説明

エレベータの電力表示装置及びこれを用いたエレベータシステム

【課題】エレベータの省電力量を積極的に表示してエレベータの管理者などにエレベータによって達成できる省エネルギー量を明確にする。
【解決手段】エレベータの電力系のエネルギーの流れを表示するエネルギーフロー表示部10と、前記エレベータのかごと錘との移動状態を刻々表示する運転表示部3と、前記エレベータの力行時に前記かごをモータにより駆動すると共に、回生電力を有効に活用する制御システムにおける省電力量を表示する省エネルギー表示部30とを有する監視盤1を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの電力表示装置及びこれを用いたエレベータシステムの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの監視装置として、エレベータの運行状態をディスプレイ表示し、表示内容をモニタしながら、運行管理を行い、建屋或いはエレベータの異常時など特定の運行指令を発するエレベータの監視装置において、エレベータのかご内乗客の有無または人数を識別できる表示を設け、かご内乗客の人数をデジタル表示するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記エレベータの監視装置によれば、エレベータの運行状態を表示する表示装置の中にエレベータ乗客の有無、または人数を表示する手段を備えたことにより、エレベータ、建屋異常時の操作、指令を敏速、的確に行い、早急な乗客の救出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−231068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記エレベータの監視装置には、かご内の状況を表示することができるものの、かご内の状況だけでなく、近年の環境意識の高揚などを背景にしてエレベータシステムとしての省エネルギー量を適切に表示し、エレベータの管理者等に対して省エネルギーを訴求する観点に欠けていることを見出した。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、エレベータの省電力量を積極的に表示してエレベータの管理者などにエレベータによって達成できる省エネルギー量を明確にするエレベータの電力表示装置及びこれを用いたエレベータシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータの電力表示装置は、エレベータの電力系のエネルギーの流れを表示するエネルギーフロー表示部と、前記エレベータのかごと錘との移動状態を刻々表示する運転表示部と、前記エレベータの力行時に前記かごをモータにより駆動すると共に、回生電力を有効に活用する制御システムにおける省電力量を表示する省電力表示部とを有する監視盤1を備えたものである。
【0008】
また、本発明に係るエレベータシステムは、前記省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判断し、達しないと判断され場合には、前記エレベータを省エネルギーモードに設定して運転する省エネモード部を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エレベータの省電力量を積極的に表示してエレベータの管理者などにエレベータによって達成できる省エネルギー量を明確にし得るエレベータの電力表示装置及びこれを用いたエレベータシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1によるエレベータの監視盤の表示部を示す図である。
【図2】図1に示すエレベータの監視盤に表示するための制御ブロック図である。
【図3】図1に示すエレベータの監視盤の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2によるエレベータの監視盤の表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1を図1及び図2によって説明する。図1は、本発明の実施の形態1によるエレベータの監視盤の表示部を示す図、図2は、図1に示すエレベータの監視盤に表示するための制御ブロック図である。
【0012】
図1において、エレベータの監視盤1が表示する対象のエレベータシステムは、エレベータの力行によりかご7をモータ5(巻上機を含む)により駆動すると共に、回生電力を電源に返還して省エネルギーを図るように形成されている。エレベータの監視盤1は、エレベータのかご7と錘9との移動状態を刻々表示する運転表示部3と、エレベータの電力系のエネルギーの流れを表示するエネルギーフロー表示部10と、積算消費電力量を表示する電力表示部20と、エレベータの力行時にかごをモータにより駆動すると共に、回生電力を有効に利用する制御システムにおける省電力量を表示する省エネルギー表示部30と、省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判断し、達しないと判断された場合には、エレベータを省エネルギーモードに設定して運連する省エネモード表示部50とを有し、これらの表示部がLCDなどで形成されている。
【0013】
運転表示部3は、巻上機に吊り下げられたかご7と錘9との移動状態を刻々表示するように形成されている。エネルギーフロー表示部10は、電力系のエネルギーの流れを主回路部と共に表示するように形成されており、主回路部は、回生付きコンバータ部12からの電力がインバータ部14を介してモータ5を駆動するように表示されている。
【0014】
電力表示部20は、エレベータの消費電力量を棒グラフ状に表示している。省エネルギー表示部30は、電源に帰還される回生電力量を省エネルギー量として棒グラフ状に表示する省エネ電力量表示部32と、省エネルギー量をCO2削減量に変換して棒グラフ状に表示するCO2削減量表示部34と、予め定められた省エネルギーの目標達成量と現在の省エネルギー量とを比較して、未達成の場合に赤色に点灯し、達成の場合には青色に点灯する省エネ目標達成表示部36とを有している。
【0015】
省エネモード部50は、省エネ目標達成表示部36が赤色を点灯することにより、エレベータが省エネモードに移行したことを表示するように形成されている。
【0016】
図2において、エレベータシステムは、電力検知部60と、電力演算部70と、省エネモード部80と、かご内の荷重検出器85と、制御部90とを有している。電力検知部60は、三相交流電源11から回生付きコンバータ部12への入力電力量を検知すると共に、回生付きコンバータ部12から三相交流電源11へ流れる回生電力量を検知するように形成されている。電力演算部70は、電力検知部60からの検知電力量により積算電力量を演算して消費電力表示部20に表示する積算電力量演算部72と、回生電力量を積算して省エネルギー電力量として省エネ電力表示部32に表示すると共に、省エネルギー電力量をCO2削減量に換算してCO2削減量表示部34に表示する省エネ電力量演算部74とを有している。
【0017】
省エネモード部80は、省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判定する判断部82と、達しないと判断され場合には、エレベータを省エネルギーモードにして運転する省エネルギー運転設定部84とを有している。制御部90は、省エネモード部84からの省エネ信号によりインバータ部14をエレベータの速度を低減する手段、モータ5を駆動するインバータ部14のスイッチング周波数を低減する手段、かご7の満員警告レベルを荷重検出器85を用いて低減する手段、かご7の満員運転阻止レベルを低減する手段、又はドア閉開始時間を延長する手段での少なくとも一つを有している。
【0018】
上記のように構成されたエレベータシステムの動作を図3に示すフローチャートに従って説明する。今、エレベータが運転を開始すると、電力検知部60は、三相交流電源11から回生付きコンバータ部12へ流れる入力電力量を検知すると共に、回生付きコンバータ部12から三相交流電源11へ流れる回生電力量を検知する(ステップS101)。
【0019】
次に、積算電力量演算部72は、電力検知部60からの検知電力量により積算電力量を演算して消費電力表示部20に表示し(ステップS103)、省エネ電力量演算部74は、回生電力量を積算して省エネルギー電力量として省エネ電力表示部32に表示すると共に、省エネルギー電力量をCO2削減量に換算してCO2削減量表示部34に表示する(ステップS105)。
【0020】
判断部82は、省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判定し(ステップS107)、達しないと判断され場合に、省エネ運転設定部84は、エレベータを省エネルギーモードにして制御部90を介して運転する(ステップS109)。なお、ステップS107の判定において、達していると判断された場合には、エレベータを通常モードにより運転する(ステップS111)。
【0021】
上記実施の形態1に係るエレベータの電力表示装置は、エレベータのかご7と錘9との移動状態を刻々表示する運転表示部3と、エレベータの電力系のエネルギーの流れを表示するエネルギーフロー表示部10と、エレベータの力行によりかご7をモータ5により駆動すると共に、回生電力を有効に活用する制御システムにおける省電力量を表示する省エネルギー表示部(省電力表示部)30とを有する監視盤1を備えている。
【0022】
これにより、省エネルギー型の制御システムにおける省電力量を省電力表示部30に表示できる。したがって、省エネルギー型の制御システムの省電力量を簡易に視認できるので、管理者等に省エネルギーの効果を訴え易い。
【0023】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2を図4によって説明する。図4は、本発明の実施の形態2によるエレベータの監視盤の表示部を示す図で、図4中、図1と同一符号は同一部分を示し説明を省略する。図4において、本エレベータシステムは、回生無しのコンバータ部112を有し、蓄電池120がコンバータ部112の出力、すなわち、インバータ部14の入力に接続されることにより、モータ5が力行する際に、蓄電池120からも電力をインバータ部14を介してモータ5に供給すると共に、モータ5からの回生電力をインバータ部14を介して蓄電池120に充電できるように形成されている。
【0024】
このように、本発明の実施の形態2は、エレベータの力行の際に、三相交流電源11と蓄電池120とからモータ5により駆動すると共に、回生電力を蓄電池120に充電する本制御システムにおいて、回生電力を省電力量として表示する省エネルギー表示部30と備えたものである。
【0025】
これにより、省エネルギー型の制御システムにおける省電力量を省電力表示部30に表示できる。したがって、省エネルギー型の制御システムの省電力量を簡易に視認できるので、管理者等に省エネルギーの効果を訴え易い。
【0026】
上述した本発明の特徴を整理すると次のとおりである。
(1)本発明は、エレベータの電力系のエネルギーの流れを表示するエネルギーフロー表示部10と、前記エレベータのかごと錘との移動状態を刻々表示する運転表示部3と、前記エレベータの力行時に前記かごをモータにより駆動すると共に、回生電力を有効に活用する制御システムにおける省電力量を表示する省電力表示部30とを有する監視盤1を備える。
【0027】
これにより、省エネルギー型の制御システムにおける省電力量を省電力表示手段に表示できる。したがって、省エネルギー型の制御システムの省電力量を簡易に視認できるので、管理者等に省エネルギーの効果を訴え易い。
【0028】
(2)前記制御システムは、インバータにより前記モータを駆動すると共に、前記モータからの回生電力を電源に返還するように形成される。
【0029】
したがって、省電力表示手段を管理者等が見ることによりエレベータの回生電力が有効に省エネルギーに寄与していることを視認できる。
【0030】
(3)前記制御システムは、前記回生電力を蓄電池に蓄え、前記モータが力行の際に前記蓄電池からの電力を前記モータに供給するように形成され、前記省電力表示部30に表示される省電力量は、前記蓄電池からの電力を前記モータに供給する電力である。
【0031】
したがって、省電力表示手段を管理者等が見ることにより蓄電池からの電力をモータに供給する電力が省エネルギーに寄与していることを視認できる。
【0032】
(4)前記省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判断し、達しないと判断され場合には、前記エレベータを省エネルギーモードに設定して運転する省エネモード部80を備える。
【0033】
このようなエレベータシステムによれば、省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判定し、達しないと判断され場合には、エレベータを省エネルギーモードにして運転する。これにより、エレベータシステムとして省エネルギー管理を適切にできる。
【0034】
(5)省エネモード部からの省エネ信号により、エレベータの速度を低減する手段、モータを駆動するインバータのスイッチング周波数を低減する手段、かごの満員警告レベルを低減する手段、かごの満員運転阻止レベルを低減する手段、又はドア閉開始時間を延長する手段の少なくとも1つを有する制御部90を備える。
【0035】
このようなエレベータシステムによれば、省エネルギー運転手段により省エネルギーの達成が容易になる。
【符号の説明】
【0036】
1 監視盤、3 運転表示部、5 巻上モータ、7 かご、9 錘、10 エネルギーフロー部、30 省エネルギー表示部、50 省エネモード部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの電力系のエネルギーの流れを表示するエネルギーフロー表示部と、
前記エレベータのかごと錘との移動状態を刻々表示する運転表示部と、
前記エレベータの力行時に前記かごをモータにより駆動すると共に、回生電力を有効に活用する制御システムにおける省電力量を表示する省電力表示部と
を有する監視盤を備えたエレベータの電力表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの電力表示装置において、
前記制御システムは、インバータにより前記モータを駆動すると共に、前記モータからの回生電力を電源に返還するように形成されている
ことを特徴とするエレベータの電力表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータの電力表示装置において、
前記制御システムは、前記回生電力を蓄電池に蓄え、前記モータが力行の際に前記蓄電池からの電力を前記モータに供給するように形成され、
前記省電力表示部に表示される省電力量は、前記蓄電池からの電力を前記モータに供給する電力である
ことを特徴とするエレベータの電力表示装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のエレベータの電力表示装置において、
前記省電力量が予め定められた基準に達するか否かを判断し、達しないと判断され場合には、前記エレベータを省エネルギーモードに設定して運転する省エネモード部を備えたことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、
前記省エネモード部からの省エネ信号により、前記エレベータの速度を低減する手段、前記モータを駆動する前記インバータのスイッチング周波数を低減する手段、前記かごの満員警告レベルを低減する手段、前記かごの満員運転阻止レベルを低減する手段、又はドア閉開始時間を延長する手段の少なくとも1つを有する制御部を備えたことを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225304(P2011−225304A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94625(P2010−94625)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】