説明

エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた接合体の製造方法、並びに接合体

【課題】優れた接続信頼性及び透明性を有するエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた接合体の製造方法、並びに接合体を提供する。
【解決手段】ノボラック型フェノール系硬化剤と、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなるアクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合された無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物2をプリント基板1上にシート状に貼付する貼付工程と、エポキシ樹脂組成物2上に半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dを仮搭載する仮搭載工程と、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dを熱圧着ヘッド20により押圧し、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dを本圧着させる本圧着工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品をプリント基板上に実装するために用いられるエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた接合体の製造方法、並びに接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ部品をプリント基板に実装するパッケージング技術において、はんだバンプを用いる方法や、バンプと基板端子とを導電性接着剤、ACF(Anisotropic Conductive Film、異方性導電フィルム)、NCF(Non-Conductive Film、絶縁性接着フィルム)のいずれかを介して接続する方法が実用化されている。これらの中でも、ACFやNCFを用いた接続方法は、基板に仮圧着した後にチップ部品等を実装するため、はんだバンプ又は導電性接着剤を用いた場合に必要なアンダフィル工程が不要となる。このため、ACFやNCFを用いた接続方法は、電子機器に用いられる多くの半導体パッケージに採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年、バンプとランドの接続信頼性の観点から、ACFを用いた機械的な接触ではなく、NCFを用いた金属結合による接続が望まれている。しかしながら、従来のNCFには、イミダゾール類を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物が使用されているため、硬化開始反応が速くなり、十分な接続信頼性が得られないことがあった。
【0004】
また、NCFは、プリント基板上に貼り付けた際のアライメントマーク視認性の観点から、透明性を有することが望まれているが、イミダゾール類以外の硬化剤を用いた場合、透明なエポキシ樹脂組成物を得ることが困難であり、白濁する場合があった。白濁の原因については、バインダー中に海島構造ユニットが形成される為と考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−245554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた接続信頼性及び透明性を有するエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた接合体の製造方法、並びに接合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、ノボラック型フェノール系硬化剤を用いることにより、優れた接続信頼性が得られ、また、アクリルエラストマーとして、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体を用いることにより、優れた透明性が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、ノボラック型フェノール系硬化剤と、アクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物であって、アクリルエラストマーは、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなり、無機フィラーは、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満含有されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る接合体の製造方法は、ノボラック型フェノール系硬化剤と、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなるアクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合された無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物をプリント基板上にシート状に貼付する貼付工程と、エポキシ樹脂組成物上に電子部品を仮搭載する仮搭載工程と、電子部品を熱圧着ヘッドにより押圧し、電子部品を本圧着させる本圧着工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る接合体は、ノボラック型フェノール系硬化剤と、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなるアクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合された無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物により、電子部品とプリント基板とが接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノボラック型フェノール系硬化剤を用いることにより、硬化開始反応が緩慢となり、優れた接続信頼性が得られる。また、アクリルエラストマーとして、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体を用いることにより、エポキシ樹脂に対する相溶性が向上し、優れた透明性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】貼付工程の様子を示す模式図である。
【図2】仮搭載工程の様子を示す模式図である。
【図3】本圧着工程の様子を示す模式図である。
【図4】本圧着工程における接合体の状態を示す図である。
【図5】接合体の構成例を示す図である。
【図6】アライメントマーク認識性の評価方法を説明するための図である。
【図7】密着性の評価方法を説明するための図である。
【図8】接続抵抗の評価方法を説明するための図である。
【図9】エポキシ樹脂組成物の透過率の測定結果を示すグラフである。
【図10】エポキシ樹脂組成物の初期接続抵抗及び湿熱リフロー後の接続抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」と称する。)について、図面を参照しながら下記順序で詳細に説明する。
1.エポキシ樹脂組成物
2.接合体の製造方法
【0014】
<1.エポキシ樹脂組成物>
本実施の形態におけるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、アクリルエラストマーと、ノボラック型フェノール系硬化剤と、無機フィラーとを含有する。
【0015】
エポキシ樹脂としては、アクリルエラストマーと相溶するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類のグリシジルエーテル、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール類のグリシジルエーテルが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0016】
アクリルエラストマーは、水酸基を有するアクリレートとアクリルアミドとをモノマーとした共重合体であることが好ましい。特に、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとをモノマーとした共重合体であることが好ましい。アクリルエラストマーがジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとをモノマーとした共重合体であることにより、エポキシ樹脂に対する相溶性が向上し、後述するアライメントマークの認識性を向上させることができる。また、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとの配合比は、5:1〜3:1であることが好ましい。この範囲の配合比により、エポキシ樹脂に対する相溶性を向上させることができる。
【0017】
アクリルエラストマーの配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して20〜40質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂100質量部に対して20〜40質量部配合されることにより、後述のように接続信頼性を向上させることができる。なお、アクリルエラストマーは、その他のモノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレート等が配合されたランダム共重合体であってもよい。
【0018】
ノボラック型フェノール系硬化剤としては、フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0019】
ノボラック型フェノール系硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、又は1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない。
【0020】
また、本実施の形態におけるエポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤を含有させてもよい。硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。また、硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0質量部が必要に応じて配合される。
【0021】
無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。無機フィラーを含有させることにより、樹脂の流動を抑え、接続信頼性を向上させることができる。
【0022】
無機フィラーの配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満であることが好ましい。エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合されることにより、接続信頼性及び透明性を保つことができる。
【0023】
また、本実施の形態におけるエポキシ樹脂組成物においては、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、エポキシ樹脂組成物の密着性及び接続信頼性を向上させることができる。
【0024】
また、本実施の形態におけるエポキシ樹脂組成物においては、その他の成分として、チタネート類、有機樹脂フィラー等の各種添加剤を加えても構わない。
【0025】
本実施形態におけるエポキシ樹脂組成物は、上述した各成分を均一に混合し、NCF(Non-Conductive Film、絶縁性接着フィルム)に成型される。例えば、上述した各成分をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、剥離機能を有するフィルム、剥離機能を有する紙などの基材に塗布し、溶剤を揮発させることにより、NCFを得ることができる。
【0026】
<2.接合体の製造方法>
次に、上述したエポキシ樹脂組成物からなるNCFを用いた接合体の製造方法について説明する。具体例として示す接合体の製造方法は、NCFを用いてプリント基板上に高さの異なる電子部品を一括して実装する、いわゆるEBS(Elasticity Bonding System)工法と呼ばれるものである。
【0027】
このEBS工法は、NCFをプリント基板上に貼付する貼付工程と、NCF上に電子部品を仮搭載する仮搭載工程と、プリント基板全体を覆った熱圧着ヘッドにより押圧し、電子部品を本圧着させる本圧着工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0028】
図1(A)は、貼付工程におけるプリント基板1の上面図であり、図1(B)は、貼付工程におけるプリント基板1の側面図である。このプリント基板1の四隅には、電子部品を位置合わせするためのアライメントマーク11a〜11dが形成されている。また、プリント基板1の中央部から外周部に向かって半導体チップ3のバンプと接続される配線パターンが形成されている。
【0029】
NCF2は、図1(A)に示すようにプリント基板1の実装領域に全面的に貼付される。このNCF2は、上述したエポキシ樹脂組成物から形成されているため、優れた透明性を有しており、アライメントマーク11a〜11dを認識することができる。
【0030】
次に、アライメントマーク11a〜11dに基づいて、図2に示すように電子部品が表面実装機により所定の位置に仮搭載される。図2(A)は、仮搭載工程におけるプリント基板1の上面図であり、図2(B)は、仮搭載工程におけるプリント基板1の側面図である。ここでは、図2(B)に示すように、高さの異なる半導体チップ3とコンデンサ4a〜4dが仮搭載される。
【0031】
半導体チップ3は、配線パターンの電極上にバンプが配置されるようにプリント基板1の中央部に仮搭載され、コンデンサ4a〜4dは、アライメントマーク11a〜11dと半導体チップ3の四隅との間にそれぞれ仮搭載される。ここで、半導体チップ3のバンプとしては、針状のスタッドバンプ、バンプにはんだが配置されたはんだバンプ等を用いることができる。バンプにはんだが配置されたはんだバンプとしては、銅ピラー上にはんだキャップを設けたバンプを好適に用いることができる。また、プリント基板1上の電極としては、はんだがプリコートされた電極を用いることができる。
【0032】
次いで、図3に示すように、熱圧着ヘッド20を用いて半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4の本圧着を一括して行う。ここで、熱圧着ヘッド20は、所定の金属からなるヘッド本体21を有し、その内部に加熱用のヒーターが設けられている。また、ヘッド本体21のプリント基板1と対向する押圧面に、プレート状の弾性エラストマーからなる圧着部材22が取り付けられている。
【0033】
圧着部材22は、押圧面が水平となるように配置され、圧着部材22の押圧面は、プリント基板1の実装領域上のNCF2の大きさに対応するように構成される。また、圧着部材22の厚さは、各電気部品の頂部及び熱圧着時の接着剤のフィレット部分に対して最適の圧力で加圧する観点から、電気部品のうち最大の厚さを有するものと同等以上となるように設定することが好ましい。
【0034】
また、圧着部材22の弾性エラストマーの種類は特に限定されることはないが、接続信頼性を向上させる観点からは、ゴム硬度が40以上80以下のものを用いることが好ましい。ゴム硬度が40未満の弾性エラストマーは、各電気部品に対する圧力が不十分で初期抵抗及び接続信頼性が劣ることがあり、ゴム硬度が80より大きい弾性エラストマーは、フィレット部分に対する圧力が不十分で接着剤の結着樹脂にボイドが発生して接続信頼性が劣ることがある。なお、ゴム硬度は、JISS6050に準拠する規格を適用するものとする。このような弾性エラストマーとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも用いることができ、耐熱性、耐圧性の観点からは、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0035】
本圧着は、熱圧着ヘッド20の押圧面を半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dの頂部に押し付け、電気部品側を所定温度で加熱するとともに、プリント基板1側を電子部品側の所定温度より高い温度で加熱する。これにより、各電気部品の周囲のフィレット部に対して十分に加熱することができ、ボイドの発生を防止することができる。具体的には、圧着部材22の温度が100℃程度となるように熱圧着ヘッド20のヒーターを制御し、NCFの結着樹脂の温度が200℃程度になるように基台のヒーターを制御する。また、本圧着時の圧力は、各電気部品について、1個当たり100N程度で15秒程度とする。なお、ヒーターの設置場所は、熱圧着ヘッド20側又はステージ側(基台)のいずれかに設置するようにしてもよい。
【0036】
図4は、本圧着工程における半導体装置の状態を示す図である。この図4に示すように弾性エラストマーからなる圧着部材22によって加圧を行うことによって、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dの頂部をガラス基板1に対して所定の圧力で押圧し、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dの側部の接着剤フィレット部を頂部に対する圧力より小さい圧力で押圧することができる。これにより、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dとプリント基板1の接続部分に対して十分な圧力を加えることができ、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4dの周囲のフィレット部に対してもボイドが生じないように加圧することができる。
【0037】
この結果、図5に示すように、高さの異なる半導体チップ3とコンデンサ4a〜4dが高密度に一括実装された半導体装置が得られる。このように、EBS工法によれば、従来、半導体チップ3及びコンデンサ4a〜4d毎に行っていた各実装工程(接着剤の配置、仮圧着、本圧着)を一度で行うことができるとともに、NCF2を用いた接続信頼性を向上させることができる。特に、EBS工法にて同一基板上の複数の半導体チップを一括実装する場合には、本実施の形態におけるNCF2によって、個々の半導体チップ間の硬化のバラツキが抑制されるため、優れた接続信頼性で高密度に実装することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態では、電子部品を一括して実装するEBS工法について説明したが、これに限られることなく、本実施の形態におけるNCFをフリップチップ接続に用いた場合も優れた接続信頼性を得ることができる。この場合、上述したEBS工法のように圧着前にNCFをプリント基板に設置するのではなく、半導体チップにNCFを貼り合わせることができる。
【0039】
先ず、ダイジング工程にて、Siウェハなどの半導体チップが複数形成された半導体ウェハの回路面にNCFを貼り合せた後、半導体チップを個片化し、回路面と同じ面積のNCFが形成された半導体チップを製造する。本実施の形態におけるNCFは、透明性に優れているため、アライメントマーク認識が容易となり、半導体チップを高品位に切り分けることができる。
【0040】
その後、実装工程にて、NCF付き半導体チップをプリント基板に実装する。具体的には、ダイジング工程にてNCFが形成された半導体チップを含む複数の電子部品を仮搭載し、複数の電子部品を、上述したプリント基板全体を覆う弾性エラストマーからなる押圧面を有する熱圧着ヘッドにより押圧し、電子部品を本圧着させる。これにより、複数の電子部品を一括実装することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。この実施例では、エポキシ樹脂組成物を配合し、樹脂組成物のアライメントマークの認識性、密着性、接続抵抗、信頼性試験後の接続抵抗等について評価した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
EA(エチルアクリレート)−AN(アクリロニトリル)−GMA(グリシジルメタクリレート)−DMMA(ジメチルアクリルアミド)−HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)を主モノマーとするアクリルエラストマー(商品名 SG−80H−3、ナガセケムテックス社製)20質量部、エポキシ樹脂(商品名 エピコート1031S、JER社製、70質量部+商品名 エピコート604、JER社製、30質量部)100質量部、ノボラック型フェノール硬化剤(商品名 フェノライトTD−2131、DIC社製)70質量部(当量配合)、硬化促進剤(商品名 2E4MZ、四国化成工業社製)2質量部、及び無機フィラー(商品名 RY200、日本アエロジル社製)10質量部を混練機にて混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物にトルエンを加え、固形成分濃度を50%とした樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液を剥離処理された剥離フィルム(PET:ポリエチレンテレフタラート)上にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンに入れてトルエンを乾燥させ、厚さ25μmのNCFを得た。この厚さ25μmのNCFを2層に貼り合せ。厚さ50μmの実施例1のNCFを得た。表1に実施例1のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0043】
[実施例2]
無機フィラー(商品名 RY200、日本アエロジル社製)を5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例2のNCFを得た。表1に実施例2のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0044】
[実施例3]
EA(エチルアクリレート)−AN(アクリロニトリル)−GMA(グリシジルメタクリレート)−DMMA(ジメチルアクリルアミド)−HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)を主モノマーとするアクリルエラストマー(商品名 SG−80H−3、ナガセケムテックス社製)を30質量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例3のNCFを得た。表1に実施例3のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0045】
[実施例4]
EA(エチルアクリレート)−AN(アクリロニトリル)−GMA(グリシジルメタクリレート)−DMMA(ジメチルアクリルアミド)−HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)を主モノマーとするアクリルエラストマー(商品名 SG−80H−3、ナガセケムテックス社製)を40質量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例4のNCFを得た。表1に実施例4のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0046】
[実施例5]
エポキシ系シランカップリング剤(商品名 A187、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)をさらに配合した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、実施例5のNCFを得た。表1に実施例5のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0047】
[比較例1]
ノボラック型フェノール硬化剤の代わりに、イミダゾール系硬化剤(カプセル化イミダゾール)(商品名 ノバキュアHP3941、旭化成ケミカルズ社製)を70質量部配合し、硬化促進剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、比較例1のNCFを得た。表1に比較例1のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0048】
[比較例2]
BA(ブチルアクリレート)−EA(エチルアクリレート)−AN(アクリロニトリル)−GMA(グリシジルメタクリレート)を主モノマーとするアクリルエラストマーを20質量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、比較例2のNCFを得た。表1に比較例2のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0049】
[比較例3]
アクリルエラストマーの代わりに、フェノキシ樹脂(商品名 YP50、東都化成工業社製)を配合した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、比較例3のNCFを得た。表1に比較例3のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0050】
[比較例4]
無機フィラーを配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、比較例4のNCFを得た。表1に比較例4のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0051】
[比較例5]
無機フィラー(商品名 RY200、日本アエロジル社製)を20質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、比較例5のNCFを得た。表1に比較例5のNCFを構成するエポキシ樹脂組成物の配合を示す。
【0052】
[アライメントマークの認識性]
図6に示すように、プリント基板1上にNCF2として実施例1〜5、及び比較例1〜5のいずれかのNCFを配置し、カメラ23にてφ300μmのアライメントマーク11を10mmの距離から撮像した。
【0053】
表1にアライメントマークの認識性の評価結果を示す。この表1において、撮像画像のアライメントマーク11の認識率が95%以上のNCFを○とし、認識率が95%未満のNCFを×とした。
【0054】
[密着性]
NCF2を用いてプリント基板1上に半導体チップ3を実装させた。NCF2として実施例1〜5、及び比較例1〜5のいずれかのNCFを用いた。また、プリント基板1には、厚さ25μmのポリイミドフィルムを用い、半導体チップ3には、金スタッドバンプが形成された縦6.3mm、横6.3mm、厚さ0.3mmのサイズのものを用いた。
【0055】
図7に示すように、接合体をガラス基材25上にエポキシ系接着剤24を用いて固定し、ポリイミドフィルムを30mm/minの速度で引っ張り、NCFの接着強度(N/cm)を測定した。
【0056】
表1に密着性の評価結果を示す。この表1において、接着強度が5N/cm以上のNCFを◎、5N/cm未満1N/cm以上のNCFを○、1N/cm未満のNCFを×とした。
【0057】
[初期接続抵抗]
NCF2を用いてプリント基板1上に半導体チップ3を実装させた。NCF2として実施例1〜5、及び比較例1〜5のいずれかのNCFを用いた。
【0058】
図8に示すように、接合体についてプリント基板1と半導体チップ3の初期接続抵抗を抵抗測定器26により測定した。
【0059】
表1に接続抵抗の評価結果を示す。この表1において、初期接続抵抗が10mΩ以下のNCFを○とし、初期接続抵抗が10mΩを超えるNCFを×とした。
【0060】
[信頼性試験後の接続抵抗]
NCF2を用いてプリント基板1上に半導体チップ3を実装させた。NCF2として実施例1〜5、及び比較例1〜5のいずれかのNCFを用いた。具体的には、NCFをプリント配線板の電極上に配置し、EBSを用いて加熱押圧(240℃、40秒、10kg/半導体チップ、ステージ加熱)し、プリント基板上に半導体チップを実装させた。EBSの弾性材として、ゴム硬度40のシリコーンゴムを用いた。
【0061】
この接合体にPCT(プレッシャークッカーテスト:121℃×飽和(100%RH)×96h)及びTCT(冷熱サイクルテスト:−55℃〜125℃×700cycle)を行った後、図8に示すように接続抵抗を測定し、初期接続抵抗と比較した。
【0062】
表1に信頼性試験後の接続抵抗の評価結果を示す。この表1において、初期接続抵抗と信頼性試験後の接続抵抗と抵抗値の変化が2mΩ以下のNCFを◎、抵抗値の変化が2mΩを超え5mΩ以下のNCFを○、抵抗値の変化が5mΩを超え10mΩ以下のNCFを△、抵抗値の変化が10mΩを超えるNCFを×とした。
【0063】
【表1】

【0064】
[評価結果]
表1に示す評価結果より、ノボラック型フェノール硬化剤を用いた実施例1は、イミダゾール系硬化剤を用いた比較例1に比べ、密着性及び信頼性試験後の接続抵抗が良好であった。これは、ノボラック型フェノール硬化剤は、イミダゾール系硬化剤に比べて開始反応(硬化剤がエポキシ環にアタックする挙動)が緩慢で、硬化挙動のバラツキが比較的少ないためであると考えられる。
【0065】
また、アクリルエラストマーとして、ジメチルアクリルアミド(DMMA)とヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とを含むEA−AN−GMA−DMMA−HEMAランダム共重合体を使用した実施例1〜5は、BA−EA−AN−GMAランダム共重合体を使用した比較例2に比べ、エポキシ樹脂に対する相溶性が高く、アライメントマークの認識性が良好であった。
【0066】
また、図9は、実施例1及び比較例3のNCFの透過率の測定結果(35μm厚換算)を示すグラフである。表1に示すように両者ともアライメントマークの認識性は良好であるが、EA−AN−GMA−DMMA−HEMAランダム共重合体を使用した実施例1のNCFは、短波長の光に対しても高い透過率示すことが分かった。
【0067】
また、図10は、実施例1及び比較例3のNCFの初期接続抵抗及び湿熱リフロー後の接続抵抗を示すグラフである。このグラフから分かるように、フェノキシ樹脂を用いた比較例3は、湿熱リフロー後も10mΩ以下の接続抵抗を得ることができなかった。
【0068】
すなわち、EA−AN−GMA−DMMA−HEMAランダム共重合体を用いることにより、優れたアライメントマークの認識性、密着性、及び接続信頼性が得られることが分かった。
【0069】
また、アクリルエラストマーは、実施例3、4のようにエポキシ樹脂に対する含有量を増加させると、信頼性試験後の接続抵抗が高くなることが分かった。すなわち、アクリルエラストマーは、エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜40質量部含有されていることにより、優れたアライメントマークの認識性、密着性、及び接続信頼性が得られることが分かった。
【0070】
無機フィラーが含有されていない比較例4は、信頼性試験後の接続抵抗が不良となり、無機フィラーがエポキシ樹脂100質量部に対して20質量部含有されている比較例5は、樹脂自体の透明性が低下し、アライメントマークの認識性が不良となった。すなわち、実施例1〜5のように無機フィラーがエポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満含有されていることにより、良好なアライメントマークの認識性、密着性、及び接続信頼性が得られることが分かった。
【0071】
また、実施例5のようにエポキシ系シランカップリング剤を添加することにより、密着性、信頼性試験後の接続抵抗がさらに良好になることが分かった。
【0072】
また、実施例1〜5において使用した金スタッドバンプが形成されたICチップに代えて、銅ピラー上にはんだキャップを設けたバンプが形成されたICチップ(Cu piller/Sn2.5Agのバンプ構造を有するICチップ)を使用した場合も、良好な接続信頼性を示すことが分かった。
【符号の説明】
【0073】
1 プリント基板、2 NCF、3 半導体チップ、4a〜4d コンデンサ、11a〜11d アライメントマーク、20 熱圧着ヘッド、21 ヘッド本体、22 圧着部材、23 カメラ、24 エポキシ系接着剤、25 ガラス基材、26 抵抗測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック型フェノール系硬化剤と、アクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記アクリルエラストマーは、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなり、
前記無機フィラーは、前記エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満含有されているエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリルエラストマーは、前記エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜40質量部含有されている請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ系シランカップリング剤をさらに含有する請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリルエラストマーは、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとの配合比が、5:1〜3:1である請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
ノボラック型フェノール系硬化剤と、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなるアクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合された無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物をプリント基板上にシート状に貼付する貼付工程と、
前記エポキシ樹脂組成物上に電子部品を仮搭載する仮搭載工程と、
前記電子部品を熱圧着ヘッドにより押圧し、該電子部品を本圧着させる本圧着工程と
を有する接合体の製造方法。
【請求項6】
前記アクリルエラストマーは、前記エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜40質量部含有されている請求項5記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記電子部品は、半導体チップである請求項5又は6記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記熱圧着ヘッドは、前記プリント基板全体を覆う弾性エラストマーからなる押圧面を有し、
前記仮搭載工程では、前記プリント基板上に高さの異なる電子部品が複数配置され、
前記本圧着工程では、前記複数の電子部品を前記押圧面で押圧し、前記複数の電子部品を一括実装する請求項5又は6記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
ノボラック型フェノール系硬化剤と、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなるアクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合された無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物により、電子部品とプリント基板とが接合された接合体。
【請求項10】
前記アクリルエラストマーは、前記エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜40質量部含有されている請求項9記載の接合体。
【請求項11】
ノボラック型フェノール系硬化剤と、ジメチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとを含む共重合体からなるアクリルエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満配合された無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物を、半導体チップが複数形成された半導体ウェハの回路面にシート状に貼付した後、半導体チップを個片化するダイジング工程と、
前記エポキシ樹脂組成物がシート状に貼付された半導体チップをプリント基板に実装する実装工程と
を有する接合体の製造方法。
【請求項12】
前記実装工程では、前記エポキシ樹脂組成物が添付された半導体チップを含む複数の電子部品を仮搭載し、前記複数の電子部品を、前記プリント基板全体を覆う弾性エラストマーからなる押圧面を有する熱圧着ヘッドにより押圧し、該電子部品を本圧着させる請求項11記載の接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−46715(P2012−46715A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269421(P2010−269421)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】