説明

エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】高充填性かつ高密着性の非液状エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する非液状のエポキシ樹脂組成物において、無機充填材は最大粒径が30μm以下の無機粒子であり、硬化促進剤の含有量はエポキシ樹脂及び硬化剤の合計含有量100質量部に対して2〜4質量部であり、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを含み、全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量は30〜50質量%である。このエポキシ樹脂組成物は充填性と密着性とに優れ、フリップチップ接続方式で基板に実装された半導体チップを一括封止するモールドアンダーフィル材として好適である。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンをさらに含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂組成物、特にモールドアンダーフィル材として好適な非液状のエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板に実装された半導体チップが樹脂によって封止された半導体装置が周知である。このような半導体装置のさらなる小型化、薄型化、高密度化の要求に対応する技術として、フリップチップ接続方式が知られている。この接続方式は、半導体チップの回路面に突起電極(バンプ)を形成し、フェイスダウンで基板の電極端子に直接接続する方式である。このフリップチップ接続方式によれば、半導体チップの実装エリアが小さくて済み、かつワイヤボンディング接続のようにワイヤまで樹脂封止する必要がないので半導体装置の厚みを薄くできる利点がある。
【0003】
フリップチップ接続方式の場合、実装された半導体チップと基板との間に数10μmの電極の厚み分の狭ギャップが発生する。従来、このチップ下の狭ギャップは、特許文献1に開示されるように、キャピラリーを用いて液状のエポキシ樹脂組成物で充填(アンダーフィル)されていた。そして、その後、トランスファー成形によってチップ全体が非液状のエポキシ樹脂組成物で樹脂封止(オーバーモールド)されていた。しかし、狭ギャップのアンダーフィルとチップ全体のオーバーモールドとの2工程が必要なので、非液状のエポキシ樹脂組成物のみでチップ下の狭ギャップの充填とチップ全体の封止とを一括して行う技術(本明細書で「モールドアンダーフィル」という)の開発が進められている。
【0004】
ここで、非液状の樹脂組成物とは、例えば粉状、粒状、打錠したタブレット状等、常温で固体状の樹脂組成物をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3695521号公報(段落0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非液状のエポキシ樹脂組成物には、樹脂の強度を高め、樹脂の熱膨張係数を小さくし、樹脂の熱伝導率を向上する等の目的で、シリカ粒子やアルミナ粒子等の無機充填材が含有されている。そのため、樹脂組成物の流動性が低く、特に狭ギャップにおいてはボイドが発生する等、狭ギャップ充填性が十分とはいえない。また、半導体チップ及び基板に対する樹脂組成物の密着性が低く、リフロー時に封止樹脂が剥離する可能性がある。
【0007】
本発明は、半導体封止用、特にモールドアンダーフィル用のエポキシ樹脂組成物における前記問題に対処するもので、充填性及び密着性に優れた高充填性かつ高密着性の非液状エポキシ樹脂組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する非液状のエポキシ樹脂組成物であって、無機充填材は最大粒径が30μm以下の無機粒子であり、硬化促進剤の含有量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計含有量100質量部に対して2〜4質量部であり、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを含み、全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量が30〜50質量%であるエポキシ樹脂組成物である。
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、無機充填材の最大粒径が30μm以下なので、数10μmの狭ギャップに無機充填材が詰まることが抑制され、樹脂組成物の充填性が向上する。また、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計含有量100質量部に対する硬化促進剤の含有量を2〜4質量部とし、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを含み、全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量を30〜50質量%としたから、樹脂組成物の密着性が向上する。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンをさらに含み、全硬化促進剤中のトリフェニルホスフィンの含有量が50〜70質量%であることが好ましい。硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールとトリフェニルホスフィンとを併用し、その場合の使用比率を2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール30〜50質量%:トリフェニルホスフィン50〜70質量%とすることにより、樹脂組成物の密着性がより一層向上するからである。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、無機充填材のエポキシ樹脂組成物中の含有量が80〜90質量%であることが好ましい。無機充填材の種々の機能を良好に発揮させつつ、樹脂組成物の流動性の低下を抑制できるからである。
【0012】
また、本発明は、基板に実装された半導体チップが前記エポキシ樹脂組成物によって封止された半導体装置である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、充填性と密着性とに優れているので、この半導体装置は、ボイドの発生が低減され、かつ耐半田リフロー性が高い半導体装置である。
【0013】
また、本発明は、基板にフリップチップ接続方式で実装された半導体チップと基板との間の狭ギャップが前記エポキシ樹脂組成物によって充填され、かつ前記半導体チップが前記エポキシ樹脂組成物によって封止された半導体装置である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、充填性と密着性とに優れているので、この半導体装置は、チップ下の狭ギャップにおいてもボイドの発生が低減され、かつ耐半田リフロー性が高い半導体装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充填性及び密着性に優れた高充填性かつ高密着性の非液状エポキシ樹脂組成物が提供される。その結果、通常の封止材として好ましく使用可能なだけでなく、半導体チップをフリップチップ接続方式で基板に実装した場合に、この非液状エポキシ樹脂組成物のみを用いて、チップ下の狭ギャップの充填とチップ全体の封止とを一括して行うモールドアンダーフィル材として特に好ましく使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する非液状のエポキシ樹脂組成物である。無機充填材は最大粒径が30μm以下の無機粒子である。硬化促進剤の含有量はエポキシ樹脂及び硬化剤の合計含有量100質量部に対して2〜4質量部である。硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを含んでいる。全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量は30〜50質量%である。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンをさらに含んでもよい。その場合の全硬化促進剤中のトリフェニルホスフィンの含有量は例えば50〜70質量%である。無機充填材のエポキシ樹脂組成物中の含有量は80〜90質量%である。本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、充填性と密着性とに優れているので、基板に実装された半導体チップの封止材として好ましく用いられる。特に、フリップチップ接続方式で基板に実装された半導体チップを一括封止するモールドアンダーフィル材として好適である。
【0016】
本実施形態において、エポキシ樹脂としては、封止用エポキシ樹脂組成物の技術分野で従来使用されるエポキシ樹脂が特に限定なく使用可能である。そのようなエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェニレン型エポキシ樹脂、及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0017】
本実施形態において、硬化剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物の技術分野で従来使用される硬化剤が特に限定なく使用可能である。そのような硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等、各種の多価フェノール化合物又はナフトール化合物等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本実施形態において、無機充填材としては、封止用エポキシ樹脂組成物の技術分野で従来使用される無機充填材が特に限定なく使用可能である。そのような無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素等の各無機粒子が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、流動性の観点から溶融シリカ粒子が特に好ましい。また、球状のもの、真球状に近いものがより好ましい。このような無機充填材は、樹脂の強度を高め、樹脂の熱膨張係数を小さくし、樹脂の熱伝導率を向上する等の目的で含有される。
【0019】
本実施形態において、硬化促進剤としては、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを必須成分として用いる。硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを含有することにより、半導体チップ及び基板に対する樹脂組成物の密着性が高くなり、リフロー時に封止樹脂が剥離する問題が抑制されることに寄与する。
【0020】
本実施形態において、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール以外の硬化促進剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物の技術分野で従来使用される硬化促進剤が特に限定なく使用可能である。そのような硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン類;1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本実施形態において、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールとトリフェニルホスフィンとを組み合わせて用いることが好ましい。2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールとトリフェニルホスフィンとを併用することにより、樹脂組成物の密着性がより一層向上することに寄与する。その場合、さらに他の硬化促進剤が含まれても構わない。
【0022】
本実施形態において、エポキシ樹脂のエポキシ樹脂組成物中の含有量は、2〜15質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましく、6〜10質量%がさらに好ましい。
【0023】
本実施形態において、エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合(エポキシ樹脂/硬化剤)は、当量比で、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。この配合割合が過度に小さいと、硬化剤が過多となって経済的に不利となり、この配合割合が過度に大きいと、硬化剤が過少となって硬化不足となる。
【0024】
本実施形態において、無機充填材のエポキシ樹脂組成物中の含有量は、80〜90質量%が好ましく、83〜90質量%がより好ましく、86〜90質量%がさらに好ましい。無機充填材の含有量が過度に少ないと、無機充填材の種々の機能が良好に発揮されなくなり、無機充填材の含有量が過度に多いと、樹脂組成物の流動性が低下して充填性が不足気味となる。
【0025】
本実施形態において、硬化促進剤のエポキシ樹脂組成物中の含有量は、エポキシ樹脂と硬化剤との合計含有量100質量部に対して2〜4質量部である。硬化促進剤の含有量が2質量部より少ないと、硬化促進機能が良好に発揮されなくなり、硬化促進剤の含有量が4質量部より多いと、成形性に不具合が生じる可能性がある。特に、本実施形態においては、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを必須成分として用い、あるいは2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールとトリフェニルホスフィンとを併用し、さらに他の硬化促進剤を組み合わせて用いることにより、半導体チップ及び基板に対する樹脂組成物の密着性の向上ないしリフロー時に封止樹脂が剥離する問題の抑制を企図しているので、硬化促進剤の含有量が過度に少ないと、そのような利点が良好に得られなくなる。
【0026】
本実施形態において、全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量は30〜50質量%である。2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量が30質量%より少ないと、樹脂組成物の密着性が不足気味となり、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量が50質量%より多いと、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが成形後の硬化物の表面にブリード(析出)を起こす場合がある。
【0027】
本実施形態において、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールとトリフェニルホスフィンとを併用する場合は、全硬化促進剤中のトリフェニルホスフィンの含有量は50〜70質量%である。トリフェニルホスフィンの含有量が50質量%より少ないと、樹脂組成物の密着性が不足気味となり、トリフェニルホスフィンの含有量が70質量%より多いと、トリフェニルホスフィンが成形後の硬化物の表面にブリード(析出)を起こす場合がある。
【0028】
本実施形態において、無機充填材である無機粒子の最大粒径は30μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。無機粒子の最大粒径が過度に大きいと、数10μmの狭ギャップに無機充填材が詰まり、樹脂組成物の充填性が低下する可能性がある。無機充填材の最大粒径を30μm以下とすることにより、狭ギャップに無機充填材が詰まってボイドが発生する問題が抑制され、樹脂組成物の充填性が向上する。
【0029】
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、さらに、カップリング剤、離型剤、着色剤、難燃剤、イオントラップ剤、可撓剤等のその他の添加剤を含有してもよい。本実施形態において使用可能なカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシランやN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシシラン等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において使用可能な離型剤としては、例えば、カルナバワックスやモンタンワックス等の高融点のワックス類、ステアリン酸等の高級脂肪酸及びその塩やエステル類、カルボキシル基含有ポリオレフィン等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において使用可能な着色剤としては、例えば、カーボンブラックや各種顔料等が挙げられる。本実施形態において使用可能な難燃剤としては、ハロゲンフリー又はアンチモンフリーの難燃剤が好ましく、例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムあるいは水酸化カルシウム等の金属水酸化物(金属水和物)等が挙げられる。これらのその他の添加剤のエポキシ樹脂組成物中の含有量は、各添加剤の機能を良好に発揮させる範囲内で適宜決定すればよいが、例えば、エポキシ樹脂組成物全量中、0.01〜5質量%の範囲内である。
【0030】
本実施形態において、非液状のエポキシ樹脂組成物は、例えば次のようにして調製される。すなわち、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤及びその他の材料をそれぞれ所定の量づつ配合し、ミキサーやブレンダー等で均一に混合した後、ニーダーやロール等で加熱、混練する。混練後、冷却固化し、所定の粒度に粉砕して、常温で固体状の粉状又は粒状のエポキシ樹脂組成物を得る。必要に応じて、さらに打錠することにより、タブレット状としてもよい。
【0031】
本実施形態において、半導体装置(フリップチップ接続方式ではないもの)は、例えば次のようにして作製される。すなわち、半導体チップ実装用基板に半導体チップを実装し、金線で基板と半導体チップとを電気接続(ワイヤボンディング)した後、基板上の半導体チップを本実施形態に係る非液状のエポキシ樹脂組成物で封止する。この封止を実行するには金型を用いたトランスファ成形を採用することができる。
【0032】
つまり、トランスファ成形においては、半導体チップが実装されワイヤボンディングされた基板を金型のキャビティ内に配置した後、このキャビティ内に溶融状態のエポキシ樹脂組成物を所定の圧力で注入し、キャビティ内に充満させる。このときの注入圧力は、例えば4〜7MPa、金型温度は、例えば160〜190℃、成形時間は、例えば45〜300秒等に設定される(エポキシ樹脂組成物の組成や半導体装置の種類等に応じて適宜変更可能)。次に、金型を閉じたまま後硬化(ポストキュア)を行った後、型開きして成形物すなわち半導体装置(パッケージ)を取り出す。このときの後硬化条件は、例えば160〜190℃で2〜8時間等に設定される(エポキシ樹脂組成物の組成や半導体装置の種類等に応じて適宜変更可能)。
【0033】
本実施形態に係る非液状のエポキシ樹脂組成物は、充填性と密着性とに優れているので、このようにして作製された半導体装置は、ボイドの発生が低減され、かつ耐半田リフロー性が高い半導体装置である。
【0034】
本実施形態において、フリップチップ接続方式の半導体装置は、前記に準じて、例えば次のようにして作製される。すなわち、半導体チップの回路面に突起電極(バンプ)を形成し、フェイスダウンで半導体チップ実装用基板の電極端子に直接接続した後、基板上の半導体チップを本実施形態に係る非液状のエポキシ樹脂組成物で一括封止する。すなわち、チップ下の狭ギャップの充填とチップ全体の封止とを一括して行うモールドアンダーフィルを行う。この一括封止を実行するには金型を用いたトランスファ成形を採用することができる。
【0035】
つまり、トランスファ成形においては、半導体チップがフリップチップ接続方式で実装された基板を金型のキャビティ内に配置した後、このキャビティ内に溶融状態のエポキシ樹脂組成物を所定の圧力で注入し、キャビティ内に充満させる。このときの注入圧力は、例えば4〜7MPa、金型温度は、例えば160〜190℃、成形時間は、例えば45〜300秒等に設定される(エポキシ樹脂組成物の組成や半導体装置の種類、あるいはチップ下の狭ギャップの間隔等に応じて適宜変更可能)。次に、金型を閉じたまま後硬化(ポストキュア)を行った後、型開きして成形物すなわち半導体装置(パッケージ)を取り出す。このときの後硬化条件は、例えば160〜190℃で2〜8時間等に設定される(エポキシ樹脂組成物の組成や半導体装置の種類、あるいはチップ下の狭ギャップの間隔等に応じて適宜変更可能)。
【0036】
本実施形態に係る非液状のエポキシ樹脂組成物は、充填性と密着性とに優れているので、このようにして作製されたフリップチップ接続方式の半導体装置は、チップ下の狭ギャップにおいてもボイドの発生が低減され、かつ耐半田リフロー性が高い半導体装置である。また、本実施形態に係る非液状のエポキシ樹脂組成物が充填性に優れている結果、フリップチップ接続方式の半導体装置の作製時における成形条件は、フリップチップ接続方式でない半導体装置の作製時における成形条件と同様でよく、ことさら高温にしたり、高圧にしたり、成形時間を長くする必要がない。
【0037】
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
表1に示す配合(質量%)にて、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤及びその他の材料をブレンダーで30分間混合し、均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで加熱、混練して、押し出し、冷却固化後、粉砕機で所定の粒度に粉砕して、常温で固体状の粉状のエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0039】
実施例1〜2及び比較例1〜4において用いた材料は次の通りである。
(エポキシ樹脂)
・ビフェニル型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製の「YX4000H」(エポキシ当量195)
(硬化剤)
・フェノールアラルキル樹脂:明和化成社製の「MEH78003L」(水酸基当量168)
(無機充填材)
・シリカ粒子1:電気化学工業社製の溶融シリカ粒子「FB7SDC」(最大粒径30μm以下)
・シリカ粒子2:電気化学工業社製の溶融シリカ粒子「FB820」(最大粒径74μm以下)
・シリカ粒子3:電気化学工業社製の溶融シリカ粒子「FB975FD」(最大粒径45μm以下)
(カップリング剤)
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業社製の「KBM403」
(離型剤)
・カルナバワックス:大日化学社製の「F1−100」
(着色剤)
・カーボンブラック:三菱化学社製の「MA600」
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:四国化成工業社製の「キュアゾール(登録商標)2P4MHZ−PW」(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
・硬化促進剤2:北興化学社製の「TPP」(トリフェニルホスフィン)
【0040】
調製した粉状のエポキシ樹脂組成物を用い、次の条件でトランスファ成形を行うことによって、下記の概要のフリップチップパッケージをモールドアンダーフィルにて作製した。
(トランスファ成形条件)
・金型温度:175℃
・注入圧力:6.9MPa(70kgf/cm
・成形時間:180秒
・後硬化:175℃/6時間
(フリップチップパッケージ概要)
・パッケージサイズ:15mm×15mm
・チップサイズ:10mm×10mm
・パッドピッチ(電極ピッチ):150μm
・パッド配置(電極配置):フルアレイ
・チップ下ギャップ:60〜80μm
【0041】
作製したプリップチップパッケージについて次の評価を行った。結果を表1に示す。
(狭ギャップ充填性)
用いた粉状エポキシ樹脂組成物の流動性・充填性を評価するため、超音波探査装置を用いてチップ下ギャップのボイドの有無を調べ、20個のパッケージ中、ボイドのあったパッケージの個数をカウントした。
(密着性)
パッケージの耐半田リフロー性を評価するため、アークテック社製の「ボンドテスターシリーズ4000」を用いて、半導体チップ及び基板に対する封止樹脂の密着性を測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1は、最大粒径が30μm以下のシリカ粒子を配合し、かつ全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの配合比率を33質量%としたもの、実施例2は、最大粒径が30μm以下のシリカ粒子を配合し、かつ全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの配合比率を50質量%としたものである。一方、比較例1は、最大粒径が30μmを超える74μmのシリカ粒子を配合したもの、比較例2は、最大粒径が30μmを超える45μmのシリカ粒子を配合したもの、比較例3は、全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの配合比率を30質量%より低い0質量%としたもの、比較例4は、全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの配合比率を30質量%より低い17質量%としたものである。
【0044】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜2は、狭ギャップ充填性及び密着性のいずれにも優れた結果であった。
【0045】
一方、比較例1は、無機充填材の最大粒径が過度に大きいため、すべてのパッケージでボイドが発生し、狭ギャップ充填性に劣っていた。比較例2も、無機充填材の最大粒径が比較例1ほどではないにしろ過度に大きいため、半数以上のパッケージでボイドが発生し、狭ギャップ充填性に劣っていた。また、比較例1〜2共、密着性が実施例1〜2と比べてやや低下していた。比較例3は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを配合しなかったため、密着性が実施例1〜2と比べて顕著に低下した。比較例4も、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの配合量が比較例3ほどではないにしろ過度に少ないため、密着性が実施例1〜2と比べてかなり低下した。また、比較例3〜4共、狭ギャップ充填性が若干低下していた。
【0046】
以上により、本発明のエポキシ樹脂組成物は充填性と密着性とに優れ、通常の封止材として好ましく使用可能なだけでなく、フリップチップ接続方式で基板に実装された半導体チップを一括封止するモールドアンダーフィル材として特に好適であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を含有する非液状のエポキシ樹脂組成物であって、
無機充填材は最大粒径が30μm以下の無機粒子であり、
硬化促進剤の含有量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計含有量100質量部に対して2〜4質量部であり、
硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを含み、
全硬化促進剤中の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールの含有量が30〜50質量%であるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンをさらに含み、全硬化促進剤中のトリフェニルホスフィンの含有量が50〜70質量%である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填材のエポキシ樹脂組成物中の含有量が80〜90質量%である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
基板に実装された半導体チップが請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された半導体装置。
【請求項5】
基板にフリップチップ接続方式で実装された半導体チップと基板との間の狭ギャップが請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物によって充填され、かつ前記半導体チップが前記エポキシ樹脂組成物によって封止された半導体装置。

【公開番号】特開2011−132268(P2011−132268A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290002(P2009−290002)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】