説明

エンジンの制御装置

【課題】エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止することによる燃費の悪化を低減する。
【解決手段】ECUは、車両が停止しているという条件を少なくとも含むアイドルストップ条件が満たされると(S110にてYES)、エンジンが自動的に停止するように制御するステップ(S118)と、エンジンの運転中にエンジン回転数NEが予め定められた目標回転数より小さいという条件を少なくも含む条件が満たされた場合に、エンジンが自動的に停止するように制御すること、すなわちアイドルストップを禁止するステップ(S106)とを備える、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に、アイドルストップを禁止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の停止時に運転者がブレーキペダルを踏むなどの条件が満たされるとエンジンを自動的に停止するアイドルストップ(エコノミーランニングともいう)機能を有する車両が知られている。このような車両では、エンジンがアイドル状態になる時間を短縮し、燃料の消費量を低減することができる。
【0003】
ところで、アイドルストップ機能を有する車両においても、たとえば運転者がブレーキペダルから足を離すと発進に備えてエンジンが始動され、アクセルペダルを運転者が踏まなければエンジンがアイドル状態になり得る。したがって、一般的な車両と同様に、アイドル時におけるエンジン回転数NEをたとえば目標のアイドル回転数以上に保つために、ISC(Idle Speed Control)によりスロットル開度を制御することが必要である。ISCによりエンジン回転数NEと目標のアイドル回転数との差に応じてスロットル開度が増減されるとともに、エンジン回転数NEを目標のアイドル回転数以上に保つことができるスロットル開度が学習される。
【0004】
ところが、アイドルストップ機能を有する車両では、エンジンがアイドル状態になる機会が低減されるために、アイドル時のスロットル開度を学習する機会が少ない。そこで、アイドル時のスロットル開度を学習する必要がある場合には、アイドルストップを禁止する技術が提案されている。
【0005】
特開2007−71178号公報(特許文献1)は、一時停車時に内燃機関を自動的に停止させるアイドリングストップ機能を有する車両に適用され、内燃機関のアイドリング運転中に内燃機関を所定のパターンで運転させて学習を行なう学習制御部と、乗員に対して情報を発信する情報発信部とを備える車両の学習制御装置を開示する。学習制御部は、学習を実行すべきと判断したときには、アイドリングストップ機能によって次の一時停車時に内燃機関が自動的に停止されることを中止させるとともに、情報発信部に、次の一時停車時に内燃機関を停止させずに学習を実行する旨の情報を発信させる。たとえば前回の学習を行ってからの車両の走行距離が所定値(たとえば1万km)を越えた場合、あるいは、燃料噴射量の気筒間ばらつき等によってエンジン回転変動が所定値を越えた場合には、学習を実施する必要があると定判定される。
【0006】
この公報に記載の学習制御装置によれば、学習が必要なときには一時停車時の内燃機関の自動停止が中止される。そのため、アイドリングストップ機能を有する車両においても、アイドリング運転中に学習を実行することができる。
【特許文献1】特開2007−71178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2007−71178号公報に記載の学習制御装置は、エンジン回転数NEを目標のアイドル回転数以上に保つことができる場合であっても、前回の学習を行ってからの車両の走行距離が所定値を越えた場合、あるいは、エンジン回転変動が所定値を越えた場合には、アイドルストップが禁止される。そのため、アイドルストップを実行する機会が減少し、燃費が悪化し得る。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止することによる燃費の悪化を低減することができるエンジンの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るエンジンの制御装置は、車両に搭載されたエンジンの制御装置である。この制御装置は、車両が停止したという条件を少なくとも含む条件が満たされた場合にエンジンが自動的に停止するように制御するための停止手段と、エンジンの運転中にエンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数より小さいという条件を少なくも含む条件が満たされた場合に、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止するための禁止手段とを備える。
【0010】
この構成によると、車両が停止したという条件を少なくとも含む条件が満たされた場合にエンジンが自動的に停止するように制御される。エンジンの運転中にエンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数より小さいという条件を少なくも含む条件が満たされた場合に、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される。これにより、エンジン回転数NEが低下したためにエンジンが自立運転不可能であるといえる場合に限って、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止して、ISCによりスロットル開度を学習する機会を確保することができる。そのため、エンジンが自立運転可能である場合にはエンジンが自動的に停止するように制御することを禁止しないようにして、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される頻度を低減することができる。その結果、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止することによる燃費の悪化を低減することができるエンジンの制御装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係るエンジンの制御装置においては、第1の発明の構成に加え、禁止手段は、エンジンの運転中にエンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数よりも予め定められた値以上小さい状態が予め定められた時間以上継続した場合に、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止するための手段を含む。
【0012】
この構成によると、エンジンの運転中にエンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数よりも予め定められた値以上小さい状態が予め定められた時間以上継続した場合に、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される。これにより、エンジン回転数NEが継続的に低下したためにエンジンが自立運転不可能であるといえる場合に限って、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止して、ISCによりスロットル開度を学習する機会を確保することができる。そのため、エンジン回転数NEが一時的に低下した場合にはエンジンが自動的に停止するように制御することを禁止しないようにして、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される頻度を低減することができる。
【0013】
第3の発明に係るエンジンの制御装置においては、第1の発明の構成に加え、禁止手段は、エンジンの運転中にエンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数よりも予め定められた値以上小さい状態が継続した時間と、エンジンの出力軸回転数および予め定められた回転数の差との積が予め定められた値以上になった場合に、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止するための手段を含む。
【0014】
この構成によると、エンジンの運転中にエンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数よりも予め定められた値以上小さい状態が継続した時間と、エンジンの出力軸回転数および予め定められた回転数の差との積が予め定められた値以上になった場合に、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される。これにより、エンジン回転数NEが継続的に低下したために、あるいはエンジン回転数NEが短期間に急激に低下したためにエンジンが自立運転不可能であるといえる場合に限って、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止して、ISCによりスロットル開度を学習する機会を確保することができる。そのため、エンジンが自立運転可能である場合にはエンジンが自動的に停止するように制御することを禁止しないようにして、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される頻度を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を有する車両のエンジンシステムについて説明する。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではなく、V型6気筒エンジン、V型8気筒エンジンなど、種々の形式のエンジンに適用可能である。
【0017】
エンジン10は、内燃機関である。図1に示すように、エンジン10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続される。
【0018】
吸気ダクト40内には電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置される。スロットルバルブ70は、スロットル開度TAがアクセル開度に応じて変化するように制御される。エンジン10がアイドル状態にある場合、ISCにより、エンジン回転数が目標のアイドル回転数になるようにスロットル開度が制御される。アイドル時のスロットル開度TAISCは、エンジンの運転状態に応じて補正される。
【0019】
たとえば、アイドル時のエンジン回転数がしきい値NE1よりも小さい場合などに、アイドル時のスロットル開度TAISCが予め定められた値だけ増大するように補正される。アイドル時のエンジン回転数がしきい値NE2よりも大きい場合などに、アイドル時のスロットル開度TAISCが予め定められた値だけ増大するように補正される。
【0020】
また、予め定められた学習条件が成立した場合、アイドル時のスロットル開度TAISCの学習値ISCG、すなわち吸気の流量学習値が算出される。たとえば、アイドル時のスロットル開度TAISCがしきい値TAISC1より大きくなった場合に予め定められた値だけ学習値ISCGを増大したり、アイドル時のスロットル開度TAISCがしきい値TAISC2より小さくなった場合に予め定められた値だけ学習値ISCを低減したりすることにより、学習値ISCが算出される。
【0021】
各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。各気筒112に対しては、点火プラグ110、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するインジェクタ120がそれぞれ設けられている。点火プラグ110およびインジェクタ120はECU(Electronic Control Unit)900の出力信号に基づいて制御される。
【0022】
各インジェクタ120は、デリバリパイプ130に接続されており、デリバリパイプ130は燃料圧レギュレータ140を介して、電動モータ駆動式の燃料ポンプ150に接続されている。燃料圧レギュレータ140は燃料ポンプ150から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、燃料ポンプ150から吐出された燃料の一部を燃料タンク160に戻すように構成されており、したがってインジェクタ120に供給されている燃料圧が設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
【0023】
エンジン10は、スタータ200によりクランキングされて始動する。たとえば、イグニッションスイッチがオフからオンに切替えられるとエンジン10が始動するように制御される。イグニッションスイッチがオンからオフに切替えられるとエンジン10が停止される。
【0024】
また、エンジン10は、アイドルストップ条件が満たされた場合、自動的に停止するように制御される。すなわち、アイドルストップが実行される。アイドルストップ条件は、たとえば、車両が停止している(車速が零である)という条件、アクセル開度ACCが零であるという条件、ブレーキペダルへの操作がなされている(ブレーキペダルが踏まれている)という条件などを含む。
【0025】
さらに、ブレーキペダルから足が離されたなどの条件を含む始動条件が満たされた場合、自動的に始動するように制御される。
【0026】
なお、アイドルストップ条件ならびに始動条件には周知の条件を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰り返さない。
【0027】
図2を参照して、エンジン10の出力は、トルクコンバータ300および前後進切換装置400を介して、ベルト式の無段変速機500に入力される。無段変速機500の出力は、減速歯車600および差動歯車装置700に伝達され、左右の駆動輪800へ分配される。
【0028】
なお、ベルト式の無段変速機500の代わりに、チェーン式もしくはトロイダル式の無段変速機を用いたり、変速機構としてのプラネタリギヤユニットを有する自動変速機を用いるようにしてもよい。
【0029】
トルクコンバータ300は、エンジン10のクランク軸に連結されたポンプ翼車302と、タービン軸304を介して前後進切換装置400に連結されたタービン翼車306とから構成されている。ポンプ翼車302およびタービン翼車306の間にはロックアップクラッチ308が設けられている。ロックアップクラッチ308は、係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切換えられることにより、係合または解放されるようになっている。
【0030】
ロックアップクラッチ308が完全係合させられることにより、ポンプ翼車302およびタービン翼車306は一体的に回転させられる。ポンプ翼車302には、無段変速機500を変速制御したり、ベルト挟圧力を発生させたり、各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ310が設けられている。
【0031】
前後進切換装置400は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。トルクコンバータ300のタービン軸304はサンギヤ402に連結されている。無段変速機500の入力軸502はキャリア404に連結されている。キャリア404とサンギヤ402とはフォワードクラッチ406を介して連結されている。リングギヤ408は、リバースブレーキ410を介してハウジングに固定される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は油圧シリンダによって摩擦係合させられる。フォワードクラッチ406の入力回転数は、タービン軸304の回転数、すなわちタービン回転数NTと同じである。
【0032】
フォワードクラッチ406が係合させられるとともに、リバースブレーキ410が解放されることにより、前後進切換装置400は前進用係合状態となる。この状態で、前進方向の駆動力が無段変速機500に伝達される。リバースブレーキ410が係合させられるとともにフォワードクラッチ406が解放されることにより、前後進切換装置400は後進用係合状態となる。この状態で、入力軸502はタービン軸304に対して逆方向へ回転させられる。これにより、後進方向の駆動力が無段変速機500に伝達される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410が共に解放されると、前後進切換装置400は動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
【0033】
無段変速機500は、入力軸502に設けられたプライマリプーリ504と、出力軸506に設けられたセカンダリプーリ508と、これらのプーリに巻き掛けられた伝動ベルト510とから構成される。各プーリと伝動ベルト510との間の摩擦力を利用して、動力伝達が行なわれる。
【0034】
各プーリは溝幅が可変であるように、油圧シリンダから構成されている。プライマリプーリ504の油圧シリンダの油圧が制御されることにより、各プーリの溝幅が変化する。これにより、伝動ベルト510の掛かり径が変更され、ギヤ比GR(=プライマリプーリ回転数NIN/セカンダリプーリ回転数NOUT)が連続的に変化させられる。
【0035】
図3に示すように、ECU900には、エンジン回転数センサ902、タービン回転数センサ904、車速センサ906、スロットル開度センサ908、冷却水温センサ910、油温センサ912、アクセル開度センサ914、ブレーキスイッチ916、ポジションセンサ918、プライマリプーリ回転数センサ922およびセカンダリプーリ回転数センサ924などから信号が入力される。
【0036】
エンジン回転数センサ902は、エンジン10の回転数(エンジン回転数)NEを検出する。タービン回転数センサ904は、タービン軸304の回転数(タービン回転数)NTを検出する。車速センサ906は、車速Vを検出する。スロットル開度センサ908は、スロットルバルブ70の開度TAを検出する。冷却水温センサ910は、エンジン10の冷却水温TWを検出する。油温センサ912は、無段変速機500などの油温TCを検出する。アクセル開度センサ914は、アクセルペダルの開度ACCを検出する。ブレーキスイッチ916は、ブレーキペダルの操作の有無を検出する。ポジションセンサ918は、シフトポジションと対応する位置に設けられた接点がONであるかOFFであるかを判別することにより、シフトレバー920のポジションPSHを検出する。プライマリプーリ回転数センサ922は、無段変速機500の入力軸回転数(プライマリプーリ504の回転数)NINを検出する。セカンダリプーリ回転数センサ924は、無段変速機500の出力軸回転数(セカンダリプーリ508の回転数)NOUTを検出する。各センサの検出結果を表す信号が、ECU900に送信される。タービン回転数NTは、フォワードクラッチ406が係合された前進走行時にはプライマリプーリ回転数NINと一致する。車速Vは、セカンダリプーリ回転数NOUTと対応した値になる。
【0037】
ECU900は、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよび入出力インターフェースなどを含む。CPUはメモリに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なう。これにより、エンジン10の出力制御、無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御などを実行する。
【0038】
図4を参照して、ECU900の機能について説明する。なお、以下に説明する機能は、ソフトウェアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。ECU900は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0039】
ECU900は、停止部930と、禁止部932とを備える。停止部930は、予め定められたアイドルストップ条件が満たされた場合、エンジン10が自動的に停止するように制御する。
【0040】
禁止部932は、エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが予め定められた目標回転数より小さいという条件を少なくも含む条件が満たされた場合に、エンジン10が自動的に停止するように制御すること、すなわちアイドルストップを禁止する。
【0041】
より具体的には、エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が予め定められた時間ΔT以上継続した場合に、エンジン10が自動的に停止するように制御することが禁止される。
【0042】
なお、目標回転数は、たとえばエンジン10が自立運転可能である回転数、すなわちエンジン10がストールしない回転数の範囲内で、実験およびシミュレーションなどの結果に基づいて定められる。
【0043】
図5を参照して、ECU900が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、ECU900により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
【0044】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU900は、エンジン10の始動中でなく、停止した状態でなく、かつフューエルカットの実行中でないという条件を満たしているか否かを判断する。これにより、エンジン10が運転中であるか否かが判断される。
【0045】
エンジン10の始動中でなく、停止した状態でなく、かつフューエルカットの実行中でないという条件を満たしていると(S100にてYES)、すなわちエンジン10が運転中であると、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS110に移される。
【0046】
S102にて、ECU900は、エンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さいか否かを判断する。エンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さいと(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS110に移される。
【0047】
S104にて、ECU900は、エンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が予め定められた時間ΔT以上継続したか否かを判断する。エンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が予め定められた時間ΔT以上継続すると(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでないと(S104にてNO)、処理はS102に戻される。
【0048】
S106にて、ECU900は、エンジン10が自動的に停止するように制御すること、すなわちアイドルストップを禁止する。
【0049】
S110にて、ECU900は、アイドルストップ条件が満たされたか否かを判断する。アイドルストップ条件が満たされると(S110にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS100に戻される。
【0050】
S112にて、ECU900は、エンジン10が自動的に停止するように制御すること、すなわちアイドルストップが禁止されているか否かを判断する。アイドルストップが禁止されていると(S112にてYES)、処理はS120に移される。もしそうでないと(S112にてNO)、処理はS114に移される。
【0051】
S114にて、ECU900は、エンジン10が自動的に停止するように制御する。S116にて、ECU900は、始動条件が満たされたか否かを判断する。始動条件が満たされると(S116にてYES)、処理はS118に移される。もしそうでないと(S116にてNO)、処理はS116に戻される。S118にて、ECU900は、エンジン10が始動するように制御する。
【0052】
S120にて、ECU900は、アイドル時のスロットル開度TAISCの学習により、アイドル時のエンジン回転数NEが安定したか否かを判断する。たとえば、アイドル時のエンジン回転数NEが目標のアイドル回転数以上である状態が予め定められた時間以上継続すると、アイドル時のエンジン回転数NEが安定したと判定される。なお、エンジン回転数NEが安定したか否かを判断する方法はこれに限らない。
【0053】
アイドル時のスロットル開度TAISCの学習により、アイドル時のエンジン回転数NEが安定すると(S120にてYES)、処理はS122に移される。もしそうでないと(S120にてNO)、処理はS100に戻される。S122にて、ECU900は、アイドルストップの禁止を解除する。
【0054】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置の動作について説明する。
【0055】
エンジン10の始動中でなく、停止した状態でなく、かつフューエルカットの実行中でないという条件を満たしていない場合(S100にてNO)、もしくはエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さくない場合(S102にてNO)、アイドルストップ条件が満たされているか否かが判断される(S110)。
【0056】
アイドルストップ条件が満たされており(S110にてYES)、かつアイドルストップが禁止されていないと(S112にてNO)、エンジン10が自動的に停止するように制御される(S114)。始動条件が満たされると(S116にてYES)、エンジン10が始動するように制御される(S118)。
【0057】
一方、エンジン10の始動中でなく、停止した状態でなく、かつフューエルカットの実行中でないという条件を満たしており(S100にてYES)、すなわちエンジン10が運転中であり、かつエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さいと(S102にてYES)、エンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が予め定められた時間ΔT以上継続したか否かが判断される(S104)。
【0058】
たとえば、スロットルバルブ70にデポジットが付着するなどして、吸入空気量が減少すると、図6に示すように、時間T1において、エンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が予め定められた時間ΔT以上継続する(S104にてYES)。この場合、エンジン10が自動的に停止するように制御すること、すなわちアイドルストップが禁止される(S106)。したがって、アイドルストップ条件が満たされても(S110にてYES)、エンジン10は停止されない。
【0059】
これにより、エンジン回転数NEが継続的に低下したためにエンジン10が自立運転不可能であるといえる場合に限って、エンジン10が自動的に停止するように制御することを禁止して、ISCによりアイドル時のスロットル開度TAISCを学習する機会を確保することができる。そのため、エンジン回転数NEが一時的に低下した場合にはエンジン10が自動的に停止するように制御することを禁止しないようにして、エンジン10が自動的に停止するように制御することが禁止される頻度を低減することができる。その結果、エンジン10が自動的に停止するように制御することを禁止することによる燃費の悪化を低減することができる。
【0060】
その後、アイドル時のスロットル開度TAISCの学習により、アイドル時のエンジン回転数NEが安定すると(S120にてYES)、アイドルストップの禁止が解除される(S122)。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、エンジンが運転中に、エンジン回転数NEが目標回転数よりも小さいという条件を少なくとも含む条件が満たされた場合、エンジンが自動的に停止するように制御されることが禁止される。これにより、エンジン回転数NEが低下したためにエンジンが自立運転不可能であるといえる場合に限って、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止して、ISCによりアイドル時のスロットル開度TAISCを学習する機会を確保することができる。そのため、エンジンが自立運転可能である場合にはエンジンが自動的に停止するように制御することを禁止しないようにして、エンジンが自動的に停止するように制御することが禁止される頻度を低減することができる。その結果、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止することによる燃費の悪化を低減することができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が継続した時間と、エンジン回転数NEおよび目標回転数の差との積が予め定められた値以上になった場合に、エンジン10が自動的に停止するように制御することが禁止される点で、前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0063】
図7を参照して、ECU900の機能について説明する。なお、以下に説明する機能は、ソフトウェアにより実現するようにしてもよく、ハードウェアにより実現するようにしてもよい。ECU900は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0064】
本実施の形態におけるECU900の禁止部934は、エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が継続した時間と、エンジン回転数NEおよび目標回転数の差(差の絶対値)との積が予め定められた値以上になった場合に、エンジン10が自動的に停止するように制御することを禁止する。
【0065】
図8を参照して、ECU900が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0066】
S204にて、ECU900は、エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が継続した時間と、エンジン回転数NEおよび目標回転数の差との積が予め定められた値以上になったか否かを判断する。
【0067】
エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が継続した時間と、エンジン回転数NEおよび目標回転数の差との積が予め定められた値以上になると(S204にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでないと(S204にてNO)、処理はS102に戻される。
【0068】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置の動作について説明する。
【0069】
たとえば、スロットルバルブ70にデポジットが付着するなどして吸入空気量が減少したり、エンジン10の出力軸(クランクシャフト)に連結されたオルタネータの故障により負荷が急増したりすると、図9に示すように、時間T2において、エンジン10の運転中にエンジン回転数NEが目標回転数よりも予め定められた値ΔNE以上小さい状態が継続した時間と、エンジン回転数NEおよび目標回転数の差との積が予め定められた値以上になる(S204にてYES)。この場合、エンジン10が自動的に停止するように制御すること、すなわちアイドルストップが禁止される(S106)。したがって、アイドルストップ条件が満たされても(S110にてYES)、エンジン10は停止されない。
【0070】
これにより、エンジン回転数NEが継続的に低下したために、あるいはエンジン回転数NEが短期間に急激に低下したためにエンジン10が自立運転不可能であるといえる場合に限って、エンジン10が自動的に停止するように制御することを禁止して、ISCによりアイドル時のスロットル開度TAISCを学習する機会を確保することができる。そのため、エンジン10が自立運転可能である場合にはエンジン10が自動的に停止するように制御することを禁止しないようにして、エンジン10が自動的に停止するように制御することが禁止される頻度を低減することができる。その結果、エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止することによる燃費の悪化を低減することができる。
【0071】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】エンジンを示す概略構成図である。
【図2】車両のパワートレーンを示す概略構成図である。
【図3】ECUを示す制御ブロック図である。
【図4】第1の実施の形態におけるECUの機能ブロック図である。
【図5】第1の実施の形態においてECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】エンジン回転数NEを示す図(その1)である。
【図7】第2の実施の形態におけるECUの機能ブロック図である。
【図8】第2の実施の形態においてECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図9】エンジン回転数NEを示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0073】
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、110 点火プラグ、112 気筒、120 インジェクタ、130 デリバリパイプ、140 燃料圧レギュレータ、150 燃料ポンプ、160 燃料タンク、200 スタータ、900 ECU、902 エンジン回転数センサ、904 タービン回転数センサ、906 車速センサ、908 スロットル開度センサ、910 冷却水温センサ、912 油温センサ、914 アクセル開度センサ、916 ブレーキスイッチ、918 ポジションセンサ、920 シフトレバー、922 プライマリプーリ回転数センサ、924 セカンダリプーリ回転数センサ、930 停止部、932,934 禁止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの制御装置であって、
前記車両が停止したという条件を少なくとも含む条件が満たされた場合に前記エンジンが自動的に停止するように制御するための停止手段と、
前記エンジンの運転中に前記エンジンの出力軸回転数が予め定められた回転数より小さいという条件を少なくも含む条件が満たされた場合に、前記エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止するための禁止手段とを備える、エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記禁止手段は、前記エンジンの運転中に前記エンジンの出力軸回転数が前記予め定められた回転数よりも予め定められた値以上小さい状態が予め定められた時間以上継続した場合に、前記エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止するための手段を含む、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記禁止手段は、前記エンジンの運転中に前記エンジンの出力軸回転数が前記予め定められた回転数よりも予め定められた値以上小さい状態が継続した時間と、前記エンジンの出力軸回転数および前記予め定められた回転数の差との積が予め定められた値以上になった場合に、前記エンジンが自動的に停止するように制御することを禁止するための手段を含む、請求項1に記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−24887(P2010−24887A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185101(P2008−185101)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】