして、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)3.3重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)2.3重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)93.0重量部と、環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)としてDL−α−リポ酸(東京化成工業(株)製、分子量:206.33)0.2重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0061】
(比較例1)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)を用いずに、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.4重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.4重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.1重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0062】
(比較例2)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)の代わりに以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)の代わりに、非環状ジスルフィド化合物であるジ−tert−オクチルジスルフィド(東京化成工業(株)製)を用いた。
【0063】
(比較例3)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)の代わりに以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)の代わりに、非環状ジスルフィド化合物である3,3’−ジチオジプロピオン酸(ACROS ORGANICS社製)を用いた。
【0064】
(比較例4)
環状ジスルフィド構造を有する化合物(D)を用いず、また、シランカップリング剤の配合量を多くし、全体の配合を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂1:一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、n=2.3)6.3重量部と、フェノール樹脂としてフェノール樹脂1:一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(2)においてm=1.6)4.3重量部と、硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物0.2重量部と、溶融球状シリカ(平均粒径30μm)88.0重量部と、シランカップリング剤としてカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.2重量部およびカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.2重量部と、離型剤としてポリエチレン系ワックス(離型剤1)0.2重量部と、モンタン酸エステル系ワックス(離型剤2)0.1重量部と、イオントラップ剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、DHT−4H)0.2重量部と、カーボンブラック0.3重量部とした。
【0065】
各実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0066】
1.スパイラルフロー
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。単位をcmとした。
【0067】
2.硬化性(硬化トルク比)
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用いて、175℃、60秒後のトルク値を300秒後のトルク値で除した値で示した。この値の大きい方が硬化性は良好である。単位は%とした。
【0068】
3.耐湿信頼性
低圧トランスファー成形機(コータキ精機製、KTS125−5E)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間105秒の条件で、エポキシ樹脂組成物によりシリコンチップ等を封止成形して16ピンSOP(Small Outline Package)の半導体パッケージを作製し、アフターベークとして175℃、4時間加熱処理した。その後、125℃、相対湿度100%の水蒸気中で、20Vの電圧を、16ピンSOPに印加し、断線不良を調べた。15個のパッケージのうち、8個以上に不良が出るまでの時間を、不良時間とした。単位は時間とした。なお、測定時間は、最長で500時間とし、その時点で不良パッケージ数が8個未満であったものは、不良時間を500時間以上と示した。不良時間が長いほど、耐湿信頼性に優れる。
【0069】
4.耐半田性1
低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、成形温度175℃、圧力8.3MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物によりシリコンチップ等を封止成形して、80ピンQFP(Quad Flat Package、Cu製Ni−Pd−Auメッキフレーム、パッケージサイズ:14mm×20mm×2mm厚、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を作製し、アフターベークとして175℃、8時間加熱処理した。その後、60℃、相対湿度60%で120時間の加湿処理を行った後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ内部の剥離とクラックを超音波探傷機(日立建機ファインテック株式会社製、mi−scope hyper II)で確認し、剥離、クラックのいずれか一方でもあったものを不良とした。評価した10個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。
【0070】
5.耐半田性2
低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、成形温度175℃、圧力8.3MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物によりシリコンチップ等を封止成形して、80ピンQFP(Quad Flat Package、Cu製Ni−Pd−Auメッキフレーム、パッケージサイズ:14mm×20mm×2mm厚、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を作製し、アフターベークとして175℃、8時間加熱処理した。その後、85℃、相対湿度60%で168時間の加湿処理を行った後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ内部の剥離とクラックを超音波探傷機(日立建機ファインテック株式会社製、mi−scope hyper II)で確認し、剥離、クラックのいずれか一方でもあったものを不良とした。評価した10個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかなように実施例1〜10で得られたエポキシ組成物を用いて成形した半導体パッケージは、耐半田性および耐湿信頼性に優れていた。
上記のように本発明に従う実施例はいずれも、無鉛半田に対応する高温の半田処理によっても剥離やクラックが発生しない良好な耐半田性を有するとともに、耐湿信頼性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に従うと、無鉛半田に対応する高温の半田処理によっても剥離やクラックが発生しない良好な耐半田性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるので、特に表面実装型の半導体装置の製造用として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 封止用樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材と、
(D)環状ジスルフィド構造を有する化合物を用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)成分が、α−リポ酸および/またはその誘導体である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、アルコール性水酸基を有する環状ジスルフィド化合物である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(E)硬化促進剤を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂である請求項1ないし4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

【請求項6】
前記(B)硬化剤が、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂である請求項1ないし5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−174711(P2008−174711A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209447(P2007−209447)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】