説明

エレベータ遠隔操作の制御システム

【課題】非常時に運行休止している場合でも、エレベータの安全を確認しつつ安全な速度でエレベータを所定の階まで遠隔で手動操作すること。
【解決手段】エレベータ遠隔操作装置17には、乗りかご上部、乗りかご下部及びホール乗り場に設置された映像配信装置13,16からの映像を表示するモニタ26と、乗りかご10を走行させる上下方向走行スイッチ25と、操作を有効・無効とする有効・無効スイッチ20と、を設け、運行休止の非常時に、有効・無効スイッチ20を有効とし、乗りかごの上下方向走行スイッチ25を操作し、上部又は下部の映像配信装置13及び照明装置14を動作させ、映像配信装置13からの映像をモニタ26に表示しつつ乗りかご10を切替可能な走行速度で走行させ、ホール乗り場の映像配信装置16からの映像をモニタ26に表示し、映像配信装置16のあるホール乗り場の所定階まで乗りかご10を遠隔で手動操作して運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔にてエレベータを操作するためのエレベータ遠隔操作システムに係わり、特に、非常時に運転休止したときの遠隔操作の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非常時において非常用信号をエレベータ制御装置が受け取ると、自動でエレベータを動作させて乗客を安全に避難させている。特に、災害発生時に管制運転されたエレベータの運転を再開させる従来技術として、例えば、特許文献1に開示の技術が挙げられる。これによると、非常時に非常信号をエレベータが受け取ると、最寄階又は避難階へ安全な速度で走行後、最寄階に到着するとエレベータの運行を休止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-119228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に示すような従来の技術では、非常信号を受け取った場合に、専門員が最寄階に運行休止しているエレベータに乗り込み、非常時専用の手動運転を行って所定の階床にエレベータを運行させて、復帰調整作業を実施する必要がある。なお、運行休止とは異なる態様である「非常停止」は、非常発生したその時の場所に乗りかごが停止して乗客が閉じ込め状態のことを云う。
【0005】
本発明の目的は、非常時に運行休止している場合でも、専門員をエレベータに乗り込ませることなく、エレベータの安全を確認しつつ安全な速度でエレベータを所定の階(避難階)まで運行可能な遠隔操作の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
乗りかごと、昇降路に設けられ前記乗りかごに運転指令を出すエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置に接続され前記乗りかごを遠隔で操作するエレベータ遠隔操作装置と、を備え、前記乗りかごには、その上部と下部にそれぞれ映像配信装置及び照明装置を設置し、さらに、ホール乗り場の所定の階には映像配信装置を設置し、前記エレベータ遠隔操作装置には、前記上部、前記下部及び前記ホール乗り場に設置された映像配信装置からの映像を表示するモニタと、前記乗りかごを上方向と下方向に走行させる走行スイッチと、当該エレベータ遠隔操作装置の操作を有効・無効とする有効・無効スイッチと、を設け、非常時が発生した場合、前記有効・無効スイッチを有効とする操作を行い、前記走行スイッチの上方向スイッチ又は下方向スイッチを操作し、前記走行スイッチに連動して前記上部又は下部の映像配信装置及び照明装置を動作させ、各映像配信装置からの映像を前記モニタに表示しつつ前記乗りかごを走行させ、前記ホール乗り場の映像配信装置からの映像を前記モニタに表示し、前記映像配信装置の設置されたホール乗り場の所定の階まで前記乗りかごを遠隔で手動運転する構成とする。
【0007】
また、前記エレベータ遠隔操作の制御システムにおいて、前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかご内に映像配信装置を設置し、前記乗りかご内、前記乗りかごの上部、前記乗りかごの下部、または前記ホール乗り場に設置された映像配信装置からのいずれかの映像を前記モニタに表示するために切り替える切替スイッチを設けること。さらに、前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかごのドア開閉のスイッチを設け、前記乗りかごが前記映像配信装置の設置されたホール乗り場の所定の階に対応する位置に到達したことを、前記エレベータ遠隔操作装置に設けられた乗りかご位置表示器により確認し、前記ドア開閉のスイッチを開操作すること。さらに、前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかごの走行速度を切り替える走行速度切替スイッチを設け、前記上部又は下部に設置された映像配信装置からの映像を前記モニタに表示しつつ前記走行速度切替スイッチを操作して前記乗りかごの走行速度を変更すること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非常時にエレベータが運転休止した場合でも、エレベータの運行と、かご上下の映像配信装置及び照明装置とを関連して動作させることにより、遠隔のエレベータ操作装置の操作によって、エレベータの走行と安全確認を同時に行ってエレベータを所定の階(例.避難階)に運行することができる。
【0009】
また、昇降路内、かご内及びホール乗り場に設置した映像配信装置からの映像を切り替えることにより、モニターを複数用意することなく最小限のモニターで安全を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るエレベータ遠隔操作の制御システムにおける全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るエレベータ遠隔操作の制御システムについて、図1を参照しながら以下説明する。本実施形態に係る制御システムの全体構成は、図1に示すように、建築物の昇降路内にある乗りかご10と、乗りかご10の走行や戸開閉の指令を出す昇降路上部又は下部の少なくとも一方にあるエレベータ制御装置11と、乗りかご10とエレベータ制御装置11をつなぐテールコード(電源線・通信線・映像線)12と、乗りかご10の上部及び下部に設置された映像配信装置13と、映像配信装置13と一対の照明装置14と、乗りかご10内に人が乗っているか否かを確認するためにかご10内に設置された映像配信装置15と、ホール乗り場の少なくとも1ヶ所(例えば、避難できる階床)に設置された映像配信装置16と、乗りかご10を遠隔で操作するエレベータ遠隔操作装置17(非常時に使用するもの)と、エレベータ制御装置11とエレベータ遠隔操作装置17をつなぐ通信・映像線18と、ホール乗り場の映像配信装置16と遠隔操作装置17をつなぐ映像線19を備えている。また、エレベータ遠隔操作装置17には、乗りかご10の位置表示器21と、エレベータ遠隔操作装置17の動作を有効にするか無効にするかの遠隔操作有効・無効の切替スイッチ20と、映像配信装置13と15と16を切り替えるスイッチ22と、走行速度を切り替えるスイッチ23と、ドアの開閉を行うスイッチ24と、乗りかご10を上下方向に操作する上下走行スイッチ25と、映像配信装置13と15と16からの映像を確認する映像モニター26と、備えている。上述した構成を備えることで、本実施形態に係るエレベータ遠隔操作の制御システムは、遠隔にて安全を確認でき、遠隔でエレベータの走行やドアの開閉や走行速度の変更を行うことができる。
【0012】
次に、本実施形態に係るエレベータ遠隔操作の制御システムの動作について説明する。まず、エレベータ制御装置11が非常用信号を受け取って、乗りかごを最寄階まで安全速度で運行させて運行休止している場合(非常時に)、エレベータ遠隔操作装置17の遠隔操作有効・無効スイッチ20を「有効」とすることによって、エレベータ遠隔操作装置17における各部材が有効となって動作可能となる。すなわち、かご上下設置映像配信装置13、かご上下照明装置14、かご内設置映像配信装置15、ホール乗り場設置映像配信装置16、乗りかご位置表示器21、昇降路とかご内とホール乗り場の映像切替スイッチ22、走行速度切替スイッチ23、ドア開閉スイッチ24、エレベータ上下走行スイッチ25、映像配信装置からの映像を確認するモニター26、の各装置を操作可能とする。
【0013】
また、スイッチ20を「有効」としたときに、乗りかご10内のかご呼び釦、開閉釦、ホール乗り場のホール呼び釦を無効として、エレベータ遠隔操作装置17によって、乗りかご10の走行とドアの開閉を行う。
【0014】
安全を確認するために、かご上下設置映像配信装置13、かご内設置映像配信装置15、ホール乗り場設置映像配信装置16からの映像をモニター26で確認する。映像切替スイッチ22を「昇降路」に切り替えると、乗りかご10の上下どちらか一方の映像配信装置13と照明装置14が動作し(上下走行スイッチ25に連動して)、モニター26には乗りかご10の上下どちらか一方の映像が映し出される。
【0015】
ここで、上下方向操作スイッチ25の上方向スイッチを押すと、乗りかご10の上方向の昇降路内の映像が、かご上設置映像配信装置13とかご上照明装置14によってモニター26に映し出され、上下方向操作スイッチ25の下方向スイッチを押すと、乗りかご10の下方向の昇降路内の映像に自動で切り替わる。
【0016】
エレベータ遠隔操作装置17の操作者はモニター26の映像を見ながら、上下走行スイッチ25を押して乗りかご10を上下方向どちらか一方に走行させ、昇降路内の安全を確認する。また、走行速度切替スイッチ23により、乗りかご10の走行速度を制限することができ、安全に昇降路内の確認ができる。安全が確認されると走行速度切替スイッチ23により、任意の速度に上げて走行させることもできる。
【0017】
映像切替スイッチ22を「かご内」に切り替えると映像配信装置15の映像がモニター26に映し出され、映像切替スイッチ22を「ホール」に切り替えるとホール乗り場設置映像配信装置16からホール乗り場の映像がモニター26に映し出される。
【0018】
乗りかご10の中に乗客が閉じ込められていた場合、乗りかご10内の映像配信装置15の映像で乗客を確認し、ホール乗り場設置映像配信装置16の映像でホール乗り場の安全を確認し、乗りかご位置表示器21で乗りかご10の位置を確認しながらエレベータ上下走行スイッチ25の押圧操作(例えば、押し続ける操作)で上又は下に走行させ、乗りかご10を映像配信装置16からの映像モニターにより安全確認した階まで走行させ、スイッチ25の例えば押圧操作の解除でエレベータを停止させ、ドア開閉スイッチ24によりドアを開けて乗客を安全にかつ迅速に救出することができる。
【0019】
このように、映像配信装置16によって乗降の安全を確認した上で、確認した所定の階まで遠隔で手動運転する。乗りかご10がホールのドアに対向する位置に至ったか否かのドア開閉可能位置の確認は、乗りかご位置表示器21を点滅させることで確認する。ここで、ホールのドアは乗りかご10のドアに連動して開閉する。また、ホールに閉じ込められた人がいた場合も同様に救出することができる。
【0020】
以上説明したように、本発明の実施形態は次のような構成を有し効果を奏することを特徴とするものである。エレベータの安全を確認するためにかごの上部及び下部に映像配信装置(カメラ)と照明装置の一対を設置し、エレベータを遠隔で操作するための遠隔操作装置を設け、エレベータ遠隔操作装置の操作に映像配信装置及び照明装置を連動させることで、昇降路内とかご上下の安全を確認でき、エレベータを走行させることができる。また、走行速度を遠隔で変化させることにより、より安全に走行させることができる。また、ホール側の少なくとも1ヶ所に映像配信装置を設置することでホール側の安全が確認でき、自動開閉をさせずに、遠隔にてドアの開閉も手動操作で安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
10 乗りかご
11 エレベータ制御装置
12 テールコード(電源線・通信線・映像線)
13 かご上下設置映像配信装置
14 かご上下照明装置
15 かご内設置映像配信装置
16 ホール乗り場設置映像配信装置
17 エレベータ遠隔操作装置
18 通信・映像線
19 映像線
20 遠隔操作有効・無効スイッチ
21 乗りかご位置表示器
22 昇降路とかご内とホール乗り場の映像切替スイッチ
23 走行速度切替スイッチ
24 ドア開閉スイッチ
25 エレベータ上下走行スイッチ
26 映像モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、昇降路に設けられ前記乗りかごに運転指令を出すエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置に接続され前記乗りかごを遠隔で操作するエレベータ遠隔操作装置と、を備え、
前記乗りかごには、その上部と下部にそれぞれ映像配信装置及び照明装置を設置し、さらに、ホール乗り場の所定の階には映像配信装置を設置し、
前記エレベータ遠隔操作装置には、前記上部、前記下部及び前記ホール乗り場に設置された映像配信装置からの映像を表示するモニタと、前記乗りかごを上方向と下方向に走行させる走行スイッチと、当該エレベータ遠隔操作装置の操作を有効・無効とする有効・無効スイッチと、を設け、
非常時が発生した場合、前記有効・無効スイッチを有効とする操作を行い、前記走行スイッチの上方向スイッチ又は下方向スイッチを操作し、前記走行スイッチに連動して前記上部又は下部の映像配信装置及び照明装置を動作させ、各映像配信装置からの映像を前記モニタに表示しつつ前記乗りかごを走行させ、前記ホール乗り場の映像配信装置からの映像を前記モニタに表示し、前記映像配信装置の設置されたホール乗り場の所定の階まで前記乗りかごを遠隔で手動運転する
ことを特徴とするエレベータ遠隔操作の制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかご内に映像配信装置を設置し、
前記乗りかご内、前記乗りかごの上部、前記乗りかごの下部、または前記ホール乗り場に設置された映像配信装置からのいずれかの映像を前記モニタに表示するために切り替える切替スイッチを設ける
ことを特徴とするエレベータ遠隔操作の制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかごのドア開閉のスイッチを設け、
前記乗りかごが前記映像配信装置の設置されたホール乗り場の所定の階に対応する位置に到達したことを、前記エレベータ遠隔操作装置に設けられた乗りかご位置表示器により確認し、前記ドア開閉のスイッチを開操作する
ことを特徴とするエレベータ遠隔操作の制御システム。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかごの走行速度を切り替える走行速度切替スイッチを設け、
前記上部又は下部に設置された映像配信装置からの映像を前記モニタに表示しつつ前記走行速度切替スイッチを操作して前記乗りかごの走行速度を変更する
ことを特徴とするエレベータ遠隔操作の制御システム。
【請求項5】
乗りかごに運転指令を出すエレベータ制御装置に接続され前記乗りかごを遠隔で操作するエレベータ遠隔操作装置であって、
前記エレベータ遠隔操作装置には、前記乗りかごの上部と下部にそれぞれ設置された照明装置と対となる映像配信装置、およびホール乗り場の所定の階に設置された映像配信装置からの映像を表示するモニタと、前記乗りかごを上方向と下方向に走行させる走行スイッチと、当該エレベータ遠隔操作装置の操作を有効・無効とする有効・無効スイッチと、を設け、
非常時が発生した場合、前記有効・無効スイッチを有効とする操作を行い、前記走行スイッチの上方向スイッチ又は下方向スイッチを操作し、前記走行スイッチに連動して前記上部又は下部の映像配信装置及び照明装置を動作させ、各映像配信装置からの映像を前記モニタに表示しつつ前記乗りかごを走行させ、前記ホール乗り場の映像配信装置からの映像を前記モニタに表示し、前記映像配信装置の設置されたホール乗り場の所定の階まで前記乗りかごを遠隔で手動運転する
ことを特徴とするエレベータ遠隔操作装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1289(P2012−1289A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135189(P2010−135189)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】