説明

エンジンのカムシャフト支持構造

【課題】シリンダヘッドとシリンダとを結合するボルトと、動弁装置との好適な配置により、エンジンの小型化および動弁装置の振動抑制が可能なエンジンのカムシャフト支持構造を提供する。
【解決手段】エンジン3のカムシャフト支持構造53は、シリンダボア51を有するシリンダ42と、カムシャフト55を収容する動弁室56を有するシリンダヘッド43と、カムシャフト55を回転自在に支持する複数の軸受部57と、シリンダボア51の中心線に対して略並行に位置してシリンダ42とシリンダヘッド43とを複数の箇所で結合し、1つの接合箇所はカムシャフト55の回転中心線直交方向に見て軸受部57のいずれかに重なりかつ動弁室56の外側に位置する複数のボルト58と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのカムシャフト支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドとシリンダブロックとをボルトで結合するエンジンが知られている。このボルトは、シリンダの中心線に対して略平行に延び、シリンダヘッドの動弁室側からシリンダブロックへ到達してシリンダヘッドとシリンダブロックとを結合する。多気筒エンジンの場合、このボルトは、それぞれの気筒を避け、かつシリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面に均等な面圧を加えるよう、それぞれの気筒の周囲に間隔を空けて整列する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、カムシャフトの回転位相を変えて吸気バルブおよび排気バルブの開閉周期を変更する可変動弁装置を備えるエンジンが知られている。
【0004】
例えば、カムシャフトの一端部に固定されるロータと、このロータに対して相対的に回転可能であり、ロータに外装して進角用オイル室と遅角用オイル室とをロータとの隙間に形成するハウジングと、を備える油圧式の可変動弁装置がある。この油圧式の可変動弁装置は、進角用オイル室および遅角用オイル室のいずれかにエンジンオイルを供給または遮断することでカムシャフトの回転位相を変える(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、クランクシャフトと一体に回転する従動部材と、カムシャフトと一体に回転し従動部材に対して相対的に回転可能なガイドプレートと、従動部材とガイドプレートとの互いに向かい合う面に位置するガイド溝に保持されるウエイトボールと、を備える機械式の可変動弁装置がある。この機械式の可変動弁装置は、クランクシャフトの回転数が上がると、遠心力によりウエイトボールがガイド溝を移動してガイド部材を従動部材に対して相対的に回転させてカムシャフトの回転位相を変える(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−19245号公報
【特許文献2】特開2000−73723号公報
【特許文献3】特開2009−185656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエンジンは、シリンダヘッドとシリンダブロック(またはシリンダ)とを結合するボルトをシリンダボアの周囲に配置する都合から、カムシャフトの軸受部や動弁装置とボルトとの配置の取り合いが生じてエンジンの大型化を招いていた。
【0008】
一方、エンジンは、クランクシャフトから動弁装置を駆動する動力を得るため、カムシャフトの一方の端部にドリブンギアなどの動力伝達機構を備える。エンジンの小型化の観点から、この動力伝達機構を極力シリンダボアの近くに配置することが好ましい。
【0009】
特に、機械式の可変動弁装置にあっては複雑な構造、油圧式の可変動弁装置にあってはオイル室の容積によって、カムシャフトの軸方向に可変動弁装置が膨出するため、エンジンがカムシャフトの軸方向に大型化する場合がある。
【0010】
また、これらエンジンの大型化は、カムシャフトの全長の伸張をともない、動弁装置に生じる振動の観点からも好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、シリンダヘッドとシリンダとを結合するボルトと、動弁装置との好適な配置により、エンジンの小型化および動弁装置の振動抑制が可能なエンジンのカムシャフト支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するため本発明に係るエンジンのカムシャフト支持構造は、シリンダボアを有するシリンダと、カムシャフトを収容する動弁室を有するシリンダヘッドと、前記カムシャフトを回転自在に支持する複数の軸受部と、前記シリンダボアの中心線に対して略並行に位置して前記シリンダと前記シリンダヘッドとを複数の箇所で結合し、少なくとも1つの接合箇所は前記カムシャフトの回転中心線直交方向に見て前記複数の軸受部のいずれかに重なりかつ前記動弁室の外側に位置する複数のボルトと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリンダヘッドとシリンダとを結合するボルトと、動弁装置との好適な配置により、エンジンの小型化および動弁装置の振動抑制が可能なエンジンのカムシャフト支持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を適用する自動二輪車を示す左側面図。
【図2】本発明の実施形態に係るエンジンを示す右側面図。
【図3】本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を示す正面図。
【図5】本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を示す側面図。
【図6】本発明の実施形態に係るエンジンの動弁室を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るエンジンのカムシャフト支持構造の実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を適用する自動二輪車を示す左側面図である。
【0017】
なお、本実施形態において、前後、上下、左右の表現は、自動二輪車1に乗車するライダーを基準にする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、前後に延びる車体フレーム2と、車体フレーム2の前半部下方にあるエンジン3と、車体フレーム2の前端部にあり左右方向へ旋回可能なステアリング機構5と、ステアリング機構5の下端部にあり接地する前輪6と、車体フレーム2と前輪6との間に介在する前輪懸架装置7と、車体フレーム2の後部にあり上下方向へ揺動可能なスイングアーム8と、スイングアーム8の後端部にあり接地する後輪11と、車体フレーム2とスイングアーム8との間に架かる後輪懸架装置12と、を備える。
【0019】
車体フレーム2は、例えばツインチューブ型のフレームである。車体フレーム2は、前端頂部にあるステアリングヘッドパイプ13と、ステアリングヘッドパイプ13の直後で左右へ分岐し後ろ斜め下方へ傾斜して延びる左右一対のメインフレーム15と、メインフレーム15の後端部に連接して下方へ延びる左右一対のセンターフレーム16と、を備える。
【0020】
ステアリングヘッドパイプ13は、ステアリング機構5を旋回可能に支持する。
【0021】
メインフレーム15は、ステアリングヘッドパイプ13の直後で分岐し拡開しつつ車両後方側へなだらかに下る。また、メインフレーム15は、タンクレールを兼ね、前半部の上方にエアクリーナボックス18を支持し、後半部の上方に燃料タンク19を支持する。さらに、メインフレーム15は、下方にエンジン3を吊り下げるように支持する。
【0022】
センターフレーム16は、車幅方向に延びるピボット軸21を保持する。ピボット軸21は、スイングアーム8を揺動可能に支持する。
【0023】
エンジン3は、前輪6の後方かつメインフレーム15の下方にあり、自動二輪車1の中央下部を占める。
【0024】
ステアリング機構5は、ステアリングヘッドパイプ13を貫きステアリング機構5の旋回中心となるステアリングシャフト(図示省略)と、上下に延びる左右一対のフロントフォーク22と、それぞれのフロントフォーク22の上端近傍に設けられた左右一対のハンドルバー23と、ハンドルバー23の自由端部にあるハンドルグリップ25と、を備える。自動二輪車1右側のハンドルグリップ25は、スロットルグリップ26である。
【0025】
また、自動二輪車1は、車両の少なくとも一部、例えば、前部から中央下部にかけて車体フレーム2を覆う流線形のカウリング27を備える。カウリング27は、自動二輪車1の走行中の空気抵抗を低減するとともに、走行風圧からライダーを保護する。カウリング27は、車両の前部を覆うフロントカバー28と、エンジン3の側方を覆う左右一対のサイドカバー31と、エアクリーナボックス18を覆うエアクリーナカバー32と、ライダーが着座するシート33を支えるシートカバー35と、車両の後方を覆うリアカバー36と、を備える。
【0026】
エアクリーナボックス18は、エアクリーナ37を収容する。エアクリーナ37は、エンジン3の吸気を濾過するエアフィルタである。
【0027】
燃料タンク19は、エアクリーナボックス18の後部に連接して後方へ延び、シート33の下方に潜り込む。
【0028】
さらに、自動二輪車1は、フロントカバー28の前端にあり車両の前方へ開口する吸込口38からエアクリーナボックス18、ひいてはエアクリーナ37へ空気を導く左右一対のエアダクト39を備える。
【0029】
次に、本実施形態に係るエンジン3について詳細に説明する。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に係るエンジンを示す右側面図である。
図2に示すように、本実施形態に係るエンジン3は、4サイクルエンジン、具体的には4サイクル直列4気筒エンジンである。エンジン3は、クランクケース41と、シリンダ42と、シリンダヘッド43と、ヘッドカバー45と、オイルパン46と、クラッチ機構47と、を備える。なお、エンジン3は4気筒以外の多気筒エンジンでも良いし、単気筒エンジンでも良い。
【0031】
クランクケース41は、上下に2分割可能であり、アッパクランクケース48と、ロアクランクケース49と、を備える。
【0032】
シリンダ42は、アッパクランクケース48の上部に結合し、シリンダボア51の中心線を直立よりやや前傾している。シリンダ42は、シリンダボア51内にピストン(図示省略)を摺動自在に収納する。
【0033】
シリンダヘッド43は、シリンダ42の上部に結合し、シリンダボア51に連接する燃焼室(図示省略)を仕切る。シリンダボア51内のピストンは、燃焼室内で周期的に起こる混合気の燃焼によって往復運動する。
【0034】
オイルパン46は、ロアクランクケース49の下部に結合する。オイルパン46はエンジン3各部を循環するエンジンオイルを貯留する。
【0035】
クラッチ機構47は、乾式クラッチである。クラッチカバー52は、クランクケース41の側壁に組み付いてクラッチ機構47を部分的に覆う。
【0036】
次に、本実施形態に係るエンジン3のカムシャフト支持構造について詳細に説明する。
【0037】
図3は、本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を示す平面図である。
図4は、本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を示す正面図である。
図5は、本発明の実施形態に係るエンジンのカムシャフト支持構造を示す側面図である。
図6は、本発明の実施形態に係るエンジンの動弁室を示す図である。
【0038】
なお、図4から図6はエンジン3からヘッドカバー45を省略して示す。また、図4および図6はエンジン3からさらに動弁装置を省略して示す。
【0039】
図3から図5に示すように、エンジン3のカムシャフト支持構造53は、シリンダボア51を有するシリンダ42と、カムシャフト55を収容する動弁室56を有するシリンダヘッド43と、カムシャフト55を回転自在に支持する複数の軸受部57と、シリンダボア51の中心線に対して略並行に位置してシリンダ42とシリンダヘッド43とを複数の箇所で結合し、少なくとも1つの接合箇所はカムシャフト55の回転中心線直交方向に見て複数の軸受部57のいずれかに重なりかつ動弁室56の外側に位置する複数のボルト58と、を備える。
【0040】
シリンダ42はシリンダボア51の近傍にボルト58を通す貫通孔59を有する。4つのシリンダボア51はエンジン3の幅方向に並ぶ。
【0041】
シリンダヘッド43は、正面側に位置する排気ポート61の出口フランジ62と、背面側に位置する吸気ポート63の入口フランジ65と、を備える。排気ポート61および排気ポート61はそれぞれ燃料室に接続する。
【0042】
また、シリンダヘッド43は、排気ポート61に配置する排気バルブ(図示省略)を閉鎖方向へ押し付けるスプリング(図示省略)を配置するばね受け座66と、吸気ポート63に配置する吸気バルブ(図示省略)を閉鎖方向へ押し付けるスプリング(図示省略)を配置するばね受け座67と、を備える。
【0043】
さらに、シリンダヘッド43は、側壁(ここでは右側壁)に沿って動弁室56とクランクケース41内とを接続するカムチェーン室68を有する。カムチェーン室68はシリンダ42にも延びる。
【0044】
軸受部57は各シリンダ42の中心線上を通過するように動弁室56内を前後に縦断する。また、軸受部57は、カムチェーン室68に近接するシリンダ42とカムチェーン室68との間にも位置する。
【0045】
軸受部57は、排気側のカムシャフト55aを回転自在に支える軸受部57aと、吸気側のカムシャフト55bを回転自在に支える軸受部57bと、を備える。軸受部57aは動弁室56内を前後に縦断する軸受部57の前半部に位置し、軸受部57bは軸受部57の後半部に位置する。軸受部57は、各シリンダ42の中心線上に点火プラグ(図示省略)を取り付けるためのプラグホール71を有する。
【0046】
軸受部57は、それぞれ上下に分割可能であり、シリンダヘッド43に一体の軸受下半部72と、シリンダヘッド43に着脱可能な軸受上半部73とを組み合わせたものである。
【0047】
排気側のばね受け座66は、各シリンダボア51に2つずつあり、各シリンダボア51に対応する軸受部57aを挟み込むようにして排気側のカムシャフト55aの直下に位置する。他方、吸気側のばね受け座67は、各シリンダボア51に2つずつあり、各シリンダボア51に対応する軸受部57b挟み込むようにして吸気側のカムシャフト55bの直下に位置する。
【0048】
カムシャフト55は動弁室56内にあり、エンジン3の幅方向に延びる。排気側のカムシャフト55aは、ばね受け座66の直上に排気側カム75を備える。他方、吸気側のカムシャフト55bは、ばね受け座67の直上に吸気側カム76を備える。カム75、76は、それぞれのカムシャフト55a、55bに回転一体である。
【0049】
また、カムシャフト55は、カムチェーン室68を臨む位置にドリブンギア77を備える。ドリブンギア77は、クランクシャフト(図示省略)のドライブギア(図示省略)からチェーン(図示省略)を介して駆動力を得てカムシャフト55を回転する。また、ドリブンギア77は可変動弁装置78を介してカムシャフト55に接続する。可変動弁装置78は機械式でも良いし、油圧式でも良い。可変動弁装置78の具体的な構成は引用文献2または引用文献3と同じである。
【0050】
ボルト58は、シリンダ42の貫通孔59を通過し、クランクケース41に位置するボルト穴81に締まり、シリンダヘッド43およびシリンダ42を共締めしてクランクケース41に固定する。なお、例えばシリンダ42とクランクケース41とを一体形成するシリンダブロックの場合には、シリンダ42の貫通孔59に代えてボルト穴81を配置する。
【0051】
ボルト58は、各シリンダボア51の中心線から見て各シリンダボア51の右前側、左前側、右後ろ側、左後ろ側に位置する。また、隣り合うシリンダボア51は間に挟まるボルト58を共有する。
【0052】
ここで、説明を簡単にするため、カムチェーン室68側から順に第一シリンダボア51a、第二シリンダボア51b、第三シリンダボア51c、第四シリンダボア51dと呼ぶ。また、排気ポート61のあるシリンダヘッド43の前側に整列するボルト58をカムチェーン室68側から順に第一前側ボルト82a、第二前側ボルト82b、第三前側ボルト82c、第四前側ボルト82d、第五前側ボルト82eと呼ぶ。さらに、吸気ポート63のあるシリンダヘッド43の後ろ側に整列するボルト58をカムチェーン室68側から順に第一後側ボルト83a、第二後側ボルト83b、第三後側ボルト83c、第四後側ボルト83d、第五後側ボルト83eと呼ぶ。
【0053】
そうすると、第二前側ボルト82bは、第一シリンダボア51aの左前側、第二シリンダボア51bの右前側を締め付けるボルト58に当たり、第一シリンダボア51aと第二シリンダボア51bとで共有される。第三前側ボルト82cは、第二シリンダボア51bの左前側、第三シリンダボア51cの右前側を締め付けるボルト58に当たり、第二シリンダボア51bと第三シリンダボア51cとで共有される。第四前側ボルト82dは、第三シリンダボア51cの左前側、第四シリンダボア51dの右前側を締め付けるボルト58に当たり、第三シリンダボア51cと第四シリンダボア51dとで共有される。これら第二前側ボルト82b、第三前側ボルト82cおよび第四前側ボルト82dは、動弁室56内に位置する座面85を締め付ける。
【0054】
また、第五前側ボルト82eは、第四シリンダボア51dの左前側を締め付けるボルト58に当たり、動弁室56外に位置する座面86を締め付ける。座面86は、シリンダヘッド43の左側面に位置する台座部87に位置する。
【0055】
さらに、第一前側ボルト82aは、第一シリンダボア51aの右前側を締め付けるボルト58に当たる。また、第一前側ボルト82aは、カムシャフト55の回転中心線直交方向に見て軸受部57のいずれか(ここでは、カムチェーン室68に近接するシリンダボア51とカムチェーン室68との間に位置する軸受部57)に重なりかつ動弁室56の外側に位置するボルト58である。
【0056】
シリンダヘッド43は、側壁(ここでは前壁89)に位置する凹形状部91にあり動弁室56の外側に位置する第一前側ボルト82aを締め付ける座面92を有する台座部93を備える。台座部93は、シリンダボア51の中心線方向に見て軸受部57よりもシリンダ42側に位置する。
【0057】
他方、第二後側ボルト83bは、第一シリンダボア51aの左後ろ側、第二シリンダボア51bの右後ろ側を締め付けるボルト58に当たり、第一シリンダボア51aと第二シリンダボア51bとで共有される。第三後側ボルト83cは、第二シリンダボア51bの左後ろ側、第三シリンダボア51cの右後ろ側を締め付けるボルト58に当たり、第二シリンダボア51bと第三シリンダボア51cとで共有される。第四後側ボルト83dは、第三シリンダボア51cの左後ろ側、第四シリンダボア51dの右後ろ側を締め付けるボルト58に当たり、第三シリンダボア51cと第四シリンダボア51dとで共有される。これら第二前側ボルト82b、第三前側ボルト82cおよび第四前側ボルト82dは、動弁室56外に位置する座面95を締め付ける。
【0058】
また、第五後側ボルト83eは、第四シリンダボア51dの左後ろ側を締め付けるボルト58に当たり、動弁室56外に位置する座面96を締め付ける。座面96は、シリンダヘッド43の左側面に位置する台座部97に位置する。
【0059】
さらに、第一後側ボルト83aは、第一シリンダボア51aの右後ろ側を締め付けるボルト58に当たる。また、第一後側ボルト83aは、カムシャフト55の回転中心線直交方向に見て軸受部57のいずれか(ここでは、カムチェーン室68に近接するシリンダボア51とカムチェーン室68との間に位置する軸受部57)に重なりかつ動弁室56の外側に位置するボルト58である。
【0060】
シリンダヘッド43は、側壁(ここでは後壁98)に位置する凹形状部99にあり動弁室56の外側に位置する第一後側ボルト83aを締め付ける座面101を有する台座部102を備える。台座部102は、シリンダボア51の中心線方向に見て軸受部57よりもシリンダ42側に位置する。
【0061】
このように構成された本実施形態に係るエンジン3のカムシャフト支持構造53によれば、カムシャフト55の回転中心線直交方向に見ていずれかのボルト58(具体的には、第一前側ボルト82aおよび第一後側ボルト83a)が軸受部57(具体的には、カムチェーン室68に近接するシリンダボア51とカムチェーン室68との間に位置する軸受部57)に重なるため、動弁室56内に当該ボルト58の座面92、101を配置する必要が無くなり、カムシャフト55の全長を抑制し、シリンダヘッド43の左右幅を縮小し、ひいてはエンジン3を小型化できる。エンジン3の幅が小型化すると車幅を短くして自動二輪車1そのものを小型化することも可能であり、特に、エンジン3の一部、例えばシリンダヘッド43やヘッドカバー45が左右のメインフレーム15に挟まれる場合、左右のメインフレーム15の離間距離を抑制して車幅の小型化に寄与できる。
【0062】
また、本実施形態に係るエンジン3のカムシャフト支持構造53によれば、カムシャフト55の全長を抑制することと、座面92、101を配置する必要が無くなることで隣り合う軸受部57間の離間距離(特に、カムチェーン室68に近接するシリンダボア51とカムチェーン室68との間に位置する軸受部57と、これに隣り合う軸受部57)を近接して配置できることから、カムシャフト55に生じる振動を抑制できる。
【0063】
さらに、本実施形態に係るエンジン3のカムシャフト支持構造53によれば、シリンダヘッド43の側壁に位置する凹形状部91、99に台座部93、102を備えるため、ボルト58がエンジン3の前後方向へ突出せず、エンジン3の前後方向も小型化可能である。しかも、ボルト58の締め付け箇所をシリンダボア51により近づけることが出来るので、クランクケース41、シリンダ42およびシリンダヘッド43のそれぞれの結合面における気密性を高めることもできる。
【0064】
したがって、本実施形態に係るエンジン3のカムシャフト支持構造53によれば、シリンダヘッド43とシリンダ42とを結合するボルト58と、動弁装置との好適な配置により、エンジン3の小型化および動弁装置の振動抑制が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
3 エンジン
5 ステアリング機構
6 前輪
7 前輪懸架装置
8 スイングアーム
11 後輪
12 後輪懸架装置
13 ステアリングヘッドパイプ
15 メインフレーム
16 センターフレーム
18 エアクリーナボックス
19 燃料タンク
21 ピボット軸
22 フロントフォーク
23 ハンドルバー
25 ハンドルグリップ
26 スロットルグリップ
27 カウリング
28 フロントカバー
31 サイドカバー
32 エアクリーナカバー
33 シート
35 シートカバー
36 リアカバー
37 エアクリーナ
38 吸込口
39 エアダクト
41 クランクケース
42 シリンダ
43 シリンダヘッド
45 ヘッドカバー
46 オイルパン
47 クラッチ機構
48 アッパクランクケース
49 ロアクランクケース
51 シリンダボア
51a 第一シリンダボア
51b 第二シリンダボア
51c 第三シリンダボア
51d 第四シリンダボア
52 クラッチカバー
53 カムシャフト支持構造
55、55a、55b カムシャフト
56 動弁室
57、57a、57b 軸受部
58 ボルト
59 貫通孔
61 排気ポート
62 出口フランジ
63 吸気ポート
65 入口フランジ
66、67 ばね受け座
68 カムチェーン室
71 プラグホール
72 軸受下半部
73 軸受上半部
75 排気側カム
76 吸気側カム
75 カム
77 ドリブンギア
78 可変動弁装置
81 ボルト穴
82a 第一前側ボルト
82b 第二前側ボルト
82c 第三前側ボルト
82d 第四前側ボルト
82e 第五前側ボルト
83a 第一後側ボルト
83b 第二後側ボルト
83c 第三後側ボルト
83d 第四後側ボルト
83e 第五後側ボルト
85、86 座面
87 台座部
89 前壁
91 凹形状部
92 座面
93 台座部
95、96 座面
97 台座部
98 後壁
99 凹形状部
101 座面
102 台座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボアを有するシリンダと、
カムシャフトを収容する動弁室を有するシリンダヘッドと、
前記カムシャフトを回転自在に支持する複数の軸受部と、
前記シリンダボアの中心線に対して略並行に位置して前記シリンダと前記シリンダヘッドとを複数の箇所で結合し、少なくとも1つの接合箇所は前記カムシャフトの回転中心線直交方向に見て前記複数の軸受部のいずれかに重なりかつ前記動弁室の外側に位置する複数のボルトと、を備えることを特徴とするエンジンのカムシャフト支持構造。
【請求項2】
前記シリンダヘッドの側壁に位置する凹形状部にあり前記動弁室の外側に位置してボルトを締め付ける座面を有する台座部を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのカムシャフト支持構造。
【請求項3】
前記台座部は、前記シリンダボアの中心線方向に見て前記軸受部よりも前記シリンダ側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンのカムシャフト支持構造。
【請求項4】
前記カムシャフトの一方の端部に固定されるドリブンギアを備え、
前記動弁室の外側に位置するボルトが前記カムシャフトの回転中心線直交方向に見て重なる前記軸受部は、前記シリンダボアの中心線方向に見て前記シリンダボアとドリブンギアとの間に挟まることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンのカムシャフト支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83219(P2013−83219A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224287(P2011−224287)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】