エンコーダ
【課題】高精度なスケールの位置検出をすること
【解決手段】エンコーダにおいて、パターン列は、移動方向であるX方向に垂直なY方向に周期的に配列されたX方向に第1の変調周期P1と第2の変調周期P2を有する。信号処理手段30は、受光素子アレイの出力からピッチP1の位相を取得する第1の位相取得手段32を有する。エンコーダは、領域23を検出する複数の受光素子17Aの出力信号に対して受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けをし、重みは、第1の位相取得手段の空間周波数応答のピッチP2に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、重み付け有の値が重み付け無の値以下となるように設定されている。
【解決手段】エンコーダにおいて、パターン列は、移動方向であるX方向に垂直なY方向に周期的に配列されたX方向に第1の変調周期P1と第2の変調周期P2を有する。信号処理手段30は、受光素子アレイの出力からピッチP1の位相を取得する第1の位相取得手段32を有する。エンコーダは、領域23を検出する複数の受光素子17Aの出力信号に対して受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けをし、重みは、第1の位相取得手段の空間周波数応答のピッチP2に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、重み付け有の値が重み付け無の値以下となるように設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アブソリュートエンコーダの検出精度をインクリメンタルエンコーダのように上げるため、スケールの各トラックにインクリメンタルパターンを、そのパターンの形状又はピッチが測長方向に変調周期で周期的に変化するように形成している。これにより、インクリメンタルパターンは相対位置の情報のみではなく変調周期の繰り返しによる絶対位置の変調情報を持つことになる。この結果、高精度な相対位置の情報と精度がそれほど高くない絶対位置情報を利用してスケールの絶対位置を高精度に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−198318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、異なる周期の信号を各トラックに設けられたインクリメンタルパターンから得ているので光源と受光素子の実装高さずれや、スケールと受光素子の傾きによる像倍率の誤差により、インクリメント信号の位相取得精度が低下するおそれがある。この結果、高精度なスケールの位置検出ができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、高精度なスケールの位置検出が可能なエンコーダを提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンコーダは、エネルギー分布を空間変調する複数のパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、を有する。前記パターン列は、前記移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有する。前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段を有し、前記エンコーダは、前記第1の変調周期を検出する複数の検出素子の出力信号に対して前記検出素子アレイの位置に応じた重みを使用して重み付けをする重み付け手段を更に有する。前記重みは、前記第1の位相取得手段の空間周波数応答の前記第2の変調周期に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、前記重み付け手段が重み付けを行った場合の値が、重み付けが無い場合の値以下となるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高精度なスケールの位置検出が可能なエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エンコーダのブロック図である。(実施例1)
【図2】トラックの部分拡大平面図である。(実施例1、2、3)
【図3】図2の部分拡大平面図である。(実施例1、2、3)
【図4】図2の部分拡大平面図である。(実施例1、2、3)
【図5】図1に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例1)
【図6】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図5(a)に示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例1)
【図7】図6の効果の理由を説明するための受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例1)
【図8】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例1)
【図9】エンコーダのブロック図である。(実施例2、3)
【図10】図9に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2)
【図11】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図10に示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例2)
【図12】図11の効果の理由を説明するための受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2)
【図13】図9に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2、3)
【図14】2トラック構成の検出素子の読み取り領域とパターン領域の位置関係を示す図である。(実施例2)
【図15】図9に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例3)
【図16】図15の効果の理由を説明するための受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例3)
【図17】トラックの部分拡大平面図である。(実施例4)
【図18】図17の部分拡大平面図である。(実施例4)
【図19A】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例4)
【図19B】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例4)
【図19C】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例4)
【図20】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Aに示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例4)
【図21】光源の配光特性に起因する光量分布を示すグラフである(実施例4)
【図22】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Bに示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例4)
【図23】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Cに示す重み付けを行った場合のA+相とA−相の差動演算後の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例4)
【図24】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例4)
【図25】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1の光学式エンコーダのブロック図である。エンコーダは、固定部に取り付けられるセンサユニット10A、不図示の可動部に取り付けられるスケール20、信号処理回路(信号処理手段)30、記憶装置40を有する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10Aとスケール20が相対的に移動可能な構成であれば足りる。
【0011】
センサユニット10Aは、LEDからなる光源12Aと受光素子アレイ16Aを有する受光IC14Aが同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。受光素子アレイ16Aは、スケール20のパターンからのエネルギー分布を検出する複数の検出素子が、スケール20(または可動部の)移動方向(測長方向)であるX方向に並べられた検出素子アレイとして機能する。本実施形態ではエネルギーは光であるが、後述するように、磁気、電気などその種類は光に限定されない。センサユニット10Aには後述する重み付け手段が設けられている。なお、重み付け手段は信号処理回路30に設けられていてもよい。
【0012】
スケール20は、ガラス基板上にクロム反射膜のパターンを複数有するパターン列がトラック21にパターニングされている。パターンはエネルギー分布を空間変調するためのパターンである。
【0013】
各トラック21は、X方向に垂直なY方向に周期的に配列され、X方向にそれぞれ異なるピッチ(変調周期)を有する複数の領域を有する。例えば、2種類の領域が設けられている場合には、X方向に第1のピッチ(第1の変調周期)を有する第1の領域とX方向に第2のピッチ(第2の変調周期)を有する第2の領域が設けられる。
【0014】
なお、本実施形態では、受光素子アレイ16Aはスケール20のパターンの反射光を受光しているが、スケール20のパターンの透過光を受光する場合にも本実施形態は適用可能である。即ち、受光素子アレイ16Aは、スケール20のパターンからの光を受光できれば足りる。
【0015】
信号処理回路30は、センサユニット10の受光素子アレイ16の出力信号を処理して位置情報に変換する。信号処理回路30は、センサユニット10で得られたエンコーダ信号の内挿処理や、記憶装置40への信号の書き込み、および、読み出しも行う。
【0016】
信号処理回路30は、不図示のノイズフィルタ、増幅回路、A/D変換回路の他に、信号分離手段31、第1の位相取得手段32、第2の位相取得手段33、位置情報取得手段34を有する。
【0017】
信号分離手段31は、受光素子アレイ16Aの出力をトラック21Aの各領域に対応する信号に分離する機能を有する。信号分離手段31は、受光IC14Aにスイッチ回路が設けられる場合にはスイッチ回路による接続を切り替える信号を送信し、受光IC14Aにスイッチ回路が設けられない場合には高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって信号を分離することができる。あるいは、信号分離手段31は、受光素子アレイ16Aにパターンピッチごとに別々の受光面を有する受光素子を設けることによって実現してもよい。
【0018】
第1の位相取得手段32は、(第1の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第1の領域のエネルギー分布の位相(第1の位相)を取得する。第1の位相取得手段32は後述する相対位置信号取得手段として機能してもよい。
【0019】
第2の位相取得手段33は、(第2の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第2の領域のエネルギー分布の位相(第2の位相)を取得する。
【0020】
なお、トラック21に第3のピッチを有する領域などが設けられている場合にはそれに合わせて第3の位相取得手段等が設けられてもよいことは言うまでもない。
【0021】
位置情報取得手段34は、スケール20の位置の情報を取得する。位置情報取得手段34は、スケール20の相対位置を表す相対位置信号を取得する相対位置信号取得手段とスケール20の絶対位置を表す絶対位置信号を取得する絶対位置信号取得手段を有してもよい。
【0022】
動作において、センサユニット10A内の光源12Aから出射した発散光束はスケール20のトラック21Aに照射され、トラック21Aで反射した光束はセンサユニット10Aの受光素子アレイ16Aに受光される。受光素子アレイ16Aは、トラック21Aの反射率分布が2倍拡大された像として受光する。受光素子アレイ16Aによって受光された光束は電気信号に変換され、エンコーダ信号として信号処理回路30に送られる。信号処理回路30は、受光素子アレイ16Aからの出力を位置情報に変換し、スケール20の位置の情報を高精度に取得および出力する。
【0023】
図2は、トラック21Aの部分拡大平面図である。トラック21Aは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、2種類の領域(領域23、領域25)が交互に並べられており、図2の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Aの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。領域23は上述した第1の領域に相当し、領域25は上述した第2の領域に相当する。図2において、白色部は光を透過または吸収する非反射部22である。
【0024】
図3は、領域23のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域23は、X方向のピッチP1(第1のピッチ)(=150μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部24と非反射部22から構成されている。ピッチP1は上述した第1の変調周期として機能する。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。
【0025】
領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW1/8以下の領域においては、反射部24のX方向の幅はP1・23/30である。Y方向の中心からの距離がW1/8からW1/4までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・17/30である。Y方向の中心からの距離がW1/4からWa・3/8までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・13/30である。Y方向の中心からの距離がW1・3/8からW1/2までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・7/30である。
【0026】
図4は、領域25のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域25は、X方向のピッチP2(第2のピッチ)(=303μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部26、27と非反射部22から構成されている。ピッチP2は上述した第2の変調周期として機能する。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。
【0027】
領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW2/6以下の領域においては、反射部26のX方向の幅はP2・70/96である。この領域は、周期両端からそれぞれP2・3/96の幅で反射部27が形成される。Y方向中心からの距離がW2/6からW2・1/3までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・54/96である。Y方向の中心からの距離がW2・1/3からW2・1/2までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・22/96である。
【0028】
図5は、受光素子アレイ16Aの受光面の平面図である。受光素子アレイ16Aにおいては、受光素子17AがX方向に25μmピッチで48個並んでおり、一つの受光素子17AはX方向の幅X_pdが25μmであり、Y方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ16Aの全幅X_totalは1200μmである。
【0029】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に150μmのピッチを有する領域23と303μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0030】
各受光素子17Aからの出力は、スイッチ回路18を介して切り替えられ、選択的に後段の4つの不図示の初段増幅器に接続されている。4つの初段増幅器は、出力端子A+、B+、A−、B−(それぞれA+相、B+相、A−相、B−相を表す)に対応する受光素子17Aがそれぞれ接続され、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)を出力する。
【0031】
スイッチ回路18は信号処理回路30の信号分離手段31からの入力によって受光素子17Aと出力端子との接続を切り替えることができる。この結果、複数の受光素子17Aにおいて電気的に加算される間隔が切り替わる。
【0032】
信号処理回路30からの入力がハイレベルの場合は、図5(a)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aはピッチ150μmのパターン(反射像周期300μm)を検出可能となる。この結果、領域23からの周期信号を分離することができる。
【0033】
信号処理回路30からの入力がローレベルの場合は、図5(b)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aはピッチ300μmのパターン(反射像周期600μm)を検出可能となる。この結果、領域25からの周期信号を分離することができる。
【0034】
4相正弦波状信号の相対位相はそれぞれの検出ピッチに対し、S(A+)を基準とすると、S(B+)は約+90度S(A−)は約+180度S(B−)は約+270度の関係にある。
【0035】
信号処理回路30は、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A)、S(B)を生成する。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
この時、入力がローレベルの場合のS(A)はスケールピッチ150μmの像に対してS(A+)とS(A−)が同位相成分となるので数式1の差動演算の結果相殺される。S(B)についても同様である。
【0039】
入力がハイレベルの場合、図5(a)に示すように、48個の受光素子17Aのうち左右にそれぞれ12個ずつある受光素子17Aは、信号を取り出す受光素子17Aが連続する3個のうちの1個となっている。このため、中央の24個の受光素子17Aの出力信号に対して両側のそれぞれの12個の受光素子17Aの出力信号の重み付けは1/3になる。
【0040】
このように、本実施例ではセンサユニット10Aに重み付け手段が設けられている。重み付け手段は、第1の領域である領域23を検出する複数の受光素子17Aの出力信号に対して、P2(第2の変調周期)の位相または受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けする手段である。
【0041】
重みは、後述するように、空間周波数応答のP2に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、重み付け有の値が重み付け無の値以下となるように設定されている。
【0042】
図6は、重み付けが無い(重み付け無)と、図5(a)の重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/300μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相も同様な空間周波数応答となる。
【0043】
図6において、破線は、複数の受光素子17Aの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、実線は、複数の受光素子17Aの出力信号に対してP2の位相に応じた重みを使用して(一様ではない重みを使用して)重み付けを行った場合を示している。
【0044】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域25のパターン周波数に対応する空間周波数1/600[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲が低減されていることが分かる。これにより、領域23のパターンから信号を読み出す場合の4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)が領域25のパターンの影響を受けにくくなり、領域23のパターンに対応する信号のみを高精度に検出することが可能となる。
【0045】
このように、本実施例によれば、受光素子上の像の空間周波数に変動があった場合でも、第2のピッチP2の空間周波数成分が、第1のピッチP1の空間周波数成分の位相取得において誤差となり得る影響を低減することができる。
【0046】
受光素子上の像の空間周波数の変動要因としては、例えば、光源12Aと受光IC14Aの実装高さずれや、スケール20と受光素子17Aの相対傾きによる像倍率の誤差がある。また、本実施例のようにスケール上の2つの周期成分の空間周波数を整数倍からわずかに異ならせる場合でも、P2の空間周波数成分が、P1の空間周波数成分の位相取得において誤差となり得る影響を低減することができる。これにより、P1の空間周波数成分の位相から得られる相対位置信号の検出精度が高まり、スケール20の絶対位置の検出精度が高まる。また、スケール上に複数の周期情報を形成する場合の設計自由度が向上する。
【0047】
図7は、受光素子アレイ16Aの受光面の平面図である。以下、図7を参照して、受光領域内で不均一な重み付けを行うことによって、P2の周波数応答を広い範囲で低減することができる理由について説明する。
【0048】
まず、A+相に対応する受光素子17Aに着目し、600μm周期の像が受光素子アレイ16Aに入射した場合を想定する。A+相に対応する受光素子アレイ16Aの中心を基準線(位相0度)とし、4つの離散する受光素子ブロックA1〜A4について600μm周期成分の相対位相θ1〜θ4を考える。すると、θ1=−270度、θ2=−90度、θ3=+90度、θ4=+270度となる。ここで、検出像に600μm周期からの倍率誤差Δ(%)である場合、各位相は次式で与えられる。
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
【数5】
【0052】
【数6】
【0053】
式の簡略化のため、次式のようにおくと、
【0054】
【数7】
【0055】
A1〜4の出力S1〜4は、検出効率の比率をそれぞれa1〜4として次式のように表わすことができる。
【0056】
【数8】
【0057】
【数9】
【0058】
【数10】
【0059】
【数11】
【0060】
ここで、Δ´<<360として、SINΔ´≒Δ´、SIN(3Δ´)≒3Δ´、COS(3Δ´)≒COSΔ´≒1なる近似を用いると、合計出力は次式のようになる。
【0061】
【数12】
【0062】
よって、倍率誤差Δが変動しても常にS1+S2+S3+S4≒0となる条件は、a1+a3=a2+a4かつ3・(a1+a4)=a2+a3となる。これを満たす解には、例えば、a1:a2:a3:a4=1:4:5:2、等が考えられる。但し、a1:a2:a3:a4=1:3:3:1のように、X方向に対称の重みにした方がよりシンプルで設計が容易である上、光量分布の非対称性等の影響を低減することができる。
【0063】
なお、実際の設計でこの比率の通りに重み付けする必要はなく受光素子に入射する光量分布や必要十分な精度を考慮し、適切な重み付けを設定してやればよい。以上はB+相、A−相、B−相についても同様である。
【0064】
図5に戻って、スイッチ回路18への入力がローレベルである場合において、領域25から得られる信号の補正について説明する。受光素子17Aの検出ピッチ(300μm)と、スケール状のパターン周期(303μm)がわずかにずれているため、2相正弦波状信号S(A)、S(B)間の相対位相差補正処理を行うことが望ましい。以下に、位相差補正の方法について説明する。
【0065】
まず、相対位相差誤差eを含む2相正弦波信号S(A)、S(B)は、位相をθとして、次式のように表すことができる。
【0066】
【数13】
【0067】
【数14】
【0068】
数式13、14より、2相正弦波信号S(A)、S(B)の和と差を取ると次に示すように誤差成分eを分離することができる。
【0069】
【数15】
【0070】
【数16】
【0071】
相対位相差誤差eは設計値よりe=(1−300/303)・πと表すことができる。数式15、16の振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)、2・cos(e(x)/2−π/4)について、それぞれ逆数を乗じることにより、以下のように位相差誤差を補正した2相正弦波信号S(A)’、S(B)’を算出する。但し、φ=θ−π/4である。
【0072】
【数17】
【0073】
【数18】
【0074】
相対位相差誤差eを初期化動作によって記憶してもよい。例えば、所定のX方向範囲のS(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)を取得し、−S(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・cos(e(x)/2−π/4)を取得する。そして、それぞれの値を記憶装置40に記憶してもよい。この場合、光源12Aと受光素子アレイ16Aの実装高さずれや、スケール20とセンサの相対傾きによる像倍率の誤差の影響を含めて補正することが可能である。
【0075】
以上のようにして得られたS(A)´をS(A)、S(B)´をS(B)とおく。
【0076】
スイッチ回路18への入力がハイレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第1の位相取得手段32は領域23のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ1を次式の演算によって取得する。ATAN2[Y,X]は、象限を判別して0〜2π位相に変換する逆正接演算関数である。
【0077】
【数19】
【0078】
同様に、スイッチ回路18への入力がローレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第1の位相取得手段33は領域25のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ2を次式の演算によって取得する。
【0079】
【数20】
【0080】
本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32の出力を相対位置信号として取得する。相対位置信号の変化を計数することによってスケール20が測定開始位置から所定周期として何周期目に位置するかの情報を取得することができる。
【0081】
また、本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32と第2の位相取得手段33の出力に基づいて後述するバーニア信号を生成することによってスケール20の絶対位置の情報を出力する。
【0082】
スイッチ回路18への入力の切り替え前後で、時間差をおかずに信号を取得することにより、ほぼ同一位置でのΦ1、Φ2を得ることができる。
【0083】
本実施例では、図5に示すように、受光素子アレイ16Aの複数の受光素子17Aの少なくとも一部は、位相信号Φ1を取得する受光素子17Aと位相信号Φ2を取得する受光素子17Aに共通に使用されている。このため、従来のように両者を別々に設けるよりも受光素子アレイが小型になる。
【0084】
スケール20が高速移動中は同期性が低下するが、その場合は複数回の取り込みを行って位相の平均を取るようにして同期性を確保すればよい。まず、検出ピッチ150μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をハイからローへ切り替える。続いて、検出ピッチ300μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をローからハイへ切り替え、再度検出ピッチ150μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得する。それぞれの取得タイミングのインターバルはほぼ一定とする。これらから演算した1回目のΦ1と2回目Φ1の平均を取ることによって、Φ1とΦ2の同期性を向上させることができる。
【0085】
次に、信号処理回路30の位置情報取得手段34は、絶対位置信号として機能するバーニア信号Svを下記の演算によって取得する。
【0086】
【数21】
【0087】
このとき、信号処理回路30は、Sv<0のときはSv=Sv+2π、Sv>2πのときはSv=Sv−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。P1、P2の位相信号Φ1、Φ2とX方向の位置xとの関係は以下のように表すことができる。
【0088】
【数22】
【0089】
【数23】
【0090】
なお、バーニア信号Svは数式21に示す係数に限定されない。即ち、第1の変調周期P1と第2の変調周期P2について|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|の条件を満たす整数m、nに対し、A/B=n/mの関係を満たす2つの係数A、Bを用いて、Sv=A・Φ1−B・Φ2のように表すことができる。
【0091】
バーニア信号Svの周期Tvは、Φ1−2・Φ2が0から±2πに変化するX方向の位置変化量であるので次式のように表すことができる。
【0092】
【数24】
【0093】
【数25】
【0094】
このようにして得られたバーニア信号Svとスケール位置との関係は図8(a)のようになる。本実施例では数式25よりバーニア信号Svの周期Tv=15.15mmとなり、これが検出可能範囲となる。受光素子アレイ長におけるスケール上の検出範囲はX方向に600μmの範囲なので検出可能範囲は受光素子アレイ長の検出範囲よりもはるかに長くなる。従って、バーニア信号Svを絶対位置信号として使用することによって広い範囲でスケールの移動方向の絶対位置を検出することができる。
【0095】
また、位相出力Φ1とスケール位置との関係は図8(b)のようになる。位相Φ1をスケール20の相対位置を表す相対位置信号(インクリメンタル信号)として用い、また、スケール20の絶対位置を表す絶対位置信号としてバーニア信号Svを使用する。
【0096】
また、本実施例では、光学式エンコーダの例となっているが、磁気式エンコーダ、静電容量式エンコーダ等でも同様な効果が得られる。磁気式エンコーダの場合、スケール20に磁性体を用い、磁性の極性分布を本実施例のスケール20の反射膜と同様の形状で形成する。このスケールに近接してアレイ状に並べた磁界検出素子を配して検出する。静電容量式の場合は、本実施例のスケール反射膜と同様の形状に導電性の電極パターンを形成し、別のアレイ状の電極パターンを近接対向させて検出するようにすればよい。
【0097】
以上のようにして、センサを大型化せず、広い範囲の絶対位置信号を高精度に取得することが可能である。
【実施例2】
【0098】
図9は、実施例2の光学式エンコーダのブロック図である。エンコーダは、固定部に取り付けられるセンサユニット10B、不図示の可動部に取り付けられるスケール20、信号処理回路(信号処理手段)30、記憶装置40を有する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10Bとスケール20が相対的に移動可能な構成であれば足りる。
【0099】
センサユニット10Bは、一つのLEDからなる光源12Bと受光素子アレイ16Bを有する受光IC14Bと受光素子アレイ16Cを有する受光IC14Cが同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。受光素子アレイ16B、Cは、スケール20のパターンからのエネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向(測長方向)であるX方向に並べられた検出素子アレイとして機能する。
【0100】
信号処理回路30は、センサユニット10Bの受光素子アレイ16B、Cからの出力を位置情報に変換する以外は実施例1と同様である。
【0101】
図10は、受光素子アレイ14Bの受光面の平面図である。受光素子アレイ14Bにおいては、受光素子17BがX方向に75μmの中心ピッチで24個並んでおり、一つの受光素子17BのY方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ14Bの全幅X_totalは1800μmである。
【0102】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向900μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に150μmのピッチを有する領域23と303μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0103】
受光素子17BのX方向の幅は領域によって異なる。図10の左端の1番目から4番目の受光素子17BのX方向の幅X_pd1は30μm、5番目から20番目の受光素子17BのX方向の幅X_pd2は75μm、21番目から24番目の受光素子17BのX方向の幅X_pd1は30μmである。
【0104】
このように、本実施例ではセンサユニット10Bに重み付け手段が設けられている。重み付け手段は、領域23を検出する複数の受光素子17Aの出力信号に対して、P2(第2の変調周期)の位相または受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けする手段である。
【0105】
図11は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図10の重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/300μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相についても同様な空間周波数応答となる。
【0106】
図11において、破線は、複数の受光素子17Bの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、実線は、複数の受光素子17Bの出力信号に対してP2の位相に応じた重みを使用して重み付けを行った重み付け有の場合を示している。
【0107】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域25のパターン周波数に対応する空間周波数1/600[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。即ち、受光領域内で不均一な重み付けを行うことによって倍率誤差に対する不要成分(ここでは303μmパターンの2倍拡大像成分)の漏れ込を広い周波数範囲で低減することができている。これにより、領域23のパターンから信号を読み出す場合の4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)が領域25のパターンの影響を受けにくくなり、領域23のパターンに対応する信号のみを高精度に検出することが可能となる。
【0108】
このように、本実施例においても、受光素子上の像の空間周波数に変動があった場合でも、P2の空間周波数成分が、P1の空間周波数成分の位相取得において誤差となり得る影響を低減することができる。
【0109】
図12は、受光素子アレイ16Bの受光面の平面図である。以下、図12を参照して、受光領域内で不均一な重み付けを行うことによって、P2の周波数応答を広い範囲で低減することができる理由について説明する。
【0110】
まず、A+相に対応する受光素子17Bに着目し、6つの離散する受光素子ブロックA1〜a6について、600μm周期成分の相対位相θ1〜θ6を考える。検出像に600μm周期からの倍率誤差Δ(%)があった場合、各位相は次式で与えられる。
【0111】
【数26】
【0112】
【数27】
【0113】
【数28】
【0114】
【数29】
【0115】
【数30】
【0116】
【数31】
【0117】
実施例1と同様に、Δ´=90・Δ÷100、および、SINΔ´≒Δ´、SIN(3Δ´)≒3Δ´、COS(3Δ´)≒COSΔ´≒1なる近似から置き換えを行うと、合計出力は次式のようになる。
【0118】
【数32】
【0119】
よって、倍率誤差Δが変動しても常にS1+S2+S3+S4+S5+S6≒0となる条件は、a1+a3+a5=a2+a4+a6かつ、3・(a2+a5)=(a3+a4)+5・(a1+a6)となる。本実施例では、a1:a2:a3:a4:a5:a6=0.4:1:1:1:1:0.4としている。
【0120】
図13は、受光素子アレイ16Cの受光面の平面図である。受光素子アレイ14Cにおいては、受光素子17CがX方向に150μmの中心ピッチで12個並んでいる。一つの受光素子17CのX方向の幅X_pdは150μmであり、Y方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ16Cの全幅X_totalは1800μmである。
【0121】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向900μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に150μmのピッチを有する領域23と303μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0122】
受光素子アレイ17Cの受光面の配置は、スケールパターン300μm周期(反射像周期600μm)の検出ピッチに対応する。このとき、領域23の像(反射像周期300μm)に対してはS(A+)とS(A−)が同位相成分となるので、上述した差動演算の結果キャンセルされる。S(B)についても同様である。
【0123】
ここで、それぞれの受光素子アレイに対し、異なる周期パターンからの像を同時に受光することの利点について説明する。受光素子A(第1の検出素子)と受光素子(第2の検出素子)Bで別々の周期パターンを走査させる場合の各センサの読み取り領域と位置ずれ可能なY方向範囲を図14に示す。
【0124】
センサ読み取り領域が対応するパターンからはみ出ないようにするためには、読み取り領域の間隔Dによって、可能な位置ずれ量が±D/2に制限されるため、Y方向の相対位置を精密に位置決めする必要がある。
【0125】
一方、本発明のように、異なる周期パターンからの像をまとめて受光し、必要な信号のみを分離して検出するようにした場合は、上記制限を受けず、Y方向の位置によらず安定的に高精度な信号を取得することが可能である。
【0126】
以上のように、本実施例は、別々の受光素子で異なる周期を検出するようにしたので、切り替え処理が不要となる。よって、実施例1に対し周期信号間の時間的同期性を重視するシステムの場合には有効である。
【実施例3】
【0127】
本実施例は、実施例2に対して受光素子アレイ14Bの受光面の配置を異ならせ受光素子アレイ14Dを使用している点で実施例2と相違し、その他の点では実施例2と同様である。倍率誤差Δが変動しても常にS1+S2+S3+S4+S5+S6≒0となる条件、a1+a3+a5=a2+a4+a6かつ、3・(a2+a5)=(a3+a4)+5・(a1+a6)を満たす別の例である。本実施例では、a1:a2:a3:a4:a5:a6=1:2:1:1:2:1としている。このように、本実施例では実施例2と同様に、センサユニット10Bに重み付け手段が設けられている。
【0128】
図15は、受光素子アレイ14Dの受光面の配置を示す平面図である。各受光素子のX方向の幅は領域によって異なる。図15の左端から1番目から4番目、9番目から16番目、21番目から24番目の受光素子17DのX方向の幅X_pd1は32.5μm、5番目から8番目および17番目から20番目の受光素子17DのX方向幅X_pd2は75μmである。
【0129】
図16は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図15の重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/300μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相についても同様な空間周波数応答となる。
【0130】
図16において、破線は、複数の受光素子17Dの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、実線は、複数の受光素子17Dの出力信号に対してP2の位相に応じた重みを使用して重み付けを行った重み付け有の場合を示している。
【0131】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域25のパターン周波数に対応する空間周波数1/600[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。
【実施例4】
【0132】
実施例4は、図1に示すエンコーダの構成において、トラック21Aの代わりにトラック21Bを使用し、受光IC14Aの代わりに受光IC14Eを使用している点が実施例1と相違する。図17は、トラック21Bの部分拡大平面図である。
【0133】
トラック21Bは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、3種類の領域(領域23、領域25、領域28)が順番に周期的に配列されている。図17の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Eの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。
【0134】
領域23は図3に示すもので、X方向のピッチP1(=127.204969μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなる。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0135】
領域25は図4に示すもので、X方向のピッチP2(=256μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなる。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0136】
図18は、領域28のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域28は、X方向のピッチP3(=553.513514μm)ごとに図18のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部29と非反射部22から構成されている。領域28のY方向の幅はW3=50μmである。
【0137】
領域28のY方向の位置によって反射部29のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW3/8以下の領域においては、反射部29のX方向の幅はP3・185/240である。Y方向の中心からの距離がW3/8からW3/4までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・141/240である。Y方向の中心からの距離がW3/4からWa・3/8までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・105/240である。Y方向の中心からの距離がW3・3/8からW3/2までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・61/240である。
【0138】
図19A〜19Cは、受光IC14Eの受光素子アレイ16Eの受光面の配置を示す平面図である。受光素子アレイ16Eは、受光素子17EがX方向に32μmピッチで64個並んでおり、一つの受光素子17EのX方向の幅X_pdは32μmであり、Y方向の幅Y_pdは900μmである。受光素子アレイ16Eの全幅X_totalは2048μmである。
【0139】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向450μm、X方向1024μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に127.204969μmのピッチを有する領域23と、256μmのピッチを有する領域25と553.513514μmのピッチを有する領域28がY方向にそれぞれ3ライン分ずつ含まれる。
【0140】
各受光素子17Eからの出力は、スイッチ回路18を介して切り替えられ、選択的に後段の4つの不図示の初段増幅器に接続されている。4つの初段増幅器は、出力端子A+、B+、A−、B−(それぞれA+相、B+相、A−相、B−相を表す)に対応する受光素子17Eがそれぞれ接続され、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)を出力する。
【0141】
スイッチ回路18Eは信号処理回路30の信号分離手段31からの入力によって受光素子17Eと出力端子との接続を切り替えることができる。この結果、複数の受光素子17Eにおいて電気的に加算される間隔が切り替わる。
【0142】
信号処理回路30からの入力がハイレベルの場合は、図19Aに示すように、スケールパターン128μm(反射像周期256μm)の検出ピッチとなり、領域23からの周期信号のみが分離できる。
【0143】
信号処理回路30からの入力がローレベルの場合は、図19Bに示すように、スケールパターン256μm(反射像周期512μm)の検出ピッチとなり、領域25からの周期信号のみが分離できる。
【0144】
信号処理回路30からの入力がミドルレベルの場合は、図19Cに示すように、スケールパターン512μm(反射像周期1024μm)の検出ピッチとなり、領域28からの周期信号のみが分離できる。
【0145】
4相正弦波状信号の相対位相はそれぞれの検出ピッチに対し、S(A+)を基準とすると、S(B+)は約+90度S(A−)は約+180度S(B−)は約+270度の関係にある。
【0146】
信号処理回路30は、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)について数式1、2の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A)、S(B)を生成する。
【0147】
入力がハイレベルの場合、図19Aに示すように、個々の周期に対応する各相の受光素子アレイ面積は、受光面の中央部が2個ずつになっているのに対し、周辺部は1個ずつとなっている。このように、本実施例では、実施例1と同様に、センサユニット10Aに重み付け手段が設けられている。
【0148】
図20は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Aの重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/256μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相も同様な空間周波数応答となる。
【0149】
図20において、破線は、複数の受光素子17Eの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、一点鎖線は、複数の受光素子17Eの出力信号に対してP3の位相または受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けを行った場合を示している。図20において、実線は、重み付け有で光量分布を考慮した場合を示している。
【0150】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域28のパターン周波数に対応する空間周波数1/1024[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。更に、受光素子アレイ16Eに入射する光量が一様でなく、図21に示す光源12の配光特性に起因する光量分布を持つ場合を想定する。本実施例では実際の光量分布に合わせ重み付けが設計されているため、図20の実線(重み付け有り、光量分布考慮)が示すように、光量分布がある状態でより空間周波数1/1024[μm−1]付近の減衰効果が高い。
【0151】
入力がローレベルの場合、図19Bに示すように、個々の周期に対応する各相の受光素子アレイ面積は、受光面の中央部が4個ずつになっているのに対し、周辺部は2個ずつとなっている。また、中央部の4個は連続する受光素子ではなく、両端の2個を隣の検出相と入れ替えている。これにより、連続する4個を積算する場合に比べ実効的な積算幅が増加し、領域23からの周期成分の影響を低減させることができる。
【0152】
図22は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Bの重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/512μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相も同様な空間周波数応答となる。
【0153】
図22において、破線は、複数の受光素子17Eの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、一点鎖線は、複数の受光素子17Eの出力信号に対してP3の位相または受光素子アレイ上の位置応じた重みを使用して重み付けを行った場合を示している。図22において、実線は、重み付け有で光量分布を考慮した場合を示している。
【0154】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域28のパターン周波数に対応する空間周波数1/1024[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。また、本実施例では実際の光量分布に合わせ重み付けが設計されているため、図22のプロット(重み付け有り、光量分布考慮)が示すように、光量分布がある状態でより空間周波数1/1024[μm−1]付近の減衰効果が高い。
【0155】
入力がミドルレベルの場合、図19Cに示すように、個々の周期に対応する各相の受光素子アレイ面積は、受光面の中央部が8個ずつになっているのに対し、周辺部は4個ずつとなっている。P1=127.204969μmおよびP1=256μmの像に対してS(A+)とS(A−)がほぼ同位相成分となるので、上記差動演算の結果、領域23および領域25の周期成分がキャンセルされ減衰される。S(B)についても同様である。
【0156】
図23は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Cの重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相とA−相の差動演算後の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/1024μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相とB−相の差動演算後も同様な空間周波数応答となる。
【0157】
図23において、破線は、複数の受光素子17Eの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、一点鎖線は、複数の受光素子17Eの出力信号に対して受光素子アレイ上の位置応じた重みを使用して重み付けを行った場合を示している。図23において、実線は、重み付け有で光量分布を考慮した場合を示している。
【0158】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域23、25のパターン周波数に対応する空間周波数1/512[μm−1]および1/256[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。また、本実施例では実際の光量分布に合わせ重み付けが設計されているため、図23のプロット(重み付け有り、光量分布考慮)が示すように、光量分布がある状態でより空間周波数1/512[μm−1]および1/256[μm−1]付近の減衰効果が高い。
【0159】
以下に絶対位置検出を行う処理の流れについて説明する。スイッチ回路18Eへの入力がハイレベルのときのS(A)、S(B)より数式19、20に基づいてピッチP1の位相信号Φ1とピッチP2の位相信号Φ2を取得する。更に、スイッチ回路18Eへの入力がミドルレベルの時のS(A)、S(B)より次式に基づいてピッチP3の位相信号Φ3を取得する。
【0160】
【数33】
【0161】
即ち、領域23(127.20497μm周期)に対応する信号の位相がΦ1、領域25(256μm周期)に対応する信号の位相がΦ2、領域28(553.51351μm周期)に対応する信号の位相がΦ3となる。移動範囲の片方の端(X=0mm)において、Φ1=Φ2=Φ3=0となるように、スケール20上の3つの周期パターンの初期位相が設定されている。
【0162】
次に、位相信号Φa、Φbを次式の演算によって取得する。
【0163】
【数34】
【0164】
【数35】
【0165】
このとき、Φa<0のときはΦa=Φa+2π、Φa>2πのときはΦa=Φa−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。Φbについても同様である。ΦaとΦbのX方向に対する信号周期Ta、TbはそれぞれTa=20480[μm]、Tb=3413.333[μm]となる。Φaとスケール位置との関係は図24(a)のようになる。Φbとスケール位置との関係は図24(b)のようになる。
【0166】
次に、絶対位置の情報を取得するための処理について説明する。上述の信号Svに対応する信号Cは位相信号Φaとして取得し、検出可能な総ストロークはTa=20480[μm]となる。
【0167】
次に、信号処理回路30は、上位信号CとΦbとの同期をとり、上位信号CからΦbの周期の何番目にあるかを算出し、Φbをつなぎ合わせてΦbの位置精度を持つ絶対位置信号(次式の中位信号M)を取得する。
【0168】
【数36】
【0169】
ここで、ROUND[x]はxに最も近い整数に変換する関数である。
【0170】
続いて、信号処理回路30は、中位信号MとΦ3との同期をとり、中位信号MからΦ3の周期の何番目にあるかを算出し、Φ3をつなぎ合わせてΦ3の位置精度を持つ絶対位置信号(次式の下位信号F)を取得する。
【0171】
【数37】
【0172】
更に、信号処理回路30は、下位信号FとΦ1との同期をとり、下位信号FからΦ1の周期の何番目にあるかを算出し、Φ1をつなぎ合わせてΦ1の位置精度を持つ絶対位置信号ABSを取得する。
【0173】
【数38】
【0174】
上記のような合成処理を行うことで、高精度なインクリメントパターン信号の精度で、長ストロークの絶対位置を検出することができる。
【0175】
以上、本実施例によれば、実施例1に比べ、高精度に絶対位置信号を取得することができる。
【実施例5】
【0176】
実施例5は、実施例4と同様であるが、受光IC14Eの代わりに受光IC14Fを使用している点が実施例4と相違する。
【0177】
図25は、受光IC14Fの受光素子アレイ16Fの受光面の配置を示す平面図である。受光素子アレイ16Fは、クロックタイミングに同期して、各受光素子の受光量に対応した出力を順番に取りだすことができる、いわゆるリニアセンサアレイである。
【0178】
受光素子アレイ16Fは、受光素子17FがX方向に16μmピッチで128個並んでおり、Y方向の幅Y_pdは900μm、X方向の全幅X_totalは2048μmである。
【0179】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向450μm、X方向1024μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、領域23、領域25、および領域28がY方向にそれぞれ2ライン分ずつ含まれる。
【0180】
受光素子アレイ16Fの出力部19から出力されるリニアイメージ信号Vより領域23、25、28の各周期信号成分を分離する方法として実施例4と同様に各周期に対応した4相正弦波に変換してもよい。その場合は、受光素子アレイ16Fの隣接する2個の受光素子の出力を合計し、実施例4における受光素子の出力に置き換えて同様の演算処理を行うことが可能である。このときに、各受光素子の位置に応じ、適切な重みづけを信号処理回路30にて行う。このように、本実施例では信号処理回路30に重み付け手段が設けられている。
【0181】
こうして得られた領域23(127.20497μm周期)に対応する信号の位相をΦ1、領域25(256μm周期)に対応する信号の位相をΦ2、領域28(553.51351μm周期)に対応する信号の位相をΦ3とする。移動範囲の片方の端(X=0mm)において、Φ1=Φ2=Φ3=0となるように、スケール20上の3つの周期パターンの初期位相が設定されている。
【0182】
受光素子アレイ16Fによって検出されたリニアイメージ信号より領域23、25、28の各周期信号成分を分離する方法としてフーリエ変換を用いてもよい。フーリエ変換を行う場合の信号処理回路30の処理について説明する。
【0183】
まず、128個の受光素子17Fの出力の平均を直流成分として各受光素子出力から減算を行う。更に、受光素子アレイ16Fを、中央から64個(中央部)と、両端から各32個ずつの計64個(周辺部)の2つの領域に分ける。中央部と周辺部の出力にはそれぞれ異なる係数を掛け、重みづけを行った後に128個のデータをフーリエ変換する。フーリエ変換によって得られた位相と対応する空間周波数からΦ1、Φ2、Φ3を算出する。
【0184】
ここで、フーリエ変換の周波数分解能は受光面上の空間周波数としてΔf=1/1024(μm−1)となるため、完全には領域23、28のパターン反射像と一致しない。Φ1はΔf・8=1/256(μm−1)の成分の位相、Φ2はΔf・4=1/512(μm−1)の成分の位相、Φ3はΔf・2=1/1024(μm−1)の成分の位相として以降の演算に用いる。
【0185】
ここでは信号処理回路30での演算処理によって領域ごとの重み付けを行っているが、各受光素子出力が領域によって異なる電気的ゲインを持つようにしてもよい。
【0186】
重み付けの比率は、例えば、中央部と周辺部の比率を理論値の3:1に固定する他、光量分布を考慮して周辺部の比率を増やしてもよい。また、特定領域のスキャンを行い、Φ1、Φ2に対する領域28(553.51351μm周期)からの信号漏れ込が最小になるように比率を決定してもよい。以上のようにして得られたΦ1、Φ2、Φ3から絶対位置検出を行うまでの演算方法は実施例3と同様なので省略する。
【0187】
以上のように、本実施例ではリニアセンサアレイを使って各検出素子の出力を取り出せるようにしたので後段で行う重みづけ処理の設計自由度が高い。また、信号取り出しが一度で済むので、各信号位相間での時間的な同期性が向上する。
【0188】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0189】
エンコーダは位置(変位)を検出する用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0190】
16A〜16F…受光素子アレイ(検出素子アレイ)、20…スケール、23…第1の領域、25…第2の領域、30…信号処理回路(信号処理手段)、32…第1の位相取得手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アブソリュートエンコーダの検出精度をインクリメンタルエンコーダのように上げるため、スケールの各トラックにインクリメンタルパターンを、そのパターンの形状又はピッチが測長方向に変調周期で周期的に変化するように形成している。これにより、インクリメンタルパターンは相対位置の情報のみではなく変調周期の繰り返しによる絶対位置の変調情報を持つことになる。この結果、高精度な相対位置の情報と精度がそれほど高くない絶対位置情報を利用してスケールの絶対位置を高精度に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−198318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、異なる周期の信号を各トラックに設けられたインクリメンタルパターンから得ているので光源と受光素子の実装高さずれや、スケールと受光素子の傾きによる像倍率の誤差により、インクリメント信号の位相取得精度が低下するおそれがある。この結果、高精度なスケールの位置検出ができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、高精度なスケールの位置検出が可能なエンコーダを提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンコーダは、エネルギー分布を空間変調する複数のパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、を有する。前記パターン列は、前記移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有する。前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段を有し、前記エンコーダは、前記第1の変調周期を検出する複数の検出素子の出力信号に対して前記検出素子アレイの位置に応じた重みを使用して重み付けをする重み付け手段を更に有する。前記重みは、前記第1の位相取得手段の空間周波数応答の前記第2の変調周期に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、前記重み付け手段が重み付けを行った場合の値が、重み付けが無い場合の値以下となるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高精度なスケールの位置検出が可能なエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エンコーダのブロック図である。(実施例1)
【図2】トラックの部分拡大平面図である。(実施例1、2、3)
【図3】図2の部分拡大平面図である。(実施例1、2、3)
【図4】図2の部分拡大平面図である。(実施例1、2、3)
【図5】図1に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例1)
【図6】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図5(a)に示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例1)
【図7】図6の効果の理由を説明するための受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例1)
【図8】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例1)
【図9】エンコーダのブロック図である。(実施例2、3)
【図10】図9に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2)
【図11】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図10に示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例2)
【図12】図11の効果の理由を説明するための受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2)
【図13】図9に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2、3)
【図14】2トラック構成の検出素子の読み取り領域とパターン領域の位置関係を示す図である。(実施例2)
【図15】図9に示す受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例3)
【図16】図15の効果の理由を説明するための受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例3)
【図17】トラックの部分拡大平面図である。(実施例4)
【図18】図17の部分拡大平面図である。(実施例4)
【図19A】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例4)
【図19B】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例4)
【図19C】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例4)
【図20】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Aに示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例4)
【図21】光源の配光特性に起因する光量分布を示すグラフである(実施例4)
【図22】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Bに示す重み付けを行った場合のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例4)
【図23】重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Cに示す重み付けを行った場合のA+相とA−相の差動演算後の空間周波数応答を比較したグラフである。(実施例4)
【図24】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例4)
【図25】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1の光学式エンコーダのブロック図である。エンコーダは、固定部に取り付けられるセンサユニット10A、不図示の可動部に取り付けられるスケール20、信号処理回路(信号処理手段)30、記憶装置40を有する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10Aとスケール20が相対的に移動可能な構成であれば足りる。
【0011】
センサユニット10Aは、LEDからなる光源12Aと受光素子アレイ16Aを有する受光IC14Aが同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。受光素子アレイ16Aは、スケール20のパターンからのエネルギー分布を検出する複数の検出素子が、スケール20(または可動部の)移動方向(測長方向)であるX方向に並べられた検出素子アレイとして機能する。本実施形態ではエネルギーは光であるが、後述するように、磁気、電気などその種類は光に限定されない。センサユニット10Aには後述する重み付け手段が設けられている。なお、重み付け手段は信号処理回路30に設けられていてもよい。
【0012】
スケール20は、ガラス基板上にクロム反射膜のパターンを複数有するパターン列がトラック21にパターニングされている。パターンはエネルギー分布を空間変調するためのパターンである。
【0013】
各トラック21は、X方向に垂直なY方向に周期的に配列され、X方向にそれぞれ異なるピッチ(変調周期)を有する複数の領域を有する。例えば、2種類の領域が設けられている場合には、X方向に第1のピッチ(第1の変調周期)を有する第1の領域とX方向に第2のピッチ(第2の変調周期)を有する第2の領域が設けられる。
【0014】
なお、本実施形態では、受光素子アレイ16Aはスケール20のパターンの反射光を受光しているが、スケール20のパターンの透過光を受光する場合にも本実施形態は適用可能である。即ち、受光素子アレイ16Aは、スケール20のパターンからの光を受光できれば足りる。
【0015】
信号処理回路30は、センサユニット10の受光素子アレイ16の出力信号を処理して位置情報に変換する。信号処理回路30は、センサユニット10で得られたエンコーダ信号の内挿処理や、記憶装置40への信号の書き込み、および、読み出しも行う。
【0016】
信号処理回路30は、不図示のノイズフィルタ、増幅回路、A/D変換回路の他に、信号分離手段31、第1の位相取得手段32、第2の位相取得手段33、位置情報取得手段34を有する。
【0017】
信号分離手段31は、受光素子アレイ16Aの出力をトラック21Aの各領域に対応する信号に分離する機能を有する。信号分離手段31は、受光IC14Aにスイッチ回路が設けられる場合にはスイッチ回路による接続を切り替える信号を送信し、受光IC14Aにスイッチ回路が設けられない場合には高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって信号を分離することができる。あるいは、信号分離手段31は、受光素子アレイ16Aにパターンピッチごとに別々の受光面を有する受光素子を設けることによって実現してもよい。
【0018】
第1の位相取得手段32は、(第1の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第1の領域のエネルギー分布の位相(第1の位相)を取得する。第1の位相取得手段32は後述する相対位置信号取得手段として機能してもよい。
【0019】
第2の位相取得手段33は、(第2の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第2の領域のエネルギー分布の位相(第2の位相)を取得する。
【0020】
なお、トラック21に第3のピッチを有する領域などが設けられている場合にはそれに合わせて第3の位相取得手段等が設けられてもよいことは言うまでもない。
【0021】
位置情報取得手段34は、スケール20の位置の情報を取得する。位置情報取得手段34は、スケール20の相対位置を表す相対位置信号を取得する相対位置信号取得手段とスケール20の絶対位置を表す絶対位置信号を取得する絶対位置信号取得手段を有してもよい。
【0022】
動作において、センサユニット10A内の光源12Aから出射した発散光束はスケール20のトラック21Aに照射され、トラック21Aで反射した光束はセンサユニット10Aの受光素子アレイ16Aに受光される。受光素子アレイ16Aは、トラック21Aの反射率分布が2倍拡大された像として受光する。受光素子アレイ16Aによって受光された光束は電気信号に変換され、エンコーダ信号として信号処理回路30に送られる。信号処理回路30は、受光素子アレイ16Aからの出力を位置情報に変換し、スケール20の位置の情報を高精度に取得および出力する。
【0023】
図2は、トラック21Aの部分拡大平面図である。トラック21Aは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、2種類の領域(領域23、領域25)が交互に並べられており、図2の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Aの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。領域23は上述した第1の領域に相当し、領域25は上述した第2の領域に相当する。図2において、白色部は光を透過または吸収する非反射部22である。
【0024】
図3は、領域23のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域23は、X方向のピッチP1(第1のピッチ)(=150μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部24と非反射部22から構成されている。ピッチP1は上述した第1の変調周期として機能する。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。
【0025】
領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW1/8以下の領域においては、反射部24のX方向の幅はP1・23/30である。Y方向の中心からの距離がW1/8からW1/4までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・17/30である。Y方向の中心からの距離がW1/4からWa・3/8までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・13/30である。Y方向の中心からの距離がW1・3/8からW1/2までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・7/30である。
【0026】
図4は、領域25のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域25は、X方向のピッチP2(第2のピッチ)(=303μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部26、27と非反射部22から構成されている。ピッチP2は上述した第2の変調周期として機能する。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。
【0027】
領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW2/6以下の領域においては、反射部26のX方向の幅はP2・70/96である。この領域は、周期両端からそれぞれP2・3/96の幅で反射部27が形成される。Y方向中心からの距離がW2/6からW2・1/3までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・54/96である。Y方向の中心からの距離がW2・1/3からW2・1/2までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・22/96である。
【0028】
図5は、受光素子アレイ16Aの受光面の平面図である。受光素子アレイ16Aにおいては、受光素子17AがX方向に25μmピッチで48個並んでおり、一つの受光素子17AはX方向の幅X_pdが25μmであり、Y方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ16Aの全幅X_totalは1200μmである。
【0029】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に150μmのピッチを有する領域23と303μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0030】
各受光素子17Aからの出力は、スイッチ回路18を介して切り替えられ、選択的に後段の4つの不図示の初段増幅器に接続されている。4つの初段増幅器は、出力端子A+、B+、A−、B−(それぞれA+相、B+相、A−相、B−相を表す)に対応する受光素子17Aがそれぞれ接続され、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)を出力する。
【0031】
スイッチ回路18は信号処理回路30の信号分離手段31からの入力によって受光素子17Aと出力端子との接続を切り替えることができる。この結果、複数の受光素子17Aにおいて電気的に加算される間隔が切り替わる。
【0032】
信号処理回路30からの入力がハイレベルの場合は、図5(a)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aはピッチ150μmのパターン(反射像周期300μm)を検出可能となる。この結果、領域23からの周期信号を分離することができる。
【0033】
信号処理回路30からの入力がローレベルの場合は、図5(b)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aはピッチ300μmのパターン(反射像周期600μm)を検出可能となる。この結果、領域25からの周期信号を分離することができる。
【0034】
4相正弦波状信号の相対位相はそれぞれの検出ピッチに対し、S(A+)を基準とすると、S(B+)は約+90度S(A−)は約+180度S(B−)は約+270度の関係にある。
【0035】
信号処理回路30は、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A)、S(B)を生成する。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
この時、入力がローレベルの場合のS(A)はスケールピッチ150μmの像に対してS(A+)とS(A−)が同位相成分となるので数式1の差動演算の結果相殺される。S(B)についても同様である。
【0039】
入力がハイレベルの場合、図5(a)に示すように、48個の受光素子17Aのうち左右にそれぞれ12個ずつある受光素子17Aは、信号を取り出す受光素子17Aが連続する3個のうちの1個となっている。このため、中央の24個の受光素子17Aの出力信号に対して両側のそれぞれの12個の受光素子17Aの出力信号の重み付けは1/3になる。
【0040】
このように、本実施例ではセンサユニット10Aに重み付け手段が設けられている。重み付け手段は、第1の領域である領域23を検出する複数の受光素子17Aの出力信号に対して、P2(第2の変調周期)の位相または受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けする手段である。
【0041】
重みは、後述するように、空間周波数応答のP2に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、重み付け有の値が重み付け無の値以下となるように設定されている。
【0042】
図6は、重み付けが無い(重み付け無)と、図5(a)の重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/300μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相も同様な空間周波数応答となる。
【0043】
図6において、破線は、複数の受光素子17Aの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、実線は、複数の受光素子17Aの出力信号に対してP2の位相に応じた重みを使用して(一様ではない重みを使用して)重み付けを行った場合を示している。
【0044】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域25のパターン周波数に対応する空間周波数1/600[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲が低減されていることが分かる。これにより、領域23のパターンから信号を読み出す場合の4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)が領域25のパターンの影響を受けにくくなり、領域23のパターンに対応する信号のみを高精度に検出することが可能となる。
【0045】
このように、本実施例によれば、受光素子上の像の空間周波数に変動があった場合でも、第2のピッチP2の空間周波数成分が、第1のピッチP1の空間周波数成分の位相取得において誤差となり得る影響を低減することができる。
【0046】
受光素子上の像の空間周波数の変動要因としては、例えば、光源12Aと受光IC14Aの実装高さずれや、スケール20と受光素子17Aの相対傾きによる像倍率の誤差がある。また、本実施例のようにスケール上の2つの周期成分の空間周波数を整数倍からわずかに異ならせる場合でも、P2の空間周波数成分が、P1の空間周波数成分の位相取得において誤差となり得る影響を低減することができる。これにより、P1の空間周波数成分の位相から得られる相対位置信号の検出精度が高まり、スケール20の絶対位置の検出精度が高まる。また、スケール上に複数の周期情報を形成する場合の設計自由度が向上する。
【0047】
図7は、受光素子アレイ16Aの受光面の平面図である。以下、図7を参照して、受光領域内で不均一な重み付けを行うことによって、P2の周波数応答を広い範囲で低減することができる理由について説明する。
【0048】
まず、A+相に対応する受光素子17Aに着目し、600μm周期の像が受光素子アレイ16Aに入射した場合を想定する。A+相に対応する受光素子アレイ16Aの中心を基準線(位相0度)とし、4つの離散する受光素子ブロックA1〜A4について600μm周期成分の相対位相θ1〜θ4を考える。すると、θ1=−270度、θ2=−90度、θ3=+90度、θ4=+270度となる。ここで、検出像に600μm周期からの倍率誤差Δ(%)である場合、各位相は次式で与えられる。
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
【数5】
【0052】
【数6】
【0053】
式の簡略化のため、次式のようにおくと、
【0054】
【数7】
【0055】
A1〜4の出力S1〜4は、検出効率の比率をそれぞれa1〜4として次式のように表わすことができる。
【0056】
【数8】
【0057】
【数9】
【0058】
【数10】
【0059】
【数11】
【0060】
ここで、Δ´<<360として、SINΔ´≒Δ´、SIN(3Δ´)≒3Δ´、COS(3Δ´)≒COSΔ´≒1なる近似を用いると、合計出力は次式のようになる。
【0061】
【数12】
【0062】
よって、倍率誤差Δが変動しても常にS1+S2+S3+S4≒0となる条件は、a1+a3=a2+a4かつ3・(a1+a4)=a2+a3となる。これを満たす解には、例えば、a1:a2:a3:a4=1:4:5:2、等が考えられる。但し、a1:a2:a3:a4=1:3:3:1のように、X方向に対称の重みにした方がよりシンプルで設計が容易である上、光量分布の非対称性等の影響を低減することができる。
【0063】
なお、実際の設計でこの比率の通りに重み付けする必要はなく受光素子に入射する光量分布や必要十分な精度を考慮し、適切な重み付けを設定してやればよい。以上はB+相、A−相、B−相についても同様である。
【0064】
図5に戻って、スイッチ回路18への入力がローレベルである場合において、領域25から得られる信号の補正について説明する。受光素子17Aの検出ピッチ(300μm)と、スケール状のパターン周期(303μm)がわずかにずれているため、2相正弦波状信号S(A)、S(B)間の相対位相差補正処理を行うことが望ましい。以下に、位相差補正の方法について説明する。
【0065】
まず、相対位相差誤差eを含む2相正弦波信号S(A)、S(B)は、位相をθとして、次式のように表すことができる。
【0066】
【数13】
【0067】
【数14】
【0068】
数式13、14より、2相正弦波信号S(A)、S(B)の和と差を取ると次に示すように誤差成分eを分離することができる。
【0069】
【数15】
【0070】
【数16】
【0071】
相対位相差誤差eは設計値よりe=(1−300/303)・πと表すことができる。数式15、16の振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)、2・cos(e(x)/2−π/4)について、それぞれ逆数を乗じることにより、以下のように位相差誤差を補正した2相正弦波信号S(A)’、S(B)’を算出する。但し、φ=θ−π/4である。
【0072】
【数17】
【0073】
【数18】
【0074】
相対位相差誤差eを初期化動作によって記憶してもよい。例えば、所定のX方向範囲のS(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)を取得し、−S(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・cos(e(x)/2−π/4)を取得する。そして、それぞれの値を記憶装置40に記憶してもよい。この場合、光源12Aと受光素子アレイ16Aの実装高さずれや、スケール20とセンサの相対傾きによる像倍率の誤差の影響を含めて補正することが可能である。
【0075】
以上のようにして得られたS(A)´をS(A)、S(B)´をS(B)とおく。
【0076】
スイッチ回路18への入力がハイレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第1の位相取得手段32は領域23のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ1を次式の演算によって取得する。ATAN2[Y,X]は、象限を判別して0〜2π位相に変換する逆正接演算関数である。
【0077】
【数19】
【0078】
同様に、スイッチ回路18への入力がローレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第1の位相取得手段33は領域25のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ2を次式の演算によって取得する。
【0079】
【数20】
【0080】
本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32の出力を相対位置信号として取得する。相対位置信号の変化を計数することによってスケール20が測定開始位置から所定周期として何周期目に位置するかの情報を取得することができる。
【0081】
また、本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32と第2の位相取得手段33の出力に基づいて後述するバーニア信号を生成することによってスケール20の絶対位置の情報を出力する。
【0082】
スイッチ回路18への入力の切り替え前後で、時間差をおかずに信号を取得することにより、ほぼ同一位置でのΦ1、Φ2を得ることができる。
【0083】
本実施例では、図5に示すように、受光素子アレイ16Aの複数の受光素子17Aの少なくとも一部は、位相信号Φ1を取得する受光素子17Aと位相信号Φ2を取得する受光素子17Aに共通に使用されている。このため、従来のように両者を別々に設けるよりも受光素子アレイが小型になる。
【0084】
スケール20が高速移動中は同期性が低下するが、その場合は複数回の取り込みを行って位相の平均を取るようにして同期性を確保すればよい。まず、検出ピッチ150μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をハイからローへ切り替える。続いて、検出ピッチ300μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をローからハイへ切り替え、再度検出ピッチ150μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得する。それぞれの取得タイミングのインターバルはほぼ一定とする。これらから演算した1回目のΦ1と2回目Φ1の平均を取ることによって、Φ1とΦ2の同期性を向上させることができる。
【0085】
次に、信号処理回路30の位置情報取得手段34は、絶対位置信号として機能するバーニア信号Svを下記の演算によって取得する。
【0086】
【数21】
【0087】
このとき、信号処理回路30は、Sv<0のときはSv=Sv+2π、Sv>2πのときはSv=Sv−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。P1、P2の位相信号Φ1、Φ2とX方向の位置xとの関係は以下のように表すことができる。
【0088】
【数22】
【0089】
【数23】
【0090】
なお、バーニア信号Svは数式21に示す係数に限定されない。即ち、第1の変調周期P1と第2の変調周期P2について|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|の条件を満たす整数m、nに対し、A/B=n/mの関係を満たす2つの係数A、Bを用いて、Sv=A・Φ1−B・Φ2のように表すことができる。
【0091】
バーニア信号Svの周期Tvは、Φ1−2・Φ2が0から±2πに変化するX方向の位置変化量であるので次式のように表すことができる。
【0092】
【数24】
【0093】
【数25】
【0094】
このようにして得られたバーニア信号Svとスケール位置との関係は図8(a)のようになる。本実施例では数式25よりバーニア信号Svの周期Tv=15.15mmとなり、これが検出可能範囲となる。受光素子アレイ長におけるスケール上の検出範囲はX方向に600μmの範囲なので検出可能範囲は受光素子アレイ長の検出範囲よりもはるかに長くなる。従って、バーニア信号Svを絶対位置信号として使用することによって広い範囲でスケールの移動方向の絶対位置を検出することができる。
【0095】
また、位相出力Φ1とスケール位置との関係は図8(b)のようになる。位相Φ1をスケール20の相対位置を表す相対位置信号(インクリメンタル信号)として用い、また、スケール20の絶対位置を表す絶対位置信号としてバーニア信号Svを使用する。
【0096】
また、本実施例では、光学式エンコーダの例となっているが、磁気式エンコーダ、静電容量式エンコーダ等でも同様な効果が得られる。磁気式エンコーダの場合、スケール20に磁性体を用い、磁性の極性分布を本実施例のスケール20の反射膜と同様の形状で形成する。このスケールに近接してアレイ状に並べた磁界検出素子を配して検出する。静電容量式の場合は、本実施例のスケール反射膜と同様の形状に導電性の電極パターンを形成し、別のアレイ状の電極パターンを近接対向させて検出するようにすればよい。
【0097】
以上のようにして、センサを大型化せず、広い範囲の絶対位置信号を高精度に取得することが可能である。
【実施例2】
【0098】
図9は、実施例2の光学式エンコーダのブロック図である。エンコーダは、固定部に取り付けられるセンサユニット10B、不図示の可動部に取り付けられるスケール20、信号処理回路(信号処理手段)30、記憶装置40を有する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10Bとスケール20が相対的に移動可能な構成であれば足りる。
【0099】
センサユニット10Bは、一つのLEDからなる光源12Bと受光素子アレイ16Bを有する受光IC14Bと受光素子アレイ16Cを有する受光IC14Cが同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。受光素子アレイ16B、Cは、スケール20のパターンからのエネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向(測長方向)であるX方向に並べられた検出素子アレイとして機能する。
【0100】
信号処理回路30は、センサユニット10Bの受光素子アレイ16B、Cからの出力を位置情報に変換する以外は実施例1と同様である。
【0101】
図10は、受光素子アレイ14Bの受光面の平面図である。受光素子アレイ14Bにおいては、受光素子17BがX方向に75μmの中心ピッチで24個並んでおり、一つの受光素子17BのY方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ14Bの全幅X_totalは1800μmである。
【0102】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向900μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に150μmのピッチを有する領域23と303μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0103】
受光素子17BのX方向の幅は領域によって異なる。図10の左端の1番目から4番目の受光素子17BのX方向の幅X_pd1は30μm、5番目から20番目の受光素子17BのX方向の幅X_pd2は75μm、21番目から24番目の受光素子17BのX方向の幅X_pd1は30μmである。
【0104】
このように、本実施例ではセンサユニット10Bに重み付け手段が設けられている。重み付け手段は、領域23を検出する複数の受光素子17Aの出力信号に対して、P2(第2の変調周期)の位相または受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けする手段である。
【0105】
図11は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図10の重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/300μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相についても同様な空間周波数応答となる。
【0106】
図11において、破線は、複数の受光素子17Bの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、実線は、複数の受光素子17Bの出力信号に対してP2の位相に応じた重みを使用して重み付けを行った重み付け有の場合を示している。
【0107】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域25のパターン周波数に対応する空間周波数1/600[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。即ち、受光領域内で不均一な重み付けを行うことによって倍率誤差に対する不要成分(ここでは303μmパターンの2倍拡大像成分)の漏れ込を広い周波数範囲で低減することができている。これにより、領域23のパターンから信号を読み出す場合の4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)が領域25のパターンの影響を受けにくくなり、領域23のパターンに対応する信号のみを高精度に検出することが可能となる。
【0108】
このように、本実施例においても、受光素子上の像の空間周波数に変動があった場合でも、P2の空間周波数成分が、P1の空間周波数成分の位相取得において誤差となり得る影響を低減することができる。
【0109】
図12は、受光素子アレイ16Bの受光面の平面図である。以下、図12を参照して、受光領域内で不均一な重み付けを行うことによって、P2の周波数応答を広い範囲で低減することができる理由について説明する。
【0110】
まず、A+相に対応する受光素子17Bに着目し、6つの離散する受光素子ブロックA1〜a6について、600μm周期成分の相対位相θ1〜θ6を考える。検出像に600μm周期からの倍率誤差Δ(%)があった場合、各位相は次式で与えられる。
【0111】
【数26】
【0112】
【数27】
【0113】
【数28】
【0114】
【数29】
【0115】
【数30】
【0116】
【数31】
【0117】
実施例1と同様に、Δ´=90・Δ÷100、および、SINΔ´≒Δ´、SIN(3Δ´)≒3Δ´、COS(3Δ´)≒COSΔ´≒1なる近似から置き換えを行うと、合計出力は次式のようになる。
【0118】
【数32】
【0119】
よって、倍率誤差Δが変動しても常にS1+S2+S3+S4+S5+S6≒0となる条件は、a1+a3+a5=a2+a4+a6かつ、3・(a2+a5)=(a3+a4)+5・(a1+a6)となる。本実施例では、a1:a2:a3:a4:a5:a6=0.4:1:1:1:1:0.4としている。
【0120】
図13は、受光素子アレイ16Cの受光面の平面図である。受光素子アレイ14Cにおいては、受光素子17CがX方向に150μmの中心ピッチで12個並んでいる。一つの受光素子17CのX方向の幅X_pdは150μmであり、Y方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ16Cの全幅X_totalは1800μmである。
【0121】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向900μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に150μmのピッチを有する領域23と303μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0122】
受光素子アレイ17Cの受光面の配置は、スケールパターン300μm周期(反射像周期600μm)の検出ピッチに対応する。このとき、領域23の像(反射像周期300μm)に対してはS(A+)とS(A−)が同位相成分となるので、上述した差動演算の結果キャンセルされる。S(B)についても同様である。
【0123】
ここで、それぞれの受光素子アレイに対し、異なる周期パターンからの像を同時に受光することの利点について説明する。受光素子A(第1の検出素子)と受光素子(第2の検出素子)Bで別々の周期パターンを走査させる場合の各センサの読み取り領域と位置ずれ可能なY方向範囲を図14に示す。
【0124】
センサ読み取り領域が対応するパターンからはみ出ないようにするためには、読み取り領域の間隔Dによって、可能な位置ずれ量が±D/2に制限されるため、Y方向の相対位置を精密に位置決めする必要がある。
【0125】
一方、本発明のように、異なる周期パターンからの像をまとめて受光し、必要な信号のみを分離して検出するようにした場合は、上記制限を受けず、Y方向の位置によらず安定的に高精度な信号を取得することが可能である。
【0126】
以上のように、本実施例は、別々の受光素子で異なる周期を検出するようにしたので、切り替え処理が不要となる。よって、実施例1に対し周期信号間の時間的同期性を重視するシステムの場合には有効である。
【実施例3】
【0127】
本実施例は、実施例2に対して受光素子アレイ14Bの受光面の配置を異ならせ受光素子アレイ14Dを使用している点で実施例2と相違し、その他の点では実施例2と同様である。倍率誤差Δが変動しても常にS1+S2+S3+S4+S5+S6≒0となる条件、a1+a3+a5=a2+a4+a6かつ、3・(a2+a5)=(a3+a4)+5・(a1+a6)を満たす別の例である。本実施例では、a1:a2:a3:a4:a5:a6=1:2:1:1:2:1としている。このように、本実施例では実施例2と同様に、センサユニット10Bに重み付け手段が設けられている。
【0128】
図15は、受光素子アレイ14Dの受光面の配置を示す平面図である。各受光素子のX方向の幅は領域によって異なる。図15の左端から1番目から4番目、9番目から16番目、21番目から24番目の受光素子17DのX方向の幅X_pd1は32.5μm、5番目から8番目および17番目から20番目の受光素子17DのX方向幅X_pd2は75μmである。
【0129】
図16は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図15の重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/300μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相についても同様な空間周波数応答となる。
【0130】
図16において、破線は、複数の受光素子17Dの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、実線は、複数の受光素子17Dの出力信号に対してP2の位相に応じた重みを使用して重み付けを行った重み付け有の場合を示している。
【0131】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域25のパターン周波数に対応する空間周波数1/600[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。
【実施例4】
【0132】
実施例4は、図1に示すエンコーダの構成において、トラック21Aの代わりにトラック21Bを使用し、受光IC14Aの代わりに受光IC14Eを使用している点が実施例1と相違する。図17は、トラック21Bの部分拡大平面図である。
【0133】
トラック21Bは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、3種類の領域(領域23、領域25、領域28)が順番に周期的に配列されている。図17の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Eの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。
【0134】
領域23は図3に示すもので、X方向のピッチP1(=127.204969μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなる。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0135】
領域25は図4に示すもので、X方向のピッチP2(=256μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなる。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0136】
図18は、領域28のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域28は、X方向のピッチP3(=553.513514μm)ごとに図18のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部29と非反射部22から構成されている。領域28のY方向の幅はW3=50μmである。
【0137】
領域28のY方向の位置によって反射部29のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW3/8以下の領域においては、反射部29のX方向の幅はP3・185/240である。Y方向の中心からの距離がW3/8からW3/4までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・141/240である。Y方向の中心からの距離がW3/4からWa・3/8までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・105/240である。Y方向の中心からの距離がW3・3/8からW3/2までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・61/240である。
【0138】
図19A〜19Cは、受光IC14Eの受光素子アレイ16Eの受光面の配置を示す平面図である。受光素子アレイ16Eは、受光素子17EがX方向に32μmピッチで64個並んでおり、一つの受光素子17EのX方向の幅X_pdは32μmであり、Y方向の幅Y_pdは900μmである。受光素子アレイ16Eの全幅X_totalは2048μmである。
【0139】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向450μm、X方向1024μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に127.204969μmのピッチを有する領域23と、256μmのピッチを有する領域25と553.513514μmのピッチを有する領域28がY方向にそれぞれ3ライン分ずつ含まれる。
【0140】
各受光素子17Eからの出力は、スイッチ回路18を介して切り替えられ、選択的に後段の4つの不図示の初段増幅器に接続されている。4つの初段増幅器は、出力端子A+、B+、A−、B−(それぞれA+相、B+相、A−相、B−相を表す)に対応する受光素子17Eがそれぞれ接続され、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)を出力する。
【0141】
スイッチ回路18Eは信号処理回路30の信号分離手段31からの入力によって受光素子17Eと出力端子との接続を切り替えることができる。この結果、複数の受光素子17Eにおいて電気的に加算される間隔が切り替わる。
【0142】
信号処理回路30からの入力がハイレベルの場合は、図19Aに示すように、スケールパターン128μm(反射像周期256μm)の検出ピッチとなり、領域23からの周期信号のみが分離できる。
【0143】
信号処理回路30からの入力がローレベルの場合は、図19Bに示すように、スケールパターン256μm(反射像周期512μm)の検出ピッチとなり、領域25からの周期信号のみが分離できる。
【0144】
信号処理回路30からの入力がミドルレベルの場合は、図19Cに示すように、スケールパターン512μm(反射像周期1024μm)の検出ピッチとなり、領域28からの周期信号のみが分離できる。
【0145】
4相正弦波状信号の相対位相はそれぞれの検出ピッチに対し、S(A+)を基準とすると、S(B+)は約+90度S(A−)は約+180度S(B−)は約+270度の関係にある。
【0146】
信号処理回路30は、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)について数式1、2の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A)、S(B)を生成する。
【0147】
入力がハイレベルの場合、図19Aに示すように、個々の周期に対応する各相の受光素子アレイ面積は、受光面の中央部が2個ずつになっているのに対し、周辺部は1個ずつとなっている。このように、本実施例では、実施例1と同様に、センサユニット10Aに重み付け手段が設けられている。
【0148】
図20は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Aの重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/256μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相も同様な空間周波数応答となる。
【0149】
図20において、破線は、複数の受光素子17Eの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、一点鎖線は、複数の受光素子17Eの出力信号に対してP3の位相または受光素子アレイ上の位置に応じた重みを使用して重み付けを行った場合を示している。図20において、実線は、重み付け有で光量分布を考慮した場合を示している。
【0150】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域28のパターン周波数に対応する空間周波数1/1024[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。更に、受光素子アレイ16Eに入射する光量が一様でなく、図21に示す光源12の配光特性に起因する光量分布を持つ場合を想定する。本実施例では実際の光量分布に合わせ重み付けが設計されているため、図20の実線(重み付け有り、光量分布考慮)が示すように、光量分布がある状態でより空間周波数1/1024[μm−1]付近の減衰効果が高い。
【0151】
入力がローレベルの場合、図19Bに示すように、個々の周期に対応する各相の受光素子アレイ面積は、受光面の中央部が4個ずつになっているのに対し、周辺部は2個ずつとなっている。また、中央部の4個は連続する受光素子ではなく、両端の2個を隣の検出相と入れ替えている。これにより、連続する4個を積算する場合に比べ実効的な積算幅が増加し、領域23からの周期成分の影響を低減させることができる。
【0152】
図22は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Bの重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/512μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相、A−相、B−相も同様な空間周波数応答となる。
【0153】
図22において、破線は、複数の受光素子17Eの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、一点鎖線は、複数の受光素子17Eの出力信号に対してP3の位相または受光素子アレイ上の位置応じた重みを使用して重み付けを行った場合を示している。図22において、実線は、重み付け有で光量分布を考慮した場合を示している。
【0154】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域28のパターン周波数に対応する空間周波数1/1024[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。また、本実施例では実際の光量分布に合わせ重み付けが設計されているため、図22のプロット(重み付け有り、光量分布考慮)が示すように、光量分布がある状態でより空間周波数1/1024[μm−1]付近の減衰効果が高い。
【0155】
入力がミドルレベルの場合、図19Cに示すように、個々の周期に対応する各相の受光素子アレイ面積は、受光面の中央部が8個ずつになっているのに対し、周辺部は4個ずつとなっている。P1=127.204969μmおよびP1=256μmの像に対してS(A+)とS(A−)がほぼ同位相成分となるので、上記差動演算の結果、領域23および領域25の周期成分がキャンセルされ減衰される。S(B)についても同様である。
【0156】
図23は、重み付けが無い場合(重み付け無)と、図19Cの重み付けを行った場合(重み付け有)のA+相とA−相の差動演算後の空間周波数応答を比較したグラフである。横軸は空間周波数[μm−1]を表し、縦軸は(1/1024μm−1を1とした)正規化周波数応答を表している。B+相とB−相の差動演算後も同様な空間周波数応答となる。
【0157】
図23において、破線は、複数の受光素子17Eの出力信号に重み付けを行わなかった場合を示し、一点鎖線は、複数の受光素子17Eの出力信号に対して受光素子アレイ上の位置応じた重みを使用して重み付けを行った場合を示している。図23において、実線は、重み付け有で光量分布を考慮した場合を示している。
【0158】
本実施例のような重み付けを行った場合は、領域23、25のパターン周波数に対応する空間周波数1/512[μm−1]および1/256[μm−1]付近の周波数応答が広い範囲で低減されていることが分かる。また、本実施例では実際の光量分布に合わせ重み付けが設計されているため、図23のプロット(重み付け有り、光量分布考慮)が示すように、光量分布がある状態でより空間周波数1/512[μm−1]および1/256[μm−1]付近の減衰効果が高い。
【0159】
以下に絶対位置検出を行う処理の流れについて説明する。スイッチ回路18Eへの入力がハイレベルのときのS(A)、S(B)より数式19、20に基づいてピッチP1の位相信号Φ1とピッチP2の位相信号Φ2を取得する。更に、スイッチ回路18Eへの入力がミドルレベルの時のS(A)、S(B)より次式に基づいてピッチP3の位相信号Φ3を取得する。
【0160】
【数33】
【0161】
即ち、領域23(127.20497μm周期)に対応する信号の位相がΦ1、領域25(256μm周期)に対応する信号の位相がΦ2、領域28(553.51351μm周期)に対応する信号の位相がΦ3となる。移動範囲の片方の端(X=0mm)において、Φ1=Φ2=Φ3=0となるように、スケール20上の3つの周期パターンの初期位相が設定されている。
【0162】
次に、位相信号Φa、Φbを次式の演算によって取得する。
【0163】
【数34】
【0164】
【数35】
【0165】
このとき、Φa<0のときはΦa=Φa+2π、Φa>2πのときはΦa=Φa−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。Φbについても同様である。ΦaとΦbのX方向に対する信号周期Ta、TbはそれぞれTa=20480[μm]、Tb=3413.333[μm]となる。Φaとスケール位置との関係は図24(a)のようになる。Φbとスケール位置との関係は図24(b)のようになる。
【0166】
次に、絶対位置の情報を取得するための処理について説明する。上述の信号Svに対応する信号Cは位相信号Φaとして取得し、検出可能な総ストロークはTa=20480[μm]となる。
【0167】
次に、信号処理回路30は、上位信号CとΦbとの同期をとり、上位信号CからΦbの周期の何番目にあるかを算出し、Φbをつなぎ合わせてΦbの位置精度を持つ絶対位置信号(次式の中位信号M)を取得する。
【0168】
【数36】
【0169】
ここで、ROUND[x]はxに最も近い整数に変換する関数である。
【0170】
続いて、信号処理回路30は、中位信号MとΦ3との同期をとり、中位信号MからΦ3の周期の何番目にあるかを算出し、Φ3をつなぎ合わせてΦ3の位置精度を持つ絶対位置信号(次式の下位信号F)を取得する。
【0171】
【数37】
【0172】
更に、信号処理回路30は、下位信号FとΦ1との同期をとり、下位信号FからΦ1の周期の何番目にあるかを算出し、Φ1をつなぎ合わせてΦ1の位置精度を持つ絶対位置信号ABSを取得する。
【0173】
【数38】
【0174】
上記のような合成処理を行うことで、高精度なインクリメントパターン信号の精度で、長ストロークの絶対位置を検出することができる。
【0175】
以上、本実施例によれば、実施例1に比べ、高精度に絶対位置信号を取得することができる。
【実施例5】
【0176】
実施例5は、実施例4と同様であるが、受光IC14Eの代わりに受光IC14Fを使用している点が実施例4と相違する。
【0177】
図25は、受光IC14Fの受光素子アレイ16Fの受光面の配置を示す平面図である。受光素子アレイ16Fは、クロックタイミングに同期して、各受光素子の受光量に対応した出力を順番に取りだすことができる、いわゆるリニアセンサアレイである。
【0178】
受光素子アレイ16Fは、受光素子17FがX方向に16μmピッチで128個並んでおり、Y方向の幅Y_pdは900μm、X方向の全幅X_totalは2048μmである。
【0179】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向450μm、X方向1024μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、領域23、領域25、および領域28がY方向にそれぞれ2ライン分ずつ含まれる。
【0180】
受光素子アレイ16Fの出力部19から出力されるリニアイメージ信号Vより領域23、25、28の各周期信号成分を分離する方法として実施例4と同様に各周期に対応した4相正弦波に変換してもよい。その場合は、受光素子アレイ16Fの隣接する2個の受光素子の出力を合計し、実施例4における受光素子の出力に置き換えて同様の演算処理を行うことが可能である。このときに、各受光素子の位置に応じ、適切な重みづけを信号処理回路30にて行う。このように、本実施例では信号処理回路30に重み付け手段が設けられている。
【0181】
こうして得られた領域23(127.20497μm周期)に対応する信号の位相をΦ1、領域25(256μm周期)に対応する信号の位相をΦ2、領域28(553.51351μm周期)に対応する信号の位相をΦ3とする。移動範囲の片方の端(X=0mm)において、Φ1=Φ2=Φ3=0となるように、スケール20上の3つの周期パターンの初期位相が設定されている。
【0182】
受光素子アレイ16Fによって検出されたリニアイメージ信号より領域23、25、28の各周期信号成分を分離する方法としてフーリエ変換を用いてもよい。フーリエ変換を行う場合の信号処理回路30の処理について説明する。
【0183】
まず、128個の受光素子17Fの出力の平均を直流成分として各受光素子出力から減算を行う。更に、受光素子アレイ16Fを、中央から64個(中央部)と、両端から各32個ずつの計64個(周辺部)の2つの領域に分ける。中央部と周辺部の出力にはそれぞれ異なる係数を掛け、重みづけを行った後に128個のデータをフーリエ変換する。フーリエ変換によって得られた位相と対応する空間周波数からΦ1、Φ2、Φ3を算出する。
【0184】
ここで、フーリエ変換の周波数分解能は受光面上の空間周波数としてΔf=1/1024(μm−1)となるため、完全には領域23、28のパターン反射像と一致しない。Φ1はΔf・8=1/256(μm−1)の成分の位相、Φ2はΔf・4=1/512(μm−1)の成分の位相、Φ3はΔf・2=1/1024(μm−1)の成分の位相として以降の演算に用いる。
【0185】
ここでは信号処理回路30での演算処理によって領域ごとの重み付けを行っているが、各受光素子出力が領域によって異なる電気的ゲインを持つようにしてもよい。
【0186】
重み付けの比率は、例えば、中央部と周辺部の比率を理論値の3:1に固定する他、光量分布を考慮して周辺部の比率を増やしてもよい。また、特定領域のスキャンを行い、Φ1、Φ2に対する領域28(553.51351μm周期)からの信号漏れ込が最小になるように比率を決定してもよい。以上のようにして得られたΦ1、Φ2、Φ3から絶対位置検出を行うまでの演算方法は実施例3と同様なので省略する。
【0187】
以上のように、本実施例ではリニアセンサアレイを使って各検出素子の出力を取り出せるようにしたので後段で行う重みづけ処理の設計自由度が高い。また、信号取り出しが一度で済むので、各信号位相間での時間的な同期性が向上する。
【0188】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0189】
エンコーダは位置(変位)を検出する用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0190】
16A〜16F…受光素子アレイ(検出素子アレイ)、20…スケール、23…第1の領域、25…第2の領域、30…信号処理回路(信号処理手段)、32…第1の位相取得手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー分布を空間変調する複数のパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、
前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、
前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、
を有するエンコーダにおいて、
前記パターン列は、前記移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有し、
前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段を有し、
前記エンコーダは、前記第1の変調周期を検出する複数の検出素子の出力信号に対して前記検出素子アレイの位置に応じた重みを使用して重み付けをする重み付け手段を更に有し、
前記重みは、前記第1の位相取得手段の空間周波数応答の前記第2の変調周期に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、前記重み付け手段が重み付けを行った場合の値が、重み付けが無い場合の値以下となるように設定されていることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記重み付け手段は、前記第1の変調周期を検出する前記複数の検出素子の受光面の面積を前記検出素子アレイの位置に応じて異ならせることであることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記重み付け手段は、前記第1の変調周期を検出する前記複数の検出素子の電気的ゲインを前記検出素子アレイの位置に応じて異ならせることであることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記パターン列は、前記移動方向に垂直な方向に周期的に配列され、前記移動方向に第1のピッチを有する第1の領域と、前記移動方向に前記第1のピッチとは異なる第2のピッチを第2の領域と、を有し、前記第1の変調周期は前記第1の領域のエネルギー分布に対応し、前記第2の変調周期は前記第2の領域のエネルギー分布に対応することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記信号処理手段は、
前記検出素子アレイの出力信号から前記第2の変調周期の第2の位相を取得する第2の位相取得手段と、
前記第1の位相取得手段が取得した前記第1の位相と、前記第2の位相取得手段が取得した前記第2の位相と、
|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|
の条件を満たす整数m、nに対し、
A/B=n/m
の関係を満たす2つの係数A、Bを用いて次式を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
Sv=A・Φ1−B・Φ2
但し、Φ1は前記第1の位相、Φ2は前記第2の位相、P1は前記第1の変調周期、P2は前記第2の変調周期である。
【請求項6】
前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力を前記パターンの各変調周期に対応する信号に分離する信号分離手段を更に有することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記信号分離手段は、前記複数の検出素子の電気的に加算される間隔を切り替えることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記信号分離手段は、前記検出素子アレイの出力信号に高速フーリエ変換を施すことを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記複数の検出素子は、
前記第1の位相取得手段に出力を与える複数の第1の検出素子と、
前記第2の位相取得手段に出力を与える複数の第2の検出素子と、
を有し、
前記第1の位相取得手段と前記第2の位相取得手段は前記複数の検出素子から同時に出力を取得することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項1】
エネルギー分布を空間変調する複数のパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、
前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、
前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、
を有するエンコーダにおいて、
前記パターン列は、前記移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有し、
前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段を有し、
前記エンコーダは、前記第1の変調周期を検出する複数の検出素子の出力信号に対して前記検出素子アレイの位置に応じた重みを使用して重み付けをする重み付け手段を更に有し、
前記重みは、前記第1の位相取得手段の空間周波数応答の前記第2の変調周期に対応する空間周波数を含む所定の範囲において、前記重み付け手段が重み付けを行った場合の値が、重み付けが無い場合の値以下となるように設定されていることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記重み付け手段は、前記第1の変調周期を検出する前記複数の検出素子の受光面の面積を前記検出素子アレイの位置に応じて異ならせることであることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記重み付け手段は、前記第1の変調周期を検出する前記複数の検出素子の電気的ゲインを前記検出素子アレイの位置に応じて異ならせることであることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記パターン列は、前記移動方向に垂直な方向に周期的に配列され、前記移動方向に第1のピッチを有する第1の領域と、前記移動方向に前記第1のピッチとは異なる第2のピッチを第2の領域と、を有し、前記第1の変調周期は前記第1の領域のエネルギー分布に対応し、前記第2の変調周期は前記第2の領域のエネルギー分布に対応することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記信号処理手段は、
前記検出素子アレイの出力信号から前記第2の変調周期の第2の位相を取得する第2の位相取得手段と、
前記第1の位相取得手段が取得した前記第1の位相と、前記第2の位相取得手段が取得した前記第2の位相と、
|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|
の条件を満たす整数m、nに対し、
A/B=n/m
の関係を満たす2つの係数A、Bを用いて次式を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
Sv=A・Φ1−B・Φ2
但し、Φ1は前記第1の位相、Φ2は前記第2の位相、P1は前記第1の変調周期、P2は前記第2の変調周期である。
【請求項6】
前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力を前記パターンの各変調周期に対応する信号に分離する信号分離手段を更に有することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記信号分離手段は、前記複数の検出素子の電気的に加算される間隔を切り替えることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記信号分離手段は、前記検出素子アレイの出力信号に高速フーリエ変換を施すことを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記複数の検出素子は、
前記第1の位相取得手段に出力を与える複数の第1の検出素子と、
前記第2の位相取得手段に出力を与える複数の第2の検出素子と、
を有し、
前記第1の位相取得手段と前記第2の位相取得手段は前記複数の検出素子から同時に出力を取得することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のエンコーダ。
【図15】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−220460(P2012−220460A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89795(P2011−89795)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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